(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
ここで、本実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能な超音波プローブである。具体的には、本実施形態に係る超音波プローブ1は、被検体Pを2次元で走査する複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカルスキャンプローブである。或いは、本実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の圧電振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2次元超音波プローブである。なお、2次元超音波プローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することが可能である。
モニタ2は、超音波診断装置100の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像などを表示したりする。例えば、モニタ2は、後述する画像生成部14の処理によって生成されたフライスルー画像や、MPR画像を表示する。
入力装置3は、トラックボール、スイッチ、ダイヤル、タッチコマンドスクリーンなどを有する。入力装置3は、超音波診断装置100の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置3は、2次元画像上の所定の位置を指定するための入力操作を受け付ける。一例を挙げると、入力装置3は、MPR画像に描出された管腔における管腔内壁の位置を指定するための入力操作を受け付ける。
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。具体的には、本実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元超音波画像(ボリュームデータ)を生成可能な装置である。装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、制御部17とを有する。
送受信部11は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
なお、送受信部11は、後述する制御部17の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
このように、送受信部11は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。ここで、本実施形態に係る送受信部11は、超音波プローブ1から被検体Pに対して3次元の超音波ビームを送信させ、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。 ここで、Bモード処理部12は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。また、Bモード処理部12は、一つの反射波データに対して、二つの検波周波数による検波処理を並列して行うことができる。
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
なお、本実施形態に係るBモード処理部12およびドプラ処理部13は、2次元の反射波データおよび3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、本実施形態に係るBモード処理部12は、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成することができる。また、本実施形態に係るドプラ処理部13は、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成することができる。
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータから、3次元のBモード画像を生成する。
また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。具体的には、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータから、3次元のカラードプラ画像を生成する。なお、以下では、画像生成部14が生成した3次元のBモード画像及び3次元のカラードプラ画像をまとめて「ボリュームデータ」と記載する。
また、画像生成部14は、生成したボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種画像を生成することができる。具体的には、画像生成部14は、ボリュームデータからMPR画像やレンダリング画像を生成することができる。
すなわち、超音波プローブ1により被検体Pの撮影部位に対して超音波の3次元走査が行なわれることで、送受信部11は、3次元のデータを生成する。そして、画像生成部14は、ボリュームデータをモニタ2に表示するための画像として、例えば、操作者からの指示により、直交3断面におけるMPR画像や、超音波プローブ1の被検体Pに対する接触面を視点とした場合のレンダリング画像や、任意の場所を視点とした場合のレンダリング画像を生成する。
また、画像生成部14は、ボリュームデータに含まれる管腔において、管腔内部に視点を配置した投影像であるフライスルー画像などを生成する。画像生成部14によるフライスルー画像の生成については、後に詳述する。なお、画像生成部14は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマークなどを合成した合成画像を生成することもできる。なお、画像生成部14によって生成されるフライスルー画像は、仮想内視鏡画像、或いは、PVR画像と呼ばれる場合もある。
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した超音波画像を記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルや各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像の保管などにも使用される。
