JP2014114395A - 温度感応性材料及びその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、生理学的条件下で、低温域では不溶で高温域では溶解するといった高温溶解型の温度感応性(以下、「感温性」とも称する)を有する高分子化合物またはその塩、及びその用途に関する。
従来より、水溶液中における低温溶解型(下限臨界共溶温度型:LCST型)の温度感応性高分子化合物に関する研究は数多くあり、その相転移メカニズムの解明から、相転移温度制御のための分子設計方法も明らかになっている。例えば、ポリN−イソプロピルアクリルアミド等の低温溶解型高分子化合物は、細胞分離(非特許文献1)やドラッグデリバリーシステム(非特許文献2)また細胞シート工学の基盤材料となり、再生医療に新風を起こす起爆剤となっている。
一方、水溶液中または生理学的条件下で高温溶解型(上限臨界共溶温度型:UCST型)の温度感応性高分子化合物の開発は、工学分野において大きなインパクトを与える基盤的材料となるにも関わらず、これらに関する研究は極めて少ない。これは、水系でUCST挙動を示す高分子化合物の例が数例しかなく(非特許文献3〜5参照)、さらにこれらの多くは、生理的条件、つまり生理的なpH、塩濃度および温度の条件下において温度感応特性(感温性)を発現することができないことによる。
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上記のことから、生理学的条件で応答する高温溶解型高分子化合物の構築が不可欠となっている。そこで本発明は、生理学的条件で応答し、生体機能性を有する高温溶解型の新規な温度感応性高分子化合物を提供することを目的とする。とくに、本件発明者である丸山及び嶋田は、既に上記目的に適う温度感応性高分子化合物を開発しているが(特許文献2参照)、本発明は、かかる温度感応性高分子化合物とは構造を異にする新規化合物を提供することを目的とする。さらに本発明は、当該新規温度感応性高分子化合物の用途を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねていたところ、下記一般式(I):
〔式(I)中、R1はメチル基または水素原子であり、mは10以上の整数、pは1〜6の整数を意味する。〕
で示される、アミノアルキルアクリレート基及び/またはアミノアルキルメタクリレート基(以下、これを総称して「アミノアルキル(メタ)アクリレート基」ともいう)が重合してなる高分子化合物(以下、これを「ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート」ともいう。)またはその塩において、当該アミノアルキル(メタ)アクリレート基の全てまたは少なくとも3割が、下記一般式(II);
で示される、アミノアルキルアクリレート基及び/またはアミノアルキルメタクリレート基(以下、これを総称して「アミノアルキル(メタ)アクリレート基」ともいう)が重合してなる高分子化合物(以下、これを「ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート」ともいう。)またはその塩において、当該アミノアルキル(メタ)アクリレート基の全てまたは少なくとも3割が、下記一般式(II);
〔式(II)中、R1はメチル基または水素原子であり、pは1〜6の整数を意味する。〕
で示される、側鎖にカルバモイル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート基で置換されてなる高分子化合物(以下、これを「本発明化合物」または「カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート」とも称する)またはその塩が、生理学的条件、具体的には生理学的なpH及び塩濃度の条件下で、所定温度(相転移温度)以上では溶解(相溶)しているものの、降温操作により当該温度より低くすると不溶化(非相溶)する、高温溶解型(UCST型)の挙動を示すこと、また当該UCST型挙動は可逆的に且つ安定して生じることを見出し、さらに当該相転移温度は、本発明化合物またはその塩の濃度を調整することで適宜制御ができることを見出した。
で示される、側鎖にカルバモイル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート基で置換されてなる高分子化合物(以下、これを「本発明化合物」または「カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート」とも称する)またはその塩が、生理学的条件、具体的には生理学的なpH及び塩濃度の条件下で、所定温度(相転移温度)以上では溶解(相溶)しているものの、降温操作により当該温度より低くすると不溶化(非相溶)する、高温溶解型(UCST型)の挙動を示すこと、また当該UCST型挙動は可逆的に且つ安定して生じることを見出し、さらに当該相転移温度は、本発明化合物またはその塩の濃度を調整することで適宜制御ができることを見出した。
本願発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである。
(1)本発明化合物またはその塩
(1-1)一般式(I):
(1-1)一般式(I):
〔式(I)中、R1はメチル基または水素原子であり、mは10以上の整数、pは1〜6の整数を意味する。〕
で示される、アミノアルキルアクリレート基及び/またはアミノアルキルメタクリレート基(アミノアルキル(メタ)アクリレート基)が重合してなる高分子化合物またはその塩において、当該アミノアルキル(メタ)アクリレート基の全てまたは少なくとも3割が、下記一般式(II);
で示される、アミノアルキルアクリレート基及び/またはアミノアルキルメタクリレート基(アミノアルキル(メタ)アクリレート基)が重合してなる高分子化合物またはその塩において、当該アミノアルキル(メタ)アクリレート基の全てまたは少なくとも3割が、下記一般式(II);
〔式(II)中、R1はメチル基または水素原子であり、pは1〜6の整数を意味する。〕
で示される、側鎖にカルバモイル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート基で置換されてなる高分子化合物(本発明化合物、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩。
で示される、側鎖にカルバモイル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート基で置換されてなる高分子化合物(本発明化合物、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩。
(1-2)一般式(I)で示される化合物が、下記式(III):
〔式(III)中、R1はメチル基または水素原子;R2及びR4は、同一または異なって、一価の有機基であるか、またはR2とR4がお互いに結合して隣接する炭素原子と共に環構造を形成していてもよい;R3は一価の有機基;mは10以上の整数;pは1〜6の整数を意味する。〕
で示される化合物である、(1-1)に記載する高分子化合物またはその塩。
で示される化合物である、(1-1)に記載する高分子化合物またはその塩。
(1-3)上記一般式(III)中、R2及びR4は、それぞれ独立して、炭化水素基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アミド基、アシル基またはアルコキシ基であり、R3は炭化水素基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である、(1-2)に記載する高分子化合物またはその塩。
(1-4)上記一般式(III)中、R2はアルキル基;R4はカルボキシアルキル基;R3は炭化水素基、好ましくはベンジル基である、(1-2)または(1-3)に記載する高分子化合物またはその塩。
(1-5)下記一般式(IV)で示される化合物である、(1-1)または(1-2)に記載する高分子化合物またはその塩:
〔式(IV)中、R1、R2、R3、R4、p及びmは(1-2)に記載の通り。nは、0.3≦n≦1を満たす数を意味する。〕。
(1-6)上記一般式(IV)中、R2及びR4は、それぞれ独立して、炭化水素基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アミド基、アシル基またはアルコキシ基であり、R3は炭化水素基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である、(1-5)に記載する高分子化合物またはその塩。
(1-7)上記一般式(IV)中、R2はアルキル基;R4はカルボキシアルキル基;R3は炭化水素基、好ましくはベンジル基である、(1-5)または(1-6)に記載する高分子化合物またはその塩。
(1-8)下記式(III):
〔式(III)中、R1、R2、R3、R4、p及びmは(1-2)に記載の通り。〕
で示される化合物に、シアン酸塩を反応させることによって製造される、(1-1)乃至(1-7)のいずれかに記載する高分子化合物またはその塩。
で示される化合物に、シアン酸塩を反応させることによって製造される、(1-1)乃至(1-7)のいずれかに記載する高分子化合物またはその塩。
(2)本発明化合物(カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩の製造方法
(2-1)一般式(I):
(2-1)一般式(I):
〔式(I)中、R1、m、及びpは(1-1)に記載の通り。〕
で示されるアミノアルキル(メタ)アクリレート基が重合してなる高分子化合物またはその塩にシアン酸塩を反応させる工程を有する、(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載する本発明化合物(カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩の製造方法。
で示されるアミノアルキル(メタ)アクリレート基が重合してなる高分子化合物またはその塩にシアン酸塩を反応させる工程を有する、(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載する本発明化合物(カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩の製造方法。
(2-2)シアン酸塩を、一般式(I)で示されるアミノアルキル(メタ)アクリレート基が重合してなる高分子化合物またはその塩100モルに対して30〜1000モルの割合で反応させることを特徴とする(2-1)記載の製造方法。
(2-3)シアン酸塩が、シアン酸のアルカリ金属である(2-1)または(2-2)に記載する製造方法。
(3)カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の用途
(3-1)(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有効成分とする、温度感応性組成物/温度感応性材料。
(3-2)(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有効成分とする、温度感応性分離材。
(3-1)(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有効成分とする、温度感応性組成物/温度感応性材料。
(3-2)(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有効成分とする、温度感応性分離材。
(3-3)下記の工程を有する水性2相分配法:
(1)被分離物を含む試料及び(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を、生理的に許容される溶液中に共存させる工程、及び
(2)上記溶液の温度を、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の相転移温度より高い温度から低い温度にすることで、上記溶液を相分離させる工程。
(1)被分離物を含む試料及び(1-1)乃至(1-8)のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を、生理的に許容される溶液中に共存させる工程、及び
(2)上記溶液の温度を、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の相転移温度より高い温度から低い温度にすることで、上記溶液を相分離させる工程。
なお、ここで(2)の工程は、溶液の温度をカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の相転移温度よりも高温から低温にすることにより行ってもよいし、また溶液中のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の濃度を制御することで、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の相転移温度を、溶液の温度よりも低い温度から高い温度にすることにより行ってもよい。
(3-4)さらに下記の(3)の工程、または(3)と(4)の工程を有する、(3-3)に記載する水性2相分配法:
(3)(2)の相分離工程によって相分離された溶液について、被分離物が分配された相を、非分配相から分離し回収する工程、
(4)上記(3)の工程により分離回収した被分離物分配相から、被分離物を回収する工程。
(3)(2)の相分離工程によって相分離された溶液について、被分離物が分配された相を、非分配相から分離し回収する工程、
(4)上記(3)の工程により分離回収した被分離物分配相から、被分離物を回収する工程。
(3-5)被分離物がタンパク質、細胞、アニオン性物質、カチオン性物質、水素結合性物質、及び疎水結合性物質からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つである(4-3)または(3-4)に記載する水性2相分配法。
