JP2014092031A - 内燃機関の冷却経路切替装置 - Google Patents

内燃機関の冷却経路切替装置 Download PDF

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Abstract

【課題】冷却経路を好適に切り替えることが可能な内燃機関の冷却経路切替装置を提供する。
【解決手段】切替装置1は冷却通路部2とW/P3と圧力弁4、5と絞り6とを備える。圧力弁4は冷却経路R1に介在するように冷却通路部2に設けられ、入口部Inおよび出口部Outのうち入口部In側で冷却経路R2に隣接して配置されるとともに、上流側から作用する冷却水の圧力を開弁方向の圧力とする。圧力弁5は冷却経路R1に介在するように冷却通路部2に設けられ、冷却経路R1において出口部Outの手前に配置されるとともに、上流側から作用する冷却水の圧力を開弁方向の圧力とする。絞り6は冷却経路R2に介在するように冷却通路部2に設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は内燃機関の冷却経路切替装置に関する。
内燃機関では冷却水の流通状態を変更することで、より適切な冷却を可能にすることができる。特許文献1ではシリンダブロックの冷却水入口部から冷却水出口部へ至る第1及び第2の経路のそれぞれに配分される冷却水の配分状態を変化させる配分状態変更手段を備える内燃機関の冷却装置が開示されている。特許文献1では配分状態変更手段が例えば板状弁を開閉動作させるサーモスタットを備える配分調整装置であることが開示されている。
特許文献2ではシリンダブロックのウォータジャケットをUターン方式としたエンジンの冷却装置が開示されている。特許文献3ではブロック内流路に冷却水を流入させる差圧弁を備えるエンジンの冷却装置が開示されている。特許文献4が開示する排熱回収装置は作動媒体の圧力に応じて作動する作動動力源に連動する弁体を備える弁機構を有している。
特開2006−132376号公報 特開2006−161782号公報 特開2009−121339号公報 特開2009−8318号公報
内燃機関の冷却水の流通状態を変更するには冷却経路を切り替えることができる。そして、冷却経路の切替には例えばサーモスタットを用いることができる。ところがこの場合には、冷却水の温度がサーモスタットの感温部以外の部分で急上昇した場合に素早く冷却経路を切り替えることが困難であるなど応答性の面で不利となる虞がある。
また、冷却水の流通状態を変更するにあたっては具体的にはシリンダブロックを介した冷却水の流通を停止或いは制限することで、機関暖機性を高めることが考えられる。ところがサーモスタットでは、作動温度に達した冷却水が感温部に到達するまでの間に時間がかかる分、応答遅れが生じる虞がある。或いは作動温度を低く設定することで、その分暖機促進性が制限される虞がある。
この点、サーモスタットを用いる場合には例えば次のようにして応答遅れを補うこともできる。図8は冷却装置の一例である冷却装置100を示す図である。冷却装置100はウォータポンプ(以下、W/Pと称す)101と内燃機関102とラジエータ103とサーモスタット104と圧力弁105とを備えている。
W/P101が圧送する冷却水はサーモスタット104を介して内燃機関102のシリンダヘッド102bに供給される。また、圧力弁105を介して内燃機関102のシリンダブロック102aに供給される。シリンダブロック102aに供給された冷却水はシリンダヘッド102bに供給される。シリンダヘッド102bに供給された冷却水はラジエータ103を介してW/P101に戻る。W/P101は内燃機関102の動力で駆動する機械式のW/Pとなっている。
サーモスタット104は冷却水の温度が所定温度よりも低い場合に開弁し、所定温度よりも高い場合に閉弁する。サーモスタット104は圧力弁105およびシリンダブロック102a間の冷却水の温度を感温するように構成されている。圧力弁105は開弁作用圧が開弁設定圧よりも大きい場合に開弁する。開弁作用圧は開弁設定圧に対応する作用圧であり、具体的にはここでは上流側から作用する冷却水の圧力と下流側から作用する冷却水の圧力との差圧である。
