JP2014133837A - 蓄光性蛍光材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐水性などの化学的安定性に優れ、強い発光を示し、蓄光性能に優れる蓄光性蛍光材料を提供すること。
【解決手段】紫外線励起により残光特性を呈する蓄光性蛍光材料は、ZnとSiとAlとBとOとを含み、ケイ酸亜鉛結晶構造を有する。Siに対するZnのモル比は、酸化物換算で1.0以上3.0以下である。Bは、酸化物換算で14モル%以上25モル%以下含まれ、Alは、酸化物換算で0モル%よりも多く6モル%以下含まれる。
【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線励起により残光特性を呈する蓄光性蛍光材料に関し、アルミノホウケイ酸ガラスを原料とした蓄光性蛍光材料に好適である。
蓄光性蛍光材料(蓄光顔料)は、太陽光または蛍光灯などの光を吸収して蓄積し、その光の照射が断たれた後でも暗所で光り続けるという性質(残光特性)を有している。また、蓄光性蛍光材料は、光吸収と蓄光と発光とを繰り返し行うことができるので、顔料として塗料に混入されて用いられ、たとえば防災もしくは安全などのための標識、時計文字盤、または、ルアーなどの釣具などに利用されている。従来、CaS:Bi、ZnCdS:Cu、ZnS:Cuなどの硫化物系蓄光性蛍光材料が知られており、夜光塗料として広く用いられている。しかし、これらの硫化物系蓄光性蛍光材料は、水分に弱く化学的に不安定である、また、直射日光の耐光性(紫外線)に優れないために黒色化して劣化するなどの実用面での課題を多く有している。そのため、化学的安定性のより高い蓄光性蛍光材料の登場が待たれていた。
そこで、特許文献1(特許第2543825号公報)には、化学的に安定な蓄光性蛍光体が開示されている。特許文献1に開示された蓄光性蛍光体は、MAl24で表わされる化合物(Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素)を母体結晶にし、Eu2+を賦活剤として含み、Dy3+などを共賦活剤として含む。
また、特許文献2(特開2008−86842号公報)には、耐候性、耐水性、耐薬品性などの耐久性に優れた不燃・耐久性蓄光膜が開示されている。特許文献2に開示された不燃・耐久性蓄光膜は、無機白色系顔料を含む下塗膜と蓄光顔料を含む中塗膜と上塗膜との3層の膜を主体とする。
また、特許文献3(特開2000−86284号公報)には、放射線励起により長残光および輝尽発光を呈するガラス材料として、SiO2−B23−Al23−Ga23−Tb23(MnO)系ガラス、または、Ga23−Al23−ZnO−Tb23系ガラスが開示されている。
また、特許文献4(特開2000−159543号公報)には、残光特性が良好な蓄光性蛍光ガラスまたはガラスセラミックスが開示されている。特許文献4に開示された蓄光性蛍光ガラスまたはガラスセラミックスは、SiO2、ZnO、Al23、Ga23およびB23などを含み、Lnxy(ただし、LnはY、Ce、Pr、Nd、…)などから選ばれる元素を賦活剤または助賦活剤として含む。
特許第2543825号公報(特開平7−11250号公報) 特開2008−86842号公報 特開2000−86284号公報 特開2000−159543号公報
近年、節電、安全性の確保または安心などといった意識が高まり、屋外においても使用できる蓄光性蛍光材料のニーズが高まってきている。しかしながら、特許文献1に開示された蓄光性蛍光体は、アルカリ土類金属を含むアルミン酸塩である。そのため、母材結晶(アルミン酸塩)が大気中の水分により加水分解され、その結果、蓄光性能の低下を招く。よって、特許文献1に開示された蓄光性蛍光体の用途は屋内での使用に限定される。
また、特許文献2に開示された不燃・耐久性蓄光膜では、上塗膜が大気中の水分などによる蓄光顔料の加水分解を防止する。しかし、紫外線が上塗膜に吸収されるおそれがあり、発光輝度の低下を招くことがある。また、蓄光顔料を含む中塗膜上に上塗膜を塗布するプロセスが複雑であり、不燃・耐久性蓄光膜のコスト高を招くことがある。
特許文献3には、酸化物ガラスの製造方法として、SiO2、B23、Al23、Ga23およびTb23などを調合し、調合された原料を1100〜1500℃の温度で溶融し、金型に流して成形することが記載されている。このように特許文献3で得られる酸化物ガラスは成形品であるため、粒径を数μm〜数十μmといったサイズに加工できない。よって、特許文献3に記載の酸化物ガラスを塗料の原料として用いることは難しい。
特許文献4には、蓄光性蛍光ガラスまたはガラスセラミックスの製造方法として、SiO2、ZnO、Al23、Ga23およびB23などとLnxy(ただし、LnはY、Ce、Pr、Nd、…)などとを混合し、混合された原料を1300〜1550℃の温度で溶融し、そのガラス溶融を鉄板上にキャストすることが記載されている。このように特許文献4で得られる酸化物ガラスも成形品であるため、粒径を数μm〜数十μmといったサイズに加工できない。よって、特許文献4に記載の酸化物ガラスを塗料の原料として用いることは難しい。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐水性などの耐久性(化学的安定性)に優れ、強い発光を示し、蓄光性能に優れた蓄光性蛍光材料を提供することである。
本発明者らは、ケイ酸を含むガラス材料と結晶化促進剤であるZnOと発光賦活剤であるMnOとを混合し、得られた混合物を熱処理してガラスセラミックス化させた。このようにして、Mn2+を発光賦活材料として含むケイ酸亜鉛結晶構造からなる結晶を得た。この結晶に対して詳細な実験を行ってその蓄光性能を調べた。その結果、ホウ素元素とアルミニウム元素との両方を含むガラス(たとえばアルミノホウケイ酸ガラス)をガラス材料として用いた場合には、蓄光性能が飛躍的に向上し、良好な蓄光性能を有した。一方、ガラス材料がホウ素元素およびアルミニウム元素のどちらか一方のみを含む場合には、蓄光性能の向上は見られなかった。また、蓄光性蛍光材料に含まれる元素の含有量の最適化により、蓄光性能が飛躍的に向上し、良好な蓄光性能を有した。
