JP2014109002A - フマル酸ジエステル系樹脂及びそれを用いた位相差フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 フィルムの厚み方向の屈折率が大きく、面外位相差が負に大きく、波長依存性が小さく、薄膜においても高い面外位相差を有する等の光学特性に優れた位相差フィルム材料および位相差フィルムを提供する。
【解決手段】 単量体残基単位がフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位30〜70モル%およびフマル酸ジエチル残基単位70〜30モル%のみからなることを特徴とするフマル酸ジエステル系樹脂およびそれよりなる位相差フィルム。
【選択図】 図1

Description

本発明は薄膜においても高い面外位相差を有し、かつ波長依存性等の光学特性に優れた位相差フィルムに適したフマル酸ジエステル系樹脂に関するものである。特に液晶表示素子用の光学補償フィルムに適したフマル酸ジエステル系樹脂に関するものである。
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、携帯電話、コンピュータ用モニター、ノートパソコン、テレビまで幅広く使用されている。液晶ディスプレイには表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられており、特に位相差フィルムは正面や斜めから見た場合のコントラスト向上、色調や補償等大きな役割を果たしている。従来の位相差フィルムとしては、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンが使用されており、これらの高分子はいずれも正の複屈折を有する高分子である。ここで、複屈折の正負は以下に示すように定義される。
延伸等で分子配向した高分子フィルムの光学異方性は、図1に示す屈折率楕円体で表すことができる。ここで、フィルムを延伸した場合のフィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzと示す。なお、進相軸とはフィルム面内における屈折率の低い軸方向を指す。
そして、負の複屈折とは延伸方向が進相軸方向となるものであり、正の複屈折とは延伸方向の垂直方向が進相軸方向となるものである。
つまり、負の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向)、正の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸と直交する軸方向の屈折率が小さい(進相軸:延伸方向の垂直方向)。
多くの高分子は正の複屈折を有する。負の複屈折を有する高分子としてはアクリル樹脂やポリスチレンがあるが、アクリル樹脂は位相差量が小さく、位相差フィルムとしての特性は十分ではない。ポリスチレンは、低温領域での光弾性係数が大きいために僅かな応力で位相差が変化するなど位相差の安定性の課題、位相差の波長依存性が大きいといった光学特性上の課題、さらに耐熱性が低いという実用上の課題があり、現状用いられていない。
ここで、位相差の波長依存性とは、位相差が測定波長に依存して変化することを意味し、波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比、R450/R550として表すことができる。一般に、芳香族構造の高分子ではこのR450/R550が大きくなる傾向が強く、低波長領域でのコントラストや視野角特性が低下する。
負の複屈折を示す高分子の延伸フィルムではフィルムの厚み方向の屈折率が高く、従来にない位相差フィルムとなるため、例えば、スーパーツイストネマチック(STN−LCD)や垂直配向型液晶ディスプレイ(VA−LCD)、面内配向型液晶ディスプレイ(IPS−LCD)、反射型液晶ディスプレイ(反射型LCD)等のディスプレイの視野特性の補償用位相差フィルムや偏光板の視野角補償フィルムとして有用であり、負の複屈折を有する位相差フィルムに対して市場の要求は強い。
正の複屈折を有する高分子を用いてフィルムの厚み方向の屈折率を高めたフィルムの製造方法が提案されている。ひとつは高分子フィルムの片面または両面に熱収縮フィルムを密着させ、その積層体を加熱延伸処理して、高分子フィルムのフィルム厚み方向に収縮力をかける処理方法(例えば、特許文献1〜3参照)である。また、高分子フィルムに電場を印加しながら面内に一軸延伸する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
それ以外にも負の光学異方性を有する微粒子と透明性高分子からなる位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
しかし、特許文献1〜4において提案された方法は、製造工程が非常に複雑になるために生産性が劣る課題がある。また、位相差の均一性等の制御も従来の延伸による制御と比べると著しく難しくなる。さらに、ベースフィルムとしてポリカーボネートを使用した場合には室温での光弾性係数が大きく僅かな応力によって位相差が変化することや、波長依存性が大きいといった課題もある。
特許文献5で得られる位相差フィルムは、負の光学異方性を有する微粒子を添加することによって負の複屈折を示す位相差フィルムであり、製造方法の簡便化や経済性の観点から、微粒子を添加する必要のない位相差フィルムが求められている。
また、フマル酸ジエステル系樹脂からなるフィルムが提案されている(例えば、特許文献6参照)。特許文献6で得られる光学補償フィルムは、ある程度の面外位相差を有しているものの、より薄膜においても高い位相差を有するフィルムが求められている。
