JP2014149508A - 積層位相差フィルム及び積層位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】積層位相差フィルムに含まれる各層の面内遅相軸の関係を容易に制御でき、液晶表示装置において黒表示の際の正面輝度及び光漏れの低減が可能な積層位相差フィルムを提供する。
【解決手段】固有複屈折が正である樹脂A1からなる樹脂層A1、固有複屈折が負である樹脂Bからなる樹脂層B、及び、固有複屈折が正である樹脂A2からなる樹脂層A2をこの順に備え、前記樹脂層A1と前記樹脂層B、及び、前記樹脂層Bと前記樹脂層A2が、それぞれ直接に接しており、樹脂層A1及び樹脂層A2が、ネガティブBプレートであり、樹脂層Bが、ポジティブCプレートであり、Nz係数が0〜1である、積層位相差フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層位相差フィルム及びその製造方法に関する。
液晶表示装置は、一般に、液晶セルと、この液晶セルを挟むように配置される一対の偏光板(即ち、入射側偏光板及び出射側偏光板)とを備える。前記の一対の偏光板は、例えばVAモード及びIPSモード等の一般的な液晶表示モードの場合には、通常、偏光板の吸収軸が直交するように配置される。このような液晶表示装置は、通常、無電界時には黒表示(光の透過を遮断)となる。
また、前記のような液晶表示装置の光学補償を行うため、液晶表示装置には、光学補償フィルムが設けられることがある。このような光学補償フィルムとしては、例えば、異なるレターデーションを有する位相差フィルムを2枚以上貼り合わせた積層位相差フィルムが挙げられる(特許文献1参照)。
しかし、位相差フィルムを貼り合せて製造される積層位相差フィルムは、製造が煩雑である。具体的には、貼り合わせる位相差フィルム同士の面内遅相軸の関係を調整する工程、位相差フィルム同士を貼り合わせる工程などが必要となり、製造に要する工程数が多くなる傾向がある。
そこで、製造を簡単に行うために、共延伸を利用した方法が提案されている。例えば、異なる材料で形成した複数の層を備える積層体を用意し、この積層体を適切な条件で延伸する方法が挙げられる(特許文献2,3)。
特開2008−180961号公報 特開2009−192844号公報 特開2011−39338号公報
特許文献2,3に記載のような方法において、延伸前の積層体は、例えば共流延法又は共押出法により容易に製造できる。また、積層体を延伸すると、その積層体に含まれる層も同時に延伸されるので、特許文献1記載の技術のように位相差フィルム毎に個別に延伸処理を行う必要がなく、更には面内遅相軸の関係を調整する必要がない。そのため、特許文献2,3記載の方法により、積層位相差フィルムを容易に製造することができる。
ところが、近年は液晶表示装置に対する要求水準が高度になってきているため、特許文献2,3に記載の方法で製造された積層位相差フィルムを光学補償フィルムとして用いた液晶表示装置では、高度な要求に応えられるほどには黒表示の際の正面輝度及び光漏れを低減できないことがあった。そこで本発明者は更なる検討を行ったところ、特許文献2,3のような共延伸を利用した技術においては、積層位相差フィルムに含まれる各層の面内遅相軸の関係が意図した関係からズレる可能性があり、この面内遅相軸の関係のズレを改善できれば黒表示の際の正面輝度及び光漏れを十分に低減できることが判明した。
複数の層を備える積層体を延伸することにより当該積層体に含まれる層を共延伸した場合、それらの層はいずれも同一の条件で延伸されるはずである。そのため、共延伸を利用した製造方法では、例えば一部の層だけが他の層とは別の条件で延伸されることにより意図した方向とは異なる方法に面内遅相軸を発現することは無いと考えられていたために、得られる積層位相差フィルムにおいて各層の面内遅相軸の関係が意図した関係からズレることは無いと考えられていた。したがって、共延伸を利用した積層位相差フィルムの製造方法において各層の面内遅相軸の関係が意図した関係からズレることは、意外なことであった。
本発明は上述した課題に鑑みて創案されたもので、積層位相差フィルムに含まれる各層の面内遅相軸の関係を容易に制御でき、液晶表示装置において黒表示の際の正面輝度及び光漏れの低減が可能な積層位相差フィルム、及び、その積層位相差フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上述した課題を解決するべく鋭意検討した結果、面内遅相軸の関係のズレは、固有複屈折が正である樹脂からなる樹脂層と固有複屈折が負である樹脂からなる樹脂層との間で生じることが判明した。また、固有複屈折が正である樹脂からなる樹脂層及び固有複屈折が負である樹脂からなる樹脂層のうち、一方の樹脂層の面内レターデーションを実用上無視できる程度に小さくすることにより、面内遅相軸の関係が意図した関係からズレることを容易に防止できることを見出した。以上の知見から、本発明者は本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 固有複屈折が正である樹脂A1からなる樹脂層A1、固有複屈折が負である樹脂Bからなる樹脂層B、及び、固有複屈折が正である樹脂A2からなる樹脂層A2をこの順に備え、
前記樹脂層A1と前記樹脂層B、及び、前記樹脂層Bと前記樹脂層A2が、それぞれ直接に接しており、
樹脂層A1及び樹脂層A2が、ネガティブBプレートであり、
樹脂層Bが、ポジティブCプレートであり、
Nz係数が0〜1である、積層位相差フィルム。
〔2〕 波長550nmで測定した、前記樹脂層A1の面内レターデーションReA1、前記樹脂層A1の厚み方向のレターデーションRthA1、前記樹脂層Bの面内レターデーションRe、前記樹脂層Bの厚み方向のレターデーションRth、前記樹脂層A2の面内レターデーションReA2、及び、前記樹脂層A2の厚み方向のレターデーションRthA2が、
100nm≦ReA1≦140nm
80nm≦RthA1≦140nm
0nm≦Re≦5nm
−170nm≦Rth≦−110nm
20nm≦ReA2≦40nm
10nm≦RthA2≦40nm
を満たす、〔1〕記載の積層位相差フィルム。
〔3〕 前記樹脂層A1の面内遅相軸と前記樹脂層A2の面内遅相軸とが、平行である、〔1〕又は〔2〕記載の積層位相差フィルム。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の積層位相差フィルムの製造方法であって、
前記樹脂A1からなる層a1、前記層a1に直接に接した前記樹脂Bからなる層b、及び、前記層bに直接に接した前記樹脂A2からなる層a2をこの順に備える樹脂積層体を、温度T1で第一の方向に4倍を超える延伸倍率で延伸する第一延伸工程と、
前記第一延伸工程で延伸された前記樹脂積層体を、前記温度T1より低い温度T2において前記第一の方向に直交する第二の方向へ延伸して、積層位相差フィルムを得る第二延伸工程と、を含む、積層位相差フィルムの製造方法。
〔5〕 前記積層位相差フィルムの前記樹脂層A1及び前記樹脂層A2が、前記第一の方向に平行な面内遅相軸を有する、〔4〕記載の積層位相差フィルムの製造方法。
〔6〕 前記第二延伸工程における延伸倍率が、1.01倍以上1.15倍以下である、〔4〕又は〔5〕記載の積層位相差フィルムの製造方法。
本発明の積層位相差フィルムによれば、当該積層位相差フィルムに含まれる各層の面内遅相軸の関係を容易に制御でき、液晶表示装置において黒表示の際に正面輝度及び光漏れを小さくすることが可能である。
本発明の積層位相差フィルムの製造方法によれば、当該積層位相差フィルムに含まれる各層の面内遅相軸の関係を容易に制御でき、液晶表示装置において黒表示の際に正面輝度及び光漏れを小さくすることが可能な積層位相差フィルムを製造することができる。
図1は、樹脂A1と樹脂A2が同一の樹脂であるとした場合において、層a1及び層a2を構成する樹脂A1(または樹脂A2)のガラス転移温度TgA1が高く、層bを構成する樹脂Bのガラス転移温度Tgが低いと仮定した場合に、樹脂積層体の層a1(層a2)及び層bをそれぞれ延伸したときのレターデーションΔの温度依存性と、樹脂積層体を延伸したときのレターデーションΔの温度依存性の一例を示す図である。 図2は、実施例及び比較例で黒表示時の正面輝度及び光漏れの評価のためにシミュレーターにおいて設定した評価系を模式的に示す斜視図である。
以下、例示物及び実施形態を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に挙げる例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、固有複屈折が正であるとは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなることを意味する。また、固有複屈折が負であるとは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなることを意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
また、フィルム又は層の面内レターデーションは、別に断らない限り、(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルム又は層の厚み方向のレターデーションは、別に断らない限り、{(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。さらに、フィルム又は層のNz係数は、別に断らない限り、(nx−nz)/(nx−ny)で表される値である。ここで、nxは、フィルム又は層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルム又は層の前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、フィルム又は層の厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルム又は層の膜厚を表す。別に断らない限り、前記のレターデーションの測定波長は550nmである。前記のレターデーションは、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製、「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定できる。
