JP2014114773A - 可変圧縮比機構を備える内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリンダブロックとクランクケースとの間に作用軸を配置し、アクチュエータにより作用軸を回動させることによって、シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関であって、アクチュエータと作用軸との間には逆入力遮断クラッチが配置され、アクチュエータを大型化することなく機械圧縮比を低下させる際に逆入力遮断クラッチのコロを外すためのトルクを発生可能とする。
【解決手段】新たな目標機械圧縮比Etに基づき機械圧縮比を低下させるときには(ステップ101)、機械圧縮比を目標機械圧縮比より所定値だけ小さくして(ステップ105)から目標機械圧縮比に戻す(ステップ107)。
【選択図】図12
【解決手段】新たな目標機械圧縮比Etに基づき機械圧縮比を低下させるときには(ステップ101)、機械圧縮比を目標機械圧縮比より所定値だけ小さくして(ステップ105)から目標機械圧縮比に戻す(ステップ107)。
【選択図】図12
Description
本発明は、可変圧縮比機構を備える内燃機関に関する。
シリンダブロックを気筒軸線に沿わせてクランクケースに対して相対移動させることにより機械圧縮比を可変とする可変圧縮比機構を備える内燃機関が公知である。このような可変圧縮比機構は、例えば、シリンダブロックとクランクケースとの間に偏心軸等の作用軸を配置し、アクチュエータにより作用軸を回動させることによって、シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させるものである(特許文献1参照)。
ところで、気筒内の爆発力は、比較的大きく、シリンダブロックをクランクケースから遠ざけるように作用し、何もしなければ、作用軸を機械圧縮比低下方向へ回動させてしまう。
このような作用軸の回動を抑制するために、気筒内の爆発力がシリンダブロックをクランクケースから遠ざけるように作用すると、作用軸の回動をロックする逆入力遮断クラッチをアクチュエータと作用軸との間に配置することが考えられる。
このような逆入力遮断クラッチは、外輪とアクチュエータ側の入力軸と作用軸側の出力軸とを有し、出力軸側から機械圧縮比低下方向のトルクが発生すると、コロが出力軸と外輪との間に嵌り込んで出力軸を固定する。このような出力軸の固定状態(逆入力遮断状態)において、入力軸側から出力軸へ機械圧縮比増加方向のトルクが作用すると、出力軸はコロから容易に離間し、入力軸により出力軸を機械圧縮比増加方向へ回動させることができる。
しかしながら、出力軸の固定状態において、入力軸側から出力軸へ機械圧縮比低下方向のトルクが作用する場合には、入力軸と共に回動する保持器により出力軸と外輪との間に嵌り込んでいるコロを出力軸の回動方向に押圧して外さないと、入力軸により出力軸を機械圧縮比低下方向へ回動させることができない。
こうして、可変圧縮比機構に逆入力遮断クラッチが設けられている場合において、機械圧縮比を低下させる際には、逆入力遮断クラッチのコロを外すのに比較的大きなトルクが必要となり、そのためにアクチュエータを大型化すると、可変圧縮比機構の車両搭載性が悪化する。
従って、本発明の目的は、シリンダブロックとクランクケースとの間に作用軸を配置し、アクチュエータにより作用軸を回動させることによって、シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関であって、アクチュエータと作用軸との間には逆入力遮断クラッチが配置され、逆入力遮断クラッチは、外輪とアクチュエータ側の入力軸と作用軸側の出力軸とを有し、出力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクは、コロが外輪と出力軸との間に嵌り込んで出力軸を固定して遮断され、入力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクは、入力軸と共に回動する保持器が出力軸と外輪との間に嵌り込んでいるコロを出力軸の回動方向に押圧して外した後に出力軸を回動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関において、アクチュエータを大型化することなく機械圧縮比を低下させる際に逆入力遮断クラッチのコロを外すためのトルクを発生可能とすることである。
本発明による請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関は、シリンダブロックとクランクケースとの間に作用軸を配置し、アクチュエータにより作用軸を回動させることによって、上記シリンダブロックを上記クランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関であって、上記アクチュエータと上記作用軸との間には逆入力遮断クラッチが配置され、上記逆入力遮断クラッチは、外輪とアクチュエータ側の入力軸と作用軸側の出力軸とを有し、上記出力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクは、コロが上記外輪と上記出力軸との間に嵌り込んで上記出力軸を固定して遮断され、上記入力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクは、上記入力軸と共に回動する保持器が上記出力軸と上記外輪との間に嵌り込んでいる上記コロを上記出力軸の回動方向に押圧して外した後に上記出力軸を回動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関において、新たな目標機械圧縮比に基づき機械圧縮比を低下させるときには、機械圧縮比を上記目標機械圧縮比より所定値だけ小さくしてから上記目標機械圧縮比に戻すように制御することを特徴する。
本発明による請求項2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関は、請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関において、上記所定値は上記目標機械圧縮比が高いほど小さくすることを特徴とする。
