以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る眼科用レーザ治療装置1の概略構成について説明する。図1の左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側を、それぞれ眼科用レーザ治療装置1の前方、後方、左側、右側とする。図1に示すように、眼科用レーザ治療装置1は、本体部10と、偏向ユニット30とを備える。
本体部10は、箱状の筐体11を備える。筐体11の内部には、レーザ光を発生させるレーザ光源20(図3参照)等が内蔵されている。本体部10は、設定値に応じてレーザ光源20からレーザ光を発生させて、偏向ユニット30に導光する。筐体11の正面には、表面にタッチパネル12を備えた表示部13が設けられている。術者は、表示部13に表示される各種ボタン(詳細は後述する)の位置に応じてタッチパネル12を操作することで、各種操作指示を眼科用レーザ治療装置1に入力することができる。
筐体11の正面における右上の角部には、眼科用レーザ治療装置1の電源のONとOFFを切り替えるための電源ボタン14が設けられている。筐体11の正面における右下の角部には、ユニット接続ファイバ15およびケーブル16が接続されている。ユニット接続ファイバ15は、本体部10と偏向ユニット30との間に接続され、本体部10のレーザ光源20(図3参照)が発生させたレーザ光を偏向ユニット30に導光する。ケーブル16は、本体部10と偏向ユニット30を電気的に接続する。
さらに、本体部10には、フットスイッチ17およびパワーディテクタ18(図3参照)が接続される。フットスイッチ17は、術者によって踏み込まれることで、レーザ光を発光させるための信号を眼科用レーザ治療装置1に出力する。パワーディテクタ18の詳細については後述する。
偏向ユニット30は、本体部10よりも小さい箱状の筐体31を備える。筐体31の内部には、ユニット接続ファイバ15を介して導光されたレーザ光を偏向(本実施形態では走査)するガルバノミラー32(図3参照)が内蔵されている。筐体31の背面には、ユニット接続ファイバ15およびケーブル16が接続される。筐体31の正面には、プローブ(エンドフォトプローブ)40を接続するためのコネクタであるプローブ接続部33が設けられている。術者は、プローブ40の清潔性の確保等を目的として、プローブ接続部33に接続されているプローブ40を交換することができる。ガルバノミラー32の動作およびプローブ接続部33の詳細については後述する。
プローブ40について説明する。プローブ40は、バンドルファイバ41、ハンドピース43、およびニードル45を備える。バンドルファイバ41は、レーザ光を導光する複数のファイバが束ねられることで形成される。バンドルファイバ41の後端部がプローブ接続部33に接続されることで、プローブ40が偏向ユニット30に接続される。ハンドピース43は、外形略円柱状の部材であり、術者によって把持される。プローブ接続部33に接続されたバンドルファイバ41は、偏向ユニット30からハンドピース43の後端へ延びる。ニードル45は、ハンドピース43の先端から延びる円筒状の部材である。バンドルファイバ41は、ハンドピース43およびニードル45の内部を通ってニードル45の先端部近傍まで延びる。バンドルファイバ41によって偏向ユニット30から導光されたレーザ光は、ニードル45の先端部から照射される。
本実施形態のプローブ40は、患者眼5の内部に挿入されて、主に患者眼5の網膜にレーザ光を照射する。従って、本実施形態のニードル45は、患者眼5の損傷を抑制するために、非常に細く形成されている。一例として、本実施形態で用いられるプローブ40のゲージ(寸法の規格)は、25G(ニードル45の径が0.50mm)、または23G(ニードル45の径が0.63mm)である(図4参照)。ただし、プローブ40のゲージを変更しても本発明は実現できる。なお、術者は、眼科用レーザ治療装置1を用いて患者眼5の治療を行う場合、手術顕微鏡で網膜の状況を確認しながら治療を進める。
図2を参照して、表示部13に表示される操作画面50の一例について説明する。操作画面50の上部には、主に、スタンバイボタン51、レディーボタン52、ゲージ表示部53、およびレーザ光選択部54が表示される。スタンバイボタン51は、レーザ光を照射できないスタンバイ状態とする指示を入力するために操作される。レディーボタン52は、レーザ光を照射可能なレディー状態とする指示を入力するために操作される。ゲージ表示部53には、プローブ接続部33(図1、図3、図4参照)に接続されているプローブ40のゲージが表示される。レーザ光選択部54は、3色(赤色、黄色、緑色)のレーザ光のいずれかの選択指示を受け付けるボタンと、選択されているレーザ光を表示する表示部とを含む。
