以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
[第一実施例]
本実施例の通信システム1は、図1に示すように、移動体通信端末としての複数の携帯電話端末50と、これらの携帯電話端末50を管理する通信事業者側システム10と、を備えるものである。通信事業者側システム10は、複数の基地局20と、通信制御局30と、これら基地局20と通信制御局30とを結ぶ中継システム40と、を備え、移動体通信網(換言すればセルラー網)を構成する。
周知のように基地局20は、電話加入者が備える携帯電話端末50と無線通信して、携帯電話端末50を移動体通信網に接続するものであり、各地域に分散配置される。携帯電話端末50は、この基地局20と無線通信可能な地域において、移動体通信網に接続される。移動体通信網としては、GSM通信網やLTE通信網などを一例に挙げることができる。
中継システム40は、通信制御局30及び各地域に設置された基地局20に接続され、基地局20と通信制御局30との間における信号伝達を中継する通信設備群により構成される。
一方、通信制御局30は、携帯電話端末50間や、携帯電話端末50と固定電話端末との間の通信制御を行うものであり、制御ユニット31、記憶ユニット33、及び、通信ユニット35を備える。
通信ユニット35は、中継システム40に接続されて、通信制御局30宛ての送信信号を中継システム40から受信する一方、基地局20や携帯電話端末50宛ての信号を中継システム40に出力する。
制御ユニット31は、通信制御に係る処理として、通信ユニット35の受信信号に基づき、携帯電話端末50による呼出要求に対し、基地局20を介して該当する電話端末を呼び出したり、この呼び出しに応じた電話端末と呼出元携帯電話端末50とを音声通信可能に接続したりする。また、携帯電話端末50による基地局20を介したインターネット内のサーバへの接続要求に応じて、要求元携帯電話端末50をインターネット内のサーバに接続したりする。このようにして、制御ユニット31は、移動体通信網内の通信制御に係る処理を実行する。
また、記憶ユニット33は、各種データベースを記憶保持する。具体的に、記憶ユニット33は、位置登録データベース37及び加入者データベース39を備える。位置登録データベース37は、周知のように、携帯電話端末50と基地局20との間の無線通信により特定される携帯電話端末50の現在位置、即ち、携帯電話端末50が存在するエリアの情報を記憶する。
移動体通信網を介して外部装置と通信することを許可された携帯電話端末50に関しては、この位置登録データベース37に、携帯電話端末50の現在位置情報が登録される。例えば、位置登録データベース37には、携帯電話端末50が搭載するSIM(加入者識別モジュール)カード100の加入者識別コードに関連付けられて、この携帯電話端末50の現在位置情報が登録される。周知のようにSIMカード100には、加入者識別コードとして、国際移動体加入者識別コード(IMSI)が記憶される。
また、加入者データベース39は、電話加入者毎に、この電話加入者に対応する加入者識別コード群を記憶する。図2に示すように、加入者データベース39は、電話加入者毎(換言すれば加入者電話番号毎)の加入者データを備える。そして、各加入者データは、対応する電話加入者の電話番号に関連付けて、この電話加入者に提供(貸与)された一つ又は複数のSIMカード100の夫々に記された加入者識別コードを記憶する。また、この加入者データは、加入者識別コード毎に、この加入者識別コードが有効であるか否かを表す有効/無効情報を記憶する。尚、一電話加入者に提供される複数のSIMカード100には、SIMカード100毎に異なる加入者識別コード及びこれらのSIMカード100に共通の加入者電話番号が記憶される。
ここで、本実施例の通信システム1が想定しているSIMカード100の配布環境について説明する。従来では、通信事業者により、一加入者電話番号に対して、一つのSIMカード100のみが電話加入者に提供されていた。これに対し、本実施例では、一加入者電話番号に対して、複数のSIMカード100が電話加入者に提供され得る環境を想定している。即ち、電話加入者が望めば、複数のSIMカード100が電話加入者に提供される環境を想定している。
近年においては、携帯電話端末50として、様々な種類の製品が製造及び販売されている。例えば、図3(A)左図に示すように、電話機能に特化した携帯電話端末、同中央図に示すように、電話機能以外の機能についても充実した多機能携帯電話端末としてのスマートフォン、及び、同右図に示すように、スマートフォンよりも大画面のディスプレイを備えるタブレット端末が製造及び販売されている。
