JP2014091099A - 海水を利用した下排水処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】下排水に含まれる有機物を硫酸塩還元細菌によって分解する際に、処理槽内に導入する処理用水として硫酸塩が豊富に含まれる海水を利用する下排水処理方法において、従来よりも省エネルギで、且つ、メンテナンスの手間と時間を少なくすることによって、低コストで簡便な下排水処理方法を提供する。
【解決手段】硫酸塩還元細菌の存在下で、有機物を含む処理対象となる下排水と硫酸塩を含む海水とを処理浄化槽1に導入することによって行う前記の硫酸塩還元細菌による下排水処理方法であって、前記の海水は潮の干満を利用して前記の処理浄化槽1へ導入する。
【選択図】図1

Description

本発明は、下排水処理方法、特に、有機物を含む下排水を省エネルギーで簡便に処理するために海水を利用した下排水処理方法に関する。
有機物を豊富に含む下排水は、我が国においては下水道法や水質汚濁防止法によって、そのまま河川や海等の外部の系に放流したり廃棄することはできないため、下排水処理施設による処理を経て、下排水に含まれる有機物の分解が行われてから放流される。我が国も含めて先進国における下排水処理は、エアレーションタンクにおいて好気的な雰囲気で行われていることが一般的である。この方法は、投入エネルギーの多くがエアレーションによる酸素供給等に使われている。
一方、そのような下排水処理方法を構築することが地理的、経済的又は技術的に困難な地域、例えば、ツバル国のような環礁国等では、下排水がそのまま放流されており、環境面で大きな問題を抱えている。そのため、環礁国等では、省エネルギー及びメンテナンスフリーで、且つ、余剰汚泥の排出量を抑えた別の下排水処理方法を構築することが求められている。また、我が日本国内においても、例えば、排水処理のためのランニングコストを投じることが難しい海岸付近の事業場系排水処理施設では、より簡便に処理ができる低コストの下排水処理方法があれば好都合である。その際に余剰汚泥が発生する場合は、余剰汚泥を産業廃棄物として処理処分するためのコストがかかるため、その排出量の低減も大きな課題となる。
下排水の処理方法としては、上記のエアレーションタンクにおいて好気的な雰囲気で行う方法以外にも、嫌気的な雰囲気で行う処理方法を採用することが可能である。例えば、特許文献1には、排水に含まれる有機物を、嫌気的な雰囲気下で硫酸塩還元細菌によって分解して硫化水素を生じさせる排水の処理方法が開示されている。嫌気的な雰囲気で行うこの方法では、悪臭の原因である硫化水素を発生させる可能性がある。しかし、仮に硫化水素が発生したとしても、硫化水素からは燃料電池の材料や水素自動車用の燃料として使用する水素を取出すことが可能であり、あえて硫化水素の取り出しを安定して実現するための技術を提案することによって、総合的に低コストの排水処理方法とすることができると記載されている。加えて、前記の特許文献1には、処理槽内に導入する硫酸イオンを含む処理用水として、海水を用いることが記載されている。
また、特許文献2には、染料を含む排水の処理において、アゾ化合物等の難分解性の窒素含有染料を、低コストで環境に影響を与えない程度にまで脱色及び分解するために、窒素を含有する染料を含む排水を絶対嫌気条件下で硫酸還元細菌と接触させる絶対嫌気槽、硝化槽及び脱窒槽を備えた排水処理装置が提案されている。ここで、硫酸還元細菌は、硫酸塩を電子受容体として利用して硫化水素に還元する細菌であり、絶対嫌気槽において絶対嫌気条件下で窒素を含有する染料を分解するために用いることが記載されている。加えて、特許文献2に記載の方法は、菌体を微生物固定化担体により固定化することによって、絶対嫌気槽、硝化槽、脱窒槽及び再曝気槽から選ばれる少なくとも1槽の維持管理を容易にできるという効果を奏する。
特開2009−148686号公報 特開2004−82107号公報
上記のように、排水に含まれる有機物を、嫌気的な雰囲気下で硫酸還元細菌(又は硫酸塩還元細菌)によって分解する処理方法は公知であるが、現在の主流技術である好気的な雰囲気で行う排水処理方法と比べて、省エネルギー及びメンテナンスフリーで低コストを実現できる排水処理方法として十分に機能するまでには至っていない。
前記の特許文献1には、硫酸イオンを含む処理用水、特に海水を処理槽内に導入して、硫酸還元細菌によって嫌気的な雰囲気で有機物を分解するという排水の処理方法は開示されているものの、海水は導入管を使って供給する方法を採用している。その場合、海水の輸送、保管、供給及び廃棄等のために各装置を備える必要があるため、省エネルギー効果が小さくなるだけでなく、維持管理のためのメンテナンスを行うことが不可欠である。また、処理槽内の環境は、硫酸塩還元細菌が優占種となるような嫌気的な雰囲気を保つために、濃縮槽又は脱気槽等の付帯的な装置や設備を備える場合があり、排水処理方法として低コスト化には限界がある。
また、前記の特許文献2に記載の排水処理方法は、アゾ化合物等の難分解性の窒素含有染料を分解するためのものであり、硫酸イオンを含む海水を利用することは記載も示唆もされておらず、海水の利用はほとんど認識されていない。
