JP2014139255A - 慢性虚血における亜硝酸塩の使用 - Google Patents

慢性虚血における亜硝酸塩の使用 Download PDF

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Abstract

【課題】慢性組織虚血を有する対象を治療する方法を提供すること。
【解決手段】虚血組織における血管の成長をもたらすのに十分な期間及び量で、無機亜硝酸塩又はその製薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を対象に投与する工程を有する方法。前記対象は、例えば、末梢動脈障害、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、又は創傷治癒不全などの病状を有すると診断される可能性があり、その結果、組織への血液供給が持続的又は再発的に制限される。前記方法は、好適な対象を特定する工程を有することが出来る。
【選択図】なし

Description

[関連出願の相互参照]
本出願は、2007年11月15日に米国に出願された米国仮出願番号61/003150の出願日の利益を主張する。米国仮出願番号61/003150の利益を主張し得るいかなる米国出願のためにも、先の出願の内容はその全体を参照することにより本明細書に援用される。
[連邦政府支援の研究又は開発]
下記の研究は、国立衛生研究所が付与する助成金番号HL080482の支援を受けた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
[技術分野]
本発明は、慢性組織虚血の治療に有用な方法及び組成物に関するものであり、より詳しくは、虚血組織における新生血管の成長を誘導する方法に関する。
慢性組織虚血、すなわち、組織への血液供給の持続的制限は、組織機能を害し、組織及び臓器にダメージを与えることとなる。心臓、脳、腎臓、皮膚、手足又は消化管などの重大な臓器系又は身体部位における慢性組織虚血は、人間の罹患率及び死亡率に有意に寄与し、患部領域への血液供給を回復させる治療方針に対する継続的な需要が存在する。
本発明は、一部には、疾患、外傷又は先天性欠損に関連する慢性組織虚血など、慢性組織虚血を治療するために用いられ得る組成物及び方法を本発明者が見出したことに基づく。本発明の方法に含まれる慢性組織虚血は、組織への血液供給が持続的に又は再発的に制限されることになる幅広い範囲の病状のいずれからも生じる可能性があり、例えば、末梢動脈疾患、1型若しくは2型の糖尿病、アテローム性動脈硬化症、(不適切な血液供給による四肢のけいれん痛として現れ得る)間欠性跛行、重大な肢(手足)の虚血性疾患、脳卒中、心筋梗塞、炎症性腸疾患、及び末梢神経障害;創傷、熱傷、裂傷、挫傷、骨折、感染症若しくは外科手術などの外傷性損傷;ヘルニア、心臓欠陥及び消化器欠陥などの先天性奇形、などの疾患が挙げられる。従って、慢性組織虚血は、例えば、骨格筋、平滑筋、心筋、神経組織、皮膚、間葉組織、結合組織、胃腸組織、及び骨など、様々な組織型において起こり得る。
前記方法が特定の病状又は組織型に関して記載されているか否かに関わらず、該方法は、無機亜硝酸塩又はその製薬学的に許容できる塩を含む製薬学的に許容できる組成物を、治療が必要な対象(例えば、人間の患者)に投与することにより行うことが出来る。無機亜硝酸塩又はその製薬学的に許容できる塩は、様々な方法で調製することができ、製薬学的に許容できる担体を含んでいてもよい。読みやすくするために、あらゆる場合において「又はその製薬学的に許容できる塩」というフレーズを繰り返して記載しないであろう。
無機亜硝酸塩が用いられ得る場合には、当該化合物の製薬学的に許容できる塩も用いられてよいものとする。
従って、本発明は無機亜硝酸塩の生理学的に許容できる組成物、及び、例えば慢性組織虚血疾患を有すると診断された患者に当該組成物を投与できる方法に焦点を当てる。これらの方法は、(a)慢性組織虚血疾患を経験している又は経験する可能性の高い対象(例えば、人間の患者)を特定する工程;及び(b)前記対象に、無機亜硝酸塩を含む組成物を、虚血組織中の血管成長を刺激するのに十分な期間と量で与える工程を有し得る。亜硝酸塩は、治療前には存在しなかった血管の形成や、既存の血管のサイズ増大をもたらし得る。サイズの増大は、新しい組織(血管壁に加わった新たな組織など)の形成によるものであり、単純な血管拡張の結果ではない。無機亜硝酸塩による治療の影響を受けやすい患者は、硝酸塩でも治療され得る。「対象」、「個体」及び「患者」の用語は、互いに代替可能に用いられてもよい。この方法は人間の患者に適用することを明確に意図してはいるが、本発明はそのように限定されない。例えば、猫、犬、馬、牛及び他の家畜などを含む家畜も治療することが出来る。
本発明の製薬学的に許容できる組成物は、例えば、亜硝酸(HNO2)の塩若しくはエステル又はその製薬学的に許容できる塩などの無機の亜硝酸塩(Nitrite,ニトリット)を含む。本明細書において用いられるように、「製薬学的に許容できる塩」とは、開示された化合物の誘導体であって、親化合物の既存の酸又は塩基部分を覆うことによってその塩形態に改変されているものを意味する。製薬学的に許容できる塩の非限定的な例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられる。本発明の製薬学的に許容できる塩には、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成された、親化合物の従来の非毒性の塩が含まれる。本発明の製薬学的に許容できる塩は、従来の化学方法により、塩基性部分又は酸性部分を有する親化合物から合成できる。一般的に、そのような塩は、水中若しくは有機溶媒中又はこれら2つの混合液中で、又はで、遊離酸又は塩基形態のこれらの化合物を、化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることにより製造できる。一般的に、エーテル、エチルアセタート、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水溶媒が好ましい。
好適な製薬学的に許容できる塩の例としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又は亜硝酸カルシウムが挙げられる。しかしながら、本発明はそのように限定されるものではなく、例となる塩のリストは「Remington's Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418」及び「Journal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)」の中に見出される。これらは全体を参照することにより本明細書に援用される。本発明の特定の亜硝酸塩化合物は、例えば水和形態などの溶媒和形態で存在してもよいし、非溶媒和形態で存在してもよい。亜硝酸塩は、化学式NO2 -を有し、水中でイオンとして存在してもよい。
亜硝酸ナトリウムは、化学式NaNO2を有し、一般的に水に溶解してナトリウムイオンNa+と亜硝酸イオンNO2 -を形成する。本発明は、そのようなあらゆる溶媒和形態の亜硝酸塩化合物をも包含するものとする。
無機亜硝酸塩は、虚血組織における血管成長をもたらすのに十分な期間及び量で投与される。新生血管の成長は、虚血組織の血行再建をもたらすいかなるプロセスに由来してもよく、例えば、血管形成、すなわち、既存の血管からの新たな毛細血管の枝の出芽;動脈形成、すなわち、前から存在する細動脈接続部の真の側副動脈への成長;又は、血管形成と動脈形成との組み合わせが挙げられる。治療期間中、新生血管の成長を、例えば血管造影法、高分解能かん流用コントラストパルスシークエンス(CPS:contrast pulse sequence)超音波画像診断、バイオマーカーなどのイメージング技術を用いて直接的にモニターしてもよく;間接的に、すなわち臨床評価項目によりモニターしてもよい。例えば、亜硝酸塩は、間欠性跛行、安静時の跛行、神経障害、又は組織創傷治癒不全などの慢性虚血の徴候が改善するまでを投与されてもよい。臨床的利点の評価は、虚血組織と、対応する非虚血組織との比較を必要としてもよい。特定の臨床的評価項目の選択は、部分的には、原因となっている病状の性質に依存してもよい。例えば、間欠性跛行の停止又は改善が末梢動脈疾患や糖尿病の患者にとって有用であってもよく;皮膚潰瘍の治癒が創傷治癒不全の患者にとって有用であってもよく;胃腸痛、下痢、便秘の緩和が腸管虚血に苦しむ患者にとって有用であってもよい。
1投与量当たりの無機亜硝酸塩の量は変動し得る。例えば、対象は、約0.05μg/kg(1kg当たり0.05μg)から約5000μg/kgを摂取することができ、例として約0.05、1、5、10、25、50、100、200、250、300、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1250、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、又は5000μg/kgを摂取することが出来る。例えば、対象は、最大で約165μg/kg、16.5μg/kg又は8.25μg/kgを摂取することが出来る。一般的に、亜硝酸塩は、その血中濃度が0.6μMを超えないような量で投与される(すなわち、対象中で0.6μMを越えない亜硝酸塩の血中濃度を作り出すのに十分な用量で亜硝酸塩は投与される)。例えば、亜硝酸塩は、その血中濃度が0.0005μM、0.001μM、0.002μM、0.003μM、0.004μM、0.005μM、0.01μM、0.02μM、0.03μM、0.04μM、0.05μM、0.1μM、0.15μM、0.2μM、0.25μM、0.3μM、0.35μM、0.4μM、0.45μM、0.5μM、0.55μM又は0.6μMを超えないような量で投与される。従って、例示的用量は、対象中で最大で約0.03μM、0.003μM、又は0.0015μMの亜硝酸塩の血中濃度を作り出すことができる。