そして、このような携帯電話端末50については、その種類によって携帯性や操作性等に関する利点や欠点が異なるため、これらの種類の異なる複数の携帯電話端末50を、ユーザが用途に応じて使い分けることを目的として所有するケースが増加してきている。但し、一加入者電話番号に対して一つのSIMカード100しか提供されない従来環境において、複数端末を所有しようとする場合、ユーザは、携帯電話端末50毎の加入契約を通信事業者と交わして、携帯電話端末50毎のSIMカード100を手に入れるか、一つのSIMカード100を複数の携帯電話端末50で使い回す等の方法でしか、これら複数の携帯電話端末50を移動体通信網に接続する術がなかった。
本発明者らは、こうした環境がユーザにとって不便であることに鑑み、一加入者電話番号(一加入契約)に対して、複数のSIMカード100を電話加入者に提供することを想到するに至った。このようにSIMカード100を提供すれば、電話加入者は、図3(A)に示すように、一加入契約で得た複数のSIMカード100を、自己が所有する携帯電話端末50の夫々に装着して、移動体通信網を利用することができる。
但し、単に複数のSIMカード100を電話加入者に提供するだけでは、移動体通信網の負荷が増大し、結果的に、通信事業者は、電話加入者に対して相応の料金を請求せざるを得なくなる。
そこで、本実施例の通信事業者側システム10では、これらSIMカード100を装着する複数の携帯電話端末50の一つのみが移動体通信網を利用できるように、通信制御局30において、複数の携帯電話端末50の管理を行うようにした。
具体的に、通信制御局30の制御ユニット31は、記憶ユニット33が記憶する加入者データベース39に基づき、このような携帯電話端末50の管理に係る処理を実行し、一電話加入者(一加入者電話番号)に対応する携帯電話端末50の複数が同時には、移動体通信網を利用することができないように、携帯電話端末50の移動体通信機能をオフに切り替える制御を行う。
図3(B)上段に示すように、一加入者電話番号に対応する複数のSIMカード100を装着する複数の携帯電話端末50のうちの一つの移動体通信機能がオンにされると、図3(B)下段に示すように、他の携帯電話端末50の移動体通信機能をオフに制御するといった具合である。付言すると、通信制御局30の制御ユニット31は、上記他の携帯電話端末50に対し、移動体通信網を通じて移動体通信機能をオフにするように指令入力することにより、これらの携帯電話端末50の移動体通信機能をオフに制御する。尚、ここで言う移動体通信機能とは、移動体通信網を通じた外部装置(即ち自端末以外の装置)との通信機能のことである。制御ユニット31が実行するこのような処理の内容については、後述する。
続いて、携帯電話端末50の構成について説明する。図1には、一加入者電話番号に対して複数提供されるSIMカード100の夫々を装着する携帯電話端末50の一群を示す。図1に示すように、本実施例の携帯電話端末50は、周知の携帯電話端末と同様、制御ユニット51と、カードインタフェース53と、移動体通信ユニット55と、表示ユニット57と、入力ユニット59と、音入出力ユニット61と、電源管理ユニット63と、バッテリ65と、を備える。また、スマートフォンやタブレット端末等の特定種の携帯電話端末50は、無線LAN通信ユニット67を備える。
制御ユニット51は、各種プログラムに従う処理を実行して携帯電話端末50内部を統括制御するものであり、CPU51Aと、RAM51Bと、NVRAM51Cと、を備える。NVRAM51Cは、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリとしてのフラッシュメモリから構成され、各種プログラムやデータを記憶する。一方、RAM51Bは、CPU51Aによる上記プログラムに従う処理の実行時にワークメモリとして用いられる。CPU51Aは、NVRAM51Cに記憶されるプログラムに従って各種処理を実行する。
一方、カードインタフェース53は、SIMカード100を脱着可能なスロット53Aを備え、スロット53Aに装着されたSIMカード100に記憶される情報を、携帯電話端末50内の各部(制御ユニット51等)に提供するものである。このSIMカード100は、少なくとも加入者識別コードと加入者電話番号とを記憶する。
また、移動体通信ユニット55は、制御ユニット51に制御され、予め定められた通信方式で基地局20との無線通信を行うものである。移動体通信ユニット55は、この無線通信により、移動体通信網を介した外部装置と通信を実現する。具体的に、移動体通信ユニット55は、カードインタフェース53に装着されたSIMカード100に記された加入者識別コード(及び加入者電話番号)を、自端末の加入者識別コード(及び加入者電話番号)として用いて、基地局20と無線通信し、移動体通信網を介して外部装置と通信する。具体的な通信手順については、周知であるので説明を省略するが、移動体通信ユニット55は、自端末の加入者識別コード(及び加入者電話番号)を格納した通信信号を基地局20に送信することにより、通信信号の送信元を明示し、移動体通信網を介した外部装置との通信を実現する。
