JP2014144994A - プロピレン重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】立体規則性が制御されたプロピレン重合体の製造方法であって、反応器内に水素及びプロピレンを供給し、遷移金属錯体及び有機アルミニウムの存在下でプロピレンを重合反応させてプロピレン重合体を生成する重合工程、得られたプロピレン重合体の立体規則性(mmmm%)を測定する工程、及び測定されたプロピレン重合体の立体規則性の測定値と予め設定された目標値とを対比し、測定値が目標値より高い場合には反応器中の有機アルミニウムの濃度を増加させる等の操作を行い、測定値が目標値より低い場合には反応器中の有機アルミニウムの濃度を低減させる等の操作を行う制御工程を含む、プロピレン重合体の製造方法。
【選択図】なし
Description
非特許文献1には、重合条件によりプロピレン重合体の立体規則性を制御する手法として、C1対称型の架橋メタロセンを用いたステレオブロックポリプロピレンの合成や、非架橋の2−置換フェニルインデン錯体を用いたアイソタクチックポリプロピレン(IPP)−アタクチックポリプロピレン(APP)のブロック部を有するポリプロピレンの合成について開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、得られる重合体中に立体規則性の異なる成分が多く含まれるため、実用上問題がある。
一方、重合条件を変化させて、立体規則性の制御されたプロピレンを重合する方法も検討されている。特許文献2には、反応場におけるプロピレン分圧を変化させて重合反応速度を調整する方法が開示されている。
<1>立体規則性が制御されたプロピレン重合体の製造方法であって、
工程(1):反応器内に水素及びプロピレンを供給し、遷移金属錯体及び有機アルミニウムの存在下でプロピレンを重合反応させてプロピレン重合体を生成する重合工程、
工程(2):工程(1)で得られたプロピレン重合体の立体規則性(mmmm%)を測定する工程、及び
工程(3):工程(2)で測定されたプロピレン重合体の立体規則性の測定値と予め設定された目標値とを対比し、測定値が目標値より高い場合には下記(a1)〜(a4)の少なくとも1つの操作を行い、測定値が目標値より低い場合には下記(b1)〜(b4)の少なくとも1つの操作を行う制御工程
を含む、プロピレン重合体の製造方法。
(a1)反応器中の有機アルミニウムの濃度を増加させる
(a2)重合工程に供給する水素の分圧を低下させる
(a3)重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を増加させる
(a4)重合温度を上げる
(b1)反応器中の有機アルミニウムの濃度を低減させる
(b2)重合工程に供給する水素の分圧を上昇させる
(b3)重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を低減させる
(b4)重合温度を下げる
<2>前記有機アルミニウムが、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド及び有機アルモキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載のプロピレン重合体の製造方法。
<3>前記遷移金属錯体がキレート型錯体又はメタロセン錯体である、<1>又は<2>に記載のプロピレン重合体の製造方法。
<4>前記遷移金属錯体が、下記一般式(I)で表される二架橋メタロセン錯体である、<1>〜<3>のいずれかに記載のプロピレン重合体の製造方法。
本発明の方法は、立体規則性が精密に制御されたプロピレン重合体の製造方法である。上述のとおり、プロピレン重合体の性質は、その立体規則性によって大きく影響を受け、プロピレン重合体の立体規則性(メソペンタッド分率)の値がわずかに異なるだけで所望する性質が得られないこともある。
これに対し、本発明では、重合して得られたプロピレン重合体の立体規則性を測定し、その測定値と予め設定された目標値とを対比して、その差異を重合工程にフィードバックし、所定の手段によって触媒の立体規則性や触媒活性を変動させて重合を行う。測定値と目標値とが一致するまでこの一連の操作を行うことで、プロピレン重合体の立体規則性を精密に制御することができ、目標とする立体規則性を有するプロピレン重合体を製造することができる。
以下、本発明の方法における各工程について詳細に説明する。
本発明の方法における工程(1)は、反応器内に水素及びプロピレンを供給し、遷移金属錯体及び有機アルミニウムの存在下でプロピレンを重合反応させてプロピレン重合体を生成する重合工程である。
プロピレンは原料モノマーであり、水素は、得られるプロピレン重合体の分子量を調整するために使用される。
遷移金属錯体としては、キレート型錯体、メタロセン錯体等が挙げられる。
キレート型錯体としては、例えば、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,2−ジメチルエチレンジイミノニッケルジブロマイド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,2−ジメチルエチレンジイミノパラジウムジブロマイド等が挙げられる。
E1及びE2としては、重合活性がより高くなるため、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基及び置換インデニル基が好ましい。また、E1及びE2は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、一種類の活性点上で重合を進行させ、錯体の幾何構造に応じて一定の乱れを持つプロピレン重合体を得る観点から、C2対称型メタロセン錯体を用いることが好ましく、E1及びE2が互いに同一であることが好ましい。