本発明による請求項3に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関は、請求項1又は2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関において、上記目標機械圧縮比が設定機械圧縮比より高いときには、機械圧縮比を上記目標機械圧縮比より小さくせずに上記目標機械圧縮比に制御することを特徴とする。
本発明による請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関によれば、新たな目標機械圧縮比に基づき機械圧縮比を低下させるときには、機械圧縮比を目標機械圧縮比より所定値だけ小さくしてから目標機械圧縮比に戻すように制御するようになっている。こうして、機械圧縮比を目標機械圧縮に制御したときにおいて、入力軸と共に回動する保持器は、目標機械圧縮比より所定値だけ小さくされた機械圧縮比を目標機械圧縮比に戻す際に、確実にコロから離間させられる。それにより、次回において、出力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクを遮断した後に、新たな目標機械圧縮比に基づき機械圧縮比を低下させる際には、コロから離間する保持器をコロに衝突させることができ、このときの衝撃力によって、アクチュエータによりそれほど大きなトルクを発生させなくても逆入力遮断クラッチのコロを確実に外すことができ、可変圧縮比機構の車両搭載性を悪化させるアクチュエータの大型化は必要ない。
上記の所定値を大きくするほど、保持器をコロから長く離間させることができ、逆入力遮断クラッチのコロを外す際に、保持器とコロとの衝突時の衝撃力が大きくなってアクチュエータの必要発生トルクを小さくすることができる。しかしながら、目標機械圧縮比が高いほど、実際の機械圧縮比を目標機械圧縮比から小さくする際の燃焼悪化が顕著となるために、本発明による請求項2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関では、請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関において、所定値は目標機械圧縮比が高いほど小さくされ、燃焼悪化を抑制している。
機械圧縮比が設定機械圧縮比より高いときには、機関負荷がそれほど高くなく、燃焼圧が低くなるために、出力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクも小さくなり、コロは緩くしか外輪と出力軸との間に嵌り込まない。それにより、このときには、次回において、アクチュエータによりそれほど大きなトルクを発生させなくても逆入力遮断クラッチのコロを確実に外すことができるために、保持器をコロから離間させなくても良い。こうして、本発明による請求項3に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関では、請求項1又は2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関において、目標機械圧縮比が設定機械圧縮比より高いときには、機械圧縮比を目標機械圧縮比より小さくせずに目標機械圧縮比に制御するようにしている。それにより、このときには、実際の機械圧縮比を目標機械圧縮比から小さくする際の燃焼悪化は発生しない。
図1は本発明による可変圧縮比機構を備える内燃機関の側面断面図を示す。図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火栓、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11には夫々対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒装置20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。
一方、図1に示される実施例ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、更に実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示される実施例ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
図1に示されるようにクランクケース1とシリンダブロック2にはクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置関係を検出するための相対位置センサ22が取付けられており、この相対位置センサ22からはクランクケース1とシリンダブロック2との間隔の変化を示す出力信号が出力される。また、可変バルブタイミング機構Bには吸気弁7の閉弁時期を示す出力信号を発生するバルブタイミングセンサ23が取付けられており、スロットル弁駆動用のアクチュエータ16にはスロットル弁開度を示す出力信号を発生するスロットル開度センサ24が取付けられている。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。吸入空気量検出器18、空燃比センサ21、相対位置センサ22、バルブタイミングセンサ23、及び、スロットル開度センサ24の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火栓6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50、すなわち、シリンダブロック側サポートが形成されており、各突出部50内には夫々断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔てて夫々対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52、すなわち、クランクケース側サポートが形成されており、これらの各突出部52内にも夫々断面円形のカム挿入孔53が形成されている。
