JP2014105230A - ブロック共重合体およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】ラジカル耐性に優れる高分子電解質膜形成材料を提供すること。
【解決手段】ポリ[4−(4−スルホブチルオキシ)]スチレンのごときプロトン伝導性基を含有したポリスチレン誘導体ブロックとポリ[4−(n−ブトキシ)]スチレンのごとき誘導体ブロックからなるブロック共重合体と架橋剤からなる樹脂組成物を架橋してなる高分子電解質膜。
【選択図】なし
【解決手段】ポリ[4−(4−スルホブチルオキシ)]スチレンのごときプロトン伝導性基を含有したポリスチレン誘導体ブロックとポリ[4−(n−ブトキシ)]スチレンのごとき誘導体ブロックからなるブロック共重合体と架橋剤からなる樹脂組成物を架橋してなる高分子電解質膜。
【選択図】なし
Description
本発明は、ブロック共重合体およびその用途に関する。
燃料電池はクリーンで高効率な次世代のエネルギー源として精力的な研究が行われている。燃料電池は燃料(水素やメタノール)を酸化剤(空気や酸素)によって燃焼させ、熱エネルギーとする代わりに、燃料を電気化学的に反応させることにより、反応に伴うギブズエネルギー変化を直接電気エネルギーに変換するシステムである。
特に、固体高分子型燃料電池は、プロトン伝導性の高分子電解質膜を電解質に用い、常温〜100℃付近で作動する。しかも固体電解質膜であるため飛散の心配がなく、薄膜化も可能であること、低温で作動するために起動が早いこと、二酸化炭素の影響を受けないことなどが特徴であり、電気自動車や携帯機器用などの可搬電源として多くの期待が集められている。
高分子電解質膜の中でも、ナフィオン(登録商標)やフレミオン(登録商標)などのスルホン化パーフルオロポリマーが、高いプロトン伝導性と安定性の点から広く使用されている。しかしながら、これらのポリマーは、高いコスト、環境汚染、高いメタノール透過性、低いガラス転移温度などにより、実際の燃料電池への使用には制限があった。
また、非パーフルオロ系ポリマーをベースとした高分子電解質膜についても既にいくつかの報告がなされており、例えば、スチレン系の電解質膜が検討されてきた。
非特許文献1および2では、スルホン化ポリスチレンを含むブロック共重合体からなる電解質膜の形状と物性が報告されている。
また、特許文献1には、芳香族単位を有する高分子化合物および芳香族単位がない高分子化合物を含む高分子フィルムにプロトン伝導性基を導入した高分子電解質膜が開示されている。
非特許文献1および2では、スルホン化ポリスチレンを含むブロック共重合体からなる電解質膜の形状と物性が報告されている。
また、特許文献1には、芳香族単位を有する高分子化合物および芳香族単位がない高分子化合物を含む高分子フィルムにプロトン伝導性基を導入した高分子電解質膜が開示されている。
Kim, B. et. al., J. Membr. Sci. 2005, 250, 175.
Won, J. et. al., J. Membr. Sci. 2003, 214, 245.
しかしながら、前記文献に記載されている電解質膜は、ポリスチレンのベンジルC−H結合がラジカル耐性に劣るため、実際の高分子燃料電池に使用するには、十分なラジカル耐性を有していなかった。
本発明は、前記問題を鑑みてなされたものであり、ラジカル耐性に優れる高分子電解質膜形成材料を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意研究した。その結果、特定の構造単位を有するブロック共重合体によって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の態様は、以下[1]〜[6]に示すことができる。
[1] 下記式(1)で表される構造単位を有するブロック共重合体。
[2] [1]に記載のブロック共重合体と架橋剤とを含む樹脂組成物。
[3] [2]に記載の樹脂組成物から得られる架橋ブロック共重合体。
[3] [2]に記載の樹脂組成物から得られる架橋ブロック共重合体。
[4] [3]に記載の架橋ブロック共重合体を含む高分子電解質膜。
[5] ガス拡散層、触媒層、[4]に記載の高分子電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体。
[6] [5]に記載の膜−電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
[5] ガス拡散層、触媒層、[4]に記載の高分子電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体。
[6] [5]に記載の膜−電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
本発明に係るブロック共重合体によれば、プロトン伝導性、ラジカル耐性、機械的特性、熱安定性および寸法安定性にバランス良く優れる透明な高分子電解質膜を容易に調製することができる。このため、本発明に係るブロック共重合体は燃料電池用のプロトン伝導膜に好適に使用できる。
≪ブロック共重合体≫
本発明のブロック共重合体は、下記式(1)で表される構造単位を有する。
このようなブロック共重合体は、有機溶媒に対する溶解性に優れ、また、このようなブロック共重合体によれば、プロトン伝導性、ラジカル耐性、機械的特性、熱安定性および寸法安定性にバランス良く優れる透明な高分子電解質膜を調製することができる。
特に、本発明の共重合体は、ブロック体であるため、高いプロトン伝導性を示す高分子電解質膜を調製することができる。
本発明のブロック共重合体は、下記式(1)で表される構造単位を有する。
このようなブロック共重合体は、有機溶媒に対する溶解性に優れ、また、このようなブロック共重合体によれば、プロトン伝導性、ラジカル耐性、機械的特性、熱安定性および寸法安定性にバランス良く優れる透明な高分子電解質膜を調製することができる。
特に、本発明の共重合体は、ブロック体であるため、高いプロトン伝導性を示す高分子電解質膜を調製することができる。
本発明のブロック共重合体は、−ph−R1や−ph−R2(phはベンゼン環を示す(以下同様)。)で表される側鎖を有するため、燃料電池の作動時に生成し得るヒドロキシラジカルによる、共重合体主鎖の攻撃を妨げたり、減少させることができると考えられる。このため、ラジカル耐性に優れる電解質膜が得られると考えられる。
また、本発明のブロック共重合体は、−ph−R1で表される側鎖を有するため、プロトン伝導性基を含むナノチャンネルが形成されることによるプロトン伝導度の高い電解質膜が得られると考えられる。
また、本発明のブロック共重合体は、−ph−R1で表される側鎖を有するため、プロトン伝導性基を含むナノチャンネルが形成されることによるプロトン伝導度の高い電解質膜が得られると考えられる。
本発明のブロック共重合体は、プロトン伝導膜、一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用固体高分子電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサーおよびイオン交換膜などに用いる場合、該ブロック共重合体もしくはその架橋体を含む、膜状態、溶液状態または粉体状態で用いることが考えられるが、このうち膜状態および溶液状態が好ましい。
前記式(1)中、R1は独立して、−R3−R4(R3は、一部もしくは全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数3〜8の炭化水素基または炭素数3〜8のアルコキシ基であり、R4はプロトン伝導性基である。)で表される基であり、R2は独立して、一部もしくは全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数3〜8の炭化水素基または炭素数3〜8のアルコキシ基であり、xは1〜1000の整数であり、yは0〜1000の整数である。
前記炭化水素基およびアルコキシ基における炭素数は、3〜8であり、好ましくは3〜6である。
炭素数がこの範囲にあることで、有機溶媒への溶解性などに優れる共重合体が得られ、高いプロトン伝導性を有し、ラジカル耐性および耐熱性などに優れる電解質膜を得ることができる。
一方、前記炭素数が3未満であると、有機溶媒への溶解性などに優れる共重合体、ならびに、プロトン伝導性およびラジカル耐性に優れる電解質膜が得られにくくなる傾向にあり、前記炭素数が8を超えると、ラジカル耐性および耐熱性に優れる電解質膜が得られにくくなる傾向にある。
炭素数がこの範囲にあることで、有機溶媒への溶解性などに優れる共重合体が得られ、高いプロトン伝導性を有し、ラジカル耐性および耐熱性などに優れる電解質膜を得ることができる。
一方、前記炭素数が3未満であると、有機溶媒への溶解性などに優れる共重合体、ならびに、プロトン伝導性およびラジカル耐性に優れる電解質膜が得られにくくなる傾向にあり、前記炭素数が8を超えると、ラジカル耐性および耐熱性に優れる電解質膜が得られにくくなる傾向にある。
前記炭化水素基としては、直鎖または分岐鎖の炭化水素基、脂環構造を有する炭化水素基、および芳香環を有する炭化水素基等が挙げられるが、得られる共重合体の溶解性等の点から、また、得られる電解質膜のプロトン伝導性等の点から直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
本発明におけるプロトン伝導性基は、プロトン伝導性を示す基、または従来公知の処理をすることによりプロトン伝導性を示す基になる基のことをいう。
前記プロトン伝導性を示す基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基、ビススルホニルイミド基などが挙げられる。
また、前記従来公知の処理をすることによりプロトン伝導性を示す基になる基としては、前記プロトン伝導性を示す基の水素原子をアルカリ金属原子、脂肪族炭化水素基、脂環基、含酸素複素環基および含窒素カチオンなどで置き換えた基などが挙げられ、ナトリウム原子などのアルカリ金属原子で置き換えた基が好ましい。
本発明のブロック共重合体は、前記プロトン伝導性基が、従来公知の処理をすることによりプロトン伝導性を示す基になる基であることが好ましく、下記高分子電解質膜は、プロトン伝導性を示す基を有するものであることが好ましい。
前記プロトン伝導性を示す基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基、ビススルホニルイミド基などが挙げられる。