操作画面50の上下方向における中央部分には、主に、照射パターン選択ボタン58、エイミング設定部59、照射パターン表示部60、パワー設定部61、照射時間設定部62、およびインターバル設定部63が表示される。照射パターン選択ボタン58は、プローブ40の先端から照射させるレーザ光の照射パターン(詳細は後述する)を術者が選択する際に操作される。エイミング設定部59は、レーザ光の照射位置を示すエイミング光の出力設定を行うために用いられる。具体的には、エイミング設定部59は、エイミング光の出力の設定指示を受け付けるボタンと、エイミング光の出力を表示する表示部とを含む。照射パターン表示部60には、選択されている照射パターンが表示される。パワー設定部61は、プローブ40の先端から照射させるレーザ光の出力を設定するためのボタンおよび表示部を含む。照射時間設定部62は、レーザ光の照射時間を設定するためのボタンおよび表示部を含む。インターバル設定部63は、レーザ光を連続して照射する際のインターバル(照射間隔)を設定するためのボタンおよび表示部を含む。
操作画面50の下部には、主に、ファンクションボタン65およびキャリブレーションボタン66が表示される。ファンクションボタン65は、各種機能を実行させる際に操作される。例えば、術者は、プローブ接続部33に接続されているプローブ40を、ゲージが異なるプローブ40に取り替えた際に、新たに装着したプローブ40のゲージを眼科用レーザ治療装置1に入力する。この場合、術者は、ファンクションボタン65を操作してゲージの設定画面を表示させることで、プローブ40のゲージを入力することができる。キャリブレーションボタン66は、キャリブレーションを実行させる指示を入力するためのボタンである。詳細は図7を参照して後述するが、キャリブレーションとは、偏向ユニット30からプローブ40にレーザ光を確実に導光させるための処理である。
図3を参照して、眼科用レーザ治療装置1の制御系および光学系について説明する。眼科用レーザ治療装置1の本体部10は、主に、レーザ光源20、エイミング用光源21、ダイクロイックミラー22、および制御部24を備える。
レーザ光源20は、治療に用いられるレーザ光を発生させる。本実施形態のレーザ光源20は、赤色、黄色、および緑色のレーザ光を発生させることができる。しかし、レーザ光源20は、治療の目的等に応じて適切なレーザ光を発生させることができればよい。従って、レーザ光源20を変更しても本発明は実現できる。エイミング用光源21は、プローブ40の先端から照射されるレーザ光の照射位置を示すためのエイミング光を発生させる。ダイクロイックミラー22は、レーザ光およびエイミング光の光路において、ガルバノミラー32よりも手前側に配置されている。ダイクロイックミラー22は、エイミング光を反射し、且つレーザ光を透過する。レーザ光源20が発生させたレーザ光は、ダイクロイックミラー22を透過してユニット接続ファイバ15に入射する。エイミング用光源21が発生させたエイミング光は、ダイクロイックミラー22で反射し、レーザ光と重畳して(つまり、同軸となって)ユニット接続ファイバ15に入射する。
制御部24は、CPU25、RAM26、およびROM27を備える。CPU25は、眼科用レーザ治療装置1の制御を司る。RAM26には各種データが一時的に記憶される。ROM27には、眼科用レーザ治療装置1の動作を制御するための制御プログラム、初期値等が記憶されている。制御部24は、タッチパネル12、フットスイッチ17、およびパワーディテクタ18等から入力される信号に基づいて、表示部13、レーザ光源20、エイミング用光源21、およびガルバノミラー32等の動作を制御する。
パワーディテクタ18は、キャリブレーションを実行する際に用いられる機器である。詳細は図7を参照して後述するが、キャリブレーションは、レーザ光源20からレーザ光を発生させて、プローブ40の先端から照射されるレーザ光の出力を検出することで実行される。パワーディテクタ18は、ニードル挿入口と、出力検出部とを備える。ニードル挿入口には、プローブ40のニードル45の先端部が挿入される。ニードル挿入口にニードル45が挿入されることで、レーザ光の外部への漏洩が防止される。出力検出部は、ニードル挿入口に挿入されたニードル45の先端から照射されるレーザ光の出力を検出する。パワーディテクタ18は、出力検出部による検出の結果を制御部24に送信する。