冷却装置100では機関暖機時にシリンダブロック102aおよびシリンダヘッド102bのうちシリンダヘッド102bに冷却水が供給される。また、内燃機関102の回転数が上昇し、シリンダブロック102aの冷却の必要性が高まった場合には圧力弁105が開弁し、シリンダブロック102aにも冷却水を供給する。したがって、冷却装置100では圧力弁105を設けることで、サーモスタット104の応答遅れを補っている。
ところが、圧力弁105開弁時にはW/P101からシリンダヘッド102bにも冷却水が供給されている。このため、シリンダブロック102aにおける冷却水の圧力とシリンダヘッド102bにおける冷却水の圧力との間には大きな差が生じない虞がある。結果、シリンダブロック102aからシリンダヘッド102bに供給される冷却水の流量が制限される虞がある。そして、これに応じてW/P101からシリンダブロック102aに供給される冷却水の流量も制限される結果、シリンダブロック102aの冷却が不十分になる虞がある。
この点、かかる事態は例えば次のような場合に発生し得る。すなわち、上述のような流通態様を特段考慮せず、シリンダブロック102a、シリンダヘッド102bの順に冷却水を流通させる一般的な冷却経路を有する既存の内燃機関102をベースに用いた場合に発生し得る。結果、この場合には冷却による信頼性の確保が困難になる虞があるか、或いは内燃機関102の冷却通路の再適合が必要となる結果、技術の展開容易性やコストの面で不利になる虞がある。
またこの場合には、内燃機関102の運転状態が低回転高負荷である場合に圧力弁105が開弁しないことになる。ところが、かかる運転状態では冷却水が低温でも内燃機関102の壁温が高温になることもある。結果、この場合にも作動温度を低く設定する必要性が生じる結果、暖機促進性が制限される虞がある。さらにこの場合には、開弁作用圧が開弁設定圧に設定されると圧力弁105が開弁、閉弁を繰り返す結果、流通状態の不安定化による信頼性低下や圧力弁105の振動破損が発生する虞がある。
冷却経路の切替にはサーモスタットのほか電磁弁を用いることもできる。この場合、例えば内燃機関の冷却通路の入口または出口をシリンダブロックとシリンダヘッドとに設け、2系統化した冷却経路を電磁弁で切り替える冷却装置を構成することができる。ところが、この場合にも冷却経路が一般的な冷却経路と異なってくる関係上、信頼性確保の観点から冷却通路の設計変更が必要となる虞がある。結果、技術の展開容易性やコストの面で不利になる虞がある。
本発明は上記課題に鑑み、冷却経路を好適に切り替えることが可能な内燃機関の冷却経路切替装置を提供することを目的とする。
本発明は内燃機関が備えるシリンダブロックのシリンダ群の周囲に設けられ、冷却媒体の入口部および出口部が接続する冷却通路部と、前記入口部を介して前記シリンダブロックに冷却媒体を供給するポンプと、前記入口部から前記出口部への流通経路が相対的に長い第1の冷却経路と相対的に短い第2の冷却経路とのうち第1の冷却経路に介在するように前記冷却通路部に設けられ、前記入口部および前記出口部のうち前記入口部側で前記第2の冷却経路に隣接して配置されるとともに、上流側から作用する冷却媒体の圧力を開弁方向の圧力とする第1の圧力弁と、前記第1の冷却経路に介在するように前記冷却通路部に設けられ、前記第1の冷却経路において前記出口部の手前に配置されるとともに上流側から作用する冷却媒体の圧力を開弁方向の圧力とする第2の圧力弁と、前記第2の冷却経路に介在するように前記冷却通路部に設けられた絞りとを備える内燃機関の冷却経路切替装置である。
本発明は前記内燃機関が前記内燃機関のシリンダヘッド側から前記冷却通路部に接続するとともに、前記第1の圧力弁から前記第1の冷却経路に沿って前記第2の圧力弁に至る範囲内で前記冷却通路部に接続する通路部を備えており、前記第1の圧力弁の開弁設定圧を前記第2の圧力弁の開弁設定圧よりも低く設定した構成とすることができる。
本発明は前記ポンプが圧送する冷却媒体の流量を可変にする電動式の可変ポンプであり、前記第1および第2の圧力弁に作用する開弁作用圧それぞれのうち少なくともいずれかが前記第1および第2の圧力弁のうち対応する圧力弁の開弁設定圧に設定されることを回避するように前記ポンプが冷却媒体の流量を調整する構成とすることができる。
