JP2014128664A - マルチモードスカウト走査に基づくct画像化方法およびctシステム - Google Patents

マルチモードスカウト走査に基づくct画像化方法およびctシステム Download PDF

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Abstract

【課題】マルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法およびCTシステムを提供する。
【解決手段】マルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法は、高電圧と低電圧との間の瞬時スイッチングにより被検体の対象領域上で瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト放射線走査を実行し、対象領域のデュアルエネルギ投影データを収集するステップと、収集されたデュアルエネルギ投影データに基づいて、物質分解画像と単一エネルギ画像とを再構成するステップと、を含む。本発明によるCT画像化方法とCT画像化システムとによると、スクリーニング目的に対応するCT画像を、低い放射線線量で迅速に再構成することができる。
【選択図】図2

Description

本出願は、放射線CTの分野に関し、更に詳しくは、マルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法およびCTシステムに関する。
現在では、X線CTシステムなどの放射線CTシステムが、被検体の冠動脈など被検体の対象領域の3次元的な画像化のために様々な医療機関において広く用いられており、臨床医が被検体の正確な医学的診断をなすことの補助をしている。
現在の冠動脈スクリーニング方法においては、冠動脈内の超音波領域測定(intracoronary ultrasound area assay)が、冠動脈の狭窄の程度を判断する正確な方法である。しかし、それは、高い技術的条件および費用のために、通常の医学的応用には適していない。
デジタルサブトラクション血管造影法(DSA)による冠動脈撮影は、大腿部の大腿動脈または他の周囲の動脈経由でカテーテルを挿入し、左または右の冠動脈の開口部の中にカテーテルを挿入するまで上行大動脈を移動させ、冠動脈を現像するために造影剤を冠動脈に注入することを含む。この方法は、冠動脈の解剖学的な変形と、関連する閉塞性病理学的変化の位置、程度および範囲とを明確に示すことができる。したがって、DSAによる冠動脈撮影は、動脈の形態学の直接的観察法である。しかし、この方法は、不整脈、塞栓症および穿刺位置における出血のような合併症など、被検体に対して深刻な副作用を生じさせる可能性がある。これらの合併症による被検体の死亡率は約0.11%から0.14%であり、心筋梗塞の率は約0%から0.06%であり、左冠動脈主幹部に狭窄を有する被検体の心筋梗塞および死亡率は約3.0%にも達するのである。更に、DSAによる冠動脈撮影は、多くの患者にとって受け入れるのが困難な高価で侵襲的な方法である。
一般的に、CTスキャンでは、CTシステムのすべてのコンポーネントは静止した状態に維持されている間に、被検体がCTシステムを通過するように移動され、被検体の対象領域を位置決めするために被検体に対するスカウト走査が実行され、それによって、それ以降の完全なCTスキャンのために被検体の対象領域が同定される。スカウト走査は、低いマイクロアンペア(mA)で実行されるのが典型的であり、被検体の縦軸方向に沿った投影図を提供し、それぞれが被検体の内部構造を含む集計(aggregations)を提供するのが一般的である。しかし、スカウト走査によって収集されたデータは、3次元画像の再構成に十分な情報は含まない。その理由は、スカウト走査における投影データは、被検体の縦軸方向に沿って特定の投影角度で収集されているからである。更に、スカウト走査は収集された画像においていくつかの重複する構造を有しているため、スカウト走査によって被検体の特定の精細な構造を同定するのは困難である。
64スライスヘリカルCTは、非侵襲的な診断用画像化技術として、冠動脈疾患が疑われる被検体の検出率を改善し、高い診断精度をもって、冠動脈狭窄の評価およびスクリーニングのための非侵襲的方法として用いることが可能である。しかし、64スライスヘリカルCTには、スカウト走査よりも高い放射線線量が必要とされる。また、血管に石灰化が存在するときには、無効になる。というのは、血管における石灰化は、注入される造影剤に対して深刻な干渉を生じさせるからである。
ジェムストーンスペクトラルイメージング(GSI)64スライスヘリカルCTは、単一エネルギ画像と物質分解によりヨウ素とカルシウムを分離することによって石灰化問題を解決し、診断と血管の石灰化との干渉を除去することができる。しかし、通常のスカウト走査と比較すると、64スライスヘリカルCTとGSI64スライスヘリカルCTを含むすべてのヘリカルCTは、より高い放射線線量を必要とする。通常のスカウト走査によって収集される画像は、コントラストの低さと物質の重畳のために、冠動脈のスクリーニングには用いることができない。
したがって、低い放射線線量でCT画像を迅速に再構成するCT画像化方法およびCTシステムが、必要とされているのである。
本発明は、上述した問題を解決することができるマルチモードのスカウト走査に基づくCT画像化方法およびCTシステムを提供する。
本発明の第1の態様によると、放射線CT画像化システムが提供される。この放射線CT画像化システムは、開口部を有するガントリと、被検体を支持する走査テーブルと、ガントリ上であって被検体の一方の側に配置されており、被検体に光線を放射する放射線源と、ガントリ上であって被検体の反対側に配置されており、被検体を透過する放射線を検出する放射線検出器と、放射線源の放射線を制御する放射線コントローラと、ガントリ上に配置され放射線検出器に結合されており、被検体の対象領域に関する投影データを、放射線検出器によって検出された光線から収集するデータ取得システムと、ガントリ、走査テーブル、放射線コントローラおよびデータ取得システムの内の1つまたは複数の動作を制御する操作コンソールと、を備えており、操作コンソールは、この放射線CT画像化システムに、高電圧と低電圧との間での瞬時スイッチングにより被検体の対象領域上において瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査を実行させ、収集されたデュアルエネルギ投影データから所定のスクリーニング目的に対応する物質分解画像と単一エネルギ画像とを再構成させるように構成されている。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、光線はX線である。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、高電圧と低電圧は、80kVpと140kVpとの間の範囲にある。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、高電圧は140kVpであり、低電圧は80kVpである。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、高電圧は120kVpであり、低電圧は100kVpである。