治療の頻度もまた変動してよい。1日に1回以上(例えば、1日に1回、2回、3回、4回、5回若しくは6回)、又は数時間おきに(例えば、2、4、6、8、12若しくは24時間おきに)、対象を治療することが出来る。治療の時間経過は、例えば、2日、3日,4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日又は11日以上の期間などの、変動する継続期間を有していてもよい。例えば、治療は3日間に渡って1日に2回であってもよく、7日間に渡って1日2回であってもよく、10日間に渡って1日2回であってもよい。治療サイクルは、例えば、1週間、半月又は1ヶ月のインターバルで繰り返されてもよく、これらの期間は治療しない期間によって隔てられる。治療は、1回の治療であってもよく、対象の寿命が続く限り続いてもよい(例えば、長年)。
前記組成物は、様々な方法で対象に投与することができる。例えば、前記組成物は、経皮投与してもよく、あるいは、静脈、皮下、舌下、頭蓋内、筋肉内、腹腔内若しくは肺内に注射(注入)してもよい。経口製剤もまた、本発明の範囲内である。治療計画は、当業者が一般的に考える様々な要因に依存して変動し得る。これらの要因には、投与経路、製剤の性質、患者の病気の性質、対象のサイズ、体重、表面積、年齢、性別、患者に投与されている他の薬、及び担当医の判断が含まれる。薬物療法、免疫療法又は手術(例えば、アスピリン療法、スタチン療法、又は脱感作療法)などの慢性組織虚血用の他の治療と一緒に又は該治療に加えて、前記組成物を投与することが出来る。
本発明の方法の影響を受けやすい疾患には、慢性虚血を示すあらゆる疾患が含まれ得る。動脈の狭窄又は閉塞により慢性組織虚血になる病状の非限定的な例としては、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、急性冠動脈症候群、冠動脈疾患(CAD)、脳卒中、腸管虚血、及び末梢動脈疾患が挙げられる。また、例えば外傷性損傷や外科手術などの創傷から生ずる慢性組織虚血も本発明に包含される。
特に断りがない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明の関連する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載した方法及び材料に類似又は相当する方法及び材料を、本発明を実施及びテストするのに用いることが出来るが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及する全ての出版物、特許出願、特許及び他の参照文献は、全体を参照することにより援用される。矛盾する場合には、定義を有する本明細書が優先されるであろう。また、材料、方法及び実施例は例示的なものに過ぎず、限定することを意図するものではない。
本発明の1以上の実施態様の詳細は、添付図面及び下記に記載されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかであろう。
図1A,1B、1C及び1Dは、長期亜硝酸ナトリウム治療が、NO依存的に虚血性後肢の血流を回復したことを実証する分析結果を示すものである。虚血性後肢の血流に対する長期亜硝酸ナトリウム治療の効果。図1Aは、経時的な虚血性後肢の血流にについて、PBSコントロールと比較した場合の様々な用量の長期亜硝酸ナトリウム治療の効果を示すものである。図1Bは、虚血性後肢の血流について、亜硝酸ナトリウム治療に加えて1mg/kgのカルボキシPTIO治療を行った場合の効果を示すものである。図1Cは、虚血性後肢の血流について、165μg/kgの亜硝酸ナトリウム注射した場合の効果を示すものである。図1Dは、虚血性後肢の血流について、PBS注射をした場合の効果を示すものである。「*」は、各時点においてPBSコントロールに対してp<0.01であることを意味し;「#」は、各時点における165μg/kgの亜硝酸ナトリウムと165μg/kgの亜硝酸ナトリウム+カルボキシPTIOとを比較してP<0.01であることを意味する。 図2A及び図2Bは、長期亜硝酸ナトリウム治療が非虚血性後肢の血流量を変化させなかったことを実証する分析結果を示す。図2Aは、PBSの腹膜内注射を受けての非虚血性後肢の血流量を示す。図2Bは、165μg/kgの亜硝酸ナトリウムの腹膜内注射を受けての非虚血性後肢の血流量を示す。 図3は、虚血性後肢の血流について、様々な用量の長期亜硝酸ナトリウム治療を行った場合の効果の分析結果を示すものである。 図4A、4B、4C、4D、4E及び4Fは、長期亜硝酸ナトリウム治療がNO依存的に虚血組織の血管密度を増大させたことを実証する分析結果を示すものである。図4A及び4Bは、それぞれ亜硝酸ナトリウム治療した動物及び硝酸ナトリウム治療した動物由来の、7日目のCD31(赤色)及びDAPI核(青色)染色した虚血腓腹筋の筋組織の代表的なイメージを示すものである。図4C及び4Dは、それぞれ、165μg/kgの亜硝酸ナトリウム治療及び硝酸ナトリウム治療に対する3日目及び7日目の虚血腓腹筋の筋組織の血管密度を示すものである。図4E及び4Fは、それぞれ、165μg/kgの亜硝酸ナトリウム+カルボキシPTIOに対する3日目及び7日目の虚血腓腹筋の筋組織の血管密度を示すものである。(スケールバー、150μm)。 図5A、5B及び5Cは、高用量の亜硝酸ナトリウム及び非虚血性の亜硝酸組織からの血管密度測定値の分析結果を示すものである。図5A及び5Bは、それぞれ、3日目及び7日目における3.3mg/kgの亜硝酸ナトリウム治療及び硝酸ナトリウム治療に対する虚血腓腹筋の筋組織の血管密度を示すものである。図5Cは、PBSコントロール及び165μg/kgの亜硝酸ナトリウム治療を受けたマウスの、7日目の非虚血性腓腹筋組織における血管密度の測定値を示すものである。 図6A、6B、6C及び6Dは、長期亜硝酸ナトリウム治療がNO依存的に内皮細胞の増殖を刺激したことを示す実験結果を表すものである。図6A及び6Bは、それぞれ、PBS及び亜硝酸ナトリウムで治療した動物の3日目の虚血腓腹筋組織を、Ki67増殖マーカー(緑)、CD31(赤色)及びDAPI核(青色)で染色した代表的なイメージを表すものである。図6Cは、PBS治療した組織及びcPTIO添加・非添加で亜硝酸ナトリウム治療した組織における、Ki67とDAPI核染色との共局在の量を表すものである。図6Dは、PBS治療した組織及びcPTIOを加えて亜硝酸ナトリウム治療した組織における、Ki67とCD31染色との共局在の測定値を表すものである。「*」は、亜硝酸ナトリウムとPBS又は亜硝酸ナトリウム+PTIOとを比較して、p<0.001を意味する。(スケールバー、150μm) 図7A、7B、7C、7D及び7Eは、長期亜硝酸ナトリウム治療が血液及び組織の亜硝酸塩レベルを変えたことを実証する実験結果を表すものである。図7Aは、PBSコントロール及び亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)に対する、3日目及び7日目の血液亜硝酸塩レベルを表すものである。「*」は、治療とPBSコントロールの血液亜硝酸塩レベルとを比較して、P<0.01であることを意味する。図7B及び図7Cは、それぞれ3日目及び7日目における、PBS治療のコントロールと亜硝酸ナトリウム治療の動物の、組織の亜硝酸塩レベルを表す。「*」は、虚血組織の亜硝酸塩レベルと非虚血組織の亜硝酸塩レベルとを比較して、P<0.01であることを意味する。図7D及び図7Eは、虚血性後肢及び非虚血性後肢における、それぞれ3日目及び7日目のPBS治療を受けた動物と亜硝酸ナトリウム治療を受けた動物での、βアクチンの発現に対して標準化された全eNOSタンパク発現を表すものである。 図8A、8B、8C及び8Dは、組織のNO代謝産物レベル及びcGMPレベルに対する長期亜硝酸ナトリウム治療の効果を分析した実験結果を表すものである。図8A及び図8Bは、それぞれ3日目、7日目における、PBSコントロール及び165μg/kgの亜硝酸ナトリウムに対する非虚血組織及び虚血組織中のSNO+XNOレベルの量を表すものである。図8C及び8Dは、それぞれ3日目、7日目における、PBSコントロール及び165μg/kgの亜硝酸ナトリウムに対する非虚血組織及び虚血組織中のcGMPの全タンパク質量(pg/mg)を示すものである。 図9A、9B、9C、9D及び9Eは、長期の亜硝酸ナトリウム治療が虚血組織の血流量を急激に高め、動脈形成を刺激することを実証する実験結果を表すものである。図9A及び9Bは、それぞれcPTIOがない場合及びcPTIOがある場合での、様々な時点における、165μg/kgの亜硝酸ナトリウム誘導性の慢性虚血組織の血流量の急激な変化を表すものである。図9Cは、PBS治療を受けたコントロールと亜硝酸ナトリウム治療を受けた動物における動脈枝の数を表す。図9D及び9Eは、それぞれ亜硝酸塩治療及びPBS治療を受けたマウスの、7日目の虚血性後肢における動脈脈管構造の血管鋳型を表すものである。「*」は、硝酸ナトリウムに対してP<0.01であることを意味する。 図10は、亜硝酸ナトリウムの単回ボーラス腹腔内(I.P.)注射が虚血性後肢の血流量を回復させなかったことを実証する実験結果を表す。 図11は、遅延亜硝酸塩治療が虚血性後肢の血流量を回復させたことを実証する実験結果を表すものである。「*」は、各時点における亜硝酸ナトリウムとPBSとを比較してP<0.01であることを意味する。 図12は、継続的な亜硝酸塩治療が創傷治癒を高めることを実証する実験結果を表すものである。(「*」は、各時点における亜硝酸ナトリウムとPBSとを比較してP<0.01であることを意味する。) 図13は、亜硝酸ナトリウムが、Db/Db糖尿病マウスの虚血性後肢の血流量を回復させたことを実証する実験結果を表すものである。(「*」は、各時点における亜硝酸ナトリウムとPBSとを比較してP<0.01であることを意味する。)