また、表示ユニット57は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを備え、制御ユニット51に制御されて、各種情報を、携帯電話端末50のユーザに向けて表示する。この他、入力ユニット59は、機械式スイッチやタッチパネル等から構成されて、携帯電話端末50を操作するユーザの当該操作情報を受け付け、この情報を制御ユニット51に入力する。タッチパネルは、例えば、表示ユニット57の画面上に設けられる。
この他、音入出力ユニット61は、図示しないマイク、スピーカ、及び信号処理回路から構成され、マイクからの入力信号を信号処理回路によりディジタル信号に変換して制御ユニット51に入力する一方、制御ユニット51から入力されるディジタル音声信号を信号処理回路によりアナログ信号に変換してスピーカにより再生する。
また、電源管理ユニット63は、バッテリ65から端末内各部への電源供給を制御するものである。例えば、電源管理ユニット63は、制御ユニット51に制御されて、端末内各部への電源供給を停止することにより、自端末をシャットダウンする。また、自端末に設けられた図示しない電源スイッチが押下されると、端末内各部に電源供給して、自端末を起動する。
この他、無線LAN通信ユニット67は、所謂WiFi(登録商標)ネットワーク(無線LAN)を介して外部装置との通信を実現する通信インタフェースである。この無線LAN通信ユニット67は、例えば、上述した携帯電話端末50の内、スマートフォンやタブレット端末に設けられる。
続いて、携帯電話端末50の制御ユニット51が実行する処理について説明する。本実施例の携帯電話端末50は、入力ユニット59を通じて入力されるユーザの指示に従って、移動体通信機能をオン/オフする構成にされている。制御ユニット51は、このように自端末の移動体通信機能をオン/オフするために、図4に示す機能切替処理を、繰り返し実行する。
図4に示す機能切替処理を開始すると、制御ユニット51は、上記ユーザの指示として、移動体通信機能のオン/オフ切替操作が入力ユニット59を通じてなされるまで待機する(S110)。そして、オン/オフ切替操作がなされたと判断すると(S110でYes)、現在移動体通信機能がオンに設定されているか否かを判断し(S120)、オンに設定されていると判断すると(S120でYes)、移動体通信機能をオフに切り替えて(S130)、当該機能切替処理を終了する。
一方、移動体通信機能がオフに設定されていると判断すると(S120でNo)、制御ユニット51は、移動体通信機能をオンに切り替えた後(S140でYes)、自端末のSIMカード100の情報(加入者識別コード)を記した移動体通信網の利用要求を、基地局20を介して通信制御局30に送信し(S150)、当該機能切替処理を終了する。
周知のように、携帯電話端末50は、移動体通信網にアクセスする際、自端末の現在位置情報を位置登録データベース37に登録するための通信を先駆けて行う。ここで言う「利用要求」は、このような位置登録を伴う移動体通信網の利用に係る手続を通信制御局30に実行させるための通信信号のことである。この利用要求によって、通信制御局30では、要求元携帯電話端末50による移動体通信網の利用を可能とするための手続が行われ、携帯電話端末50は、移動体通信網を利用可能な状態にされる。
尚、制御ユニット51は、S150の処理開始時に自端末が通信圏外である場合(自端末が基地局20と無線通信可能な地域に存在しない場合)、自端末が通信圏内に移動し移動体通信網を利用可能な状態となるまで、上記利用要求を繰り返し送信する。
また、制御ユニット51は、移動体通信機能がオンに設定されている場合には、自端末の電源がオンにされた場合にも、S150を実行し、自端末を、移動体通信網を利用可能な状態にする。
一方、携帯電話端末50は、移動体通信ユニット55を通じて通信制御局30から移動体通信機能をオフするように指令する機能停止指令信号を受信すると、自端末の移動体通信機能をオフに切り替える。このための処理として、制御ユニット51は、図5に示す停止指令受付処理を、携帯電話端末50の動作中において繰り返し実行する。
制御ユニット51は、この停止指令受付処理を開始すると、基地局20を介して通信制御局30から上記機能停止指令信号を受信するまで待機し(S210)、この機能停止指令信号を受信すると(S210でYes)、「移動体通信機能をオフにする」旨のメッセージを、表示ユニット57を通じてユーザに向けて表示した後(S220)、自端末の移動体通信機能をオフに切り替えて(S230)、当該停止指令受付処理を終了する。
また、携帯電話端末50の管理を行う通信制御局30の制御ユニット31は、携帯電話端末50から発せられる移動体通信網の利用要求に対応する処理を実行するために、図6に示す端末管理処理を実行する。
端末管理処理を開始すると、制御ユニット31は、基地局20を介して携帯電話端末50から上記利用要求を受信するまで待機し(S310)、利用要求を受信すると(S310でYes)、その受信信号に基づき、要求元携帯電話端末50の加入者識別コードを特定し、この加入者識別コードに対応する加入者電話番号を特定する(S320)。