(4)本発明化合物の製造中間体
(4-1)下記式(III):
(4-1)下記式(III):
〔式(III)中、R1、R2、R3、R4、m、及びpは(1-2)に記載の通り。〕
で示される高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩。
で示される高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩。
(5)製造中間体(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩の製造方法
(5-1)下式(VII):
(5-1)下式(VII):
〔式(VII)中、R1及びpは(1-1)に記載の通り。〕
で示される2−アミノアルキルアクリレート及び/または2−アミノアルキルメタクリレート(以下、「2−アミノアルキル(メタ)アクリレート」と称する。)またはその塩を、連鎖移動剤として4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、及び重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)と、不活化ガスの存在下で、反応する工程を有する、
下記式(III):
で示される2−アミノアルキルアクリレート及び/または2−アミノアルキルメタクリレート(以下、「2−アミノアルキル(メタ)アクリレート」と称する。)またはその塩を、連鎖移動剤として4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、及び重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)と、不活化ガスの存在下で、反応する工程を有する、
下記式(III):
〔式(III)中、R1、R2、R3、R4、m及びpは(1-2)に記載の通り。〕
で示される高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩の製造方法。
(5-2)上記反応を、pH5〜7、温度60〜70℃の条件で行うことを特徴とする、(5-1)記載の製造方法。
で示される高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩の製造方法。
(5-2)上記反応を、pH5〜7、温度60〜70℃の条件で行うことを特徴とする、(5-1)記載の製造方法。
本発明が対象とする高温溶解型感温性を有するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩は、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート基の側鎖であるアミノ基にカルバモイル基が結合していることを特徴とする。かかるカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートは、少なくとも生理的条件で高温溶解型の感温性挙動を示し、特定の温度(相転移温度)よりも高い温度で溶解相を形成し、当該相転移温度よりも低い温度で不溶相を形成する性質を有している。
このため、当該カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩は、その生理的条件下における温度感応性を利用することで、生理的条件下における各種物質の捕捉や分離に、分離材として有効に用いることができる。具体的には、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩は、例えば生化学的または生理学的材料(例えば、細胞やタンパク質等の生理活性物質)の分離、DDS、薬剤放出、酵素の固定化、細胞培養、センシングなどに、有効に用いることができる。特に高温条件で変性したり活性が低下するなど、高温環境が好ましくない物質(例えば、細胞、遺伝子等の核酸、酵素や抗体などのタンパク質、その他のバイオプロダクトなど)については、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩によれば、相転移温度以下の低温条件下で、変性させたり活性を失うことなく、捕獲し分離(単離)することが可能である。
1.カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩、およびその製造方法
本発明が対象とするカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート(本発明化合物)は、下記一般式(I):
本発明が対象とするカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート(本発明化合物)は、下記一般式(I):
で示されるアミノアルキルアクリレート基及び/またはアミノアルキルメタクリレート基が10以上(m≧10)重合してなるポリアミノアルキル(メタ)アクリレートにおいて、当該ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを構成するアミノアルキル(メタ)アクリレート基の全部または少なくとも3割が、下記一般式(II)で示されるカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基であることを特徴とする。
上記式(I)及び(II)中、pは1以上の整数を意味する。通常1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜3、特に好ましくは2である。
上記式(I)及び(II)中、mは10以上の整数を意味する。つまり、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートは10以上のアミノアルキル(メタ)アクリレート基が重合してなるものである。かかるアミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度として、具体的には10以上、好ましくは10〜5000、より好ましくは20〜2000、特に好ましくは20〜1000である。
上記式(I)において、カルバモイル化しているアミノアルキル(メタ)アクリレート基は、全アミノ酸のうち30〜100%(3〜10割)の範囲である。生理的条件下で高温溶解型の温度感応性(感温性)を示すという観点から、好ましくは80〜100%(8〜10割)であり、より好ましくは90〜100%(9〜10割)である。
本発明が対象とする高分子化合物(I)の一例として、下記一般式(III)で示される化合物を挙げることができる。
式(III)中、R1、m及びpは、前述の通りである。
また式(III)中、R2及びR4は、それぞれ独立して、1価の有機基を示す。1価の有機基として、具体的には、炭化水素基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アミド基、アシル基、アルコキシ基が挙げられる。
このうち炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、または炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を例示することができる。好ましくはアルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素基、並びに炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。アルキル基の炭素数は上記のとおり1〜30の範囲であればよいが、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3である。アルケニル基の炭素数は上記のとおり2〜30の範囲であればよいが、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜3である。炭化水素基としてより好ましくはメチル基、エチル基、及びフェニル基である。
カルボキシアルキル基のアルキル基としては、通常炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基又はt-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができる。好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1〜2の直鎖状のアルキル基である。
また、アミド基としては、アミド基の水素原子の1又は2個がアルキル基で置換された炭素数が 2〜21、好ましくは2〜11、より好ましくは2〜7の直鎖状、分枝状又は環状の置換アミド基が挙げられ、より具体的には、例えば、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジn−プロピルアミド基、ジイソプロピルアミド基、ジn−ブチルアミド基、ジt−ブチルアミド基等が挙げられる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基等が挙げられる。
また、アルコキシ基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。より具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第二級ブトキシ基、第三級ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
なお、R2とR4は、お互いに結合して隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。かかる環としては、炭素数5〜8の飽和又は不飽和の環状炭化水素基を挙げることができ、、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
R2として、好ましくは炭化水素基、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基として、具体的には炭素数1〜30のアルキル基を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基である。
R4として、好ましくはカルボキシアルキル基である。アルキル基の炭素数としては、通常1〜6、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2を挙げることができる。
また式(III)中、R3は1価の有機基を示す。該有機基として、具体的には炭化水素基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基を挙げることができる。
ここで炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、または炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を例示することができる。好ましくはアルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素基、並びに炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。アルキル基の炭素数は上記のとおり1〜30の範囲であればよいが、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3である。アルケニル基の炭素数は上記のとおり2〜30の範囲であればよいが、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜3である。炭化水素基としてより好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基、及びベンジル基である。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルコキシ基 が挙げられ、より具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、 ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
また、アリールオキシ基としては、炭素数が6〜30、好ましくは6〜12であることが好ましく、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基が特に好ましい。
R3として、好ましくは炭化水素基、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、特に好ましくはベンジル基である。
当該ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート(I)のアミノアルキル(メタ)アクリレート基のすべてはまたは一部が一般式(II)で示されるカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基によって置換されてなる高分子化合物またはその塩が、本発明の化合物(カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)である。
ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート(I)において、カルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基で置換されるアミノアルキル(メタ)アクリレート基の部位は特に制限されない。従って、本発明化合物には、式(I)に示されるモノマー単位であるアミノアルキル(メタ)アクリレート基と式(II)で示されるカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基との共重合体として、ランダム共重合体、交互共重合体、及びブロック共重合体のいずれもが含まれる。
