JP2014102084A - 液体試料分析のための多層試験片、およびそれを用いた測定方法 - Google Patents

液体試料分析のための多層試験片、およびそれを用いた測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】測定精度の高い生化学分析用試験片及びその製造方法、並びにその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】液体試料中の糖化蛋白質を分析するための多層試験片であって、親水性の繊維でつくられた織物であって、目付け30g/m以上100g/m以下、厚み50μm以上150μm以下、および、)嵩密度0.6−0.9g/mのすべてを満たす織物を含む構造体であって、少なくともプロテアーゼが担持された構造体である(a)層と、少なくともフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが担持された構造体である(b)層とが、試料点着面から(a)層/(b)層の順に積層されている多層試験片。
【選択図】なし

Description

本発明は、液体試料中の分析対象物を定量するための多層試験片、および測定方法に関する。
詳しくは、本発明は親水加工した合成繊維で作られた高密度織物で構築された構造体を利用することで液体試料の展開性を制御でき、測定精度が向上した分析用試験片、当該試験片の製造方法、当該試験片を使用した分析対象物の定量方法に関する。
臨床検査分野において、医療従事者が被験者の傍らで行う検査のことをPOCT(Point of care testing)という。臨床検査は検査結果に基づいて後の治療を行うことから、高い精度と迅速さが求められる。POCTはリアルタイムな臨床検査であるため、検査結果をその場で知ることができ、迅速な治療が行えることから注目を集めている。
生体試料中の微量な分析対象物を高い精度で迅速に定量する方法として、ドライケミストリーが有用である。ドライケミストリーとは分析対象物を測定するために必要な試薬が基材や容器内に乾燥した状態で置かれており、分析対象物を含む生体試料が添加されることにより、試薬が溶解し、反応が完結する分析素子のことである。ドライケミストリーでは測定試薬は全て乾燥状態にあるため、反応に必要な水分は生体試料の水分を利用している。従って分析試験片上で生体試料を均一展開することは高い測定精度を維持する上で重要である。
ドライケミストリーを用いた分析技術としては古くは特許文献1〜3が挙げられる。これらは複数の層からなる多層構造型試験片によって血液中のグルコース濃度を定量することができる試験片に関するものである。試験片の展開層として綿あるいは綿とポリエチレンテレフタレートとの混紡糸で作製された織物を用いて血液の展開性を改善している。また特許文献4には多孔質膜を使用した試験片を用いた血糖値測定装置に関する技術が公開されている。また特許文献5には、多孔質膜の細孔の孔径を調整することで血液の展開性が改善した多孔質膜、および多孔質膜の製造方法に関する技術が公開されている。
また。特許文献6および7には糖化蛋白質(例えば、糖化ヘモグロビン、ヘモグロビンA1c(HbA1c)など)を酵素比色法などにより定量することができる試験片が開示されている。これらの文献によれば、該試験片にはたとえば界面活性剤、プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(他に、ケトアミンオキシダーゼなど、種々の呼び方がある。)とペルオキシダーゼおよび色素が含有される。血液検体が試験片に滴下されると、界面活性剤により血球からヘモグロビンが取り出され、その後プロテアーゼが糖化ペプチドを切り出す。そして糖化ペプチドであるHbA1cにフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが反応し、HbA1cが酸化されて過酸化水素を発生させる。次に、過酸化水素と色素の存在下でペルオキシダーゼが反応し、発色反応が起きる。この発色反応を試験片とは別の測定機器により、別途測定されたヘモグロビン(Hb)とHbA1cの比によりHbA1cが算出される。
特開昭59−108942 特開昭60−82859 特開昭60−222770 特開2000−46834 特開2001−164029 特開2004−4071 特開2004−333452
ところが、従来の織物や多孔質膜を用いて作られた分析試験片を用いて生体試料を測定した場合、頻度はさほど多くないものの、測定の再現性が悪くなり定量性を著しく損なうケースが見られた。
上記のような課題に対して、本発明者らは測定精度の高い分析試験片を開発すべく検討を重ねたところ、水分を含有する生体試料の試験片上での展開性が生体試料の種類や性質に影響されるために展開ムラを生じ、測定の再現性を悪くしていることがわかった。
たとえば、ポリエチレン類などの疎水性の素材で作られた分析試験片は、液体試料をはじいて、展開ムラを生じさせる。疎水性素材の表面を親水加工した素材を用いて作られた分析試験片も知られているが、このような試験片でも展開ムラを十分になくすことは出来なかった。
さらに、血液中の糖化蛋白質(たとえば、HbA1c)測定の場合は、反応が、プロテアーゼが糖化ペプチドを切り出す反応、次いで、糖化ペプチドであるHbA1cにフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが反応する反応、の順に進むが、従来技術においては一般にプロテアーゼが糖化ペプチドを切り出す反応の速度が遅いため、ある程度長時間(たとえば、3分ないし5分間)プロテアーゼを反応させることが求められており、そのためには液体試料を、一定以上の時間、試験片においてプロテアーゼが担持されている部分に留める必要があるが、疎水性の素材を用いた場合、点着した液体試料の拡がりが速すぎると、試験片に担持されているプロテアーゼが十分に溶解せず、そのような場合には糖化蛋白質の分解が十分に行われない問題点があることを突き止めた。
そこで発明者らは、そのような観点から試験片に用いられる素材を見直したところ、綿や濾紙など親水性の素材を中心に作られた分析試験片は、液体試料の展開がスムーズで展開ムラはないように思われたが、意外なことに、このような試験片においても、液体試料の展開が速いにもかかわらず測定精度が劣る場合があることが判明した。
当初は、この現象がなぜ起こるのかわからなかったが、発明者らがさらに検討したところ、綿や濾紙など親水性の素材では多層の試験片の場合、液体試料が素材の表面だけではなく内部まで浸透し、液体試料を次の層へ送りだす放出性が低いため、反応が進みにくいことを突き止めた。
発明者らは、次に、この新たに見出した問題点を解決するために、液体試料の展開により適した基材を見出すべく、さまざまな材質や形状のものを探索した結果、親水加工した合成繊維で作られた高密度織物で構築された構造体を利用することで、液体試料の展開性を高めるとともに液体試料が過度に拡散せず該構造体上で留まるために、糖化蛋白質のように長時間の反応を要するステップを含む方法においても高い測定精度を有する分析用試験片を作製することに成功した。
発明者らはさらに、高密度織物に異形断面糸を用いることにより、さらに優れた展開性を有することを見出した。発明者らはさらに、親水加工した合成繊維で構築された織物などの構造体における異形断面糸の割合を調節することで、液体試料の展開性を調節できることを見出した。この知見により、分析の試料の状態や目的成分に応じて、測定に適した試験片を構築することが出来るようになった。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
[項1]液体試料中の糖化蛋白質を分析するための多層試験片であって、少なくとも下記(a)層と(b)層とが、試料点着面から(a)層/(b)層の順に積層されている多層試験片。
(a)層:親水性の繊維でつくられた織物であって以下の(i)〜(iii)のすべてを満たす織物を含み、かつ、少なくともプロテアーゼが担持された構造体
(i)目付け30g/m以上100g/m以下
(ii)厚み50μm以上150μm以下
(iii)嵩密度0.6−0.9g/m
(b)層:少なくともフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが担持された構造体
[項2](a)層における織物が、平織り組織である、項1に記載の試験片。
[項3](a)層における繊維が、ポリエステル類、ポリエーテルスルホン類、ポリ塩化ビニル類、ポリウレタン類、アクリル類およびナイロン類からなる群の中から選ばれたいずれかを親水加工したものである、項1または2に記載の試験片。
