JP2014047143A - ヒトtリンパ球向性ウイルスi型関連疾患検出用ポリペプチドとその利用 - Google Patents

ヒトtリンパ球向性ウイルスi型関連疾患検出用ポリペプチドとその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患における新規のバイオマーカーを提供すること。
【解決手段】本発明のヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用のポリペプチドは、特定のタンパク質の全長または部分断片を有している。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドとその利用に関する。
ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV−1)は、HTLV−1関連疾患の病因となるヒトレトロウイルスである。HTLV−1関連疾患は、例えば成人T細胞白血病(ATL)およびHTLV−I関連脊髄症(HAM/TSP)である。HTLV−1の感染者数は、全世界において2〜3000万人であると報告されており、2〜30年にわたる無症候の期間を経た後に、全感染者の2〜5%がATLを0.5〜3%がHAM/TSPを発症する。
ATLは、最も侵襲性および悪性度の高い白血病の一種である。ATLは、全体の生存期間の中央値が7ヶ月であり、5年間の生存率が20%と、予後が非常に不良である。近年、ヒト化抗CCR4(KW−0761)を用いた第2相の試験においてATL治療に大いな改善が認められた。一方、HAM/TSPは脊髄の炎症により四肢の不随、および排尿障害を伴う重篤な脊髄症であり、病態の進行に関する機序に関しては未だに多くが不明である。
Asquith B, Zhang Y, Mosley AJ, et al. In vivo T lymphocyte dynamics in humans and the impact of human T-lymphotropic virus 1 infection. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007;104(19):8035-8040. Epub 2007 May 8031. Sakashita A, Hattori T, Miller CW, et al. Mutations of the p53 gene in adult T-cell leukemia. Blood. 1992;79(2):477-480. Beltran B, Quinones P, Morales D, Cotrina E, Castillo JJ. Different prognostic factors for survival in acute and lymphomatous adult T-cell leukemia/lymphoma. Leuk Res. 2011;35(3):334-339. Ishida T, Joh T, Uike N, et al. Defucosylated anti-CCR4 monoclonal antibody (KW-0761) for relapsed adult T-cell leukemia-lymphoma: a multicenter phase II study. J Clin Oncol. 2012;30(8):837-842. Epub 2012 Feb 2016. Sharron L. Manuel, Todd D. Schell, Edward Acheampong, et al. Presentation of human T cell leukemia virus type 1 (HTLV-1) Tax protein by dendritic cells: the underlying mechanism of HTLV-1-associated neuroinflammatory disease. Journal of Leukocyte Biology vol. 86 no. 5 1205-1216.
本発明が解決しようとする課題は、現行のATL診断およびHAM/TSP診断における曖昧性である。ATL診断は、血中ウイルス量、ATL細胞である花弁細胞の有無、血中LDH、およびCa2+値などに基づいて行われている。しかし、例えば細胞診では異形細胞の正確な判断が困難なこと、さらにはATLの中で最も悪性度の高い急性型の診断が消極的診断である事から客観性・正確性に乏しい上、予後改善につながる早期診断が非常に困難なのが現状である。またHAM/TSP診断は患者の訴える症状に基づいた重症度指針が用いられており、これも同様に客観性に乏しく、必要な患者に必要な治療が行われているか極めて不明瞭である。これらの観点から、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患に対する医療改善は急務であり、新規の診断用バイオマーカー等の必要性は非常に高い。
以上の点を鑑みて、本発明の目的は、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患における新規のバイオマーカー等を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本願発明は以下のいずれかの内容を包含する。
1)以下の1.〜17.のいずれか1つのヒトタンパク質の全長または当該ヒトタンパク質に由来する部分である、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV−I)関連疾患検出用ポリペプチド。1.Eosinophil lysophospholipase;2.10 kDa heat shock protein, mitochondrial;3.Bone marrow proteoglycan;4.Moesin;5.Myeloid cell nuclear differentiation antigen;6.Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;7.Parathymosin;8.Triosephosphate isomerase;9.Heat shock 70 kDa protein 1A/1B;10.T-cell differentiation antigen CD6;11.Annexin A1;12.Annexin A6;13.Spectrin alpha chain, brain;14.HLA class II histocompatibility antigen, DRB1-1, 4, 10, 11, 13, 15, 16 beta chain;15.Calpain-2 catalytic subunit;16.Signal transducer and activator of transcription 1-alpha/beta;17.Platelet basic protein。
2)配列番号1〜19のいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含み、上記ヒトタンパク質に由来する部分である、1)に記載のヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチド。