眼科用レーザ治療装置1の偏向ユニット30は、前述したガルバノミラー32およびプローブ接続部33に加えて、コリメータレンズ35および集光レンズ36を備える。コリメータレンズ35は、ユニット接続ファイバ15から出射されたレーザ光を平行光束とし、ガルバノミラー32に入射させる。集光レンズ36は、ガルバノミラー32から入射するレーザ光を集光し、プローブ接続部33に接続されたバンドルファイバ41にレーザ光を導光させる。
図4を参照して、プローブ40のファイバ本数、ファイバ配列、および照射パターンについて説明する。ファイバ本数とは、プローブ40のバンドルファイバ41が備えるファイバの本数である。一例として、本実施形態では、ゲージが25G(ニードル45の径が0.50mm)のプローブ40は、3本のファイバを備えている。ゲージが23G(ニードル45の径が0.63mm)のプローブ40は、4本のファイバを備えている。しかし、プローブ40のゲージ、プローブ40のファイバ本数等は適宜変更できる。例えば、ゲージを変更せずに各ファイバの径等を小さくすることで、ファイバ本数を増加させてもよい。
ファイバ配列について説明する。本実施形態のプローブ40では、複数のファイバの入射端における配列と出射端における配列とが異なる。入射端とは、ファイバのうち、偏向ユニット30からレーザ光が入射される側の端部(つまり、プローブ接続部33に接続される後端側の端部)である。出射端とは、レーザ光を照射させる先端側の端部である。ゲージが25Gのプローブ40では、A,B,Cの3本のファイバの入射端は、コリメータレンズ35(図3参照)を通過したレーザ光の光軸方向から見て一直線上に並べられている。同様に、ゲージが23Gのプローブ40でも、A,B,C,Dの4本のファイバの入射端は、レーザ光の光軸方向から見て一直線上に並べられている。一方で、ゲージが25Gのプローブ40では、A,B,Cの3本のファイバの出射端は三角形状に配列されている。ゲージが23Gのプローブ40では、A,B,C,Dの4本のファイバの出射端は矩形状に配列されている。
プローブ接続部33は、複数のファイバの入射端が一直線上に配置された状態でプローブ40を接続する。従って、眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光源20が発生させたレーザ光を一方向に走査すれば、複数のファイバの各々に選択的にレーザ光を導光することができる。また、本実施形態のプローブ40は、ファイバの入射端の配列と出射端の配列とを異なる配列とすることで、レーザ光を偏向(走査)させるための構成および制御の簡略化を実現しつつ、様々なパターンで先端からレーザ光を照射することができる。
なお、本実施形態のプローブ40に用いられるファイバの径は、入射端よりも出射端の方が小さい。より詳細には、本実施形態のファイバは、入射端から出射端へ向かうに従って徐々に径が小さくなるテーパ状のファイバである。従って、ガルバノミラー32から出射されるレーザ光が適切に導光されない可能性が抑制されると共に、径が細いニードル45を形成し易くなる。ただし、テーパ状のファイバを用いなくても本発明は実現できる。
さらに、各ファイバの出射端(先端)は、ファイバの内周面がニードル45の外側に向けて露出するようにテーパ状に形成されている。その結果、各ファイバから照射されるレーザ光は、ニードルの外側に向けて僅かに広がる。従って、プローブ40は、複数のファイバの出射端から照射された複数のレーザ光が重畳する可能性を低下させることができる。よって、複数本のレーザ光が集中して患者眼5が損傷する可能性は低下する。なお、各ファイバの出射端の各々をニードル45の外側に向けて屈曲させた場合でも、複数のレーザ光が重畳する可能性は低下する。
また、詳細は図示しないが、ニードル45の先端部には、複数のファイバの各々から照射されるレーザ光を集光するレンズが設けられている。従って、複数のレーザ光の各々が拡散して重畳する可能性はさらに低下する。
また、詳細は図示しないが、プローブ40が備える複数のファイバの各々の入射端にはコネクタが設けられている。偏向ユニット30のプローブ接続部33(図5参照)の内部には、ガルバノミラー32によって偏向されたレーザ光が導光される4つのチャンネルA,B,C,Dが設けられている。ゲージが25Gのプローブ40がプローブ接続部33に接続されると、AのファイバがAのチャンネルに、BのファイバがBのチャンネルに、CのファイバがCのチャンネルに、それぞれコネクタを介して接続される。この場合、Dのチャンネルは使用されない。また、ゲージが23Gのプローブ40がプローブ接続部33に接続されると、AのファイバがAのチャンネルに、BのファイバがBのチャンネルに、CのファイバがCのチャンネルに、CのファイバがCのチャンネルに、それぞれコネクタを介して接続される。
