JP2014145293A - 風車 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】縦軸風車1は、十字形状の支持アーム120を備えた上下一組の支持部材100を備えている。上下で対になる各支持アーム120には、羽200が取付けられている。羽200は断面翼型であり、風を受けると揚力を良く生じる。羽200の断面における空力中心と支持アーム120の先端には、コイルバネ291の一端と他端がそれぞれ固定されている。
【選択図】図11
Description
一般に横軸風車は、その軸が風の方向に対向する向きでその回転数が最大となる。したがって、横軸風車は、風の向きによってはその回転数が落ちるのが通常である。それを嫌うのであれば、その時点の風から得られる回転数を最大に保つためにその軸の向きを風に対向する方向に変化させる制御機構を設けることが必要となる。
対して、縦軸風車は、その軸が地面に対して垂直であり、且つ風が水平に吹くと仮定した場合には、風の方向が変化してもその回転数は変わらない。つまり、縦軸風車は、その軸の方向を変えるための制御機構を持たずとも、その回転数が風の方向の変化に依存しない。
当初本願発明者は、特に風力発電に風車を用いることを想定していたため、風の方向の変化によらず、その時点における風から得られる最大出力での発電を常に行え、且つそのための制御機構が不要でその分安価であるという理由から、縦軸風車に的を絞った研究を行なっていた。
まず第1に、初動が悪いという点である。これは、風がない状態から風がだんだん強くなっていくときに、なかなか縦軸風車が回転を初めないということを意味する。現在主流の横軸風車で風力発電を行う場合、風力発電が事業ベースに乗るためには年間の平均風速がおよそ6m/s以上でないとならないということが知られている。それ故風力発電を行える場所は自ずと限られてくる。より小さな風速で回転を始める縦軸風車が存在すれば風力発電をより効率的なものとすることができ、またより様々な場所で実用可能となる。
また第2に強風に弱いという点である。縦軸風車はその回転に大きな風速の風が必要ではあるものの、風速が大きくなりすぎると破損が生じる可能性がある。横軸風車の場合も同様であるが、一般的には、大きな風速の風に襲われるときには縦軸風車の回転を強制的に止めるという対応が採られているが、それでもなお風速数十mを超える台風が直撃した場合などには、縦軸風車の破損が生じるおそれを否定出来ない。
本願発明による縦軸風車は、回転の軸の両端に位置するとともに、そのそれぞれが複数の支持部を有する支持部材と、前記支持部材の支持部のそれぞれにその両端の被支持部を支持された、風を受ける複数枚の板状の羽と、を有する縦軸風車である。
そして、前記羽のそれぞれは、それが有するその両端の支持部を結ぶその幅方向の前側寄りにある線分周りの両方向の回転である自転を行えるように、且つ、前記羽は、前記羽が一定の強さ以上の風を受けたときに、前記軸周りの一方向の回転である公転を前記支持部材とともに行うようになっている。また、この縦軸風車は、前記羽のそれぞれが自転を行ったときに前記羽を元の位置(一般的には、羽が公転する円軌道上の接線に沿う方向)に戻す力を前記羽に与える弾性体を有している。
縦軸風車は、支持部材と羽とを備えており、羽は、よく知られているように支持部材とともに回転するようになっている。それに加えて、本願発明における縦軸風車の羽は、支持部材に対して相対的に回転するようになっている。この出願では、惑星の公転と自転に擬えて、羽の前者の回転を公転と、羽の後者の回転を自転と呼ぶこととしているが、羽の自転は従来の縦軸風車にはないものである。羽の自転が可能なことにより、本願の縦軸風車は、初動が良く、また、強風に強くなる。その理由は以下の通りである。
羽が風を受けて生み出す支持部材を回転させるための推進力は、羽の風向きに対する角度に依存する。縦型風車は、一般に複数枚の羽を持っているのが普通であるが、公転する羽のそれぞれを見た場合、ある羽が風向きに対して適切な位置乃至適切な角度にある場合(つまり、その羽が、支持部材とともに公転を行うのに必要な力である推進力を生むのに適切な位置乃至角度にある場合)、他の羽は推進力を生むのに適切な位置乃至適切な角度にない。縦型風車でも、羽の回転が始まってしまえば、羽は風向きに対して次々に適切な位置或いは適切な角度を採り、次々に推力を生じるが、羽の回転が始まるまではそのようなことは生じない。したがって、羽が自転を行なわない一般的な縦軸風車は、風速が小さい場合に回転し続けることも難しいが、動き出すことも難しいから、なお初動が悪くなりがちである。
また、板状の羽に風があたっても、次のような場合には羽に公転を起こさせる推力が生じない。