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、下排水に含まれる有機物を硫酸塩還元細菌によって分解する際に、処理槽内に導入する処理用水として硫酸塩が豊富に含まれる海水を利用する下排水処理方法において、従来よりも省エネルギーで、且つ、メンテナンスの手間と時間を少なくすることによって、低コストで簡便な下排水処理方法を提供することにある。
本発明は、硫酸塩還元細菌による下排水処理方法において、硫酸塩を多く含む海水に着目するとともに、その利用法を鋭意検討した結果、処理方法の省エネルギー及びメンテナンスの省力化を図るともに、処理能力と処理効率をある程度のレベルで保持できる方法として、潮の干満という自然現象を利用することによって上記の課題を解決できることが見出して本発明に到った。
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、硫酸塩還元細菌の存在下で、処理対象となる有機物を含む下排水と硫酸塩を含む海水とを処理浄化槽に導入することによって行う前記の硫酸塩還元細菌による下排水処理方法であって、前記の海水は潮の干満を利用して前記の処理浄化槽へ導入することを特徴とする海水を利用した下排水処理方法を提供する。
[2]本発明は、前記の処理浄化槽が海水浸入式の処理浄化槽であり、少なくとも、満ち潮のときに海水が前記の処理浄化槽の内部へ浸入した状態で下排水を前記の処理浄化槽に導入する工程と、前記の処理浄化槽内において前記の硫酸塩還元細菌の存在下で前記の下排水に含まれる有機物を分解処理する工程と、引き潮のときに前記の海水とともに前記の下排水を前記の処理浄化槽から流出させる工程とからなることを特徴とする前記[1]に記載の海水を利用した下排水処理方法を提供する。
[3]本発明は、前記の処理浄化槽が上部開放部に海水の浸入が可能な隙間を形成する傾動可能な蓋を有し、少なくとも、引き潮のときに前記の下排水を前記の処理浄化槽に導入して前記の傾動可能な蓋を開く工程又は前記の傾動可能な蓋を開けた状態で前記の下排水を前記の処理浄化槽に導入する工程と、満ち潮のときに前記の傾動可能な蓋によって形成される隙間から前記の処理浄化槽の内部へ海水を導入する工程と、前記の海水を導入する工程と同時に又はその工程の後に、前記の傾動可能な蓋の上部に存在する海水の重さによって前記の傾動可能な蓋を閉じる工程と、前記の下排水及び海水を含む処理浄化槽内において前記の硫酸塩還元細菌の存在下で前記の下排水に含まれる有機物を分解処理させる工程と、前記の有機物分解処理後の下排水及び海水を前記の処理浄化槽から排出する工程とを有することを特徴とする前記[1]に記載の海水を利用した下排水処理方法を提供する。
[4]本発明は、前記の傾動可能な蓋の上部に存在する海水の重さによって前記の傾動可能な蓋を閉じる工程の次に、前記の処理浄化槽に含まれる前記の下排水及び海水を前記の処理浄化槽とは異なる密閉式の処理浄化槽に移送し、前記の有機物を分解処理する工程を前記の密閉式の処理浄化槽内において前記の硫酸塩還元細菌の存在下で行う工程、及び前記の有機物分解処理後の下排水及び海水を前記の密閉式の処理浄化槽から排出する工程を有することを特徴とする前記[3]に記載の海水を利用した下排水処理方法を提供する。
[5]本発明は、前記の傾動可能な蓋が、満ち潮のときに前記の蓋を海水が押し寄せてくる側へ傾動させる手段を設けたことを特徴とする前記[3]又は[4]に記載の海水を利用した下排水処理方法を提供する。
[6]本発明は、潮の干満を利用して前記の処理浄化槽へ海水を導入するときに、前記の海水は、海面近くの表層水を取り込むために海面に沿って延在する海水タンクから注水されるものであり、前記の海水タンクは干潮時の海面よりも上方に設置され、かつ、満潮時の海面になるときに海水を取り込むための海水流入部を備えることを特徴とする前記[1]に記載の海水を利用した下排水処理方法を提供する。
[7]本発明は、前記の硫酸塩還元細菌が、ゲル状担体、プラスチック担体及び繊維状担体から選ばれる1種又は2種以上の担体である微生物固定化担体によって固定化されていることを特徴とする前記[2]〜[6]の何れかに記載の海水を利用した下排水処理方法を提供する。
本発明によれば、潮の干満という自然現象に従って海水を利用するため、処理用水として海水を処理浄化槽に導入するための装置や設備が最小化され、従来の方法よりも省エネルギーでメンテナンスの省力化が図れる低コストの下排水処理方法を構築することができる。また、処理槽に導入される海水は、潮の干満によって繰返し新鮮なものが供給されるため、下排水に含まれる有機物の分解のために必要な硫酸塩が豊富に存在する。さらに、処理槽は、処理用の下排水と海水とを密閉する構造であり、嫌気性雰囲気を保つことに効果があるため、下排水に多く含まれる硫酸塩還元細菌の活性低下を抑制することができる。それによって、本発明の下排水処理方法は省エネルギーの簡易的な処理方法であっても、処理能力と処理効率を従来の方法と同等以上に維持できる。
本発明の下排水処理方法は、硫酸塩還元細菌を微生物固定化担体で固定化することによって、海水の引き潮のとき又は処理後の排水を排出させるときに、硫酸塩還元細菌が外部へ流出するのを防ぐことができる。また、微生物固定化担体の充填率を調整することにより、目標とする有機物除去率を得ることができる。さらに、余剰汚泥の発生が無いか、或いは少なくできることから、処理槽の長期使用が可能となり、処理装置や処理設備のメンテンスが非常に楽になり、処理処分コストの低減が図れる。