照射パターンについて説明する。照射パターンとは、プローブ40の先端から照射されるレーザ光の照射のパターンである。本実施形態では、「SINGLE」「MIDDLE」および「FULL」の3つの照射パターンの1つを術者が選択することができる。「SINGLE」が選択されている場合、眼科用レーザ治療装置1は、ガルバノミラー32を制御することで、Aのチャンネル(つまり、Aのファイバ)にレーザ光を導光する。その結果、照射パターンは、プローブ40のゲージに関わらず、1本のレーザ光が照射される照射パターンとなる。つまり、本実施形態では、単発照射を行う「SINGLE」も、複数の照射パターンの1つに含まれる。
「MIDDLE」が選択されている場合、眼科用レーザ治療装置1は、ガルバノミラー32によってレーザ光を走査することで、A,Bのチャンネル(つまり、A,Bのファイバ)に順にレーザ光を導光する。その結果、照射パターンは、プローブ40のゲージに関わらず、2本のレーザ光が照射される照射パターンとなる。
「FULL」が選択されている場合、使用中のプローブ40のゲージが25Gであれば、眼科用レーザ治療装置1は、A,B,Cの3つのチャンネルにレーザ光を導光する。この場合、照射パターンは、3本のレーザ光によって三角形の頂点が形成される照射パターンとなる。「FULL」が選択されており、且つプローブ40のゲージが23Gであれば、眼科用レーザ治療装置1は、A,B,C,Dの4つのチャンネルにレーザ光を導光する。この場合、照射パターンは、4本のレーザ光によって四角形の頂点が形成される照射パターンとなる。以上のように、眼科用レーザ治療装置1は、偏向ユニット30のガルバノミラー32を駆動してレーザ光を偏向(走査)させることで、照射パターンを変えることができる。また、プローブ接続部33に接続されているプローブに応じて適切にガルバノミラー32を駆動することができる。
図5を参照して、プローブ接続部33について詳細に説明する。図5において、斜線を示した部分がプローブ接続部33である。斜線を施していない部分は、バンドルファイバ41の後端部に設けられたねじ部78である。プローブ接続部33は、後方(図5の右方)から順に、フランジ71、小径部72、および大径部73を備える。フランジ71は円盤状の部材である。フランジ71の後方の面は、偏向ユニット30の筐体31(図1参照)に接触し、筐体31に対するプローブ接続部33の位置を固定する。小径部72および大径部73は、共に略円筒状の部材である。フランジ71、小径部72、および大径部73の各々の中心軸は、同軸上に位置している。大径部73の径は、小径部72の径よりも大きい。術者がバンドルファイバ41の後端部を大径部73の内側に押し込むと、バンドルファイバ41は、小径部72と大径部73の間に形成された段部(図示せず)に接触する。その結果、レーザ光の光軸方向(図5の左右方向)におけるバンドルファイバ41の後端部の位置決めが行われる。大径部73の先端側(図5の左側)の外周面には、図示しないねじ山が形成されている。ねじ部78は、バンドルファイバ41に対して回転可能に設けられている。ねじ部78の内周面にもねじ山が形成されている。大径部73の内側にバンドルファイバ41が挿入された状態で、ねじ部78が大径部73のねじ山に締め付けられると、プローブ40がプローブ接続部33に接続(固定)される。
プローブ接続部33には、プローブ40における複数のファイバの入射端を所定の位置に位置決めするための位置決め部75が設けられている。本実施形態の位置決め部75は、大径部73の先端(図5における左側の端部)から小径部72へ至る切り欠きである。バンドルファイバ41のうち、大径部73の内側に挿入される部分の外周面には、軸から遠ざかる方向に向けて突出する位置決めキー79が設けられている。バンドルファイバ41の周方向(図5の上下方向)において、位置決めキー79の長さと位置決め部75の長さは等しい。術者は、プローブ40をプローブ接続部33に接続する場合、位置決めキー79を位置決め部75に通しつつ、バンドルファイバ41を大径部73に挿入する。その結果、バンドルファイバ41の周方向において、プローブ接続部33に対するバンドルファイバ41の相対的な位置決めが行われる。この状態でねじ部78を締め付けると、A,B,C,Dのチャンネルの各々に、所定のファイバのコネクタが適切に位置決めされた状態で、バンドルファイバ41が接続される。従って、ガルバノミラー32から出射されたレーザ光が目標のファイバに導光されない不具合は、位置決め部75によって大幅に生じ難くなる。
