以下、添付図面に従って開示の技術に係る画像評価装置の実施形態の一例について説明する。
[第1実施形態]
図1には、本第1実施形態に係る画像評価装置10の要部機能の一例が示されている。図1に示すように、画像評価装置10は、印刷装置12により印刷された印刷物の画像を評価する装置である。印刷装置12は、画像を示す画像情報が入力されると、画像情報に基づいて記録媒体の一例である記録用紙に画像情報により示される画像を印刷することで印刷物を作成する。
なお、本第1実施形態では、印刷装置12として、シングルパス方式のインクジェットプリンタを採用しているが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えばシングルパス方式のインクジェットプリンタに代えて、シャトルスキャン方式のインクジェットプリンタを採用してもよい。また、インクジェットプリンタに代えて、ゼログラフィ方式のプリンタやサーマルヘッドプリンタ、マグネトグラフィ方式のプリンタ、刷版印刷機などを採用してもよい。また、本第1実施形態では、印刷装置12として、単数又は複数の記録用紙をドラムの外周面に保持して回転させることにより記録用紙を搬送する方式のインクジェットプリンタを採用している。また、印刷装置12は、インク滴を吐出する記録ヘッドを有しており、記録用紙の被記録面を記録ヘッドのインク吐出口に対向させるように記録用紙を通過させることで記録用紙の被記録面にインクを打滴して画像を記録する方式のプリンタである。
印刷装置12は、外部から記録用紙を取り込み、取り込んだ記録用紙を特定方向に搬送する。そして、特定方向に搬送されている記録用紙に対して、入力された画像情報に基づいて記録ヘッドからインク滴を吐出することにより、記録用紙に画像情報により示される画像を記録することで印刷を行う。このように、記録用紙に画像が印刷された印刷物を所定領域(例えば排紙トレイ)に排出する。ここで言う「特定方向」とは、例えば主走査方向に対して交差する方向である副走査方向を指す。なお、ここでは、錯綜を回避するため、「特定方向」の一例として、主走査方向に対して直交する方向を採用している。
本第1実施形態において、印刷装置12により印刷された印刷物とは、良品と認められた見本印刷物の印刷内容に相当する印刷内容を有し且つ見本印刷物と比較される対象である印刷物を指し、以下では、この印刷物を検査対象印刷物16と称する。なお、ここで言う「印刷内容」には、印刷工程で形成された画像の欠陥は含まない。また、図1には、錯綜を回避するために、単一の見本印刷物の印刷内容に相当する印刷内容を有する単一の検査対象印刷物16が例示されているが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、検査対象印刷物16は複数でもよく、この場合、バリアブル印刷によって得られた複数の検査対象印刷物16であることが好ましい。
見本印刷物とは、例えば良品と認められた印刷物を指す。良品と認められた印刷物とは、例えば出荷可能な印刷物であって、視認性が良好(例えば画質が良好)と認められた画像が印刷された印刷物のことである。なお、本第1実施形態では、錯綜を回避するために、上記の「視認性が良好と認められた画像」として、過去に画像評価装置10により視認性が良好と認められた画像を採用しているが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、検査員が肉眼で、事前に定められた基準に従って、欠陥を有しない画像又は欠陥が許容可能な画像であると判断した画像を採用してもよい。なお、以下では、見本印刷物に印刷された画像を見本画像と称す。また、本第1実施形態では、錯綜を回避するために、見本印刷物に印刷された画像を見本画像としているが、これに限らず、見本印刷物に印刷された画像の一部を見本画像としてもよい。
これに対し、検査対象印刷物16とは、例えば見本画像に相当する画像を示す画像情報を含む検査対象印刷物情報に基づいて印刷装置12により記録用紙に対して画像が印刷された印刷物を指す。なお、本第1実施形態では、錯綜を回避するために、検査対象印刷物16に含まれる画像のうち見本画像に相当する画像を検査対象画像としている。また、本第1実施形態では、錯綜を回避するために、検査対象印刷物16に印刷された画像を検査対象画像としているが、これに限らず、検査対象印刷物16に印刷された画像の一部を検査対象画像としてもよい。
図2には、本第1実施形態に係る印刷装置12の一例が示されている。印刷装置12は、記録用紙114の片面(一例として「おもて面」)のみに画像を記録可能とされている。また、印刷装置12は、記録用紙114を供給する給紙部102、記録用紙114に対して浸透抑制処理を行う浸透抑制処理部104、記録用紙114に処理液を付与する処理液付与部106を備えている。更に、印刷装置12は、記録用紙114に色インクを付与して画像記録を行う記録部108、記録用紙114に記録された画像に定着処理を施す定着処理部110及び画像が記録された記録用紙114を搬送して排出する排紙部112を備えている。
給紙部102には、記録用紙114が積載される給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図2における左側)にはフィーダボード122が設けられており、給紙台120に積載された記録用紙114は、フィーダボード122によって1番上から順に1枚ずつ送り出される。フィーダボード122によって送り出された記録用紙114は、給紙胴124aを経由して浸透抑制処理部104の圧胴126aの表面(外周面)に到達する。
給紙胴124aには、記録用紙114の先端部を保持するグリッパ123が、圧胴126aには、記録用紙114の先端部を保持するグリッパ125が設けられている。給紙胴124aのグリッパ123に保持された記録用紙114の先端部が、給紙胴124aと圧胴126aとの接触位置に到達すると、給紙胴124aのグリッパ123から圧胴126aのグリッパ125へ記録用紙114の先端部の受け渡しが行われる。ここで言う「接触位置」とは、例えば記録用紙114の受け渡し位置を指す。なお、給紙胴124a以外の渡し胴も給紙胴124aと相違しない構成とされているので、以下、これらを区別して説明する必要がない場合は符号を付さずに「渡し胴」という。また、圧胴126a以外の圧胴も圧胴126aと相違しない構成とされているので、以下、これらを区別して説明する必要がない場合は符号付さずに「圧胴」という。また、本第1実施形態では、圧胴及び渡し胴は、互いに相違しない大きさ及び形状とされ、給紙胴は圧胴の半径の1/2とされている。圧胴及び渡し胴の各々につき2個のグリッパ125が設けられ、給紙胴に1つのグリッパ121が設けられている。すなわち、渡し胴の胴径及び圧胴の胴径は相違しないため、渡し胴及び圧胴間での記録用紙114の受け渡しを実現すべく、渡し胴にはグリッパ123が半周毎に、圧胴にもグリッパ125が半周毎に各々設けられている。
また、浸透抑制処理部104には、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130及び浸透抑制剤乾燥ユニット132が設けられている。また、圧胴126aの回転(輪転)方向(図2における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130及び浸透抑制剤乾燥ユニット132が各々設けられている。用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には予め定められた温度範囲に制御されるヒータが設けられている。圧胴126aに保持された記録用紙114は、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、これらユニットのヒータによって加熱される。
浸透抑制剤ヘッド130は浸透抑制剤を液滴として吐出することで、圧胴126aに保持される記録用紙114に浸透抑制剤を付着させるものである。ここでは、浸透抑制剤ヘッド130として、後述する記録部108の各記録ヘッド140C,140M,140Y,140Kと相違しない構成のヘッドが適用される。
浸透抑制処理部104の後段に配置された処理液付与部106は圧胴126bを備え、浸透抑制処理部104の圧胴126aと処理液付与部106の圧胴126bとの間には、これらに各々接するように渡し胴124bが設けられている。これにより、浸透抑制処理部104の圧胴126aに保持された記録用紙114は、浸透抑制処理が行われた後に、渡し胴124bを経由して処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。
処理液付与部106には、圧胴126bの回転方向(図2における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136及び処理液乾燥ユニット138が各々設けられている。処理液付与部106の用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136及び処理液乾燥ユニット138は、前述した用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130及び浸透抑制剤乾燥ユニット132と各々相違しない構成であるので説明を省略する。もちろん、浸透抑制処理部104と異なる構成を適用しても良いことは言うまでもない。
処理液付与部106の後段に配置された記録部108は圧胴126cを備え、処理液付与部106の圧胴126bと記録部108の圧胴126cとの間には、これらに各々接するように渡し胴124cが設けられている。これにより、処理液付与部106の圧胴126bに保持された記録用紙114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124cを経由して記録部108の圧胴126cに受け渡される。
記録部108には、CMYKの4色のインクに各々対応した記録ヘッド140C,140M,140Y,140Kと、溶媒乾燥ユニット142a,142bとが設けられている。記録ヘッド140C,140M,140Y,140K及び溶媒乾燥ユニット142a,142bは、圧胴126cの回転方向(図2における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置に各々設けられている。なお、以下では、記録ヘッド140C,140M,140Y,140Kを区別して説明する必要がない場合は末尾のアルファベットを省略して「記録ヘッド140」と称する。
本第1実施形態では、各記録ヘッド140として、前述の浸透抑制剤ヘッド130や処理液ヘッド136と同様に、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)を適用している。すなわち、各記録ヘッド140は、それぞれ対応する色のインク滴を圧胴126cに保持された記録用紙114に向けて吐出する。
圧胴126cの上方には、記録ヘッド140を保持するヘッドホルダ40が配置されており、各記録ヘッド140は圧胴126cの外周面の周方向に沿って互いに予め定められた角度を有するようにヘッドホルダ40によって保持されている。すなわち、ヘッドホルダ40は、記録ヘッド140を、記録ヘッド140のインク吐出面αを圧胴126cの外周面に対面させると共に、圧胴126cの外周面に保持された記録用紙114に画像を記録する画像記録位置に固定する。
各記録ヘッド140は、それぞれ圧胴126cに保持される記録用紙114における画像記録領域の最大幅に対応する長さを有する。また、そのインク吐出面αには画像記録領域の全幅に亘ってインク吐出用のノズル(図3の符号161を参照)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各記録ヘッド140は圧胴126cの回転方向(記録用紙114の搬送方向)と略直交する方向に延在するように固定設置されている。なお、本第1実施形態では上記のようにCMYKの4色のインクを用いて画像を記録する構成を例に挙げているが、これに限らず、インクの色やその組み合わせは変更しても良い。例えば必要に応じて淡インク(例えばライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インク)や濃インク、特別色インクを追加しても良い。また、各色のヘッドの配置順序についても図2に示した順序に限られるものではない。
上記のように、本第1実施形態では、インクの色毎に、記録用紙114の被記録面における画像記録領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドが設けられている。そのため、記録用紙114の搬送方向(副走査方向)について、記録用紙114と各記録ヘッド140を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録用紙114の画像記録領域に画像を記録できる。これにより、記録用紙114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドを用いる場合と比較して画像を高速に記録可能であり、プリント生産性が向上する。
また、溶媒乾燥ユニット142a,142bは、前述した用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138のように、予め定められた温度範囲に制御されるヒータを含んで構成される。後述するように、記録用紙114上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク滴が付着すると、記録用紙114上にはインク凝集体が形成されると共に、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録用紙114上に残った溶媒成分(液体成分)は、記録用紙114の反り返りだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで本第1実施形態では、各記録ヘッド140から各色のインク滴が記録用紙114上に付着された後、溶媒乾燥ユニット142a,142b(以下、区別して説明する必要がない場合は「溶媒乾燥ユニット142」と称する。)のヒータによって熱を与えることで溶媒成分を蒸発させる乾燥処理を行っている。
また、記録部108の後段に配置された定着処理部110は圧胴126dを備え、記録部108の圧胴126cと定着処理部110の圧胴126dとの間には、これらに各々接するように渡し胴124dが設けられている。これにより、記録部108の圧胴126cに保持された記録用紙114は、記録部108で各色のインク滴が付着された後に、渡し胴124dを経由して記録部108の圧胴126cに受け渡される。定着処理部110には、圧胴126dの回転方向(図2における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126dの表面に対向する位置に加熱ローラ148a,148bがそれぞれ設けられている。
定着処理部110の後段に配置された排紙部112には、定着処理が施された記録用紙114を受ける排紙胴150が設けられている。また、排紙部112には、該記録用紙114を積載する排紙台152が設けられている。更に、排紙部112には、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154が設けられている
次に、図3を参照して記録ヘッド140について説明する。図3(A)(B)記録ヘッド140のインク吐出面α側の平面視概略透視図が示されている。記録ヘッド140は、一例として図3(A),(B)に示すように、インク滴の吐出口であるノズル161と、各ノズル161に対応する圧力室162等から成る複数のインク室ユニット163がマトリクス状に(2次元的に)配置された構成とされている。これにより、ヘッド長手方向(記録用紙114の搬送方向と直交する主走査方向)に沿った実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化、ひいては記録用紙114上に形成されるドットピッチの高密度化を実現している。なお、記録ヘッド140は図3(A)に示す構成に限られるものではなく、例えば図3(C)に示すように、複数のノズル161が2次元に配列された短尺のヘッドブロック160を千鳥状に配列して繋ぎ合わせた構成でも良い。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べた構成でも良い。
圧力室162はその平面形状が略正方形とされ、対角線上の両隅部にノズル161と供給口164が設けられている。一例として図4に示すように、各圧力室162は供給口164を介して共通流路165と連通されている。共通流路165はインク供給源であるインク供給タンク(図示省略)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路165を介して各圧力室162に分配供給される。圧力室162の天面を構成すると共に、共通電極としての機能を兼ね備えた振動板166には、個別電極167を備えた圧電素子168が接合されている。圧電素子168は個別電極167に駆動電圧が印加されると変形し、この圧電素子168の変形に伴ってノズル161からインク滴が吐出される。そして、ノズル161からのインク滴の吐出に伴い、共通流路165から供給口164を通って新しいインクが圧力室162に供給される。
なお、本第1実施形態では、ノズル161からインク滴を吐出させる吐出力発生手段として圧電素子168を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、圧電素子168に代えて圧力室162内にヒータを設け、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用しても良い。
一例として図5に示すように、本第1実施形態に係る記録ヘッド140は、投影ノズルピッチの高密度化を実現している。これは、上述した構成のインク室ユニット163が、主走査方向に沿う行方向と、主走査方向に対して直交しない一定角度θを成す傾斜した列方向と、に沿って一定の配列パターンでマトリクス状に多数配列されていることで実現される。すなわち、主走査方向に対して一定角度θを成す方向に沿ってインク室ユニット163が一定のピッチdで複数配列されていることで、主走査方向に沿った投影ノズルピッチPはd×cosθとなる。そのため、主走査方向については、各ノズル161が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱われる。これにより、主走査方向に沿って1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)にも及ぶ高密度にノズルが配列されたに等しい記録ヘッドが得られる。