当該本発明化合物の一例として、下記一般式(IV)で示される化合物を挙げることができる。
上記式(IV)中、R1、R2、R3、R4、及びpは前述の通りである。
R2として、好ましくは炭化水素基、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基として、具体的には炭素数1〜30のアルキル基を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基である。
R4として、好ましくはカルボキシアルキル基である。アルキル基の炭素数としては、通常1〜6、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2を挙げることができる。
R3として、好ましくは炭化水素基、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、特に好ましくはベンジル基である。
上記式(IV)中、mはアミノアルキル(メタ)アクリレート基とカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度を意味する。具体的には、本発明化合物(カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)におけるアミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度は「(1−n)×m」として、またカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度は、「n×m」として規定することができる。従って、nが1である場合、mはカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度を表すことになる。mは、具体的には、前述するように、は10以上の整数を意味する。好ましくは10〜5000であり、より好ましくは20〜2000であり、特に好ましくは20〜1000である。
上記式(IV)中、nは、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートに対するカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレートの割合を表す。言い換えると、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートにおけるアミノアルキル(メタ)アクリレート基に対するカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基の置換割合、ないしはアミノアルキル(メタ)アクリレート基に対するカルバモイル基の導入度を意味する。具体的には、nは0.3≦n≦1の数を示す。生理的条件で温感性を示すという観点から、好ましくは0.8≦n≦1であり、より好ましくは0.9≦n≦1である。具体的には、「n×100」は、本発明化合物におけるポリアミノアルキル(メタ)アクリレート基全体(カルバモイル化された基とカルバモイル化されていない基のトータル)(100%)に対するカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート基のパーセンテージ(%)を意味する。
本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩とは、当該カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを構成するカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート(モノマー分子)中の側鎖カルバモイル基への付加塩を挙げることができる。かかる付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酢酸塩等のカルボン酸塩類、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩や酒石酸塩などオキシカルボン酸塩、安息香酸塩を例示することができる。好ましくは生体に安全な塩、例えば薬学的に許容される塩である。
本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩は、下記一般式(I):
〔式中、R1、m、pは前記の通り。〕
で示されるアミノアルキル(メタ)アクリレート基が重合してなる高分子化合物またはその塩にシアン酸塩(MCNO)を反応させることで製造することができる。
で示されるアミノアルキル(メタ)アクリレート基が重合してなる高分子化合物またはその塩にシアン酸塩(MCNO)を反応させることで製造することができる。
ここで一般式(I)で示される化合物としては、下記式(III):
〔式中、R1、R2、R3、R4、m、及びpは前記の通り。〕
で示される化合物を例示することができる。
で示される化合物を例示することができる。
制限されないが、一例として当該化合物を用いた反応式を示すと下記の通りである。
(式中、R1、R2、R3、R4、n、m及びpは前記の通り。MCNOはシアン酸塩を意味する。)
ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩としては、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩と同様に、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酢酸塩等のカルボン酸塩類、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩や酒石酸塩などオキシカルボン酸塩、安息香酸塩を例示することができる。好ましくは塩酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩などの無機塩である。
ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩としては、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩と同様に、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酢酸塩等のカルボン酸塩類、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩や酒石酸塩などオキシカルボン酸塩、安息香酸塩を例示することができる。好ましくは塩酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩などの無機塩である。
なお、原料として使用するポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の製造方法は既に公知であり、具体的には例えば非特許文献8記載に従って調製することができる。なお、これらの製造方法を記載する文献(例えば、非特許文献8)は、援用により本件明細書の内容の一部として盛り込まれる。より詳細なポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの製造方法については、本明細書において後述する。
なお、塩を含まないフリーのタイプのポリアミノアルキル(メタ)アクリレートは、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩をアルカリで中和後、副生する中和塩を水に対して透析することで調製することができる。
上記反応に際して、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを溶液にするために使用する溶媒としては、水、有機溶媒またはこれらの混合液を挙げることができる。有機溶媒としては、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの溶解性から極性溶媒であることが好ましく、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等を挙げることができる。反応に使用するポリアミノアルキル(メタ)アクリレート溶液におけるポリアミノアルキル(メタ)アクリレート濃度としては、制限されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%、特に好ましくは2〜10重量%を挙げることができる。
ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩と反応させるシアン酸塩(MCNO)としては、シアン酸カリウムやシアン酸ナトリウム等のシアン酸のアルカリ金属塩を好適に例示することができる。好ましくはシアン酸カリウムである。
かかるシアン酸塩の使用割合としては、上記ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの側鎖アミノ基にカルバモイル基が所望の割合(導入率)(一般式中、nが0.3≦n≦1)で導入されるように、化学量論的に必要な計算量を挙げることができる。シアン酸塩の使用割合として、具体的には、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート1モルに対して、0.3〜10モルになるような割合を挙げることができる。上限は10モル以下であればよいが、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下である。下限はカルバモイル基の導入率(カルバモイル化度)に応じて対応するモル数に設定することができる。例えば、カルバモイル化度を0.7〜0.75程度にする場合には0.8モル程度、0.8〜0.9程度にする場合には1モル程度、0.9〜0.95程度にする場合には1.2モル程度に設定調整することができる。
ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩とシアン酸塩(MCNO)とを反応させて、カルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレートを製造するときは、まず、原料のポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の溶液にシアン酸塩(MCNO)をゆっくりと滴下することが好ましい。このとき、溶媒にシアン酸塩(MCNO)を溶解させて、原料のポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の溶液に滴下することもできる。この場合、シアン酸塩を溶解させるための溶媒は、通常、原料のポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを溶解させるための溶媒と同じである。ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩とシアン酸塩(MCNO)との反応は、撹拌しながら行うことが好ましい。反応温度は、特に制限されないが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜60℃に維持することが望ましい。反応時間も特に制限されないが、通常12〜48時間、好ましくは12〜25時間で、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の溶液を得ることができる。
反応終了後、副生したアルコールと反応溶媒を除去するために、反応溶液を、真空乾燥することにより、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を、固体として得ることができる。
また、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート酸の塩は、原料として、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの部分塩を用い、これとシアン酸塩(MCNO)とを、フリーのポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを用いた場合と同様に、反応させることにより、製造することができる。通常、原料のポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの部分塩とシアン酸塩とを反応させた場合、そのポリアミノアルキル(メタ)アクリレートのNHで、塩を形成していないNHが、優先的にカルバモイル基で置換される。反応終了後、得られるカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩の溶液を、アセトン等の溶媒に加えて再沈することにより、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの付加塩を、固体として取り出すことが可能となる。
本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートにおけるカルバモイル化度(モル%)は、用いる原料のシアン酸塩の量に依存する。原料のポリアミノアルキル(メタ)アクリレートのアミノアルキル(メタ)アクリレート基に対し、等モル量のシアン酸塩を用いたときは、通常、ほとんどのアミノ基はカルバモイル化される。従って、原料として用いるシアン酸塩の量を調整することにより、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートのカチオン密度(またはカルバモイル基の密度、ウレイド基の密度ともいう)を調整することができる。なお、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートのカルバモイル化度など、カルバモイル基の導入率(本発明化合物の生成率)は、NMR測定により測定することができる。
