JP2014099348A - 真空度測定装置、電子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】平易な構成によってイオンポンプの真空度の測定精度を向上させる真空度測定装置を提供する。
【解決手段】イオンポンプの検出器が検出したイオン電流と増幅器ゲインの対応関係記述したデータテーブルを記憶する記憶部を備えた真空度測定装置とし、前記増幅器は、前記データテーブルの記述にしたがって、前記検出器が検出した前記イオン電流に対応するゲイン設定値を特定し、そのゲインにしたがって前記イオン電流を増幅する。
【選択図】図11
【解決手段】イオンポンプの検出器が検出したイオン電流と増幅器ゲインの対応関係記述したデータテーブルを記憶する記憶部を備えた真空度測定装置とし、前記増幅器は、前記データテーブルの記述にしたがって、前記検出器が検出した前記イオン電流に対応するゲイン設定値を特定し、そのゲインにしたがって前記イオン電流を増幅する。
【選択図】図11
Description
本発明は、スパッタイオンポンプの真空度を測定する技術に関する。
電子顕微鏡などのように高真空が必要となる装置において用いられる排気装置として、スパッタイオンポンプ(以下イオンポンプと略す)が広く使用されている。イオンポンプを動作させるための電源装置としては、一般的に数kVの電圧で100mA程度の電流を供給することができる電源装置が必要である。
イオンポンプは、その真空度に対応する放電電流を発生させ、これを検出することにより真空度を測定することができる。一般にその検出電流は、高真空になるほど値が小さくなり、電流リプル波形が次第に支配的となって正しい値を読み取ることが困難になる傾向がある。真空度を高めるほどその影響は顕著となる。
特に近年においては、NEG(Non−evaporable getter Pump)の採用により真空度が飛躍的に向上し、イオンポンプの真空度は10−10Pa以下の極高真空に到達しているため、検出電流を正確に読み取ることを一層困難にしている。
イオンポンプの主な電源方式としては、商用電源昇圧方式とスイッチング方式がある。商用電源昇圧方式は、トランスを用いて商用電源を昇圧してイオンポンプに供給する方式であるため、特に高真空時において電源リプルが支配的となって正確な値を読み取ることが難しい。スイッチング方式は、商用電源昇圧方式と比較してトランスを小型化できる利点があるものの、スイッチング動作時に生じるスイッチングリプルがやはり高真空時において支配的となり、同様の課題が生じる。
下記特許文献1には、検出したイオン電流Iiの値に応じて、商用電圧を用いる第1直流高電圧発生回路11と、高周波発振を用いる第2直流高電圧発生回路12とを切り替える構成が開示されている。
特許文献1に記載されている技術によれば、イオン電流Iiの値に適した高電圧発生回路を用いるので、低真空時においてもイオン電流を精度よく読み取ることができると考えられる。しかし、2系統の高電圧発生回路を構築する必要があるため、実装スペース、回路コスト、重量などが大きくなってしまう課題がある。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成によってイオンポンプの真空度の測定精度を向上させることを目的とする。
本発明に係る真空度測定装置は、検出したイオン電流と増幅器ゲインの対応関係をあらかじめ定義しておき、その定義にしたがってイオン電流を増幅する。
本発明に係る真空度測定装置によれば、商用電源昇圧方式とスイッチング方式のいずれを電源として採用した場合においても、超高真空領域において真空度を安定的に測定することができる。
<従来の真空度測定装置の構成>
以下では本発明の理解を促進するため、まず従来の真空度測定装置の回路構成やイオン電流とイオンポンプ真空度の特性について説明し、その後に本発明に係る真空度測定装置の回路構成を説明する。
以下では本発明の理解を促進するため、まず従来の真空度測定装置の回路構成やイオン電流とイオンポンプ真空度の特性について説明し、その後に本発明に係る真空度測定装置の回路構成を説明する。
図1は、イオンポンプのイオン電流特性を示す図である。低真空時においては、ペニング放電電流が流れ、5kVの印加電圧に対して最大で100mA程度(500W)程度のイオン電流が流れる。数10分から数時間程度で10−10Pa以下の超高真空領域に到達し、イオン電流は0.1nA程度となる。イオン電流がこの程度の値になると、上述のように検出電流において電源リプルまたはスイッチングリプルが支配的となり、検出値を正確に読み取ることが困難になる。
