以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)であるカメラシステムについて、図面に基づいて説明する。
[カメラシステム1の構成]
図1は実施形態に係るカメラシステム1の概略の構成を示した模式図である。カメラシステム1は複数のカメラ2(2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H)、照射器3、制御装置4、表示部5からなる。図1には照射器3及び表示部5を携帯した作業者10が監視空間内の床面(基準面11)を照射して床面上に光像を形成している様子が示され、また、床面には物体12が設置されている。
本実施形態においては光像の重心が照射点13である。作業者10は監視空間内を移動して各所に照射点13を設置する。カメラ2は照射点13を撮影して、制御装置4は撮影された画像から照射点13を検出して、カメラ2の校正や物体12の3次元計測を行う。また制御装置4は、照射点13の設置が要求される場所である要求位置(照射要求位置)に、検出されやすい照射点13を形成可能な光源位置(推奨光源位置)を表示部5に出力する。作業者10は表示された立ち位置から照射を行うことにより失敗を減じて効率良く作業を行うことが可能である。
カメラ2は監視カメラであり、各カメラ2は制御装置4に接続される。各カメラ2は少なくとも他の1台のカメラとの間に共通視野を設けて連鎖配置され、複数のカメラ2の視野の和が監視空間となる。カメラ2は作業者10と共に移動する照射点13を所定時間おきに撮影し、撮影した画像を順次、制御装置4に出力する。
図1に示す例ではカメラシステム1には8台のカメラ2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2Hが配置され、制御装置4はそれらカメラにそれぞれA,B,C,…,HというカメラIDを付与して管理する。複数のカメラ2はそれぞれ光軸を鉛直下方へ向けた姿勢で天井に格子状に配置される。図2は監視空間20の模式的な平面図であり、基準面11内での物体12の位置、及び8台のカメラ2(2A〜2H)の配置を「☆」で示している。カメラ2の間隔は、当該カメラの画角を考慮して、隣り合うカメラ同士が共通視野を有するよう設定されている。この例では、カメラ2Aが少なくともカメラ2Bと共通視野を有し、カメラ2Bが少なくともカメラ2A,2Cと共通視野を有し、カメラ2Cが少なくともカメラ2B,2D,2G,2Hと共通視野を有し、カメラ2Dが少なくともカメラ2C,2G,2Hと共通視野を有し、カメラ2Eが少なくともカメラ2Fと共通視野を有し、カメラ2Fが少なくともカメラ2E,2Gと共通視野を有し、カメラ2Gが少なくともカメラ2C,2D,2F,2Hと共通視野を有し、カメラ2Hが少なくともカメラ2C,2D,2Gと共通視野を有する。同図では、カメラ2Bの視野を100bで示し、カメラ2Cの視野を100cで示している。その他のカメラ2の視野は図示を省略している。また、領域200はカメラ2Bの視野100bとカメラ2Cの視野100cとの共通視野を示している。なお、カメラ2の台数は2台以上であれば任意であり、またカメラ2の位置・姿勢は少なくとも共通視野が連鎖する範囲で任意である。
照射器3はスポット光を出力する光源であり、例えば、レーザーポインタやコリメートLEDライトなどを用いることができる。照射器3は作業者10により携帯され、作業者10の操作により基準面11あるいは什器等の物体12に光を照射する。この照射により、基準面11あるいは物体12の表面に照射点13が設置される。ちなみに、作業者10は、カメラ2の位置・姿勢の校正作業においては共通視野における基準面11を照射し、物体12の3次元計測作業では共通視野内に存在する物体12を照射する。照射器3は免許不要で簡単に入手・利用可能なものが好適である。
制御装置4は各カメラ2とイーサネット(登録商標)等のLANあるいは同軸ケーブル等の配線で接続される。また、表示部5とはブルートゥース等の無線回線で接続される。制御装置4はカメラ2が撮影した画像を取得して当該画像から照射点13を検出する。制御装置4は要求位置における照射点13の検出を妨げない作業者立ち位置を算出し、要求位置と作業者立ち位置とを含めた情報を表示部5に出力する。また検出した照射点13を利用してカメラ2の校正または物体12の計測を行う。
表示部5は無線通信インターフェースを備え制御装置4と無線回線で接続される。表示部5は液晶タッチパネルディスプレイ等の画像表示装置と演算装置とからなる表示手段を備え、制御装置4から入力された情報を視認可能に表示する。
図3は制御装置4の概略の構成を示したブロック図である。制御装置4は、画像取得部40、記憶部41、画像処理部42及び表示通信部(出力部)43からなる。
画像取得部40はカメラ通信部400と同期制御部401とからなり、各カメラ2からの画像を同期させて画像処理部42に出力する。
カメラ通信部400はカメラ2と通信して各カメラ2が撮影した画像を順次受信する通信インターフェースであり、受信した画像に当該画像を撮影したカメラ2のカメラIDを付与して同期制御部401に出力する。ここで、カメラ2がアナログカメラであれば予め設定した接続端子との対応関係からカメラIDを特定でき、IPカメラであれば予め設定した送信元アドレスとの対応関係からカメラIDを特定できる。
同期制御部401はカメラ通信部400が受信した各カメラ2からの画像の撮影時刻を同期させる。具体的には各カメラ2が基準周期よりも十分に短い撮影周期にて画像を撮影及び送信し、同期制御部401は、同時とみなせる程度に設定された許容時間差未満で受信した画像を同期がとれている同時撮影画像とする。同期制御部401は、基準周期ごとに同時撮影画像を抽出し、同時撮影画像どうしに共通のフレーム番号を付与して画像処理部42に出力する。同期制御部401は基準周期ごとに同時撮影画像を抽出するために、少なくとも基準周期の時間だけ各カメラ2からの画像を蓄積するバッファ(不図示)と、同時を判定するために時刻情報を生成する計時手段(不図示)とを備える。基準周期は例えば3fps(frame per second)、撮影周期は例えば15fps、許容時間差は例えば66ms(mili second)とすることができる。なお、同期制御部401から各カメラ2に基準周期ごとに同期パルスを出力して撮影タイミングを直接コントロールしてもよい。
記憶部41はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置である。記憶部41は各種パラメータ、画像処理部42のプログラム等を記憶し、画像処理部42との間でこれらの情報を入出力する。各種パラメータには、カメラパラメータ410、照射要求情報411、照射限界値412、照射点情報413及び物体計測情報414が含まれる。
カメラパラメータ410は各カメラ2の内部パラメータ及び外部パラメータであり、カメラ2のカメラIDと対応付けられている。図4はカメラパラメータ410のデータ構成をテーブル形式で示す模式図である。