本発明にかかる蓄光性蛍光材料は、紫外線励起により残光特性を呈し、ZnとSiとAlとBとOとを含み、ケイ酸亜鉛結晶構造を有する。Siに対するZnのモル比は、酸化物換算で1.0以上3.0以下であり、より好ましくは1.5以上2.0以下である。Bは、酸化物換算で14モル%以上25モル%以下含まれ、Alは、酸化物換算で0モル%よりも多く6モル%以下含まれる。ケイ酸亜鉛結晶構造は、α−Zn2SiO4結晶構造およびβ−Zn2SiO4結晶構造の少なくとも一方を含むことが好ましく、Zn1.7SiO4結晶構造を含んでも良い。
Znは、酸化物換算で30モル%以上60モル%以下含まれていることが好ましい。
本発明にかかる蓄光性蛍光材料は、0.01モル%以上10モル%以下の発光賦活材料をさらに含むことが好ましい。発光賦活材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうちの1つ以上の元素を含むことが好ましい。なお、発光賦活材料は蓄光性蛍光材料に含まれて発光賦活剤として機能するものを意味し、発光賦活剤は蓄光性蛍光材料の原料の一種を意味する。
蓄光性蛍光材料は、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いたものであることが好ましく、アルミノホウケイ酸ガラスは、液晶パネルガラスから得られたものであることが好ましい。
本発明にかかる蓄光性蛍光材料は、耐水性などの化学的安定性に優れ、強い発光を示し、蓄光性能に優れる。
実施例1の蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトルを示すグラフである。 実施例1〜4および比較例1〜2の蓄光性蛍光材料の蛍光スペクトルを示すグラフである。 実施例1〜4および比較例1〜2の蓄光性蛍光材料の残光特性を調べた結果を示すグラフである。 実施例1〜4および比較例1〜2の蓄光性蛍光材料のZnO/SiO2(モル比)と蛍光強度との関係を示すグラフである。 実施例1〜4および比較例1〜2の蓄光性蛍光材料のZnO/SiO2(モル比)と蓄光強度との変化を示すグラフである。 実施例1、5〜7および比較例3、6の蓄光性蛍光材料の蛍光スペクトルを示すグラフである。 実施例1、5〜7および比較例3、6の蓄光性蛍光材料の残光特性を調べた結果を示すグラフである。 実施例1、5〜7および比較例3〜6の蓄光性蛍光材料のB23(モル%)と蛍光強度との関係を示すグラフである。 実施例1、5〜7および比較例3〜6の蓄光性蛍光材料のB23(モル%)と蓄光強度との関係を示すグラフである。 実施例1、5〜7および比較例3〜6の蓄光性蛍光材料のAl23(モル%)と蛍光強度との関係を示すグラフである。 実施例1、5〜7および比較例3〜6の蓄光性蛍光材料のAl23(モル%)と蓄光強度との関係を示すグラフである。 実施例8の蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトルを示すグラフである。 実施例8〜9の蓄光性蛍光材料の蛍光スペクトルを示すグラフである。 実施例8〜9の蓄光性蛍光材料の残光特性を調べた結果を示すグラフである。 実施例9の蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトルを示すグラフである。
以下、本発明の蓄光性蛍光材料について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
なお、本明細書では、「残光特性」は、励起光である紫外線の照射をやめた後でも発光することを意味する。「残光特性に優れる」は、残光強度が高く残光の発光時間が長いことを意味し、「蓄光性能に優れる」と同義で用いている。「残光」は、励起光の照射をやめた後でも発する光を意味し、「蓄光」と同義で用いている。「残光強度」は、残光の強度を意味し、「蓄光強度」と同義で用いている。一方、「蛍光強度」は、励起光の照射をやめると消失する光の強度を意味する。また、「PL強度」は、ルミネセンスにより生じた光の強度を意味し、蛍光強度と蓄光強度との両方を含む。
[蓄光性蛍光材料の構成]
本発明の蓄光性蛍光材料は、紫外線励起により残光特性を呈し、ZnとSiとAlとBとOとを含み、ケイ酸亜鉛結晶構造(以下では「ケイ酸亜鉛母体結晶」と記すことがある)を有する。このように本発明の蓄光性蛍光材料はAlとBとの両方を含んでいるため、良好な蓄光性能を有する。また、本発明の蓄光性蛍光材料は、酸化物系であるため、化学的に安定であり、よって、耐水性などの耐久性に優れる。ケイ酸亜鉛結晶構造には、α−Zn2SiO4結晶構造およびβ−Zn2SiO4結晶構造の少なくとも一方が含まれ、Zn1.7SiO4結晶構造が含まれていても良い。発光賦活材料であるMn2+の発光波長はケイ酸亜鉛結晶構造によって変化するため、ケイ酸亜鉛結晶構造を変更することにより変化蓄光性蛍光材料の発光色を変えることができる。このケイ酸亜鉛結晶構造は、原料組成比または結晶化工程の条件などにより、単一相で得られる場合もあれば、混相で得られる場合もある。いずれの場合においても、蓄光性蛍光材料として用いることができる。