また、本第1実施形態では、画像が記録され得る幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドを採用している。このフルラインヘッドにより、各ノズルからインク滴を吐出させて記録用紙114の幅方向(記録用紙114の搬送方向と略直交する方向)に沿った1ラインを記録する際のノズル駆動方式としては、全ノズルを同時に駆動する方式が例示できる。また、この他にも、ノズルを一方から他方に向けて順次駆動する方式やノズルを複数ブロックに分割し、ブロック毎に一方から他方に向けて順次駆動する方式が例示できる。なお、ここで言う「1ライン」とは、1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るラインを指す。また、本明細書では、上記何れかの駆動方式によって記録用紙114の幅方向に沿った1ラインを記録させるためのノズルの駆動を主走査と定義する。
なお、図3(A),(B)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル161を駆動する場合は、上記(3)の主走査(ノズル駆動方式)が好ましい。具体的には、ノズル161-11、161-12、・・・・・・・・161-16を1つのブロックとして、記録用紙114の搬送速度に応じてノズル161-11、161-12、・・・・、161-16を順次駆動することで記録用紙114の幅方向に1ラインを記録する。また、他には、ノズル161-21、・・・・、161-26が1つのブロックとして取り扱われる。
一方、本明細書では、上述したフルラインヘッドと記録用紙114とを相対移動させることによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)の記録を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本第1実施形態では記録用紙114の搬送方向が副走査方向、それに直交する記録用紙114の幅方向が主走査方向となる。
なお、ノズル161の配置構造は図示の例に限定されない。例えば、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。また、開示の技術は、ライン型ヘッドによる記録方式に限定されるものではなく、例えばシリアル方式を適用してもよい。すなわち、記録用紙114の幅方向の長さに満たない短尺のヘッドを記録用紙114の幅方向に走査させて当該幅方向の記録を行うようにしてもよい。この場合、1回の幅方向の記録が終わると記録用紙114を幅方向と略直交する方向に予め定められた量だけ移動させて、次の記録領域の記録用紙114の幅方向の記録を行い、この動作を繰り返す。これにより、記録用紙114の記録領域の全面にわたって記録を行うことができる。
図6は、記録部108に含まれる圧胴126cの構成の一例を示す概略構成図である。図6に示すように、圧胴126cは円柱状に形成されている。圧胴126cの外周面には保持領域X,Yが設けられている。保持領域X,Y(以下、区別して説明する必要がない場合は符号を付さずに「保持領域」という。)は、圧胴126cの外周面を周方向に沿って予め定められた間隔(ここでは一例として半周単位)で区分して得た領域である。
また、保持領域X,Yの各々には保持手段の一例であるグリッパ125が設けられており、各保持領域のグリッパ125は、渡し胴124cから送り出された記録用紙114を受け取ると共に、対応する保持領域に保持する。このように保持領域に保持された記録用紙114は圧胴126cが周方向(一例として図6に示す円弧矢印方向)に輪転することにより搬送される。
図7には、本第1実施形態に係る印刷装置12の電気系の構成の一例が示されている。図7に示すように、印刷装置12はシステム制御部182を備えている。システム制御部182には、温度センサ145、通信インターフェース(I/F)部180、メモリ184、UIパネル185、モータドライバ186、ヒータドライバ188、給紙ドライバ189及びプリント制御部190が各々接続されている。なお、プリント制御部190とシステム制御部182とを統合して1つのプロセッサで構成しても良い。
通信I/F部180は、送信装置の一例であるホストコンピュータ196から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信I/F部180における通信プロトコルとしてはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインターフェースや、セントロニクス等のパラレルインターフェースの何れかが適用される。ホストコンピュータ196から送出された画像データは通信I/F部180を介して印刷装置12に取り込まれ、メモリ184に一旦記憶される。
メモリ184は、システム制御部182を通じてデータの読み書きが行われる一次記憶部と、半導体素子を備えたEEPROMやハードディスクを備えた磁気記憶媒体などの二次記憶部と、を含んで構成されている。このように構成されたメモリ184は、画像データの一時記憶領域として利用されると共に、プログラムの展開領域及びCPU(中央処理装置)の演算作業領域としても利用される。また、メモリ184には、システム制御部182のCPUが実行する処理に必要な各種データ等が記憶されている。
UIパネル185は、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等から構成され、各種情報がディスプレイの表示面に表示されると共に、利用者がタッチパネルに触れることにより情報や指示が受け付けられる。なお、本第1実施形態では、UIパネル185を適用した形態例を挙げて説明しているが、これに限らず、液晶ディスプレイなどの表示部とテンキーや操作ボタンなどが設けられた操作部とが別々に設けられた形態としても良い。
システム制御部182は、CPU及びその周辺回路等から構成され、予め定められたプログラムに従って印刷装置12の全体を制御する制御装置として機能すると共に、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システム制御部182は、ホストコンピュータ196との情報の授受、メモリ184に対するアクセス、UIパネル185で受け付けられた情報や指示の取得及びUIパネル185による情報の表示等を行う。また、搬送系のモータ198やヒータ143を制御するための制御信号を生成する。
また、システム制御部182はプログラム格納部182Aを内蔵している。プログラム格納部182Aには検査対象画像を印刷するための検査対象画像印刷処理プログラムや後述する部分画像を印刷するための部分画像印刷処理プログラムなどの各種プログラムが格納されている。各種プログラムは、CPUによって読み出されて実行される。プログラム格納部はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いても良いし、磁気ディスクなどを用いても良い。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いても良い。もちろん、これらの記憶媒体のうちの1つ又は複数を備えても良い。なお、プログラム格納部182Aは動作パラメータ等の記億手段と兼用しても良い。
モータドライバ186にはモータ198が接続されており、モータドライバ186はシステム制御部182からの指示に従ってモータ198を駆動する。なお、図7に示すモータ198は実際には複数個のモータを含み、例えば図2に示す圧胴126a〜126dや給紙胴124a、渡し胴124b〜124d、排紙胴150を駆動するモータ等が含まれている。ヒータドライバ188にはヒータ143が接続されており、ヒータドライバ188はシステム制御部182からの指示に従ってヒータ143を駆動する。なお、図7に示すヒータ143も実際には複数個のヒータを含む。例えば図2に示す用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138、溶媒乾燥ユニット142a、142bのヒータ、加熱ローラ148a,148bに内蔵されるヒータ等が含まれている。給紙ドライバ189には給紙部102が接続されており、給紙ドライバ189はシステム制御部182からの指示に従って給紙部102を駆動する。また、給紙部102は、記録用紙114を1枚給紙する毎(例えば1枚の給紙を完了する毎)に、1枚の給紙を完了したことを示す給紙完了信号をシステム制御部182に出力する。従って、システム制御部182は、入力された給紙完了信号に基づいて、給紙が完了したか否かを1枚単位で把握する。なお、給紙が完了したか否かの判定は、例えば記録用紙114の先後端を検出するセンサ(例えばフォトセンサ)をフィーダボード122と給紙胴124aとの間に設置し、このセンサが記録媒体の後端を検出した際に出力した検出信号に基づいて行われる。
プリント制御部190にはヘッドドライバ194、処理液ヘッドドライバ195、浸透抑制剤ヘッドドライバ197、画像バッファメモリ192が各々接続されている。プリント制御部190は、信号処理機能を有する。信号処理機能とは、システム制御部182からの指示に従い、メモリ184に記憶されている画像データから画像記録用のデータや、浸透抑制剤吐出用の信号、処理液吐出用の信号を生成するための処理を行う機能を指す。生成された画像記録用のデータ(ドットデータ)はヘッドドライバ194に供給され、生成された浸透抑制剤吐出用の信号は浸透抑制剤ヘッドドライバ197に供給され、生成された処理液吐出用の信号は処理液ヘッドドライバ195に供給される。また、プリント制御部190で上記の信号処理が行われる際には、画像データやパラメータ等のデータが画像バッファメモリ192に一時的に格納される。
ヘッドドライバ194には記録ヘッド140が接続されており、ヘッドドライバ194は、駆動回路を含んで構成される。この駆動回路は、プリント制御部190から供給された画像記録用のデータに基づいて記録ヘッド140の圧電素子168に印加するための駆動信号を生成すると共に、該駆動信号を圧電素子168に印加して圧電素子168を駆動する。また、圧電素子168を駆動して記録ヘッド140からインク滴を吐出させる際には、ヘッドドライバ194によって記録ヘッド140の吐出液滴量や吐出タイミングの制御も行われる。これにより、要求に応じたサイズのドットが要求に応じた配置で記録用紙114に記録される。なお、ヘッドドライバ194は、記録ヘッド140の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んで構成しても良い。
また、浸透抑制剤ヘッドドライバ197には浸透抑制剤ヘッド130が接続されており、浸透抑制剤ヘッドドライバ197はプリント制御部190から供給された浸透抑制剤吐出用の信号に従って、浸透抑制剤ヘッド130から浸透抑制剤を吐出させる。また、処理液ヘッドドライバ195には処理液ヘッド136が接続されており、処理液ヘッドドライバ195はプリント制御部190から供給された処理液吐出用の信号に従って、処理液ヘッド136から処理液を吐出させる。
ところで、見本画像と検査対象画像との単純な濃度差分値から、優良な印刷物(スジ欠陥が視認できない検査対象画像を含む検査対象印刷物16)であるか否かを評価する画像評価装置が知られている。しかし、従来の画像評価装置では、スジ欠陥の程度(例えば微少なスジ欠陥)によっては許容可能なスジ欠陥であるか否かを判断することが困難である。そのため、スジ欠陥の程度によっては検査対象印刷物16の評価精度が低下する。また、従来の画像評価装置では、バリアブル印刷が実施された場合、検査対象印刷物16の印刷枚数に応じた枚数の見本印刷物の各々に対して見本画像の読み取りが必要となる。加えて、検査対象印刷物16についても検査対象画像の全領域を対象にした読み取りを要する。そのため、評価結果を得るまでに膨大な時間が要することが予想される。そこで、このような不具合を解消すべく、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、一例として図1に示すように見本画像生成部11、見本画像情報データベース(DB)13、読取部18、予測部19、抽出部20、評価部22及び警告部24を備えている。
見本画像生成部11は、予め定められた印刷内容(例えば基礎となる画像であって許容できない欠陥を含まない画像)を示す印刷内容情報に基づいて、見本印刷物に含まれる見本画像を想定した仮想見本画像を示す見本画像情報を生成する。そして、生成した見本画像情報を見本画像情報DB13に記憶する。なお、印刷内容情報は、所定の記憶手段(例えば後述の記憶部66)に予め記憶されている。
また、ここで言う「仮想見本画像」とは、例えば、コンピュータにより見本画像を示す画像情報が読み込まれ、読み込まれた画像情報がソフトウェアによって処理されて出力された非印刷画像のことである。本第1実施形態では、図1に示すように見本印刷物のイメージ画像(例えばコンピュータにより仮想印刷を行って得たイメージ画像)に含まれる特定領域内の画像を指す。ここで言う「特定領域」とは、例えば、検査対象印刷物16に含まれる検査対象画像との比較対象とされる領域を指す。
また、本第1実施形態では、見本画像情報として、読取部18の特性の影響が反映されていない(読取部18の特性の影響が排除された)見本画像情報を採用している。なお、ここで言う「読取部18の特性」には、例えば読取部18としてスキャナを採用した場合、スキャン画像の縦横解像度、MTF(Modulation Transfer Function)、色特性、画素開口率、スキャナの像構造特性などが含まれる。また、ここで言う「読取部18の特性」には、読取部18における構成部材の経時劣化の特性が含まれる。読取部18における構成部材の経時劣化の特性としては、読取部18の構成部材のうち経時劣化が予想される構成部材であって画像の読取結果に影響を及ぼすことが事前に予想される構成部材の経時劣化の特性が例示できる。
また、本第1実施形態では、見本画像情報として、非形成要因特性の影響が反映されていない(非形成要因特性の影響が排除された)見本画像情報を採用している。なお、ここで言う「非形成要因特性」とは、例えば、印刷装置12の特性であって検査対象画像における特定方向の筋状模様を有する筋状欠陥画像の形成要因とならない非形成要因特性を指す。また、ここで言う「非形成要因特性」には、印刷装置12における構成部材の経時劣化の特性が含まれる。印刷装置12における構成部材の経時劣化の特性としては、印刷装置12の構成部材のうち経時劣化が予想される構成部材であって画像の欠陥に影響を及ぼすことが事前に予想される構成部材の経時劣化の特性が例示できる。更に、ここで言う「非形成要因特性」には、検査対象画像の見え方を予測する様々な特性が含まれる。色の見え方に影響を及ぼす特性の一例としては、色分解、ハーフトーン、カラープロファイル及びインク分光特性などが挙げられる。また、像構造の特性の一例としては、MTF(CTF)、解像度、インク滴のサイズ、粒状、幾何補正などが含まれる。これらの特性を特定するためのモデルの一例としては、打滴データ生成部、インク着弾状態予測部、反射率分布予測部(クベルカムンクモデル・ノイゲバウアーモデルなど)及び幾何補正部が挙げられる。
読取部18は、検査対象印刷物16に含まれる部分画像を読み取る。予測部19は、読取部18により読み取られた部分画像を示す部分画像情報に基づいて検査対象印刷物16に含まれる検査対象画像であって仮想見本画像に相当する画像である検査対象画像を予測する。
抽出部20は、見本画像情報DB13に記憶されている見本画像情報と予測部19により予測された検査対象画像を示す検査対象画像情報との差分値を算出する。そして、算出した差分値に基づいて、検査対象画像情報により示される検査対象画像から、特定方向の筋状模様(例えば特定方向に線状に延びた模様)を有する筋状欠陥(本第1実施形態では、一例として筋状欠陥を示す画像である筋状欠陥画像)を抽出する。なお、本第1実施形態では、検査対象画像情報として、上述した読取部18の特性の影響が反映されていない(読取部18の特性の影響が排除された)検査対象画像情報を採用している。また、本第1実施形態では、検査対象画像情報として、上述した非形成要因特性の影響が反映されていない(非形成要因特性の影響が排除された)検査対象画像情報を採用している。
評価部22は、筋状欠陥の視認性を評価する。ここで言う「筋状欠陥の視認性」とは、例えば、抽出部20により抽出された筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥の視認性を指す。また、ここで言う「視認性を評価する」とは、例えば、筋状欠陥画像の視認強度を導出することを指す。なお、本第1実施形態では、評価部22が筋状欠陥画像の視認強度を導出する例を挙げて説明するが、これに限らず、例えば、導出した視認強度が特定の人間の視覚により判断可能か否かを判定する判定機能を評価部22に担わせてもよい。ここで言う「特定の人間」とは、例えば検査対象物16を観察する者を指す。また、ここで言う「判定機能」とは、例えば後述の警告要否判定部44の機能に相当する機能を指す。
警告部24は、評価部22により視認性が評価された筋状欠陥が視認可能な筋状欠陥であると判定された場合に警告する。ここで言う「視認可能な筋状欠陥」とは、例えば、特定の人間にとって視認可能な筋状欠陥のことを指す。
図8には、読取部18の要部機能の一例が示されている。読取部18は、読取実施部23、排除部25及び除去部27を含む。読取実施部23は、検査対象印刷物16における部分画像の読み取りを実施し、部分画像を示す部分画像情報を取得する。ここで、読取実施部23は、特定方向の解像度が特定方向に交差する方向の解像度よりも低くなるように部分画像を読み取る。すなわち、本第1実施形態では、読取実施部23が、特定方向の解像度が主走査方向の解像度よりも低くなるように部分画像を読み取る。なお、ここでは、仮想見本画像における特定方向の解像度と主走査方向の解像度は揃っており、部分画像を読み取る場合の主走査方向の解像度として、仮想見本画像の特定方向の解像度(主走査方向の解像度)と相違しない解像度が採用されている。
排除部25は、読取実施部23により取得された部分画像情報から読取部18の特性の影響及び非形成要因特性の影響を排除する。なお、ここで言う「読取部18の特性」には、上述した特性方向の解像度と主走査方向の解像度とが異なるという特性は含まれない。また、ここでは、錯綜を回避するため、「読取部18の特性の影響」として、見本画像情報に反映されていない読取部18の特性の影響を採用しており、「非形成要因特性の影響」として、見本画像情報に反映されていない非形成要因特性の影響を採用している。また、ここでは錯綜を回避するために、排除部25が、読取実施部23により取得された部分画像情報から読取実施部23の特性の影響を排除する例を挙げて説明するが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、部分画像情報から読取実施部23の特性の影響に加え、排除部25の特性の影響も排除するようにしてもよい。また。読取実施部の特性の影響を無視して、排除部25の特性の影響を排除するようにしてもよい。