特許2818983号公報 特開平5−297223号公報 特開平5−323120号公報 特開平6−88909号公報 特開2005−156862号公報 特開2008−112141号公報
本発明の目的は、特定の樹脂を用いた薄膜においても高い位相差を有し、かつ波長依存性等の光学特性および耐熱性に優れた位相差フィルムに適した材料を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のフマル酸ジエステル系樹脂が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は単量体残基単位がフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位30〜70モル%およびフマル酸ジエチル残基単位70〜30モル%のみからなることを特徴とするフマル酸ジエステル系樹脂、ならびにそれを用いた位相差フィルムに関するものである。
以下、本発明の位相差フィルムに適したフマル酸ジエステル系樹脂について詳細に説明する。
本発明のフマル酸ジエステル系樹脂は、単量体残基単位がフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位30〜70モル%およびフマル酸ジエチル残基単位70〜30モル%のみからなるものである。
該フマル酸ジエステル系樹脂の組成がフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位30〜70モル%およびフマル酸ジエチル残基単位70〜30モル%を外れると、位相差フィルムとしたときの位相差特性や強度が劣るものとなる。位相差フィルムとしたときの位相差特性や強度がより優れるものとなることから、フマル酸ジ−tert−ブチル残基単位40〜60モル%およびフマル酸ジエチル残基単位60〜40モル%が好ましい。
本発明のフマル酸ジエステル系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量は、位相差フィルムとしたときの製膜性や位相差特性が優れていることから、50,000〜500,000が好ましく、80,000〜400,000がさらに好ましい。
本発明のフマル酸ジエステル系樹脂の製造方法としては、該フマル酸ジエステル系樹脂が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、例えば、フマル酸ジ-tert-ブチルとフマル酸ジエチルをラジカル重合することにより製造できる。
前記ラジカル重合は公知の重合方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれも採用可能である。
ラジカル重合を行う際の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
そして、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には30〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
本発明のフマル酸ジエステル系樹脂を用いた光学フィルムが得られたときは、薄膜においても高い面外位相差を有し、かつ波長依存性の光学特性に優れることから、位相差フィルムとすることが好ましい。なお、該位相差フィルムは微粒子を添加する必要のない位相差フィルムである。
本発明の位相差フィルムはフィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合のそれぞれの関係がnx≦ny<nzであることを特徴とする位相差フィルムであり、前記nx≦ny<nzを満たすことによりSTN−LCD、IPS−LCD、反射型LCDや半透過型LCD等の視野角補償性能に優れた位相差フィルムとなるものである。なお、一般的にフィルムの3次元屈折率の制御はフィルムの延伸等によって行われるため製造工程や品質の管理が複雑になるが、本発明の位相差フィルムは未延伸でフィルム厚み方向の屈折率が高いという特異的な挙動を示すことを見出している。
また、本発明の位相差フィルムがより光学特性に優れた位相差フィルムとなることから、下記式(a)にて示される波長550nmで測定した面外位相差(Rth)が−50〜−2000nmであることが好ましく、−100〜−500nmであることがさらに好ましい。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d (a)
(ここで、dはフィルムの厚みを示す。)
本発明の位相差フィルムは薄膜においても高い面外位相差を有することから、膜厚と面外位相差の関係が絶対値で4.5nm/フィルム膜厚(μm)以上が好ましく、5〜15nm/フィルム膜厚(μm)がさらに好ましい。
位相差の波長依存性は、波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比R450/R550として表すことができる。本発明の位相差フィルムでは、該R450/550は1.1以下が好ましく、1.08以下がさらに好ましく、1.05以下が特に好ましい。
本発明の位相差フィルムは、液晶表示素子に用いられる際に画質の特性が良好なものとなることから、光線透過率85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、位相差フィルムのヘーズ(曇り度)は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
本発明の位相差フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、溶液キャスト法、溶融キャスト法等の方法が挙げられる。
