以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
<1.第1の実施の形態>
<1−1.システムの概要>
図1は、本実施の形態に係る保持装置1を含む車載表示システム100の概要を示す図である。車載表示システム100は、自動車などの車両10に搭載される。図1は、車載表示システム100が搭載される車両10の車室内の様子を示している。
車載表示システム100は、各種情報を表示する表示装置5と、携帯装置40を保持する保持装置1とを備えている。表示装置5と保持装置1とは電気的に接続されており、互いに信号の送受信が可能となっている。
表示装置5は、液晶などのディスプレイを備えており、各種情報を表示する。表示装置5は、ユーザから視認しやすいように車両10のダッシュボード91の左右中央などに設けられる。また、表示装置5は、タッチパネルを備えており、ユーザの操作を受け付けることが可能である。表示装置5は、例えば、目的地までのルートを案内するナビゲーション機能、及び、車室内に音を出力するオーディオ機能などを備えている。
また、保持装置1は、携帯電話やスマートフォンなどの可搬性の通信装置である携帯装置40を保持する。保持装置1は、車両10の運転席と助手席との間にあるセンターコンソール92に設けられている。
保持装置1は、携帯装置40を載置するための略水平方向に沿った面を有する載置部11を備えている。ユーザにより載置部11に携帯装置40が載置された場合は、保持装置1は載置部11に載置された携帯装置40を保持する。これにより、走行中の車両10の振動等によって携帯装置40が載置部11から脱落することが防止される。
保持装置1はまた、保持した携帯装置40が近距離無線通信の規格に準拠した近距離無線通信部を備えたものであれば、当該携帯装置40と近距離無線通信で通信することが可能となっている。以下の説明では、携帯装置40はこのような近距離無線通信部を備えているものとする。一般に、近距離無線通信部は、携帯装置40の表示部が配置される側とは逆側の主面に配置される。
<1−2.保持装置及び載置部の構成>
次に、保持装置1の備える載置部11の構成について説明する。図2及び図3は、載置部11の外観を示す斜視図である。図2は、携帯装置40を保持していない状態を示しており、図3は、携帯装置40を保持した状態を示している。
なお、以下の説明においては、方向及び向きを示す際に、適宜、図中に示す3次元のXYZ直交座標を用いる。このXYZ軸は車両10に対して固定される。ここで、X軸方向は車両10の左右方向に沿い、Y軸方向は車両10の前後方向に沿い、Z軸方向は上下方向(鉛直方向)に沿っている。以下、便宜上、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向といい、+X側を車両10の左側、+Y側を車両10の後側、+Z側を上側とする。
図2及び図3に示すように、載置部11は、携帯装置40を載置する載置面22と、載置面22の周囲を囲む外装カバー21とを備えている。外装カバー21の上面は載置面22の位置よりも高くなっている。
このため、載置面22は、外装カバー21の内側に落ち込んだ窪みのようになっており、携帯装置40はこのような外装カバー21の内側の載置面22に収容される。携帯装置40は、表示部が配置される側の主面を上側(+Z側)に向けて載置部11の載置面22に載置される。このため、載置部11の載置面22は、携帯装置40の近距離無線通信部が配置される側の主面(表示部が配置される側とは逆側の主面)に対向する(図3参照。)。
保持装置1は、特定機種の携帯装置のための専用の装置ではなく、様々な機種の携帯装置を対象とする汎用の装置となっている。このため、様々な機種の携帯装置を載置できるように、載置部11の載置面22のサイズは平均的な携帯装置の主面のサイズよりも大きくなっている。したがって、携帯装置40を載置部11に単純に載置した状態(保持する前の状態)では、載置面22における携帯装置40の位置は一定とはならない。
また、載置面22の前側(−Y側)には、載置面22に対して傾斜した傾斜面SLが形成されている。傾斜面SLは、前側(−Y側)ほど高くなるように傾斜しており、載置面22の位置から外装カバー21の上面までを繋ぐように配置されている。このような傾斜面SLに当接させながら携帯装置40を載置することにより、ユーザは携帯装置40をスムーズに載置面22に載置することができる。
また、この傾斜面SLの下部には、載置部11に携帯装置40が載置されたことを検出する光電センサ11aが設けられている。光電センサ11aは、例えば、赤外線を発光する発光部と、赤外線を受光する受光部とを備える赤外線センサである。光電センサ11aは、携帯装置40での赤外線の反射により、受光部が受光する赤外線の光量が変化することに基いて、携帯装置40が載置部11の載置面22に載置されたことを検出する。
また、載置面22の左側(+X側)及び右側(−X側)に対向する、外装カバー21の内側の辺の一部分は台形状に切り取られている。そして、図2に示すように、当該部分には、外装カバー21の上面よりも低く凹んだ凹部24aが設けられている。携帯装置40を載置部11に載置した場合には、この凹部24aが携帯装置40の側面に対向する。このため、ユーザは、凹部24aに指を入れることで携帯装置40の側面を把持することができ、携帯装置40を容易に取り出すことができる。
また、外装カバー21の下側(−Z側)には、左右方向(X軸方向)に沿ってスライドする2つのスライドカバーSCが設けられている。図2に示すように、保持装置1が携帯装置40を保持しない状態では、スライドカバーSCの大部分は外装カバー21の下側に収納される。一方、図3に示すように、保持装置1が携帯装置40を保持する状態では、2つのスライドカバーSCはそれぞれ内側へスライドして携帯装置40の側方から携帯装置40に当接する。
前述した凹部24aは、スライドカバーSCの一部として形成されている。図3に示すように、スライドカバーSCが携帯装置40に当接した場合においても、この凹部24aが携帯装置40の側面に対向する。このため、この場合においても、ユーザは、凹部24aに指を入れることで携帯装置40の側面を把持できるようになっている。
