JP2014149461A - 電磁波調整素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な色調バランスを有する電磁波調整素子を提供する。
【解決手段】一対の導電性基材2、3と、前記一対の導電性基材2、3の間に配置され、酸化チタンナノロッド9及び分散媒10を含有する酸化チタンナノロッド分散液を含む電磁波調整層8と、を有する電磁波調整素子。
【選択図】図2

Description

本発明は電磁波調整素子に関する。
省エネルギー、プライバシー保護、防眩等の観点から、可視光、近赤外線等の電磁波の透過率又は散乱強度を電気的に制御可能な電磁波調整ガラスへの関心が高まっている。これまで、電磁波調整ガラスとしては、エレクトロクロミック、液晶、粒子懸濁液等を用いたタイプのものがそれぞれ実用化されている。このなかで、エレクトロクロミックを用いたタイプは大面積化が困難であるという課題がある。また、液晶を用いたタイプは光の透過状態と散乱状態とを切り替えるものであり、遮光はできないという課題がある。
それに対して粒子懸濁液を用いたタイプは、電磁波の透過率を粒子の分散状態と、配向状態又は整列状態との変化で制御するものであり、大面積化が可能であることから、自動車、航空機、建築物の窓等への適用が進んでいる。粒子懸濁液を用いた電磁波調整方式として、電圧の印加により、棒状粒子を電場方向に配向させることで電磁波透過率を増大させる方式である。棒状粒子の配向を制御する上記方式として、ヨウ素を含む針状粒子を用いた方法が特許文献1に記載されている。
特開2002−189123号公報
しかしながら、ヨウ素を含む針状粒子を電磁波調整粒子として含有する電磁波調整層を備えた電磁波調整素子では、電磁波調整層の反射光及び透過光の波長ピークが350nm〜450nmにあるため、電磁波調整層の反射光又は透過光により色調バランスが変更されることがある。色調バランスが変更されると、調光装置又は調光フィルムを通して差し込んだ光が、自然光が差し込む場合と比較して自然な色合いが得られない。使用者の嗜好性が高まる中で、色調バランスが良好な調光素子に対する要請がある。
従って本発明は、良好な色調バランスを有する電磁波調整素子を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
[1] 一対の導電性基材と、前記一対の導電性基材の間に配置され、酸化チタンナノロッド及び分散媒を含有する酸化チタンナノロッド分散液を含む電磁波調整層と、を有する電磁波調整素子。
[2] 前記酸化チタンナノロッドの長軸の長さが、透過型電子顕微鏡により観察した際の100個の平均値として20nm以上500nm以下である[1]記載の電磁波調整素子。
[3] 前記酸化チタンナノロッドのアスペクト比(長軸の長さ:短軸の長さ)が3:1〜7:1である[1]又は[2]記載の電磁波調整素子。
[4] 前記酸化チタンナノロッドが、6.0nm以下の粒径を有する金属硫化物粒子を表面に有する[1]〜[3]のいずれか1つに記載の電磁波調整素子。
[5] 前記金属硫化物粒子が、硫化銅、硫化ビスマス及び硫化銀からなる群より選択された少なくとも1つである[4]に記載の電磁波調整素子。
[6] 前記分散媒が、シリコーン樹脂である[1]〜[5]のいずれか1つに記載の電磁波調整素子。
本発明によれば、良好な色調バランスを有する電磁波調整素子が提供される。
本発明に実施例で得られたルチル型酸化チタンナノロッドの構造を示す電子顕微鏡写真である。 本発明に係る電磁波調整素子の一例を説明する概略図である。 実施例B−1で得られた電磁波調整素子の電圧印加時と未印加時での、300nm〜2000nm領域における光吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例B−1で得られた可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドと、参考例b−1及びb−2の酸化チタン粒子の吸収スペクトルを表すグラフである。 実施例C−1及びC−3でそれぞれ得られた可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの380nm〜780nmの領域における核酸反射スペクトルを表すグラフである。 実施例C−3で得られた電磁波調整素子の電圧印加時(5V及び50V)と未印加時での、350nm〜1100nm領域における光吸収スペクトルを示すグラフである。
本発明の電磁波調整素子は、一対の導電性基材と、前記一対の導電性基材の間に配置され、酸化チタンナノロッド及び分散媒を含有する酸化チタンナノロッド分散液を含む電磁波調整層と、を有し、必要に応じてその他の構成部材を有する電磁波調整素子である。
本発明によれば、電磁波調整素子における一対の導電性基材の間に、酸化チタンナノロッド及び分散媒を含有する酸化チタンナノロッド分散液を含む電磁波調整層が配置されているので、良好な色調バランスの電磁波調整素子が得られる。即ち、電磁波調整層中の酸化チタンナノロッド分散液に含まれる酸化チタンナノロッドは、広い範囲の波長の電磁波に吸収を有し、この電磁波波長間での吸収の差が小さいものであることがわかった。このため、電磁波調整素子を透過した光は無彩色を呈し、色調バランスが損なわれない。
また、例えば、前記電磁波調整素子の電磁波調整層に用いられる酸化チタンナノロッドの表面に量子ドットを配置させることにより、量子ドットの種類等に応じて調整可能な波長を選択することができ、所望の吸収特性を有する電磁波調整素子が設計可能となる。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明について説明する。
なお本発明において層又は積層体の平均厚み(厚みの平均値ともいう)は、対象となる層又は積層体の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。層又は積層体の厚みは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。本発明において、層又は積層体の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、積層体の一部を構成する1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、積層体の積層方向に平行な断面を観察することで測定する。
<導電性基材>
導電性基材は、基材の少なくとも一方の面上に導電層を有するものであれば特に制限されない。導電性基材は光透過性であっても光非透過性(光反射性)であってもよい。一般的に導電性基材は光透過性の透明導電性基材であることが好ましい。透明導電性基材を用いて可変式電磁波調整素子を構成することで、例えば可変的に光透過性を調整することができる調光素子を構成することができる。導電性基材が光透過性を有する場合、導電性基材の光透過率は80%以上であることが好ましい。透明導電性基材の光透過率はJIS K7105の全光線透過率の測定法に準拠して測定することができる。
導電性基材を構成する基材は、その少なくとも一方の面上に導電層を形成可能であれば特に制限されず、目的に応じて通常用いられる基材から適宜選択することができる。基材として具体的には、ガラス板、樹脂板、樹脂フィルム等を挙げることができる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムなどが挙げられる。中でも基材は、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れる点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
基材の面上に形成される導電層は、光透過性の導電層であることが好ましい。光透過性の導電層として具体的には、ITO、SnO、In等の金属酸化物膜、有機導電膜、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤーなどを挙げることができる。導電層の厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。一般的に導電層の厚みは10nm〜5,000nmであることが好ましい。導電層の厚みは光学式膜厚計を用いて測定することができる。
導電層の表面抵抗値は特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。一般的に導電層の表面抵抗値は、3Ω/□〜10000Ω/□が好ましい。導電層の表面抵抗値は、4探針法を用いて25℃で測定される。また導電層の表面抵抗値は、ギガヘルツ(GHz)付近の電磁波透過性の観点から、1000Ω/□〜10000Ω/□であることもまた好ましい。ギガヘルツ付近の電磁波透過性を有することで、携帯電話等に使用されている電磁波を透過することができる。
導電性基材は、導電層上に数nm〜1μm程度の厚みの絶縁層(好ましくは透明絶縁層)を更に有していてもよい。絶縁層を更に有することで異物質の混入等により発生し得る短絡現象の発生を抑制することができる。また本発明の可変式電磁波調整素子を反射型の電磁波調整素子に利用する場合(例えば、自動車用リアビューミラー)は、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を導電層として用いてもよい。
また、電磁波調整素子の他の層との密着性を向上させるために、プライマー層を備えた導電性基材を用いてもよい。
<電磁波調整層>
前記電磁波調整層は、一対の導電性基材の間に配置され、酸化チタンナノロッド及び分散媒を含有する酸化チタンナノロッド分散液を含む。前記酸化チタンナノロッド分散液は、必要に応じてその他の成分を含むことができる。前記電磁波調整層は、前記酸化チタンナノロッド分散液を含むことにより形成される。
前記電磁波調整層の厚みは、厚みの均一性保持の観点から、5μm〜300μmであることが好ましく、10μm〜250μmであることがより好ましく、20μm〜200μmであることが更に好ましい。
[酸化チタンナノロッド]
本発明において使用される酸化チタンナノロッドとは、形状異方性を有する酸化チタン粒子を意味する。より具体的には、透過型電子顕微鏡により観察した際の長軸の長さと短軸の長さとの比(アスペクト比)が2:1以上である酸化チタン粒子を酸化チタンナノロッドと定義する。本発明においては、例えばアスペクト比が3:1〜7:1である酸化チタンナノロッドを用いることができる。酸化チタン粒子がナノロッド状ではなく不定形等の形状であると、印加電圧を停止した際に酸化チタン粒子が再分散しにくい傾向がある。酸化チタンナノロッドであれば、電磁波の広い波長域にわたって吸収を有し、また、その吸収の差が小さいため、入射した電磁波が可視光であれば白色の光を透過することができる。
酸化チタンナノロッドの大きさは特に制限されないが、例えば透過型電子顕微鏡により観察した際の100個のナノロッドの長軸の長さの平均値が20nm〜500nmであることが好ましく、25nm〜400nmであることがより好ましく、30m〜300nmであることがさらに好ましい。