また、フィルム又は層の遅相軸とは、別に断らない限り、面内の遅相軸を表す。
また、「偏光板」、「1/4波長板」、「Bプレート」及び「Cプレート」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
また、構成要素の方向が「平行」、「垂直」又は「直交」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば、通常±5°、好ましくは±2°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
さらに、「長尺」とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
また、MD方向(machine direction)は、製造ラインにおけるフィルムの流れ方向であり、通常は長尺のフィルムの長手方向及び縦方向と平行である。さらに、TD方向(traverse direction)は、フィルム面に平行な方向であって、MD方向に垂直な方向であり、通常は長尺のフィルムの幅方向及び横方向と平行である。
[1.積層位相差フィルムの概要]
本発明の積層位相差フィルムは、樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2を、この順に備える。また、樹脂層A1と前記樹脂層Bとは直接に接しており、さらに、樹脂層Bと樹脂層A2とは直接に接している。すなわち、樹脂層A1と樹脂層Bとの間には他の層は無く、また、樹脂層Bと樹脂層A2との間に他の層は無い。
[2.樹脂層A1]
樹脂層A1は、樹脂A1からなる層である。また、樹脂A1は、固有複屈折が正である任意の樹脂を用いうる。中でも、樹脂A1としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
樹脂A1の固有複屈折が正であるので、通常、樹脂A1は固有複屈折が正である重合体を含む。この重合体の例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル重合体;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド重合体;ポリビニルアルコール重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアリレート重合体、セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリスルホン重合体、ポリアリルサルホン重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ノルボルネン重合体、棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。これらの中でも、レターデーションの発現性、低温での延伸性、および樹脂層A1と樹脂層A1以外の層との接着性の観点から、ポリカーボネート重合体が好ましい。
ポリカーボネート重合体としては、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)を含む構造単位を有する任意の重合体を用いうる。ポリカーボネート重合体の例を挙げると、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o’,o’−テトラメチルビスフェノールAポリカーボネートなどが挙げられる。
樹脂A1は、配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例を挙げると、滑剤;層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;染料及び顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。中でも、滑剤及び紫外線吸収剤は、可撓性及び耐候性を向上させることができるので好ましい。また、配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
滑剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム等の無機粒子;ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等の有機粒子;などが挙げられる。中でも、滑剤としては有機粒子が好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。好適な紫外線吸収剤の具体例を挙げると、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。特に好適なものとしては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が挙げられる。
配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めうる。例えば、積層位相差フィルムの1mm厚換算での全光線透過率が80%以上を維持できる範囲としうる。
樹脂A1の重量平均分子量は、樹脂A1で溶融押し出し法又は溶液流延法等の方法を実施できる範囲に調整することが好ましい。
樹脂A1のガラス転移温度TgA1は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、中でも好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度TgA1がこのように高いことにより、樹脂A1の配向緩和を低減することができる。また、ガラス転移温度TgA1の上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
樹脂Bのガラス転移温度Tgにおける樹脂A1の破断伸度は、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上である。破断伸度がこの範囲にあれば、延伸により安定的に積層位相差フィルムを作製することができる。ここで、破断伸度は、JISK7127記載の試験片タイプ1Bの試験片を用いて、引っ張り速度100mm/分において求めうる。また、樹脂A1の前記の破断伸度の上限に特に制限は無いが、通常は200%以下である。
樹脂層A1は、ネガティブBプレートである。ここでネガティブBプレートとは、当該層の屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny>nzの関係を満たす層のことをいう。このようなネガティブBプレートは、通常、面内レターデーションは正の値となり、また、厚み方向のレターデーションは正の値となる。
波長550nmで測定した、樹脂層A1の面内レターデーションReA1の具体的な値は、100nm≦ReA1≦140nmを満たすことが好ましい。より詳しくは、樹脂層A1の面内レターデーションReA1は、好ましくは100nm以上、より好ましくは105nm以上、特に好ましくは110nm以上であり、好ましくは140nm以下、より好ましくは135nm以下、特に好ましくは130nm以下である。樹脂層A1の面内レターデーションReA1を前記の範囲に収めることにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
また、波長550nmで測定した、樹脂層A1の厚み方向のレターデーションRthA1の具体的な値は、80nm≦RthA1≦140nmを満たすことが好ましい。より詳しくは、樹脂層A1の厚み方向のレターデーションRthA1は、好ましくは80nm以上、より好ましくは90nm以上、特に好ましくは100nm以上であり、好ましくは140nm以下、より好ましくは130nm以下、特に好ましくは120nm以下である。樹脂層A1の厚み方向のレターデーションRthA1を前記の範囲に収めることにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
樹脂層A1の面内レターデーションReA1及び厚み方向のレターデーションRthA1を前記の範囲に収める方法としては、例えば、積層位相差フィルムを製造するために樹脂積層体を延伸するときの延伸倍率及び延伸温度を調整する方法が挙げられる。
樹脂層A1の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは4μm以上であり、好ましくは14μm以下、より好ましくは12μm以下、特に好ましくは10μm以下である。樹脂層A1の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、厚みのばらつきを低減することができる。また、上限値以下にすることにより、液晶表示装置の厚さを低減することができる。
また、樹脂層A1の厚みのばらつきは、全面で1μm以下であることが好ましい。これにより、表示装置における色調のばらつきを小さくできる。また、長期使用後の色調変化を均一にできる。これを実現するためには、例えば、樹脂積層体において層a1の厚みのばらつきを全面で1μm以下にすることが好ましい。
[3.樹脂層B]
樹脂層Bは、樹脂Bからなる層である。また、樹脂Bは、固有複屈折が負である任意の樹脂を用いうる。中でも、樹脂Bとしては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
樹脂Bの固有複屈折が負であるので、通常、樹脂Bは固有複屈折が負である重合体を含む。この重合体の例を挙げると、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、並びに、スチレン又はスチレン誘導体と他の任意のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;ポリアクリロニトリル重合体;ポリメチルメタクリレート重合体;あるいはこれらの多元共重合ポリマー;などが挙げられる。また、スチレン又はスチレン誘導体に共重合させうる前記任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、及びブタジエンが好ましいものとして挙げられる。また、これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、レターデーションの発現性が高いという観点から、ポリスチレン系重合体が好ましく、さらに耐熱性が高いという点で、スチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。この場合、ポリスチレン系重合体100重量部に対して、無水マレイン酸を重合して形成される構造を有する構造単位(無水マレイン酸単位)の量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは28重量部以下、特に好ましくは26重量部以下である。