3)生体から採取した試料に含まれている、1)または2)に記載のヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを検出または測定する工程を包含している、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患を検出する方法。
4)上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患は、HTLV−I関連脊髄症(HAM/TSP)または成人T細胞白血病(ATL)である、3)に記載の方法。
5)検出または測定する上記工程の結果に基づいて、上記試料が採取された上記生体が、HAM/TSPの患者、ATLの患者、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患を発症していないヒトTリンパ球向性ウイルスI型の感染者、またはヒトTリンパ球向性ウイルスI型の非感染者であることを識別する工程をさらに包含している、3)または4)に記載の方法。
6)検出または測定する上記工程は、異なる上記ヒトタンパク質に由来する2つ以上の上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを一度に検出または測定する工程である、3)〜5)のいずれかに記載の方法。
7)検出または測定する上記工程は、上記ヒトタンパク質に由来する部分としての上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを質量分析法によって検出または測定する工程である、6)に記載の方法。
8)上記試料は血液由来である、3)〜7)のいずれかに記載の方法。
9)上記試料は、CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性の単離されたT細胞である、3)〜8)のいずれかに記載の方法。
10)ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患の患者に対する処置の効果を評価する方法であって、処置を施す前に生体から採取した試料A、および処置を施した後に生体から採取した試料Bに含まれている、1)または2)に記載のヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを検出または測定する第1の工程と、検出または測定した上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドについて、上記試料Aおよび試料Bの間において上記第1の工程における結果を比較する第2の工程とを包含している、方法。
11)成人T細胞白血病(ATL)を処置するための化合物の候補物質をスクリーニングする方法であって、Calpain-2遺伝子を発現している細胞を試験物質と接触させる工程と、接触させる上記工程の後に、Calpain-2遺伝子の発現量の変化またはCalpain-2の活性の変化を評価する工程とを包含している、方法。
12)10 kDa heat shock protein, mitochondrial;Moesin;Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;Parathymosin Spectrin alpha chain, brain;またはCalpain-2の成人T細胞白血病(ATL)の治療標的としての利用。
13)Annexin A1、またはSignal transducer and activator of transcription 1-alpha/betaのHTLV−I関連脊髄症(HAM/TSP)の治療標的としての利用。
14)以下の1.〜17.のいずれか1つのヒトタンパク質の全長または当該ヒトタンパク質に由来する部分であるポリペプチドと結合する抗体を含んでいる、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV−I)関連疾患検査用試薬またはキット。1.Eosinophil lysophospholipase;2.10 kDa heat shock protein, mitochondrial;3.Bone marrow proteoglycan;4.Moesin;5.Myeloid cell nuclear differentiation antigen;6.Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;7.Parathymosin;8.Triosephosphate isomerase;9.Heat shock 70 kDa protein 1A/1B;10.T-cell differentiation antigen CD6;11.Annexin A1;12.Annexin A6;13.Spectrin alpha chain, brain;14.HLA class II histocompatibility antigen, DRB1-1, 4, 10, 11, 13, 15, 16 beta chain;15.Calpain-2 catalytic subunit;16.Signal transducer and activator of transcription 1-alpha/beta;17.Platelet basic protein。
本発明によれば、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患における新規のバイオマーカー等を提供可能である。
CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性、CCR4陽性細胞のプロテオミクス分析について概略的な手順を示す図である。6人の健常者、5人の無症候性キャリア、および9人のHAM/TSP患者からPBMCを回収し、続いて、フローサイトメーターを用いてCD3陽性、CD4陽性、CD25陽性、CCR4陽性分画の単離を行った。これらを、細胞溶解液によって溶解させ、トリプシン処理し、LC/MS/MS解析に供した。LC/MS/MS解析によって得られたデータを、大容量のデータ処理が可能なExpressionistプロテオームサーバーに移行させた後に、標識を用いないラベルフリー定量に基づく統計学的な解析を行った。有望なバイオマーカー・治療標的候補として統計解析によって抽出されたタンパク質の同定を、2D−LC/MS/MS解析によって確立されたタンパク質同定データベースに対する照会によって実施した。 フローサイトメトリーによって各臨床群から得られたCD3陽性、CD4陽性、CD25陽性、CCR4陽性細胞の代表的な結果を示す図である。抗CD3−FITC、抗CD4−Cy7、抗CD25−APC、および抗CCR4−PEを用いて標識後、CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性、CCR4陽性の分画を単離した。CD3陽性、CD4陽性細胞分画におけるCD25陽性、CCR陽性の平均含有量±SD(%)を各臨床群に対して算出し、図面上部右側の部分に示した。 候補となる治療標的の統計学的な抽出結果を示す図である。4群クラスカルウォリス検定(ND、AC、ATL、およびHAM/TSP)を用いて、検出された重複のない14,064ペプチドから1,170の候補を、第1段階のスクリーニングの結果として抽出した(p<0.01)。