[項4](a)層において、繊維の親水加工の少なくとも一部が親水性ポリマーでなされている、項1〜3のいずれかに記載の試験片。
[項5]親水性ポリマーがポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリエステルポリエーテルブロック共重合体からなる群の中から選ばれたいずれかである、項4に記載の試験片。
[項6](a)層における織物に異型断面糸を用いる、項1〜5のいずれかに記載の試験片。[項7]異形断面糸の横断面形状が、三角形、四角形、五角形、六角形、Y字形、T字形、H字形、U字形、W字形、菱形および星形からなる群の中から選ばれたいずれかである、項6に記載の試験片。
[項8](a)層の構造体を構成する異形断面糸の割合が、40%以上100%以下である、項6または7に記載の試験片。
[項9](a)層の構造体を構成する織物が以下の(i)〜(iv)を満たす、項1〜8のいずれかに記載の構造体。
(i)該織物を構成する経糸と緯糸の本数が、それぞれ、経糸80〜200本/2.54cm、緯糸80〜200本/2.54cmの組合せである
(ii)該織物を構成する糸の総繊度が11dtexから122dtexである
(iii)該織物を構成する糸の単糸繊度が0.5dtex以下である
(iv)異型断面糸の割合が25%以上100%以下である親水性の繊維で構成される
[項10]項1〜9のいずれかに記載の試験片を用いて液体試料中の糖化蛋白質を分析する方法。
[項11]項1〜9のいずれかに記載の試験片を含むプロダクト。
本発明の分析用試験片は、液体試料の展開性を制御でき均一に展開できるので、生体試料などの液体試料中に含まれる微量の分析対象物質でも高い精度で測定することが可能である。
経糸78dtex/216フィラメントのポリエステル繊維と緯糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 経糸78dtex/216フィラメントのポリエステル繊維と緯糸78dtex/216のポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 経糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維と緯糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 図4は経糸24dtex/48フィラメントのポリエステル繊維と緯糸24dtex/48フィラメントのポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 経糸56dtex/24フィラメントのポリエステル繊維と緯糸56dtex/24フィラメントのポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 経糸56dtex/24フィラメントのポリエステル繊維と緯糸56dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 経糸122dtex/60フィラメントのポリエステル繊維と緯糸122dtex/60のポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 経糸78dtex/216フィラメントのポリエステル繊維と緯糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 経糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維と緯糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用いて作製した織物を用いた試験片を用い、血液検体を点着した場合の反射吸光度の変化を示す。 Y字形の異形断面糸の説明 Y字形の異形断面糸の説明 本発明の試験片を用いてHbA1c測定を行うための装置例 本発明の試験片を用いてHbA1c測定を行うための装置例
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において「測定」「分析」「定量」の語は特に断らない限り同義である。
(測定対象物および測定試料)
本発明において、測定の対象は糖化蛋白質である。糖化蛋白質は、測定原理として、プロテアーゼが「糖化ペプチドおよび/または糖化アミノ酸」(以下「糖化ペプチド等」とも表記する。)を切り出す反応、および、切り出された糖化ペプチド等にフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを作用させる反応、を含む方法を採りうるものであれば特に限定されない。例えば、糖化アルブミンや糖化ヘモグロビンが例示できる。糖化ヘモグロビンとしてはHbA1cが例示できる。
本発明において、測定試料は液体であれば特に限定されない。例えば、血液、リンパ液、髄液、汗、尿、涙液、唾液、皮膚、粘膜、毛髪等などの生体試料や、飲料水、調味料などの食品類に由来するものが挙げられる。液体でないものであっても、抽出などの手段を経て液状に調製したものであれば試料とすることができる。血液においては、全血のほか、血液を遠心分離して得られた血清、血球または血漿を試料とすることができる。また、生体試料はヒト由来に限らず、イヌ、ネコ、ウシ等の哺乳動物由来の生体試料も対象である。
本発明において、測定試料の量は特に限定されないが、例えば1〜50μLが好ましく、1〜30μLがより好ましく、1〜10μLがさらに好ましい。測定試料量が1μLより少ないと、多層試験片の最上層から最下層まで展開できない恐れがある。一方、測定試料量が50μLより多いと、例えば測定試料が血液の場合、患者の負担が大きくなるため好ましくない。
(糖化蛋白質の測定原理)
本発明において、多層試験片を用いて糖化蛋白質を測定する原理は、糖化蛋白質と、糖化蛋白質に特異的に反応する試薬とが、液体試料の水分を利用した水系中で反応することにより起こる物理化学的変化を検知する方法であれば、特に限定されない。
例えば、酵素反応を測定試料中の水分によって行う(いわゆる、ドライケミストリー)ことで多層試験片を呈色させ、その呈色の程度を反射光測定によって検知する方法(いわゆる、酵素比色法)が挙げられる。そのような方法として、たとえば実用新案登録第3175929号に記載の測定装置を用いて試料中の糖化蛋白質を測定する方法が知られている。
以下に糖化蛋白質の一例である糖化ヘモグロビンを測定する場合の反応について例示するが、本発明を何ら限定するものではない。
(1)測定試料中の赤血球と界面活性剤を反応させ、溶血させ、糖化ヘモグロビンを取り出す工程。
(2)前記糖化ヘモグロビンとプロテアーゼを反応させ、糖化ヘモグロビンの糖化されたβ鎖N末端から糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドを切り出す工程。
(3)前記糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドと糖化アミノ酸オキシダーゼを反応させ、過酸化水素を生成する工程。
(4)ペルオキシダーゼ存在下で、前記過酸化水素と酸化還元系発色試薬を反応させ、発色させる工程。
(5)前記発色から測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量する工程。
例えば、呈色した試験片に色素に特異的な吸収波長の光を照射し、反射光を測定することで、呈色の度合いを検出し、糖化蛋白質を定量することができる。
(多層試験片)
本発明の多層試験片の基本構成は、(a)層:(a)層:親水性の繊維でつくられた織物であって以下の(i)〜(iii)のすべてを満たす織物を含み、かつ、少なくともプロテアーゼが担持された構造体と、(b)層:少なくともフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが担持された構造体とが、試料点着面から(a)層/(b)層の順に積層された多層試験片である。
(i)目付け30g/m以上100g/m以下
(ii)厚み50μm以上150μm以下
(iii)嵩密度0.6−0.9g/m
本発明の多層試験片による測定は、例えば、(a)層で試料点着面に点着した液体試料を適度な範囲に展開させると同時に、試料をプロテアーゼと反応させて糖化ペプチド等を切り出し、(b)層で切り出した糖化ペプチド等と特異的に反応する試薬と反応させて、起こった物理化学的変化を試料点着面と反対側の面から検出することにより行うことが出来る。