本発明による海水を利用した下排水処理方法を示す概略断面図である。 本発明による海水を利用した下排水処理方法において、別の形態である処理浄化槽の蓋がフロートを有する場合の下排水処理方法の工程を示す概略断面図である。 本発明による海水を利用した下排水処理方法において、別の形態である処理浄化槽の蓋がバネを有する場合の下排水処理方法の工程を示す概略断面図である。 本発明で使用する処理浄化槽に備えられる傾動可能な蓋の構造を示す断面図である。 本発明による海水を利用した下排水処理方法において、密閉式の処理浄化槽を付加した場合の下排水処理方法を示す概略断面図である。 本発明による海水を利用した下排水処理方法において、別の形態である海水タンクを用いる場合の下排水処理方法を示す概略断面図である。
本発明は、処理対象となる有機物を含む下排水を導入する処理浄化槽に、硫酸塩を含む処理用水として海水を注入し、前記処理浄化槽内に存在する硫酸塩還元細菌によって硫酸還元反応を起こさせて下排水の処理を行う方法である。下排水に含まれる有機物をBOD(Biochemical Oxygen Demand)成分として表すと、その時に生じる硫酸還元化学反応式は、下記の(1)式のようになる。
BOD + SO 2− → CO + HO + HS (1)
下排水中の有機物(BOD成分)、例えば、し尿中のBOD成分と硫酸塩(S)との比(BOD:S)は、一般的に45:1であるのに対して、硫酸塩還元反応では1.6:1位にまで硫酸塩の濃度を高める必要があり、し尿中の硫酸塩濃度では足りない。そこで、海水中には硫酸塩が0.9g/l(リットル)程度含まれるので、これを硫酸塩を含む処理用水として利用する。本発明においては、さらに、海水の自然現象である潮の干満を利用することによって、海水の処理浄化槽への注入と排出を省エネルギーで行う点に大きな特徴を有する。潮の干満現象による海水の利用は、海水をくみ上げて移送するための装置や設備が不要となるだけでなく、それをメンテナンスする手間と時間を大幅に低減できる。その結果、下排水の処理コストを低減できるという効果が得られる。また、海水は豊富に存在しており、硫酸塩濃度の高い海水を潮の干満現象が起きるたびに新しく供給できるため、下排水の処理能力と処理効率を安定的に維持できる。従来のポンプによる海水の移送方法では、海水の捕集・貯蔵と移送のために多くのエネルギーとメンテナンス費用をかける必要があるが、本発明のように潮の干満を利用する場合はそのような問題を解決することができる。
上記の(1)式において、硫酸塩の濃度は、下排水に含まれるBOD成分に対して10モル%以上、好ましくは10モル%〜200モル%の範囲であれば十分である。本発明においては、下排水の量及び該下排水に含まれるBOD濃度に応じて、処理浄化槽へ導入する海水の量を調整することによって処理の能力と効率を決めることができる。その際に、海水の量は、処理浄化槽の容量及び潮の干満現象が起きる場所や位置等によってあらかじめ調整することが可能であり、様々な形態を有する下排水処理において、異なるBOD濃度を有する下排水の処理用として容易に対応させることができる。したがって、本発明は下排水中に含まれるBOD濃度によって適用可能か否かの制約を受けることが少なくなり、下排水処理方法としての適用範囲が広い。
上記の(1)式で表される硫酸還元化学反応は、硫酸塩濃度を調整するだけでなく、処理浄化槽内を嫌気的な雰囲気に保持することによって促進される。硫酸塩還元細菌は、好気性菌とは異なり、嫌気的な雰囲気で優占種となるためである。本発明においては、潮の干満を使用するときに、海水を処理浄化槽中に浸入させる方法、又は海水中に処理浄化槽を浸漬させる方法等を採用するため、嫌気的な雰囲気を保持しやすくなる。したがって、嫌気的な雰囲気を保つために、濃縮槽又は脱気槽等の付帯的な設備や装置を必要最低限度に最小化できる。さらに省エネルギー及びメンテナンフリーを実現したい場合に、それらの設備や装置を備えなくても十分な下排水処理能力を確保できる。また、硫酸塩還元細菌が優占種となるようにするために、あえて処理浄化槽内を還元的雰囲気にするための方法を新たに採用する必要もなくなる。
本発明において使用する硫酸塩還元細菌とは、Desulfoviobrio等の絶対嫌気性細菌であり、上記の(1)式の化学反応式に従って、硫酸塩を酸化剤として有機物を分解し、そのエネルギーを自身の増殖に使うとともに、硫酸塩を硫化水素に還元する公知の細菌である。硫酸塩還元細菌は有機物を含む下排水中に普通に存在しており、例えば、都市下水を嫌気処理した場合には「Clone A03:Delta proteobacterium JS_SRB250Ace」(参考文献:Env.Microbil.、2008年、第10巻、p.2645−2658)や「Clone B03:Desulfomonile limimaris」(参考文献:Int.J.Syst.Evol.Microbil.、2001年、第51巻、p.365−371を参照)等の硫酸塩還元細菌の存在が確認されている。そのため、上記のように、処理浄化槽内を嫌気的な雰囲気に保つことによって硫酸塩還元細菌が生息しやすい環境にすれば、硫酸塩還元細菌を新たに投入しなくても、勝手に増殖して、処理浄化槽内で優占種となる。
