JP2014062070A - 新規な抗酸菌生育阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒト等の真核生物に対しては無害であり、抗酸菌の生育を選択的に阻害する抗酸菌生育阻害剤およびそれを有効成分とする医薬組成物が提供する。
【解決手段】一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
【選択図】なし
【解決手段】一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、新規な抗酸菌生育阻害剤に関するものである。
抗酸菌は、マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属に属する真正細菌の総称であり、その呼称は、細胞壁に多量の脂肪酸を含むためグラム染色法等の通常の染色法に対し難染性を示すが、強力に染色された後は、酸アルコール処理による脱色に抵抗性を示すことに因んでいる。抗酸菌の中には、ヒトや動物に対する病原性を有するものが多数存在し、その代表例としては、結核菌(Mycobaterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leprae)、非結核性抗酸菌(病原性のものとしては、Mycobacterium avium、Mycobacterium kansasii等)が挙げられる。抗酸菌により引き起こされる疾患には、根治が困難なものや、最悪の場合には死に至るものも多いため、有効な薬剤の開発が重要な課題である。
従来、結核の治療には、ストレプトマイシン、カナマイシン等の抗結核薬が用いられている。非結核性抗酸菌感染症の治療には、抗結核薬と、クラリスロマイシン、ニューキノロン等の一般抗菌薬とを組み合わせた多剤併用療法が用いられている。しかし、これらの薬剤療法には、薬剤耐性の発現、副作用等の問題がある。また、適用可能な薬剤の種類が限定されているため、副作用が生じた場合に代替可能な薬剤がなく、減感作を行いながら投与を続行せざるを得ないという問題が生じる場合もある。
抗酸菌の細胞壁の構成成分であるリポアラビノマンナン(LAM)ならびにその前駆体であるホスファチジルイノシトールマンノシド(PIM)およびホスファチジルイノシトール(PI)が、抗酸菌の生育や宿主への感染の成立において重要な役割を果たしていることが近年の研究で明らかになった(例えば、非特許文献1および2参照)。そこで、抗酸菌におけるこれらの細胞壁構成リン脂質の生合成を阻害する化合物が、抗酸菌に由来する疾患の新規な治療薬として注目を集めている。
例えば、特許文献1には、抗酸菌の細胞壁の構成成分であるリポマンナン(LM)および/またはリポアラビノマンナン(LAM)の生合成を阻害する物質のスクリーニング方法が開示されている。
LMおよび/またはLAMの生合成経路は複数の反応からなるが、特許文献1記載のスクリーニング方法では、特定の反応に限定せず、そのいずれかを阻害する物質全般を広くスクリーニング対象としているため、スクリーニング効率が低いという課題が存在する。
また、LMおよびLAMの前駆体であるホスファチジルイノシトール(PI)の生合成経路には、抗酸菌と真核生物に共通する反応も存在するため、特許文献1記載のスクリーニング方法で得られる化合物の中には、治療対象である真核生物の生理機能にも悪影響を及ぼすものが含まれるおそれがある。
また、LMおよびLAMの前駆体であるホスファチジルイノシトール(PI)の生合成経路には、抗酸菌と真核生物に共通する反応も存在するため、特許文献1記載のスクリーニング方法で得られる化合物の中には、治療対象である真核生物の生理機能にも悪影響を及ぼすものが含まれるおそれがある。
そこで、特許文献2には、抗酸菌におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路について鋭意検討を行った結果、真核生物におけるそれとは一部異なる反応経路を有することを新たに見いだし、その反応をターゲットとすることにより、真核生物の生理機能に悪影響を与えることなく抗酸菌の生育を選択的に阻害する抗酸菌生育阻害剤の候補化合物を高効率でスクリーニングする方法が開示されている。
Morita, Y. S., Patterson, J. H., Billman-Jacobe, H., and McConville, M. J. Biochem J 378, 589-597 (2004)
Morita, Y. S., Velasquez, R., Taig, E., Waller, R. F., Patterson, J. H., Tull, D., Williams, S. J., Billman-Jacobe, H., and McConville, M. J. JBiol Chem 280, 21645-21652 (2005)
本発明者らは、抗酸菌におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路について鋭意検討を行った結果、真核生物におけるそれとは一部異なる反応経路を有することを新たに見いだし、その反応をターゲットとすることにより、真核生物の生理機能に悪影響を与えることなく抗酸菌の生育を選択的に阻害する抗酸菌生育阻害剤の候補化合物を高効率でスクリーニングする方法に基づき、これを用いて新規な抗酸菌生育阻害剤を発見するに至った。さらに、本発明は、反応経路にかかる酵素に対して有効なだけでなく、実際に細胞膜を効率よく通過し、優れた増殖抑制効果を有するものを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、次の態様に係るものである。
[1]下記の一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
なお、上記式(I)においてX1は、−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、上記式(II)においてX2は、−Z−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、Yは、H原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは、O原子またはCH2基である。また、X1、X2は隣接する水酸基と脱水縮合反応して環(あるいは環状エステル)を形成していてもよい。
[2]下記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有する上記[1]記載の抗酸菌生育阻害剤。
[3]下記の式(I)−3で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする上記[1]記載の抗酸菌生育阻害剤。
[4]下記の一般式(III)−1または(III)−2で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする上記[1]記載の抗酸菌生育阻害剤。
[5]下記の式(IV)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
なお、上記式(IV)においてX1は、−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、Yは、H原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは、O原子またはCH2基である。
また、A1は、O原子またはCH2基であり、A2は、O原子またはO−C(=O)基である。