本発明の多層試験片は、(a)層および(b)層以外に、全血から血球を濾別することで血漿または血清を得るための血液分離層や、透明支持層など、さらに任意の数の層を含んでもよい。
これらをすべて含めた、前記多層試験片の層数は、実施形態に合わせて変化し得るが、2〜4層が好ましく、2〜3層がさらに好ましい。
一方、層数が4層より多いと、最上層から最下層まで展開するのに必要な測定試料量が多くなるため、好ましくない。
前記多層試験片は、任意の手順を用いて作製することができる。例えば、複数の層を別個に作製し、次いで最終的な試験片に組み立てればよい。
((a)層)
(親水性の繊維)
(a)層の構造体に用いる親水性の繊維は、特に限定されない。たとえば綿、麻、毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、キュプラなどの再生繊維などが例示できる。あるいは、疎水性の繊維を親水加工したものでも良い。疎水性繊維に属するものとしては、例えば、ポリエステル系、ポリエーテルスルホン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、アクリル系またはナイロン系の高分子を用いた合成繊維が挙げられる。
詳細には、ポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等、オレフィン樹脂であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン等、ビニル樹脂であるポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル等、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、フッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂であるポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等、ポリアミド樹脂であるナイロン、アラミド等、セルロース類であるセルロースアセテート、ニトロセルロース、再生セルロース等が挙げられる。
なお、上記の物質を組み合わせた組成物であってもよいし、上記の物質(または上記物質の組み合わせ)を一部含む組成物であってもよい。
中でも、加工のしやすさと価格の観点からポリエステルが好ましい。
また、これらの合成繊維の原糸に使用するポリマー中には抗菌性、難燃性、吸湿性、吸水性等の機能性を有する種々の機能剤および共重合物さらには艶消し剤等が複数含有されていても構わない。
(織物)
(a)層の構造体に含まれる織物は、測定試料を、試料の点着部分からみて同一平面上(本明細書では、便宜上「水平方向」または「XY方向」とよぶ。)および垂直方向(前記「水平方向」に対して垂直な方向のことを言う。「Z方向」ともよぶ。)に適切に展開できるものであれば、いかなる形態にも限定されないが、シート構造体であることが好ましい。例えば、織物、編物、不織布など種々の形態をとることができる。中でも、糸が、経方向、緯方向とも均一に配置されることにより液体の水平面への展開性が均一になるため、平織りの織物が好ましい。
本発明において、上記織物のシートの目付けは30g/m以上100g/m以下であれば特に限定されない。目付けが100g/mを超えると織物の厚みが増し、密度も高くなり親水加工を行っても液体の展開性が遅くなる傾向にある。また、好ましい下限は50g/m以下であり、さらに好ましい下限は80g/mである。
本発明において、上記織物のシートの厚みは50μm以上150μm以下であれば特に限定されない。好ましい上限は125μmである。また、好ましい下限は80μmであり、さらに好ましい下限は100μmである。
本発明において、上記織物シートの嵩密度は0.6g/m以上0.9g/m以下であれば特に限定されない。嵩密度が0.6g/mより下回ると織物中の繊維間の距離が大きくなり毛細管現象が起こりやすく、液体が速く展開する傾向にある。嵩密度が0.9g/mを超えると織物中の繊維間距離が小さくなり隙間がなくなるため毛細管現象が起こりにくく液体の展開性が遅くなる傾向にある。
本発明において、上記織物のシートに用いる経糸の合成繊維の単糸繊度は特に限定されないが、0.5dpf以下が好ましい。好ましい下限は0.4dpfであり、さらに好ましい下限は0.3dpfである。単糸繊度が0.5dpfより大きい場合、織物を作製した場合、高密度になりにくい傾向にある。単糸繊度が0.3より小さい場合には、単糸が細すぎ織物を均一に作製することが難しくなる傾向にある。
本発明において、上記織物のシートに用いる合成繊維の総繊度は特に限定されないが、11〜122dtexの範囲内が好ましい。好ましい上限は84dtexであり、さらに好ましい上限は56dtexである。好ましい下限は22dtexである。dtexが大きい場合厚みが大きな織物になりやすく、検体の通過性が悪くなる傾向にある。dtexが22dtexより小さい場合、製造上繊維や織物を均一に作ることが難しくなる傾向にある。
(親水加工)
(a)層の構造体に疎水性の繊維を親水加工したものを用いる場合、その親水加工に用いる物質は特に限定されない。例えば親水性ポリマーが例示できる。
親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリエステルポリエーテルブロック共重合体からなる群の中から選ばれたいずれかを用いることが好ましい。
中でも、ポリエチレングリコールとポリエチレンテレフタレートのブロック共重合である表面処理が一般的である。
なお、親水性ポリマーは、上記の物質を組み合わせた組成物であってもよいし、上記の物質(または上記物質の組み合わせ)を一部含む組成物であってもよい。
市販品では、ICI社のPermalose TM、ポリエステルポリエーテルブロック共重合体を使用した変性ポリエステル系の樹脂の市販品として、高松油脂(株)製のSR−1000、SR−1800、SR−6200、SR−5000等が挙げられる。
(a)層の構造体に疎水性の繊維を親水加工したものを用いる場合、その親水加工法は特に限定されない。Pad dry法、吸尽加工法など、種々の公知の方法を用いることができる。
Pad dry法では繊維表面が親水加工される。吸尽加工法では繊維の内部まで親水加工剤が浸透する。
親水加工の具体的方法としては、織編物にポリエチレングリコールジアクリレートやその誘導体、またはポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体などの親水化剤を染色時に同浴加工することが好適に例示される。このほかにも、プラズマ処理、グラフト重合処理など、種々の公知の方法を用いればよい。
いずれの方法であっても、繊維表面の広い範囲が親水加工されるよう適宜条件を選択すればよく、その範囲は特に限定されないが、具体的には60%以上の表面が親水加工されていることが好ましい。さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
親水加工処理を施すことにより、反応試薬を均一に含侵することができ、加えて、展開された生体試料を速やかに吸収し、分析対象物質と反応試薬との反応を阻害しない高分子基材を得ることが出来る。
親水化剤の付着量は特に限定されないが、布帛の重量に対して0.25〜0.50重量%の範囲であることが好ましい。
親水加工の程度は、繊維表面の親水性と繊維そのものの疎水性とのバランスに影響を与えるが、繊維の内部まで親水加工剤が浸透しすぎると親水性が高くなりすぎて、液体試料の展開が遅くなる。
繊維が親水加工されているかどうかは、以下の方法等で吸水性を評価することにより確認することができる。
(ラローズ法):市販のラローズ法吸水性能測定装置(たとえば、東洋紡エンジニアリング製)を用いて吸水率を測定できる。吸水率は次式で求めることができる。
ラローズ法吸水率(wt%)=100×吸水量(ml=g)/試料の重量(g)
(バイレック法):JIS L1907−1998に従って、経方向と緯方向の吸水性を
測定することが出来る。
(異形断面糸)
(a)層の構造体に用いる繊維には、異形断面糸を含んでもよい。異形断面糸とは、横断面が円形でない繊維を意味する。
本発明で用いる異形断面糸の形状は、特に限定されない。代表的な形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形、Y字形、T字形、H字形、U字形、W字形等を挙げることができる。
中でも、Y字形断面からなるポリエステル異形断面糸(例えば、特開2003−3328に報告されている。)が好ましい。