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、再構成された単一エネルギ画像に対応する単一エネルギ値は、40keVと140keVとの間の範囲にある。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、高電圧と低電圧とは、500Hz以上の周波数で切り替わる。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、高電圧と低電圧とは、825Hzの周波数で切り替わる。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、操作コンソールは、更に、この放射線CT画像化システムに、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査を実行する前に、被検体上で通常のスカウト走査を実行させ、被検体の対象領域を位置決めするように構成されている。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、所定のスクリーニング目的は、冠動脈狭窄および/または冠動脈石灰化である。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、操作コンソールは、更に、この放射線CT画像化システムに、被検体に造影剤を注入した後で、被検体上の選択された走査範囲でスカウトシャトル走査を実行させ、対象領域のエンハンスト時間を予測するように構成されている。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、操作コンソールは、更に、この放射線CT画像化システムに、被検体に造影剤を注入した後で、被検体上の選択された走査範囲でアキシアルまたはヘリカルシャトル走査を実行させ、対象領域のエンハンスト時間を予測するように構成されている。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、対象領域の予測されたエンハンスト時間に基づき、被検体の対象領域上でこの放射線CT画像化システムによって実行される瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査がトリガされる。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、冠動脈狭窄と冠動脈石灰化に対応する物質は、ヨウ素とハイドロオキシアパタイト(HAP)である。
本発明の第1の態様による放射線CT画像化システムでは、操作コンソールは、更に、所定のスクリーニング目的とは異なるスクリーニング目的に基づいて、1つまたは複数の対応する物質画像と単一エネルギ画像とを、収集されたデュアルエネルギ投影データから事後的に再構成するように構成されている。
本発明の第2の態様によると、マルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法が提供される。この方法は、高電圧と低電圧との間の瞬時スイッチングにより被検体の対象領域上で瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト放射線走査を実行し、対象領域のデュアルエネルギ投影データを収集するステップと、収集されたデュアルエネルギ投影データに基づいて、物質分解画像と単一エネルギ画像とを再構成するステップと、を含む。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、放射線走査はX線を用いる。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、高電圧と低電圧は、80kVpと140kVpとの間の範囲にある。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、高電圧は140kVpであり、低電圧が80kVpである。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、高電圧は120kVpであり、低電圧は100kVpである。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、再構成された単一エネルギ画像に対応する単一エネルギ値は、40keVと140keVとの間の範囲にある。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、高電圧と低電圧とは、500Hz以上の周波数で切り替わる。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、高電圧と低電圧とは、825Hzの周波数で切り替わる。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、この方法は、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト放射線走査を実行する前に、被検体の対象領域に基づきマルチモードスカウト走査のためのスクリーニングプロトコルを選択するステップと、被検体上で通常のスカウト走査を実行して、対象領域を位置決めするステップと、を更に含む。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、この方法は、対象領域の位置決めの後で、被検体に造影剤を注入するステップと、対象領域のエンハンスト時間を予測するステップと、を更に含む。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、対象領域のエンハンスト時間は、選択された走査範囲において対象領域上でスカウトシャトル走査を実行することによって予測される。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、対象領域のエンハンスト時間は、選択された走査範囲において対象領域上でアキシアルまたはヘリカルシャトル走査を実行することによって予測される。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、対象領域のエンハンスト時間は、被検体の医学情報に基づく予測モデルをユーザごとに用いることによって予測される。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、対象領域の予測されたエンハンスト時間に基づいて、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト放射線走査がトリガされる。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、再構成された物質分解画像と単一エネルギ画像とは、所定のスクリーニング目的に対応する。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、所定のスクリーニング目的は、冠動脈狭窄および/または冠動脈石灰化である。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、冠動脈狭窄と冠動脈石灰化に対応する物質は、ヨウ素とHAPである。