また、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の飽和炭化水素基、または炭素数1〜8の不飽和炭化水素基を示す。なお、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。
[6]前記式(IV)において、A1がCH2基、A2がO原子、R3、R4が炭素数6の飽和炭化水素基、X1が−CH2−P(=O)(−NH2)2である化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有する上記[5]に記載の抗酸菌生育阻害剤。
[1]下記の一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
[2]下記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有する上記[1]記載の抗酸菌生育阻害剤。
また、A1は、O原子またはCH2基であり、A2は、O原子またはO−C(=O)基である。
また、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の飽和炭化水素基、または炭素数1〜8の不飽和炭化水素基を示す。なお、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。
[6]前記式(IV)において、A1がCH2基、A2がO原子、R3、R4が炭素数6の飽和炭化水素基、X1が−CH2−P(=O)(−NH2)2である化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有する上記[5]に記載の抗酸菌生育阻害剤。
本発明によれば、ヒト等の真核生物に対しては無害であり、抗酸菌の生育を選択的に阻害するPIP合成酵素阻害剤、抗酸菌生育阻害剤およびそれを有効成分とする医薬組成物が提供される。
以下、本発明の実施の形態の実施の態様について具体例等を示して詳細に説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る抗酸菌生育阻害剤は、下記の一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有している。
なお、上記式(I)においてX1は、−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、
上記式(II)においてX2は、−Z−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、
Yは、H原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはH原子、メチル基またはエチル基であり、
Zは、O原子またはCH2基(メチレン基)である。
また、X1、X2は隣接する水酸基と脱水縮合反応して環(あるいは環状エステル)を形成していてもよい。
上記式(II)においてX2は、−Z−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、
Yは、H原子または炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはH原子、メチル基またはエチル基であり、
Zは、O原子またはCH2基(メチレン基)である。
また、X1、X2は隣接する水酸基と脱水縮合反応して環(あるいは環状エステル)を形成していてもよい。
抗酸菌生育阻害剤として、上記一般式(I)または(II)で表される化合物、またはそれらのエナンチオマーの、医薬として許容される塩であってもよい。塩の具体例としては、NH4塩、一級、二級、三級または四級アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
従来、抗酸菌におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路は、真核生物におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路と同様、下記の(1)〜(3)の反応(化7参照)からなると信じられていた(例えば、Salman, M., Lonsdale, J. T., Besra, G. S.,and Brennan, P. J., Biochim. Biophys. Acta 1436, 437-450 (1999)参照)。
(1)グルコース6−リン酸 → 1L−myo−イノシトール1−リン酸
(2)1L−myo−イノシトール1−リン酸 →
myo−イノシトール+リン酸
(3)myo−イノシトール+CDP−ジアシルグリセロール →
ホスファチジルイノシトール(PI)+CMP
(1)グルコース6−リン酸 → 1L−myo−イノシトール1−リン酸
(2)1L−myo−イノシトール1−リン酸 →
myo−イノシトール+リン酸
(3)myo−イノシトール+CDP−ジアシルグリセロール →
ホスファチジルイノシトール(PI)+CMP
なお、式中、R1およびR2は、それぞれ飽和または不飽和炭化水素基を表す。生体内において、ジアシルグリセロールはホスファチジン酸を経由して合成されるため、通常、R1は飽和炭化水素基であり、R2は不飽和炭化水素基である。
しかしながら、本発明者は、抗酸菌におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路について再検討を行った結果、正しくは、下記の(1)、(2’)および(3’)の反応(化8参照)からなることを見いだした。
(1)グルコース6−リン酸 → 1L−myo−イノシトール1−リン酸
(2’)1L−myo−イノシトール1−リン酸+CDP−ジアシルグリセロール →
ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)+CMP
(3’)PIP → ホスファチジルイノシトール(PI)+リン酸
(1)グルコース6−リン酸 → 1L−myo−イノシトール1−リン酸
(2’)1L−myo−イノシトール1−リン酸+CDP−ジアシルグリセロール →
ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)+CMP
(3’)PIP → ホスファチジルイノシトール(PI)+リン酸
上記の一般式(I)または(II)で表される化合物は、上記(2’)の反応(PIPの合成)を選択的に阻害するため、抗酸菌の宿主となる真核生物のPIの生合成に悪影響を与えることなく、抗酸菌におけるPIPの生合成を選択的に阻害することで、抗酸菌の生育を阻害できる。PIPの合成の阻害機構については必ずしも明らかではないが、上記の化合物が、PIP合成酵素(抗酸菌に特有なもので、真核生物には存在しない。)の基質である1L−myo−イノシトール1−リン酸と構造が類似することから、これらの化合物がPIP合成酵素の阻害剤として作用していると考えられる。真核生物に存在し、上記の反応(3)を触媒するCDP−ジアシルグリセロール−イノシトール3−ホスファチジルトランスフェラーゼ(EC 2.7.8.11)はPIP合成酵素とは異なるものである。
上記の一般式(I)または(II)で表される化合物のうち、抗酸菌生育阻害剤として好ましく用いることができる化合物としては、下記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物が挙げられる。
また、上記の一般式(I)で表される化合物のうち、抗酸菌生育阻害剤として好ましく用いることができる化合物としては、下記の式(I)−3で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物が挙げられる。