Siに対するZnのモル比は、酸化物換算で1.0以上3.0以下である。Siに対するZnのモル比が酸化物換算で1.0未満である場合には、ケイ酸亜鉛母材結晶の生成量が低下するので、ケイ酸亜鉛母材結晶が吸収する紫外線の量が低下する。これにより、蓄光性蛍光材料の蓄光強度は低くなり、蓄光の発光時間は短くなる。つまり、蓄光性能は低下する。一方、Siに対するZnのモル比が酸化物換算で3.0を超えると、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成に使われずに残存する過剰なZnOが存在することとなる。この過剰なZnOは紫外線を吸収するので、ケイ酸亜鉛母体結晶が吸収する紫外線の量が低下し、よって、蓄光性能が低下する。また、Siに対するZnのモル比が酸化物換算で3.0を超えると、Zn4O(BO26結晶またはZn326結晶などが析出してしまう。このようにBがZnとBとを含む結晶の析出に消費されてしまうため、ケイ酸亜鉛母体結晶に取り込まれるBの量が少なくなる。ここで、Bは、蓄光性能の向上という機能を有していると考えられる。よって、ケイ酸亜鉛母体結晶に取り込まれるBの量が少なくなれば、蓄光性能の低下を招く。Siに対するZnのモル比は酸化物換算で1.5以上2.0以下であることが好ましい。これにより、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が最大となり、またBが適切にケイ酸亜鉛母体結晶中に取り込まれることとなる。よって、蓄光性能がさらに向上する。
Znは酸化物換算で30モル%以上60モル%以下含まれることが好ましく、Siは酸化物換算で20モル%以上40モル%以下含まれることが好ましい。Znは、ZnOを原料として用いることにより蓄光性蛍光材料に含まれることが好ましい。ZnOは、残光特性をもたらすケイ酸亜鉛母体結晶を構成する必須成分であるとともに、紫外線を吸収する役割を有する。Znが酸化物換算で30モル%未満であれば、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が少なくなるため、上記理由から蓄光性能の低下を招くことがある。一方、Znが酸化物換算で60モル%超えると、上記過剰なZnOが存在することとなり、上記理由から蓄光性能の低下を招くことがある。
Siは、SiO2を原料として用いることにより蓄光性蛍光材料に含まれることが好ましい。SiO2は、残光特性をもたらすケイ酸亜鉛母体結晶を構成する必須成分である。Siが酸化物換算で20モル%未満であれば、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が少なくなるため、上記理由から蓄光性能の低下を招くことがある。一方、Siが酸化物換算で40モル%を超えると、ケイ酸亜鉛母体結晶の形成に使用されない、余剰分のSiO2がケイ酸亜鉛母体結晶の周囲に存在するため、ケイ酸亜鉛母体結晶が吸収する紫外線の量の低下を招くことがあり、よって、蓄光性能の低下を招くことがある。
本発明の蓄光性蛍光材料では、Bは酸化物換算で14モル%以上25モル%以下含まれ、Alは酸化物換算で0モル%よりも多く6モル%以下含まれる。Bは、B23を原料として用いることにより蓄光性蛍光材料に含まれることが好ましい。B23は、酸化物としては融点が低く融剤として作用し、残光特性をもたらすケイ酸亜鉛母体結晶の結晶成長を助ける役割を有する。それだけでなく、B23(具体的にはB)は、ケイ酸亜鉛母体結晶に取り込まれてSiと置き換わる(Siのサイトに配置される)ことにより、不純物欠陥を形成し欠陥準位(トラップ)を形成して蓄光性能を向上させる役割も有する。Bが酸化物換算で14モル%未満であれば、上記欠陥準位(トラップ)の量が少ないため、蓄光性能が低下する。一方、Bが酸化物換算で25モル%を超えると、Zn4O(BO26結晶が析出してしまうため、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が少なくなり、よって、蓄光性能が低下する。Bは酸化物換算で16モル%以上25モル%以下含まれていることが好ましい。これにより、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が最大となり、またBが適切にケイ酸亜鉛母体結晶中に取り込まれることとなる。よって、蓄光性能がさらに向上する。
Alは、Al23を原料として用いることにより蓄光性蛍光材料に含まれることが好ましい。Al23(具体的にはAl)は、ケイ酸亜鉛母体結晶に取り込まれてSiと置き換わる(Siのサイトに配置される)ことにより、不純物欠陥を形成し欠陥準位(トラップ)を形成して蓄光性能を向上させる役割を有する。Alが含まれていなければ、上記欠陥準位の量が少ないため、蓄光性能が低下する。一方、Alが酸化物換算で6モル%を超えると、ZnAl24結晶の析出量が多くなるため、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が少なくなる。その結果、蓄光性能が低下する。Alは酸化物換算で1モル%以上4モル%以下含まれることが好ましい。これにより、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が最大となり、またAlが適切にケイ酸亜鉛母体結晶中に取り込まれることとなる。よって、蓄光性能がさらに向上する。
本発明の蓄光性蛍光材料では、Alに対するBのモル比は、酸化物換算で、1以上であることが好ましい。Alに対するBのモル比が酸化物換算で1未満であれば、ZnAl24結晶の析出を招くため、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が少なくなる。よって、蓄光性能の低下を招くことがある。一方、Alに対するBのモル比が酸化物換算で1以上であれば、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が最大となり、またBおよびAlが適切にケイ酸亜鉛母体結晶中に取り込まれることとなる。よって、蓄光性能がさらに向上する。より好ましくは、Alに対するBのモル比は、酸化物換算で、2以上20以下である。
本発明の蓄光性蛍光材料は、0.01モル%以上10モル%以下の発光賦活材料をさらに含むことが好ましい。発光賦活材料の含有量が0.01モル%未満であれば、発光賦活材料の含有量が少ないために蛍光強度の低下を招くことがあり、よって、蓄光強度の低下を招くことがある。一方、発光賦活材料の含有量が10モル%を超えると、発光賦活材料間の相互作用が顕著になるために蛍光強度の低下を招くことがあり、よって、蓄光強度の低下を招くことがある。発光賦活材料の含有量は0.1モル%以上3モル%以下であることがさらに好ましい。これにより、蛍光強度を確保することができるので、蓄光強度の確保を図ることができ、よって、蓄光性能に優れた蓄光性蛍光材料の提供に寄与する。
