JP2014074637A - 支持部材の支持力解析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】弾性変形可能な支持部材を使用したシートの着座者を支持する力を解析する支持力解析方法であって、前記支持部材の弾性変形経緯における第1状態と、当該第1状態と異なる第2状態と、の間で生じる角度変化量を解析の指標とする。
【選択図】図2
Description
本発明者は上記特許文献に開示されている形状を有するシートであると、クッション感が増すという事項を検討する過程において、物質の変形状態により、撓み特性が大きく異なることに気が付いた。そして、物質の撓み特性は、材料の角度変化が影響していることを見出した。
先ず、第1の発明は、弾性変形可能な支持部材を使用したシートの着座者を支持する力を解析する支持力解析方法であって、前記支持部材の弾性変形経緯における第1状態と、当該第1状態と異なる第2状態と、の間で生じる角度変化量を解析の指標とすることを特徴とする。
図1はシートクッション1の断面図であり、当該断面図を縦線と横線を所定の間隔で引いて区分けして示している。当該線は上下方向の縦線と、左右方向の横線と、の2方向に各々複数延ばして示されている。なお、図1は説明に使用される概念図であるため、線の間隔は比較的大きくしている。よって、図面に示した線の間隔と、解析するために適切な間隔と、は関係が無い。
この線により構成された最小の正方形を一つのブロック2と考える。図1には複数のブロック2が記載されているが、その中の対角線を付した1つのブロック2について着目して、説明する。ブロック2はシートクッション1のいわゆる天板部の下部に位置するブロックである。
図2は着座荷重を上方から受けてシートクッション1が変形することにより図1で対角線を付したブロック2がどのように変形するのかを表す概念図である。なお、着座荷重は白抜き矢印で表しており、2点鎖線はシートクッション1に着座荷重が負荷されていない状態を表している。
図1で示されているように、シートクッション1に負荷がかかっていない状態では、ブロック2は正方形である。当該状態を第1状態と考える。また、図2に示す負荷がかかりシートクッション1が変形した状態を第2状態と考える。第2状態の場合、図2に示すようにブロック2は正方形を維持できず変形する。このような変形状態は各部位が変位することによりもたらされるため、従前の解析においては、単に位置が変わっていると捉えることが通常である。しかし、本発明においては、単に位置が変わっているという視点に立つのではなく、角度も変わっているという視点を取り入れることが最大の特徴である。
図1に示すブロック2の第1状態における正方向の頂点A、B、C、D部分が、図2に示す第2状態になった際に、この4つのA、B、C、D部分で囲われた領域での角度がどのように変位したかを把握してシート性能の評価解析に用いる。角度の把握は、例えば、第1状態では正方形のブロック2の対角線X、Yの傾き角度で把握する。この時の傾き角度の読み取りは、例えば、図2に示す基準線Lを基準として読み取る。基準線Lは図1に示す第1状態における横線と平行な線として定められている。
ブロック2の対角線X、Yの傾き角度の第1状態から第2状態への変化の把握の仕方を次に説明する。先ず、図1に示す第1状態ではブロック2は正方形であるので、対角線X、Yの傾き角度は基準線Lを基準として把握すると、45度と−45度となる。すなわち、図1に示すブロック2の正方形の頂点AとBを結ぶ対角線X、及び頂点CとDを結ぶ対角線Yと基準線Lとのなす角は、時計回り方向で読み取った場合、対角線Xが45度、対角線Yが−45度となっている。
これが、図2に示す第2状態では、ブロック2は荷重がかかって圧縮されて変形し、正方形ではない四角形に変形した状態となる。そして、この状態におけるブロック2の対角線X、Yは図2に示すθa1の傾き角度とθb1の傾き角度となる。このθa1の傾き角度とθb1の傾き角度は、第1状態の角度の45度及び−45度より小さい角度、例えば40度と−40度となっている。ブロック2はシートクッション1の中央位置下部にあることから、ブロック2の左右の変位量も同じとなっており、そのため、対角線X、Yの傾き角度も絶対値が同じとなっている。
そして、第1状態と第2状態における対角線X、Yのそれぞれの傾き角度を適宜検知手段で把握して、傾きの進行状態すなわち角度変化をシート性能の解析評価に用いる。本実施形態例の場合は、対角線X、Yの角度変化量は、対角線Xの場合は、45度(第1状態)−40度(第2状態)=5度(変化量)であり、対角線Yの場合は、(−45度(第1状態))−(−40度(第2状態))=−5度である。この変化量を用いてシート性能の解析評価を行う。これにより解析評価の精度の向上を図ることが可能となった。