樹脂Bは、配合剤を含んでいてもよい。配合剤の例としては、樹脂A1が含んでいてもよい配合剤と同様のものが挙げられる。また、配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
配合剤の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めうるものであり、例えば、積層位相差フィルムの1mm厚換算での全光線透過率が80%以上を維持できる範囲としうる。
樹脂Bの重量平均分子量は、樹脂Bで溶融押し出し法又は溶液流延法等の方法を実施できる範囲に調整することが好ましい。
樹脂Bのガラス転移温度Tgは、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、中でも好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度Tgがこのように高いことにより、樹脂Bの配向緩和を低減することができる。また、ガラス転移温度Tgの上限に特に制限は無いが、通常は200℃以下である。
樹脂A1のガラス転移温度TgA1における樹脂Bの破断伸度は、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上である。破断伸度がこの範囲にあれば、延伸により安定的に積層位相差フィルムを作製することができる。ここで、樹脂Bの破断伸度の上限に特に制限は無いが、通常は200%以下である。
樹脂A1のガラス転移温度TgA1と樹脂Bのガラス転移温度Tgとの差の絶対値は、好ましくは5℃より大きく、より好ましくは8℃以上であり、好ましくは40℃以下、より好ましくは20℃以下である。前記のガラス転移温度の差の絶対値を前記範囲の下限値より大きくすることにより、レターデーションの発現の温度依存性を大きくできる。一方、上限値以下にすることにより、ガラス転移温度の高い方の樹脂の延伸を容易にして、積層位相差フィルムの平面性を高めることができる。
ここで、樹脂Bのガラス転移温度Tgは樹脂A1のガラス転移温度TgA1よりも低いことが好ましい。よって、樹脂A1と樹脂Bとは、TgA1>Tg+5℃の関係を満たすことが好ましい。
樹脂層Bは、ポジティブCプレートである。ここでポジティブCプレートとは、当該層の屈折率nx、ny及びnzがnx<nz及びny<nzを満たし、且つ、面内レターデーションReが0nm≦Re≦5nmを満たす層のことをいう。また、このようなポジティブCプレートは、厚み方向のレターデーションは負の値となる。
波長550nmで測定した、樹脂層Bの面内レターデーションReの具体的な値は、通常0nm以上であり、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下、特に好ましくは1nm以下である。樹脂層Bの面内レターデーションReを前記の範囲に収めることにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
また、波長550nmで測定した、樹脂層Bの厚み方向のレターデーションRthの具体的な値は、−170nm≦Rth≦−110nmを満たすことが好ましい。より詳しくは、樹脂層Bの厚み方向のレターデーションRthは、好ましくは−170nm以上、より好ましくは−160nm以上、特に好ましくは−150nm以上であり、好ましくは−110nm以下、より好ましくは−120nm以下、特に好ましくは−130nm以下である。樹脂層Bの厚み方向のレターデーションRthを前記の範囲に収めることにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
樹脂層Bの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを前記の範囲に収める方法としては、例えば、積層位相差フィルムを製造するために樹脂積層体を延伸するときの延伸倍率及び延伸温度を調整する方法が挙げられる。
樹脂層Bの厚みは、好ましくは40μm以上、より好ましくは45μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは75μm以下、特に好ましくは70μm以下である。樹脂層Bの厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、所望の位相差の発現が容易にできる。また、上限値以下にすることにより、液晶表示装置の厚さを低減することができる。
また、樹脂層Bの厚みのばらつきは、全面で1μm以下であることが好ましい。これにより、表示装置における色調のばらつきを小さくできる。また、長期使用後の色調変化を均一にできる。これを実現するためには、例えば、樹脂積層体において層bの厚みのばらつきを全面で1μm以下にすることが好ましい。
[4.樹脂層A2]
樹脂層A2は、樹脂A2からなる層である。また、樹脂A2は、固有複屈折が正である任意の樹脂を用いうる。中でも、樹脂A2としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。その中でも特に、樹脂A2としては、上述した樹脂A1と同様の範囲から材料を選択することがより好ましい。したがって、例えば樹脂A2が含みうる重合体及び配合剤の種類及び量、樹脂A2の重量平均分子量及びガラス転移温度は、樹脂A1と同様にしうる。
樹脂A2としては、樹脂A1と同様の範囲の材料から樹脂A1とは異なる樹脂を選択して用いてもよい。したがって、例えば、樹脂A2は、樹脂A1が含む重合体とは別の種類の重合体を含んでいてもよい。また、例えば、樹脂A2は、樹脂A1が含む重合体と同じ種類の重合体を含み、且つ、樹脂A1が含む配合剤とは別の種類の配合剤を含んでいてもよい。さらに、例えば、樹脂A2は、樹脂A1が含む重合体及び配合剤と同じ種類の重合体及び配合剤を含み、その重合体及び配合剤の量を樹脂A1と異なる量にしてもよい。しかし、樹脂A2としては、樹脂A1と同じ樹脂を用いることが、特に好ましい。樹脂A1と樹脂A2とが同じ樹脂であると、積層位相差フィルムにおいて撓み及び反りを防止できる。また、積層位相差フィルムにおいて樹脂層A1の面内遅相軸と樹脂層A2の面内遅相軸とを容易に平行にすることができる。
樹脂層A2は、ネガティブBプレートである。したがって、樹脂層A2は、その屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny>nzの関係を満たす。
波長550nmで測定した、樹脂層A2の面内レターデーションReA2の具体的な値は、20nm≦ReA2≦40nmを満たすことが好ましい。より詳しくは、樹脂層A2の面内レターデーションReA2は、好ましくは20nm以上、より好ましくは23nm以上、特に好ましくは25nm以上であり、好ましくは40nm以下、より好ましくは37nm以下、特に好ましくは35nm以下である。樹脂層A2の面内レターデーションReA2を前記の範囲に収めることにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
また、波長550で測定した、樹脂層A2の厚み方向のレターデーションRthA2の具体的な値は、10nm≦RthA2≦40nmを満たすことが好ましい。より詳しくは、樹脂層A2の厚み方向のレターデーションRthA2は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、好ましくは40nm以下、より好ましくは35nm以下、特に好ましくは30nm以下である。樹脂層A2の厚み方向のレターデーションRthA2を前記の範囲に収めることにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
樹脂層A2の面内レターデーションReA2及び厚み方向のレターデーションRthA2を前記の範囲に収める方法としては、例えば、積層位相差フィルムを製造するために樹脂積層体を延伸するときの延伸倍率及び延伸温度を調整する方法が挙げられる。
樹脂層A2の面内遅相軸は、樹脂層A1の面内遅相軸と平行であることが好ましい。これにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
樹脂層A2の厚みは、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは0.6μm以上、特に好ましくは0.8μm以上であり、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.8μm以下、特に好ましくは2.6μm以下である。樹脂層A2の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、厚みのばらつきを低減することができる。また、上限値以下にすることにより、液晶表示装置の厚さを低減することができる。
また、樹脂層A2の厚みのばらつきは、全面で1μm以下であることが好ましい。これにより、表示装置における色調のばらつきを小さくできる。また、長期使用後の色調変化を均一にできる。これを実現するためには、例えば、樹脂積層体において層a2の厚みのばらつきを全面で1μm以下にすることが好ましい。
[5.任意の層]
本発明の積層位相差フィルムは、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2に加えて、更に任意の層を備えていてもよい。ただし、任意の層は、樹脂層A1と樹脂層B、及び、樹脂層Bと樹脂層A2が、それぞれ直接に接することを妨げないように設けられる。
任意の層としては、例えば、フィルムの滑り性を良くできるマット層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層等のハードコート層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
[6.積層位相差フィルムの物性]
