JP2014090014A - 化合物薄膜成膜方法及び化合物薄膜成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インライン方式を用い、基板を搬送しながら、基板上にCIS系化合物薄膜を蒸着により成膜する方法である。成膜途中のCIS系化合物薄膜について、少なくとも2箇所の定点で、異なる波長の光を用いて反射率を測定する測定工程と、反射率の各測定値により、成膜途中のCIS系化合物薄膜の組成情報を得て、CIS系化合物薄膜の組成を制御する制御工程とを有する。なお、基板は、金属基板が好ましい。
【選択図】図3
Description
カルコパイライト型のCu(In,Ga)Se2(以下、単にCIGSともいう)は、太陽光の吸収に対して最適なバンドギャップと高い光吸収係数を備えるものであるため、高効率薄膜太陽電池の光電変換層(光吸収層)として有望な半導体薄膜材料である。そこで、次世代の太陽電池として、光電変換層にCIGSを用いたものが検討されている。
特許文献1では、プロセスチャンバ内での同時蒸発蒸着プロセスによって製造された銅インジウムガリウムセレン化物(CIGS)太陽電池の組成制御の方法であって、蒸着条件は、蒸着されたCu過剰全体組成が、Cu不足全体組成に変換されるようになっている。インライン連続基材フロー製造システムのプロセスチャンバ内で同時蒸発プロセスが実施され、転移に関連する物理パラメータを使用することによって、銅豊富組成から銅不足組成への転移が起こる瞬間であって、基準転移点と呼ばれる瞬間を検知する。そして、物理パラメータを使用して転移点の移動を検知する。その後、転移点を基準転移点に戻すために、蒸発物流量が調整される。
なお、特許文献2、3において、以下に示す第IB族元素(X)はCu、第IIIB族元素(Y)はIn,Ga、第VIB族元素(Z)はSeであり、XYZ2化合物はCIGSである。
特許文献2では、基板上に第IIIB族元素(Y)、第VIB族元素(Z)を蒸着する製膜ゾーン11とこのゾーン11で形成された薄膜に第IB族元素(X)、第VIB族元素を蒸着する製膜ゾーン12を経た薄膜に第IIIB族元素、第VIB族元素を蒸着させる製膜ゾーン13を有するインライン方式を用いた製膜装置が開示されている。製膜ゾーン12にて検出したXYZ2が化学量論的組成比となるゾーン12における基板2の位置に基づきゾーン12の終点における薄膜の第IB族元素と第IIIB族元素の組成比の予測値を算出する。製膜ゾーン12の終点におけるXYZ2化合物薄膜の組成比が予め設定されたゾーン12の終点におけるXYZ2薄膜の第IB族元素と第IIIB族元素の組成比の目的値となるように予測値に基づきゾーン12における第IB族元素の蒸着量を制御する。
特許文献4では、ガラス基板上にMo薄膜が形成された基体の温度変化は、Cu(In,Ga)Se2薄膜の温度変化速度に依存して変化する。このことを利用して基体の温度変化を測定することによって、Cu(In,Ga)Se2薄膜の温度変化速度の変化を判別している。
また、表面の光学的な変化をモニタリングする方式は、インライン式にも対応可能であるものの、あくまで最終組成比を予測して蒸着源の条件を制御しているに過ぎず、プロセス中のモニタリングとして最終的に安定な組成制御を行う方法としては不十分である。
CIS系化合物薄膜は、成膜途中でCuとIII族元素の比率が1以上の条件で成膜された後、CuとIII族元素の比率が1未満の条件で成膜されて形成されるものであり、定点は、CuとIII族元素の比率が1以上の条件で成膜された後の第1の点と、CuとIII族元素の比率が1未満の条件で成膜された後の第2の点の少なくとも2箇所であることが好ましい。
反射率の測定に用いられる異なる波長の光には、400nmから530nmまでの第1の波長領域の光と、800nmから900nmまでの第2の波長領域の光とが用いられることが好ましい。
第2の波長領域の反射率R1と第2の波長領域の反射率R2との比R1/R2で規定される比γは1.5以上5以下であることが好ましい。
制御工程は、反射率の各測定値に基づいて、蒸着条件をCuとIII族元素の比率が所定の値になるように調整することが好ましい。
例えば、基板に導電膜が形成されており、CIS系化合物薄膜は、導電膜上に形成される。
基板は、金属基板であることが好ましい。
反射率の測定に用いられる異なる波長の光には、400nmから530nmまでの第1の波長領域の光と、800nmから900nmまでの第2の波長領域の光とが用いられ、測定部は、第1の波長領域の反射率及び第2の波長領域の反射率を測定することが好ましい。