溶液キャスト法は、フマル酸ジエステル系樹脂を溶媒に溶解した溶液(以下、ドープと称する。)を支持基板上に流延した後、加熱等により溶媒を除去してフィルムを得る方法である。その際ドープを支持基板上に流延する方法としては、例えば、Tダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコーター法、リップコーター法等が用いられる。特に工業的にはダイからドープをベルト状またはドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が最も一般的である。用いられる支持基板としては、例えば、ガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基板、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム等がある。溶液キャスト法において、高い透明性を有し、かつ厚み精度、表面平滑性に優れたフィルムを製膜する際にはドープの溶液粘度は極めて重要な因子であり、10〜20000cPsが好ましく、100〜10000cPsであることがさらに好ましい。また、その際に使用する溶媒としては、フマル酸ジエステル系樹脂が溶解する限り特に制限はなく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
この際のフマル酸ジエステル系樹脂の塗布厚は、乾燥後1〜200μmが好ましく、さらに好ましくは5〜100μm、特に好ましくは5〜30μmである。
また、溶融キャスト法は、フマル酸ジエステル系樹脂を押出機内で溶融し、Tダイのスリットからフィルム状に押出した後、ロールやエアー等で冷却しつつ引き取る成形方法である。
本発明の位相差フィルムは、基材のガラス基板や他の光学フィルムから剥離して用いることが可能であり、基材のガラス基板や他の光学フィルムとの積層体としても用いることができる。
また、本発明の位相差フィルムは、偏光板と積層して円または楕円偏光板として用いることが可能であり、ポリビニルアルコール/ヨウ素等を含む偏光子と積層して偏光板とすることも可能である。さらに、本発明の位相差フィルム同士または他の位相差フィルムと積層することもできる。
本発明の位相差フィルムは、フィルム成形時または位相差フィルム自体の熱安定性を高めるために酸化防止剤が配合されていることが好ましい。該酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独または併用して用いてもよい。そして、相乗的に酸化防止作用が向上することから、ヒンダード系酸化防止剤100重量部に対してリン系酸化防止剤を100〜500重量部で混合して使用することが好ましい。また、酸化防止剤の添加量としては、本発明の位相差フィルムを構成するフマル酸ジエステル系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.5〜1重量部がさらに好ましい。
さらに、紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエート等の紫外線吸収剤を必要に応じて配合してもよい。
本発明の位相差フィルムは、発明の主旨を逸脱しない範囲において、その他高分子、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を配合してもよい。
本発明によると、液晶ディスプレイのコントラストや視野角特性の補償フィルムや反射防止フィルムとして有用となるフィルムの厚み方向の屈折率が大きく、面外位相差が負に大きく、波長依存性が小さい等の光学特性に優れた位相差フィルムに適したフマル酸ジエステル系樹脂を提供することができる。
本発明のフマル酸ジエステル系樹脂は、薄膜においても高い面外位相差を有し、フィルムの厚み方向の屈折率が大きく、波長依存性が小さい等の光学特性に優れる位相差フィルムに適したフマル酸ジエステル系樹脂であり、特に液晶表示素子用の光学補償フィルム材料として適したものである。
延伸による屈折率楕円体の変化
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に実施例により得られたフマル酸ジエステル系樹脂の評価・測定方法を示す。なお、断りのない限り用いた試薬は市販品を用いた。
<フマル酸ジエステルの異性化率>
ガスクロマトグラフィー装置(島津製作所製、商品名GC−14A)を用い、ガスクロマトグラフより定量分析を行った。
<フマル酸ジエステル系樹脂の組成>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)スペクトル分析より求めた。
<数平均分子量>
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名HLC−8320GPC(カラムSuperHM−Hを装着))を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
<透明性の評価>
ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名NDH5000)を使用して、フィルムの全光線透過率およびヘーズを測定した。
<屈折率の測定>
アッベ屈折率計(アタゴ製)を用い、JIS K 7142(1981年度版)に準拠して測定した。
<フィルムの位相差および三次元屈折率>
全自動複屈折率計(王子計測機器製、商品名KOBRA−WR)を用いて測定した。
合成例1 〜フマル酸ジ−tert−ブチルの合成〜
攪拌機および温度計を備えた300mLのオートクレーブに、エチレングリコールジメチルエーテル60mL、マレイン酸20g、硫酸4gを仕込んだのち2−メチルプロピレン51gを圧入し、撹拌しながら40℃で2時間反応を行った。