制御部17は、情報処理装置(計算機)としての機能を実現する制御プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)であり、超音波診断装置100の処理全体を制御する。具体的には、制御部17は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13及び画像生成部14の処理を制御する。また、制御部17は、画像メモリ15が記憶する超音波画像や、内部記憶部16が記憶する各種画像、又は、画像生成部14による処理を行なうためのGUI、画像生成部14の処理結果などをモニタ2にて表示するように制御する。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、以下、詳細に説明する画像生成部14の処理により、視点移動をした場合であっても、フライスルー画像における管腔を適切に表示することができるように構成されている。
ここで、従来技術において、視点移動に伴ってフライスルー画像における管腔が適切に表示されない場合について説明する。従来、フライスルー画像を表示する場合、超音波診断装置においては、取得したボリュームデータにおける管腔の抽出処理が行われる。超音波診断装置ではこの管腔の抽出処理において、ボクセルに割り当てられた輝度によってそのボクセルが管腔内壁に属するか、あるいは管腔内部であるかを決定している。すなわち、超音波診断装置においては、所定の輝度未満のボクセルを管腔内部として決定し、一方管腔内部に接し所定の輝度以上であるボクセルを管腔として決定する。
ここで、超音波診断装置においては、取得されたボリュームデータごとに輝度の分布が異なることから、管腔内壁を決定するための輝度が画質調整パラメータによって調整される。図2は、画質調整パラメータを説明するための図である。図2においては、画質調整パラメータの一つである閾値と管腔内壁を決定する輝度との関係について示す。図2においては、縦軸が閾値を示し、横軸が輝度を示す。
図2に示すように、閾値に輝度が対応づけられる。例えば、図2に示すように、閾値を「a」から「b」に変化させると、管腔内壁を決定する輝度の値が大きくなる。閾値は、ボリュームデータごとに、当該ボリュームデータに含まれる輝度の分布から決定される。すなわち、超音波診断装置では、取得したボリュームデータの輝度に応じて閾値が決定され、決定された閾値に対応する輝度の領域が管腔内壁として決定される。
しかしながら、従来の超音波診断装置では、ボリュームデータごとに固定した画質調整パラメータ(閾値)を用いるため、同一ボリュームデータの管腔において、視点位置によって管腔の径の大きさや、画像コントラストなどが変化するとフライスルー画像における管腔が適切に表示されない場合がある。すなわち、管腔の径の大きさや、画像コントラストなどが視点位置によって変化すると、各視点位置から投影されるフライスルー画像(PVR画像)の最適な閾値が変化することとなり、フライスルー画像における管腔内壁と管腔内部との境界が変化して、視点移動に伴って管腔が埋もれてしまったり、管腔内壁が抜けてしまったりする場合がある。
図3は、従来技術に係る課題の一例を示す図である。図3においては、径及び画像コントラストが変化する管腔のPVR画像を、同一の閾値で生成した場合について示す。また、図3の(A)は、管腔の断面図を示す。また、図3の(B)は、閾値を「86」とし、図3の(A)に示す矢印20の視線方向で管腔を投影したPVR画像を示す。また、図3の(C)は、閾値を「86」とし、図3の(A)に示す矢印21の視線方向で管腔を投影したPVR画像を示す。
例えば、図3の(A)に示すように、管腔の画像コントラストが鮮明な領域でのPVR画像は、図3の(B)に示すように、適切な管腔が表示される。しかしながら、図3の(A)の右側に示すように、管腔の径が急激に細くなり、画像コントラストが低下した場合に、同一の閾値を用いてPVR画像を生成すると、図3の(C)に示すように、管腔が埋もれてしまう。すなわち、視点を移動させながらフライスルー画像を表示すると、途中から管腔が埋もれることとなり、視点移動に伴ってフライスルー画像における管腔が適切に表示されない。なお、図3においては、画質調整パラメータの1つとして閾値の場合を例に説明したが、例えば、Transparency(透明度)などの画質調整パラメータについても同様の問題がある。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、以下に詳細に記載する画像生成部14の処理により、視点移動をした場合であっても、フライスルー画像における管腔を適切に表示することを可能にする。なお、本実施形態においては、画質調整パラメータとして閾値を用いる場合について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る画像生成部14の構成の一例を示す図である。図4に示すように、画像生成部14は、パラメータ設定部141と、フライスルー画像生成部142とを有する。
パラメータ設定部141は、3次元画像データを用いて管腔を描出した2次元断面像を抽出する。そして、パラメータ設定部141は、この2次元画像の情報に基づいて、当該管腔の内部を所定の視線方向から投影した仮想内視鏡画像(PVR画像)を生成するための画質調整パラメータの値を所定の視点ごとに設定する。具体的には、パラメータ設定部141は、MPR画像に描出された管腔の対向する内壁に対してそれぞれ設定された2点ごとに、2点間の距離と、ボリュームデータにおける当該2点間の距離とが同一となるように、画質調整パラメータをそれぞれ設定する。
ここで、まず、パラメータ設定部141の処理を行なうために、観察者は、入力装置3を介して、処理対象となるボリュームデータを指定し、更に、直交3断面(A面、B面、C面)のMPR画像の表示要求を行なう。表示要求を入力装置3から通知された制御部17は、画像生成部14に対して、観察者が指定したボリュームデータから直交3断面のMPR画像を生成するように制御する。そして、モニタ2は、制御部17の制御により、画像生成部14が生成した直交3断面のMPR画像を表示する。