内部パラメータは焦点距離、レンズの光学中心位置を含む。図4において例えば、カメラ2Aの焦点距離はfA、レンズの光学中心位置はcAと表記している。焦点距離及びレンズの光学中心位置は予め正確な値が設定され、カメラ2の校正作業にて変化しない。
外部パラメータは監視空間におけるカメラ2の位置・姿勢の情報を少なくとも含んでおり、具体的には複数のカメラ2に共通する共通座標系(ワールド座標系)で表したカメラ2の設置高、回転行列、並進ベクトル、撮影平面の法線ベクトル、カメラ間距離を含む。
ここで、ワールド座標系は監視空間を模した右手直交座標系XYZであり、本実施形態では、Z軸を鉛直上向きに設定し、基準面である床面を高さZ=0とし、基準面におけるカメラAの鉛直下の点を座標原点とする。また、カメラAの画像の水平方向、垂直方向を撮影平面のx軸、y軸とし、当該x軸、y軸を基準面に投影した軸をそれぞれX軸、Y軸とする。
例えば、カメラ2Bの回転行列RBはカメラ2Bの光軸を中心とした回転を定義する。撮影平面の法線ベクトルnBはカメラ2Bの光軸の向きを定義する。また、並進ベクトルはXY面内での2つのカメラ2の相対的な位置関係を定義する2次元ベクトルである。本実施形態では並進ベクトルはカメラ2Aの位置を起点として定義され、例えば、カメラ2Bの並進ベクトルtBはカメラ2A,2BそれぞれのXY面内での位置を起点、終点とする。カメラ間距離は基準とするカメラ2からの或るカメラ2の距離であり、両カメラ2のXY面内での距離である。本実施形態ではカメラ間距離はカメラ2Aを基準として定義される。例えば、図4においてカメラ間距離dABはカメラ2A,2B間の距離を示している。なお、カメラ間距離はカメラ2の3次元座標間の距離としてもよい。
これら外部パラメータのうち、設置高は予め正確な値が設定され、カメラ2の校正作業にて変化しない。回転行列及び撮影平面の法線ベクトルは、設置計画における値である鉛直下向きであることを示す値が初期値として予め設定され、カメラ2の校正作業の対象とされる。並進ベクトル及びカメラ間距離については初期値は設定せず、カメラ2の校正作業にて設定される。
照射要求情報411は、校正や3次元計測のために作業者10に対して照射点13の設置を要求する必要がある監視空間における位置である要求位置と、当該要求位置を同時撮影することが可能なカメラ対とを対応させた情報を含む。照射要求情報411には後述する要求設定部422により、要求位置を表す座標データがカメラ対のカメラIDと対応付けて設定される。要求位置は点または線とすることもできるが領域とするのがよい。要求位置を領域とすることで、カメラシステム1から作業者10への要求は当該領域内の任意位置に照射点13を設置する要求となる。これにより作業者10は照射する的が大きくなるため負担が軽減される。また領域とすることで、特定の要求位置の一部が明る過ぎるときに当該一部を除く残りの部分を当該要求位置として存続させることができる。そこで本実施形態では要求位置を領域とし、以降、各要求位置の領域をエリアとも呼ぶ。後の処理の説明で用いる図10は照射要求情報411のデータ構成を模式的に示しており、同図において要求位置を示す「A5」等の記号は後述するように領域を示すものである。また、照射要求情報411は要求位置への照射点13の設置要件を規定する要求条件を含む。
照射限界値412は照射器3の特性を考慮して事前に設定された照射限界輝度値、及び照射限界距離値である。明るすぎる場所を照射した場合、照射点13と背景の間に十分な輝度差が得られず、照射点13を検出できない可能性が高い。照射限界輝度値は、要求位置が照射点13を検出できないほど明るすぎるか否かを判定するためのしきい値である。また光源から遠すぎる場所も、光像の径が広がることによって単位面積あたりの輝度が低下してしまい、照射点13を検出できない可能性が高い。照射距離限界値は、要求位置が照射点13を検出できないほど遠いか否かを判定するためのしきい値である。
照射点情報413は後述する照射点検出部420により生成され、概略校正部421、精密校正部424及び物体計測部425が利用する。照射点情報413は基準周期で同期して撮影された複数のカメラ2の撮影画像から検出された照射点13の情報であり、撮影画像にて検出された照射点13の像(照射点像)の検出位置と、当該照射点像を検出した画像に付与されていたカメラID及びフレーム番号とが対応付けられている。後の処理の説明で用いる図9は照射点情報413のデータ構成を模式的に示しており、同図において検出位置を示す(57,90)等は撮影画像における照射点像のx座標とy座標との組を表している。
物体計測情報414は監視空間に存在する物体12の3次元形状を計測して得られた情報であり、物体計測部425が照射点情報413を基に生成する。物体計測情報414はカメラシステム1が監視空間内の人物を検出したり追跡したりするときに背景情報として利用される。
連鎖判定テーブル415は、後述する精密校正処理の進捗状況の管理に用いられる情報であり、後の処理の説明で用いる図11に示すように、精密校正の対象となるカメラ対と精密校正の完了/未了とが対応付けられたデータ構成を有する。
画像処理部42はCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置を用いて構成され、記憶部41からプログラムを読み出して実行することにより照射点検出部420、概略校正部421、要求設定部422、推奨光源位置算出部423、精密校正部424、物体計測部425等として機能する。
照射点検出部420はカメラ2が撮影した画像から照射点13を検出する。具体的には、各カメラ2が基準周期で撮影した画像にて照射点像の検出処理が行われ、各照射点像の検出位置を、当該照射点像を検出した画像に付与されていたカメラID及びフレーム番号と対応付けて記憶部41の照射点情報413に記憶させる。検出処理は、背景差分やフレーム間差分にて差分領域を抽出し、抽出した差分領域にラベリング処理を施し、照射器3の光像の大きさに基づき予め設定された大きさ範囲の領域を光像として選別し、選別した光像の重心を照射点13として検出する。上記大きさ範囲について制限を設けることで作業者10に起因する差分領域が除外される。
ここで、複数のカメラ2の共通視野に設置された照射点13は基本的には当該複数のカメラ2それぞれにより同時に撮影され、また、作業者10が一時点に設置する照射点13は1つである。よって、照射点情報413にて同一のフレーム番号に対応付けられた照射点13を検索すれば共通視野を有したカメラ対を検出できる。照射点検出部420は照射点情報413から、フレーム番号が同一である照射点ペアを抽出し、抽出した照射点13のカメラIDを共通視野を有するカメラ対として照射要求情報411に記憶させる。