図2に示されるように一対のカムシャフト54,55が設けられており、各カムシャフト54,55上には一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される同心部分58が位置している。各同心部分58は各カムシャフト54,55の回転軸線と共軸をなす。一方、各同心部分58の両側には図3に示すように各カムシャフト54,55の回転軸線に対して偏心配置された偏心部57が位置しており、この偏心部57上に別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。すなわち、偏心部57は円形カム56に形成された偏心孔に嵌合し、円形カム56は偏心孔を中心として偏心部57回りに回動するようになっている。図2に示されるようにこれら円形カム56は各同心部分58の両側に配置されており、これら円形カム56は対応する各カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。また、図2に示されるようにカムシャフト55にはカムシャフト55の回転角度を表す出力信号を発生するカム回転角度センサ25が取付けられている。
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54,55の同心部分58を図3(A)において矢印で示される如く互いに反対方向に回転させると偏心部57が互いに離れる方向に移動するために円形カム56がカム挿入孔51内において同心部分58とは反対方向に回転し、図3(B)に示されるように偏心部57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更に同心部分58を矢印で示される方向に回転させると図3(C)に示されるように偏心部57は最も低い位置となる。
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)には夫々の状態における同心部分58の中心aと偏心部57の中心bと円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。
図3(A)から図3(C)とを比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は同心部分58の中心aと円形カム56の中心cとの距離によって定まり、同心部分58の中心aと円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。即ち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置を変化させていることになる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、従って各カムシャフト54,55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
図2に示されるように各カムシャフト54,55を夫々反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸には夫々螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61,62が取付けられており、これらウォーム61,62と噛合するウォームホイール63,64が夫々各カムシャフト54,55の端部に固定されている。この実施例では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。駆動モータ59とウォーム62との間には、逆入力遮断クラッチ90が配置されている。
このように、本実施例の可変圧縮比機構Aは、アクチュエータとしての駆動モータ59が作用軸としてシリンダブロック2とクランクケース1との間に配置されたカムシャフト54,55を回動させることにより、シリンダブロック2をクランクケース1に対して相対移動させる。駆動モータ59は、アクチュエータ側ギヤとして回転軸に取付けられた一対のウォーム61,62により作用軸側ギヤとして各カムシャフト54,55の端部に固定されたウォームホイール63,64を回動させる。逆入力遮断クラッチ90は、駆動モータ59の回転軸において一対のウォーム61,62よりアクチュエータ側に位置しており、駆動モータ59と一対のカムシャフト54,55との間に配置されている。
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70の端部に取付けられた可変バルブタイミング機構Bを示している。図4を参照すると、この可変バルブタイミング機構Bは機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、吸気弁駆動用カムシャフト70と一緒に回転しかつ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数個の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側には夫々進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
各油圧室76,77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁78によって行われる。この作動油供給制御弁78は各油圧室76,77に夫々連結された油圧ポート79,80と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の供給ポート82と、一対のドレインポート83,84と、各ポート79,80,82,83,84間の連通遮断制御を行うスプール弁85とを具備している。
吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁85が右方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート79を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート84から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印方向に相対回転せしめられる。
これに対し、吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁85が左方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート80を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印と反対方向に相対回転せしめられる。
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁85が図4に示される中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。従って可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角させることができ、遅角させることができることになる。
図5において実線は可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も進角されているときを示しており、破線は吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も遅角されているときを示している。従って吸気弁7の開弁期間は図5において実線で示す範囲と破線で示す範囲との間で任意に設定することができ、従って吸気弁7の閉弁時期も図5において矢印Cで示す範囲内の任意のクランク角に設定することができる。
図1および図4に示される可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、例えば吸気弁の開弁時期を一定に維持したまま吸気弁の閉弁時期のみを変えることのできる可変バルブタイミング機構等、種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A),(B),(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A),(B),(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示される例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。即ち、図6(B)に示されるように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁が閉弁したときから実際の圧縮作用が開始される。従って実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示される例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示される例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
次に図7および図8を参照しつつ本発明において用いられている超膨張比サイクルについて説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ吸気下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A),(B),(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。即ち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、即ち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が大きくなるほど、即ち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。従って通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
一方、このような状況下で機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分しつつ理論熱効率を高めることが検討され、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことが見い出されたのである。即ち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギーが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
これに対し、膨張比を大きくすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。従って膨張比は大きくすれば大きくするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線ε=10は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比εを低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、従って実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大巾に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示される通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示される場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。これが超高膨張比サイクルと称される所以である。