本発明の積層位相差フィルムは、上述したように、樹脂層BがポジティブCプレートとなっている。そのため、樹脂層Bは、面内遅相軸を有さないか、有するとしてもその樹脂層Bにおける面内レターデーションが無視できる程度に小さい。そのため、樹脂層Bの面内遅相軸の方向を、樹脂層A1及び樹脂層A2の面内遅相軸の方向に応じて設定しなくても、液晶表示装置を黒表示にした時に正面輝度を十分に低減できる。また、通常は、積層位相差フィルムの光学補償性能を高くできるので、液晶表示装置の光漏れを低減できる。
一般に、固有複屈折が正である樹脂と、固有複屈折が負である樹脂とでは、延伸した時に発現する面内遅相軸の方向が異なる。そのため、固有複屈折が正である樹脂の層と固有複屈折が負である樹脂の層とを組み合わせて備える従来の積層位相差フィルムは、延伸した時の各層の面内遅相軸の方向の関係を適切に制御することは困難であった。中でも、従来の積層位相差フィルムでは、フィルムの幅方向の端部において各層の面内遅相軸を所望の方向に発現させることが困難であり、ひいては各層の面内遅相軸の方向の関係を意図したとおりに制御することが特に難しかった。例えば、固有複屈折が正である樹脂の層、固有複屈折が負である樹脂の層及び固有複屈折が正である樹脂の層をこの順に備える従来の位相差フィルムにおいて全ての層の面内遅相軸の方向を平行にしようとしても、固有複屈折が正である樹脂の層の面内遅相軸と固有複屈折が負である樹脂の層の面内遅相軸とは平行にならないことが多かった。
しかし、本発明の積層位相差フィルムでは、樹脂層Bが遅相軸を実質的に有さない。そのため、固有複屈折が正である樹脂の層と固有複屈折が負である樹脂の層とを組み合わせて備える積層位相差フィルムにおいて、各層の面内遅相軸の方向の関係を適切に制御することが可能である。中でも、樹脂層A1の面内遅相軸の方向と樹脂層A2の面内遅相軸の方向とを平行にしたい場合、本発明の積層位相差フィルムは容易に樹脂層A1の面内遅相軸の方向と樹脂層A2の面内遅相軸の方向とを平行にできるので、特に好ましい。
積層位相差フィルムのNz係数は、通常0以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であり、通常1以下、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。積層位相差フィルムがこのような範囲のNz係数を有することにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
積層位相差フィルムの面内レターデーションReは、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、また、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下である。積層位相差フィルムがこのような範囲の面内レターデーションReを有することにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
積層位相差フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、好ましくは−50nm以上、より好ましくは−40nm以上、特に好ましくは−30nm以上であり、また、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、特に好ましくは30nm以下である。積層位相差フィルムがこのような範囲の厚み方向のレターデーションRthを有することにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。
また、積層位相差フィルムは、積層位相差フィルム全体として、その屈折率nx、ny及びnzがnx>nz>nyの関係を満たすことが好ましい。これにより、液晶表示装置の光学補償を適切に行うことができる。ここで、積層位相差フィルムの屈折率nx、ny及びnzは、積層位相差フィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRth、積層位相差フィルムの厚み、及び、積層位相差フィルムの平均屈折率naveにより算出される。平均屈折率naveは、次式により決定しうる。
nave=Σ(ni×Li)/ΣLi
ni:i層の樹脂の屈折率
Li:i層の膜厚
積層位相差フィルムの全光線透過率は、85%以上であることが好ましい。前記光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
積層位相差フィルムのヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、本発明の積層位相差フィルムを備える表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
積層位相差フィルムは、ΔYIが5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。このΔYIが上記範囲にあると、着色がなく視認性が良好となる。また下限は、理想的にはゼロである。ΔYIは、ASTM E313に準拠して、日本電色工業社製「分光色差計 SE2000」を用いて測定しうる。同様の測定を五回行い、その算術平均値にして求める。
積層位相差フィルムは、JIS鉛筆硬度でHまたはそれ以上の硬さを有することが好ましい。このJIS鉛筆硬度は、樹脂の種類及び樹脂層の厚みにより調整しうる。ここで、JIS鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に準拠して、各種硬度の鉛筆を45°傾けて、上から500g重の荷重を掛けてフィルム表面を引っ掻き、傷が付きはじめる鉛筆の硬さである。
積層位相差フィルムの外表面は、MD方向に伸びる不規則に生じる線状凹部又は線状凸部(いわゆるダイライン)を実質的に有さず、平坦であることが好ましい。ここで、「不規則に生じる線状凹部又は線状凸部を実質的に有さず、平坦」とは、仮に線状凹部又は線状凸部が形成されたとしても、深さが50nm未満もしくは幅が500nmより大きい線状凹部、又は、高さが50nm未満もしくは幅が500nmより大きい線状凸部であること、である。より好ましくは、深さが30nm未満もしくは幅が700nmより大きい線状凹部であること、又は、高さが30nm未満もしくは幅が700nmより大きい線状凸部であること、である。このような構成とすることにより、線状凹部又は線状凸部での光の屈折等に基づく、光の干渉及び光漏れの発生を防止でき、光学性能を向上できる。また、不規則に生じるとは、意図しない位置に意図しない寸法及び形状で形成されるということである。
上述した線状凹部の深さ、線状凸部の高さ、及びこれらの幅は、次に述べる方法で求めうる。積層位相差フィルムに光を照射して、透過光をスクリーンに映し、スクリーン上に現れる光の明又は暗の縞の有る部分(この部分は線状凹部の深さ及び線状凸部の高さが大きい部分である。)を30mm角で切り出す。切り出したフィルム片の表面を三次元表面構造解析顕微鏡(視野領域5mm×7mm)を用いて観察し、これを3次元画像に変換し、この3次元画像から断面プロファイルを求める。断面プロファイルは視野領域で1mm間隔で求める。
この断面プロファイルに、平均線を引く。この平均線から線状凹部の底までの長さが線状凹部深さとなり、また、平均線から線状凸部の頂までの長さが線状凸部高さとなる。平均線とプロファイルとの交点間の距離が幅となる。これら線状凹部深さ及び線状凸部高さの測定値からそれぞれ最大値を求め、その最大値を示した線状凹部又は線状凸部の幅をそれぞれ求める。以上から求められた線状凹部深さ及び線状凸部高さの最大値、その最大値を示した線状凹部の幅及び線状凸部の幅を、そのフィルムの線状凹部の深さ、線状凸部の高さ及びそれらの幅とする。
積層位相差フィルムは、60℃、90%RH、100時間の熱処理によって、縦方向および横方向において収縮するものであってもよい。ただし、その収縮率は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。収縮率をこのように小さくすることにより、高温及び高湿環境下で積層位相差フィルムを使用する際に、収縮応力によって積層位相差フィルムの変形が生じて表示装置から剥離する現象を、防止できる。
積層位相差フィルムにおいて、上述した樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2の厚みの合計は、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。
積層位相差フィルムの幅方向の寸法は、好ましくは500mm以上、より好ましくは1000mm以上であり、好ましくは2000mm以下である。
また、上述したように、積層位相差フィルムにおいては、樹脂層A1と前記樹脂層Bとは直接に接しており、樹脂層Bと樹脂層A2とは直接に接している。このため、本発明の積層位相差フィルムは、厚みを薄くすることができ、光学的機能の発現の点で有利である。このような積層位相差フィルムは、例えば後述のように、樹脂A1からなる層a1、層a1に直接に接した樹脂Bからなる層b、及び、層bに直接に接した樹脂A2からなる層a2を有する樹脂組成物を延伸して、層a1、層b及び層a2を共延伸することにより、容易に製造できる。
[7.積層位相差フィルムの製造方法の概要]
本発明の積層位相差フィルムの製造方法に制限は無く、例えば、樹脂A1からなる層a1、層a1に直接に接した樹脂Bからなる層b、及び、層bに直接に接した樹脂A2からなる層a2をこの順に備える樹脂積層体を延伸することにより製造しうる。この際、樹脂積層体の延伸は、樹脂積層体を温度T1で第一の方向に延伸する第一延伸工程と;第一延伸工程で延伸された樹脂積層体を、温度T1より低い温度T2において第一の方向に直交する第二の方向へ延伸して積層位相差フィルムを得る第二延伸工程と;を行うことが好ましい。以下、この製造方法について説明する。
[8.樹脂積層体]
樹脂積層体は、前記のように、樹脂A1からなる層a1、樹脂Bからなる層b、及び、樹脂A2からなる層a2をこの順に備える。また、層a1と層bとは直接に接しており、層bと層a2とは直接に接している。すなわち、層a1と層bとの間には他の層は無く、また、層bと層a2との間に他の層は無い。