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントニル基等のアリール基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェニルメトキシ基及びフェニルエトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基及びジメチルフェノキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜20の珪素含有基としては、メチルシリル基、フェニルシリル基等のモノ炭化水素置換シリル基;ジメチルシリル基、ジフェニルシリル基等のジ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチル(t−ブチル)シリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基等のトリ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基等の炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基等の珪素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基等の珪素置換アリール基、ジメチルヒドロシリル基及びメチルジヒドロシリル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のスルフィド基としては、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、ヘキシルスルフィド基、シクロヘキシルスルフィド基、オクチルスルフィド基等のアルキルスルフィド基;ビニルスルフィド基、プロペニルスルフィド基、シクロヘキセニルスルフィド基等のアルケニルスルフィド基;ベンジルスルフィド基、フェニルエチルスルフィド基、フェニルプロピルスルフィド基等のアリールアルキルスルフィド基;フェニルスルフィド基、トリルスルフィド基、ジメチルフェニルスルフィド基、トリメチルフェニルスルフィド基、エチルフェニルスルフィド基、プロピルフェニルスルフィド基、ビフェニルスルフィド基、ナフチルスルフィド基、メチルナフチルスルフィド基、アントラセニルスルフィド基、フェナントニルスルフィド基等のアリールスルフィド基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基等のアルキルアシル基、ベンゾイル基、トルオイル基、サリチロイル基、シンナモイル基、ナフトイル基、フタロイル基等のアリールアシル基、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のジカルボン酸からそれぞれ誘導されるオキサリル基、マロニル基、スクシニル基等が挙げられる。
アミンとしては、炭素数1〜20のアミン類が挙げられ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアルキルアミン;ビニルアミン、プロペニルアミン、シクロヘキセニルアミン、ジビニルアミン、ジプロペニルアミン、ジシクロヘキセニルアミン等のアルケニルアミン;フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン、フェニルプロピルアミン等のアリールアルキルアミン;ジフェニルアミン、ジナフチルアミン等のアリールアミン、又はアンモニア、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン及びp−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。
チオエーテルの具体例としては、上記のスルフィドが挙げられる。
Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1、E2又はXと架橋していてもよい。該Yのルイス塩基の具体例としては、アミン類、エーテル類、ホスフィン類、チオエーテル類などを挙げることができる。
珪素含有基の具体例としては、メチルシリル基、フェニルシリル基等のモノ炭化水素置換シリル基;ジメチルシリル基、ジフェニルシリル基等のジ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチル(t−ブチル)シリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基等のトリ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基等の炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基等の珪素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基等の珪素置換アリール基、ジメチルヒドロシリル基及びメチルジヒドロシリル基等が挙げられる。
X1は、σ結合性の配位子を示し、X1が複数ある場合、複数のX1は同じでも異なっていてもよく、他のX1又はY1と架橋していてもよい。このX1の具体例としては、一般式(I)のXの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。
Y1は、ルイス塩基を示し、Y1が複数ある場合、複数のY1は同じでも異なっていてもよく、他のY1又はX1と架橋していてもよい。このY1の具体例としては、一般式(I)のYの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。
この二架橋ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とするメタロセン錯体は、配位子間の架橋基にケイ素を含むものが好ましい。
上記の中でも、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−(3−トリメチルシリルメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドが好ましく、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドが特に好ましい。
有機アルミニウムは、重合反応系中において水分除去を目的とするいわゆるスカベンジャーとして用いる成分や触媒の活性点(カチオン錯体)の生成及び安定化を目的とする成分であり、遷移金属錯体とドーマントを形成する化合物である。有機アルミニウムとしては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド及び有機アルモキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。有機アルミニウムは一種用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
R20 vAlJ3-v (IV)