一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、従って機関運転時における熱効率を向上させるためには、即ち燃費を向上させるには機関負荷が低いときの熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示される超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、従ってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。従って本発明では機関負荷が比較的低いときには図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。
次に図9を参照しつつ運転制御全般について概略的に説明する。図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒装置20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC,COおよびNOXを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ21の出力信号に基づいて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示される通常のサイクルが実行される。従って図9に示されるようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は図5において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
一方、図9において実線で示されるように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、従って機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態に保持されており、従って燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。即ち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。従ってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき図9に示される例では燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる限界機械圧縮比(上限機械圧縮比)に達する。機械圧縮比が限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が限界機械圧縮比に保持される。従って低負荷側の機関中負荷運転時および機関低負荷運転時には即ち、機関低負荷運転側では機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
一方、図9に示される実施例では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図9に示される実施例ではこのとき、即ち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。従って、図9において実線で示される場合と破線で示される場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施例では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L1まで吸気下死点BDCから離れる方向に移動せしめられることになる。このように吸入空気量は吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させても制御することができるし、破線に示すように変化させても制御することができる。
前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが図7からわかるように実用上使用可能な下限実圧縮比ε=5に対しても20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。従って本実施例では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
ところで、気筒内の爆発力は、比較的大きく、シリンダブロック2をクランクケース1から遠ざけるように作用し、何もしなければ、駆動モータ59の回転軸と共にカムシャフト54,55を機械圧縮比の低下方向へ回動させてしまう。
駆動モータ59の回転軸に配置された逆入力遮断クラッチ90は、このようなカムシャフト54,55の回動を抑制するために設けられている。図10及び11に示すように、逆入力遮断クラッチ90は、不動の外輪91と、駆動モータ59側の入力軸と、カムシャフト54,55側の出力軸92とを有している。93は入力軸と共に回動する保持器であり、94は入力軸における出力軸92との係合部を示している。
図10(A)は逆入力遮断クラッチ90の出力軸92を固定する逆入力遮断状態を示している。このような逆入力遮断状態においては、各気筒の爆発においてカムシャフト54,55側から出力軸92へ点線矢印で示す機械圧縮比低下方向のトルクが作用しても、コロ95が出力軸92の当接部92aと不動の外輪91との間に嵌り込んでおり、出力軸92が機械圧縮比低下方向へ回動することは防止される。
しかしながら、図10(B)に示すように、逆入力遮断状態において、駆動モータ59側から入力軸へ実線矢印で示す機械圧縮比増加方向のトルクが作用すると、入力軸の係合部94は出力軸92と係合する。次いで、図10(C)に示すように、出力軸92はコロ95から容易に離間し、入力軸の係合部94を介して出力軸92は実線矢印で示す機械圧縮比増加方向へ回動することができる。出力軸92がコロ95から離間すると、コロ95はバネ96によって実線矢印方向へ戻される。