様々な図中の同類の符号は、同類の要素を意味する。
[発明の詳細な説明]
慢性組織虚血を治療する本発明の方法を以下に記載する。これらの方法は、慢性組織虚血を引き起こし得る様々な病状のいずれかを有する対象に適用することができ、該対象のためになると期待される。当該方法は、特に、無機亜硝酸塩又は無機亜硝酸塩を含む医薬組成物を、慢性組織虚血を有する対象に投与すると、該虚血組織中の新生血管が選択的に成長することを本発明者が見出したことに基づく。
<<組成物>>
本発明の製薬学的に許容できる組成物は、例えば、亜硝酸(HNO2)の塩若しくはエステル又はその製薬学的に許容できる塩などの無機亜硝酸塩を含む。亜硝酸イオンはNO2 -である。より一般的には、亜硝酸塩化合物は、亜硝酸の塩又はエステルである。亜硝酸塩の非限定的な例としては、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム及びバリウムなどのアルカリ土類金属塩;及び、アミン塩基及び無機塩基などの有機塩基の塩が挙げられる。本発明の化合物は、その中間体及び最終化合物で生ずる全ての同位体原子をも含む。同位体には、同一の原子番号であるが質量数の異なる原子が含まれる。例えば、水素の同位体には、三重水素及び重水素が含まれる。あらゆる無機亜硝酸塩又はその製薬学的に許容できる塩に関し、本明細書において用いられる「化合物」とは、描かれた構造のあらゆる立体異性体、幾何異性体、互変異性体及び同位体を含むことを意図する。全ての化合物及びその製薬学的に許容できる塩は、溶媒和形態又は水和形態をも含むことを意図する。
本発明の化合物は、化学合成の分野における通常の知識を有する者にとって公知の様々な方法により、製造することが出来る。本発明の化合物は、合成化学の分野における公知の合成方法又は当該分野における通常の知識を有する者によって理解されるそのバリエーションの合成方法とともに、下記の方法を用いて合成することが出来る。亜硝酸塩を製造する方法は当該技術分野においてよく知られており、幅広い範囲の前駆体及び亜硝酸塩が市場で容易に入手出来る。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の亜硝酸塩は、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)の混合物を、対応する金属水酸化物溶液と反応させることにより合成することができ、対応する硝酸塩の熱分解を介しても合成することが出来る。他の亜硝酸塩は、対応する硝酸塩の還元により得ることが出来る。
本発明の化合物は、下記の一般的方法及び手順を用いて、容易に入手可能な出発物質から製造することが出来る。別段の定めがない限り、一般的又は好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)がある場合でも、他のプロセス条件を用いることも出来ると理解されるであろう。最適な反応条件は、使用する特定の反応物質又は溶媒によって変化してもよいが、そのような条件はありふれた最適化手順により当業者が決定することが出来る。
本発明の化合物の原材料や当該化合物を得る方法に関わらず、当該化合物は、その使用に応じて調合され得る。例えば、該化合物は、組織培養中の細胞に適用するための組成物や患者に投与するための組成物中に調合され得る。調合薬として用いる場合には、本発明の化合物のいずれも医薬組成物の形態で投与することが出来る。これらの組成物は、製薬学分野においてよく知られた方法で製造することができ、局所治療を目的とするか全身治療を目的とするかに応じて及び治療する領域に応じて、様々な経路で投与することができる。投与は局所投与(眼投与、並びに、鼻腔内投与、膣内投与及び直腸投与を含む粘膜への投与を含む)、肺投与(例えば、噴霧器などによる、粉末又はエアロゾルの吸入又は送気による投与;気管内投与、鼻腔内投与、表皮投与及び経皮投与)、眼投与、経口投与又は非経口投与であってもよい。眼投与の方法には、局所的投与(点眼)、結膜下注射、眼周囲注射、硝子体内注射、バルーン付きカテーテルによる導入、又は、結膜嚢内に外科的に置かれた眼内挿入物による導入が含まれ得る。非経口投与には、静脈注射若しくは注入、動脈注射若しくは注入、皮下注射若しくは注入、腹腔内注射若しくは注入、筋肉内注射若しくは注入;又は、髄腔内投与若しくは脳室内投与などの頭蓋内投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であってもよく、あるいは、例えば、持続性注入ポンプによるものでもよい。局所性投与用の医薬組成物及び製剤には、経皮貼付、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、坐薬、スプレー、液体、粉末などが含まれていてもよい。従来の医薬担体、水性基剤、粉末基剤、油性基剤、増粘剤などが必要又は所望されてもよい。
本発明には、活性成分として本明細書に記載された1種以上の化合物と、1種以上の製薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物も含まれる。本発明の組成物を製造する際、一般的に活性成分は、賦形剤と混合されるか、賦形剤により希釈されるか、あるいは、例えばカプセル、小袋、紙若しくは他の容器の形態の担体などの中に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、該賦形剤は固体状、半固体状又は液体状の物質(例えば、生理食塩水)であってよく、該賦形剤は活性成分のビヒクル(vehicle)、担体又は媒体として作用する。従って、前記組成物は、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、小袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、(固体として又は液体媒体中での)エアロゾル、例えば10質量%以下の活性化合物を含む軟膏、軟及び硬ゼラチンカプセル、坐薬、無菌注射溶液及び無菌包装粉末の形態であってよい。当該技術分野において知られているように、希釈剤の種類は、目的とする投与経路に応じて変えることが出来る。得られた組成物は、防腐剤などの添加剤を含むことが出来る。前記化合物は、装置(例えば、カテーテル)の表面に塗られてもよいし、又は、ポンプ、パッチ若しくは他の薬物投与装置中に含まれていてもよい。本発明の治療薬は、単独で投与することも出来るし、あるいは、製薬学的に許容できる賦形剤又は担体(例えば生理食塩水)の存在下、混合物中で投与することも出来る。賦形剤又は担体は、投与方法及び投与経路に基づいて選択される。好適な医薬担体及び医薬製剤用の医薬必需品は、この分野ではよく知られた参考文献である「Remington's Pharmaceutical Sciences(E.W.Martin)」、及び、「USP/NF(United States Pharmacopeia and the National Formularly)」に記載されている。
製剤を調製する際、他の成分と混ぜ合わせる前に、活性化合物を製粉して適切な粒径にすることが出来る。該活性化合物が実質的に不溶性である場合には、該化合物を200メッシュ(mesh)未満の粒径に製粉することが出来る。該活性化合物が実質的に水溶性である場合には、例えば約40メッシュなど、製剤中で実質的に均一な分布になるように該粒径を製粉により調節することが出来る。
好適な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、でんぷん、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースが挙げられる。前記製剤は更に下記のものを含むことが出来る:滑石、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油などの平滑剤;湿潤剤;乳化剤及び懸濁化剤;メチル−及びプロピルヒドロキシ−ベンゾアートなどの保存剤;甘味料;及び香料添加剤。当該技術分野において公知の手順を用いて患者に投与した後に、活性成分が急速放出、持続放出又は遅延放出するように、前記医薬組成物を調製することが出来る。
前記組成物は、単位投薬量形態(単位剤形)(unit dosage form)で調製されてもよく、各投薬量には、例えば、約0.1mg〜約50mg、約0.1mg〜約40mg、約0.1mg〜約20mg、約0.1mg〜約10mg、約0.2mg〜約20mg、約0.3mg〜約15mg、約0.4mg〜約10mg、約0.5mg〜約1mg、約0.5mg〜約100mg、約0.5mg〜約50mg、約0.5mg〜約30mg、約0.5mg〜約20mg、約0.5mg〜約10mg、約0.5mg〜約5mg、約1mg〜約50mg、約1mg〜約30mg、約1mg〜約20mg、約1mg〜約10mg、約1mg〜約5mg、約5mg〜約50mg、約5mg〜約20mg、約5mg〜約10mg、約10mg〜約100mg、約20mg〜約200mg、約30mg〜約150mg、約40mg〜約100mg、約50mg〜約100mgの活性成分が含まれる。「単位投薬量形態(単位剤形)」とは、人間の対象及び他の哺乳類用の単位投薬量として適した物理的に分離した単位を意味するものであり、ここで、各単位は、所望の治療効果を得るように計算された所定量の活性物質と、好適な医薬賦形剤とを含む。