発光賦活材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうちの1つ以上の元素を含むことが好ましく、これらの1つ以上の元素を含む酸化物、塩化物、水酸化物、窒化物または硫化物などを原料として用いることにより蓄光性蛍光材料に含まれることがより好ましい。取扱いの容易さという観点では、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうちの1つ以上の元素を含む酸化物を用いることが好ましく、たとえばMnOを用いることが好ましい。
本発明の蓄光性蛍光材料は、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いたものであることが好ましい。本発明者らは、種々のガラス系について詳細な実験を行った結果、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いたときに良好な蓄光性能を有することを見いだした。ここで用いるアルミノホウケイ酸ガラスは、たとえば、SiO2:50質量%以上、Al23:10〜20質量%、B23:5〜20質量%、SrO+CaO+MgO+BaO:5〜20質量%という組成を有している。アルミノホウケイ酸ガラスを原料に用いれば、アルミノホウケイ酸ガラスに予め含まれているBおよびAlがケイ酸亜鉛母体結晶に取り込まれてSiと置き換わる(Siのサイトに配置される)。これにより、不純物欠陥が形成され、欠陥準位(トラップ)が形成されるので、蓄光性能が向上する。このようにアルミノホウケイ酸ガラスに元来含まれるAl23成分とB23成分とが残光特性の向上に寄与するため、アルミノホウケイ酸を原料に用いれば残光特性に優れた蓄光性蛍光材料を得ることができる。
アルミノホウケイ酸ガラスは、一例としては、液晶テレビなどの家庭用電気製品またはパソコンもしくは携帯端末などの情報端末機器などの液晶パネルのガラスとして広く用いられている。環境との共存が期待される循環型社会では、廃棄された液晶パネル(以下では「廃液晶パネル」と記す)をリサイクルして、その資源を有効に利用することが要望されている。また、今後、廃液晶パネルの量の増加が予測されるため、廃液晶パネルから回収されるアルミノホウケイ酸ガラスの量の増加も予測される。
しかし、アルミノホウケイ酸ガラスは、通常のガラスびんまたは建築用窓ガラスなどに用いられるソーダライムガラスに比べて溶融温度が高く、そのソーダライムガラスとは組成が大きく異なる。そのため、アルミノホウケイ酸ガラスを通常のソーダライムガラスに混ぜてリサイクルさせることは難しい。アルミノホウケイ酸ガラスを非鉄精錬炉に投入して珪石の代替材料にリサイクルさせるというのが現状であり、アルミノホウケイ酸ガラスの有効なリサイクル方法の提案が要求されている。
廃液晶パネルから回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを蓄光性蛍光材料の原料として使用すれば、廃液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスを資源として有効に利用することができる。これにより、廃棄物の量の低減を図ることができる。また、環境に対する負荷の低減を図ることもできる。
以上、本発明の蓄光性蛍光材料について説明したが、本発明の蓄光性蛍光材料の一例としては、α−Zn2SiO4結晶構造とZnAl24結晶構造とを有し、Mn2+を発光賦活材料として含む材料を挙げることができる。このとき、α−Zn2SiO4結晶構造に対するZnAl24結晶構造の割合(質量比)は0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、α−Zn2SiO4結晶構造には、α−Zn2SiO4結晶構造に対して4質量%以上8質量%以下のBが取り込まれていることが好ましく、α−Zn2SiO4結晶構造に対して0質量%を超えて5質量%以下のAlが取り込まれていることが好ましい。
また、本発明の蓄光性蛍光材料の別の一例としては、β−Zn2SiO4結晶構造を有し、Mn2+を発光賦活材料として含む材料を挙げることができる。このとき、β−Zn2SiO4結晶構造には、β−Zn2SiO4結晶構造に対して4質量%以上8質量%以下のBが取り込まれていることが好ましく、β−Zn2SiO4結晶構造に対して0質量%を超えて5質量%以下のAlが取り込まれていることが好ましい。
さらに、本発明の蓄光性蛍光材料の別の一例としては、Zn1.7SiO4結晶構造を有し、Mn2+を発光賦活材料として含む材料を挙げることができる。このとき、Zn1.7SiO4結晶構造には、Zn1.7SiO4結晶構造に対して4質量%以上8質量%以下のBが取り込まれていることが好ましく、Zn1.7SiO4結晶構造に対して0質量%を超えて5質量%以下のAlが取り込まれていることが好ましい。
本発明の蓄光性蛍光材料では、ZnOが結晶化促進剤として用いられているが、Ca、SrまたはBaなどを含む化合物がZnOとは別に結晶化促進剤として用いられていても良い。たとえば、Ca、SrもしくはBaなどを含む酸化物、塩化物、水酸化物、窒化物または硫化物などを原料として用いることができる。
[蓄光性蛍光材料の製造]
本発明の蓄光性蛍光材料の製造方法としては、たとえば、次に示す方法を挙げることができる。まず、蓄光性蛍光材料の原料を所定量、評量し、均一に混合する。蓄光性蛍光材料の原料としては、Zn、Si、AlおよびBのそれぞれの酸化物を用い、好ましくはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうちの1つ以上の元素を含む化合物をさらに用いることである。各原料の量は、得られる蓄光性蛍光材料の組成に応じて設定されることが好ましい。