また、スライドカバーSCの下側(−Z側)には、4つの保持レバーHLが設けられている。4つの保持レバーHLは、載置面22の周囲の左側前方、左側後方、右側前方、及び、右側後方にそれぞれ配置される。図2に示すように、保持装置1が携帯装置40を保持しない状態では、これら4つの保持レバーHLの大部分は、外装カバー21の下側に収納される。一方、図3に示すように、保持装置1が携帯装置40を保持する状態では、4つの保持レバーHLはそれぞれ内側(載置面22の側)へ移動して携帯装置40を押圧する。これにより、4つの保持レバーHLが携帯装置40の四隅(略矩形の主面の頂点に相当する部分)をそれぞれ押圧し、携帯装置40が保持される。
また、外装カバー21の前方左側には報知ランプ14が設けられており、外装カバー21の後方中央には取出しスイッチ15及び近接センサ16が設けられている。報知ランプ14は、例えば、複数の色で発光可能な3色LEDを備えており、その発光状態によって保持装置1の動作状態をユーザに報知する。取出しスイッチ15は、ユーザの操作を受け付ける。また、近接センサ16は、載置部11に接近する物体を検出するセンサであり、載置部11に載置された携帯装置40へのユーザの接近を検出できる。
図4は、載置部11の主要部の分解斜視図である。図4に示すように、載置部11には、携帯装置40と近距離無線通信を行うための近距離無線通信部11bが設けられている。
載置部11は、載置面22の下側(−Z側)に、近距離無線通信部11bが配置された基板29を備えている。近距離無線通信部11bの機能は後に詳述する。近距離無線通信部11bは、その主面が載置面22に沿うように、載置面22の左右方向(X軸方向)の略中央部に配置される。したがって、載置部11に携帯装置40が正常に載置された場合は、近距離無線通信部11bの主面は、携帯装置40の近距離無線通信部が配置される側の主面に対向する。
また、載置部11は、基板29の下側(−Z側)に、保持機構部11cを備えている。保持機構部11cは上述したスライドカバーSC及び保持レバーHLを動作させるものであり、保持機構部11cが駆動することによって携帯装置40が保持される。
図5及び図6は、保持機構部11cの構成を示す斜視図である。図5は、携帯装置40を開放した状態を示しており、図6は、携帯装置40を保持した状態を示している。
これらの図に示すように、保持機構部11cは主に、駆動力を発生する駆動部DRと、1つの第1スライドシャーシCS1と、2つの第2スライドシャーシCS2とを備えている。第1スライドシャーシCS1は、ガイドレールGL1に沿って前後方向(Y軸方向)に移動可能となっている。また、2つの第2スライドシャーシCS2はガイドレールGL2に沿って左右方向(X軸方向)に移動可能となっている。
第1スライドシャーシCS1の一部には前後方向(Y軸方向)に延びるラックギアが形成され、このラックギアはギア37と係合している。駆動部DRの回転力は2つのギア36,37を介して第1スライドシャーシCS1に伝達される。したがって、駆動部DRが回転することにより、第1スライドシャーシCS1が前後方向(Y軸方向)に移動する。
また、第1スライドシャーシCS1は、4つのアーム48を介して2つの第2スライドシャーシCS2に接続されている。4つのアーム48のそれぞれは、一端が第1スライドシャーシCS1に回転可能に接続され、他端が第2スライドシャーシCS2の一方に回転可能に接続されている。このため、第1スライドシャーシCS1が前後方向(Y軸方向)に移動すると、これに追従して4つのアーム48が動くことにより、2つの第2スライドシャーシCS2も左右方向(X軸方向)に移動する。
また、保持機構部11cは、4つの保持レバーHLの回転軸となる位置にそれぞれ、上下方向(Z軸方向)に延びる支持柱31を備えている。一つの支持柱31は、一つの保持レバーHLを支持している。保持レバーHLは支持柱31の上部(+Z側)に配置され、支持柱31を回転軸として回動可能となっている。また、保持レバーHLには弾性材であるバネ34が設けられており、保持レバーHLは内側に回動する向き(図中の矢印AR3の向き)に付勢されている。
また、各支持柱31の下部(−Z側)には、係合レバー33が設けられている。係合レバー33は、支持柱31を回転軸として回動可能となっている。係合レバー33の回転軸は、その上部に配置された保持レバーHLの回転軸と共用されている。したがって、係合レバー33が回動した場合には、係合レバー33が回動した角度と同一の角度で保持レバーHLも回動する。
また、各係合レバー33の先端部には、下方に突出した突起が設けられている。この係合レバー33の突起は、第2スライドシャーシCS2に設けられた開口部46aに係合している。このため、係合レバー33の回動可能な範囲は、第2スライドシャーシCS2の開口部46aによって規制される。係合レバー33は、保持レバーHLとともにバネ34によって内側に回動する向きに付勢されることから、係合レバー33は開口部46aの縁部(保持機構部11cの内側の縁部)に当接する状態を維持する。したがって、第2スライドシャーシCS2が左右方向(X軸方向)に移動した場合は、これに追従して係合レバー33が回動し、その結果、保持レバーHLも回動することになる。
図5に示す状態から、駆動部DRのモータMOを回転させると、第1スライドシャーシCS1が後側(+Y側)へ移動する(図6の矢印AR1)。このように、第1スライドシャーシCS1が移動すると、4つのアーム48を介して、2つの第2スライドシャーシCS2はそれぞれ内側へ移動する。すなわち、左側の第2スライドシャーシCS2は右側(−X側)へ移動し、右側の第2スライドシャーシCS2は左側(+X側)へ移動する(図6の矢印AR2)。
この第2スライドシャーシCS2の移動によって、第2スライドシャーシCS2の開口部46aも内側へ移動することから、開口部46aに係合した4つの係合レバー33がそれぞれバネ34の付勢力によって内側に回動する。その結果、4つの保持レバーHLもそれぞれ内側へ回動する(図6の矢印AR3)。回動した4つの保持レバーHLは携帯装置40の四隅に当接し、バネ34の付勢力によって携帯装置40の四隅をそれぞれ載置面22の中央部へ向けて押圧する。
このように4つの保持レバーHLは、携帯装置40の四隅を押圧することによって、携帯装置40を載置面22の中央部へ向けて、載置面22に略平行に移動する。このように4つの保持レバーHLが携帯装置40を四隅を押圧して移動するため、保持前に携帯装置40が載置面22のいずれの位置にあっても、載置面22における前後方向(Y軸方向)及び左右方向(X軸方向)の双方の略中央部に携帯装置40を容易に移動できる。
