JP2014097732A - 避泊地推奨装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】避泊地推奨装置20は、複数の船舶10の航路を含む海域における気象・海象予報データを取得する気象・海象予報データ取得部21と、船舶の位置に関する船舶位置データを取得する船舶位置データ取得部22と、船舶が避泊可能な避泊地の位置に関する避泊地位置データが記憶される記憶部23と、船舶位置データ、気象・海象予報データ及び避泊地位置データに基づいて、船舶へ推奨する推奨避泊地を決定する推奨避泊地決定部24と、決定された推奨避泊地を船舶へ通知する推奨避泊地通知部25と、を備える。
【選択図】図2
Description
船舶10は、積み込み港3で資材を積み込んで積み下ろし港4で資材を積み下ろすものであって、図2に示すように、船舶位置データ検出部11と、制御部12と、送受信部13と、通知部14と、を備える。
避泊地推奨装置20は、船舶10に避泊地を推奨する装置であって、CPU、ROM、RAM、入出力回路等からなる。避泊地推奨装置20は、図2に示すように、機能部として、気象・海象予報データ取得部21と、船舶位置データ取得部22と、記憶部23と、推奨避泊地決定部24と、推奨避泊地通知部25と、を備える。
図3に示すように、船舶諸元テーブル23aには、船舶10毎に、船舶IDと、積載量と、船速(往路)と、船速(復路)と、波高閾値と、風速閾値と、が関連付けて記憶されている。ここで、積載量は、当該船舶10に資材を積載可能な最大積載量である。また、船速(往路)は、最大積載量の資材を積載した船舶10が運航する速度であり、予め設定された値である。また、船速(復路)は、資材を積み下ろした船舶10が運航する速度であり、船速(往路)よりも速く、予め設定された値である。波高閾値は、船舶10が運航可能な波高の最大値であり、運航中の波高が当該波高閾値を超える場合には、船舶10は避泊する必要がある。風速閾値は、船舶10が運航可能な風速の最大値であり、運航中の風速が当該風速閾値を超える場合には、船舶10は避泊する必要がある。
避泊可能隻数は、避泊地に避泊可能な船舶10の隻数であり、港3,4,5の規模、港湾管理者との契約等によって予め設定されている。
避泊余裕隻数は、避泊可能隻数から実際に避泊している船舶10の隻数と当該避泊地が推奨された船舶10の隻数とを引いた隻数である。
続いて、避泊地推奨装置20の動作例について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
図4に示すように、まず、避泊地推奨装置20の気象・海象予報データ取得部21が、気象・海象予報データを取得し(ステップS1)、続いて、船舶位置データ取得部22が、船舶位置データを取得する(ステップS2)。
続いて、推奨避泊地決定部24は、船舶10Aの船舶位置データ及び避泊地テーブル23cに記憶された各港3,4,5の位置に関する避泊地位置データに基づいて、船舶10Aの進行方向前方にある避泊地(ここでは、積み下ろし港4及び港5A,5B,5C)を選択する。例えば、推奨避泊地決定部24は、往復フラグテーブル23bに記憶された往復フラグに基づいて船舶10Aの目的地が積み込み港3であるか積み下ろし港4であるかを判定し、船舶10Aの船舶位置データ及び目的地(ここでは、積み下ろし港4)の避泊地位置データ(避泊地テーブル23cに記憶)とを結ぶ直線と直交する直線Lよりも目的地側にある港4,5A,5B,5Cを選択する。なお、本実施形態において、推奨避泊地決定部24は、船舶10が港3,4,5に避泊している場合(すなわち、船舶位置データが避泊地テーブル23cに記憶された港3,4,5の避泊地位置データと同じである場合)であっても、当該港3,4,5を選択しない。
続いて、推奨避泊地決定部24は、気象・海象予報データ取得部21によって取得された気象・海象予報データの中から、位置x+v・Δt及び時刻t+Δtに該当する気象・海象予報データすなわち波高(海象予報データ)及び風速(気象予報データ)を抽出し、抽出された波高及び風速と、船舶諸元テーブル23aに記憶された波高閾値及び風速閾値と、を比較する。
そして、推奨避泊地決定部24は、港5Aまでの運航全体において、波高が波高閾値以下であり、かつ、風速が風速閾値以下である場合に、港5Aを候補避泊地として選択する。
(1)海上にいて、かつ、候補避泊地なし
(2)海上にいて、かつ、候補避泊地1つ
(3)海上にいて、かつ、候補避泊地複数
(4)港にいて、かつ、候補避泊地なし
(5)港にいて、かつ、候補避泊地1つ