除去部27は、排除部24により読取部18の特性の影響及び非形成要因特性の影響が排除された部分画像情報により示される部分画像から特定の筋状模様(例えば所定の面積以上の筋状模様)を検出する。そして、検出した筋状模様を示す筋状模様情報を部分画像情報から除去し、除去結果を示す除去結果情報を生成する。除去結果情報は、筋状模様情報を除去したか否かを示す情報を含む。ここで、筋状模様情報を除去していない場合とは筋状模様が検出されなかった場合を指す。また、筋状模様情報を除去した場合、除去結果情報には筋状模様情報が含まれる。なお、本第1実施形態では、特定の筋状模様を例示しているが、これに限らず、例えば、特定の筋状模様に代えて、ノズルチェックパターンの模様を採用してもよい。この場合、ノズルチェックパターンを検査対象領域16の余白領域に印刷し、印刷されたノズルチェックパターンを読取部18で読み取ればよい。また、ノズルチェックパターンは余白領域の一部に形成されていてもよいし、検査対象領域16の全幅に亘って形成されていてもよい。ノズルチェックパターンを採用した場合、不良ノズルの位置を特定し、特定した不良ノズルの位置から如何なる筋状欠陥が形成されるのか(実際に形成される筋状欠陥の態様)を予測する必要がある。この場合、印刷装置12の特性(経時劣化の特性を含む)やインク滴の大きさ等の種々の環境条件と筋状欠陥の態様を表す態様情報とが予め関連付けられたルックアップテーブル又はこのルックアップテーブルに相当する演算式(ルックアップテーブルの入力を変数としてルックアップテーブルの出力を解とする演算式)を用いることで、筋状欠陥の態様を予測することが可能となる。また、本第1実施形態では、読取部18に除去部27が搭載されている場合を例示しているが、除去部27がなくても開示の技術は成立する。この場合、後述する除去結果取得部19Bは不要となる。
図9には、予測部19の要部機能の一例が示されている。予想部19は、仮想検査対象画像生成部19A、除去結果取得部19B、検査対象画像生成部19C及び解像度調整部19Dを含む。仮想検査対象生成部19Aは、予め定められた印刷内容を示す印刷内容情報(例えば見本画像生成部11で用いたものに相当するもの)に基づいて、検査対象印刷物16に含まれる検査対象画像を想定した仮想検査対象画像を示す仮想検査対象画像情報を生成する。
除去結果取得部19Bは、除去部27により生成された除去結果情報を取得する。解像度調整部19Dは、除去部27によって筋状模様情報が除去された部分画像情報により示される部分画像の解像度の調整を行う。本第1実施形態では、解像度調整部19Dは、除去部27により筋状模様情報が除去された部分画像情報により示される部分画像の位置合わせを行ってから部分画像の特定方向の解像度を主走査方向の解像度に揃える。例えば、解像度調整部26は、部分画像の特性方向の画素に対して補間処理を行うことにより、部分画像の特定方向の解像度を主走査方向の解像度に揃える。なお、ここで言う「位置合わせ」とは、例えばスキューや搬送方向へのずれ等を補正する処理を指す。
検査対象画像生成部19Cは、仮想検査対象生成部19Aで生成された仮想検査対象画像情報を、解像度の調整が行われた部分画像情報及び除去結果取得部19Bで取得された除去結果情報を加味して調整することにより前述の検査対象画像情報を生成する。例えば、除去結果情報に筋状模様情報が含まれていない場合は、部分画像情報により示される部分画像と事前に想定された部分画像との差異及び事前に準備された情報に基づいて仮想検査対象画像情報を調整する。一方、除去結果情報に筋状模様情報が含まれている場合は、筋状模様情報、部分画像情報により示される部分画像と事前に想定された部分画像との差異、事前に準備された情報に基づいて仮想検査対象画像情報を調整する。ここで言う「調整」とは、例えば、検査対象画像における欠陥箇所の位置、大きさ、形状を予測し、予測結果を仮想検査対象画像情報に反映させることを指す。「事前に準備された情報」とは、例えば、印刷装置12の特性及び読取部18の特性などの検査対象画像における欠陥箇所の予測に寄与する予め定められた1つ以上の情報を指す。また、検査対象画像生成部19は、上記のように生成された検査対象画像情報から読取部18の特性の影響及び非形成要因特性の影響を排除する。
図10には、抽出部20の要部機能の一例が示されている。図10に示すように、抽出部20は、減算部28、筋状領域切出部30及び特性方向画像抽出部32を含む。
減算部28は、検査対象画像生成部19Cにより生成された検査対象画像情報と見本画像情報DB13に記憶されている対応する見本画像情報との差分値を算出する。ここでは、例えば減算部28は、検査対象画像生成部19Cにより生成された検査対象画像情報により示される検査対象画像と見本画像情報DB13に記憶されている対応する見本画像情報により示される仮想見本画像との濃度についての差分値を算出する。
筋状領域切出部30は、検査対象画像情報により示される検査対象画像のうちの予め定められた領域を対象にして、減算部28で算出された差分値に基づいて、筋状模様を有する領域(以下、「筋状領域」という)を切り出す。なお、ここで言う「筋状模様」は特定方向の筋状模様の他に、特定方向以外の方向の筋状模様も含まれる。また、ここで言う「予め定められた領域」とは、例えば筋状模様が形成される領域として事前に想定された領域を指す。本第1実施形態では、「筋状模様が形成される領域として事前に想定された領域」の一例として、印刷装置12の構造上の欠陥箇所、インク吐出量が多い領域、及び読取部18の特性(一例として読取実施部23の特性)に基づいて特定された領域を採用している。ここでは、一例として、印刷装置12の構造上の欠陥箇所、インク吐出量が多い領域、及び読取実施部23の構造上の欠陥箇所の各々に対応する領域を「筋状模様が形成される領域として事前に想定された領域」として採用している。
このように、本第1実施形態では、「筋状模様が形成される領域として事前に想定された領域」は、印刷装置12の特性及び読取部18の特性に基づいて特定しているが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、「筋状模様が形成される領域として事前に想定された領域」は、印刷装置12の特性又は読取部18の特性に基づいて特定されてもよい。また、印刷装置12の特性は印刷装置12の構成部材に経時劣化の特性を含んでいてもよい。例えば、印刷装置12の構成部材のうち経時劣化が予想される構成部材であって画像の欠陥に影響を及ぼすことが事前に予想される構成部材の経時劣化の特性を加味して「筋状模様が形成される領域として事前に想定された領域」を特定してもよい。また、読取部18の特性は読取部18の構成部材に経時劣化の特性を含んでいてもよい。例えば、読取部18の構成部材のうち経時劣化が予想される構成部材であって画像の読取結果に影響を及ぼすことが事前に予想される構成部材の経時劣化の特性を加味して「筋状模様が形成される領域として事前に想定された領域」を特定してもよい。
特定方向画像抽出部32は、筋状領域切出部30により切り出された筋状領域から特定方向の筋状模様を有する筋状欠陥(本第1実施形態では、一例として筋状欠陥を示す画像である筋状欠陥画像)を抽出し、筋状欠陥画像を示す筋状欠陥画像情報を生成する。すなわち、特定方向画像抽出部32は、特定方向以外の方向の筋状模様の画像及びハーフトーンなどによる粒状模様の画像を排除することで特定方向の筋状模様を有する筋状欠陥画像を抽出して筋状欠陥画像情報を生成する。ここで、粒状成分を排除して特定方向の筋状欠陥を抽出する抽出アルゴリズムの他の例としては、複数のバンドパスフィルタを用いた抽出アルゴリズムや線検出フィルタを用いた抽出アルゴリズム、微分フィルタ(2回微分フィルタ)を用いた抽出アルゴリズムが例示できる。なお、以下では、説明の便宜上、特定方向の筋状模様を有する筋状欠陥画像を単に「筋状欠陥画像」と称する。
図11には、評価部22の要部機能の一例が示されている。図11に示すように、評価部22は、第1画像合成部34、変換部36、特定成分分解部38、第2画像合成部40及び視覚モデル評価実施部42を含む。第1画像合成部34は、見本画像情報により示される仮想見本画像(例えば減算部28で使用された見本画像情報により示される仮想見本画像)と特定方向画像抽出部32により抽出された筋状欠陥画像とを合成する。本第1実施形態では、第1画像合成部34は、例えば、仮想見本画像と特定方向画像抽出部32により抽出された筋状欠陥画像とを合成し、合成して得た合成画像である評価対象画像を示す評価対象画像情報を生成する。
変換部36は、評価対象画像情報により示される評価対象画像及び見本画像情報により示される仮想見本画像を対象にして色変換及び視覚フィルタ処理を行う。ここで言う「色変換」とは、デバイス依存の色空間からデバイス非依存の色空間への変換を指す。デバイス依存の色空間とは、例えば印刷装置12に依存した色空間(例えば印刷に供する色材による分光特性に依存した色空間)を指す。デバイス非依存の色空間とは、例えば人間の視覚に依存する色空間(例えば人間の目の分光特性に依存した色空間)のことを指し、具体的にはXYZ,Lab,Luv,HSV,VD,RGB,CIECAMなどが挙げられる。
上記の「視覚フィルタ処理」とは、人間の視覚特性に対応する空間周波数(人間の視覚特性に近い空間周波数として予め定められた空間周波数)を得るローパスフィルタとして機能する関数を利用して視覚変換を行う処理を指す。「人間の視覚特性に近い空間周波数として予め定められた空間周波数」とは、例えば人間の目に対する刺激が一般的に強いとされる空間周波数を除く可視領域の空間周波数を指す。また、ここでは、ローパスフィルタとして機能する関数の一例として、人間の視覚特性に対応する空間周波数特性に基づいて決定されたVTF関数を採用している。従って、ここで言う「視覚フィルタ処理」とは、例えば、VTF関数を利用して、評価対象画像情報により示される評価対象画像及び見本画像情報により示される仮想見本画像を、人間の視覚特性に対応しない空間周波数を除去した評価対象画像及び仮想見本画像に変換する処理を指す。
特定成分分解部28は、変換部36により変換されて得た評価対象画像及び仮想見本画像の各々を、特定の物理量成分に分解する。本第1実施形態では、特定成分分解部28は、評価対象画像及び仮想見本画像の各々を複数の空間周波数の各々及び複数の方向の各々に分解することで、複数の空間周波数の各々についての周波数分解画像及び複数の方向の各々についての方向分解画像を得る。
視覚モデル評価実施部42は、抽出部20により抽出された筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥に対して、マスク効果視覚モデルを利用した視認性の評価を実施し、筋状欠陥の視認性の強度を示す情報(以下、視認性強度情報という)を生成する。すなわち、周波数分解画像の各々及び方向分解画像の各々に対して視認性を評価(マスク効果を評価)し、画像毎に視認性強度情報を生成する。ここで言う「視認性の強度」とは、例えば0〜9の数値による10段階の強度で示され、数値が大きくなるほど視認性の強度が強い(視認性が良好である)ことを示す。なお、以下では、周波数分解画像と方向分解画像とを区別して説明する必要がない場合は「分解画像」と称する。
本第1実施形態では、視覚モデル評価実施部42は、例えば各分解画像に対して隣接する周波数分解画像の影響及び全方向の方向分解画像の影響を加味した画像の視認性を評価し、視認性強度情報を生成する。ここで言う「隣接する周波数分解画像の影響」とは、例えば複数の周波数分解画像のうち空間周波数が隣接する周波数分解画像において一方の周波数分解画像が他方の周波数分解画像に与える影響を指す。また、ここで言う「全方向の方向分解画像の影響」とは、全方向の方向分解画像において特定の方向分解画像が他方の方向分解画像に与える影響を指す。なお、これに限らず、視覚モデル評価実施部42は、各分解画像に対して他の分解画像の少なくとも1つの影響を加味した画像の視認性を評価してもよい。また、本第1実施形態では、視覚モデル評価実施部42は、マスク効果視覚モデルを利用した評価アルゴリズムの一例として、VDP(visible difference predictor)を利用した評価を採用している。ここで言う「VDP」とは、例えば人間の視覚特性(マスキング)などをモデル化し、二つの画像間の人間の目に見える誤差を推定する手法を指す。なお、評価アルゴリズムの他の例としては、HDR−VDP−2が挙げられる。
第2画像合成部40は、視覚モデル評価実施部42で分解画像毎に生成された視認性強度情報を、第1画像合成部34により生成された評価対象画像情報により示される評価対象画像に合成し、合成して得た画像を示す評価結果情報を生成する。例えば、第1画像合成部34により生成された評価対象画像情報により示される評価対象画像の各画素に対して、各周波数分解画像及び各方向成分画像における対応画素の視認性強度情報を関連付ける。ここで、周波数分解画像は、空間周波数によっては評価対象画像の数画素分(例えば2×2画素分)が1画素として表れるので、この場合は、周波数分解画像の1画素が評価対象画像における対応する数画素に関連付けられることとなる。なお、以下では、第2画像合成部40で合成された画像を「最終合成画像」という。
図12には、警告部24の要部機能の一例が示されている。図12に示すように、警告部24は、警告要否判定部44及び警告実施部48を含み、警告要否判定部44には参照情報DB46が接続されている。参照情報DB46には、警告の要否を判定する際に参照される情報(以下、「参照情報」という)が記憶されている。警告要否判定部44は、参照情報DB46の参照情報を参照して、視覚モデル評価実施部42で生成された評価結果情報に基づいて警告の要否を判定する。本第1実施形態に係る参照情報DB46には、参照情報の一例として、視認性の強度毎に、視認可能か否かを示す判定情報が記憶されている。従って、警告要否判定部44は、判定情報に基づいて、評価結果情報に含まれる視認性強度情報により示される視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定することができる。なお、ここで言う「判定情報」は、例えば特定の人間による主観的な評価結果(例えば官能試験による評価結果)に基づいて事前に定められているが、これに限らず、例えばコンピュータによるシミュレーションの結果に基づいて事前に定められてもよい。
警告実施部48は、警告要否判定部44により評価結果情報に含まれる視認性強度情報により示される視認性の強度が警告を要すると判定された場合(筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥が視認可能な筋状欠陥であると評価された場合)に警告を実施する。本第1実施形態では、警告実施部48による警告態様として、例えば視認可能な筋状欠陥であると評価された筋状欠陥を含む検査対象印刷物16に対して直接処理を施すことにより警告する態様と、所定情報を可視表示する態様とを採用している。ここで言う「直接処理」の一例としては、ソーティング処理が挙げられる。また、この他にも、例えば検査対象印刷物16における筋状欠陥の位置の特定を支援する特定支援印を付与する処理や検査対象印刷物16における筋状欠陥を特定方向へ延ばした位置に特定支援印を付与する処理が例示できる。
抽出部20、評価部22及び警告部24は、例えば画像評価装置10に内蔵された図13に示すコンピュータ60及びその他の入出力デバイスによって実現される。図13には、画像評価装置10の電気系の要部構成の一例が示されている。なお、以下では、見本印刷物及び検査対象印刷物16を区別して説明する必要がない場合は単に「印刷物」と称する。
図13に示すように、コンピュータ60は、CPU(Central Processing Unit)62、メモリ64及び不揮発性の記憶部66を備え、これらはアドレスバスやシステムバス等を含んで構成されたバス68を介して互いに接続されている。なお、記憶部66は、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)などによって実現される。記憶媒体としての記憶部66には、画像評価処理プログラム70が記憶されている。また、記憶部66は、見本画像情報DB13、参照情報DB46及び検査対象画像記憶領域72を有する。検査対象画像記憶領域72には、検査対象画像情報が記憶される。
CPU62は、記憶部66から画像評価処理プログラム70を読み出してメモリ64に展開し、画像評価処理プログラム70が有するプロセスを順次実行する。画像評価処理プログラム70は、予測プロセス73、抽出プロセス76、評価プロセス78及び警告プロセス80を有する。CPU62は、予測プロセス73を実行することで、図1に示す予測部19として動作する。CPU62は、抽出プロセス76を実行することで、図1に示す抽出部20として動作する。CPU62は、評価プロセス78を実行することで、図1に示す評価部22として動作する。CPU62は、警告プロセス80を実行することで、図1に示す警告部24として動作する。
なお、ここでは画像評価処理プログラム70を記憶部66から読み出す場合を例示したが、必ずしも最初から記憶部66に記憶させておく必要はない。例えば、コンピュータ60に接続されて使用されるフラッシュメモリ、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの任意の「可搬型の記憶媒体」に先ずは画像評価処理プログラム70を記憶させておいてもよい。そして、コンピュータ60がこれらの可搬型の記憶媒体から各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。また、インターネットやLAN(Local Area Network)などを介してコンピュータ60に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置などの外部装置に画像評価処理プログラム70を記憶させておいてもよい。この場合、コンピュータ60が外部装置から画像評価処理プログラム70を取得して実行すればよい。
画像評価装置10は、入出力デバイスを備えている。また、画像評価装置10は、コンピュータ60と各種の入出力デバイスとを電気的に接続してコンピュータ60と各種の入出力デバイスとの間の各種情報の送受信を司るインプット・アウトプット・インターフェース(I/O)82を備えている。入出力デバイスは、I/O82に接続されることにより、バス68を介してコンピュータ30と電気的に接続される。ここでは、入出力デバイスとして、受付部84、表示部86、記録部88、通信インタフェース(I/F)90、搬送部92、読取部18の一例であるスキャナ94、及びソータ96を適用している。
受付部84は、画像評価装置10の利用者による操作入力を受け付ける。受付部84としては、例えばキーボード、マウス、ディスプレイに重ねて用いられる透過型のタッチパネル、電源投入用の操作ボタン、各種情報の設定用の操作ボタン及びスクロールキーなどの入力デバイスが挙げられる。
表示部86は、各種情報を表示する。表示部86としては、例えば液晶ディスプレイが挙げられる。なお、本第1実施形態では、表示部86としての液晶ディプレイに対して受付部84の一部であるタッチパネルを重ね合わせることによって形成されたタッチパネル・ディスプレイを採用している。