本発明は、さらに処理水として干満現象を利用した新鮮な海水を使用することによって、還元反応の電子受容体として、前記都市下水中で存在する硫酸塩還元細菌よりも高い反応促進機能を有する硫酸塩還元細菌が存在することを見出してなされたものである。そのため、導入管を使用して海水を処理浄化槽へ導入する前記の特許文献1に記載の方法とは異なり、電子受容体として反応促進機能の高い硫酸塩還元細菌が存在する環境を形成しやすくなるという効果を有する。本発明において海水を利用して都市下水を嫌気処理するときには、例えば、「Clone B02,C08,F06,H05:Uncultured Desulfococus sp.clone 3H2」や「Clone G10:Uncltured Desulfobulbaceae bacterium clone 3A5」(参考文献:Microb.Ecol.、2011年、第62巻、p.824−837を参照)等の、都市下水だけの場合とは異なる硫酸塩還元細菌の存在が確認できる。
本発明においては、処理浄化槽内への硫酸塩還元細菌の積極的な投入を行う必要はないが、処理速度と処理効率を上げるために、処理前後又は処理の途中で、硫酸塩還元細菌を処理浄化槽へ投入してもよい。
上記の硫酸塩還元細菌を処理浄化槽に投入して下排水処理を行う場合は、微生物固定化担体に固定した硫酸塩還元細菌を使用することが好ましい。それによって、潮の干満において引き潮のときに硫酸塩還元細菌が処理浄化槽から流出するのを防ぐことができる。また、固定化された硫酸塩還元細菌は、流出防止の効果だけでなく、余剰汚泥が出ないことも利点であり、処理浄化槽の維持管理が非常に容易になる。
本発明において好適に使用する微生物固定化担体は、微生物の住処となる細孔を有する固体である。その材質としては、例えば、多孔質の網目構造を有するホルマール系ポリビニルアルコールやアセタール系ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系又はポリエチレングルコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール系の含水ゲル状担体、ビニルアルコール系樹脂、エーテル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂又はウレタン系樹脂等からなる多孔質のプラスチック担体、及びセルロース繊維、プラスチック繊維、セラミック繊維又は金属繊維等の繊維状担体が挙げられる。それ以外にも、活性炭等の多孔質無機化合物を用いてもよい。本発明では、これらの微生物固定化担体の1種又は2種以上を使用することができる。硫酸塩還元細菌を固定した微生物固定化担体を前記の処理浄化槽に充填するときの量は、下排水と海水の量、並びに下排水処理の能力と効率に応じて決めることができる。
上記の(1)式で表されるように、本発明においては下排水処理によって硫化水素が発生する。発生する硫化水素は、潮の干満現象を利用して無人状態で大気中又は海水中に広範囲で希釈されるため、人体に対する危険性を考慮する必要はほとんどない。しかし、下排水処理中に発生する硫化水素が外部へ揮散するのを完全に防止したい場合、又は硫化水素から燃料電池の材料や水素自動車用の燃料として使用する水素を取出したい場合には、本発明において次のような方法を採用することができる。すなわち、海水の満潮を利用することによって下排水を海水と混合させた混合液を別の密閉式の処理浄化槽へ移送した後、その密閉式の浄化処理槽内で下排水に含まれる有機物を分解するための硫酸還元反応を行わせる方法、又は海水の満潮を利用して海水を導入する際に、最初から海水と下排水とを密閉式の処理浄化槽に導入して混合する方法である。これらの方法については、本発明の実施形態において詳細に後述する。
上記の密閉式の処理浄化槽で発生する硫化水素からは、例えば、触媒を用いた脱硫技術や光触媒技術等によって水素(ガス)を容易に取り出すことができる。光触媒技術を併用すれば、硫化水素は水素と硫黄に分解できるため、水素の回収が可能となる。ここで、光触媒技術に使用する触媒としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウム等のいずれか一つの化合物が挙げられる。水素は燃料電池の材料や水素自動車用の燃料として今後の需要が拡大する傾向にあり、本発明を利用したエネルギー回収型の下排水処理システムを構築することによって水素を得るためのコストを大幅に低減できることが期待される。
上記のように、本発明の下排水処理方法は潮の干満現象によって海水を利用する点に大きな特徴を有しており、その具体的な方法は、適用地域、省エネルギーの効果及びメンテナンスの程度に応じて、次の(A)、(B)及び(C)の場合に分けて適用することができる。
(A)省エネルギー効果が大きく、完全メンテナンスフリー化を行うだけでなく、余剰汚泥の発生を防止する必要がある地域、例えばサンゴや有孔虫の遺骸等が国土形成を担っているツバル国のような環礁国等へ適用するために、潮の干満現象を利用して処理浄化槽内へ海水を導入又は排出を行う下排水処理方法。
(B)エアレーションによる酸素供給等の装置や設備を設置することが経済的及び技術的に困難であり、下排水処理を簡易に低コストで行う必要のある海沿い地域等へ適用するために、潮の干満現象によって水位が変動する海水中に処理浄化槽を設置して行う下排水処理方法。