〔式中、R20は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である〕
一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド等のジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4以上、好ましくは炭素数4〜8、より好ましくは炭素数6〜8の炭化水素基が結合した有機アルミニウム化合物が、高温安定性に優れる点で好ましい。
アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水等の縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。
例えば、(1)有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させ方法、(2)重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、(3)金属塩等に含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、(4)テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、更に水を反応させる方法等がある。なお、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。これらのアルミノキサンは、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、有機アルミニウムは、遷移金属錯体とは別々に反応系に供給してもよい。また、予備重合用の触媒に供給してもよい。
本発明において、重合方法は特に制限されず、スラリー重合法,気相重合法,塊状重合法,溶液重合法,懸濁重合法等のいずれの方法を用いてもよいが、スラリー重合法,溶液重合法が特に好ましい。重合条件については、重合温度は通常0〜200℃、より好ましくは20〜200℃、特に好ましくは70〜200℃である。また、反応原料に対する触媒の使用割合は、原料プロピレン/前記遷移金属錯体(モル比)が好ましくは1〜100000000、より好ましくは1〜1000である。重合時間は通常5分〜30時間、好ましくは15分〜25時間である。
遷移金属錯体を含む触媒成分の添加方法としては、触媒の分散度の観点から触媒溶液での添加が好ましい。
また、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
重合に際しては、予備重合を行うことで重合用触媒を調製してもよい。予備重合は、触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。予備重合においては、溶媒として、脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,モノマー等を用いることができる。溶媒は、活性種が溶解しやすい観点から、芳香族炭化水素が好ましい。また、予備重合は無溶媒で行ってもよい。予備重合においては、予備重合生成物の極限粘度〔η〕(135℃デカリン中で測定)が0.1dL/g以上、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10000g、特に10〜1000gとなるように条件を調整することが好ましい。
本発明の方法における工程(2)は、工程(1)で得られたプロピレン重合体の立体規則性(mmmm%)を測定する工程である。
上述のとおり、プロピレン重合体の性質は、その立体規則性によって大きく影響を受け、プロピレン重合体のメソペンタッド分率の値がわずかに異なるだけで所望する性質が得られないこともある。そのため、まず本工程において、プロピレン重合体の立体規則性を測定し、次の工程(3)において、その制御を行う。
本発明では、13C核磁気共鳴スペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行った。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/mL
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(容量比90/10)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
本発明の方法における工程(3)は、工程(2)で測定されたプロピレン重合体の立体規則性の測定値と予め設定された目標値とを対比し、測定値が目標値より高い場合には下記(a1)〜(a4)の少なくとも1つの操作を行い、測定値が目標値より低い場合には下記(b1)〜(b4)の少なくとも1つの操作を行う制御工程である。
(a1)反応器中の有機アルミニウムの濃度を増加させる
(a2)重合工程に供給する水素の分圧を低下させる
(a3)重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を増加させる
(a4)重合温度を上げる
(b1)反応器中の有機アルミニウムの濃度を低減させる
(b2)重合工程に供給する水素の分圧を上昇させる
(b3)重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を低減させる
(b4)重合温度を下げる
本発明の方法によれば、重合体の分子量を変化させることなく、立体規則性がより精密に制御されたプロピレン重合体を製造することができる。なお、重合体の分子量は極限粘度によって示すことができ、極限粘度の変動量が好ましくは0.10dL/g以下、より好ましくは0.05dL/g以下であれば、重合温度を微調整することで重合反応を制御して重合体の分子量を調節できる。
有機アルミニウムは、スカベンジャーとして、あるいは錯体の活性化のために、触媒よりも過剰に加えることから、活性点近傍に多量に存在する。そのため、有機アルミの種類や濃度が、モノマーの配位や成長過程に影響を及ぼすことで、重合活性だけでなく得られるポリマーの分子量や立体規則性が変化すると推定される。