そして、加入者データベース39が有する加入者データであって、上記特定した加入者電話番号に関連付けられた加入者データに基づき、この加入者電話番号に関連付けられた加入者識別コード群を特定し、この加入者識別コード群のうち、今回利用要求を送信してきた携帯電話端末50の加入者識別コード以外の加入者識別コードを示すSIMカード100を装着する携帯電話端末50に対し、移動体通信機能をオフに切り替えるように指示する上記機能停止指令信号を、基地局20を介して送信する(S330)。
尚、通信制御局30では、移動体通信網を利用している携帯電話端末50の現在位置情報が位置登録データベース37に登録されている。このため、制御ユニット31は、今回利用要求を送信してきた携帯電話端末50の加入者識別コード以外の加入者識別コードを利用する携帯電話端末50に対して上記機能停止指令信号を送信する際、この位置登録データベース37において該当加入者識別コードに関連付けられて登録されている現在位置情報を参照して、該当する携帯電話端末50が存在する地域を特定し、この地域の基地局20を介して、この携帯電話端末50に上記機能停止指令信号を送信することができる。但し、S330では、電源がオフに設定されていたり、移動体通信機能がオフに設定されていたりする等の理由により、移動体通信網を利用していない携帯電話端末50に対しては、上記機能停止指令信号を送信しなくてもよい。
S330での処理を終えると、制御ユニット31は、S340に移行して、加入者データベース37内の、要求元携帯電話端末50に対応する上記加入者データが有する上記加入者識別コード毎の有効/無効情報を編集することにより、要求元携帯電話端末50が利用する加入者識別コードを有効な加入者識別コードに設定する一方、当該加入者データに関連付けられた他の加入者識別コードを無効な加入者識別コードに設定する。
その後、制御ユニット31は、要求元携帯電話端末50による移動体通信網の利用を可能とするための手続を実行することで(S350)、要求元携帯電話端末50による移動体通信網の利用、換言すれば、移動体通信網を通じた外部装置との通信を許可する。その後、当該端末管理処理を終了する。尚、制御ユニット31は、要求元携帯電話端末50による移動体通信網の利用を可能とするための手続(S350)として、例えば、要求元携帯電話端末50の現在位置情報を、位置登録データベース37に登録する処理を実行することができる。
また、通信制御局30の制御ユニット31は、携帯電話端末50の加入者電話番号に対する呼出要求に対応した処理を実行するために、図7に示す端末呼出処理を繰り返し実行する。
端末呼出処理を開始すると、制御ユニット31は、携帯電話端末50の加入者電話番号に対する呼出要求が、携帯電話端末や固定電話端末から発せられるまで待機する(S410)。そして、呼出要求が発せられると(S410でYes)、呼出先の加入者電話番号を特定し(S420)、更に、加入者データベース39における該当加入者電話番号の加入者データが有する加入者識別コード毎の有効/無効情報を参照して、当該加入者電話番号に関連付けられている加入者識別コード群のうちの有効な加入者識別コードを特定する(S430)。その後、制御ユニット31は、当該有効な加入者識別コードを使用する携帯電話端末50を、基地局20を介して呼び出し(S440)、当該端末呼出処理を終了する。
尚、この呼び出しによって、呼出先の携帯電話端末50では着信処理が行われる。そして、呼出先の携帯電話端末50が応答した場合、制御ユニット31は、呼出元電話端末と呼出先の携帯電話端末50とを移動体通信網を通じて音声通信可能に接続する。
以上、本実施例の通信システム1について説明したが、本実施例によれば、一加入者電話番号(一加入契約)に対し複数のSIMカード100を提供して、電話加入者が複数の携帯電話端末50を所有している場合には、これらの携帯電話端末50の夫々にSIMカード100を装着すれば移動体通信網を利用できるようにしつつ、これらSIMカード100を装着する携帯電話端末50による移動体通信網の利用を制限することにより、その移動体通信網の利用を、従来のように一加入者電話番号(一加入契約)に対して一つしかSIMカード100を電話加入者に提供しない場合と同程度に抑えることができるようにした。
従って、本実施例によれば、通信事業者にとっては、一加入者電話番号に対して一枚のSIMカード100を電話加入者に提供していた従来と同程度の料金設定で、一加入者電話番号に対して複数のSIMカード100を電話加入者に提供することができ、電話加入者にとっては、一枚のSIMカード100を複数の携帯電話端末50で使い回さなくても、低料金で自己が所有する複数の携帯電話端末50を移動体通信網に接続できる。よって、本実施例の通信システム1によれば、複数の携帯電話端末50をユーザが移動体通信網に接続する際の、利便性を向上させることができる。