(C)前記の(B)と同じような地域に適用するものであるが、海水を処理浄化槽へ導入して供給するために使用する海水タンクを設けて、潮の干満現象によって水位が変動する海水中に前記の海水タンクを設置して行う下排水処理方法。
上記の(A)、(B)及び(C)の下排水処理方法について、具体的な実施形態によって以下に説明する。
〈第1の実施形態〉
図1に、上記(A)の場合に適用するための本発明による海水を利用した下排水処理方法を示す。処理浄化槽1は硫酸塩還元細菌を固定化した担体2を含有する海水浸入式の簡易的な処理浄化槽であり、底部又は側部に海水3が浸入できるようにメッシュ又は開口が1個又は2個以上設けられている。ここで、硫酸塩還元細菌を固定化した担体2は微生物固定化担体として数mm各のポリエチレングリコール系ゲルを用いて固定されている。図1に示す下排水処理方法において、満ち潮(海面が(イ)の位置)のときに海水3が処理浄化槽1の内部へ浸入した状態で下排水4を処理浄化槽1に導入して注入した後、下排水4に含まれる有機物は処理浄化槽1の内部で分解処理される。そして、引き潮のときに下排水4は海水とともに処理浄化槽1から海面が(ロ)の位置まで流出する。潮の干満(干潮から満潮までの時間)の周期は約12時間であるから、下排水4に含まれる有機物を分解処理する時間は、下排水4の量にも依存するものの、十分に確保することが可能である。
図1に示す下排水処理方法は、処理浄化槽1に浸入する海水中の硫酸塩(SO 2−)と担体2に含有される硫酸塩還元菌によって硫酸還元反応が起こり、下排水4に含まれる有機物の分解が促進する。実際に、6L規模排水装置を用いて、海水を強制添加して下排水処理の予備的な実験を行ったところ、下排水に含まれる有機物の除去率は70%近くまで実現できることが分かった。また、硫酸塩還元細菌は下排水処理中に海水によって死滅することはなく、長期間に亘って活性を示すことが確認できた。
このように、本発明の下排水処理方法によって、好気的な雰囲気で行われる従来の下排水処理法で必要であったエアレーション(O供給)が不要となり、省エネルギー及びコスト低減を図ることができる。また、硫酸塩還元菌は、微生物固定化担体2に固定化することによって、処理浄化槽1からの流出を防止し、処理浄化槽1の内部に保持されるため、有機物の分解処理機能を向上させることができる。加えて、余剰汚泥の生成を抑制できることから、廃棄物を減容化できるという効果を奏する。このように、本実施形態の下排水処理方法は、省エネルギー効果が大きく、完全メンテナンスフリー化を行うだけでなく、余剰汚泥の発生を防止することが可能であるため、サンゴや有孔虫の遺骸等が国土形成を担っているツバル国のような環礁国等への適用が期待できる。
図1には、微生物固定化担体2に固定した硫酸塩還元細菌をあらかじめ投入した処理浄化槽1に投入した例を示したが、本実施形態においては、硫酸塩還元細菌を固定した担体2を使用しないで、下排水処理の度に、硫酸塩還元細菌そのものを逐次投入することもできる。また、上記で説明したように、有機物を含む下排水には硫酸塩還元細菌が普通に存在している。そのため、下排水をある程度の量で収集した後に嫌気的な雰囲気に保った後、処理浄化槽へ導入すれば、硫酸塩還元細菌が生息しやすくなり、硫酸塩還元細菌を積極的に投入しなくてもよくなる。その場合、硫酸塩還元細菌は勝手に増殖して、処理浄化槽内で優占種となって機能する。
〈第2の実施形態〉
次に、上記(B)の場合に適用するための本発明による海水を利用した下排水処理方法の実施形態を説明する。図2は、処理槽の蓋がフロートを有する場合の本発明による下排水処理方法の工程を示す概略断面図である。
図2において、処理浄化槽1は、上部開放部に海水の浸入が可能な隙間を形成する傾動可能な蓋5を有し、傾動可能な蓋5にはブラケット6を介してフロート7が接続されている。蓋5は、引き潮のときは閉じた状態になっている(図2の(a))。図2の(b)に示すように、引き潮のときに下排水4を開閉弁11を備える注入管8から処理浄化槽1に導入することによって、フロート7の浮力を利用して傾動可能な蓋5が開く。この工程において、下排水4を処理浄化槽1に注入する時機は、下排水4が大気中に曝される時間をできるだけ短くするために、引き潮から満ち潮へ移行する直前が好ましい。引き潮から満ち潮へ移行したときに、海水3が傾動可能な蓋5によって形成される隙間から処理浄化槽1へ浸入して、処理浄化槽1の内部に注入される(図2の(c))。その際、海水3を導入する工程と同時に又はその工程の後に、傾動可能な蓋5の上部に存在する海水3の重さによって傾動可能な蓋5が閉じる(図2の(d))。下排水4及び海水3を含む処理浄化槽1は対流によって均一に混合されて海水と下排水の混合物10となる過程で下排水4に含まれる有機物の分解が開始し、その混合物10の状態で分解処理が進行する(図2の(e))。次いで、前記の有機物分解処理後の下排水及び海水を、処理浄化槽1から開閉弁11を備える排出管9を通して排出する(図2の(f))。図2の(f)には、引き潮のときに下排水及び海水の排出を行う工程が示されているが、それらの排出は、満ち潮が終了する間際又は満ち潮から引き潮へ移行する段階で行うことが好ましい。そのようにすれば、下排水及び海水の排出が終了した後の処理浄化槽1の内部は、酸素の量が少なくなるため、嫌気的な雰囲気を形成しやすくなり、次の下排水処理において処理の能力と効率を高める効果がある。