これらの化合物は、任意の方法を用いて合成できるが、例えば、上記の式(I)−1および(I)−2で表される化合物は、下記のスキーム(A)に従い合成することができる。なお、これらの化合物は1−D体および1−L体の混合物として得られるが、下記のスキーム(A)では一方の異性体のみ記載している(以下同様である)。
また、前記式(I)−3で表される化合物(Ino−C-P(NH2)2)は、例えば、以下のような方法で製造することができる。まず、アルコールの水酸基がベンジル基等で保護されたIno−C−P(OH)2と塩化チオニルとを混合し加熱することで、アルコールの水酸基が保護されたIno−C−P(Cl)2が得られる。このIno−C−P(Cl)2をジクロロメタンに溶解し、アンモニアと反応させたのち、水酸基の保護基を除去することにIno−C-P(NH2)2が得られる。
また、例えば、下記の式(I)−4で表される化合物は、下記のスキーム(B)に従い合成することができる。なお、これらの化合物は1−D体および1−L体の混合物として得られるが、下記のスキーム(B)では一方の異性体のみ記載している(以下同様である)。
上記の一般式(I)で表される化合物のうち、抗酸菌生育阻害剤として好ましく用いることができる化合物としては、下記の一般式(III)−1または(III)−2で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物が、さらに挙げられる。
上記の一般式(III)−1または(III)−2で表される化合物も、上記の一般式(I)または(II)で表される化合物同様に、上記(2’)の反応(PIPの合成)を選択的に阻害するため、抗酸菌の宿主となる真核生物のPIの生合成に悪影響を与えることなく、抗酸菌におけるPIPの生合成を選択的に阻害することで、抗酸菌の生育を阻害できる。
(III)−1または(III)−2で表される化合物は、リン酸基の構造が、環状の構造となっているため、極性が低くなり、抗酸菌の細胞膜を透過しやすい。また、細胞内では、開環して、上記一般式(I)または(II)同様の構造となるため、上記(2’)の反応を選択的に阻害する。
(III)−1または(III)−2で表される化合物は、リン酸基の構造が、環状の構造となっているため、極性が低くなり、抗酸菌の細胞膜を透過しやすい。また、細胞内では、開環して、上記一般式(I)または(II)同様の構造となるため、上記(2’)の反応を選択的に阻害する。
(III)−1で表される化合物は、たとえば、DMF(ジメチルホルムアミド)溶液中の1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール(Ino−C−P(OH)2)に、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)塩化メチレン溶液を滴下した反応液を室温で10時間程度経過させた後の反応液中から得ることができる。この反応液に少量の水を添加して反応を停止して、(III)−1の化合物を混合する反応混合物を得る。この反応混合物から、水等を用いて結晶残渣を抽出して、イオン交換クロマトグラフィー等で精製することで、純度の高い化合物として得ることができる(参考文献;Yiqin,Wu.et al. (1997) Biochemistry,Vol.36, 356-366)。また、(III)−2で表される化合物は、2位の水酸基をベンジル基等で保護したIno−C−P(OH)2に対して、上記(III)−1の化合物を得る操作と同様の操作を行った後,2位の水酸基を保護する保護基を除去することにより得られる。
また、本発明の第2の実施の形態に係る抗酸菌生育阻害剤は、下記の式(IV)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有している。
なお、上記式(IV)においてX1は、−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(−NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、Yは、Hまたは炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは、O原子またはCH2基である。また、A1は、O原子またはCH2基であり、A2は、O原子またはO−C(=O)基である。また、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の飽和炭化水素基、または炭素数1〜8の不飽和炭化水素基を示す。なお、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。
上記の一般式(IV)で表される化合物も、上記の一般式(I)または(II)で表される化合物同様に、上記(2’)の反応(PIPの合成)を選択的に阻害するため、抗酸菌の宿主となる真核生物のPIの生合成に悪影響を与えることなく、抗酸菌におけるPIPの生合成を選択的に阻害することで、抗酸菌の生育を阻害できる。
なお、上記式(IV)において、X1を、−CH2−P(=O)(OY)2または−CH2−P(=O)(−NH2)2とし、Yをエチル基とすることで、リン酸基の極性を低下することができるため、細胞膜を透過しやすくなり、生育阻害効果が高くなる。また、R3およびR4を、炭素数1〜8(好ましくは2〜6)の飽和炭化水素基、または炭素数1〜8(好ましくは2〜6)の不飽和炭化水素基とすることで、細胞膜を透過することができる大きさとすることができるため、生育阻害効果を発揮する。この炭素数が、大きすぎる場合、細胞膜を透過することが難しく、生育阻害効果が低下する。さらに、A1をCH2基、A2をO原子とすることで、PIPの2つのリン酸系の構造部分が分解しにくくなるため、細胞内でより高い生育阻害効果を発揮することが期待される。
これらの好ましい構造を有するPIP類似物質として、下記式(IV)−1で示される化合物もしくは式(IV)−2で示される化合物が生育阻害効果を発揮する。
なお、上記式(IV)において、X1を、−CH2−P(=O)(OY)2または−CH2−P(=O)(−NH2)2とし、Yをエチル基とすることで、リン酸基の極性を低下することができるため、細胞膜を透過しやすくなり、生育阻害効果が高くなる。また、R3およびR4を、炭素数1〜8(好ましくは2〜6)の飽和炭化水素基、または炭素数1〜8(好ましくは2〜6)の不飽和炭化水素基とすることで、細胞膜を透過することができる大きさとすることができるため、生育阻害効果を発揮する。この炭素数が、大きすぎる場合、細胞膜を透過することが難しく、生育阻害効果が低下する。さらに、A1をCH2基、A2をO原子とすることで、PIPの2つのリン酸系の構造部分が分解しにくくなるため、細胞内でより高い生育阻害効果を発揮することが期待される。
これらの好ましい構造を有するPIP類似物質として、下記式(IV)−1で示される化合物もしくは式(IV)−2で示される化合物が生育阻害効果を発揮する。
上記式(IV)で示される化合物の製造方法を下記式(IV)−2で示される化合物を例に説明する。
下記のスキーム(C)に示したように、1の「C6H13OH(ヘキサノール)」と2の「3−O−ベンジル−sn−グリセロール」から、6の「アーキチジン酸(ホスファチジン酸のエーテルアナログ)」を合成する。次いで、CMP−モルホリデイトにより6から7の「CDP−アーキオール(CDP−ジアシルグリセロールのエーテルアナログ)」を作る。これと1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール(Ino−C−P(OH)2)を基質にして、PIP合成酵素またはAIP合成酵素(メタン生成古細菌の酵素)で化合物(IV)−2を調製する。(参考文献;Morii,H. et al.(2000) J.Biol.Chem. 275, 36568-36574.)