次に、support vector machine - recursive feature elimination(SVM−REF)を用いて誤分類率を最小化するペプチド群を抽出するアルゴリズムを実行することによって、第2段階目のスクリーニングの結果として疾患特異的に変動するバイオマーカーの候補を、91ペプチドに絞り込んだ(A)。SVM−RFEによって上位にランキングされる91ペプチドを用いたLeave-one-out交差検定(leave-one-out cross validation)の結果、および用いたSVMの出力値のヒートマップ(B)に示した。29検体のうち27検体が正しく分類されたことが分かった。(C)は、主要成分解析(PCA)を用いて91ペプチドの疾患特異性を視覚的に表している。Comp.1〜3は第1〜3主成分を示している。 同定された19ペプチドの各臨床群の定量情報を比較した箱髭図である。示した19パネルは、質量分析によって得られた各19タンパク質の定量情報に対応している。上記統計解析によって絞り込まれた91ペプチドから、19ペプチド由来の17タンパク質を同定することに成功した。19ペプチドのうちGLYMおよびPRG2に関しては、同一タンパク質由来の独立した領域由来のペプチドがバイオマーカー候補として同定されたため、それぞれにPeptide 1、Peptide 2と示してある。y軸は質量分析によって得られた強度を示している。質量分析において、強度は定量情報と相関している事が知られている。 Calpain-2活性の誘導がATL細胞において細胞死を惹起することを図である。(A)29検体におけるCalpain-2の発現レベルおよびα2-spectrinの発現レベルの間に相関関係を見出した。Calpain-2およびα2-spectrinは、酵素と基質の関係にあると報告されており、2つのタンパク質の強度の相関はこの報告を裏付けている。細胞増殖を、コントロールベクターまたはΔ19CAN2の形質移入から36時間後のSO4細胞(B)およびKOB細胞(C)におけるMTT解析によって測定し、スチューデントのt検定によって有意差を確認した(p<0.01)。Δ19CAN2の過剰発現は、形質移入から24時間後のSO−4細胞(D)およびKOB細胞(E)における細胞死を著しく促進した(p<0.01)。(F)α2-spectrinのタンパク質レベルの低下は、Δ19CAN2の形質移入後、24時間および12時間においても観察された。抗mycタグのウエスタンブロットによって外来性のΔ19CAN2の発現を確認した。
〔1.ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチド〕
本発明に係るヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV−1)関連疾患検出用ポリペプチド(以下、単に本発明に係るポリペプチドと記載する)は、以下の1.〜17.のいずれか1つのヒトタンパク質の全長または部分(部分断片)である。当該ヒトタンパク質は、1.Eosinophil lysophospholipase;2.10 kDa heat shock protein, mitochondrial;3.Bone marrow proteoglycan;4.Moesin;5.Myeloid cell nuclear differentiation antigen;6.Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;7.Parathymosin;8.Triosephosphate isomerase;9.Heat shock 70 kDa protein 1A/1B;10.T-cell differentiation antigen CD6;11.Annexin A1;12.Annexin A6;13.Spectrin alpha chain, brain;14.HLA class II histocompatibility antigen, DRB1-1, 4, 10, 11, 13, 15, 16 beta chain;15.Calpain-2 catalytic subunit;16.Signal transducer and activator of transcription 1-alpha/beta;および17.Platelet basic proteinである。
なお、本明細書においてポリペプチドとは、上記のヒトタンパク質の全長または当該ヒトタンパク質に由来する部分断片の双方を包含する概念である。また、単にペプチドと称する場合は、ポリペプチドたる部分断片のうち、構成するアミノ酸数が20〜30個以下のものを指す。
T細胞における上記17ヒトタンパク質の発現様式は、(A)HTLV−1非感染細胞、(B)無症候性キャリア由来HTLV−1感染細胞、(C)HTLV−I関連脊髄症(HAM/TSP)由来HTLV−1感染細胞、および(D)成人T細胞白血病(ATL)由来HTLV−1感染細胞の間で異なっており、この発現様式の変化は各臨床グループの分子生物学的差異を反映したものである。したがって、好ましい一態様では、対象の血液に含まれるCD3陽性、CD4陽性、CD25陽性、CCR4陽性T細胞における、本発明に係るポリペプチドの存在量を測定し、非感染のヒトおよび潜伏感染期にあるヒトの血液に含まれる同種のT細胞における当該ポリペプチドの存在量と比較することによって、対象がHAM/TSPまたはATLを発病しているか否かを判定することができる。つまり、本発明に係るポリペプチドは、HTLV−I関連疾患を検出、診断、および/または識別するためのバイオマーカーとして使用可能である。
本発明に係るポリペプチドは、上記ヒトタンパク質の部分断片を含んでいることが好ましい。上記部分断片は、配列番号1〜19のいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含んでいる部分断片であり得、配列番号1〜19のいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含んでいるペプチドであり得る。
配列番号1によって示されるアミノ酸配列は、Eosinophil lysophospholipaseをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号2によって示されるアミノ酸配列は、10 kDa heat shock protein, mitochondrialをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号3および18によって示されるアミノ酸配列のそれぞれは、Bone marrow proteoglycanをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号4によって示されるアミノ酸配列は、Moesinをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号5によって示されるアミノ酸配列は、Myeloid cell nuclear differentiation antigenをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号6および14によって示されるアミノ酸配列のそれぞれは、Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrialをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号7によって示されるアミノ酸配列は、Parathymosinをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号8によって示されるアミノ酸配列は、Triosephosphate isomeraseをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号9によって示されるアミノ酸配列は、Heat shock 70 kDa protein 1A/1Bをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号10によって示されるアミノ酸配列は、T-cell differentiation antigen CD6をトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号11によって示されるアミノ酸配列は、Annexin A1をトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号12によって示されるアミノ酸配列は、Annexin A6をトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号13によって示されるアミノ酸配列は、Spectrin alpha chain, brainをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号15によって示されるアミノ酸配列は、HLA class II histocompatibility antigen, DRB1-1, 4, 10, 11, 13, 15, 16 beta chainをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号16によって示されるアミノ酸配列は、Calpain-2 catalytic subunitをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号17によって示されるアミノ酸配列は、Signal transducer and activator of transcription 1-alpha/betaをトリプシン処理した断片化ペプチドである。配列番号19によって示されるアミノ酸配列は、Platelet basic proteinをトリプシン処理した断片化ペプチドである。
上述した本発明に係るペプチドのアミノ酸配列の一例(配列番号1〜19に相当するアミノ酸配列)を表1にまとめた。
Figure 2014047143
なお、HTLV−1感染による患者の病状に応じて発現様式が変化する点から、下記の表2〜4に示す91の化合物を、HTLV−I関連疾患を検出するためのバイオマーカーとして使用可能である。表2〜4に示す91の化合物は、それぞれ“Mass”の欄に示されている分子量を有しているT細胞に存在するバイオマーカーである。表2〜4における“m/z”、“RT”、“Intensity(ND)”、“Intensity(AC)”、“Intensity(ATL)”、および“Intensity(HAM)”は、後述する実施例に記載の測定法にしたがって同定された値である。なお、表2〜4に示す91の化合物は、そのイオン化における電荷および分子量から、ペプチドまたは修飾ペプチドと推定される。
Figure 2014047143
Figure 2014047143
Figure 2014047143
つまり、表2〜4に示される分子量を有している、対象の血液のT細胞における化合物を検出または測定することによって、HTLV−I関連疾患を検出可能である。
なお、表2〜4に示されている化合物のうちの、Cluster_01585、Cluster_01719、Cluster_02511、Cluster_02550、Cluster_03363、Cluster_08409、Cluster_09121、Cluster_09391、Cluster_10679、Cluster_11083、Cluster_11318、Cluster_11808、Cluster_12714、Cluster_12918、Cluster_13427、Cluster_13495、Cluster_13535、Cluster_13650、およびCluster_13999は、データベース検索によってそのアミノ酸配列が同定されているペプチドであり、表1のペプチドの何れかに分類されている。
〔2.HTLV−I関連疾患の検出方法〕
本発明に係るHTLV−I関連疾患を検出する方法は、生体(検出対象)から採取した試料に含まれている17の上記ヒトタンパク質またはその部分断片からなる群から選択される1つ以上のHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドを検出または測定する工程を包含している。つまり、本発明に係る上記方法は、他の具体的な工程、ならびに使用する器具および装置によって特に限定されない。
本明細書において、上記検出または測定する工程は、生体試料およびこれを精製して得られる試料に含まれているHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの量(例えば含有量または濃度)を測定する工程を意味する。
本発明に係る上記方法の一例において、上記工程において上記検出対象について得られた結果を、HTLV−Iに非感染の対象およびHTLV−I関連疾患を生じていないHTLV−I感染の対象(これらの2種類の対象を“比較対象”と記載する)から得られた試料に含まれているHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの存在量または濃度と比較することによって、HTLV−I関連疾患の発病の有無を判定し得る。詳細には、上記検出対象に由来する試料に含まれているHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの量を、比較対象に由来する試料に含まれているHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの量と比較して、これらの量の間に有意な相違が認められた場合に、当該検出対象がHTLV−I関連疾患を発病していると判定可能である。
なお、比較対象におけるHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの量としては、あらかじめ測定されている基準の量、および多数の測定結果に基づいて設定されている上記ポリペプチドの量の許容範囲が挙げられる。
本発明に係る方法において、HTLV−I関連疾患は、HTLV−I関連脊髄症(HAM/TSP)または成人T細胞白血病(ATL)であり得る。上述のように、(A)〜(D)の状態に応じて、ヒトのT細胞は、HTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの発現様式を異にしている。つまり、本発明に係る方法の一例によれば、HTLV−I関連疾患の病状について、試料を4臨床グループに分類可能である。したがって、本発明に係る方法の一例では、1回の検出によって、検出対象がHAM/TSPおよびATLに罹患しているか否かを判定可能である。