板状の羽に風が当たっている状態は、言い換えれば、流れのある空気という流体の中に板状の羽が存在する状態である。ある物体が流体の中に存在する場合、その物体には一般に、流体の流れに沿う方向の力である抗力と、流体の流れに垂直な方向の力である揚力とが生じる。板状の羽が普通の板の場合にも抗力と揚力が生じ、板状の羽が断面翼型であれば抗力とより大きな揚力とが生じることになる。縦型風車では一般に、この抗力と揚力が羽を自転させる力である推力となる。
板状の羽が、自転を行なわない場合、羽の幅方向が風上に対して完全に正対する場合には、羽には揚力が生じず、公転の半径方向の抗力のみが生じる。つまり、羽が風向きとの関係で上述の位置にある場合には、羽は風を受けても公転方向に回転するために必要な方向の力である推進力を生じないか、少なくとも殆ど生じない。
このような板状の羽が、その幅方向の面が風上に対して完全に正対している場合を考える。この場合にも羽には、揚力が働かない。他方、羽の風を受けている面を微細な区画に区分して考えると、各区画には風による抗力が生じる。抗力の向きは風向きに同じである。ところが本願発明の縦軸風車における板状の羽は、幅方向の前側よりにある線分の前側の面積が小さく、その線分の後側の面積が大きいことから、その線分の前側の各区画で生じる抗力を積分して得られるトルクは、その線分の後側の各区分で生じる抗力を積分して得られるトルクよりも小さくなる。それにより、板状の羽は、弾性体による力に抗して、その前側が風上側に、後側が風下側に向かうように、上記線分を軸にして弾性体による力(トルク)と、その線分の後側の各区画で生じる抗力を積分して得られるトルクから、その線分の前側の各区分で生じる抗力を積分して得られるトルクを減じたトルクとが釣り合うところまで、回転する(自転を行う)ことになる。それにより、風は羽の後側に流れるようになる。その反作用により、羽の上記線分の部分には、公転の方向の成分を幾らか含む力が生じることになる。これにより、本願の縦軸風車は小さな風速でも回転を行うことになり、その初動が改善されている。
従来の縦軸風車の回転の速度は、羽が自転を行なわない場合には、少なくとも理論的には、風速に応じて増大していく。それによる縦軸風車の破損を防止するために、従来の縦軸風車には羽の公転を止めるための機構等が設けられていたのは既に述べた通りである。
対して、本願の縦軸風車では、上述した通り羽は、公転を行いつつ、自転を行う。羽は、上記線分を軸にして、常に、弾性体による力(トルク)と、その線分の後側の各区画で生じる風による抗力を積分して得られるトルクから、その線分の前側の各区分で生じる風による抗力を積分して得られるトルクを減じたトルクとが釣り合う位置にあり続けようとする。つまり、風がある程度以上大きくなると、本願の縦軸風車の羽は、その幅方向が、風向きの方向に沿うような向きになろうとする。そうすることにより、本願の縦軸風車の羽は、風速がある程度以上大きくなったときに、揚力をあまり発生しなくなるから、その回転速度が過剰に大きくならない。
その理由は、以下の通りである。縦軸風車は、揚力をその回転の運動エネルギーの源とする。揚力は、羽が板状であろうと断面が翼型であろうと生じる。揚力は、羽の前側と向かい風がなす角度である迎角が±15°程度のときが一般に最大であり、迎角がそれより大きいときも小さいときも小さくなる。また、揚力は一般に、風速の3乗に比例する。本願の縦軸風車の羽は、風速がある程度以上大きくなったときには、羽が風から受ける抗力によりその迎角が0°に近づいていく。この効果は、風速の3乗で大きくなる揚力を非常に小さくする。したがって、自転の許容された本願の縦軸風車の羽は、弾性体という簡単な機構を備えるだけで、風速が大きくなったときにその回転速度が過剰となることを防げる。もっとも、弾性体の捻りに対する弾性力の強さを大きくし過ぎた場合には、初動の良さに影響がある場合もあり得るので、それも考慮して弾性体のトルクの強さを決定すべきである。
なお、風力発電装置に縦軸風車を応用し、風力発電装置の内部に配置された公知のモータに、縦軸風車の回転に負荷をかける機構を設けた場合には、風速が非常に大きい場合でも縦軸風車の回転を止めることなく風力発電を継続することが可能となる公算が大である。
また、この縦軸風車の羽の公転の中心となる軸は、仮想のものでもよい。つまり、軸は、物理的な物として必ずしも存在する必要はない。また、軸が物理的な物として存在する場合、軸を形作る物(例えば、金属製の管)が、2つの支持部材の少なくとも一方を2つの支持部材の外側に突き抜けていても構わない。その場合、軸を形作る物のうちの軸は、支持部材に挟まれている部分のみを指すことになる。