測定部は、第2の波長領域の反射率R1と第2の波長領域の反射率R2との比R1/R2で規定される比γを算出することが好ましい。
制御部は、反射率の各測定値に基づいて、成膜部の蒸着条件をCuとIII族元素の比率が所定の値になるように調整することが好ましい。
また、少なくとも2点以上の定点モニタを行うことで、基板の表面粗さの違い又はモニタ位置の違いにより、反射率の絶対値での評価が困難な場合においても、最終的なIII族過剰なCIGS膜の組成制御の確率が向上し、最終的に得られる光電変換素子において、例えば、平均変換効率を2%以上向上させることができる。
図1は、本発明の実施形態の化合物薄膜成膜方法を用いて形成された光電変換層を有する光電変換素子を示す模式的断面図である。
なお、基板12は、例えば、平板状であり、その形状及び大きさ等は適用される光電変換素子10の大きさ等に応じて適宜決定されるものである。
裏面電極14の厚さは、厚すぎると高コストとなり生産適性も低下する。一方、裏面電極14の厚さが薄すぎると電極としての性能、特に低抵抗を得ることが難しくなる。このため、裏面電極14は、厚さが100nm〜1000nm(1μm)であることが好ましい。
裏面電極14の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、スパッタ法等の気相成膜法により形成することができる。裏面電極14をMoで構成する場合、高融点のためスパッタ法を用いることが好ましい。
光電変換層16は、CIS系化合物薄膜からなり、例えば、CIGS膜で構成される。このCIGS膜は、例えば、カルコパイライト型結晶構造を有するCu(In,Ga)Se2により構成される。このため、光電変換層16は、光吸収率が高いことを加え、光照射等による効率の劣化が少なく、耐久性に優れている。
光電変換層16は、膜厚については特に限定されるものではない。しかし、光電変換層16の膜厚が薄すぎると光吸収効率が低いという問題があり、逆に厚すぎると生産適性が低いという問題がある。これらを両立させる点から、光電変換層16の膜厚は、1μm〜3μmが好ましい。
バッファ層18は、透明電極20形成時に光電変換層16を保護すること、透明電極20に入射した光Lを光電変換層16まで透過させること、及びII族元素又はIII族元素を光電変換層16(CIGS膜)中に拡散させることで光電変換層16中にホモ型pn接合を形成させる目的のために、光電変換層16上に形成されたものである。
バッファ層18は、例えば、CdS、ZnS、InS、ZnO、ZnMgO、又はZnS(O,OH)及びこれらを組み合わせたもの等により構成される。バッファ層18は、光電変換層16とともにpn接合層を構成する。
ここで、バッファ層18の成膜方法として、一般的に用いられているのは被覆性に優れ、光電変換層16へのダメージが少ないCBD法である。一例として硫化カドミウム(CdS)系化合物からなるバッファ層18を成膜する場合には、カドミウム源として硫化カドミウム(CdSO4)、硫黄源としてチオ尿素(NH2CSNH2)、それにアンモニア水(NH4OH)を加えた混合水溶液を用いる。この水溶液中に光電変換層16を成膜した基板12を浸し、所定の温度まで加熱させて、所定の時間保つことによりCdS系化合物からなるバッファ層18を光電変換層16上に成膜することができる。
透明電極20の厚さは、特に限定されるものではなく、0.3〜1.5μmであることが好ましい。
なお、透明電極20の表面20aに、MgF2等からなる反射防止膜が形成されていてもよい。
上部電極端子22は、例えば、矩形状であり、透明電極20の表面20aの端部に、図1中右側端部の表面に形成される。
なお、上部電極端子22は、例えば、アルミニウムより構成されるものである。この上部電極端子22は、例えば、スパッタ法、蒸着法、CVD法等によって形成される。
光電変換素子10は、例えば、インライン方式を用いて製造される。搬送形態は、枚葉式であってもロール・ツー・ロール方式であってもよい。本実施形態の光電変換素子10は、ロール・ツー・ロール方式で製造される。なお、以下の光電変換素子10の製造方法において、特に説明しなくともロール・ツー・ロール方式で製造されるものとする。
次に、基板12の表面、この場合、陽極酸化膜の表面にMo膜が、例えば、800nmの厚さに形成されており、このMo膜が裏面電極14となる。なお、例えば、スパッタ装置を用いてDCスパッタ法により、裏面電極14としてMo膜を基板12の表面に形成してもよい。
