JP2014140398A - 生活日用品使用時に感じる快適感や気分の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】人の心理的変化は非常に微小な変化であり、単に日用品の使用前後における脳波や自律神経バランスを測定するだけでは差が見られず、数多く存在する各々の日用品が人の心理に与える影響の違いをつかむことは難しかった。このため、日用品の使用によってもたらされる快適感の測定においては、客観性と精度の両立が課題となっていた。
【解決手段】日用品の使用前後における脳波や自律神経バランス等を測定するだけではなく、日用品の使用前に精神負荷課題を与えて被験者をストレス状態にそろえることで、生活日用品使用時に人が感じる快適感を精度良く評価できる生活日用品評価システム及び生活日用品評価方法を提供することができた。
【選択図】図1

Description

本発明は、生活日用品使用時に人が感じる快適感を精度良く評価できる生活日用品評価システム及び生活日用品評価方法に関する。
一般に、生活日用品の使用感や容器デザインなどが人に与える心理的影響の評価は、官能評価方法によって行われている。しかし、官能評価は、客観性に乏しいため、精度良く心理的影響を評価することはできないという不都合があった。
この問題を解決するために、脳波を測定することによって化粧料を評価する方法 (例えば特許文献1参照) が提案されている。これまでに脳波を測定する装置としては、α 波を測定する装置や、刺激を与えた時に脳が反応する時間 (300 msecあたりに出現する脳波) を測定する装置 (P−300)、随伴陰性変動を測定する装置 (CNV) が知られている。P−300とは、例えば、画面に赤または青の図形がランダムに映し出されるものにおいて、赤が表示される確率を青が表示される確率よりも多くしておき、青が表示 (刺激)された時だけボタンを押すといった課題を与え、青が表示されてから脳がそれに反応することで発生する電位のことである (刺激提示後300 msecあたりに発生する)。人の集中力を反映するものである。また、CNVとは、例えば運動会等で「よ〜い」の掛け声の後にピストルの 「ドン」という音が鳴るが、「よ〜い」の掛け声の後に「ドン」とピストルが鳴ることを予期することで発生する脳波である。陰性の脳波が発生するので陰性変動と呼ばれ、意識の覚醒度を反映するものである。また、脳波以外の心理的変化の測定法として、自律神経活動のバランスを指標とする方法 (例えば、特許文献2参照) が提案されている。しかしながら、人の心理的変化は非常に微小な変化であり、単に日用品の使用前後における脳波や自律神経バランスを測定するだけでは差が見られず、数多く存在する各々の日用品が人の心理に与える影響の違いをつかむことは難しい。
2000−354588号公報 2000−210290号公報
このように従来技術では、脳波や自律神経バランスの測定によって日用品の使用によってもたらされる人の快適感を正確につかむことは難しかった。このため、日用品の使用によってもたらされる快適感の測定においては、客観性と精度の両立が課題となっていた。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、脳波や自律神経バランス等を測定するだけではなく、日用品の使用前に精神負荷課題を与えて被験者をストレス状態にそろえることで、日用品の使用によってもたらされる快適感の測定精度が良好になることを見出した。
従って、本発明は下記の生活日用品使用時の人の快適感を評価する方法を提供する。
〔1〕精神負荷試験、自律神経活動測定及び心理指標試験を用いることを特徴とする生活日用品使用時の人の快適感を評価する方法。
〔2〕精神負荷試験が、2桁の数字の暗算による試験である請求項1記載の生活日用品使用時の人の快適感の評価方法。
〔3〕自律神経活動測定が副交感神経活動と交感神経活動を測定するものである請求項1〜2記載の生活日用品使用時の人の快適感の評価方法。
〔4〕心理指標試験が、Visual Analogue Scale法による試験である請求項1〜3記載の生活日用品使用時の人の快適感の評価方法。
本発明によれば、客観性と精度に優れた、日用品の使用によってもたらされる人の快適感測定方法を提供できる。
図1は本発明の評価方法を説明するためのフローチャートである。 図2は心理指標課題の回答用ディスプレイの模式図である。
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の人の快適感測定方法は、精神負荷試験、自律神経活動測定及び心理指標試験よりなる。
精神負荷課題としては、例えば計算問題、フリッカーテスト、パズル問題、ストループ課題など、集中して取り組むことが必要とされるあらゆる精神負荷課題があてはまり、中でも計算問題は設計が簡便であり、負荷がかかる度合いを時間や難易度により調整できる為に最適である。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて実施できる。
自律神経活動測定としては、自律神経活動を検出できるものであれば、いかなるものを用いても良いが、例えば、脈波のスペクトルを測定するもの、心拍変動のスペクトル (心電図) を測定するもの、皮膚温度を測定するもの、血圧を測定するもの、瞳孔径を測定するものなど、あらゆる自律神経活動の測定法があてはまり、中でも脈波は他の指標に比べて簡便に測定でき、身体拘束も極めて少ない為に最適である。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて実施できる。
また、自律神経活動に限らず、あらゆる生理活動測定も併用でき、脳血流量、免疫グロブリン、コルチゾール、アミラーゼ等の様々な生理指標で測定できる。脈波や心拍の変動を高速フーリエ変換等のスペクトル解析をして得られる心拍変異度 (Heart Rate Variability) は自律神経活動の指標であり、心拍間隔(R - R 間隔)や心拍変動 (ゆらぎ) の周波数を解析することで、自律神経 (交感神経や副交感神経) 活動の変化を知ることができる。心拍変異度には様々な項目があり、以下説明する。