また、上記に加えて、或いは上記の別の解析要素として、ブロック2の互いの対角線X、Yが持つ傾き角度の合計値をブロック2自体の傾き角度の変化指標として用いることもできる。例えば、図1に示す第1状態の正方形の場合は、45度と−45度の合計値である0度が第1状態におけるブロック2自体の傾き角度であり、ブロック2は傾いていないことを示している。図2に示す状態の場合はθa1とθb1の合計値が第2状態におけるブロック2自体の角度である。θa1とθb1の合計値はやはり0度であり、ブロック2は傾いていないことを示している。したがって、このブロック2の場合は第1状態と第2状態ではブロック2自体の傾きの変化はないと把握される。
次にシートクッション1の異なる位置のブロック2aについての、図1に示す第1状態と図2に示す第2状態の角度変化状態について説明する。ブロック2aの位置は、シートクッション1の天板部の右側位置にある。したがって、着座者の着座荷重が作用すると、図2に示すようにブロック2aの右側と左側とでは撓み変形量が異なり、右側より左側の撓み変形量が多くなっている。すなわちブロック2自体も左下がり方向に傾いた状態となる。ブロック2aのこの角度変化状態も上述したブロック2の場合と同様にして把握する。すなわち、ブロック2aの図1に示す第1状態は、前述のブロック2の場合と同様にして対角線X、Yの角度で把握する。また、対角線X、Yの角度の合計値からブロック2a自体の傾きを把握することもできる。なお、この場合に把握されるブロック2aの角度は、前述のブロック2と同様の傾きの無い正方形状態であるので、ブロック2と実質的に同じである。
ブロック2aの図2に示す第2状態における把握も、同様に対角線X、Yの角度で把握する。この場合、対角線Xの角度はθa2として把握され、対角線Yの角度はθb2として把握される。この把握されるθa2とθb2の絶対値はブロック2aが傾いた状態であることから異なっている。これにより、対角線Xの第1状態から第2状態への角度変位量と、対角線Yの第1状態から第2状態への角度変位量とは、異なった変位量として把握される。
つまり、図2に示す第2状態における対角線X、Yの角度θa2、θb2の合計値はブロック2の場合のように0とはならない。よって、0ではないある数値として示される。この数値の大きさによってブロック2a自体の傾き角度が把握される。このブロック2aの場合は、θa2のプラス角度数値よりもθb2のマイナス角度数値の方が大きく把握されるので、合計値はマイナス角度数値として示される。このマイナス角度数値によりブロック2aは左下がり方向に傾いていることを示すものである。この数値も適宜シート性能の解析評価に用いる。
先ず、弾性変形可能なシート部材、例えば、ウレタンフォームなどからなるシートクッションが加圧される場合に、支持部材の角度がどのように反発力(支持力)に影響するのかを、以下に実験結果を示し説明する。
図3は、ブロック片5への荷重実験とシートクッション1との関連性を説明するための概念図である。ここで、ブロック片5は図1及び図2で説明したブロック2、2aに相当するものである。図3のシートクッション1に示されるブロック片5の傾きは説明の都合上、誇張して傾かせて示した。
図3に示したようにシートクッション1の一部に傾斜した状態でブロック片5が配置されていると考える。当該ブロック片5が上方からの荷重に対してどのような挙動を示すのかを測定したいため、傾斜台3の上にブロック片5を載せ、その上から加圧部材4で加圧する実験を行った。具体的な実験条件は以下の通り。
傾斜台3の角度を11.25度、22.5度、33.75度、45度の4種類に設定して実験を行った。また、水平状態のブロック片5についても加圧部材4を上方から100m/minの速度で下方に動かして加圧する実験を行った。
図7に示されているように、水平に設置されたブロック片5の水平方向の長さをLとし、垂直方向の長さをHとする。また、ブロック片5を傾斜して配置した際の角度をθとする。当該傾斜状態における水平方向の長さをL’とし、垂直方向の長さをH’とする。当該荷重データに関し、式(1)の面積補正を行う。変位量Sは式(2)の総厚に対する比率補正を行う。
補正後のデータを見ると、ブロック片5の角度変化とともに荷重が単調増加していくのではなく、角度により変曲点があることが判る。30%ひずみ時の荷重がブロック片5の角度が0度、11.25度、22.5度と徐々に減少して行き、そこから反転して33.75度、45度と増加していくことがわかる。
更に、硬度や減衰特性などの物理特性が異なる5種類のウレタンフォームを試験した。実験結果を表1に記す。