そして、4つの保持レバーHLは、載置面22の略中央部へ携帯装置40を移動した後、携帯装置40の四隅をさらに押圧することによって、その位置で携帯装置40をバネ34の付勢力(テンション)により弾性保持する。これにより携帯装置40は、載置面22における前後方向(Y軸方向)及び左右方向(X軸方向)の双方の略中央部においてバネ34によって付勢力を加えられた状態で固定される。4つの保持レバーHLは、このように携帯装置40を保持することで、携帯装置40の載置面22に沿った方向(略水平方向)の移動を抑止し、またバネ34によって加えられた付勢力によって車両の振動等による携帯装置40のがたつきも抑止する。
また、この保持機構部11cは、上述したスライドカバーSC(図2,図3参照。)も備えており、駆動部DRの駆動力によりスライドカバーSCも移動する。4つの保持レバーHLの回転軸の上部にはそれぞれ、ギア35が設けられている。このギア35は、保持レバーHLの動きに連動して、図6中の矢印AR3の向きに回動するようになっている。このようなギア35の回動力が、スライドカバーSCに伝達されることでスライドカバーSCが移動する。
図7は、スライドカバーSCとギア35との関係を示す斜視図である。説明のため、保持機構部11cの一部の構成を省略しており、また、スライドカバーSCは透過して示している。
4つの保持レバーHLと連動するギア35はギア25と係合している。さらに、ギア25は、スライドカバーSCの一部に設けられた左右方向(X軸方向)に延びるラックギア24bと係合する。このような構成により、ギア35の回動力は、ギア25を介してスライドカバーSCに伝達される。
したがって、ギア35が矢印AR3の向きに回動することにより、ギア25はその逆向きに回動し、その結果、2つのスライドカバーSCはそれぞれ内側へ移動する。すなわち、左側のスライドカバーSCは右側(−X側)へ移動し、右側のスライドカバーSCは左側(+X側)へ移動する(矢印AR4)。
このように2つのスライドカバーSCが移動すると、2つのスライドカバーSCはそれぞれ携帯装置40の側方から携帯装置40に当接することになる。スライドカバーSCは、このように携帯装置40に当接することで、載置面22の直交方向(上下方向)への携帯装置40の移動を制止する。スライドカバーSCは、凹部24aとは異なる部分において携帯装置40に当接する。
図8は、凹部24aとは異なる部分となる図3におけるX−X位置での断面図である。図8に示すように、スライドカバーSCは、携帯装置40の主面に対して傾斜した当接部24aを備えており、この当接部24aが携帯装置40の上側の主面の周縁部に対して当接する。
2つのスライドカバーSCは、携帯装置40の左側(+X側)及び右側(−X側)からそれぞれ移動して携帯装置40に当接する。このため、スライドカバーSCの傾斜した当接部24aは、下側(−Z側)の載置面22へ向かう押圧力を携帯装置40に与えることになる。これにより、スライドカバーSCは、載置面22の直交方向(上下方向)への携帯装置40の移動を制止することになる。当接部24aは、携帯装置40の主面に対して傾斜していることから、様々なサイズ(厚さ)の携帯装置40に当接することができるため、携帯装置40の移動を有効に制止することができる。
<1−3.保持装置の構成>
保持装置1は、前述の通り、保持レバーHL及びスライドカバーSCにより携帯装置40を保持する電子制御装置である。保持装置1は、携帯装置40を載置する載置部11、制御部12、記憶部13、報知ランプ14、取出しスイッチ15、及び近接センサ16を備える。
載置部11は、携帯装置40が載置される部位である。また、載置部11は、光電センサ11a、近距離無線通信部11b、及び保持機構部11cを備える。
光電センサ11aは、前述の通り、赤外線等を用いて携帯装置40が載置部11に載置されたことを検出し、検出信号を送信する。光電センサ11aは、赤外線センサの他、発光ダイオードを備えたフォトセンサ等であってもよい。
近距離無線通信部11bは、規格化された小電力無線通信により、アンテナを介して1メートルから数センチ程度の極短距離で無線通信を行う。無線通信の規格は、例えばNFC(Near Field Communication)として知られる無線通信の国際規格である。近距離無線通信部11bは、近距離無線通信により携帯装置40と通信可能に接続され、かかる携帯装置40との間でデータの送受信を行う。また、近距離無線通信部11bが行う近距離無線通信を、以下ではNFCと略する場合がある。
保持機構部11cは、載置部11に載置された携帯装置40を保持することで、車両10の加減速や振動による携帯装置40の載置部11からの脱落や落下を防止する機構である。保持機構部11cは、上述した駆動部DR、保持レバーHL、及びスライドカバーSCの他に、リニアセンサLSをさらに備える。
駆動部DRは、係合したギヤを回動させ、保持レバーHL及びスライドカバーSCを駆動する動力機構である。駆動部DRは、モータMO、ギア36、及びギア37を備えて構成される。
リニアセンサLSは、スライドシャーシCS1の保持機構部11cにおける位置を検出し、検出した位置データを保持制御部12aへ送信する。リニアセンサLSは、可変抵抗器や、所定間隔で配列したスリットを光学的に検出する光学センサ、スライドシャーシCS1を移動させるギア(歯車)の回転数又は回転時間を制御するモータMOで構成することができる。
保持レバーHLは、前述の通り、載置部11の周囲の左側前方、左側後方、右側前方、及び、右側後方に配置され、携帯装置40が載置部11で位置ずれ、落下を生じないよう保持する固定部材である。
スライドカバーSCは、前述の通り、保持レバーHLの動きに連動してスライドし、携帯装置40の両端を挟持するカバーである。
制御部12は、保持装置1に備えられた機構やセンサ等を統括的に制御するマイクロコンピュータである。制御部12は、CPU、RAM、及びROMを備え、CPUが記憶部13に記憶されたプログラム13aに従い所定の演算を行うことで、機構やセンサ等の制御が実現される。また、制御部12は、保持制御部12a、計時部12b、解除判定部12c、電圧検出部12d、電流検出部12e、通信判定部12f、及び異物検出部12gを備える。
保持制御部12aは、保持レバーHL及びスライドカバーSCを駆動させ、携帯装置40の保持や保持の解除を制御する制御部である。具体的には、保持制御部12aは、光電センサ11aや近距離無線通信部11b、リニアセンサLS、駆動部DRの状態に基づき、駆動部DRへ印加する電圧を制御することで、保持レバーHL及びスライドカバーSCを駆動させる。
計時部12bは、時間を計測するタイマーである。