抗酸菌生育阻害剤の標的となる抗酸菌の種類について特に制限はないが、好ましくは、ヒトや動物に対し病原性を有するものであり、その具体例としては、結核菌(Mycobaterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leprae)、非結核性抗酸菌(Mycobacterium avium、Mycobacterium kansasii等)が挙げられる。
抗酸菌生育阻害剤におけるPIP合成酵素阻害活性を評価する方法としては、抗酸菌生育阻害剤の存在下および非存在下でPIP合成酵素の活性を測定し、それぞれの場合における酵素活性の比から阻害活性を評価する方法が挙げられる。抗酸菌生育阻害剤におけるPIP合成酵素阻害活性をin vitroで評価するための評価系(アッセイ系)に用いられるPIP合成酵素は、抗酸菌の菌体から単離精製したものであってもよく、菌体をホモジナイズしたものをそのまま用いてもよく、あるいは、PIP合成酵素をコードする遺伝子を大腸菌等に導入し発現させたものを用いてもよい。
抗酸菌としては、治療対象となる疾患の原因となる抗酸菌を用いてもよいが、M. smegmatis等の病原性を有しない抗酸菌を用いてもよい。
抗酸菌としては、治療対象となる疾患の原因となる抗酸菌を用いてもよいが、M. smegmatis等の病原性を有しない抗酸菌を用いてもよい。
酵素活性(反応速度)または被検化合物の阻害活性は、一定時間後に反応液中に含まれる基質濃度または生成物(PIP)濃度により求めることができる。被検化合物の存在下および非存在下にLineweaver-Burkプロットの比較より、被検化合物の阻害機構を判定することもできる。
基質濃度または生成物濃度は、基質にラジオアイソトープを用いた生成物の放射能測定、高速液体クロマトグラフィー等の任意の公知の手段を用いて行うことができる。
基質濃度または生成物濃度は、基質にラジオアイソトープを用いた生成物の放射能測定、高速液体クロマトグラフィー等の任意の公知の手段を用いて行うことができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[1]1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール(Ino−C−P(OH)2);上記式(I)−1)および1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトール(Ino−C−P(OEt)2;上記式(I)−2)
上記のスキーム(A)にしたがって標記化合物を合成した。
上記のスキーム(A)にしたがって標記化合物を合成した。
1,4−ジ−O−ベンゾイル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
窒素雰囲気下、室温でmyo−イノシトール(25g、138.8mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)溶液に2,2−ジメトキシプロパン(75mL、612.1mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(0.5g、2.6mmol)を加え、100℃で2時間攪拌した。溶液を氷浴で冷やし、トリエチルアミン(5mL)を加えた。濾過した後、トルエン(12.5mL)を加え、40℃で減圧濃縮し低沸点溶媒を取り除いた。そのN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)溶液にピリジン(75mL、929.2mmol)を加えた後、氷浴で冷やしながら塩化ベンゾイル(100mL、860.8mmol)を15分かけて一滴ずつ滴下し2時間攪拌した。析出した固体を吸引濾過し、ピリジン、水、アセトン、ジエチルエーテルの順で洗浄することで1,4−ジ−O−ベンゾイル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール1を白色固体16.2g(収率25%)で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.30 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 1.64 (s, 3H), 3.73 (dd, J = 11.0, 9.4Hz, 1H), 4.36-4.41 (m, 2H), 4.79 (dd, J = 4.6, 4.6Hz, 1H), 5.43 (dd, J = 10.6, 4.4Hz, 1H), 5.61(dd, J = 11.1, 6.7Hz, 1H), 7.43-7.49(m, 4H), 7.55-7.62 (m, 2H), 8.09-8.16 (m, 4H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.30 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 1.64 (s, 3H), 3.73 (dd, J = 11.0, 9.4Hz, 1H), 4.36-4.41 (m, 2H), 4.79 (dd, J = 4.6, 4.6Hz, 1H), 5.43 (dd, J = 10.6, 4.4Hz, 1H), 5.61(dd, J = 11.1, 6.7Hz, 1H), 7.43-7.49(m, 4H), 7.55-7.62 (m, 2H), 8.09-8.16 (m, 4H)
2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
窒素雰囲気下、室温で水酸化ナトリウム(0.41g、10.17mmol)のメタノール(21.7mL)溶液に1,4−ジ−O−ベンゾイル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール1(1.02g、2.17mmol)を加え、5時間過熱還流した。溶液を氷浴で冷やし、緩衝溶液を加えて反応を止めた。ジクロロメタンで10回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルを用いて再結晶することで2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール2を結晶434.4mg(収率77%)で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.38 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.48 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 2.34 (d, J = 8.9Hz, 1H), 2.40(d, J = 3.0Hz, 1H), 3.33 (dd, J = 10.6, 9.4Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 9.9, 9.6Hz, 1H), 3.88-3.93 (m, 1H), 4.01-4.09 (m, 2H), 4.49 (dd, J = 4.8, 4.8Hz, 1H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.38 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.48 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 2.34 (d, J = 8.9Hz, 1H), 2.40(d, J = 3.0Hz, 1H), 3.33 (dd, J = 10.6, 9.4Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 9.9, 9.6Hz, 1H), 3.88-3.93 (m, 1H), 4.01-4.09 (m, 2H), 4.49 (dd, J = 4.8, 4.8Hz, 1H)
1−O−ベンジル-2,3:5,6-ジ−O−イソプロピリデン−myo-イノシトール
窒素雰囲気下、室温で2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール2(3.13g、12.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(120mL)溶液に水素化ナトリウム(0.58g、24.0mmol)を加え、1時間攪拌した。その溶液にベンジルブロミド(1.44mL、12.0mmol)を加え室温で2時間攪拌し、緩衝溶液を加えて反応を止めた。酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで1−O−ベンジル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール3を白色固体2.21g(収率53%)で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.34 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 2.38 (d, J = 2.8Hz, 1H), 3.27 (dd, J = 9.9, 9.7Hz, 1H), 3.79 (dd, J = 10.2, 4.2Hz, 1H), 3.87-3.90 (m, 1H), 3.91-3.95 (m, 1H), 4.05 (dd, J = 9.8, 9.6Hz, 1H), 4.32 (dd, J = 4.4, 4.4Hz, 1H), 4.81 (d, J = 12.6Hz, 1H), 4.89 (d, J = 12.6Hz, 1H), 7.26-7.43 (m, 5H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.34 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 2.38 (d, J = 2.8Hz, 1H), 3.27 (dd, J = 9.9, 9.7Hz, 1H), 3.79 (dd, J = 10.2, 4.2Hz, 1H), 3.87-3.90 (m, 1H), 3.91-3.95 (m, 1H), 4.05 (dd, J = 9.8, 9.6Hz, 1H), 4.32 (dd, J = 4.4, 4.4Hz, 1H), 4.81 (d, J = 12.6Hz, 1H), 4.89 (d, J = 12.6Hz, 1H), 7.26-7.43 (m, 5H)