この樹脂積層体は、温度T1及びT2という異なる温度で互いに直交する異なる方向に延伸することにより、層a1、層b及び層a2のそれぞれにおいて各温度T1及びT2、延伸倍率、並びに延伸方向に応じてレターデーションを生じうるという性質を有する。この性質を利用して、本発明の積層位相差フィルムを製造することができる。具体的には、この樹脂積層体を延伸して得られる積層位相差フィルムにおいては、層a1に生じるレターデーションと、層bに生じるレターデーションと、層a2に生じるレターデーションとが合成されることにより、積層位相差フィルム全体として所望の面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションが得られる。
延伸により層a1、層b及び層a2に生じるレターデーションの大きさは、樹脂積層体の構成(例えば、各層の数及び厚み)、延伸温度及び延伸倍率などの条件に応じて決まる。そのため、樹脂積層体の構成は、発現させようとする光学補償機能等の光学的機能に応じて定めることが好ましい。
中でも、樹脂積層体は、ある一方向への延伸方向(すなわち、一軸延伸方向)をX軸、一軸延伸方向に対してフィルム面内で直交する方向をY軸、およびフィルム厚み方向をZ軸としたときに、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がXZ面にある直線偏光(以下、適宜「XZ偏光」という。)の、フィルム面に垂直に入射しかつ電気ベクトルの振動面がYZ面にある直線偏光(以下、適宜「YZ偏光」という。)に対する位相が、
温度T1及びT2のうちの一方(通常は温度T1)でX軸方向に一軸延伸したときには遅れ、
温度T1及びT2のうちの他方(通常は温度T2)でX軸方向に一軸延伸したときには進む、
との要件(以下、適宜「要件P」ということがある。)を満たすことが好ましい。
前記の要件Pは、樹脂積層体の面内の様々な方向のうち、少なくとも一の方向をX軸とした場合に満たすようにする。通常、樹脂積層体は等方な(即ち、異方性を有しない)原反フィルムであるので、面内の一の方向をX軸としたときに要件Pを満たせば、他のどの方向をX軸としたときも要件Pを満たすことができる。
一般に、一軸延伸によってX軸に面内遅相軸が現れるフィルムでは、XZ偏光はYZ偏光に対して位相が遅れる。逆に、一軸延伸によってX軸に進相軸が現れるフィルムでは、XZ偏光はYZ偏光に対して位相が進む。前記の要件Pを満たす樹脂積層体はこれらの性質を利用した積層体であり、通常、面内遅相軸又は進相軸の現れ方が延伸温度に依存するフィルムである。このようなレターデーションの発現の温度依存性は、例えば、樹脂A1、樹脂B及び樹脂A2の光弾性係数並びに各層の厚み比などの関係を調整することで調整できる。
ここで、「延伸方向を基準とした面内レターデーション」を例に挙げて、樹脂積層体が満たすべき条件を説明する。延伸方向を基準とした面内レターデーションを、延伸方向であるX軸方向の屈折率nXと面内で延伸方向に直交する方向であるY軸方向の屈折率nYとの差(=nX−nY)に厚みdを乗じて求められる値と定義する。この際、層a1と層bと層a2とを備える樹脂積層体を延伸した時に当該樹脂積層体全体に発現しうる延伸方向を基準とした面内レターデーションは、層a1に発現する延伸方向を基準とした面内レターデーションと、層bに発現する延伸方向を基準とした面内レターデーションと、層a2に発現する延伸方向を基準とした面内レターデーションとから合成される。そこで、層a1と層bと層a2とを含む樹脂積層体を延伸した時に発現する延伸方向を基準とした面内レターデーションの符号が、高い温度T1における延伸と低い温度T2における延伸とで逆になるようにするために、下記の条件(i)及び(ii)を満たすように層a1、層b及び層a2の厚みを調整することが好ましい。
(i)低い温度T2における延伸で、ガラス転移温度の高い樹脂が発現するレターデーションの絶対値が、ガラス転移温度の低い樹脂が発現するレターデーションの絶対値よりも、小さくなる。
(ii)高い温度T1における延伸で、ガラス転移温度の低い樹脂が発現するレターデーションの絶対値が、ガラス転移温度の高い樹脂が発現するレターデーションの絶対値よりも、小さくなる。
このように、一方向への延伸(即ち、一軸延伸)によって層a1、層b及び層a2のそれぞれに発現するX軸方向の屈折率nXとY軸方向の屈折率nYとの差;層a1の厚みの総和;層bの厚みの総和;並びに、層a2の厚みの総和を調整することで、要件P(即ち、XZ偏光のYZ偏光に対する位相が、温度T1及びT2の一方でX軸方向に一軸延伸したときには遅れ、温度T1及びT2の他方でX軸方向に一軸延伸したときには進む、という要件)を満たす樹脂積層体を得ることができる。
要件Pを満たす樹脂積層体を延伸した場合の延伸方向を基準とした面内レターデーションの発現について、図を参照して更に具体的に説明する。図1は、樹脂A1と樹脂A2が同一の樹脂であるとした場合において、層a1及び層a2を構成する樹脂A1(または樹脂A2)のガラス転移温度TgA1が高く、層bを構成する樹脂Bのガラス転移温度Tgが低いと仮定した場合に、樹脂積層体の層a1及び層a2並びに層bをそれぞれある延伸倍率および延伸速度で延伸したときの延伸方向を基準としたレターデーションの温度依存性と、樹脂積層体を延伸したときの延伸方向を基準としたレターデーションΔの温度依存性の一例を示す図である。図1に示すような樹脂積層体では、温度Tbにおける延伸では層a1及び層a2において発現するプラスの延伸方向を基準としたレターデーションに比べ層bにおいて発現するマイナスの延伸方向を基準としたレターデーションの方が大きいので、全体としてはマイナスの延伸方向を基準としたレターデーションΔを発現することになる。一方、温度Taにおける延伸では層a1及び層a2において発現するプラスの延伸方向を基準としたレターデーションに比べ層bにおいて発現するマイナスの延伸方向を基準としたレターデーションの方が小さいので、全体としてはプラスの延伸方向を基準としたレターデーションΔを発現することになる。
したがって、このような異なる温度Ta及びTbの延伸を組み合わせることにより、各温度での延伸で生じるレターデーションを合成して、所望のレターデーションを有し、ひいては所望の光学的機能を発揮する積層位相差フィルムを安定して実現できる。
例えば、温度Taで第一延伸工程を行い、層a1及び層a2においてプラスの延伸方向を基準としたレターデーション並びに層bにおいてマイナスの延伸方向を基準としたレターデーションを発現させる。次いで第一延伸工程における延伸方向と面内で直交する方向に、温度Tbで第一延伸工程より低い延伸倍率にて第二延伸工程を行い、層a1及び層a2においてプラスの第一延伸工程における延伸方向を基準としたレターデーションを有したままで、層bにおいて第一延伸工程で発現した面内のレターデーションを相殺する。これにより、層a1及び層a2を延伸して得られる樹脂層A1および樹脂層A2をネガティブBプレートとするとともに、層bを延伸して得られる樹脂層BをポジティブCプレートとすることができる。
層a1、層b及び層a2の具体的な厚みは、上述した要件Pを満たすべく、製造したい積層位相差フィルムのレターデーションに応じて設定しうる。この際、層a1及び層a2の厚みの総和と、層bの厚みの総和との比{(層a1の厚みの総和+層a2の厚みの総和)/(層bの厚みの総和)}は、好ましくは1/15以上、より好ましくは1/10以上であり、また、好ましくは1/4以下である。これにより、延伸処理によるレターデーション発現の温度依存性を大きくできる。
層a1、層b及び層a2の合計厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下である。層a1、層b及び層a2の合計厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、十分なレターデーションを発現させることができる。また、積層位相差フィルムの機械的強度を高くできる。また、上限値以下にすることにより、積層位相差フィルムに高い柔軟性を持たせて、ハンドリング性を高めることができる。
また、樹脂積層体において、層a1、層b、及び層a2の各厚みのばらつきは、全面で1μm以下であることが好ましい。これにより、積層位相差フィルムの色調のばらつきを小さくできる。また、積層位相差フィルムの長期使用後の色調変化を均一にできる。
前記のように層a1、層b及び層a2の厚みのばらつきを全面で1μm以下とするためには、例えば、下記の(1)〜(6)のようにしてもよい。
(1)押出機内に目開きが20μm以下のポリマーフィルターを設ける。
(2)ギヤポンプを5rpm以上で回転させる。
(3)ダイス周りに囲い手段を配置する。
(4)エアギャップを200mm以下とする。
(5)フィルムを冷却ロール上にキャストする際にエッジピニングを行う。
(6)押出機として二軸押出機又はスクリュー形式がダブルフライト型の単軸押出機を用いる。
各層の厚みは、市販の接触式厚み計を用いて、フィルムの総厚を測定し、次いで厚み測定部分を切断し断面を光学顕微鏡で観察して、各層の厚み比を求めて、その比率より計算しうる。また、この操作をフィルムのMD方向及びTD方向において一定間隔毎に行い、厚みの算術平均値及びばらつきを求めることができる。
厚みのばらつきは、上記で測定した測定値の算術平均値Taveを基準とし、測定した厚みTの内の最大値をTmax、最小値をTminとして、以下の式から算出する。
厚みのばらつき(μm)=「Tave−Tmin」及び「Tmax−Tave」のうちの大きい方。
樹脂積層体は、その全光線透過率、ヘイズ、ΔYI、JIS鉛筆硬度、並びに外表面が線状凹部又は線状凸部を実質的に有さず平坦であることが好ましい点については、積層位相差フィルムと同様である。
樹脂積層体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、層a1、層b、及び層a2以外に任意の層を有してもよい。任意の層としては、積層位相差フィルムが有していてもよい任意の層と同様の層が挙げられる。これら任意の層は、例えば、後述のように共押出しにより得られた樹脂積層体に対して後から設けるようにしてもよく、樹脂A1、樹脂B及び樹脂A2を共押出しする際に任意の層の形成材料を樹脂A1、樹脂B及び樹脂A2と共押出しするようにしてもよい。
樹脂積層体の幅方向の寸法は、好ましくは500mm以上であり、好ましくは2000mm以下である。また、樹脂積層体の長手方向の寸法は任意であり、樹脂積層体を長尺のフィルムとすることが好ましい。
樹脂積層体の製造方法に制限は無いが、樹脂A1、樹脂B及び樹脂A2を用いて、共押出し法又は共流延法により製造することが好ましい。この中でも、共押出し法が好ましい。共押出し法は、溶融状態にした複数の樹脂を押し出して成形する方法である。共押出し法は、製造効率の点、並びに、樹脂積層体中に溶媒などの揮発性成分を残留させないという点で、優れている。