錠剤などの固体組成物を調製する場合には、主要な活性成分は医薬賦形剤と混ぜ合わさって、本発明の化合物の均一混合物を含む固体状の予備製剤組成物(preformulation composition)を形成する。これらの予備製剤組成物を均一と言う場合、一般的に、活性成分は該組成物全体に均一に分散しており、その結果、該組成物を、錠剤、丸剤及びカプセルなどの有効性の等しい単位剤形に容易に細分することが出来る。その後、この固体状の予備製剤は、例えば、0.1〜約500mgの本発明の活性成分を含む上記種類の単位剤形に細分される。
本発明の錠剤又は丸剤は、持続性作用の利点を得る剤形となるように、コーティングされ、あるいは組み合わせられていてもよい。例えば、錠剤又は丸剤は、内部投薬量成分(inner dosage component)と外部投薬量成分(outer dosage component)とを有し、後者が前者を包む形であってもよい。これら2つの成分は、腸溶性層により分けることができるが、この腸溶性層は、胃内での分解に耐える働きをし、かつ前記内部成分を完全な状態で十二指腸内に移行させる又はその放出を遅らせる。多くのポリマー酸(polymeric acid)や、ポリマー酸とシェラック(shellac)、セチルアルコール及びセルロースアセタートなどの物質との混合物などの様々な物質を、このような腸溶性層またはコーティング剤として使用することができる。
経口投与又は注射による投与のために本発明の化合物及び組成物を組み込むことの出来る液体形態には、水性溶液、適当風味付けされたシロップ、水性若しくは油性の懸濁液、及び、綿実油、ごま油若しくはピーナッツ油などの食用油を有する風味のある乳濁液、エリキシル剤及び類似の医薬ビヒクルが含まれる。
吸入用又は送気用の組成物には、製薬学的に許容できる水性溶媒、有機溶媒又はこれらの混合液中の溶液及び懸濁液、並びに粉末が含まれる。該液体又は固体組成物は、本明細書に記載され及び/又は当技術分野において公知の好適な製薬学的に許容できる賦形剤を含んでいてもよい。いくつかの実施態様においては、該組成物は、局所的又は全身的作用のために、口又は鼻呼吸経路により投与される。不活性ガスを用いることにより組成物を噴霧することが出来る。噴霧された溶液を噴霧器から直接吸い込んでもよく、あるいは、噴霧器を、フェイス・マスクテント又は間欠陽圧呼吸器に結合してもよい。適切な方法で、製剤を投与する装置から溶液、懸濁液又は粉末の組成物を経口又は経鼻投与することが出来る。
患者に投与する組成物は、1種以上の上記医薬組成物の形態であってよい。これらの組成物については、従来の滅菌技術により滅菌することができ、あるいは、無菌フィルターで濾過してもよい。水性溶液をそのまま使用するために包装してもよく、凍結乾燥してもよい。凍結乾燥した製剤は、投与する前に無菌水性担体と混ぜ合わせられる。一般的に、該化合物製剤のpHは、約3〜11の間であり、例えば、約5〜9の間、6〜7の間、7〜8の間であろう。前記賦形剤、担体又は安定剤を使用することにより、医薬的な塩が形成されるものと理解されるであろう。
医薬組成物中の本発明の化合物の割合又は濃度は、用量、化学特性(例えば疎水性)、及び投与経路などの多くの要因に依存して変化し得る。例えば、非経口投与については、本発明の化合物は、約0.1〜約10%(w/v)の該化合物を含む水性生理緩衝溶液の中で提供され得る。
<<治療方法>>
慢性組織虚血は、身体部位又は身体部位を含む組織への血流量を部分的に、実質的完全に又は完全に減少させる幅広い範囲の病状と関係する。慢性組織虚血は、病気、損傷、不明原因の結果であるかもしれず、遺伝的構成の影響を受けているかもしれない。慢性組織虚血を引き起こす病状にかかわらず、慢性組織虚血を有する患者は、本明細書に記載された無機亜硝酸塩を含む製薬学的に許容できる組成物を用いた治療の対象である。治療により、慢性組織虚血の徴候及び症候のいくつか若しくは全てを完全に若しくは部分的に取り除き、該症候の重症度を低下させ、該症候の発症を遅らせ、又は、その後現れた症候の進行若しくは重症度を軽減することが出来る。
<新生血管の成長>
下記に述べるように、本発明の組成物は、虚血組織中で新生血管の成長をもたらすのに十分な期間及び量で投与される。「新生血管の成長」、「新生血管の形成」及び「新生血管の発生」という用語は、互いに置き換え可能な形で用いられてよい。新生血管の成長とは、最初のシグナル伝達事象、内皮細胞の細胞動員(cellular recruitment)、新生血管の形成及び拡大、新生血管と既存の血管との結合を含めた、血管形成のプロセスの全段階を意味する。新生血管の成長は、虚血組織の血管再建又は新血管形成をもたらすあらゆるプロセスから生じてもよく、例えば、血管形成、動脈形成、又は血管形成と動脈形成との組み合わせが挙げられる。「脈管形成」は、典型的には、血管芽細胞からの血管の胚発生を表現するために用いられる。「血管形成」は、一般的に、創傷治癒に必要な生後の生理学的プロセスであると理解される。一般的に、血管形成には、発芽、出芽及び腸重積症による既存の毛細血管からの新たな毛細血管又は毛細血管枝の形成が含まれる。動脈形成、すなわち、既存の細動脈連結部の側副動脈への成長は、一般的に、動脈閉塞後に、既存の相互連結させる細動脈から成熟動脈が形成されることを含むと理解される。動脈形成は血管形成といくつかの特徴を共有するが、形成に至るまでの経路や、最終的な結果が異なり得る。すなわち、動脈形成は、潜在的に、閉塞した動脈に完全に取って換わることが出来るのに対し、血管形成は一般的にそのように取って換わることは出来ない。虚血領域中の毛細血管の数が増加しても、制限的構造が新しい毛細血管の上流にある場合には血流量は増大され得ない;ブロック部位周辺の流量を迂回させる新しい側副血管の形成。また、血管形成及び動脈形成によって生成される構造は、細胞組成の点で異なっている。毛細血管は、血管周皮細胞により支持された内皮細胞によって形成される管である。動脈及び静脈は、多層からなる管であり、すなわち、内皮細胞、周皮細胞及び基底膜から構成される内膜;主に平滑筋細胞及びその細胞外マトリックスから構成される中膜;及び、最も大きな血管内では、主に線維芽細胞とその細胞外マトリックスから構成させる外膜からなる管である。
複数のシグナル伝達経路が、新生血管の成長に貢献する。これらの経路の中心には、構成的に発現されるHIF−1βサブユニット及び酸素により制御されるHIF−1αサブユニットから構成されるヘテロ二量体性の転写因子である、低酸素誘導因子(HIF−1)が存在する。前記HIF−1αサブユニットは、十分にかん流される細胞内で絶えず合成・分解されているが、低酸素条件下では、HIF−1αの分解は抑制され、その結果、HIF−1αが蓄積され、HIF−1βと二量体を形成し、DNA結合し、コアクチベーターが動員され、標的遺伝子の転写活性をもたらす。酸素の供給と需要の不均衡により、低酸素症がもたらされ、これが、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの血管形成サイトカインを細胞に産生させる生理的刺激となる。これらの分泌タンパクは、内皮細胞上の同族受容体(VEGFRs)に結合し、細胞を刺激して発芽血管形成させるシグナル伝達経路を活性化する。VEGFは、内皮細胞内で巨大なシグナル伝達系を引き起こす。VEGF受容体2(VEGFR−2)に結合すると、血管透過性(NOを産生するeNOS)、増殖/生存(bFGF)、移動(ICAMs/VCAMs/MMPs)及び最終的には成熟血管への分化、を様々に刺激する因子の生成を促進するチロシンキナーゼシグナル伝達系が開始される。新生血管の形成に関わる他の成長因子には、例えば、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞の増殖及び分化を促し得るFGF;生存シグナルを統合し得るVEGFR及びNRP−1;血管を安定化させ得るAng1及びTie2;平滑筋細胞を動員し得るPDGF(BBホモ二量体)及びPDGFR;細胞外マトリックスの生成を増大させ得るTGF−β、エンドグリン(endoglin)及びTGF−β受容体;MCP−1;マトリックス巨大分子とタンパク質分解酵素とを結合させ得るインテグリンαVβ3、αVβ5及びα5β1;VE−カドヘリン及びCD31;動脈若しくは静脈の形成を決定し得るエフリン;細胞外マトリックスを再構築し、成長因子を放出・活性化させ得るプラスミノーゲン活性化因子;血管を安定化させ得るプラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1;NOS及びCOX−2;血管芽細胞の分化を制御し得るAC133;並びに、内皮分化転換を制御し得るId1/Id3が含まれる。
虚血組織中の血管内皮細胞を活性化する能力に加えて、VEGF、PLGF及びストロマ細胞由来因子(SDF−1)などの特定の血管形成サイトカインは、骨髄及び他の組織から血管形成及び動脈形成部位への、不均質集団である血管形成細胞の移動及び動員を促進する。これらの応答に加わることの出来る細胞種は、循環血管形成細胞として知られており、内皮前駆細胞、骨髄細胞、間葉細胞、及び造血前駆細胞を含む。