1−O−ベンジル−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
アルゴン雰囲気下、室温で1−O−ベンジル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール3(1.39g、3.96mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(8mL)溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU、1.19mL、7.92mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.048g、0.396mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(0.896g、5.94mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。緩衝溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することで1−O−ベンジル−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール4を1.80g(収率98%),黄色のオイルで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 3H), 0.09 (s, 3H), 0.89 (s, 9H) 1.33 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.52 (s, 3H), 3.19 (dd, J = 9.5, 9.4Hz, 1H), 3.72-3.81 (m, 2H), 3.88 (dd, J = 5.0, 4.9Hz, 1H), 3.98 (dd, J = 9.9, 9.6Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 4.6, 4.5Hz, 1H), 4.80 (d, J = 12.5Hz, 1H), 4.87 (d, J = 12.5Hz, 1H), 7.26-7.42 (m, 5H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 3H), 0.09 (s, 3H), 0.89 (s, 9H) 1.33 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.52 (s, 3H), 3.19 (dd, J = 9.5, 9.4Hz, 1H), 3.72-3.81 (m, 2H), 3.88 (dd, J = 5.0, 4.9Hz, 1H), 3.98 (dd, J = 9.9, 9.6Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 4.6, 4.5Hz, 1H), 4.80 (d, J = 12.5Hz, 1H), 4.87 (d, J = 12.5Hz, 1H), 7.26-7.42 (m, 5H)
4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
水素雰囲気下、室温で1−O−ベンジル−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール4(1.80g、3.88mmol)のエタノール(4.4mL)溶液に水酸化パラジウム(0.180g,10wt%),トリエチルアミン(0.674、0.4.84mmol)を加え、3日間攪拌した。溶液をセライトろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製することで4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール5を1.43g(収率99%),白色固体で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 3H), 0.11 (s, 3H), 0.91 (s, 9H) 1.36 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 2.30 (d, J = 8.9Hz, 1H), 3.25 (dd, J = 10.3, 9.5Hz, 1H), 3.76 (dd, J = 9.9, 9.7Hz, 1H), 3.79 (dd, 10.5, 6.1Hz, 1H), 3.95-4.00 (m, 1H), 4.02 (dd, J = 5.8, 5.3Hz, 1H), 4.43 (dd, J = 4.8, 4.8Hz, 1H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 3H), 0.11 (s, 3H), 0.91 (s, 9H) 1.36 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 2.30 (d, J = 8.9Hz, 1H), 3.25 (dd, J = 10.3, 9.5Hz, 1H), 3.76 (dd, J = 9.9, 9.7Hz, 1H), 3.79 (dd, 10.5, 6.1Hz, 1H), 3.95-4.00 (m, 1H), 4.02 (dd, J = 5.8, 5.3Hz, 1H), 4.43 (dd, J = 4.8, 4.8Hz, 1H)
(2,3,5/4,6)−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキサノン
アルゴン雰囲気下、0℃でN−クロロスクシンイミド(1.01g、7.56mmol)のトルエン(8mL)溶液にジメチルスルフィド(0.56mL、7.56mmol)を加え、−25℃まで温度を下げた。−25℃で混合溶液に4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール5(0.470g、1.26mmol)のトルエン(4mL)溶液を一滴ずつ加え、−25〜−35℃で3時間攪拌した。その溶液にトリエチルアミン(1.57mL、11.30mmol)を加えた後、冷却浴を外し、室温にもどした。0℃で飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を止め、エーテルで抽出し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで(2,3,5/4,6)−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキサノン6を384.6mg(収率<82%)、ブラウンオイルで得られた。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.14 (s, 3H), 0.16 (s, 3H), 0.93 (s, 9H) 1.34 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 3.64 (dd, J = 11.2, 9.9Hz, 1H), 4.14 (dd, J = 9.8, 4.3Hz, 1H), 4.24-4.30 (m, 2H), 4.57 (d, J = 11.2Hz, 1H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.14 (s, 3H), 0.16 (s, 3H), 0.93 (s, 9H) 1.34 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 3.64 (dd, J = 11.2, 9.9Hz, 1H), 4.14 (dd, J = 9.8, 4.3Hz, 1H), 4.24-4.30 (m, 2H), 4.57 (d, J = 11.2Hz, 1H)
4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−ジエトキシホスホリルメチリデン−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−シクロヘキサンペントール