酸化チタンナノロッドの結晶形態は、ルチル型であってもアナターゼ型であってもよい。酸化チタンナノロッドの結晶形態がルチル型の場合には、後述する量子ドットを表面に配置しやすい傾向がある。
酸化チタンナノロッドの結晶形態がルチル型であることは、得られた酸化チタンナノロッドの粉末についてX線結晶構造解析を行った際にルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターン(例えば、27.4°付近に見られる(110)面に対応する回折ピークが最も大きい)が観察されることにより判断することができる。
酸化チタンナノロッドの結晶形態がアナターゼ型であることは、得られた酸化チタンナノロッドの粉末についてX線結晶構造解析を行った際に、アナターゼ型の酸化チタンに特徴的な解析パターン(例えば、25.3°付近に見られる(101)面に対応する回折ピークが最も大きい)が観察されることにより判断することができる。
酸化チタンナノロッドは、公知の方法で得たものであってもよい。例えば、酸化チタンナノロッドの合成方法としては、J.Phys.Chem.B,110,2087−2092(2006)に記載されている水熱法が知られている。この水熱法により得られるルチル型酸化チタンナノロッドは(001)面に垂直な方向に成長した形態の酸化チタンナノロッドを得ることができる。アナターゼ型の酸化チタンナノロッドを製造する場合には、後述する1段階光析出法よりも光析出−化学変換法を用いる方が、量子ドットのサイズの制御がしやすいために好ましい。
酸化チタンナノロッドは、(101)面に垂直な方向に成長した構造を有するルチル型の酸化チタンナノロッドであることが電場による微粒子の配向性が容易である点で好ましい。(101)面に垂直な方向に成長した構造のルチル型酸化チタンナノロッドは、以下の製造方法により容易に得ることができる。即ち、上述のように、水熱法により得られるルチル型酸化チタンナノロッドは(001)面に垂直な方向に成長するのに対し、後述する製造方法により得られるルチル型酸化チタンナノロッドは、図1に示すように(101)面に垂直な方向に成長し、(101)面に垂直な方向の長さと(101)面に平行な長さとの比が2:1以上となる。これは酸化チタン結晶の(110)面にポリアルキレングリコールが吸着し、(110)面の成長が抑制されるためと推測される。以下、ルチル型の酸化チタンナノロッドを得るために好適な製造方法について説明する。
(ルチル型酸化チタンナノロッドの製造方法)
ルチル型酸化チタンナノロッドの製造方法は、チタン化合物と、ポリアルキレングリコールと、アンモニアとを含む混合水溶液を加熱することを含み、必要に応じて他の工程を含むことができる。チタン化合物、アンモニア及びポリアルキレングリコールを含む混合水溶液を加熱することにより、ルチル型酸化チタンナノロッドを製造することができる。その理由は明らかではないが、生成する酸化チタンの特定の結晶面に優先的にポリアルキレングリコールが吸着し、その結晶面の成長が抑制されるため、ナノロッド状の酸化チタン粒子が得られると考えられる。
前記混合水溶液は、チタン化合物を含む。チタン化合物の種類は特に制限されず、チタンを含む無機化合物又は有機化合物のいずれも使用できる。チタンを含む無機化合物としては、三塩化チタン(TiCl)、四臭化チタン(TiBr)、硫酸チタニル(TiOSO)、過酸化チタン等を好適に用いることができる。チタンを含む有機化合物としては、チタンアルコキシド、チタンアセテート等が挙げられる。チタン化合物はチタンを含む無機化合物であることが好ましく、三塩化チタン、硫酸チタン及び硫酸チタニルがより好ましい。
チタン化合物の前記混合水溶液中の濃度は特に制限されないが、例えば2.5質量%〜10質量%であることが好ましく、3.5質量%〜7.5質量%であることがより好ましい。チタン化合物の濃度が上記範囲内であると、収率が良好となる傾向にある。
前記混合水溶液は、ポリアルキレングリコールを含む。ポリアルキレングリコールの種類は特に制限されず、同じアルキレングリコール単位の単独重合体であっても、2種以上のアルキレングリコール単位の共重合体であっても、アルキレングリコール単位以外の構造単位を含む共重合体であってもよい。具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。中でも、エチレングリコールの単独重合体が好ましい。ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、ルチル型酸化チタンナノロッドが製造できるものであれば特に制限されず、例えば100〜50,000の範囲から選択でき、100〜20,000であることが好ましい。
前記混合水溶液中のポリアルキレングリコールの濃度は10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜55質量%がより好ましく、20質量%〜50質量%がさらに好ましい。ポリアルキレングリコールの濃度が上記範囲内であると、生成する酸化チタンナノロッドの形状が均一となる傾向にある。
前記混合水溶液は、アンモニアを含む。アンモニアを含むことにより、混合水溶液がアルカリ性となる。混合水溶液をアルカリ性にするために水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等を使用すると、チタン化合物と反応してチタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム等を形成してしまうため、本発明ではアンモニアを使用する。混合水溶液中のアンモニアの濃度はルチル型チタンナノロッドが製造できる濃度であれば特に制限されない。例えば、5質量%〜20質量%であることが好ましく、7.5質量%〜17.5質量%であることがより好ましく、10質量%〜15質量%であることがさらに好ましい。なお、アンモニアの濃度は蒸発により低下するため、加熱直前の状態で上記範囲内であることが好ましい。
前記混合水溶液の加熱の条件は、ルチル型酸化チタンナノロッドが製造できる温度であれば特に制限されない。例えば、混合水溶液の温度が80℃以上となるように行われることが好ましく、90℃以上となるように行われることがより好ましく、混合水溶液の沸点で行われることがさらに好ましい。前記加熱を沸点で行う場合は、還流しながら行うことが好ましい。
前記混合水溶液の加熱時間は150分以上であることが好ましく、160分以上であることがより好ましく、180分以上であることがさらに好ましい。加熱時間が150分以上であると、アモルファス状の酸化チタン粒子の生成が抑制される傾向にある。混合水溶液の加熱は無加圧で行うことができるが、必要に応じて加圧してもよい。
前記混合水溶液は、アンモニアを含む第一の水溶液と、チタン化合物を含む第二の水溶液とを混合して調製してもよい。このようにして混合水溶液を調製することで、ルチル型酸化チタンナノロッドが効率よく生成する傾向にある。
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合して前記混合水溶液を調製する場合、第一の水溶液中のアンモニアの濃度は、10質量%〜40質量%であることが好ましく、15質量%〜35質量%であることがより好ましく、20質量%〜30質量%であることがさらに好ましい。
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合して前記混合水溶液を調製する場合、第二の水溶液中のチタン化合物の濃度は5質量%〜20質量%が好ましく、7質量〜15質量%がより好ましい。チタン化合物の濃度が上記範囲内であると、収率が良好となる傾向にある。
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合して前記混合水溶液を調製する場合、ポリアルキレングリコールは第一の水溶液及び第二の水溶液からなる群より選択される少なくとも一方に含まれていればよい。この場合、第一の水溶液及び第二の水溶液からなる群より選択される少なくとも一方におけるポリアルキレングリコールの濃度は10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜55質量%がより好ましく、20質量%〜50質量%がさらに好ましい。ポリアルキレングリコールの濃度が上記範囲内であると、生成する酸化チタンナノロッドの形状が均一となる傾向にある。
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合して前記混合水溶液を調製する場合、ポリアルキレングリコールは第一の水溶液及び第二の水溶液の両方に含まれていてもよい。この場合、第一の水溶液中のポリアルキレングリコールの濃度と第二の水溶液中のポリアルキレングリコールの濃度との比率は特に制限されないが、例えば3:7〜7:3の範囲から選択してよく、4:6〜6:4の範囲から選択してよい。
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合して前記混合水溶液を調製する場合、第一の水溶液を加熱しながら第二の水溶液を滴下等により添加して調製してもよい。このようにして混合水溶液を調製すると、ルチル型酸化チタンナノロッドが効率よく生成する傾向にある。第一の水溶液を加熱する際は第一の水溶液の温度が80℃以上となるように行うことが好ましく、90℃以上となるように行うことがより好ましく、第一の水溶液の沸点温度となるように行うことがさらに好ましい。
加熱後、生成したルチル型酸化チタンナノロッドをろ別し、蒸留水で洗浄し、乾燥させる。これらの工程は特に制限されず、公知の手段を用いて行うことができる。
このようにして得られたルチル型酸化チタンナノロッドの結晶形態がルチル型であるか否かは、得られたルチル型酸化チタンナノロッドの粉末についてX線結晶構造解析を行った際にルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターン(例えば、27.4°付近に見られる(110)面に対応する回折ピークが最も大きい)が観察されるか否かにより判断することができる。
上記のようにして得られたルチル型酸化チタンナノロッドとは、形状異方性を有するルチル型酸化チタン粒子を意味する。より具体的には、透過型電子顕微鏡により観察した際の長軸の長さと短軸の長さとの比(アスペクト比)が2:1以上である酸化チタン粒子を酸化チタンナノロッドと定義する。前記アスペクト比は製造条件に応じて変化しうるが、例えばアスペクト比が7:1〜3:1であるルチル型酸化チタンナノロッドを製造することができる。
ルチル型酸化チタンナノロッドの大きさは製造条件に応じて変化しうるが、例えば透過型電子顕微鏡により観察した際の100個のナノロッドの長軸の長さの平均値が20nm〜500nmであるルチル型酸化チタンナノロッドを製造することができ、25nm〜400nmであるルチル型酸化チタンナノロッドを製造することができ、30nm〜300nmであるルチル型酸化チタンナノロッドを製造することができる。