被支持部が凸部を有する場合、凸部は羽の前側寄りにある上述の線分に対応する位置に配され且つその両端を羽から露出させた一本の棒の両端によって構成されていても良い。つまり、前記羽のそれぞれは、前記線分に重なり且つ前記羽を貫く棒状体を有していてもよい。この場合、前記支持部材は、前記棒状体を挿入できる穴である受穴を有していてもよい。この場合には、前記羽から露出した前記棒状体の両端を前記凸部とし、前記支持部材に設けられた前記受穴を前記凹部とするようになっている。
羽は、風を受けることが予定された面を平面視したときに矩形にすることができるが、必ずしもこの限りではない。羽は、風を受けることが予定された上述の面を平面したときに、その前側寄りにある上述の線分より前側に位置する部分の面積が、その線分より後側に位置する部分の面積よりも大きくなっていてもよい。
その縦軸水車は、回転の軸の両端に位置するとともに、そのそれぞれが複数の支持部を有する支持部材と、前記支持部材の支持部のそれぞれにその両端の被支持部を支持された、水流を受ける複数枚の板状の羽と、を有する縦軸風車であって、前記羽のそれぞれは、それが有するその両端の支持部を結ぶその幅方向の前側寄りにある線分周りの両方向の回転である自転を行えるように、且つ、前記羽は、前記羽が一定の強さ以上の水流を受けたときに、前記軸周りの一方向の回転である公転を前記支持部材とともに行うようになっているとともに、前記羽のそれぞれが自転を行ったときに前記羽を元の位置に戻す力を前記羽に与える弾性体を有している、縦軸水車である。
つまり、縦軸水車はその羽が風(空気)でなく流れる水を受けるようになっていることを除き、縦軸風車に同じである。また、縦軸風車についてのここまでに述べた他の構成はすべて、縦軸水車にも応用可能である。
本願の縦軸風車を応用した風力発電装置は、例えば、以下のようなものとなる。
その風力発電装置は、今までに説明したいずれかの縦軸風車と、前記支持部材の回転により生じた運動エネルギーを伝達する伝達機構と、前記伝達機構を介して受取った運動エネルギーを電力に変える発電装置と、を含む風力発電装置である。
本願の縦軸水車を応用した水力発電装置は、例えば、以下のようなものとなる。
その水力発電装置は、今までに説明したいずれかの縦軸水車と、前記支持部材の回転により生じた運動エネルギーを伝達する伝達機構と、前記伝達機構を介して受取った運動エネルギーを電力に変える発電装置と、を含む水力発電装置である。
各実施形態及びその変形例の説明では、同じ対象に対しては同一の符号を付すこととし、重複する説明は省略するものとする。
第1実施形態による縦軸風車1の斜視図を図1に示す。
この実施形態の縦軸風車1は、支持部材100と4枚の羽200とを備えている。
すべての支持アーム120の先端には、円形の支持孔121が穿たれている。すべての支持孔121の内側には、ネジ切りがなされている。これには限られないがすべての支持孔121の径は同一とされている。各支持部材100において、中心板110の中心孔111から4つの支持アーム120の先端に設けられた支持孔121までの距離はそれぞれ等しくされている。
また、上下2つの支持部材100は、平面視した場合に重なるような位置関係とされている。
上下2つの支持部材100は、軸棒130にて互いに固定されている。軸棒130は、これには限られないが円柱状の棒状体である。軸棒130は、中心板110に設けられた上述の中心孔111を貫く図示を省略のネジにより、その両端を支持部材100と固定されている。
後述するように、支持部材100は、中心孔111を中心として回転する。そのとき、同一の支持部材100に設けられた4つの支持孔121は、同一の円周上を通過するようになっている。
この実施形態の羽200は、これには限られないが、風を受けることが予定されたその広い面積の部分を平面視した場合、矩形に構成されている。羽200の断面形状は、すべての部分で同一でも構わないが、この実施形態では、これには限られないが、羽200に風を受けた場合に大きな揚力を得られるような翼型となっている。
羽200の内部には、細い2本の管である補助管210と、補助管210よりも太い管である回転管220とが設けられている。補助管210、回転管220ともに円筒形である。補助管210と回転管220はともに、金属製であり、この実施形態ではこれには限られないがアルミ製とされている。
小孔231Aの内経は、補助管210の外径と略一致している。大孔231Bの内径は、回転管220の外径と略一致している。補助管210の両端を小孔231Aに挿入し、且つ回転管220の両端を大孔231Bに挿入した状態で、補助管210の両端に押え板230が固定されている。なお、回転管220と大孔リブ231Bは、ピン231Cで互いに固定されている。
なお、図示を省略するが、この実施形態の羽200の中には、押え板230の板部231と同じ形状の補助板が、羽の図2における上下方向の適宜な位置に、適宜な間隔で複数枚入っている。補助板には、上述の小孔231Aと大孔231Bに対応する孔が穿たれており、その内側をそれぞれ、補助管210と回転管220に貫通されている。押え板230と複数枚の補助板と、によって膜材201の形状が保たれている。