解除判定部12cは、保持装置1による携帯装置40の保持を解除すべき状態であることを判定する。すなわち、解除判定部12cは、携帯装置40の保持を解除すべき所定の解除条件を満足するか否かを判定する。解除判定部12cは、例えば、ユーザによる取出しスイッチ15の操作、または、IGスイッチのオフを検出した場合は、解除条件が満足したと判定する。ユーザにより取出しスイッチ15が操作された場合は、ユーザは携帯装置40の保持を解除し、携帯装置40を保持装置1から取出すことを意図する場合である。また、IGスイッチがオフされる場合は、車両10が停車し、ユーザは車両10から降車して携帯装置40を持ち出すことを意図する場合である。
電圧検出部12dは、駆動部DRに印加される電圧を測定する電圧計である。
電流検出部12eは、駆動部DRに通電される電流を測定する電流計である。
通信判定部12fは、近距離無線通信部11bが携帯装置40の近距離無線通信部41と近距離無線通信を実行したか判定する。通信判定部12fは、両近距離無線通信部においてデータの送受信が行われたことを検出し、かかる通信の実行を判定する。
また、通信判定部12fは、携帯装置40の近距離無線通信部41から近距離無線通信で受信した返答信号のレベル(強度)を測定する。その際、通信判定部12fは、測定した返答信号のレベルが所定の閾値に達しているか判定する。所定の閾値とは、正常に近距離無線通信を行うことができる返答信号のレベルに相当する値である。返答信号のレベルが閾値を超える場合、すなわち、正確に近距離無線通信を行うことができる場合は、通常、携帯装置40における近距離無線通信部41が配置される主面が載置部11の近距離無線通信部11bと正しく対面した状態となっている。逆に、返答信号のレベルが閾値未満であれば、正常な近距離無線通信を行うことができなくなる可能性がある。例えば、携帯装置40における近距離無線通信部41が配置される主面とは逆側の主面が、載置部11の近距離無線通信部11bと対面した状態となると、返答信号のレベルが閾値未満となる。
したがって、本実施の形態の通信判定部12fは、測定された返答信号のレベルが所定の閾値に達していない場合は、携帯装置40の近距離無線通信部41を備えた主面が載置部11の載置面22と対向していないと判定する。このような場合は、近距離無線通信が正常に行われない恐れがあるため、ユーザに報知する必要がある。このため、通信判定部12fは、測定した返答信号のレベルが所定の閾値に達していないと判定すると、報知ランプ14へ判定信号を送信する。返答信号のレベルと比較する閾値は、予め測定した信号レベルに基いて設定される。
なお、近距離無線通信部41を備えた主面が載置部11の載置面22と対向するように携帯装置40を載置した時の返答信号のレベルと、近距離無線通信部41を備えた主面と逆側の主面が載置部11の載置面22と対向するように携帯装置40を載置した時の返答信号のレベルとを測定し、その中間のレベルに閾値を設定してもよい。この場合、閾値設定のモードを設け(ユーザのモード選択操作により起動)、そのモードにおいて携帯装置40の載置手順(閾値設定手順)をユーザに案内表示する等の方法が望ましい。
異物検出部12gは、載置部11において保持レバーHL及びスライドカバーSCと携帯装置40との間に存在する異物、例えば小物やユーザの手指を検出する。異物検出部12gは、リニアセンサLSの出力する信号に基づき、異物の存在を検出する。すなわち、載置部11に異物が存在する場合は、保持レバーHL及びスライドカバーSCが十分に動作しないため、保持レバーHL及びスライドカバーSCの動作位置を検出するリニアセンサLSの出力値が出力の途中で停止し変化がなくなる。したがって、異物検出部12gは、リニアセンサLSの出力値に変化が生じないとき、異物の存在を検出する。異物検出部12gは、異物を検出すると報知ランプ14へ検出信号を送信する。
記憶部13は、プログラム13a及び第1保持力データ13bを備える。電子的データを記憶する不揮発性のメモリであり、例えばフラッシュメモリやEEPROMにより構成される。
プログラム13aは、制御部12により読み出され、制御部12が保持装置1の各機構等を制御するために実行される、いわゆるシステムソフトウェアである。
第1保持力データ13bは、前述のバネ34の全ての付勢力が他に分力されずに、保持レバーHLを介して携帯装置40へ伝達されるような、リニアセンサLSの位置データであり、第1スライドシャーシCS1の位置を示すデータである。バネ34の全ての付勢力が他に分力されずに、携帯装置40へ伝達される状態とは、スライドシャーシCS1を−Y方向まで最大限に移動させた位置とすることにより、バネ34の全ての付勢力が携帯装置40に加わる状態である。すなわち、分力されない全てのバネ34の付勢力が加えられて、保持レバーHLが強く携帯装置40を保持する状態である。
報知ランプ14は、例えば、複数の色で発光可能な3色LEDを備えており、その発光状態によって保持装置1の動作状態をユーザに報知する。
取出しスイッチ15は、ユーザの操作を受け付けるスイッチ機構である。特に、取出しスイッチ15は、ユーザが携帯装置40を載置部から取出す場合にユーザにより操作される。取出しスイッチ15がユーザに操作された場合、操作内容を示す操作信号が解除判定部12cへ送信される。
近接センサ16は、物体の接近を検知する赤外線センサである。物体の接近を検知すると、近接センサ16は、保持制御部12aへ検知信号を送信する。近接センサ16が設けられる箇所は載置部11である。特に載置部11の外枠となる外装カバー21の左右中央に1箇所設けられる(図2,図3参照。)。このような近接センサ16を用いることで、載置部11に保持された携帯装置40にユーザが手を伸ばしたことを検知し、携帯装置40の保持の解除準備等を行うことができる。このため、近接センサ16は、数センチまで接近した物体のみを検知するようセンサ感度が調整される。また、近接センサ16は、赤外線を利用するもののほか、電波や音波を利用するものであってもよく、物体の接近を検知するものであればよい。
携帯装置40は、通信機能を有する可搬型の電子機器であり、近距離無線通信部41、制御部42、表示部43、及び通信部44を備える可搬性の情報端末である。携帯装置40は、例えば、携帯電話の他、通話や電子メール送受、PDA(Personal Digital Assistant)等の多種機能を備えたいわゆるスマートフォンである。
近距離無線通信部41は、規格化された小電力無線通信により、アンテナを介して1メートルから数センチ程度の極短距離で前述の近距離無線通信部11bと無線通信を行う。無線通信の規格は、例えばNFC(Near Field Communication)として知られる無線通信の国際規格である。