酸化チタンナノロッドは、6.0nm以下の粒径を有する金属硫化物粒子を表面に有する酸化チタンナノロッド(以下、「量子ドット担持酸化チタンナノロッド」と称する)であることが好ましい。本明細書において、量子ドット担持酸化チタンナノロッドの表面に存在する6.0nm以下の粒径を有する金属硫化物粒子を、以下、「量子ドット」と称する場合がある。量子ドット担持酸化チタンナノロッドでは、量子ドットの種類によって、酸化チタンナノロッドの吸収特性を変更することが可能となるため、好ましい。これにより、目的に応じた吸収特性を有する電磁波調整層を得ることができる。
金属硫化物粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡で100個観察した際の最大寸法の平均値を意味する。金属硫化物粒子の粒径が6.0nm以下であれば、電磁波吸収能を発揮しやすい傾向があるため好ましい。金属硫化物粒子の粒径は、吸収させる電磁波の波長によって適宜変更可能であり、例えば、0.5nm〜6.0nmであることが好ましく、0.5nm〜5.5nmであることがより好ましい。
量子ドットの大きさは均一であるほど好ましい。従って、量子ドット100個を母集団として計算したときの標準偏差は小さいほど好ましい。
1個の酸化チタンナノロッドが有する量子ドットの数は、酸化チタンナノロッドの大きさに応じて異なるが、酸化チタンナノロッド1個あたり5個以上であることが好ましい。例えば、1個の酸化チタンナノロッドが有する量子ドットの数は5個〜30個とすることができる。
量子ドット担持酸化チタンナノロッドにおける金属硫化物粒子としては、電磁波吸収能があるものであることが好ましい。電磁波吸収能がある金属硫化物粒子としては、硫化銅、硫化ビスマス及び硫化銀からなる群より選択された少なくとも1つであることが広範囲の波長の電磁波を吸収する点で好ましい。前記金属硫化物粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、硫化ストロンチウム等、他の金属硫化物粒子であっても、本発明の効果を妨げない限り用いることができる。
酸化チタンナノロッドの表面に量子ドットを配置する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜用いることができる。又は、後述する近赤外線吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッド及び可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの製造方法として説明する方法を適用することができる。
(近赤外線吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッド)
硫化銅を量子ドット担持酸化チタンナノロッドの量子ドットとして選択した場合に得られる量子ドット担持酸化チタンナノロッドは、近赤外領域(波長800nm〜2000nm)に電磁波吸収を有することができる。硫化銅を量子ドットとする量子ドット担持酸化チタンナノロッドを、特に、「近赤外線吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッド」と称する。
硫化銅粒子の大きさ(粒径)は、6.0nm以下であることが好ましい。量子ドットとしての硫化銅粒子の粒径を6.0nm以下とすることにより、硫化銅量子ドット担持酸化チタンナノロッドは、広い波長域に吸収を有し、加えて、近赤外領域(波長800nm〜2000nm)に強い電磁波吸収を有することができる。硫化銅量子ドットの大きさは、0.5nm〜6.0nmであることが好ましく、0.5nm〜5.5nmであることがより好ましい。硫化銅粒子の大きさ(粒径)は、透過型電子顕微鏡で100個観察した際の最大寸法の平均値を意味する。
ここで、「近赤外領域(波長800nm〜2000nm)に強い電磁波吸収を有する」とは、より具体的には、硫化銅量子ドット担持酸化チタンナノロッドの粉末試料の拡散反射スペクトルを測定し、得られたクベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)関数が、波長800nm〜2000nmの領域で2.5を超える程度の吸収を示すことを意味する。前記クベルカ−ムンク関数は、粉末試料の拡散反射スペクトル測定を行ったとき、透過光スペクトルと定量的な比較が可能な関数である。前記拡散反射スペクトルの測定は、例えば、V−570(商品名、日本分光株式会社製)を用いて行うことができる。
硫化銅量子ドットの大きさは均一であるほど好ましい。従って、量子ドット100個を母集団として計算したときの標準偏差は小さいほど好ましい。
1個の酸化チタンナノロッドが有する硫化銅量子ドットの数は、酸化チタンナノロッドの大きさに応じて異なるが、酸化チタンナノロッド1個あたり5個以上であることが好ましい。例えば、1個の酸化チタンナノロッドが有する硫化銅量子ドットの数は5個〜30個とすることができる。
硫化銅量子ドットの組成はCuSのみからなっても、CuSが含まれていてもよい。CuSは近赤外域に強い吸収を有するが、CuSはCuSよりも近赤外域の吸収が小さいため、CuSの割合が大きいほど好ましい。
(近赤外線吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの製造方法)
近赤外線吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの製造方法は、イオウと、銅(II)イオンと、酸化チタンナノロッドと、溶媒と、を含む組成物に紫外線を照射することを含み、及び、必要に応じてその他の工程を含む。
前記製造方法は、イオウと、銅(II)イオンと、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物中の酸素の少なくとも一部を除去する工程を有することが好ましい。酸素の少なくとも一部を除去することにより、酸素の還元が銅イオンの還元に優先して起こることを抑制でき、銅イオンの還元がより促進される傾向にある。酸素の少なくとも一部を除去する方法は特に制限されない。例えば、前記組成物を不活性ガスでバブリングすることによって行うことができる。不活性ガスのバブリングは、紫外線照射の前に行っても、紫外線照射と同時に行ってもよい。不活性ガスの種類は特に制限されず、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等を用いることができる。
イオウと、銅(II)イオンと、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物に使用する溶媒は特に制限されないが、後述する電流2倍効果を発現する溶媒を含むことが好ましい。溶媒は、イオウを溶解できる範囲であれば電流2倍効果を発現する溶媒とその他の任意の溶媒の混合物であってもよく、電流2倍効果を発現する溶媒のみを含むものであってもよい。その他の溶媒としては、例えば、アセトニトリル、水が挙げられる。
電流2倍効果について説明する。酸化チタンに紫外光を照射すると光励起が起こり、電子eと正孔hが発生する。酸化チタン伝導帯の電子は系中の金属イオンを還元し、酸化チタン価電子帯に生じた正孔hはアルコールを酸化し、ラジカル(エタノールの場合は・COH)を生成する。このラジカルは強い還元力を持っており、酸化チタンの伝導帯に直接電子注入される。この現象を、電流2倍効果(アルコール1分子あたり、励起状態の酸化チタンに2電子を注入できる効果)という。電流2倍効果を発現する溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、ギ酸等が挙げられる。
前記組成物中の酸化チタンナノロッドの濃度は特に制限されない。
前記組成物中のイオウ濃度は0.1mM〜15.0mMが好ましく、0.2mM〜14.0mMがより好ましく、0.3mM〜12.0mMがさらに好ましい。イオウ濃度が15.0mM以下であると、CuS+S→CuSの反応が抑制される傾向にある。イオウ濃度が0.1mM以上であると、硫化銅の析出速度の良好となる傾向にある。
前記組成物中の銅(II)イオン濃度は0.1mM〜15.0mMが好ましく、0.2mM〜14.0mMがより好ましく、0.3mM〜12.0mMがさらに好ましい。銅(II)イオン濃度が15.0mM以下であると、CuS+S→CuSの反応が抑制される傾向にある。銅(II)イオン濃度が0.1mM以上であると、硫化銅の析出速度の低下が良好となる傾向にある。
前記組成物中の銅(II)イオン濃度とイオウ濃度との比率は特に制限されないが、3:1〜1:3であることが好ましく、2:1〜1:2であることがより好ましく、同じであることがさらに好ましい。
銅(II)イオンを前記組成物中に導入するための化合物は特に制限されない。例えば、過塩素酸銅(II)(Cu(ClO・3HO)、硝酸銅(II)(Cu(NO)、硫酸銅(II)(CuSO・5HO)等が好ましく用いられる。
紫外線の照射時間は、2時間を超えないことが好ましい。紫外線照射時間が2時間以内であると、CuSの生成が抑制される傾向にある。また、紫外線の照射時間は15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。紫外線照射時間が15分以上であると硫化銅が充分に析出する傾向にある。
紫外線の波長は、硫化銅粒子が析出できる波長であれば特に制限はない。例えば、320nm〜380nmの範囲を含む紫外線から選択することができる。紫外線の照射強度は特に制限されず、照射時間、前記組成物中の各成分の濃度等を考慮して設定できる。例えば、2.5mWcm−2〜5.5mWcm−2が好ましく、3.0mWcm−2〜5.0mWcm−2がより好ましい。光源は特に制限されず、通常使用されるものから選択できる。紫外線を照射している間の前記組成物の温度は特に制限されない。
紫外線照射後、硫化銅粒子が析出した酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させて近赤外線吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドを得る。これらの工程は特に制限されず、公知の手段を用いて行うことができる。
近赤外線吸収量子ドット担持チタンナノロッドは、後述する光析出−化学変換法を用いても製造することができる。
(可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッド)
硫化銀及び硫化ビスマスの少なくとも一方を量子ドット担持酸化チタンナノロッドの量子ドットとして選択した場合に得られる量子ドット担持酸化チタンナノロッドは、可視光を吸収することができる。硫化銀及び硫化ビスマスの少なくとも一方を量子ドットとする量子ドット担持酸化チタンナノロッドを、特に、「可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッド」と称する。
前記可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドは、可視光領域の広い範囲に吸収を持ち、それらの吸収の大きさの差が小さい。より具体的には、例えば、可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの粉末試料の拡散反射スペクトルを測定し、波長380nm〜780nmの領域において、得られたクベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)関数の最大値の最小値に対する比(最大値/最小値)が2.5以下となる。前記クベルカ−ムンク関数は、粉末試料の拡散反射スペクトルを行ったとき、透過光スペクトルと定量的な比較が可能な関数である。前記拡散反射スペクトルの測定は、例えば、V−570(商品名、日本分光株式会社製)を用いて行うことができる。