上記反応で得られた反応液を中和および水洗することにより得られたマレイン酸ジ−tert−ブチルのエチレングリコールジメチルエーテル溶液80mLおよびピペリジン0.3gを、撹拌機、冷却器および温度計を備えた150mLの三つ口に仕込み、撹拌しながら110℃で2時間反応させた。得られた反応液をGC分析した結果、フマル酸ジ−tert−ブチルへの異性化率は99%であった。得られた反応液の溶媒を留去したのち昇華を行い、純度99%のフマル酸ジ−tert−ブチル22gを得た。
実施例1
容量75mLのガラスアンプルに合成例1で得られたフマル酸ジ−tert−ブチル31.4g(0.14モル)、フマル酸ジエチル15.8g(0.09モル)、シクロヘキサン6.3gおよび重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.31g(0.0014モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、6時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、トルエン300gで溶解させた。このポリマー溶液を3Lのメタノール中に滴下して析出させた後、60℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジエステル系樹脂24.8gを得た(収率:52%)。
得られたフマル酸ジエステル系樹脂の数平均分子量は129,000であった。
また、H−NMR測定により、樹脂組成はフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位/フマル酸ジエチル残基単位=61/39であることを確認した。
実施例2
容量75mLのガラスアンプルに合成例1で得られたフマル酸ジ−tert−ブチル23g(0.10モル)、フマル酸ジエチル26.1g(0.15モル)および重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.17g(0.0008モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを55℃の恒温槽に入れ、6時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、トルエン300gで溶解させた。このポリマー溶液を3Lのメタノール中に滴下して析出させた後、60℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジエステル系樹脂5.53gを得た(収率:11%)。
得られたフマル酸ジエステル系樹脂の数平均分子量は200,000であった。
また、H−NMR測定により、樹脂組成はフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位/フマル酸ジエチル残基単位=47/53であることを確認した。
実施例3
実施例1で得られたフマル酸ジエステル系樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解して11重量%の樹脂溶液とし、スピンコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延し、130℃で10分乾燥することにより、厚み12.3μmのフマル酸ジエステル系樹脂を用いたフィルムを得た。
得られたフィルムは、全光線透過率93%、ヘーズ0.3%、屈折率1.468であった。三次元屈折率はnx=1.4668、ny=1.4668、nz=1.4716であり、得られたフィルムはnx=ny<nzとフィルムの厚み方向の屈折率が大きい値を示した。また、面外位相差Rthは−59nmと負に大きく、さらに位相差の比(R450/R550)(波長依存性)は1.01と小さい値であった。また、面外位相差(Rth)/フィルム膜厚(μm)は−4.8nm/μmであった。
これらの結果より、得られたフィルムは負の複屈折を有し、厚み方向の屈折率が大きく、さらに面外位相差が負に大きく、波長依存性が小さく、薄膜においても高い面外位相差を有することから、位相差フィルムに適したものであった。
実施例4
実施例2で得られたフマル酸ジエステル系樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解して13重量%の樹脂溶液とし、スピンコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延し、130℃で10分乾燥することにより、厚み13μmのフマル酸ジエステル系樹脂を用いたフィルムを得た。
得られたフィルムは、全光線透過率93%、ヘーズ0.3%、屈折率1.472であった。三次元屈折率はnx=1.4702、ny=1.4702、nz=1.4756であり、得られたフィルムはnx=ny<nzとフィルムの厚み方向の屈折率が大きい値を示した。また、面外位相差Rthは−70nmと負に大きく、さらに位相差の比(R450/R550)(波長依存性)は1.01と小さい値であった。また、面外位相差(Rth)/フィルム膜厚(μm)は−5.4nm/μmであった。
これらの結果より、得られたフィルムは負の複屈折を有し、厚み方向の屈折率が大きく、さらに面外位相差が負に大きく、波長依存性が小さく、薄膜においても高い面外位相差を有することから、位相差フィルムに適したものであった。
比較例1
容量75mLのガラスアンプルに合成例1で得られたフマル酸ジ−tert−ブチル39.5g(0.17モル)、フマル酸ジエチル7.45g(0.04モル)、トルエン7.9gおよび重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.15g(0.0007モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを70℃の恒温槽に入れ、6時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、トルエン300gで溶解させた。このポリマー溶液を3Lのメタノール中に滴下して析出させた後、60℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジエステル系樹脂19gを得た(収率:40%)。