本発明は前記第1の圧力弁が前記第1の冷却経路を介した冷却媒体の流通を許可する場合に、前記第2の冷却経路を介した冷却媒体の流通を制限する構成とすることができる。
本発明によれば、冷却経路を好適に切り替えることができる。
内燃機関の冷却経路切替装置の全体構成図である。 内燃機関の冷却経路切替装置の動作説明図である。 W/Pの動作説明図である。 回避領域の説明図である。 絞りの作用説明図である。 内燃機関の冷却経路切替装置の変形例を示す図である。 圧力損失調整機構の変形例を示す図である。 冷却装置の一例を示す図である。
図面を用いて本発明の実施例について説明する。
図1は内燃機関の冷却経路切替装置(以下、切替装置と称す)1の全体構成図である。切替装置1は冷却通路部2とW/P3と圧力弁4、5と絞り6とECU10とを備えている。冷却通路部2はシリンダブロック20のシリンダ群の周囲に設けられている。冷却通路部2には冷却媒体である冷却水の入口部Inと出口部Outとが接続している。入口部Inはシリンダブロック20に設けられている。出口部Outはシリンダブロック20を備える内燃機関(以下、内燃機関Eと称す)のシリンダヘッド(以下、シリンダヘッドHと称す)およびヘッドガスケットに設けられている。
W/P3は圧送する冷却水の流量を可変にする電動式の可変ポンプとなっている。W/P3は入口部Inを介してシリンダブロック20に冷却水を供給する。供給された冷却水は冷却通路部2を流通した後、出口部Outからシリンダブロック20外に流出する。冷却通路部2を流通する冷却水は冷却経路R1、R2のうち少なくともいずれかを介して出口部Outに到達する。冷却経路R1は入口部Inから出口部Outへの流通経路が相対的に長い冷却経路であり、第1の冷却経路に相当する。冷却経路R2は同流通経路が相対的に短い冷却経路であり、第2の冷却経路に相当する。冷却経路R2は具体的にはシリンダ群のうち一端に位置するシリンダに沿った冷却経路となっている。
圧力弁4は冷却経路R1に介在するように冷却通路部2に設けられている。圧力弁4は入口部Inおよび出口部Outのうち入口部In側で冷却経路R2に隣接して配置されている。圧力弁4は閉弁時に閉弁時に冷却経路R1を介した冷却水の流通を禁止或いは制限する。また、開弁時に冷却経路R1を介した冷却水の流通を許可する。圧力弁4は冷却経路R1において上流側から作用する冷却水の圧力を開弁方向の圧力としている。この点、開弁作用圧は上流側から作用する冷却水の圧力と下流側から作用する冷却水の圧力との差圧(上流圧−下流圧)となっている。圧力弁4の開弁設定圧は圧力弁5の開弁設定圧よりも低く設定されている。圧力弁4は第1の圧力弁に相当する。
圧力弁5は冷却経路R1に介在するように冷却通路部2に設けられている。圧力弁5は冷却経路R1において出口部Outの手前に配置されている。圧力弁5は閉弁時に冷却経路R1を介した冷却水の流通を禁止或いは制限する。また、開弁時に冷却経路R1を介した冷却水の流通を許可する。圧力弁5は冷却経路R1において上流側から作用する冷却水の圧力を開弁方向の圧力としている。圧力弁5は第2の圧力弁に相当する。
絞り6は冷却経路R2に介在するように冷却通路部2に設けられている。絞り6は冷却経路R2を介して冷却通路部2を流通する冷却水に圧力損失を生じさせる。そしてこの結果、圧力弁5に下流側から作用する冷却水の圧力に影響を及ぼす。また、圧力弁4に上流側から作用する冷却水の圧力に影響を及ぼす。切替装置1では圧力弁4、5に作用するこれら圧力の調整が絞り6によって予め行われている。絞り6は圧力弁4、5とともに圧力損失調整機構(以下、機構Aと称す)を構成している。
内燃機関Eは出口部Outのほかに冷却通路部2とシリンダヘッドHの冷却通路部とを接続する複数の通路部Wを備えている。複数の通路部WはシリンダヘッドH側から冷却通路部2に接続するとともに、圧力弁4から冷却経路R1に沿って圧力弁5に至る範囲内で冷却通路部2に接続している。この点、出口部OutはシリンダヘッドH側から冷却通路部2に接続する通路部のうち最も通路断面積が大きい通路部となっている。