本発明に係る方法において、2以上のHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの量を、測定または検出し、かつ比較することが好ましい。上述のように、本発明に係る方法の一例では、対象のHTLV−I関連疾患の病状について4つの臨床グループに分類する。それぞれのHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの量は個人差と疾患特異的変動の両方を含んでいるが、判定の基準にするパラメータを増やし、診断アルゴリズムを好適化することによって、疾患特異的変動を強調することが可能であり、この結果、検出、診断および/または識別結果の信頼性を向上させ得る。Flow cytometry、ELISA、ウェスタンブロットおよび免疫沈降法等の、抗体を用いてヒトタンパク質またはその部分断片(ただしペプチドを除く)を検出等をする場合は、17のHTLV−I関連疾患検出用タンパク質(表1に示す17種)全てを用いることが好ましい。質量分析法の原理に基づいて、ペプチドを用いた検出等をする場合は、91ペプチド(表2〜4に示す91種)全てを用いることが最も好ましい。
検出または測定する上記工程としては、HTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの存在量を定量的もしくは半定量的に決定し得る手法、またはHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの有無を決定し得る手法を利用する工程が挙げられるが、これらに限定されない。上記手法は、例えば、免疫学的手法(例えば、ELISA、ウェスタンブロットおよび免疫沈降法)、および質量分析法などであり得る。
本発明に係る検出または測定する上記工程は、上記ポリペプチドを質量分析法によって検出または測定する工程であることが好ましい。質量分析装置を用いた定量法は、特異的な抗体を作製することなく、HTLV−I関連疾患検出用のペプチドを簡便に検出または測定し得る。また、質量分析装置を用いた質量分析法は、感度および精度に優れているため、より正確な分類が可能である。さらに、多成分同時分析が可能なマルチチャネル型の質量分析装置を用いることにより、2以上のHTLV−I関連疾患検出用のペプチドを一度に検出または測定可能である。上述のように、多数(例えば、91)のペプチドを同時に検出または測定する場合に、このような質量分析装置を用いることが非常に好ましい。また、より精度よく検出をおこなうためには、タンデム質量分析装置(MS/MS)を用いることが好ましい。したがって、本発明に係る方法に用いられる質量分析装置としては、定量が可能な種々の公知の質量分析装置(例えば、四重極型および飛行時間型の質量分析装置など)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に係る試料は、生体(ヒト)から採取された試料である。当該試料は、血液、髄液、またはこれらのいずれか一方に由来する試料であり得、血液から分離されたCD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性の単離されたT細胞であることが特に好ましい。当該T細胞は、健常者にも存在する分画である一方、HTLV−I感染細胞が最も濃縮される分画であり、HAM/TSPまたはATLの発症によってその存在率が増加する。このようなT細胞を試料としてタンパク質の発現レベルを比較することによって疾患の進行に従って起こる変化を追跡することが可能であり、疾患の進行とは関係ない個人差などのノイズが低下し、得られた結果(疾患分類)の信頼性が向上する。
本発明に係る試料は、上述のような単離されたT細胞を、タンパク質分解酵素を用いて処理した試料であり得る。後述の実施例において使用されている通り、タンパク質分解酵素としてはトリプシンが一般的であるが、本発明に係る方法において適用可能な範囲において、当業者にとっての公知の種々のタンパク質分解酵素が本発明に係る方法に使用され得る。
以上のように、本発明に係る方法によれば、これまで適切な診断手法が確立されていなかったHTLV−I関連疾患を、高い精度において決定可能である。
〔3.HTLV−I関連疾患の患者に対する処置の効果の評価方法〕
本発明に係るHTLV−I関連疾患の患者に対する処置の効果の評価方法は、処置を施す前に生体から採取した試料A、および処置を施した後に生体から採取した試料Bに含まれている、上述の項目1.に記載のポリペプチドを検出または測定する第1の工程と、検出または測定した上記ポリペプチドについて、上記試料Aおよび試料Bの間において上記第1の工程における結果を比較する第2の工程とを包含している。つまり、本発明に係る評価方法は、具体的な他工程の、ならびに使用する器具および装置によって限定されない。
本発明の評価方法の一例において、HTLV−I関連疾患の患者から採取された生体試料における少なくとも1つのHTLV−I関連疾患用ポリペプチドの量をHTLV−I関連疾患の処置の開始前にあらかじめ測定しておき、HTLV−I関連疾患の処置の開始後の任意の時点において、当該患者の当該ポリペプチドの量を測定し、両者を比較することによって、HTLV−I関連疾患に対する処置の効果を評価し得る。
評価の基準は、例えば、あらかじめ測定された上記ポリペプチド量が、後に測定された量より大きいか否かである。上記ポリペプチド量が疾患の進行に伴い増加する傾向がある場合では、この基準にしたがって、“真(前者が後者より高い)”である場合、実施した処置は有効であると評価され、特に前者が後者より有意に高い場合、実施した処置は十分に有効であると評価される。上記ポリペプチド量が疾患の進行に伴い減少する傾向がある場合では、この基準にしたがって、“真(前者が後者より低い)”である場合、実施した処置は有効であると評価され、特に前者が後者より有意に低い場合、実施した処置は十分に有効であると評価される。
後の測定は、任意の1以上の時点に実施され得る。よって、評価は、数回の測定の平均値を後の測定結果として、あらかじめ測定した結果と比較することによってなされる。また、評価は、処置の開始から短期間(例えば1週間〜1ヵ月間)、中期間(例えば1〜6ヶ月間)または長期間(例えば6ヶ月〜1または2年間)を隔ててか、または継続して実施され得る。
なお、HTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの検出または測定に用いられる生体試料の調製および精製、ならびにHTLV−I関連疾患検出用ポリペプチドの検出方法または測定方法は、上述の項目2.記載にしたがう。
〔4.成人T細胞白血病(ATL)の治療薬候補物質のスクリーニング方法〕
本発明に係るATLの治療薬候補物質のスクリーニング方法の一例は、Calpain-2(Calpain-2)遺伝子を発現している細胞と試験物質とを接触させる接触工程と、上記接触工程の後に行われCalpain-2遺伝子の発現量の変化またはCalpain-2の活性の変化を評価する評価工程と、を含む方法である。
上記接触工程は、培地中で、試験物質の存在下、上記細胞を培養しながら行うことができる。ここで、細胞としては、Calpain-2遺伝子を内生的に(endogenous)発現する細胞を用いてもよいが、Calpain-2遺伝子が恒常的に発現するように形質転換された細胞がより好ましい。また、上記試験物質の種類は特に限定されないが、低分子化合物であることが好ましい。