(6)港にいて、かつ、候補避泊地複数
また、避泊地推奨システム1は、波高及び風速に基づいて選択された候補避泊地がないという緊急性が高い場合であっても、港にいる船舶10に対して現在いる港に避泊することを推奨したり、海上にいる船舶10に対して避泊地ごとの運航リスクを通知したりすることができる。
また、積載量の大きい船舶10を積載量の小さい船舶10よりも優先するのは、より多くの資材を運搬可能な船舶10に対して目的地により近い避泊地を推奨することによって、避泊に伴う資材の運搬効率の低下を防ぐためである。
また、船速の速い船舶を船速の遅い船舶よりも優先するのは、より速く資材を運搬可能な船舶10に対して目的地により近い避泊地を推奨することによって、避泊に伴う資材の運搬効率の低下を防ぐためである。
避泊地推奨システム1を用いて土砂運搬を対象とした1年間のシミュレーションを実施した。本発明は主に長距離運搬を対象としているため、一般的な海洋工事よりも資材の積み込み港3と積み下ろし港4とが遠方にあり、6隻の船舶10を用いた場合を想定する。そこで積み込み港3と積み下ろし港4とが571km離れており、避泊地として13の港5が図6に示すような位置にある場合を設定した。積み込み港3及び積み下ろし港4では、1隻の船舶10のみが作業できるとし、他の船舶10は待機させる。また、各港4の避泊可能隻数の上限は3隻とし、積み込み港3及び積み下ろし港4の待機場所では、避泊隻数は上限なしとした。6隻の船舶10の船速等の諸元は、図3(a)に示す通りである。ただし、2隻の船舶10の積載量は3000m3、2隻の船舶10の積載量は2000m3、2隻の船舶10の積載量は1100m3である。「作業時間」とは,積み込み作業及び積み下ろし作業に要する時間である。また、「作業可能時間」とは、積み込み作業及び積み下ろし作業を実施可能な時間帯であり、深夜・早朝は作業を停止し待機しているとした。
本システム1において、気象・海象予報データは重要な役割を果たす。そこで、まず、気象・海象の予報精度が推奨避泊地の決定結果に与える影響を評価する。仮想的な気象・海象条件を作成するため、任意の海域2において過去のNCEP/NCAR(米国環境予報センター/米国大気研究センター)の再解析データを用いて気象・海象解析を実施した。解析には第5世代NCAR/Penn StateメソスケールモデルMM5(Grell, G.A., J. Dudhia, and D.R. Stauffer (1991): A description of the fifth-generation Penn State-NCAR Mesoscale Model (MM5), NCAR Tech. Note NCAR/TN-398+NCAR, 128p.)と沿岸波浪推算モデルSWAN(Booij, N., R.C. Ris and L.H. Holthuijsen (1999): A third-generation wave model for coastal regions, Part I, Model description and validation, J. Geophys. Res. C4, 104, pp.7649-7666)を用いた。作成した気象・海象は、海域2全体として図7に示す頻度分布を持っていた。本頻度分布は、海域2全体であるため、大型台風が通過したり、台風の進行速度が遅くて長く留まったりすると、波高5m以上の頻度が大幅に増大することになる。ここでは、有義波高分布が異なる2ケースのシミュレーション実験を行った。ケース1では波高2.0m近傍の頻度が高い年における波高及び風速の推算結果を用い、ケース2では台風の通過回数の多い年における波高及び風速の推算結果を用いた。図6に△で示す地点でのケース2の波高・風速の時系列を図8に示した。図8に示すように,ケース2で用いた気象・海象は、春−夏は気象・海象が良好であるが、8月から台風が来襲し、冬は北西の季節風が卓越しているという特性を持っている。これらの気象・海象条件を与え、船舶10を6隻とし、全ての船舶10が本システム1の推奨通りの運航を行った場合の1年間のシミュレーションを実施した。気象・海象予報データは、6時間毎に72時間分配信されるとし、6時間毎の解析開始時刻からの経過時間に比例して予報誤差が増加するとした。過大評価時の効率低下を評価するため、ここでは、想定誤差として、波高の誤差は72時間後に+1m、風速は72時間後に+5m/sとした。
本システム1の有効性を確認するため、従来通りに各船舶10の船長の判断で運航した場合における土砂の運搬量と本システム1を用いた場合における土砂の運搬量とを比較した。ここで、船長が判断する従来の手法をモデル化するため、複数の船長にヒアリングを行った結果、次のことが分かった。