制御部42は、制御部は、CPU、RAM、及びROMを備えるコンピュータである。制御部は、装置が備える他の構成と接続され、装置全体を制御する。制御部の各種の制御機能は、ROMに予め記憶されたファームウェアとしてのプログラムに従ってCPUが演算処理を実行することにより実現される。
表示部43は、文字や図形等の各種情報を表示して、携帯装置40のユーザに情報を提示する液晶等の薄型の表示装置である。
通信部44は、無線通信技術を利用した通信機能を備えており、ネットワークを介して他の通信装置との間で通信を行う。この通信部により、車両用装置がサーバ装置との間で各種情報の送受信を行うことが可能となる。
IGスイッチ6は、車両10の駆動システムが起動する際にドライバによりオンとされ、停止される際にオフされるスイッチである。ドライバがIGスイッチ6をオフにすると、IGスイッチ6は解除判定部12cへオフ信号を送信する。IGスイッチ6はシリンダ形状の機械的なスイッチ機構の他、電子的にオンとオフを検知するボタンが含まれる。
<1−4.処理手順>
次に、携帯装置40を保持する保持装置1の処理手順について説明する。図10は、保持装置1の処理手順を示すフローチャートである。図に示す処理は、所定の周期(例えば、1/30秒周期)で繰り返し実行される。
まず、保持制御部12aが、載置部11に携帯装置40が載置されたか否か判定する(ステップS11)。載置部11に携帯装置40が載置されると、光電センサ11aが検出信号を制御部12へ送信するので、保持制御部12aは、光電センサ11aから送信された検出信号を受信した場合に載置部11に携帯装置40が載置されたと判定する。
保持制御部12aが載置部11に携帯装置40が載置されたと判定した場合(ステップS11でYes)、通信判定部12fは、保持装置1と携帯装置40との間で近距離無線通信(NFC)が実行されたか否か判定する(ステップS12)。保持装置1の備える近距離無線通信部11bは携帯装置40と近距離無線通信を実行するとデータの送受信を行うので、通信判定部12fは、近距離無線通信部11bがデータの送受信を実行したことを検出した場合に保持装置1と携帯装置40との間で近距離無線通信が実行されたと判定する。このような判定により、載置部11に載置された携帯装置が、近距離無線通信を実行し得る携帯装置であるか否か判定できる。
また、ステップS12において、通信判定部12fは、近距離無線通信の実行を判定する代わりに、載置部11に載置された携帯装置40の近距離無線通信部41が載置部11の載置面22に対向しているかを判定してもよい。載置部11に載置された携帯装置40の近距離無線通信部41が載置部11に対向していないと判定される場合には、ユーザに報知を行い(ステップS14)、携帯装置40の置き直しを促すことで、適切な保持を行うことができる。通信判定部12fは、近距離無線通信部11bが受信した返答信号のレベルが所定の閾値未満の場合に、携帯装置40の近距離無線通信部41が載置部11に対向していないと判定できる。携帯装置40の近距離無線通信部41が載置部11に対向していないと、近距離無線通信部41とが近距離無線通信部11bとは携帯装置40の厚さ(高さ)の分だけ離間するため、近距離無線通信部41から近距離無線通信部11bへ送信される返答信号のレベルが低下するからである。したがって、このような判定を行うことで、通信判定部12fは、載置部11に対向している携帯装置40の主面が、近距離無線通信部11bが配置される主面とその逆の主面とのいずれであるかを判定することができる。
一方、通信判定部12fが、載置部11に携帯装置40が載置されていないと判定すると(ステップS11でNo)、処理は終了する。載置部11に携帯装置40が載置されていない以上、携帯装置40を保持する制御を行う必要がないからである。
通信判定部12fが保持装置1と携帯装置40との間で近距離無線通信が実行されたと判定すると(ステップS12でYes)、保持装置1は、携帯装置40を保持する制御を開始する(ステップS13)。なお、ステップS13における保持装置1が携帯装置40を保持する制御の詳細は後に説明する。
一方、通信判定部12fは、保持装置1と携帯装置40との間で近距離無線通信が実行されていないと判定すると(ステップS12でNo)、判定信号を報知ランプ14に送信する。報知ランプ14は、保持制御部12aから判定信号を受信すると、LEDを点灯させユーザに異常を報知する(ステップS14)。この場合は、光電センサ11aが載置部11上に物体が載置されたのを検出したが、近距離無線通信部11bで近距離無線通信が行われない場合であるので、載置部11に載置されたのは携帯装置40ではなく、ユーザの手指や小物である恐れがある。この際に保持装置1が保持制御を開始すると、保持レバーHLとスライドカバーSCとの動作によりユーザの手指を挟んだり、載置部11上載置された小物が転倒する恐れが生じる。したがって、光電センサ11aが載置部11上に物体が載置されたのを検出後、近距離無線通信部11bで近距離無線通信が行われない場合には、報知ランプ14がユーザに異常を報知することで、ユーザによる手指の退避や小物の移動を促すのが好ましい。
ステップS14において報知ランプ14により異常の報知が行われると、計時部12bは、時間の計測を開始し、報知ランプ14による異常の報知後、所定時間が経過したか判断する(ステップS15)。所定時間は例えば10秒である。ユーザが異常の報知を認識し、手指を退避させ又は小物を移動させるのに十分な時間であればよい。
報知ランプ14が、所定時間が経過していないと判断すると(ステップS15でNo)、再度ステップS11を実行する。すなわち、保持制御部12aが、光電センサ11aが検出信号を送信しているか判断する。これにより、ユーザへの異常報知により、手指の退避や小物の移動が行われたか判断できる。
再度実行したステップS11でNoの場合は、処理は終了する。同様にYesの場合は、再度ステップS12が実行され、近距離無線通信が実行されたか否か判断される。再度実行されたステップS12でYesとなる場合は、処理は保持制御(ステップS13)に移行する。この場合は、異常報知を認識したユーザが載置部11へ近距離無線通信部41を搭載した携帯装置40を改めて載置したと考えられるからである。再度実行されたステップS12でNoとなる場合は、ステップS14及びステップS15が再度実行される。