本発明の第2の態様によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法では、この方法は、所定のスクリーニング目的とは異なるスクリーニング目的に基づいて、1つまたは複数の対応する物質画像と単一エネルギ画像とを、収集されたデュアルエネルギ投影データから事後的に再構成するステップを更に含む。
本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査に基づくCT画像化技術が採用されるときには、被検体の3次元画像を再構成するために、被検体の対象領域に対して完全なCT走査を実行することは不要である。したがって、被検体の対象領域の3次元CT画像の再構成と比較すると、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査に基づく技術は、被検体のX線線量を著しく減少させることが可能であり、更に、スクリーニング目的に対応する複数の物質画像と単一エネルギ画像とを、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査露出によって収集された投影データから再構成することができ、被検体を多くの回数露出することが不要であるから、被検体のX線線量を更に減少させることができ、関心対象のCT画像の画像化時間を短縮することができる。
以下では、本発明のいくつかの例示的な実施形態が、添付の図面を参照して詳細に説明される。なお、図面においては、同じまたは類似の構成要素は、同じ参照番号によって示されている。
本発明の例示的な実施形態による放射線CTシステムである。 本発明の例示的な実施形態による放射線CTシステムである。 図1に示されている放射線CTシステムによって実行される本発明の例示的な実施形態によるマルチモードスカウトエンハンスト走査の流れ図である。 図1に示されている放射線CTシステムによって実行される本発明の例示的な実施形態による瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査の流れ図である。 通常のスカウト走査から得られる冠動脈のCT画像と、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査から得られる冠動脈のCT画像とである。
以下の詳細な説明では、本発明の例示的な実施形態が、添付の図面を参照して説明される。しかし、本発明がこれらの例示的な実施形態に限定されないことは、当業者に理解されるであろう。
図1A〜1Bは、本発明の例示的な実施形態による放射線CTシステム100を示している。ある実施形態では、この放射線CTシステム100はX線CTシステムである。
図1A〜1Bに示されているように、X線CTシステム100は、ガントリ110と、検出される被検体114を支持して位置決めする走査テーブル116と、操作コンソール130という3つの部分を主に含む。ガントリ110は、X線管102を含む。X線管102から放射されたX線106は、コリメータ104を通過してX線ビームを形成するが、このX線ビームは、扇形ビームおよび円筒形ビームなどの形状を有しており、被検体114の対象領域に照射される。被検体114の対象領域を通過するX線ビームは、被検体114の反対側に配置されたX線検出器112に与えられる。X線検出器112は、扇形のX線ビームの入射方向(信号チャネル方向)と厚さZ方向(カラム方向)とに複数の2次元X線検出素子を有する。オプションではあるが、X線検出器112と被検体114との間には、コリメーションコンポーネント(図1Aおよび1Bには図示されていない)が更に提供され、被検体114を通過するX線を、このX線がX線検出器112に衝突する前に、コリメートする。
データ取得システム(DAS)124は、X線検出器112に結合されている。データ取得システム124は、投影データとして用いるために、X線検出器112のそれぞれのX線検出素子によって検出されたX線を収集する。X線管102からのX線放射は、X線コントローラ122によって制御される。図1Bでは、X線管102とX線コントローラ122との間の接続は示されていない。
データ取得システム124は、X線コントローラ122によってX線管102に与えられた管電圧と管電流とに関するデータを収集する。図1Bでは、X線管102とデータ取得システム124との間の接続は省略されている。
コリメータ104は、コリメータコントローラ120によって制御される。ある実施形態では、コリメータ104とコリメータコントローラ120とは、2つの別個のコンポーネントである。別の実施形態では、コリメータコントローラ120がコリメータ104の内部に配置されることがある。図1Bでは、コリメータ104とコリメータコントローラ120との間の接続は省略されている。
X線管102、コリメータ104、X線検出器112、データ取得システム124、X線コントローラ122およびコリメータコントローラ120などのコンポーネントは、ガントリ110の回転部128に取り付けられている。回転部128は、回転コントローラ126の制御の下で回転する。図1Bでは、回転部128と回転コントローラ126との間の接続は示されていない。
モータなどの駆動システムの作用により、走査テーブル116を、その上で運ばれる被検体114と共に、被検体の縦軸118に沿った方向にガントリ110の開口部108の中へ移動させることができ、それにより、被検体114の対象領域が、コリメータ104を通過してその上に照射されるX線ビームと実質的に垂直になる。
操作コンソール130は、コンピュータなどの中央処理装置136を有する。制御インターフェース140が、中央処理装置136に接続されている。ガントリ110と走査テーブル116とは、制御インターフェース140に接続されている。中央処理装置136は、制御インターフェース140を介して、ガントリ110と走査テーブル116とを制御する。
ガントリ110におけるデータ取得システム124、X線コントローラ122、コリメータコントローラ120および回転コントローラ126は、制御インターフェース140を介して制御される。図1Bでは、関連の部材と制御インターフェース140との間の別々の接続は、示されていない。
データ取得バッファ138が、中央処理装置136に接続されている。ガントリ110におけるデータ取得システム124は、データ取得バッファ138に接続されている。データ取得システム124によって収集された投影データは、データ取得バッファ138を介して、中央処理装置136に入力される。
中央処理装置136は、データ取得バッファ138から入力された投影データを用いて画像再構成を実行する。画像再構成を実行する際には、フィルタ補正逆投影法や3次元画像再構成法などの方法を用いることができる。記憶装置142が、中央処理装置136に接続されている。記憶装置142は、データ、再構成された画像およびX線CTシステム100の様々な機能を実装する手順を記憶するのに用いることができる。
表示装置132と入力装置134とが、中央処理装置136にそれぞれ接続されている。表示装置132は、再構成された画像と中央処理装置136から出力された他の情報とを表示する。放射線科医は、入力装置134を介して、様々な命令やパラメータを中央処理装置136に入力することができる。表示装置132と入力装置134とを通じて、放射線科医は、X線CTシステム100の対話的な操作を行うことができる。