また、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩は、原料としてポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩を用いることで、製造取得することができる。
斯くして調製される本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩は、少なくとも生理学的に許容される溶液中で、5〜65℃の範囲、好ましくは5〜50℃の範囲、より好ましくは5〜40℃の範囲に相転移温度を有することを特徴とする。
ここで「生理学的に許容される溶液」とは、生物個体やそれを構成する細胞が生存するために必要な条件を満たした溶液を意味する。対象とする生物個体としては微生物、動物及び植物を挙げることができるが、好ましくは植物及び動物、より好ましくはヒト等の哺乳類を含む動物であり、特に好ましくはヒトを含む哺乳類である。ヒトを含む哺乳類やそれを構成する細胞が生存するために必要な条件としては、制限されないものの、塩濃度として1〜1000mMの範囲、好ましくは50〜300mM,pHとしてpH4−10、好ましくはpH5−9の範囲を例示することができる。また溶液の種類としては、水を例示することができる。なお、「生理学的に許容される溶液」とは人工的に調製した溶液のみならず、生体内及び生体外などの存在場所にかかわらず、血液、リンパ液、組織液などの体液をも包含して意味するものである。
ここで「5〜65℃(または5〜50℃、5〜40℃)の範囲に相転移温度を有する」とは、温度感応性高分子化合物である本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩が生理学的に許容される溶液中で不溶化し不溶相を形成する温度と、当該化合物またはその塩が上記溶液中で溶解し溶解相を形成する温度との境界温度が、5〜65℃(または5〜50℃、5〜40℃)の範囲にあることを意味する。つまり「相転移」とは、上記溶液において本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩によって形成される不溶相と溶解相との相転移を意味する。
かかる「相転移温度」は、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を少なくとも生理的に許容される許容される溶液、好ましくは少なくとも1mMの塩を含有する水溶液に溶解し、降温させながら石英セル中で500nmの可視光の透過率を測定し、上記カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩が完全に溶解しているときの清澄溶液の可視光の透過率を100%とした場合に、これを降温したときに該透過率が減少し始める温度として求めることができる(例えば、図9等参照)。ここで塩とはKCl, NaCl, CaCl2, MgCl2, KBr, NaBr, Na2SO4, 及びMgSO4等を挙げることができる。また、生理的に許容される許容される溶液に代えて、1M尿素、グアニジン塩酸塩、ホルムアミド等を含む溶液を用いることもできる。
2.カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の用途
(2-1)温度感応性組成物/温度感応性材料
本発明の温度感応性組成物は、前述するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有効成分とするものであって、当該有効成分の特性に基づいて、同様に、少なくとも生理学的に許容される溶液中で、5〜65℃、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜40℃の範囲に相転移温度を有することを特徴とする。
(2-1)温度感応性組成物/温度感応性材料
本発明の温度感応性組成物は、前述するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有効成分とするものであって、当該有効成分の特性に基づいて、同様に、少なくとも生理学的に許容される溶液中で、5〜65℃、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜40℃の範囲に相転移温度を有することを特徴とする。
温度感応性組成物中に含まれる本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の割合は、上記特性を損なわない限り、特に制限されず、10〜100%未満の範囲から適宜選択することができる。カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩だけからなるもの、及びそれらを含む温度感応性組成物を、以下「温度感応性材料」と称してその用途を説明する。
本発明の温度感応性材料の相転移温度は、それを溶解する溶媒の種類、溶媒の塩濃度、pH、溶媒中のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の濃度、及び溶媒中の他成分の存在(例えば、アニオン性物質、カチオン性物質、水素結合性物質または疎水結合性物質などの存在及びその量)に応じて変動し得る。しかし、本発明の温度感応性材料は、上記するように、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有し、少なくとも生理学的に許容される溶液中で、5〜65℃、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜40℃の範囲に相転移温度を有し、当該相転移温度よりも低い温度で不溶相を形成し、当該相転移温度よりも高い温度で溶解相を形成するものである。
かかる温度感応性材料の一例として、有効成分が前述するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート(VII)のうち、R1がメチル基、R2が式(IV)で示される基(式中、R4はメチル基であり、qは2である)、R3が式(V)で示される基、pが2であるカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートであって、且つ当該カルバモイル基導入率(カルバモイル化度:n)が90%以上(n=0.9)以上、好ましくはn=1である化合物またはその塩からなる温度感応性材料を挙げることができる。より好ましい温度感応性材料としては、mが10以上、より好ましくは15〜1000であるカルバモイル化ポリアミノエチルメタクリレートである(分子量に換算すると1.7×103以上、好ましくは2.5×103〜1.7×105)。
当該温度感応性材料は、pH7.5の少なくとも150mMの塩化ナトリウムを含有する水溶液中で、10〜40℃、好ましくは10〜35℃の範囲に相転移温度を有し、当該相転移温度よりも低い温度で不溶相を形成し、当該相転移温度よりも高い温度で溶解相を形成する(実験例参照)。
ここで相転移温度は、前述するように、当該温度感応性材料を少なくとも1mMの塩を含有する水溶液に溶解し、降温させながら石英セル中で500nmの可視光の透過率を測定し、当該分離材が完全に溶解しているときの清澄溶液の可視光の透過率を100%とした場合に、これを降温したときに該透過率が減少し始める温度として求められる。
ここで塩とはKCl, NaCl, CaCl2, MgCl2, KBr, NaBr, Na2SO4, 及びMgSO4等を挙げることができるが、好適には塩化ナトリウムを挙げることができる。
上記塩の濃度の濃度としては、上記するように1mM以上であれば特に制限されない。好ましくは1〜3000mMであり、より好ましくは50〜1000mMである。また、溶液中での温度感応性材料の濃度は、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの濃度に換算して、通常0.1mg/ml以上、好ましくは0.1〜300mg/ml、より好ましくは0.1〜100mg/mlを挙げることができる。
また本発明の温度感応性材料は、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩そのものをそのまま用いるもの(カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の単品またはその集合物)であってもよいが、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを構成するカルバモイル化アミノアルキル(メタ)アクリレート(モノマー分子)のウレイド基(カルバモイル基、アミノ基ということもできる)に、分離しようとする被分離物に対して結合性を有するリガンドを、必要に応じてアルキレン基などの任意のリンカーを介して、固定化させた状態で用いることもできる。
かかるリガンドとしては、ビオチン又はイミノビオチン(またはアビジンまたはストレプトアビジン)、抗体(または抗原)、分子シャペロン、糖鎖、レクチン、プロテインA、プロテインG、DNA、RNA、酵素(または酵素反応における基質)、受容体(または受容体に対するリガンド(アゴニスト若しくはアンタゴニスト))、競争阻害剤、補酵素等が例示される。
カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートに上記リガンドを結合する方法としては、制限されないが、例えば抗体(または抗原)、酵素または受容体などの蛋白質をリガンドとして結合させる場合、蛋白質にはカルボキシル基とカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの末端残基であるアミノ基との間でペプチド結合を形成させる方法を例示することができる。またリガンドのカルボキシル基をN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)でエステル化して活性化エステル基とし、次いでカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの末端アミノ基とアミド結合を形成することによっても、リガンドとカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを結合させることができる。
なお、リンカーとしては、特に制限されないが、前述するように炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3等の低級アルキレン基を例示することができる。
温度感応性材料と併用するアニオン性物質としては、アニオン基を有する物質であれば特に制限されないが、例えば一価アニオンを有するフルオレセイン(FL)、二価アニオンを有するブロモフェノールブルー(BPB)、四価アニオンを有するトリパンブルー(TB)やエバンスブルー(EB)等のアニオン系色素を挙げることができる。
また、温度感応性材料と併用するカチオン性物質としては、カチオン基を有する物質であれば特に制限されないが、例えば、一価カチオンを有するエチジウムブロマイド、二価カチオンを有するプロピジウムアイオダイド、四価カチオンを有するTMPyP(テトラキス(1-メチルピリジニウム-4-イル)ポルフィリンp-トルエンスホナートを挙げることができる。
本発明の温度感応性材料の温度感応性(感温性)は可逆的であり、溶解と不溶化の繰返し変化によってもその温度感応性は保持されることが好ましい。
(2-2)温度感応性材料の用途
本発明の温度感応性材料は、上記特性を利用することができる種々の用途や用法に適用することができる。例えば、水性二相分配法における分離・濃縮剤(後述(a)参照)、薬物放出剤における基材(薬物放出基材)(後述(b)参照)、ドラッグデリバリーシステムにおける運搬体(ドラッグデリバリーシステムキャリアー)、酵素や抗体を固定化するための担体(後述(c)参照)、細胞培養基材、光機能材料、センシング基材、として用いることができる。なお、当然ながら温度感応性材料として、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩そのものを使用することもできる。前述するように、「温度感応性材料」という用語は、「カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩そのもの」を包含する意味で用いられる。
本発明の温度感応性材料は、上記特性を利用することができる種々の用途や用法に適用することができる。例えば、水性二相分配法における分離・濃縮剤(後述(a)参照)、薬物放出剤における基材(薬物放出基材)(後述(b)参照)、ドラッグデリバリーシステムにおける運搬体(ドラッグデリバリーシステムキャリアー)、酵素や抗体を固定化するための担体(後述(c)参照)、細胞培養基材、光機能材料、センシング基材、として用いることができる。なお、当然ながら温度感応性材料として、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩そのものを使用することもできる。前述するように、「温度感応性材料」という用語は、「カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩そのもの」を包含する意味で用いられる。
例えば、本発明の温度感応性材料を、細胞培養基材またはその成分として用いる場合、それを当該温度感応性材料の相転移温度よりも低い温度に設定して不溶相の状態で細胞を培養し、次いでそれを相転移温度よりも高い温度に調整して溶解相にすることで、液体化して細胞を回収することができる。例えば、本発明の温度感応性材料を、pH変化や塩濃度変化に応答するセンサーの基材(センシング基材)として用いる場合、pHや塩濃度変化を伴う生体内での反応を測定することが可能である。
(a)水性二相分配法