可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドにおける量子ドットの大きさ(粒径)は、6.0nm以下であることが好ましい。可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドにおける量子ドットの大きさが6.0nm以下であれば、可視光領域を充分に吸収できる傾向にある。可視光吸収量子ドットの大きさは0.5nm〜6.0nmであることが好ましく、0.5nm〜5.5nmであることがより好ましい。
可視光吸収量子ドットの大きさは均一であるほど好ましい。従って、可視光吸収量子ドット100個を母集団として計算したときの標準偏差は小さいほど好ましい。
1個の酸化チタンナノロッドが有する可視光吸収量子ドットの数は、酸化チタンナノロッドの大きさに応じて異なるが、酸化チタンナノロッド1個あたり5個以上であることが好ましい。例えば、1個の酸化チタンナノロッドが有する可視光吸収量子ドットの数は5個〜30個とすることができる。
(可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの製造方法)
可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの製造方法としては(1)1段階光析出法と(2)光析出−化学変換法との2通りがある。以下、それぞれの方法について説明する。
(1)1段階光析出法
1段階光析出法による可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの製造方法は、イオウと、銀イオン及びビスマスイオンの少なくとも一方と、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物に紫外線を照射することを含み、必要に応じて他の工程を含む。
前記製造方法は、イオウと、銀イオン及びビスマスイオンの少なくとも一方と、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物中の酸素の少なくとも一部を除去する工程を有することが好ましい。酸素の少なくとも一部を除去することにより、酸素の還元が銀イオン又はビスマスイオンの還元に優先して起こることを抑制でき、銀イオン又はビスマスイオンの還元がより促進される傾向にある。酸素の少なくとも一部を除去する方法は特に制限されない。例えば、前記組成物を不活性ガスでバブリングすることによって行うことができる。不活性ガスのバブリングは、紫外線照射の前に行っても、紫外線照射と同時に行ってもよい。不活性ガスの種類は特に制限されず、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等を用いることができる。
イオウと、銀イオン及びビスマスイオンの少なくとも一方と、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物に使用する溶媒は特に制限されないが、前述した電流2倍効果を発現する溶媒を含むことが好ましい。溶媒は、イオウを溶解できる範囲であれば電流2倍効果を発現する溶媒とその他の溶媒の混合物であってもよく、電流2倍効果を発現する溶媒のみを含むものであってもよい。その他の溶媒としては、例えば、アセトニトリル、水等が挙げられる。
前記組成物中の酸化チタンナノロッドの濃度は特に制限されない。
前記組成物中のイオウ濃度は0.1mM〜15.0mMが好ましく、0.2mM〜14.0mMがより好ましく、0.3mM〜12.0mMが更に好ましい。イオウ濃度が15.0mM以下であると、量子ドットの大きさが大きくなりすぎない傾向にある。イオウ濃度が0.1mM以上であると、硫化銀又は硫化ビスマスの析出速度が良好となる傾向にある。
前記組成物中の銀イオン又はビスマスイオンの濃度は0.1mM〜15.0mMが好ましく、0.2mM〜14.0mMがより好ましく、0.3mM〜12.0mMが更に好ましい。銀イオン又はビスマスイオンの濃度が15.0mM以下であると、量子ドットの大きさが大きくなりすぎない傾向にある。銀イオン又はビスマスイオンの濃度が0.1mM以上であると、硫化銀又は硫化ビスマスの析出速度が良好となる傾向にある。
前記組成物中の銀イオンの濃度とイオウ濃度との比率は特に制限されず、3:1〜1:3であることが好ましく、2:1〜1:2であることがより好ましく、同じであることがさらに好ましい。
前記組成物中のビスマスイオンの濃度とイオウ濃度との比率は特に制限されず、3:1〜1:3であることが好ましく、2:1〜1:2であることがより好ましく、同じであることがさらに好ましい。
銀イオンを前記組成物中に導入するための化合物としては、例えば、硝酸銀(AgNO)、酢酸銀(CHCOOAg)、過塩素酸銀(AgClO)等が好ましく用いられる。
ビスマスイオンを前記組成物中に導入するための化合物としては、例えば、硝酸ビスマス(Bi(NO・5HO)等が好ましく用いられる。
銀イオン及びビスマスイオンの少なくとも一方を前記組成物中に導入するための化合物を前記組成物に溶解させる観点から、あらかじめアルキレングリコールに溶解させてもよい。アルキレングリコールの種類は特に制限されず、エチレングリコール、プロピレングリコール等のモノアルキレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の単独重合体又は共重合体であるポリアルキレングリコールなどから選択できる。アルキレングリコールの量は特に制限されない。
紫外線の照射時間は、2時間を超えないことが好ましい。紫外線照射時間が2時間以内であると、得られた量子ドット担持酸化チタンナノロッドの可視光領域における吸収が良好となる傾向にある。また、紫外線の照射時間は15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。紫外線照射時間が15分以上であると硫化銀又は硫化ビスマスが充分に析出する傾向にある。
紫外線の波長は硫化銀又は硫化ビスマスの粒子が析出できれば特に制限はない。例えば、320nm〜380nmの範囲を含む紫外線から選択することができる。紫外線の照射強度は特に制限されず、照射時間又は前記組成物中の各成分の濃度を考慮して設定できる。例えば、2.5mWcm−2〜5.5mWcm−2が好ましく、3.0mWcm−2〜5.0mWcm−2がより好ましい。光源は特に制限されず、通常使用されるものから選択できる。紫外線を照射している間の前記組成物の温度は特に制限されない。
紫外線照射後、硫化銀又は硫化ビスマスの粒子が析出した酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させて可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドを得る。これらの工程は特に制限されず、公知の手段を用いて行うことができる。
(2)光析出−化学変換法
光析出−化学変換法階光析出法による可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドの製造方法は、銀イオン及びビスマスイオンの少なくとも一方と、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物に紫外線を照射して銀又はビスマスが表面に析出した酸化チタンナノロッドを得ることと、前記酸化チタンナノロッドの表面に析出した銀又はビスマスとイオウとを反応させて硫化銀又は硫化ビスマスに変換することと、を含む。
前記方法によれば、1段階光析出法の場合よりも量子ドットの大きさが小さくなり、標準偏差も小さくなる傾向にある。この傾向は、硫化銀量子ドットを担持した酸化チタンナノロッドを製造する場合に特に顕著である。
前記方法では、銀イオン及びビスマスイオンの少なくとも一方と、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物に紫外線を照射する前又は紫外線を照射している間に前記組成物中の酸素の少なくとも一部を除去する工程を有することが好ましい。酸素の少なくとも一部を除去する方法は上述の1段階光析出法で説明したとおりである。
銀イオン及びビスマスイオンの少なくとも一方と、酸化チタンナノロッドと、溶媒とを含む組成物に使用する溶媒の種類及び好ましい態様は、上述の1段階光析出法で説明したとおりである。
前記組成物中の銀イオン又はビスマスイオンの濃度は0.1mM〜15.0mMが好ましく、0.2mM〜14.0mMがより好ましく、0.3mM〜12.0mMが更に好ましい。銀イオン又はビスマスイオンの濃度が15.0mM以下であると、量子ドットの大きさが大きくなりすぎない傾向にある。銀イオン又はビスマスイオンの濃度が0.1mM以上であると、銀又はビスマスの析出速度の低下が良好となる傾向にある。
酸化チタンナノロッドの表面に析出した銀又はビスマスとイオウとを反応させて硫化銀又は硫化ビスマスに変換する方法は特に制限されない。例えば、イオウを、酸化チタンナノロッドを含む組成物に添加して室温で撹拌することで行うことができる。必要に応じて、前記組成物を加熱してもよい。その際の前記組成物中のイオウ濃度は0.1mM〜15.0mMが好ましく、0.2mM〜14.0mMがより好ましく、0.3mM〜12m.0Mが更に好ましい。イオウ濃度が15.0mM以下であると、量子ドットの大きさが大きくなりすぎない傾向にある。イオウ濃度が0.1mM以上であると、硫化銀又は硫化ビスマスの変換速度が良好となる傾向にある。
銀又はビスマスを硫化銀又は硫化ビスマスに変換した後、酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させて可視光吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドを得る。これらの工程は特に制限されず、公知の手段を用いて行うことができる。
[分散媒]
分散媒は、酸化チタンナノロッドを分散液中に分散可能であれば特に制限はないが、広い温度領域で電磁波調整素子の応答速度の差が小さくなる点で、粘度の温度依存性が小さいものであることが好ましい。分散媒としては、ストレートシリコーン樹脂;変性シリコーン樹脂;アクリル樹脂とシリコーン樹脂とからなるグラフト共重合体;等のポリシロキサン構造を有する樹脂を好ましく挙げることができる。
ストレートシリコーン樹脂は、直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。また、ジアルキルシリコーン樹脂、アルキルアリールシリコーン樹脂、ジアリールシリコーン樹脂等のいずれであってもよい。
