以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様〜第4の態様に係る表示装置組立体、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1Aの態様に係る表示装置組立体)
3.実施例2(本発明の第1Bの態様に係る表示装置組立体)
4.実施例3(本発明の第1Cの態様に係る表示装置組立体)
5.実施例4(本発明の第1Dの態様に係る表示装置組立体)
6.実施例5(本発明の第1Eの態様に係る表示装置組立体)
7.実施例6(実施例1〜実施例5の表示装置組立体の変形)
8.実施例7(実施例1〜実施例5の表示装置組立体の別の変形)
9.実施例8(本発明の第2Aの態様に係る表示装置組立体)
10.実施例9(本発明の第3の態様に係る表示装置)
11.実施例10(本発明の第4の態様に係る表示装置)
12.実施例11(実施例1〜実施例10の変形)
13.実施例12(実施例1〜実施例10の別の変形)
14.実施例13(実施例12の変形)
15.実施例14(実施例1〜実施例13の変形)
16.実施例15(実施例14の変形)
17.実施例16(実施例1〜実施例10の別の変形)
18.実施例17(実施例1〜実施例9、実施例11〜実施例16の表示装置組立体の変形)
19.実施例18(実施例1〜実施例9、実施例11〜実施例16の表示装置組立体の変形)、その他
[本発明の第1の態様〜第4の態様に係る表示装置組立体、全般に関する説明]
本発明の第1の態様に係る表示装置組立体にあっては、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御することで、輻輳角を変更する形態とすることができる。尚、係る形態を、便宜上、『本発明の第1Aの態様に係る表示装置組立体』と呼ぶ。
また、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御することで、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の左右への移動、上下への移動、及び、回転移動の任意の組合せを達成する形態とすることができる。画像のこれらの移動にあっては、例えば、光学装置に非表示領域を確保し、その部分を画像の移動用に割り当てればよい。このように、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置の相互の光学的な位置を調整する場合、具体的には、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、所望の虚像距離あるいは虚像位置で一致するように、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御すればよい。より具体的には、観察者が表示装置を装着し、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、所望の虚像距離あるいは虚像位置で一致するように、元々の画像信号に表示位置補正信号を加えればよい。そして、係る表示位置補正信号を表示装置(具体的には、表示装置に備えられた制御装置)に記憶させればよい。このような構成を採用することで、光学装置において表示される画像の位置を調整することが可能となり、観察者が外界の像に画像を重畳して見るとき、注視する外界の実像と画像の表示位置が大きく離れることが無くなり、より一層容易に画像を視認することが可能となる。
あるいは又、本発明の第1の態様に係る表示装置組立体において、少なくとも一方の画像表示装置(即ち、右眼用の画像表示装置、あるいは、左眼用の画像表示装置、あるいは、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置。以下においても同様)は、画像形成装置の光軸と光学系の光軸とを水平方向に相対的に移動させる移動装置を更に備えており、移動装置によって画像形成装置の光軸と光学系の光軸とを水平方向に相対的に移動させることで、輻輳角(水平面における主光線交差角。以下においても同じ)を変更する形態とすることができる。尚、係る形態を、便宜上、『本発明の第1Bの態様に係る表示装置組立体』と呼ぶ。
あるいは又、本発明の第1の態様に係る表示装置組立体において、少なくとも一方の画像表示装置は、画像形成装置及び光学系を回動させる回動装置を更に備えており、回動装置によって画像形成装置及び光学系を回動させることで、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対する入射角を変更し、以て、輻輳角を変更する形態とすることができる。尚、係る形態を、便宜上、『本発明の第1Cの態様に係る表示装置組立体』と呼ぶ。
あるいは又、本発明の第1の態様に係る表示装置組立体において、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学系は液体レンズを備えており、液体レンズの作動によって輻輳角を変更する形態とすることができる。尚、係る形態を、便宜上、『本発明の第1Dの態様に係る表示装置組立体』と呼ぶ。
あるいは又、本発明の第1の態様に係る表示装置組立体において、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学系は液体プリズムを備えており、液体プリズムの作動によって輻輳角を変更する形態とすることができる。尚、係る形態を、便宜上、『本発明の第1Eの態様に係る表示装置組立体』と呼ぶ。
本発明の第2の態様に係る表示装置組立体において、画像表示装置を構成する光学系は液体レンズを備えており、液体レンズの作動によって、光学系の焦点距離を変更を変更する形態とすることができる。尚、係る形態を、便宜上、『本発明の第2Aの態様に係る表示装置組立体』と呼ぶ。
以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る表示装置組立体において、速度測定装置は、全地球測位システム(カーナビゲーションシステムを含む)、及び、全地球測位システムからのデータに基づき移動速度を求める演算装置から成る構成とすることができる。尚、全地球測位システム及び演算装置は、周知の全地球測位システム及び演算装置とすることができる。あるいは又、以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る表示装置組立体において、速度測定装置は、速度・加速度センサ、及び、速度・加速度センサからのデータに基づき移動速度を求める演算装置から成る構成とすることができる。尚、速度・加速度センサ及び演算装置は、周知の速度・加速度センサ及び演算装置とすることができる。あるいは又、以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る表示装置組立体において、速度測定装置は、車輪の回転数検出装置、及び、回転数検出装置からのデータに基づき移動速度を求める演算装置から成る構成とすることができる。尚、回転数検出装置及び演算装置は、周知の回転数検出装置及び演算装置とすることができる。
以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第4の態様に係る表示装置組立体において、加速度測定装置は、全地球測位システム(カーナビゲーションシステムを含む)、及び、全地球測位システムからのデータに基づき加速度を求める演算装置から成る構成とすることができる。尚、全地球測位システム及び演算装置は、周知の全地球測位システム及び演算装置とすることができる。あるいは又、加速度測定装置は、加速度センサ、及び、加速度センサからのデータに基づき加速度を求める演算装置から成る構成とすることができる。尚、加速度センサ及び演算装置は、周知の速度・加速度センサ及び演算装置とすることができる。あるいは又、加速度測定装置は、車輪の回転数検出装置、及び、回転数検出装置からのデータに基づき加速度を求める演算装置から成る構成とすることができる。尚、回転数検出装置及び演算装置は、周知の回転数検出装置及び演算装置とすることができる。
以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第4の態様に係る表示装置組立体において、光学装置は半透過型(シースルー型)である形態とすることができる。具体的には、少なくとも観察者の両眼に対向する光学装置の部分を半透過(シースルー)とし、これらの光学装置の部分を通して外景を眺めることができることが望ましい。
以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る表示装置組立体と、以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る表示装置組立体と、以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第3の態様に係る表示装置組立体と、以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第4の態様に係る表示装置組立体とを、適宜、組み合わせることができる。尚、組合せは15通りである。
以上の各種の好ましい形態、組合せを含む本発明の第1の態様〜第4の態様に係る表示装置組立体(以下、これらを総称して、単に『本発明の表示装置組立体』と呼ぶ)において、速度測定装置や加速度測定装置、それ自体は、周知の速度測定装置、加速度測定装置、あるいは、速度・加速度測定装置とすることができる。また、以上の各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様〜第4の態様に係る表示装置組立体において、画像表示装置は、右眼用の画像表示装置としてもよいし、あるいは、左眼用の画像表示装置としてもよいし、あるいは、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置としてもよい。速度測定装置や加速度測定装置は、表示装置と別個に設けられていてもよいし、表示装置と一体に設けられていてもよい。
そして、本発明の第1の態様に係る表示装置組立体にあっては、速度測定装置によって測定された表示装置の移動速度に基づき、輻輳角を変更するが、具体的には、表示装置の移動速度が早い程、輻輳角を小さくし、表示装置の移動速度が遅い程、輻輳角を大きくすればよい。
また、本発明の第2の態様に係る表示装置組立体にあっては、速度測定装置によって測定された表示装置の移動速度に基づき、光学系の焦点距離を変更し、以て、画像表示装置によって表示される虚像距離を変更するが、具体的には、表示装置の移動速度が早い程、虚像距離を長くし、表示装置の移動速度が遅い程、虚像距離を短くすればよい。
また、本発明の第4の態様に係る表示装置組立体にあっては、加速度測定装置によって測定された表示装置の移動時の加速度の絶対値が、所定の値以上になったとき、画像表示装置の作動を停止するが、具体的には、例えば、所定の値として、2m/s2乃至10m/s2を挙げることができる。
本発明の表示装置組立体にあっては、画像の内容として、文字、記号、符号、印、標章、図案、図形、地図、海図、表示装置(移動手段)の移動速度や加速度に関する情報、移動手段に関する種々の情報といった、特にナビゲーション用途に適した画像内容を挙げることができる。
本発明の表示装置組立体は、ヘリコプターや飛行機、軽飛行機、グライダーといった各種の航空機、自動車や電車、汽車、オートバイ、自動二輪車、自転車といった各種の車輌、船舶を含む種々の移動手段や移動機関に観察者(操縦者、運転者、搭乗者等)が搭乗した状態で使用される。
画像形成装置において画像を生成するために用いられる画像信号は、表示装置組立体に備えられた制御装置に記憶されている形態とすることができる。場合によっては、画像信号は、ブルートゥースやWiFiを含む無線、有線等、適切な手段によって、移動手段から表示装置組立体に送られてくる形態とすることもできる。そして、画像信号に対して、画像表示のための処理が制御装置においてなされる。演算装置からの移動速度あるいは加速度を含む種々の情報・データは、有線又は無線によって制御装置に送られ、制御装置において、移動速度あるいは加速度を含む種々の情報・データに対する処理が行われる。制御装置(制御手段、制御回路)は、周知の回路から構成すればよい。また、以下に例示する種々のデータは、制御装置に備えられた記憶手段に記憶しておけばよい。尚、移動手段の種類、機種等に依存して、以下に例示する種々のデータを変更してもよいし、移動手段の種類、機種等に依存した以下に例示する種々のデータのそれぞれを、記憶手段に記憶させてもよい。記憶手段それ自体も周知の記憶手段、例えば、メモリカードとすればよい。画像の表示位置は、実空間における実像を眺めたときに邪魔にならない位置とすればよい。
表示装置の移動速度と輻輳角の関係
輻輳角を変更するための画像形成装置への画像信号の制御
表示装置の移動速度と移動装置における移動量の関係
表示装置の移動速度と回動装置における回動量の関係
表示装置の移動速度と液体レンズの作動状態の関係
表示装置の移動速度と液体プリズムの作動状態の関係
表示装置の移動速度と虚像距離の関係
表示装置の移動速度と画像の大きさの関係
表示装置の移動速度と画像の輝度の関係
表示装置の移動速度と画像の解像度の関係
表示装置の移動速度と画像の内容の関係
加速度の所定の値
あるいは又、以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本発明の表示装置組立体においては、
表示装置に備えられた制御装置は記憶手段を有し、この記憶手段には、画像を表示するための複数の画像信号から構成されたデータ群が記憶されており、
各画像信号は、表示サイズが異なる複数の異サイズ・表示データから構成されており、
制御装置において、表示装置の移動速度と画像の大きさの関係に基づき、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、該1つの異サイズ・表示データに基づく画像を表示装置において表示する構成とすることもできる。このような構成の表示装置組立体にあっては、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異サイズ・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示するので、視点が集中する実像(観察対象物)の目視される大きさと画像の大きさとの間に不釣り合いが生じ難い。
あるいは又、以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本発明の表示装置組立体においては、
表示装置に備えられた制御装置は記憶手段を有し、この記憶手段には、画像を表示するための複数の画像信号(例えば、文字データ)から構成されたデータ群が記憶されており、
各画像信号は、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