記録部88は、検査対象印刷物16に対して画像を記録する。本第1実施形態では、記録部88の一例としてインクジェット方式の記録ヘッドを採用しているが、開示の技術はこれに限定されない。例えばサーマルプリンタやスタンプ装置などであってもよく、検査対象印刷物16に対して特定の印を付与することができる装置であれば如何なるものも適用可能である。
通信I/F90は、通信網91を介してパーソナルコンピュータやプリンタなどの外部装置93が接続されており、外部装置93とコンピュータ60との各種情報の送受信を司る。
搬送部92は、検査対象印刷物16を画像評価装置10内に取り込み、取り込んだ検査対象印刷物16を所定の搬送経路に沿って搬送することで、スキャナ94の読取位置及び記録部88の記録位置を通過させ、ソータ96へ送り込む。搬送部92は、検査対象印刷物16を搬送するための駆動源として用いられるモータ98を含む。また、搬送部92は、モータ98に接続され、モータ98の駆動を制御するドライバ100を含む。ドライバ100は、I/O82に接続されている。従って、コンピュータ60は、ドライバ100を介してモータ98の駆動を制御することができる。
スキャナ94は、検査対象印刷物16に含まれる部分画像を光学的に読み取り、読み取った部分画像を示す部分画像情報をコンピュータ60に出力する。本第1実施形態では、スキャナ94の一例として縮小光学系タイプのスキャナを採用しているが、これに限らず、例えば等倍光学系タイプのスキャナを採用してもよい。
図14には、スキャナ94の電気系の要部構成の一例が示されている。図14に示すように、スキャナ94は、排除部25及び除去部27の一例であるコンピュータ94Aを備えている。コンピュータ94Aは、CPU94B、メモリ94C及び不揮発性の記憶部94Dを備え、これらはアドレスバスやシステムバス等を含んで構成されたバス94Eを介して互いに接続されている。なお、記憶部94Dは、SSDやHDDなどによって実現される。記憶媒体としての記憶部94Dには、部分画像処理プログラム95Bが記憶されている。
CPU94Bは、記憶部94Dから部分画像読取処理プログラム95Bを読み出してメモリ94Cに展開し、部分画像読取処理プログラム95Bが有するプロセスを順次実行する。
スキャナ94は、入出力デバイスを備えている。また、スキャナ94は、コンピュータ94Aと各種の入出力デバイスとを電気的に接続してコンピュータ94Aと各種の入出力デバイスとの間の各種情報の送受信を司るI/O94Fを備えている。入出力デバイスは、I/O94Fに接続されることにより、バス94Eを介してコンピュータ94Aと電気的に接続される。ここでは、入出力デバイスとして、読取実施部23の一例であるイメージセンサ94F、光照射部94G及び外部I/F94Hを適用している。光照射部94Gは、検査対象印刷物16の読取対象面(読取対象の部分画像が印刷された面)に対して光を照射する。本第1実施形態では、光照射部94Gの一例として白色蛍光ランプを適用しているが、他の光源であってもよい。
イメージセンサ94Fは、光照射部94Gにより印刷物の読取対象面に光が照射されて読取対象面で反射された光を受光し、光電変換して得た画像情報をコンピュータ94Aに出力する。コンピュータ94Aは、入力された画像情報を記憶部94Dに記憶する。本第1実施形態では、イメージセンサ94Fの一例としてCCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサを適用しているが、他のイメージセンサであってもよい。
外部I/F94Hは、図13に示すI/O82に接続されており、コンピュータ94Aとコンピュータ60との各種情報の送受信を司る。
図13に示すソータ96は、ソーティング処理を行う。すなわち、搬送物92によって搬送された検査対象印刷物16を取り込み、取り込んだ検査対象印刷物16を、検査対象画像の視認性の良否に基づいて仕分ける。本第1実施形態では、検査対象印刷物16の仕分け方式として2種類の仕分け方式を採用しており、これらの仕分け方式はユーザの指示に従って使い分けられる。図15には、2種類の仕分け方式の一例が模式的に示されている。図15に示すように、2種類の仕分け方式のうちの一方は「ずらし方式」であり、他方は「トレイ別方式」である。「ずらし方式」とは、検査対象印刷物16の排出先のトレイにおいて、視認性が良好と評価された検査対象印刷物16を所定の整列方向(例えば鉛直方向)に蓄積し、視認性が不良と評価された検査対象印刷物16を所定の整列方向から外す仕分け方式を指す。「トレイ別方式」とは、検査対象画像の視認性の良好な検査対象印刷物16と検査対象画像の視認性が不良な検査対象印刷物16とを別々の領域(一例としてトレイ)に排出する方式を指す。
図16には、記録部88、スキャナ94及びソータ96の配置例が模式的に示されている。図16に示すように、検査対象印刷物16の搬送経路には、複数の搬送ロール対103が配置されている。また、搬送経路には、検査対象印刷物16の搬送方向の上流側から順にスキャナ94及び記録部88が配置されており、搬送経路の終端にはソータ96が検査対象印刷物16を受入可能に配置されている。搬送ロール対103は、各々モータ98の回転駆動力を受けて互いに反対方向に回転する搬送ロール103A,103Bを有する。搬送ロール対103は、搬送ロール103Aと搬送ロール103Bとで検査対象印刷物16を挟み込んで検査対象印刷物16をスキャナ94による読取位置及び記録部88による記録位置へ搬送し、ソータ96へ送り込む。なお、本第1実施形態では、画像評価装置10における搬送時の検査対象印刷物16の向きは印刷装置12における搬送時の検査対象印刷物16の向きと同一とされている。
記録部88は、開示の技術に係る特定方向に相当する搬送方向に沿って、視認性が不良と評価された検査対象印刷物16が搬送された場合、一例として図17〜図19に示すように、検査対象印刷物16に対して筋状欠陥の位置を特定する特定支援印を記録する。図17に示す例では、筋状欠陥を搬送方向(ここでは一例として搬送方向下流側)へ延ばした位置であって検査対象印刷物16の搬送方向下流側の余白領域(外周縁の搬送方向下流側の予め定められた余白領域)の位置に特定支援印が記録されている。図18に示す例では、筋状欠陥を搬送方向(ここでは一例として搬送方向上流側)へ延ばした位置であって検査対象印刷物16の搬送方向上流側の余白領域(外周縁の予め定められた余白領域)の位置に特定支援印が記録されている。図19に示す例では、図17に示す例と同一の位置に特定支援印が記録されており、更に、筋状欠陥を搬送方向に対して交差する方向へ延ばした位置であって検査対象印刷物16の余白領域の位置に特定支援印が記録されている。なお、ここで言う「搬送方向に対して交差する方向」とは、例えば搬送方向に対して直交する方向を指す。
なお、図17〜図19に示す例では、特定支援印として赤色の矩形マークを適用しているが、これに限らず、他の色(好ましくは記録用紙114と異なる色)で他の形状のマークを採用してもよい。
また、検査対象印刷物16に視認性の強度(例えば面積や濃度)が異なる複数の筋状模様が含まれる場合、それぞれの筋状模様に対して異なる色のマークを付与してもよい。例えば、図20に示すように、検査対象印刷物16に視認性の強度が異なる2つの筋状模様が含まれる場合、筋状模様の各々を搬送方向へ延ばした位置であって検査対象印刷物16の余白領域の位置に赤色のマーク及び青色のメークを強度に応じて選択的に記録する。また、筋状模様の各々を搬送方向と交差する方向(ここでは一例として直交する方向)へ延ばした位置であって検査対象印刷物16の余白領域の位置にも赤色のマーク及び青色のマークを強度に応じて選択的に記録する。なお、図20に示す例では、赤色のマークが青色のマークよりも視認性の強度が強いことを表している。
また、本第1実施形態では、インクジェット方式の記録ヘッドでマークを記録する例を挙げて説明しているが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、特定支援印として、スタンプを採用してもよいし、シールを採用してもよい。スタンプを採用する場合は記録部88に代えてスタンプを押印可能な押印装置を設置すればよいし、シールを採用する場合は記録部88に代えてシールを貼付可能なシール貼付装置を設置すればよい。
次に本第1実施形態の作用として、印刷装置12のシステム制御部182のCPU(以下、符号を付さずに「CPU」という)が部分画像印刷処理プログラムを実行することにより印刷装置12で行われる印刷処理について、図21を参照して説明する。なお、ここでは、錯綜を回避するために、システム制御部182のCPUにより検査対象画像印刷処理プログラムが並列的に実行されることで一例として図22に示すように記録用紙114に検査対象画像が印刷される場合を前提にして説明する。なお、以下では、検査対象印刷物16として、図22に示すように、外周部に余白領域が設けられており、中央部の矩形領域に検査対象画像が印刷された印刷物を例に挙げて説明する。図22に示す例では、A4の記録用紙114に対して上下左右の各方向について5mmの余白領域が設定されている。図22に示す「くわえ側」とは、例えば図6に示す保持領域X(保持領域Y)における搬送方向下流側のグリッパ125により保持される側のことを指す。また、図22に示す「くわえ尻側」とは、例えば保持領域X(保持領域Y)における搬送方向上流側のグリッパ125により保持される側のことを指す。
図21に示す印刷処理では、先ず、ステップ400において、CPUにより、検査対象印刷物情報が入力されたか否かが判定される。本ステップ400において検査対象印刷物情報が入力されていない場合は判定が否定されて本ステップ400の判定が再び行われる。本ステップ400において検査対象印刷物情報が入力された場合は判定が肯定されてステップ402へ移行する。
ステップ402では、CPUにより、上記ステップ400で入力された検査対象印刷物情報から部分画像の一例であるテスト画像を示すテスト画像情報が取得される。ここで言う「テスト画像」とは、例えば検査対象画像から抜き出された画像の一部であってスキャナ94の読取対象とされる画像を指す。ここでは、テスト画像の一例として、検査対象画像における画像の一部を採用している。また、ここで言う「画像の一部」とは、検査対象画像における筋状欠陥画像が形成される領域として事前に想定された領域を指す。なお、本第1実施形態では、筋状欠陥画像が形成される領域として事前に想定された領域を特定する位置特定情報が検査対象印刷物情報に含まれている。従って、本ステップ402では、CPUが、位置特定情報を参照して検査対象印刷物情報からテスト画像情報を抽出する。なお、これに限らず、テスト画像情報そのものが検査対象印刷物情報に含まれていてもよい。
次のステップ404では、CPUにより、給紙部102及びモータ198が制御されることで、記録用紙114が印刷装置12内に取り込まれて、給紙胴124a、圧胴及び渡し胴によって搬送される。
次のステップ406では、CPUにより、記録用紙114が予め定められた位置(例えば記録ヘッド140によりテスト画像の印刷が開始される位置として予め定められた位置)に到達したか否かが判定される。本ステップ406において記録用紙114が予め定められた位置に到達していない場合は判定が否定されて本ステップ406の判定が再び行われる。本ステップ406において記録用紙114が予め定められた位置に到達した場合は判定が肯定されて本ステップ408へ移行する。なお、ここで言う「予め定められた位置」とは、例えば検査対象印刷物16の「くわえ側」の余白領域内の位置を指す。
ステップ408では、CPUにより、記録ヘッド140が制御されることで、上記ステップ402で取得されたテスト画像情報により示されるテスト画像が記録用紙114の予め定められた位置に印刷される。本ステップ408の処理がCPUによって行われることで、一例として図23に示すように、検査対象印刷物16の搬送方向最下流側の端部の一例である検査対象印刷物16の「くわえ側」の余白領域内の位置にテスト画像が印刷される。なお、これに限らず、検査対象印刷物16の搬送方向最上流側の端部の一例である「くわえ尻側」の余白領域内の位置も予め定められた位置として採用してもよい。この場合は、例えば図24に示すように「くわえ側」の余白領域と「くわえ尻側」の余白領域との双方にテスト画像が印刷されることとなる。また、「くわえ側」の余白領域にテスト画像を印刷せず、「くわえ尻側」の余白領域にテスト画像を印刷するようにしてもよい。
ステップ410では、CPUにより、全ての検査対象印刷物16に対してテスト画像が印刷されたか否かが判定される。本ステップ410において全ての検査対象印刷物16に対してテスト画像が印刷されていない場合は判定が否定されてステップ400へ移行する。本ステップ410において全ての検査対象印刷物16に対してテスト画像が印刷された場合は判定が肯定されて本印刷処理を終了する。
次に本第1実施形態の作用として、CPU62が画像評価処理プログラム70を実行することにより画像評価装置10で行われる画像評価処理について、図25を参照して説明する。なお、ここでは、錯綜を回避するために、検査対象印刷物16はユーザからの指示に応じて画像評価装置10内に1枚ずつ取り込まれるように待機領域(例えば給紙トレイ)に既に収容されている場合について説明する。また、ここでは、錯綜を回避するため、印刷装置12によってバリアブル印刷が実施されて得られた印刷物を検査対象印刷物16として扱う場合について説明する。また、ここでは、錯綜を回避するために、検査対象印刷物16に対応する仮想見本画像を示す見本画像情報が見本画像情報DB13に既に記憶されている場合について説明する。また、ここでは、錯綜を回避するために、バリアブル印刷が実施されて得られた検査対象印刷物16の全てが待機領域に収容され、待機領域に収容されている検査対象印刷物16の全てのテスト画像をスキャナ94により読み取る場合を例に挙げて説明する。また、ここでは、錯綜を回避するために、画像評価装置10に取り込まれて搬送される検査対象印刷物16の向きが印刷装置12における搬送経路での検査対象印刷物16の向きと一致していることを前提にして説明する。また、ここでは、錯綜を回避するために、仕分け方式として「ずらし方式」又は「トレイ別方式」がユーザにより既に指示されている場合について説明する。
図25に示す画像評価処理では、先ず、ステップ200において、抽出部20により、読取制御処理が行われ、その後、ステップ201へ移行する。図26には、読取制御処理の流れの一例が示されている。図26に示す読取制御処理では、先ず、ステップ200Gにおいて、抽出部20により、テスト画像の読み取りを開始する指示が受付部84で受け付けられたか否かが判定される。本ステップ200Gにおいてテスト画像の読み取りを開始する指示が受付部84で受け付けられた場合は判定が肯定されてステップ200Hへ移行する。本ステップ200Gにおいてテスト画像の読み取りを開始する指示が受付部84で受け付けられていない場合は判定が否定されて本ステップ200Gの判定が再び行われる。
ステップ200Hでは、抽出部20により、1枚の検査対象印刷物16の取り込みが搬送部92に対して指示される。これに応じて、搬送部92は、1枚の検査対象印刷物16を取り込み搬送経路に沿って搬送する。
次のステップ200Iでは、抽出部20により、検査対象印刷物16におけるテスト画像がスキャナ94による読取位置に到達したか否かが判定される。本ステップ200Iにおいて検査対象印刷物16におけるテスト画像がスキャナ94による読取位置に到達した場合は判定が肯定されてステップ200Jへ移行する。本ステップ200Iにおいて検査対象印刷物16におけるテスト画像がスキャナ94による読取位置に到達していない場合は判定が否定されて本ステップ200Iの判定が再び行われる。
ステップ200Jでは、抽出部20により、テスト画像の読み取りの開始がスキャナ94に対して指示され、その後、ステップ200Kへ移行する。ステップ200Kでは、スキャナ94によるテスト画像の読み取りが終了したか否かが抽出部20により判定される。本ステップ200Kにおいてスキャナ94によるテスト画像の読み取りが終了した場合は判定が肯定されてステップ200Lへ移行する。本ステップ200Kにおいてスキャナ94によるテスト画像の読み取りが終了していない場合は判定が否定されて本ステップ200Kの判定が再び行われる。
ステップ200Lでは、抽出部20により、待機領域に収容されている全ての検査対象印刷物16についてステップ200H〜ステップ200Kの処理が行われたか否かが判定される。本ステップ200Lにおいて全ての検査対象印刷物16についてステップ200H〜ステップ200Kの処理が行われていない場合は判定が否定されてステップ200Hへ移行する。本ステップ200Lにおいて全ての検査対象印刷物16についてステップ200H〜ステップ200Kの処理が行われた場合は判定が肯定されて本読取制御処理を終了する。
次に、スキャナ94のCPU94Bが部分画像読取処理プログラム95Bを実行することによりスキャナ94で行われる部分画像読取処理について、図27を参照して説明する。
図27に示す部分画像読取処理では、先ず、ステップ230において、排除部25により、上記ステップ200Jでテスト画像の読み取りの開始が指示されたか否かが判定される。本ステップ230においてテスト画像の読み取りの開始が指示されていない場合は判定が否定されて本ステップ230の判定が再び行われる。本ステップ230においてテスト画像の読み取りの開始が指示された場合は判定が肯定されてステップ232へ移行する。
ステップ232では、排除部25により、イメージセンサ94Fを作動させてイメージセンサ94Fに対してテスト画像の読み取りを開始させる。これにより、イメージセンサ94Fはテスト画像情報を取得し、取得したテスト画像情報をコンピュータ94Fに出力する。
次のステップ234では、排除部25により、イメージセンサ94Fから入力されたテスト画像情報からスキャナ94の特性の影響及び印刷装置12の非形成要因特性の影響が排除される。本ステップ234では、例えば、排除部25が、イメージセンサ94Fから入力されたテスト画像情報からイメージセンサ94Fの特性の影響及び印刷装置12の非形成要因特性の影響を排除する。
次のステップ236では、排除部25により、上記ステップ234でイメージセンサ94Fの特性の影響及び印刷装置12の非形成要因特性の影響が排除されたテスト画像情報が記憶部94Dに記憶された後、ステップ238へ移行する。ステップ238では、排除部25により、テスト画像の読み取りが終了したか否かが判定される。本ステップ238においてテスト画像の読み取りが終了していない場合は判定が否定されてステップ232へ移行する。本ステップ238においてテスト画像の読み取りが終了した場合は判定が肯定されてステップ240へ移行する。
ステップ239では、除去部27により、筋状模様除去処理が行われる。筋状模様除去処理とは、部分画像情報から筋状模様情報を除去し、除去結果を示す除去結果情報を生成する処理を指す。
ステップ240では、除去部27により、上記ステップ236で記憶部94Dに記憶されたテスト画像情報及び上記ステップ239で生成された除去結果情報が画像評価装置10のコンピュータ60に出力される。