アルゴン雰囲気下、0℃でメチレンジリン酸ジエチル(2.6mL、4.12mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液にn−ブチルリチウム(1.58Mヘキサン溶液、2.6mL、4.12mmol)を加え、0.5時間攪拌した。その混合溶液に(2,3,5/4,6)−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキサノン6(384.6mg、1.03mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を一滴ずつ加え、0℃で2時間攪拌した。緩衝溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで2回抽出し、水と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−ジエトキシホスホリルメチリデン−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−シクロヘキサンペントール7を389.0g(収率74%),黄色のオイルで得た。
(major isomer) 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.11 (s, 3H), 0.12 (s, 3H), 0.91(s, 9H), 1.30 (dt, J = 7.1,1.0Hz, 6H), 1.36 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.49 (s, 6H), 3.44 (dd, J = 10.1, 10.0Hz, 1H), 3.88 (dd, J = 10.0, 5.9Hz, 1H), 4.04-4.18 (m, 5H), 4.38-4.42 (m, 1H), 4.46 (d, J = 5.5Hz, 1H), 5.90 (dd, J = 13.9, 1.7 Hz, 1H),
(minor isomer) 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.09 (s, 6H), 0.88(s, 9H), 1.32 (t, J = 7.1Hz, 6H), 1.35 (s, 3H), 1.38 (s, 3H), 1.53 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 3.75 (dd, J = 7.0, 5.5Hz, 1H), 4.04-4.26 (m, 5H), 4.54-4.57 (m, 1H), 4.77 (d, J = 7.8Hz, 1H), 5.22-5.25 (m, 1H), 6.01 (dd, J = 15.2, 1.6Hz, 1H)
(major isomer) 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.11 (s, 3H), 0.12 (s, 3H), 0.91(s, 9H), 1.30 (dt, J = 7.1,1.0Hz, 6H), 1.36 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.49 (s, 6H), 3.44 (dd, J = 10.1, 10.0Hz, 1H), 3.88 (dd, J = 10.0, 5.9Hz, 1H), 4.04-4.18 (m, 5H), 4.38-4.42 (m, 1H), 4.46 (d, J = 5.5Hz, 1H), 5.90 (dd, J = 13.9, 1.7 Hz, 1H),
(minor isomer) 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.09 (s, 6H), 0.88(s, 9H), 1.32 (t, J = 7.1Hz, 6H), 1.35 (s, 3H), 1.38 (s, 3H), 1.53 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 3.75 (dd, J = 7.0, 5.5Hz, 1H), 4.04-4.26 (m, 5H), 4.54-4.57 (m, 1H), 4.77 (d, J = 7.8Hz, 1H), 5.22-5.25 (m, 1H), 6.01 (dd, J = 15.2, 1.6Hz, 1H)
4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
水素雰囲気下、室温で4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−ジエトキシホスホスホリルメチリデン−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−シクロヘキサンペントール7(35.9mg、0.071)の酢酸エチル(1.0mL)溶液に酸化白金(7.18mg、20wt%)を加え、21時間攪拌した。溶液をセライトろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ-1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール8を29.5g(収率81%),黄色のオイルで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 6H), 0.90 (s, 9H), 1.32 (t, J = 7.0Hz, 6H), 1.34 (s, 3H), 1.37 (s, 3H), 1.39 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 2.12-2.19 (m, 2H), 2.26-2.36 (m, 1H), 3.26 (dd, J =10.2, 9.2Hz, 1H), 3.50 (dd, J = 10.7, 9.2Hz, 1H), 3.73 (dd, J = 10.3, 6.4Hz, 1H), 4.07-4.13 (m, 4H), 4.50 (dd, J = 4.7, 4.6Hz, 1H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 6H), 0.90 (s, 9H), 1.32 (t, J = 7.0Hz, 6H), 1.34 (s, 3H), 1.37 (s, 3H), 1.39 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 2.12-2.19 (m, 2H), 2.26-2.36 (m, 1H), 3.26 (dd, J =10.2, 9.2Hz, 1H), 3.50 (dd, J = 10.7, 9.2Hz, 1H), 3.73 (dd, J = 10.3, 6.4Hz, 1H), 4.07-4.13 (m, 4H), 4.50 (dd, J = 4.7, 4.6Hz, 1H)
1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
アルゴン雰囲気下、0℃で4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール8(14.9mg、0.029mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1mL)にテトラブチルアンモンミウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液、0.087mL、0.087mmol)を加え、0℃で0.5時間攪拌した後、室温で5時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで2回抽出し、水と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルのみ、Rf=0.08)で精製することで1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール9を10.5g(収率92%),黄色のオイルで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.34 (t, J = 7.1Hz, 6H), 1.35 (s, 3H), 1.42 (s, 3H), 1.44 (s, 6H), 1.49 (s, 3H), 2.14-2.20 (m, 2H), 2.33-2.42 (m, 1H), 3.35 (dd, J = 10.5, 9.1Hz, 1H), 3.57 (dd, J = 10.8, 9.3Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 10.6, 6.7Hz, 1H), 4.00 (dd, J = 6.6, 5.2Hz, 1H), 4.07-4.16 (m, 4H), 4.56 (dd, J = 4.6, 4.3Hz, 1H)
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.34 (t, J = 7.1Hz, 6H), 1.35 (s, 3H), 1.42 (s, 3H), 1.44 (s, 6H), 1.49 (s, 3H), 2.14-2.20 (m, 2H), 2.33-2.42 (m, 1H), 3.35 (dd, J = 10.5, 9.1Hz, 1H), 3.57 (dd, J = 10.8, 9.3Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 10.6, 6.7Hz, 1H), 4.00 (dd, J = 6.6, 5.2Hz, 1H), 4.07-4.16 (m, 4H), 4.56 (dd, J = 4.6, 4.3Hz, 1H)