動脈形成は、主に、動脈閉塞後の血流状態の変化により生じる流体せん断応力によって引き起こされるように思われる。動脈形成は、内皮細胞の活性化、基底膜の分解、白血球浸潤、血管細胞の増殖、新生内膜形成、細胞外マトリックスの再構築、及びサイトカインの関与を伴う。より具体的には、機械的応力により、内皮細胞が、直径を増大させるプロセスを開始する化学促進剤を産生する。せん断応力の増大により、血管壁の表面で発現する単球走化性タンパク質−1(MCP−1)分子の数が増加し、TNF−α、bFGF及びMMPのレベルが増大する。MCP−1は、単球が細胞の壁に結合する傾向を高める。
TNF−αは、細胞が発生するための炎症環境を提供する一方、bFGFは内皮細胞における有糸分裂を引き起こすのを助ける。最後に、MMPは、動脈周辺の空間を再構築して、新たな側副動脈の拡大のための空間を提供する。
一酸化窒素(NO)は、血管形成及び動脈形成の両方において、内皮細胞応答を正に制御することが示されている。NOは、VEGFを含む様々な血管形成因子の発現を増大させるが、このVEGFは、他のメディエーターと共に、正のフィードバック機構を介してNOレベルを増大させる。壊れやすい内皮細胞のみからなる新生且つ未成熟の血管の成長を促進するのに加えて、NOは血管周囲の壁細胞を動員する。これにより、血管は安定化し、完全に機能する管路となる。NOはまた、細胞呼吸を緩やかにすることにより虚血ダメージから組織を保護することも出来る。NOは、例えば、Erk1/2及びPKCなどの、いくつかの内皮細胞シグナル伝達経路を調節することが示されている。
心臓血管系におけるNO産生に関与する主な酵素は、多数の分子及びシグナル伝達経路によって制御される内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)である。重要なことに,eNOS活性は、その酵素発現量が直接的にNO代謝産物レベルに比例していることが多いため、NO産生全体にも大きく関与する。NOは脂質二重層を横切って容易に拡散し、その生物学的宿命は、主に金属タンパク質及び他のフリーラジカル種との反応によって決まる。
その典型例は、ヘム酵素である可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の活性化であり、これにより、シグナル伝達系が開始され、血管拡張及び血小板阻害を引き起こす。また、NOは、様々な機構を介して酸化されることにより、亜硝酸塩を形成してもよく、この亜硝酸塩は更に酸化されて硝酸塩(NO3 -)になり得る。
亜硝酸塩及び硝酸塩のいずれも、NOS非依存的な経路から、NO産生制御に関与する。無機亜硝酸塩は、酸素結合型ヘムタンパク質(ヘモグロビン及びミオグロビン)、デオキシヘモグロビン、デオキシミオグロビン、キサンチン、オキシドレダクターゼ、内皮一酸化窒素合成酵素、酸性不均化、及びミトコンドリア電子伝達鎖のメンバー(例えば、全てが潜在的電子供与体であるミトコンドリア・ヘムタンパク質)を含む、様々な機構を介して1電子還元を受けてNOに戻ることが出来る。亜硝酸塩の有する還元によりNOに戻る能力により、亜硝酸塩は、上記の潜在的還元剤の多くが活性である組織虚血などの生物学的条件下において、独特のNOドナーとして分類される。NOは、いくつかの細胞内ターゲットと結合し、S−ニトロソチオール、C−又はN−S−ニトロソ化合物、ニトロシルヘム付加物などの様々なNO含有種を形成する。また、これらのニトロソ生成物は、一定の条件下で遊離し得るNOの生物学的貯留体として機能してもよい。
<投与>
慢性組織虚血を治療する本発明の方法は、虚血組織における新生血管の成長をもたらすのに十分な期間及び量で無機亜硝酸塩を投与することにより行われる。
組成物の投与量及び頻度は、例えば、投与するもの、患者の状態、投与方法などに依存して変動し得る。治療的使用において、慢性組織虚血又はその合併症の症候を軽減する又は少なくとも部分的に軽減するのに十分な量で、該組成物を慢性組織虚血に苦しむ患者に投与することが出来る。投与量は、慢性組織虚血の種類及び進行度、慢性組織虚血の重症度、特定の患者の年齢、体重及び一般的状態、選択した組成物の相対的生物学的効能、賦形剤の剤形、投与経路、並びに主治医の判断などの変数に依存する可能性が高い。インビトロ又は動物モデル検査システムから得られる用量反応曲線を用いて、有効量を推定することが出来る。有効量は、例えば、慢性組織虚血の徴候若しくは症候を改善することにより、またはその進行を緩やかにすることにより、所望の臨床転帰をもたらす用量である。
1投与量当たりの無機亜硝酸塩の量は変動し得る。例えば、対象は、約0.05μg/kgから約5000μg/kgを摂取することができ、例として約0.05、1、5、10、25、50、100、200、250、300、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1250、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、又は5000μg/kgを摂取することが出来る。一般的に、血中濃度が0.6μMを超えないような量、例えば、0.0005μM、0.001μM、0.002μM、0.003μM、0.004μM、0.005μM、0.01μM、0.02μM、0.03μM、0.04μM、0.05μM、0.1μM、0.15μM、0.2μM、0.25μM、0.3μM、0.35μM、0.4μM、0.45μM、0.5μM、0.55μM又は0.6μMの亜硝酸塩が投与される。従って、例示的な投与量として、8.25μg/kg、16.5μg/kg又は165μg/kgを挙げることができ、例示的な血中血しょう濃度として、0.0015μM、0.003μM又は0.030μMを挙げることが出来る。
治療の頻度もまた変動してよい。1日に1回以上(例えば、1回、2回、3回、4回若しくは5回以上)、又は数時間おきに(例えば、約2、4、6、8、12若しくは24時間おきに)、対象を治療することが出来る。治療の時間経過は、例えば、2日、3日,4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日又は11日以上の期間などの、変動する継続期間を有していてもよい。例えば、治療は3日間に渡って1日に2回であってもよく、7日間に渡って1日2回であってもよく、10日間に渡って1日2回であってもよい。治療サイクルは、例えば、1週間、半月又は1ヶ月おきに繰り返されてもよく、これらの期間は治療しない期間によって隔てられる。治療は、単回治療であってもよく、対象の寿命が続く限り続いてもよい(例えば、長年)。
<慢性組織虚血>
本発明の方法は、組織若しくは器官への血流量が持続的に減少すること、又は組織若しくは器官への血流が部分的又は完全にブロックされることを基本的な特徴とする、幅広い範囲の病状に適用できる。従って、該方法は、疾患、外傷又は環境ストレスに関連する慢性組織虚血の治療に適用できる。例えば、組織への血流量の減少は、アテロームプラーク(atheromatous plaque)又は凝血塊の存在に起因する硬化及び/又は弾性損失による進行性の動脈の閉塞の結果である可能性がある。また、組織への血流量の減少は、例えば、組織又は器官への血流量を遮断する外傷性損傷又は外科手術などの、外界からの刺激の結果である可能性もある。一般的に、創傷の酸素圧は迅速且つ次第に減少し、創傷領域全体に渡って様々な程度の低酸素症が発現する。低酸素症を引き起こす環境条件もまた、本発明の範囲内である。
本発明に包含される疾患には、例えば、心臓血管疾患、末梢動脈疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞症、重大な肢虚血性疾患、脳卒中、急性冠動脈症候群、間欠性跛行、1型及び2型糖尿病を含む糖尿病、皮膚潰瘍、末梢神経障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸虚血、及び慢性腸間膜虚血が含まれる。
また、本発明の方法は、例えば、創傷、裂傷、熱傷、挫傷、骨折又は慢性感染症などの外傷性損傷といった、外傷に関連する慢性組織虚血にも適用できる。また、例えば、動脈内膜切除などの、外科手術の一部として受ける組織損傷もまた、本発明に含まれる。組織又は臓器移植を伴う手術は、本発明の範囲内である。例えば、バイパス移植、心臓、肝臓、肺、膵島細胞の移植、及び、生体外で生成した宿主移植用組織の移植が挙げられる。本発明の方法は、例えば、低酸素状態への長期的曝露(高地や持続的有酸素運動など)といった、外界刺激に曝露されることにより生じる慢性虚血状態を治療するためにも有用である。
本明細書で提供される方法は、例えば筋肉、平滑筋、骨格筋、心筋、神経組織、皮膚、間葉組織、結合組織、胃腸組織、又は骨などの、幅広い範囲の組織型に適用できる。上皮組織(例えば、単層扁平上皮、重層扁平上皮、立方上皮、又は円柱上皮)、疎性結合組織(輪紋状結合組織としても知られる)、筋肉と骨とをつなぐ腱や関節で骨同士をつなぐ靭帯などの線維性結合組織、などの軟組織。
本発明の方法は、慢性組織虚血を経験している又は経験する可能性の高い対象(例えば、人間の患者)を特定する工程を有することが出来る。慢性組織虚血は、組織への血流量が持続的に減少すること、又は組織への血流が部分的若しくは完全にブロックされることを基本的な特徴とする幅広い範囲の病状から生じ得るため、その特定の徴候及び症候は、血流量減少の原因である1種又は複数の要因に応じて変化するであろう。