図1に示されているCTシステム100は、異なる性能、マルチエネルギおよび/またはデュアルエネルギのCT画像化システムを含みうる。これに対応して、これらのCT画像化システムを、EDCT、MECTおよび/またはDE−CT画像化システムと称することができる。ある実施形態では、EDCT、MECTおよび/またはDE−CT画像化システムは、異なるX線スペクトルを採用するように構成可能である。例えば、従来型の第3世代CT画像化システムは、異なるkVp電圧における対象領域の投影データを順に収集することができ、そこに含まれる変動は、放射されたX線ビームの入射光子のエネルギピークとスペクトルとに関係する。X線検出器112はエネルギを感知するから、X線検出器112に到達するそれぞれの光子は、その光子エネルギという形態で記録される。
光子エネルギは、X線検出器112における2つの異なるエネルギスペクトルとエネルギ集積を用いる走査を介して検出され、それによって、対象領域の投影データを得ることができる。EDCT/MECT/DE−CTは、エネルギの分化(energy differentiation)と物質特性とを提供する。例えば、標的散乱が存在しない場合、EDCT、MECTおよび/またはDE−CT画像化システムは、スペクトルにおける後続の2つの光子エネルギ領域、すなわち、入射X線スペクトルの低エネルギ部分および高エネルギ部分からの信号に基づき、異なるエネルギの振る舞いを導くことができる。
上述したデュアルエネルギ走査は、異なるエネルギ状態を有する2つの走査を採用し画像における造影剤の分離を促進することができるCT画像を得ることが意図されている。デュアルエネルギ走査は、次の態様の内の1つにおいて収集された2つの走査を含みうるのであって、次の態様とは、すなわち、2つの走査が被検体114の周囲を2回転する必要がある連続的な時間近似の態様と、X線管102が例えば80kVpおよび140kVpという電位で動作する被検体114の周囲で1回だけ実行される回転の角に従う織り交ぜの態様とである。
デュアルエネルギ走査によって収集された投影データは、基礎物質密度画像と単色画像とを生成するのに用いることができる。単色画像は、理想的な単色X線管を用いてCT走査を実行するという効果を示す。1対の物質密度画像が与えられるとき、基礎物質密度画像を生成することが可能である。例を挙げると、例えばカルシウムおよびガドリニウムという異なる物質対の密度画像を、同じ対象領域の水およびヨウ素画像に従って生成することができる。あるいは、対応する特定のX線エネルギを有する1対の単色画像は、1対の基礎物質画像を用いることにより生成することができる。同様に、異なるエネルギを有する1対の基礎物質画像または1対の単色画像は、1対の単色画像から得ることが可能である。
図2は、放射線CTシステム100によって実行される、本発明の例示的な実施形態によるマルチモードスカウトエンハンスト走査の流れ図を示している。
以下では、冠動脈スクリーニングが、本発明によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化技術を説明するための例として用いられる。しかし、本発明が冠動脈スクリーニングに限定されないことは、当業者であれば理解されるはずである。例えば、本発明によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化技術は、胆石や腎臓結石などの異なるスクリーニング目的に適用可能である。
図2に示されているように、202では、マルチモードスカウトエンハンスト走査に基づく冠動脈スクリーニングプロトコルが、被検体114のために選択される。204では、被検体114に対して、通常のスカウト走査が実行され、被検体114の冠動脈を含む対象領域が位置決めされる。206では、被検体114のスカウト走査範囲が決定され、次に、造影剤が被検体114の身体に注入される。208では、造影剤が被検体114に注入された後で、被検体114の冠動脈エンハンスト時間が予測される。210では、被検体の予測された冠動脈エンハンスト時間の後で、高速スイッチングデュアルエネルギスカウト走査が被検体114に対して実行され、放射線科医または臨床医による被検体114の冠動脈のスクリーニングのために、物質画像と単一エネルギ画像とが得られる。212では、放射線科医または臨床医が、被検体114の冠動脈に狭窄および/または石灰化が存在するかどうかに関する予備的なスクリーニングを行うか、または、他の物質対と単一エネルギのエネルギとを選択するために事後的な再構成を行う。
具体的には、202において、マルチモードスカウトエンハンスト走査に基づく冠動脈スクリーニングプロトコルを、入力装置134を介して、被検体114のために選択することができる。例えば、冠動脈狭窄と冠動脈石灰化との少なくとも一方が、臨床医によってなされる被検体114の異なるスクリーニング目的に従って、選択される。冠動脈を対象としない別のスクリーニング目的については、別のスクリーニングプロトコルを更に選択することが可能であり、別のスカウト走査およびCT画像再構成パラメータを調整することができる。
スクリーニング目的が、冠動脈狭窄および冠動脈石灰化である場合には、人体におけるカルシウムの組成に近いヨウ素およびHAPを、物質対として選択することができる。HAPと一致するヨウ素ベースの画像は、冠動脈石灰化から冠動脈狭窄の判断への干渉を除去することができる。最適な単一エネルギは、最大CNRの原理に基づいて選択することができる。
更に、軟組織とエンハンスされた血管とを十分に分離するためには、水とカルシウム(またはヨウ素)を、物質対として選択することができる。
入力装置134を介して冠動脈スクリーニングプロトコルを選択した後で、CT画像化システム100を、被検体114に対する通常モードのスカウト走査を実行するように始動させ、冠動脈を含む対象領域(例えば、被検体114の胸腔)を位置決めすることができる。
具体的には、通常のスカウト走査の走査範囲は、入力装置134を介して調整されることにより、通常モードのスカウト走査の間に再構成されるCT画像は、エンハンスされた冠動脈全体を含むようにでき、それによって冠動脈スクリーニングのための要件が満たされる。被検体114に対する通常モードのスカウト走査を実行するようにCT画像化システム100を始動させて被検体114の対象領域を位置決めするプロセスでは、ガントリ110は静止しているが、被検体114を運ぶ走査テーブル116は、走査テーブルモータによって駆動され、開口部108を介して一定速度でガントリ110を通過するように移動される。X線管コントローラ122は、X線管102を制御して、被検体114の対象領域にX線を照射する。その間、データ取得システム124は、X線検出器112によって検出されたX線の同期サンプリングを実行することにより投影データを取得し、取得された投影データをデータ取得バッファ138に一時的に記憶する。被検体114に対するX線線量の悪影響を軽減するために、X線管102における動作電流を、X線管コントローラによって、mAのオーダーの大きさにすることが可能である。操作コンソール130における中央処理装置136は、データ取得バッファ138に一時的に記憶されている投影データを用いて、被検体114のスカウト走査画像を生成または再構成し、生成または再構成されたスカウト走査画像に基づき、Z軸方向とX軸方向とに沿って被検体114の対象領域を位置決めする。