変性シリコーン樹脂は、直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。また、変性シリコーン樹脂は、主鎖であるポリシロキサン鎖の側鎖に変性基を有する側鎖型、主鎖であるポリシロキサン鎖の両末端に変性基を有する両末端型、主鎖であるポリシロキサン鎖の片末端に変性基を有する片末端型、主鎖であるポリシロキサン鎖の側鎖と末端と両方に変性基を有する側鎖末端型等のいずれであってもよい。変性シリコーン樹脂における変性基は、目的等に応じて適宜選択することができる。変性基としては、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基、シラノール基等を挙げることができる。
アクリル樹脂とシリコーン樹脂とからなるグラフト共重合体は、主鎖がアクリル樹脂に由来する構造の化合物であってもシリコーン樹脂に由来する構造の化合物であってもよい。
分散媒の粘度は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択できる。分散媒の粘度は、電磁波調整素子における電場印加時の応答速度の観点から、25℃において、1mPa・s〜5000mPa・sであることが好ましく、2.5mPa・s〜4000mPa・sであることがより好ましく、5mPa・s〜3000mPa・sであることが更に好ましい。
また分散媒は、電磁波調整素子において広い温度領域で応答速度の差が小さくなる点で、−20℃〜100℃の温度範囲で粘度変化率(%)が、2桁以内であることが好ましい。
なお、分散媒の粘度は、レオメーターMCR301(Anton Paar社製)を用いて、常法により測定できる。
[分散剤]
酸化チタンナノロッド分散液に、分散剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。
分散剤としては、酸化チタンナノロッドの分散安定性の観点から、酸化チタンナノロッド表面に親和性がある構造部位と分散媒に親和性がある構造部位とを有する化合物であることが好ましい。分散媒としてポリシロキサン構造を有する樹脂を用いる場合、分散剤は、酸化チタンナノロッド表面に親和性がある構造部位とポリシロキサン構造を有する構造部位とを有する化合物あることが好ましい。
酸化チタンチタンナノロッド表面に親和性のある構造部位は、酸化チタンチタンナノロッド表面に親和性のある官能基を有することが好ましい。酸化チタンチタンナノロッド表面に親和性のある官能基としては、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基、シラノール基、ニトリル基等を挙げることができる。
分散剤として具体的には、変性シリコーン樹脂、アクリルモノマー由来の構造単位とポリシロキサン構造を有する構造単位とを含む共重合体等を好ましく挙げることができる。
変性シリコーン樹脂は、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型等のいずれであってもよい。変性シリコーン樹脂における変性基は、目的等に応じて適宜選択することができる。変性基としては、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、ヒドロキシ基、ポリオール基、メルカプト基、カルボキシ基、ポリエーテル、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基、シラノール基等が挙げられる。
変性シリコーン樹脂として、具体的にはグリセリン変性シリコーンを挙げることができる。
アクリルモノマー由来の構造単位とポリシロキサン構造を有する構造単位とを含む共重合体は、酸化チタンナノロッド表面に親和性を有する親水性官能基を有するアクリルモノマー由来の構造単位とシリコーン樹脂由来の構造単位とを有する共重合体であることが好ましい。
親水性官能基としては、カルボキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基及びニトリル基などからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
また、シリコーン樹脂由来の構造単位の分子量は、分散媒としてポリシロキサン構造を有する樹脂を用いる場合、相溶性の観点から、分散媒におけるポリシロキサン構造の分子量に近いものであることが好ましい。
[酸化チタンナノロッド分散液]
前記酸化チタンナノロッド分散液における前記酸化チタンナノロッドの含有率は、0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、0.2質量%〜25質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜20質量%であることが更に好ましい。酸化チタンナノロッドの含有率が0.1質量%以上であれば、電圧未印加の状態で電磁波調整素子の遮光性及び着色性に優れる傾向があり、30質量%以下であれば、電圧印加時に透明性に優れる傾向がある。
前記酸化チタンナノロッド分散液における前記分散剤の含有率は、0.01質量%〜60質量%であることが好ましく、0.03質量%〜40質量%であることがより好ましい。前記分散剤の含有率が0.01質量%以上であれば、酸化チタンナノロッドが安定に分散する傾向があり、60質量%以下であれば、酸化チタンナノロッドに作用せずに分散媒中に遊離状態で存在する割合が小さくなる傾向がある。
前記酸化チタンナノロッド分散液の電磁波調整層における含有率は、1質量%〜100質量%(等量)であることが好ましく、2質量%〜80質量%であることがより好ましく、3質量%〜60質量%であることが更に好ましい。前記酸化チタンナノロッド分散液の含有率が1質量%以上であれば、電圧未印加の状態で電磁波調整素子の遮光性及び着色性に優れる傾向があり、100質量%以下であれば、電圧印加時に透明性が優れる傾向がある。
前記酸化チタンナノロッド分散液は、前記電磁波調整層に含まれていればよく、電磁波調整層に含まれる形態については特に制限はない。例えば、前記電磁波調整層は、前記酸化チタンナノロッド分散液のみで形成されたものであってもよく、前記酸化チタンナノロッド分散液をマイクロカプセル化して他の分散媒に分散させたものであってもよい。
<電磁波調整素子の製造方法>
電磁波調整素子を得るためには、まず、前記酸化チタンナノロッド分散液を調製する。酸化チタンナノロッド分散液は、前記酸化チタンナノロッド及びその他の成分を、前記分散媒と組み合わせて混合する。混合は、ホモジナイザー、超音波、ビーズミル、ロッキングミル等の一般的な粒子分散方法を適用でき、これらの方法を単独又は組み合わせて混合することができる。
一対の導電性基材のそれぞれを対向させて配置し、両導電性基材の間に、スペーサービーズ等を含む封着剤又はスペーサービーズ等を塗布し、一対の導電性基材を接着する。これにより、電磁波調整層の厚みに相当する酸化チタンナノロッド分散液の充填空間を形成される。封着剤又はスペーサービーズ等を塗布する導電性基材の位置は、封着剤の場合には導電性基材の端部とすることができ、スペーサービーズ等の場合には、対向させた導電性基材の面の全面又はその一部とすることができる。
前記一対の導電性基材の距離は、5μm〜300μmであることが好ましく、10μm〜250μmであることがより好ましく、20μm〜200μmであることが更に好ましい。一対の導電性基材の距離が5μm以上であれば、厚みの均一性を保持しやすい傾向があり、300μm以下であれば、駆動電圧を小さくできる傾向がある。
前記酸化チタンナノロッド分散液の充填空間には、次いで、前記酸化チタンナノロッド分散液を充填する。充填方法としては特に制限はない。例えば、封着剤で接着していない両方の導電性基材の端部から毛細管現象によって、前記酸化チタンナノロッド分散液を充填することができる。導電性基材の間に前記酸化チタンナノロッド分散液を充填後、接着していない導電性基材の端部を封着剤で接着して封止する。これにより、前記酸化チタンナノロッド分散液は外気から隔離される。他の方法として、例えば、導電性基材を接着する前に、前記酸化チタンナノロッド分散液をバーコート法、真空下での滴下注入法(ODF)等により塗布することができる。前記酸化チタンナノロッド分散液の塗布後に一対の導電性基材を貼り合わせて接着し、封止することができる。
前記酸化チタンナノロッド分散液の塗布には、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工手段を用いることができる。
なお、塗布する際は、必要に応じて、適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、導電性基材上に塗布した後に乾燥することが好ましい。
<電磁波調整素子の構造>
次に、本発明にかかる電磁波調整素子の構造について、図面を参照して説明する。
図2には、本発明の一実施形態としての電磁波調整素子1が示されている。電磁波調整素子1は、導電膜5、7がコーティングされた基材4、6からなる導電性基材2、3を備えている。導電性基材2と導電性基材3との間に、電磁波調整層8が挟持されている。電磁波調整層8には、酸化チタンナノロッド9及び分散媒10を含む酸化チタンナノロッド分散液が含まれている。
また、電磁波調整素子1では、スイッチ11を介して電源12が接続されている。電磁波調整素子1を作動させるための使用電源は、交流で、5ボルト〜200ボルト(実効値)、30Hz〜500kHzの周波数範囲とすることができる。
次に、電磁波調整素子1における電磁波の調整機構について、可視光が電磁波調整素子1に入射する場合を例に説明する。
電磁波調整素子1のスイッチ11が切られ、電界が印加されていない状態では、電磁波調整層8における酸化チタンナノロッド分散液中の酸化チタンナノロッド9は、ブラウン運動により、それぞれランダムな方向を向いている。そのため、電磁波調整素子1への入射光は、酸化チタンナノロッド9に吸収、散乱又は反射され、透過できない(図2参照)。
電磁波調整素子1のスイッチ11を接続して電界を印加すると、電気的双極子モーメントをもつ酸化チタンナノロッド9が、印加された電界によって形成される電場と平行に配列する。そのため入射光は、配列した酸化チタンナノロッド9の間を通過するようになる。このようにして、入射光に対して透明な状態に転換され、視野角度による散乱、又は透明性低下が殆どない状態で入射光を透過させる。
また、このとき、酸化チタンナノロッド9は、波長間の吸収の差を小さく光を吸収するため、透過光は無彩色を呈する。このため、電磁波調整素子1により調整された光は、良好な色調バランスを有することができる。
酸化チタンナノロッド9を、近赤外線吸収量子ドット担持酸化チタンナノロッドとした場合には、波長800nm〜2000nmの近赤外領域の電磁波をよく吸収するため、近赤外線を遮断する種々の用途への利用が期待される。例えば、このような電磁波調整素子1は、高温時は熱線を遮蔽し、低温時は熱線を透過することで冷暖房効率を向上させる窓ガラス等に有効に利用できると考えられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[A.曇ガラス用光調整素子]
<実施例A−1>
(酸化チタンナノロッドの作製)