また、前記従来公知の処理をすることによりプロトン伝導性を示す基になる基としては、前記プロトン伝導性を示す基の水素原子をアルカリ金属原子、脂肪族炭化水素基、脂環基、含酸素複素環基および含窒素カチオンなどで置き換えた基などが挙げられ、ナトリウム原子などのアルカリ金属原子で置き換えた基が好ましい。
本発明のブロック共重合体は、前記プロトン伝導性基が、従来公知の処理をすることによりプロトン伝導性を示す基になる基であることが好ましく、下記高分子電解質膜は、プロトン伝導性を示す基を有するものであることが好ましい。
R3が炭素数3の炭化水素基であり、R4がスルホン酸基である場合、前記「−R3−R4」は、例えば、−CH2CH2CH2SO3Hであってもよいし、−CH2CH(SO3H)CH3であってもよいし、−CH(SO3H)CH2CH3であってもよい。
前記式(1)中、xおよびyはそれぞれ独立して、好ましくは1〜1000の整数であり、より好ましくは10〜500の整数である。
前記x対yの比(x:y)は、プロトン伝導性、寸法安定性および機械的強度などに優れる電解質膜を得ることができる等の点から、好ましくは1:9〜9:1であり、より好ましくは4:6〜8:2である(但しx+y=10である)。
前記x対yの比(x:y)は、プロトン伝導性、寸法安定性および機械的強度などに優れる電解質膜を得ることができる等の点から、好ましくは1:9〜9:1であり、より好ましくは4:6〜8:2である(但しx+y=10である)。
本発明のブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは3000〜500000であり、より好ましくは20000〜300000であり、数平均分子量は、好ましくは2000〜400000であり、より好ましくは10000〜200000であり、分子量分布は、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜1.5である。
ブロック共重合体の分子量または分子量分布が前記範囲にあることで、溶媒への溶解性に優れる重合体が得られ、取り扱い性および機械的強度、相分離構造の発現によるプロトン伝導性等に優れる電解質膜が得られる。
なお、分子量の測定方法は実施例に記載の通りである。
ブロック共重合体の分子量または分子量分布が前記範囲にあることで、溶媒への溶解性に優れる重合体が得られ、取り扱い性および機械的強度、相分離構造の発現によるプロトン伝導性等に優れる電解質膜が得られる。
なお、分子量の測定方法は実施例に記載の通りである。
本発明のブロック共重合体のイオン交換容量は、好ましくは0.5〜4.0meq/g、より好ましくは1.0〜3.0meq/gである。イオン交換容量が前記範囲内であれば、プロトン伝導性および発電性能を高くすることができるとともに、充分に高い、耐水性、寸法安定性および乾燥状態における水分保持率を有する電解質膜を得ることができる。なお、イオン交換容量の測定方法は実施例に記載の通りである。
前記のイオン交換容量は、合成原料化合物の種類、使用割合などを変えることにより、調整することができ、また、プロトン伝導性基の導入量を調整することにより、調整することができる。
概して前記繰り返し単位xの構造単位が多くなるとイオン交換容量が増え、プロトン伝導性が高くなるが、得られる電解質膜の耐水性、寸法安定性や機械的特性が低下する傾向にあり、一方、繰り返し単位xの構造単位が少なくなると、イオン交換容量が小さくなり、耐水性、寸法安定性や機械的特性が高まるが、プロトン伝導性が低下する傾向にある。
しかしながら、本発明のブロック共重合体を架橋することで得られる電解質膜は、同様のイオン交換容量を有する従来公知の電解質膜に比べ、特に、プロトン伝導性、ラジカル耐性、機械的強度および寸法安定性に優れる。
しかしながら、本発明のブロック共重合体を架橋することで得られる電解質膜は、同様のイオン交換容量を有する従来公知の電解質膜に比べ、特に、プロトン伝導性、ラジカル耐性、機械的強度および寸法安定性に優れる。
<ブロック共重合体の合成方法>
本発明のブロック共重合体の合成方法は、特に制限されず、従来公知の方法で合成することができる。
例えば、前記式(1)で表される構造単位を有するブロック共重合体(例:下記化合物5)は、以下のスキーム(I)のような方法で合成することができる。
以下のような方法によれば、高い分子量を有し、低い分子量分布を有するブロック共重合体を合成することができる。
本発明のブロック共重合体の合成方法は、特に制限されず、従来公知の方法で合成することができる。
例えば、前記式(1)で表される構造単位を有するブロック共重合体(例:下記化合物5)は、以下のスキーム(I)のような方法で合成することができる。
以下のような方法によれば、高い分子量を有し、低い分子量分布を有するブロック共重合体を合成することができる。
前記スキーム(I)中、R2、xおよびyはそれぞれ独立して、前記式(1)中のR2、xおよびyと同義であり、R5は保護基である。なお、前記スキーム(I)中、「sec−BuLi」はsec−ブチルリチウムを示し、「sec−Bu−」はsec−ブチル基を示す。
前記化合物3は、例えば、化合物1や2を原料モノマーとして用い、sec−BuLiなどのアルカリ金属アルキルを開始剤として、アニオン重合により合成することができる。
この反応は、従来公知の方法で行えばよい。
この反応は、従来公知の方法で行えばよい。
前記R5における保護基としては、特に制限されず、従来公知のヒドロキシ基の保護基であればよく、例えば、メチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基等のエーテル系保護基、メトキシメチル基、エトキシエチル基等のアセタール系保護基、アセチル基等のアシル系保護基、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などのシリルエーテル系保護基が挙げられる。
前記化合物2におけるR2は、前記式(1)中のR2と同義であるが、−O−R5で表される基以外の基である。
本発明のブロック共重合体のイオン交換容量は、例えば、化合物1および2の使用量の比を適宜調整することにより、調整することができる。
化合物1と2の使用量のモル比(化合物1のモル:化合物2のモル)は、プロトン伝導性、寸法安定性および機械的強度などに優れる電解質膜を得ることができる等の点から、前記x:yの好ましい範囲と同程度であることが望ましい。
化合物1と2の使用量のモル比(化合物1のモル:化合物2のモル)は、プロトン伝導性、寸法安定性および機械的強度などに優れる電解質膜を得ることができる等の点から、前記x:yの好ましい範囲と同程度であることが望ましい。
前記化合物4は、化合物3を脱保護することで得ることができる。この反応は、用いる保護基に応じて、従来公知の脱保護反応と同様の方法で行えばよい。
前記化合物5を合成する際には、従来公知の方法を用いればよい。
前記化合物5を合成する際に、プロトン伝導性基を導入するための化合物として、1,4−ブタンスルトンを用いたが、この化合物に限定されるものではなく、ベンゼン環とプロトン伝導性基との間が、前記一部もしくは全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数3〜8の炭化水素基または炭素数3〜8のアルコキシ基となるような化合物であって、プロトン伝導性基を導入できる化合物であれば特に制限されない。
前記化合物5を合成する際に、プロトン伝導性基を導入するための化合物として、1,4−ブタンスルトンを用いたが、この化合物に限定されるものではなく、ベンゼン環とプロトン伝導性基との間が、前記一部もしくは全部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数3〜8の炭化水素基または炭素数3〜8のアルコキシ基となるような化合物であって、プロトン伝導性基を導入できる化合物であれば特に制限されない。
本発明のブロック共重合体(化合物5)における、繰り返し単位xの構造単位と繰り返し単位yの構造単位の長さは、前記化合物3における繰り返し単位xの構造単位と繰り返し単位yの構造単位の分子量を制御することによって調節することができる。
≪樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、前記ブロック共重合体と架橋剤とを含む。
このような樹脂組成物によれば、プロトン伝導性、ラジカル耐性、機械的特性、熱安定性および寸法安定性などにバランス良く優れる電解質膜を得ることができる。
前記架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の化合物を併用しても構わない。
本発明の樹脂組成物は、前記ブロック共重合体と架橋剤とを含む。
このような樹脂組成物によれば、プロトン伝導性、ラジカル耐性、機械的特性、熱安定性および寸法安定性などにバランス良く優れる電解質膜を得ることができる。
前記架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の化合物を併用しても構わない。
前記架橋剤としては、下記式(3)で表される基を有する架橋剤を用いることが、プロトン伝導性、寸法安定性、ラジカル耐性および機械的強度にバランス良く優れる電解質膜が得られるなどの点から好ましい。
前記ブロック共重合体は、ラジカル耐性に優れるため、電子線やγ線といった放射線架橋では十分に内部まで架橋させることは難しい場合がある。しかし、下記式(3)で表される基を有する架橋剤で架橋した場合は、十分な架橋反応が進行し、比較的容易に前記効果を有する電解質膜を得ることができる。
前記式(3)中、R7は水素原子または任意の有機基である。
前記R7における有機基としては、工業的入手の容易さおよび反応効率等の点から、炭素数1〜20のアルキル基、またはR8CO−基(R8は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)がより好ましい。
前記R7における有機基としては、工業的入手の容易さおよび反応効率等の点から、炭素数1〜20のアルキル基、またはR8CO−基(R8は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)がより好ましい。
前記架橋剤としては、架橋性等の点から、前記式(3)で表される基を少なくとも2つ含有する架橋剤が好ましい。
中でも、工業的入手の容易さ、前記ブロック共重合体との相溶性、低ブリードアウト等の点から、以下に示す化合物が好ましい。