観察者は、入力装置3が有する描画機能を用いて、モニタ2に表示されたMPR画像に描出された管腔の対向する内壁それぞれに、パラメータ設定部141が画質調整パラメータを設定するための点を設定する。ここで、観察者は、MPR画像に描出された管腔の対向する内壁それぞれに対となる2点を複数設定する。このとき、観察者は、MPR画像に描出された管腔の径や画像コントラストの変化などに基づいて対となる2点を複数設定する。一例を挙げると、観察者は、管腔の径が急激に変化(太くなる、或いは、細くなる)している領域や、画像コントラストが低下している領域の管腔の内壁に対して対となる2点を設定する。なお、観察者は、任意の位置に2点を設定することができ、例えば、一定間隔で2点を設定するようにしてもよい。制御部17は、入力装置3が受け付けた対となる2点それぞれについて、ボリュームデータにおける位置情報を取得し、取得した2点の位置情報と、当該2点間の距離をパラメータ設定部141にそれぞれ通知する。
図5Aは、第1の実施形態に係る管腔内壁の設定の一例を示す図である。図5Aにおいては、モニタ2に表示された直交3断面のMPR画像のうちの一枚を示す。例えば、観察者は、直交3断面のMPR画像から1枚を選択する。そして、観察者は、図5Aに示すように、選択したMPR画像に描出された管腔の計測点A、計測点B及び計測点Cの位置の対向する内壁にそれぞれ2点を設定する。
さらに、観察者は、超音波診断装置100に対して、設定した2点間の距離をそれぞれ計測させる。すなわち、制御部17は、例えば、図5Aに示すように、設定された2点間の距離「計測点A、d(Distance)=4.3mm」、「計測点B、d=4.6mm」及び「計測点C、d=4.9mm」をそれぞれ計測する。そして、制御部17は、「計測点A」、「計測点B」及び「計測点C」にそれぞれ設定された2点の位置情報(3次元上の座標)と、計測結果「4.3mm」、「4.6mm」及び「4.9mm」をパラメータ設定部141に通知する。
パラメータ設定部141は、制御部17から通知された2点の位置情報それぞれと、2点間の距離「4.3mm」、「4.6mm」及び「4.9mm」を用いて閾値をそれぞれ設定する。具体的には、パラメータ設定部141は、設定された2点ごとに、ボリュームデータにおいて、通知された2点を通過する直線を算出し、算出した直線上の2点間の距離が、MPR画像によって通知された距離と同一になるように閾値を設定する。
例えば、パラメータ設定部141は、計測点Aに設定された2点の位置情報から当該2点を通過する直線を算出する。そして、パラメータ設定部141は、閾値を段階的に変化させたボリュームデータを生成させ、算出した直線上の2点間の距離が通知された距離「4.3mm」となる閾値を抽出する。そして、パラメータ設定部141は、抽出した閾値を、計測点Aにおけるフライスルー画像を生成する際の閾値として設定する。すなわち、パラメータ設定部141は、図5Aに示すように、計測点Aの閾値を「64」と設定する。
同様に、パラメータ設定部141は、計測点B及び計測点Cについても、2点の位置情報と、通知された距離とから、各位置における閾値をそれぞれ「73」、「82」と設定する。なお、図5Aにおいては、計測点が3箇所の場合を例として説明したが、パラメータ設定部141は、観察者によって設定された計測点それぞれについて上述した閾値の設定を行う。また、図5Aにおいては、画質調整パラメータとして閾値を用いる場合を例に説明したが、他の画質調整パラメータを用いる場合についても同様である。
また、パラメータ設定部141は、2点ごとに設定した画質調整パラメータ(例えば、閾値)を用いて、補完用の情報を生成する。具体的には、パラメータ設定部141は、観察者によって計測点が設定されていない位置における閾値を設定するための補完用データを算出する。図5Bは、第1の実施形態に係るパラメータ設定部141による補完用データ算出処理の一例を模式的に示す図である。図5Bにおいては、図5Aにおける計測点A〜Cに結果を用いた算出処理の例を示す。
例えば、パラメータ設定部141は、図5Bに示すように、縦軸を閾値、横軸を管腔における位置としたグラフを生成する。すなわち、パラメータ設定部141は、図5Bに示すように、計測点A〜Cにおける閾値を通過する曲線を補完用データとして算出する。
パラメータ設定部141は、上述したように閾値を設定することによって、同一ボリュームデータにおける視点位置ごとの管腔内壁の位置を決定する。これにより、パラメータ設定部141は、ボリュームデータに含まれる管腔における視点位置ごとに、管腔領域を抽出することとなる。そして、管腔領域が抽出された各ボリュームデータには、芯線が設定され、芯線に沿ってPVR画像が生成され、動画像であるフライスルー画像が表示されることとなる。
図4に戻って、フライスルー画像生成部142は、所定の視点ごとに設定された画質調整パラメータの値を用いて、当該所定の視点それぞれからのPVR画像をそれぞれ生成する。具体的には、フライスルー画像生成部142は、パラメータ設定部141によって設定された画質調整パラメータによって抽出された管腔領域に設定された芯線の軌道に沿って、任意の方向に、一定の距離間隔及び一定の時間間隔で視点を移動させ、各視線方向から管腔内を投影したPVR画像を、視点位置ごとのボリュームデータを用いてそれぞれ生成する。
ここで、まず、フライスルー画像生成部142が処理を行うために、観察者によって視点及び視線方向が設定される。そして、フライスルー画像生成部142は、設定された芯線上の視点から設定された視線方向に、管腔内を投影したPVR画像を生成する。このとき、フライスルー画像生成部142は、視線方向を中心とする視野角であるFOV(Field Of View)角にて定まる近平面及び遠平面の範囲に向けて視点から放射状に透視投影する。そして、フライスルー画像生成部142は、一定の距離間隔及び一定の時間間隔で視点を移動させながら、各視線方向から管腔内を投影したPVR画像をそれぞれ生成し、生成したPVR画像を画像メモリ15に格納する。