例えば有機アルミニウムとしてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)を用いた場合、メタロセン錯体は、空の配位座を有する「活性種」と、TIBAが結合した「不活性種(ドーマント)」との間で平衡状態にあると考えられる。このドーマント上のポリマー鎖において、β位の不斉炭素原子に結合した水素原子が一旦脱離して再付加する「エピメリ化」が起こると考えられる。ここで、「エピメリ化」とは、ある化合物からエピマー(2ヵ所以上のキラル中心を有しジアステレオマーの関係にある化合物のうち、1ヵ所のキラル中心上の立体配置だけが異なる化合物)に変換することをいう。ドーマントではポリマー鎖の成長反応が進行しないため、有機アルミニウム濃度が高くなるとエピメリ化の割合が増え、平衡により活性種に戻ることで、立体規則性が低下すると考えられる。
有機アルミニウムの濃度を増減させる手段としては、供給ラインに投じる有機アルミニウム量を制御する方法や、有機アルミニウムに対して、極性物質(水やアルコール類等)を添加し反応させることで、有機アルミニウムの濃度を制御する方法がある。
重合工程に供給する水素分圧は、1kPa以上100kPa以下に設定することが好ましい。水素分圧が高いと触媒活性が向上する一方、水素分圧が低いと触媒活性が低減する。
したがって、プロピレン重合体の立体規則性の測定値が目標値より高い場合には重合工程に供給する水素の分圧を低下させる(a2)。これにより、触媒活性を低減させてプロピレン重合体の立体規則性を低下させることができる。一方、測定値が目標値より低い場合には重合工程に供給する水素の分圧を上昇させる(b2)。これにより、触媒活性を向上させてプロピレン重合体の立体規則性を向上させることができる。
水素の分圧で規則性が制御できる理由は、水素濃度が高くなった場合、ポリマー鎖のエピメリ化が進行する過程で、ポリマー鎖が水素へ連鎖移動することから、エピメリ化の発生頻度が低下し規則性が上昇するためと推定される。
重合工程に供給する水素の分圧は、供給ラインに投じる水素量を制御することで調節することができる。なお、水素分圧を上昇させた場合、水素への連鎖移動が促進されるため、ポリマーの分子量は低下する。そのため、重合温度を変化させ若干の分子量の調整が必要となる。
プロピレン重合体の工業的製造の際には、原料のプロピレンを反応器に供給する前に、メタロセン触媒の触媒毒として知られている水分、一酸化炭素、二酸化炭素、硫黄分等の不純物を精製カラムにてプロピレン中から除去することが通常行われている。触媒毒となる成分は、遷移金属錯体と結合してドーマントを形成すると想定される。そのため、ドーマント上のポリマー鎖でエピメリ化が起こり、立体規則性が低下すると考えられる。
したがって、プロピレン重合体の立体規則性の測定値が目標値より高い場合には重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を増加させる(a3)。これにより、ドーマント濃度を増加させてプロピレン重合体の立体規則性を低下させることができる。一方、測定値が目標値より低い場合には重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を低減させる(b3)。これにより、ドーマント濃度を低減させてプロピレン重合体の立体規則性を向上させることができる。
精製される不純物は、粗プロピレン中の一酸化炭素,二酸化炭素,水分等の極性化合物,含硫黄化合物,含酸素化合物,含窒素化合物のヘテロ原子を含む化合物を対象とすることが好ましい。
上述のように重合温度は通常0〜200℃で行われる。重合温度が高いと、反応の溶液中に溶解可能な原料プロピレン濃度が低減したり、またメタロセン錯体が配位子振動することでプロピレン挿入時の選択性が低下し、ポリマーの立体規則性の制御性が低減することがある。
したがって、プロピレン重合体の立体規則性の測定値が目標値より高い場合には重合温度を上げる(a4)。これにより、原料プロピレン濃度が低減したり、またメタロセン錯体の配位子振動により、プロピレン重合体の立体規則性を低下させることができる。一方、測定値が目標値より低い場合には重合温度を下げる(b4)。これにより、プロピレン重合体の立体規則性を向上させることができる。
水素の分圧で規則性が制御できる理由は、原料プロピレン濃度が低減された場合、ポリマー鎖のエピメリ化の発生頻度が増加し規則性が低下するためと推定される。
なお、重合温度を大きく変化させるとポリマーの分子量が大きく変化するため、0〜10℃の範囲で調整することが好ましい。また、分子量を変化させず立体規則性のみを変化させる観点から、(a4)及び(b4)の操作は、(a1)〜(a3)及び(b1)〜(b3)のいずれかの操作と組み合わせることが好ましい。
下記の装置及び条件にて13C−NMRスペクトルの測定を行い、プロピレン重合体のメソペンタッド分率[mmmm]を求めた。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/mL
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(容量比90/10)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
粘度計((株)離合社製、商品名:「VMR−053U−PC・F01」)、ウベローデ型粘度管(測時球容積:2〜3mL、毛細管直径:0.44〜0.48mm)、溶媒としてテトラリンを用いて、0.02〜0.16g/dLの溶液を135℃にて測定して、プロピレン重合体の極限粘度を求めた。
重合器のヒートバランスから求められる重合熱量よりプロピレン重合体の重合量を計算し、この重合量を供給触媒流量で割ることで求められる単位触媒量当たりの生産量を触媒活性とした。
以下のようにして、メソペンタッド分率が47.5%(目標値)に制御されたポリプロピレンの製造を行った。
<工程(1)>
撹拌機付きの内容積200Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを25L/h、トリイソブチルアルミニウムを25mmol/hで供給すると共に、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとをモル比1:7.5:160で事前に接触させて得られた触媒成分をジルコニウム換算として1μmol/hで連続供給した。
重合温度を65℃に設定し、反応器へトリイソブチルアルミニウムを25mmol/hで供給し、反応器の気相部の水素濃度が9モル%、反応器内の全圧が1.0MPa(G)に保たれるように、水素と精製カラムを経由させたプロピレンとを連続供給し、重合反応を120分間行った。なお、精製カラムとしては、BASF社製「R3−12」,「R3−17」及び「Selexsorb−COS」、並びにユニオン昭和(株)製「MS−OG491」(商品名)を使用した。