コイルバネ227の図4における下端には、金属製の第1リング222が取付けられている。第1リング222はリング状の部材であり、厚みの小さい第1リング本体部222Aと厚みの大きい第1リング固定部222Bとからなる。第1リング本体部222Aの内径は、コイルバネ227の外周よりも僅かに小さくされており、また、第1リング本体部222Aの内側にはネジ切りがなされている。第1リング本体部222Aの内側に、コイルバネ227の図4における下端を螺合させることにより、コイルバネ227の図4における下端と第1リング222とが固定されるようになっている。コイルバネ227の外径よりも第1リング本体部222Aの内径の方が若干小さいので、第1リング本体部222Aとコイルバネ227の螺合は強固なものとなる。第1リング本体部222Aに螺合されたコイルバネ227の更に内側には、例えば摩擦抵抗の小さい樹脂で形成された樹脂層222Cが設けられている。樹脂層222Cはリング状の部材であっても良い。
第2リング固定部222Bには、回転管220を貫くピン222Dが打ち込まれている。それにより、第1リング222は、回転管220と固定されている。
上述したようにコイルバネ227の図4における下端は第1リング222と固定されているのであるから、コイルバネ227の図4における下端は、第1リング222を介して、回転管220に固定された状態となっている。
第2リング円板部223Aの中央には、円形の孔223A1が穿たれている。
凸部材224の挿入部224Cは軸管221に挿入されており、第2リング223の第2リング筒部223Bと、軸管221ととともにピン224Dで貫かれている。これにより、凸部材224と第2リング223は軸管221に固定されている。
上述したように、凸部材224は支持部材100と固定されている。また、支持部材100と固定された凸部材224には、第2リング223を介してコイルバネ227の図4における上端が固定されているのであるから、コイルバネ227の図4における上端は、第2リング223、凸部材224を介して、支持部材100に固定された状態となる。
他方、軸管221は、第2リング223を介してコイルバネ227の図4における上端と固定されている。また、軸管221は、凸部材224を介して支持部材100に固定されている。
そして、軸管221と、回転管220は、どの部品を介しても互いに固定されていない。したがって、軸管221と回転管220は、互いに固定されていないから、それらに共通する軸周りに、その一方が他方に対して、どちらの方向にも回転可能である。ところで、軸管221は上述のように、凸部材224を介して支持部材100と固定されているから、支持部材100に対して回転を行なわない。つまり、回転管220は、支持部材224に対して、軸管221の中心の軸を中心とした回転を行うことができる。回転管220は、上述のように押え板230及び膜材201と固定されているのであるから、これらにより構成された羽200は、図1における上下に位置する支持部材100の支持アーム120先端の支持孔121同士を結んだ直線上にある軸管221の中心の軸を中心とした回転を行えることとなる。この回転は、本願でいう羽の自転である。
まず、この縦軸風車1の設置方法についてである。
必ずしもこの限りではないが、この縦軸風車1は、この実施形態では軸棒130が垂直になるような状態で、吊り下げて用いられる。この実施形態での縦軸風車1の吊り下げに用いられるのは、この限りではないが、丈夫なワイヤケーブルである。ワイヤケーブルと縦軸風車の1固定は、公知の、或いは周知・慣用の手法を用いて適当に行えば良い。例えば、図1における上側の支持部材100の中心板110の中心に、ワイヤケーブルとの結束を行うための適当な金具等を取付けることで、ワイヤケーブルと縦軸風車1の固定を行うことができる。
なお、後述するように、縦軸風車1の支持部材100は後述するように回転するため、ワイヤケーブルには撚りが発生する。撚りの解消のために、ワイヤケーブルと縦軸風車1の接続部分か或いは縦軸風車1を吊るしたワイヤケーブルの途中の適当な部分に、その一方が他方に介して自在に回転できるようになっている公知の継手を用いる。
なお、縦軸風車1は軸棒130が下方の支持部材100を突き抜け、その下端が土台に固定されており、且つ軸棒130に対して支持部材100が回転するようになっているような、より一般的な使用の仕方で用いられても構わないのは当然である。