上述した処理の一例について、図5Aを用いて説明する。例えば、図5Aの管腔内に示す点を視点とし、矢印を視線方向として管腔内を投影したPVR画像を生成して、視点移動させながらフライスルー画像を生成する場合について説明する。かかる場合には、フライスルー画像生成部142は、視点移動により視点位置が各計測点に来た場合に、各観測点の閾値で生成されたボリュームデータを用いてPVR画像を生成する。一例を挙げると、フライスルー画像生成部142は、視点移動に伴って視点位置が計測点Aにきた場合に、閾値「64」で生成されたボリュームデータを用いて、PVR画像を生成する。
そして、フライスルー画像生成部142は、閾値「64」で生成されたボリュームデータを用いて、視点を移動させながらPVR画像をそれぞれ生成し、視点位置が計測点Bに達した場合に、計測点Bの閾値「73」で生成されたボリュームデータを用いて、PVR画像を生成する。同様に、フライスルー画像生成部142は、視点移動をさせながら視点位置が計測点Cに達した場合には、計測点Cの閾値「82」で生成されたボリュームデータを用いて、PVR画像を生成する。
このように、フライスルー画像生成部142は、視点移動に伴って、最適な画質調整パラメータで生成されたボリュームデータを用いてPVR画像を生成する。従って、第1の実施形態に係るフライスルー画像生成部142によって生成されたPVR画像を用いてフライスルー画像を表示することで、視点移動を行った場合であっても、フライスルー画像における管腔を適切に表示することができる。
図6は、第1の実施形態に係る制御部17によって表示されるフライスルー画像(PVR画像)の一例を示す図である。第1の実施形態に係る管腔においては、上述したパラメータ設定部141の処理により、例えば、図6の(A)に示すように、管腔内壁の境界30が管腔に沿って正確に抽出される。そして、例えば、図6の(A)に示すように、管腔の画像コントラストが鮮明な領域でのPVR画像は、図6の(B)に示すように、閾値「86」で生成されたボリュームデータから生成されることで適切な管腔が表示される。また、図6の(A)の右側に示すように、管腔の径が急激に細くなり、画像コントラストが低下した場合であっても、かかる場合の最適な閾値「106」で生成されたボリュームデータを用いてPVR画像を生成することで、図6の(C)に示すように、適切な管腔が表示される。すなわち、視点を移動させながらフライスルー画像を表示したとしても、フライスルー画像における管腔は常に適切に表示されることとなる。
なお、上述した実施形態では、視点位置が計測点に達した場合に、PVR画像を生成するボリュームデータを切替える例を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、視点位置とPVR画像に投影される管腔内の位置とからボリュームデータを切替えるタイミングを変えることも可能である。すなわち、PVR画像においては、視点位置が計測点に達する前に、既に視点位置の管腔領域が描出されることとなる。従って、これらを考慮して、PVR画像を生成するボリュームデータを切替えるタイミングを設定してもよい。
一例を挙げると、FOVに基づいて計測点がPVR画像内に含まれる管腔内の位置を算出して、算出した管腔内の位置に視点が達した場合に、計測点の閾値で生成されたボリュームデータを用いるように切替える。図5Aを例に説明すると、例えば、フライスルー画像生成部142は、計測点AがPVR画像内に含まれる位置に視点位置が達した場合に、計測点Aの閾値「64」で生成されたボリュームデータを用いてPVR画像を生成する。このように計測点が観察できる位置(例えば、計測点よりもDmm手前)は、管腔のスケールによって変化するパラメータとして、予め設定してもよい。
制御部17は、フライスルー画像生成部142によって生成された管腔の内部の視点の位置に応じたPVR画像と、当該PVR画像が生成された視点位置における直交3断面のMPR画像とをモニタ2にそれぞれ表示させる。ここで、制御部17は、フライスルー画像生成部142がPVR画像を生成する際に視点を移動した時間間隔でPVR画像を更新することで、管腔内を視線方向に移動しながら観察できるフライスルー画像を表示させることが可能である。なお、フライスルー画像が表示される場合には、視点の移動に伴って、直交3断面のMPR画像も更新される。
上述したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、モニタ2に表示したMPR画像上に複数の計測点を設定させ、設定された計測点ごとに閾値を設定してボリュームデータを生成する。しかしながら、ボリュームデータに含まれる管腔は、必ずしも1枚のMPR画像に描出させることができるわけではない。すなわち、ボリュームデータに含まれる管腔が曲がっている場合には、管腔全体を1枚のMPR画像に描出させることはできない。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、管腔の断面位置を変化させた複数のMPR画像を観察者に対して表示し、表示した各MPR画像上に対となる2点(計測点)を設定させる。図7は、第1の実施形態に係る画像生成部14によるMPR画像生成の一例を説明するための図である。
例えば、図7の(A)に示すように、ボリュームデータに含まれる管腔40が曲がっており、1枚のMPR画像に描出できない場合には、画像生成部14は、図7の(B)に示すように、管腔の芯線に沿って管腔断面の一部が含まれるMPR画像51を生成する。制御部17は、画像生成部14によって生成されたMPR画像51をモニタ2に表示させて、観察者に計測点を設定させる。
そして、計測点が設定されると、画像生成部14は、図7の(C)に示すように、管腔40の断面位置を変えたMPR画像52を生成する。ここで、画像生成部14は、図7の(C)に示すように、MPR画像51に設定された計測点41を画像内に含むようにMPR画像52を生成する。そして、制御部17によってMPR画像52がモニタ2にて表示され計測点42が設定されると、上記と同様に、計測点42を含むMPR画像を生成する。このように、画像生成部14は、管腔の内壁全体を網羅するようにMPR画像を生成することで、観察者は、管腔の任意の位置に計測点を設定することができる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、管腔の断面位置を変化させた複数のMPR画像を観察者に対して表示する際に、管腔の径が急激に変化する領域を抽出して、断面位置を細かく変化させたMPR画像を生成して表示する。図8は、第1の実施形態に係る画像生成部14によるMPR画像生成の一例を説明するための図である。例えば、図8の(A)に示すように、管腔40の径が急激に太くなる場合に、この管腔の形状を正確に描出したフライスルー画像を表示させるためには、管腔の径が急激に変化する部分(矢印22によって指示される領域)に計測点を細かく設定することが求められる。