従って、例えば、末梢動脈疾患(PAD)は、通常、足や腕につながる1つ又は複数の血管内でのアテローム性動脈硬化によって動脈が部分的又は完全にブロックされる末梢血管疾患の1形態であるが、この末梢動脈疾患(PAD)における慢性組織虚血の症候には、間欠性跛行、すなわち、疲労、筋けいれん、安静にしていると消失する運動時の股関節、臀部、大腿部、膝関節、すね若しくは足部上部(upper foot)の痛み、安静時跛行、無感覚、うずき、足下部(lower legs)又は足部(feet)の冷感、神経障害、又は、組織創傷治癒不全が含まれ得る。肢下部におけるPADは、糖尿病、特に2型糖尿病と関係することが多い。腕の動脈疾患は、通常、アテローム性動脈硬化症ではなく、他の症候、例えば自己免疫疾患、血栓、放射線治療、レイノー病、反復運動及び外傷などに起因する。腕が動いているときの一般的な症候には、不快感、重感、疲労感、筋けいれん、及び手指の痛みが含まれる。例えば、足関節上腕血圧比(ABI)テスト、血管造影法、超音波、又はMRI分析などの1又は複数の診断テストを行うことにより、PADを診断することが出来る。
心筋虚血はほとんど又は全く症候がない可能性があるが、一般的には、狭心症、疼痛、疲労性高血圧(fatigue elevated blood pressure)と関係する。心筋虚血用の診断テストとしては、血管造影、安静時心電図、運動負荷心電図、若しくは携帯型心電図;シンチグラフィ検査(胸部核医学検査);心エコー検査;冠動脈造影;及び、稀にではあるが、ポジトロン放出断層撮影が挙げられる。
本発明の方法は、薬物療法、手術、抗炎症薬、抗体、運動又は生活様式の変化などの、慢性組織虚血の治療に用いられる技術の分野において公知の他の療法と組み合わせて用いることも出来る。具体的な治療の選択は変更されてもよく、この選択は慢性組織虚血の重症度、対象の全般的健康及び担当医の判断に依存するであろう。1又は複数の別の活性成分と組み合わせて本発明の組成物を製剤化することも出来る。該別の活性成分としては、降圧薬、抗糖尿病薬、スタチン、抗血小板薬(クロピドグレル及びシロスタゾール)、抗体、免疫抑制剤、抗炎症剤薬、抗生物質、化学療法薬などが挙げられる。
[実施例1]
<材料及び方法>
(動物及び試薬)
特に断りのない限り、体重20〜25mg、2〜3月齢のオスの野生型(C57BL/6J)のマウスを用いた。実験動物管理の評価・認定協会である、国際認定LSUHSCシュリーブポート動物資源機関でマウスを繁殖、育成し、実験動物の管理及び使用に関する米国学術研究会議の指針に従って保持した。全ての実験プロトコルは、LSU機関の動物管理・使用委員会により承認された。亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び全ての他の化学品は、シグマケミカル(St Louis,MO)から購入した。
(後肢虚血モデル)
「Senthilkumar,A.,Smith,R.D.,Khitha,J.,Arora,N.,Veerareddy,S.,Langston,W.,Chidlow,J.H.,Jr.,Barlow,S.C.,Teng,X.,Patel,R.P.,et al.2007.Arterioscler Thromb Vasc Biol 27:1947−1954.」に従って、大腿深動脈起始部の近位にある左総大腿動脈を結紮することにより後肢の虚血を誘導した。ケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(8mg/kg)の腹腔内注射でマウスに麻酔をかけて、無菌条件で手術を行った。総大腿静脈及び大腿神経を、動脈から分離した。2つの結紮糸を大腿深動脈近位の総大腿動脈に設置した後、2つの結紮の間で切断した。その後、切り口を閉じて、組織血流量のレーザードップラー測定により結紮を即座に検証した。
(血管の型取り)
マイクロフィル(Microfil)のシリコン注入剤MV120を用いて、虚血肢の後肢血管の型取りを行った。血管の型取りをする前に、パパベリン(5ng/ml)及びアデノシン(1mg/ml)を静脈内に投与し、型取り用の樹脂のかん流を高めた。簡潔に述べると、大腿動脈分岐部近位の腹部大動脈を5.0絹製縫合材料で結紮し、絹糸結紮で適切な位置に保持されたPE50チューブを用いて結紮の後方にカニューレ挿入を行った。400μLのマイクロフィルを大動脈カテーテルの中に注入し、4℃で16時間その位置に置いた。40%、60%、80%及び100%の段階的なグリセロール溶液の中で各24時間組織を培養して、後肢の筋組織を除去した。その後、実体顕微鏡を用いて、血管の鋳型を撮影した。
(組織血流量のレーザードップラー測定)
後肢の血流量を測定するために、Vasamedics社のLaserflo・BPM2深部組織貫通型レーザードップラー装置を用いた。プローブ用スタンドを用いて、レーザープローブの先端をマウスの医学的ふくらはぎ上の安定な部位に置いた。非虚血肢及び虚血肢からの、1分当たり、組織100g当たりの血流量(ml)の測定値を記録した。
かん流の代表的な定常的変化を得るために、24時間の最初の亜硝酸塩又は硝酸塩注射をする前に、一日の血流量測定がなされた。虚血肢の血流量の値から非虚血肢の血流量の値を割り、100を乗じることにより、組織血流量のパーセント変化を求めた。血流量の急速な変化を評価するために、別個の実験において、亜硝酸塩又は硝酸塩の投与後30秒以内に血流量を測定した。
(血管密度測定)
「Senthilkumar,A.,Smith,R.D.,Khitha,J.,Arora,N.,Veerareddy,S.,Langston,W.,Chidlow,J.H.,Jr.,Barlow,S.C.,Teng,X.,Patel,R.P.,et al.2007.Arterioscler Thromb Vasc Biol 27:1947−1954.」に記載された方法を用いて、筋組織の血管密度を求めた。簡潔に述べると、虚血組織(左)及び非虚血組織(右)を切り離し、OCT凍結媒体で包埋し、凍結し、3ミクロンの切片でカットした。95%エタノール/5%氷酢酸中で1時間、−20℃で、スライドを固定した。PBS中の5%のウマ血清を用いて、4℃で一晩、スライドをブロックした。(0.05%のウマ血清を含むPBS中で)200分の1に希釈したCD31抗体(PECAM−1)を加えて、37℃で1時間インキュベートした。1%ウマ血清/PBSでスライドを3回洗浄し、Cy3標識の抗ラット二次抗体を(0.05%ウマ血清を含むPBS中で)250分の1に希釈して加え、1時間室温でインキュベートした。スライドを洗浄し、Vectashield DAPI(4’,6−ヂアミジン−2’−フェニルインドールジヒドロクロリド)の核対比染色を用いてスライド標本を作製した。1筋肉標本当たり4切片が染色されており、1切片当たり少なくとも4つの領域が得られた。それぞれCD31染色及びDAPI染色用の200倍の倍率のTRITC及びDAPI照明を有するニコンTE−2000落射蛍光顕微鏡(株式会社ニコン、日本)を用いて、ハママツデジタルカメラで写真を撮った。1切片当たりのCD31染色及びDAPI染色の表面積を定量化するために、シンプルPCIソフトウェアバージョン6.5(Compix Inc,Sewickly,PA)を用いた。CD31画素密度をDAPI画素密度で割った割合として、血管密度を測定した。データの同一性を統計分析及びグラフ生成に用いる前に、二重盲検法で画像収集及び血管密度測定値を蓄積、分析、計算した。
(亜硝酸塩、NO代謝産物、組織cGMP、eNOSタンパクレベルの測定)
「Lang,J.D.,Jr.,Teng,X.,Chumley,P.,Crawford,J.H.,Isbell,T.S.,Chacko,B.K.,Liu,Y.,Jhala,N.,Crowe,D.R.,Smith,A.B.,et al.2007.J Clin Invest.117:2583−2591」に従って、化学発光分析法を用いて、亜硝酸塩及び組織NO代謝産物レベル組織(ニトロソチオール、C−若しくはN−ニトロソ化合物、又は鉄ニトロシルタンパク(iron−nitrosyl proteins)、これらはまとめてSNO+XNOと呼ばれる。)を測定した。製造業者の説明書に従って、Cayman Chemical社(Ann Arbor,MI)のcGMP・ELISAを用いて、腓腹筋組織のcGMPレベルを求めた。PBS又は亜硝酸ナトリウムのどちらかを注射した後2分以内にサンプルを集めた。ウェスタンブロッティング分析により、後肢組織の総eNOSタンパクレベルを求めた。
(統計分析)
スチューデントTテスト(対になっていない(unpaired))を用いて、有意性に必要なP<0.05の最小値で、亜硝酸ナトリウム又は硝酸ナトリウム対PBSコントロール群の間における、血流量、血管密度、内皮細胞増殖、組織硝酸塩及びNO代謝産物、並びにcGMPデータを分析した。ボンフェローニ(Bonferroni)の事後テスト付きの一元分散分析(one−way ANOVA)を用いて、有意性に必要なp<0.05の最小値で、実験グループの血液亜硝酸塩測定及び血流量の急変を、それぞれ、PBSコントロール及び0日目の時点に対して比較した。グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)4.0ソフトウェアを用いて、統計を行った。報告された実験当たりで用いたマウスの数を、下記の実施例において指定した。
[実施例2]
<長期亜硝酸ナトリウム治療は虚血組織の血流量を増加させた>
実施例1に記載したマウス後肢虚血モデルにおける虚血組織の血流量に関する、亜硝酸ナトリウム投与量範囲の効果を調べた。8.25〜3300μg/kgの用量範囲内で、腹腔内注射により1日に2回、亜硝酸ナトリウムを投与した。1治療グループ当たり15匹のマウスを用いた。実施例1のレーザードップラー方法に従って、血流量を測定した。