28質量%のアンモニア水25mlに数平均分子量が200であるポリエチレングリコール(PEG200、日油株式会社製)を20質量%の濃度になるように添加し、30分間攪拌して、第一の水溶液を調製した。また、20質量%の三塩化チタン水溶液(関東化学株式会社製)12.5mlを三塩化チタンの濃度が10質量%となるように純水で希釈した後、25mlとした。この水溶液に、PEG200を濃度が20質量%になるように添加し、30分間攪拌して、第二の水溶液を調製した。
冷却器を備えたフラスコに第一の水溶液を入れ、第一の水溶液を加熱還流しながら第二の水溶液を20分かけて滴下して、混合水溶液を調製した。得られた混合水溶液を、180分加熱還流した。その後、混合水溶液を冷却し、生成した酸化チタン粒子を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。
得られた酸化チタン粒子100個を透過型電子顕微鏡で観察したところ、長軸の長さの平均値は45nm、短軸の長さの平均値は8nmであり、ナノロッド状であることが確認された。また、得られた酸化チタン粒子の粉末X線結晶構造解析を行ったところ、ルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターンが得られた。
(電磁波調整素子A−1の作製)
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、以下のようにして、電磁波調整素子A−1を作製した。
上記で得られた酸化チタンナノロッド5gと、グリセリン変性シリコーン(KF−6100、信越化学工業(株)製)0.5gをトルエンに5質量%で溶解した溶液とを混合し、30分間超音波洗浄器で処理した。エバポレーターでトルエンを留去してから、ポリジメチルシリコーン(KF−96−10cs、信越化学工業(株)製、粘度:10mPa・s)を245g添加して、得られた混合液をホモジナイザーで10分間処理することで、酸化チタンナノロッド分散液A−1を調製した。
ITO(インジウム錫の酸化物)透明導電膜(厚み25nm)がコーティングされている表面電気抵抗値が100±50Ω/□のITOガラス(特注品、ジオマテック(株)製、厚み0.7mm)からなる透明導電性基材の透明導電膜上に、セルギャップが50μmとなるようにスペーサービーズを塗布した。次いで同一の透明導電性基材をもう1枚用意し、スペーサービーズを塗布した面が内側となるように2枚の透明導電性基材を対向させて貼り合わせた。
貼り合わせた透明導電性基材の隙間に上記で調製した酸化チタンナノロッド分散液A−1を接触させて、毛細管現象により、透明導電性基材間の空間に酸化チタンナノロッド分散液を充填し、透明導電性基材の端部をエポキシ樹脂により封止し、電磁波調整素子A−1を得た。
(電磁波調整素子A−1の評価)
以下の評価は、25℃の環境下で行った。
上記で得られた電磁波調整素子A−1について、ITO透明導電膜に交流電源を接続し、電磁波調整素子A−1の交流電圧印加時と未印加時の光透過率を測定した。
測定には、分光式色差計SZ−Σ90(日本電色工業(株)製)を使用し、A光源、視野角2度で測定したY値(%)を光透過率とした。
電磁波調整素子A−1の光透過率は、交流電圧を印加しない場合(未印加時)は0.9%で白色であった。また、50Hzの交流電圧30V(実効値)の電圧を印加したときの電磁波調整素子A−1の光透過率は31%で、50Vの電圧を印加したときの光透過率は40%であった。このように、印加した電界の強度に応じて可視光の透過率を調整できることが分かった。
<実施例A−2>
三塩化チタンの代わりに硫酸チタニル(TiOSO・5HO、純正化学株式会社製)を使用し、硫酸チタニルの濃度が10質量%となるように第二の水溶液を調製したこと以外は実施例A−1と同様にして、酸化チタン粒子を合成した。
得られた酸化チタン粒子100個を透過型電子顕微鏡で観察したところ、長軸の長さの平均値は40nm、短軸の長さの平均値は8nmであり、ナノロッド状であることが確認された。また、得られた酸化チタン粒子の粉末X線結晶構造解析を行ったところ、ルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターンが得られた。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例A−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液A−2を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液A−2を用いて、電磁波調整素子A−1と同様に電磁波調整素子A−2を得た。電磁波調整素子A−2について、電磁波調整素子A−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
<実施例A−3>
PEG200の代わりに数平均分子量が400であるポリエチレングリコール(PEG400、日油株式会社製)を使用し、PEG400の濃度がそれぞれ20質量%となるように第一の水溶液及び第二の水溶液を調製したこと以外は実施例A−1と同様にして、酸化チタン粒子を合成した。
得られた酸化チタン粒子100個を透過型電子顕微鏡で観察したところ、長軸の長さの平均値は42nm、短軸の長さの平均値は9nmであり、ナノロッド状であることが確認された。また、得られた酸化チタン粒子の粉末X線結晶構造解析を行ったところ、ルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターンが得られた。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例A−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液A−3を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液A−3を用いて、電磁波調整素子A−1と同様に電磁波調整素子A−3を得た。電磁波調整素子A−3について、電磁波調整素子A−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
<実施例A−4>
PEG200の代わりに数平均分子量が20,000であるポリエチレングリコール(PEG20,000、日油株式会社製)を使用し、PEG20,000の濃度がそれぞれ20質量%となるように第一の水溶液及び第二の水溶液を調製したこと以外は実施例A−1と同様にして、酸化チタン粒子を合成した。
得られた酸化チタン粒子100個を透過型電子顕微鏡で観察したところ、長軸の長さの平均値は68nm、短軸の長さの平均値は10nmであり、ナノロッド状であることが確認された。また、得られた酸化チタン粒子の粉末X線結晶構造解析を行ったところ、ルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターンが得られた。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例A−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液A−4を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液A−4を用いて、電磁波調整素子A−1と同様に電磁波調整素子A−4を得た。電磁波調整素子A−4について、電磁波調整素子A−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
[B.近赤外線吸収電磁波調整素子]
<実施例B−1>
(酸化チタンナノロッドの作製)
28質量%のアンモニア水25mlに数平均分子量が200であるポリエチレングリコール(PEG200、日油株式会社製)を20質量%の濃度になるように添加し、30分間攪拌して、第一の水溶液を調製した。また、20質量%の三塩化チタン水溶液(関東化学株式会社製)12.5mlを三塩化チタンの濃度が10質量%となるように純水で希釈して25mlとした。この水溶液に、PEG200を濃度が20質量%になるように添加し、30分間攪拌して、第二の水溶液を調製した。
冷却器を備えたフラスコに第一の水溶液を入れ、加熱還流しながら第二の水溶液を20分かけて滴下して、混合水溶液を調製した。得られた混合水溶液をさらに180分加熱還流した。その後、混合水溶液を冷却し、生成した酸化チタン粒子を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。
得られた酸化チタン粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、酸化チタン粒子100個の長軸の長さの平均値は45nm、短軸の長さの平均値は8nmであり、ナノロッド状であることが確認された。また、得られた酸化チタン粒子の粉末X線結晶構造解析を行ったところ、ルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターンが得られた。
(硫化銅量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
250mlのエチルアルコールにイオウ(和光純薬工業株式会社製)を1.37mMの濃度となるように溶解し、過塩素酸銅(II)(Cu(ClO・3HO)(純正化学株式会社製)を1.37mMの濃度となるように溶解し、さらに上記方法で作製した酸化チタンナノロッドを0.5g添加した。
不活性ガスをバブリングするための導入管を備え、周囲が恒温水で覆われ、さらに容器の開口部以外からの光の入射を遮断するための箱に入った容器に上記反応溶液を入れた。開口部を石英板で覆った状態で、25℃で反応溶液にアルゴンガスをバブリングしながら紫外線を1時間照射した。紫外線の照射は、容器の開口部の上部から行った。紫外線の光源としては、水銀ランプ(株式会社東芝製、H400−P、λex>320nm、I320−400nm=3.2mWcm−2)を使用した。
紫外線の照射後、硫化銅が粒子状に表面に析出した酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた。酸化チタンナノロッド上に析出した硫化銅粒子100個の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、その平均粒径は1.9nmであり、その標準偏差は2.0nmであった。以上より、酸化チタンナノロッド上に硫化銅量子ドットが形成されていることが確認された。
(電磁波調整素子Bの作製)
上記で得られた硫化銅量子ドット担持酸化チタンナノロッドを用いて、以下のようにして、電磁波調整素子B−1を作製した。
上記で得られた硫化銅量子ドット担持酸化チタンナノロッド5gと、グリセリン変性シリコーン(KF−6100、信越化学工業(株)製)0.5gをトルエンに5質量%で溶解した溶液とを混合し、30分間超音波洗浄器で処理した。エバポレーターでトルエンを留去してから、ジメチルシリコーン(KF−96−10cs、信越化学工業(株)製、粘度:10mPa・s)を245g添加して、得られた混合液をホモジナイザーで10分間処理することで、酸化チタンナノロッド分散液B−1を調製した。