本実施形態においてカメラ2の校正作業はおおまかな校正(概略校正)とより精度の高い校正(精密校正)との2段階で行われる。概略校正処理は概略校正部421によって行われ、精密校正処理は精密校正部424によって行われる。概略校正部421及び精密校正部424は、照射点検出部420により生成された照射点情報413に基づいてそれぞれの校正処理を行う。ここで、精密校正部424は概略校正部421よりも多い要求位置での照射点13を用いることで、概略校正より精度の高い校正を行う。
概略校正部421及び精密校正部424は、照射点情報413から、同時撮影画像にて共通に検出された照射点像を抽出して、それら照射点像が監視空間における同一位置に対応するとの拘束条件を適用してカメラ2の位置・姿勢を算出し、当該位置・姿勢で各カメラ2のカメラパラメータ410を更新する。具体的には、校正対象とするカメラ対にて検出された照射点像の位置をカメラ2の内部パラメータで歪み補正し、その照射点像の検出位置とカメラ2の設置高とを利用してホモグラフィ行列を導出する。そして、カメラ対ごとのホモグラフィ行列から当該カメラ対をなす各カメラの回転行列、並進ベクトル、撮影平面の法線ベクトル、カメラ間距離を算出し、これらを共通座標系に変換して各カメラ2の位置・姿勢を求める。ホモグラフィ行列を使う位置・姿勢の求め方は「平面シーンの最適三角測量」情報処理学会研究報告.CVIM、2010-CVIM-171(4),1-8,2010-08-11)などにより公知である。また、ホモグラフィ行列を使う方法の他にもエピポーラ幾何を基礎とする各種校正方法を適用可能である。
物体計測部425は照射点検出部420により同時撮影画像から共通に検出された照射点像が監視空間における同一位置に対応するとの拘束条件を適用して、共通視野に存在する物体12の3次元位置を計測する。物体計測部425による3次元計測機能は、精密校正部424が精密校正処理を終えた後に利用される。すなわちカメラの精密位置・姿勢が記憶部41のカメラパラメータ410に記憶されている状態で3次元計測処理(物体計測処理)は実行される。
具体的には、物体計測部425は、カメラパラメータ410により定まるカメラ対の位置・姿勢、及び照射点情報413に記憶されている当該カメラ対が撮影した照射点13の検出位置に三角測量の原理を適用して各照射点13の3次元位置を導出する。また物体計測部425は、照射点13のうち対応する要求位置が共通する複数の照射点13を同一平面上の点とみなして要求位置ごとに当該平面を導出する。さらに物体計測部425は、導出した平面同士の接線を導出し、当該接線を各平面の辺として設定する。なお、監視空間は基準面(床面)、カメラ設置高と同じ高さを有する仮想天井、有限範囲のXY座標で規定した仮想壁からなる立体とし、接線は基準面、仮想天井、仮想壁との間でも導出する。
物体計測部425は、辺が導出されて輪郭が定義された各平面のデータを物体12の表面を表す3次元形状データとして記憶部41の物体計測情報414に記憶させる。
上述のように概略校正処理、精密校正処理及び物体計測処理は照射点検出部420により検出された照射点13を用いる。要求設定部(要求位置設定部)422は照射点13の設置が要求される複数の要求位置をカメラ2ごとに共通視野内に設定する。具体的には要求設定部422は上述した照射要求情報411を生成し記憶部41に記憶させる。また、要求設定部422は要求情報411を記憶させた後に基準点情報413と照射要求情報411とを逐次参照して、照射点検出部420が共通視野内の各要求位置に存在する照射点13を検出したか否かを確認し、照射点13を検出した場合にのみ当該照射点13が撮影された要求位置を記憶部41から削除する。なお、各処理における要求位置の設定基準は異なり、以下、それぞれについて説明する。
(1)概略校正処理における要求位置
共通視野を有するカメラ対の校正処理(概略校正処理及び精密校正処理)において当該共通視野の基準面から複数の照射点13の検出が必要である。本実施形態では上述したように、各カメラ対にホモグラフィ行列を用いた校正を適用する。この場合、カメラ対ごとに同一直線上にない4個以上の照射点13が同時撮影画像から検出されること、また、校正の精度を確保する上でこれらの照射点13は分散していることが望ましい。このことから、対をなす2つのカメラ2で合計8個以上の照射点13の検出が要求される。そこで、要求設定部422は各カメラ2の画像を区分した区分領域を単位として複数の要求位置を設定する。好適な区分の仕方の例は、カメラ2の光軸と撮影平面との交点を中心として画像を放射状に所定角度ごとに区分するというものである。
さらに、上記放射状の複数エリアとは別に、カメラ2の画像領域のうち当該カメラ2の光軸と撮影平面との交点が内部に位置した部分を1エリアとして追加設定する区分の仕方が好適である。これにより、放射状の区分の中心部において複数の放射状エリアの密集を回避でき、中心部の狭い領域にて集中して照射点13が検出される事態を排除できる。つまり、検出される照射点13の分散の度合が低くなることを防止でき、校正の精度を確保できる。そこで、本実施形態では、要求設定部422は、各カメラ2の鉛直下近傍に相当する円形の1エリアと、その外側に残るエリアを45度刻みで放射状に区分した8エリアとからなる9エリアを要求位置として設定する。
図5はこのように設定された要求位置を示す模式図であり、同図はカメラ2Bとカメラ2Cからなるカメラ対に設定する要求位置の例を示している。図5(a),(b)はそれぞれ図2に平面図で示す監視空間20に配置されたカメラ2B,2Cで撮影される画像領域21b,21cを示している。ちなみに、監視空間20のうち画像領域21b,21cに映る範囲は図2に示す監視空間20の平面図ではそれぞれカメラ2B,2Cの視野100b,100cで表される。図5(a)に示すカメラ2Bの画像領域21bには要求位置B1〜B9が示されており、図5(b)に示すカメラ2Cの画像領域21cには要求位置C1〜C9が示されている。具体的には、カメラ2Bの鉛直下近傍に相当する円形の1エリアとして基準面11にて半径RとなるエリアB1を画像領域21bに設定し、カメラ2B及び2Cそれぞれの鉛直下を結ぶ線を0度として45度刻みでエリアB1の周囲の画像領域を放射状に8区分して順にエリアB2〜エリアB9を設定する。同様にカメラ2Cに関して円形の1エリアであるエリアC1とその周囲を放射状に区分したエリアC2〜C9を設定する。
なお、中心部の円形エリアは放射状エリアを分散させる目的で設定するものであり、その大きさは当該目的を達成できるように定められる。また当該目的から、中心部のエリアは円形に限らず、例えば四角形などの多角形とすることもできる。
要求設定部422は各カメラ2について、記憶部41からカメラパラメータ410の初期値を読み出してこれを基に上述のカメラ2の画像領域の区分を行い、概略校正処理における要求位置として9エリアを設定する。そして、カメラ対のカメラ2ごとに上記9エリアのうちいずれか4エリアで照射点13(照射点像)が検出され、カメラ対では合計8エリアにて照射点13(照射点像)が検出されることを要求条件として設定する。なお、1エリアに2個以上の検出は許容する。
