JP2014050647A - 抗がん剤投与用注射針およびその製造方法ならびに該注射針を含む抗がん剤投与用キット。 - Google Patents

抗がん剤投与用注射針およびその製造方法ならびに該注射針を含む抗がん剤投与用キット。 Download PDF

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淳 多賀
Shunji Ishiwatari
俊二 石渡
Ayako Kita
綾子 喜多
Reiko Sugiura
麗子 杉浦
Nagahiro Saito
永宏 齋藤
Osamu Takai
治 高井
Junko Hieda
純子 稗田
Hideki Fujita
秀樹 藤田
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Abstract

【課題】抗がん剤の曝露量を確実に少なくして、医療現場における抗ガン剤による健康被害を低減する。
【解決手段】注射針本体と、該注射針本体の内表面に設けられたフッ素系撥水性膜と、を含むことを特徴とする。該注射針1の針本体の外表面2cおよび刃面2bをマスキングするマスキング工程と、前記マスキングした注射針にフッ素化合物を蒸着させることによりフッ素系撥水性膜を形成させる工程と、前記フッ素系撥水性膜を有する注射針からマスキングを除去する除去工程とを実施することによって、製造することができる抗がん剤投与用注射針である。
【選択図】図1

Description

本発明は、抗がん剤投与用注射針およびその製造方法ならびに該注射針を含む抗がん剤投与用キットに関する。
抗がん剤が、変異原性、催奇性、発がん性を有することはよく知られており、低濃度であっても長期間継続的に抗がん剤に曝露される医療関係者に対する健康への危険性が懸念されている。
すなわち、がんの治療のために用いられる抗がん剤は、通常は輸液の中に調製されて使用されるが、この準備段階では、抗がん剤の容器から抗がん剤を注射器などで吸引して輸液中に混合しなければならず、抗がん剤を取り扱う医療従事者は,抗がん剤の曝露を受ける危険性がある.また投与や廃棄の際にも、同様の危険性がある。
抗がん剤を取り扱っている医療従事者の前記危険性は、取扱い薬剤の毒性の強さだけで決まるものではなく、取扱い作業中におけるエアロゾル化した薬剤の吸入、抗がん剤のしぶきやはねによる薬剤の皮膚や目への付着、薬剤に汚染された手指からの食物などを介した薬剤の経口摂取、などの経路を介して、取り扱っている抗がん剤が医療従事者の体内にどれだけ摂取されるかによって決定される。治療目的で患者に使われる量に比べると、これを取り扱う医療従事者の被曝による体内摂取量は、治療量の0.1%を越えることはないと推定されるが、抗がん剤を長期間扱う上での問題は、ごく微量の長期摂取による慢性影響が生じる可能性と、様々な危険因子の複合汚染による危険度が知られていないことである。
一方で、日本でも抗がん剤の危険とその安全な取扱いについて関心が高まり,1991
年に日本病院薬剤師会による「抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針」がガイドラインとして発表され、1994年および2005年5月14日に改訂版も発行されている。しかし、その指針を病院が守るような強制力は付与されておらず,指針で示された内容が十分医療現場に普及しているとはいえない状況である(産業衛生学雑誌、2005年、第47巻、第195―203頁)。
加えて、抗がん剤による汚染の広がりを把握するために公的機関が行った結果では、調製室に持ち込まれた抗がん剤を、安全キャビネット内で調製した後、調製室の外部にある調剤室で最終鑑査を受け、外来化学療法室もしくは病棟に運搬していた場合、調製室入り口ドアノブ、調製室入り口床、調製室へ搬入する箱、注射剤調剤用ワゴン、調製済み注射剤鑑査用ワゴン、搬出用ドアノブ、一般調剤台、職員用トイレ床、食事用テーブル、職員用机およびベッドから1種類以上の抗がん剤が検出され、通常、薬剤を保管していないテーブルなどからも抗がん剤が検出されたことから、薬剤師の衣類などに付着した抗がん剤が薬局内で拡散したことが示唆されるとの報告もなされている(公衛研ニュース、第42号、大阪府立公衆衛生研究所発行)。
これまで、明確に抗がん剤の曝露量を低減することを目的にしたものとして、容器の栓体を分割し、二重構造にして内部に閉鎖空間を設けた栓体(特許文献1)がある。また目的は異なるが、撥水性膜を設けた注射針として、筒状の本体部と、この本体部の少なくとも先端部内表面に被覆された撥水性の皮膜を具備してなり、前記皮膜が、フッ化処理されたフッ素樹脂系粒子またはフッ化グラファイト粒子からなる、非金属粒子が金属マトリックス中に分散共析された複合メッキからなるものが知られている(特許文献2)。