1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール
窒素雰囲気下、室温で1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール9(172.8mg、0.44mmol)のアセトニトリル(4.4mL)溶液に乾燥させたヨウ化ナトリウム(426.7mg、2.85mmol)とトリメチルシリルクロリド(0.36mL、2.85mmol)を加え、遮光して67時間攪拌した。水を加えて反応を止め、水層をヘキサンとエーテルで洗浄し減圧濃縮し、陽イオン交換カラムを行った。水を凍結乾燥することで1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール10を45.0mg(<34%),白色固体で得た。
1H-NMR (400MHz, D2O) δ : 1.80-1.95 (m, 2H), 2.02-2.15 (m, 1H), 3.26-3.37 (m, 2H), 3.51 (dd, J = 9.9, 2.9Hz, 1H), 3.57 (dd, J = 9.8, 9.0Hz, 2H), 4.17 (dd, J = 2.5, 2.0, 1H)
1H-NMR (400MHz, D2O) δ : 1.80-1.95 (m, 2H), 2.02-2.15 (m, 1H), 3.26-3.37 (m, 2H), 3.51 (dd, J = 9.9, 2.9Hz, 1H), 3.57 (dd, J = 9.8, 9.0Hz, 2H), 4.17 (dd, J = 2.5, 2.0, 1H)
1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトール
窒素雰囲気下、室温で4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール8(135.5mg、0.266mmol)の溶液(溶媒 トリフルオロ酢酸:水=2:1)を3時間攪拌し、減圧濃縮し凍結乾燥することで1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトール11を83.6mg(収率quant)、白色固体で得た。
1H-NMR (400MHz, D2O) δ : 1.33 (t, J = 7.0Hz, 6H), 1.81-1.90 (m, 1H), 2.06-2.14 (m, 1H), 2.17-2.31 (m, 1H), 3.27-3.38 (m, 2H), 3.56 (dd, J = 9.6, 2.4Hz, 1H), 3.61 (dd, J = 9.3, 9.2Hz, 1H), 4.06-4.22 (m, 5H)
1H-NMR (400MHz, D2O) δ : 1.33 (t, J = 7.0Hz, 6H), 1.81-1.90 (m, 1H), 2.06-2.14 (m, 1H), 2.17-2.31 (m, 1H), 3.27-3.38 (m, 2H), 3.56 (dd, J = 9.6, 2.4Hz, 1H), 3.61 (dd, J = 9.3, 9.2Hz, 1H), 4.06-4.22 (m, 5H)
上記の[1]で合成した1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール(Ino−C−P(OH)2)および1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトール(Ino−C−P(OEt)2)を含む下記の化合物を用いて、PIP合成酵素の阻害活性および抗酸菌生育阻害活性を検討した。
なお、myo−イノシトール2−モノリン酸(Ino−2P)は、Sigma-Aldrich製の試薬を用いた。また、Ino−C−COOHは、本実施例のために合成したものを用いた。Ino−O−SO2NH2は前述したスキーム(B)によって合成したものを用いた。
なお、myo−イノシトール2−モノリン酸(Ino−2P)は、Sigma-Aldrich製の試薬を用いた。また、Ino−C−COOHは、本実施例のために合成したものを用いた。Ino−O−SO2NH2は前述したスキーム(B)によって合成したものを用いた。
(2)PI−C−P(dioleoyl)の合成
基質として、イノシトール1リン酸の代わりにIno−C−P(OH)2を用いてPIP合成酵素による酵素反応を行うと、PIPとTLC上で同じ移動度のリン脂質が多量に生成した(図1中2)。このリン脂質をTLCで精製し、FAB−MSで調べるとm/z 939のシグナルが観察された(図2)。これは、PIPの構造類似体であるphosphatidyl-1-deoxy-1-phosphonomethyl-myo-inositol (dioleoyl) (以下、「PI−C−P(dioleoyl)」と略す。;下記式(IV)´−1)の分子量と一致する。従って、Ino−C−P(OH)2は通常の基質と同様にPIP合成酵素に利用され、本来の生成物PIPのホスホネートアナログPI−C−Pが酵素的に合成された。なお、ここのPI−C−P(dioleoyl)の合成における酵素反応とは、以下の[2](1)で発現させる、PIP合成酵素による反応のことを指す。
基質として、イノシトール1リン酸の代わりにIno−C−P(OH)2を用いてPIP合成酵素による酵素反応を行うと、PIPとTLC上で同じ移動度のリン脂質が多量に生成した(図1中2)。このリン脂質をTLCで精製し、FAB−MSで調べるとm/z 939のシグナルが観察された(図2)。これは、PIPの構造類似体であるphosphatidyl-1-deoxy-1-phosphonomethyl-myo-inositol (dioleoyl) (以下、「PI−C−P(dioleoyl)」と略す。;下記式(IV)´−1)の分子量と一致する。従って、Ino−C−P(OH)2は通常の基質と同様にPIP合成酵素に利用され、本来の生成物PIPのホスホネートアナログPI−C−Pが酵素的に合成された。なお、ここのPI−C−P(dioleoyl)の合成における酵素反応とは、以下の[2](1)で発現させる、PIP合成酵素による反応のことを指す。
[2]PIP合成酵素の阻害活性の測定
(1)遺伝子組換え操作によるPIP合成酵素の発現
結核菌(M.tuberculosis)のAIP合成酵素と同一のアミノ酸配列を有するBCG(M.bovis)のPIP合成酵素の遺伝子を組み込んだプラスミド(pET21a-BCG-PIPS)を構築し、これを大腸菌(E.coli)に導入し、PIP合成酵素を発現させた。
(1)遺伝子組換え操作によるPIP合成酵素の発現
結核菌(M.tuberculosis)のAIP合成酵素と同一のアミノ酸配列を有するBCG(M.bovis)のPIP合成酵素の遺伝子を組み込んだプラスミド(pET21a-BCG-PIPS)を構築し、これを大腸菌(E.coli)に導入し、PIP合成酵素を発現させた。
(2)酵素活性測定
CDP−ジアシルグリセロールと[14C]イノシトール1−リン酸に緩衝液を加え、酵素として(1)に従いPIP合成酵素を発現させたE.coliのホモジネートを加えて反応させた後、有機溶媒可溶性生成物の放射能を測定した。
CDP−ジアシルグリセロールと[14C]イノシトール1−リン酸に緩衝液を加え、酵素として(1)に従いPIP合成酵素を発現させたE.coliのホモジネートを加えて反応させた後、有機溶媒可溶性生成物の放射能を測定した。
(3)PIP合成酵素活性測定
0.2mM CDP−ジアシルグリセロール、0.04mM [14C]イノシトール1−リン酸(8Ci/mol)(8nmol、2381Bq/アッセイ)、50mM Bicine緩衝液(pH8.5)、5mM 2−メルカプトエタノール、10mM MgCl2、1.0%CHAPS、酵素溶液(タンパク量20μg)(全容量0.2mL)を37℃で10分間反応させた。(脂質基質は[14C]イノシトール1−リン酸と1.0%CHAPSと酵素溶液以外の反応溶液中で室温、20分間超音波処理して懸濁した。)反応後、0.1M HCl/メタノールと1M MgCl2(pH2)を加え、Bligh−Dyer法の比率で水層とクロロホルム層に分画し、クロロホルム可溶性生成物の放射能を測定した。
0.2mM CDP−ジアシルグリセロール、0.04mM [14C]イノシトール1−リン酸(8Ci/mol)(8nmol、2381Bq/アッセイ)、50mM Bicine緩衝液(pH8.5)、5mM 2−メルカプトエタノール、10mM MgCl2、1.0%CHAPS、酵素溶液(タンパク量20μg)(全容量0.2mL)を37℃で10分間反応させた。(脂質基質は[14C]イノシトール1−リン酸と1.0%CHAPSと酵素溶液以外の反応溶液中で室温、20分間超音波処理して懸濁した。)反応後、0.1M HCl/メタノールと1M MgCl2(pH2)を加え、Bligh−Dyer法の比率で水層とクロロホルム層に分画し、クロロホルム可溶性生成物の放射能を測定した。
(4)PI−C−P(dioleoyl)存在下のPIP合成酵素活性測定における、pHとCHAPS濃度の影響
前記(3)のPIP合成酵素活性測定方法に準拠して、CHAPS濃度とpHのみを変更したときのPI−C−P(dioleoyl)存在下におけるPIP合成活性を評価した。CHAPS濃度とpHは、試験結果を示す表2中に記載のとおりである。
前記(3)のPIP合成酵素活性測定方法に準拠して、CHAPS濃度とpHのみを変更したときのPI−C−P(dioleoyl)存在下におけるPIP合成活性を評価した。CHAPS濃度とpHは、試験結果を示す表2中に記載のとおりである。