次に、得られた混合物を白金製またはアルミナ製のるつぼに封入して、大気中、不活性ガス雰囲気中または還元性雰囲気中で650〜1000℃で熱処理して結晶化させる。このとき、熱処理による結晶化の前に、原料の混合物を固溶状態としておくことが好ましい。これにより、発光賦活剤が母体結晶に均一に固溶された状態で結晶性の高い母体結晶(ケイ酸亜鉛母体結晶)を得ることができる。よって、強い発光を示す蓄光性蛍光材料を得ることができる。
混合物の固溶状態である中間体を得る方法としては、たとえば、混合物に対してメカニカルミリング処理を行うという方法を挙げることができる。これにより、原料が均一に混合され、アモルファス状態となった中間体を得ることができる。よって、高温下での溶融工程を経ることなく中間体を製造することができるので、溶融温度などに制限されることなく原料を選択することができる。よって、所望の特性を有する蓄光性蛍光材料を製造することができる。
このメカニカルミリング処理は、たとえば、ボールミルにより行うことができ、ボールミルの中でもエネルギーのより高い粉砕装置である遊星型ボールミル、振動ミルまたはビーズミルなどを用いて行われることが好ましい。これにより、機械的エネルギーが原料の混合物に強く与えられ、混合物に与えられたエネルギーは発光賦活剤および結晶化促進剤が常温でガラス中に固溶するためのエネルギーに変換される。よって、加工温度が非常に高いために特殊な設備で溶融する必要があったアルミノホウケイ酸ガラスを簡易な装置で蓄光性蛍光材料の母体材料として利用することができる。したがって、多大なエネルギーを消費することなく蓄光性蛍光材料を製造することができるので、蓄光性蛍光材料を低コストで製造することができる。
たとえば遊星型ボールミルを用いてメカニカルミリング処理を行う場合には、200〜600rpmの回転速度でミルを行うことが好ましい。用いるポットおよびボールは、ジルコニア製、メノウ製、アルミナ製またはステンレス製などであることが好ましく、耐摩耗性の高さおよび比重の大きさなどからジルコニア製であることがより好ましい。用いるボールの直径は、直径2〜10mmであることが好ましい。メカニカルミリング処理時間としては、原料の反応性などに応じて設定されることが好ましく、たとえば1〜50時間程度であることが好ましい。
メカニカルミリング処理を行うことにより、好ましくは高エネルギー型の粉砕装置を用いてメカニカルミリング処理を行うことにより、ガラスと発光賦活剤と結晶化促進剤とは均一なガラス固溶体となり、アモルファス状態となった中間体が得られる。ガラス、発光賦活剤もしくは結晶化促進剤などの原料の組成またはメカニカルミリング処理の条件などは、上記記載に限定されない。中間体の粒径が数十nm〜数μmとなるように原料の組成またはメカニカルミリング処理の条件などを設定することが好ましい。
このようにして得られた中間体を加熱して結晶化する。メカニカルミリング処理を経てガラス固溶体となった中間体を数百℃に加熱すると、結晶化が起こる。このとき、結晶核の生成は中間体の内部から起こりやすいため、中間体は従来の固相法による結晶化に比べてより低温で結晶化される。また、発光賦活剤は、メカニカルミリング処理により中間体内に均一に分布しているため、結晶へ均一に導入されることとなる。よって、蓄光性能に優れた蓄光性蛍光材料を得ることができる。
中間体を結晶化させる方法としては、たとえば、中間体を650〜1000℃で加熱することが好ましい。加熱温度が650℃より低いと、ガラス転移または結晶化などが起こり難いことがある。加熱温度が1000℃を超えると、装置コストの増大またはエネルギー消費の増大などを招くことがある。なお、加熱温度は、中間体のDSC(示差走査熱分析)またはDTA(示差熱分析)により吸熱変化(ガラス転移点温度)または発熱変化(結晶化温度)などを測定して決定される。加熱時間は、結晶の組成または結晶の成長度合いなどにより適宜設定することが好ましく、たとえば1〜10時間程度であることが好ましい。
中間体を大気雰囲気中で加熱することが好ましい。窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、または、水素ガスなどの還元雰囲気中でも、中間体を加熱して結晶化させることは可能である。しかし、中間体を大気雰囲気中で加熱すれば、一般的な電気炉またはマッフル炉を用いて中間体を加熱することができるため、装置コストの低減を図ることができる。よって、蓄光性蛍光材料をさらに低コストで製造することができる。また、結晶化工程における水素爆発などの懸念を払拭することができるので、蓄光性蛍光材料を安全に製造することもできる。
得られた結晶をそのまま蓄光性蛍光材料として用いることができる。また、得られた結晶を粉砕し、粒径を揃え、様々な樹脂などに練りこんで、塗料などとして用いることもできる。
以上説明したように、本発明に係る蓄光性蛍光材料は、紫外線励起により残光特性を呈し、ZnとSiとAlとBとOとを含み、ケイ酸亜鉛結晶構造を有する。Siに対するZnのモル比は、酸化物換算で1.0以上3.0以下である。Bは、酸化物換算で14モル%以上25モル%以下含まれ、Alは、酸化物換算で0モル%よりも多く6モル%以下含まれる。これにより、化学的に安定で、良好な蓄光性能を有する蓄光性蛍光材料を提供することができる。
ケイ酸亜鉛結晶構造は、α−Zn2SiO4結晶構造およびβ−Zn2SiO4結晶構造の少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、良好な蓄光性能を有する蓄光性蛍光材料を提供することができる。
ケイ酸亜鉛結晶構造は、Zn1.7SiO4結晶構造を含むことが好ましい。これにより、良好な蓄光性能を有する蓄光性蛍光材料を提供することができる。
Siに対するZnのモル比は、酸化物換算で1.5以上2.0以下であることが好ましい。これにより、蓄光性能がさらに向上する。