中でも、工業的入手の容易さ、前記ブロック共重合体との相溶性、低ブリードアウト等の点から、以下に示す化合物が好ましい。
前記樹脂組成物における架橋剤の含有量は、前記ブロック共重合体100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜40重量部である。
架橋剤の配合量が前記範囲にあると、架橋の効果が十分となり、寸法安定性および機械的強度等に優れる電解質膜が得られる傾向にある。
架橋剤の配合量が前記範囲にあると、架橋の効果が十分となり、寸法安定性および機械的強度等に優れる電解質膜が得られる傾向にある。
前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、溶媒を含んでもよい。この溶媒としては、前記ブロック共重合体および架橋剤を溶解させることができる溶媒が好ましい。
このような溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド、テトラヒドロフラン(THF)等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン等の非プロトン性非極性溶媒、または、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。
前記溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上の化合物を併用しても構わない。
このような溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド、テトラヒドロフラン(THF)等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン等の非プロトン性非極性溶媒、または、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。
前記溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上の化合物を併用しても構わない。
前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸触媒を含んでもよい。このような酸触媒を含有することで、架橋反応を促進させることができる。
前記酸触媒としては、一般的な酸性の化合物が広く使用できる。これらのうち、好ましくはスルホン酸化合物、カルボン酸化合物、ボロン酸化合物、リン酸化合物、塩酸、硫酸、硝酸等であり、さらに好ましくはスルホン酸化合物であり、特に好ましくはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸である。
前記酸触媒の添加量は、前記ブロック共重合体100重量%に対して、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%である。
前記酸触媒としては、一般的な酸性の化合物が広く使用できる。これらのうち、好ましくはスルホン酸化合物、カルボン酸化合物、ボロン酸化合物、リン酸化合物、塩酸、硫酸、硝酸等であり、さらに好ましくはスルホン酸化合物であり、特に好ましくはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸である。
前記酸触媒の添加量は、前記ブロック共重合体100重量%に対して、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%である。
前記樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸ガラス;タングステン酸;リン酸塩水和物;β−アルミナプロトン置換体;プロトン導入酸化物等の無機プロトン伝導体粒子;適量の水などを配合してもよい。
また、前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、相溶化剤等の添加剤、フェノール性水酸基含有化合物、アミン系化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物などの酸化防止剤などを含んでもよい。
さらに、電解質膜としての耐久性をより向上させるために、老化防止剤、好ましくはヒンダードフェノール系化合物を含有してもよい。
さらに、電解質膜としての耐久性をより向上させるために、老化防止剤、好ましくはヒンダードフェノール系化合物を含有してもよい。
前記樹脂組成物中のブロック共重合体の濃度は、該ブロック共重合体の分子量などにもよるが、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜25重量%である。5重量%未満では、厚膜化し難く、また、得られる膜にピンホールが生成しやすい場合がある。一方、40重量%を超えると、溶液粘度が高すぎて膜を形成し難く、得られる膜が表面平滑性に欠けることがある。
前記樹脂組成物の粘度は、本発明のブロック共重合体の分子量および濃度などにもよるが、好ましくは1,000〜100,000mPa・s、より好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。組成物の粘度が前記範囲よりも低いと、成膜中の組成物の基板上での滞留性が悪く、基板から流れてしまうことがある。一方、組成物の粘度が前記範囲を超えると、粘度が高過ぎて、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
≪高分子電解質膜≫
本発明の高分子電解質膜は、前記樹脂組成物から得られる架橋ブロック共重合体を含む。
本発明の電解質膜は、架橋されているため、膜強度および弾性率が増す。このため、薄膜化が可能となり、燃料電池スタックの電気抵抗を減少させることができる。したがって、高出力の燃料電池を作製することができる。
本発明の高分子電解質膜は、前記樹脂組成物から得られる架橋ブロック共重合体を含む。
本発明の電解質膜は、架橋されているため、膜強度および弾性率が増す。このため、薄膜化が可能となり、燃料電池スタックの電気抵抗を減少させることができる。したがって、高出力の燃料電池を作製することができる。
本発明の電解質膜は、例えば、溶媒を含む樹脂組成物を溶液状態で架橋させる方法、溶媒を含む樹脂組成物から塗膜を形成した後に架橋させる方法などにより作成することができる。
より具体的には、ダイコート、スプレーコート、ナイフコート、ロールコート、スピンコート、グラビアコートなどの公知の方法により基板上に樹脂組成物を塗布して乾燥させながら熱架橋させた後、必要により、得られる膜を基板から剥離し、さらに必要により、プロトン伝導性を示す基に変換することによって製造することができる。
より具体的には、ダイコート、スプレーコート、ナイフコート、ロールコート、スピンコート、グラビアコートなどの公知の方法により基板上に樹脂組成物を塗布して乾燥させながら熱架橋させた後、必要により、得られる膜を基板から剥離し、さらに必要により、プロトン伝導性を示す基に変換することによって製造することができる。
このような方法により作製した電解質膜は、高プロトン伝導性、ラジカル耐性および寸法安定性などを両立することができるだけでなく、溶液成膜が可能であることから、製造コストが極めて安い。さらに前記架橋剤による架橋の効果により、耐溶剤性も付与させることができるので、得られる膜に対して触媒ペースト等の直接塗工が可能で、膜−電極接合体の製造コストも大幅に低減可能であるため、好ましく利用することができる。
前記基板としては、従来の組成物を塗布する際に用いられる基板であれば特に制限されず、例えば、ガラス製、プラスチック製、金属製などの基板が挙げられる。
前記乾燥は、50〜150℃の温度で、0.1〜120時間保持することにより行うことが好ましい。なお、前記乾燥は、1段階で行ってもよく、2段階以上、つまり、予め予備乾燥した後、本乾燥してもよい。
また、前記乾燥は、必要に応じて、窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下または減圧下にて行ってもよい。
また、前記乾燥は、必要に応じて、窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下または減圧下にて行ってもよい。
前記予備乾燥は、好ましくは30〜130℃、より好ましくは50〜130℃で、好ましくは10〜180分間、より好ましくは15〜120分間保持することにより行うことができる。
また、前記本乾燥は、好ましくは50〜150℃の温度で、好ましくは0.1〜60時間保持することにより行うことができる。
また、前記本乾燥は、好ましくは50〜150℃の温度で、好ましくは0.1〜60時間保持することにより行うことができる。
また、前記乾燥の後に、得られた乾燥後の膜を水に浸漬すると、乾燥後の膜中の溶媒を水と置換することができ、得られる電解質膜中の残留溶媒量を低減することができる。
このようにして得られる電解質膜の残存溶媒量は、好ましくは5重量%以下である。また、浸漬条件によっては、得られる膜の残存有機溶媒量を1重量%以下とすることができる。
前記のように乾燥後の膜を水に浸漬した後、さらに、30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分間、好ましくは15〜60分間乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下、0.5〜24時間、真空乾燥することにより、電解質膜を調製してもよい。
なお、前記プロトン伝導性基がプロトン伝導性を示す基の水素原子をアルカリ金属原子などで置き換えた基である場合には、上述したような方法で得られた膜を、加水分解や酸処理等の適切な後処理することにより、アルカリ金属原子などを水素原子に変換することが好ましい。
本発明の電解質膜の乾燥膜厚は、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜80μmである。