図6から図8を参照して、制御部24が実行するメイン処理について説明する。前述したように、制御部24のROM27には、眼科用レーザ治療装置1の動作を制御するための制御プログラムが記憶されている。制御部24のCPU25は、眼科用レーザ治療装置1の電源がONとされると、制御プログラムに従って、図6に示すメイン処理を実行する。
まず、キャリブレーションを実行するタイミングが到来したか否かが判断される(S1)。本実施形態では、タッチパネル12のうち、操作画面50(図2参照)のキャリブレーションボタン66に対応する部分が操作された場合に、キャリブレーションを実行するタイミングが到来したと判断される。しかし、キャリブレーションの実行タイミングは適宜変更できる。例えば、プローブ接続部33にプローブ40が接続されたことを検出するスイッチを設け、プローブ40の接続がスイッチによって検出されたタイミングを、キャリブレーションの実行タイミングとしてもよい。
キャリブレーションの実行タイミングが到来していなければ(S1:NO)、レーザ光の発光(つまり、治療)を開始する指示が行われたか否かが判断される(S2)。本実施形態では、タッチパネル12が操作されることで、発光の開始および終了の指示が入力される。発光の開始指示が行われていなければ(S2:NO)、処理はそのままS1の判断へ戻り、S1およびS2の判断が繰り返される。
キャリブレーションの実行タイミングが到来すると(S1:YES)、キャリブレーション処理が行われて(S3)、処理はS2の判断へ移行する。また、発光の開始指示が行われると(S2:YES)、発光処理が行われて(S4)、処理はS1の判断へ戻る。なお、眼科用レーザ治療装置1の電源がオフとされると、図6に示すメイン処理は終了する。
図7を参照して、キャリブレーション処理について詳細に説明する。キャリブレーション処理が開始されると、プローブ40にパワーディテクタ18(図3参照)が装着されたか否かが判断される(S11)。つまり、パワーディテクタ18のニードル挿入口にニードル45が挿入されたか否かが判断される。パワーディテクタ18が装着されないまま所定時間が経過すると(S11:NO)、キャリブレーションを実行できない旨を術者に通知するためのエラー表示が表示部13で行われて(S12)、キャリブレーション処理は終了する。
パワーディテクタ18が装着されると(S11:YES)、プローブ接続部30に接続されているプローブ40のゲージの情報が取得される(S14)。ゲージの情報は、術者によってタッチパネル12が操作されることで予め設定されている。次いで、ゲージ(本実施形態では、25Gまたは23G)に応じたデフォルトのFULLの走査パターンが、キャリブレーション用のガルバノミラー32の走査パターンとして設定される(S15)。詳細には、ゲージが25Gである場合のFULLの走査パターンは、チャンネルA,B,Cに順にレーザ光を導光させる走査パターンである。ゲージが23Gである場合のFULLの走査パターンは、チャンネルA,B,C,Dの全てにレーザ光を導光させる走査パターンである。また、デフォルトの走査パターンとは、正常なプローブ40がプローブ接続部33の正確な位置に接続された場合の走査パターンである。つまり、プローブ40の接続不良等の不具合が無ければ、デフォルトの走査パターンでガルバノミラー32を走査させることで、プローブ40が備える複数のファイバに正確にレーザ光が導光される。
次いで、CPU25は、設定されている走査パターンでガルバノミラー32を走査しつつ、決められたタイミングでレーザ光源20を発光させる(S16)。パワーディテクタ18の出力検出部によって検出されたレーザ光の出力が取得される(S17)。検出された出力が正常値であるか否かが判断される(S18)。正常値でなければ(S18:NO)、プローブ40が備える複数のファイバの入射端が、正確な位置に位置決めされていない可能性がある。従って、走査パターンが調整されて(S19)、S16〜S18の処理が再度実行される。検出された出力が正常値であれば(S18:YES)、処理はメイン処理へ戻る。なお、S16〜S18の処理が所定回数実行されたにも関わらず、正常な出力が検出されない場合には、エラー表示が行われて、処理はメイン処理へ戻る。