次のステップ242では、待機領域に収容されている全ての検査対象印刷物16についてステップ230〜ステップ240の処理が行われたか否かが判定される。本ステップ242において全ての検査対象印刷物16についてステップ230〜ステップ240の処理が行われていない場合は判定が否定されてステップ230へ移行する。本ステップ242において全ての検査対象印刷物16についてステップ230〜ステップ240の処理が行われた場合は判定が肯定されて本部分画像読取処理を終了する。
図25に戻って、画像評価処理では、ステップ201において、予測部19により、予測処理が行われ、その後、ステップ202へ移行する。図28には、予測処理の流れの一例が示されている。図28に示す予測処理では、先ず、ステップ201Aにおいて、仮想検査対象画像生成部19Aにより、仮想検査対象画像情報が生成される。
次のステップ201Bでは、解像度調整部19Dにより、スキャナ94からテスト画像情報が入力されたか否かが判定される。本ステップ201Bにおいてテスト画像情報が入力されていない場合は判定が否定されて本ステップ201Bの判定が再び行われる。本ステップ201Bにおいてテスト画像情報が入力された場合は判定が肯定されてステップ201Cへ移行する。
ステップ201Cでは、検査対象画像生成部19Cにより、上記ステップ201Aで生成された仮想検査対象画像情報が、上記ステップ201Bで入力されたテスト画像情報に基づいて調整されることで検査対象画像情報が生成される。本ステップ201Cでは、例えば、解像度調整部19Dにより、上記ステップ201Bで入力されたテスト画像情報により示されるテスト画像の解像度が調整される。そして、検査対象画像生成部19Cにより、解像度調整部19Dによって解像度の調整が行われたテスト画像情報に基づいて、上記ステップ201Aで生成された仮想検査対象画像情報が調整されることで検査対象画像情報が生成される。
次のステップ201Dでは、除去結果取得部19Bにより、除去結果情報が取得され、取得された除去結果情報に筋状模様情報が含まれているか否か(部分画像情報から筋状模様が除去されたか否か)が判定される。本ステップ201Dにおいて除去結果情報に筋状模様情報が含まれている場合は判定が肯定されてステップ201Eへ移行する。本ステップ201Dにおいて除去結果情報に筋状模様情報が含まれていない場合は判定が否定されてステップ201Fへ移行する。
ステップ201Eでは、検査対象画像生成部19Cにより、除去結果取得部19Bにより取得された除去結果情報に含まれている筋状模様情報が加味されて、上記ステップ201Cで生成された検査対象画像情報が調整される。本ステップ201Eでは、例えば、検査対象画像生成部19Cにより、筋状模様情報に基づいて、上記ステップ201Cで生成された検査対象画像情報により示される検査対象画像における筋状模様の位置、大きさ、形状などが予測される。そして、検査対象画像における筋状模様の位置、大きさ、形状などを示す予測結果が上記ステップ201Cで生成された検査対象画像情報に付与されることにより検査対象画像情報が調整される。
次のステップ201Fでは、検査対象画像生成部19Cにより、上記ステップ201Cで生成された検査対象画像情報又は上記ステップ201Eで調整された検査対象画像情報が微調整される。ここで言う「微調整」とは、例えば検査対象画像情報から読取部18の特性の影響及び非形成要因特性の影響を排除することを指す。従って、本ステップ201Fでは、検査対象画像生成部19Cにより、例えば、検査対象画像情報から読取部18の特性の影響及び非形成要因特性の影響が排除されることにより検査対象画像情報が調整される。
次のステップ201Gでは、検査対象画像生成部19Cにより、上記ステップ201Fで微調整が行われた検査対象画像情報が検査対象画像記憶領域72に記憶され、その後、ステップ201Hに移行する。ステップ201Hでは、検査対象画像生成部19Cにより、他に生成すべき検査対象画像がないか否かが判定される。本ステップ201Hにおいて他に生成すべき検査対象画像がある場合は判定が否定されてステップ201Aへ移行する。本ステップ201Hにおいて他に生成すべき検査対象画像がない場合は判定が肯定されて本予測処理を終了する。
図25に戻って、画像評価処理では、ステップ202において、抽出部20により、抽出処理が行われ、その後、ステップ204へ移行する。図29には、抽出処理の流れの一例が示されている。図29に示す抽出処理では、先ず、ステップ202Bにおいて、減算部28により、検査対象画像記憶領域72から検査対象画像情報が取得され、その後、ステップ202Fへ移行する。ステップ202Fでは、減算部28により、見本画像情報と検査対象画像情報との差分値が算出される。ここで言う「差分値」とは、例えば仮想見本画像の濃度と検査対象画像の濃度との差分の絶対値を指す。なお、差分値は濃度差分値に限定されるものではなく、反射率の差分値であってもよい。また、検査対象画像と仮想見本画像との濃度差、色空間上の差、光量差、輝度差及びデバイス信号値差の少なくとも1つであってもよい。
次のステップ202Gでは、筋状領域切出部30により、上記ステップ202Bで取得された検査対象画像情報により示される検査対象画像のうちの予め定められた領域を対象にして、筋状領域が切り出され、その後、ステップ202Hへ移行する。
ステップ202Hでは、特定方向画像抽出部32により、上記ステップ202Gで切り出された筋状領域に上記ステップ202Fで算出された差分値が所定値を上回る筋状模様であって特定方向の筋状模様が存在しているか否かが判定される。ここで言う「所定値」とは、例えば画像の欠陥と認められる筋状模様の差分値として予め定められた差分値に相当する値を指し、実機による実験やシミュレーション等によって得られた値である。本ステップ202Hにおいて筋状領域に上記ステップ202Fで算出された差分値が所定値を上回る筋状模様であって特定方向の筋状模様が存在していない場合は判定が否定されて図14に示す画像評価処理を終了する。本ステップ202Hにおいて筋状領域に上記ステップ202Fで算出された差分値が所定値を上回る筋状模様であって特定方向の筋状模様が存在している場合は判定が肯定されてステップ202Iへ移行する。
ステップ202Iでは、特定方向画像抽出部32により、特定方向の筋状欠陥画像が抽出され、その後、本抽出処理を終了する。
図25に戻って、画像評価処理では、ステップ204において、評価部22により、評価処理が行われ、その後、ステップ206へ移行する。図30には、評価処理の流れの一例が示されている。図30に示す評価処理では、先ず、ステップ202Jにおいて、第1画像合成部34により、見本画像情報DB13から見本画像情報(例えば上記ステップ202Fで使用された見本画像情報)が取得され、その後、ステップ202Kへ移行する。ステップ202Kでは、第1画像合成部34により、上記ステップ202Iで抽出された筋状欠陥画像と上記ステップ202Jで取得された見本画像情報により示される仮想見本画像とが合成されることで評価対象画像情報が生成される。次のステップ202Lでは、第1画像合成部34により、上記ステップ202Kで生成された評価対象画像情報が記憶部66に記憶された後、ステップ204Aへ移行する。
次のステップ204Aでは、変換部36により、記憶部66から評価対象画像情報が取得され、その後、ステップ204Bへ移行する。ステップ204Bでは、変換部36により、上記ステップ204Aで取得された評価対象画像情報により示される評価対象画像及び上記ステップ202Jで取得された見本画像情報により示される仮想見本画像を対象にして、色変換及び視覚フィルタ処理が行われる。
次のステップ204Cでは、上記ステップ204Bで色変換及び視覚フィルタ処理が行われて得た評価対象画像及び仮想見本画像の各々が、特定成分分解部38により、複数の空間周波数の各々及び複数の方向の各々について分解され、複数の周波数分解画像及び複数の方向分解画像が生成される。
次のステップ204Eでは、視覚モデル評価実施部42により、上記ステップ202Iで抽出された筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥に対して、マスク効果視覚モデルを利用して視認性の評価が実施され、視認性強度情報が生成される。具体的には、上記ステップ204Cで得られた各分解画像に対して、他の分解画像の少なくとも1つの影響が加味された画像の視認性が評価されて視認性強度情報が生成される。
次のステップ204Dでは、第2画像合成部40により、複数の周波数分解画像及び複数の方向分解画像が、上記ステップ204Aで取得された評価対象画像情報により示される評価対象画像に合成されることで最終合成画像を示す評価結果情報が生成される。
次のステップ204Fでは、視覚モデル評価実施部42により、上記ステップ204Eで生成された評価結果情報が記憶部66に記憶された後、本評価処理を終了する。
図25に戻って、画像評価処理では、ステップ206において、警告部24により、警告処理が行われ、その後、本画像評価処理を終了する。図31には、警告処理の流れの一例が示されている。図31に示す警告処理では、先ず、ステップ206Aにおいて、警告要否判定部44により、記憶部66から評価結果情報が取得され、その後、ステップ206Bへ移行する。ステップ206Bでは、警告要否判定部44により、参照情報DB46から参照情報が取得され、その後、ステップ206Cへ移行する。
ステップ206Cでは、警告要否判定部44により、参照情報DB46の参照情報が参照され、上記ステップ202Iで抽出された筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥の視認性の強度が警告を要する強度であるか否かが判定される。本ステップ206Cでは、例えば、警告要否判定部44が、参照情報の一例である判定情報を参照して、評価結果情報に含まれる視認性強度情報により示される視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定する。本ステップ206Cにおいて警告を要しない強度である場合は判定が否定されて本警告処理を終了する。本ステップ206Cにおいて警告を要する強度である場合は判定が肯定されてステップ206Dへ移行する。
ステップ206Dでは、警告実施部48により、警告が実施される。ここでは、例えば「ずらし方式」が指示されている場合、警告部24は、一例として図15に示すように許容できない筋状模様を有する検査対象印刷物16を、整列された他の検査対象印刷物16から外す(例えば弾き出す)ようにソータ96を制御する。また、例えば「トレイ別方式」が指示されている場合、警告実施部48は、一例として図15に示すように許容できない筋状模様を有する検査対象印刷物16とその他の検査対象印刷物16とが別々に仕分けられるようにソータ96を制御する。
また、本ステップ206Dでは、警告実施部48は、筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥が視認可能な筋状欠陥であると評価された場合(評価結果情報に含まれる視認性強度情報により示される視認性の強度が所定の強度以上の場合)、表示部86に対して所定情報を表示させる。ここで言う「所定情報」とは、例えば評価部22により視認可能な筋状欠陥であると評価された筋状欠陥を含む検査対象印刷物16を特定する特定情報を指す。
特定情報の一例としては、例えば図32に示す不良ページ番号が挙げられる。ここで言う「不良ページ番号」とは、スキャナ94によって検査対象画像が読み取られた検査対象印刷物16の通し番号のことである。すなわち、「不良ページ番号」とは、検査対象印刷物16のページ番号であって評価部22により視認可能な筋状欠陥であると評価された筋状欠陥を含む検査対象印刷物16のページ番号を指す。また、図32に示す例では、不良ページ番号により特定される検査対象印刷物16に含まれる筋状欠陥の視認性の強度が不良ページ番号と併せて表示部86に表示されている。また、図32に示す例では、不良ページ番号により特定される検査対象印刷物16に含まれる検査対象画像が表示部86に表示されており、不良の程度を表す数値(筋状欠陥の視認性の強度に相当する数値)が検査対象画像と共に表示部86に表示されている。また、図32に示す例では、表示部86に表示されている検査対象画像における筋状欠陥の位置の特定を支援する特定支援画像が検査対象画像に重ねられて表示部86に表示されている。特定支援画像とは、例えば図20に示す赤色のマーク及び青色のマークに相当するマーク(不良の程度に応じた印)を指し、この場合、各マークは検査対象画像上の筋状欠陥の位置が特定可能となる位置に表示される。
また、本第1実施形態では、マークの色に応じて筋状欠陥の程度を特定できるようにしているが、これに限らず、ハイライト表示やマークの大きさによって筋状欠陥の程度を特定できるようにしてもよい。また、筋状欠陥の程度が軽度のものは色付け表示し、重度のものは点滅表示させる態様も例示できる。
なお、本第1実施形態では、表示部86による可視表示を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えばプリンタによる永久可視表示又は音声再生装置による可聴表示であってもよい。また、表示部86による可視表示と、プリンタによる永久可視表示と、音声再生装置による可聴表示との少なくとも2つを組み合わせた表示であってもよい。また、携帯型端末装置やタブレット端末装置などの表示部を利用して可視表示をおこなってもよい。また、表示部に対して可視表示を行わせるために用いる通信手段は、有線通信に限らず、BlueTooth(登録商標)や無線LAN(Local Area Network)などによる無線通信であってもよい。
図49には、粒状模様を有しない仮想見本画像及び検査対象画像を対象にして画像評価処理が行われた場合の評価結果の一例と粒状模様を有する仮想見本画像及び検査対象画像を対象にして画像評価処理が行われた場合の評価結果の一例とが模式的に示されている。図49に示すように、粒状模様を有する検査対象画像についてマスク効果有りの視覚モデルを利用して視認性を評価した場合、単純画像差分(仮想見本画像と検査対象画像との差分値)で表現される筋状模様の位置には視認可能なレベルの筋状模様が検出されない。また、この場合、被験者による主観的な評価は筋状模様が視認できないとの評価となる。これに対し、粒状模様を有しない検査対象画像についてマスク効果視覚モデルを利用して視認性を評価した場合、単純画像差分で得られた筋状模様の位置とほぼ同位置に視認可能なレベルの筋状模様が検出される。また、この場合、被験者による主観的な評価は筋状模様が容易に視認できるとの評価となる。なお、図49に示す例では、粒状模様の有無に拘らず検査対象画像についてマスク効果無しの視覚モデルを利用して視認性を評価した場合に、単純画像差分で表現される筋状模様の位置とほぼ同位置に筋状模様が検出された態様が示されている。
以上に説明したように、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、仮想見本画像を示し見本画像情報が見本画像情報DB13に記憶されている。また、読取部18により、検査対象印刷物16に含まれる部分画像が読み取られる。また、予測部により、読取部18で読み取られた部分画像を示す部分画像情報に基づいて検査対象印刷物16に含まれる検査対象画像が予測される。更に、抽出部20により、読取部18により読み取って得た見本画像情報と読取部18により読み取って得た検査対象画像情報との差分値に基づいて、検査対象画像から筋状欠陥画像が抽出される。そして、評価部22により、抽出部20で抽出された筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥の視認性が評価されるので、本構成を有しない場合に比べ、許容できない筋状欠陥を有する検査対象印刷物16であるか否かの高精度な判断を迅速に行うことができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、部分画像として、検査対象画像情報に含まれる画像情報により示される画像の一部を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、検査対象画像の予測精度を高めることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、上記の画像の一部として、検査対象画像のうち筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、評価精度を向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、読取部18が、部分画像を読み取って得た部分画像情報により示される部分画像から特定の筋状模様を検出し、検出した特定の筋状模様を示す筋状模様情報を部分画像情報から除去する構成を有している。その上で、画像評価装置10は、部分画像情報から除去された筋状模様情報により示される筋状模様を加味して、検査対象画像を予測する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状模様情報を部分画像情報から除去する機能が働いたとしても、検査対象画像を高精度に予測することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、読取部18の特性及び印刷装置12の特性の少なくとも一方を加味して、検査対象画像を予測する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、検査対象画像を高精度に予測することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、見本画像情報として、読取部18の特性の影響が反映されていない見本画像情報を採用している。また、検査対象画像情報として、読取部18の特性の影響が反映されていない検査対象画像情報を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の抽出精度を向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、読取部18の特性に、読取部18における構成部材の経時劣化の特性が含まれる。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の抽出精度をより一層向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、見本画像情報として、更に印刷装置12の特性であって筋状欠陥の形成要因とならない非形成要因特性の影響が反映されていない見本画像情報を採用している。また、検査対象画像情報として、更に非形成要因特性の影響が反映されていない検査対象画像情報を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の抽出精度をより一層向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、非形成要因特性に読取部18の経時劣化の特性を含ませている。