本発明の電解質膜は、金属化合物または金属イオンを含んでもよい。金属化合物または金属イオンとしては、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W) 、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)、ネオジウム(Nd)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)およびエルビウム(Er)等の金属原子を含む金属化合物またはこれらの金属イオンが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の電解質膜は、含フッ素ポリマーを含むこともできる。含フッ素ポリマーとしては、電解質膜内等に含フッ素ポリマーを均一に分散させることができるため、溶媒可溶性の化合物を用いることが好ましい。含フッ素ポリマーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、フッ化ビニリデン系単独(共)重合体、フルオロオレフィン/炭化水素系オレフィン共重合体、フルオロアクリレート共重合体、フルオロエポキシ化合物などを使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
≪膜−電極接合体≫
本発明の膜−電極接合体は、ガス拡散層、触媒層、本発明の電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体である。好ましくは、前記電解質膜を挟んで一方の面にはカソード電極用の触媒層と、他方にはアノード電極用の触媒層とが設けられており、さらにカソード電極用およびアノード電極用の各触媒層の電解質膜と反対側に接して、カソード電極側およびアノード電極側にそれぞれガス拡散層が設けられている。
本発明の膜−電極接合体は、ガス拡散層、触媒層、本発明の電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体である。好ましくは、前記電解質膜を挟んで一方の面にはカソード電極用の触媒層と、他方にはアノード電極用の触媒層とが設けられており、さらにカソード電極用およびアノード電極用の各触媒層の電解質膜と反対側に接して、カソード電極側およびアノード電極側にそれぞれガス拡散層が設けられている。
ガス拡散層および触媒層としては、公知のものを特に制限なく使用可能である。
ガス拡散層としては、具体的に、多孔性基材または多孔性基材と微多孔層との積層構造体などが挙げられる。ガス拡散層が多孔性基材と微多孔層の積層構造体からなる場合には、微多孔層が触媒層に接して設けられることが好ましい。前記ガス拡散層には、撥水性を付与するために含フッ素重合体を含んでいることが好ましい。
ガス拡散層としては、具体的に、多孔性基材または多孔性基材と微多孔層との積層構造体などが挙げられる。ガス拡散層が多孔性基材と微多孔層の積層構造体からなる場合には、微多孔層が触媒層に接して設けられることが好ましい。前記ガス拡散層には、撥水性を付与するために含フッ素重合体を含んでいることが好ましい。
前記触媒層は、例えば、触媒およびイオン交換樹脂電解質などから構成される。触媒としては、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、貴金属触媒は、合金や混合物などのように、2種以上の元素を含むものであってもよい。このような貴金属触媒は、通常、高比表面積カーボン微粒子に担持したものを用いることができる。
イオン交換樹脂電解質は、前記触媒を担持したカーボン微粒子を結着させるバインダー成分として働くとともに、アノード極では触媒上の反応によって発生したイオンを電解質膜へ効率的に供給し、また、カソード極では電解質膜から供給されたイオンを触媒へ効率的に供給する物質であることが好ましい。
本発明で用いられる触媒層のイオン交換樹脂としては、触媒層内のプロトン伝導性を向上させるためにプロトン交換基を有するポリマーが好ましい。
このようなポリマーに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などが挙げられるが特に限定されるものではない。また、このようなプロトン交換基を有するポリマーも、特に限定されることなく公知のものを特に制限なく使用可能であり、例えば、ナフィオン、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマーや、スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体などが好ましく用いられる。
このようなポリマーに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などが挙げられるが特に限定されるものではない。また、このようなプロトン交換基を有するポリマーも、特に限定されることなく公知のものを特に制限なく使用可能であり、例えば、ナフィオン、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマーや、スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体などが好ましく用いられる。
また、プロトン伝導性を示す基を有する本発明のブロック共重合体をイオン交換性樹脂として使用してもよく、さらにプロトン交換基を有し、フッ素原子を含むポリマーや、エチレンやスチレンなどから得られる他のポリマー、これらの共重合体やブレンドであってもよい。
前記触媒層には、必要に応じてさらに、炭素繊維、イオン交換基を有しない樹脂等の添加剤を用いてもよい。これらの樹脂としては撥水性の高い樹脂であることが好ましい。例えば含フッ素共重合体、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、ワックス、ポリホスファゼンなどを挙げることができるが、好ましくは含フッ素共重合体である。
≪固体高分子型燃料電池≫
本発明の固体高分子型燃料電池は、前記膜−電極接合体を含む。このため、本発明に係る固体高分子型水素燃料電池は、発電性能および耐久性などに優れる。
本発明の固体高分子型燃料電池は、前記膜−電極接合体を含む。このため、本発明に係る固体高分子型水素燃料電池は、発電性能および耐久性などに優れる。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、具体的には、少なくとも一つ以上の膜−電極接合体およびそのガス拡散層の両外側に位置する、セパレータを含む少なくとも一つの電気発生部;燃料を前記電気発生部に供給する燃料供給部;および酸化剤を前記電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む固体高分子型燃料電池であって、膜−電極接合体が前記のものであることが好ましい。
本発明の電池に用いられるセパレータとしては、通常の燃料電池に用いられるものを用いることができる。具体的にはカーボンタイプのセパレータ、金属タイプのセパレータなどを用いることができる。
また、固体高分子型燃料電池を構成する部材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。本発明の電池は単セルであってもよいし、複数の単セルを直列に繋いだスタックセルであってもよい。スタックの方法としては公知の方法を用いることができる。具体的には単セルを平面状に並べた平面スタッキングであってもよいし、燃料または酸化剤の流路が、セパレータの裏表面にそれぞれ形成されているセパレータを介して単セルを積み重ねるバイポーラースタッキングであってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<H1NMRスペクトル>
下記実施例で合成した化合物のH1スペクトルは、CDCl3またはDMSO−d6を溶媒として用い、ブルカー(Bruker)製のDPX300S分光計にて測定した。
下記実施例で合成したnBOSの1H−NMRスペクトルを図1に示し、PtBOSx−b−PnBOSyおよびPHSx−b−PnBOSyの1H−NMRスペクトルを図2(それぞれ(a)および(b))に示し、PSBOSx−b−PnBOSyの1H−NMRスペクトルを図3に示す。
下記実施例で合成した化合物のH1スペクトルは、CDCl3またはDMSO−d6を溶媒として用い、ブルカー(Bruker)製のDPX300S分光計にて測定した。
下記実施例で合成したnBOSの1H−NMRスペクトルを図1に示し、PtBOSx−b−PnBOSyおよびPHSx−b−PnBOSyの1H−NMRスペクトルを図2(それぞれ(a)および(b))に示し、PSBOSx−b−PnBOSyの1H−NMRスペクトルを図3に示す。
<数平均分子量、重量平均分子量および分子量分布>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記実施例で合成した化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(PDI)を下記測定条件で測定した。結果を表1に示す。
(測定条件)
GPC測定装置:(株)日立製作所製のLC−7000システム
カラム:ポリスチレンゲルカラム(TSKgel GMHHR−M)
溶離液:クロロホルム(CHCl3)
流速:1.0mL/min
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記実施例で合成した化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(PDI)を下記測定条件で測定した。結果を表1に示す。
(測定条件)
GPC測定装置:(株)日立製作所製のLC−7000システム
カラム:ポリスチレンゲルカラム(TSKgel GMHHR−M)
溶離液:クロロホルム(CHCl3)
流速:1.0mL/min
[実施例1]
<4−ビニルフェノール(VPO)の合成>
<4−ビニルフェノール(VPO)の合成>
4−ビニルフェニルアセテートのエタノール/水酸化ナトリウム溶液を、室温で5時間攪拌し、溶媒を蒸発させた後、残渣をエチルアセテートに溶解させた。その後、有機層をクエン酸溶液および水で数回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した。減圧下でろ液から溶媒を蒸発させ、減圧下、室温で3時間乾燥させることで4−ビニルフェノール(VPO)を得た。
収率:85%
1H NMR(DMSO−d6,ppm): δ 5.01-5.07 (d, 1H, -CH=CH2), δ 5.53-5.61 (d, 1H, -CH=CH2), δ 6.56-6.68 (q, 1H, -CH=CH2), δ 6.72-6.79 (d, 2H, -CH- in Ph), δ 7.24-7.31 (d, 2H, -CH- in Ph), δ 9.37-9.45 (s, 1H, -OH-).