また、本実施例によれば、通信制御局30は、移動体通信網へのアクセスに際して携帯電話端末50から送信されてくる利用要求に基づき、この要求元の携帯電話端末50による移動体通信網の利用(移動体通信網を通じた外部装置との通信)を許可する一方、この要求元携帯電話端末50に対応する加入者電話番号に関連付けられた他の加入者識別コードを利用する携帯電話端末50による移動体通信網の利用を、該当携帯電話端末50への機能停止指令信号の送信により禁止するようにした。
従って、本実施例によれば、電話加入者に対して煩わしい操作を強いることなく、携帯電話端末50の利用制限を行うことができ大変便利である。電話加入者は、携帯電話端末50の移動体通信機能をオフからオンに切り替える程度で、これを移動体通信網に接続して利用することができる。
ところで、携帯電話端末50の制御ユニット51は、上記機能停止指令信号を受信したのちに実行するS230(図5参照)において、自端末の移動体通信機能をオフにするだけでなく、電源管理ユニット63を制御して自端末をシャットダウンする(即ち、自端末の電源をオフする)構成にされてもよい。移動体通信網を利用できない携帯電話端末50の電源を自動でオフにする実施例によれば、携帯電話端末50のバッテリ消費を抑えることができて、電話加入者にとっても便利である。
この他、自端末の電源をオンに維持した状態で、移動体通信機能だけをオン/オフ可能に携帯電話端末50を構成しない場合、制御ユニット51は、移動体通信ユニット55を通じて通信制御局30から機能停止指令信号を受信すると(S210でYes)、S230において、移動体通信機能をオフに切り替える代わりに、自端末の電源をオフにする構成にすることができる。この場合、制御ユニット51は、自端末の電源がオンにされる度に、S150の処理(図4参照)を実行する構成にすることができる。
このように機能停止指令信号に従って、自端末の電源をオフにするように携帯電話端末50を構成すれば、自端末の電源をオンに維持した状態で、移動体通信機能だけをオン/オフできないような携帯電話端末50の構成であっても、一加入者電話番号に対応する複数の携帯電話端末50のうちの一つに対して選択的に移動体通信網の利用を許可することができる。
[第二実施例]
続いて、第二実施例の通信システム1について説明する。但し、第二実施例の通信システム1は、通信制御局30の記憶ユニット33が記憶する加入者データ及び制御ユニット31が実行する端末管理処理が第一実施例と異なる程度である。従って、以下では、第一実施例と異なる第二実施例の通信システム1の構成を選択的に説明し、その他の説明を適宜省略する。
本実施例の加入者データベース39において記憶される電話加入者毎(加入者電話番号毎)の加入者データは、第一実施例と同様に、対応する電話加入者の電話番号に関連付けて、この電話加入者に提供された一つ又は複数のSIMカード100の夫々に記された加入者識別コードを記憶する(図8参照)。また、この加入者データは、加入者識別コード毎に、この加入者識別コードが有効であるか否かを表す有効/無効情報、及び、優先順位情報を記憶する。この優先順位情報は、対応する加入者識別コードを使用する携帯電話端末50による移動体通信網への利用を許可する際の優先順位を表す情報である。
即ち、本実施例の通信制御局30は、加入者データにおいて高い優先順位の設定された加入者識別コードを使用する携帯電話端末50による移動体通信網の利用を優先的に許可するように、同一加入者電話番号に対応する複数の携帯電話端末50の移動体通信機能をオフ制御する。
具体的に、通信制御局30の制御ユニット31は、第一実施例の端末管理処理(図6)に代えて、図9に示す端末管理処理を繰り返し実行する。そして、この端末管理処理を開始すると、基地局20を介して携帯電話端末50から上記利用要求を受信するまで待機し(S510)、利用要求を受信すると(S510でYes)、その受信信号に基づき、要求元携帯電話端末50の加入者識別コードを特定し、この加入者識別コードに対応する加入者電話番号を特定する(S520)。
そして、上記特定した加入者電話番号に関連付けられた加入者データに基づき、この加入者電話番号に関連付けられた加入者識別コード群の内、現在有効な加入者識別コードとして設定されている加入者識別コードの優先順位と、要求元携帯電話端末50が使用する加入者識別コードの優先順位とを特定し(S530)、現在有効な加入者識別コードの優先順位のほうが、要求元携帯電話端末50が使用する加入者識別コードの優先順位よりも高いか否かを判断する(S540)。
そして、現在有効な加入者識別コードの優先順位のほうが、要求元携帯電話端末50が使用する加入者識別コードの優先順位よりも高いと判断すると(S540でYes)、現在有効な加入者識別コードを使用する携帯電話端末50が移動体通信網を利用中であるか否かを判断する(S550)。具体的には、携帯電話端末50の電源がオンに設定されており且つ携帯電話端末50の移動体通信機能がオンに設定されていることで、携帯電話端末50が移動体通信網に接続された状態であるか否かを判断する。