Znは、酸化物換算で30モル%以上60モル%以下含まれることが好ましい。これにより、蓄光性能がさらに向上する。
本発明に係る蓄光性蛍光材料は、0.01モル%以上10モル%以下の発光賦活材料をさらに含むことが好ましい。発光賦活材料は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうちの1つ以上の元素を含むことが好ましい。これにより、蓄光の蛍光強度を確保することができる。
本発明に係る蓄光性蛍光材料は、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いたものであることが好ましく、アルミノホウケイ酸ガラスは、液晶パネルガラスから得られたものであることが好ましい。これにより、蓄光性能に優れた蓄光性蛍光材料を提供できるとともに、液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスを資源として有効に利用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1〜2]
<実施例1>
実施例1では、ガラスとして液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスと石英ガラスとを用い、発光賦活剤として酸化マンガン(II)(MnO)を用い、結晶化促進剤として酸化亜鉛(ZnO)を用いた。さらに、残光特性を向上させる材料として、三酸化二ホウ素(B23)を用いた。
具体的には、まず、メノウ製の乳鉢に、粒径が100〜200μmに調整されたアルミノホウケイ酸ガラス146.1gと石英ガラス124.3mgと酸化マンガン(II)(MnO)2.8mgと酸化亜鉛(ZnO)572.0mgと三酸化二ホウ素(B23)154.8mgとを入れて混合した。遊星型ボールミル(フリッチュ社製 遊星型ボールミル プレミアムラインP−7)を用いて、得られた混合物に対してメカニカルミリング処理を行った。メカニカルミリング処理の条件は、以下の通りである。
・回転速度:510rpm
・ポット:ZrO2製45ml容器
・ボール:ZrO2製直径5mm×160個
・処理時間:10時間
・処理温度:20℃。
得られた中間体のX線回折スペクトルを測定し、アモルファス状態の固溶体である中間体が得られていることを確認した。DTA装置(示差熱分析、リガク製TG8120)により、10℃/分の昇温レートにて、この中間体の熱量変化を測定した。650℃〜1000℃の温度範囲において数点の発熱変化が見られた。
上記中間体を、アルミナ製のるつぼに入れ、マッフル炉にて加熱した。中間体の加熱条件としては、大気雰囲気中で5℃/分の昇温速度で900℃まで加熱し、900℃で2時間保持したのち、約4〜5時間かけて室温まで冷却した。これにより、中間体が結晶化された。つまり、実施例1の蓄光性蛍光材料が得られた。
実施例1の蓄光性蛍光材料をメノウ製の乳鉢で粉砕してX線回折スペクトルを測定した。得られたX線回折スペクトルを図1に示す。図1に示すスペクトルから、実施例1の蓄光性蛍光材料はα−Zn2SiO4結晶構造を主に含有していることがわかった。
蛍光分光光度計(日本分光製FP−8500)を用いて、実施例1の蓄光性蛍光材料に波長250nmの紫外線を照射して、その蛍光スペクトルを測定した。その結果を図2に示す。図2から、実施例1の蓄光性蛍光材料は524nm付近に強い発光(緑色)を示すことがわかった。
上記蛍光分光光度計を用いて、実施例1の蓄光性蛍光材料に波長250nmの紫外線を5分間照射してから当該紫外線(励起光)を遮断した後に、波長524nmにおける残光強度の時間変化を測定した。その結果を図3に示す。実施例1では、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過してもPL強度はそれほど低下せず、よって、優れた残光特性を示す蓄光性蛍光材料が得られたと言える。
<実施例2〜4>
実施例2〜4では、原料のモル%が表1に記載の値となるように原料の含有量を変更したことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって蓄光性蛍光材料を製造した。上記実施例1に記載の方法にしたがって、得られた蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトル、蛍光スペクトルおよび残光特性を調べた。
表1に示すように、実施例2〜4の蓄光性蛍光材料もα−Zn2SiO4結晶構造を主に含有していることがわかった。また、図2に示すように、実施例2〜4の蓄光性蛍光材料も524nm付近に強い発光(緑色)を示すことがわかった。さらに、図3に示すように、実施例2〜4においても、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過してもPL強度はそれほど低下せず、よって、優れた残光特性を示す蓄光性蛍光材料が得られたと言える。
<比較例1〜2>
比較例1〜2では、原料のモル%が表1に記載の値となるように原料の含有量を変更したことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって蓄光性蛍光材料を製造した。上記実施例1に記載の方法にしたがって、得られた蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトル、蛍光スペクトルおよび残光特性を調べた。
表1に示すように、比較例1〜2の蓄光性蛍光材料もα−Zn2SiO4結晶構造を主に含有していることがわかった。図2に示すように、比較例1〜2の蓄光性蛍光材料も524nm付近に発光(緑色)を示したが、その強度は実施例1〜4よりも低かった。また、図3に示すように、比較例1では、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過すると、PL強度はバックグラウンドレベルにまで低下した。比較例2では、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過すると、PL強度は、比較例1よりも大きかったが、実施例1〜4の半分程度であった。