1H NMR(DMSO−d6,ppm): δ 5.01-5.07 (d, 1H, -CH=CH2), δ 5.53-5.61 (d, 1H, -CH=CH2), δ 6.56-6.68 (q, 1H, -CH=CH2), δ 6.72-6.79 (d, 2H, -CH- in Ph), δ 7.24-7.31 (d, 2H, -CH- in Ph), δ 9.37-9.45 (s, 1H, -OH-).
<n−ブトキシスチレン(nBOS)の合成>
250mLの乾燥フラスコにVPO(24.0g、200mmol)および炭酸カリウム(41.4g、300mmol)を加えた。このフラスコを、真空排気しその後窒素を充填する操作を3回行った。得られたフラスコに、無水N,N−ジメチルホルムアミド(150mL)および1−ブロモブタン(32.5mL、300mmol)を加え、窒素下60℃で一晩マグネットスターラーで攪拌した。得られた混合物を室温に冷却し、水中に注いだ。得られた混合物をエチルエーテルで抽出し、得られた有機層を水で3回洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液から溶媒を減圧下で蒸発させた後、ヘキサンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、n−ブトキシスチレン(nBOS)を得た。
収量:31.7g(90%)
1H NMR(DMSO−d6,ppm): δ 0.96-1.95 (t, 3H, -CH2CH3-), δ 1.44-1.58 (m, 2H, -CH2CH2CH3-), δ 1.70-1.83 (m, 2H, -CH2CH2CH3-), δ 4.00-4.09 (t, 2H, -OCH2CH2-),δ 5.13-5.21 (d, 1H, -CH=CH2), δ 5.65-5.76 (d, 1H, -CH=CH2), δ 6.65-6.79 (q, 1H, -CH=CH2), δ 6.91-7.00 (d, 2H, -CH- in Ph), δ 7.40-7.48 (d, 2H, -CH- in Ph).
1H NMR(DMSO−d6,ppm): δ 0.96-1.95 (t, 3H, -CH2CH3-), δ 1.44-1.58 (m, 2H, -CH2CH2CH3-), δ 1.70-1.83 (m, 2H, -CH2CH2CH3-), δ 4.00-4.09 (t, 2H, -OCH2CH2-),δ 5.13-5.21 (d, 1H, -CH=CH2), δ 5.65-5.76 (d, 1H, -CH=CH2), δ 6.65-6.79 (q, 1H, -CH=CH2), δ 6.91-7.00 (d, 2H, -CH- in Ph), δ 7.40-7.48 (d, 2H, -CH- in Ph).
なお、得られたnBOSは、希釈された塩基水溶液および水で連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、微粉CaH2で乾燥させた後、減圧蒸留することで精製し、グローブボックスに貯蔵した。
<PtBOSx−b−PnBOSyの合成(アニオン重合)>
ポリ(4−tert−ブトキシスチレン)(PtBOS)セグメントと、ポリ(n−ブトキシスチレン)(PnBOS)セグメントとのブロック共重合体PtBOSx−b−PnBOSyを以下のようにして合成した。xおよびyは、GPCにより算出したそれぞれのセグメントのモル比である。
ポリ(4−tert−ブトキシスチレン)(PtBOS)セグメントと、ポリ(n−ブトキシスチレン)(PnBOS)セグメントとのブロック共重合体PtBOSx−b−PnBOSyを以下のようにして合成した。xおよびyは、GPCにより算出したそれぞれのセグメントのモル比である。
<PtBOSx−b−PnBOSy(PtBOS1−b−PnBOS1.3)の合成>
PtBOSセグメントの目標Mnが20×103となるように、および、PnBOSセグメントの目標Mnが30×103となるようにして、ブロック共重合体を以下のようにして合成した。
なお、以下で用いる4−tert−ブトキシスチレン(tBOS)は、予め、東京化成工業(株)製のtBOSを、希釈された塩基水溶液および水で連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、微粉CaH2で乾燥させた後、減圧蒸留することで精製し、窒素下のグローブボックスに貯蔵しておいたものである。
なお、以下で用いる4−tert−ブトキシスチレン(tBOS)は、予め、東京化成工業(株)製のtBOSを、希釈された塩基水溶液および水で連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、微粉CaH2で乾燥させた後、減圧蒸留することで精製し、窒素下のグローブボックスに貯蔵しておいたものである。
100mLの乾燥した1口フラスコに無水THF(10.0mL)、およびtBOS(1.07mL)を加え、次いで、残存プロトン源を除くために適量のジ−n−ブチルマグネシウムを−78℃で加えた後、重合を開始させるためにsec−ブチルリチウム(0.050mL、0.050mmol)のシクロヘキサン溶液を加え、重合を1時間行った。なお、この際、数滴の重合溶液をエタノール中に入れ、GPCにより分子量を測定した。
得られた重合後の溶液に、nBOS(2.14mL)のTHF(10.0mL)溶液および適量のジ−n−ブチルマグネシウムを−78℃で加えた。2時間後、重合を終了させるためにエタノールを加えた。得られた溶液をメタノール中に沈殿させ、ろ過した後、ろ物を真空中40℃で20時間乾燥させることでブロック共重合体(PtBOS1−b−PnBOS1.3)を得た。
<PHSx−b−PnBOSy(PHS1−b−PnBOS1.3)の合成>
得られたPtBOS1−b−PnBOS1.3(2.00g、[PtBOS:4.94mmol])を80℃で一晩、1,4−ジオキサン(26.0mL)中の塩酸(37wt%、3.00mL)で処理することで、共重合体(PtBOS1−b−PnBOS1.3)におけるtert−ブチル基を脱保護した。その後室温に冷却し、攪拌しながら水中に注ぎ、得られた溶液を水で何回か洗浄した後80℃で24時間真空乾燥することで、PHS1−b−PnBOS1.3を得た。
収量:1.67g(97%)
収量:1.67g(97%)
<PSBOSx−b−PnBOSy(PSBOS1−b−PnBOS1.3)の合成>
得られたPHS1−b−PnBOS1.3(0.872g、2.50mmol)、水素化ナトリウム(0.120g、5.00mmol)および1,4−ブタンスルトン(0.681g、5.00mmol)の混合物をTHF(8.00mL)中で60℃で一晩攪拌した。得られた混合物に8mLのDMSOを添加し、80℃で24時間攪拌し、メタノール中に注いだ後、60℃で5時間真空乾燥させることでPSBOS1−b−PnBOS1.3(ポリ{[4−(4−スルホブチルオキシ)スチレン]1−ブロック−[4−(n−ブトキシスチレン)]1.3})を得た。
収量:1.24g(98%)
収量:1.24g(98%)
<電解質膜2の調製>
得られた、ナトリウム塩である共重合体PSBOS1−b−PnBOS1.3、および、Mitsui Petrochemical Industries, Ltd., Jpn. Kokai Tokkyo Koho JP 58, 116, 433 [83, 116, 433], 1983; Chem. Abstr. 1984, 100, 7356n.に記載の方法に従って合成した架橋剤、4,4'−メチレン−ビス[2,6−ビス(ヒドロキシエチル)フェノール](MBHP)(共重合体に対して3mol%)をDMSO/THF(5/1 w/w)に溶解させ5〜8w/v%溶液を調製し、メタンスルホン酸のDMSO溶液を一滴加えた。得られた溶液をガラスプレートにキャストし、80℃で36時間加熱することで透明な膜を作成した。得られた膜を、残存溶媒を除去するために水中に浸した後、1Mスルホン酸溶液に室温で3日間浸すことで、プロトン交換を行った。その後、得られた膜を洗浄後の水が中性になるまでイオン交換水で洗浄することで、電解質膜2を作成した。