次に、光電変換層16上に、例えば、バッファ層18となる厚さ50nmのCdS層(n型半導体層)を、CBD法により形成する。これにより、光電変換層16とバッファ層18とでpn接合層が構成される。
なお、バッファ層18としては、CdS層に限定されるものではなく、In(S,OH)、又はZn(O,OH,S)等の少なくともIIB族元素及びVIB族元素を含む化合物層を、例えば、CBD法により形成してもよい。
次に、透明電極20となる、例えば、AlがドープされたZnO層を、成膜装置を用いて、DCスパッタ法により、例えば、厚さ300nm形成する。これにより、透明電極20が形成される。
本実施形態では、光電変換層16は、例えば、図2に示すロール・ツー・ロール方式の化合物薄膜成膜装置30(以下、成膜装置30という)を用いて形成される。
回転軸38、ガイドローラ39a、39b及び巻取り軸38bにより搬送機構が構成される。なお、搬送機構としては、上述の構成以外にガイドローラ等を有していてもよいことはもちろんである。
巻取り軸38bは、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータによって巻取り軸38bが基体Zを巻き取る方向WD、本実施形態では、反時計回りに回転されて成膜済みの基体Zが連続的に巻き取られる。
CIGS膜(光電変換層16)は、成膜途中でCuとIII族元素の比率を変えて基体Zに形成される。成膜部40では、2段階目が、CIGS膜においてCuとIII族元素の比率が1以上の条件で成膜するものであり、3段階目が、CIGS膜においてCuとIII族元素の比率が1未満の条件で成膜するものである。
また、第1の電源部48aは、各蒸着用るつぼ42a〜42cの温度を、上昇又は下降させる機能を有する。第1の電源部48aは、制御部36に接続されており、温度上昇又は温度下降は、制御部36による設定されるとともに制御される。
また、各蒸着用るつぼ44a、44bと基体Zを挟んで対向する位置に、加熱部49bが設けられている。この加熱部49bは、加熱部49aと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
また、各蒸着用るつぼ46a〜46cと基体Zを挟んで対向する位置に、加熱部49cが設けられている。この加熱部49cは、加熱部49aと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
なお、波長が530nmを超える光では、光干渉の影響を受けて安定な反射光強度評価ができない。波長が400nm未満の光では、測定は可能であるものの、測定系、例えば、ガラスなどの吸収波長領域と重なってくるため、工業的な適用が困難となる。
なお、波長が900nmを超える光では、光干渉の影響を受けて安定な反射光強度評価ができない。また、波長が800nm未満の光では、銅豊富組成における反射光強度が低くM2定点の検出が困難である。
異なる波長の光としては、例えば、400nmから530nmまでの第1の波長領域の光と、例えば、800nmから900nmまでの第2の波長領域の光とが用いられる。
第1のモニタリング部50では、第1の波長領域の光及び第2の波長領域の光を測定光L1として、CIGS膜26の表面26a(図3(b)参照)に照射し、測定光L1の各反射光を検知し、第1の波長領域の光及び第2の波長領域の光の反射率を測定する。
第2のモニタリング部52では、第1の波長領域の光及び第2の波長領域の光を測定光L2として、CIGS膜28の表面28a(図3(c)参照)に照射し、CIGS膜に照射し、測定光L2の各反射光を検知し、第1の波長領域の光及び第2の波長領域の光の反射率を測定する。
本発明では、第1の波長領域の光の反射率とは、400nmから530nmまでの第1の波長領域の光の反射率の平均値である。第2の波長領域の光の反射率とは、800nmから900nmまでの第2の波長領域の光の反射率の平均値である。
また、第1のモニタリング部50及び第2のモニタリング部52による測定箇所、すなわち、測定光L1、L2を照射する位置は、少なくとも1箇所あればよい。
また、第2の点P2における第1の波長領域の反射率をB2とし、第2の波長領域の反射率をR2とするとき、R2/B2で規定される第2の比γ2を算出する。
更には、第1の点P1における第2の波長領域の反射率R1と第2の点P2における第2の波長領域の反射率R2との比R1/R2で規定される比γを算出する。