画像領域における要求位置は放射状の区分に限らず、ブロック状(格子状)の区分によっても要求位置を画像領域内にて分散させることができる。
(2)精密校正処理における要求位置
上記(1)にて校正処理として一般的に述べた説明は概略校正処理及び精密校正処理に共通であり、本実施形態での要求設定部422は精密校正処理においても上記9エリアを要求位置として設定する。要求設定部422は各カメラ2について、記憶部41から概略校正されたカメラパラメータ410を読み出してこれを基に上述のカメラ2の画像領域の区分を行い、精密校正処理における要求位置として9エリアを設定する。そして、カメラ対のカメラ2ごとに上記9エリアの全てで照射点13(照射点像)が検出され、カメラ対では合計18エリアにて照射点13(照射点像)が検出されることを要求条件として設定する。なお、1エリアに2個以上の検出は許容する。
すなわち、精密校正処理における要求位置が概略校正処理における要求位置と相違する点は、精密校正処理における要求位置が要求する照射点13の数が概略校正処理におけるより多い点、及びエリアの設定に用いるカメラパラメータ410が概略校正では初期値であるのに対し、精密校正では概略校正された値である点である。
(3)計測処理における要求位置
計測処理における要求位置は、物体12の3次元計測のために必要な照射点13の検出が要求される位置であり、カメラ2のそれぞれが撮影した画像を基に生成される。
本実施形態では、物体表面が平面の集まりであると仮定し、要求設定部422は物体表面を構成する平面と推定される領域を要求位置に設定する。また平面を特定するために、要求設定部422は当該領域ごとに同一直線上にない3個以上の照射点13の検出を要求条件として設定する。
具体的には、要求設定部422は各カメラ2の画像を互いに色が類似する隣接画素のまとまりに分割して分割領域それぞれを要求位置に設定する。例えば、画素の色と画素の位置とをパラメータとしてクラスタリングを行うことにより画像を分割することができる。
別の実施形態では、要求設定部422は各カメラ2の画像にSobelフィルタなどによるフィルタリングを施してエッジ画像を生成し、エッジ画像をそれぞれがエッジに囲まれた閉領域に分割して、分割領域それぞれを要求位置に設定することができる。
ここで、作業者10が照射を行っても照射点検出部420が照射点を検出し損ねるときがある。図6は照射点を検出し損ねるときの例を示す模式図である。図6(a)は窓から差し込む直射日光などにより共通視野に明る過ぎる領域14が生じている場合を示している。この場合、この領域14に照射を行っても照射点15とその周囲の背景との間に有意な輝度差が生じないために当該照射点15を検出できない。
図6(b)は光源位置から照射点までの距離が離れ過ぎている場合を示している。この場合、光の減衰及び光像の径が大きくなることによる単位面積当たりの輝度低下により、照射点16とその周囲の背景との間に有意な輝度差が生じないために当該照射点16を検出できない。
またカメラから照射点までの距離が遠いときも光像が小さくなりすぎてノイズと区別できなくなり当該光像から照射点を検出できない。
さらには、光源位置から照射点までの距離が離れることによる輝度低下と共有視野が明るいこととが複合して検出し損ねることもある。この場合、検出し損ねを生じさせる輝度低下の度合いと明るさの度合いとの組み合わせは様々である。また明るさによる検出し損ねは背景の色そのものが明るいことによっても生じ得る。同様に、カメラから照射点までの距離が離れることによる光像サイズ低下と共通視野の明るさとが複合して検出し損ねる場合など、照射点の検出し損ねは上述した要因の2以上が複合して生じ得る。
これらの検出し損ねは、基本的には要求位置に近づいて照射を行うことにより改善されるが、多数のカメラ2が設置された状態で作業者10が全ての検出し損ねを把握するのは困難である。また、要求位置の1つ1つに近づいて照射を行うのは効率が悪い。
そこでカメラシステム1は次に説明する推奨光源位置算出部423により要求位置の照射に適した光源位置を算出して作業者10に提示する。つまり、どこから照射すれば確実かつ効率的かを作業者10に提示する。
推奨光源位置算出部423は、注目する要求位置から照射点13を検出するのに適した光源の位置である推奨光源位置を定める推奨光源位置決定部であり、基本的には複数の要求位置からの距離の和が最小となる位置を、当該複数の要求位置へ照射を行う際の推奨光源位置に定める。本実施形態では、精密校正処理または計測処理を行うカメラ対ごとに要求位置の照射に適した光源位置、特に複数の要求位置からの距離が平均的に近い光源位置を推奨光源位置として算出して撮影画像に要求位置及び推奨光源位置を重畳した合成画像を表示通信部43に出力する。
これにより1箇所から複数の要求位置に対して確実に照射点13を検出させることのできる光源位置を作業者10に提示できる。その結果、作業者10は当該光源位置から複数の要求位置を照射することによって、照射失敗の回数を減らしつつ効率的に照射点13を設置できるので、作業負担が格段に減少する。
推奨光源位置は複数の要求位置の重心として求めることができる。具体的には推奨光源位置算出部423は撮影画像上で複数の要求位置それぞれに含まれる画素の位置の重心(平均位置)を推奨光源位置として算出する。さらに各要求位置から光源位置までの距離を当該要求位置の明るさで重み付けて重心を算出することによって、作業負担をより減少させることが可能となる。具体的には、推奨光源位置算出部423は撮影画像における要求位置に含まれる画素の輝度値を抽出し、各画素の位置を当該画素の輝度値で重み付けて重心を算出する。重み付けには、暗いほど大きな重み付けを行うべき場合と、明るいほど大きな重み付けを行うべき場合の2種類がある。推奨光源位置の算出処理の内容については後に詳述する。
表示通信部43は制御装置4と表示部5との通信を行う通信インターフェースである。表示通信部43は、推奨光源位置算出部423から入力された要求位置の情報及び当該要求位置に対する推奨光源位置の情報を表示部5へ出力する出力部などとして機能する。
[カメラシステム1の校正処理における動作]
図7はカメラシステム1の校正処理における動作の概略を示すフロー図である。また、図8はカメラシステム1が校正処理にて行う推奨光源位置の提示処理の概略を示すフロー図である。図7及び図8を参照してカメラシステム1の校正処理における動作を説明する。
カメラ2が設置され制御装置4と表示部5とに電源が投入されると校正動作が始まる。起動直後のカメラパラメータ410は初期値であり概略校正以前の状態である。各カメラ2は自身の視野を順次撮影し、制御装置4に撮影画像を送信する。
制御装置4の画像取得部40は同時撮影画像を順次、制御装置4の画像処理部42に入力する。この状態にて作業者10は監視空間内を移動しながら照射器3により床面を照射する。