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の抽出精度をより一層向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、評価部22の評価対象とされる筋状欠陥として、人間の視覚特性に対応する空間周波数の筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の視認性の評価精度を向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、評価部22の評価対象とされる筋状欠陥として、人間の視覚特性に対応する色空間の筋状欠陥画像により特定される筋状欠陥を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の視認性の評価精度を向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、検査対象画像情報により示される検査対象画像のうちの予め定められた領域を対象にして筋状欠陥が抽出される。これにより、本構成を有しない場合に比べ、処理かかる負荷を軽減することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、筋状欠陥画像が形成される領域として事前に想定された領域を対象にして筋状欠陥が抽出される。これにより、本構成を有しない場合に比べ、処理かかる負荷を軽減しながらも評価精度の低下を抑制することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を、印刷装置12及び読取部18の少なくとも1つの特性に基づいて特定された領域としている。これにより、本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、特定方向の筋状欠陥を高精度に抽出することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、筋状欠陥画像が形成される領域として事前に想定された領域を特定するために用いられる印刷装置12の特性の一要素として、印刷装置12における構成部材の経時劣化の特性を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、特定方向の筋状欠陥をより一層高精度に抽出することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を特定するために用いられる読取部18の特性の一要素として、読取部18における構成部材の経時劣化の特性を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、特定方向の筋状欠陥をより一層高精度に抽出することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、特定方向として、印刷装置12における記録用紙114の搬送方向を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、特定方向の筋状欠陥をより一層高精度に抽出することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、印刷装置12の印刷方式をシングルパス方式としている。これにより、本構成を有しない場合に比べ、特定方向の筋状欠陥を高精度に抽出することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、特定方向の解像度が特定方向に交差する方向の解像度よりも低くなるように検査対象画像が読み取られる。これにより、本構成を有しない場合に比べ、読取処理にかかる負荷を軽減することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、検査対象画像が読み取られた後、特定方向の解像度が特定方向に交差する方向の解像度に揃えられてから、見本画像情報と検査対照画像情報との差分値が算出される。これにより、本構成を有しない場合に比べ、特定方向の筋状欠陥をより一層高精度に抽出することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、評価部22により、筋状欠陥の視認性をマスク効果視覚モデルを利用して評価している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、許容できない筋状欠陥を有する検査対象印刷物16であるか否かをより一層高精度に判断することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、筋状欠陥画像及び仮想見本画像に合成して得た評価対象画像及び見本画像情報により示される仮想見本画像に基づいて筋状欠陥の視認性をマスク効果視覚モデルを利用して評価する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の視認性の評価精度を向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、評価対象画像及び見本画像情報により示される仮想見本画像を、複数の空間周波数の各々及び複数の方向の各々について分解することで、複数の空間周波数の各々についての周波数分解画像及び複数の方向の各々についての方向分解画像を得る構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の視認性の評価精度を向上させることができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、評価部22により視認性が評価された筋状欠陥が視認可能な画像であると判定された場合に警告する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、許容できない筋状欠陥を有する検査対象印刷物16であることを容易に把握することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、視認可能な筋状欠陥であると判定された筋状欠陥を含む検査対象印刷物16に対して直接処理を施すことにより警告する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、許容できない筋状欠陥を有する検査対象印刷物16を特定することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、検査対象印刷物16における筋状欠陥の位置の特定を支援する特定支援印を検査対象印刷物16に付与することにより警告する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、筋状欠陥の位置を容易に把握することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、検査対象印刷物16における筋状欠陥を特定方向へ延ばした位置に特定支援印を付与することにより警告する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、筋状欠陥の位置をより一層容易に把握することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、特定支援印の種類を筋状欠陥の視認性の大きさに応じて定める構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の視認性の大きさを容易に把握することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10は、評価部22により視認性が評価された筋状欠陥が視認可能な筋状欠陥であると判定された場合に表示部86に対して所定情報を表示させることにより警告する構成を有している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、許容できない筋状欠陥を有する検査対象印刷物16であることを容易に把握することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、表示部86に表示される所定情報として、視認可能な筋状欠陥であると判定された筋状欠陥を含む検査対象印刷物16を特定する特定情報を採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、許容できない筋状欠陥を有する検査対象印刷物16を特定することができる。
また、本第1実施形態に係る画像評価装置10では、表示部86に表示される所定情報として、筋状欠陥を有する検査対象画像と検査対象画像における筋状欠陥の位置の特定を支援する特定支援画像とを採用している。これにより、本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、筋状欠陥画像の位置を容易に把握することができる。
なお、上記第1実施形態では、部分画像として、検査対象画像のうち筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を抜き出して検査対象印刷物16の余白領域に印刷する例を挙げて説明したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、部分画像として、検査対象画像のうち筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を抜き出さずに、検査対象画像から、筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を直接読み取るようにしてもよい。これにより、検査対象印刷物16に余白領域を設ける必要がなくなる上に、部分画像を抜き出す必要がなるので、印刷装置12における処理にかかる負荷を大幅に軽減することができる。
また、上記第1実施形態では、検査対象画像のうち筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を部分画像として採用したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、検査対象印刷物16の余白領域に、部分画像として色パッチ画像を印刷してもよい。ここでは一例として色パッチ画像を挙げているが、これに限らず、予め定められた色及び検査対象印刷物16に含まれる画像から抽出された色の少なくとも一方を含む色パッチ画像であればよい。これにより、筋状欠陥の位置、大きさ、形状など(筋状欠陥の態様)を容易に予測することができる。また、色パッチ画像は主走査方向に延びた形状(例えば横長長方形)であることが好ましい。これにより、ノズルの欠陥箇所を容易に特定することが可能となる。また、部分画像としてノズルチェックパターンを採用してもよい。これにより、本構成を有しない場合に比べ、ノズルの欠陥箇所を容易に特定することが可能となる。この場合、先ず、印刷装置12に対してノズルチェックパターンを検査対象印刷物16の余白領域に印刷させる。次に、ノズルチェックパターンを読取部18により読み取らせる。次に、図34に示す抽出部20Bにおいて、候補領域算出部252が、読取部18によりノズルチェックパターンが読み取られて得た画像情報に基づいて不良(例えばインク不吐出)のノズルの位置(例えばノズル番号)を予測する。そして、候補領域切出部254が、候補領域算出部252により予測されたノズルの位置に対応する領域を切り出す。
また、上記第1実施形態では、印刷装置12の特性及び読取部18の特性の少なくとも一方の影響が反映されていない見本画像情報を採用しているが、開示の技術はこれに限定されるものではない。すなわち、印刷装置12の特性及び読取部18の特性の少なくとも一方の影響が反映された見本画像情報を採用してもよい。この場合、併せて、印刷装置12の特性及び読取部18の特性の少なくとも一方の影響が反映された検査対象画像情報を採用することが好ましい。また、この場合、見本画像情報及び検査対象画像情報の各々に影響を与える特性の種類を同一の種類とすることが好ましい。例えば、印刷装置12の特性及び読取部18の特性の双方の影響が反映された見本画像情報を採用すると共に、印刷装置12の特性及び読取部18の特性の双方の影響が反映された検査対象画像情報を採用することが好ましい。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥画像の抽出精度を向上させることができる。
また、見本画像情報及び検査対象画像情報に印刷装置12の特性を反映させる場合、印刷装置12の特性に印刷装置12における構成部材の経時劣化の特性を含ませることが好ましい。また、読取部18の特性にも読取部18における構成部材の経時劣化の特性を含ませることが好ましい。これにより、筋状欠陥画像の抽出精度をより一層向上させることができる。
また、上記第1実施形態では、評価部22で色変換及び視覚フィルタ処理を実施する態様を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。また、上記第1実施形態では、抽出部20で筋状領域の切り出しを実施する態様を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。すなわち、図10に示す抽出部20に代えて、一例として図33に示す抽出部20Aを適用すると共に、評価部22から変換部36を除去しても開示の技術は成立する。図33に示す抽出部20Aは、図10に示す抽出部20に比べ、減算部28に代えて減算部28Aを適用した点、減算部28Aの前段に変換部26を設けた点、及び筋状領域切出部20を除去した点が異なっている。また、図33に示す抽出部20Aは、図10に示す抽出部20に比べ、特定方向画像抽出部32に代えて特定方向画像抽出部32Aを適用した点も異なっている。
図33において、変換部27は、見本画像情報により示される仮想見本画像及び検査対象画像情報により示される検査対象画像を対象にして、色変換及び視覚フィルタ処理を行う。なお、ここでは、仮想見本画像に対して色変換及び視覚フィルタ処理を行う例を挙げているが、見本画像情報を生成するにあたって既に色空間及び空間周波数が加味されているのであれば、ここで色変換及び視覚フィルタ処理を行う必要はない。
図33において、減算部28Aは、変換部27によって色変換及び視覚フィルタ処理が行われた仮想見本画像を示す見本画像情報と検査対象画像情報との差分値を算出する。すなわち、変換部27によって色変換及び視覚フィルタ処理が行われた仮想見本画像と検査対象画像との濃度についての差分値を算出する。特定方向画像抽出部32Aは、変換部27によって色変換及び視覚フィルタ処理が行われた検査対象画像から、減算部28Aで算出された差分値に基づいて、特定方向の筋状欠陥画像を抽出する。
また、上記第1実施形態では、評価対象画像及び見本画像情報により示される仮想見本画像を複数の空間周波数の各々及び複数の方向の各々について分解して得た周波数分解画像及び方向分解画像に基づいて、マスク効果視覚モデルを利用して筋状欠陥の視認性を評価する場合を例示したが、これに限らず、例えば周波数分解画像及び方向分解画像に基づいて、特定方向についてのマスク効果視覚モデルを利用して筋状欠陥の視認性を評価してもよい。本構成を有しない場合に比べ、簡素な構成で、筋状欠陥の視認性の評価精度を向上させることができる。
また、上記第1実施形態では、第1画像合成部34により生成された評価対象画像情報により示される評価対象画像を対象にして評価部22により視認性の良否を評価する態様を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、評価対象画像の一部を対象にして評価部22により視認性の良否を評価してもよい。この場合、例えば、図10に示す抽出部20に代えて一例として図34に示す抽出部20Bを適用すればよい。図34に示す抽出部20Bは、図3に示す抽出部20に比べ、減算部28に代えて減算部28Bを適用した点、並びに減算部28Bの前段にフィルタ処理部250、候補領域算出部252及び候補領域切出部254を設けた点が異なっている。フィルタ処理250は、検査対象画像情報により示される検査対象画像と見本画像情報により示される仮想見本画像とを対象にして視覚フィルタ処理を実施する。
候補領域算出部252は、検査対象画像及び仮想見本画像から先見情報に従って指定された領域を対象にして、検査対象画像と仮想見本画像との濃度差、色空間上の差、光量差、輝度差、光量差、デバイス信号値差及び反射率の少なくとも1つを算出する。ここで言う「先見情報」とは、例えば筋状模様が生じる領域として事前に予想された領域の位置を特定する情報を指す。候補領域切出部254は、候補領域算出部252による算出結果(例えば濃度差、色空間上の差、光量差、輝度差、光量差、デバイス信号値差及び反射率の少なくとも1つ)と閾値とを比較し、検査対象画像及び仮想見本画像から、閾値を上回った領域を切り出す。減算部28Bは、候補領域切出部254により切り出された領域を対象にして、検査対象画像と仮想見本画像との差分値を算出する。本構成を有することで、候補領域切出部254により切り出された領域を対象にして、評価部22により視認性の良否を評価される。これにより、本構成を有しない場合に比べ、処理にかかる負荷を軽減しながらも評価精度の低下をより一層抑制することができる。
また、上記第1実施形態では、参照情報の一例として判定情報を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、参照情報として、事前に定めた用途別に視認可能か否かを示す用途別判定情報を適用してもよい。ここで言う「用途」とは、例えば、大判ポスタ、フォトブック、写真集、カタログ、ちらし等を指す。警告要否判定部44は、検査対象印刷物16の用途を示す用途情報が入力されると、入力された用途情報に対応する用途別判定情報を参照して、視認性強度情報により示される視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定する。
また、参照情報として、事前に定めた観察距離毎に視認可能か否かを示す観察距離別判定情報を適用してもよい。ここで言う「観察距離」とは、例えば、検査対象印刷物16を実際に観察する場合の検査対象印刷物16から観察者までの距離を指す。警告要否判定部44は、検査対象印刷物16についての観察距離が入力されると、入力された観察距離に対応する観察距離別判定情報を参照して、視認性強度情報により示される視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定する。
なお、印刷装置12の出力解像度は、観察条件に人間の視覚性能以上の出力解像度を採用することが好ましい。例えば、観察距離30cm程度の場合は350dpi以上の出力解像度を採用することが好ましい。また、例えば観察距離が100cm以上の場合は印刷装置12の出力解像度は105dpi以上の出力解像度を採用することが好ましい。
また、スキャナ94は、印刷装置12の出力解像度に応じて定められた読取解像度を採用することが好ましい。例えば、印刷装置12の出力解像度が1200dpiの場合、スキャナ94の読取解像度として、印刷装置12の出力解像度の1/3以上である400dpi以上の読取解像度を採用することが好ましい。