得られた、ナトリウム塩である共重合体PSBOS1−b−PnBOS1.3、および、Mitsui Petrochemical Industries, Ltd., Jpn. Kokai Tokkyo Koho JP 58, 116, 433 [83, 116, 433], 1983; Chem. Abstr. 1984, 100, 7356n.に記載の方法に従って合成した架橋剤、4,4'−メチレン−ビス[2,6−ビス(ヒドロキシエチル)フェノール](MBHP)(共重合体に対して3mol%)をDMSO/THF(5/1 w/w)に溶解させ5〜8w/v%溶液を調製し、メタンスルホン酸のDMSO溶液を一滴加えた。得られた溶液をガラスプレートにキャストし、80℃で36時間加熱することで透明な膜を作成した。得られた膜を、残存溶媒を除去するために水中に浸した後、1Mスルホン酸溶液に室温で3日間浸すことで、プロトン交換を行った。その後、得られた膜を洗浄後の水が中性になるまでイオン交換水で洗浄することで、電解質膜2を作成した。
[実施例2]
前記共重合体(PtBOS1−b−PnBOS1.3)の合成において、PtBOSセグメントの目標Mn、および、PnBOSセグメントの目標Mnがそれぞれ30×103および10×103となるように、tBOSおよびnBOSの使用量などを変更した以外は、実施例1と同様にして、PtBOS2.2−b−PnBOS1、PHS2.2−b−PnBOS1、PSBOS2.2−b−PnBOS1を合成し、電解質膜1を作成した。
前記共重合体(PtBOS1−b−PnBOS1.3)の合成において、PtBOSセグメントの目標Mn、および、PnBOSセグメントの目標Mnがそれぞれ30×103および10×103となるように、tBOSおよびnBOSの使用量などを変更した以外は、実施例1と同様にして、PtBOS2.2−b−PnBOS1、PHS2.2−b−PnBOS1、PSBOS2.2−b−PnBOS1を合成し、電解質膜1を作成した。
[実施例3]
前記共重合体(PtBOS1−b−PnBOS1.3)の合成において、PtBOSセグメントの目標Mn、および、PnBOSセグメントの目標Mnがそれぞれ30×103および90×103となるように、tBOSおよびnBOSの使用量などを変更した以外は、実施例1と同様にして、PtBOS1−b−PnBOS3.2、PHS1−b−PnBOS3.2、PSBOS1−b−PnBOS3.2を合成し、電解質膜3を作成した。
前記共重合体(PtBOS1−b−PnBOS1.3)の合成において、PtBOSセグメントの目標Mn、および、PnBOSセグメントの目標Mnがそれぞれ30×103および90×103となるように、tBOSおよびnBOSの使用量などを変更した以外は、実施例1と同様にして、PtBOS1−b−PnBOS3.2、PHS1−b−PnBOS3.2、PSBOS1−b−PnBOS3.2を合成し、電解質膜3を作成した。
得られた電解質膜1〜3は、水、N−メチル−2−ピロリドンおよびDMSOに不溶であったため、架橋反応が十分に進行したと考えられる。
<熱重量分析(TGA)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3の熱重量分析を、セイコーインスツル(株)製、示差熱分析装置EXSTAR 6000 TG/DTA 6300を用い、窒素中で測定した。
測定前には、電解質膜に吸収された水分を除くために100℃で30分予め加熱した後、50℃まで冷却し、次いで、550℃まで昇温速度10℃/minで加熱した。結果を図4に示す。
図4に示すように、150〜200℃において、スルホン酸基間の脱水および脱スルホン化反応に基づく重量損失が起こり、250〜350℃においてポリマーの側鎖の分解に基づく重量損失が起こり、350℃以上においてポリマーの主鎖の分解に基づく重量損失が起こった。
前記実施例で得られた電解質膜1〜3の熱重量分析を、セイコーインスツル(株)製、示差熱分析装置EXSTAR 6000 TG/DTA 6300を用い、窒素中で測定した。
測定前には、電解質膜に吸収された水分を除くために100℃で30分予め加熱した後、50℃まで冷却し、次いで、550℃まで昇温速度10℃/minで加熱した。結果を図4に示す。
図4に示すように、150〜200℃において、スルホン酸基間の脱水および脱スルホン化反応に基づく重量損失が起こり、250〜350℃においてポリマーの側鎖の分解に基づく重量損失が起こり、350℃以上においてポリマーの主鎖の分解に基づく重量損失が起こった。
<動的粘弾性(DMA)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3(長さ10mm、幅4mm、厚み35〜52μm)の動的粘弾性を、セイコーインスツル(株)製、DMA 6300を用い、下記条件で測定した。
測定モード:引張モード
周波数:1.0Hz
雰囲気:窒素
昇温速度:2℃/min
前記実施例で得られた電解質膜1〜3(長さ10mm、幅4mm、厚み35〜52μm)の動的粘弾性を、セイコーインスツル(株)製、DMA 6300を用い、下記条件で測定した。
測定モード:引張モード
周波数:1.0Hz
雰囲気:窒素
昇温速度:2℃/min
<熱機械分析(TMA)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3(長さ12mm、幅3mm、厚み35〜60μm)のサンプルをそれぞれ2つずつ用い、室温、相対湿度60%の条件で、セイコーインスツル(株)製、TMA/SS 6100装置を用いて測定した。
前記実施例で得られた電解質膜1〜3(長さ12mm、幅3mm、厚み35〜60μm)のサンプルをそれぞれ2つずつ用い、室温、相対湿度60%の条件で、セイコーインスツル(株)製、TMA/SS 6100装置を用いて測定した。
機械的特性は、最大貯蔵弾性率(E')、最大応力(MS)および破断伸び(EB)で評価した。結果を表2に示す。なお、これらの結果は、膜厚を規格化した後のものである。
E'およびMSの値は、電解質膜のIEC値の減少に伴い増加した。電解質膜1および2は、IEC値が高いにもかかわらず、スルホン化ポリスチレンに比べ高い最大応力を示したことから、架橋反応が十分に進行したと考えられる。
本発明の電解質膜は、従来のスルホン化ポリスチレンやナフィオン117に比べ、高いE'およびMSの値を有する。従って、本発明の電解質膜は、燃料電池に好適に使用できる。
E'およびMSの値は、電解質膜のIEC値の減少に伴い増加した。電解質膜1および2は、IEC値が高いにもかかわらず、スルホン化ポリスチレンに比べ高い最大応力を示したことから、架橋反応が十分に進行したと考えられる。
本発明の電解質膜は、従来のスルホン化ポリスチレンやナフィオン117に比べ、高いE'およびMSの値を有する。従って、本発明の電解質膜は、燃料電池に好適に使用できる。
<酸化安定性(ラジカル耐性)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3(長さ10mm、幅7mm、膜厚55μm)の酸化安定性は、電解質膜1〜3を室温でフェントン試薬(20ppmのFeSO4を含む3%H2O2水溶液)に浸漬し、電解質膜が消失する時間で評価した。結果を表2に示す。