本発明で用いるY字形の異形断面糸を、図10および図11を用いて説明する。本発明で用いるY字形の異形断面糸は、中心から約120°間隔の方向に3本のほぼ同じ長さの突起を有する。その異形係数(H/W)は特に限定されないが、2〜6の範囲内が好ましい。なお、ここで、原則として、Hは繊維単糸断面の最大幅(各突起の先端に接する外接円の直径:μm)、Wは繊維単糸断面の最小幅(中心部分に内接する内接円の直径:μm)をそれぞれ示す。
なお、繊維の物性やその製造方法を考慮すると、本発明の構造体(たとえば織物)におけるY字形の異型断面糸のすべての断面形状が図10に示した図形と数学的な意味で相似にならないことは当然に想定できる。例えば織物の状態で異型断面糸の断面形状観察時に、突起の中心からの等方性が失われている場合がありうる(図11)。このような場合であっても、異型係数のHは3本の突起の先端に接する外接円の直径とする。
1つの構造体に用いられているY字形の異型断面糸のうち少なくとも10本が上記の特徴を有するときは、その構造体に用いられている全てのY字形の異型断面糸が上記の特徴を満たすものと推定する。
(異形断面糸を含む構造体に占める異形断面糸の割合)
(a)層の構造体を構成する異形断面糸の割合は、特に限定されないが、25%以上100%以下が好ましい。さらには、40%以上100%以下であることが好ましい。さらに好ましい異型断面糸の比率の下限は41%、さらに好ましい下限は43%、さらに好ましい下限は46%である。一方、好ましい上限は75%、さらに好ましい上限は50%である。異型断面糸の断面形態は特に限定されないが、上述のとおり、Y字形断面を有するものが好ましい。
(a)層の構造体は、一般的な丸型断面糸と異型断面糸をどのような形態で織り込んでもよい。技術的に可能であれば2種類以上の糸を縦横ランダムに織り込んでもよいが、一方を経糸にし、もう一方を緯糸にするのが好ましい。
異形断面糸の割合は、(a)層の構造体が織物の場合、該織物を構成する経糸と緯糸との合計本数に占める異形断面糸の本数割合で求めることができる。
(a)層の構造体に用いる織物において、一般的な丸型断面糸を経糸にし、異型断面糸を緯糸にする場合、該織物を構成する経糸と緯糸の本数は、特に限定されないが、それぞれ、経糸80〜200本/2.54cm、緯糸80〜200本/2.54cmの組合せが好ましい。さらには、それぞれ、経糸70〜100本/2.54cmと緯糸70〜100本/2.54cmの組合せであることが好ましい。さらには、経糸85〜95本/2.54cmと緯糸85〜95本/2.54cmの組合せであることが好ましい。さらには、経糸85〜90本/2.54cmと緯糸85〜90本/2.54cmの組合せであることが好ましい。
経糸、緯糸とも200本/を超えると高密度になりすぎ、親水加工を行っても吸水特性がなく好ましくない。経糸、緯糸とも80本/2.54cm以下の場合には密度が低くなりすぎ、親水加工を行った場合、吸水特性が良くなりすぎ、液体の展開速度が速いため滞留時間を稼ぐことができず、酵素反応も不十分となり好ましくない。
なお、本明細書で「本/2.54cm」は、「本/インチ(inch)」と同義である。
緯糸に異型断面糸を用い織物を作製した場合、異型断面の凹凸効果により、毛細管現象が起こりやすくなる。そのためその織物に液体、特に血液のような粘度の高い液体を滴下した場合でも、高毛細管現象力により均一に織物中を通過させることができる。そのためその織物中でプロテアーゼなどの酵素反応を行う場合でも、酵素反応が均一にすることができる。さらには高密度織物に異型断面糸を用いて作製した場合には、まず高密度織物に親水加工を施し液体が通過するようにし、さらには異型断面糸の効果により、液体の展開及び通過時間を長くし、均一に通過するようにでき、プロテアーゼのように反応時間が長いものでも均一に反応をさせることができ、結果的に糖化ペプチドを切り出す量を増やすことができる。
(プロテアーゼ)
本発明に用いるプロテアーゼとしては、糖化蛋白質に作用して糖化ペプチド等を切り出すもの、例えば、糖化ヘモグロビンの糖化されたβ鎖N末端に作用して糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドを切り出すものであれば、いかなる種類のプロテアーゼを用いてもよく、例えば動物、植物、微生物由来のプロテアーゼ等が挙げられる。以下にプロテアーゼの具体例を示すが、本発明を何ら限定するものではない。
動物由来のプロテアーゼとしては、ファクターXa(factorXa)、プラスミン(plasmin)、スロンビン(thrombin)、ペプシン(pepsin)、ロイシンアミノペプチダーゼ(leucinaminopeptidase)、パンクレアチン(pancreatin)、エラスターゼ(elastase)、トリプシン(trypsin)、キモトリプシンA(chymotrypsinA)、アミノペプチダーゼM(aminopeptidaseM)、カルボキシペプチダーゼA(carboxypeptidaseA)、カルボキシペプチダーゼB(carboxypeptidaseB)、カルパイン(calpain)、カテプシンB(cathepsinB)、カテプシンC(cathepsinC)、カテプシンD(cathepsinD)、エンドプロテイナーゼArg−C(endoproteinaseArg−C)等が挙げられる。
植物由来のプロテアーゼとしては、カルボキシペプチダーゼW(carboxypeptidaseW)、カリクレイン(kallikrein)、フィシン(ficin)、パパイン(papain)、キモパパイン(chimopapain)、ブロメライン(bromelain)等が挙げられる。
微生物由来のプロテアーゼとしては、ズブチリシン(subtilisin)、サーモリシン(thermolysin)、ディスパーゼ(dispase)、プロテイナーゼN(proteinaseN)等に代表されるバチルス(Bacillus)由来プロテアーゼ、IP酵素等に代表されるアスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ、プロナーゼ(pronase)等に代表されるストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼ、プロテイナーゼK(proteinaseK)等に代表されるトリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼ、ペプチダーゼR(peptidaseR)等に代表されるリゾバス(Rhizopus)由来プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼP、(carboxypeptidaseP)、PD酵素等に代表されるペニシリウム(Penicillium)由来プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼGlu−C(endoproteinaseGlu−C)等に代表されるスタフィロコッカス(Staphylococcus)由来プロテアーゼ、クロストリパイン(clostripain)等に代表されるクロストリジウム(Clostridium)由来プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼLys−C(endoproteinaseLys−C)等に代表されるリソバクター(Lysobacter)由来プロテアーゼ、メタロエンドペプチダーゼ(metalloendopeputidase)等に代表されるグリフォラ(Grifola)由来プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼY(carboxypeptidaseY)、プロテイナーゼA(proteinaseA)等に代表される酵母(Yeast)由来プロテアーゼ、アミノペプチダーゼT(aminopeptidaseT)等に代表されるサーマス(Thermus)由来プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼAsp−N(endoproteinaseAsp−N)等に代表されるシュードモナス(Pseudomonus)由来プロテアーゼ、リジルエンドペプチダーゼ(lysylendopeputidase)、アクロモペプチダーゼ(achromopeputidase)等に代表されるアクロモバクター(Achromobacter)由来プロテアーゼ等が挙げられる