本実施形態においては、第1のモニタリング部50、第2のモニタリング部52及び制御部36で、本発明の測定部が構成される。
なお、第1の比γ1が2未満では結晶粒径が十分大きくなっておらず、銅豊富組成が得られていない。一方、第1の比γ1が10よりも大きい場合には、極端に銅豊富組成となってしまっており、次段の3段階目で、銅不足組成に制御することが困難となる。
以上のことから、第1の比γ1が2以上10以下の範囲に入るように、例えば、制御部36では、第1のモニタリング部50で得られた反射率に基づいて、第2の電源部48bを制御し、2段階目の銅(Cu)の蒸着用るつぼ44a及びセレン(Se)の蒸着用るつぼ44bのうち、少なくとも1つの温度を変えて蒸着量を調整するフィードバック制御を行う。
なお、第2の比γ2が5を超えると、銅豊富組成のままであり、第2の比γ2が1未満であると、結晶粒径が増大していない。
以上のことから、第2の比γ2が1以上5以下の範囲に入るように、例えば、制御部36では、第2のモニタリング部52で得られた反射率に基づいて、第3の電源部48cを制御し、3段階目のインジウム(In)の蒸着用るつぼ46a、ガリウム(Ga)の蒸着用るつぼ46b及びセレン(Se)の蒸着用るつぼ46cのうち、少なくとも1つの温度を変えて蒸着量を調整するフィードバック制御を行う。
長波長領域の光を用いると、銅豊富組成で高い反射光強度を得ることができる。また、M2定点において銅豊富組成から銅不足組成に変化する際、長波長領域の光の反射光強度が減少する。このため、長波長領域の光での反射率を用いることにより、CIGS膜においてCuとIII族元素の比率が1以上になった後に、1未満になっているかを特定できる。
なお、比γが1.5未満では、銅豊富組成のままであり、比γが5を超えると、銅豊富組成のままであるか、又は結晶粒径が増大していない。
以上のことから、比γが1.5以上5以下の範囲に入るように、例えば、制御部36では、第1のモニタリング部50で得られた反射率、第2のモニタリング部52で得られた反射率に基づいて、第2の電源部48bを制御し、2段階目の銅(Cu)の蒸着用るつぼ44a及びセレン(Se)の蒸着用るつぼ44bのうち、少なくとも1つの温度を変えて蒸着量を調整するフィードバック制御を行うか、又は第3の電源部48cを制御し、3段階目のインジウム(In)の蒸着用るつぼ46a、ガリウム(Ga)の蒸着用るつぼ46b及びセレン(Se)の蒸着用るつぼ46cのうち、少なくとも1つの温度を変えて蒸着量を調整するフィードバック制御を行う。
成膜装置30においては、基体Zが回転軸38aにロール状に巻き回されている。ガイドローラ39a、39bを経て巻取り軸38bに取り付けられている。巻取り軸38bで巻き取られることにより、基体Zは搬送方向Dに搬送される。
この状態で、加熱部49aにより基体Zを、例えば、350℃に加熱する。そして、第1段階目で、基体Zの裏面電極14の表面14aにIn、Ga及びSeを蒸着する。これにより、図3(a)に示すように、(In,Ga)2Se3膜24が形成される。
ここで、Cu:(In+Ga):Se=1:1:2に達した時点で、カルコパイライト構造のCu(In,Ga)Se2結晶が形成される。さらにCu,Seの蒸着を続けることで、最表面にCuxSe層が生成され、Cu過剰組成となる。このようなことから、図3(b)に示すように、CuとIn及びGa(III族元素)との比率が1以上のCIGS膜26となる。
一方、第1の比γ1が上記範囲から外れる場合には、制御部36により、第1のモニタリング部50で得られた反射率に基づいて、第2の電源部48bが制御されて、るつぼの温度が調整され、2段階目のCuの蒸着量及びSeの蒸着量のうち、少なくとも1つの蒸着量が調整される。
一方、第2の比γ2が上記範囲から外れる場合には、制御部36により、第2のモニタリング部55で得られた反射率に基づいて、第3の電源部48cが制御されて、るつぼの温度が調整され、3段階目のInの蒸着量、Gaの蒸着量及びSeの蒸着量のうち、少なくとも1つの蒸着量が調整される。
CuとIII族元素の比率において、Cu過剰組成と、Cu不足組成とを評価しつつ成膜することにより、光電変換層16が所定の組成となるように形成することができる。
以上ようにして、光電変換層16が形成される。