酸化チタンナノロッドの代わりに硫化銅量子ドット担持酸化チタンナノロッドを用いたことを除いては実施例A−1における電磁波調整素子A−1と同様にして電磁波調整素子B−1を得た。
(電磁波調整素子B−1の評価)
上記で得られた電磁波調整素子B−1を用いて近赤外線の吸収について、以下のようにして評価した。
電磁波調整素子B−1のITO透明導電膜に電源を接続し、50Hzの交流電圧50V(実効値)の電圧を印加した時と、交流電圧を印加しない場合(未印加時)の300〜2000nmの領域のおける光吸収スペクトルを紫外可視分光光度計V−570(日本分光株式会社製)を用いて測定した。結果を図3に示す。図3に示されるように、本実施例の電磁波調整素子B−1は、電圧の印加により近赤外領域の光吸収を調節できることがわかった。
<実施例B−2>
紫外線照射時間を2時間にしたことを除いては実施例B−1と同様にして、硫化銅が粒子状に表面に析出した酸化チタンナノロッドを作製した。透過型電子顕微鏡で観察したところ、酸化チタンナノロッド上に析出した硫化銅粒子の100個の平均粒径は2.6nmであり、その標準偏差は0.7nmであった。以上より、酸化チタンナノロッド上に硫化銅量子ドットが形成されていることが確認された。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例B−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液B−2を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液B−2を用いて、電磁波調整素子B−1と同様に電磁波調整素子B−2を得た。電磁波調整素子B−2について、電磁波調整素子B−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
<実施例B−3>
過塩素酸銅の代わりに硝酸銅(II)(Cu(NO・3HO)(純正化学株式会社製)を1.37mMの濃度となる量で用いたことを除いては実施例1と同様にして、硫化銅が粒子状に表面に析出した酸化チタンナノロッドを作製した。透過型電子顕微鏡で観察したところ、酸化チタンナノロッド上に析出した硫化銅粒子の100個の平均粒径は3.0nmであり、その標準偏差は2.1nmであった。以上より、酸化チタンナノロッド上に硫化銅量子ドットが形成されていることが確認された。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例B−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液B−3を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液B−3を用いて、電磁波調整素子B−1と同様に電磁波調整素子B−3を得た。電磁波調整素子B−3について、電磁波調整素子B−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
<参考評価>
(参考例b−1)
酸化チタンナノロッドの代わりに、ルチル型酸化チタン粒子(不定形、粒径80nm、MT700−B、テイカ株式会社製)を用いたことを除いては実施例1と同様にして、硫化銅が粒子状に表面に析出した酸化チタン粒子を作製した。透過型電子顕微鏡で観察したところ、酸化チタンナノロッド上に析出した硫化銅粒子の100個の平均粒径は30nm以上であり、硫化銅量子ドットは形成されなかった。
(参考例b−2)
酸化チタンナノロッドの代わりに、アナターゼ型酸化チタン粒子(不定形、粒径150nm、A−100、石原産業株式会社製)を用いたことを除いては実施例B−1と同様にして、硫化銅が粒子状に表面に析出した酸化チタン粒子を作製した。透過型電子顕微鏡で観察したところ、酸化チタンナノロッド上に析出した硫化銅粒子の100個の平均粒径は50nm以上であり、硫化銅量子ドットは形成されなかった。
(近赤外領域における吸収の評価)
実施例B−1で作製した硫化銅粒子を表面に有する酸化チタンナノロッドと、参考例b−1及び参考例b−2で作製した硫化銅粒子を表面に有する酸化チタン粒子との、800nm〜2000nmの近赤外領域における光吸収スペクトルを比較した。具体的には、V−570(商品名、日本分光株式会社製)を用いて拡散反射スペクトルを測定した。その結果、図4に示すように、硫化銅粒子量子ドットが形成された実施例B−1で作製した酸化チタンナノロッドがもっとも強く近赤外領域の光を吸収していることが分かった。
[C.可視光吸収電磁波調整素子]
<実施例C−1>
(1段階光析出法による硫化銀量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
28質量%のアンモニア水25mlに数平均分子量が200であるポリエチレングリコール(PEG200、日油株式会社製)を20質量%の濃度になるように添加し、30分間攪拌して、第一の水溶液を調製した。また、20質量%の三塩化チタン水溶液(関東化学株式会社製)12.5mlを三塩化チタンの濃度が10質量%となるように純水で希釈して25mlとした。この水溶液に、PEG200を濃度が20質量%になるように添加し、30分間攪拌して、第二の水溶液を調製した。
冷却器を備えたフラスコに第一の水溶液を入れ、加熱還流しながら第二の水溶液を20分かけて滴下して、混合水溶液を調製した。得られた混合水溶液をさらに180分加熱還流した。その後、混合水溶液を冷却し、生成した酸化チタン粒子を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。
得られた酸化チタン粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、酸化チタン粒子100個の長軸の長さの平均値は45nm、短軸の長さの平均値は8nmであり、ナノロッド状であることが確認された。また、得られた酸化チタン粒子の粉末X線結晶構造解析を行ったところ、ルチル型の酸化チタンに特徴的な回折パターンが得られた。
250mlのアセトニトリルにイオウ(和光純薬工業株式会社製)を1.38mMの濃度となるように溶解し、硝酸銀(関東化学株式会社製)を2.76mMの濃度となるように溶解し、上記方法で作製した酸化チタンナノロッドを0.5g添加し、エチルアルコールを10ml添加して、組成物を調製した。
不活性ガスをバブリングするための導入管を備え、周囲が恒温水で覆われ、さらに容器の開口部以外からの光の入射を遮断するための箱に入った容器に上記組成物を入れた。開口部を石英板で覆った状態で、25℃で組成物にアルゴンガスを30分間バブリングした。その後、メルカプト酢酸を0.05mMの濃度となるように添加した。その後、25℃で紫外線を2時間照射した。紫外線の照射は、容器の開口部の上部から行った。紫外線の光源としては、水銀ランプ(株式会社東芝製、商品名H400−P、λex>320nm、I310−410nm=3.6mWcm−2)を使用した。
紫外線の照射後、硫化銀が粒子状に表面に析出した酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた。酸化チタンナノロッド上に析出した硫化銀粒子100個の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径は5.4nmであり、標準偏差は6.7nmであった。
(可視光領域における吸収の評価)
上記で作製した可視光吸収量子ドット担持酸化チタンロッドの380nm〜780nmの領域における拡散反射スペクトルを比較した。具体的にはV−570(商品名、日本分光株式会社製)を用いて拡散反射スペクトルを測定し、得られたクベルカ−ムンク関数を図5に示す。
(電磁波調整素子C−1の作製)
上記で得られた硫化銀量子ドット担持酸化チタンナノロッドを用いて、以下のように電磁波調整素子C−1を作製した。
上記でで得られた硫化銀量子ドット担持酸化チタンナノロッド5gと、グリセリン変性シリコーン(KF−6100、信越化学工業(株)製)0.5gをトルエンに5質量%で溶解した溶液とを混合し、30分間超音波洗浄器で処理した。エバポレーターでトルエンを留去してから、ジメチルシリコーン(KF−96−10cs、信越化学工業(株)製、粘度:10mPa・s)を245g添加して、得られた混合液をホモジナイザーで10分間処理することで、酸化チタンナノロッド分散液C−1を調整した。
酸化チタンナノロッド分散液A−1の代わりに上記で得られた硫化銀量子ドット担持酸化チタンナノロッド分散液C−1を用いたことを除いては、実施例A−1における電磁波調整素子A−1と同様にして、電磁波調整素子C−1を得た。
(電磁波調整素子C−1の評価)
電磁波調整素子C−1のITO透明導電膜に電源を接続し、50Hzの交流電圧5V(実効値)及び50Vの電圧を印加した時と、交流電圧を印加しない場合(未印加時)の350〜1100nmの領域のおける光吸収スペクトルを紫外可視分光光度計V−570(日本分光株式会社製)を用いて測定した。本実施例の電磁波調整素子C−1は、電圧の印加により可視光領域の光吸収を調節できることがわかった。
<実施例C−2>
(光析出−化学変換法による硫化銀量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
45mlのアセトニトリルに硝酸銀(関東化学株式会社製)を3.07mMの濃度となるように溶解し、酸化チタンナノロッド(テイカ株式会社製、商品名AMT−400、大きさ100nm、アナターゼ型)を0.1g添加し、エチルアルコールを2ml添加した。
実施例C−1と同様の容器に上記組成物を入れ、開口部を石英板で覆った状態で、25℃で組成物にアルゴンガスを30分間バブリングした。その後、25℃で紫外線を実施例1と同様の方法で2時間照射した。このようにして、銀粒子が表面に析出した酸化チタンナノロッドを得た。
銀粒子が表面に析出した酸化チタンナノロッドを含む組成物にイオウ(和光純薬工業株式会社製)を1.38mMの濃度となるように溶解し、エチルアルコールを5ml添加し、室温で15分間撹拌して、酸化チタンナノロッド上の銀を硫化銀に変換した。その後、硫化銀粒子を表面に有する酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた。酸化チタンナノロッド上の硫化銀粒子100の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径は1.2nmであり、標準偏差は0.3nmであった。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例C−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液C−2を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液C−2を用いて、電磁波調整素子C−1と同様に電磁波調整素子C−2を得た。電磁波調整素子C−2について、電磁波調整素子C−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
<実施例C−3>