制御装置において、指定あるいは選択に基づき、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、該1つの異言語・表示データに基づく画像を表示装置において表示する構成とすることもできる。どのような言語を表示言語として指定あるいは選択するかの方法として、例えば、制御装置にボタンやスイッチを設け、手動にて表示言語として指定、選択する方法を挙げることができる。このような構成の表示装置組立体にあっては、制御装置において、画像信号の内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示するので、観察者の使用する言語での画像表示を容易に行うことができる。
ここで、画像信号を構成する画像データのフォーマットは、使用する表示装置やシステムに依存して、適宜、選択すればよく、例えば、文字列から成るテキストデータとすることもできるし、画像化されたデータとすることもできる。データ群の数は本質的に任意であるし、データ群を構成するデータの数、表示データの数も本質的に任意である。表示データのデータ構造として、例えば、文字列から成るテキストデータとすることもできるし、文字列を画像とした画像データとすることもできる。表示サイズが異なる表示データとして、フォントサイズの異なる文字列から成るテキストデータとすることもできるし、フォントサイズの異なる文字列を画像とした画像データとすることもできる。表示データにおける表示言語は、本質的には任意である。表示データに所定の信号処理を施すことで、画像信号を得ることができる。
尚、以上に説明した種々の表示装置組立体を、適宜、組み合わせることもできる。
本発明の表示装置組立体にあっては、受光センサーを更に備えており、受光センサーによって得られた環境(表示装置組立体の置かれた雰囲気)の輝度情報に基づき、光学装置において表示すべき画像の輝度を制御する形態とすることもできる。具体的には、受光センサーとして、具体的には、フォトダイオードや、上述したカメラや撮像装置に備えられた露出測定用の受光素子を挙げることができる。
以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本発明の表示装置組立体を構成する画像表示装置(以下、単に、『本発明における画像表示装置』と呼ぶ)において、光学装置は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板、
(b)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(c)導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるために、導光板の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
を備えている構成とすることができる。尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。以下においても同様である。
画像形成装置の中心から出射され、光学系の画像形成装置側節点を通過した光線を『中心光線』と呼び、中心光線の内、光学装置に垂直に入射するものを『中心入射光線』と呼ぶ。そして、中心入射光線が光学装置に入射する点を光学装置中心点とし、光学装置中心点を通過し、光学装置の軸線方向と平行な軸線をX軸、光学装置中心点を通過し、光学装置の法線と一致する軸線をY軸とする。本発明の表示装置組立体の画像形成装置における水平方向とは、X軸と平行な方向であり、以下、『X軸方向』と呼ぶ場合もある。ここで、光学系は、画像形成装置と光学装置との間に配置され、画像形成装置から出射された光を平行光とする。そして、光学系にて平行光とされた光束が、光学装置に入射され、導光され、出射される。また、第1偏向手段の中心点を、『光学装置中心点』とする。
本発明における画像表示装置においては、限定するものではないが、中心光線は、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる構成とすることができ、これによって、画像表示装置を眼鏡型のフレームの取付部に取り付けるときの画像表示装置の取付け角度に対する制限が少なくなり、高いデザイン自由度を得ることができる。XY平面が水平面と一致すると仮定したとき、中心光線がXY平面と交わる角度θは仰角である構成とすることができる。即ち、XY平面の下側から中心光線がXY平面に向い、XY平面と衝突する構成とすることができる。そして、この場合、XY平面は垂直面と0度以外の角度で交わることが好ましく、更には、XY平面は垂直面と角度θ’で交わることが好ましい。尚、θ’の最大値として、限定するものではないが、5度を挙げることができる。ここで、水平面とは、観察者が、水平な方向に位置する対象物(例えば、無限遠方の対象物、地平線や水平線)を眺めたときの視線(『観察者の水平方向視線』)が含まれ、且つ、水平に位置する観察者の2つの瞳が含まれる平面である。また、垂直面は、この水平面に対して垂直な平面である。あるいは又、観察者が、水平な方向に位置する対象物(例えば、無限遠方の対象物、地平線や水平線)を眺めたとき、光学装置から出射され、観察者の瞳に入射する中心光線は俯角をなす形態とすることができる。水平面に対する係る俯角として、例えば、5度乃至45度を例示することができる。
ここで、第1偏向手段は、導光板に入射された光を反射し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段は反射鏡として機能し、第2偏向手段は半透過鏡として機能する構成とすることができる。
このような構成において、第1偏向手段は、例えば、合金を含む金属から構成され、導光板に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。また、第2偏向手段は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。そして、第1偏向手段や第2偏向手段は、導光板の内部に配設されている(導光板の内部に組み込まれている)が、第1偏向手段においては、導光板に入射された平行光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された平行光が反射又は回折される。一方、第2偏向手段においては、導光板の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射又は回折され、導光板から平行光の状態で出射される。
あるいは又、第1偏向手段は、導光板に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段は回折格子素子から成る形態とすることができ、更には、回折格子素子は、反射型回折格子素子から成り、あるいは又、透過型回折格子素子から成り、あるいは又、一方の回折格子素子は反射型回折格子素子から成り、他方の回折格子素子は透過型回折格子素子から成る構成とすることができる。尚、反射型回折格子素子として、反射型体積ホログラム回折格子を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材』と呼ぶ場合がある。
本発明における表示装置組立体によって、単色(例えば、緑色)の画像表示を行うことができるが、カラーの画像表示を行う場合、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、異なるP種類(例えば、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。各回折格子層には1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されている。あるいは又、異なるP種類の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応するために、1層の回折格子層から成る第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材にP種類の干渉縞が形成されている構成とすることもできる。あるいは又、画角を例えば三等分して、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、各画角に対応する回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。そして、これらの構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。
第1回折格子部材及び第2回折格子部材を構成する材料として、フォトポリマー材料を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材の構成材料や基本的な構造は、従来の反射型体積ホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材及び第2回折格子部材を、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。
あるいは又、本発明における画像表示装置において、光学装置は、画像形成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射される半透過ミラーから構成されている形態とすることができる。尚、画像形成装置から出射された光は、空気中を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよいし、例えば、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材(具体的には、後述する導光板を構成する材料と同様の材料から成る部材)の内部を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよい。尚、半透過ミラーを、この透明な部材を介して画像形成装置に取り付けてもよいし、半透過ミラーを、この透明な部材とは別の部材を介して画像形成装置に取り付けてもよい。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における画像表示装置において、画像形成装置は、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第1の構成の画像形成装置』と呼ぶ。
第1の構成の画像形成装置として、例えば、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;透過型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、発光ダイオード(LED)等の発光素子から構成された画像形成装置を挙げることができるが、中でも、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置とすることが好ましい。空間光変調装置として、ライト・バルブ、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の透過型あるいは反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を挙げることができ、光源として発光素子を挙げることができる。更には、反射型空間光変調装置は、液晶表示装置、及び、光源からの光の一部を反射して液晶表示装置へと導き、且つ、液晶表示装置によって反射された光の一部を通過させて光学系へと導く偏光ビームスプリッターから成る構成とすることができる。光源を構成する発光素子として、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明における画像表示装置において、画像形成装置は、光源、及び、光源から出射された平行光を走査する走査手段を備えた形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第2の構成の画像形成装置』と呼ぶ。
第2の構成の画像形成装置における光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。第2の構成の画像形成装置における画素(仮想の画素)の数も、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。また、カラーの画像表示を行う場合であって、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。走査手段として、光源から出射された光を水平走査及び垂直走査する、例えば、二次元方向に回転可能なマイクロミラーを有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やガルバノ・ミラーを挙げることができる。
第1の構成の画像形成装置あるいは第2の構成の画像形成装置において、光学系(出射光を平行光とする光学系であり、『平行光出射光学系』と呼ぶ場合があり、具体的には、例えば、コリメート光学系やリレー光学系)にて複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1偏向手段と第2偏向手段を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。尚、複数の平行光を生成させるためには、具体的には、例えば、平行光出射光学系における焦点距離の所(位置)に、例えば、画像形成装置の光出射部を位置させればよい。平行光出射光学系は、画素の位置情報を光学装置の光学系における角度情報に変換する機能を有する。本発明の表示装置組立体において、平行光出射光学系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。平行光出射光学系と導光板との間には、平行光出射光学系から不所望の光が出射されて導光板に入射しないように、開口部を有する遮光部材を配置してもよい。
導光板は、導光板の軸線(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有している。光が入射する導光板の面を導光板入射面、光が出射する導光板の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。導光板を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。
速度測定装置によって測定された表示装置の移動速度に基づき、本発明の第1の態様に係る表示装置組立体においては輻輳角を変更し、本発明の第2の態様に係る表示装置組立体においては光学系の焦点距離を変更し、以て、画像表示装置によって表示される虚像距離を変更し、本発明の第3の態様に係る表示装置組立体においては光学装置に表示される画像の大きさ、画像の輝度、画像の解像度、及び、画像の内容の内、少なくとも1つを変更し、本発明の第4の態様に係る表示装置組立体においては、加速度測定装置によって測定された加速度に基づき画像表示装置の作動を停止するが、これらの作動は制御装置からの制御信号によって制御すればよい。
本発明の第1Aの態様に係る表示装置組立体においては、制御回路によって、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御し、画像形成装置における画像形成位置を制御することで、具体的には、画像形成装置における画像形成位置を水平方向(X軸方向)に移動させることで、輻輳角を変更することができる。