図8を参照して、発光処理について説明する。発光処理が開始されると、タッチパネル12を介して受け付けられた選択指示で選択された照射パターンが「SINGLE」であるか否かが判断される(S21)。「SINGLE」であれば(S21:YES)、レーザ光源20によって発生されたレーザ光がチャンネルAに導光する位置で、ガルバノミラー32が固定される(S22)。処理はS31へ移行する。
照射パターンが「SINGLE」でなければ(S21:NO)、選択されている照射パターンが「MIDDLE」であるか否かが判断される(S24)。「MIDDLE」であれば(S24:YES)、4つのチャンネルA,B,C,Dのうち、チャンネルA,Bにレーザ光が導光するように、ガルバノミラー32が駆動される(S25)。処理はS31へ移行する。
照射パターンが「SINGLE」でも「MIDDLE」でもなく、「FULL」であれば(S24:NO)、プローブ接続部33に接続されているプローブ40のゲージが25Gであるか否かが判断される(S27)。タッチパネル12が操作されることで、ゲージの値が25Gに設定されていれば(S27:YES)、レーザ光源20が発生させたレーザ光がチャンネルA,B,Cに導光するように、ガルバノミラー32が駆動される(S28)。処理はS31へ移行する。プローブ40のゲージが25Gでなく、23Gであれば(S27:NO)、チャンネルA,B,C,Dの全てにレーザ光が導光されるように、ガルバノミラー32が駆動される(S29)。
次いで、エイミング用光源21によるエイミング光の発光が開始される(S31)。これにより、レーザ光が照射される位置と同じ位置にエイミング光が照射される。照射パターンを切り替える指示が入力されたか否かが判断される(S33)。前述したように、本実施形態では、タッチパネル12のうち、照射パターン選択ボタン58(図2参照)に対応する部分が操作されることで、照射パターンの切り替え指示が入力される。照射パターンの切り替え指示が入力されると(S33:YES)、切り替えられた照射パターンが照射パターン表示部60(図2参照)に表示されて、処理はS21の判断へ戻る。その後、切り替えられた照射パターンに応じたガルバノミラー32の駆動が実行される(S21〜S29)。
照射パターンの切り替え指示が入力されていなければ(S33:NO)、フットスイッチ17(図1および図3参照)がONとされたか否かが判断される(S34)。ONとされていなければ(S34:NO)、処理はS37の判断へそのまま移行する。フットスイッチ17が踏み込まれてONとされると(S34:YES)、レディー状態とされているか否かが判断される(S35)。レディー状態でなくスタンバイ状態とされてれば(S35:NO)、処理はそのままS37の判断へ移行する。タッチパネル12のうち、レディーボタン52(図2参照)に対応する部分が操作されてレディー状態とされていれば(S35:YES)、照射パターンに応じて予め決められたタイミングで、選択されている色のレーザ光がレーザ光源20によって発光される(S36)。詳細には、ガルバノミラー32は、目標のチャンネルにレーザ光が導光される角度となる毎に、設定されている照射時間以上の時間静止状態となる。静止とする時間(静止時間)が経過すると、次の目標のチャンネルにレーザ光が導光される角度に変化する。制御部24は、ガルバノミラー32が静止状態となる毎に、設定されている照射時間だけレーザ光を発光させる。その結果、選択されている照射パターンでプローブ40からレーザ光が照射される。なお、ガルバノミラー32の静止時間は、設定されている照射時間以上の時間であればよいため、静止時間を1つの固定時間とすることも可能である。次いで、発光を終了させる指示が入力されたか否かが判断される(S37)。入力されていなければ(S37:NO)、処理はS33の判断へ戻り、S33〜S37の処理が繰り返される。終了指示が入力されると(S37:YES)、処理はメイン処理(図6参照)へ戻る。
以上説明したように、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、プローブ40が備える複数本のファイバのうち、レーザ光を導光するファイバを切り替えることで、プローブ40の先端から照射されるレーザ光の照射パターンを切り替えることができる。従って、術者は、使用するプローブを術中に取り替えることなく、レーザ光の照射パターンを容易に切り替えて、効率よく治療を行うことができる。さらに、眼科用レーザ治療装置1は、ガルバノミラー32の駆動を制御することで、レーザ光を導光するファイバを切り替える。従って、カプラまたは回折要素を用いる場合とは異なり、多数のバリエーションでレーザ光をファイバに供給することができる。