・運航管理は、船長が行う。
・気象・海象予報データに関しては、テレビ・ラジオや海上保安庁による予報FAXを通して入手する。
・気象・海象予報データにより、出港後、目的港へ入港するまで天気が良好でなければ出港しない。
・安全を優先し、出港後に海況が悪化した場合には戻ることもある。
以上を考慮し「経験的運航方法」をモデル化した。本ケーススタディでは、積載量が3000m3の船舶10を2隻、2000m3の船舶10を2隻、1100m3の船舶10を2隻で計6隻の船舶10を対象とした。その他の条件は図3(a)と同一とした。ケーススタディ1と同じ積み込み港3、積み下ろし港4及び港5を設定し、新たに作成した平年並みの気象・海象条件を与え、1年間の運航シミュレーションを実施した。
ケーススタディ1,2では、船速は往路及び復路でそれぞれ一定と仮定したが、現実には、海流や潮流といった海の流れや風圧抵抗の影響を受け、船舶性能は十分に発揮されない。そこで、海の流れや風圧による船速変化を見積もり、その影響によって運搬回数がどう変化するかを調べた。気象・海象条件としては、ケーススタディ1のケース1の設定を用いた。
今回、海流については24時間毎にデータが配信されるとし、過去の海上保安庁より公間きれている黒潮の経路データを用い、仮想的な海流場を作成した。ただし、海流場については、本来広がりを持った空間分布となるが、簡易的に1メッシュのみに与えた。また、潮流の計算にはnao99bモデル(Matsumoto, K., T. Takanezawa, and M. Ooe (2000): Ocean tide models developed by assimilating TOPEX/POSEIDON altimeter data into hydrodynamical model: A global model and a regional model around Japan, Journal of Oceanography, Vol.56, pp.567-581)を用い、任意の地点の潮汐を計算、図10に示すように海流と合成することで、海の流れ場を作成した。
実海域での船舶性能の推定は(独法)海上技術安全研究所の「海の10-モード指標」を参考にした(佐々木紀幸、辻本勝、黒田麻利子、枌原直人、一之瀬康雄、臼井謙彰、上野道雄、藤原敏文、星野邦弘、川並康剛、大松重雄、柴田和也(2009):海の10モード指標の開発、海上技術安全研究所報告、第9巻、第4号、46p.)。運航中、船舶10は風抵抗(風圧抵抗)、波による力、船体運動による抵抗等を受けるため、エンジン出力を常時フル稼働して一定馬力で推進しても、実際の船速は低下する。そこで、次のように風抵抗の影響を算出した。まず、一般に、船舶10の出力軸馬力は以下の式で表される(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(2010):平成18年度〜平成20年度成果報告書エネルギー使用合理化技術戦略的開発・エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発「内航船の環境調和型運航計画支援システムの研究開発」、186p.、独立行政法人海上技術安全研究所(2010):平成22年度(第10回)海上技術安全研究所研究発表会講演集、pp.39-46)。
SHP=SHPS+SHPA+SHPAM+SHPW (1)
ここで、SHPは軸馬力、SHPSは平水中抵抗損失、SHPAは風圧前後力損失、SHPAMは風圧回頭モーメント損失、SHPWは波浪抵抗損失でる。平穏な海象では、SHPA=SHPAM=SHPW=0とできるため、
SHP=SHPS
となる。
船舶10の出力馬力を海象によらずSHPOで一定と仮定すると、式(1)で、SHP=SHPOであるから、
SHPS=SHPO−SHPA−SHPAM−SHPW (2)
となる。ただし、今回は式(1)の波浪抵抗損失SHPWは考慮しなかった。このSHPSから船速を推定するには、各船舶に固有の馬力−船速の関係曲線が必要であるが、今回は、簡略化のため、馬力と船速とが比例すると仮定した。
<ケーススタディ1〜予報誤差の影響評価〜>
予報誤差の影響を調べた結果、月別運搬回数は図11のように変化した。波の高い冬には誤差による運搬回数への影響は小さいが、夏季には誤差の影響が大きくなることがわか