そこで、第1の実施形態に係る画像生成部14は、まず、所定の閾値(例えば、デフォルト値、或いは、ボリュームデータの輝度の分布から算出)を用いてボリュームデータを生成し、生成したボリュームデータ内の管腔を抽出して、芯線を設定する。そして、画像生成部14は、生成した芯線に沿って仮のフライスルー画像(PVR画像)を生成して、おおよその管腔の径を算出することで、管腔の径が急激に変化する部分を抽出する。例えば、画像生成部14は、図8の(A)に矢印23の方向で視点を移動させながら、図8の(B)に示すように、仮のフライスルー画像を生成する。そして、画像生成部14は、生成したフライスルー画像内の管腔の径を算出する。なお、ここで算出される管腔の径は、最適な閾値を用いていないためおおよその値となる。また、図8の(B)においては、フライスルー画像(PVR画像)が示されているが、実際には、画像は表示されず、バックグラウンドで処理が実行される。
上述したように、管腔の径が急激に変化する部分を抽出すると、画像生成部14は、管腔を細かい断面で示すMPR画像を生成する。例えば、画像生成部14は、図7に示す例の半分の距離を移動した位置のMPR画像を生成する。これにより、管腔の径が急激に変化する部分の変化の様子を細かく描出したMPR画像を観察者に表示することができる。その結果、例えば、図8の(C)に示すように、矢印22の領域に計測点45、46及び47を細かく設定させることが可能となる。
上述したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、視点が移動した場合であっても、MPR画像における管腔径とフライスルー画像における管腔径とを一致させたフライスルー表示が可能である。ここで、上述した処理は、フライスルー表示のどのタイミングで行われる場合であってもよい。すなわち、ボリュームデータが収集された直後に実行する場合であってもよく、或いは、一度フライスルー画像を表示させた後に、再度、実行する場合であってもよい。
次に、図9及び図10を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の処理について説明する。図9は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100によるフライスルー画像表示処理の手順を示すフローチャートである。また、図10は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100によるMPR画像表示処理の手順を示すフローチャートである。ここで、図10の処理の手順は、図9のステップS102の処理に相当する。
まず、図9を用いて、フライスルー画像表示処理の手順を説明する。図9に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、フライスルー表示モードであると(ステップS101肯定)、制御部17は、MPR画像をモニタ2に表示させる(ステップS102)。そして、制御部17は、MPR画像に描出された管腔の対向する管腔内壁に対となる2点が複数設定されたか否かを判定する(ステップS103)。
ここで、対となる2点が複数設定されると(ステップS103肯定)、制御部17は、2点間の距離をそれぞれ測定し(ステップS104)、設定された対となる2点の位置情報と、各2点間の距離の測定結果とをパラメータ設定部141に通知する。
そして、パラメータ設定部141は、通知された2点の位置情報から、ボリュームデータにおいて、設定された対となる2点を通過する直線をそれぞれ算出する(ステップS105)。その後、パラメータ設定部141は、算出した直線上の2点の距離がMPR画像における2点間の距離(通知された距離)と同一となる閾値を、対となる2点ごとにそれぞれ抽出する(ステップS106)。
そして、フライスルー画像生成部142は、抽出された閾値で生成されたボリュームデータを用いてフライスルー画像をそれぞれ生成する(ステップS107)。そして、制御部17は、視点移動に応じて生成されたフライスルー画像を切替えて表示させ(ステップS108)、処理を終了する。なお、フライスルー表示モードがOFFの場合、及び、対となる2点が複数設定されるまで、超音波診断装置100は、待機状態である(ステップS101否定、ステップS103否定)。
次に、図10を用いて、MPR画像表示処理の手順を説明する。図10に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、画像生成部14は、ボリュームデータに含まれる管腔を1枚のMPR画像で表示できるか否かを判定する(ステップS201)。ここで、管腔を1枚のMPR画像で表示できない場合には(ステップS201否定)、画像生成部14が芯線に沿って管腔の断面を含むMPR画像を生成して、制御部17が生成された画像をモニタ2に表示させる(ステップS202)。
そして、画像生成部14は、観察者によって計測点が設定されたか否かを判定する(ステップS203)。ここで、計測点が設定された場合には(ステップS203肯定)、画像生成部14は芯線に沿って視点を移動させ(ステップS204)、管腔の終端であるか否かを判定する(ステップS205)。
ここで、管腔の終端ではない場合には(ステップS205否定)、画像生成部14は、管腔径に大きな変化があるか否かを判定する(ステップS206)。ここで、管腔径に大きな変化がない場合には(ステップS206否定)、画像生成部14は、設定された計測点が次のMPR画像に含まれるように視点を移動して(ステップS207)、MPR画像を生成する(ステップS202)。