虚血肢の血流量を測定し、これをそれぞれの反対側の非虚血肢の血流量で割って各動物に対するパーセント変化を計算することにより、虚血組織かん流の変化を求めた。図1Aに示すように、8.25、16.5、165及び3300μg/kgの亜硝酸塩用量の全てにおいて、結紮後3日目までに虚血後肢における血流量割合が上昇し、7日目までに徐々に上昇していった。165μg/kgの亜硝酸ナトリウム用量は、それよりも高用量及び低用量の場合と比較して、最適な時間的効能を示した。次に、亜硝酸ナトリウムが、一酸化窒素(NO)依存的なメカニズムを介して虚血組織の血流量を増加させるか否かを調べた。図1Bに示すように、NOスカベンジャーである、カルボキシPTIO(2−(4−カルボキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−オキシル−3−オキシド)を1日に1mg/kgの用量で投与すると、亜硝酸ナトリウムの持つ虚血肢血流量を回復させる能力を有意に弱めた。図1Cに示すように、165μg/kgの亜硝酸ナトリウムを注射すると、24時間虚血性の後肢における血流量が高まった。一方、PBS注射した24時間虚血性の後肢では、血流量の変化は観察されなかった(図1D)。
重要なことに、PBS及び亜硝酸ナトリウムのどちらも、それぞれ図2A及び2Bに示すように、非虚血性の肢における後肢血流量を変化させなかった。なお、1治療グループ当たり10匹のマウスを用いた。図3に示すように、亜硝酸ナトリウムの代わりに硝酸ナトリウムを用いた場合には、最も低い用量の亜硝酸ナトリウム(8.25μg/kg)は、5日目及び7日目までに虚血性の肢の血流量を増大させた。
[実施例3]
<長期亜硝酸ナトリウム治療は、虚血誘導性の血管形成を選択的に増加させた>
次に、虚血組織の血管密度に対する長期亜硝酸ナトリウム治療の効果を調べた。実施例1の方法に従って、血管密度を測定した。図4A及び4Bは、それぞれ硝酸ナトリウム又は亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)で治療した動物の、7日目の虚血腓腹筋の、内皮細胞CD31染色(赤色)とDAPI核対比染色(青色)とを示す。PBS又は硝酸ナトリウムコントロールと比較すると、亜硝酸ナトリウムを摂取したマウスの方が、CD31の内皮染色が虚血筋組織中にはるかに豊富に存在した。血管密度の定量分析により、PBS又は硝酸ナトリウムコントロール治療と比較すると、亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)治療が3日目及び7日目における血管密度を有意に増加させることが分かった(図4C及び4D)。なお、1治療グループ当たり10匹のマウスを用いた。組織血流量の変化と一致して、cPTIO共治療を行うと、3日目及び7日目の虚血後肢において、亜硝酸塩による血管形成の増大が抑えられた(図4E及び4F)。高用量の亜硝酸ナトリウム(3300μg/kg)は、低用量(165μg/kg)の亜硝酸塩と比較すると、虚血組織の血管密度を増大させる効果が弱かったが、これは虚血組織における血流量の変化率の観察と一致した(図5A及び5B)。重要なことに、亜硝酸ナトリウムは非虚血組織の血管密度を有意には変化させず、このことは、長期亜硝酸塩治療の部位特異的作用を強調するものであった(図5C)。なお、各グループ当たり10匹のマウスを用いた。
[実施例4]
<長期亜硝酸ナトリウム治療は、虚血内皮細胞の増殖を増大させた>
虚血腓腹筋組織における内皮細胞増殖に対する亜硝酸ナトリウムの効果を、実施例1の後肢虚血モデル中で分析した。図6A及び6Bは、それぞれ、硝酸ナトリウム治療又は亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)治療を始めて3日目の、内皮細胞CD31標識(赤色)及びDAPI核染色(青色)に加えて虚血組織のKi67染色(緑色)により求められた内皮細胞増殖の量を示す。図6Cでは、亜硝酸ナトリウム又は硝酸ナトリウムに対する、3日目のKi67とDAPI核対比染色との共局在量を定量化している。図6Cにより、亜硝酸ナトリウムは、虚血組織におけるKi67核局在化を有意に増加させる一方で、非虚血組織におけるKi67核局在化を有意には増加させないこと、並びに、Ki67核局在の増加はカルボキシPTIOによりブロックされることが実証された。また、亜硝酸ナトリウムは、虚血組織におけるKi67とCD31との共局在を有意に増加させたが、この共局在の増加はcPTIOによりブロックされた(図6D)。なお、1治療グループ当たり10匹のマウスを使用した。
[実施例5]
<血液及び組織の亜硝酸塩レベルに対する長期亜硝酸塩投与の効果>
実施例1の方法に従って、硝酸塩で治療した動物及びコントロール動物における血液及び組織の亜硝酸塩レベルの分析を行った。図7Aに示すように、165μg/kgの亜硝酸ナトリウム治療では、亜硝酸塩の血液レベルが時間とともに有意に減少したが、PBS治療ではほとんど変化しなかった。図7B及び7Cは、それぞれ3日目及び7日目における、亜硝酸塩治療した組織の亜硝酸塩レベルを示す。なお、1治療グループ当たり10匹のマウスを用いた。亜硝酸塩治療は、3日目の虚血組織において組織の亜硝酸塩レベルを有意に増大させたが、非虚血組織では有意には増大させなかった(図7B)。7日目において、亜硝酸塩治療した動物とPBS治療したコントロール動物との間で、亜硝酸塩レベルは有意には違わなかった(図7C)。以上を総括すると、これらのデータは、長期亜硝酸ナトリウム治療により、非虚血組織よりも虚血組織において選択的に亜硝酸塩が早期に組織蓄積されることを実証した。長期亜硝酸ナトリウム治療に応答して血液の亜硝酸塩レベルが減少したことを受けて、PBS又は165μg/kgの亜硝酸ナトリウムで治療した後肢筋組織における総eNOSタンパクレベルを調査することにした。図7Dは、3日目において、長期亜硝酸ナトリウム治療が、非虚血後肢組織におけるeNOSタンパク発現量を変化させることなく、虚血後肢組織におけるeNOSタンパク発現量を有意に減少させたことを示す。7日目では、図7Eに示すように、亜硝酸ナトリウムは、非虚血組織におけるeNOSタンパク発現量を減少させた一方で、虚血組織に対しては何ら効果がなかった。なお、図7に示した実験に対し、1実験グループ当たり3匹のマウスを用いた。
これらのデータは、血液の亜硝酸塩レベルの減少が、長期亜硝酸ナトリウム治療に応答してeNOSタンパク発現量が減少したことに起因する可能性があることを示唆した。
[実施例6]
<長期亜硝酸ナトリウム治療の間におけるNO組織代謝産物及び組織cGMP>
実施例1の方法に従って、NO代謝産物であるSNO及びXNOのレベルに対する亜硝酸塩治療の効果を測定した。1治療グループ当たり12匹のマウスを用いた。3日目及び7日目における、165μg/kgの亜硝酸ナトリウムで治療した動物又はPBSで治療したコントロールに対する組織SNO+XNOレベルを、それぞれ図8A及び8Bに示す。亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)及びPBSのどちらも、3日目における組織SNO+XNOレベルを有意には変えなかった。しかしながら、亜硝酸塩治療は、PBS治療と比較して、7日目の虚血組織におけるSNO+XNOレベルを有意に増大させた。これらのデータにより、組織中のニトロソチオール、C−/N−ニトロソ化合物、及び鉄ニトロシルタンパクに対する亜硝酸塩治療の遅延効果が明らかとなり、中間体を含むNOが虚血組織において選択的に生成されることが実証された。長期亜硝酸ナトリウム治療により、亜硝酸塩で治療した動物におけるcGMPレベルが選択的に増大するか否かも調査した。図8C及び9Dに示すように、それぞれ3日目又は7日目において、165μg/kgの亜硝酸ナトリウム及びPBSのどちらも、組織cGMPレベルを有意には変えなかった。
[実施例7]
<長期亜硝酸ナトリウム治療は、動脈形成及び虚血組織の血流量の急激な変化を増大させた。>
一般的に、慢性虚血の期間における血管形成のみの刺激は、組織内かん流を回復させるには不十分である。より小さな細動脈の動員及び分化を介して動脈形成を増大させることが、新しく形成される微小血管系を供給するのに重要である。また、血流量の増加により血管せん断応力が急激に上昇することが、動脈形成の重要な橋渡し役である。実施例1の方法に従って、虚血組織内かん流及び非虚血組織内かん流の急激な変化(30秒)に対する165μg/kgの亜硝酸ナトリウムの効果を調査した。なお、1治療グループ当たり10匹のマウスを用いた。図9Aに示すように、165μg/kgの亜硝酸ナトリウムは、結紮後1日目の投与から30秒以内に、虚血組織の血流量を92.3±18%も有意に高めた。亜硝酸ナトリウムの注射後、血流量の上昇は10分よりも長く持続した(データは図示せず)。長期亜硝酸塩治療を受けた動物は、3日目及び7日目に、急性血流量の変化において1日目よりも低いがそれでも有意な増加を示したため、急性血流量の大幅な上昇を引き起こす亜硝酸塩の能力は、組織虚血の期間に反比例していた。この観察結果は、有意な血管形成作用が生じ、それにより組織虚血の程度が減少したことに起因する可能性があった。図9Bに示すように、cPTIOは早期にこの応答を有意に鈍らせたため、亜硝酸ナトリウム依存的な急性血流量の変化はNOと関係していた。
動脈形成活性をさらに評価するために、大腿深動脈の遠位及び膝の近位で後肢結紮して、動脈供給の変化をより容易に区別した。図9Cに示すように、亜硝酸ナトリウムで治療した動物の組織のほうが、PBSで治療したコントロール動物の対応する組織よりも、動脈枝部の数が有意に多かった。実施例1の方法に従って、動脈の鋳型を作成した。図9Dは、亜硝酸ナトリウムで治療した7日目の虚血肢由来の動脈の鋳型の代表例を示す。図9Eは、PBSで治療した7日目の虚血肢由来の動脈の鋳型を示す。亜硝酸塩治療に応答した組織の至るところで多数の側副血管を観察することができ、これは動脈形成が増進したことを意味する。逆に、PBS治療では、動脈かん流が増進せず、わずかな側副血管が観察されるのみであった。以上を総括すると、これらのデータは、長期亜硝酸塩治療により、虚血組織において動脈形成作用が増大したことを実証する。