図2に示す工程において、硫酸塩還元細菌は、下排水4の内部にすでに存在するため、(d)の工程によって海水3が処理浄化槽1に導入された段階から、下排水4に含まれる有機物の分解反応が開始する。この有機物の分解は、満ち潮によって傾動可能な蓋5が閉じている間に進行する。本実施形態においては、処理能力と処理効率を高めるために、下排水処理の度に、図2の(b)の工程で硫酸塩還元細菌を投入してもよい。その場合、微生物固定化担体に固定した硫酸塩還元細菌を用いることもできる。微生物固定化担体に固定した硫酸塩還元細菌は、網状容器、メッシュを有する容器又は開口を有する容器に入れた後に、処理浄化槽1に投入することによって、硫酸塩還元細菌の流出を防止でき、長期間の利用が可能となることから、処理時の手間と処理コストの低減を図ることができる。
また、図2において、傾動可能な蓋5にはフロート7が1個接続されているが、フロート6は2個以上設置することができる。2個以上のフロート7を設ける場合に、傾動可能な蓋5の下面からの各フロートの取付け位置はそれぞれ異なってもよい。それによって、図2の(c)及び(d)の工程において、傾動可能な蓋5の上部に存在する海水の厚さ(又は重さ)によって傾動可能な蓋5の閉じる時機を2段階以上で調整することが可能となり、処理浄化槽1の内部に導入する海水3を、下排水処理量と処理効率に応じて所望の量に調整することができる。
〈第3の実施形態〉
上記(B)の場合に適用するために、本発明による海水を利用した下排水処理方法の別の実施形態を説明する。図3は、処理槽の蓋がバネを有する場合の本発明による下排水処理方法の工程を示す概略断面図である。図3示す工程は、傾動可能な蓋5に設けられている傾動機構が、図2に示すフロート7とは異なり、バネ12を用いる方式である。
図3において、処理浄化槽1は、上部開放部に海水の浸入が可能な隙間を形成する傾動可能な蓋5を有し、傾動可能な蓋5にはバネ12が接続されている。蓋5は、バネ12の反発力によって引き潮のときは開いた状態になっている(図3の(a))。図3の(b)に示すように、引き潮のときに下排水4を開閉弁11を備える注入管8から処理浄化槽1に導入する。この工程において、下排水4を処理浄化槽1に導入する時機は、下排水4が大気中に曝される時間をできるだけ短くするために、引き潮から満ち潮へ移行する直前が好ましい。引き潮から満ち潮へ移行したときに、海水3が傾動可能な蓋5によって形成される隙間から処理浄化槽1へ浸入して、処理浄化槽1の内部に注入される(図3の(c))。その際、海水3を導入する工程と同時に又はその工程の後に、傾動可能な蓋5の上部に存在する海水3の重さによって、バネ12の反発力よりも大きな力が負荷されて傾動可能な蓋5が閉じる(図3の(d))。下排水4及び海水3を含む処理浄化槽1は対流によって均一に混合されて海水と下排水の混合物8となる過程で下排水4に含まれる有機物の分解が開始し、その混合物10の状態で分解処理が進行する(図3の(e))。次いで、前記の有機物分解処理後の下排水及び海水を、処理浄化槽1から開閉弁11を備える排出管9を通して排出する(図3の(f))。図3の(f)には、引き潮のときに下排水及び海水の排出を行う工程が示されているが、それらの排出は、満ち潮が終了する間際又は満ち潮から引き潮へ移行する段階で行ってもよい。
図3に示す工程において、硫酸塩還元細菌は、上記の第2の実施形態と同じように、下排水処理の度に硫酸塩還元細菌を投入してもよい。また、硫酸塩還元細菌は、微生物固定化担体に固定したものを使用することもできる。微生物固定化担体に固定した硫酸塩還元細菌は、新たに硫酸塩還元細菌を投入しなくても長期間の利用が可能となることから、処理時の手間と処理コストの低減を図ることができる。
図4は、本発明による海水を利用した下排水処理方法において、処理浄化槽に備えられる傾動可能な蓋の構造を示す断面図である。上記の第2及び第3の実施形態において、傾動可能な蓋5は、満ち潮のときに海水が押し寄せてくる側へ傾動させるように、ブラケット6とフロート7又はバネ12が接続して設けられている(図4の(a)又は(c))。本発明においては、傾動可能な蓋5を、図4の(b)又は(d)に示すように、満ち潮のときに海水が押し寄せてくる側の反対側に傾動させるような構造としてもよい。しかしながら、図4の(b)又は(d)の構造では、海水3が処理浄化槽1へ浸入するときに、傾動可能な蓋5が完全に閉じる前に海水3が処理浄化槽1の最上端から溢れ出る可能性が高くなる。また、海水3が処理浄化槽1へ一気に流入するため、その勢いによってすでに導入されている下排水4の一部が処理浄化槽1の外部へ流出するという問題が発生する場合がある。そのため、上記の第2及び第3の実施形態において、傾動可能な蓋5は、図4の(a)又は(c)に示すように、満ち潮のときに海水が押し寄せてくる側へ傾動させるような構造が好適である。
図2及び図3に示す下排水処理方法は、下排水4の導入及び海水と下排水の混合物10を排出するために、手動又は自動ポンプ等によってそれぞれ注入又は排出する操作を行う必要があるため、完全なメンテナンスフリーを実現することは難しい。しかしながら、エアレーションによる酸素供給等の装置や設備を設置する必要がなくなるだけでなく、処理用水として海水を使用するときに海水の供給を潮の干満現象という自然現象を利用するため、従来の下排水処理方法と比べて、省エネルギーで、且つ、メンテナンスを省力化できる。したがって、第2及び第3の実施形態による下排水処理方法は、低コストで簡易に下排水処理を行う必要のある海沿い地域等へ適用することができる。