一方、管腔径に大きな変化がある場合には(ステップS206肯定)、画像生成部14は、半分の距離(例えば、設定された計測点が次のMPR画像に含まれるように視点を移動させた場合の距離の半分の距離)で視点を移動させて(ステップS208)、MPR画像を生成する(ステップS202)。第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、管腔の終端まで上述した処理を繰り返して実行し、管腔の終端でMPR画像生成処理を終了する(ステップS205肯定)。また、管腔を1枚のMPR画像で表示できる場合には(ステップS201肯定)、画像生成部14が管腔全体を含むMPR画像を生成して、制御部17が生成された画像をモニタ2に表示させ(ステップS209)、MPR画像生成処理を終了する。
上述したように、第1の実施形態によれば、パラメータ設定部141は、ボリュームデータを用いて生成されたMPR画像に描出された管腔の情報に基づいて、当該管腔の内部を所定の視点から投影したPVR画像を生成するための画質調整パラメータの値を所定の視点ごとに設定する。フライスルー画像生成部142は、所定の視点ごとに設定された画質調整パラメータの値を用いて、当該所定の視点それぞれからのPVR画像をそれぞれ生成する。制御部17は、管腔の内部の視点の位置に応じたPVR画像をモニタにてそれぞれ表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、所定の視点ごとに設定した閾値を用いて生成したボリュームデータからフライスルー画像を生成することができ、視点移動を行った場合であっても、フライスルー画像における管腔を適切に表示することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、パラメータ設定部141は、管腔の一部の断面をそれぞれ含み、当該管腔の全体を網羅するように生成された複数のMPR画像それぞれに描出された管腔の情報に基づいて、複数のMPR画像それぞれについてPVR画像を生成するための画質調整パラメータの値を設定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、種々の管腔の形状に対応することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、パラメータ設定部141は、管腔の径が大きく変化する場合に、管腔が短い区間で区切られた断面をそれぞれ含み、当該管腔の全体を網羅するように生成された複数のMPR画像それぞれに描出された管腔の情報に基づいて、複数のMPR画像それぞれについてPVR画像を生成するための画質調整パラメータの値を設定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、径の大きさが急激に変化する管腔であっても、より正確なフライスルー画像を表示させることを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、パラメータ設定部141は、MPR画像に描出された管腔の対向する内壁に対してユーザが設定した座標の情報に基づいて、画質調整パラメータの値を設定する。そして、フライスルー画像生成部142は、ユーザによって設定された座標に対応するPVR画像を、当該座標ごとに設定された画質調整パラメータを用いてそれぞれ生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、ユーザの指定する位置のフライスルー画像を正確に表示することを可能にする。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、単一の閾値を用いて1枚のPVR画像を生成する場合について説明した。第2の実施形態では、PVR画像のピクセルごとに閾値を設定する場合について説明する。
第2の実施形態に係るパラメータ設定部141は、MPR画像に描出された管腔の情報に基づいて、PVR画像におけるピクセルごとの閾値を設定する。具体的には、パラメータ設定部141は、MPR画像上に設定された計測点の閾値を用いて、ピクセルごとの閾値を補完する。図11は、第2の実施形態に係るパラメータ設定部141による処理の一例を説明するための図である。ここで、図11においては、直交3断面のMPR画像と、フライスルー画像(PVR画像)とを示す。
例えば、パラメータ設定部141は、図11に示すように、視線の直交する2断面に対して設定された計測点を用いて、ピクセルごとの閾値を設定する。ここで、まず、パラメータ設定部141は、図11に示すように、視線の直交する2断面に対して計測点がそれぞれ設定されると、断面それぞれについて、計測点ごとの閾値を設定して、さらに、図5Bに示すような補完用データを生成する。
そして、パラメータ設定部141は、設定した閾値及び補完用データを用いて計測点が設定された同一断面に対応するピクセルの閾値を設定する。図12は、第2の実施形態に係るパラメータ設定部141によるピクセルごとの閾値設定処理の一例を説明するための図である。図12においては、計測点が設定された断面を示す。例えば、パラメータ設定部141は、図12の(A)に示すように、管腔内壁に対して各ピクセルに対応する視線23〜26を算出する。そして、パラメータ設定部141は、算出した視線23〜26が管腔内壁と交差する位置をそれぞれ算出する。そして、パラメータ設定部141は、算出した位置の閾値を補完用データから読み出し、読み出した閾値を該当するピクセルの閾値として設定する。
一例を挙げると、パラメータ設定部141は、図12の(B)に示すように、視線23に対応するピクセルの閾値を「60」と設定する。同様に、パラメータ設定部141は、図12の(B)に示すように、視線24、視線25及び視線26に対応するピクセルの閾値をそれぞれ「70」、「72」及び「62」と設定する。
或いは、パラメータ設定部141は、ボリュームデータに対する画質調整パラメータを種々変更させて、通知された点の座標に管腔の内壁が重畳する画質調整パラメータをピクセルごとに抽出する。具体的には、パラメータ設定部141は、各ピクセルに対してMPR画像とPVR画像の境界が一致するように閾値を設定する。または、パラメータ設定部141は、ピクセルごとに、各視線が交差するMPR画像の境界位置と、各視線から算出したPVR画像の境界位置とが一致するように、閾値を設定する。
さらに、パラメータ設定部141は、対応するMPR画像がない(MPR画像が生成されていない)ピクセルに関して、視点からの距離が最も近い直交2断面上の2点の閾値を用いて補完処理を行う。図13は、第2の実施形態に係るパラメータ設定部141によるピクセルごとの閾値設定処理の一例を説明するための図である。