る。最終的に1年間の総運搬量を比較した結果を図12に示す。図12には、予報が正確だった場合に対する、予報が過大だった場合の運航回数の年間低減率を示す。風速よりも波浪場の方が誤差による影響が大きく、航路決定に支配的であることが分かる。また、波高の誤差を最大1mと仮定したため、波高1〜2m程度の頻度が高いケース1の方がケース2よりも運航回数の減少率が大きくなった。このケーススタディにより、誤差による運搬量の変化は大きくても15%程度であることがわかった。
本システム1を用いた場合と経験的な出港可否判断を適用した場合の1年間のシミュレーション結果を図13に示す。図13によると、本システム1の適用により経験的運航方法と比べて22%の運搬量増加を確保できていることが分かる。また、ケーススタディ1と合わせて考えると、誤差影響の15%を差し引いても、本システム1を用いれば、7%の運搬量増加を確保できることがわかり、本システム1の有効性確認することができた。
海流・潮流を船速に合成し,進行方向の船速を変化させた場合の影響を調べた。海流・潮流を考慮して船速を計算した結果の、ある1隻の時系列の一部を図14(a)に示す。ここで、1ノット=1852m/hである。船舶10が停止(避泊)している時間帯はグレーのシェードで示した。流れの強い海流の付近を通過する際には、船速が数ノット変化することがわかる。また、海流に比べて潮流による影響は弱いが、潮流の12時間周期の変化が見て取れる。次に、風圧抵抗を考慮した場合の船速の変化を図14(b)に示す。風圧による変化は、今回の設定では最大0.6ノット程度であり、海流に比べて影響は小さかった。
また、本発明の実施形態に係る避泊地推奨装置20は、避泊地の避泊可能隻数を超えないように推奨避泊地を決定するので、避泊可能隻数を超えた船舶10が避泊地へと運航することを防ぐことができる。
また、本発明の実施形態に係る避泊地推奨装置20は、船舶10の進行方向にある避泊地の中から推奨避泊地を決定するので、運航の効率性の低下を抑えつつ、複数の船舶に好適な避泊地を推奨することができる。
2 海域
3 積み込み港(避泊地)
4 積み下ろし港(避泊地)
5 港(避泊地)
10 船舶
20 避泊地推奨装置
21 気象・海象予報データ取得部
22 船舶位置データ取得部
23 記憶部
24 推奨避泊地決定部
25 推奨避泊地通知部
Claims (6)
- 複数の船舶の航路を含む海域における気象・海象予報データを取得する気象・海象予報データ取得部と、
前記船舶の位置に関する船舶位置データを取得する船舶位置データ取得部と、
前記船舶が避泊可能な避泊地の位置に関する避泊地位置データが記憶される記憶部と、
前記船舶位置データ、前記気象・海象予報データ及び前記避泊地位置データに基づいて、前記船舶へ推奨する推奨避泊地を決定する推奨避泊地決定部と、
決定された前記推奨避泊地を前記船舶へ通知する推奨避泊地通知部と、
を備えることを特徴とする避泊地推奨装置。 - 前記記憶部には、前記避泊地に避泊可能な隻数が記憶されており、
前記推奨避泊地決定部は、前記避泊地に避泊可能な隻数を超えないように、複数の前記船舶の前記推奨避泊地を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の避泊地推奨装置。 - 前記推奨避泊地決定部は、前記船舶位置データ及び前記避泊地位置データに基づいて、前記船舶の現在位置進行方向前方にある前記避泊地の中から前記推奨避泊地を決定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の避泊地推奨装置。 - 前記推奨避泊地決定部は、前記資材の最大積載量の大きい前記船舶を前記資材の最大積載量の小さい前記船舶よりも優先して前記推奨避泊地を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の避泊地推奨装置。 - 前記推奨避泊地決定部は、船速の速い前記船舶を船速の遅い前記船舶よりも優先して前記推奨避泊地を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の避泊地推奨装置。 - 前記船舶は、前記避泊地の一つである積み込み港で資材を積み込んで前記避泊地の一つである積み下ろし港で前記資材を積み下ろすことを繰り返し、
前記推奨避泊地決定部は、前記積み下ろし港へ向かう往路にいる前記船舶を前記積み込み港へ向かう復路にいる前記船舶よりも優先して前記推奨避泊地を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の避泊地推奨装置。
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