本発明の第1Bの態様に係る表示装置組立体においては、移動装置によって画像形成装置の光軸と光学系の光軸とを水平方向(X軸方向)に相対的に移動させるが、具体的には、一方の画像表示装置における画像形成装置の光軸と光学系の光軸との位置関係を固定したまま、他方の画像表示装置における画像形成装置の光軸と光学系の光軸の位置を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる形態を挙げることができる。あるいは又、両方の画像表示装置のそれぞれにおける画像形成装置の光軸と光学系の光軸の位置を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる形態を挙げることができる。このような形態にあっては、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対する入射角(中心光線とYZ平面の成す角度であり、以下、『YZ平面・入射角』と呼ぶ)に変化が生じる。そして、このような形態にあっては、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を、例えばラックギア部から構成された移動用ガイド部に載置し、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を、モータ及びピニオンギアによって移動用ガイド部上を移動させる方式を採用すればよいし、あるいは、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を移動用ガイド部に載置し、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を、圧電素子や超音波モータによって移動用ガイド部上を移動させる方式を採用すればよい。
本発明の第1Cの態様に係る表示装置組立体においては、回動装置によって画像形成装置及び光学系を回動させるが、具体的には、2つの画像表示装置のそれぞれにおける画像形成装置の光軸と光学系の光軸との位置関係を固定したまま、少なくとも一方の画像表示装置を、Z軸を回動軸として、圧電素子やモータ、超音波モータを作動させることで、回動させればよい。このような形態にあっても、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。
本発明の第1Dの態様に係る表示装置組立体においては液体レンズを作動させるが、光学系を構成する係る液体レンズは、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体レンズから構成すればよい。液体レンズの作動によって、光学系の光軸とY軸との関係を一定に保持したまま、光学系の光軸を水平方向(X軸方向)に移動させることができるし、あるいは又、YZ平面に対する光学系の光軸の角度を変更することができる。このような形態にあっても、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。
本発明の第1Eの態様に係る表示装置組立体においては液体プリズムを作動させるが、光学系の一部を構成する係る液体プリズムは、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体プリズムから構成すればよい。液体プリズムの作動によって、YZ平面に対する光学系の光軸の角度を変更することができる。このような形態にあっても、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。
本発明の表示装置組立体において、フレームは、観察者の正面に配置されるフロント部と、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部とから成る構成とすることができる。尚、各テンプル部の先端部にはモダン部が取り付けられている。画像表示装置はフレームに取り付けられているが、具体的には、例えば、画像形成装置をテンプル部に取り付ければよい。
更には、本発明の表示装置組立体において、ノーズパッドが取り付けられている構成とすることができる。即ち、本発明の表示装置組立体における表示装置の全体を眺めたとき、フレーム及びノーズパッドの組立体は、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。尚、リム部は、有っても、無くともよい。フレームを構成する材料は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から構成することができる。ノーズパッドも周知の構成、構造とすることができる。
必要に応じて、フロント部の中央部分に撮像装置が取り付けられている形態とすることができる。撮像装置は、具体的には、例えば、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズから構成されている。撮像装置からの配線は、例えば、フロント部を介して、一方の画像表示装置(あるいは画像形成装置)に接続すればよく、更には、画像表示装置(あるいは画像形成装置)から延びる配線に含ませればよい。
本発明の表示装置組立体における表示装置にあっては、デザイン上、あるいは、装着の容易性といった観点から、2つの画像形成装置からの配線(信号線や電源線等)が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部から外部に延び、制御装置(制御手段、制御回路)に接続されている形態とすることが望ましい。更には、各画像形成装置はヘッドホン部を備えており、各画像形成装置からのヘッドホン部用配線が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部からヘッドホン部へと延びている形態とすることもできる。ヘッドホン部として、例えば、インナーイヤー型のヘッドホン部、カナル型のヘッドホン部を挙げることができる。ヘッドホン部用配線は、より具体的には、モダン部の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部へと延びている形態とすることが好ましい。
実施例1は、本発明の第1の態様、具体的には、本発明の第1Aの態様に係る表示装置組立体に関する。実施例1の表示装置における画像表示装置の概念図を図1に示すが、実施例1の表示装置は、頭部装着型ディスプレイ(HMD)から構成されている。また、実施例1の表示装置において、画像表示装置を構成する導光板における光の伝播を模式的に図2に示し、表示装置を上方から眺めた模式図を図3に示し、横から眺めた模式図を図4に示す。更には、実施例1の表示装置を正面から眺めた模式図を図5に示し、実施例1の表示装置を観察者の頭部に装着した状態を上方から眺めた図(但し、画像表示装置のみを示し、フレームの図示は省略)を図6に示し、実施例1における画像信号の一例を図7の(A)に示す。尚、図2において、画像形成装置の光軸と光学系の光軸を水平方向(X軸方向)に移動させる前の中心光線を実線で示し、移動させた後の中心光線を点線で示す。また、図3にのみ、速度測定装置31及び加速度測定装置32を図示した。
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例16の表示装置組立体は、
表示装置、並びに、
表示装置の移動速度(以下、単に『移動速度』と呼ぶ場合がある)を測定する速度測定装置31、
を備えている。
そして、表示装置は、
(イ)観察者(操縦者、運転者、搭乗者等)20の頭部に装着される眼鏡型のフレーム10、並びに、
(ロ)フレーム10に取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500、
を備えている。即ち、表示装置は画像表示装置を2つ備えた両眼型である。更には、各画像表示装置100,200,300,400,500は、
(A)画像形成装置111,211、
(B)画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、並びに、
(C)光学系112,254から出射された光が入射され、導光され、出射される光学装置(導光手段)120,320,520、
を備えている。尚、画像表示装置100,200,300,400,500は、フレームに、固定して取り付けられていてもよいし、着脱自在に取り付けられていてもよい。ここで、光学系112,254は、画像形成装置111,211と光学装置120,320,520との間に配置されている。そして、光学系112,254にて平行光とされた光束が、光学装置120,320,520に入射され、導光され、出射される。画像形成装置111,211は、単色(例えば、緑色)の画像を表示する。また、光学装置120,320,520は半透過型(シースルー型)である。具体的には、少なくとも観察者20の両眼に対向する光学装置の部分(より具体的には、後述する導光板121,321及び第2偏向手段140,340)は、半透過(シースルー)である。
尚、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例16において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した光線(中心光線CL)の内、光学装置120,320に垂直に入射する中心入射光線が光学装置120,320,520に入射する点を光学装置中心点Oとし、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320,520の軸線方向と平行な軸線をX軸、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320,520の法線と一致する軸線をY軸とする。尚、次に述べる第1偏向手段130,330の中心点が、光学装置中心点Oである。
そして、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例15の光学装置120,320は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板121,321、
(b)導光板121,321に入射された光が導光板121,321の内部で全反射されるように、導光板121,321に入射された光を偏向させる第1偏向手段130,330、及び、
(c)導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を導光板121,321から出射させるために、導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段140,340、
を備えている。
ここで、実施例1において、第1偏向手段130及び第2偏向手段140は導光板121の内部に配設されている。そして、第1偏向手段130は、導光板121に入射された光を反射し、第2偏向手段140は、導光板121の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段130は反射鏡として機能し、第2偏向手段140は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板121の内部に設けられた第1偏向手段130は、アルミニウム(Al)から成り、導光板121に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板121の内部に設けられた第2偏向手段140は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO2膜から構成されている。誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体に関しては、特表2005−521099に開示されている。図面においては6層の誘電体積層膜を図示しているが、これに限定するものではない。誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板121を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。尚、第1偏向手段130においては、導光板121に入射された平行光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段140においては、導光板121の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板121から平行光の状態で、観察者20の瞳21に向かって出射される。
第1偏向手段130は、導光板121の第1偏向手段130を設ける部分124を切り出すことで、導光板121に第1偏向手段130を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板121の切り出した部分124を第1偏向手段130に接着すればよい。また、第2偏向手段140は、導光板121を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板121の第2偏向手段140を設ける部分125を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板121の内部に第1偏向手段130及び第2偏向手段140が設けられた光学装置120を得ることができる。
ここで、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例15において、光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板121,321は、導光板121,321の内部全反射による光伝播方向(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,322及び第2面123,323)を有している。第1面122,322と第2面123,323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122,322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122,322から出射される。但し、これに限定するものではなく、第2面123,323によって光入射面が構成され、第1面122,322によって光出射面が構成されていてもよい。