被検体114の対象領域の位置が決定されると、それ以後のスカウト走査が実行される被検体の領域の範囲が入力装置134を介して調整され、その次には、被検体114の個別情報に従った造影剤注入プロトコルの設定と、被検体114の身体への造影剤の注入とが続く。ここで、造影剤注入プロトコルは、エンハンスされた心臓走査または臨床経験に関する現在の統計に従って調整することができる。
造影剤を被検体114に注入してから所定の時間が経過した後で、冠動脈のエンハンスト時間を予測することが可能になる。
例示的な実施形態では、被検体114の冠動脈のエンハンスメントのための適切な時間は、冠動脈エンハンスメントの予測モデルと組み合わせることにより、身長、体重および心拍出量など被検体114の医療情報に従って予測することができる。
別の例示的な実施形態では、CTシステム100は、被検体114に対するシャトルモードスカウト走査を実行して、被検体114の冠動脈エンハンスメントのリアルタイムでの追跡が行われるように、始動される。
具体的には、シャトルモードのスカウト走査の走査範囲は、入力装置134を介して調整が可能である。例えば、走査範囲は、被検体114の心臓の上方に位置決めすることが可能であり、または、被検体114の心臓が位置している対象領域の走査範囲は、効果的なエンハンスメントを得るために約300mmとして調整が可能である。
スカウトシャトル走査は、入力装置134によって始動される。ガントリ110が静止しているときに、被検体114を運ぶ走査テーブル116は、走査テーブルモータによって駆動されて、例えば150mm/sという高速で、開口部108を通過するように、ガントリ110に対して前後に移動する。X線管コントローラ122は、X線管102を制御して、被検体114の対象領域にX線を照射する。その間、データ取得システム124は、X線検出器112によって検出されたX線の同期サンプリングを実行することにより投影データを取得し、取得された投影データをデータ取得バッファ138に一時的に記憶する。
被検体114に対するスカウトシャトル走査を実行するプロセスでは、走査テーブルが前後に高速で移動することを可能にすることによって、冠動脈エンハンスメントの高速モニタリングを達成することができ、被検体114に対して照射されるX線線量を減らすことができる。異なるスカウト走査モードの間の切り換え時間は、以後の瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査におけるものと同じ走査テーブル移動速度をスカウトシャトル走査において採用することによって、短縮することが可能である。スカウトシャトル走査モードを用いると、冠動脈エンハンスメントのモニタリングの周波数を増加させることがありうる。心臓走査のための特別の小型のフィルタ(図1Aおよび1Bには示されていない)を用いることにより、被検体114に対して照射されるX線線量を更に減少させることが可能である。
スカウトシャトル走査モードに基づく冠動脈エンハンスメントは、所定の閾値に基づいて自動的にトリガすることができる。冠動脈エンハンスメントを自動的にトリガするための所定の閾値は、被検体114の医療登録情報と組み合わせられた臨床経験に従って、放射線科医によって予め設定することができる。放射線科医は、入力装置134を介し、リアルタイムでスカウト走査の再構成を始動し、エンハンスされた走査をトリガすることができる。データ取得システム124は、リアルタイムのスカウト走査から同期的に投影データを収集し、収集された投影データをデータ取得バッファ138に一時的に記憶する。
中央処理装置136は、データ取得バッファ138に一時的に記憶されている第1のスカウトシャトル走査の投影データと、リアルタイムのスカウトシャトル走査の投影データとをそれぞれ用いて、被検体114の第1のスカウトシャトル走査画像とリアルタイムのスカウトシャトル走査画像とを生成または再構成する。リアルタイムのスカウトシャトル走査画像における冠動脈の位置と、第1のスカウトシャトル走査画像における冠動脈の対応する位置とを比較してみよ。2つの位置の差が所定の閾値を超えている場合には、対応する位置を記録し、冠動脈のエンハンスされた走査をトリガすべきである。更に、冠動脈のエンハンスされた走査をトリガするための時間は、冠動脈エンハンスト時間として用いられる。冠動脈走査のための現在位置と実際位置との間の差は、以後のエンハンスされた走査の遅延時間を計算するのに用いることができる。CTシステム100においてコンポーネントを移動させる走査スイッチ時間は、冠動脈エンハンスト時間を予測する際には無視することができる。その理由は、スカウトシャトル走査が、静止しているガントリ110と一様の走査テーブル116の移動時間とを有しているからである。
別の例示的な実施形態では、通常のアキシアルまたはヘリカルシャトル走査を、入力装置134を介して始動させて、被検体114の冠動脈エンハンスメントを追跡することができる。
具体的には、通常のスカウト走査によって被検体114の対象領域を位置決めした結果に従い、走査追跡のための対象部分および領域を、入力装置134を介して選択することができ、リアルタイムのアキシアルシャトル走査を用いて、対象領域における冠動脈のエンハンスメントをモニタする。あるいは、通常のスカウト走査によって被検体114の対象領域を位置決めした結果に従い、走査追跡のための対象部分および領域を、入力装置134を介して選択することができ、リアルタイムのヘリカルシャトル走査を用いて、対象領域における冠動脈のエンハンスメントをモニタする。シャトル走査モードは、また、冠動脈エンハンスメントのモニタリング周波数を増加させることがありうる。
冠動脈に対するスクリーニング目的に関しては、以上の開示により、被検体114の対象領域を位置決めした後で、造影剤を被検体114に注入してエンハンスト走査を実行するプロセスが示されている。しかし、スクリーニング目的が異なれば造影剤の必要性や用量が異なりうることを、当業者であれば理解するはずである。換言すると、本発明によるマルチモードスカウト走査に基づくCT画像化技術に関する限り、造影剤を被検体114に注入し被検体114の対象領域のエンハンスト時間を予測することは、本質的でない。
冠動脈のエンハンスメントを判断する時点で、CT画像化システム100は、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査を実行するように始動される。冠動脈エンハンスメント走査が所定の閾値に基づいて自動的にトリガされるように構成されている場合には、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査モードを、中央処理装置136によって自動的に始動させることが可能である。
図3は、放射線CTシステムによって実行された本発明の例示的な実施形態による瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査の流れ図を示している。
以下では、CTシステムによって実行された瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査が、図3を参照して詳述される。