画像取得部40から画像処理部42に同時撮影画像が入力されるたびにステップS1からステップS14までの処理が繰り返される。以降、繰り返しの時間単位をフレームと呼ぶ。
画像処理部42は同時撮影画像を取得すると(S1)、照射点検出部420として動作し、各同時撮影画像に差分処理を施して当該同時撮影画像から照射点13(照射点像)を検出する(S2)。照射点検出部420は、検出した照射点13の画像上での座標に当該画像のカメラID及び当該画像のフレーム番号を対応付けて記憶部41の照射点情報413に記憶させる。
次に画像処理部42は、概略校正部421として動作し、新規カメラ対の検出を行う(S3)。すなわち概略校正部421は照射点情報413を検索して、フレーム番号が同一である照射点13に対応付けられたカメラIDの対をカメラ対として抽出し、カメラパラメータ410を参照して、抽出したカメラ対が精密校正対象に設定されていない新規カメラ対であるか否かを確認する。ここで検出されるカメラ対は視野の少なくとも一部を共有しているカメラである。なおフレーム番号が同一である照射点像の対が4つ以上であることを抽出の条件に加えても良い。
1以上の新規カメラ対を検出した場合(S3にて「YES」の場合)、画像処理部42は要求設定部422として動作し、当該各カメラ対に対する概略校正用の照射要求情報411を生成して記憶部41に記憶させる(S4)。具体的には、要求設定部422は新規カメラ対を構成する各カメラ2のカメラパラメータ410を読み出して当該カメラごとに9エリアを設定すると共に、当該カメラ対において照射点13が検出される要求位置の数を各カメラでいずれか4エリア、カメラ対で合計8エリアとする要求条件を設定する。
続いて要求設定部422は、新規カメラ対それぞれが概略校正用の要求条件を満たすか否かを確認する(S5)。具体的には、要求設定部422は新規カメラ対の照射点情報413と照射要求情報411とを参照して、当該カメラ対のカメラIDと対応付けられている照射点像の座標が属するエリア(要求位置)を削除し、残っている要求位置の数から既検出のエリアがカメラごとに4エリア以上、合計8エリア以上であるかを確認する。
新規カメラ対に要求条件を満たすカメラ対が含まれていた場合(S5にて「YES」の場合)、画像処理部42は概略校正部421として動作し当該カメラ対の照射点情報413を用いて概略校正を行い(S6)、校正結果である概略位置・姿勢の値をカメラパラメータ410に書き込んで当該カメラ対を精密校正対象に設定する(S7)。
新規カメラ対を精密校正対象に設定した場合、画像処理部42は要求設定部422として動作し、当該カメラ対に対する精密校正用の照射要求情報411を生成して記憶部41に記憶させる(S8)。すなわち要求設定部422は新規カメラ対を構成する各カメラ2のカメラパラメータ410を読み出して当該カメラごとに9エリアを設定すると共に、当該カメラ対において照射点13が検出される要求位置の数を各カメラで9エリア、カメラ対で合計18エリアとする要求条件を設定する。
ステップS8で設定されるエリアは概略校正されたカメラパラメータ410を用いて算出されるため、ステップS4で設定されるエリアよりも実際のカメラ2の位置・姿勢に適合したエリアとなっている。
新規カメラ対が検出されなかった場合(S3にて「NO」の場合)、画像処理部42は現フレームに対するステップS4〜S8の処理をスキップし、ステップS9へ進む。また新規カメラ対は検出されたが概略校正用の要求条件を満たさなかった場合(S5にて「NO」の場合)、画像処理部42は現フレームに対するステップS6〜S8の処理をスキップしステップS9に進む。
ここまでの処理により、作業者10が共通視野を4エリア以上照射したカメラ対が順次、画像処理部42によって精密校正対象にリストアップされ、精密校正対象の各カメラ対に対する照射要求情報411が設定される(S8)。
次に画像処理部42は要求設定部422として動作し、精密校正対象のカメラ対のうち精密校正が未了のカメラ対があるか確認し(S9)、未了のカメラ対がある場合には、ステップS2での照射点13の検出結果に基づいて要求位置を更新した上で(S10)、当該カメラ対が精密校正用の要求条件を満たしているか否かを確認する(S11)。具体的には要求設定部422は、カメラパラメータ410を参照して精密校正が未了のカメラ対の有無を確認し(S9)、精密校正未了カメラ対の照射点情報413と照射要求情報411とを参照して、当該カメラ対のカメラIDと対応付けられている照射点13の座標が属するエリア(要求位置)を削除した上で(S10)、残っている要求位置が0個になったか、すなわち照射点13が18エリアで検出されているかを確認する(S11)。
精密校正が未了のカメラ対に要求条件を満たすカメラ対が含まれていた場合(S11にて「YES」の場合)、画像処理部42は精密校正部424として動作し当該カメラ対の照射点情報413を用いて精密校正を行い(S13)、校正結果である精密位置・姿勢の値をカメラパラメータ410に書きこむと共に、当該カメラが精密校正済みであることを示す情報を連鎖判定テーブル415に書き込んで、全カメラの精密校正が完了したか否かを確認する(S14)。
ステップS14にて精密校正部424は、カメラパラメータ410を検索して精密校正済みであるカメラの数をカウントすると共に、連鎖判定テーブル415にて精密校正済みであるカメラ対の接続関係を確認し、カウントが全カメラの台数と一致し且つ孤立しているカメラ対が無ければ全カメラの精密校正が完了したと判定する。全カメラの精密校正が完了した場合(S14にて「YES」の場合)校正処理を終了する(S15)。ちなみに冗長な精密校正対象が設定されていれば精密校正未了カメラ対が残っていても校正完了となることがある。
一方、カウントが全カメラの台数より少ない場合または孤立しているカメラ対がある場合は、未完了であるとして処理をステップS1に戻して次フレームの次フレームの同時撮影画像に対する処理を行う(S14にて「NO」→S1)。
図9〜図11を参照して、要求条件が満たされた場合(S11にて「YES」の場合)の処理例を説明する。既に述べたように図9,図10,図11はそれぞれ照射点情報413、照射要求情報411及び連鎖判定テーブル415のデータ構成を模式的に表しており、連続する2フレーム間でのそれらの変化を示している。図9(a),図10(a),図11(a)はそれぞれ第41フレームでの状態を示しており、図9(b),図10(b),図11(b)はそれぞれ第42フレームでの状態を示している。
第41フレームでの照射点情報413には、照射点検出部420が第1〜41フレームでの撮影にて検出した照射点13の情報が記憶されている(図9(a))。第37フレームから第41フレームまではカメラBとCとの共通視野で照射点13が検出されている。