上記評価工程は、上記試験物質が非存在な場合を基準にして、Calpain-2遺伝子の発現量が変化したかどうか、またはCalpain-2のプロテアーゼ活性が変化したかどうかを評価する。ここで、Calpain-2遺伝子の発現量は、タンパク質(Calpain-2)などを直接的に定量して把握してもよく、これらタンパク質などをコードする遺伝子の発現量を検出して把握してもよい。また、Calpain-2のプロテアーゼ活性は、例えば、その基質であるalpha-II spectrinの細胞内での存在量の増減を指標にして把握することができる。
上記評価工程において、Calpain-2遺伝子の発現量を増加させる、またはCalpain-2の活性を増強する試験物質は、ATLの治療薬の候補物質として選択される。
〔5.ATL(成人T細胞白血病)を処置する方法および治療薬〕
本発明はまた、ATLを処置する方法、およびATLの治療薬を提供する。ATL患者から採取したHTLV−I感染細胞では、非感染細胞と比較して、Calpain-2遺伝子の発現量が有意に低下している。HTLV−I感染細胞においてCalpain-2遺伝子の発現量を回復させるか、またはCalpain-2のプロテアーゼ活性を増強させれば、HTLV−I感染細胞を細胞死に誘導し得る(後述の実施例を参照)。つまり、本発明に係るATLを処置する方法は、Calpain-2遺伝子の発現量を増加させる薬剤、またはCalpain-2の活性を増強させる薬剤(“ATL治療薬”と総称する)の治療有効量を、ATLの患者に投与する工程を包含している方法である。
本発明において処置は、経過の観察のみを行う場合と比較して、ATLを発病したヒトにおけるHTLV−Iの活動を抑制することを意味し、好ましくはHTLV−I感染細胞を死滅させること、ならびにHTLV−Iの感染能または増殖能を破壊することを意味する。処置の一局面は、ATLに関連する少なくとも1つの症状を軽減または緩和すること、例えば、リンパ節の腫れ、肝臓もしくは脾臓の腫れ、全身倦怠感、麻痺、意識障害、便秘および各種感染症の軽減または緩和をすることを包含している。
ATL治療薬の投与方法は全身投与または局所投与であり得る。全身投与の例としては、経口投与もしくは非経口投与(例えば、静脈内もしくは動脈内への血管内投与、および腸内投与など)が挙げられる。局所投与の例としては、経皮投与および舌下投与などが挙げられる。ATL治療薬の投与量(治療有効量)は、投与対象となるヒトの年齢、性別、症状、投与経路、および投与回数などに応じて適宜設定し得る。また、必要に応じて、ATL治療薬を用いたインビボアッセイをあらかじめ行い、過度の実験を要することなく上記投与量を決定し得る。
ATL治療薬は、治療有効成分以外の構成成分を含んでいる薬学的組成物であり得る。当該薬学的組成物を構成する治療有効成分以外の構成成分は、例えば、薬学的に許容される担体、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧調整用の塩類、緩衝剤、着色剤、香味料、甘味料、抗酸化剤、および粘度調整剤などである。
上記担体の例としては、水、各種塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、パラフィン、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。担体の種類は、薬学的組成物の剤型および薬学的組成物の投与方法などに応じて、適宜選択され得る。薬学的組成物の剤型の例としては、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、および注射剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、ATL治療薬は遺伝子治療剤であり得る。詳細な例としては、Calpain-2をコードしている核酸を治療有効成分として含んでいる遺伝子治療剤が挙げられる。遺伝子治療剤は、上記治療有効成分である核酸を、注射によってヒトに直接的に投与する形態であり得る。また、遺伝子治療剤は、上記治療有効成分である核酸を発現可能に組み込んでいるベクターを、注射によってヒトに直接的に投与する形態であり得る。上記ベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクターなど、遺伝子治療に適用可能なベクターが挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、上記遺伝子治療剤はリポソーム製剤であり得る。
〔6.ATL(成人T細胞白血病)およびHAM/TSP(HTLV−I関連脊髄症)の治療標的〕
実施例にも示されるように、10 kDa heat shock protein, mitochondrial;Moesin;Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;Parathymosin Spectrin alpha chain, brain;またはCalpain-2は、ATLの治療標的として利用することができる。これらのヒトタンパク質は、ATLの患者において特異的な動態を示している。
また、Annexin A1、またはSignal transducer and activator of transcription 1-alpha/betaは、HAM/TSPの治療標的として利用することができる。これらのヒトタンパク質は、HAM/TSPの患者において特異的な動態を示している。
以上のように、本発明によれば、ATL治療、およびHAM/TSP治療に対する新たな治療標的を提供することができる。現状では、ATL治療においてヒト化抗CCR4を用いた新規治療法においても依然半数近い患者が非反応性であり、有効な治療法が存在しないうえ、抗CCR4による副作用の問題も依然存在する。またHAM/TSPに対する根治治療は未だに存在せず、抗炎症を目的とした対処療法に限られている。
以下に示す実施例を用いて、本発明の実施の形態のさらなる詳細を説明する。以下の実施例は、本発明を理解するための例示に過ぎず、本発明の範囲を限定していない。また、実施例には、当業者によって理解される種々の変更がなされ得、本発明は、種々の変更がなされた各実施例をその範囲に包含している。
以下に、ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)を用いて、HTLV−I関連疾患の治療標的の探索を行った例を説明する。当該探索は図1に概略を示す手順にしたがっている。
図1に示すように、4つの群(詳細は後述)のヒトからPBMCを採取し、PBMCからCD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性のT細胞を単離し、単離した細胞をトリプシン処理する。トリプシン処理したサンプルを、タンパク質の定量化および同定の2通りの処理に使用する。タンパク質およびそれらに由来するペプチドの定量解析(左側に分岐)では、LC/MS/MS、非標識の定量および統計的解析を順に実施する。タンパク質の同定(右側の分岐)では、SCX分離、2D−LC/MS/MS、および同定ペプチドのデータベースの作成を順に実施する。以上に説明した手順の詳細を以下に説明する。
〔1.材料および方法〕