一方、計時部12bが所定時間経過したと判断する場合は(ステップS15でYes)、保持装置1は保持制御を実行する(ステップS13)。この場合、ユーザへの異常の報知後、十分な時間が経過したにもかかわらず、光電センサ11aが物体を検出し、かつ近距離無線通信部11bが近距離無線通信を行わない場合である。すなわちユーザに異常報知後、載置部11上から物体の移動がない場合である。このような場合に保持装置1が保持制御を実行するのは、載置部11に載置された物体が手指や小物ではなく、近距離無線通信部を備えない携帯装置と考えられるからである。したがって、保持装置1は保持制御を開始し、載置部11上に載置された携帯装置の保持を行うことで、車両10の発進による加速や振動による載置部11上からの携帯装置の脱落を防止することができる。
また、載置部11に載置された携帯装置40の近距離無線通信部41が載置部11に対向していない場合に、ユーザへの報知後に携帯装置40の置き換えがなされずに所定時間が経過した場合にも、保持装置1は保持制御を実行する(ステップS13)。このようにすることで、携帯装置40が載置部11に不適切に載置された場合であっても、携帯装置が載置部から離脱するのを防止できる。
ステップS13における保持制御が実行されると、処理は終了する。以上のように、携帯装置40が載置部11に載置されたことが検出され、かつ、近距離無線通信部11bが携帯装置40と近距離無線通信を行った場合に、携帯装置40を載置部11に保持するので、誤った保持の動作を行うことがなく、確実に携帯装置40を載置部11に保持することができる。また、通信判定部12fが、近距離無線通信部11bが受信する返答信号のレベルに応じて、携帯装置40の近距離無線通信部41を備える主面が載置部11に対向しているか判定するので、携帯装置40が載置されている向きを容易に判定できる。この際、携帯装置40の近距離無線通信部41を備える面が載置部11に対向してない場合には、ユーザに報知を行うことで、携帯装置40が載置部11に不適切に載置されたことにユーザ気付かせることができる。
次に、ステップS13における保持装置1による携帯装置40の保持制御の詳細について説明する。図11は、ステップS13の処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、保持制御部12aが駆動部DRを駆動するよう制御する。これにより、保持レバーHL及びスライドカバーSCが前述の通り動作し、保持装置1による携帯装置40の保持が開始する(ステップS21)。保持制御部12aによる駆動部DRの駆動は、駆動部DRに10[v]の電圧を通電して行う。
スライドカバーSCが携帯装置40の側面に到達すると、リニアセンサLSはセンサ信号を保持制御部12aに送信する。すなわち、リニアセンサLSは、スライドカバーSCが携帯装置40の側面に到達したと判断できる距離まで動作した場合にセンサ信号を送信する。なお、携帯装置40は機種に応じてその幅に多少の相違を生じるが、スライドカバーSCが携帯装置40の側面に到達したと判断できる距離は、一般的な携帯装置40の側面に到達したと考えられる距離であればよい。
保持装置1による携帯装置40の保持が開始すると、異物検出部12gがスライドカバーSCと携帯装置40との間に異物が存在するか否か判断する(ステップS22)。スライドカバーSCと携帯装置40との間に異物が存在するままスライドカバーSCの動作を継続することにより、かかる異物がユーザの手指や小物であった場合に、手指の挟み込みや小物の転倒を防止するためである。異物検出部12gは、リニアセンサLSからのセンサ信号の出力の有無及び電流検出部12eによる駆動部DRに通電される電流値に基づき、異物の存在を判断する。すなわち、異物検出部12gは、リニアセンサLSからのセンサ信号が出力されていない場合であって、かつ電流検出部12eによる駆動部DRに通電される電流値が急に増加した場合に、異物の存在を判断することができる。これは、携帯装置40とスライドカバーSCとの間に異物が存在すると、スライドカバーSCが携帯装置40の側面まで到達せず、異物により動作が停止されたまま駆動部DRへ通電することによるモータ電流の増加のためである。
異物検出部12gがスライドカバーSCと携帯装置40との間に異物が存在すると判断すると(ステップS22でYes)、保持制御部12aは、駆動部DRへの通電を直ちに停止し、保持レバーHL及びスライドカバーSCによる携帯装置40の保持動作を停止する(ステップS23)。これにより、スライドカバーSCと携帯装置40との間に異物が存在するままスライドカバーSCの動作を継続することによる手指や小物の挟みこみを防止することができる。また、異物により動作を止められたまま通電が継続することによる駆動部DRの損傷を防止することができる。
保持動作が停止されると、異物検出部12gは、報知ランプ14へ検出信号を送信する。報知ランプ14は検出信号を受信すると、LEDを点灯させ異物が検出されたことをユーザに報知する(ステップS24)。報知ランプ14がユーザへの報知を行うと、保持制御部12aは保持レバーHL及びスライドカバーSCによる携帯装置40の保持動作の解除を行う(ステップS31)。なお、ステップS31の処理内容は後に詳述する。
一方、異物検出部12gがスライドカバーSCと携帯装置40との間に異物が存在しないと判断すると(ステップS22でNo)、保持制御部12aは携帯装置40の保持動作を完了し、保持状態を維持する(ステップS25)。すなわち、保持制御部12aは、駆動部DRへの通電を終了することで、保持レバーHL及びスライドカバーSCの動作を固定して保持状態を維持する。なお、前述の通り保持レバーHLは「バネ」で付勢されているため、駆動部DRへの通電を終了したことで動作が固定された場合であっても、携帯装置40の角部に対し一定の押圧力で保持状態を維持することができる。
保持制御部12aは、携帯装置40の保持動作を完了して保持状態を維持すると、光電センサ11aのセンサ信号がオフとなったか判断する(ステップS26)。携帯装置40の保持状態を維持している際に、光電センサ11aのセンサ信号がオフとなる場合とは、ユーザが取出しスイッチ15を操作せずに携帯装置40を載置面22から取出した場合である。なお、光電センサ11aはオン又はオフのセンサ信号を保持制御部12aへ常時送信している。
保持制御部12aは、携帯装置40の保持状態を維持している際に光電センサ11aのセンサ信号がオフとなったと判断すると(ステップS26でYes)、保持レバーHL及びスライドカバーSCによる携帯装置40の保持動作の解除を行う(ステップS31)。ユーザが携帯装置40を載置面22から取出した以上、もはや保持レバーHL及びスライドカバーSCによる保持状態を維持する必要がないうえ、携帯装置40の再度の載置に備える必要があるからである。なお、ステップS31の処理内容は後に詳述する。