図2は、商用電源昇圧方式を採用した場合における昇圧回路部分の構成図である。各構成要素については後述の図5で説明する。図2に示す回路においては、トランス1を用いて、商用電源(100Vまたは200V、50Hzまたは60Hz)から交流高電圧を生成し、ダイオードとコンデンサで構成された倍電圧整流回路2などを用いて5kV近傍の直流高電圧を得る。この方式のシステム構成は非常に単純となるが、周波数が低いので、イオンポンプ3の低真空時における大きな放電電力を給電するために大型のトランス1(例えば100mm角程度)が必要となる点が課題である。
図3は、図2の回路構成を採用した場合におけるリプル電流と電源電圧の波形例を示す図である。先に説明したとおり、高真空時においてはイオン電流の検出値が小さくなり、リプル電流の影響が支配的となるため、真空度を正確に読み取ることが困難となる。
図4は、スイッチング方式を採用した場合における昇圧回路部分の構成図である。各構成要素については後述の図6で説明する。スイッチング方式においては、商用電源を直流化するか、または直流電源によって直流電圧を給電し、MOSFETなどのON抵抗の低いスイッチング素子を用いてスイッチングを実施することにより交流に変換した電圧をトランス1の1次側電源に入力して、トランス巻数に応じた高電圧を2次側から得る。図4においてはハーフブリッジ18を用いたが、これに限られるものではなく、フライバック方式、フルブリッジ方式などを用いることもできる。2次側に整流回路2を設け、5kVの直流高電圧を得る。
スイッチング方式は、適切な高周波スイッチング周波数を用いることにより、トランス1を小型化することができるが、スイッチング素子やドライバ14などを設ける必要があるので、回路が複雑化する課題がある。また先述のようにスイッチング素子においてスイッチングリプルが発生し、特に低真空時においてこれが支配的となる課題もある。
<本発明に係る真空度測定装置>
図5は、本発明に係る真空度測定装置の回路図である。図5は商用電源昇圧方式を採用した場合における回路構成を示す。図5に示す真空度測定装置は、イオンポンプ3の真空度を測定する装置であり、トランス1、整流回路2、電流検出抵抗4、同期信号取出抵抗5、増幅器6、A/Dコンバータ7、第1メモリ8、第2メモリ9、CPU(Central Processing Unit)10、電源同期回路11、制御回路12を備える。
図5は、本発明に係る真空度測定装置の回路図である。図5は商用電源昇圧方式を採用した場合における回路構成を示す。図5に示す真空度測定装置は、イオンポンプ3の真空度を測定する装置であり、トランス1、整流回路2、電流検出抵抗4、同期信号取出抵抗5、増幅器6、A/Dコンバータ7、第1メモリ8、第2メモリ9、CPU(Central Processing Unit)10、電源同期回路11、制御回路12を備える。
トランス1は、商用電源を昇圧する。整流回路2は、トランス1が昇圧した電圧を直流に整流する。電流検出抵抗4は、イオンポンプ3のイオン電流を検出するための抵抗である。同期信号取出抵抗5は、電源電圧と同期した処理を実施するため電源電圧を取り出す抵抗である。増幅器6は、電流検出抵抗6によって検出されたイオン電流を増幅する。A/Dコンバータ7は、増幅器6が増幅したイオン電流をデジタル変換する。第1メモリ8と第2メモリ9は、それぞれCPU10による演算結果を格納する。CPU10は、後述の図12〜図13で説明する手法によりイオン電流を積算平均する。電源同期回路11は、電源電圧と同期した信号を制御回路12へ出力する。制御回路12は、全体の動作を制御する。
図6は、本発明に係る真空度測定装置をスイッチング方式によって実装した場合における回路図である。図6に示す回路においては、CPU13が出力する制御信号に応じてドライバ14がハーフブリッジ回路18のスイッチング素子を駆動して交流電圧を生成し、トランス1へ供給する。したがって同期信号取出抵抗5は必要なく、CPU13自身が同期信号を電源同期回路11へ出力すればよい。ただし、ハーフブリッジ回路18を駆動することに関連して、電圧検出抵抗17、増幅器16、A/Dコンバータ15、整流ダイオード19が必要になる。ハーフブリッジ回路18以外のインバータ回路を採用することもできる。
図7は、電源同期回路11の回路図である。分圧抵抗111は、トランス1が出力する交流電圧をAC入力として受け取る。比較器114と115は、分圧抵抗111によって出力される電圧を、それぞれ分圧抵抗112と113によって設定される基準電圧と比較し、その結果をエッジ検出回路117に出力する。エッジ検出回路117は、Dフリップフロップを用いて構成されており、後述の図8で説明する動作にしたがって同期信号を出力する。
図8は、電源同期回路11の動作を説明するタイムチャートである。比較器115については電源電圧のゼロクロス点の少し手前においてHiレベルを出力するように比較閾値を設定し、比較器114についてはゼロクロス点においてHiレベルを出力するように比較閾値を設定しておく。エッジ検出回路117は、比較器115の出力が立ち上がった直後にのみ電源同期信号を生成する。