〈第4の実施形態〉
上記の第1〜第3の実施形態では、下排水に含まれる有機物を分解させるための処理時間が潮の干満現象の周期によって大きく影響を受ける。そのため、下排水4に含まれる有機物を完全に分解したい場合、下排水に含まれる有機物の濃度が非常に高く、該有機物を分解させるために処理時間を長くする必要がある場合、又は下排水の処理量が多い場合には、本発明の実施形態において、図5に示すような処理方法を採用する。図5は、図2又は図3に示す処理浄化槽1に、密閉式の処理浄化槽13を付加した場合の下排水処理方法を示す概略断面図である。
図5において、密閉式の処理浄化槽13は開閉弁11を備える接続管14を介して処理浄化槽1と直列に接続されている。また、密閉式の処理浄化槽13の上部には、上記の(1)式で表される硫酸還元反応によって発生する硫化水素等の各種ガスを排出するためのガス排出管15を備える。図5には図示されていないが、密閉式の処理浄化槽13には、海水と下排水との混合物10に含まれる処理後の有機物濃度(BOD)を測定するためのセンサを備えることができる。処理後の排水のBOD測定は、海水と下排水との混合物10を排出管9を通して排出しても環境的に問題ないか否かを判断するために行うものである。BOD測定の結果、BOD濃度が問題ないレベルまで低減したことを確認してから処理後の下排水及び海水が自動的に放流又は廃棄される。
本実施形態において、処理浄化槽1に含まれる下排水4及び海水3を処理浄化槽1とは異なる密閉式の処理浄化槽13に移送する工程は、傾動可能な蓋5の上部に存在する海水の重さによって傾動可能な蓋5を閉じる工程の次に行う。さらに、下排水4に含まれる有機物を分解処理する工程は密閉式の処理浄化槽13内で行う。その場合、下排水4に含まれる有機物を分解処理する工程は、処理効率を上げるために、一部を処理浄化槽1で行ってもよいが、主に密閉式の処理浄化槽13内で行うことを基本とする。
本実施形態において、満ち潮を利用して海水と下排水とが混合された混合物10は、処理浄化槽1から密閉式の処理浄化槽13に移して、下排水に含まれる有機物の分解がほぼ完全に終了する時間まで放置する。例えば、引き潮と満ち潮の周期のそれぞれの周期は約12時間であるが、密閉式の処理浄化槽13において、引き潮及び次の満ち潮が起こるまで放置すれば処理時間を1日程度長くすることができる。また、図5に示す開閉弁11を備える接続管14を複数本設けて、それぞれの接続管の先を密閉式の処理浄化槽13の複数個と接続することによって、処理時間をより長く設定することが可能となる。さらに、処理浄化槽1内で満ち潮を利用して海水と下排水とが混合された混合物10は、複数の密閉式の処理浄化槽へ移送することによって、例えば処理浄化槽1が1個であっても、下排水の処理量を増やすことができる。この方法は、省エネルギーで、且つ、メンテナンスの手間と時間を低減できるため、低コストの下排水処理システムを構築できるという点で好適である。
また、本実施形態においては、密閉式の処理浄化槽13から生じる硫化水素から、触媒を用いた脱硫技術や光触媒技術等によって水素ガスを取り出すことができる。その場合、密閉式の処理浄化槽13から生じた硫化水素はそのまま脱硫技術や光触媒技術を適用して水素ガスを取り出してもよいし、発生した硫化水素を他の施設に運んでから、その施設で同様の処理を行ってもよい。
〈第5の実施形態〉
本実施形態において、上記(C)の場合に適用するための本発明による海水を利用した下排水処理方法について説明する。図6は、本発明による海水を利用した下排水処理方法の別の形態を示す図であり、海水タンクを用いる場合の下排水処理方法を示す概略断面図である。
図6において、潮の干満を利用して密閉式の処理浄化槽16へ海水3を導入するときに、海水3は、海面近くの表層水を取り込むために海面に沿って延在する海水タンク17から注水されるものであり、海水タンク17は干潮時の海面(図6に示す(ロ)の位置)よりも上方に設置される。さらに、海水タンク17は、満潮時の海面(図6に示す(イ)の位置)になるときに海水3を取り込むための海水流入部18を有する。なお、図6に示す(ハ)は、通常時の海面の位置である。ここで、密閉式の処理浄化槽16には、下排水4を導入するための注入管8、海水を密閉式の処理浄化槽16へ供給するための海水の導入管19、処理後の排水を排出するための排出管9、及び硫酸還元反応によって発生する硫化水素等の各種ガスを排出するためのガス排出管15を備える。
図6に示す密閉式の処理浄化槽16は、海水タンク17に含まれる海水3の導入を容易にするために、海水タンク17の海水流入部18よりも低い位置に設けることが好ましい。しかし、密閉式の処理浄化槽16を地上に設置するために、例えば、その設置位置が海水流入部18よりも高くなる場合であっても、圧力ポンプの使用又は処理浄化槽16の減圧処理等によって導入管19を通して海水3を密閉式の処理浄化槽16に供給することができる。