<結果と考察>
結果を表1と図4〜図5とに示す。図4はSiO2に対するZnOの割合(モル比)と蛍光強度との関係を示すグラフであり、図5はSiO2に対するZnOの割合(モル比)と蓄光強度との関係を示すグラフである。なお、表1および図5における「蓄光強度」は、いずれも、紫外線(励起光)を遮断してから600秒が経過したときの強度である。
Figure 2014133837
図4〜図5に示すように、Siに対するZnのモル比が酸化物換算で1.0以上3.0以下であれば、蛍光強度が大きく、蓄光強度も大きかった。よって、Siに対するZnのモル比は酸化物換算で1.0以上3.0以下であることが好ましいと言える。
一方、Siに対するZnのモル比が酸化物換算で1.0未満であれば(比較例1)、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が低下すると考えられる。よって、ケイ酸亜鉛母材結晶が吸収する紫外線の量の低下を招き、その結果、蛍光強度および蓄光強度が低下した。
Siに対するZnのモル比が酸化物換算で3.0を超えると(比較例2)、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成に使われずに残存する過剰なZnOが存在すると考えられる。この過剰なZnOは紫外線を吸収するので、ケイ酸亜鉛母体結晶が吸収する紫外線の量の低下を招く。それだけでなく、Zn4O(BO26結晶またはZn326結晶などの析出を招くため、ケイ酸亜鉛母体結晶に取り込まれるBの量が低下すると考えられる。これらのことから、蛍光強度および蓄光強度が低下した。
[実施例5〜7、比較例3〜6]
<実施例5〜7>
実施例5〜7では、原料のモル%が表2に記載の値となるように原料の含有量を変更したことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって蓄光性蛍光材料を製造した。上記実施例1に記載の方法にしたがって、得られた蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトル、蛍光スペクトルおよび残光特性を調べた。
表2に示すように、実施例5〜7の蓄光性蛍光材料もα−Zn2SiO4結晶構造を主に含有していることがわかった。また、図6に示すように、実施例5〜7の蓄光性蛍光材料も524nm付近に強い発光(緑色)を示すことがわかった。さらに、図7に示すように、実施例5〜7においても、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過してもPL強度はそれほど低下せず、よって、優れた残光特性を示す蓄光性蛍光材料が得られたと言える。
<比較例3〜6>
比較例3〜6では、原料のモル%が表2に記載の値となるように原料の含有量を変更したことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって蓄光性蛍光材料を製造した。上記実施例1に記載の方法にしたがって、得られた蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトル、蛍光スペクトルおよび残光特性を調べた。
表2に示すように、比較例3〜6の蓄光性蛍光材料もα−Zn2SiO4結晶構造を主に含有していることがわかった。表2および図6に示すように、比較例3〜5の蓄光性蛍光材料は524nm付近に発光を示したが、その強度は実施例5〜7よりも低かった。比較例6の蓄光性蛍光材料は、524nm付近に発光を示さなかった。また、表2および図7に示すように、比較例3では、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過すると、PL強度は、実施例5〜7の半分程度であった。比較例4〜5では、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過すると、PL強度は、実施例5〜7よりも小さかった。比較例6では、紫外線(励起光)を遮断してから100秒足らずで、PL強度はバックグラウンドレベルにまで低下した。
<結果と考察>
結果を表2と図8〜図11とに示す。図8はB23(モル%)と蛍光強度との関係を示すグラフであり、図9はB23(モル%)と蓄光強度との関係を示すグラフであり、図10はAl23(モル%)と蛍光強度との関係を示すグラフであり、図11はAl23(モル%)と蓄光強度との関係を示すグラフである。なお、表2、図9および図11における「蓄光強度」は、いずれも、紫外線(励起光)を遮断してから600秒が経過したときの強度である。
Figure 2014133837
図8〜図9に示すように、Bが酸化物換算で14モル%以上25モル%以下含まれていれば、蛍光強度が大きく、蓄光強度も大きかった。よって、Bは酸化物換算で14モル%以上25モル%以下含まれていることが好ましいと言える。
一方、Bが酸化物換算で14モル%未満含まれているに過ぎない場合には、欠陥準位(トラップ)の量が少ないと考えられる。よって、蓄光性能の低下を招いた。また、Bが酸化物換算で25モル%を超えて含まれていれば、Zn4O(BO26結晶の析出を招くため、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量が低下したと考えられる。よって、蓄光性能の低下を招いた。
図10〜図11に示すように、Alが酸化物換算で0モル%より多く6モル%以下含まれていれば、蛍光強度が大きく、蓄光強度も大きかった。よって、Alは酸化物換算で0モル%より多く6モル%以下含まれていることが好ましいと言える。
一方、Alが酸化物換算で6モル%を超えて含まれていれば、ZnAl24結晶の析出量が多くなると考えられ、よって、ケイ酸亜鉛母体結晶の生成量の低下を招く。その結果、蓄光性能の低下を招いた。