溶媒であるn−ヘプタンを除去して得られたポリプロピレンについて、メソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ51.3mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.93dL/gであった。
メソペンタッド分率が目標値の47.5%よりも高いため、精製カラムの入口に設置した三方弁の開度にて、精製カラムを経由するプロピレンとバイパスを経由するプロピレンとの流量比が1:1となるように調整し、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ50.4mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.91dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(a3)>
実施例1−1で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の47.5%よりも依然として高いため、三方弁を切り替えて精製カラムをバイパスさせたプロピレンのみを原料プロピレンとして反応器に供給し、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ49.4mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.92dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(a2)>
実施例1−2で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の47.5%よりも依然として高いため、重合温度を70℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が1.8モル%、反応器内の全圧が1.0MPa(G)に保たれるように、水素と精製カラムをバイパスさせたプロピレンとを反応器に連続供給し、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ48.4mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.92dL/gであり極限粘度に変動はなく、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(a2)>
実施例1−3で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の47.5%よりも依然として高いため、重合温度を72℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.6モル%、反応器内の全圧が1.0MPa・Gに保たれるように、水素と精製カラムをバイパスさせたプロピレンとを連続供給し、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ47.8mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.92dL/gであり極限粘度に変動はなく、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
以下のようにして、メソペンタッド分率が49.0%(目標値)に制御されたポリプロピレンの製造を行った。
<工程(1)>
撹拌機付きの内容積200Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを25L/h、トリイソブチルアルミニウムを25mmol/hで供給すると共に、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとをモル比1:7.5:160で事前に接触させて得られた触媒成分をジルコニウム換算として2μmol/hで連続供給した。
重合温度を67℃に設定し、反応器へトリイソブチルアルミニウムを25mmol/hで供給し、反応器の気相部の水素濃度が20モル%、反応器内の全圧が1.0MPa(G)に保たれるように、水素と精製カラムを経由させたプロピレンとを連続供給し、重合反応を120分間行った。なお、精製カラムとしては、実施例1−1で用いたのと同じものを使用した。
溶媒であるn−ヘプタンを除去して得られたポリプロピレンについて、メソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ50.6mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.63dL/gであった。
メソペンタッド分率が目標値の49.0%よりも高いため、反応器へ供給するトリイソブチルアルミニウムの量を50mmol/hに変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ49.8mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.63dL/gであり極限粘度に変動はなく、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(a1)>
実施例2−1で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の49.0%よりも依然として高いため、反応器へ供給するトリイソブチルアルミニウムを100mmol/hに変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ49.2mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.63dL/gであり極限粘度に変動はなく、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御することができ、目標の立体規則性のポリプロピレンを得ることができた。
<工程(3)−操作(b1)>
実施例2−2にて目標のポリプロピレンが得られたことから、次に、異なるメソペンタッド分率の50.0%を目標とした製造操作を行った。目標よりも規則性が高いため、反応器へ供給するトリイソブチルアルミニウムを50mmol/hに変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ49.2mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.64dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(b1)>