水性二相分配法は、本発明の温度感応性材料を分離剤または濃縮剤として用いることにより実施することができる。具体的には、水性二相分配法は、本発明の温度感応性材料を溶解した水性溶媒の温度を、当該温度感応性材料の相転移温度より低くした際に形成されるコアセルベート層と水層に対する被分離物の親和性の差を利用して、被分離物を分離し濃縮する方法である。分離しようとする被分離物を含む試料(被分離試料)を、まず温度感応性材料を溶解した水性溶媒に当該温度感応性材料の相転移温度より高い温度条件下で溶解させ、次いでこの温度を相転移温度より低い温度にすることでコアセルベート層及び水層を形成する。斯くして、被分離物はコアセルベート層及び水層に対する親和性の差によってどちらかの層により多く分配される。そこで、被分離物が分配された層から、当該被分離物を回収する。所望により、この操作を繰り返すことにより被分離物の回収率を増加することができる。
水性二相分配法は、本発明の温度感応性材料を分離剤または濃縮剤として用いることにより実施することができる。具体的には、水性二相分配法は、本発明の温度感応性材料を溶解した水性溶媒の温度を、当該温度感応性材料の相転移温度より低くした際に形成されるコアセルベート層と水層に対する被分離物の親和性の差を利用して、被分離物を分離し濃縮する方法である。分離しようとする被分離物を含む試料(被分離試料)を、まず温度感応性材料を溶解した水性溶媒に当該温度感応性材料の相転移温度より高い温度条件下で溶解させ、次いでこの温度を相転移温度より低い温度にすることでコアセルベート層及び水層を形成する。斯くして、被分離物はコアセルベート層及び水層に対する親和性の差によってどちらかの層により多く分配される。そこで、被分離物が分配された層から、当該被分離物を回収する。所望により、この操作を繰り返すことにより被分離物の回収率を増加することができる。
当該水性二相分配法は、特にコアセルベート層を形成する本発明の温度感応性材料に対して親和性を有する被分離物の分離及び濃縮に好適に使用される。
具体的には、本発明において、水性二相分配法は、被分離物を含む試料(被験試料)と本発明の温度感応性材料とを、生理学的に許容される溶液中に共存させ、次いで、当該溶液の温度を当該温度感応性材料の相転移温度より高い温度から低い温度にすることによって実施することができる。本発明の温度感応性材料に親和性を有する被分離物は、当該温度感応性材料から形成されるコアセルベート層に分配されるため、当該コアセルベート層を、遠心により沈降させるかまたは透析すること等により濃縮することで、被験試料から被分離物を分離することができる。ここで塩としては、塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどを例示することができるが、これに限定されない。他の塩としては、例えばKCl, NaCl, MgCl2, KBr, NaBr, Na2SO4, MgSO4等を例示することができる。好ましい塩は塩化ナトリウムである。
被分離物の一例としては、タンパク質、細胞、水素結合性物質、疎水結合性物質、アニオン性物質、カチオン性物質などを挙げることができる。水素結合性物質としては、RNAやDNA等の核酸、またはアンチセンス核酸、siRNA、miRNA、リボザイム、RNAアプタマーなどの核酸誘導体を、また疎水結合性物質としてはパクリタキセル等の抗がん剤、またはカーボンナノチューブなどを例示することができる。
尚、水性二相分配法に適用される温度感応性材料は、カルバモイル化ポリアミノ酸またはその塩そのものを有効成分とするものであってもよいし、また分離しようとする被分離物と結合性を有するリガンドを、カルバモイル化ポリアミノ酸を構成するウレイド基/カルバモイル基/アミノ基(モノマー分子)に、必要に応じてアルキレン基などの任意のリンカーを介して固定化したものを有効成分とするものであってもよい。
かかるリガンドとしては、前述するように、ビオチン又はイミノビオチン(またはアビジンまたはストレプトアビジン)、抗体(または抗原)、分子シャペロン、糖鎖、レクチン、プロテインA、プロテインG、DNA、RNA、酵素(酵素反応における基質)、受容体(受容体に対するリガンド(アゴニスト・アンタゴニスト)、競争阻害剤、補酵素等が例示される。上記特異的な相互作用を行うことが知られている一組の具体例としては、抗原−抗体、酵素−基質(阻害剤)、各種の生理活性物質−受容体、ビオチン又はイミノビオチン−アビジンまたはストレプトアビジン、DNA−DNA(RNA)等が挙げられる。これらの組は、天然分子同士に限らず、合成分子−天然分子、合成分子−合成分子も包含される。また、相互作用としては、静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用等の単独乃至組み合わせが挙げられる。
本発明の水性二相分配法は、好ましくは5〜36℃といった比較的低温域に相転移温度を有する温度感応性材料を分離・濃縮剤として用いることができる方法であるため、微生物や細胞培養の生体物等のバイオプロダクトや、酵素や抗体や生理活性物質などタンパク質などを被分離物とするバイオセパレーションに好適に使用することができる。
(b)酵素または抗体の固定化基材、それを用いた反応方法
また本発明の温度感応性材料は、酵素または抗体の固定化基材(固相)として用いることができ、これに酵素または抗体を固定化することにより、固定化酵素または固定化抗体を調製し、提供することができる。
また本発明の温度感応性材料は、酵素または抗体の固定化基材(固相)として用いることができ、これに酵素または抗体を固定化することにより、固定化酵素または固定化抗体を調製し、提供することができる。
かかる固定化酵素及び固定化抗体は、イムノアッセイ法等の被験物質(タンパク質等)の定性または定量分析、タンパク質の精製、バイオリアクター構築のための有力な材料となる。この場合、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート(II)またはその塩としては、これを構成するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート(モノマー分子)のウレイド基/カルバモイル基/アミノ基に酵素に対して結合性を有するリガンドを、必要に応じてリンカーを介して固定化したものを用いることが好ましい。かかるリガンドとしては、前述するように、ビオチン又はイミノビオチンを好適に例示することができる。
固定化酵素は、本発明の温度感応性材料(酵素固定化基材)に酵素を化学的に固定化することにより調製することができる。酵素の固定化方法としては、上記2で説明したカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩にリガンド(酵素)を結合する方法を同様に用いることができる。斯くして調製した固定化酵素を、少なくとも生理学的に許容される溶液中において、その温度を温度感応性材料の相転移温度より低い温度に設定することで酵素を固定化した温度感応性材料(固定化酵素)を不溶相として相分離しておく。そして、必要に応じて、温度やpH等を変化させて相転移温度より高い温度にすることで、固定化酵素を、基質を含む水溶液と相溶化することで、酵素反応を開始させることができる。
また固定化抗体も、本発明の温度感応性材料(抗体固定化基材)に抗体を化学的に固定化することにより調製することができる。抗体の固定化方法としては、上記2で説明したカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートにリガンド(抗体)を結合する方法を同様に用いることができる。斯くして調製した固定化抗体を、少なくとも生理学的に許容される溶液であって上記抗体の抗原を含む溶液中において、その温度を温度感応性材料の相転移温度より低い温度に設定することで抗体を固定化した温度感応性材料(固定化抗体)を不溶相として相分離しておく。そして、必要に応じて、温度やpH等を変化させて相転移温度より高い温度にすることで、固定化抗体を、抗原を含む水溶液と相溶化することで、抗原抗体反応を開始させることができる。また、抗体に代えてその抗原を温度感応性材料に固定化して、水溶液に当該抗体の抗原を配合して、抗原抗体反応を行うこともできる。
(c)薬物放出剤、薬物放出方法
また本発明によれば、上記温度感応性材料を薬物と組み合わせることで薬物放出剤を提供することができる。当該薬物放出剤は、本発明の温度感応性材料をいわゆるドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアー(薬物の担持体)として用いるもので、本発明の温度感応性材料と任意の薬物との組み合わせからなる。本発明の薬物放出剤は、本発明の温度感応性材料が生理学的条件下で温度を制御することで可逆的に溶解及び不溶化し(相転移)、これに伴ってコアセルベートが消失したり形成したりするという特性を、薬物の放出及び保持の制御に応用したものである。本発明の薬物放出剤は、必要なときに必要なだけ薬物を投与しようというインテリゼント化製剤(インテリゼントDDS)に好適に用いられる。
また本発明によれば、上記温度感応性材料を薬物と組み合わせることで薬物放出剤を提供することができる。当該薬物放出剤は、本発明の温度感応性材料をいわゆるドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアー(薬物の担持体)として用いるもので、本発明の温度感応性材料と任意の薬物との組み合わせからなる。本発明の薬物放出剤は、本発明の温度感応性材料が生理学的条件下で温度を制御することで可逆的に溶解及び不溶化し(相転移)、これに伴ってコアセルベートが消失したり形成したりするという特性を、薬物の放出及び保持の制御に応用したものである。本発明の薬物放出剤は、必要なときに必要なだけ薬物を投与しようというインテリゼント化製剤(インテリゼントDDS)に好適に用いられる。
本発明の薬物放出剤において、本発明の温度感応性材料に各種薬物(例えば、アドレアマイシン、タキソール等の各種の抗ガン剤等)を担持または結合させる手段は、温度感応性材料の水性溶液を、温度や濃度等の制御下で温度感応性材料と所望の薬物を接触させる方法が挙げられる。具体的には、本発明の温度感応性材料と各種薬物を、少なくとも生理学的に許容される溶液中で共存させ、当該溶液の温度等を制御することで、温度感応性材料の相転移温度よりも低い温度にすることで、本発明の温度感応性材料に各種薬物を担持または結合させることができる。次いで、温度等を制御することで、温度感応性材料の相転移温度よりも高い温度にすることで、薬物放出剤の温度感応性材料から各種薬物を放出させることができる。
この場合、温度感応性材料として、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩をそのまま使用してもよいし、また前述するリガンドを、必要に応じてリンカーを介して固定化したカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を用いてもよい。
また、本発明の薬物放出剤において、薬物を温度感応性材料に担持または結合させる態様としては、好ましくは相転移温度よりも低い温度にすることで温度感応性材料から形成されるコアセルベート層の内部または表面に、薬物を結合させる方法を挙げることができる。また、本発明の薬物放出剤は、薬物を温度感応性材料に担持または結合させた状態で、更にカプセル、スポンジ、ゲル、リポソーム等の基材に収容または担持させる等、二次的な処理が施されていても良い。この場合も、温度等を制御することで、感温性分離材の相転移温度よりも高い温度にすることで、薬物放出剤の温度感応性材料から形成されたコアセルベート層から各種薬物を放出させることができる。
なお、本発明の薬物放出剤の投与形態も任意であり、その剤形により適宜選択される。例えば、経口剤、貼付剤、注射剤、点滴、坐剤等の剤形に応じて、経口投与、経皮投与、静脈内または筋肉内投与、及び直腸投与などが挙げられる。
水性二相分配法、酵素の固定化、薬物放出剤等において、標的物質や目的物の本発明の温度感応性温度感応性材料に対する結合は、イオンコンプレックスや電荷移動錯体を利用した結合、生化学的親和性等を利用した結合が好ましい。本発明の温度感応性温度感応性材料に結合した標的物質または目的物は、例えば、塩濃度制御、pH制御、阻害剤、基質等の制御、尿素、SDSなどの変性剤の制御、有機溶媒、金属イオンなどの制御、温度制御などの方法を適宜選定乃至組み合わせることにより結合強度を制御し、ひいては分配率、反応速度、薬物放出速度等を制御することができる。また、種々のリガンドの温度感応性温度感応性材料への固定化は、温度感応性温度感応性材料の繰返し再現性を保持するには共有結合であることが好ましいが、イオンコンプレックスや電荷移動錯体を利用した結合、生化学的親和性等を利用した結合であってもよい。
(4)本発明化合物の製造中間体及びその製造方法
本発明化合物の製造に際して、原料として使用する化合物(製造中間体)は、下記式(III):
本発明化合物の製造に際して、原料として使用する化合物(製造中間体)は、下記式(III):
で示される高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩である。これを本発明では、本発明化合物の製造中間体ともいう。
ここで、上記式(III)で示されるR1、R2、R3、R4、m、及びpは、それぞれ(1)で規定した通りである。
具体的には次の通りである。
式(III)中、R1は水素原子またはメチル基を意味する。上記(III)で示される本発明化合物は、R1が水素原子またはメチル基いずれか一方の基だけから構成されるものであっても、また水素原子とメチル基の両者が混在するものであってもよい。
上記式(III)中、pは1以上の整数を意味する。通常1〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜3、特に好ましくは3である。
上記式(III)中、mは10以上の整数を意味する。つまり、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートは10以上のアミノアルキル(メタ)アクリレート基が重合してなるものである。かかるアミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度として、具体的には10以上、好ましくは10〜5000、より好ましくは20〜2000、特に好ましくは20〜1000である。