[実施例8]
<虚血後肢の血流量に関する、亜硝酸ナトリウムの単回ボーラスI.P.注射の効果>
実施例1の方法に従って、C57BL/6Jマウス(1治療グループ当たりn=3)の左後肢上で、永続的な大腿動脈の結紮を行った。該結紮終了の45分後、PBS又は亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)のいずれかを、単回ボーラス注射により腹腔内(I.P.)に投与した。単回ボーラス注射治療の効能を評価するために、7日間に渡って、一日おきに血流量の回復をモニターした。図10に示すように、亜硝酸ナトリウムを単回ボーラス腹腔内注射しても、虚血後肢の血流量は回復しなかった。X軸上の「0日目(Pre)」とは、結紮が行われる前の結紮日の血流量を意味する。X軸上の「0日目(Post)」とは、結紮が行われた後の結紮日の血流量を意味する。
[実施例9]
<虚血後肢の血流量に関する、遅延型亜硝酸ナトリウム治療の効果>
後肢の血流量の回復に関する、遅延型長期亜硝酸ナトリウム治療の効果をも評価した。
実施例1に記載したように、C57BL/6Jマウス(1治療グループ当たりn=6)の左後肢上で、永続的な大腿動脈の結紮を行った。結紮後5日目の朝、PBS又は亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)の腹腔内注射(b.i.d)を開始し、該注射をその研究の残りの日々を通して毎日続けた。実施例1の深部組織貫通型レーザードップラーを用いて研究を通して血流量の回復をモニターした。図11に示すように、遅延型亜硝酸塩治療により、虚血後肢の血流量は回復した。X軸上の「0日目(Pre)」とは、結紮が行われる前の結紮日の血流量を意味する。X軸上の「0日目(Post)」とは、結紮が行われた後の結紮日の血流量を意味する。
[実施例10]
<亜硝酸ナトリウム治療は、糖尿病マウスにおける虚血後肢の血流量を回復させた>
糖尿病マウスモデルの虚血後肢の血流量に関する、亜硝酸ナトリウム治療の効果を評価した。マウスを2%吸入イソフルオラン(isofluorane)で麻酔したことを除き、実施例1及び2の方法に従って、Db/Db糖尿病マウス(1治療グループ当たりn=5)の左後肢上で、永続的な大腿動脈の結紮を行った。結紮後、PBS又は亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)の腹腔内注射(b.i.d)を開始し、該注射をその研究の残りの日々を通して毎日続けた。実施例1の方法に従って、深部組織貫通型レーザードップラーを用いて研究を通して血流量の回復をモニターした。図13に示すように、亜硝酸ナトリウム治療により、糖尿病マウスにおける虚血後肢の血流量が回復した。亜硝酸塩治療した動物の虚血後肢における血流量は、分析した全ての時点において、PBSで治療したコントロール動物の血流量よりも有意に大きくなり、研究の最後までに結紮前のレベルに到達した。
[実施例11]
<持続的亜硝酸ナトリウム治療は、切除創傷治癒を高めた>
4mmのパンチ生検装置を用いて、全層切除創傷を作り出した。実施例1の方法に従って、C57BL/6Jマウスを麻酔した。弛緩性皮膚をつまみ、半円生検に穴を開けて均一な直径4mmの創傷を得ることにより創傷を作り出した(1治療グループ当たりn=4)。創傷後すぐに、PBS又は亜硝酸ナトリウム(165μg/kg)の腹腔内注射(b.i.d)を開始し、該注射をその研究の残りの日々を通して毎日続けた。デジタルキャリパーを用いて創傷の直径を測定し、残っている創傷の表面積割合(%)として毎日プロットした。図12に示すように、持続的亜硝酸ナトリウム治療により、切除創傷治癒が高まった。研究の最初の6日間、亜硝酸ナトリウムで治療した動物では、PBSで治療したコントロール動物よりも残っている創傷面積割合が有意に小さく、残りの4日間も低いままであった。
本発明の多くの実施態様は上記に述べた通りである。しかしながら、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な改良がなされてもよいと理解されるであろう。従って、他の実施態様も本発明の特許請求の範囲内に含まれる。

Claims (29)

  1. 慢性組織虚血を有する対象を治療する方法であって、
    無機亜硝酸塩又はその製薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を対象に投与する工程を有し、
    前記亜硝酸塩は、前記虚血組織における血管の成長をもたらすのに十分な期間及び量で投与されることを特徴とする、方法。
  2. 慢性組織虚血を有する対象を特定する工程を更に有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記対象が哺乳類である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記対象が人間である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記無機亜硝酸塩の製薬学的に許容できる塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム又は亜硝酸カルシウムである、請求項1に記載の方法。
  6. 前記亜硝酸塩が1日に1回以上投与される。請求項1に記載の方法。
  7. 前記投与が少なくとも約2日〜10日間なされる、請求項6に記載の方法。
  8. 前記投与が少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、または少なくとも約7日間なされる、請求項7に記載の方法。
  9. 前記亜硝酸塩が、前記対象における虚血の症候が改善するまで投与される、請求項15に記載の方法。
  10. 前記虚血の症候が、間欠性跛行、安静時の跛行、神経障害、又は組織創傷治癒不全を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 硝酸塩の量が約1μg/kg〜約5000μg/kgの用量である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記用量が約0.5μg/kg〜約1000μg/kgである、請求項17に記載の方法。
  13. 前記用量が約0.5μg/kg〜約500μg/kg、約0.5μg/kg〜約250μg/kg、約0.5μg/kg〜約100μg/kg、又は約0.5μg/kg〜約50μg/kgである、請求項17に記載の方法。
  14. 前記用量が約165μg/kg、約16.5μg/kg、又は約8.25μg/kgである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記亜硝酸塩が、約0.0005μM〜約0.05μMの前記対象中の血中濃度になるように投与される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記亜硝酸塩が、約0.0001μM〜約0.03μM又は約0.01μM〜約0.05μMの前記対象中の血中濃度になるように投与される、請求項1に記載の方法。
  17. 前記亜硝酸塩が、約0.03μM、約0.003μM、又は約0.0015μMの前記対象中の血中濃度になるように投与される、請求項1に記載の方法。
  18. 前記亜硝酸塩又はその製薬学的に許容できる塩が、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与、舌下投与、又は経口投与される、請求項1に記載の方法。
  19. 血管成長の刺激が、虚血組織内で生じるが非虚血組織内では生じない、請求項1に記載の方法。
  20. 前記慢性虚血疾患が、末梢動脈疾患、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、間欠性跛行、重大な肢虚血性疾患、創傷治癒不全、脳卒中、心筋梗塞、炎症性腸疾患、骨折、骨感染症、又は末梢神経障害である、請求項1に記載の方法。
  21. 前記糖尿病が1型又は2型糖尿病である、請求項20に記載の方法。
  22. 前記虚血組織が、骨格筋、平滑筋、心筋、神経組織、皮膚、間葉組織、結合組織、胃腸組織、又は骨を含む、請求項1に記載の方法。
  23. 抗虚血治療を施す工程を更に有する、請求項1に記載の方法。
  24. 抗菌薬、鎮痛薬、抗炎症薬、化学療法薬、又は成長因子を投与する工程を更に有する、請求項1に記載の方法。
  25. 前記虚血組織が創傷を有する、請求項1に記載の方法。
  26. 前記創傷が、肌、筋肉、又は結合組織を含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記創傷が外傷性損傷、先天性奇形、又は外科手術の結果である、請求項25に記載の方法。
  28. 前記亜硝酸塩が、前記創傷が実質的に治るまで投与される、請求項25に記載の方法。
  29. 慢性組織虚血を有する対象を治療する方法であって、
    無機硝酸塩又はその製薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を対象に投与する工程を有し、
    前記硝酸塩は、前記虚血組織における血管の成長をもたらすのに十分な期間及び量で投与されることを特徴とする、方法。
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