前記実施例で得られた電解質膜1〜3(長さ10mm、幅7mm、膜厚55μm)の酸化安定性は、電解質膜1〜3を室温でフェントン試薬(20ppmのFeSO4を含む3%H2O2水溶液)に浸漬し、電解質膜が消失する時間で評価した。結果を表2に示す。
表2に示すように、酸化安定性は、IEC値と関連しており、IEC値が高くなれば、酸化安定性が低下した。しかしながら、本発明の電解質膜は、同様のIEC値を有する他のスルホン化ポリマー(例えば、Mizoguchi, K. et. al., Polym. J. 2008, 40, 645.に記載されているポリ(エーテルスルホン))と比べ、フェントン試薬に対し優れた酸化安定性を示した。これは、柔軟な側鎖の導入によるものであると考えられる。
また、本発明の電解質膜は、前記−Ph−R1を有するため、プロトンが通過するパスが太くなると考えられ、プロトンパス中で発生したラジカルがポリマー主鎖に届きにくくなるため、ポリマーの主鎖はラジカルのアタックを受けにくくなる、つまり、ラジカル耐性に優れると考えられる。
また、本発明の電解質膜は、前記−Ph−R1を有するため、プロトンが通過するパスが太くなると考えられ、プロトンパス中で発生したラジカルがポリマー主鎖に届きにくくなるため、ポリマーの主鎖はラジカルのアタックを受けにくくなる、つまり、ラジカル耐性に優れると考えられる。
さらに、Sheng, L, et. al., M. Polym. Chem. DOI:10.1039/c2py20552a.で報告されている架橋ランダム共重合体(PBOS3−r−PSBOS7)とそれよりわずかにIEC値の大きい架橋ブロック共重合体である電解質膜1とを比べると、電解質膜1は、より酸化安定性に優れる。このことから、より規則性の高い形状が、酸化安定性を向上させると考えられる。
<イオン交換容量(IEC)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3のイオン交換容量を以下のようにして測定した。
電解質膜1〜3それぞれを、飽和NaCl溶液に室温で3日間浸漬させた。その後、電解質膜を溶液から取り出すことなく得られた溶液を、直接pH指示薬としてフェノールフタレインを用い0.02M NaOH溶液で滴定した。結果を表2に示す。
前記実施例で得られた電解質膜1〜3のイオン交換容量を以下のようにして測定した。
電解質膜1〜3それぞれを、飽和NaCl溶液に室温で3日間浸漬させた。その後、電解質膜を溶液から取り出すことなく得られた溶液を、直接pH指示薬としてフェノールフタレインを用い0.02M NaOH溶液で滴定した。結果を表2に示す。
<水分取り込み量(WU)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3およびナフィオン117(デュポン(株)製)の、相対湿度に応じた水分取り込み量を以下のようにして測定した。
電解質膜1〜3およびナフィオン117それぞれを、様々な相対湿度条件の恒温湿度チャンバーに2時間静置した。2時間後、恒温湿度チャンバーから膜を取り出し、微量てんびんにて素早く重量を測定した。WUは、下記式に基づいて算出した。結果を図5に示す。
WU=(Ws−Wd)/Wd×100wt%
[式中、Wsは恒温湿度チャンバーに静置後の膜の重量であり、Wdは乾燥状態の膜の重量である。]
前記実施例で得られた電解質膜1〜3およびナフィオン117(デュポン(株)製)の、相対湿度に応じた水分取り込み量を以下のようにして測定した。
電解質膜1〜3およびナフィオン117それぞれを、様々な相対湿度条件の恒温湿度チャンバーに2時間静置した。2時間後、恒温湿度チャンバーから膜を取り出し、微量てんびんにて素早く重量を測定した。WUは、下記式に基づいて算出した。結果を図5に示す。
WU=(Ws−Wd)/Wd×100wt%
[式中、Wsは恒温湿度チャンバーに静置後の膜の重量であり、Wdは乾燥状態の膜の重量である。]
<水分吸着量(水和数)(λ)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3およびナフィオン117の水分吸着量(水和数)を以下の式から算出した。この水分吸着量は、イオン交換サイト当たりの水分子の平均の数を示す。結果を図6に示す。
λ=[H2O]/[SO3 -]=WU(%)×10/[18×IEC(mmol/g)]
前記実施例で得られた電解質膜1〜3およびナフィオン117の水分吸着量(水和数)を以下の式から算出した。この水分吸着量は、イオン交換サイト当たりの水分子の平均の数を示す。結果を図6に示す。
λ=[H2O]/[SO3 -]=WU(%)×10/[18×IEC(mmol/g)]
多くの芳香族系電解質膜の水分取り込み量は、膜中の水分がプロトンのキャリヤーとして働くため、プロトン伝導度に大きく影響を及ぼすことが知られている。
図5に示すように、水分取り込み量は、電解質膜1>電解質膜2>電解質膜3の順であり、IEC値および相対湿度が増加するにつれ増加した。
図5に示すように、水分取り込み量は、電解質膜1>電解質膜2>電解質膜3の順であり、IEC値および相対湿度が増加するにつれ増加した。
<寸法変化>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3を、様々な相対湿度条件の恒温湿度チャンバー(80℃)に2時間静置し、静置前後の、膜の長さの変化(Δl)および膜の厚みの変化(Δt)を以下の式から算出した。結果を図7および8に示す。
Δl=(ls−ld)/ld×100%
Δt=(ts−td)/td×100%
[式中、lsおよびtsはそれぞれ、恒温湿度チャンバーに静置後の膜の長さおよび膜厚であり、ldおよびtdはそれぞれ、乾燥状態の膜の長さおよび膜厚である。]
前記実施例で得られた電解質膜1〜3を、様々な相対湿度条件の恒温湿度チャンバー(80℃)に2時間静置し、静置前後の、膜の長さの変化(Δl)および膜の厚みの変化(Δt)を以下の式から算出した。結果を図7および8に示す。
Δl=(ls−ld)/ld×100%
Δt=(ts−td)/td×100%
[式中、lsおよびtsはそれぞれ、恒温湿度チャンバーに静置後の膜の長さおよび膜厚であり、ldおよびtdはそれぞれ、乾燥状態の膜の長さおよび膜厚である。]
電解質膜1〜3は等方的に膨張し、寸法変化は、IEC値および相対湿度の増加に伴い増加した。電解質膜1は、これらの膜のうち最も高いIEC値を有するが、相対湿度95%でも寸法変化は20%未満であった。
<プロトン伝導度(σ)>
前記実施例で得られた電解質膜1〜3およびナフィオン117(それぞれ、長さ8mm、幅8mm、厚み178μm)の面内方向のプロトン伝導度は、日置電気(株)製、3532−80を用いて、2端子プローブ電気化学インピーダンス法で測定した(測定周波数:5Hz〜1MHz)。なお、測定の際には、2つの白金平板電極を備えた2端子プローブ伝導度セルを用い、測定前には該セルを80℃で2時間、恒温湿度チャンバーに静置した。プロトン伝導度は以下の式から算出した。結果を図9に示す。
σ=d/(tswsR)
[式中、dは2つの電極間の距離であり、tsおよびwsはそれぞれ、膜の厚みと幅であり、Rは測定された抵抗値である。]
前記実施例で得られた電解質膜1〜3およびナフィオン117(それぞれ、長さ8mm、幅8mm、厚み178μm)の面内方向のプロトン伝導度は、日置電気(株)製、3532−80を用いて、2端子プローブ電気化学インピーダンス法で測定した(測定周波数:5Hz〜1MHz)。なお、測定の際には、2つの白金平板電極を備えた2端子プローブ伝導度セルを用い、測定前には該セルを80℃で2時間、恒温湿度チャンバーに静置した。プロトン伝導度は以下の式から算出した。結果を図9に示す。
σ=d/(tswsR)