また、第1の点P1でのモニタリングにより、CIGS膜のCu過剰割合を制御することができ、CIGS膜の粒径を増大させることができる。第2の点P2でのモニタリングにより、CIGS膜のIII族過剰割合を制御することができ、シャントパスの少ない光電変換素子を安定的に得ることができる。この点からも、平均変換効率を向上させることができる。
本実施例において、後に詳細に示す基板1又は基板2を用いて、実施例1〜5ならびに比較例1及び比較例2の光電変換素子を以下に詳細に説明するようにして作製した。各光電変換素子について、AM(Air mass)1.5、100mW/cm2の疑似太陽を用いて、変換効率を測定した。その結果を下記表1に示す。
基板2は、裏面電極として、Moを800nm成膜した陽極酸化ポーラスアルミナ基板と、この陽極酸化ポーラスアルミナ基板のアルミナ層が形成されていない面に設けられたSUS基板との積層基板である。なお、陽極酸化ポーラスアルミナ基板の厚さは0.08mmであり、SUS基板の厚さは0.05mmである。
実施例1では、基板として、上記基板1を用いた。
図2に示す成膜装置30を用いたロール・ツー・ロール方式で、光電変換層として、厚さが2μmのCIGS膜を形成した。なお、1段階目の基板温度を350℃、2段階目の基板温度を550℃、3段階目の温度を550℃とした。
CIGS膜形成時には、上述のように第1の比γ1が2以上10以下の範囲、第2の比γ2が1以上5以下の範囲となるように制御した。
次に、光電変換層上に、バッファ層として、化学析出法により、厚さが50nmのCdS層を形成した。
次に、透明電極の表面の一部に、上部電極端子として、蒸着法により、厚さが1μmのアルミニウム膜を形成し、セル化して実施例1の光電変換素子を作製した。
このようにして作製した実施例1の光電変換素子は、図1に示す光電変換素子10と同様の構成である。
実施例3〜5は、実施例1と同じく、CIGS膜形成時に上述のように第1の比γ1が2以上10以下の範囲、第2の比γ2が1以上5以下の範囲となるように制御して作製したものである。その他も、実施例1と全く同様にして作製されたものである。このため、実施例3〜5の構成及び作製方法に関する詳細な説明は省略する。
なお、実施例1〜5においては、CIGS膜形成時、第1の比γ1、第2の比γ2及び比γを算出している。
比較例1は、基板1を用い、CIGS膜形成時に上述のように第1の比γ1が2以上10以下の範囲、第2の比γ2が1以上5以下の範囲となるように制御をしなかった点を除いて、実施例1と全く同様にして作製したものである。このため、比較例1の構成及び作製方法に関する詳細な説明は省略する。
比較例2は、基板1を用い、CIGS膜形成時に上述のように第1の比γ1が2以上10以下の範囲となるように制御し、第2の比γ2については制御をしなかった点を除いて、実施例1と全く同様にして作製したものである。このため、比較例2の構成及び作製方法に関する詳細な説明は省略する。
比較例1は、2段階目においてCu過剰な組成にならなかった。比較例2は、最終的な組成がCu過剰であり、Cu不足組成に制御できなかった。
なお、比較例1においては、上述のようにCIGS膜形成時に制御していないが、第1の比γ1、第2の比γ2及び比γは算出している。第1の比γ1を制御した比較例2についても、第1の比γ1、第2の比γ2及び比γは算出している。
一方、CIGS膜形成時に制御していない比較例1においては、2段階目においてCu過剰な組成にならなかったため、第1の比γ1の値が小さく、変換効率が低い。また、第1の比γ1を制御した比較例2では、Cu過剰が得られたが、最終的な組成をCu不足組成に制御できなかったため、第2の比γ2の値が大きく、変換効率が低い。
このように、本発明の化合物薄膜成膜方法により、変換効率を高くすることができ、比較例1、2に示すような変換効率が低いものの割合を減らすことができる。
12 絶縁性基板(基板)
14 裏面電極
16 光電変換層
18 バッファ層
20 透明電極
22 上部電極端子
30 化合物薄膜成膜装置(成膜装置)
50 第1のモニタリング部
52 第2のモニタリング部
Claims (15)
- インライン方式を用い、基板を搬送しながら、前記基板上にCIS系化合物薄膜を蒸着により成膜する方法であって、
成膜途中のCIS系化合物薄膜について、少なくとも2箇所の定点で、異なる波長の光を用いて反射率を測定する測定工程と、
前記反射率の各測定値により、前記成膜途中のCIS系化合物薄膜の組成情報を得て、前記CIS系化合物薄膜の組成を制御する制御工程とを有することを特徴とする化合物薄膜の成膜方法。 - 前記基板は、金属基板である請求項1に記載の化合物薄膜の成膜方法。