国際公開第2010/113823号 特開平6−117970号公報
抗がん剤が人体に侵入する経路は、気道、皮膚、口腔であり、安全キャビネットなどのない状況のもとでは、あらゆる手段を講じて、抗がん剤の曝露量を低減し、その人体への侵入と拡散を避けることが重要であるが、そのためには、抗がん剤の注射針への残留や付着を極力低減し、抗がん剤をバイアル瓶内に留めておくなど、抗がん剤を外部に存在させないことがカギとなるといえる。
特許文献2の注射針は、液切れを重視しているために、注射針の外表面にも撥水性膜を設けており、注射針の外表面に撥水性膜を設けた場合には、該注射針は抗がん剤を充填したバイアル瓶などのゴム栓を通過させるに際して、強い摩擦力(刺通抵抗)を生じる。このためバイアル瓶から薬液を吸入して注射針をゴム栓から抜く際に、ゴム栓の中心部が摩擦力によって注射針に引かれて膨らみ、注射針をゴム栓から抜く瞬間には、注射針から離脱したゴム栓の中心部がゴム栓の弾性で強く収縮して振動し、抗がん剤が注射針によるゴム栓の開口部から漏出するという問題があり、抗がん剤の曝露を低減するという意味からは不向きなものであった。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、注射針の特定部位に撥水性膜を設けること、また抗がん剤を充填したバイアル瓶の栓体に中空部を設けた栓体を用いることによって、どのような医療現場であっても、抗がん剤の曝露量を確実に少なくし、かつ曝露時間などを短くすることによって、前記危険性を少なくすることができることを見出したものである。
本発明の目的は、抗がん剤の曝露量を確実に少なくして、医療現場における抗ガン剤による健康被害を低減する抗がん剤投与用注射針およびその製造方法ならびに該注射針を含む抗がん剤投与用キットを提供することである。
本発明は、注射針本体と、
該注射針本体の内表面に設けられたフッ素系撥水性膜と、を含むことを特徴とする抗がん剤投与用注射針である。
また本発明は、前記フッ素系撥水性膜が、一般式(1)
(R−Si−CHCH−R ・・・・・・・・(1)
(ただし、式中、Rは低級アルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜8のフルオロアルキル基を表す)
で示されるフッ素化合物で構成されてなることを特徴とする。
本発明は、前記フッ素系撥水性膜が、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロクチルトリメトキシシランおよび1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランのいずれかで構成されることを特徴とする。
本発明は、前記抗がん剤投与用注射針の製造方法であって、注射針本体の外表面および刃面をマスキングするマスキング工程と、前記マスキングした注射針にフッ素化合物を蒸着させることによりフッ素系撥水性膜を形成させる工程と前記フッ素系撥水性膜を有する注射針からマスキングを除去する除去工程とを含むことを特徴とする抗がん剤投与用注射針の製造方法である。
さらに本発明は、
前記の抗がん剤投与用注射針と、
抗がん剤が収容される容器の栓体として内部に閉鎖空間を設けたゴム栓体とを含むことを特徴とする抗がん剤投与用キットである。
本発明によれば、注射針は針本体の内表面にのみ撥水性膜が設けられ、注射針の刃面および外表面には撥水性膜が設けられていないので、抗がん剤を容器から注射器に吸引するときには、まず容器の栓体を穿刺するに際して穿刺抵抗が低く、穿刺時に抗がん剤の液漏れがない。さらに注射筒に抗がん剤を吸引したのちに容器栓体から注射針を引き抜く際にも引き抜き抵抗が低いので抗がん剤の液漏れがない。
また、本発明によれば、撥水性膜を構成するフッ素化合物が強い撥水を有する強度に優れた膜であるので、長期間保存しても撥水性の低下がない。
本発明のフッ素化合物は、製膜性にすぐれており、フッ素原子が重なりあうように集合しているので、強い撥水性を示す。
また、本発明の注射針と栓体を組合せた投与キットは、医療現場における抗がん剤の曝露量を大きく低減できるので、医療関係者がこれまで受けてきた健康被害を確実に低減し、健康不安を顕著に低減することができる。
本発明の一実施形態に係る注射針1を、本発明に非必須のハブ3に装着した例を模式的に示した図である。 本発明の注射針先端部分2を拡大して示す図である。 本発明のキットを構成する栓体の模式図である。 従来のゴム栓を示す図である。 本発明の注射針と未処理の注射針の漏液量を比較したグラフである。
図1は本発明の一実施形態に係る注射針の1を、本発明に非必須のハブ3に装着した例を模式的に示した図であり、図2は本発明の注射針先端部分2を拡大して示す図である。本発明の注射針1は、内表面2aにフッ素系撥水性膜を設け、外表面2cおよび刃面2bには、フッ素系撥水性膜を設けない点に特徴を有する。