また、スキャナ94は、印刷装置12における印刷で用いるインク滴の最小サイズに応じて定められた読取解像度を採用してもよい。例えば、印刷装置12における印刷で用いるインク滴の最小サイズが30umの場合、スキャナ94の読取解像度は400dpi以上にすることが好ましい。
また、参照情報として、事前に定めたコンテンツ別に視認可能か否かを示すコンテンツ別判定情報を適用してもよい。ここで言う「コンテンツ」とは、例えば、検査対象画像における人物の顔を示す顔画像の位置や人物の肌色を指す。既存技術である顔検出機能や肌検出機能を利用することにより検出することができる。警告要否判定部44は、コンテンツを示すコンテンツ情報が入力されると、入力されたコンテンツ情報に対応するコンテンツ別判定情報を参照して、視認性強度情報により示される視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定する。
また、上記第1実施形態では、特定方向を記録用紙114の搬送方向としたが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、印刷装置12に代えて、検査対象画像を複数のラインに分割してライン毎に記録用紙114に対して記録する印刷装置を採用する場合、特定方向を、印刷装置における主走査方向としてもよい。これにより、本構成を有しない場合に比べ、特定方向の筋状模様を有する筋状欠陥画像を高精度に抽出することができる。また、この場合、印刷装置の印刷方式をシャトルスキャン方式とすることが好ましく、これにより、特定方向の筋状模様を有する筋状欠陥画像をより一層高精度に抽出することができる。
また、上記第1実施形態では、排除部25を読取部18に設けた場合を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではなく、読取部18から排除部25を除去し、排除部25と同等の機能を後段の抽出部20に担わせてもよい。
また、上記第1実施形態では、排除部25により読取部18の特性及び非形成要因特性を排除する場合を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではなく、排除部25を設けなくてもよい。この場合、例えば、読取部18の特性及び印刷装置12の特性の少なくとも一方の影響を見本画像情報に反映させておくことが好ましい。これにより、本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥を高精度に抽出することができる。なお、ここで言う「読取部18の特性」としては、読取部18における構成部材の経時劣化の特性を加味した読取部18の特性を採用することが好ましい。これにより、筋状欠陥をより一層高精度に抽出することができる。読取部18における構成部材の経時劣化の特性としては、読取部18の構成部材のうち経時劣化が予想される構成部材であって画像の読取結果に影響を及ぼすことが事前に予想される構成部材の経時劣化の特性が例示できる。
また、ここで言う「印刷装置12の特性」としては、印刷装置12における構成部材の経時劣化の特性を加味した印刷装置12の特性を採用することが好ましい。これにより、筋状欠陥画像をより一層高精度に抽出することができる。印刷装置12における構成部材の経時劣化の特性としては、印刷装置12の構成部材のうち経時劣化が予想される構成部材であって画像の欠陥に影響を及ぼすことが事前に予想される構成部材の経時劣化の特性が例示できる。また、ここで言う「印刷装置12の特性」には、非形成要因特性が含まれていてもよいし、「印刷装置12の特性」を非形成要因特性のみで構成してもよい。
また、上記第1実施形態では、マスク効果視覚モデルを利用して筋状欠陥の視認性を評価する例を挙げて説明したが、開示の技術はこれに限定されるものではなく、事前に用意されたプロファイルを利用して筋状欠陥の視認性を評価してもよい。この場合、例えば、特定成分分解部38及び第2画像合成部40が不要となり、視覚モデル評価実施部42に代えて、プロファイルを利用して筋状欠陥の視認性を評価するプロファイル評価実施部が適用される。プロファイルを利用した筋状欠陥の評価処理(プロファイル処理)としては、例えば、筋状欠陥画像を特定方向に積分する処理が挙げられる。プロファイル処理では、積分値が予め設定された閾値以上となる箇所があればそこが筋として検出される。更に、閾値を超えている幅も考慮して検出する。
また、上記第1実施形態では、検査対象画像から直接的に筋状欠陥を特定する場合を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、検査対象印刷物16の余白領域(例えば外周縁の余白領域)にノズルチェックパターンを形成し、形成したノズルチェックパターンを利用して筋状欠陥を特定するための候補領域を定めてもよい。また、検査対象画像から筋状欠陥が形成される領域として事前に想定された領域を抜き出し、抜き出した領域を主走査方向で同一の位置の余白領域に記録することによりチャートを作成し、このチャートを利用して候補領域を定めてもよい。また、検査対象印刷物16の余白領域にノズルチェックパターンを印刷し、ノズルチェックパターンから候補領域を絞って、読取部18による読み取りを実施してもよい。
また、上記第1実施形態では、検査対象画像情報により示される検査対象画像の特定方向の解像度を主走査方向の解像度に揃える処理を実施したが、必ずしも解像度を揃える必要はなく、この場合は、縦横変形フィルタを用いて視覚フィルタ処理を行えばよい。
また、上記第1実施形態では、コンピュータ60を利用してソフトウェア構成で予測部19、抽出部20、評価部22及び警告部24を実現する場合の形態例を挙げて説明したが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、予測部19、抽出部20、評価部22及び警告部24の少なくとも1つがハードウェア構成で実現されてもよい。この場合、複数の機能の回路を1つにまとめた集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)やプログラマブルロジックデバイスを利用する例が挙げられる。また、予測部19、抽出部20、評価部22及び警告部24を分散処理してもよい。分散処理は、ハードウェア構成とソフトウェア構成の組み合わせによって実現されてもよい。また、予測部19、抽出部20、評価部22及び警告部24の少なくとも1つが複数台のコンピュータ(その周辺機器も含む)によるソフトウェア構成で実現されてもよい。また、予測部19、抽出部20、評価部22及び警告部24の少なくとも1つがクラウドコンピューティングやグリッドコンピューティングにより実現されてもよい。
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、マスク効果視覚モデルを利用して筋状欠陥の視認性を評価する態様を例示したが、本第2実施形態では、統計的方法により筋状欠陥の視認性を評価する場合について説明する。なお、本第2実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成部材については同一の符号を付してその説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
図35には、本第2実施形態に係る評価部22Aの要部機能の一例が示されている。図35に示すように、評価部22Aは、図11に示す評価部22に比べ、特定成分分解部38、第2画像合成部40及び視覚モデル評価実施部42を除去した点が異なっている。また、評価部22Aは、図11に示す評価部22に比べ、取得部262、変換部264、算出部266、DB更新部268及び統計的評価実施部272が設けられた点が異なっている。また、取得部262には画像DB260が接続されており、DB更新部268及び統計的評価実施部272には統計モデルDB270が接続されている。
なお、本第2実施形態では、図35において評価部22Aに第1画像合成部34が含まれる態様を例示しているが、評価部22Aに必ずしも第1画像合成部34を含める必要はない。この場合、第1画像合成部34により得られる評価対象画像に代えて、仮想見本画像と検査対象画像との差分値に相当する筋状欠陥画像を用いればよい。
また、本第2実施形態では、特定成分分解部38による被分解対象として評価対象画像及び仮想見本画像を採用しているが、特定成分分解部38による被分解対象としては評価対象画像と仮想見本画像との何れか一方でもよい。また、特定成分分解部38がなくても開示の技術は成立する。
画像DB260には、過去に画像評価装置10の評価に供した見本画像情報及び検査対象画像情報が格納されている。図36には、画像DB260の構成の一例が模式的に示されている。図36に示すように、画像DB260には、仮想見本画像を示す見本画像情報及び検査対象画像を示す検査対象画像情報が記憶されている。また、画像DB260には、検査対象画像情報により示される検査対象画像に含まれる筋状欠陥の強度を主観的に評価した結果(0〜9の数値が示される10段階)を示す主観スジ強度情報が格納されている。また、主観スジ強度情報は検査対象画像毎に対応付けられている。なお、ここでは、錯綜を回避するために、筋状欠陥の強度を主観的に評価する被験者を1人とし、この被験者に対して互いに異なる筋状欠陥を有する複数の検査対象画像の各々を予め視認させて検査対象画像毎に視認性の度合いを評価させている。また、ここでは、錯綜を回避するために、評価対象画像として用いられる検査対象画像は、過去に評価対象とされた検査対象印刷物16に含まれる検査対象画像を採用している。
取得部262は、画像DB260から見本画像情報及び検査対象画像情報を取得する。変換部264は、取得部262により取得された見本画像情報及び検査対象画像情報の各々により示される仮想見本画像及び検査対象画像に対して色変換及び視覚フィルタ処理を行う。算出部266は、色変換及び視覚フィルタ処理が行われて得た仮想見本画像と検査対象画像との差分値を算出する。DB更新部268は、統計モデルDB270の記憶内容を更新する。
図37には、統計モデルDB270の構成の一例が模式的に示されている。図37に示すように、統計モデルDB270には、算出部266により算出された差分値と画像DB260に記憶されている対応する主観スジ強度情報とが対応付けられた状態で記憶されている。また、各差分値に対して閾値が対応付けられている。ここで言う「閾値」とは、評価対象画像情報により示される評価対象画像の各画素の濃度値と比較される閾値であり、この閾値を超えた場合は筋状欠陥が視認可能であると評価される。なお、ここで言う「閾値」は開示の技術を実現するための必須構成要素ではない。従って、「閾値」がなくても開示の技術は成立する。
統計的評価実施部272は、統計モデルDB270を参照して、変換部36により色変換及び視覚フィルタ処理が行われて得た評価対象画像の筋状欠陥画像の視認性を統計的方法を利用して評価する。本第2実施形態では、例えば統計的評価実施部272は、先ず、変換部36により色変換及び視覚フィルタ処理が行われて得た評価対象画像に基づいて、仮想見本画像と筋状欠陥画像との差分値を画素毎に算出し、算出した差分値の平均値を算出する。次に、統計モデルDB270に記憶されている閾値のうち、算出した平均値に対応する差分値に対応付けられている閾値を読み出し、画素毎に算出した差分値と閾値とを比較する。そして、閾値を上回る差分値に対応する画素を視認可能な筋状欠陥を構成している画素と評価し、全画素についての総合的な評価結果と主観スジ強度情報とを含む評価結果情報を生成する。なお、本第2実施形態では、閾値として、画素毎に算出された差分値の平均値に対応する値を採用しているが、開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、算出された画素毎の差分値の代表値(例えば算出された画素毎の差分値の最頻値又は中央値などの平均値以外の統計値)に対応する値を閾値として採用してもよい。
なお、本第2実施形態では、統計的評価実施部272が、評価対象画像及び仮想見本画像に基づいて、仮想見本画像と筋状欠陥画像との差分値を画素毎に算出する例を挙げて説明しているが、評価対象画像を生成せずに、特定方向画像抽出部32により生成された筋状欠陥画像情報を取得し、筋状欠陥画像情報により示される筋状欠陥画像と仮想見本画像との差分値を画素毎に算出してもよい。
図38には、本第2実施形態に係る画像評価装置10Aの電気系の構成の一例が示されている。図38に示す画像評価装置10Aは、図13に示す画像評価装置10に比べ、画像評価処理プログラム70に代えて画像評価処理プログラム70Aを適用している点が異なっている。また、画像評価装置10Aは、図13に示す画像評価装置10に比べ、記憶部66にDB更新処理プログラム272が記憶されている点、記憶部66に画像DB260が記憶されている点、及び統計モデルDB270が記憶されている点も異なっている。
画像評価処理プログラム70Aは、図13に示す画像評価処理プログラム70に比べ、評価プロセス78に代えて評価プロセス78Aを適用している点が異なっており、CPU62は、評価プロセス78Aを実行することで図35に示す評価部22Aとして動作する。
次に本第2実施形態の作用として、CPU62がDB更新処理プログラム272を実行することにより画像評価装置10Aで行われるDB更新処理について、図39を参照して説明する。図39に示すDB更新処理では、先ず、ステップ300において、取得部262により、見本画像情報とこの見本画像情報に対応する検査対象画像情報とこの検査対象画像情報に対応する主観スジ強度情報とが画像DB260に入力されたか否かが判定される。本ステップ300において見本画像情報、検査対象画像情報及び主観スジ強度情報が入力されていない場合は判定が否定されて本ステップ300の判定が再び行われる。本ステップ300において見本画像情報、検査対象画像情報及び主観スジ強度情報が入力された場合は判定が肯定されてステップ302へ移行する。
ステップ302では、取得部262により、画像DB260から最新に記憶された見本画像情報及び検査対象画像情報が取得され、その後、ステップ304へ移行する。ステップ304では、変換部264Aにより、上記ステップ302で取得された見本画像情報及び検査対象画像情報の各々により示される仮想見本画像及び検査対象画像を対象にして色変換及び視覚フィルタ処理が行われる。
次のステップ306では、算出部266により、上記ステップ304で色変換及び視覚フィルタ変換が行われた仮想見本画像を示す見本画像情報と検査対象画像を示す検査対象画像情報との差分値が算出され、その後、ステップ308へ移行する。ステップ308では、DB更新部268により、画像DB260から最新に記憶された主観スジ主観情報が取得され、その後、ステップ310へ移行する。ステップ310では、DB更新部268により、上記ステップ306で算出された差分値とこの差分値に応じて一意に定められた閾値と上記ステップ308で取得された主観スジ強度情報とが統計モデルDB270に記憶される。これにより、統計モデルDB270が更新される。そして、本ステップ310の処理が行われた後、本DB更新処理を終了する。
次に、CPU62が画像評価処理プログラム70Aを実行することにより画像評価装置10Aで行われる画像評価処理について説明する。なお、ここでは、上記第1実施形態で説明した画像評価処理と異なる処理について説明し、上記第1実施形態と重複する処理の説明は省略する。図25に示すように、本第2実施形態に係る画像評価処理は、上記第1実施形態で説明した画像評価処理に比べ、ステップ204に代えてステップ204Aを適用した点が異なっている。ステップ204Aでは、評価部22Aにより、評価処理が行われ、その後、ステップ206へ移行する。
図40には本第2実施形態に係る評価処理の流れの一例が示されている。図40に示す本第2実施形態に係る評価処理は、図30に示す評価処理に比べ、ステップ204C〜ステップ204Eに代えて、ステップ320〜ステップ332を適用した点が異なっている。なお、以下では、図30に示す評価処理に含まれるステップとは異なるステップについて説明し、同一のステップについては同一のステップ番号を付してその説明を省略する。また、ここでは、錯綜を回避するために、評価対象画像に筋状欠陥画像が含まれる場合について説明する。
図40に示す評価処理では、ステップ320において、統計的評価実施部272により、上記ステップ204Bで変換処理が行われて得た評価対象画像に含まれる筋状欠陥画像における注目画素について仮想見本画像と筋状欠陥画像との濃度についての差分値が算出される。次のステップ322では、統計的評価実施部272により、上記ステップ320で算出された差分値が画素毎に記憶部66に記憶される。
次のステップ324では、統計的評価実施部272により、上記ステップ320,322の処理が筋状欠陥画像における全ての画素について終了したか否かが判定される。本ステップ324において上記ステップ320,322の処理が筋状欠陥画像における全ての画素について終了していない場合は判定が否定されてステップ320へ移行する。本ステップ324において上記ステップ320,322の処理が筋状欠陥画像における全ての画素について終了した場合は判定が肯定されてステップ326へ移行する。
ステップ326では、統計的評価実施部272により、上記ステップ320で記憶部66に記憶された画素毎の差分値についての平均値が算出される。次のステップ328では、統計的評価実施部272により、統計モデルDB270から、上記ステップ326で算出された平均値に相当する差分値に対応付けられている閾値が取得される。なお、上記ステップ326で算出された平均値に相当する差分値として、算出された平均値と完全一致する差分値が統計モデルDB270に記憶されていない場合は、上記ステップ320で算出された差分値の平均値に最も近似する差分値を代替採用すればよい。また、算出された差分値の平均値が統計モデルDB270に記憶されている2つの差分値の中央値の場合は、例えば2つの差分値のうちの小さな方の差分値を上記ステップ320で算出された差分値の平均値に相当する差分値として採用すればよい。逆に、2つの差分値のうちの大きな方の差分値を上記ステップ320で算出された差分値の平均値に相当する差分値として採用してもよい。
次のステップ330では、統計的評価実施部272により、上記ステップ322で記憶部66に記憶された画素毎の差分値から注目画素についての差分値が取得される。次のステップ332では、統計的評価実施部272により、上記ステップ330で取得された差分値が上記ステップ328で取得された閾値を上回っているか否かが判定される。本ステップ332において上記ステップ330で取得された差分値が上記ステップ328で取得された閾値を上回っていない場合は判定が否定されてステップ338へ移行する。本ステップ332において上記ステップ330で取得された差分値が上記ステップ328で取得された閾値を上回っている場合は判定が肯定されてステップ334へ移行する。