被検体114上で瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査を実行するとき、CTシステム100は、高電圧と低電圧との間での瞬時スイッチングによりスカウト走査を実行し、被検体114のデュアルエネルギ投影データ(すなわち、高エネルギ投影データおよび低エネルギ投影データ)を収集し、収集されたデュアルエネルギ投影データから、GSIアルゴリズムを介して、被検体の対象領域のエネルギスペクトル画像と物質分解画像とを生成し、生成されたエネルギスペクトル画像と物質分解画像とから、放射線科医または臨床医による被検体114のスクリーニングのために、スクリーニング目的に対応する物質対画像と単一エネルギ画像とを生成する。例えば、スクリーニングが冠動脈を対象としている場合には、生成された物質対および単一エネルギ画像を、被検体114に冠動脈の狭窄および/または冠動脈の石灰化が生じていないかどうかをスクリーニングするのに、用いることができる。
具体的には、302で、高速スイッチングによってX線コントローラ122が第1の電圧と第2の電圧とをX線管102に出力することを可能にすることにより、ガントリ110が静止するように維持され、被検体114が開口部108を介してガントリ110を通過するように一定速度で被検体114の縦軸に沿った方向に移動される間に、被検体114のデュアルエネルギ投影データが収集される。
例示的な実施形態では、X線コントローラ122が、825Hzの周波数で第1の電圧と第2の電圧とを切り替える。別の例示的な実施形態では、X線コントローラ122が、550Hzと等しいかまたはそれよりも高い周波数で、第1の電圧と第2の電圧とを切り替える。データ取得システム124が、走査テーブル116の速度を一定に保ちながら、X線管102の動作電圧を高速で切り替えるように、サンプリングを同期的に実行すると、低いkVp構成と高いkVp構成とに基づいて、重複する投影サンプルが得られる。デュアルエネルギ走査プロセスでは、走査テーブル116の速度は、100mm/sである、100mm/sから175mm/sの間を変動する、または0mm/sから200mm/sもしくは更に高速の間で変動する、ということがありうる。
X線管102の出力電流は、20〜400mAでありうる。第2の電圧は、第1の電圧よりも高圧でありうる。したがって、データ取得システム124は、第1の電圧周期の間に低エネルギ投影データを収集し(306)、第2の電圧周期の間に高エネルギ投影データを収集する(304)。第1および第2の電圧は、80kVpから120kVpまでの間から選択することができる。ある例示的な実施形態では、第1の電圧は80kVp、第2の電圧は140kVpでありうる。別の例示的な実施形態では、第1の電圧は100kVp、第2の電圧は120kVpでありうる。更に別の例示的な実施形態では、X線管102の動作電圧は、データ取得周期の間に連続的に変動し、複数のエネルギレベルを生成して、X線検出器112によって受け取られるX線ビームを等化することができる。
データ取得システム124は、収集されたデュアルエネルギ投影データを、一時的な記憶のためにデータ取得バッファ138に送信する。中央処理装置136は、データ取得バッファ138に一時的に記憶されているデュアルエネルギ投影データを用いて、被検体114の1つまたは複数のデュアルエネルギ画像を生成または再構成する。生成または再構成されたデュアルエネルギ画像は、2次元の基礎物質密度画像を生成するのに用いることができる。基礎物質密度画像は、その画像における対象領域を同定し、特徴付け、診断するのに助けになる特定密度画像を生成するように処理することができる。例えば、特定密度画像は、骨密度、軟組織、カルシウム、水分、ヨウ素、脂肪分などに関係しうる。
図3に示されているように、中央処理装置136は、収集された低エネルギ投影データおよび高エネルギ投影データを処理する(308〜310)。具体的には、中央処理装置136は、データ取得バッファ138から抽出された低エネルギ投影データおよび高エネルギ投影データに対して、フォーマット変換、スピット補正(spits correction)、ゼロ交換参照(zero replacement reference)、正規化、チャネルトランケーション、エアキャリブレーション、事前の不良検出器補正および最終的な不良検出器補正を含む処理態様の内の1つまたは複数を実行することができる。
312では、中央処理装置136は、処理された低エネルギおよび高エネルギ投影データに対してビューアライメントを実行し、アライメントのなされた高エネルギおよび低エネルギビューに対してスカウト圧縮、平均化および負の対数処理を行い、更にビューにおける物質対m1およびm2を分離する。314および316では、中央処理装置136が、分離された物質対m1およびm2をフィルタリングし、318および320では、物質対m1およびm2のCT画像が、フィルタリングされた物質対m1およびm2のビューに従って生成または再構成され、322では、単一エネルギ画像が、選択された単一エネルギに基づいて、物質対m1およびm2のCT画像から生成される。オプションであるが、中央処理装置136は、また、予測されたCT値に基づいて、生成された単一エネルギ画像を補正することができる。
瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査の投影データを収集する前に、または後に、物質対と単一エネルギとを、スクリーニング目的のために選択することができる。例示的な実施形態では、スクリーニング目的に従って、水とカルシウム(またはヨウ素)を、物質対m1およびm2として選択することができる。当業者であれば、他の物質対を選択できること、例えば、ヨウ素とHAPを物質対として選択できることを理解するであろう。
図4は、通常のスカウト走査から得られた冠動脈のCT画像と、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査から得られた冠動脈のCT画像とを示している。
図4では、図(A)は、通常のスカウト走査から得られた冠動脈のCT画像を示し、図(B)は、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査から得られた冠動脈と関係する軟組織のCT画像を示していて、このCT画像は図3の318および320で中央処理装置136によって生成された物質画像の内の一方に対応し、図(C)は、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査から得られた冠動脈と関係する骨のCT画像を示していて、このCT画像は図3の318および320で中央処理装置136によって生成された物質画像の内の他方に対応し、図(D)は、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査から得られた冠動脈と関係する単一エネルギのCT画像を示していて、このCT画像は図3の322で中央処理装置136によって物質対のCT画像から生成された単一エネルギ画像に対応する。