実施例1あるいは後述する実施例11において、画像形成装置111は、第1の構成の画像形成装置であり、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する。具体的には、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。各画像形成装置111全体は、筐体113(図1あるいは図20では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体113には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介して光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112から光が出射される。反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させて光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。ここで、液晶表示装置151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置151から出射され、偏光ビームスプリッター152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター152を通過し、光学系112へと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、光源153に戻される。光学系112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、光学系112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置111(より具体的には、液晶表示装置151)が配置されている。
フレーム10は、観察者20の正面に配置されるフロント部11と、フロント部11の両端に蝶番12を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部13と、各テンプル部13の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)14から成る。また、ノーズパッド10’が取り付けられている。即ち、フレーム10及びノーズパッド10’の組立体は、基本的には、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。更には、各筐体113が、取付け部材19によってテンプル部13に取り付けられている。フレーム10は、金属又はプラスチックから作製されている。尚、各筐体113は、取付け部材19によってテンプル部13に着脱自在に取り付けられていてもよい。また、眼鏡を所有し、装着している観察者に対しては、観察者の所有する眼鏡のフレームのテンプル部に、各筐体113を取付け部材19によって着脱自在に取り付けてもよい。
更には、画像形成装置111A,111Bから延びる配線(信号線や電源線等)15が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路、制御手段)18に接続されている。また、各画像形成装置111A,111Bはヘッドホン部16を備えており、各画像形成装置111A,111Bから延びるヘッドホン部用配線16’が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部からヘッドホン部16へと延びている。ヘッドホン部用配線16’は、より具体的には、モダン部14の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部16へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部16やヘッドホン部用配線16’が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした表示装置とすることができる。
また、フロント部11の中央部分11’には、必要に応じて、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズ(これらは図示せず)とから構成された撮像装置17が、適切な取付部材(図示せず)によって取り付けられている。撮像装置17からの信号は、撮像装置17から延びる配線(図示せず)を介して、画像形成装置111Aに送出される。
図7の(A)に示すように、画像信号は、例えば、コマンド開始フラグである「SYNC」、コマンド種別特定IDである「MSG_ID」、コマンド全体の長さを示すデータ「LENG」、画像の水平方向表示開始位置を示すデータ「POS_X」、画像の垂直方向表示開始位置を示すデータ「POS_Y」、表示すべき画像のデータ「DATA」、及び、コマンドエラーチェック「FCS」から構成されている。
配線(信号線や電源線等)15は、上述したとおり、制御装置(制御回路)18に接続されている。制御装置18に備えられた記憶手段から画像信号が読み出される。そして、制御装置18において、画像信号に対して画像表示のための処理が行われ、データ「DATA」に基づき、画像形成装置111,211において画像を生成する。この画像は、光学系112,254、光学装置120,320,520を介して、最終的に、表示装置を装着した観察者20の両眼に到達する。制御装置18は周知の回路から構成することができる。画像の内容として、文字、記号、符号、印、標章、図案、図形、地図、海図、表示装置(移動手段)の移動速度や加速度に関する情報、移動手段に関する種々の情報といった、特にナビゲーション用途に適した画像内容を挙げることができる。
実施例1にあっては、表示装置組立体を装着した観察者(操縦者、運転者、搭乗者等)は、自動車といった移動手段(移動機関)に搭乗しているとする。そして、実施例1の表示装置組立体にあっては、速度測定装置31によって測定された表示装置の移動速度に基づき、輻輳角を変更する。ここで、速度測定装置31は、全地球測位システム(GPS)、及び、全地球測位システム(GPS)からのデータに基づき移動速度を求める演算装置から成る。尚、全地球測位システム(GPS)及び演算装置は、周知の全地球測位システム及び演算装置とすることができる。
具体的には、GPSにより一定時間間隔Δtおきに、移動手段(あるいは表示装置)の位置を計測する。そして、この位置データを演算装置に送ることで、一定時間間隔Δtの間の移動距離ΔDを演算装置において求める。従って、一定時間間隔Δt毎に、その間の移動速度v=ΔD/Δtを、演算装置において求めることができる。
そして、移動速度vあるいは平均移動速度vaveという移動速度情報が、制御装置18に有線又は無線にて送出され、制御装置18の制御下、移動速度vあるいは平均移動速度vaveという移動速度情報に基づき、輻輳角θaoVを変更する。即ち、実施例1にあっては、少なくとも一方の(具体的には、右眼用及び左眼用の2つの)画像表示装置100,200,300,400,500を構成する画像形成装置111,211への画像信号を制御することで、輻輳角θaoVを変更する。より具体的には、移動速度vあるいは平均移動速度vaveという移動速度情報に基づき、画像信号による画像の水平方向の位置を+k画素分あるいは−k画素分、変える信号(輻輳角制御信号)を制御装置18において記憶手段から読み出せばよい。画像の水平方向の位置を1画素、変化させると、輻輳角θaoVがどの程度、変化し、あるいは又、虚像距離がどの程度、変化するかを、予め、調べておき、制御装置18の記憶手段にこれらの関係を記憶しておけばよい。そして、このように、移動速度情報によって、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像を移動させることで、虚像を所望の位置に配することができる。即ち、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される2つの画像の水平方向の距離(間隔)を変更することで、移動速度vあるいは平均移動速度vaveの値に依存して、輻輳角θaoVの変更を行うことができる。
制御装置18に備えられた記憶手段に、予め、表示装置の移動速度と輻輳角の関係、輻輳角を変更するための画像形成装置への画像信号の制御等を記憶しておく。具体的には、例えば、移動速度vあるいは平均移動速度vaveの値と、輻輳角θaoV、虚像距離Lviとの関係や、上述したk,−kの値との関係を、記憶手段に予め記憶しておく。移動速度vあるいは平均移動速度vaveの値が大きい場合には、虚像距離Lviは長く、輻輳角θaoVの値は小さくなるように(即ち、観察者の眼のピント調整と輻輳調整が、比較的遠方の対象物を見ている場合に相当するように)、変更される。このとき、調整と輻輳の矛盾による観察者の眼性疲労を誘発しないよう、虚像距離Lviと輻輳角(水平面における主光線交差角)θaoVは、以下の式を満たすことが好ましい。
Lvi×tan(θaoV/2)=PD/2
ここで、左右の瞳間距離PD(単位:mm)は、例えば、
56≦PD≦74
を満足する。但し、θaoVの値が0である場合、Lviの値は無限大である。但し、表示装置の移動速度に応じて虚像距離Lviと輻輳角θaoVとが独立して算出される訳ではなく、どちらか一方の対応関係のみが規定されることで、他方は自動的に決定される。
図7の(B)に基づき、移動速度に対応した輻輳角の変更の説明を行う。ここで、画像表示装置によって表示される画像信号に基づく画像の虚像距離Lviにおける輻輳角を『α』とする。また、『γ』を、虚像距離Lviから『c』だけ遠ざかった場合の画像における輻輳角とし、『β』を、虚像距離Lviから『b』だけ近づいた場合の画像における輻輳角とする。ここで、仮に、
PD=61.5mm
Lvi=4000mm
とすると、
α=53分(53’)
となる。
画像形成装置111,211における1画素を、3分(3’)と定義する。ここで、画像形成装置111,211及び光学系112,254を水平方向(X軸方向)に1画素分、内側にずらしたとすると、
β=56分(56’)
となり、
b=225mm
となる。一方、画像形成装置111,211及び光学系112,254を水平方向に1画素分、外側にずらしたとすると、
γ=50分(50’)
となり、
c=228mm
となる。また、
Lvi=8000mm
とした場合は、1画素分、画像をシフトさせると、虚像距離を約1m、シフトさせることができる。
具体的には、例えば、自動車の移動速度が、例えば、30km/時以上の場合、虚像距離が5m以上となるように輻輳角を設定すればよい。そして、自動車の移動速度が、例えば、30km/時未満となったとき、虚像距離が4mとなるように輻輳角を設定すればよい。
このように、画像表示位置を所定の位置から水平方向に所望の画素分、ずらすことで、輻輳角の変更を行うことができる。云い換えれば、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500を構成する画像形成装置111A,111Bへの画像信号を、移動速度(移動速度情報)に基づく輻輳角制御信号によって制御することで、移動速度に対応した輻輳角の変更を行うことができる。そして、その結果、注視点まで距離(視点距離)と、画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とを等しくすることができ、あるいは又、出来るだけ等しくすることができ、実空間を眺める観察者20が、左程、焦点を変更、変化させること無く、自然に画像表示装置によって表示される画像を、目の前の実風景と融合して眺めることができ、視認性を高めた、特にナビゲーション用途で用いるのに適した表示装置組立体を提供することができる。
更には、受光センサーを備えており、受光センサーによって得られた環境(表示装置の置かれた雰囲気)の輝度情報に基づき、光学装置において表示すべき画像の輝度を制御する構成とすることができる。受光センサーとして、具体的には、フォトダイオードや、撮像装置17に備えられた露出測定用の受光素子を挙げることができる。
尚、速度測定装置31を、周知の速度・加速度センサ、及び、速度・加速度センサからのデータに基づき移動速度を求める周知の演算装置から成る構成とすることもでき、あるいは又、速度測定装置31は、周知の車輪の回転数検出装置、及び、回転数検出装置からのデータに基づき移動速度を求める周知の演算装置から成る構成とすることもできる。
実施例1の表示装置組立体において、画像信号として、表示すべき画像に関する輝度データや色度データを含めれば、画像が背景に依存して視認し難くなることを確実に防止することができる。尚、輝度データとして、画像表示装置を通して眺めた実空間の領域の輝度に対応した輝度データを例示することができる。また、色度データとして、画像表示装置を通して眺めた実空間の領域の色度に対応した色度データとすることができる。特に、半透過型(シースルー型)の光学装置越しに見る目の前の実像の明るさと、光学装置に表示される画像の明るさや色のバランスが一定の範囲にないと、目の前の実像及び画像(虚像)を同時に良好に観察することが困難となる場合があるが、表示すべき画像の明るさや色を目の前の実像に合わせることができ、画像を良好に視認することができる。即ち、観察者が画像が、目の前の実像に依存して視認し難くなることを確実に防止することが可能である。
実施例2は、実施例1の変形であり、本発明の第1Bの態様に係る表示装置組立体に関する。実施例2の表示装置組立体にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(具体的には、実施例2にあっては、移動速度に基づき、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500)は、画像形成装置111(111A,111B),211の光軸と光学系112,254の光軸とを水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる移動装置40を更に備えており、移動装置40によって画像形成装置111(111A,111B),211の光軸と光学系112,254の光軸とを水平方向(X軸方向)に相対的に移動させることで、輻輳角(水平面における主光線交差角)を変更する。尚、表示装置の移動速度と移動装置における移動量の関係等を、制御装置18に備えられた記憶手段に予め記憶しておく。
具体的には、図8の(A)、(B)及び図2に概念図を示すように、2つの画像表示装置100,200,300,400,500のそれぞれにおける画像形成装置111,211の光軸と光学系112,254の光軸の位置を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させればよい。即ち、画像形成装置111,211及び光学系112,254のいずれか一方(例えば、光学系112,254)を、ラックギア部から構成された移動用ガイド部42に載置し、画像形成装置111,211及び光学系112,254のいずれか一方(例えば、光学系112,254)を、モータ及びピニオンギア41によって移動用ガイド部42上を移動させる。あるいは、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を移動用ガイド部に載置し、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を圧電素子や超音波モータによって移動用ガイド部上を移動させればよい。より具体的には、表示装置の移動速度情報に基づき、制御装置18は、モータ及びピニオンギア41等を作動させて、画像形成装置111,211及び/又は光学系112,254を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させることで、輻輳角を変更する。移動速度が早いほど、輻輳角を小さくする。