また式(III)中、R2及びR4は、それぞれ独立して、1価の有機基を示す。1価の有機基として、具体的には、炭化水素基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アミド基、アシル基、アルコキシ基が挙げられる。
このうち炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、または炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を例示することができる。好ましくはアルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素基、並びに炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。アルキル基の炭素数は上記のとおり1〜30の範囲であればよいが、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3である。アルケニル基の炭素数は上記のとおり2〜30の範囲であればよいが、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜3である。炭化水素基としてより好ましくはメチル基、エチル基、及びフェニル基である。
カルボキシアルキル基のアルキル基、アミド基、アシル基、及びアルコキシ基の種類、並びにその好適な態様については、前記1の項で説明した通りである。また、R2とR4とが、お互いに結合して隣接する炭素原子と共に環を形成する場合の環状基の種類並びにその好適な態様についても、前記1の項で説明した通りである。
R2として、好ましくは炭化水素基、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基として、具体的には炭素数1〜30のアルキル基を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基である。R4として、好ましくはカルボキシアルキル基である。アルキル基の炭素数としては、通常1〜6、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2を挙げることができる。
また式(III)中、R3は1価の有機基を示す。該有機基として、具体的には炭化水素基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基を挙げることができる。ここで炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基の種類並びにその好適な態様についても、前記1の項で説明した通りである。
R3として、好ましくは炭化水素基、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、特に好ましくはベンジル基である。
製造中間体の塩としては、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを構成するアミノアルキル(メタ)アクリレート(モノマー分子)中のアミノ基への付加塩を挙げることができる。かかる付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酢酸塩等のカルボン酸塩類、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩や酒石酸塩などオキシカルボン酸塩、安息香酸塩を例示することができる。好ましくは生体に安全な塩、例えば薬学的に許容される塩である。
当該製造中間体は、下式(VII):
〔式(VII)中、R1及びpは前述の通り。〕
で示される2−アミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を、連鎖移動剤として4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、及び重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)と、不活化ガスの存在下で反応させることによって製造することができる。
で示される2−アミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を、連鎖移動剤として4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、及び重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)と、不活化ガスの存在下で反応させることによって製造することができる。
ここで不活化ガスとして、アルゴンガス、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、キセノンガス等を挙げることができる。好ましくはアルゴンガス、または窒素ガスを挙げることができる。
反応に使用する重合開始剤の割合は、2−アミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度に応じて、適宜設定することができる。mが10〜1000である高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩を製造する場合、反応に使用する2−アミノアルキル(メタ)アクリレート100モルに対する重合開始剤の割合として、10〜0.1モル、好ましくは5〜0.05モルを挙げることができる。
また反応に使用する連鎖移動剤の割合もまた、2−アミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度に応じて、適宜設定することができる。mが10〜1000である高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩を製造する場合、反応に使用する2−アミノアルキル(メタ)アクリレート100モルに対する連鎖移動剤の割合として、10〜0.1モル、好ましくは5〜0.05モルを挙げることができる。
また反応に使用する重合開始剤と連鎖移動剤の割合もまた、2−アミノアルキル(メタ)アクリレート基の重合度に応じて、適宜設定することができる。mが10〜1000である高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩を製造する場合、反応に使用する重合開始剤1モルに対する連鎖移動剤の割合として、通常、1モル、好ましくは0.5モル、より好ましくは0.2モルを挙げることができる。
上記反応は、通常、pH5〜7の範囲、好ましくはpH6〜7のpH条件で実施することができる。温度条件及び反応時間は特に制限されないものの、温度条件として、通常60〜80℃、好ましくは60〜70℃の範囲を;反応時間として、通常1〜10時間、好ましくは3〜5時間程度、より好ましくは4時間程度を挙げることができる。
なお、本発明において連鎖移動剤として、公知(市販)のラジカル重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば「新訂版 ラジカル重合ハンドブック」(2010年9月10日 株式会社エヌ・ティー・エス刊)197-206に記載されている連鎖移動剤を挙げることができる。より具体的には、4-シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート、ベンジルベンゾチオエート、2-フェニル-2-プロピルベンゾチオエート、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル)ペンタン酸、N,N-アゾビスイソブチロニトリルを好適に例示することができる。
斯くして下記式(III):
〔式(III)中、R1、R2、R3、n及びpは前述の通り。〕
で示される高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩を得ることができる。
で示される高分子化合物(ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩を得ることができる。
ここでポリアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩としては、前述するアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩を同様に挙げることができる。
反応終了後、反応溶液を、真空乾燥することにより、本発明の製造中間体であるポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を、固体として得ることができる。
以下、製造例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより明確に説明する。但し、本発明はこれらの製造例及び実験例によって何ら制限されるものではない。
製造例1 製造中間体(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]塩酸塩:PAEM 22 )の製造
以下のスキームに従ってポリ(2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩)(PAEMm、m=22)を合成した。
以下のスキームに従ってポリ(2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩)(PAEMm、m=22)を合成した。
まず2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩(以下「AEM」という。4.21 g, 25.4 mmol)、連鎖移動剤として4-シアノペンタン酸ジチオベンゾエート(以下、「CPD」という。0.357 g, 1.28 mmol)、及び重合開始剤として4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(以下、「V-501」という。 0.178 mg, 0.634 mmol)をリン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(20.3 mL, pH 6.4)、とメタノール(11.1 mL)の混合溶媒に溶解した。2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩を溶かした段階でpHが4.83だったため、1 M水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.19に調整した。溶液をアルゴンで33分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合後の溶液のpHは4.55だった。その後1H-NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、97.2 %だった。重合溶液を透析してから凍結乾燥して、mが22であるPAEM22を回収した(2.66 g,収率 58.4 %)。
回収したPAEM22の重水中での1H-NMRを図1(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は22.1となった。
得られたポリマーを、酢酸-硫酸ナトリウム緩衝液を展開溶媒に用いてGPCを測定した図1(B)。1H-NMR及びGPCから求めたMnの結果を表1に示す。Mw/Mnの値が狭いことから、重合が制御できたと考えられる。
製造例2 製造中間体(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]塩酸塩:PAEM 49 )の製造
AEM(4.20 g, 25.4 mmol)、連鎖移動剤としてCPD(0.144 g, 0.516 mmol)、及び重合開始剤としてV-501(71.9 mg, 0.257 mmol)を、リン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(26.2 mL, pH 6.4)とメタノール(6.1 mL)の混合液に溶解した。AEMを溶かした段階でpHが4.99だったため、1 M水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.48に調整した。溶液をアルゴンで37分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合終了後に沈殿は生じなかった。重合後の溶液のpHは4.49だった。その後1H NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、97.7 %だった。重合溶液を透析して凍結乾燥して、mが49であるPAEM49を回収した(2.56 g, 収率58.9 %)。 回収したPAEM49の重水中での1H-NMRを図2(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は49.1となった。
AEM(4.20 g, 25.4 mmol)、連鎖移動剤としてCPD(0.144 g, 0.516 mmol)、及び重合開始剤としてV-501(71.9 mg, 0.257 mmol)を、リン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(26.2 mL, pH 6.4)とメタノール(6.1 mL)の混合液に溶解した。AEMを溶かした段階でpHが4.99だったため、1 M水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.48に調整した。溶液をアルゴンで37分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合終了後に沈殿は生じなかった。重合後の溶液のpHは4.49だった。その後1H NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、97.7 %だった。重合溶液を透析して凍結乾燥して、mが49であるPAEM49を回収した(2.56 g, 収率58.9 %)。 回収したPAEM49の重水中での1H-NMRを図2(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は49.1となった。