図9は、増幅器6の回路図である。増幅器6は、電流検出抵抗61(例えば50Ω)を用いてイオン電流を読み取り、差動アンプ62によってこれを増幅してDCサーボ回路63に出力する。差動アンプ62のゲインは、後述の図11で説明するゲイン切替器65の動作により、イオン電流の大きさに応じて切り替えられる。DCサーボ回路63は、DC成分を除去することによって差動アンプ62が増幅したオフセット電圧を取り除き、リプル成分のみを抽出する。レベル調整回路64は、グランドレベルを持ち上げることによって信号レベルをシフトし、A/Dコンバータ7の入力レベルに合わせる。
図10は、増幅器6の各段における信号波形の変化を示す図である。図10(a)は、差動アンプ62が増幅する前におけるイオン電流を示す。図10(b)は、差動アンプ62が増幅しDCサーボ回路63がDC成分を除去した後の信号波形を示す。図10(c)は、さらにレベル調整回路64がレベルシフトした信号波形を示す。
図11は、ゲイン切替器65が差動アンプ62のゲインを切り替える動作を定義したデータテーブルの例を示す図である。イオン電流は、その真空度に応じて0.1nA〜100mA程度の範囲で変化する。特に高真空時における微小な検出電流を正確に読み取るため、ゲイン切替器65は、イオン電流が小さいときほど差動アンプ62のゲインを大きくする。ゲインの設定値は、例えばイオン電流の範囲に応じて4段階に切り替えることができるが、これに限られるものではない。
図12は、制御回路12がA/Dコンバータ7の出力を読み取る動作について説明する図である。制御回路12は、電源同期回路11が出力する電源同期信号に合わせて、すなわち電源電圧に同期して、A/Dコンバータ7の出力を読み取る。例えば電源電圧の1周期内において1024個の値を読み取る。読み取った値は、必要に応じて例えば10nAで除算して正規化してもよい。さらにこれに先立って、増幅器6のパラメータを調整するため、調整用の読み取りを所定回数(ここでは3回)実施する。
制御回路12は、調整用読み取りにおいて読み出したイオン電流の値に基づき、イオン電流を正確に読み取ることができる程度のゲイン(例えばピーク値が所定値以上になる程度のゲイン)を設定するように、ゲイン切替器65へ指示する。例えば最小ゲインから順に大きなゲインへ切り替えながら適切なゲインを探索すればよい。具体的には、A/Dコンバータ7の入力レベルの中間程度の信号が得られるようなゲインを設定する。制御回路12はその他、DCサーボ回路63の出力電圧に基づき、DCサーボ回路63のオフセット量を調整する。
図13は、CPU10がイオン電流の値を積算平均する処理を説明する図である。CPU10は、増幅器6が増幅したイオン電流の値を、例えば電源電圧の20周期分積算平均する。具体的には、図12に示したような1周期分の処理を例えば電源電圧の20周期にわたって実施し、各周期における同じサンプル番号の値を積算平均(すなわち20回分の積算平均)する。イオン電流を積算平均することにより、ノイズの影響を除去することを図る。
A/Dコンバータ7が第1メモリ8に格納した値をCPU10が読み取っている間、第1メモリ8に対するアクセスが占有されるので、第1メモリ8に対してデータを書き込むことができない。そこで制御回路12は、この間は第2メモリ9に対してデータを書き込むように、A/Dコンバータ7の出力先を切り替える。この切り替え動作を電源電圧の20周期毎に繰り返すことにより、データの書き込みと読み取りを中断させずに動作を継続することができる。
図14は、スパイク放電電流の波形を例示する図である。イオンポンプにおいては、長時間の排気動作にともなってポンプ素子陰極上にウィスカ(whisker:金属の鋭い突起)が生成される。このウィスカに数kVの電圧が印加されると、電界放出電流が流れる。この放電電流は、図14に例示するように数ms〜100ms程度継続するスパイク放電電流となる。
一般的なイオンポンプ電流の測定処理系においては、電源に同期せず移動平均処理によってイオン電流を検出している。これにより、電源リプル、スイッチングリプル、ノイズなどを消去することができるが、スパイク放電電流の波形も同時に消去される。そのため微小な真空度変化に関する情報を破棄してしまっていた。そこで本発明においては、電源に同期した積算平均処理を採用することとした。積算平均は、信号波形を維持しつつノイズを除去することができるため、図14に例示するようなスパイク電流波形も検出することができる。
<本発明のまとめ>