このような構成にあっては、光学系112,254から出射され、光学装置120,320,520に入射する平行光の光学装置120,320,520に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。ここで、図8の(A)から図8の(B)に示す状態に画像形成装置111,211、光学系112,254を移動させることで、輻輳角の値は大きくなり、虚像距離は短くなる。即ち、虚像が観察者に近づく。即ち、例えば、図6における点「A」が所望の位置となるように、画像形成装置111,211又は光学系112,254を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる。尚、画像形成装置111,211の移動にあっては、画像形成装置111,211の全体を移動させてもよいし、画像形成装置111,211の構成要素の一部(例えば、液晶表示装置151や走査手段253等)を移動させてもよい。
このように、移動速度(移動速度情報)に基づき、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像を移動させることで、虚像を所望の位置に配することができる。即ち、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される2つの画像の水平方向の距離(間隔)、あるいは、YZ平面・入射角を変更することで、移動速度に対応した輻輳角の変更を行うことができる。そして、画像形成装置111,211及び/又は光学系112,254を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させることで、輻輳角の変更を行うことができるので、視点距離と、画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とを等しくすることができ、あるいは又、出来るだけ等しくすることができ、観察者20が、左程、焦点を変更、変化させること無く、自然に画像表示装置によって表示される画像を眺めることができる。
実施例3も、実施例1の変形であり、具体的には、本発明の第1Cの態様に係る表示装置組立体に関する。実施例3の表示装置の概念図を図9の(A)及び(B)に示す。実施例3の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例3にあっては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置のそれぞれ)は、画像形成装置111,211及び光学系112,254を回動させる回動装置43を更に備えている。そして、移動速度に依存して、制御装置18の制御下、回動装置43によって画像形成装置111,211及び光学系112,254を回動させることで、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対する入射角(YZ平面・入射角)を変更し、即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度を変更し、以て、輻輳角(水平面における主光線交差角)を変更する。ここで、図9の(A)から図9の(B)に示す状態に画像形成装置111,211、光学系112,254を移動させることで、輻輳角の値は大きくなり、虚像距離は短くなる。即ち、虚像が観察者に近づく。尚、表示装置の移動速度と回動装置における回動量の関係を制御装置18に備えられた記憶手段に予め記憶しておく。
回動装置43によって画像形成装置111,211及び光学系112,254を回動させるが、具体的には、2つの画像表示装置のそれぞれにおける画像形成装置111,211の光軸と光学系112,254の光軸との位置関係を固定したまま、少なくとも一方の画像表示装置を、適切な位置に配置したZ軸を回動軸として、圧電素子やモータ、超音波モータを作動させることで、回動させればよい。このような形態にあっては、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。場合によっては、光学装置120,320も併せて回動させてもよい。
実施例4も、実施例1の変形であり、本発明の第1Dの態様に係る表示装置組立体に関する。実施例4の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例4にあっては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置のそれぞれ)を構成する光学系112,254は液体レンズ44を備えており、移動速度に依存して、制御装置18の制御下、液体レンズ44の作動によって輻輳角(水平面における主光線交差角)を変更する。尚、表示装置の移動速度と液体レンズの作動状態の関係を、制御装置18に備えられた記憶手段に予め記憶しておく。
光学系112,254を構成する係る液体レンズ44は、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体レンズから構成されている。液体レンズ44の作動によって、光学系112,254の光軸とY軸との関係を一定に保持したまま、光学系112,254の光軸を水平方向(X軸方向)に移動させることができるし、あるいは又、YZ平面に対する光学系の光軸の角度を変更することができる。これによって、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。
液体レンズ44の原理を、図10及び図11の原理図を参照して説明する。尚、図10の(A)は、図10の(B)の矢印A−Aに沿った模式的な断面図であり、図10の(B)は、図10の(A)の矢印B−Bに沿った模式的な断面図(但し、第1の液体の図示は省略)であり、図10の(C)、図11の(A)〜(C)は、図10の(A)の矢印C−Cに沿った模式的な断面図である。尚、液体レンズのxy平面で切断したときの形状は模式的な形状であり、実際の形状とは異なっている。
図10及び図11に示す原理図を示す液体レンズ(便宜上、『原理的液体レンズ』と呼ぶ)は、ハウジングを備えている。このハウジングは、
第1側面部材51、
第1側面部材51と対向した第2側面部材52、
第1側面部材51の一端部と第2側面部材52の一端部とを結ぶ第3側面部材53、
第1側面部材51の他端部と第2側面部材52の他端部とを結ぶ第4側面部材54、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の頂面に取り付けられた天板55、及び、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の底面に取り付けられた底板56、
から成り、このハウジングによって1つのレンズ室が構成されている。レンズ室は、軸線が第1側面部材51及び第2側面部材52の延びる方向(z方向)に延びる円柱レンズとしての液体レンズを構成する第1の液体65及び第2の液体66によって占められている。
そして、天板55の部分の内面には第1電極61が設けられており、第1側面部材51の内面には第2電極62が設けられており、第2側面部材52の内面には第3電極63が設けられている。ここで、図10に示す状態にあっては、第1電極61、第2電極62、第3電極63には電圧を印加していない。
この状態から、第1電極61、第2電極62、第3電極63に適切な電圧を印加すると、図11の(A)、(B)あるいは(C)に示す状態に第1の液体65と第2の液体66の界面の状態が変化する。ここで、図11の(A)に示す状態は、第2電極62と第3電極63に同じ電圧を印加したときの状態を示し、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、光軸OAに対して対称である。また、図11の(B)及び(C)に示す状態は、第2電極62と第3電極63に異なる電圧を印加したときの状態を示し、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、光軸OAに対して非対称である。尚、第2電極62と第3電極63との間の電位差は、図11の(C)に示す状態の方が、図11の(B)に示す状態よりも大きい。図11の(B)及び(C)に示すように、第2電極62と第3電極63との間の電位差に応じて、液体レンズの光学パワーを変化させることができるし、液体レンズの光軸OA(点線で表示する)をz方向と直交するy方向に移動させることができる。あるいは又、これらの原理図に示す液体レンズを複数、並置し、各液体レンズの第2電極62と第3電極63に印加する電圧を適切に制御することで、液体レンズ全体としての光軸を移動させることができるし、液体レンズ全体としての光軸の傾きを変化させることができるし、液体レンズ全体としてフレネルレンズを構成することができる。
実施例4における実用的な液体レンズ44の模式的な断面図を、図12及び図13の(A)〜(C)、図14の(A)〜(B)に示す。尚、図12は、図10の(B)の矢印A−Aに沿ったと同様の模式的な断面図であり、図13の(A)〜(C)、図14の(A)〜(B)は、図12の矢印C−Cに沿った模式的な断面図である。また、図12の矢印B−Bに沿った模式的な断面図は、図10の(B)に示したと同様である。
液体レンズ44は、
(A)第1側面部材51、
第1側面部材51と対向した第2側面部材52、
第1側面部材51の一端部と第2側面部材52の一端部とを結ぶ第3側面部材53、
第1側面部材51の他端部と第2側面部材52の他端部とを結ぶ第4側面部材54、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の頂面に取り付けられた天板55、及び、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の底面に取り付けられた底板56、
を備えたハウジング50、並びに、
(B)それぞれが、第1側面部材51と第2側面部材52との間に平行に配置された、(M−1)個の隔壁部材57、
を備えている。
そして、実施例4における液体レンズ44にあっては、M個(=5個)のレンズ室58(581,582,583,584,585)が並置されている。ここで、各レンズ室58(581,582,583,584,585)は、軸線が隔壁部材57の延びる方向と平行な方向(z方向)である円柱レンズとしての液体レンズを構成する第1の液体65及び第2の液体66によって占められている。
第1番目のレンズ室581は、第1側面部材51、第3側面部材53、第1番目の隔壁部材57、第4側面部材54、天板55、及び、底板56から構成されている。そして、第1番目のレンズ室581を構成する天板55の部分の内面には、第1電極61が設けられており、第1番目のレンズ室581を構成する第1側面部材51の部分の内面には、第2電極62が設けられており、第1番目のレンズ室581を構成する第1番目の隔壁部材57の部分の内面には、第3電極63が設けられている。
また、第(m+1)番目のレンズ室58(m+1)は、第m番目(但し、m=1,2・・・M−2)の隔壁部材57、第3側面部材53、第(m+1)番目の隔壁部材57、第4側面部材54、天板55、及び、底板56から構成されている。そして、第(m+1)番目のレンズ室58(m+1)を構成する天板55の部分の内面には、第1電極61が設けられており、第(m+1)番目のレンズ室58(m+1)を構成する第m番目の隔壁部材57の部分の内面には、第2電極62が設けられており、第(m+1)番目のレンズ室58(m+1)を構成する第(m+1)番目の隔壁部材57の部分の内面には、第3電極63が設けられている。
更には、第M番目のレンズ室58M(=585)は、第(M−1)番目の隔壁部材57、第3側面部材53、第2側面部材52、第4側面部材54、天板55、及び、底板56から構成されている。そして、第M番目のレンズ室58M(=585)を構成する天板55の部分の内面には、第1電極61が設けられており、第M番目のレンズ室58M(=585)を構成する第(M−1)番目の隔壁部材57の部分の内面には、第2電極62が設けられており、第M番目のレンズ室58M(=585)を構成する第2側面部材52の部分の内面には、第3電極63が設けられている。
尚、図示した例では、各レンズ室毎に第1電極61が設けられているが、天板55の内面に1枚の第1電極61を設けてもよい。
実施例4における液体レンズ44にあっては、少なくとも第1の液体65と第2の液体66との界面が位置する第1側面部材51、第2側面部材52及び隔壁部材57のそれぞれの表面には、撥水処理が施されている。また、隔壁部材57の底面は底板56まで延びており、隔壁部材57の頂面は天板55まで延びている。ハウジング50の外形形状は、z方向に長辺、y方向に短辺を有する矩形形状である。そして、底板56から光が入射し、天板55から光が出射する。
第1の液体65と第2の液体66とは、不溶、不混合であり、第1の液体65と第2の液体66との界面がレンズ面を構成する。ここで、第1の液体65は導電性を有し、第2の液体66は絶縁性を有し、第1電極61は第1の液体65と接しており、第2電極62は絶縁膜64を介して第1の液体65及び第2の液体66と接しており、第3電極63は絶縁膜64を介して第1の液体65及び第2の液体66と接している。また、天板55、底板56、及び、第1電極61は、液体レンズ44に入射する光に対して透明な材料から構成されている。
より具体的には、天板55、底板56、第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53、第4側面部材54及び隔壁部材57は、ガラス、あるいは、アクリル系樹脂等の樹脂から作製されている。また、導電性を有する第1の液体65は塩化リチウム水溶液から成り、密度は1.06グラム/cm3であり、屈折率は1.34である。一方、絶縁性を有する第2の液体66はシリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSF437)から成り、密度は1.02グラム/cm3であり、屈折率は1.49である。また、第1電極61はITOから成り、第2電極62及び第3電極63は、例えば、金、アルミニウム、銅、銀等の金属電極から成る。更には、絶縁膜64は、ポリパラキシレンや酸化タンタル、酸化チタン等の金属酸化物から成る。尚、絶縁膜64の上に撥水処理層(図示せず)が設けられている。撥水処理層はポリパラキシリレンやフッ素系のポリマーから成る。第1電極61の表面に親水処理を施し、第3側面部材53や第4側面部材54の内面に撥水処理を施すことが好ましい。
そして、実施例4にあっては、光学系112,254を構成するために、図12に示した液体レンズ44を2つ、重ね合わせる。具体的には、下側の液体レンズ44のy方向と、上側の液体レンズ44のy方向とが直交するように、しかも、下側の液体レンズ44のz方向と、上側の液体レンズ44のz方向とが直交するように、重ね合わせる。そして、例えば、下側の液体レンズ44のy方向がX軸方向と平行となり、x方向がY軸の方向と平行となるように、重ね合わせた2つの液体レンズ44を、図1に示した光学系112の所に配置させる。