図4の(A)および(C)における矢印によって示されているように、通常のスカウト走査から得られたスカウト画像とGSIスカウトから得られた水およびカルシウムの物質分解画像とを比較することにより、GSIスカウト走査は、物質分解を介して、得られたCT画像における冠動脈をより明瞭に特徴付けることができ、それにより、冠動脈の石灰化および/または狭窄を診断するための視覚的証拠が提供される。
図4(D)に示されている単一エネルギ画像が対応する最適なkeV値は、70keVである。最適のkeV値は、スクリーニング目的の異なる規則に従って、単一エネルギ画像に与えることができる。keV値は、被検体の医学的条件と冠動脈のエンハンスト走査の効果とに従って、それ自体で定義されうる。より高い密度解像度が望まれる場合には、例えば40から60keVなど、より低いkeV値を選択することができる。ビームハードニングにより生じるアーチファクトを除去する必要がある場合には、より高いkeV値を選択することができる。得られたkeV値の減算または加算処理を通じて、より多くの情報を得ることができる。
ナビーン・チャンドラ(Naveen Chandra)他によって出願された「マルチエネルギCT画像化データを取得するシステムおよび方法(System and Method of Acquiring Multi−energy CT Imaging Data)」と題する米国特許第8199875号には、高および低kVp投影データを用いて最終画像を生成するCT画像化方法が開示されている。引用により、この米国特許の開示は、本開示に組み入れられる。
CTシステム100によって実行された瞬時スイッチングデュアルエネルギGSIスカウト走査から生成または再構成された冠動脈のエンハンストCT画像により、放射線科医または臨床医は、被検体114に冠動脈の狭窄および/または石灰化を生じているかどうかに関する予備的な診断を行う。同一の対象領域を対象とする異なるスクリーニング目的のために2つまたはそれよりも多くのモードのスクリーニングを同時的に実行する意図を有している場合には、放射線科医または臨床医は、異なる物質対および単一エネルギを選択して、以前の瞬時スイッチングデュアルエネルギGSIスカウト走査を介して収集されたデュアルエネルギ投影データから、対応するスクリーニングの実現に役立つ関心対象の画像を事後的に再構成することができる。同様に、関心対象の物質および単一エネルギをより多く選択する意図を有している場合には、放射線科医または臨床医は、また、以前の瞬時スイッチングデュアルエネルギGSIスカウト走査を介して収集されたデュアルエネルギ投影データから、対応するスクリーニングの実現に役立つ関心対象のより多くの画像を、事後的に再構成することができる。
図4(D)に示されている単一エネルギ画像が対応する選択された単一エネルギは、70keVである。しかし、この単一エネルギ画像における被検体の冠動脈は、冠動脈の狭窄および/または石灰化のスクリーニングに十分な程度まで明瞭でない。したがって、より低い単一エネルギを新たに選択して、以前の瞬時スイッチングデュアルエネルギGSIスカウト走査を介して収集されたデュアルエネルギ投影データから、より高密度の分解能を有する単一エネルギ画像を再構成することができ、このより高密度の分解能を有する単一エネルギ画像を、冠動脈のスクリーニングに用いることができる。
本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査に基づくCT画像化技術が採用されると、被検体の3次元画像を生成または再構成するために被検体の対象領域上で完全なCT走査を実行することが不要である。したがって、被検体の対象領域の3次元CT画像の生成または再構成と比較すると、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査は、CT走査の間に被検体に対して照射されるX線線量を著しく減少させることができる。更に、本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査に基づくCT画像化技術を用いることにより、スクリーニング目的に対応する複数の物質画像および単一エネルギ画像を、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査露出によって収集された投影データから生成または再構成することができ、その際に被検体を複数回にわたり露出することは不要であり、それにより、被検体のX線線量を更に減少させ、関心対象のCT画像の画像化時間を短縮することができる。
本発明による例示的な実施形態では、瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査とエンハンスト走査とを組み合わせて被検体の冠動脈のスクリーニングに適用することによって、より明瞭な冠動脈画像を、冠動脈の狭窄および/または石灰化を診断する目的のために、低いX線線量で迅速に得ることが可能である。
本発明による例示的な実施形態では、スカウトシャトル走査が、被検体に造影剤が注入された後で、対象領域のエンハンスメントを追跡するために用いられることにより、低線量における正確なモニタリングが保証される。本発明によるマルチモードスカウトエンハンスト走査に基づくCT画像化技術は、エンハンスメントを必要とする任意のスカウト走査に適用が可能である。
以上では本発明について特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明がこれらの特定の実施形態に限定されないことを理解すべきである。当業者であれば、様々な修正、置き換え、変更などを本発明に対して行いうることを理解するであろう。例えば、上述した実施形態において、1つのステップもしくはコンポーネントを複数のステップもしくはコンポーネントに分解することができ、または、逆に、上述した実施形態における複数のステップもしくはコンポーネントを1つのステップもしくはコンポーネントとして実現することが可能である。これらの変更はすべて、本発明の精神から逸脱しない限り、保護範囲に含まれるべきである。更に、本明細書および特許請求の範囲において用いられている用語は、限定を目的とせず、説明のためのものである。また、実際の必要性に応じて、ある特定の実施形態に記載されている特徴の全部または一部を、別の実施形態に組み入れることが可能である。
100 放射線CTシステム
102 X線管
104 コリメータ
106 X線
108 開口部
110 ガントリ
112 X線検出器
114 被検体
116 走査テーブル
118 被検体の縦軸
120 コリメータコントローラ
122 X線コントローラ
124 データ取得システム
126 回転コントローラ
128 回転部
130 操作コンソール
132 表示装置
134 入力装置
136 中央処理装置
138 データ取得バッファ
140 制御インターフェース
142 記憶装置

Claims (33)

  1. 放射線CT画像化システムであって、
    開口部を有するガントリと、
    被検体を支持する走査テーブルと、
    前記ガントリ上であって前記被検体の一方の側に配置されており、前記被検体に光線を放射する放射線源と、
    前記ガントリ上であって前記被検体の反対側に配置されており、前記被検体を透過する放射線を検出する放射線検出器と、
    前記放射線源の放射線を制御する放射線コントローラと、