複数の通路部Wは複数の通路部W1および複数の通路部W2を有して構成されている。通路部W1は気筒配列方向においてシリンダ群を構成する複数のシリンダのうち隣り合うシリンダ同士の間の部分で、シリンダヘッドH側から冷却通路部2に接続している。通路部W2は通路部W1が設けられている部分以外の部分でシリンダヘッドH側から冷却通路部2に接続している。通路部W1はシリンダヘッドHにおいてボア間壁部に隣接して設けられている。通路部W2はシリンダヘッドHにおいてボア間壁部以外の高温部位(例えば排気弁間壁部)に隣接して設けられている。
ECU10は電子制御装置であり、ECU10には内燃機関Eの運転状態を検出するためのセンサ群11がセンサ・スイッチ類として電気的に接続されている。また、W/P3が制御対象として電気的に接続されている。センサ群11は例えば内燃機関Eの回転数を検出可能なクランク角センサや内燃機関Eの吸入空気量を計測するエアフロメータや内燃機関Eに対する加速要求を行うアクセル開度センサや内燃機関Eの冷却水温を検知する水温センサを含む。ECU10はW/P3を制御する制御部に相当する。そして、W/P3はECU10の制御のもと、次のように冷却水の流量を調整する。
すなわち、内燃機関Eの暖機時且つ中低負荷時には吐出圧が第1の所定圧よりも低くなるように冷却水の流量を調整する。また、内燃機関Eの暖機後且つ中低負荷時には吐出圧が第1の所定圧よりも高く(ここでは第1の所定圧以上)、且つ第1の所定圧よりも値が高い第2の所定圧よりも低くなるように冷却水の流量を調整する。また、内燃機関Eの高負荷時には吐出圧が第2の所定圧よりも高くなるように(ここでは第2の所定圧以上になるように)冷却水の流量を調整する。したがって、W/P3は内燃機関Eの運転状態に応じて吐出圧が相対的に低圧、中圧または高圧になるように冷却水の流量を調整する。
図2は切替装置1の動作説明図である。図2(a)は内燃機関Eの暖機時且つ中低負荷時の状態を示す。図2(b)は内燃機関Eの暖機後且つ中低負荷時の状態を示す。図2(c)は内燃機関Eの高負荷時の状態を示す。
内燃機関Eの暖機時且つ中低負荷時には吐出圧が低圧になるようにW/P3が冷却水の流量を調整する。この点、第1の所定圧は吐出圧が第1の所定圧よりも低い場合に圧力弁4の開弁作用圧が開弁設定圧よりも低くなるように設定されている。このためこの場合には、図2(a)に示すように圧力弁4、5がともに閉弁した状態となっている。結果、冷却水は入口部Inから冷却経路R2を介して冷却通路部2を流通し、出口部Outから流出する。この場合、シリンダブロック20の冷却を抑制することで、機関暖機を促進できる。そして、機関暖機を促進することで具体的には内燃機関Eの燃費を改善できる。
内燃機関Eの暖機後且つ中低負荷時には吐出圧が中圧になるようにW/P3が冷却水の流量を調整する。この点、第1の所定圧は吐出圧が第1の所定圧よりも高い場合に圧力弁4の開弁作用圧が開弁設定圧に到達するように設定されている。また、第2の所定圧は吐出圧が第2の所定圧よりも低い場合に圧力弁5の開弁作用圧が開弁設定圧よりも低くなるように設定されている。
このためこの場合には、図2(b)に示すように圧力弁4が開弁するとともに圧力弁5が閉弁した状態となっている。結果、冷却水は入口部Inから冷却経路R2を介して冷却通路部2を流通し、出口部Outから流出する。また、冷却経路R1を介して冷却通路部2を流通し、通路部Wから流出する。この場合、通路部W内の冷却水の沸騰を抑制できる。また、シリンダヘッドHにおけるボア間壁部や排気弁間壁部の壁温の過上昇を抑制できる。この場合、冷却水の一部が冷却経路R2を介して冷却通路部2を流通する分、シリンダブロック20で発生する冷却損失も低減できる。
内燃機関Eの高負荷時には吐出圧が高圧になるようにW/P3が冷却水の流量を調整する。この点、第2の所定圧は吐出圧が第2の所定圧よりも高い場合に圧力弁5の開弁作用圧が開弁設定圧に到達するように設定されている。このためこの場合には、図2(c)に示すように圧力弁4、5が開弁した状態となっている。結果、冷却水は主に入口部Inから冷却経路R1を介して冷却通路部2を流通し、出口部Outから流出する。この場合、シリンダブロック20の冷却を促進することで、内燃機関Eの信頼性を確保できる。