そして、現在有効な加入者識別コードを使用する携帯電話端末50が移動体通信網を利用中であると判断すると(S550でYes)、制御ユニット31は、要求元携帯電話端末50に対して移動体通信網を通じ上記機能停止指令信号を送信することにより、この携帯電話端末50の移動体通信機能をオフに切り替える(S560)。また、制御ユニット31は、利用要求に対応した処理(S570〜S590)を実行しないことにより、利用要求を破棄する(S560)。その後、当該端末管理処理を終了する。
一方、制御ユニット31は、現在有効な加入者識別コードを使用する携帯電話端末50が移動体通信網を利用中ではないと判断するか(S550でNo)、要求元携帯電話端末50が使用する加入者識別コードの優先順位のほうが現在有効な加入者識別コードの優先順位よりも高いと判断すると(S540でNo)、S570に移行し、S330での処理と同様に、この要求元携帯電話端末50に対応する上記加入者データに記された加入者識別コード群のうち、要求元携帯電話端末50の加入者識別コード以外の加入者識別コードを記憶するSIMカード100を装着する携帯電話端末50に対して、移動体通信機能をオフに切り替えるように指示する上記機能停止指令信号を、基地局20を介して送信する。但し、S570では、電源がオフに設定されていたり、移動体通信機能がオフに設定されていたりする等の理由により、移動体通信網を利用していない携帯電話端末50に対しては、上記機能停止指令信号を送信しなくてもよい。
S570での処理を終えると、制御ユニット31は、S580に移行し、この要求元携帯電話端末50に対応する上記加入者データが有する上記加入者識別コード毎の有効/無効情報を編集することにより、要求元携帯電話端末50が利用する加入者識別コードを有効な加入者識別コードに設定する一方、当該加入者データに関連付けられた他の加入者識別コードを無効な加入者識別コードに設定する。
その後、制御ユニット31は、S350での処理と同様に、要求元携帯電話端末50による移動体通信網の利用を可能とするための手続を実行することで(S590)、要求元携帯電話端末50による移動体通信網の利用、換言すれば、移動体通信網を通じた外部装置との通信を許可する。その後、当該端末管理処理を終了する。
以上、本実施例の通信システム1について説明したが、本実施例の通信システム1によれば、通信制御局30の制御ユニット31が、予め加入者データにおいて定義された優先順位に従って、加入者データが示す加入者識別コード群のうちの一つの加入者識別コードによる移動体通信網を通じた外部装置との通信を許可し、他の加入者識別コードによる移動体通信網を通じた外部装置との通信を禁止する。
具体的に、制御ユニット31は、携帯電話端末50による移動体通信網へのアクセスに際して送信されてくる利用要求の受信を契機に、要求元携帯電話端末50の加入者識別コードに割り当てられた優先順位と、現在有効な加入者識別コードに割り当てられた優先順位とを比較し、要求元携帯電話端末50の加入者識別コードに割り当てられた優先順位のほうが高い場合に、要求元携帯電話端末50による移動体通信網を通じた外部装置との通信を許可し、他の加入者識別コードによる移動体通信網を通じた外部装置との通信を禁止する。一方、要求元携帯電話端末50の加入者識別コードに割り当てられた優先順位のほうが低い場合には、要求元携帯電話端末50による移動体通信網を通じた外部装置との通信を禁止する。
また、制御ユニット31は、現在有効な加入者識別コードを利用する携帯電話端末50が移動体通信網を利用していない場合には、優先順位の高低に関らず、要求元携帯電話端末50による移動体通信網を通じた外部装置との通信を許可する。
従って、本実施例によれば、加入者データにおいて、電話加入者の希望に沿った優先順位を定義することで、複数の携帯電話端末50を電話加入者が移動体通信網に接続する際の、利便性を一層向上させることができる。
尚、電話加入者の希望に沿った優先順位の登録は、通信事業者が電話加入者の希望に沿って、優先順位を定義した加入者データを加入者データベース39に登録することにより実現することができる。但し、通信制御局30には、携帯電話端末50からの移動体通信網を通じた要求に応じて、この携帯電話端末50に対応する加入者データの優先順位情報を更新する機能を設けるとよい。
即ち、通信制御局30の制御ユニット31は、図10に示す順位更新処理を繰り返し実行し、携帯電話端末50から移動体通信網を通じて順位更新要求を受信すると(S610でYes)、この順位更新要求に応じて、この携帯電話端末50に対応する加入者データにおける加入者識別コード毎の優先順位情報を更新し、各加入者識別コードの優先順位を入れ替える構成にされるとよい(S620)。更新対象の加入者データについては、要求元携帯電話端末50が使用する加入者識別コードから特定することができる。
このような機能を通信制御局30に付与することで、電話加入者に対して一層利便性の高い通信システム1を提供することができる。
[第三実施例]