例えば、対応するMPR画像がないピクセルについて、パラメータ設定部141は、図13の(A)に示すように、視点からの距離が最も近い直交2断面上の2点の閾値を用いて補完処理を行う。まず、パラメータ設定部141は、閾値を設定するピクセルについて、視点からの距離を算出し、算出した距離に最も近い2つのピクセルを、対応するMPR画像があるピクセルの中から抽出する。
そして、パラメータ設定部141は、抽出したピクセルの閾値と、閾値を設定するピクセルから各ピクセルまでの距離とを用いた加重平均により、ピクセルの閾値を補完する。例えば、パラメータ設定部141は、図13の(B)に示すように、MPR画像53上のピクセルの閾値「T1」と、MPR画像54上のピクセルの閾値「T2」とを用いて、閾値を設定するピクセルの閾値「TX」を以下の式(1)を用いて算出する。なお、以下の式における「L1」及び「L2」は、図13の(B)に示すように、それぞれ「T1−TX」の距離及び「T2−TX」の距離を示す。また、「L1」及び「L2」の曲線は、各ピクセルから原点までの距離が等しくなる曲線である。
式(1):TX=(L2T1+L1T2)/(L1+L2)
すなわち、パラメータ設定部141は、式(1)に示すように、各ピクセルの閾値に対して距離で重み付けした加重平均によって閾値を算出し、算出した閾値を対応するピクセルに設定する。
第2の実施形態に係るフライスルー画像生成部142は、ピクセルごとに設定された閾値の情報を取得し、各閾値でボリュームデータを生成し、生成してボリュームデータから各ピクセルに対応する投影像を生成する。そして、フライスルー画像生成部142は、ピクセルごとの投影像をまとめて1枚のPVR画像を生成して画像メモリ15に格納する。フライスルー画像生成部142は、視点を移動させたPVR画像を順次生成して、画像メモリ15に格納する。制御部17は、画像メモリ15によって記憶されたPVR画像を切替えて表示させることでフライスルー画像を表示させる。
次に、図14を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置100の処理について説明する。図14は、第2の実施形態に係る超音波診断装置100によるフライスルー画像表示処理の手順を示すフローチャートである。図14に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置100においては、フライスルー表示モードであると(ステップS301肯定)、制御部17は、MPR画像をモニタ2に表示させる(ステップS302)。そして、制御部17は、MPR画像に描出された管腔の対向する管腔内壁に対となる2点が複数設定されたか否かを判定する(ステップS303)。
ここで、対となる2点が複数設定されると(ステップS303肯定)、制御部17は、2点間の距離をそれぞれ測定し(ステップS304)、設定された対となる2点の位置情報と、各2点間の距離の測定結果とをパラメータ設定部141に通知する。
そして、パラメータ設定部141は、通知された2点の位置情報から、ボリュームデータにおいて、設定された対となる2点を通過する直線をそれぞれ算出する(ステップS305)。その後、パラメータ設定部141は、算出した直線上の2点の距離がMPR画像における2点間の距離(通知された距離)と同一となる閾値を、対となる2点ごとにそれぞれ抽出する(ステップS306)。
そして、パラメータ設定部141は、抽出した閾値それぞれを用いて補完用データを生成し(ステップS307)、ピクセルごとに閾値を決定する(ステップS308)。その後、フライスルー画像生成部142は、ピクセルごとの閾値を変化させたフライスルー画像をそれぞれ生成する(ステップS309)。そして、制御部17は、視点移動に応じて生成されたフライスルー画像を切替えて表示させ(ステップS310)、処理を終了する。なお、フライスルー表示モードがOFFの場合、及び、対となる2点が複数設定されるまで、超音波診断装置100は、待機状態である(ステップS301否定、ステップS303否定)。
なお、ステップS302におけるMPR画像の表示は、図10と同様の処理である。
また、第1の実施形態によれば、パラメータ設定部141は、PVR画像を示すピクセルごとに画質調整パラメータを設定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、より正確なフライスルー画像を表示することを可能にする。
(第3の実施形態)
上述した第1及び2の実施形態では、観察者によってMPR画像上に点が設定される場合について説明した。第3の実施形態では、MPR画像に描出された管腔内壁を抽出して、点を設定する場合について説明する。
第3の実施形態に係るパラメータ設定部141は、MPR画像に描出された管腔の内壁を示す輪郭線を抽出し、抽出した輪郭線に対して、ボリュームデータにおける管腔の内壁の位置が対応するように、画質調整パラメータを設定する。具体的には、パラメータ設定部141は、エッジ検出などを用いてMPR画像に描出された管腔の内壁の輪郭線を抽出する。そして、パラメータ設定部141は、抽出した輪郭線の位置情報(輪郭線を構成する全ての点の座標)を取得する。そして、パラメータ設定部141は、対向する2点を任意の位置に複数設定して、設定した2点の位置それぞれに閾値を設定する。
図15Aは、第3の実施形態に係るパラメータ設定部141による処理を説明するための図である。例えば、パラメータ設定部141は、図15Aに示すMPR画像における管腔内壁の輪郭線(境界線)を抽出する。そして、パラメータ設定部141は、図15Aに示すように、管腔内壁の輪郭線上の任意の位置に対となる2点を複数設定する。
ここで、管腔全体を1枚のMPR画像に描出できない場合には、画像生成部14は、管腔の一部の断面を含む複数のMPR画像を、含まれる管腔の一部をずらしながら管腔全体を網羅するように生成する。このとき、パラメータ設定部141は、画像生成部141によって生成された各MPR画像について管腔内壁の輪郭線を抽出して、管腔内壁の輪郭線上の任意の位置に対となる2点を複数設定する。