(光析出−化学変換法による硫化銀量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
120mlのアセトニトリルに硝酸銀(関東化学株式会社製)を2.76mMの濃度となるように溶解し、実施例C−1と同様の方法で作製した酸化チタンナノロッドを0.5g添加し、エチルアルコールを10ml添加した。
実施例C−1と同様の容器に上記組成物を入れ、開口部を石英板で覆った状態で、25℃で組成物にアルゴンガスを30分間バブリングした。その後、25℃で紫外線を実施例1と同様の方法で2時間照射した。このようにして、銀粒子が表面に析出した酸化チタンナノロッドを得た。
銀粒子が表面に析出した酸化チタンナノロッドを含む組成物を4つ口のガラス製フラスコに移し、イオウ(和光純薬工業株式会社製)を1.38mMの濃度となるように溶解し、エチルアルコールを120ml添加し、外温350Kで10分間加熱還流して、酸化チタンナノロッド上の銀を硫化銀に変換した。その後、硫化銀粒子を表面に有する酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた。酸化チタンナノロッド上の硫化銀粒子100個の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径は2.1nmであり、標準偏差は0.7nmであった。
上記で作製した可視光吸収量子ドット担持酸化チタンロッドの380nm〜780nmの領域における拡散反射スペクトルを比較した。具体的にはV−570(商品名、日本分光株式会社製)を用いて拡散反射スペクトルを測定し、得られたクベルカ−ムンク関数を図5に示す。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例C−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液C−3を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液C−3を用いて、電磁波調整素子C−1と同様に電磁波調整素子C−3を得た。電磁波調整素子C−3について、電磁波調整素子C−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。結果を図6に示す。
<実施例C−4>
(1段階光析出法による硫化ビスマス量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
135mlのエチルアルコールにイオウ(和光純薬工業株式会社製)を4.14mMの濃度となるように溶解し、硝酸ビスマス(純正化学株式会社製)を0.276mMの濃度となるように溶解した。硝酸ビスマスは、エチレングリコール15mlにあらかじめ溶解させた。さらに、実施例C−1と同様の方法で作製した酸化チタンナノロッドを0.5g添加した。
実施例C−1と同様の容器に上記組成物を入れ、開口部を石英板で覆った状態で、組成物にアルゴンガスを30分間バブリングした。その後、実施例1と同様の方法で紫外線を30分間照射した。
紫外線の照射後、硫化ビスマスが粒子状に表面に析出した酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた。酸化チタンナノロッド上に析出した硫化ビスマス粒子100個の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、その平均粒径は2.1nmであり、その標準偏差は0.45nmであった。以上より、酸化チタンナノロッド上に可視光吸収量子ドットが形成されていることが確認された。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例C−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液C−4を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液C−4を用いて、電磁波調整素子C−1と同様に電磁波調整素子C−4得た。電磁波調整素子C−4について、電磁波調整素子C−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
<実施例C−5>
(1段階光析出法による硫化ビスマス量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
硝酸ビスマス(純正化学株式会社製)の濃度を2.76mMとした以外は実施例C−4と同様にして組成物を調製した。実施例C−1と同様の容器に上記組成物を入れ、開口部を石英板で覆った状態で、25℃で組成物にアルゴンガスを30分間バブリングした。その後、実施例1と同様の方法で、25℃で紫外線を5〜120分間照射した。
紫外線の照射後、硫化ビスマスが粒子状に表面に析出した酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた。酸化チタンナノロッド上に析出した硫化ビスマス粒子100個の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、紫外線照射を5分間としたときは平均粒径が0.9nm、標準偏差が0.28nmであった。紫外線照射を10分間としたときは平均粒径が1.0nm、標準偏差が0.37nmであった。紫外線照射を15分間としたときは平均粒径が1.2nm、標準偏差が0.41nmであった。紫外線照射を30分間としたときは平均粒径が2.5nm、標準偏差が0.84nmであった。紫外線照射を60分間としたときは平均粒径が3.3nm、標準偏差が2.77nmであった。紫外線照射を120分間としたときは平均粒径が3.4nm、標準偏差が3.72nmであった。
上記で得られた各酸化チタンナノロッドをそれぞれ用いて、実施例C−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液をそれぞれ調製した。得られた各酸化チタンナノロッド分散液を用いて、それぞれ、電磁波調整素子C−1と同様に電磁波調整素子を得た。各電磁波調整素子について、電磁波調整素子C−1と同様の評価したところ、いずれの電磁波調整素子においても同様の動作を確認できた。
<実施例C−6>
(光析出−化学変換法による硫化ビスマス量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
10mlのエチルアルコールに硝酸ビスマス(純正化学株式会社製)を0.414mMの濃度となるように溶解し、実施例C−1と同様の方法で作製した酸化チタンナノロッドを0.167g添加した。硝酸ビスマスは、エチレングリコール5mlにあらかじめ溶解した。
実施例C−1と同様の容器に上記組成物を入れ、開口部を石英板で覆った状態で、25℃で組成物にアルゴンガスを30分間バブリングした。その後、実施例C−1と同様の方法で25℃で紫外線を30分〜2時間照射した。このようにして、ビスマス粒子が表面に析出した酸化チタンナノロッドを得た。
ビスマス粒子が表面に析出した酸化チタンナノロッドを含む組成物にイオウ(和光純薬工業株式会社製)を0.621mMの濃度となるように溶解し、エチルアルコールを50ml添加し、室温で15分間撹拌して、酸化チタンナノロッド上のビスマスを硫化ビスマスに変換した。その後、硫化ビスマス粒子を表面に有する酸化チタンナノロッドを濾過し、蒸留水で洗浄し、乾燥させた。酸化チタンナノロッド上の硫化ビスマス粒子100個の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、紫外線照射を30分間としたときは平均粒径が2.4nm、標準偏差が1.16nmであった。紫外線照射を2時間としたときは平均粒径が2.9nm、標準偏差が2.69nmであった。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例C−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液C−6を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液C−6を用いて、電磁波調整素子C−1と同様に電磁波調整素子C−6を得た。電磁波調整素子C−6について、電磁波調整素子C−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
<実施例C−7>
(光析出−化学変換法による硫化ビスマス量子ドット担持酸化チタンナノロッドの作製)
ビスマス粒子が表面に析出した酸化チタンナノロッドを含む組成物を室温で15分間撹拌する代わりに外温350Kで15分間〜240分間加熱還流した以外は、実施例C−6と同様にして、硫化ビスマス粒子を表面に有する酸化チタンナノロッドを作製した。酸化チタンナノロッド上の硫化ビスマス粒子100個の大きさを透過型電子顕微鏡で観察したところ、加熱還流15分後の平均粒径は2.0nmであり、標準偏差は0.30nmであった。加熱還流240分後の平均粒径は2.8nmであり、標準偏差は0.44nmであった。
上記で得られた酸化チタンナノロッドを用いて、実施例C−1と同様にして、酸化チタンナノロッド分散液C−7を調製した。得られた酸化チタンナノロッド分散液C−7を用いて、電磁波調整素子C−1と同様に電磁波調整素子C−2を得た。電磁波調整素子C−7について、電磁波調整素子C−1と同様の評価したところ、同様の動作を確認できた。
1 :電磁波調整素子
2、3:導電性基材
4、6:基材、
5、7:導電膜
8 :電磁波調整層
9 :酸化チタンナノロッド
10 :分散媒

Claims (6)

  1. 一対の導電性基材と、
    前記一対の導電性基材の間に配置され、酸化チタンナノロッド及び分散媒を含有する酸化チタンナノロッド分散液を含む電磁波調整層と、
    を有する電磁波調整素子。
  2. 前記酸化チタンナノロッドの長軸の長さが、透過型電子顕微鏡により観察した際の100個の平均値として20nm以上500nm以下である請求項1記載の電磁波調整素子。
  3. 前記酸化チタンナノロッドのアスペクト比(長軸の長さ:短軸の長さ)が3:1〜7:1である請求項1又は請求項2記載の電磁波調整素子。
  4. 前記酸化チタンナノロッドが、6.0nm以下の粒径を有する金属硫化物粒子を表面に有する請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の電磁波調整素子。
  5. 前記金属硫化物粒子が、硫化銅、硫化ビスマス及び硫化銀からなる群より選択された少なくとも1つである請求項4記載の電磁波調整素子。
  6. 前記分散媒が、シリコーン樹脂である請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の電磁波調整素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN116360143A (zh) * 2023-06-01 2023-06-30 合肥精卓光电有限责任公司 一种复合型多态调光器件及其制备方法

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