実施例2−3で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の50.0%よりも依然として高いため、反応器へ供給するトリイソブチルアルミニウムを25mmol/hに変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ50.1mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.63dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、目標の立体規則性のポリプロピレンを得ることができた。
以下のようにして、メソペンタッド分率が49.0%(目標値)に制御されたポリプロピレンの製造を行った。
<工程(1)>
撹拌機付きの内容積200Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを25L/h、トリイソブチルアルミニウムを25mmol/hで供給すると共に、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとをモル比1:7.5:160で事前に接触させて得られた触媒成分をジルコニウム換算で1.5μmol/hで連続供給した。
重合温度を60℃に設定し、反応器へトリイソブチルアルミニウムを25mmol/hで供給し、反応器の気相部の水素濃度が15モル%、反応器内の全圧が1.0MPa(G)に保たれるように、水素と精製カラムを経由させたプロピレンとを連続供給し、重合反応を120分間行った。なお、精製カラムとしては、実施例1−1で用いたのと同じものを使用した。
溶媒であるn−ヘプタンを除去して得られたポリプロピレンについて、メソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ51.3mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.6dL/gであった。
メソペンタッド分率が目標値の49.0%よりも高いため、全圧が0.9MPa(G)で保たれるようにプロピレンの供給量を減らすことにより、反応器の気相部のプロピレン濃度を77.8mol%から58.8mol%まで低下させて、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ49.1mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.4dL/gであった。この結果、反応器中のプロピレン濃度を低下させることによれば、ポリプロピレンの立体規則性を制御できるものの、極限粘度が0.2dL/g低下しており、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御することはできないことがわかった。
以下のようにして、メソペンタッド分率が47.0%(目標値)に制御されたポリプロピレンの製造を行った。
<工程(1)>
(予備重合)
撹拌装置付1Lのオートクレーブに室温、窒素気流下、十分に窒素バブリングしたメタキシレン196mLを加えた。その後、撹拌しながら、トリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液4.5mL(トリイソブチルアルミニウム添加量:9mmol)、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの30mMトルエンスラリー40mL(メタロセン錯体添加量:1.2mmol)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの30mMのトルエンスラリー60mL(ホウ素化合物添加量:1.8mmol)を順に加えた。その後、プロピレンを0.05MPaとなるように導入し、30℃に昇温し、予備重合を開始した。15分後、プロピレン導入を停止し、さらにそのまま30分撹拌することにより、触媒1を含有する触媒溶液を得た(触媒濃度:4mmol/L)。消費したプロピレン流量5.6Lから算出した結果、予備重合におけるポリプロピレン生成量は10.5gであった。
1Lのオートクレーブに、25℃で、窒素気流下、n−ヘプタン400mLを加え、トリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液1.0mL(トリイソブチルアルミニウム添加量:2.0mmol)を投入した。1分間撹拌した後、水素を0.05MPa、プロピレンを全圧0.65MPaになるように導入し、撹拌しながら70℃まで3分程度かけて昇温した。所定圧力、温度に到達後、上記触媒1を含有する触媒溶液0.05mL(触媒1添加量:0.2μmol)を投入し、30分間重合を行った。その後、エタノール5mLを投入し、重合反応を停止した。脱圧後、得られた重合溶液を減圧下、80℃で乾燥することにより、ポリプロピレンを得た。
溶媒であるn−ヘプタンを除去して得られたポリプロピレンについて、メソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ43.8mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.50dL/gであった。
メソペンタッド分率が目標値の47.0%よりも低いため、重合反応におけるトリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液の添加量を0.4mL(0.8mol)に変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ45.1mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.53dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(b1)>