得られたフマル酸ジエステル系樹脂の数平均分子量は49,000であった。
また、H−NMR測定により、樹脂組成はフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位/フマル酸ジエチル残基単位=76/24であることを確認した。
比較例2
容量75mLのガラスアンプルに合成例1で得られたフマル酸ジ−tert−ブチル20.1g(0.09モル)、フマル酸ジエチル35.2g(0.20モル)、シクロヘキサン4.0gおよび重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.20g(0.0009モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを55℃の恒温槽に入れ、6時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、トルエン300gで溶解させた。このポリマー溶液を3Lのメタノール中に滴下して析出させた後、60℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジエステル系樹脂1.7gを得た(収率:3%)。
得られたフマル酸ジエステル系樹脂の数平均分子量は11,000であった。
また、H−NMR測定により、樹脂組成はフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位/フマル酸ジエチル残基単位=27/73であることを確認した。
比較例3
比較例1で得られたフマル酸ジエステル系樹脂をトルエンに溶解して15重量%の樹脂溶液とし、スピンコーターによりカバーガラス上に流延、130℃で10分乾燥することにより、厚み9μmのフマル酸ジエステル系樹脂を用いたフィルムを得た。
得られたフィルムは、全光線透過率93%、ヘーズ0.3%、屈折率1.461であった。三次元屈折率はnx=1.4597、ny=1.4597、nz=1.4625であり、得られたフィルムはnx=ny<nzとフィルムの厚み方向の屈折率が大きい値を示すものであったが、面外位相差Rthは−25nmと負に小さく、面外位相差(Rth)/フィルム膜厚(μm)も−2.8nm/μmと小さかった。
これらの結果より、得られたフィルムは負の複屈折を有し、厚み方向の屈折率が大きいものであったが、面外位相差が負に小さく、薄膜においては高い面外位相差を期待できないものであった。
比較例4
比較例2で得られたフマル酸ジエステル系樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解して15重量%の樹脂溶液とし、スピンコーターによりカバーガラス上に流延、130℃で10分乾燥することにより、厚み12μmのフマル酸ジエステル系樹脂を用いたフィルムを得た。
得られたフィルムは、全光線透過率93%、ヘーズ0.3%、屈折率1.478であった。三次元屈折率はnx=1.4769、ny=1.4769、nz=1.4802であり、得られたフィルムはnx=ny<nzとフィルムの厚み方向の屈折率が大きい値を示すものであったが、面外位相差Rthは−40nmと負に小さく、面外位相差(Rth)/フィルム膜厚(μm)も−3.3nm/μmであった。
これらの結果より、得られたフィルムは負の複屈折を有し、厚み方向の屈折率が大きいものであったが、面外位相差が負に小さく、薄膜においては高い面外位相差を期待できないものであった。
nx;フィルム面内の進相軸方向の屈折率を示す。
ny;nxと直交するフィルム面内方向の屈折率を示す。
nz;フィルムの厚み方向の屈折率を示す。

Claims (7)

  1. 単量体残基単位がフマル酸ジ−tert−ブチル残基単位30〜70モル%およびフマル酸ジエチル残基単位70〜30モル%のみからなることを特徴とするフマル酸ジエステル系樹脂。
  2. 数平均分子量が50,000〜500,000であることを特徴とする請求項1に記載のフマル酸ジエステル系樹脂。
  3. 請求項1または請求項2に記載のフマル酸ジエステル系樹脂を用いたことを特徴とする位相差フィルム。
  4. フィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合のそれぞれの関係がnx≦ny<nzであることを特徴とする請求項3に記載の位相差フィルム。
  5. 下記式(a)にて示される波長550nmで測定した面外位相差(Rth)が−50〜−2000nmであることを特徴とする請求項3または4に記載の位相差フィルム。
    Rth=((nx−ny)/2−nz)×d (a)
    (ここで、dはフィルムの厚みを示す。)
  6. 膜厚と面外位相差の関係が、絶対値で4.5nm/フィルム膜厚(μm)以上であることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の位相差フィルム。
  7. 波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比(R450/R550)が1.1以下であることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれかに記載の位相差フィルム。
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