これらの中でも、安定性、反応性(ヘモグロビンの切断速度)、入手の容易性、価格等の理由から、微生物由来のプロテアーゼが好ましく、バチルス(Bacillus)由来プロテアーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼ、およびトリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼからなる群より選ばれた1種以上であることがより好ましい。市販品としては、バチルス(Bacillus)由来プロテアーゼのトヨチームNEP(東洋紡績社製)、Type−X(シグマ社製)、Type−XXIV(シグマ社製)、サーモリシン(大和化成社製)、サモアーゼPC10(大和化成社製)、アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼのType−XIII(シグマ社製)、Type−XXIII(シグマ社製)、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼのType−XIV、トリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼのプロテイナーゼK(ロシュ社製)等が好適に用いられる。
これらの中でも、ヘモグロビンA1c測定の観点から、バチルス(Bacillus)由来プロテアーゼのトヨチームNEP(東洋紡績社製)、Type−X(シグマ社製)、Type−XXIV(シグマ社製)、サーモリシン(大和化成社製)、サモアーゼPC10(大和化成社製)、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼのType−XIV、プロナーゼ、プロナーゼEがより好適に用いられる。
前記プロテアーゼは、目的とする活性が発現すれば精製物であっても粗精製物であってもよい。また、遺伝子操作により作られたものでもよく、化学修飾の有無も問わない。さらに、前記プロテアーゼは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記プロテアーゼの濃度は、特に限定されないが、0.1〜10000U/cmであることが好ましく、1〜1000U/cmがより好ましい。プロテアーゼ濃度が0.1U/cmより少ないと、反応性の低下により測定時間が長くなるため好ましくない。一方、プロテアーゼ濃度が10000U/cmより多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
前記プロテアーゼの反応を行う際のpHは、無調整でもよいが、使用するプロテアーゼの至適pHとなるよう適当なpH調整剤、例えば後記の緩衝剤によって調整するのが好ましい。
((b)層)
(フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ)
本発明の試験片の(b)層には、少なくともフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含む。
本発明に用いるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAODとも表記する。)は、公知文献では「フルクトシルアミンオキシダーゼ」「糖化アミノ酸オキシダーゼ」「フルクトシルペプチドオキシダーゼ」「フルクトシルアミン酸化酵素」「フルクトシルアミノ酸酸化酵素」「フルクトシルペプチド酸化酵素」「糖化アミンオキシダーゼ」「糖化アミノ酸オキシダーゼ」「糖化ペプチドオキシダーゼ」「糖化アミン酸化酵素」「糖化アミノ酸酸化酵素」「糖化ペプチド酸化酵素」「アマドリアーゼ」「ケトアミンオキシダーゼ」「ケトアミン酸化酵素」等、種々の名称で呼ばれている。
本発明に用いるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼとしては、糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドに特異的に作用し、過酸化水素を生成する酵素であれば、いかなる種類の酵素を用いてもよい。以下にフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの具体例を示すが、本発明を何ら限定するものではない。
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼとしては、ギベレラ(Gibberella)由来酵素、アスペルギルス(Aspergillus)由来酵素、ペニシリウム(Penicillium)由来酵素、フサリウム(Fusarium)由来酵素、コリネバクテリウム(Corynebacterium)由来酵素、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、ユウペニシリウム(Eupenicillium)由来酵素、アカエトミエラ(Achaetomiella)由来酵素、カエトミウム(Chaetomium)由来酵素、大腸菌由来酵素、酵母属デバリオマイゼス(Debaryomyces)由来酵素、カーブラリア(Curvularia)由来酵素、ネオコスモスポラ(Neocosmospora)由来酵素、クリプトコッカス(Cryptococcus)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素、カンジダ(Candida)由来酵素、アクレモニウム(Acremonium)由来酵素等が挙げられる。
これらの中でも、安定性、反応性(糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドの酸化速度)、入手の容易性、価格等の理由から、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、ユウペニシリウム(Eupenicillium)由来酵素、カーブラリア(Curvularia)由来酵素、ネオコスモスポラ(Neocosmospora)由来酵素、アスペルギルス(Aspergillus)由来酵素、クリプトコッカス(Cryptococcus)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素からなる群より選ばれた1種以上であることが好ましく、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、アスペルギルス(Aspergillus)由来酵素、クリプトコッカス(Cryptococcus)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素からなる群より選ばれた1種以上であることがより好ましい。
これらの中でも、ヘモグロビンA1c測定の観点から、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素からなる群より選ばれた1種以上であることがさらに好ましい。
前記フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、目的とする活性が発現すれば精製物であっても粗精製物であってもよい。また、遺伝子操作により作られたものでもよく、化学修飾の有無も問わない。さらに、前記フルクトシルアミノ酸オキシダーゼは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの濃度は、特に限定されないが、0.01〜1000U/cmであることが好ましく、0.1〜100U/cmがより好ましい。フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ濃度が0.01U/cmより少ないと、反応性の低下により測定時間が長くなるため好ましくない。一方、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ濃度が1000U/cmより多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
前記フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの反応を行う際のpHは、無調整でもよいが、使用するフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの至適pHとなるよう適当なpH調整剤、例えば後記の緩衝剤によって調整するのが好ましい。
(その他必要な試薬)