一方、保持制御部12aは、携帯装置40の保持状態を維持している際に光電センサ11aのセンサ信号がオフとなっていない、すなわちオンである判断すると(ステップS26でNo)、取出しスイッチ15がユーザにより操作されたか否か判断する(ステップS27)。なお、取出しスイッチ15がユーザにより操作される場合とは、ユーザが携帯装置40を載置面22から取出す意思がある場合である。
保持制御部12aは、取出しスイッチ15がユーザにより操作されていないと判断すると(ステップS27でNo)、IGスイッチ6がユーザにより操作されたか否か判断する(ステップS28)。なお、IGスイッチ6がユーザにより操作される場合とは、ユーザが車両10を停止し携帯装置40を載置面22から取出す意思がある場合である。
保持制御部12aが、IGスイッチ15がユーザにより操作されていないと判断すると(ステップS28でNo)、処理はステップS25に戻り、携帯装置40の保持状態が維持される。
一方、保持制御部12aが、取出しスイッチ15がユーザにより操作されたと判断すると場合(ステップS27でYes)、及びIGスイッチ15がユーザにより操作されたと判断する場合(ステップS28でYes)、処理はステップS29に進む。
ステップS29では、保持制御部12aが、近接センサ16から送信されるセンサ信号に基づき、ユーザの手が保持装置1へ接近したか判断する(ステップS29)。取出しスイッチ15が操作された後、ユーザが保持装置1から携帯装置40を取出すために手を保持装置1へ伸ばしたことを検知してから、携帯装置40の保持動作の解除を行うことが好ましいからである。取出しスイッチ15が誤操作された場合や、ユーザが取出しスイッチ15を操作後、携帯装置40を取出す意思を消失する場合もあるからである。この場合、取出しスイッチ15が操作された直後に、携帯装置40の保持動作の解除を行うと、携帯装置40が車両10の振動等により載置面22から離脱する恐れがある。なお、近接センサ16はユーザの手等の接近を検出すると、センサ信号を保持制御部12aに送信する。
保持制御部12aは、ユーザの手が保持装置1へ接近していないと判断すると(ステップS28)、計時部12bが時間の計測を開始する(ステップS30)。計時部12bが、所定時間が経過していないと判断する場合は(ステップS30でNo)、処理はステップS29に戻り、保持制御部12aがユーザの手の接近を再度検出する。したがって、取出しスイッチ15が操作された後、所定時間はユーザの手が保持装置1へ接近するまで、ステップS29とステップS30とが繰り返し実行される。なお、所定時間とは例えば5秒である。ユーザが取出しスイッチ15を操作後、保持装置1の保持する携帯装置40へ手を伸ばすのに十分な時間であればよい。
一方、計時部12bが、所定時間が経過したと判断する場合は(ステップS30でYes)、処理はステップS25に戻り、携帯装置40の保持状態が維持される。この場合は上述のように、取出しスイッチ15が誤操作された場合や、ユーザが取出しスイッチ15を操作後、携帯装置40を取出す意思を消失した場合と考えられるからである。
ステップS29において、保持制御部12aは、近接センサ16から送信されるセンサ信号に基づき、ユーザの手が保持装置1へ接近したと判断すると(ステップS29でYes)、保持レバーHL及びスライドカバーSCによる携帯装置40の保持動作の解除を行う(ステップS31)。保持制御部12aは、携帯装置40の保持動作の解除を行う際には、保持動作を開始した場合とは逆の方向へ駆動部DRを動作させることにより、保持レバーHL及びスライドカバーSCによる携帯装置40の保持動作の解除を行う。すなわち、保持制御部12aは、保持動作を開始した場合に印加した駆動部DRへの電圧の正負を反転させ、駆動部DRへ通電を行う。これにより、保持レバーHL及びスライドカバーSCは、保持動作とは反対の方向へ動作し、携帯装置40の保持動作の解除が行われる。駆動部DRへ印加される電圧は、例えば−10[v]である。
以上のように、携帯装置40が載置面22に載置されたことが検出され、かつ、近距離無線通信部11bが携帯装置40と近距離無線通信を行った場合に、携帯装置40を載置面22に保持するので、誤った保持の動作を行うことがなく、確実に携帯装置40を載置面22に保持することができる。また、異物検出部12gが異物の存在を検出した場合に携帯装置40の保持動作を停止するので、異物を誤って保持することを防止できる。また、ユーザが手を近づけるまで携帯装置40の保持を維持するので、取出しスイッチ15等が操作された場合において携帯装置40が載置面22から直ちに離脱するのを防止できる。
<2.第2の実施の形態>
<2−1.概要>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係る車載表示システム100の構成及び処理は第1の実施の形態とほぼ同様のため、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。第1の実施の形態では、保持制御部12aは第1保持力データ13bに基づき、駆動部DRを駆動させ、携帯装置40を保持していた。第2の実施の形態では、保持制御部12aは第1保持力データに加え第2保持力データに基づいて、駆動部DRを駆動させる。この第2保持力データに基づく携帯装置40の第2保持力は、第1保持力データに基づく携帯装置40の第1保持力より弱くなるよう設定される。このような第2保持力を用いてユーザが携帯装置40を載置面22から取得するまで携帯装置40を弱く保持するので、携帯装置40の保持を解除すべき状態においてユーザが携帯装置40を取得するまでの間、携帯装置40が載置面22から離脱するのを防止できる。さらに、携帯装置40は保持レバーの保持力から開放されや易くなるので、ユーザは携帯装置40を容易に取出すことができる。
<2−2.構成>
図12は、第2の実施の形態に係る車載表示システム100のブロック図である。第1の実施の形態の構成に加えて、記憶部13は、第2保持力データ13cをさらに備えている。