よって、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、プローブ40の先端から照射されるレーザ光の照射位置のバリエーションを容易に増加させることができる。また、眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光源20が発生させたレーザ光を偏向させて照射パターンを変える。従って、照射パターンを変更しても、プローブ40の先端から照射される1または複数のレーザ光の各々の出力は変化しない。よって、レーザ光源20が発生させたレーザ光をカプラ、回折格子等によって分割する場合とは異なり、照射パターンが変更されても治療効果は変化しない。
本実施形態のプローブ接続部33は、複数本のファイバの各々の後端部に位置する入射端を、ガルバノミラー32がレーザ光を走査する平面と同一平面上に並べて配置して、プローブ40を接続する。換言すると、本実施形態では、複数の入射端は、ガルバノミラー32から見て一直線上に配置される。従って、眼科用レーザ治療装置1は、複数本のファイバの後端部が一直線上に配置されていない場合に比べて、レーザ光を変更する部位(本実施形態ではガルバノミラー32)の構成および駆動制御を簡略化しつつ、レーザ光の照射位置のバリエーションを容易に増加させることができる。
本実施形態のプローブ接続部33は、複数本のファイバの入射端を所定の位置に位置決めする位置決め部75を備える。その結果、偏向ユニット30によって偏向されたレーザ光は、位置決め部75によって位置決めされたそれぞれの入射端に確実に入射する。つまり、眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光が目標のファイバに導光されない不具合が生じる可能性を、位置決め部75によって低下させつつ、レーザ光の照射位置のバリエーションを増加させることができる。
プローブ40が備えるファイバの本数、ファイバの径等に応じて、プローブ40のゲージが変化する場合が多い。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、接続されたプローブ40のゲージに応じた適切な動作を行うことで、レーザ光の照射位置のバリエーションを確実に増加させることができる。また、眼科用レーザ治療装置1はキャリブレーションを行うことができる。従って、プローブ接続部33に接続されているプローブ40が交換された場合等でも、眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光源20が発光させたレーザ光を目標のファイバに確実に導光させることができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、様々な変形が可能であることは勿論である。上記実施形態では、プローブ40のゲージに応じてガルバノミラー32の駆動を制御することで、プローブ40が備えるファイバの本数に適した制御を行うことができる。しかし、眼科用レーザ治療装置1は、プローブ40のゲージの情報の代わりに、またはゲージの情報と共に、プローブ40が備えるファイバの本数の情報を直接取得し、ファイバの本数に応じてガルバノミラー32の駆動を制御してもよい。この場合、例えば、眼科用レーザ治療装置1は、タッチパネル12を術者に操作させることで、ファイバの本数の情報を取得する。図8のS27〜S29の処理において、ファイバの本数に応じてガルバノミラー32を駆動する。この場合でも、眼科用レーザ治療装置1は、プローブ40が備えるファイバの本数に応じた適切な制御を行うことができる。
また、眼科用レーザ治療装置1は、複数本のファイバの各々の径をゲージの情報に基づいて判断し、ファイバの径に応じてガルバノミラー32を駆動してもよい。また、眼科用レーザ治療装置1は、プローブ接続部33に接続されたプローブ40の後端の形状等から、接続されたプローブ40のゲージの情報を取得してもよい。
上記実施形態の眼科用レーザ治療装置1では、レーザ光源20を備える本体部10と、レーザ光を偏向させる偏向ユニット30とが別体である。従って、眼科用レーザ治療装置1を製造販売するメーカーは、偏向ユニット30のみを単独で製造販売し、術者が既に所持している本体部10に偏向ユニット30を接続させて使用させることも可能である。この場合、メーカーは、術者が所持している本体部10に、図6に示すメイン処理を実行するためのプログラムを必要に応じてインストールしてもよい。また、レーザ光を偏向させる偏向部(上記実施形態ではガルバノミラー32)を制御するための制御部を、本体部10でなく偏向ユニット30に設けてもよい。この場合、偏向ユニット30が本発明の「眼科用レーザ治療装置」に相当する。本体部10と偏向ユニット30とを別体とせずに一体としてもよいことは言うまでもない。