得られたポリマーを、酢酸-硫酸ナトリウム緩衝液を展開溶媒に用いてGPCを測定した図2(B)。1H-NMR及びGPCから求めたMnの結果を以下の表2に示す。GPCから求めたMnは理論値よりも小さくなった。Mw/Mnの値が狭いことから、重合は制御できたと考えられる。
製造例3 製造中間体(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]塩酸塩:PAEM 107 )の製造
AEM(5.01 g, 30.2 mmol)、連鎖移動剤としてCPD(84.6 mg, 0.302 mmol)、重合開始剤としてV-501(33.8 mg, 0.121 mmol)をpH 6.4のリン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(15.1 mL)に溶解した。CPDが少し溶け残った。溶液をアルゴンで36分間脱気した後、16時間70 ℃で加熱した。重合終了後に黒色沈殿が微小量生じていたので濾過して取り除いた。重合後の溶液のpHを測定したところ、pHは2.26だった。従って、重合過程で酸性になりCPDが変質し、黒色沈殿を生じたと考えられる。その後1H-NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、100%だった。重合溶液を透析して凍結乾燥して、mが107であるPAEM107を回収した(3.57 g, 収率89.6%)。 回収したPAEM107の重水中での1H-NMRを図3(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は107となった。
AEM(5.01 g, 30.2 mmol)、連鎖移動剤としてCPD(84.6 mg, 0.302 mmol)、重合開始剤としてV-501(33.8 mg, 0.121 mmol)をpH 6.4のリン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(15.1 mL)に溶解した。CPDが少し溶け残った。溶液をアルゴンで36分間脱気した後、16時間70 ℃で加熱した。重合終了後に黒色沈殿が微小量生じていたので濾過して取り除いた。重合後の溶液のpHを測定したところ、pHは2.26だった。従って、重合過程で酸性になりCPDが変質し、黒色沈殿を生じたと考えられる。その後1H-NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、100%だった。重合溶液を透析して凍結乾燥して、mが107であるPAEM107を回収した(3.57 g, 収率89.6%)。 回収したPAEM107の重水中での1H-NMRを図3(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は107となった。
得られたポリマーを酢酸-硫酸ナトリウム混合溶液を展開溶媒に用いてGPCを測定した(図3(B))。1H-NMR及びGPCから求めたMnの結果を表3に示す。
製造例4 製造中間体(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]塩酸塩:PAEM 354 )の製造
AEM(4.22 g, 25.5 mmol)、連鎖移動剤としてCPD(17.3 mg, 61.9 μmol)、重合開始剤としてV-501(9.00 mg, 32.1 μmol)をリン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(20.3 mL, pH 6.4)とメタノール(5.1 mL)の混合液に溶解した。モノマーを溶かした段階でpHが5.50だったため、1 M水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.16に調整した。溶液をアルゴンで30分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合後の溶液のpHは3.63だった。その後1H NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、86.3 %だった。重合溶液を透析して凍結乾燥で、mが354であるPAEM354を回収した(2.33 g, 収率55.1 %)。 回収したPAEM354の重水中での1H-NMRを図4(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は354となった。
AEM(4.22 g, 25.5 mmol)、連鎖移動剤としてCPD(17.3 mg, 61.9 μmol)、重合開始剤としてV-501(9.00 mg, 32.1 μmol)をリン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(20.3 mL, pH 6.4)とメタノール(5.1 mL)の混合液に溶解した。モノマーを溶かした段階でpHが5.50だったため、1 M水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.16に調整した。溶液をアルゴンで30分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合後の溶液のpHは3.63だった。その後1H NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、86.3 %だった。重合溶液を透析して凍結乾燥で、mが354であるPAEM354を回収した(2.33 g, 収率55.1 %)。 回収したPAEM354の重水中での1H-NMRを図4(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は354となった。
得られたポリマーを、酢酸-硫酸ナトリウム緩衝液を展開溶媒に用いてGPCを測定した(図4(B))。1H-NMR及びGPCから求めたMnの結果を以下の表4にまとめた。GPCから求めたMnは理論値よりも小さくなった。Mw/Mnの値が狭いことから、重合は制御できたと考えられる。
製造例5 製造中間体(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]塩酸塩:PAEM 851 )の製造
AEM(4.19 g, 25.3 mmol)、CPD(7.20 mg, 25.8 μmol)、及びV-501(3.00 mg, 10.7 μmol)をイオン交換水(11.8 mL)及びメタノール(2.5 mL)の混合液に溶解した。AEMを溶かした段階でpHが3.45だったため、1 M 水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.06に調整した。溶液をアルゴンで30分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合終了後に沈殿は生じなかった。重合後の溶液のpHは2.63だった。その後1H NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、84.5 %だった。重合溶液を透析した後、凍結乾燥して、mが851であるPAEM851を回収した(2.81 g, 収率66.8 %)。 回収したPAEM851の重水中での1H-NMRを図5(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は851となった。
AEM(4.19 g, 25.3 mmol)、CPD(7.20 mg, 25.8 μmol)、及びV-501(3.00 mg, 10.7 μmol)をイオン交換水(11.8 mL)及びメタノール(2.5 mL)の混合液に溶解した。AEMを溶かした段階でpHが3.45だったため、1 M 水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.06に調整した。溶液をアルゴンで30分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合終了後に沈殿は生じなかった。重合後の溶液のpHは2.63だった。その後1H NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、84.5 %だった。重合溶液を透析した後、凍結乾燥して、mが851であるPAEM851を回収した(2.81 g, 収率66.8 %)。 回収したPAEM851の重水中での1H-NMRを図5(A)に示す。8.0〜7.5 ppmの末端フェニル基のプロトン(a)と4.5〜4.2 ppmの側鎖のメチレン基のプロトン(b)の積分強度比から求められる重合度(DP(NMR))は851となった。
得られたポリマーを、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を展開溶媒に用いてGPCを測定した(図5(B))。1H-NMR及びGPCから求めたMnの結果を表5に示す。
GPCから求めたMnは理論値よりも小さくなった。Mw/Mnの値が狭いことから、重合は制御できたと考えられる。
参考製造例1 製造中間体(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]塩酸塩:PAEM-free)の製造
AEM(4.18 g, 25.2 mmol)及びV-501(28.7 mg, 0.102 mmol)をイオン交換水(10.2 mL)とメタノール(2.5 mL)の混合液に溶解した。AEMを溶かした段階でpHが3.81だったので、1 M 水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.83に調整した。溶液をアルゴンで48分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合後の溶液のpHは3.67だった。その後1H-NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、92.4 %だった。重合溶液を透析した後に凍結乾燥して、PAEM-freeを回収した(2.78 g, 収率66.6 %)。回収したPAEM-free の重水中での1H-NMRを図6(A)に示す。得られたポリマーを、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を展開溶媒に用いてGPCを測定した(図6(B))。GPCから求めたMnの結果を表6に示す。
AEM(4.18 g, 25.2 mmol)及びV-501(28.7 mg, 0.102 mmol)をイオン交換水(10.2 mL)とメタノール(2.5 mL)の混合液に溶解した。AEMを溶かした段階でpHが3.81だったので、1 M 水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.83に調整した。溶液をアルゴンで48分間脱気した後、4時間70 ℃で加熱した。重合後の溶液のpHは3.67だった。その後1H-NMRを測定してAEMのビニル基の減少からコンバーションを求めたところ、92.4 %だった。重合溶液を透析した後に凍結乾燥して、PAEM-freeを回収した(2.78 g, 収率66.6 %)。回収したPAEM-free の重水中での1H-NMRを図6(A)に示す。得られたポリマーを、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を展開溶媒に用いてGPCを測定した(図6(B))。GPCから求めたMnの結果を表6に示す。
重合に際して連鎖移動剤を用いなかったため、重合は制御できずにMw/Mnの値は大きくなった。
下記表7に、製造例1〜5及び参考製造例1で製造した製造中間体(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]塩酸塩)の特性を纏めたものを示す。
製造例6〜7/参考製造例2 本発明化合物(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]: PUEM 107 PUEM 851 )及びPUEM-freeの製造
上記製造例3及び5でそれぞれ製造したm(重合度)が107及び851であるポリ[2-アミノエチルメタクリレート](製造例6:PAEM107、製造例7:PAEM851)及びPAEM-free(参考製造例2)を用いて、カルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]を製造した。
上記製造例3及び5でそれぞれ製造したm(重合度)が107及び851であるポリ[2-アミノエチルメタクリレート](製造例6:PAEM107、製造例7:PAEM851)及びPAEM-free(参考製造例2)を用いて、カルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]を製造した。
具体的には、各種PAEM 200mgを、スクリュー管ビンに入れ、1M イミダゾール塩酸緩衝液(pH6.0)5 mlに溶解し、50℃に加熱し、これにシアン酸カリウム147.6 mg(PAEMのアミノ基1モルに対して1.5モル(1.5eq))を水に溶解した液を適下した。これを50℃で24時間、撹拌した。反応終了後、透析膜(MWCO: 3,500を使用。)を用いて、室温で水(2回)、1%TFA水溶液(1回)、及び水(2回)に対して透析して、副生した塩化カリウムを除き、凍結乾燥を行った。
得られたポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM)の収量と収率を表8に示す。
また、PAEM107と回収した各種PUEMについてDMSO(0.1% NaODを含む90% DMSO)中で1H-NMR(積算64回、室温)を測定した結果を図7に示す。PAEMのピークが低磁場シフト(bは僅かに高磁場シフト)ことから、すべてのPAEMのアミノ基が定量的にカルバモイル化されたことが確認できた。
製造例8 本発明化合物(ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]:PUEM 107 )の製造
上記製造例3で製造したm(重合度)が107であるポリ[2-アミノエチルメタクリレート]を用いて、カルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]を製造した。
上記製造例3で製造したm(重合度)が107であるポリ[2-アミノエチルメタクリレート]を用いて、カルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]を製造した。
(式中、mは107、m1+m2=m(107)を意味する。)
具体的には、各種PAEM 200mgを、スクリュー管ビンに入れ、1M イミダゾール塩酸緩衝液(pH6.0)5 mlに溶解し、50℃に加熱し、これにシアン酸カリウム90.6 mg(PAEMのアミノ基1モルに対して0.92モル(0.92eq))を水に溶解した液を適下した。これを50℃で24時間、撹拌した。反応終了後、透析膜(MWCO:3,500)を用いて、室温で水(2回)、1%TFA水溶液(1回)、及び水(2回)に対して透析して、副生した塩化カリウムを除き、凍結乾燥を行った。
具体的には、各種PAEM 200mgを、スクリュー管ビンに入れ、1M イミダゾール塩酸緩衝液(pH6.0)5 mlに溶解し、50℃に加熱し、これにシアン酸カリウム90.6 mg(PAEMのアミノ基1モルに対して0.92モル(0.92eq))を水に溶解した液を適下した。これを50℃で24時間、撹拌した。反応終了後、透析膜(MWCO:3,500)を用いて、室温で水(2回)、1%TFA水溶液(1回)、及び水(2回)に対して透析して、副生した塩化カリウムを除き、凍結乾燥を行った。
実験例1
製造例6で調製したカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM107)を、生理的緩衝液(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl in water)に1mg/ml濃度になるように溶解した。次いで、このPUEM107溶液をそれぞれ石英セルに入れ、溶液温度を70〜5℃の範囲で1分当たり1℃ずつ降下させながら変化させ、その間の溶液の500nm波長における透過率(%)を紫外可視分光光度計によって測定した。なお、溶液の透過率%は下式から算出した。
製造例6で調製したカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM107)を、生理的緩衝液(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl in water)に1mg/ml濃度になるように溶解した。次いで、このPUEM107溶液をそれぞれ石英セルに入れ、溶液温度を70〜5℃の範囲で1分当たり1℃ずつ降下させながら変化させ、その間の溶液の500nm波長における透過率(%)を紫外可視分光光度計によって測定した。なお、溶液の透過率%は下式から算出した。
その結果、PUEM107は、生理学的低塩濃度の水溶液中で、約28℃(相転移温度)を境界にしてそれよりも低い温度域では不溶化し、それよりも高い温度域では可溶化すること、つまり高温溶解型(上限臨界共溶温度型)の温度感応性高分子化合物であることが確認された。またこの相転移はシャープで可逆的であった。
また、PUEM107溶液について、溶液温度を70〜5℃の範囲で1分当たり1℃ずつ降下させ、次いで5〜70℃の範囲で1分当たり1℃ずつ上昇させることを3回繰り返し(Run 1〜3)、その間の溶液の500nm波長における透過率(%)を紫外可視分光光度計によって測定した。結果を図8に示す。これからわかるように、温度の昇降を3回連続繰り返しても相転移温度に有意な変化は認められなかった。この結果から、本発明のカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート]は安定な化合物であることがわかる。
実験例2 濃度依存性
製造例6で調製したカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM107)について、各ポリマー濃度が相転移温度に対する影響を評価した。
製造例6で調製したカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM107)について、各ポリマー濃度が相転移温度に対する影響を評価した。
各種のPUEM107の濃度を0.25〜5 mg/mLの範囲で変えて、相転移温度(℃)を測定した。具体的には、PUEM107を、生理的緩衝液(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl)に、0.25〜5 mg/mLの濃度になるように溶解し、かかる溶液を70℃から5℃までの範囲で、1℃/分の速度で温度を下げながら、500nmにおける吸光度をUV-VIS分光光度計(吸光光度計)で測定し、当該吸光度から実験例1の方法に従って透過率%を求めた。0.25〜5mg/mL濃度のPUEM107について得られた透過率に基づいて、透過率100%の状態から降温させて透過率が減少し始める温度を相転移温度として決定した。
結果を図9に示す。図9(A)において、横軸は相転移温度(℃)、縦軸は透過率%(波長500nm)を示す。また図9(B)は、PUEM107の結果(図9(A))から、相転移温度(℃)とPUEM107の濃度との関係を示した図であり、横軸はPUEM107の濃度(mg/mL)を、縦軸は相転移温度(℃)を示す。この結果から、0.25〜5mg/mL濃度のPUEM107は、生理的緩衝液(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl)条件下、各PUEMの濃度が上昇するに伴い、相転移温度が上昇することがわかる。またこの結果から、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートを有効成分とする温度感応性材料によれば、その濃度に応じて相転移温度を調整制御することができることがわかる。
この結果からわかるように、PUEM107(1mg/mL)は、生理的条件(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl)下で、〜35℃の範囲に相転移温度を有する高温溶解型の高分子化合物である。
実験例3
1M尿素存在下で、カルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM1、PUEM107、PUEM851)(各々1mg/ml及び5mg/ml)の相転移温度を調べた。
1M尿素存在下で、カルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM1、PUEM107、PUEM851)(各々1mg/ml及び5mg/ml)の相転移温度を調べた。
具体的には、各種のカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM1、PUEM107、PUEM851)を、1Mの尿素を含む緩衝液(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl+1M Urea)に、1mg/ml濃度、及び5mg/ml濃度になるように各々溶解した。次いで、かかる溶液を石英セルに入れ、溶液温度を70℃から5℃までの範囲で、1℃/分の速度で温度を下げながら、500nmにおける吸光度をUV-VIS分光光度計(吸光光度計)で測定し、実験例1と同様にして当該吸光度から透過率%を求めた。
結果を図10に示す。図10に示すように、PUEM851(1mg/ml)及びPUEM107(5mg/ml)は、1M 尿素含有緩衝液中で、それぞれ51℃及び58℃(相転移温度)を境界にしてそれよりも低い温度域では不溶化し、それよりも高い温度域では可溶化すること、つまり高温溶解型(上限臨界共溶温度型)の感温性高分子化合物であることが確認された。またこの相転移はシャープで可逆的であった。PUEM107(5mg/ml)も、生理学的低塩濃度の水溶液中で、9.5℃(相転移温度)を境界にしてそれよりも低い温度域では不溶化し、それよりも高い温度域では可溶化すること、つまり高温溶解型(上限臨界共溶温度型)の感温性高分子化合物であることが確認された。またこの相転移はシャープで可逆的であった。
実験例4
製造例6及び8で調製したカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM107(1.5eq)、PUEM107(0.92eq))を、それぞれ生理的緩衝液(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl in water)に1mg/ml濃度になるように溶解した。次いで、これらのPUEM107溶液をそれぞれ石英セルに入れ、溶液温度を70〜5℃の範囲で1分当たり1℃ずつ降下させながら変化させ、その間の溶液の500nm波長における透過率(%)を紫外可視分光光度計によって測定した。
製造例6及び8で調製したカルバモイル化ポリ[2-アミノエチルメタクリレート](PUEM107(1.5eq)、PUEM107(0.92eq))を、それぞれ生理的緩衝液(10mM Hepes-NaOH (pH7.5)+150mM NaCl in water)に1mg/ml濃度になるように溶解した。次いで、これらのPUEM107溶液をそれぞれ石英セルに入れ、溶液温度を70〜5℃の範囲で1分当たり1℃ずつ降下させながら変化させ、その間の溶液の500nm波長における透過率(%)を紫外可視分光光度計によって測定した。
結果を図11に示す。図11から分かるように、PUEM107(1.5eq)及びPUEM107(0.92eq)は、生理学的低塩濃度の水溶液中で、それぞれ約28℃及び約32℃(相転移温度)を境界にしてそれよりも低い温度域では不溶化し、それよりも高い温度域では可溶化すること、つまり高温溶解型(上限臨界共溶温度型)の温度感応性高分子化合物であることが確認された。またこの相転移はシャープで可逆的であった。
以上の実験結果から、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート若しくはその塩、またはこれを有効成分とする温度感応性材料によれば、例えば、系の温度を変化できない場合でも、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート若しくはその塩の濃度やその分子量を変えることで相分離させることができることがわかる。これらのことから、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート若しくはその塩によれば、例えば、細胞やタンパク質などの生物材料や生理活性物質のように高温で失活または変性する物質を、生理学的な低温条件で活性を維持しながら、分離(バイオセパレーション)、捕捉または濃縮することが可能である。また本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩は上記相転移温度以上にすることで可逆的に可溶化するため、それよりも低い温度条件下で捕捉または濃縮した物質は、その相転移温度以上に加温することで、当該高分子化合物から離脱させて回収することも可能である。すなわち、本発明のカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩は、バイオセパレーションの材料(分離・濃縮剤)として有効に利用することができる。
Claims (8)
- 一般式(I):
で示される、アミノアルキルアクリレート基及び/またはアミノアルキルメタクリレート基(アミノアルキル(メタ)アクリレート基)が重合してなる高分子化合物またはその塩において、当該アミノアルキル(メタ)アクリレート基の全てまたは少なくとも3割が、下記一般式(II);
で示される、側鎖にカルバモイル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート基で置換されてなる高分子化合物(本発明化合物、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート)またはその塩。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を有効成分とする、温度感応性組成物。
- 下記の工程を有する水性2相分配法:
(1)被分離物を含む試料及び請求項1乃至3のいずれかに記載するカルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩を、生理的に許容される溶液中に共存させる工程、及び
(2)上記溶液の温度を、カルバモイル化ポリアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその塩の相転移温度より高い温度から低い温度にすることで、上記溶液を相分離させる工程。 - さらに下記の(3)の工程、または(3)と(4)の工程を有する、請求項7に記載する水性2相分配法:
(3)(2)の相分離工程によって相分離された溶液について、被分離物が分配された相を、非分配相から分離し回収する工程、
(4)上記(3)の工程により分離回収した被分離物分配相から、被分離物を回収する工程。
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