注射針1としては、両端部が開口し、かつ中空の血管内注射、皮下注射など、経管的、経皮的に抗がん剤を投与できるものあればよい。
また、注射針1は、針本体単独のものに限られず、通常、注射筒に結合容易にハブ3が形成されている注射針、すなわちポリエチレンやポリプロピレンなどの透明な熱可塑性プラスチックで略円筒状に形成され、注射筒下部の装着部に結合するためのネジを設けたハブに一体的に固着された注射針であってもよい。
さらに、注射針1の材質、形態を問わないが、通常、ステンレス製の注射針がもっとも好ましい。またその形状は、刃面2bとハブ3との固着部の径が変わらない円筒形状であってもよく、あるいは刃面2bから穿刺部さらにはハブ3との固着部までがテーパー状に径が大きくなっているものであってもよく、さらには刃面2bから穿刺部に至るまでがテーパー状に構成され、穿刺部からハブ3との固着部までが同一径の注射針であってもよい。
かかる注射針1としては、通常、注射針として汎用されている18G(1.2mm)〜27G(0.4mm)の径のものがあげられる。
本発明において、フッ素系撥水性膜は、注射針本体のハブ3に固着される側の端面から、注射針1が刃面2bによって切り取られる端面に至る内表面2a全域に設けられる。注射針の外表面2cおよび刃面2bに撥水性膜を設けると前記刺通抵抗によって、抗がん剤の漏出が避けられないこともあり好ましくない。
かかるフッ素系撥水性膜は、フッ素系化合物で形成される膜であればどのような膜でもよいが、一般式(1)
(R−Si−CHCH−R ・・・・・・・・(1)
(ただし、式中、Rは低級アルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜8のフルオロアルキル基を表す)
で示されるフッ素化合物で構成されているのが好ましい。
一般式(1)において、Rで示される低級アルコキシ基としては、たとえばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などがあげられ、このうち、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がもっとも好ましい。
また、一般式(1)において、Rで示されるフルオロアルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖フルオロアルキル基が好ましく、直鎖飽和フルオロアルキル基がより好ましい。
かかるフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフロオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、ヘプタデカフルオロクチル基.オクタデカフルオロクチル基があげられ、とりわけ、トリフルオロメチル基、トリデカフルオロヘキシル基およびオクタデカフルオロクチル基が好ましい。
かかる置換基を有するフッ素化合物の具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペンタフルオロブチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ヘプタフロオロペンチルトリメトキシシラン、1H、1H、2H、2H−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ウンデカフルオロヘプチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペンタデカフルオロノ二ルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−オクタデカフルオロデシルトリメトキシシランがあげられる。
このうち、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(FAS3)、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロクチルトリメトキシシラン(FAS13)または1H,1H,2H,2H−オクタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(FAS17)が好ましい。これらの化合物はいずれも既知化合物である。
また、本発明が対象とする抗がん剤は、抗がん剤のうち、人体に吸収されて変異原性、催奇性、発がん性などの悪影響を与えるものであり、注射剤として投与可能なものであれば、特に限定されない。注射剤として投与可能という意味は、直接注射剤として患者に投与されるもののほか、生理的食塩水、ブドウ糖輸液や各種栄養輸液に混合して投与できるものを含む。