また、海水タンク17と接続する海水の導入管19及び該導入管19と接続する密閉式の処理浄化槽16をそれぞれ2個以上設置することによって、例えば、海水タンク17が1個であっても、下排水の処理量を増やすことができる。この方法は、省エネルギーで、且つ、メンテナンスの手間と時間を低減できるため、低コストの下排水処理システムを構築できるという本発明の目的をある程度まで達成することができる。このように、本実施形態は、上記の第2〜第4の実施形態の場合と同じような地域に適用することが可能である。
以上のように、本発明によれば、潮の干満という自然現象に従って海水を利用するため、処理用水として海水を処理浄化槽に導入するための装置や設備を最小化できる。したがって、従来の方法よりも省エネルギーでメンテナンスの省力化が図れる低コストの下排水処理方法を構築することができる。また、処理槽に導入される海水は、潮の干満によって繰返し新鮮なものが供給されるため、下排水に含まれる有機物の分解のために必要な硫酸塩を豊富に供給できる。加えて、本発明で使用する処理浄化槽は、処理用の下排水と海水とを密閉する構造であり、嫌気性雰囲気を保つことに効果があるため、下排水に多く含まれる硫酸塩還元細菌の活性低下を抑制することができる。したがって、省エネルギーの簡易的な処理方法であっても、処理能力と処理効率が従来の方法と同等以上に維持される。さらに、本発明は、下排水だけでなく、畜産排水、屠場排水、水産食品を含めた各種食品加工排水の処理方法としても適用が可能であり、その有用性が非常に高い。
1・・・処理浄化槽、2・・・硫酸塩還元細菌を固定化した担体、3・・・海水、4・・・下排水、5・・・傾動可能な蓋、6・・・ブラケット、7・・・フロート、8・・・注入管、9・・・排出管、10・・・海水と下排水との混合物、11・・・開閉弁、12・・・バネ、13・・・密閉式の処理浄化槽、14・・・接続管、15・・・ガス排出管、16・・・密閉式の処理浄化槽、17・・・海水タンク、18・・・海水流入部、19・・・海水の導入管。

Claims (7)

  1. 硫酸塩還元細菌の存在下で、有機物を含む処理対象となる下排水と硫酸塩を含む海水とを処理浄化槽に導入することによって行う前記の硫酸塩還元細菌による下排水処理方法であって、前記の海水は潮の干満を利用して前記の処理浄化槽へ導入することを特徴とする海水を利用した下排水処理方法。
  2. 前記の処理浄化槽は海水浸入式の処理浄化槽であり、少なくとも、満ち潮のときに海水が前記の処理浄化槽の内部へ浸入した状態で下排水を前記の処理浄化槽に導入する工程と、前記の処理浄化槽内において前記の硫酸塩還元細菌の存在下で前記の下排水に含まれる有機物を分解処理する工程と、引き潮のときに前記の海水とともに前記の下排水を前記の処理浄化槽から流出させる工程とからなることを特徴とする請求項1に記載の海水を利用した下排水処理方法。
  3. 前記の処理浄化槽は上部開放部に海水の浸入が可能な隙間を形成する傾動可能な蓋を有し、少なくとも、引き潮のときに前記の下排水を前記の処理浄化槽に導入して前記の傾動可能な蓋を開く工程又は前記の傾動可能な蓋を開けた状態で前記の下排水を前記の処理浄化槽に導入する工程と、満ち潮のときに前記の傾動可能な蓋によって形成される隙間から前記の処理浄化槽の内部へ海水を導入する工程と、前記の海水を導入する工程と同時に又はその工程の後に、前記の傾動可能な蓋の上部に存在する海水の重さによって前記の傾動可能な蓋を閉じる工程と、前記の下排水及び海水を含む処理浄化槽内において前記の硫酸塩還元細菌の存在下で前記の下排水に含まれる有機物を分解処理させる工程と、前記の有機物分解処理後の下排水及び海水を前記の処理浄化槽から排出する工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の海水を利用した下排水処理方法。
  4. 前記の傾動可能な蓋の上部に存在する海水の重さによって前記の傾動可能な蓋を閉じる工程の次に、前記の処理浄化槽に含まれる前記の下排水及び海水を前記の処理浄化槽とは異なる密閉式の処理浄化槽に移送し、前記の有機物を分解処理する工程を前記の密閉式の処理浄化槽内において前記の硫酸塩還元細菌の存在下で行う工程、及び前記の有機物分解処理後の下排水及び海水を前記の密閉式の処理浄化槽から排出する工程を有することを特徴とする請求項3に記載の海水を利用した下排水処理方法。
  5. 前記の傾動可能な蓋は、満ち潮のときに前記の蓋を海水が押し寄せてくる側へ傾動させる手段を設けたことを特徴とする請求項3又は4に記載の海水を利用した下排水処理方法。
  6. 潮の干満を利用して前記の処理浄化槽へ海水を導入するときに、前記の海水は、海面近くの表層水を取り込むために海面に沿って延在する海水タンクから注水されるものであり、前記の海水タンクは干潮時の海面よりも上方に設置され、かつ、満潮時の海面になるときに海水を取り込むための海水流入部を備えることを特徴とする請求項1に記載の海水を利用した下排水処理方法。
  7. 前記の硫酸塩還元細菌は、ゲル状担体、プラスチック担体及び繊維状担体から選ばれる1種又は2種以上の担体である微生物固定化担体によって固定化されていることを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の海水を利用した下排水処理方法。
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