W/P3はさらにECU10の制御のもと、圧力弁4、5に作用する開弁作用圧それぞれのうち少なくともいずれかが圧力弁4、5のうち対応する圧力弁の開弁設定圧に設定されることを回避するように冷却水の流量を調整する。具体的にはW/P3は冷却通路部2に供給される冷却水の総流量が圧力弁4、5のうち少なくともいずれかの開弁時の流量を下限とする所定範囲内の流量に設定されることを回避するように冷却水の流量を調整する。
図3はW/P3の動作説明図である。図4は回避領域Sの説明図である。図3において縦軸はDuty比、横軸は時間を示す。図4において縦軸は冷却経路R1、R2の流量割合と圧力弁4の上流圧とを示し、横軸は冷却通路部2に供給される冷却水の総流量を示す。
図3に示すようにECU10は具体的にはPWM(Pulse Width Modulation)制御によってW/P3を制御する。ECU10はDuty比が回避領域Sに含まれることを回避するようにDuty比を変更する。Duty比が回避領域Sに含まれることを回避するにあたって、ECU10はさらに具体的には回避領域Sの上限値よりも高いDuty比になるようにDuty比を変更する。そして、このようにECU10がDuty比を変更する結果、W/P3が上述のように流量を調整する。
回避領域Sは具体的には回避領域S1となっている。回避領域S1は図4に示す回避領域S1´に対応するDuty比の回避領域となっている。回避領域S1´は次に示す冷却水の総流量を下限値および上限値として有する領域となっている。すなわち、冷却経路R1、R2の流量割合の変化によって示されるように、圧力弁4が開弁する冷却水の総流量を下限値として有する領域となっている。また、圧力弁4開弁後に圧力弁4の上流圧が冷却水の総流量の増加に応じて上昇し始めるとともに、冷却経路R1、R2の流量割合の変化(傾き)が緩やかになる冷却水の総流量を上限値として有する領域となっている。
回避領域S1´で圧力弁4の上流圧の変化傾向が圧力弁4開弁前と異なってくる理由は次の通りである。すなわち、圧力弁4開弁後には上流圧が低下することで圧力弁4が再び閉弁する。閉弁した圧力弁4は上流圧が高まることで再び開弁する。そして、これらの動作が繰り返されることで圧力弁4の上流圧が冷却水の総流量の増加に応じて上昇しなくなるためである。
回避領域Sは第1の回避領域である回避領域S1と第2の回避領域である回避領域S2とのうち少なくともいずれかであってもよい。回避領域S2は圧力弁5についてのDuty比の回避領域である。回避領域S2は回避領域S1と同様、圧力弁5について冷却水の総流量の回避領域S2´を把握することで把握できる。この場合、Duty比が回避領域Sに含まれることを回避するにあたって、ECU10は次のようにDuty比を変更することができる。
すなわち、回避領域Sが回避領域S1、S2のうちいずれかである場合には、回避領域Sの上限値よりも高いDuty比になるようにDuty比を変更することができる。また、回避領域Sが回避領域S1およびS2である場合には、回避領域S1、S2のうち対象となる回避領域の上限値よりも高いDuty比であって、他方の回避領域に含まれないDuty比になるようにDuty比を変更することができる。このようにDuty比を変更するための目標Duty比は例えば機関運転状態に応じて予めマップデータで設定しておくことができる。
次に切替装置1の主な作用効果について説明する。切替装置1はW/P3の吐出圧に応じて冷却経路を切り替える。具体的にはW/P3の吐出圧が相対的に低い場合には、前述した図2(a)に示すように冷却経路を切り替える。また、W/P3の吐出圧が相対的に高い場合には、前述した図2(c)に示すように冷却経路を切り替える。
この点、切替装置1は圧力弁4、5で冷却経路を切り替えることで、内燃機関Eの暖機促進および信頼性確保を図ることができると同時に、W/P3の吐出圧に応じた高い応答性を確保できる点で好適である。また、切替装置1は冷却通路部2に圧力弁4、5および絞り6(すなわち機構A)を設置することで、このような冷却経路の切替を可能にすることができる。このため、切替装置1は技術の展開容易性やコストの面で有利となる点でも好適である。