羽200が載っている円Xは、支持部材100が中心孔111を中心として回転したときに支持部材100に設けられた4つの支持孔121が通過する軌道であり、羽200の軸管221が通過する軌道を平面視したものに一致する。図5から明らかなように、羽200は風がない状態では、その軌道である上述の円Xの接線に沿うように調整されている。羽200のこの位置が、本願における「元の位置」である。
図6〜図8は、図中右側から風が吹いてきた時における、風に対して(A)〜(L)の位置にある場合の各羽200の挙動と、そのときに羽200の軸管221の部分に生じる力を示したものである。縦軸風車200の4枚の羽200は、図6〜図8の(A)〜(L)の各位置にあるとき、理想的には同じ挙動を示し、また理想的にはそれらの軸管221には同じ力が生じる。
図6〜図8には、風により羽200に生じる揚力と、風により羽200に生じる推力と、揚力と推力のうちの上述の円Xの円周方向の成分である推進力が示されている。これらの大きさはいずれも、この実施形態の縦軸風車1の動作の概念的な理解に寄与できる程度のものであり、必ずしも正確なものではない。
推進力は、支持部材100とともに行う縦軸風車1の羽200の公転を促進し、或いは抑制する。つまり、この縦軸風車1は、時計回りに回転(公転)することが予定されているが、揚力、推力、推進力とも、時計回りの回転に対して負の方向の力である場合がある。なお、推力は、角度のついた羽200の後に流れる風の反作用により生じる力を意味するものとする。
(A)の位置にある羽200は元の位置のままであり、その角度を変えない。このとき羽200には揚力も推力も生じない。
しかし、(B)の位置〜(E)の位置にある羽200は自転しその角度を変える。元の位置にあったときの羽200の外側の面に対して、より正面に近い方向から風を受ける場合には、羽200の後側にはより大きな抗力が働くから、(B)の位置〜(E)の位置に向かうに連れて、コイルバネ227の弾性に抗して、羽200は円Xの接線方向から徐々にずれていく。なお、このずれの大きさは、コイルバネ227の弾性力を調節することにより、所望するように変化させることができる。図6中の10°〜40°という数字は、そのずれの角度を示しているが、その数字は概略的なものと理解されたい。なお、○○°という数字は、以下も同様に羽200の円Xの接線方向からのずれの角度を示し、その数字は概略的なものである。図7、図8でも同様である。
次いで、(F)の位置に来ると羽200は、元の位置にあったときの羽200の外側の面と風の方向のなす角が小さくなり、風から受ける抗力が小さくなるから、上述のずれの角度が小さくなる。
羽200が(B)の位置にあるときには、羽200には幾らかの揚力が生じ、時計回りの方向に幾らかの推進力を生じる。羽200が(C)の位置から(F)の位置に来るまで、羽200には幾らかの推力が生じ、時計回りの方向に幾らかの推進力を生じる。羽200が(C)の位置から(F)の位置にあるときに羽200に揚力が生じないのは、羽200に向かって吹く風と羽200の前方とが成す角度である迎角が±25°程度の間でないと羽200に揚力が生じないという事情による。また、迎角が±15°程度のとき、羽200に生じる揚力が最大となる。この実施形態の羽200は上述のように対称翼であるから、迎角が±15°のときに生じる揚力はともに等しい。
(G)の位置では羽200は、コイルバネ227の弾性により元の位置に戻る。このとき羽200には揚力も推力も生じない。
(H)の位置から(L)の位置では、羽200は自転し、円Xの接線方向からずれを生じる。そのずれは、(H)の位置から(J)の位置に進むに連れ10°〜30°まで大きくなり、また、(J)の位置から(L)の位置に進むに連れ30°〜10°まで小さくなる。ただし、このときのずれの方向は、羽200が(B)の位置から(F)の位置にあるときとは逆向きである。
羽200が(H)の位置から(K)の位置に来るまで、羽200には幾らかの推力が生じ、時計回りの方向に幾らかの推進力を生じる。羽200が(L)の位置にあるときには、羽200には幾らかの揚力が生じ、時計回りの方向に幾らかの推進力を生じる。羽200が(H)の位置から(K)の位置にあるときに羽200に揚力が生じないのは、羽200に向かって羽200の後側から風が吹いているからである。
この縦軸風車は、弱風のときでは羽200が特に、(D)の位置や(J)の位置近辺にいるときに自ら推力を得られ易い位置に自転によって移動するから、弱風でも公転を行い易い。
(A)の位置にある羽200は元の位置のままであり、その角度を変えない。このとき羽200には揚力も推力も生じない。
しかし、(B)の位置〜(F)の位置にある羽200は自転しその角度を変える。(B)の位置〜(E)の位置に向かうに連れて、コイルバネ227の弾性に抗して、羽200は円Xの接線方向から20°〜50°の範囲で徐々にずれていく。そのずれの角度は、弱風のときより幾らか大きい。