図15Bは、第3の実施形態に係る画像生成部14及びパラメータ設定部141による処理を説明するための図である。図15Bにおいては、管腔全体を1枚のMPR画像に描出できない場合の処理の一例を示す。かかる場合、画像生成部14は、図15Bに示すように、管腔に直交する直交MPR画像を断面の位置をずらしながら生成する。そして、パラメータ設定部141は、図15Bに示すように、各MPR画像から管腔内壁の輪郭線を抽出して、抽出した輪郭線上の任意の位置に対となる2点を設定する。そして、パラメータ設定部141は、各2点の位置における閾値をそれぞれ設定する。
第3の実施形態に係るフライスルー画像生成部142は、パラメータ設定部141によって設定された閾値を用いて、視点位置に応じたフライスルー画像(PVR画像)を生成する。
次に、図16を用いて、第3に実施形態に係る超音波診断装置100による処理の手順を説明する。図16は、第3の実施形態に係る超音波診断装置100によるフライスルー画像表示処理の手順を示すフローチャートである。図14に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置100においては、フライスルー表示モードであると(ステップS401肯定)、制御部17は、MPR画像をモニタ2に表示させる(ステップS402)。そして、パラメータ設定部141は、MPR画像から管腔の境界を抽出する(ステップS403)。
そして、パラメータ設定部141は、対となる2点を複数設定して2点間の距離をそれぞれ測定する(ステップS404)。そして、パラメータ設定部141は、設定した2点の位置情報から、ボリュームデータにおいて、設定した対となる2点を通過する直線をそれぞれ算出する(ステップS405)。その後、パラメータ設定部141は、算出した直線上の2点の距離がMPR画像における2点間の距離と同一となる閾値を、対となる2点ごとにそれぞれ抽出する(ステップS406)。
その後、フライスルー画像生成部142は、設定された閾値でそれぞれ生成されたボリュームデータを用いてフライスルー画像をそれぞれ生成する(ステップS407)。そして、制御部17は、視点移動に応じて生成されたフライスルー画像を切替えて表示させ(ステップS408)、処理を終了する。なお、フライスルー表示モードがOFFの場合、及び、対となる2点が複数設定されるまで、超音波診断装置100は、待機状態である(ステップS401否定)。
なお、ステップS302におけるMPR画像の表示は、図10と同様の処理である。
上述したように、第3の実施形態に係る超音波診断装置100においては、管腔内壁を示す輪郭線に対して対となる2点を設定し、2点ごとに画質調整パラメータ(閾値)を設定する。例えば、第3の実施形態に係る画質調整パラメータの設定処理を自動で実行させ、観察者が第1又は第2の実施形態に係る画質調整パラメータの設定処理により画質調整パラメータの微調整をするようにしてもよい。
上述したように、第3の実施形態によれば、パラメータ設定部141は、MPR画像に含まれる管腔の対向する内壁を抽出し、抽出した内壁に対して設定した座標の情報に基づいて、画質調整パラメータの値を設定する。そして、フライスルー画像生成部142は、設定された座標に対応するPVR画像を、当該座標ごとに設定された画質調整パラメータを用いてそれぞれ生成する。従って、第3の実施形態に係る超音波診断装置100は、視点が移動した場合であっても、自動で適切なフライスルー画像を表示することを可能にする。
(第4の実施形態)
さて、これまで第1、2及び3の実施形態について説明したが、上述した第1、2及び3の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した第1、2及び3の実施形態では、1枚のMPR画像に管腔全体を描出できない場合に、管腔の一部の断面を含む複数のMPR画像を、含まれる管腔の一部をずらしながら管腔全体を網羅するように生成し、各MPR画像に対となる2点が設定される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、カーブドMPR画像(Curved MPR画像)を用いる場合であってもよい。
図17は、第4の実施形態に係る変形例を示す図である。例えば、画像生成部14は、管腔の一部の断面を含む複数のMPR画像を、含まれる管腔の一部をずらしながら管腔全体を網羅するように生成する。そして、画像生成部14は、図17に示すように、各MPR画像に含まれる管腔の断面をつなげたカーブドMPR画像を生成する。制御部17は、画像生成部14によって生成されたカーブドMPR画像をモニタ2にて表示させて、例えば、図17に示すように、観察者に対となる2点を複数設定させる。
上述したように、カーブドMPR画像を用いることにより、管腔の形状を一目で把握させることができ、効率的な計測点の設定を行わせることを可能にする。
上述した第1〜第3の実施形態では、画質調整パラメータとして閾値を用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、画質調整パラメータとして透過度やガンマ値を用いる場合であってもよい。なお、透過度とは、図2に示す閾値と輝度との関係を示すグラフの傾きを調整するためのパラメータである。また、ガンマ値とは、図2に示すグラフの傾き部分の状態(直線状、曲線状など)を調整するためのパラメータである。
上述した第1〜第3の実施形態では、超音波診断装置が画質調整パラメータを設定する場合について説明したが、上述した処理は、ワークステーションなどの画像処理装置によって実行される場合であってもよい。かかる場合には、例えば、ネットワークを介して超音波診断装置や、画像保管装置などと接続されたワークステーションが、超音波診断装置や、画像保管装置などからボリュームデータを取得する。そして、ワークステーションは、取得したボリュームデータを用いて上述した処理を実行する。
以上説明したとおり、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態によれば、本実施形態の超音波診断装置、画像処理装置及びプログラムは、視点移動をした場合であっても、フライスルー画像における管腔を適切に表示することを可能にする。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。