実施例3−1で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の47.0%よりも依然として低いため、重合反応におけるトリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液の添加量を0.2mL(トリイソブチルアルミニウム添加量:0.4mol)に変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ46.8mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.59dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(b1)>
実施例3−2で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の47.0%よりも依然として低いため、重合反応におけるトリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液の添加量を0.05mL(トリイソブチルアルミニウム添加量:0.1mol)に変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ47.1mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.60dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
以下のようにして、メソペンタッド分率が42.0%(目標値)に制御されたポリプロピレンの製造を行った。
<工程(1)>
実施例3−1の重合反応においてトリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液の添加量を0.025mL(トリイソブチルアルミニウム添加量:0.05mmol)に変更し、反応温度を80℃に変更したこと以外は実施例3−1の工程(1)と同様にして重合を行った。
溶媒であるn−ヘプタンを除去して得られたポリプロピレンについて、メソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ44.2mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.37dL/gであった。
メソペンタッド分率が目標値の42.0%よりも高いため、重合反応におけるトリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液の添加量を0.1mL(0.2mol)に変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ43.7mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.39dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(a1)>
実施例4−1で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の42.0%よりも依然として高いため、重合反応におけるトリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液の添加量を0.2mL(トリイソブチルアルミニウム添加量:0.4mol)に変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ43.5mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.36dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
<工程(3)−操作(a1)>
実施例4−2で得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率が目標値の42.0%よりも依然として高いため、重合反応におけるトリイソブチルアルミニウムの2Mヘプタン溶液の添加量を0.4mL(トリイソブチルアルミニウム添加量:0.8mol)に変更して、重合反応を行った。このとき得られたポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]を測定したところ42.1mol%であった。また、極限粘度(η)を測定したところ0.32dL/gであり極限粘度はほぼ変化しておらず、ポリプロピレンの分子量を維持したまま立体規則性を制御できたことがわかった。
Claims (4)
- 立体規則性が制御されたプロピレン重合体の製造方法であって、
工程(1):反応器内に水素及びプロピレンを供給し、遷移金属錯体及び有機アルミニウムの存在下でプロピレンを重合反応させてプロピレン重合体を生成する重合工程、
工程(2):工程(1)で得られたプロピレン重合体の立体規則性(mmmm%)を測定する工程、及び
工程(3):工程(2)で測定されたプロピレン重合体の立体規則性の測定値と予め設定された目標値とを対比し、測定値が目標値より高い場合には下記(a1)〜(a4)の少なくとも1つの操作を行い、測定値が目標値より低い場合には下記(b1)〜(b4)の少なくとも1つの操作を行う制御工程
を含む、プロピレン重合体の製造方法。
(a1)反応器中の有機アルミニウムの濃度を増加させる
(a2)重合工程に供給する水素の分圧を低下させる
(a3)重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を増加させる
(a4)重合温度を上げる
(b1)反応器中の有機アルミニウムの濃度を低減させる
(b2)重合工程に供給する水素の分圧を上昇させる
(b3)重合工程に供給するプロピレン中に含まれる不純物の量を低減させる
(b4)重合温度を下げる - 前記有機アルミニウムが、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド及び有機アルモキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のプロピレン重合体の製造方法。
- 前記遷移金属錯体がキレート型錯体又はメタロセン錯体である、請求項1又は2に記載のプロピレン重合体の製造方法。
- 前記遷移金属錯体が、下記一般式(I)で表される二架橋メタロセン錯体である、請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン重合体の製造方法。
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