次いで、(F)の位置に来ると羽200は、上述のずれの角度が30°に小さくなる。
羽200が(B)の位置と(C)の位置にあるときには、羽200には、弱風のときよりは大きな揚力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。羽200が(D)の位置から(F)の位置に来るまで、羽200には推力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。
(G)の位置では羽200は、コイルバネ227の弾性により元の位置に戻る。このとき羽200には揚力も推力も生じない。
(H)の位置から(L)の位置では、羽200は自転し、円Xの接線方向からずれを生じる。そのずれは、(H)の位置から(J)の位置に進むに連れ20°〜40°まで大きくなり、また、(J)の位置から(L)の位置に進むに連れ40°〜20°まで小さくなる。このずれも弱風のときよりも大きい。このときのずれの方向は、羽200が(B)の位置から(F)の位置にあるときとは逆向きである。
羽200が(H)の位置から(J)の位置に来るまで、羽200には推力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。羽200が(K)の位置と(L)の位置にあるときには、羽200には揚力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。
この縦軸風車は、中風のときでは羽200が自転しないときとそれほど変わらないか幾らか大きな程度の推進力を得られる。
(A)の位置にある羽200は元の位置のままであり、その角度を変えない。このとき羽200には揚力も推力も生じない。
しかし、(B)の位置〜(G)の位置にある羽200は自転しその角度を変える。(B)の位置〜(E)の位置に向かうに連れて、コイルバネ227の弾性に抗して、羽200は円Xの接線方向から25°〜80°の範囲で徐々にずれていく。そのずれの角度は、中風のときより幾らか大きい。
次いで、(F)の位置に来ると羽200は、上述のずれの角度が50°に小さくなり、(G)の位置ではその角度が10°まで落ちる。
羽200が(B)の位置から(E)の位置にあるときには、羽200には、中風のときよりは大きな揚力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。羽200が(F)の位置から(G)の位置に来るまで、羽200には推力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。
(G)の位置から(H)の位置に向かう間に、羽200は、コイルバネ227の弾性により元の位置に戻る。なお、元の位置に戻った羽200は揚力も推力も生じない状態となる。
(H)の位置から(L)の位置では、羽200は自転し、円Xの接線方向からずれを生じる。そのずれは、(H)の位置から(I)の位置に進むに連れ50°〜70°まで大きくなり、また、(I)の位置から(L)の位置に進むに連れ65°〜25°まで小さくなる。このときのずれの方向は、羽200が(B)の位置から(G)の位置にあるときとは逆向きである。
羽200が(H)の位置から(I)の位置に来るまで、羽200には推力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。羽200が(J)の位置から(L)の位置にあるときには、羽200には揚力が生じ、時計回りの方向に推進力を生じる。
ここで着目して欲しいのは、(C)、(D)、(K)、(L)の位置における羽200の向きである。この辺りの位置にある羽200は、迎角が15°よりも小さくなるので、揚力をあまり生じない。それにより、この縦軸風車1は、風速の3乗程は回転の速度が上がらず、破損が生じにくい。
変形例1の縦軸風車は、第1実施形態の縦軸風車1と殆どその構成が変わらない。変形例1の縦軸風車は、その羽200の構造が第1実施形態の縦軸風車1の羽200と異なる。
変形例1の縦軸風車の羽200の内部構造を図9に示す。ただし図9では押え板231の図示を省略している。
変形例1の縦軸風車は、羽200の内部に補助板270を備えている。また、変形例1の縦軸風車の羽200の押え板には、ボルト271が設けられている。押え板とボルト271は固定されていない。つまり、押え板はボルト271を中心に回転できるようになっている。ボルト271はその外周にネジが切られたネジ切り部271Aを備えている。ネジ切り部271は、支持孔121に螺合される。
ボルト271の図9の下面と補助板270の図9の上面とは、リボン状の捻られた板バネ272の一端と他端で固定されている。