機械圧縮比の目標機械圧縮比への増加が完了して駆動モータ59が停止した際には、コロ95、入力軸の係合部94及び出力軸92は、図10(C)に示す位置関係となっている。図10(C)に示す各部材の位置関係において、各気筒の爆発によりカムシャフト54,55側から出力軸92へ点線矢印で示す機械圧縮比低下方向のトルクが作用すると、出力軸92は僅かに機械圧縮比低下方向へ回動し、それにより、図10(A)に示す逆入力遮断状態となり、コロ95が出力軸92の当接部92aと不動の外輪91との間に嵌り込んで出力軸92の機械圧縮比低下方向への回動を防止する。
図11(A)も図10(A)と同じ逆入力遮断状態を示しており、カムシャフト54,55側からのトルクによって出力軸92が点線矢印で示す機械圧縮比低下方向へ回動することは防止される。図11(B)に示すように、逆入力遮断状態において、駆動モータ59側から入力軸へ実線矢印で示す機械圧縮比低下方向のトルクが作用すると、入力軸の係合部94は出力軸92と係合すると共に入力軸と共に回動する保持器93がコロ95に当接する。
次いで、入力軸のトルクを使用して保持器93がコロ95を機械圧縮比低下方向へ押圧して、出力軸92と外輪91との間に嵌り込んでいるコロを出力軸92の回動方向に外す。それにより、図11(C)に示すように、入力軸の係合部94を介して出力軸92は機械圧縮比低下方向へ回動することが可能となる。
機械圧縮比の目標機械圧縮比への低下が完了して駆動モータ59が停止した際には、コロ95、入力軸の係合部94及び出力軸92は、図11(C)に示す位置関係となっている。図11(C)に示す各部材の位置関係において、各気筒の爆発によりカムシャフト54,55側から出力軸92へ点線矢印で示す機械圧縮比低下方向のトルクが作用すると、出力軸92は僅かに機械圧縮比低下方向へ回動し、それにより、図11(A)に示す逆入力遮断状態となり、コロ95が出力軸92の当接部92aと不動の外輪91との間に嵌り込んで出力軸92の機械圧縮比低下方向への回動を防止する。
このように、可変圧縮比機構Aに逆入力遮断クラッチ90が設けられている場合において、機械圧縮比を増加させるときには、それほど大きなトルクは必要ないが、機械圧縮比を低下させるときには、何もしなければ、保持器93により出力軸92と外輪91との間に嵌り込んでいるコロ95を外すのに比較的大きなトルクが必要となるために、駆動モータ59を大型化しなければならず、可変圧縮比機構Aの車両搭載性が悪化してしまう。
図12は、本発明による可変圧縮比機構の駆動モータ59の制御を示すフローチャートであり、電子制御ユニット30により実施される。先ず、ステップ101において、機関運転状態(又は機関負荷)の変化等によって新たな目標機械圧縮比Etが設定されたか否かが判断される。この判断が否定されるときには、機械圧縮比を変更する必要はなく、そのまま終了する。
一方、ステップ101の判断が肯定されるときには、新たに設定された目標機械圧縮比Etが相対位置センサ22により検出される現在の機械圧縮比Eより小さいか否かが判断される。この判断が否定されるときには、機械圧縮比を増加させることとなり、このときには、それほど大きなトルクは必要なく、ステップ107において、アクチュエータ(駆動モータ59)を新たな目標機械圧縮比Etを実現するために機械圧縮比増加側へ作動する。
次いで、ステップ108において、相対位置センサ22により検出される現在の機械圧縮比Eがステップ101において設定された新たな目標機械圧縮比Etに一致したか否かが判断され、この判断が肯定されるまでステップ107においてアクチュエータを作動し続ける。ステップ108の判断が肯定されれば、ステップ109においてアクチュエータを停止して、本フローチャートを終了する。
一方、ステップ102の判断が肯定されるときは、機械圧縮比を低下させることとなり、このときには、ステップ103において、目標機械圧縮比Etが設定機械圧縮比Esより高いか否かが判断される。前述したように、本実施例では、機関負荷L1以上において、機関負荷が高いほど目標機械圧縮比は低くされるために、目標機械圧縮比Etが設定機械圧縮比Esより高いときには、機関負荷はそれほど高くなく、燃焼圧が低くなるために、出力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクも小さくなり、逆入力遮断状態において、コロ95は緩くしか外輪91と出力軸92との間に嵌り込まない。それにより、このときには、次回の機械圧縮比の低下に際して、アクチュエータによりそれほど大きなトルクを発生させなくても逆入力遮断クラッチ90のコロ95を確実に外すことができる。
それにより、ステップ107において、アクチュエータ(駆動モータ59)を新たな目標機械圧縮比Etを実現するために機械圧縮比低下側へ作動する。次いで、ステップ108において、相対位置センサ22により検出される現在の機械圧縮比Eがステップ101において設定された新たな目標機械圧縮比Etに一致したか否かが判断され、この判断が肯定されるまでステップ107においてアクチュエータを作動し続ける。ステップ108の判断が肯定されれば、ステップ109においてアクチュエータを停止して、本フローチャートを終了する。
しかしながら、ステップ103の判断が否定されるときには、燃焼圧が高く、逆入力遮断状態において、コロ95はしっかりと外輪91と出力軸92との間に嵌り込む。それにより、このときには、次回の機械圧縮比の低下に際して、単にアクチュエータを作用させるだけでは、逆入力遮断クラッチ90のコロ95を外すことができないことがある。
本フローチャートでは、ステップ103の判断が否定されるときには、ステップ104において、ステップ101で設定された目標機械圧縮比Etを所定値ΔEだけ小さくする仮の目標機械圧縮比Et1を設定する。次いで、ステップ105において、アクチュエータ(駆動モータ59)を仮の目標機械圧縮比Et1を実現するために機械圧縮比低下側へ作動する。次いで、ステップ106において、相対位置センサ22により検出される現在の機械圧縮比Eがステップ104において設定された仮の目標機械圧縮比Et1に一致したか否かが判断され、この判断が肯定されるまでステップ105においてアクチュエータを作動し続ける。