ひずみεが10%までは変曲点が33.75度で現れるが、ひずみεが20%以降においては22.5度に変曲点が移行していくことが読み取れる。この傾向も上記5種類のウレタンフォームにおいて同様の傾向を示すものであった。
一方、ウレタンフォームなどのフォーム材は引っ張り領域と圧縮領域においては撓み特性(バネ定数)に違いがあることが知られている。例えば、図10に示されたウレタンフォームの特性曲線から分かるように、引っ張り領域のバネ定数が圧縮領域のバネ定数の約17倍となることもある。
上記実験結果が示す特性の変化は、この引っ張り領域のバネ定数と圧縮領域のバネ定数がもたらしているものと考えられる。体積変化を伴っているので、単純せん断試験ではないが、この特性の変化は、次のように捉えると理解しやすい。
角度をつけたブロック片5に対して下方向に荷重をかけて圧縮していくとき、上下方向に圧縮が進むが、ここでは、その際の左右方向の動きに着目する。
図11には、傾斜角度が22.5度である傾斜台3を使用した場合の概念図を示している。以下においては、図11におけるブロック片5の左上角A点と右下角B点との相対距離を考える。
初期状態から7.9mm下方に加圧部材4を移動させるまでの間はブロック片5の左上角A点と右下角B点との相対距離が減少していく。すなわち圧縮されていく。
更に加圧部材4を下方に移動させていくと上記A点とB点の相対距離は拡大して行き、圧縮された応力が緩和され加圧部材4が初期状態から15.9mmまで移動した地点で上記A点とB点の相対距離は初期状態と等しくなる。
更に下方に加圧部材4を移動させると上記A点とB点の相対距離は初期状態よりも拡大して行き、引っ張り応力が増加していく。
上記変化が発生する閾値は、ブロック片5の寸法とブロック片5の角度との関係から必然的に発生するものであるが、このことから前記角度変化がウレタンフォーム内の応力分布変化にどの様に影響するのかを理解することができる。
例えば、第1状態におけるブロックの形状は正方形であることに限られない。長方形にすることも可能であるし、その他の多角形にすることも可能である。
また、解析に使用するブロックの形状は多角形である必要性は無く、曲線を使用していても構わない。
また、材料はウレタンフォームに限ることは無く、フォーム材全般や、2枚の織布などの間に編み糸を介在させて立体構造を形成する立体織編物や、長繊維の複数箇所が接合点となるように複雑に絡み合うことで立体構造を形成した不織布などでもよい。特に、引っ張り領域と圧縮領域におけるバネ定数が異なる材料であることが望ましい。
また、指標として角度を表す単位を用いていなくとも、交差する2つの直線の内側と外側を位置表示するような場合、実施的に角度を指標として取り入れているものであるから、本発明に含まれるものである。
また、2点の選び方は2点を結ぶ線分がブロックの対角線となるように選ぶことに限られない。例えば、2点を結ぶ線分がブロックの1辺となるように選択することも可能である。
また、実施例においては、弾性変形経緯として、第1状態を荷重がかかっていない状態とし、第2状態を過重負荷後の状態としているが、第1状態を低負荷がかかっている状態とし、第2状態を高負荷がかかっている状態とすることも可能である。
また、実施例においてはシートクッションを例示しているが、支持部材が弾性変形しながら支持する部位であればよく、シートバックやヘッドレストなどの様々な部位を解析するのに利用することが可能である。
また、本発明の解析方法は車両用シートにのみ適用可能なわけではなく、その他のシートにおいても適用可能である。
2 ブロック
2a ブロック
3 傾斜台
4 加圧部材
5 ブロック片
Claims (3)
- 弾性変形可能な支持部材を使用したシートの着座者を支持する力を解析する支持力解析方法であって、
前記支持部材の弾性変形経緯における第1状態と、当該第1状態と異なる第2状態と、の間で生じる角度変化量を解析の指標とすることを特徴とする支持力解析方法。 - 請求項1に記載の支持力解析方法であって、
前記弾性変形可能な支持部材の中から選んだ2点について、第1状態における2点を結んだ線分の傾きを表す値と、前記支持部材が第1状態から変形した第2状態となることで変位した当該2点を結んだ線分の傾きを表す値と、を解析の指標とすることを特徴とする支持力解析方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の支持力解析方法であって、
前記弾性変形可能な材料がフォーム材であることを特徴とする支持力解析方法。
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