共押出し方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。これらの中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法にはフィードブロック方式及びマルチマニホールド方式がある。その中でも、層a1及び層a2の厚みのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
共押出Tダイ法を採用する場合、Tダイを有する押出機における樹脂の溶融温度は、各樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも、80℃高い温度以上にすることが好ましく、100℃高い温度以上にすることがより好ましく、また、180℃高い温度以下にすることが好ましく、150℃高い温度以下にすることがより好ましい。押出機での樹脂の溶融温度を前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂の流動性を十分に高めることができる。また、上限値以下とすることにより、樹脂の劣化を防止することができる。
ダイスの開口部から押し出されたフィルム状の溶融樹脂は、冷却ドラムに密着させることが好ましい。これにより、溶融樹脂を速やかに硬化させて、所望の樹脂積層体を効率的に得ることができる。
溶融樹脂を冷却ドラムに密着させる方法は、特に制限されず、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
冷却ドラムの数は特に制限されないが、通常は2本以上である。また、冷却ドラムの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。またダイスの開口部から押出された溶融樹脂の冷却ドラムへの通し方も特に制限されない。
冷却ドラムの温度により、通常、押出されたフィルム状の樹脂の冷却ドラムへの密着具合が変化する。そのため、冷却ドラムの温度は、ダイスから押し出す樹脂のうちドラムに接触する層の樹脂のガラス転移温度をTgとすると、好ましくは(Tg+30)℃以下、さらに好ましくは(Tg−5)℃〜(Tg−45)℃の範囲にする。冷却ドラムの温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、冷却ドラムに対する樹脂の密着を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、フィルム状の樹脂を冷却ドラムから容易に剥がし取ることができる。また、冷却ドラムの温度を前記の範囲に収めることにより、滑り及びキズなどの不具合を防止することができる。
また、樹脂積層体中の残留溶媒の量は少なくすることが好ましい。そのための手段としては、(1)原料となる樹脂の残留溶媒を少なくする;(2)樹脂積層体を成形する前に樹脂を予備乾燥する;などの手段が挙げられる。予備乾燥は、例えば樹脂をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などで行われる。乾燥温度は100℃以上が好ましく、乾燥時間は2時間以上が好ましい。予備乾燥を行うことにより、樹脂積層体中の残留溶媒を低減させる事ができ、さらに押し出されたフィルム状の樹脂の発泡を防ぐことができる。
[9.第一延伸工程]
第一延伸工程では、樹脂積層体を温度T1で一方向に延伸する。即ち、樹脂積層体を温度T1で一軸延伸する。この際、第一延伸工程で樹脂積層体を延伸する方向が、第一の方向である。このような第一延伸工程を行うことにより、樹脂積層体に含まれる層a1、層b及び層a2が共延伸される。温度T1で延伸すると、層a1、層b及び層a2のそれぞれにおいて、樹脂積層体の構成、並びに、延伸温度T1及び延伸倍率などの延伸条件に応じてレターデーションが生じ、層a1、層b及び層a2を含む樹脂積層体全体としてもレターデーションを生じる。この際、例えば樹脂積層体が要件Pを満たす場合には、XZ偏光のYZ偏光に対する位相は、遅れるか、若しくは進む。
温度T1は、所望のレターデーションが得られるように、適切な温度に設定しうる。例えば、樹脂A1のガラス転移温度TgA1及び樹脂A2のガラス転移温度TgA2が樹脂Bのガラス転移温度Tgよりも高い場合、温度T1は、次のように設定することが好ましい。即ち、温度T1は、樹脂A1のガラス転移温度TgA1、樹脂Bのガラス転移温度Tg、樹脂A2のガラス転移温度TgA2を基準として、Tgより高いことが好ましく、Tg+5℃より高いことがより好ましく、Tg+10℃より高いことがさらに好ましく、また、TgA1およびTgA2のいずれか高い温度+20℃より低いことが好ましく、TgA1およびTgA2のいずれか高い温度+10℃より低いことがより好ましい。温度T1を前記温度範囲の下限よりも高くすると樹脂層Bの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを所望の範囲に安定して収めることができる。また、温度T1を前記温度範囲の上限よりも低くすると、樹脂層A1の面内レターデーションReA1及び厚み方向のレターデーションRthA1、並びに、樹脂層A2の面内レターデーションReA2及び厚み方向のレターデーションRthA2を所望の範囲に安定して収めることができる。
第一延伸工程での延伸倍率は、好ましくは4.0倍を超え、また、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは4.7倍以下、特に好ましくは4.5倍以下である。第一延伸工程での延伸倍率を前記範囲の下限値超にすることにより、積層位相差フィルムにおいて樹脂層A1および樹脂層A2の遅相軸を第一延伸工程での延伸方向と等しくできるので、樹脂層A1および樹脂層A2をBプレートにすることができる。さらに、このように高い延伸倍率で延伸することにより、得られる積層位相差フィルムの厚みを薄くすることができる。また、上限値以下にすることにより、積層位相差フィルムの製造を安定して行うことができる。
第一延伸工程における延伸速度は、好ましくは4.0倍/分以上であり、好ましくは5.0倍/分以下、より好ましくは4.7倍/分以下、特に好ましくは4.5倍/分以下である。延伸速度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、レターデーションのばらつきを低減することができる。
一軸延伸は、従来公知の方法で行いうる。例えば、ロール間の周速の差を利用して縦方向(通常はMD方向に一致する。)に一軸延伸する方法;テンターを用いて横方向(通常はTD方向に一致する。)に一軸延伸する方法;等が挙げられる。縦方向に一軸延伸する方法としては、例えば、ロール間でのIR加熱方式及びフロート方式等が挙げられ、中でも、光学的な均一性が高い積層位相差フィルムが得られる点から、フロート方式が好適である。一方、横方向に一軸延伸する方法としては、テンター法が挙げられる。
また、延伸の際には、延伸ムラ及び厚みムラを小さくするために、延伸ゾーンにおいて樹脂積層体の幅方向に温度差がつくようにしてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、例えば、温風ノズルの開度を幅方向で調整したり、IRヒーターを幅方向に並べて加熱制御したりするなど、公知の手法を用いてもよい。
本発明の積層位相差フィルムにおいて、通常、樹脂層A1及び樹脂層A2は、第一延伸工程で樹脂積層体を延伸した第一の方向に平行な面内遅相軸を有する。よって、積層位相差フィルム全体の面内遅相軸も、通常は、第一の方向に平行となる。そのため、第一の方向は、製造しようとする積層位相差フィルムにおいて面内遅相軸を発現させたい方向と平行に設定することが好ましい。
[10.第二延伸工程]
第一延伸工程の後、第二延伸工程を行う。第二延伸工程では、第一延伸工程で第一の方向に延伸された樹脂積層体を、前記第一の方向に面内で直交する第二の方向へ延伸する。
第二延伸工程では、温度T1よりも低い温度T2において樹脂積層体を延伸する。即ち、樹脂積層体を相対的に低い温度T2において一軸延伸する。温度T2で延伸すると、層a1、層b及び層a2のそれぞれにおいて、樹脂積層体の構成、並びに、延伸温度T2及び延伸倍率などの延伸条件に応じてレターデーションが生じ、層a1、層b及び層a2を含む樹脂積層体全体としてもレターデーションを生じる。この際、例えば樹脂積層体が要件Pを満たすのであれば、第一延伸工程での延伸によりXZ偏光のYZ偏光に対する位相が遅れた場合には第二延伸工程での延伸によりXZ偏光のYZ偏光に対する位相は進み、第一延伸工程での延伸によりXZ偏光のYZ偏光に対する位相が進んだ場合には第二延伸工程での延伸によりXZ偏光のYZ偏光に対する位相は遅れることになる。
温度T2は、所望のレターデーションが得られるように、適切な温度に設定しうる。例えば、樹脂A1のガラス転移温度TgA1及び樹脂A2のガラス転移温度TgA2が樹脂Bのガラス転移温度Tgよりも高い場合、温度T2は、次のように設定することが好ましい。即ち、温度T2は、樹脂Bのガラス転移温度Tgを基準として、Tg−20℃より高いことが好ましく、Tg−10℃より高いことがより好ましく、また、Tg+5℃より低いことが好ましく、Tgより低いことがより好ましい。延伸温度T2を前記温度範囲の下限よりも高くすることにより、延伸時に樹脂積層体の破断及び白濁を防止できる。また、上限値以下にすることにより、樹脂層bのレターデーションRe及びRthを所望の範囲に安定して収めることができる。
温度T1と温度T2との差は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上である。温度T1と温度T2との差を前記のように大きくすることで、積層位相差フィルムに偏光板補償機能を安定して発現させることができる。また、温度T1と温度T2との差の上限に制限は無いが、工業生産性の観点からは100℃以下である。
第二延伸工程での延伸倍率は、第一延伸工程での延伸倍率よりも小さいことが好ましい。第二延伸工程での具体的な延伸倍率は、好ましくは1.01倍以上、より好ましくは1.02倍以上、特に好ましくは1.03倍以上であり、また、好ましくは1.15倍以下、より好ましくは1.12倍以下、特に好ましくは1.10倍以下である。第二延伸工程での延伸倍率を前記範囲にすることにより、樹脂層Bの面内レターデーションを小さくできるので、樹脂層BをCプレートにすることができる。