<実施例8>
実施例8では、中間体の加熱温度を720℃とし、その加熱保持時間を4時間としたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、蓄光性蛍光材料を製造した。
上記実施例1に記載の方法にしたがって実施例8の蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトルを測定した。その結果を図12に示す。図12に示すように、実施例8の蓄光性蛍光材料はZn1.7SiO4結晶構造を主に含有していることがわかった。
上記実施例1に記載の方法にしたがって実施例8の蓄光性蛍光材料の蛍光スペクトルを測定した。その結果を図13に示す。図13に示すように、実施例8の蓄光性蛍光材料も524nm付近に強い発光(緑色)を示した。
上記実施例1に記載の方法にしたがって実施例8の蓄光性蛍光材料の波長524nmにおける残光強度の時間変化を測定した。その結果を図14に示す。図14に示すように、実施例8においても、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過してもPL強度はそれほど低下せず、よって、優れた残光特性を示す蓄光性蛍光材料が得られたと言える。
<実施例9>
実施例9では、中間体の加熱温度を740℃とし、その加熱保持時間を4時間としたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、蓄光性蛍光材料を製造した。
上記実施例1に記載の方法にしたがって実施例9の蓄光性蛍光材料のX線回折スペクトルを測定した。その結果を図15に示す。図15に示すように、実施例9の蓄光性蛍光材料はβ−Zn2SiO4結晶構造を主に含有していることがわかった。
上記実施例1に記載の方法にしたがって実施例9の蓄光性蛍光材料の蛍光スペクトルを測定した。図13に示すように、実施例9の蓄光性蛍光材料は555nm付近に強い発光(黄色)を示した。
上記実施例1に記載の方法にしたがって、実施例9の蓄光性蛍光材料の波長555nmにおける残光強度の時間変化を測定した。図14に示すように、実施例9においても、紫外線(励起光)を遮断してから1200秒が経過してもPL強度はそれほど低下せず、よって、優れた残光特性を示す蓄光性蛍光材料が得られたと言える。
<実施例10>
実施例10では、上記実施例1で製造された蓄光性蛍光材料の耐水性を評価した。具体的には、実施例1で製造された蓄光性蛍光材料1gに対しイオン交換水を50ml加えて撹拌し、常温で30日間静置した。その後、ろ紙で濾過してから乾燥させたのち、X線回折スペクトルを測定した。図1に示すX線回折スペクトルと同様のX線回折スペクトルが得られたことを確認した。
また、上記実施例1で用いた蛍光分光光度計を用いて、乾燥後の蓄光性蛍光材料の蛍光スペクトルを測定した。図2の実施例1で示す蛍光スペクトルと同様の蛍光スペクトルが得られたことを確認した。
さらに、上記蛍光分光光度計を用いて、乾燥後の蓄光性蛍光材料の波長524nmにおける残光強度の時間変化を測定した。図3の実施例1で示す残光特性と同様の特性が得られたことを確認した。これらのことから、上記実施例1で製造された蓄光性蛍光材料は耐水性に優れていることが分かった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (8)

  1. 紫外線励起により残光特性を呈する蓄光性蛍光材料であって、
    Znと、Siと、Alと、Bと、Oとを含み、
    ケイ酸亜鉛結晶構造を有し、
    前記Siに対する前記Znのモル比は、酸化物換算で1.0以上3.0以下であり、
    前記Bは、酸化物換算で14モル%以上25モル%以下含まれ、
    前記Alは、酸化物換算で0モル%よりも多く6モル%以下含まれる蓄光性蛍光材料。
  2. 前記ケイ酸亜鉛結晶構造は、α−Zn2SiO4結晶構造およびβ−Zn2SiO4結晶構造の少なくとも一方を含む請求項1に記載の蓄光性蛍光材料。
  3. 前記ケイ酸亜鉛結晶構造は、Zn1.7SiO4結晶構造を含む請求項1に記載の蓄光性蛍光材料。
  4. 前記Siに対する前記Znのモル比は、酸化物換算で1.5以上2.0以下である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄光性蛍光材料。
  5. 前記Znは、酸化物換算で30モル%以上60モル%以下含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の蓄光性蛍光材料。
  6. 0.01モル%以上10モル%以下の発光賦活剤をさらに含み、
    前記発光賦活剤は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうちの1つ以上の元素を含む請求項1〜5のいずれかに記載の蓄光性蛍光材料。
  7. 前記蓄光性蛍光材料は、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いたものである請求項1〜6のいずれかに記載の蓄光性蛍光材料。
  8. 前記アルミノホウケイ酸ガラスは、液晶パネルガラスから得られたものである請求項7に記載の蓄光性蛍光材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016173208A (ja) * 2015-03-17 2016-09-29 株式会社ダイセル モジュール式発射装薬
US11733162B2 (en) 2021-02-04 2023-08-22 Shinko Electric Industries Co., Ltd. Ultraviolet detection material and ultraviolet detection device

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