以上のように、本発明に係る真空度測定装置は、イオン電流の検出値に応じて増幅器6のゲインを調整する。これにより、商用電源昇圧方式とスイッチング方式いずれを用いて構成されたイオンポンプ電源であっても、簡易な構成によりイオン電流の測定精度を向上させることができる。これにより、従来は困難であった10−10Pa以下の超高真空を安定して測定することができる。
以上のように、本発明に係る真空度測定装置は、イオン電流の検出値に応じて増幅器6のゲインを調整する。これにより、商用電源昇圧方式とスイッチング方式いずれを用いて構成されたイオンポンプ電源であっても、簡易な構成によりイオン電流の測定精度を向上させることができる。これにより、従来は困難であった10−10Pa以下の超高真空を安定して測定することができる。
また、本発明に係る真空度測定装置は、積算平均処理によってノイズを除去する。これにより、検出波形を維持しつつノイズを除去できるので、真空度の微小変化をリアルタイムで監視することができる。したがって、イオンポンプに対する気体分子吸着度合い(汚染度)を精度よく判定し、ベーキングを実施する時期の判断や故障診断情報として、その判定結果を使用することができる。
本発明に係る真空度測定装置は、他の装置の構成要素として用いることができる。例えばイオンポンプを用いて真空を形成する電子顕微鏡において本発明に係る真空度測定装置を導入することにより、電子顕微鏡の性能を向上させることが期待できる。
なお、本発明においてスイッチング方式を採用する場合、ハーフブリッジ回路18の発振周波数が高くなるとスイッチングリプルが減少するため、CPU10の負担を減らす観点から、積算回数やサンプル数を減らすこともできる。
1:トランス、2:整流回路、3:イオンポンプ、4:電流検出抵抗、5:同期信号取出抵抗、6:増幅器、7:A/Dコンバータ、8:第1メモリ、9:第2メモリ、10:CPU、11:電源同期回路、12:制御回路、13:CPU、14:ドライバ、15:A/Dコンバータ、16:増幅器、17:電圧検出抵抗、18:ハーフブリッジ回路、19:整流ダイオード。
Claims (5)
- スパッタイオンポンプの真空度を測定する装置であって、
前記スパッタイオンポンプのイオン電流を検出することによって前記真空度を検出する検出器と、
前記検出器が検出した前記イオン電流を増幅する増幅器と、
検出器が検出した前記イオン電流と前記増幅器のゲイン設定値との間の対応関係を記述したデータテーブルを記憶する記憶部と、
を備え、
前記増幅器は、前記データテーブルの記述にしたがって、前記検出器が検出した前記イオン電流に対応するゲイン設定値を特定し、そのゲインにしたがって前記イオン電流を増幅する
ことを特徴とする真空度測定装置。 - 前記真空度測定装置は、
前記増幅器が増幅した前記イオン電流の値を所定個数積算平均して得られた値を用いて前記真空度を判定する演算部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の真空度測定装置。 - 前記演算部は、
前記スパッタイオンポンプに供給される電圧の波形に同期して、前記増幅器が増幅した前記イオン電流の値を読み取る
ことを特徴とする請求項2記載の真空度測定装置。 - 前記真空度測定装置は、
前記演算部が読み取った前記イオン電流の値を格納する第1および第2メモリを備え、
前記演算部は、前記イオン電流の値を前記所定個数読み取る毎に、その値の格納先を、前記第1メモリから前記第2メモリへ、または前記第2メモリから前記第1メモリへ切り替える
ことを特徴とする請求項2または3記載の真空度測定装置。 - 請求項1から4のいずれか1項記載の真空度測定装置を備えたことを特徴とする電子顕微鏡。
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JP2012251069A JP2014099348A (ja) | 2012-11-15 | 2012-11-15 | 真空度測定装置、電子顕微鏡 |
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WO2016178283A1 (ja) * | 2015-05-01 | 2016-11-10 | 株式会社日立ハイテクノロジーズ | イオンポンプを備えた荷電粒子線装置 |
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WO2016178283A1 (ja) * | 2015-05-01 | 2016-11-10 | 株式会社日立ハイテクノロジーズ | イオンポンプを備えた荷電粒子線装置 |
CN107533944A (zh) * | 2015-05-01 | 2018-01-02 | 株式会社日立高新技术 | 具备离子泵的带电粒子束装置 |
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