HR(心拍数):所定時間内における平均心拍数。交感神経が優位になると増加し、副交感神経が優位になると減少する。
pNN50:隣接する心拍間隔(R―R間隔)の差が50msecを超える比率。主に副交感神経活動を反映する。
LnHF(High Frequency成分の対数) : 0.15Hz〜0.4Hzの周波数帯のパワースペクトル。交感神経や副交感神経の活動を反映する。
心理指標試験としては、心理指標を測定できるものであれば、いかなるものを用いても良いが、例えば、Visual Analogue Scale法 (以下、VAS法)、7段階評定法、5段階評定法などがあり、中でもVAS法は心理の変化を最も精度良く測ることができるため最適である。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて実施できる。また、実施形態は紙への記述式、ディスプレイへの入力式、タッチパネル上での入力式、口頭での回答式など、あらゆる形式で実施できる。
以下、日用生活品の代表例として洗口剤を使用させた際の実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
[被験者]
20〜30代の30名の健常な女性被験者
[実験手順]
実験フローを図1に示す。被験者は自律神経活動測定装置を装着した後、5分間安静状態で椅子に座った。自律神経測定装置は実験開始から終了まで常に装着しており、常に測定している。5分間の安静状態が終了した後、3分間計算課題に取り組み、計算課題終了後に洗口剤を30秒間使用し、再度安静状態にて9分間椅子に座った。自律神経活動測定装置は実験開始から終了まで常に測定を行った。今回は株式会社YKCのパルスアナライザープラスを使用し、脈波測定を行った。心理評価試験ははじめの安静状態時、計算課題直後、洗口剤使用直後、洗口剤使用3分後、洗口剤使用6分後、洗口剤使用9分後に実施した。今回は2次元気分尺度を用い、コンピューターディスプレイ上で各心理指標について <非常にあてはまる〜全くあてはまらない> の間で評価させた。洗口剤には、使用感の異なる市販品Aと市販品Bを用いた。なお、実験は概日リズムを考慮して、被験者ごとに同じ時間帯で実験を行った。また、計算課題としては、2桁の数字の足し算又は引き算をディスプレイ上に2秒間隔で表示させていき、被験者に口答させた。
[測定項目]
(1)心理指標試験
下記9つの心理指標について、左端の「全くあてはまらない」から右端の「非常にあてはまる」の間で各自の心理状態にあてはまる位置に縦線を引いてもらった。なお、左端を0ポイント、右端を100ポイントとして、縦線を引いた位置の端からの距離をポイント化し心理状態を数値化した。図2に心理指標課題の回答用ディスプレイの模式図を示す。
・ 快適である
・ リラックスしている
・ 心が穏やかである
・ わくわくしている
・ 満ち足りた気分である
・ リフレッシュしている
・ 爽やかである
・ ゆううつである
・ イライラしている
(2)自律神経指標
株式会社YKCのパルスアナライザープラスを用いた。左手の人指し指に脈波を測定するための赤外線センサーを装着し、2分30秒間の脈波を測定した。心拍変動の微細な変化を波形分析し、心拍数・心拍間隔・高周波成分の変化をモニターする事で交感神経や副交感神経の活動及び均衡状態を確認し、被験者のストレス状態の程度を数値化した。
[結果]
快適感を評価するにあたり、洗口剤を使用する前の測定結果と使用した後の測定結果における変化量又は変化率を算出し、洗口剤を使用することの効果を求めた。なお、計算課題後に心理指標における気分の低下や自律神経活動の亢進が確認されなかった被験者は精神負荷がかかっていないと判断し評価対象からは外し、精神負荷がかかった20名を評価対象とした。
(1) 心理指標試験の結果
結果を表1に示す。この結果に示されるように、市販品Aの使用後において「快適である・リラックスしている・心が穏やかである」という項目のポイントが、市販品Bの使用後よりも顕著に増加したことから、市販品Aはスポーツ観戦等で感じるような活動的かつ興奮的な快適感よりも、鎮静的でヒトの心身を落ち着かせるような心地よい快適感を提供する効果が高い製品であることがわかる。また、「ゆううつである・イライラしている」という項目において、市販品Aの使用後の方が市販品Bの使用後よりも減少したことから、快適感とは相反する要素であるストレスや憂鬱な気分を軽減する効果が高いことも示された。
(2)自律神経活動測定の結果
結果を表2に示す。この結果に示されるように、市販品Aの使用後において交感神経活動の指標である「HR」が市販品Bの使用後よりも減少したことから、市販品Aの方が心身にかかるストレスを軽減する効果が高いことがわかる。また、市販品Aの使用後の方が市販品Bの使用後よりも副交感神経の指標である「pNN50」と「LnHF」が増加したことから、心身の緊張状態をほどき、リラックスさせる効果が高いことも示された。
以上の結果より、市販品Aは市販品Bに比べて鎮静的で心身を落ち着かせるような快適状態にする効果が高く、さらに憂鬱な気分等も解消する効果が高いことが示された。また、自律神経活動測定によって、市販品Aは交感神経活動を抑制し、逆に副交感神経を亢進すること、すなわち心身のストレスを軽減する効果が高いことが示された。このように、精神負荷課題を実施した後に生活日用品を使用させ、心理指標試験と自律神経活動測定を実施すれば、ヒトが感じる快適感を精度良く評価できることが確認された。

Claims (4)

  1. 精神負荷試験、自律神経活動測定及び心理指標試験を用いることを特徴とする生活日用品使用時のヒトの快適感を評価する方法。
  2. 精神負荷試験が、2桁の数字の暗算による試験である請求項1記載の生活日用品使用前後のヒトの快適感の評価方法。
  3. 自律神経活動測定が副交感神経活動と交感神経活動を測定するものである請求項1〜2記載の生活日用品使用によるヒトの快適感の評価方法。
  4. 心理指標試験が、Visual Analogue Scale法による試験である請求項1〜3記載の生活日用品使用によるヒトの快適感の評価方法。




































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