ステップ334では、統計的評価実施部272により、統計モデルDB270から上記ステップ328で取得された閾値に対応する主観スジ強度情報が取得される。そして、取得された主観スジ強度情報が上記ステップ330で取得された差分値に対応付けられて記憶部66に記憶される。
次のステップ336では、統計的評価実施部272により、上記ステップ322で記憶部66に記憶された画素毎の差分値の全てについて上記ステップ330〜334の処理を終了したか否かが判定される。本ステップ336において上記ステップ322で記憶部66に記憶された画素毎の差分値の全てについて上記ステップ330〜334の処理を終了していない場合は判定が否定されてステップ330へ移行する。本ステップ336において上記ステップ322で記憶部66に記憶された画素毎の差分値の全てについて上記ステップ330〜334の処理を終了した場合は判定が肯定されてステップ338へ移行する。
ステップ338では、統計的評価実施部272により、評価対象画像に含まれる筋状欠陥の視認性の良否が評価され、評価結果を示す評価結果情報が生成される。本ステップ332では、例えば、記憶部55に主観スジ強度情報が記憶されている場合は、記憶部55に記憶されている全ての主観スジ強度情報を総合的に評価することで評価対象画像に含まれる筋状欠陥の視認性の良否を評価する。例えば、主観スジ強度情報により示される10段階評価の数値の大きさ、主観スジ強度情報の個数、又は10段階評価の数値のうちの所定値(例えば7)を上回る数値(例えば8)を示す主観スジ強度情報が対応付けられている画素の分布に基づいて評価する。また、評価結果情報には、筋状欠陥の視認性の良否の評価結果の他に、評価に供した情報(例えば主観スジ強度情報や画素の分布を示す情報など)が含まれ、評価結果情報は後段の警告部24の警告要否判定部44による評価で用いられる。
以上に説明したように、本第2実施形態に係る画像評価装置10Aは、抽出された筋状欠陥の視認性を統計的方法を利用して評価する構成を有している。本構成を有しない場合に比べ、筋状欠陥の視認性の評価精度を向上させることができる。
なお、上記第2実施形態では、統計モデルDB270を参照して筋状欠陥の視認性を評価する例を挙げて説明したが、開示の技術はこれに限定されるものではなく、重回帰式を用いて筋状欠陥の視認性を評価してもよい。この場合、評価部22Aに代えて、一例として図41に示される評価部22Bを用いればよい。図41に示す評価部22Bは、図35に示す評価部22Aに比べ、統計的評価実施部272に代えて統計的評価実施部272Aを適用した点、及びDB更新部268及び統計モデルDB270に代えて回帰式更新部340を適用した点が異なっている。
回帰式更新部340は、統計的評価実施部272Aに提供する重回帰式を保持すると共に最新のデータに基づいて重回帰式の回帰係数を更新する。ここで言う「重回帰式」は、例えば算出部266で算出された差分値及び画像DB260に最新に記憶された主観スジ強度情報により示される10段階評価の数値を説明変数としている。また、評価対象画像に含まれる筋状欠陥の視認性の良否を示す数値(例えば主観スジ強度情報により示される10段階評価の数値に相当する数値)を目的変数としている。
統計的評価実施部272Aは、回帰式更新部340により現時点で保持されている重回帰式を用いて、評価対象画像に含まれる筋状欠陥の視認性の良否を評価し、評価結果を示す評価結果情報を生成する。なお、ここで言う「評価結果情報」には、例えば評価対象画像に含まれる筋状欠陥の視認性の良否を示す数値(重回帰式の解)が含まれる。
このように、重回帰式を用いて筋状欠陥の視認性を評価することで、簡素な構成で、筋状欠陥の視認性の評価精度を向上させることができる。
なお、開示の技術は、重回帰式に限定されるものではなく、例えば、SIMM,PCA,SVR,AdaBoost等を採用してもよい。
上記第2実施形態では、筋状欠陥の強度を主観的に評価する被験者を1人とした場合を例示したが、開示の技術はこれに限定されるものではなく、被験者を複数人としてもよい。この場合、複数の被験者による評価結果である主観スジ強度を表す数値の平均値、最頻値などを画像DB260に記憶させればよい。
また、上記第2実施形態では、被験者に視認させる評価対象画像を過去の評価に供した検査対象印刷物16に含まれる検査対象画像としたが、これに限らず、検査対象画像に類似する画像(検査対象画像として実際に使用されたことのない画像)であってもよい。
[第3実施形態]
上記第1実施形態では、警告部24が、参照情報DB46の参照情報を参照して筋状欠陥の視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定したが、本第3実施形態では、顧客の特性に応じて視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定する。なお、以下では、上記第1実施形態で説明した構成部材と同一の構成部材については同一の符号を付してその説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
図42には、本第3実施形態に係る警告部24Aの要部機能の一例が示されている。図42に示す警告部24Aは、図12に示す警告部24に比べ、警告要否判定部44に代えて警告要否判定部44Aを適用した点が異なっている。また、上記第1実施形態では、警告要否判定部44に参照情報DB46が接続されているが、本第3実施形態では、参照情報DB46に代えて顧客特性DB46Aを適用している。
警告要否判定部44Aには、顧客を特定する顧客特定情報及び検査対象印刷物16の用途(例えば大判ポスタ、フォトブック、写真集、カタログ、ちらし等)を示す用途情報が入力される。警告要否判定部44Aは、入力された顧客特定情報及び用途情報から、顧客特性DB46Aを参照して、筋状欠陥の視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定する。
顧客特性DB46Aは、注文者(注文主)である顧客別に注文内容や過去の取引による実績(履歴)などの情報(以下、「顧客特性情報」という)を蓄積したデータ群である。本例の顧客特性DB46Aには、顧客別に、印刷物の用途やコンテンツタイプごとに、過去にその顧客が了承した(OKと認めた)画像品質を「画質指数」という指標の数値で記述された顧客特性情報が記憶されている。画質指数は、印刷物の画質を規定する指標であり、印刷物等から実際に測定可能な物理量と関連付けられる少なくとも1種類、好ましくは複数種類の画質属性の評価を含んだ数値として定義される。画質指数の具体例は後述する。なお、本明細書では、画質指数を「Q」という記号で表記する。
図43は画質指数の説明図である。本例の画質指数は印刷物の総合画質を規定する指標であり、複数の画質属性の評価を組み合わせた値として定義される。つまり、総合画質は複数の画質属性のツリー構造で表すことができ、各属性を総合的に考慮した品質として把握される。図43の例では、画質属性として、画像ノイズ、色階調、シャープネス、文字性、光沢、スジムラの6種類の画質属性を示している。ここで例示する6種類の画質属性の一部を用いても良いし、さらに他の画質属性を追加してもよい。
個々の属性は、印刷品質の項目の1つ又は複数と関連付けられており、画質属性並びに印刷品質項目は、印刷結果などから実際に測定可能な物理量(「物理測定値」に相当、図2中、「画質測定値」と記載)から推定可能である。
図44は画質指数の求め方を示す概念図である。なお、図44に示した概念を説明する参考文献として「Peter G. Engeldrum, “Psychometric Scaling : a toolkit for imaging systems development”, pp.8-17., 2000.」がある。
テストチャートや実画像を印刷し、その印刷結果を測定することによって物理的な技術変数(Technology Variables)の値が得られる。この測定された技術変数を符号「X」で表し、具体的な値をX1,X2,X3…など表記する。
チャート測定などの測定で得られる値Xと、画質測定値としての物理画像パラメータ(物理定量値)Yiとは所定のシステムモデルにしたがって関連付けられている。システムモデルには、例えば、ハードコピー画質の測定方法に関するISO/IEC 13660などを適用することができる。チャート測定等で得られた値Xから、システムモデルで定義される関数Fi(X)にしたがい、画質測定値としての物理画像パラメータ(物理定量値)Yi=Fi(X)が得られる。
ここでいう物理画像パラメータは、例えば、RMS(root mean square granularity )粒状度などのように、一般に「〜度」と呼ばれるような物理評価値(指標)である。このような物理画像パラメータは複数種類あり得る。
画質属性或いは印刷品質項目に対応するカスタマーパーセプション(顧客知覚性)は、例えば、粒状性などのように、一般に「〜性」とよばれるような官能評価値である。この官能評価値(図においてZiで表す)は、用途によらない数値として表される。
画質属性(又は印刷品質項目)を表す官能評価値Ziは、ビジュアルアルゴリスムで定義される関数Gi(Y)にしたがって計算される(Zi=Gi(Y))。
印刷総合画質に対応するカスタマークオリティプレファランス(顧客の画質好み)は、複数の画質属性を組み合わせた総合的な画質の官能評価値である。この総合画質は、用途毎に定義される。総合画質の評価値Qiは、画像品質モデルで定義される関数Hi(Z)で計算され、用途毎に異なる関数Hi(Z)が定義される。
実際の測定で得られる物理量X、画質測定値Y、画質属性(又は印刷品質項目)Z、印刷総合画質Qのそれぞれを関連付ける各モデルやアルゴリズムは、簡単な例としては、線型モデルでよい。より詳細には、評価実験などを通して具体的な関数が決定される。
官能評価値Qi、Ziと、物理定量値(物理評価値)X,Yとの対応関係(Fi、Gi、Hiで示される関数)を予め求めておく。その際、印刷総合画質Qiと画質属性/印刷品質項目(Zi)との関係については、印刷物の用途毎にモデルパラメータが最適化される。例えば、写真の多い「写真集」などの用途では、画像に関する画質属性が重視される。一方、文字の多い「ドキュメント」などの用途では、文字に関する画質属性が重視される。
印刷総合画質Qiの演算は、重回帰分析の線型モデルでもよいし、コンテンツタイプの面積比率に応じた重み係数による線型モデルでもよいし、或いは、非線形のモデルでもよい。こうして、用途毎に定義された関数Hiにしたがい、カタログ用の総合画質Q1、写真集用の総合画質Q2、チラシ用の総合画質Q3、などが計算される。
本第3実施形態では、画質指数として、複数の画質属性を総合的に評価した総合画質を用いるが、総合画質に代えて、総合評価する前の個別の画質属性の単体、或いは、これらの適宜の組み合わせを用いても良い。
図45には、顧客特性DB46Aの構成の一例が模式的に示されている。図45に示すように、顧客特性DB46Aには、顧客を識別する情報(顧客名や顧客IDなど)が記憶されている。また、顧客特性DB46Aには、顧客別に用途やコンテンツタイプの条件に対する顧客の要求品質を満たした画質指数と、顧客の要求品質に未到達の画質指数と、が顧客特性情報として記憶されている。なお、以下では、説明の便宜上、顧客の要求品質を満たした画質指数を「OK_Q」と表記する場合があり、顧客の要求品質に未到達の画質指数を「NG_Q」と表記する場合がある。
「OK_Q」の具体例としては、提供した印刷物に対して顧客の了承・承認(OK判断)が得られた画質指数が挙げられる。「NG_Q」の具体例としては、提供した印刷物が顧客の要求品質を満足させることができず、当該顧客から拒否・不承認(NG判断)が表明された画質指数が挙げられる。
このようなデータは、過去の注文に対する納品物の実績から履歴情報として蓄積していくことができる。すなわち、顧客との取引を通じて、提供した印刷物の画質指数と、その印刷物に対する顧客の評価(OK又はNG)とを関連付けて履歴データとし顧客特性DBに保存していく。
印刷物はその用途によって要求される品質が大きく変わるため、顧客特性DB46Aでは「用途」の観点でデータを分類する。また、印刷物の画像(1枚の絵)の中には、写真部分、文字部分、線画部分、イラスト部分など様々なコンテンツが含まれうる。印刷物の画像内容を構成している要素(コンテンツ)がどのようなものであるかを分類する観点が「コンテンツタイプ」による分類である。
「用途」という大分類の中に「コンテンツタイプ」というより詳細な小分類があるという関係にある。本第3実施形態では、用途とコンテンツタイプの組み合わせに対して画質指数のデータが蓄積されている。
その他の項目は、必須ではないが、利用価値が高いと思われる項目の情報が顧客特性DBに登録される。図45に示す例では、注文ごとの印刷ジョブ(Job)を識別するためのジョブID(識別符号)や、注文の受付日、コスト(符号「C」で表記する。)、納期(符号「D」で表記する。)。つまり、過去の取引におけるジョブの履歴として、注文に応じて提供した印刷物の画質(Q)とコスト(C)、納期(D)に対して、その顧客が満足したか(OKか)、満足しなかったか(NGか)という情報が顧客特性DB46Aに蓄積されていく。
なお、本例では画質指数Qとして総合画質を用い、総合画質の評価項目として含まれる画質属性(ここでは項目aからfの6種類の属性)の評価値(Zi;i=a,b,c,d,e,f)も記録されている。具体的には、例えば、図43に示すノイズ、色階調、シャープネス、文字、光沢、スジムラの6種類の属性がa〜fに対応する。なお、図45では記載を省略しているが、表の各セルにはそれぞれ該当する値が記述される。
また、このような顧客特性DBから様々な統計処理を行うことが可能であり、顧客特性DBに登録されている各種データを加工することにより、顧客毎の好みや傾向、全顧客の平均的なOKレベル(OK_Qの平均値)などの2次的な情報を生成することができる。このような2次的な情報は、必要に応じてオペレータの指示に基づき顧客特性DB46Aから随時生成してもよいし、定期的に或いは不定期に適宜のタイミングで自動的に生成してもよい。また、生成された2次的情報(DB加工データ)は、顧客特性DB46Aに組み入れて保持してもよいし、別のデータベースに登録したり、他の記憶装置に格納したりすることも可能である。
本第3実施形態では、複数の顧客の平均値など、標準的なパラメータが顧客特性DB46Aに保持される。これら標準的なデータは例えば、新規顧客の要求品質の推測に利用される。
また、本例では、顧客の要求品質を推測する手がかりとして、顧客特性DB46Aから図45に示すような、画質指数QとOK回数、NG回数の分布データ(「OK/NG画質指数分布」という。)を生成する。過去の納品印刷物の画質指数Qとその印刷物に対する顧客評価(OK/NG判断)の蓄積データ群から、用途別に、画質指数Q(総合画質)に対する顧客のOK判断回数、NG判断回数のそれぞれのヒストグラムを得ることができる。
図46中、実線で示した分布は、OK回数の分布データ(「OK画質分布データ」という。)である。図46中、破線で示した分布は、NG回数の分布データ(「NG画質分布データ」という。)である。このような画質指数分布は、特定の顧客のデータを使って同一用途のデータ群から生成することも可能であるし、複数の顧客(例えば、登録されている全顧客又は一部の顧客)の同一用途のデータ群から生成することもできる。
例えば、同じ顧客と何度も取引をすると、その顧客において印刷物の品質が「OK」と判断される画質レベルOK_Q)と、「NG」と判断される画質レベル(NG_Q)の分布が明確になる。常連顧客については、その特定顧客のデータから当該顧客の用途別OK/NG画質指数分布を生成する。また、新規顧客については、同一用途に関する他の顧客のデータを使って分布を作成する。
また、顧客特性DB46Aに登録されていない新規の用途の場合には、他の用途データを使って分布を推定したり、或いは、新規用途で重視される画質属性の項目や項目間のバランスを考慮した想定を使って分布を推定したりすることができる。
さらに、他の顧客を含めて平均データからの特定顧客データのずれ(例えば、標準偏差)を用いて、当該特定顧客(常連顧客)の好み、例えば、OK/NGの判断において重視する項目(重視項目)と、あまり重視しない項目(軽視項目)とを推定することができる。かかる推定に基づき、当該顧客の印刷依頼(注文)に対して、より好みに沿った印刷物を提案することが可能である。
図47には、本第3実施形態に係る画像評価装置10Bの電気系の構成の一例が示されている。図47に示す画像評価装置10Bは、図6に示す画像評価装置10に比べ、画像評価処理プログラム70に代えて画像評価処理プログラム70Bを適用している点が異なっている。また、画像評価装置10Bは、図13に示す画像評価装置10に比べ、記憶部66に参照情報DB46に代えて顧客DB46Aが記憶されている点も異なっている。
画像評価処理プログラム70Bは、図13に示す画像評価処理プログラム70に比べ、警告プロセス80に代えて警告プロセス80Aを適用している点が異なっており、CPU62は、警告プロセス80Aを実行することで図41に示す評価部24Aとして動作する。
次に、CPU62が画像評価処理プログラム70Bを実行することにより画像評価装置10Bで行われる画像評価処理について説明する。なお、ここでは、上記第1実施形態で説明した画像評価処理と異なる処理について説明し、上記第1実施形態と重複する処理の説明は省略する。図25に示すように、本第3実施形態に係る画像評価処理は、上記第1実施形態で説明した画像評価処理に比べ、ステップ206に代えてステップ206Aを適用した点が異なっている。ステップ206Aでは、警告部24Aにより、評価処理が行われ、その後、本画像評価処理を終了する。
図48には本第3実施形態に係る警告処理の流れの一例が示されている。図48に示す本第3実施形態に係る警告処理は、図30に示す警告処理に比べ、ステップ206B,206Cに代えて、ステップ350〜ステップ354を適用した点が異なっている。なお、以下では、図30に示す警告処理に含まれるステップとは異なるステップについて説明し、同一のステップについては同一のステップ番号を付してその説明を省略する。また、ここでは、錯綜を回避するために、評価対象画像に筋状欠陥画像が含まれる場合について説明する。
図48に示す警告処理では、ステップ350において、警告要否判定部44Aにより、顧客特定情報及び用途情報が取得され、その後、ステップ352へ移行する。ステップ352では、警告要否判定部44Aにより、顧客特性情報が取得される。
次のステップ354では、警告要否判定部44Aにより、上記ステップ350で取得された顧客特定情報及び用途情報に基づいて、上記ステップ352で取得された顧客特性情報が参照される。そして、参照結果に基づいて筋状欠陥画像の視認性の強度が警告を要する強度であるか否かが判定される。本ステップ354では、例えば、警告要否判定部44Aが、顧客特定情報及び用途情報に対応する顧客特性情報を参照して、評価結果情報に含まれる視認性強度情報により示される視認性の強度が警告を要する強度であるか否かを判定する。本ステップ352において警告を要しない強度である場合は判定が否定されて本警告処理を終了する。本ステップ352において警告を要する強度である場合は判定が肯定されてステップ206Dへ移行する。