[3]抗酸菌生育阻害活性の検討
1ウェルに×2普通ブイヨン培地Nutrient broth+100μg/mLアンピシリンを100μL、2ウェルから12ウェルまではNutrient broth+50μg/mLアンピシリンを100μL加える。1ウェルに阻害剤を100μL加え、10ウェルまで2倍段階希釈した(各ウェルの阻害剤濃度は次のとおりである。1ウェル:10mM、2ウェル:5mM、3ウェル:2.5mM、4ウェル:1.25mM。(また、10mMよりも高濃度の調整は、別に高濃度の阻害剤を加えたウェルを作成し調整した。)Mycobacterium smegmatis mc2155(1%小川培地3日培養菌)をPBSにケン濁後5μmフィルターを通し単個菌(3.9×107CFU/mL)にしたものを菌液とし、10μLずつそれぞれのウェルに加える。これをプレートミキサーに掛け、37℃で3日間培養後、判定を行った。
抗酸菌は菌同士が接着しプレートの底に沈むため、96ウェルマイクロプレートの結果を濁度OD600で示すことは困難である。そこで、各ウェルの菌液を採取し、寒天培地でのコロニー形成能をみた。具体的には、96ウェルマイクロプレートでの結果判定後、滅菌つまようじを用い、各ウェルの液を混和後、普通寒天培地へ接種し37℃で4日間培養した。
1ウェルに×2普通ブイヨン培地Nutrient broth+100μg/mLアンピシリンを100μL、2ウェルから12ウェルまではNutrient broth+50μg/mLアンピシリンを100μL加える。1ウェルに阻害剤を100μL加え、10ウェルまで2倍段階希釈した(各ウェルの阻害剤濃度は次のとおりである。1ウェル:10mM、2ウェル:5mM、3ウェル:2.5mM、4ウェル:1.25mM。(また、10mMよりも高濃度の調整は、別に高濃度の阻害剤を加えたウェルを作成し調整した。)Mycobacterium smegmatis mc2155(1%小川培地3日培養菌)をPBSにケン濁後5μmフィルターを通し単個菌(3.9×107CFU/mL)にしたものを菌液とし、10μLずつそれぞれのウェルに加える。これをプレートミキサーに掛け、37℃で3日間培養後、判定を行った。
抗酸菌は菌同士が接着しプレートの底に沈むため、96ウェルマイクロプレートの結果を濁度OD600で示すことは困難である。そこで、各ウェルの菌液を採取し、寒天培地でのコロニー形成能をみた。具体的には、96ウェルマイクロプレートでの結果判定後、滅菌つまようじを用い、各ウェルの液を混和後、普通寒天培地へ接種し37℃で4日間培養した。
[4]結果
結果を表1および表2に示す。表1は各種化合物のPIP合成酵素相対活性の試験結果である。合成酵素活性が100%のとき、その化合物を添加することによる活性阻害効果はほとんどなく、値が小さいほど、合成酵素の活性を阻害していることがわかる。ブランクとして、myo−イノシトールを添加しても、PIP合成酵素活性にほとんど影響を与えることがなかった。一方、本発明にかかる化合物を添加することで、合成酵素活性阻害効果があることがわかり、例えば、上記式(I)−1にかかるIno−C−P(OH)2は、最も高い阻害効果を示した。
結果を表1および表2に示す。表1は各種化合物のPIP合成酵素相対活性の試験結果である。合成酵素活性が100%のとき、その化合物を添加することによる活性阻害効果はほとんどなく、値が小さいほど、合成酵素の活性を阻害していることがわかる。ブランクとして、myo−イノシトールを添加しても、PIP合成酵素活性にほとんど影響を与えることがなかった。一方、本発明にかかる化合物を添加することで、合成酵素活性阻害効果があることがわかり、例えば、上記式(I)−1にかかるIno−C−P(OH)2は、最も高い阻害効果を示した。
表2は、上記[2](4)の評価結果であり、PI−C−P(dioleoyl)がPIP合成酵素活性を阻害する程度について、そのCHAPS濃度およびpHの影響を示したものである。
PI−C−P(dioleoyl)は、表1に実験結果を示す化合物よりも低濃度でPIP合成酵素活性を阻害し、CHAPS濃度が0.4%、pHが7.9のとき高い酵素活性阻害効果が認められた。
PI−C−P(dioleoyl)は、表1に実験結果を示す化合物よりも低濃度でPIP合成酵素活性を阻害し、CHAPS濃度が0.4%、pHが7.9のとき高い酵素活性阻害効果が認められた。
上記[3]の試験は、本発明にかかる化合物が生育阻害する濃度を測定するものである。その結果、式(I)−2で表されるIno−C−P(OEt)2は、5mMの濃度で、抗酸菌であるMycobacterium smegmatis mc2155の生育を阻害し、式(I)−1で示されるIno−C−P(OH)2は、25mMで生育を阻害した。また、Ino−C−COOHとIno−O−SO2NH2は、いずれも10mMでは生育阻害効果を確認することができなかったため、生育阻害効果を発揮するためにはより高濃度とすることが必要になる。なお、表1に示すように、Ino−C−P(OEt)2は、Ino−C−P(OH)2よりも、酵素活性阻害効果が認められる濃度は低かったが、生育阻害効果は、Ino−C−P(OEt)2の方が、低い濃度で確認された。これは、Ino−C−P(OH)2は、そのリン酸基部分の極性が高いため、抗酸菌の細胞膜を透過しにくいが、リン酸基の一部をエトキシ基に置換したIno−C−P(OEt)2は、極性が低くなり、細胞膜を透過しやすくなったためと考えられる。なお、エトキシ基を、NH2基とすることでも極性を下げることができ、細胞膜を透過しやすくなる。
さらに、PIP合成酵素活性の阻害効果が最も高かったPI−C−P(dioleoyl)は、抗酸菌の生育阻害効果を2.5mM濃度では確認できなかった。これは、この化合物がdioleoylと、非常に大きい不飽和炭化水素基を持つため、細胞膜を透過できなかったためと考えられる。このdioleoyl基を、細胞膜の透過ができるといわれる炭素数1〜8程度(好ましくは2〜6)の炭化水素にすることで、細胞膜を透過することができれば、PI−C−P構造が有する高いPIP合成酵素活性阻害効果が発揮され、優れた抗酸菌生育阻害効果を発揮すると考えられる。
このように、本発明の生育阻害剤は、PIP合成酵素の活性を阻害するものであり、PIP合成酵素は、抗酸菌特有の合成酵素のため、抗酸菌を選択的に生育阻害する効果を発揮するものである。また、置換基等を本発明の好ましい範囲のものに調整することで、より低濃度で抗酸菌の生育を阻害する化合物とすることができる。
本発明によれば、ヒト等の真核生物に対しては無害であり、高効率で、抗酸菌の細胞膜を通過し、抗酸菌の生育を選択的に阻害する抗酸菌生育阻害剤およびそれを有効成分とする医薬組成物が提供される。この抗酸菌生育阻害剤によって、新規の化学構造による新たな作用機序を有する抗結核薬等の開発を行うことができ有用である。
Claims (6)
- 下記の一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
上記式(II)においてX2は、−Z−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、
Yは、H原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、
Zは、O原子またはCH2基である。
また、X1、X2は隣接する水酸基と脱水縮合反応して環(あるいは環状エステル)を形成していてもよい。 - 下記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする請求項1記載の抗酸菌生育阻害剤。
- 下記の式(I)−3で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする請求項1記載の抗酸菌生育阻害剤。
- 下記の一般式(III)−1または(III)−2で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする請求項1記載の抗酸菌生育阻害剤。
- 下記の式(IV)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
なお、上記式(IV)においてX1は、
−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2、−CH2−P(=O)(−NH2)2、−Z−S(=O)2−NH2からなる群より選択される基であり、Yは、H原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは、O原子またはCH2基である。
また、A1は、O原子またはCH2基であり、
A2は、O原子またはO−C(=O)基である。
また、R3およびR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の飽和炭化水素基、または炭素数1〜8の不飽和炭化水素基を示す。なお、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。 - 前記式(IV)において、A1がCH2基、A2がO原子、R3、R4がいずれも炭素数6の飽和炭化水素基、X1が−CH2−P(=O)(−NH2)2である化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする請求項5に記載の抗酸菌生育阻害剤。
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