また、第41フレームまでの間に概略校正部421がカメラ対「A,B」、「A,C」、「B,C」及び「C,D」を概略校正し、その結果、連鎖判定テーブル415にはこれらカメラ対が精密校正対象に設定されたことが記録されている(図11(a))。さらに連鎖判定テーブル415には、カメラ対「A,B」については精密校正部424による精密校正が完了しており、他のカメラ対は精密校正が未了であることが記録されている(図11(a))。
第41フレームの時点で、要求設定部422がカメラ対「B,C」に対して当初要求位置として照射要求情報411に設定したエリアB1〜B9及びエリアC1〜C9の18エリアのうち、エリアB3及びC4の2エリアが要求位置として残っている(図10(a))。つまり、以降のフレームでエリアB3及びC4にて照射点13が検出されるとカメラ対「B,C」の精密校正が可能となる。なお、精密校正を完了したカメラ対「A,B」に関する要求位置は既に照射要求情報411から削除されている。
次いで第42フレームでは照射点検出部420がカメラB及びCの画像それぞれから新たに照射点像を検出し、照射点情報413にその検出結果が追記される(図9(b))。要求設定部422は、カメラB側で新たに検出された照射点像がエリアB3内であること、及びカメラC側で新たに検出された照射点像がエリアC4内であることを確認したので、カメラ対「B,C」の要求位置であったエリアB3及びエリアC4を照射要求情報411から削除した(ステップS10、図10(b))。この要求位置更新の結果、カメラ対「B,C」の精密校正に必要な要求位置全てにて照射点13が検出されたことが判定され(ステップS11にて「YES」判定)、精密校正部424はカメラ対「B,C」の照射点情報413を用いて精密校正を行い、精密校正が完了したことを連鎖判定テーブル415に記録した(ステップS13、図11(b))。
このカメラ対「B,C」の精密校正が完了した時点で、精密校正が完了しているカメラ対は「A,B」及び「B,C」の2組である(図11(b))。つまり、カメラID「A」,「B」,「C」の3つのカメラ2について精密校正が終わっている。ここで、カメラ「A」と「C」とはカメラ「B」を介して接続しており、これら3つのカメラ2は接続関係があることが連鎖判定テーブル415に基づいて判定される。
この時点でカメラID「D」〜「H」の5つのカメラ2が精密校正未了として残っているので、ステップS14ではまだ全校正完了とは判定されない。なお、連鎖判定テーブル415からカメラ「A」,「B」,「C」は接続関係にあることが判定できるため、連鎖判定テーブル415においてカメラ対「A,C」の精密校正が未了であるとの記録がされていても全校正完了が判定される。つまり、この例では全校正完了の判定に際して、カメラ対「A,C」の精密校正は全校正完了の必須条件とはならない。
ステップS9にて精密校正が未了のカメラ対がない場合には(S9にて「NO」の場合)、精密校正部424はステップS10〜S13をスキップしてステップS14の完了確認を行う。
また、ステップS11にて照射要求情報411を満たすカメラ対が無い場合には(S11にて「NO」の場合)、画像処理部42は推奨立ち位置算出部423として動作し、要求位置への照射点設置のために適した作業者10の立ち位置を算出して作業者10に提示する(S12)。
図8を参照して推奨光源位置の提示処理(S12)を説明する。
まず、推奨光源位置算出部423は、精密校正が未了であるカメラ対の中から表示部5に推奨光源位置を提示する提示カメラ対を1つ選定する(S20)。具体的には推奨光源位置算出部423は、1フレーム前に選定した提示カメラ対を選定することで提示のばたつきを抑制する。これにより作業者10が現在共通視野を照射しているカメラ対が選定されるので作業者10の無駄な移動を減じることができる。推奨光源位置算出部423は、次フレームでの選定に備えて、現フレームにて選定した提示カメラ対を記憶部41に記憶させておく。
一方、1フレーム前に選定した提示カメラ対から一定期間新たな照射点13が検出されないときは提示カメラ対を変更する。すなわち、この場合には推奨光源位置算出部423は照射点情報413を参照してフレーム番号が最新である照射点像に対応付けられたカメラIDの精密校正未了カメラ対を選定する。
次に推奨光源位置算出部423は、提示カメラ対の照射要求情報411を参照して、当該カメラ対を構成するカメラのうち要求位置が多い方のカメラを、推奨光源位置を提示する提示カメラに選定する(S21)。また、次フレームでの選定に備えて推奨光源位置算出部423は現フレームにて選定した提示カメラを記憶部41に記憶させておく。なお、要求位置が同数の場合は1フレーム前に選定した提示カメラを選定することで提示のばたつきを抑制する。要求位置の数と前回提示カメラの条件を課しても提示カメラ対の1つを提示カメラとして選定できないときはカメラIDが若い方のカメラを選定する。
続いて推奨光源位置算出部423は提示カメラの撮影画像において要求位置ごとに照射限界輝度値Ti以上である高輝度画素をカウントして所定数以上(例えば90%以上)が高輝度画素である要求位置の有無を確認する(S22)。
該当する要求位置が1つ以上あれば(S22にて「YES」の場合)、明るすぎて照射点13を検出することができない検出不能位置が存在するとして推奨光源位置算出部423は「遮光してください」とのメッセージを表示通信部43に出力し(S23)、処理を図7のステップS1へ戻す。
一方、検出不能位置が存在しなければ(S22にて「NO」の場合)、推奨光源位置算出部423は処理S24〜S29を行い合成画像を出力する。処理S24〜S29は図12〜図15に示す具体例を参照しつつ説明する。図12は各画素の輝度が低いほど大きく重み付けた加重平均位置を推奨光源位置とする場合におけるカメラ2B,2Cの画像領域22b,22cの例を示しており、図14は図12に対応する表示部5における表示画面の一例である。また、図13は各画素の輝度が高いほど大きく重み付けた加重平均位置を推奨光源位置とする場合におけるカメラ2B,2Cの画像領域25b,25cの例を示しており、図15は図13に対応する表示部5における表示画面の一例である。
検出不能位置が存在しない場合(S22にて「NO」の場合)、推奨光源位置算出部423は要求位置のうち互いに隣接する要求位置を統合し(S24)、統合後の要求位置の数をカウントする。
図12、図13の各画像領域では、輝度値の違いを3段階に表現しており、縦線領域、横線領域、白抜き領域の順に明るくなる。図12、図13の例では、白抜きは窓及び当該窓から差し込んだ光による高輝度画素であり、その高輝度画素の周辺はやや明るくなっていることが表現されている。×印は検出された照射点13を表しており、×印が存在しないエリアが要求位置となる。太線は要求位置を統合した統合エリアである。図12の例では提示カメラとするカメラ2Cの要求位置C1,C2,C3,C4,C5,C7,C8,C9が統合されて統合エリアのカウント値は1となり、図13の例では提示カメラとするカメラ2Cの要求位置C4,C8は統合されずカウント値は2となる。