具体的には、シクロフォスファミド、エトポシド、シスプラチン、ドキソルビシン、マイトマイシンC、メトトレキセート、5−FU、イホスファミド、ダウノマイシン、ダカルバジン、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの抗がん剤があげられる。
なお、本発明の注射針1は、抗がん剤に限らず、曝露によって健康に悪影響を及ぼす薬剤、たとえば検査用アイソトープ試薬、向精神病薬などに用いても、その曝露量を大幅に低減できるので有効である。
<製造方法>
本発明の注射針1は、該注射針の針本体の外表面2cおよび刃面2bをマスキングするマスキング工程と、前記マスキングした注射針にフッ素化合物を蒸着させることによりフッ素系撥水性膜を形成させる工程と、前記フッ素系撥水性膜を有する注射針からマスキングを除去する除去工程とを実施することによって、製造することができる。
注射針1は、フッ素系撥水性膜を有しない注射針を用いて製造することもでき、あるいは前記フッ素系撥水性膜を有しない注射針をハブ3に装着したのち、注射針の内表面にフッ素系撥水性膜を設けてもよいが、以下ではハブ3に装着せずに前記撥水性膜を設ける場合を例にとって説明する。
マスキング工程では、注射針本体の内表面2aのみに撥水性膜が形成されるように、注射針の外表面2cと刃面2bにマスキングを行う。
マスキングに際して、その方法や材料は、蒸着工程および膜化工程における加熱に耐えることができ、除去工程で除去可能なものであれば、特に限定されないが、たとえば、マスキングテープの貼付やワックス塗布があげられ、マスキングテープとしては耐熱性の素材のもので、特にはシリコンテープおよびテフロン(登録商標)テープが好ましい。
なお、マスキング工程の前に、注射針として市販のものを使用するときには、注射針内表面は平滑に形成されているが、さらに当該内表面に、酸素を含む雰囲気下で真空紫外光(Vacuum Ultra Violet;以下、「VUV」ともいう。)を照射して、注射針内表面に水酸基を生成させることが好ましい。
これによって、本来注射針の内表面に存在した水酸基と併せて水酸基の密度が大きくなるので、フッ素化合物末端のアルコキシ基等とが加水分解することによってできるシラノール基と水酸基との化学結合 (シランカップリング反応)が増加し、前記フッ素系撥水性膜を注射針内表面に強固に固定化することができる。
フッ素系撥水性膜は、注射針の内表面2a以外をマスキングした注射針1に、フッ素系撥水性膜を構成するフッ素化合物を化学蒸着させることにより製造することができる。
化学蒸着法によるときは、注射針1および反応容器を乾燥し、該反応容器内の雰囲気ガスの25℃における相対湿度を5〜30%とし、フッ素化合物溶液と注射針とを容器内に置いて、容器内雰囲気温度を100〜200℃に制御すればよい。
該蒸着により生じたフッ素化合物の蒸気が注射針1に供給され、典型的には、容器内を拡散したフッ素化合物の蒸気が注射針1内部に到達して内表面に堆積することにより撥水性膜が形成される。
より詳細にいえば、前記の方法によって、フッ素化合物を膜化した場合には、内表面2aを構成する金属の表面に、フッ素化合物のアルコキシシリル基側が化学結合し、アルコキシシリル基に結合しているメチレン基側のフルオロアルキル鎖が集合して、内表面2aから内径の中心方法に向けて延びることによって撥水性膜を構成している。
除去工程では、マスキングを除去すればよく、たとえばマスキングをマスキングテープの貼付によって実施した場合には、マスキングテープを除去することによって除去工程は完了する。
また、本発明は、前記撥水性膜を設けた注射針と、抗がん剤が収容される容器の栓体として内部に閉鎖空間を設けたゴム栓体とを含む抗がん剤の曝露を低減させるための投与キットである。
前記内部に空間を設けたゴム栓体としては、栓体内部に空間を設けたものであればよく、該空間に、漏出した抗がん剤を収納することができるので、抗がん剤の外部への曝露を防ぐことができる。
かかる栓体としては、たとえば図3に示すように、栓体が、第1分割片4と第2分割片5とによって構成されるものであって、これらは可撓性および弾発性を有する材料から成り、容器本体の開口部に装着された状態では、第1分割片4の第1嵌合部4bが容器本体の開口部に嵌り込み、第1フランジ部4aに第2フランジ部5aが積重され、端壁部4cと隔壁部5cとの間には、第1分割片4の第1嵌合部4bが容器本体の開口部に嵌り込むことによって閉鎖空間6が形成される栓体が好ましい。