ステップ106の判断が肯定されれば、次いで、ステップ107において、アクチュエータ(駆動モータ59)をステップ101において設定された新たな目標機械圧縮比Etを実現するために機械圧縮比増加側へ作動する。次いで、ステップ108において、相対位置センサ22により検出される現在の機械圧縮比Eがステップ101において設定された目標機械圧縮比Etに一致したか否かが判断され、この判断が肯定されるまでステップ107においてアクチュエータを作動し続ける。ステップ108の判断が肯定されれば、ステップ109においてアクチュエータを停止して、本フローチャートを終了する。
このように、本フローチャートによれば、目標機械圧縮比Etが設定機械圧縮比Esより高いときに、目標機械圧縮比Etに基づき機械圧縮比Eを低下させる場合には、機械圧縮比Eを目標機械圧縮比Etより所定値ΔEだけ小さくした仮の目標機械圧縮比Et1まで低下させてから目標機械圧縮比Etに戻すように制御するようになっている。こうして、機械圧縮比Eを目標機械圧縮Etに制御したときにおいて、図11(C)に一点鎖線で示すように、入力軸と共に回動する保持器93’を、機械圧縮比Eを目標機械圧縮比Etより所定値ΔEだけ小さくしてから目標機械圧縮比Etに戻す際に、確実にコロ95から離間させることができる。
すなわち、図11(C)に実線で示す保持器93の位置から出力軸92が僅かに回動して逆入力遮断状態となる場合に比較して、図11(C)に一点鎖線で示す保持器93’の位置から出力軸92が僅かに回動して逆入力遮断状態となるときには、保持器93’をコロ95から確実に離間させることができる。
こうして、逆入力遮断状態において、保持器93’とコロ95とが確実に離間していれば、次回において新たな目標機械圧縮比Etに基づき機械圧縮比Eを低下させる際に、コロ95から離間する保持器93’をコロ95に衝突させることができ、この衝突時の衝撃力によって、アクチュエータによりそれほど大きなトルクを発生させなくても逆入力遮断クラッチのコロ95を確実に外すことができる。それにより、可変圧縮比機構の車両搭載性を悪化させるアクチュエータの大型化は必要ない。
仮の目標機械圧縮比Et1を算出するための所定値ΔEは、予め定められた値であり、例えば一定値とすることができる。一方で、所定値ΔEを大きくするほど、保持器93をコロ95から長く離間させることができ、逆入力遮断クラッチのコロを外す際に、保持器93とコロ95との衝突時の衝撃力が大きくなってアクチュエータの必要発生トルクを小さくすることができる。しかしながら、目標機械圧縮比Etが高いほど、実際の機械圧縮比Eを所定値ΔEだけ小さくする際の燃焼悪化が顕著となるために、所定値ΔEは目標機械圧縮比Etが高いほど小さくするように設定して、燃焼悪化を抑制することが好ましい。すなわち、所定値ΔEは、目標機械圧縮比に応じて変化する変動値にすることもできる。
本発明を限定するものではないが、前述のフローチャートにおいて、目標機械圧縮比Etが設定機械圧縮比Esより高いときには、機械圧縮比を目標機械圧縮比より小さくせずに目標機械圧縮比に制御するようにしている。それにより、このときには、実際の機械圧縮比Eを目標機械圧縮比Etから小さくする際の燃焼悪化を発生させないようにすることができる。
また、目標機械圧縮比Etが設定機械圧縮比Esより高いときに、機械圧縮比を目標機械圧縮比より小さくせずに目標機械圧縮比に制御するようにしたが、もちろん、目標機械圧縮比Etを設定するための機関負荷が設定負荷以上のときに、機械圧縮比を目標機械圧縮比より小さくせずに目標機械圧縮比に制御するようにしても良い。
1 クランクケース
2 シリンダブロック
54,55 カムシャフト
59 駆動モータ
90 逆入力遮断クラッチ
A 可変圧縮比機構
2 シリンダブロック
54,55 カムシャフト
59 駆動モータ
90 逆入力遮断クラッチ
A 可変圧縮比機構
Claims (3)
- シリンダブロックとクランクケースとの間に作用軸を配置し、アクチュエータにより作用軸を回動させることによって、前記シリンダブロックを前記クランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関であって、前記アクチュエータと前記作用軸との間には逆入力遮断クラッチが配置され、前記逆入力遮断クラッチは、外輪とアクチュエータ側の入力軸と作用軸側の出力軸とを有し、前記出力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクは、コロが前記外輪と前記出力軸との間に嵌り込んで前記出力軸を固定して遮断され、前記入力軸からの機械圧縮比低下方向のトルクは、前記入力軸と共に回動する保持器が前記出力軸と前記外輪との間に嵌り込んでいる前記コロを前記出力軸の回動方向に押圧して外した後に前記出力軸を回動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関において、新たな目標機械圧縮比に基づき機械圧縮比を低下させるときには、機械圧縮比を前記目標機械圧縮比より所定値だけ小さくしてから前記目標機械圧縮比に戻すように制御することを特徴する可変圧縮比機構を備える内燃機関。
- 前記所定値は前記目標機械圧縮比が高いほど小さくすることを特徴とする請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関。
- 機械圧縮比を低下させるときの機関負荷が設定負荷以下であるときには、機械圧縮比を前記目標機械圧縮比より小さくせずに前記目標機械圧縮比に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関。
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JP2012270457A JP2014114773A (ja) | 2012-12-11 | 2012-12-11 | 可変圧縮比機構を備える内燃機関 |
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JP2017020449A (ja) * | 2015-07-14 | 2017-01-26 | 日産自動車株式会社 | 内燃機関の制御装置 |
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