第1電極61、第2電極62及び第3電極63は、図示しない接続部を介して、外部の制御回路に接続され、所望の電圧が印加される構成、構造となっている。そして、第1電極61、第2電極62及び第3電極63に電圧を印加すると、第1の液体65と第2の液体66との界面によって構成されたレンズ面が、図13の(A)に示す下に凸の状態から、図13の(B)に示す上に凸の状態に向かって変化する。レンズ面の変化状態は、Lippman-Young の式に基づき、電極61,62,63に印加する電圧によって変化する。図13の(B)に示した例においては、第2電極62と第3電極63に同じ電圧を印加している。それ故、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、液体レンズの光軸に対して対称である。重ね合わせた2つの液体レンズ44の内、上側の液体レンズ44に対して、このような制御を行えばよい。
また、図13の(C)、図14の(A)及び(B)に示す状態は、第2電極62と第3電極63とに異なる電圧を印加したときの状態を示すが、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、液体レンズの光軸に対して非対称である。ここで、図13の(C)に示す状態にあっては、液体レンズ44としてフレネルレンズが構成される。重ね合わせた2つの液体レンズ44の内、上側の液体レンズ44に対して、このような制御を行ってもよい。
一方、図14の(A)及び(B)に示す状態にあっては、液体レンズの光軸をz方向と直交するy方向(X軸方向)に移動させている。図14の(A)あるいは(B)に示す状態とすることで、液体レンズ44から出射された光の進行方向を変化させることができるし、あるいは又、液体レンズ44全体としての光軸のx方向に対する傾きを制御することができる。即ち、重ね合わせた2つの液体レンズ44の内、下側の液体レンズ44に対して、このような制御を行うことで、液体レンズの光軸をX軸方向に移動させることができるし、あるいは又、液体レンズの光軸をY軸方向に対して傾けることができる。そして、第2電極62と第3電極63との間の電位差に応じて、液体レンズの光学パワーを変化させることができる。ここで、図14の(A)に示す状態にあっては、各第2電極62には同じ電圧を印加し、各第3電極63には同じ電圧を印加している。一方、図14の(B)に示す状態にあっては、第2電極62及び第3電極63毎に異なる電圧を印加しており、液体レンズ44全体として一種のフレネルレンズが構成される。第2電極62及び第3電極63への電圧の印加は、移動速度に依存して、制御装置18の制御下、行われる。
尚、第1電極61、第2電極62及び第3電極63に電圧を印加し、円柱レンズが光学パワーを発揮しているとき、xz平面(あるいは、xz平面と平行な平面)における円柱レンズの光学パワーは実質的に0であり、xy平面における円柱レンズの光学パワーは有限の値である。ここで、『液体レンズ全体としての光軸』とは、液体レンズ44をxy平面において切断したときに液体レンズ44全体として得られる仮想レンズ(液体レンズ44全体としての1枚のレンズ)の2つの仮想光学表面の曲率中心を結んだ線である。
第2電極62を共通の配線に接続し、第3電極63を共通の配線に接続し、各第2電極62には同じ電圧を印加し、各第3電極63には同じ電圧を印加する構成とすることができる。あるいは又、第2電極62を共通の配線に接続し、第3電極63を個別の配線に接続して個別に異なる電圧を印加する構成とすることもできるし、第3電極63を共通の配線に接続し、第2電極62を個別の配線に接続して個別に異なる電圧を印加する構成とすることもできるし、第2電極62、第3電極63共、個別の配線に接続して個別に異なる電圧を印加する構成とすることもできる。
実施例5も、実施例1の変形であり、本発明の第1Eの態様に係る表示装置に関する。実施例5の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例5にあっては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置のそれぞれ)を構成する光学系112,254は液体プリズム45を備えており、移動速度に依存して、液体プリズム45の作動によって輻輳角(水平面における主光線交差角)を変更する。
光学系112,254の一部を構成する係る液体プリズム45は、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体プリズムから構成されている。液体プリズム45の作動によって、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度を変更することができる。このような形態にあっては、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。
図15に概念図を示すように、液体プリズム45の構成、構造は、図10に示した原理的液体レンズと同様の構成、構造とすればよいので、詳細な説明は省略するが、原理的液体レンズと異なる点は、第1の液体65と第2の液体66との界面によってレンズ面が構成されるのではなく、プリズムの平坦な斜面が構成される点にあり、このような構成は、第1の液体65と第2の液体66との適切な選択によって達成することができる。そして、液体プリズム45を、例えば、図1に示した表示装置における光学系112と導光板121との間に、y方向がX軸方向と平行となり、x方向がY軸の方向と平行となるように、配置すればよい。そして、第2電極62及び第3電極63への電圧の印加は、移動速度に依存して、制御装置18の制御下、行われる。尚、表示装置の移動速度と液体プリズムの作動状態の関係は、制御装置18に備えられた記憶手段に予め記憶しておけばよい。
実施例6は、実施例1〜実施例5の表示装置組立体の変形である。実施例6の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例6においても、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500のそれぞれ)を構成する画像形成装置111A,111Bへの画像信号を制御することで、実施例1〜実施例5における輻輳角の変更に加えて、画像表示装置の観察者への装着状態に依存した輻輳角の精密な調整を行い、あるいは又、この少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置の調整を行う。尚、実施例6においては、輻輳角の調整と、観察者の観察位置に依存した画像の位置の調整の両方を行うが、いずれか一方のみを行ってもよい。
具体的には、記憶手段に記憶されているテスト用の画像信号を、観察者の指示に基づき、制御装置18は読み出す。そして、制御装置18において、画像信号に対して画像表示のための処理が行われ、テスト用の画像信号に基づき、画像形成装置111A,111Bにおいて画像を生成する。この画像は、光学系112,254、光学装置120,320,520を介して、最終的に、表示装置を装着した観察者20の両眼に到達する。
そして、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、所望の位置と一致するように(重なり合うように)、制御装置18を介して、具体的には、制御装置18に配置されたスイッチ(図示せず)を用いて、光学装置120,320,520に表示された画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。即ち、例えば、図6における点「A」が所望の位置となるように、光学装置120,320,520に表示された画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。このように、制御装置18に配置されたスイッチの操作によって、画像信号の制御(補正)が行われる。即ち、制御装置18内で表示位置補正信号が生成され、画像信号に表示位置補正信号が加えられる。
左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、所望の位置において、左右にずれている状態を模式的に図16の(A)に示し、上下にずれている状態を模式的に図16の(B)に示し、回転した状態でずれている状態を模式的に図16の(C)に示す。ここで、図16の(A)、(B)及び(C)における右手側の図は、右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を示し、図16の(A)、(B)及び(C)における左手側の図は、左眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を示す。また、図16の(A)、(B)及び(C)における右手側の図における点線は、左眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を重ね合わせて示すものである。
ここで、画像の水平方向の移動のためには、表示位置補正信号として、画像信号に基づく画像の水平方向の位置を+i画素あるいは−i画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。あるいは又、水平同期信号のタイミングを+i画素あるいは−i画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。また、画像の垂直方向の移動のためには、表示位置補正信号として、画像信号に基づく画像の垂直方向の位置を+j画素あるいは−j画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよく、あるいは又、垂直同期信号のタイミングを+j画素あるいは−j画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。即ち、画像のメモリ読み出し位置を、タイミング的に、遅らす、又は、早めることにより実現することができ、あるいは、垂直同期信号と水平同期信号のタイミングをずらすことによって実現することができる。更には、画像の回転移動のためには、周知の方法に基づく画像の回転のための信号を表示位置補正信号として、制御装置18において生成すればよい。
そして、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が所望の位置で一致したときの(重なり合ったときの)表示位置補正信号を制御装置18に記憶させる。このような操作は、例えば、制御装置18に設けられたボタン(図示せず)を用いることで行うことができる。そして、このような操作は、例えば、観察者が画像表示装置を装着したとき、行えばよい。また、このような操作には、例えば、図16に示したような水平方向に延びる線、垂直方向に延びる線、斜め方向に延びる線の組合せといった、一種のテストパターンを用いればよい。こうして、少なくとも一方の画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置100,200,300,400,500における2つの画像の相互の位置を調整することができる。即ち、より精密な輻輳角の調整と、画像の位置の調整の両方を行うことができる。
表示位置補正信号は、上述したとおり、制御装置(制御回路、制御手段)18に記憶される。そして、制御装置18において、画像信号に対して画像表示のための処理がなされる。即ち、制御装置18において画像信号(具体的には、データ「POS_X」,「POS_Y」)に表示位置補正信号が加えられる。こうして、少なくとも一方の画像表示装置(実施例6においては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500)を構成する画像形成装置111A,111Bへの画像信号を制御することで、即ち、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像の水平方向の距離(間隔)を調整することで、より精密な輻輳角の調整を行うことができる。
実施例7も、実施例1の変形である。実施例7にあっては、表示装置組立体を装着した観察者(操縦者、運転者、搭乗者等)は、自転車といった移動手段(移動機関)に搭乗しているとする。そして、速度測定装置は、周知の車輪の回転数検出装置、及び、回転数検出装置からのデータに基づき移動速度を求める周知の演算装置から成る。
具体的には、自転車にはケイデンス(自転車のクランクの回転数)検出部が備えられている。そして、ケイデンス検出部からの自転車のクランクの回転数は、有線又は無線で演算装置に送られる。演算装置においては、一定時間間隔Δtおきに、設定ギアデータに基づくケイデンス検出部によって得られるクランクの回転数データから、現在の自転車の移動速度が計算される。そして、この移動速度(移動速度情報)が有線又は無線にて制御装置18に送られ、実施例1〜実施例6と同様にして、輻輳角が変更される。
通常、運転中、自転車の運転者の視線は5m以上の遠方にあり、虚像距離が5m以上となるように輻輳角を設定しておけば、それより遠方は人間の眼の焦点深度にほぼ入るため、自転車の移動速度が、例えば、10km/時以上の場合、虚像距離が5m以上となるように輻輳角を設定すればよい。そして、自転車の移動速度が、例えば、10km/時未満となったとき、虚像距離が4mとなるように輻輳角を設定すればよい。
実施例8は、本発明の第2の態様に係る表示装置組立体、具体的には、本発明の第2Aの態様に係る表示装置組立体に関する。実施例8あるいは後述する実施例9の表示装置組立体は、
表示装置、並びに、
表示装置の移動速度を測定する速度測定装置31、
を備えた表示装置組立体であって、表示装置は、
(イ)観察者(操縦者、運転者、搭乗者等)20の頭部に装着される眼鏡型のフレーム10、並びに、
(ロ)フレーム10に取り付けられた画像表示装置、
を備えている。ここで、実施例8あるいは後述する実施例9においては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500を備えているとした。即ち、表示装置は画像表示装置を2つ備えた両眼型である。そして、画像表示装置100,200,300,400,500は、
(A)画像形成装置111,211、
(B)画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、並びに、
(C)光学系112,254から出射された光が入射され、導光され、出射される光学装置(導光手段)120,320,520、
を備えている。尚、このような構成、構造の実施例8あるいは後述する実施例9の表示装置組立体は、実質的に、実施例1において説明した表示装置組立体の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
そして、実施例8の表示装置組立体にあっては、速度測定装置31によって測定された表示装置の移動速度に基づき、光学系112,254の焦点距離を変更し、以て、画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される虚像距離Lviを変更する。具体的には、移動速度が早いほど、光学系112,254の焦点距離が長くなるように変更し、画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される虚像距離Lviを長くする。ここで、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学系112,254は液体レンズを備えており、液体レンズの作動によって、光学系112,254の焦点距離を変更を変更する。このような液体レンズの模式的な模式的な断面図を図17に示し、平面図を図18に示すが、液体レンズはフレネルレンズから構成され、リング状のレンズ室が同心に配置されている。