切替装置1は絞り6を備えることで、次に説明するように技術の展開容易性やコストの面で有利となる点でも好適である。図5は絞り6の作用説明図である。ここで、圧力弁4開弁時且つ圧力弁5閉弁時に圧力弁5に上流側から作用する圧力P1と下流側から作用する圧力P2とはW/P3の吐出圧によって決定される。一方、吐出圧に応じた圧力P1、P2の大きさは冷却通路部2の形状によって異なってくる。このため、冷却通路部2の形状によっては所定の吐出圧で圧力P2が圧力P1よりも高くなる結果、圧力弁5を開弁できないこともある。
これに対し、切替装置1は冷却経路R2を介して流通する冷却水の圧力損失を絞り6で増大させることで、圧力P2を調整できる。結果、圧力弁5を開弁するためのW/P3の吐出圧を絞り6で調整できる。また、絞り6は圧力弁4を開弁するためのW/P3の吐出圧も調整できる。そして、圧力弁4、5を開弁するためのW/P3の吐出圧を調整できることは冷却通路部の形状が冷却通路部2と異なる内燃機関に対し切替装置1を適用した場合でも同様である。したがって、切替装置1はかかる調整が可能である点でも技術の展開容易性やコストの面で有利である。
切替装置1では高い冷却性能を必要とする圧力弁4、5開弁時に主に冷却経路R1を介して入口部Inから出口部Outに冷却水を流通させる。このため、切替装置1はかかる調整を可能にしつつも、圧力弁4、5開弁時に内燃機関E全体の圧力損失に大きな影響を及ぼさないようにすることで、高い冷却性能を確保できる点でも好適である。
切替装置1はさらにW/P3を電動式の可変ポンプとする構成であることで、機関運転状態に応じて冷却経路を応答性良く切り替えることができる。結果、例えば内燃機関Eの運転状態が低回転高負荷である場合に前述した図2(c)に示すように冷却経路を応答性良く切り替えることもできる。すなわち、切替装置1は具体的にはかかる構成であることで、高い応答性に加えて高い制御性を兼ね備えることができる。結果、暖機促進性が制限されることも防止或いは抑制できる。
切替装置1はさらに圧力弁4の開弁設定圧を圧力弁5の開弁設定圧よりも低く設定した構成であることで、前述した図2(b)に示すように冷却経路を切り替えることもできる。結果、内燃機関Eが通路部Wを備える場合に通路部W内の冷却水の沸騰を抑制したり、ボア間壁部や排気弁間壁部の壁温の過上昇を抑制したりすることもできる。
切替装置1はW/P3がさらに圧力弁4、5に作用する開弁作用圧それぞれのうち少なくともいずれかが圧力弁4、5のうち対応する圧力弁の開弁設定圧に設定されることを回避するように冷却水の流量を調整する構成となっている。このため、切替装置1は流通状態の不安定化や圧力弁4、5の振動が発生することも防止或いは抑制できる。結果、具体的には内燃機関Eの信頼性低下や圧力弁4、5の振動破損が発生することを防止或いは抑制できる。
切替装置1はさらに具体的にはPWM制御によってW/P3を制御するECU10を備えるとともに、W/P3を制御するにあたりDuty比が回避領域Sに含まれることを回避するようにECU10がDuty比を変更する構成となっている。そして、Duty比が回避領域Sに含まれることを回避するにあたっては、ECU10が前述のようにDuty比を変更する構成となっている。このため、切替装置1はDuty比が回避領域Sに含まれることを回避するようにDuty比を変更しても冷却水の流量を確保できる。結果、冷却水の流量の観点からも内燃機関Eの信頼性を確保できる。
切替装置1は例えば次のように構成されてもよい。図6は切替装置1の変形例である切替装置1´の要部を示す図である。図6(a)は圧力弁4´閉弁時の状態を示す。図6(b)は圧力弁4´開弁時の状態を示す。切替装置1´は圧力弁4の代わりに圧力弁4´を備える点以外、切替装置1と実質的に同一である。圧力弁4´は次のように構成されている点以外、圧力弁4と実質的に同一である。
すなわち、図6(a)に示すように圧力弁4´は冷却経路R1を介した冷却水の流通を禁止或いは制限する場合に(閉弁時に)、冷却経路R2を介した冷却水の流通を許可する。一方、図6(b)に示すように圧力弁4´は冷却経路R1を介した冷却水の流通を許可する場合に(開弁時に)、冷却経路R2を介した冷却水の流通を制限する。具体的には閉弁時よりも冷却経路R2を介した冷却水の流通を制限する。