本発明の試験片の(b)層には、さらに、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの反応によって生じた過酸化水素を、検出が容易な物質に変換するのに必要な試薬を含むことが好ましい。例えば、ペルオキシダーゼ、および、ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元系発色試薬、が挙げられる。
本発明に用いるペルオキシダーゼとしては、過酸化水素と酸化還元系発色試薬との反応を触媒する酵素であれば、いかなる種類の酵素を用いてもよく、例えば植物由来、細菌由来、担子菌由来のペルオキシダーゼが挙げられる。これらの中でも、純度、入手の容易性、価格等の理由から、西洋ワサビ、イネ、大豆由来のペルオキシダーゼが好ましく、西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼがより好ましい。市販品としては、PEO−131(東洋紡績社製)、PEO−301(東洋紡績社製)、PEO−302(東洋紡績社製)等が好適に用いられる。
酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー、ロイコ体等が挙げられる。なお、水素供与体とカップラーを用いた代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法である。
トリンダー法に用いる水素供与体としては、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等が知られている。また、カップラーとしては4−アミノアンチピリン(4AA)、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等が知られている。これらはいずれも、市販の試薬を入手することができる。
ロイコ体としては、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体、ジフェニルアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、4,4’−ベンジリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−ビス[N−エチル−N−(3−スルホプロピルアミノ)−2,6−ジメチルフェニル]メタン、1−(エチルアミノチオカルボニル)−2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)イミダゾール、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン塩(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩(DA67)等が挙げられる。これらはいずれも、市販の試薬を入手することができる。
これらの中でも、モル吸光係数、極大吸収波長等の理由から、ロイコ体が好ましく、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン塩(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩(DA67)がより好ましい。
前記ペルオキシダーゼの含有量は特に限定されないが、好ましくは0.01〜1000U/cm、さらに好ましくは0.1〜100U/cmである。。ペルオキシダーゼ濃度が0.01U/cmより少ないと、反応性の低下により測定時間が長くなるため好ましくない。一方、ペルオキシダーゼ濃度が1000U/cmより多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
前記酸化還元系発色試薬の濃度は、特に限定されないが、0.0001〜10mg/cmであるとこが好ましく0.001〜1mg/cmがより好ましい。酸化還元系発色試薬濃度が0.0001mg/cmより少ないと、感度が低下する恐れがある。一方、酸化還元系発色試薬濃度が10mg/cmより多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
本発明の試験片の(b)層には、界面活性剤を含有しても良い。本発明に用いる界面活性剤としては、溶血剤および/またはプロテアーゼ反応促進剤として作用すれば、いかなる種類の界面活性剤を用いてもよいが、溶血剤およびプロテアーゼ反応促進剤として作用する界面活性剤が好ましい。
前記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(Triton(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、溶血剤としての反応性(溶血の速度)、プロテアーゼ反応促進剤としての作用性、価格等の理由からポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(Triton(登録商標)系界面活性剤等)が好ましい。市販品としては、TritonX(登録商標)−100(ナカライテスク社製)、TritonX(登録商標)−114(ナカライテスク社製)、Nonidet(登録商標)P−40(ナカライテスク社製)等が好適に用いられる。また、前記界面活性剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記界面活性剤の親水親油バランス(Hydrophile Lipophile Blance:HLB)は、10〜20であることが好ましく、12〜20がより好ましく、14〜20がさらに好ましい。HLB値が10より小さいと、十分な溶血効果、およびプロテアーゼ反応促進効果が得られない恐れがある。一方、HLB値が20より大きい界面活性剤は、HLBの定義上存在しない。
前記界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、0.0001〜10mg/cmであるとこが好ましく0.001〜1mg/cmがより好ましい。界面活性剤濃度が0.0001mg/cmより少ないと、十分な溶血効果、およびプロテアーゼ反応促進効果が得られない恐れがある。一方、界面活性剤濃度が10mg/cmより多くしても、効果の向上は見られない。
本発明の試験片の(b)層には、緩衝剤を含有しても良い。緩衝剤としては、プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼやペルオキシダーゼの酵素反応の至適pH値あるいは至適pH値付近において緩衝能を有する緩衝剤であって、かつ、過酸化水素検出試薬のカップリング反応を阻害しない緩衝剤を選択することが好ましい。これらの条件を両立する緩衝剤としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、酢酸緩衝液などが挙げられる。これらの緩衝液の中でもリン酸緩衝液が好適である。
緩衝液のpH範囲としては、pH5.0〜8.0、好ましくはpH5.5〜7.5、さらに好ましくはpH6.0〜7.0の範囲である。
緩衝液の濃度としては、液体試料に溶解したときに10〜50mMになるよう設定するのが好ましい。さらに好ましくは20〜40mM、さらに好ましくは25〜35mMの範囲に設定すればよい。
(その他試薬)
本発明では前記試薬(界面活性剤、プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、緩衝剤、酸化還元系発色試薬等)の他、必要に応じてヘモグロビンの酸化剤(フェロシアン化物、アジ化物、亜硝酸塩、硝酸塩等)、酵素反応を妨害するイオンを捕捉するキレート試薬(エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸、フェナントロリン、ポルフィリン、クラウンエーテル等)、過酸化水素の定量の妨害物質であるアスコルビン酸を消去するアスコルビン酸オキシダーゼ、塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等)、酵素安定化剤(単糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール、グリセロール、グルコン酸塩、アミノ酸類、アルブミン類、グロブリン類、繊維性タンパク質等)、酸化還元系発色試薬安定化剤(シクロデキストリン類、還元性チオアルコール類、還元性硫酸塩類等)を添加してもよい。これらは、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明では、(a)層と(b)層が試料点着面から(a)層/(b)層の順に積層されており、(a)層にプロテアーゼが担持され、かつ、(b)層にフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが担持されている限り、上記の各試薬(ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬、界面活性剤、緩衝剤、その他試薬)の配置は制限されない。例えば(a)層、(b)層のいずれに配置してもよいし、(b)層を2層以上の複数層分けてそのいずれかの層に配置してもよい。あるいは、同一の試薬を複数の層に配置することも可能である。