上記実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、表示部13の表面に設けられたタッチパネル12の操作を受け付けることで、照射パターンの選択指示等の各種指示を受け付ける。しかし、指示を受け付ける方法は適宜変更できる。例えば、外付けの表示部およびタッチパネルを眼科用レーザ治療装置1に接続することも可能である。この場合、制御部24は、外付けのタッチパネルから出力される操作指示を入力することで、上記実施形態と同様の動作を行うことができる。また、当然ながら、各種操作ボタンを備える操作部をタッチパネル12の代わりに用いることも可能である。偏向ユニット30に操作部を設けてもよい。
上記実施形態では、「SINGLE」「MIDDLE」「FULL」のいずれかを術者が選択することで、レーザ光の照射パターンが選択される。しかし、照射パターンの選択方法も適宜変更できる。例えば、プローブ40の先端から照射されるレーザ光の光束の本数を術者に選択させてもよい。
上記実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、ガルバノミラー32を駆動することでレーザ光を偏向(走査)する。しかし、眼科用レーザ治療装置1は、ガルバノミラー32以外の構成を用いてレーザ光を偏向させてもよい。例えば、光を走査させるための他の構成(例えば、ポリゴンミラー等)を用いてもよい。光を走査させる構成の代わりに、超音波によって光を偏向させる構成を採用することも可能である。また、上記実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光を一方向に(一次元で)走査させるため、簡易な構成および制御でレーザ光を偏向させることができる。しかし、レーザ光を二次元で走査させる場合でも、本発明は実現可能である。この場合、眼科用レーザ治療装置1は、照射パターンのバリエーションをさらに容易に増加させることができる。
上記実施形態のプローブ接続部33は、プローブ40が備える複数のファイバが一直線上に位置するようにプローブ40を接続する。従って、眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光を一次元に走査させる簡易な構成および処理で、照射パターンのバリエーションを増加させることができる。しかし、眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光を二次元に走査させる構成を備える場合、複数のファイバを一直線上に配置する必要は無い。また、ファイバの入射端を位置決めするための位置決め部75の構成も変更できる。例えば、多角形のコネクタをプローブ接続部33に採用することで、プローブ接続部33に対する入射端の位置決めを行ってもよい。この場合、コネクタ自体が本発明の位置決め部75に相当する。
上記実施形態のプローブ40では、複数のファイバの入射端の配列と出射端の配列とが異なる。従って、上記実施形態のプローブ40は、レーザ光を偏向させるための構成および制御の簡略化を実現しつつ、様々なパターンで先端からレーザ光を照射することができる。しかし、複数のファイバの入射端の配列と出射端の配列を同一としても、本発明を実現することは可能である。また、上記実施形態のプローブ40は、患者眼5に挿入されて使用されるものである。しかし、本発明は、患者眼5に挿入されないプローブ(例えば、先端部を角膜に接触させた状態で使用されるプローブ)にも適用できる。
なお、上記実施形態のプローブ40は、複数本のファイバを備えたプローブのうち、前記複数本のファイバの後端部が接続されるプローブ接続部と、レーザ光源が発生させたレーザ光を偏向または分割させることが可能な光学手段とを備え、前記プローブ接続部に接続された前記プローブにおける前記複数本のファイバの少なくとも一部に、前記光学手段によって偏向または分割されたレーザ光を導光させることが可能な眼科用レーザ治療装置の前記プローブ接続部に接続される前記プローブであって、前記複数本のファイバのうち、少なくとも前記光学手段によって偏向または分割されたレーザ光が入射する入射端が、一直線上に配置されていることを特徴とするプローブ、と表すこともできる。