羽200が風を受けると、羽200は押え板とともにボルト271を中心に回転する。そうすると、一端が支持部材に対して動かないボルト271に対して固定され、他端が羽200とともに回転する補助板270に固定された板バネ272は、その捻りの度合いを大きくするか小さくする。そうすると板バネ272は元の状態に復元しようとする力を生じる。これが、第1実施形態のときにコイルバネ271によって得られた弾性力と同等に機能する。
変形例2の縦軸風車は、第1実施形態の縦軸風車1と殆どその構成が変わらない。変形例2の縦軸風車は、その羽200の構造が第1実施形態の縦軸風車1の羽200と異なる。
変形例2の縦軸風車の羽200の内部構造を図10に示す。
変形例2の縦軸風車は、押え板231を備えている。押え板231は、穴281を備えている。穴281の底には、図示を省略の底が設けられている。その底には、更に図示を省略の円筒形の穴である底穴が設けられている。その底穴の内部には、底穴の径と略同径の円筒形の筒282が嵌めこまれており、筒282の内部にその外周にネジ切りがなされたボルト283が立設されている。ボルト283と筒283は互いに固定されているが、底穴と筒283は互いに固定されていない。つまり、ボルト283に対して、筒283に固定された押え板231は回転可能になっている。また、ボルト283は、支持孔121に螺合される。
穴281の内周面と、筒282の外周面とは、ゼンマイ状の板バネ284の一端と他端で固定されている。
羽200が風を受けると、羽200は押え板231とともにボルト283を中心に回転する。そうすると、その他端が支持部材に対して動かないボルト283及び筒282に対して固定され、その一端が羽200とともに回転する穴281の内周面に固定されたゼンマイ状の板バネ284は緩んだり締まったりする。そうすると板バネ272は元の状態に復元しようとする力を生じる。これが、第1実施形態のときにコイルバネ271によって得られた弾性力と同等に機能する。
変形例3の縦軸風車は、第1実施形態の縦軸風車1と殆どその構成が変わらない。変形例3の縦軸風車は、その羽200の構造、還元すれば、羽200と、支持部材100の取付けの方法が第1実施形態の縦軸風車1と異なる。
変形例3の縦軸風車の全体斜視図を図11に、羽200の斜視図を図12に示す。
変形例3の縦軸風車は、羽200を備えている。羽200は、押え板231を備えている。押え板231には、コイルバネ291の図11、図12における下端が固定されている。コイルバネ291の図11、図12の上端には、リング状のリング部材292が固定されている。
リング部材292は孔292Aを備えている。孔292は、支持孔121と同径であり、孔292の内周面は、ネジ切りされている。
リング部材292は、支持孔121と孔292をまとめて貫く図示を省略のボルトにより、支持部材100に固定されている。
コイルバネ291を介して支持部材100に固定された羽200は、第1実施形態の場合と同様に自転可能である。
コイルバネ291のみを用いての羽200と支持部材100との接続だけでは、羽200に自転以外の運動が生じる可能性がある。そのような予期せぬ羽200の運動を防止するには、コイルバネ291の内側に、羽200と支持部材100にその両端が接続された軸を取付けておけば良い。
第2実施形態は、第1実施形態の風車を応用した風力発電装置である。
風力発電装置は、図13に示したように、風車1を備えている。
風車1は、第1実施形態の場合と同様に吊り下げられている。風車1の下端には、伝達部材310が設けられている。伝達部材310は、軸棒130の図13における下端を下方向に延長して構成されていてもよい。伝達部材310は、羽200とともに支持部材100が回転(公転)すると、それにともない回転する。
軸棒130の図13における下端は、発電装置320に挿入されている。発電装置320はごく一般的なものである。発電装置320の中には、運動エネルギーを電力エネルギーに変換するためのモータが含まれており、モータの軸に伝達部材310が接続されている。かかる接続は直接的なものであっても良いが、変速機を噛ますなど、間接的なものであっても構わない。変速機を用いた接続も周知である。
縦軸風車1の支持部材100が回転すると、伝達部材310が回転し、それにともないモータの軸が回転して発電が行なわれる。モータには、例えば風が強くなったときにモータの軸の回転の負荷を大きくする機構を組込むことも可能である。そうすれば、強風下でも縦軸風車1の回転を止めることなく発電を継続することができる。
第3実施形態は、縦軸水車である。
縦軸水車の構成は、第1実施形態の縦軸風車の構成と同じである。海水中で使う場合等には特に、防錆に注意する等の一般的な注意を行えば良い。
縦軸水車では、羽が水流の中に置かれる。羽にかかる負荷が第1実施形態の縦軸風車の場合に比し格段に大きいため、羽は膜材を用いずに例えば樹脂等で中実に構成すべきかもしれない。