    前記ガントリ上に配置され前記放射線検出器に結合されており、前記被検体の対象領域に関する投影データを、前記放射線検出器によって検出された光線から収集するデータ取得システムと、
    前記ガントリ、前記走査テーブル、前記放射線コントローラおよび前記データ取得システムの内の1つまたは複数の動作を制御する操作コンソールと、を備えており、
    前記操作コンソールは、前記放射線CT画像化システムに、高電圧と低電圧との間での瞬時スイッチングにより前記被検体の前記対象領域上において瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査を実行させ、前記収集されたデュアルエネルギ投影データから所定のスクリーニング目的に対応する物質分解画像と単一エネルギ画像とを再構成させるように構成されている放射線CT画像化システム。
  2. 前記光線がX線である、請求項1記載の放射線CT画像化システム。
  3. 前記高電圧と前記低電圧とが80kVpと140kVpとの間の範囲にある、請求項1記載の放射線CT画像化システム。
  4. 前記高電圧が140kVpであり前記低電圧が80kVpである、請求項3記載の放射線CT画像化システム。
  5. 前記高電圧が120kVpであり前記低電圧が100kVpである、請求項3記載の放射線CT画像化システム。
  6. 前記再構成された単一エネルギ画像に対応する単一エネルギ値が40keVと140keVとの間の範囲にある、請求項1記載の放射線CT画像化システム。
  7. 前記高電圧と前記低電圧とが500Hz以上の周波数で切り替わる、請求項1記載の放射線CT画像化システム。
  8. 前記高電圧と前記低電圧とが825Hzの周波数で切り替わる、請求項7記載の放射線CT画像化システム。
  9. 前記操作コンソールが、更に、前記放射線CT画像化システムに、前記瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査を実行する前に、前記被検体上で通常のスカウト走査を実行させて前記被検体の前記対象領域を位置決めするように構成されている、請求項1記載の放射線CT画像化システム。
  10. 前記所定のスクリーニング目的が冠動脈狭窄および/または冠動脈石灰化である、請求項9記載の放射線CT画像化システム。
  11. 前記操作コンソールが、更に、前記放射線CT画像化システムに、前記被検体に造影剤を注入した後で、前記被検体上の選択された走査範囲でスカウトシャトル走査を実行させて前記対象領域のエンハンスト時間を予測するように構成されている、請求項10記載の放射線CT画像化システム。
  12. 前記操作コンソールが、更に、前記放射線CT画像化システムに、前記被検体に造影剤を注入した後で、前記被検体上の選択された走査範囲でアキシアルまたはヘリカルシャトル走査を実行させて前記対象領域のエンハンスト時間を予測するように構成されている、請求項10記載の放射線CT画像化システム。
  13. 前記対象領域の前記予測されたエンハンスト時間に基づき、前記被検体の前記対象領域上で前記放射線CT画像化システムによって実行される前記瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト走査がトリガされる、請求項11または12記載の放射線CT画像化システム。
  14. 前記冠動脈狭窄と前記冠動脈石灰化に対応する物質がヨウ素とHAPである、請求項10記載の放射線CT画像化システム。
  15. 前記操作コンソールが、更に、前記所定のスクリーニング目的とは異なるスクリーニング目的に基づいて、1つまたは複数の対応する物質画像と単一エネルギ画像とを、前記収集されたデュアルエネルギ投影データから事後的に再構成するように構成されている、請求項1記載の放射線CT画像化システム。
  16. マルチモードスカウト走査に基づくCT画像化方法であって、
    高電圧と低電圧との間の瞬時スイッチングにより被検体の対象領域上で瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト放射線走査を実行し、前記対象領域のデュアルエネルギ投影データを収集するステップと、
    前記収集されたデュアルエネルギ投影データに基づいて、物質分解画像と単一エネルギ画像とを再構成するステップと、
    を含む方法。
  17. 前記放射線走査がX線を用いる、請求項16記載の方法。
  18. 前記高電圧と前記低電圧とが80kVpと140kVpとの間の範囲にある、請求項16記載の方法。
  19. 前記高電圧が140kVpであり前記低電圧が80kVpである、請求項16記載の方法。
  20. 前記高電圧が120kVpであり前記低電圧が100kVpである、請求項16記載の方法。
  21. 前記再構成された単一エネルギ画像に対応する単一エネルギ値が40keVと140keVとの間の範囲にある、請求項16記載の方法。
  22. 前記高電圧と前記低電圧とが500Hz以上の周波数で切り替わる、請求項16記載の方法。
  23. 前記高電圧と前記低電圧とが825Hzの周波数で切り替わる、請求項16記載の方法。
  24. 前記瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト放射線走査を実行する前に、前記被検体の前記対象領域に基づき前記マルチモードスカウト走査のためのスクリーニングプロトコルを選択するステップと、
    前記被検体上で通常のスカウト走査を実行して、前記対象領域を位置決めするステップと、
    を更に含む、請求項16記載の方法。
  25. 前記対象領域の位置決めの後で、前記被検体に造影剤を注入するステップと、
    前記対象領域のエンハンスト時間を予測するステップと、
    を更に含む、請求項24記載の方法。
  26. 前記対象領域の前記エンハンスト時間は、選択された走査範囲において前記対象領域上でスカウトシャトル走査を実行することによって予測される、請求項25記載の方法。
  27. 前記対象領域の前記エンハンスト時間は、選択された走査範囲において前記対象領域上でアキシアルまたはヘリカルシャトル走査を実行することによって予測される、請求項25記載の方法。
  28. 前記対象領域の前記エンハンスト時間は、前記被検体の医学情報に基づく予測モデルをユーザごとに用いることによって予測される、請求項25記載の方法。
  29. 前記対象領域の前記予測されたエンハンスト時間に基づいて、前記瞬時スイッチングデュアルエネルギスカウト放射線走査がトリガされる、請求項26乃至28のいずれか1項記載の方法。
  30. 前記再構成された物質分解画像と単一エネルギ画像とは所定のスクリーニング目的に対応する、請求項16記載の方法。
  31. 前記所定のスクリーニング目的が冠動脈狭窄および/または冠動脈石灰化である、請求項30記載の方法。
  32. 前記冠動脈狭窄と前記冠動脈石灰化に対応する物質がヨウ素とHAPである、請求項31記載の方法。
  33. 前記所定のスクリーニング目的とは異なるスクリーニング目的に基づいて、1つまたは複数の対応する物質画像と単一エネルギ画像とを、前記収集されたデュアルエネルギ投影データから事後的に再構成するステップを更に含む、請求項30記載の方法。
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