図12の例のように、互いに隣接する要求位置が多い場合は作業の進捗を優先し、1つの光源位置からの照射によって多くの要求位置で確実に照射点13を検出できるように推奨光源位置を算出するのがよい。そこで推奨光源位置算出部423は、隣接する要求位置を統合して統合後の要求位置の数が1つであるか否かを判定し(S25)、要求位置が1つに統合された場合、つまり要求位置が互いに隣接し、連続した一体の領域をなす場合には(S25にて「YES」の場合)、要求位置それぞれに含まれる画素位置に当該各画素の輝度が低いほど大きく重み付けた加重平均位置を推奨光源位置として算出する(S26)。これにより、複数の要求位置から近く、且つ照射点13の検出が容易な暗めの場所に光源を誘導できるので作業効率が向上する。
具体的には、要求位置が1つに統合された場合(S25にて「YES」の場合)、推奨光源位置算出部423は統合された要求位置に含まれる画素のうち輝度値が照射限界輝度値Ti未満である各画素の画素位置P(xp,yp)に当該画素の輝度値I(xp,yp)が低いほど大きく重み付けた加重平均位置を次式により算出し、推奨光源位置Q(xq,yq)とする(S26)。
ここで、f(I)は実験を通じて予め設定された輝度Iの変域にて値域が正値である単調増加関数であり、Sは、P(xp,yp)の集合である。
図12の例では要求位置はカメラ2B,2Cいずれについても1つに統合されているが、カメラ2Cの方が要求位置が多い。そこで既に述べたようにカメラ2Cを提示カメラとし、推奨光源位置は、要求位置が多いカメラ2C側で求めている。実線の2重丸220が輝度による重み付けを行った加重平均位置で与えられる推奨光源位置である。ちなみに、点線の2重丸221は輝度による重み付けを行わなかった単純平均位置を示している。加重平均位置は単純平均位置と比べて高輝度画素やその周辺の明るい領域から離れている。
一方、図13のように互いに隣接する要求位置が少ない場合、すなわち複数の要求位置が孤立している場合は、単純平均した位置よりも明るい要求位置寄りに光源位置を誘導することで、明るい要求位置での照射点13の検出し損ねを減じるのがよい。そこで推奨光源位置算出部423は、隣接する要求位置を統合して統合後の要求位置が複数である場合、つまり要求位置が1つの統合されず離れた領域を形成する場合には(S25にて「NO」の場合)、要求位置それぞれに含まれる画素位置に当該各画素の輝度が高いほど大きく重み付けた加重平均位置を推奨光源位置として算出する(S27)。これにより、複数の要求位置から近く、且つ照射点13の検出が難しい明るめの場所寄りに光源を誘導できるので失敗を減じて作業効率が向上する。
具体的には、要求位置が1つに統合されなかった場合(S25にて「NO」の場合)、推奨光源位置算出部423は各要求位置に含まれる画素のうち輝度値が照射限界輝度値Ti未満である各画素の画素位置P(xp,yp)に当該画素の輝度値I(xp,yp)が高いほど大きく重み付けた加重平均位置を次式により算出し、推奨光源位置Q(xq,yq)とする(S27)。
ここで、g(I)は実験を通じて予め設定された輝度Iの変域にて値域が正値である単調増加関数であり、Sは、P(xp,yp)の集合である。
図13の例では、カメラ2Cの方がカメラ2Bより要求位置の数が多い。そこで既に述べたようにカメラ2Cを提示カメラとし、推奨光源位置は、要求位置が多いカメラ2C側で求めている。実線の2重丸250が輝度による重み付けを行った加重平均位置で与えられる推奨光源位置である。また、点線の2重丸251は輝度による重み付けを行わなかった単純平均位置を示している。加重平均位置は単純平均位置と比べて高輝度画素やその周辺の明るい領域に近づいている。
なお、ステップS25において、統合後の領域の数で場合分けする代わりに統合された要求位置の数で場合分けしてもよい。例えば3個以上の要求位置が統合されたか否かでステップS26とS27への場合分けを行う。
上述のように推奨光源位置は撮影画像上で複数の要求位置それぞれに含まれる画素位置の重心(加重平均位置)を推奨光源位置として算出する。ここで、照射限界輝度値を超える輝度の領域は照射点13が検出される可能性が極めて低いため作業者10が照射しても無駄な作業となる。そこで、推奨光源位置の算出に際して、撮影画像上で輝度が照射限界輝度値を超えている高輝度画素を平均位置算出の元データから除外することが好適である。これにより、輝度値が高いほど大きく重み付けた加重平均位置を算出する場合において、照射点13がその検出可能性が低い高輝度領域に誘導されることを回避して、作業者10の作業効率を上げることができる。また、輝度値が低いほど大きく重み付けた加重平均位置を算出する場合においては、照射点13はより暗めの場所に誘導され検出が容易となる。なお、照射限界輝度値を超えている高輝度画素を除外して平均位置算出を行う場合は、表示部5にて作業者10に提示する要求位置からも高輝度画素を除外する。
推奨光源位置算出部423は、要求位置から輝度値が照射限界輝度値Ti以上である高輝度画素を除き、これとステップS26またはS27にて算出した推奨光源位置及びメッセージを提示カメラの画像に重畳して合成画像を生成し(S28)、合成画像を表示通信部43に出力する(S29)。
合成画像を入力された表示通信部43は当該合成画像を表示部5に送信し、当該合成画像を受信した表示部5は当該合成画像をディスプレイに表示する。
前述した例では、図14や図15の合成画像が表示される。
図14、図15はそれぞれ図12、図13の結果に基づく表示部5における表示画面の例であり、推奨光源位置、要求位置及びメッセージをカメラ2Cによる撮影画像に合成した合成画像を模式的に示している。ちなみに、推奨光源位置23と要求位置24とは色分けなどにより識別容易なように表示することが好適であり、例えば、図14、図15では推奨光源位置23は赤色(横線領域)、要求位置24は緑色(斜線領域)で表示される。表示部5に出力される要求位置24は上述したように高輝度画素を除外したものとなっている。
こうして要求位置及び推奨光源位置が作業者10に提示され、作業者10は推奨光源位置から照射器3で要求位置を照射する。推奨光源位置から形成した照射点13はより確実に検出されるので、作業者10は要求位置から照射点13を検出できない失敗を回避して、少ない作業負担で校正作業を完了することが可能となる。さらに、ステップS28の合成にて推奨光源位置を撮影画像に重畳したことで実際に光源を設置する位置、または作業者10が照射器3を持って立つ位置を作業者10が判断できる。
推奨光源位置の提示を行うと、画像処理部42は処理を図7のステップS1へ戻して次フレームの同時撮影画像に対する処理を行う。
[カメラシステム1の3次元計測処理における動作]
校正処理を終えたカメラシステム1は監視空間を3次元計測する計測処理へと移行する。
図16はカメラシステム1の計測処理における動作の概略を示すフロー図である。図16を参照してカメラシステム1の計測処理における動作を説明する。