第3実施形態の縦軸水車も、第2実施形態の縦軸風車場合と同様に、伝達部材と、発電装置と組合せることにより、水力発電装置に応用することが可能である。この場合、縦軸水車は、水中に固定された基礎の上に取付け、第2実施形態の場合とは逆に縦軸水車の上方に伸ばした伝達部材を設け、水面の上に露出した伝達部材と水面の上に配された発電装置とを接続する構成がもっとも実用的であると考えられる。
120 支持アーム
121 支持孔
130 軸棒
200 羽
220 回転管
221 軸管
231 押え板
271 コイルバネ
Claims (15)
- 回転の軸の両端に位置するとともに、そのそれぞれが複数の支持部を有する支持部材と、
前記支持部材の支持部のそれぞれにその両端の被支持部を支持された、風を受ける複数枚の板状の羽と、
を有する縦軸風車であって、
前記羽のそれぞれは、それが有するその両端の支持部を結ぶその幅方向の前側寄りにある線分周りの両方向の回転である自転を行えるように、
且つ、前記羽は、前記羽が一定の強さ以上の風を受けたときに、前記軸周りの一方向の回転である公転を前記支持部材とともに行うようになっているとともに、
前記羽のそれぞれが自転を行ったときに前記羽を元の位置に戻す力を前記羽に与える弾性体を有している、
縦軸風車。 - 前記弾性体は、前記固定部材と前記羽にその一端と他端を接続されている、
請求項1記載の縦軸風車。 - 前記支持部材の前記支持部は、前記弾性体を介して前記羽の前記被支持部を支持している、
請求項2記載の縦軸風車。 - 前記弾性体は、バネである、
請求項1〜3のいずれかに記載の縦軸風車。 - 前記弾性体は、コイルバネ又は板バネである、
請求項3記載の縦軸風車。 - 前記支持部と、前記被支持部は、その一方が凹部を、その他方がその凹部に挿入される凸部を備えており、
前記凸部が前記凹部に挿入されることで、前記支持部が前記被支持部を支持するようになっている、
請求項1記載の縦軸風車。 - 前記弾性体はコイルバネであり、前記凸部をその内側に入れた状態でその一方を前記支持部に、その他方を前記被支持部に固定されている、
請求項6記載の縦軸風車。 - 前記羽のそれぞれは、前記線分に重なり且つ前記羽を貫く棒状体を有しているとともに、
前記支持部材は、前記棒状体を挿入できる穴である受穴を有しており、
前記羽から露出した前記棒状体の両端を前記凸部とし、前記支持部材に設けられた前記受穴を前記凹部とするようになっている、
請求項6記載の縦軸風車。 - 前記羽は、その断面が風を受けたときに揚力を生じる翼型である、
請求項1記載の縦軸風車。 - 前記羽の前記元の位置は、前記羽が前記公転を行う場合の円軌道の接線に沿う方向である、
請求項1記載の縦軸風車。 - 前記線分は、前記羽の幅を、前記公転の方向のそれより前側が20〜30%、前記好転の方向のそれより後ろ側が80〜70%に分ける位置に位置するようにされている、
請求項1記載の縦軸風車。 - 前記羽は断面翼型であり、前記線分は、前記羽の断面における空力中心に位置するようにされている、
請求項1記載の縦軸風車。 - 請求項1〜12に記載の縦軸風車と、
前記支持部材の回転により生じた運動エネルギーを伝達する伝達機構と、
前記伝達機構を介して受取った運動エネルギーを電力に変える発電装置と、
を含む風力発電装置。 - 回転の軸の両端に位置するとともに、そのそれぞれが複数の支持部を有する支持部材と、
前記支持部材の支持部のそれぞれにその両端の被支持部を支持された、水流を受ける複数枚の板状の羽と、
を有する縦軸風車であって、
前記羽のそれぞれは、それが有するその両端の支持部を結ぶその幅方向の前側寄りにある線分周りの両方向の回転である自転を行えるように、
且つ、前記羽は、前記羽が一定の強さ以上の水流を受けたときに、前記軸周りの一方向の回転である公転を前記支持部材とともに行うようになっているとともに、
前記羽のそれぞれが自転を行ったときに前記羽を元の位置に戻す力を前記羽に与える弾性体を有している、
縦軸水車。 - 請求項14に記載の縦軸水車と、
前記支持部材の回転により生じた運動エネルギーを伝達する伝達機構と、
前記伝達機構を介して受取った運動エネルギーを電力に変える発電装置と、
を含む水力発電装置。
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JP2013013803A JP2014145293A (ja) | 2013-01-29 | 2013-01-29 | 風車 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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