[式中、dは2つの電極間の距離であり、tsおよびwsはそれぞれ、膜の厚みと幅であり、Rは測定された抵抗値である。]
本発明の電解質膜は、Sheng, L, et. al., M. Polym. Chem. DOI:10.1039/c2py20552a.で報告されているランダム共重合体を含む電解質膜に比べIEC値が低いにもかかわらず、高いプロトン伝導度を示した。例えば、電解質膜1(IEC値:2.89mequiv/g)は、ランダム共重合体(PBOS2−r−PSBOS8)を含む膜(IEC値:3.03mequiv/g)に比べ、全ての相対湿度において高いプロトン伝導度を示した。
本発明の電解質膜のプロトン伝導度は、従来のスルホン化芳香族ポリマーが示すプロトン伝導度と同様に膜のIEC値に依存し、IEC値が高くなるとプロトン伝導度が高くなる。特に、低い相対湿度では、プロトン伝導度とIEC値との関連性は、PSBOSx−b−PnBOSyブロック共重合体の方がPBOSx−r−PSBOSyランダム共重合体に比べ低かった。これは、ランダム共重合体とブロック共重合体の形状の違いに関係すると考えられる。
架橋ブロック共重合体(PSBOSx−b−PnBOSy)膜は、架橋ランダム共重合体(PBOS2−r−PSBOS8)膜に比べ、より組織化されたミクロ相分離構造を示した。電解質膜2は、低いIEC値(2.03mequiv/g)を有するが、以下に示すように、親水性ドメインと疎水性ドメイン間の相分離がはっきりと観察され、親水性ドメインのマトリックスがお互いにうまく連結されていると考えられる。このため、従来のスルホン化芳香族ポリマーに比べIEC値が低いにもかかわらず、高いプロトン伝導度を示すと考えられる。
<透過型電子顕微鏡観察(TEM)>
前記実施例1および2で得られた乾燥電解質膜1および2の断面切片の透過型電子顕微鏡観察(TEM)を以下のようにして行った。
電解質膜を2wt%のPb(NO3)2水溶液に3日間浸漬し、スルホン酸基のイオン交換により、鉛イオンで電解質膜を染色した。その後、イオン交換水に1日浸漬し、60℃で一晩乾燥させた。得られた膜をエポキシ樹脂に埋め込み、Leica EMFCSのcryo unitを備えたミクロトームUltracut UCTを用いて90nmの厚みに−50℃で薄切りし、銅グリッド上に置いた。TEMイメージは、加速電圧100kVで、(株)日立製作所製 H7650を用いて撮影した。
図10に電解質膜1のTEM画像を示し、図11に電解質膜2のTEM画像を示す。
なお、TEM画像における黒い部分は、スルホン酸基を有する親水性ドメインの領域に相当する。
前記実施例1および2で得られた乾燥電解質膜1および2の断面切片の透過型電子顕微鏡観察(TEM)を以下のようにして行った。
電解質膜を2wt%のPb(NO3)2水溶液に3日間浸漬し、スルホン酸基のイオン交換により、鉛イオンで電解質膜を染色した。その後、イオン交換水に1日浸漬し、60℃で一晩乾燥させた。得られた膜をエポキシ樹脂に埋め込み、Leica EMFCSのcryo unitを備えたミクロトームUltracut UCTを用いて90nmの厚みに−50℃で薄切りし、銅グリッド上に置いた。TEMイメージは、加速電圧100kVで、(株)日立製作所製 H7650を用いて撮影した。
図10に電解質膜1のTEM画像を示し、図11に電解質膜2のTEM画像を示す。
なお、TEM画像における黒い部分は、スルホン酸基を有する親水性ドメインの領域に相当する。
<X線小角散乱(SAXS)>
前記実施例1および2で得られた電解質膜1および2のX線小角散乱(SAXS)スペクトルをブルカー製のNanoSTAR(記録装置:電荷結合素子(CCD))を用いて測定した。結果を図12に示す。
散乱ピークの強度は、散乱ベクトルq(=4πsinθ/λ)の強度の関数である(λは、1.54ÅのX線(Cukα線)波長であり、2θは散乱角度である)。
面間隔d(=2π/q*)は、ブラッグの式から計算した(q*は主ピークの位置である)。
前記実施例1および2で得られた電解質膜1および2のX線小角散乱(SAXS)スペクトルをブルカー製のNanoSTAR(記録装置:電荷結合素子(CCD))を用いて測定した。結果を図12に示す。
散乱ピークの強度は、散乱ベクトルq(=4πsinθ/λ)の強度の関数である(λは、1.54ÅのX線(Cukα線)波長であり、2θは散乱角度である)。
面間隔d(=2π/q*)は、ブラッグの式から計算した(q*は主ピークの位置である)。
図10および11に示すように、電解質膜1および2では、親水性ドメインと疎水性ドメイン間の相分離がはっきりと観察された。電解質膜1および2の親水性ドメインと疎水性ドメイン間との距離は、それぞれ、35nmおよび30nmであった。
高度の相分離とイオンクラスターの凝集により、PBOSx−b−PnBOSyは両親媒性を示すと考えられる。さらに、本発明の電解質膜における親水性ドメインのマトリックスは、お互いにうまく連結していると考えられる。
高度の相分離とイオンクラスターの凝集により、PBOSx−b−PnBOSyは両親媒性を示すと考えられる。さらに、本発明の電解質膜における親水性ドメインのマトリックスは、お互いにうまく連結していると考えられる。
SAXSプロファイルもまた、本発明の電解質膜がミクロ相分離したナノ構造を有することを示している。例えば、図12に示すように、電解質膜1および2の第1散乱ピークはそれぞれ、0.016Å-1および0.019Å-1であり、それぞれ約39nmおよび33nmのドメイン間隔を有するナノ構造の形成を示している。これは、TEM観察で観測したドメイン間の平均距離とよく一致する。
さらに、電解質膜2では、q値が0.019Å-1および0.034Å-1のピークが観測された(これらのq値の比は1:√3である)。このことは、電解質膜2中に六方充填ミクロ相分離構造が形成されていると考えられる。
さらに、電解質膜2では、q値が0.019Å-1および0.034Å-1のピークが観測された(これらのq値の比は1:√3である)。このことは、電解質膜2中に六方充填ミクロ相分離構造が形成されていると考えられる。
Claims (6)
- 下記式(1)で表される構造単位を有するブロック共重合体。
- 請求項1に記載のブロック共重合体と架橋剤とを含む樹脂組成物。
- 請求項2に記載の樹脂組成物から得られる架橋ブロック共重合体。
- 請求項3に記載の架橋ブロック共重合体を含む高分子電解質膜。
- ガス拡散層、触媒層、請求項4に記載の高分子電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体。
- 請求項5に記載の膜−電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012257262A JP2014105230A (ja) | 2012-11-26 | 2012-11-26 | ブロック共重合体およびその用途 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019156886A (ja) * | 2018-03-07 | 2019-09-19 | 新機能科学株式会社 | コーティング用組成物 |
-
2012
- 2012-11-26 JP JP2012257262A patent/JP2014105230A/ja active Pending
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JP2019156886A (ja) * | 2018-03-07 | 2019-09-19 | 新機能科学株式会社 | コーティング用組成物 |
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