即ち、液体レンズは、
(A)終端部を有していない、所謂エンドレスの外壁部材79、
外壁部材79の頂面に取り付けられた天板75、及び、
外壁部材79の底面に取り付けられた底板76、
を備えたハウジング、並びに、
(B)終端部を有しておらず、外壁部材79と同心に配置された(N−1)個の隔壁部材77、
を備えている。尚、ハウジングの外形形状は円形である。そして、(N−1)個の環状レンズ室、及び、第(N−1)番目の隔壁部材77によって囲まれた中央レンズ室を有している。ここで、図示した例にあっては、N=3とした。各レンズ室78(781.782,783)は、液体レンズを構成する第1の液体65及び第2の液体66によって占められている。
第1番目のレンズ室(環状レンズ室)781は、外壁部材79、第1番目の隔壁部材77、天板75、及び、底板76から構成されている。そして、第1番目のレンズ室781を構成する天板75の部分の内面には、第1電極81が設けられており、第1番目のレンズ室781を構成する外壁部材79の部分の内面には、第2電極82が設けられており、第1番目のレンズ室781を構成する第1番目の隔壁部材77の部分の内面には、第3電極83が設けられている。
第(n+1)番目のレンズ室(環状レンズ室)78(n+1)は、第n番目(但し、n=1,2・・・N−2)の隔壁部材77、第(n+1)番目の隔壁部材77、天板75、及び、底板76から構成されている。そして、第(n+1)番目のレンズ室78(n+1)を構成する天板75の部分の内面には、第1電極81が設けられており、第(n+1)番目のレンズ室78(n+1)を構成する第n番目の隔壁部材77の部分の内面には、第2電極82が設けられており、第(n+1)番目のレンズ室78(n+1)を構成する第(n+1)番目の隔壁部材77の部分の内面には、第3電極83が設けられている。
第N番目のレンズ室78Nに相当する中央レンズ室783を構成する天板75の部分の内面には、第1電極81が設けられており、中央レンズ室783を構成する第(N−1)番目の隔壁部材77の部分の内面には、第3電極83が設けられている。
尚、図示した例では、各レンズ室毎に第1電極81が設けられているが、天板75の内面に1枚の第1電極81を設けてもよい。
この液体レンズにおいては、少なくとも第1の液体65と第2の液体66との界面が位置する外壁部材79及び隔壁部材77のそれぞれの表面には、実施例4と同様に、撥水処理が施されている。底板76から光が入射し、天板75から光が出射する。そして、各レンズ室781,782,783において、第2電極82に印加する電圧と第3電極83に印加する電圧とを異ならせることで、液体レンズの光学パワーを変化させる。あるいは又、各レンズ室781,782,783において、第2電極82に印加する電圧と第3電極83に印加する電圧とを異ならせることで、液体レンズ全体としてフレネルレンズが構成される。
そして、速度測定装置31によって測定された表示装置の移動速度に基づき、制御装置18によって、第2電極82に印加する電圧と第3電極83に印加する電圧を制御することで、液体レンズの焦点距離を変更し、画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される虚像距離を変更する。尚、表示装置の移動速度と虚像距離の関係は、制御装置18に備えられた記憶手段に予め記憶しておけばよい。
尚、実施例8の表示装置組立体における液体レンズから構成された光学系112,254を、実施例1〜実施例7にて説明した表示装置組立体における光学系112,254に適用することができる。
実施例8の表示装置組立体においては、表示装置の移動速度に応じて虚像距離を自動的に変更させることにより、視点距離と画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とを出来るだけ一致させることができ、視認性を高めた、特にナビゲーション用途で用いるのに適した表示装置組立体を提供することができる。
実施例9は、本発明の第3の態様に係る表示装置組立体に関する。実施例9の表示装置組立体にあっては、速度測定装置31によって測定された表示装置の移動速度に基づき、光学装置(導光手段)120,320,520に表示される画像の大きさ、画像の輝度、画像の解像度、及び、画像の内容の内、少なくとも1つ(組合せとして、15通り)を変更する。
具体的には、速度測定装置31によって測定された表示装置の移動速度に基づき、制御装置18の制御下、周知の方法に基づき、表示装置の移動速度が早い程、画像の輝度の値を小さく(即ち、画像を暗く)し、表示装置の移動速度が遅い程、画像の輝度の値を大きく(即ち、画像を明るく)すればよい。また、画像の解像度を変更する場合、具体的には、周知の方法に基づき、表示装置の移動速度が早い程、画像の解像度の値を小さく(即ち、画像を粗く)し、表示装置の移動速度が遅い程、画像の解像度の値を大きく(即ち、画像を細かく)すればよい。更には、画像の内容を変更する場合、具体的には、周知の方法に基づき、表示装置の移動速度が早い程、画像の内容(情報量)を少なくしたり、簡素化し、光学装置における画像の表示領域を狭くしたり、光学装置における画像の表示の大きさを小さくしたり、光学装置における画像の表示を粗くし、表示装置の移動速度が遅い程、画像の内容(情報量)を多くしたり、光学装置における画像の表示領域を広くしたり、光学装置における画像の表示の大きさを大きくしたり、光学装置における画像の表示を細かくすればよい。ここで、表示装置の移動速度と画像の大きさの関係、表示装置の移動速度と画像の輝度の関係、表示装置の移動速度と画像の解像度の関係、表示装置の移動速度と画像の内容の関係は、制御装置18に備えられた記憶手段に予め記憶しておけばよい。制御回路18の記憶手段に記憶された画像データを制御回路18において移動速度に依存して加工してもよいし、制御回路18の記憶手段に複数の画像データを記憶しておき、移動速度に依存して制御回路18は複数の画像データから適切な画像データを読み出してもよい。
尚、実施例9の表示装置組立体を、実施例1〜実施例8にて説明した表示装置組立体に適用することができる。
実施例9の表示装置組立体においては、表示装置の移動速度に応じて、光学装置に表示される画像の大きさ、画像の輝度、画像の解像度、及び、画像の内容の内、少なくとも1つを変更するので、表示装置の移動速度に適した画像の大きさ、画像の輝度、画像の解像度、あるいは、画像の内容を適切に選択することができ、特にナビゲーション用途で用いるのに適した表示装置組立体を提供することができる。
実施例10は、本発明の第4の態様に係る表示装置組立体に関する。実施例10の表示装置組立体は、
表示装置、並びに、
表示装置の移動時の加速度を測定する加速度測定装置32、
を備えた表示装置組立体であって、表示装置は、
(イ)観察者(操縦者、運転者、搭乗者等)20の頭部に装着される眼鏡型のフレーム10、並びに、
(ロ)フレーム10に取り付けられた画像表示装置、
を備えている。ここで、実施例10においては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500を備えているとした。即ち、表示装置は画像表示装置を2つ備えた両眼型である。そして、画像表示装置100,200,300,400,500は、
(A)画像形成装置111,211、
(B)画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、並びに、
(C)光学系112,254から出射された光が入射され、導光され、出射される光学装置(導光手段)120,320,520、
を備えている。尚、このような構成、構造の実施例10の表示装置組立体は、実質的に、実施例1において説明した表示装置組立体の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
そして、実施例10の表示装置組立体にあっては、加速度測定装置32によって測定された表示装置の移動時の加速度の絶対値が、所定の値以上になったとき、画像表示装置100,200,300,400,500の作動を停止する。尚、加速度の所定の値は、制御装置18に備えられた記憶手段に予め記憶しておけばよい。ここで、実施例10にあっては、加速度の所定の値α0として、5m/s2を例示することができる。加速度の絶対値が、所定の値以上になったとき、画像表示装置100,200,300,400,500の作動を停止するので、光学装置からは画像が消滅し、観察者は目の前の実像のみを視認することができ、実際の状況を肉眼で、確実に、且つ、容易に確認することができる。画像表示装置100,200,300,400,500の作動を開始するためには、例えば、観察者が、開始ボタンを押せばよい。
加速度測定装置は、周知の全地球測位システム、及び、全地球測位システムからのデータに基づき加速度を求める周知の演算装置から成る。あるいは又、加速度測定装置は、周知の加速度センサ、及び、加速度センサからのデータに基づき加速度を求める周知の演算装置から成る。あるいは又、加速度測定装置は、周知の車輪の回転数検出装置、及び、回転数検出装置からのデータに基づき加速度を求める周知の演算装置から成る。
実施例10の表示装置組立体においては、表示装置の移動時の加速度の絶対値が所定の値以上になったとき、画像表示装置の作動を停止させるので、光学装置に画像が表示されなくなり、実際の状況を肉眼で瞬時に確認することができる、特にナビゲーション用途で用いるのに適した表示装置組立体を提供することができる。
尚、実施例10の表示装置組立体を、実施例1〜実施例9にて説明した表示装置組立体に適用することができる。例えば、実施例10の表示装置組立体を、実施例9にて説明した表示装置組立体と組み合わせた場合、現在の加速度の絶対値が所定の値α0よりも大きい場合には、画像表示装置100,200,300,400,500の作動を停止する。一方、現在の加速度の絶対値が所定の値α0未満である場合には、続いて現在の移動速度を測定し、移動速度が所定の移動速度以上である場合には、光学装置120,320,520における表示画面の範囲を狭くし、あるいは又、解像度や輝度を落とし、あるいは又、進行方位を表す矢印と現在の移動速度のみを表示する。一方、移動速度が所定の移動速度未満であるが、0ではない場合には、光学装置120,320,520における表示画像の範囲を広げ、あるいは又、解像度や輝度を上げ、あるいは又、目的地までの残り距離や最寄りの建物情報等(公園、警察、コンビニエンスストア等)の情報量の多い表示に切り替える。更には、移動速度が0である場合には(即ち、観察者が停止している場合には)、周辺の地図を全画面に亙り、フル解像度、最大輝度で表示する。
実施例11も、実施例1〜実施例10における画像表示装置の変形である。実施例11あるいは後述する実施例13の表示装置における画像表示装置200,400の概念図を図19及び図21に示すように、画像形成装置211は、第2の構成の画像形成装置から構成されている。即ち、光源251、及び、光源251から出射された平行光を走査する走査手段253を備えている。より具体的には、画像形成装置211は、
光源251、
光源251から出射された光を平行光とするコリメート光学系252、
コリメート光学系252から出射された平行光を走査する走査手段253、及び、
走査手段253によって走査された平行光をリレーし、出射する光学系(リレー光学系)254、
から構成されている。尚、画像形成装置211全体が筐体213(図19及び図21では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体213には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系254から光が出射される。そして、各筐体213が、取付け部材19によって、着脱自在に、あるいは、固定状態で、テンプル部13に取り付けられている。
光源251は、白色を発光する発光素子から構成されている。そして、光源251から出射された光は、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系252に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー256で反射され、マイクロミラーを二次元方向に回転自在とし、入射した平行光を2次元的に走査することができるMEMSから成る走査手段253によって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素(画素数は、例えば、実施例1と同じとすることができる)が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系(平行光出射光学系)254を通過し、平行光とされた光束が光学装置120に入射する。
リレー光学系254にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される光学装置120は、実施例1にて説明した光学装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、実施例11の表示装置は、以上の相違点を除き、実施例1〜実施例10の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例12も、実施例1〜実施例10における画像表示装置の変形である。実施例12の表示装置における画像表示装置300の概念図を図20の(A)に示す。また、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を図20の(B)に示す。実施例12にあっては、画像形成装置111は、実施例1と同様に、第1の構成の画像形成装置から構成されている。また、光学装置320は、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造は、実施例1の光学装置120と同じである。
実施例12において、第1偏向手段及び第2偏向手段は導光板321の表面(具体的には、導光板321の第2面323)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板321に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材330』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材340』と呼ぶ。
そして、実施例12あるいは後述する実施例13において、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340は、1層の回折格子層が積層されて成る構成としている。尚、フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。回折格子層(回折光学素子)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、Z軸に平行である。尚、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の軸線はX軸と平行であり、法線はY軸と平行である。