このため、切替装置1´は圧力弁4´開弁時に冷却経路R2を介して冷却通路部2を流通する冷却水の圧力損失を増大させることで、当該圧力損失が急激に低下することを抑制できる。すなわち、圧力弁4´開弁時に当該圧力損失が変化することを抑制できる。結果、切替装置1と比較してさらに当該圧力損失の変化に起因して発生する流通状態の不安定化や圧力弁4´の振動も防止或いは抑制できる。
同時に切替装置1´はシリンダブロック20にとって冷却の要求が低い冷却経路R2を介した冷却水の流通を制限する構成となっている。このため、切替装置1´は冷却が必要な部位への冷却水の流通を促進することで、内燃機関Eの信頼性を高めることもできる。切替装置1´はさらに流通状態を安定化させることで、回避領域S1を縮小することもできる。結果、W/P3の流量調整範囲を拡大することで、燃費改善に資することもできる。
圧力弁4、5および絞り6は例えば一体化されていてもよい。図7は機構Aの変形例である機構A´を示す図である。図7(a)は圧力弁4、5閉弁時の機構A´を示す。図7(b)は圧力弁4、5開弁時の機構A´を示す。機構A´は圧力弁4、5および絞り6を気筒延伸方向に沿った一端部および他端部で板状部材によって接続し、一体化した構造となっている。2枚の板状部材のうちシリンダヘッドH側に配置される板状部材には出口部Outが設けられている。機構A´は機構Aと比較して圧力弁4、5および絞り6の設置容易化を図ることができる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
切替装置 1、1´
冷却通路部 2
W/P 3、101
圧力弁 4、4´、5、105
絞り 6
シリンダブロック 20、102a

Claims (4)

  1. 内燃機関が備えるシリンダブロックのシリンダ群の周囲に設けられ、冷却媒体の入口部および出口部が接続する冷却通路部と、
    前記入口部を介して前記シリンダブロックに冷却媒体を供給するポンプと、
    前記入口部から前記出口部への流通経路が相対的に長い第1の冷却経路と相対的に短い第2の冷却経路とのうち第1の冷却経路に介在するように前記冷却通路部に設けられ、前記入口部および前記出口部のうち前記入口部側で前記第2の冷却経路に隣接して配置されるとともに、上流側から作用する冷却媒体の圧力を開弁方向の圧力とする第1の圧力弁と、
    前記第1の冷却経路に介在するように前記冷却通路部に設けられ、前記第1の冷却経路において前記出口部の手前に配置されるとともに上流側から作用する冷却媒体の圧力を開弁方向の圧力とする第2の圧力弁と、
    前記第2の冷却経路に介在するように前記冷却通路部に設けられた絞りとを備える内燃機関の冷却経路切替装置。
  2. 請求項1記載の内燃機関の冷却経路切替装置であって、
    前記内燃機関が前記内燃機関のシリンダヘッド側から前記冷却通路部に接続するとともに、前記第1の圧力弁から前記第1の冷却経路に沿って前記第2の圧力弁に至る範囲内で前記冷却通路部に接続する通路部を備えており、
    前記第1の圧力弁の開弁設定圧を前記第2の圧力弁の開弁設定圧よりも低く設定した内燃機関の冷却経路切替装置。
  3. 請求項1または2記載の内燃機関の冷却経路切替装置であって、
    前記ポンプが圧送する冷却媒体の流量を可変にする電動式の可変ポンプであり、
    前記第1および第2の圧力弁に作用する開弁作用圧それぞれのうち少なくともいずれかが前記第1および第2の圧力弁のうち対応する圧力弁の開弁設定圧に設定されることを回避するように前記ポンプが冷却媒体の流量を調整する内燃機関の冷却経路切替装置。
  4. 請求項1から3いずれか1項記載の内燃機関の冷却経路切替装置であって、
    前記第1の圧力弁が前記第1の冷却経路を介した冷却媒体の流通を許可する場合に、前記第2の冷却経路を介した冷却媒体の流通を制限する内燃機関の冷却経路切替装置。
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