例えば、ペルオキシダーゼと酸化還元系発色試薬が同一層に担持されると酸化還元系発色試薬の自己発色が生じる恐れがある。つまり、多層試験片の保存安定性が著しく低下する恐れがある。このような場合、必要な試薬を2層以上に分けて担持させれば、より良好な保存安定性を確保することができる。(以下、液体試料中の測定対象物と特異的に反応する試薬が含浸された構造体(たとえば(b)層)が2層以上に分かれる場合は、(b1)層、(b2層)などと表記する。)
(構造体)
本発明の試験片の(b)層の構造体は特に限定されない。糖化蛋白質と特異的に反応する試薬と、反応に応じて検出可能な変化を生じる試薬とを必要量担持でき、かつ測定試料を水平方向および垂直方向に適切に展開できれば、いかなる形態、組成のものを用いてもよい。例えば、ろ紙、布帛(織物、編物、不織布など)などの繊維構造体、多孔質膜(メンブレンフィルター)、フィルム等の自立可能なものや、高分子ゲル等の自立不可能なものが挙げられる。なお、高分子ゲル等の自立不可能なものを用いる際は、ろ紙、繊維構造体、多孔質膜(メンブレンフィルター)、フィルム等の自立可能なものを支持体として設けるのが好ましい。
前記構造体へ試薬を含浸させる方法は、特に限定されず任意の手順を用いて行うことができる。例えば、前記構造体に、上記で例示した一種以上の試薬溶液を浸漬させ、乾燥する慣用の手順を用いればよい。
(糖化蛋白質を分析する方法)
本発明の別の形態は、上記で説明した種々の試験片を用いて液体試料中の糖化蛋白質を分析する方法である。その方法は、本発明の試験片を用いる限り特に限定されないが、例えば、図12および図13に示す測定装置100を用いる方法が例示される。
測定装置100は、試験片200を装着部1に固定でき、かつ、固定した試験片の温度制御が可能な測定装置であって、該試験片に対して、試験片の試料点着面とは反対側の面(たとえば、(a)層と(b)層のみから構成されている試験片であれば、(b)層が露出している面)に向かって色素に特異的な吸収波長の光を照射でき、さらには、照射した光が当該(b)層に反射した光を受光できるように発光素子2および受光素子3を配置してあり、得られた測光値を経時的に測定することができるよう設計されている。
試験片を測定装置の挿入口に設置し、電源をONにして発光素子と受光素子とを連動させ、発光素子から特定波長(10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩(DA67)のロイコ色素の場合では660nm)の光を照射させる。血液検体を試験片に点着させることで試薬との反応が開始する。HbA1c濃度は、血液検体が浸透した試験片の呈色度合いを反射光として測定することで評価することができる。またヘモグロビン濃度を同様に試験片の下面より血液検体が浸透した呈色度合いを反射光として測定することで測定することができる。そしてそれぞれもとめたHbA1c濃度からHb濃度を割ることでHbA1c%を計算できる。
(多層試験片を含むプロダクト)
本明細書において「多層試験片を含むプロダクト」とは、使用者が糖化蛋白質測定を実行する目的で用いる1システムのうち一部または全部を構成する製品形態であって、本発明の試験片を含むもの(たとえば試験片を容器にはめ込んだものや、チップ様に成型させたもの)、本発明の試験片を使用することを前提とするもの、本発明の糖化蛋白質分析方法の実施に使用するものなどを包含する。したがって、本発明のプロダクトは、試験片のほか、該試験片を消耗品として使用する測定機器、あるいは糖化蛋白質測定システム全体に及ぶ。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1 分析用試験片の作製
(反応層a((a)層)の作製)
表1に示すa〜fの糸を種々組み合わせて各種織物を作製した。糸の素材はポリエステルとし、糸断面の形状や太さが異なる様々な形態の糸を組み合わせた。それぞれの織物の具体的な態様は後述の実施例で示す。
それぞれの織物を、その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、下記の組成の反応試薬を含浸させ反応層aとした。

プロテアーゼ(TYPE XIVシグマ製) 2.5mg/cm
リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)(pH6.5) 30mM
トリトンX−100(ナカライテスク社製) 1%

その後、角型真空乾燥器DP83(ヤマト科学株式会社製)を用いて、40℃、1時間、0.1kPaで減圧乾燥し反応層を作製した。
(反応層b((b)層)の作製)
φ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に下記の組成の反応試薬を含浸させ反応層とした。

フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FPO−301東洋紡績株式会社製) 10U/cm
ペルオキシダーゼ(PEO−302東洋紡績株式会社製) 40U/cm
10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩(DA67) 0.05mg/cm
リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)(pH6.5) 30mM
トリトンX−100(ナカライテスク社製) 1%

その後、角型真空乾燥器DP83(ヤマト科学株式会社製)を用いて、40℃、1時間、0.1kPaで減圧乾燥し反応層を作製した。
(多層試験片の作製)
前記反応層aを前記反応層bの上に配置し積層することで分析用多層試験片を作製した。
実施例2 血液検体
血液検体はNOVA ONE DIAGNOSTICS製Liquid Whole Blood HbA1c Diabetes Control and Linearity P/N NOD HbL−G04041−100を解凍して使用した。
実施例3 血液検体の展開性測定
図12および図13に示す測定装置100を用いて、本発明の試験片における血液検体の展開性を評価した。測定に用いた多層試験片を表2に示す。
測定装置100は、試験片200を装着部1に固定でき、かつ、固定した試験片の温度制御が可能な測定装置であって、該試験片に対して、試験片の試料点着面とは反対側の面(反応層が露出している面)に向かって所望の波長の光を照射でき、さらには、照射した光が反応層に反射した光を受光できるように発光素子2および受光素子3を配置してあり、得られた測光値を経時的に測定することができる。
実施例1で作製した多層試験片を予め37℃に調整した測定装置の挿入口に設置した。電源スイッチをONにすることにより、発光素子と受光素子とを連動させ、発光素子から波長470nmの光を照射させ測定を開始した。
測定開始してから10秒後に実施例2で調整した血液検体を10μL用いて試験片に点着させた。血液検体の展開性は、血液検体が浸透した試験片の色調の変化を反射光の変化として測定することで評価した。
波長470nmでの反射光測定は、試料中の糖化ペプチドが酵素反応することにより生じる色素の影響を受けないので血液そのものの色を反映する。したがって、試験片の(a)層に点着した血液検体が展開して、(b)層の光を反射する面に達するまでの挙動を把握することが出来る。
図1〜9および表2に血液検体の展開性を測定した結果を示す。
図1は経糸78dtex/216フィラメントのポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸84dtex/24フィラメントのY字形の異型断面(本明細書では「Y断面」とも略称する。)ポリエステル繊維を用いて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から3分後程度まで徐々に展開し、吸光度の急激な乱れもなく5分間で均一に血液が展開していることを示している。