図20の(B)に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°−(φ+ψ) (B)
第1回折格子部材330は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、第1面322から導光板321に入射されたこの平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材340は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、導光板321の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板321から平行光のまま第1面322から出射する。
そして、導光板321にあっても、平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板321が薄く導光板321の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材340に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板321に入射する平行光のうち、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材340から離れる方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材330において回折反射される平行光であって、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板321に入射する平行光よりも、導光板321の内部を伝播していく光が導光板321の内面と衝突するときの導光板321の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材340の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材330の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板321の軸線に垂直な仮想面に対して対称な関係にある。
後述する実施例13における導光板321も、基本的には、以上に説明した導光板321の構成、構造と同じ構成、構造を有する。実施例12の表示装置は、以上の相違点を除き、実施例1〜実施例11の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例13は、実施例12における画像表示装置の変形である。実施例13の表示装置における画像表示装置の概念図を図21に示す。実施例13の画像表示装置400における光源251、コリメート光学系252、走査手段253、平行光出射光学系(光学系、リレー光学系254)等は、実施例11と同じ構成、構造(第2の構成の画像形成装置)を有する。また、実施例13における光学装置320は、実施例12における光学装置320と同じ構成、構造を有する。実施例13の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1、実施例11の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例14は、実施例1〜実施例13における画像表示装置の変形である。実施例14の表示装置において、画像表示装置を構成する導光板等の配置状態を示す概念図を、図22の(A)及び(B)に示し、実施例14における表示装置を横から眺めた模式図を図23に示す。
実施例1〜実施例13にあっては、図2に示したように、画像表示装置100,300において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した中心光線CLは、XY平面内において導光板121,321と衝突する設計となっている。即ち、中心光線CLは、導光板121,321へ、XY平面内における入射角(XY平面・入射角)が0度で入射する設計となっている。そして、この場合、表示される画像の中心は、導光板121,321の第1面122,322の垂線方向に一致する。
即ち、画像表示装置100で代表させるこのような画像表示装置にあっては、図2に示したように、コリメート光学系112の光軸上にある画像形成装置111の中心から出射する中心光線CLは、コリメート光学系112にて略平行光に変換された後、導光板121の第1面(入射面)122にXY平面内においてに入射する。そして、第1偏向手段130により第1面122と第2面123との間で全反射されながら、伝播方向Aに沿って進む。続いて、この中心光線CLは、第2偏向手段140により反射、回折され、導光板121の第1面122からXY平面内においてに出射され、観察者20の瞳21に達する。
シースルー型の表示装置において、観察者20が、水平の方向に位置する観察対象物を眺めたときに、光学装置120,320,520が邪魔にならないようにするためには、観察者の水平の方向の視線(観察者の水平方向視線)よりも、光学装置120,320,520を下側にずらして配置することが好ましい。このような場合、画像表示装置100,300、全体を、観察者の水平方向視線の下側に配置する。ところで、このような構成にあっては、図27に示すように、画像表示装置100、全体を、角度θ”だけ傾ける必要があり、観察者の頭部への装着のための眼鏡型のフレームの取付部(テンプル部)との関係から、画像表示装置100を傾けることができる角度θ”が制限されたり、デザイン自由度が低くなる場合がある。それ故、観察者の水平方向視線の邪魔にならないように、高い自由度での配置を可能とし、しかも、高いデザイン自由度を有する画像表示装置とすることが、一層、望ましい。
実施例14にあっては、中心光線CLは、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる構成とした。更には、中心光線CLはYZ平面に含まれる構成とした。更には、実施例14あるいは後述する実施例15において、光学系112,254の光軸は、YZ平面に含まれ、且つ、XY平面と0度以外の角度、具体的には、角度θで交わる(図22の(A)及び(B)参照)。また、実施例14あるいは後述する実施例15において、XY平面が水平面と一致すると仮定したとき、中心光線CLがXY平面と交わる角度θは仰角である。即ち、XY平面の下側から中心光線CLがXY平面に向い、XY平面と衝突する。そして、XY平面は垂直面と0度以外の角度、具体的には、角度θで交わる。
実施例14にあっては、θ=5度とした。より具体的には、このような構成にあっては、中心光線CL(図23では、点線で示す)は、水平面に含まれる。そして、光学装置120,320,520は、垂直面に対して角度θだけ傾いている。云い換えれば、光学装置120,320,520は、水平面に対して角度(90−θ)度だけ傾いている。また、光学装置120,320,520から出射される中心光線CL’(図23では、一点鎖線で示す)は、水平面に対して角度2θだけ傾いている。即ち、観察者20が、水平の方向、無限遠方の対象物を眺めたとき、光学装置120,320,520から出射され、観察者20の瞳に入射する中心光線CL’は俯角θ’(=2θ)をなす(図23参照)。中心光線CL’が光学装置120,320,520の法線と成す角度はθである。図22の(A)あるいは後述する図24の(A)においては、光学装置120,320,520から中心光線CL’が出射される点を「O’」で示し、点O’を通過するX軸、Y軸、Z軸と平行な軸線をX’軸、Y’軸、Z’軸で表している。
実施例14の画像表示装置にあっては、中心光線CLは、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる。ここで、光学装置から出射され、観察者20の瞳に入射する中心光線CL’は俯角θ’をなすが、
θ’=2θ
の関係にある。一方、図27に示した例にあっては、同じ俯角を得ようとする場合、画像表示装置の全体を角度θ”だけ傾ける必要があるが、ここで、θ”とθの関係は、
θ”=2θ
であり、結局、図27に示した例にあっては、光学装置を垂直面に対して2θだけ、傾けなければならない。一方、実施例14にあっては、光学装置を垂直面に対してθだけ、傾ければよいし、画像形成装置を水平に保持すればよい。従って、画像表示装置を眼鏡型のフレームの取付部に取り付けるときの画像表示装置の取付け角度に対する制限が少なく、高いデザイン自由度を得ることができる。また、光学装置の垂直面に対する傾きが、図27に示した例よりも小さいので、外光が光学装置にて反射し、観察者20の瞳に入射するといった現象が生じ難い。それ故、より高品質の画像の表示を行うことができる。
実施例14の表示装置は、以上の相違点を除き、実施例1〜実施例13の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例15は、実施例14における画像表示装置の変形である。実施例15における画像表示装置を構成する導光板等の配置状態を示す概念図を図24の(A)及び(B)に示す。ここで、実施例15にあっては、光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112の光軸は、YZ平面と平行であり、XY平面と平行であり、且つ、画像形成装置111の中心から外れた位置を通過する。このような構成とすることで、中心光線CLは、YZ平面に含まれ、しかも、XY平面と仰角θをなして交わる。実施例15の表示装置は、以上の相違点を除き、実施例1〜実施例14の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例16も、実施例1〜実施例10における画像表示装置の変形である。実施例16の表示装置を正面から眺めた模式図を図25に示し、上方から眺めた模式図を図26に示す。
実施例16にあっては、光学装置520は、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射され、観察者20の瞳21に向かって出射される半透過ミラーから構成されている。尚、実施例16にあっては、画像形成装置111A,111Bから出射された光は、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材521の内部を伝播して光学装置520(半透過ミラー)に入射する構造としているが、空気中を伝播して光学装置520に入射する構造としてもよい。また、画像形成装置は、実施例11において説明した画像形成装置211とすることもできる。
各画像形成装置111A,111Bは、フロント部11に、例えば、ビスを用いて取り付けられている。また、部材521が各画像形成装置111A,111Bに取り付けられ、光学装置520(半透過ミラー)が部材521に取り付けられている。実施例16の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1〜実施例15の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
実施例17は、実施例1〜実施例9、実施例11〜実施例16の表示装置組立体の変形である。実施例17の表示装置組立体にあっては、制御装置18に備えられた記憶手段に複数のデータ群が記憶されている。ここで、データ群は、表示サイズが異なる複数の異サイズ・表示データから構成されている。具体的には、例えば、表示サイズが異なる表示データは、フォントサイズの異なる文字列を画像とした画像データから構成される。そして、実施例17にあっては、移動速度に基づき、制御装置18の制御下、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異サイズ・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示する。このように、実施例17の表示装置組立体にあっては、移動速度に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異サイズ・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示するので、実像(観察対象物)の目視される大きさと画像の大きさとの間に不釣り合いが生じ難い。
実施例18も、実施例1〜実施例16の表示装置組立体の変形である。実施例18の表示装置にあっては、制御装置18に備えられた記憶手段には、複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されている。ここで、各文字データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されている。例えば、言語として、中国語、韓国語、英語等を挙げることができる。具体的には、実施例18にあっては、表示言語が異なるが異なる表示データとして、異なる言語の文字列を画像とした画像データとする。ここで、制御装置18に切換えボタンやスイッチを設け、手動にて表示言語を選択すればよい。そして、制御装置18において、文字データの内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示する。このように、実施例18の表示装置にあっては、観察者の使用する言語での画像表示を容易に行うことができる。
尚、実施例18の表示装置と実施例17の表示装置とを組み合わせることもできる。即ち、各異サイズ・表示データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、制御装置18において、移動速度に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを選択し、更に、この1つの異サイズ・表示データにおいて、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示してもよい。
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した表示装置組立体、表示装置、画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。また、移動装置、回動装置、液体レンズ、液体プリズムの構成、構造も例示であり、適宜、変更することができる。場合によっては、本発明の第2の態様〜第4の態様に係る表示装置組立体にあっては、画像表示装置を1つ備えている片眼型とすることもできる。また、例えば、導光板に表面レリーフ型ホログラム(米国特許第20040062505A1参照)を配置してもよい。実施例12あるいは実施例13の光学装置320にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子とすることもできる。本発明の表示装置組立体は、立体視ディスプレイ装置として用いることもできる。