かかる栓体において、前記可撓性および弾発性を有する材料としては、主にブチルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムなどからなる熱硬化性エラストマーであり、いわゆる加硫成型ゴム材によって実現される。さらに、ポリプロピレンおよびポリスチレンなどのオレフィン系樹脂などの熱可塑性エラストマーやスチレン系エラストマーであってもよい。
また、前記栓体の閉鎖空間6には、抗がん剤を吸収する吸収体や吸水性ポリマーが収容されてもよく、吸収体としてはスポンジなどがあげられ、吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸ナトリウムがあげられる。
さらに前記閉鎖空間6は、前記第1分割片4の端壁部4cと前記第2分割片5の隔壁部5cとが、前記隔壁部を挿通して刺入された注射針1の先端部の刃面2bの軸線方向長さ以上の間隔をあけて離間しているものが好ましい。
前記のような栓体では、第1および第2フランジ部4a,5aは、前記容器本体の開口部上に積重された状態で設けられるので、第1フランジ部4aの面内方向に連なって形成される端壁部4cおよび第2フランジ部5aの面内方向に連なって形成される隔壁部5cは、図示しないプロテクタによって前記容器本体の開口部に狭持される第1および第2フランジ部4a,5aに比べて弾性変形し易いため、刺入された注射針を端壁部4cおよび隔壁部5cから抜き取る際に、注射針1と端壁部4cとの摺動摩擦力および注射針1と隔壁部5cとの摺動摩擦力によって、前記端壁部4cおよび隔壁部5cは外部側へ弾性変形する。
したがって、端壁部4cから注射針1が抜き取られる際に、容器本体内の液体が注射針1の刺入によって形成された端壁部4cの亀裂と注射針1との間の隙間から閉鎖空間6内に液体が漏洩しても、注射針1の引抜きによる摺動摩擦力によって隔壁部5cは外部へ弾性変形するため、閉鎖空間6内が陰圧となり、隔壁部5cの亀裂と注射針1との間の隙間には陰圧が作用する。これによって、隔壁部5cから注射針1を抜き取る際に、前記隔壁部5cの亀裂と注射針1との間の隙間から液体が外部へ漏洩することを確実に防止することができる。しかも、第1および第2分割片4,5は、金型による圧縮成型などの周知の成形技術によって容易に実現することができるので、漏れのない栓体を低コストで製造することができる。
また前記閉鎖空間6に吸液性材料から成る吸収体が収容されるので、閉鎖空間6内へ漏洩した液体が前記吸収体に吸収され、隔壁部5cの亀裂と注射針1との間から液体が漏洩することを、より確実に防止することができる。
さらに、前記閉鎖空間6が注射針1の先端部の端面の軸線方向長さ以上の間隔をあけて離間した領域を有するので、前記注射針1の先端部が端壁部4cおよび隔壁部5cの両者に部分的に同時に存在する期間が生じない。したがって、注射針1が端壁部4cおよび隔壁部5cから抜き取られる際に、端壁部4cを注射針1のくさび状の先端部が通過するとき、隔壁部5cを注射針1に先端部よりも基端部寄りの直円筒状の部分が通過し、注射針1の外表面2cのほぼ全周に前記隔壁部5cを均等に接触させた状態とし、端壁部4cに形成された亀裂と隔壁部5cに形成された亀裂とが同時に不完全に閉塞されない状態となることが防がれ、液体の漏洩をより確実に防止することができる。
実施例1〜3
ステンレス製注射針(テルモ株式会社製、テルモ18G)の外表面2cおよび刃面2bをテフロンテープでマスキングしたのち、波長172nmの真空紫外光(VUV光)を40分間照射する。
ついで、テフロン製密閉容器内に、注射針と、後記表1に記載のフッ素化合物50μLとを入れ、100℃で24時間保持した。
24時間後に注射針を取り出し、トルエン、アセトン、エタノールおよび純水の順で注射針を各10分間超音波洗浄して、実施例1〜3の注射針を製造した。
また、比較例1の注射針として、前記ステンレス製注射針をそのまま用いた。
得られた各注射針を用いて、図4に示すノーマルなゴム栓(ブチルゴム)で密閉されたバイアルから薬液を吸引した場合の薬液漏洩量(以下、漏液量という)の測定を、以下の条件で行った。
[実験条件]
薬液の種類:100mM ケイ皮酸ナトリウム水溶液
漏液量の測定機械:大塚電子CAPI−3100型 キャピラリ電気泳動システム
漏液量の測定方法は、次のとおりである。
1)実験方法
各実施例で製造された注射針について、以下のようにして漏液量を測定した。
容器に上記の薬液1mLを入れ、図4に示す形態のノーマルゴム栓で容器を密閉する。
円周から中心に1本の切り目を入れたゴム栓の内径と同じ大きさの濾紙を、濾紙の中心が穿刺部分と重なるように栓体の上に置き注射針を栓体中心部に穿刺した。
ついで、容器本体、濾紙および注射針を倒立させ、容器と濾紙とを密着させながら、注射針を引き抜き、この際に、濾紙に付着した液体を漏洩した薬液とみなした。以上の操作を、1回ごとに新しい容器本体、濾紙および注射針に交換して、9回繰り返した。
2)漏液量の測定方法