- 前記CIS系化合物薄膜は、成膜途中でCuとIII族元素の比率が1以上の条件で成膜された後、前記CuとIII族元素の比率が1未満の条件で成膜されて形成されるものであり、
前記定点は、前記CuとIII族元素の比率が1以上の条件で成膜された後の第1の点と、前記CuとIII族元素の比率が1未満の条件で成膜された後の第2の点の少なくとも2箇所である請求項1又は2に記載の化合物薄膜の成膜方法。 - 前記反射率の測定に用いられる前記異なる波長の光には、400nmから530nmまでの第1の波長領域の光と、800nmから900nmまでの第2の波長領域の光とが用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物薄膜の成膜方法。
- 前記第1の点における前記第1の波長領域の反射率をB1とし、前記第2の波長領域の反射率をR1とするとき、R1/B1で規定される第1の比γ1は2以上10以下であり、
前記第2の点における前記第1の波長領域の反射率をB2とし、前記第2の波長領域の反射率をR2とするとき、R2/B2で規定される第2の比γ2は1以上5以下である請求項4に記載の化合物薄膜の成膜方法。 - 前記第2の波長領域の反射率R1と前記第2の波長領域の反射率R2との比R1/R2で規定される比γは1.5以上5以下である請求項4に記載の化合物薄膜の成膜方法。
- 前記制御工程は、前記反射率の各測定値に基づいて、蒸着条件をCuとIII族元素の比率が所定の値になるように調整する請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物薄膜の成膜方法。
- 前記基板に導電膜が形成されており、前記CIS系化合物薄膜は、前記導電膜上に形成される請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物薄膜の成膜方法。
- インライン方式を用い、基板上にCIS系化合物薄膜を成膜する化合物薄膜成膜装置であって、
前記基板を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送された前記基板上に、蒸着により前記CIS系化合物薄膜を形成する成膜部と、
成膜途中のCIS系化合物薄膜について、少なくとも2箇所の定点で、異なる波長の光を用いて反射率を測定する測定部と、
前記反射率の各測定値により、前記成膜途中のCIS系化合物薄膜の組成情報を得て、前記成膜部によって形成される前記CIS系化合物薄膜の組成を制御する制御部を有することを特徴とする化合物薄膜成膜装置。 - 前記基板は、金属基板である請求項9に記載の化合物薄膜成膜装置。
- 前記成膜部は、前記CIS系化合物薄膜は、成膜途中でCuとIII族元素の比率が1以上の条件で成膜した後、前記CuとIII族元素の比率が1未満の条件で成膜されて形成するものであり、
前記測定部は、前記CuとIII族元素の比率が1以上の条件で成膜された後の第1の点と、前記CuとIII族元素の比率が1未満の条件で成膜された後の第2の点の少なくとも2箇所で前記反射率を測定する請求項9又は10に記載の化合物薄膜成膜装置。 - 前記反射率の測定に用いられる前記異なる波長の光には、400nmから530nmまでの第1の波長領域の光と、800nmから900nmまでの第2の波長領域の光とが用いられ、前記測定部は、前記第1の波長領域の反射率及び前記第2の波長領域の反射率を測定する請求項9〜11のいずれか1項に記載の化合物薄膜成膜装置。
- 前記測定部は、前記第1の点における前記第1の波長領域の反射率をB1とし、前記第2の波長領域の反射率をR1とするとき、R1/B1で規定される第1の比γ1を算出するとともに、
前記第2の点における前記第1の波長領域の反射率をB2とし、前記第2の波長領域の反射率をR2とするとき、R2/B2で規定される第2の比γ2を算出する請求項12に記載の化合物薄膜成膜装置。 - 前記測定部は、前記第2の波長領域の反射率R1と前記第2の波長領域の反射率R2との比R1/R2で規定される比γを算出する請求項12に記載の化合物薄膜成膜装置。
- 前記制御部は、前記反射率の各測定値に基づいて、前記成膜部の蒸着条件をCuとIII族元素の比率が所定の値になるように調整する請求項9〜14のいずれか1項に記載の化合物薄膜成膜装置。
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