第二延伸工程における延伸速度は、好ましくは1.01倍/分以上、より好ましくは1.02倍/分以上、特に好ましくは1.03倍/分以上であり、好ましくは1.15倍/分以下、より好ましくは1.12倍/分以下、特に好ましくは1.10倍/分以下である。延伸速度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、レターデーションのばらつきを低減することができる。
第二延伸工程での延伸としては、一軸延伸を行う。この一軸延伸の具体的な方法は、第一延伸工程での一軸延伸で採用できる方法と同様の方法を用いうる。
第一延伸工程及び第二延伸工程における延伸方向の組み合わせは、任意である。例えば、第一延伸工程で縦方向に延伸し、第二延伸工程で横方向に延伸してもよい。また、例えば、第一延伸工程で横方向に延伸し、第二延伸工程で縦方向に延伸してもよい。さらに、例えば、第一延伸工程で斜め方向に延伸し、第二延伸工程で前記の斜め方向に直交する斜め方向に延伸してもよい。ここで斜め方向とは、縦方向及び横方向の両方に平行でない方向を表す。中でも、第一延伸工程で横方向に延伸し、第二延伸工程で縦方向に延伸することが好ましい。延伸倍率が小さい第二延伸工程での延伸を縦方向に行うようにすることで、得られる積層位相差フィルムの全幅にわたって光軸の方向のバラツキを小さくできる。
上述したように樹脂積層体に対して第一延伸工程と第二延伸工程とを行うことにより、第一延伸工程及び第二延伸工程のそれぞれにおいて、層a1、層b及び層a2に延伸温度、延伸方向及び延伸倍率等の延伸条件に応じたレターデーションが生じる。このため、第一延伸工程と第二延伸工程とを経て得られる積層位相差フィルムでは、第一延伸工程及び第二延伸工程のそれぞれにおいて層a1、層b及び層a2に生じたレターデーションが合成されることにより、偏光板補償機能等の光学的機能を発現するに足りるレターデーションが生じる。したがって、第一延伸工程及び第二延伸工程を含む製造方法により、所望のレターデーションを有する積層位相差フィルムを得ることができる。
また、上述した製造方法は、層a1、層b及び層a2を備える樹脂積層体を延伸して樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2を得ているので、別々に樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2を用意してからそれらを貼り合せて積層位相差フィルムを製造する場合に比べて、接着剤の塗布及び硬化が不要であるので、製造工程を短縮でき、製造コストを低減することができる。さらに、貼り合わせ角度の調整が不要であることから、面内遅相軸の方向精度の向上が容易であり、製品の高品質化が期待できる。
上述した製造方法においては、例えば、第一延伸工程及び第二延伸工程における延伸倍率及び延伸温度を調整することにより、積層位相差フィルムの樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2の面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションを調整できる。
[11.任意の工程]
上述した積層位相差フィルムの製造方法においては、上述した第一延伸工程及び第二延伸工程以外に、任意の工程を行ってもよい。
例えば、樹脂積層体を延伸する前に、樹脂積層体を予め加熱する工程(予熱工程)を設けてもよい。樹脂積層体を加熱する手段としては、例えば、オーブン型加熱装置、ラジエーション加熱装置、又は液体中に浸すことなどが挙げられる。中でもオーブン型加熱装置が好ましい。予熱工程における加熱温度は、好ましくは延伸温度−40℃以上、より好ましくは延伸温度−30℃以上であり、好ましくは延伸温度+20℃以下、より好ましくは延伸温度+15℃以下である。ここで延伸温度とは、加熱装置の設定温度を意味する。
また、例えば、第一延伸工程の後、第二延伸工程の後、又は、第一延伸工程の後及び第二延伸工程の後の両方に、延伸したフィルムに固定処理を施してもよい。固定処理における温度は、好ましくは室温以上、より好ましくは延伸温度−40℃以上であり、好ましくは延伸温度+30℃以下、より好ましくは延伸温度+20℃以下である。
さらに、例えば、得られた積層位相差フィルムの表面に、例えばマット層、ハードコート層、反射防止層、防汚層等の任意の層を設ける工程を行ってもよい。
[12.液晶表示装置]
本発明の積層位相差フィルムは、優れた偏光板補償機能を有する。そのため、この積層位相差フィルムは、それ単独で、あるいは他の部材と組み合わせて、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置等の表示装置に適用してもよい。これらの中でも、本発明の積層位相差フィルムは、液晶表示装置に用いて好適である。
液晶表示装置は、通常、それぞれの吸収軸が直交する一対の偏光子(光入射側偏光子と光出射側偏光子)と、前記一対の偏光子の間に設けられた液晶セルとを備える。液晶表示装置に本発明の積層位相差フィルムを設ける場合、前記一対の偏光子の間に積層位相差フィルムを設けうる。この際、積層位相差フィルムは、例えば、液晶セルと光入射側偏光子との間に設けてもよい。また、積層位相差フィルムは、例えば、液晶セルと光出射側偏光子との間に設けてもよい。さらに、積層位相差フィルムは、例えば、液晶セルと光入射側偏光子との間、及び、液晶セルと光出射側偏光子との間の両方に設けてもよい。通常、これら一対の偏光子、積層位相差フィルム及び液晶セルは液晶パネルとして一体に設けられ、この液晶パネルに光源から光を照射することにより、液晶パネルの光出射側にある表示面に画像が表示されるようになっている。この際、通常は、積層位相差フィルムが優れた偏光板補償機能を発揮するため、液晶表示装置の表示面を斜めから見た場合の光漏れを低減することが可能である。また、本発明の積層位相差フィルムを備えた液晶表示装置は、黒表示の際の正面輝度を十分に低くできる。さらに、本発明の積層位相差フィルムは、通常、偏光板補償機能の他にも優れた光学的機能を有するため、液晶表示装置の視認性を更に向上させることが可能である。
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式、バーチカルアラインメント(VA)方式、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)方式、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)方式、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)方式、ツイステッドネマチック(TN)方式、スーパーツイステッドネマチック(STN)方式、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)方式などが挙げられる。中でもインプレーンスイッチング方式及びバーチカルアラインメント方式が好ましく、インプレーンスイッチング方式が特に好ましい。インプレーンスイッチング方式の液晶セルは視野角が広く、上述したように積層位相差フィルムを適用することにより、視野角を更に広げることが可能である。
積層位相差フィルムは、例えば、液晶セルまたは偏光子に貼り合わせてもよい。貼り合わせには公知の接着剤を用いうる。
また、積層位相差フィルムは、1枚を単独で用いてもよく、2枚以上を用いてもよい。
さらに、積層位相差フィルムを液晶表示装置に設ける場合、本発明の積層位相差フィルムと、更に別の位相差フィルムとを組み合わせて用いてもよい。例えば、本発明の積層位相差フィルムをバーチカルアラインメント方式の液晶セルを備えた液晶表示装置に設ける場合、一対の偏光子の間に、本発明の積層位相差フィルムに加えて、視野角特性を改善するための別の位相差フィルムを設けもよい。
[13.その他の事項]
本発明の積層位相差フィルムは、上述した以外の用途に用いることも可能である。
例えば、本発明の積層位相差フィルムの面内レターデーションReを120nm〜160nmとすることによって積層位相差フィルムを1/4波長板とし、この1/4波長板を直線偏光子と組み合わせれば、円偏光板を得ることができる。この際、1/4波長板の面内遅相軸と直線偏光子の吸収軸とのなす角度は、45±2°にすることが好ましい。
また、積層位相差フィルムは、偏光板の保護フィルムとして用いうる。偏光板は、通常、偏光子とその両面に貼り合わせられた保護フィルムとを備える。積層位相差フィルムを偏光子に貼り合わせれば、その積層位相差フィルムを保護フィルムとして用いることができる。この場合、保護フィルムが省略されるので、液晶表示装置の厚みを薄くすることができる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(厚みの測定方法)
フィルムの厚みは、接触式の厚み計を用いて測定した。
また、フィルムに含まれる各層の厚みは、そのフィルムをエポキシ樹脂に包埋したのち、ミクロトーム(大和工業社製「RUB−2100」)を用いてスライスし、走査電子顕微鏡を用いて断面を観察し、測定した。
(レターデーションの測定方法)
積層位相差フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーション、並びに、当該積層位相差フィルムに含まれる各層の面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションの測定は、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製「M−2000U」)を用いて行った。また、測定波長は550nmとした。さらに、測定は、積層位相差フィルムの進行方向に向かって右側端部からの距離が50mmの位置において行った。
特に、積層位相差フィルムに含まれる各層の面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションは、以下のようにして測定した。まず、積層位相差フィルムの表面をプラスチック用研磨布で研磨して、各層を単層にした。この状態で、各層の面内方向であって最大の屈折率を与える方向の屈折率nx、各層の面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率ny、及び、各層の厚み方向の屈折率nzを測定した。これらの屈折率nx、ny及びnzの値と、各層の厚みdとから、各層の面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを算出した。