濾紙に染み込んだ薬液に含まれるケイ皮酸を定容量の精製水に溶出させ、溶出液をUV検出キャピラリ電気泳動で分析し、絶対定量法により漏出液に含まれるケイ皮酸量を測定し、漏出液体積を算出した。測定条件としては、キャピラリ;フューズドシリカ(内径50μm、長さ62cm)、泳動液;50mMホウ酸緩衝液(pH10.5)、電圧;30kV、検出波長;270nm、測定温度;25℃である。
まず、ケイ皮酸濃度(X)とピーク面積(Y)の関係にもとづいて検量線を作製した。検量線:Y=64.205X-0.3096
ろ紙に染み込んだケイ皮酸を500μL(0.5 mL)の精製水に溶出させた溶液濃度C(mM)を検量線より求める。
試験液(模擬薬)の濃度は100mMであるので、得られたC(mM)から次式により漏液量Z(μL)を求めた。
Z(μL)=C(mM)×500(μL)÷100(mM)
漏液量の平均値は、9回の漏液量の総和を求め、これを9で除すことによって平均値を求めた。また標準偏差は、各回の漏液量から漏液量の平均値を引き、これを2乗することによって偏差平方和を求めた。偏差平方和を9で除すことによって分散を算出し、分散の平方根をとることにより標準偏差を求めた。
結果は、表1および図5に示すとおりである。
Figure 2014050647
表中(*)は、比較例に対して危険率5%で有意差ありであることを示す。
表1および図5から、本発明の注射針1は、撥水処理を行わない比較例の注射針1にくらべて、薬液の付着残存量が格段に小さく、抗がん剤に使用した場合には、曝露量を大幅に低減できることがわかる。
実施例4
図3の形状で、かつ硬度45のブチルゴムで構成された内部に閉鎖空間を設けた栓体で密閉した薬液充填容器を用い、注射針1として実施例1と同様にして製造した注射針を用いるほかは、実施例3と同様に実施し、本発明の注射針と内部に閉鎖空間6を設けた栓体とを併用した場合の漏液量を測定した。
結果は表2に示すとおりである。
Figure 2014050647
表2において、NDは、270nmの紫外部吸収ピークが検出されないこと、すなわち薬液の漏出がないことを示す。
表2から、本発明の注射針1と内部に閉鎖空間6を設けた栓体を併用した場合の漏液量は、内部に閉鎖空間6を設けた栓体と通常(比較例2)の注射針(撥水性膜なし)とを組合せた場合の漏液量に比べて、薬液の付着残存量が格段に小さく、抗がん剤に使用した場合には、曝露量を大幅に低減できることがわかる。
1 注射針
2 先端部分
2a 内表面
2b 刃面
2c 外表面
3 ハブ
4 第1分割片
4a 第1フランジ部
4b 第1嵌合部
4c 端壁部
5 第2分割片
5a 第2フランジ部
5b 第2嵌合部
5c 隔壁部
6 閉鎖空間部
7 比較例1の漏液量の平均値を示すグラフ
8 実施例1の漏液量の平均値を示すグラフ
9 実施例2の漏液量の平均値を示すグラフ
10 実施例3の漏液量の平均値を示すグラフ

Claims (5)

  1. 注射針本体と、
    該注射針本体の内表面に設けられたフッ素系撥水性膜と、を含むことを特徴とする抗がん剤投与用注射針。
  2. 前記フッ素系撥水性膜が、一般式(1)
    (R−Si−CHCH−R ・・・・・・・・・(1)

    (ただし、式中、Rは低級アルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜8のフルオロアルキル基を表す)
    で示されるフッ素化合物で構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の抗がん剤投与用注射針。
  3. 前記フッ素系撥水性膜が、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロクチルトリメトキシシランおよび1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランのいずれかで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の抗がん剤投与用注射針。
  4. 請求項1に記載の抗がん剤投与用注射針の製造方法であって、
    注射針本体の外表面および刃面をマスキングするマスキング工程と、前記マスキングした注射針にフッ素化合物を蒸着させることによりフッ素系撥水性膜を形成させる工程と前記フッ素系撥水性膜を有する注射針からマスキングを除去する除去工程とを含むことを特徴とする注射針の製造方法。
  5. 請求項1に記載の抗がん剤投与用注射針と、
    抗がん剤が収容される容器の栓体として使用される、内部に閉鎖空間を設けたゴム栓体とを含むことを特徴とする抗がん剤投与用キット。
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