第2保持力データ13cは、分力されたバネ34の一部の付勢力が、保持レバーHLを介して携帯装置40へ伝達されるような、リニアセンサLSの位置データである。バネ34の一部の付勢力が、携帯装置40へ伝達される状態とは、スライドシャーシCS1を−Y方向まで最大限に移動させた位置からY方向へ戻すことにより、バネ34の付勢力が携帯装置40とスライドシャーシCS1とに分力される状態である。すなわち、分力された一部のバネ34の付勢力が加えられて、保持レバーHLが弱く携帯装置40を保持する状態である。リニアセンサLSの位置データとバネ34の付勢力を予め測定しておくことで、どの程度の保持力で携帯装置40を保持するか決定することができる。
<2−3.処理手順>
図13は、第2の実施の形態に係る車載表示システム100の処理手順を示すフローチャートである。第1の実施の形態との相違点は、ステップS13の処理内容である。第1の実施の形態においては、保持制御部12aは第1保持力データ13bを用いて駆動部DRを駆動したが、第2の実施の形態においては、保持制御部12aは第1保持力データ13bと第2保持力データ13cとを用いて駆動部DRを駆動する。
第2の実施の形態に係るステップS13が実行されると、保持制御部12aが、記憶部13に記憶された第1保持力データを参照し、駆動部DRを駆動するよう制御する。これにより、保持レバーHL及びスライドカバーSCが前述の通り動作し、保持装置1による携帯装置40の保持が開始する(ステップS41)。保持制御部12aによる駆動部DRの駆動は、駆動部DRに10[v]の電圧を通電して行う。
次に、保持制御部12aは、第1保持力データとリニアセンサLSの出力値とに基づき、スライドシャーシCS1を最大限に−Y方向へ移動させ、駆動部DRへの通電を停止する。これにより、保持レバーHLを介してバネ34の全ての付勢力が携帯装置40へ伝達される。すなわち、携帯装置40は第1の保持力で載置面22上に保持される(ステップS42)。
次に、ステップS43及びステップS44において、解除判定部12cが、携帯装置40の保持の解除条件が満足されるか判断する。携帯装置40の保持の解除条件の満足とは、取出しスイッチ15、又は、IGスイッチ6が操作されることである。
携帯装置40が保持された状態となると、解除判定部12cは、取出しスイッチ15が操作されたか否か判断する(ステップS43)。
解除判定部12cが、取出しスイッチ15が操作されたと判断すると(ステップS43でYes)、処理はステップS45に進む。一方、解除判定部12cが、取出しスイッチ15が操作されていないと判断すると(ステップS43でNo)、IGスイッチ6が操作されたか否かさらに判断する(ステップS44)。
ステップS44において、解除判定部12cが、IGスイッチ6が操作されたと判断すると(ステップS43でYes)、処理はステップS45に進む。一方、解除判定部12cが、IGスイッチ6が操作されていないと判断すると(ステップS44でNo)、処理はステップS42に戻り、携帯装置40が第1の保持力で保持される状態が継続される。
取出しスイッチ15又はIGスイッチ6が操作されると(ステップS43又はステップS44でYes)、保持制御部12aは、記憶部13に記憶された第2保持力データを参照し、リニアセンサLSの出力値に基づいてスライドシャーシCS1をY方向へ移動させる。移動距離は、第2保持力データに示される距離であり、前述の通り、保持レバーHLを介してバネ34の一部の付勢力が携帯装置40へ伝達される距離である。これにより、携帯装置40は第2の保持力(<第1の保持力)で載置面22上に保持される(ステップS45)。これにより、ユーザが携帯装置40を載置面22から取得するまで携帯装置40が弱く保持されるので、携帯装置40の保持を解除すべき状態において携帯装置40が載置面22から離脱するのを防止できる。また、この状態は携帯装置40の取出し待機状態である。したがって、携帯装置40を取出そうと取出しスイッチを操作又はIGスイッチを操作したユーザは、保持レバーHLの弱い保持力のため、容易に携帯装置40を取出すことができる。
携帯装置40が第2の保持力で保持されると、解除判定部12cが、光電センサ11aのセンサ信号がオフとなったか判断する(ステップS46)。光電センサ11aのセンサ信号がオフとなる場合とは、ユーザが携帯装置40を載置面22から取出した場合である。
解除判定部12cが、光電センサ11aのセンサ信号がオフとなっていない、すなわちオンの状態である判断すると(ステップS46でNo)、処理はステップS45に戻り、携帯装置40が第2の保持力で保持される状態が継続される。
一方、解除判定部12cが、光電センサ11aのセンサ信号がオフとなったと判断すると(ステップS46でYes)、保持制御部12aは、リニアセンサLSの出力値に基づいてスライドシャーシCS1をY方向へ最大限に移動させる。これにより、4つの保持レバーHLは外側(図6の矢印AR3と逆方向)に回動し、携帯装置40の保持を開放する(ステップS47)。携帯装置40が載置面22から取り出された以上、保持力を維持する必要がないからである。なお、保持レバーHLが最大限に外側へ回動すると、保持レバーHLの大部分が外装カバー21の下側に収納された状態となる。この状態は、載置面22上から保持レバーHLを移動させ、携帯装置40が載置されるのを待機する状態である。ステップS47が実行されると処理は終了する。
以上のように、保持装置1は、保持レバーHLによる携帯装置40の保持を解除すべき解除条件が満足するまでは、第1保持力で携帯装置40を保持し、解除条件が満足した場合に、第1保持力よりも弱い第2保持力で前記携帯装置を保持する。このため、ユーザが携帯装置40を載置面22から取得するまで携帯装置40は弱く保持されるので、携帯装置40の保持を解除すべき状態において携帯装置40が載置面22から離脱するのを防止できる。また、ユーザが携帯装置40を載置面22から取得するまで携帯装置40は弱く保持されるので、ユーザは携帯装置40を容易に載置面22から取出すことができる。
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
上記実施の形態では、保持レバーHLの動作後にスライドカバーSCを動作させたが、スライドカバーSCの動作後に保持レバーHLを動作させてもよい。この場合、保持レバーHLを動作させる前に携帯装置40を載置面22の中央に据えることができるので、保持レバーHLは確実に携帯装置40を保持することができる。また、保持レバーHLの動作とスライドカバーSC動作は同時でもよい。
また、上記実施の形態では、保持レバーHLの保持力を第1と第2の2種類としたが、さらに多数の保持力としてもよい。
また、上記実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。