(遅相軸の方向の測定方法)
前記の分光エリプソメーターにより、積層位相差フィルムの進行方向に向かって右側端部からの距離が50mmの位置における面内遅相軸の方向を測定した。
(正面輝度及び光漏れの評価方法)
図2は、実施例及び比較例で黒表示時の正面輝度及び光漏れの評価のためにシミュレーターにおいて設定した評価系を模式的に示す斜視図である。
液晶表示器用シミュレーター(シンテック社製「LCD MASTER」)を用いて、図2に示すような評価系を設定した。図2に示す評価系において、入射側偏光板(10)、液晶セル(20)、積層位相差フィルム(100)及び出射側偏光板(30)を重ねたものとした。この際、入射側偏光板(10)、液晶セル(20)、樹脂層A2(110)、樹脂層B(120)、樹脂層A1(130)及び出射側偏光板(30)は、この順になるようにした。また、入射側偏光板(10)の吸収軸(10A)と出射側偏光板(30)の吸収軸(30A)とは、厚み方向から見て垂直となるようにした。さらに、入射側偏光板(10)の吸収軸(10A)と樹脂層A2(110)の遅相軸(110A)は、平行になるようにした。また、図示しないバックライトから矢印Lで示すように、入射側偏光板(10)へ厚み方向から光が照射されているものとした。
上述した評価系において、黒表示で、液晶表示装置を正面から見た場合の輝度、及び、液晶表示装置を全方位から見た場合の最大輝度(光漏れ)を、シミュレーションにより測定し、実施例1の値を1とした相対値で表した。
計算には下記の光学部材のデータを使用した。
1.液晶セルのデータとしては、iPad2用液晶セルのデータを用いた。また、この液晶セルのデータは、iPad2を分解し、液晶材料と液晶配向を測定して得られたデータを使用した。
2.偏光板のデータとしては、LCD Master付属のG1029DU(日東社製)のデータを用いた。
3.バックライトのデータとしては、LCD Master 付属のD65のデータを用いた。
[実施例1]
二種三層の共押出成形用のフィルム成形装置(2種類の樹脂により3層からなるフィルムを形成するタイプのもの)を準備した。
固有複屈折が正である樹脂として、ポリカーボネート樹脂(Chi Mei社製「ワンダーライトPC−115」、ガラス転移温度140℃)のペレットを用意した。このペレットを、ダブルフライト型のスクリューを備えた一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。
固有複屈折が負である樹脂として、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(NovaChemicals社製「DylarkD332」、ガラス転移温度130℃)のペレットを用意した。このペレットを、ダブルフライト型のスクリューを備えたもう一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。
溶融された260℃のポリカーボネート樹脂を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、マルチマニホールドダイ(ダイスリップの表面粗さRa=0.1μm)の一方のマニホールドに供給した。また、溶融された260℃のスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通して、他方のマニホールドに供給した。
ポリカーボネート樹脂及びスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂を前記のマルチマニホールドダイから260℃で同時に押し出して、ポリカーボネート樹脂からなる層a1/スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂からなる層b/ポリカーボネート樹脂からなる層a2を備える、3層構成のフィルム状の溶融樹脂を得た。このフィルム状の溶融樹脂を、表面温度130℃に調整された冷却ロールにキャストし、次いで表面温度50℃に調整された2本の冷却ロール間に通して、樹脂積層体を得た。この樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂層(層a1:厚み26μm)と、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂層(層b:厚み287μm)と、ポリカーボネート樹脂層(層a2:厚み6μm)とをこの順に備えていた。得られた樹脂積層体の幅方向両端部を切り除き、幅500mmの樹脂積層体を得た。
こうして得られた樹脂積層体を、テンター横一軸延伸機に供給し、延伸温度154℃、延伸倍率4.5倍で、1分間かけて横方向に延伸した(第一延伸工程)。延伸後、樹脂積層体の幅方向両端部を切り除き、幅を1600mmとした。
続いて、この樹脂積層体を縦一軸延伸機に供給し、延伸温度122℃、延伸倍率1.07倍で、1分間かけて縦方向に延伸して、積層位相差フィルムを得た(第二延伸工程)。得られた積層位相差フィルムの幅方向両端部を切り除き、幅を1300mmとした。
この積層位相差フィルムは、その後、122℃に1分間加熱し、配向状態を固定化した(固定処理)。この際、積層位相差フィルムの幅方向の両端部を固定することにより、その積層位相差フィルムの幅方向の寸法を、縦方向への延伸が終了した直後の寸法の0.995倍に固定しておいた。その後、積層位相差フィルムの幅方向両端部を切り除き、幅を1200mmにした。
このようにして、樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2をこの順に備える積層位相差フィルムを得た。得られた積層位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。
[実施例2〜6及び比較例1〜2]
マルチマニホールドダイの開口幅を変更することにより、樹脂積層体に含まれる層の厚みを下記表1又は表2のように変更した。また、幅方向両端部を切り除いた後のフィルム幅、延伸倍率、延伸温度及び延伸時間を下記表1又は表2のように変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂層A1、樹脂層B及び樹脂層A2をこの順に備える積層位相差フィルムを得た。得られた積層位相差フィルムについて、上述した要領で評価を行った。
[結果]
前記の実施例1〜6並びに比較例1〜2の結果を、下記の表1及び表2に示す。また、表における略称の意味は、以下の通りである。
Re:面内レターデーション
Rth:厚み方向のレターデーション
遅相軸方向:出射側偏光板の吸収軸の方向を90°方向としたときの、各層の面内遅相軸の方向。ここでは、積層位相差フィルムの進行方向に向かって右側端部からの距離が50mmの位置における遅相軸の方向を示す。
Figure 2014149508
Figure 2014149508
[検討]
表1から、実施例1〜6において、黒表示時の正面輝度及び光漏れの両方を小さくできることが分かる。ここで、実施例6は、光漏れの値が比較例1より大きくなっている。しかし、実施例6は、黒表示時の正面輝度については比較例1より大幅に小さくなっている。よって、実施例6は、黒表示時の正面輝度及び光漏れの両方を総合して評価すれば、比較例1よりも優れた結果が得られていることが分かる。
したがって、本発明により、積層位相差フィルムに含まれる各層の面内遅相軸の関係を容易に制御でき、液晶表示装置において黒表示の際に正面輝度及び光漏れを小さくすることが可能であることが確認された。
10 入射側偏光板
10A 入射側偏光板の吸収軸
20 液晶セル
30 出射側偏光板
100 積層位相差フィルム
110 樹脂層A2
110A 樹脂層A2の面内遅相軸
120 樹脂層B
130 樹脂層A1

Claims (6)

  1. 固有複屈折が正である樹脂A1からなる樹脂層A1、固有複屈折が負である樹脂Bからなる樹脂層B、及び、固有複屈折が正である樹脂A2からなる樹脂層A2をこの順に備え、
    前記樹脂層A1と前記樹脂層B、及び、前記樹脂層Bと前記樹脂層A2が、それぞれ直接に接しており、
    樹脂層A1及び樹脂層A2が、ネガティブBプレートであり、
    樹脂層Bが、ポジティブCプレートであり、
    Nz係数が0〜1である、積層位相差フィルム。
  2. 波長550nmで測定した、前記樹脂層A1の面内レターデーションReA1、前記樹脂層A1の厚み方向のレターデーションRthA1、前記樹脂層Bの面内レターデーションRe、前記樹脂層Bの厚み方向のレターデーションRth、前記樹脂層A2の面内レターデーションReA2、及び、前記樹脂層A2の厚み方向のレターデーションRthA2が、
    100nm≦ReA1≦140nm
    80nm≦RthA1≦140nm
    0nm≦Re≦5nm
    −170nm≦Rth≦−110nm
    20nm≦ReA2≦40nm
    10nm≦RthA2≦40nm
    を満たす、請求項1記載の積層位相差フィルム。
  3. 前記樹脂層A1の面内遅相軸と前記樹脂層A2の面内遅相軸とが、平行である、請求項1又は2記載の積層位相差フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層位相差フィルムの製造方法であって、
    前記樹脂A1からなる層a1、前記層a1に直接に接した前記樹脂Bからなる層b、及び、前記層bに直接に接した前記樹脂A2からなる層a2をこの順に備える樹脂積層体を、温度T1で第一の方向に4倍を超える延伸倍率で延伸する第一延伸工程と、
    前記第一延伸工程で延伸された前記樹脂積層体を、前記温度T1より低い温度T2において前記第一の方向に直交する第二の方向へ延伸して、積層位相差フィルムを得る第二延伸工程と、を含む、積層位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記積層位相差フィルムの前記樹脂層A1及び前記樹脂層A2が、前記第一の方向に平行な面内遅相軸を有する、請求項4記載の積層位相差フィルムの製造方法。
  6. 前記第二延伸工程における延伸倍率が、1.01倍以上1.15倍以下である、請求項4又は5記載の積層位相差フィルムの製造方法。
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