(末梢血単核細胞(PBMC)および細胞株)
聖マリアンナ医科大学において、6人の健常者、5人の無症候性キャリア、および9人のHAM/TSP患者からPBMCを収集した。今村病院分院において9人のATL患者からPBMCを収集した。本研究におけるこれらのヒト試料の使用は、個々の機関の倫理委員会(理研の横浜研究所の倫理委員会、聖マリアンナ医科大学の倫理委員会、今村分院病院の施設内審査委員会)によって承認された。
SO−4およびKOB細胞は、山野嘉久博士のご好意により提供いただいた。両方の細胞株を、10%のウシ胎児血清(Cell Culture Bioscience、東京、日本)、100kU/LのIL2(Cell Science and Technology Institute, Inc.、東京、日本)、1×抗生物質−抗真菌水溶液(Sigma-Aldrich、ミズーリ、米国)を補ったRPMI1640において培養した。Jurkat細胞を、10%のウシ胎児血清(Cell Culture Bioscience、東京、日本)、1×抗生物質−抗真菌水溶液(Sigma-Aldrich、ミズーリ、米国)を補ったRPMI1640において培養した。すべての細胞を、5%CO、37℃において培養した。CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性のT細胞のPBMCからの単離を、抗CD3−FITC(ebioscience、サンディエゴ、米国)、抗CCR4−PE(Becton Dickinson、カルフォルニア、米国)、抗CD4−Cy7(ebioscience)、および抗CD25−APC(ebioscience)を用いた細胞選別機JSAN(Bay bioscience、兵庫、日本)によって実施した。
(質量分析解析のための試料調製)
CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性のT細胞を、PBSを用いて3回洗浄し、変性バッファー(50mMの重炭酸アンモニウム、8Mの尿素)に溶解させた。超音波処理の後に、5mMのトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(Sigma-Aldrich)存在下、37℃における30分間の還元、および25mMのヨードアセトアミド(Sigma-Aldrich)存在下、室温における45分間のアルキル化処理を実施した。続いて、タンパク質:酵素が25:1の割合になるように、Trypsin GOLD(Promega、ウィスコンシン、米国)を加え、溶解物を37℃において12時間消化した。回収されたペプチド試料を、Vacuum Spin Drier (TAITEC Co., Ltd.、埼玉、日本)を用いて乾燥させ、質量分析に供した。
(LC/MS/MS)
消化されたペプチドを、0.1%蟻酸存在下で95分の間に2%→35%、15分の間に35%→95%になるようにアセトニトリルの濃度勾配を2段階に設定し、0.1×200mmのC18カラムにおいて、200nL/分の流速において分離した。溶出ペプチドを、Analyst QSソフトウェア2.0(AB Sciex)のsmart information-dependent acquisition(SIDA)モードにおいてQSTAR Elite質量分析計(AB Sciex、カルフォルニア、米国)を用いて解析した。QSTAR Eliteにおける詳細なパラメータは、以下に示す通りである:DP=60、FP=265、DP2=15、AD=5、IRD=6、IRW=5、カーテンガス=20、およびイオン噴霧電圧=2000V。
(2D LC/MS/MS)
CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性のT細胞のトリプシン消化物を、25%のアセトニトリルを含んでいる10mMの蟻酸アンモニウムに溶解させ、0.2×250mMのモノリス型の強カチオンイオン交換カラム(GL Science、東京、日本)によって分画した。ペプチドの溶出にはProminence HPLC装置(島津製作所株式会社、京都、日本)を用いた。より詳細には、Prominence HPLC装置の制御ソフトウェアであるLCsolution(島津製作所株式会社、京都、日本)上において蟻酸アンモニウム濃度勾配パターンを曲線値=3に設定し、蟻酸アンモニウム濃度勾配を10mM→1Mに変化させながらProminence HPLC装置(島津製作所株式会社、京都、日本)を用いて70分にわたって溶出した。溶出物を、保持時間に基づいて20画分に分画採取し、Ultimate 3000 nano-HPLC装置を組み合わせたLTQ-Orbitrap-Velos質量分析計(Thermo Scientific、ブレーメン、ドイツ)によって各分画ごとに解析した。分画されたペプチド試料を、上述のQSTAR-Eliteを用いたスクリーニング段階に使用したUltimate 3000 nano-HPLCの濃度勾配条件(0.1%蟻酸存在下で95分の間に2%→35%、15分の間に35%→95%になるように、2段階に設定されたアセトニトリルの濃度勾配)をそのまま用いて分離した。その上で、MS解像度=60,000を有しているFourier-transitionモードにおけるフルスキャン(MSスキャン)、および通常の解像度を有しているイオントラップモードにおけるデータインディペンデントスキャン(MS/MSスキャン)を行い、フルスキャン実行時に最も強く検出された20のプレカーサイオンについての同時のMS/MSスキャンを取得するプログラムを用いてLTQ-Orbitrap-Velosによって解析を実行した。重要な他のパラメータは、以下の通りである:キャピラリー温度=250、電源電圧=2kV、MSスキャン範囲=m/z 400〜1600、上位20の強度の前駆体についての取得データ依存的CID MS/MS、30秒間の動的排除の有効化。タンパク質同定のために、すべてのMS/MSスペクトルを、ProteomeDiscoverer 1.3ソフトウェア(ThermoScientific)上のSEQUESTアルゴリズムを用いて、SwissProtデータベース バージョン 2012_06(20,232のヒトタンパク質配列)において、以下のパラメータを用いて検索した:MS tolerance = 3 ppm、MS/MS tolerance = 0.8 Da、maximum missed cleavages = 2、Enzyme = Trypsin、Taxonomy = Homo sapiens、Fixed modification = arbamidomethylation (cysteine)、Variable modification = oxidation (methionine)。ProteomeDiscoverにおけるPercolator FDR評価アルゴリズムによって、1%未満の過誤率(FDR)を満たすタンパク質を、同定されたタンパク質と定義した。
(ラベルフリー定量解析)