図2は経糸78dtex/216フィラメントのポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸78dtex/216のポリエステル繊維を用いて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から徐々に血液展開しているが、展開速度が遅く、展開ムラによる吸光度の乱れもあり5分間で血液展開が完全に終了していないことを示している。
図3は経糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用いて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から約30秒程度で血液が展開し、展開速度が速く均一で1分以内には血液の展開が終了していること示している。しかし、このように、点着した液体試料の拡がりが速すぎると、試験片に担持されているプロテアーゼが十分に溶解せず、そのため糖化蛋白質の分解が十分に行われない場合があるため好ましくない。
図4は経糸24dtex/48フィラメントのポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸24dtex/48フィラメントのポリエステル繊維を用いて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から約60秒程度で血液が展開し、2分以内には血液の展開が終了しているが、血液展開ムラがある。
図5は経糸56dtex/24フィラメントのポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸56dtex/24フィラメントのポリエステル繊維を用いて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から約60秒程度で血液が展開し、1分以内には血液の展開が終了しているが血液展開ムラがある。さらに、このように、点着した液体試料の拡がりが速すぎると、試験片に担持されているプロテアーゼが十分に溶解せず、そのため糖化蛋白質の分解が十分に行われない場合があるため好ましくない。
図6は経糸56dtex/24フィラメントのポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸56dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用いて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から約45秒程度で血液が展開し、展開速度が速く均一で1分半以内には血液の展開が終了していること示している。しかし、このように、点着した液体試料の拡がりが速すぎると、試験片に担持されているプロテアーゼが十分に溶解せず、そのため糖化蛋白質の分解が十分に行われない場合があるため好ましくない。
図7は経糸122dtex/60フィラメントのポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸122dtex/60のポリエステル繊維を用いて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から徐々に血液展開しているが、織物の厚みが大きいため展開速度が遅く、展開ムラによる吸光度の乱れもあり5分間で血液展開が完全に終了していないことを示している。
図8は、経糸78dtex/216フィラメントのポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用い、図1の場合より経糸と緯糸の密度をそれぞれ高めて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。血液滴下開始から徐々に血液展開しているが、図1の場合と比べて、織物の厚みが大きいため展開速度が遅く、5分間で血液展開が完全に終了していないことを示している。
図9は経糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維(東洋紡エステル)と緯糸84dtex/24フィラメントのY断面ポリエステル繊維を用い、図3の場合より経糸と緯糸の密度をそれぞれ高めて織物を作製した。その織物を、10%(w/v%)の濃度で調整した親水加工剤SR1800に浸漬させたあと、マングルで脱水し、熱風乾燥した。これを8×8mmの大きさにカットし、反応試薬を含浸させ反応層aとした。反応層aの下層にφ8mm濾紙5A(ADVANTEC社製)に試薬を含浸させた反応層bを配置し、2層の反応層とした。そこへ反応層aの上から10μLの血液検体を滴下し、装置を用いて37℃5分間測定した反射吸光度の結果を示す。図1ほどではないが、血液滴下開始から3分後程度まで徐々に展開し、吸光度の急激な乱れもなく5分間で均一に血液が展開していることを示している。
本発明の多層状分析試験片は生体試料中の分析対象物を迅速かつ簡便に定量することができる。
100 測定装置
200 試験片(200aも同じ)
1 試験片装着部(1aも同じ)
2 発光部(2aも同じ)
3 受光部(3aも同じ)
4 演算部
5 血液検体点着部
6 電源スイッチ
7 表示モニター

Claims (11)

  1. 液体試料中の糖化蛋白質を分析するための多層試験片であって、少なくとも下記(a)層と(b)層とが、試料点着面から(a)層/(b)層の順に積層されている多層試験片。
    (a)層:親水性の繊維でつくられた織物であって以下の(i)〜(iii)のすべてを満たす織物を含み、かつ、少なくともプロテアーゼが担持された構造体
    (i)目付け30g/m以上100g/m以下
    (ii)厚み50μm以上150μm以下
    (iii)嵩密度0.6−0.9g/m
    (b)層:少なくともフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが担持された構造体
  2. (a)層における織物が、平織り組織である、請求項1に記載の試験片。
  3. (a)層における繊維が、ポリエステル類、ポリエーテルスルホン類、ポリ塩化ビニル類、ポリウレタン類、アクリル類およびナイロン類からなる群の中から選ばれたいずれかを親水加工したものである、請求項1または2に記載の試験片。
  4. (a)層において、繊維の親水加工の少なくとも一部が親水性ポリマーでなされている、請求項1〜3のいずれかに記載の試験片。
  5. 親水性ポリマーがポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリエステルポリエーテルブロック共重合体からなる群の中から選ばれたいずれかである、請求項4に記載の試験片。
  6. (a)層における織物に異型断面糸を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の試験片。
  7. 異形断面糸の横断面形状が、三角形、四角形、五角形、六角形、Y字形、T字形、H字形、U字形、W字形、菱形および星形からなる群の中から選ばれたいずれかである、請求項6に記載の試験片。
  8. (a)層の構造体を構成する異形断面糸の割合が、40%以上100%以下である、請求項6または7に記載の試験片。
  9. (a)層の構造体を構成する織物が以下の(i)〜(iv)を満たす、請求項1〜8のいずれかに記載の構造体。
    (i)該織物を構成する経糸と緯糸の本数が、それぞれ、経糸80〜200本/2.54cm、緯糸80〜200本/2.54cmの組合せである
    (ii)該織物を構成する糸の総繊度が11dtexから122dtexである
    (iii)該織物を構成する糸の単糸繊度が0.5dtex以下である
    (iv)異型断面糸の割合が25%以上100%以下である親水性の繊維で構成される
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の試験片を用いて液体試料中の糖化蛋白質を分析する方法。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の試験片を含むプロダクト。
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EP4003169A4 (en) * 2019-07-22 2023-08-02 Ortho-Clinical Diagnostics, Inc. MEASUREMENT OF GLYCOSYLATED HEMOGLOBIN

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