3次元計測処理の実行時において、上述の校正処理と同様、各カメラ2は自身の視野を順次撮影し、制御装置4に撮影画像を送信する。制御装置4の画像取得部40は同時撮影画像を順次、制御装置4の画像処理部42に入力する。この状態にて作業者10は監視空間内を移動しながら照射器3により監視空間に存在する什器等の物体を照射する。
画像処理部42は同時撮影画像を取得すると(S50)、要求設定部422として動作し、各画像を互いに色が類似する隣接画素のまとまりに分割して分割領域を生成し(S51)、各分割領域をそれぞれ3個以上の照射点13の検出を要求する要求位置とする照射要求情報411を生成して記憶部41に記憶させる(S52)。図17は照射要求情報411の設定例を示す画像領域の模式図である。図17はカメラ2B,2Cに対する照射要求情報411の例を示しており、画像領域26bに示すようにカメラ2Bに対しては、什器の面に要求位置b3,b4、壁の面に要求位置b1,b5、及び床面に要求位置b2がそれぞれ設定される。また、画像領域26cに示すようにカメラ2Cに対しては、什器の面に要求位置c2,c3,c4、壁の面に要求位置c5,c6、及び床面に要求位置c1がそれぞれ設定される。
照射要求情報411の生成後、画像処理部42は同時撮影画像が入力されるたびにステップS53〜S62の処理を繰り返す。
まず、画像処理部42は同時撮影画像を取得すると(S53)、照射点検出部420として動作し、各同時撮影画像に差分処理を施して当該同時撮影画像から照射点13を検出し、当該照射点13の画像上での座標に当該画像のカメラID及び当該画像のフレーム番号を対応付けて記憶部41の照射点情報413に記憶させる(S54)。
次に画像処理部42は要求設定部422として動作し、照射点情報413と照射要求情報411とを参照して3個以上の照射点13が検出された要求位置があるか否かを確認する(S55)。
該当する要求位置があれば(S55にて「YES」の場合)、画像処理部42は物体計測部425として動作し、当該要求位置にて検出された照射点13に三角測量の原理を適用して3次元計測を行い(S57)、当該要求位置である分割領域の平面を導出する(S58)。そして、導出した平面の情報を記憶部41の物体計測情報414に記憶させる(S59)。またこのとき要求設定部422は、3次元計測を行った要求位置を照射要求情報411から削除する。
一方、3個以上の照射点13が検出された要求位置がない場合(S55にて「NO」の場合)、画像処理部42は推奨光源位置算出部423として動作し、照射点13が3個未満である要求位置に対する推奨光源位置を提示する(S56)。ステップS56における推奨光源位置の提示処理は図8を用いて説明した処理と同じである。これにより、校正処理の場合と同様、要求位置及び推奨光源位置が作業者10に提示され、要求位置から照射点13を検出する作業の効率が向上する。なお、各要求位置に複数個の照射点13の検出を要求する計測処理では、表示部5の画面表示は、要求位置ごとに既検出の照射点13の個数が作業者10に分かるように行うこともできる。例えば、画面に要求位置のエリアの区画と当該エリアでの検出個数の数字を表示したり、エリアごとに検出個数に応じて色の濃さを変えるなどとしたりできる。これにより、作業者10には、要求位置として表示されていたエリアが要求位置ではなくなり表示部5に表示されなくなったことだけでなく、より詳細な作業進捗状況を提示でき、作業効率の向上を図れる。
ここで、計測処理においては照射点13の設置が困難な要求位置が含まれている場合がある。例えば、物体12の高さが高いときに、床面に立つ作業者10が物体12の上面である要求位置b3やc2に照射を行うことは困難である。このようなとき、作業者10が表示部5の提示画像内で設置困難な要求位置を指定して要求解除の入力を行う。ステップS60にて要求設定部422は要求解除入力を確認し、入力があれば該当要求位置を照射要求情報411から削除する(S60にて「YES」→S61)。一方、要求解除入力がない場合はステップS61はスキップする(S60にて「NO」の場合)。
続いて物体計測部425は、照射要求情報411を確認し(S62)、要求位置の情報が無くなっていれば計測処理を終了する(S62にて「YES」→S63)。一方、要求位置が残っていれば(S62にて「NO」)、画像処理部42は処理をステップS53に戻して次フレームの同時撮影画像に対する処理を行う。
[変形例]
(1)上述の実施形態では、照射点13を用いてカメラのXY座標及び光軸方向の概略校正値を設定する例を示したが、概略校正値としてカメラ配置に関する工事計画時の値を事前設定し、概略校正を省略してもよい。
(2)照射器3は上述したスポット光を出力するものに代えて、予め定めた十字パターンなどのパターン光を出力する光源でもよい。この場合、照射点検出部420は光像の重心に代えて十字パターン中の交点など、パターン中の所定形状点を照射点13として検出してもよい。
(3)上記実施形態の推奨光源位置の提示処理(S12)は、共通視野を有するカメラ対の一方を提示カメラとして選択し、当該提示カメラの要求位置への照射に好適な光源位置を算出する。この点に関し、カメラ対の両方のカメラの要求位置への照射に好適な光源位置を算出して提示してもよい。これにより、同時撮影画像にてカメラ対で共通に照射点13の検出を必要とする校正処理や3次元計測の作業の一層の効率化を図ることができる。
例えば、推奨光源位置算出部423は、提示カメラ対の双方のカメラそれぞれについて(1)式又は(3)式で推奨光源位置Qを算出し、さらに両カメラの推奨光源位置Qに基づいて表示部5に提示する推奨光源位置Qを算出する。具体的には、両カメラの推奨光源位置Qの中点、又は加重平均位置を提示することができる。加重平均を行う際には、各カメラにおける要求位置の数や要求位置に含まれる画素数を重みとすることができる。
(4)上記実施形態で述べたようにカメラ2の校正処理には一般的には、同一直線上にない4個以上の照射点13が同時撮影画像から検出されることを要する。しかし、カメラ2の位置・姿勢の自由度のうち一部が既知であり校正不要であるような場合には、校正処理に最低限必要とされる照射点13の検出個数は4個未満とすることもできる。
(5)上記実施形態では推奨光源位置の出力は表示通信部43から表示部5のディスプレイへの画像出力としているが、当該出力の形態はこれに限定されない。例えば、音声出力や、紙などの媒体への印刷とすることができる。
(6)上記実施形態では推奨光源位置算出部423は推奨光源位置を撮影画像上の座標系で簡易的に算出しているが、ワールド座標系でより厳密に算出してもよい。この場合、推奨光源位置算出部423は、提示カメラの各要求位置を当該カメラのカメラパラメータ410を用いて基準面11上の座標に変換し、変換後の座標の重心位置ないし重み付け重心位置を推奨光源位置として算出する。この形態はカメラ2を傾けた姿勢にて設置するカメラシステムにおいて有用である。