続いて、第三実施例の通信システム1について説明する。但し、第三実施例の通信システム1は、通信制御局30の制御ユニット31が実行する端末管理処理が第二実施例と異なる程度である。従って、以下では、第二実施例と異なる第三実施例の通信システム1の構成を選択的に説明し、その他の説明を適宜省略する。
第二実施例によれば、通信制御局30では、移動体通信網へのアクセスに際して携帯電話端末50から送信されてくる利用要求に基づき、移動体通信網の利用を許可する携帯電話端末50を切り替え、移動体通信網の利用を禁止する携帯電話端末50に対して移動体通信機能をオフに切り替えるように指令入力した。
一方、本実施例では、通信制御局30の制御ユニット31が常時繰り返し、各電話加入者の携帯電話端末50による移動体通信網の利用有無を判断し、移動体通信網を利用する携帯電話端末50が一つに限定されるように、移動体通信網の利用を禁止する携帯電話端末50に対して移動体通信機能をオフに切り替えるように指令入力する。
具体的に、制御ユニット31は、図6及び図9に示す端末管理処理に代えて、図11に示す端末管理処理を繰り返し実行する。この端末管理処理を開始すると、制御ユニット31は、加入者データベース39に登録されている加入者データ群から検査対象の加入者データを一つ選択する(S710)。そして、選択した加入者データに登録されている加入者識別コード群の内、優先順位が最も高い加入者識別コードを検査対象コードに選択して(S720)、この検査対象コードを、自端末の加入者識別コードとして使用する携帯電話端末50が移動体通信網を利用中であるか否かを判断する(S730)。具体的には、携帯電話端末50の電源がオンに設定されており且つ携帯電話端末50の移動体通信機能がオンに設定されていることで、該当する携帯電話端末50が移動体通信網に接続された状態であるか否かを判断する。
そして、この検査対象コードを、自端末の加入者識別コードとして使用する携帯電話端末50が移動体通信網を利用中であると判断すると(S730でYes)、検査対象の加入者データに登録されている加入者識別コード群の内、検査対象コード以外の加入者識別コードを使用する携帯電話端末50に対して、S330での処理と同様に、移動体通信機能をオフに切り替えるように指示する上記機能停止指令信号を、基地局20を介して送信する(S740)。その後、当該端末管理処理を終了する。但し、S740では、電源がオフに設定されていたり、移動体通信機能がオフに設定されていたりする等の理由により、移動体通信網を利用していない携帯電話端末50に対しては、上記機能停止指令信号を送信しなくてもよい。
一方、検査対象コードを、自端末の加入者識別コードとして使用する携帯電話端末50が移動体通信網を利用中ではないと判断すると(S730でNo)、制御ユニット31は、検査対象の加入者データに登録された加入者識別コードの全てについて、これを検査対象コードに選択し、S730以降の処理を実行したか否かを判断し(S750)、実行していないと判断すると(S750でNo)、検査対象コードを、加入者データに登録されている加入者識別コードの内、現在の検査対象コードの優先順位よりも一つ下の優先順位を有する加入者識別コードに切り替えて(S760)、S730以降の処理を実行する。また、S750で肯定判断すると(S750でNo)、当該端末管理処理を終了する。
制御ユニット31は、このような内容の端末管理処理を、S710において検査対象の加入者データを順次切り替えつつ、繰り返し実行することにより、各加入者の各携帯電話端末50による移動体通信網の利用有無を判断し、加入者電話番号毎に、移動体通信網を利用中の携帯電話端末50であって最も優先順位の高い携帯電話端末50に対してだけ移動体通信網の利用を許可し、その他の携帯電話端末50に対しては、機能停止指令信号を送信することにより、この携帯電話端末50による移動体通信網の利用を禁止する。
以上、第三実施例の通信システム1について説明したが、第三実施例によっても、一加入者電話番号に対して提供されたSIMカード100を装着する携帯電話端末50の一つによる移動体通信網を通じた外部装置との通信を許可し、この携帯電話端末50が装着するSIMカード100以外のSIMカード100を装着する携帯電話端末50による移動体通信網の利用を禁止することができる。従って、本実施例によっても、第一実施例及び第二実施例と同様に、電話加入者に利便性の高い通信システム1を提供することができる。
尚、本実施例における通信制御局30の制御ユニット31は、携帯電話端末50から移動体通信網の利用要求を受信した場合、その要求に従って、要求元携帯電話端末50による移動体通信網の利用を可能とするための手続を実行して、移動体通信網の利用を形式的に許可する構成にすることができる。この形式的な許可は、上記端末管理処理により必要に応じて取り消される。
[第四実施例]
続いて、第四実施例の通信システム1について説明する。第四実施例の通信システム1は、第一〜第三実施例のように通信制御局30において携帯電話端末50の動作を監視し、必要に応じて機能停止指令信号を携帯電話端末50に送信するのではなく、一加入者電話番号に対して提供された複数のSIMカード100を装着する携帯電話端末50間で互いを制御することにより、これらの携帯電話端末50のうちの一つによる移動体通信網の利用を許可し、他の携帯電話端末による移動体通信網の利用を禁止するものである。
従って、以下では、本実施例の通信システム1に関する説明として、携帯電話端末50の制御ユニット51が実行する処理について説明する。本実施例の携帯電話端末50を含む通信システム1のハードウェア構成は、上述した実施例の通信システム1と同様である。但し、本実施例における通信事業者側システム10は、周知の通信事業者側システムと同様に動作し、第一〜第三実施例に特有な処理動作を実行しない点に注意されたい。
本実施例の携帯電話端末50は、NVRAM51Cに、この携帯電話端末50の加入者データを記憶した構成にされる。即ち、本実施例の携帯電話端末50は、図12(A)に示すように、NVRAM51Cに、自端末と同一の加入者電話番号に対して提供された複数のSIMカード100に記された加入者識別コードの夫々を記述した加入者データを有した構成にされる。
そして、携帯電話端末50は、NVRAM51Cが記憶するこの加入者データに基づき、この加入者データに登録された加入者識別コードの一つを利用する携帯電話端末50のみが移動体通信網の利用を許可されるように、図12(B)に示す機能切替処理を実行する。
携帯電話端末50の制御ユニット51は、図12(B)に示す機能切替処理を、図4に示す機能切替処理に代えて開始すると、移動体通信機能のオン/オフ切替操作が入力ユニット59を通じてなされるまで待機する(S810)。そして、オン/オフ切替操作がなされたと判断すると(S810でYes)、現在移動体通信機能がオンに設定されているか否かを判断し(S820)、オンに設定されていると判断すると(S820でYes)、移動体通信機能をオフに切り替えて(S830)、当該機能切替処理を終了する。
一方、現在移動体通信機能がオフに設定されていると判断すると(S820でNo)、制御ユニット51は、移動体通信機能をオンに切り替えた後(S840でYes)、NVRAM51Cが記憶する加入者データに基づき、この加入者データに登録された加入者識別コード群のうち、自端末の加入者識別コード以外の加入者識別コードを利用する携帯電話端末50に対して、移動体通信機能をオフに切り替えるように指示する上記機能停止指令信号を、移動体通信網を介して送信する(S850)。その後、機能切替処理を終了する。尚、制御ユニット51は、移動体通信機能がオンに設定されている状態で、自端末の電源がオンにされた場合にも、S850の処理を実行する構成にすることができる。
一方、携帯電話端末50の制御ユニット51は、図5に示す停止指令受付処理を繰り返し実行し、外部の携帯電話端末50から移動体通信網を介して上記機能停止指令信号を受信すると(S210でYes)、「移動体通信機能をオフにする」旨のメッセージを、表示ユニット57を通じてユーザに向けて表示した後(S220)、自端末の移動体通信機能をオフに設定して当該停止指令受付処理を終了する(S230)。
以上、第四実施例の通信システム1について説明したが、本実施例によれば、携帯電話端末50による処理動作だけで、一加入者電話番号に対して提供されたSIMカード100を装着する携帯電話端末50の一つによる移動体通信網を通じた外部装置との通信を許可し、この携帯電話端末50が装着するSIMカード100以外のSIMカード100を装着する携帯電話端末50による移動体通信網の利用を禁止することができる。従って、本実施例の通信システム1によっても、電話加入者に利便性の高い通信システム1を構築することができる。
[最後に]
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、着信履歴、発信履歴、電子メール送信履歴、電子メール受信履歴、電話帳、及び、ブックマーク等の各携帯電話端末50にて記憶/更新されるデータについては、携帯電話端末50間で共通するデータを記憶保持するように、通信システム1は構成されてもよい。
このような機能を実現するために、携帯電話端末50は、移動体通信網を利用可能であるときに、自端末が記憶するデータの内容を逐次、通信制御局30又は移動体通信網内の図示しないサーバ装置に送信し、通信制御局30又はサーバ装置から、同一加入者電話番号の他の携帯電話端末50が記憶するデータの内容を受信して、他の携帯電話端末50と共通する最新のデータを記憶する構成にすることができる。
携帯電話端末50がこのように構成された通信システム1によれば、電話加入者は、複数の携帯電話端末50をより便利に利用することができる。但し、このようなデータの共有には、移動体通信ではなく、短距離無線通信等を利用してもよい。即ち、サーバ装置等を介さずに、携帯電話端末50間の通信により、データ共有は実現されてもよい。