LC/MS/MS解析によって得られたデータを、Expressionist RefinerMSモジュールに転送し、以下のデータ処理および関連する定量解析に用いた。29の臨床試料由来のLC/MS/MS解析のデータを、まず2次元(2D)平面(電荷−質量の割合(m/z)に対する保持時間(RT))上に展開した。クロマトグラム・グリッド機能を用いて、29試料由来のクロマトグラムに対して、m/zおよびRTから構成される共通の格子をすべての2D平面において適用した。これらを、以下のパラメータを用いて行った:スキャン数=10、多項式次数=3、RTスムージング=0。2D平面からバックグラウンドのノイズを除くために、Chromatogram Chemical Noise Subtractionを実行した。RTウィンドウ=50スキャン、変異値減算=50%の、RTスムージング=3スキャン。その後に、インテンシティ・スレッシュホールド機能を用いて、スパイクノイズのような単発的に生じる低強度のノイズを除くために、10未満の強度を有しているデータ点をすべて0に落とした。なお、10を超える強度のピークに関しては一切手を付けない。29の2D平面間のRTの微小なずれを、クロマトグラム・リテンションタイム・アラインメント機能によって調節した。これらは以下のパラメータを用いて行った:RT変換ウィンドウ=0.2分、RT検索間隔=5分、m/zウィンドウ=0.1Da、ギャップペナルティー=1。ピークを、Chromatogram Summed Peak Detection機能によって2段階に検出した。1段階目を、以下のパラメータを用いて行った:合計ウィンドウ=5スキャン、重複=50、最小ピークサイズ=4スキャン、最大結合距離=10点、ピークRT分裂=正確、強度分析=最大、ギャップ/ピーク比率=1%、改善閾値=5、整合性閾値=0.8、シグナル/ノイズ閾値=1。また、2段階目のChromatogram Isotopic Peak Clusteringを用いて同位体群に分類した。第1のパラメータは:最小電荷=1、最大電荷=10、最大不明ピーク=0、最初の許容されたギャップの位置=3、RTウィンドウ=0.1分、m/z耐性=0.05Da、同位体形状耐性=10、最小集団サイズ分配=1.2。第2のパラメータは;最小電荷=1、最大電荷=1、最大不明ピーク=0、最初の許容されたギャップの位置=3、RTウィンドウ=0.1分、m/z耐性=0.05Da、最小集団サイズ分配=0.6であった。
(発現ベクターおよびsiRNA)
Δ19CAN2コンストラクトについて、CAPN2挿入配列を、pBlueBacIII CAPN2由来のプライマー(5’−CATGTCGACTCCCACGAGAGGGCCATCAAGT−3’および5’−CATTCTAGATCAAAGTACTGAGAAACAGAGCC−3’)を用いて、PCRによって増幅し、pEFBOS−Mycにクローン化した。クローン化に使用したCAPN2配列は、MGC配列(登録番号BC021303)と同一であることを確認した。CAPN2の強制発現にあたって、CAPN2挿入配列を含んでいる5μgのベクターDNAを1×10個の細胞に形質移入した。SPTAN1に対する低分子干渉RNA(siSPTAN1;アルファ−IIスペクトリンの遺伝子名)およびsiRNAのネガティブコントロールとして、Sigma-Aldrichから市販されているものを使用した。500pmolのsiRNAのオリゴヌクレオチドを1×10個の細胞に形質移入した。ベクターおよびsiRNAを、Amaxa Nucleoportator transfection Kit V(Lonza,Cologne、ドイツ)によってSO−4細胞、KOB細胞およびJurkat細胞に形質移入した。
(細胞周期解析および細胞増殖解析)
細胞周期解析のために、1〜2×10個の細胞を、PBSを用いて洗浄した後に、100ng/mLのRNase(Sigma-Aldrich)を含んでいる0.1%のriton-X溶液(Sigma-Aldrich)に懸濁した。1μg/mlのヨウ化プロピジウムの添加に続いて、細胞周期をFACScalibur(Becton Dickinson、カルフォルニア、米国)を用いたフローサイトメトリーによって計測した。データ解析を、FlowJoソフトウェア(Tree Star, Inc.、オレゴン、米国)を用いて行った。細胞懸濁液は、凝集によって複数の細胞由来の核が一つに固まっている場合が多く、これらは本来の2N、4Nではなく、誤って4N、6N、8Nと認識されてしまう可能性を有している。この可能性を排除するために、細胞周期の解析前に、FL2−W/FL2−Aで展開したプロット上における適切なゲーティングによって、凝集していない集団のみを抽出した。Cell Counting Kit-8(同人化学研究所、熊本、日本)を用いて、製造業者の推奨プロトコルに従って、細胞代謝活性を測定することによって、細胞増殖を評価した。
(ウェスタンブロッティング)
細胞を溶解バッファー[1%のNP−40、2mMの EGTA、2mMの MgCl、150mMの NaCl、20mMのTris−HCl(pH7.5)、10%のグリセロールであって、プロテアーゼ阻害剤カクテル(protease inhibitor cocktail)Complete(Roche、インディアナ、米国)を含有する]に溶解させ、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、PVDF膜に転写した。4%Block Ace(雪印乳業株式会社、東京、日本)によるブロッキングに続いて、膜を抗myc抗体(9E10、Sigma-Aldrich)または抗アルファ−IIスペクトリン抗体(abcam、ケンブリッジ、英国)とともに一晩振盪した。次に、膜をそれぞれHRP結合させた抗マウスIgG(GE Healthcare, NJ, USA)、または抗ウサギIgG(GE Healthcare)とともに60分振盪し、Western Lightning kit(Perkin Elmer, MA)を用いて可視化および現像を行った。
〔2.結果〕
(CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性のT細胞の定量的プロテオーム分析)
スクリーニングの概略的な全体図は、図1に示されている。HTLV−1に感染したT細胞に発現している治療に有効な標的を同定するために、6人の非感染健常者、5人の無症候性キャリア、9人のHAM/TSP患者、および9人のATL患者由来のCD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性集団のPBMCを、フローサイトメトリーによって単離した(図2)。4つの臨床群のCD3陽性、CD4陽性のT細胞におけるCD25陽性およびCCR4陽性細胞の平均化した割合は、それぞれ6.48±2.46%の、13.17±13.06%の、20.55±10.73%の、および55.83±22.40%のであった。これは、ウイルスを保有している細胞による占有率が、病態の進行にともなって大きく変化したことを示唆している。この事実は、定量的な標的の精密な発見にとって、病原性細胞の濃縮の重要性を強く支持していた。
フローサイトメーターを用いて29検体から単離したCD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性細胞を、トリプシン消化し、それぞれLS/MS/MS解析に供した。Expressionist上での解析の結果、68,454個のピークが検出された。さらに、これらについて同一のイオン由来の同位体をまとめるクラスタリング作業を行った結果、37,143個の同一のイオン由来の同位体集団、すなわち同位体クラスターを検出した。トリプシンペプチドはエレクトロスプレーイオン化質量分析において2価以上の多価イオンとして検出されるため、1価のイオンはバイオマーカーおよび治療標的の探索に供する対象ではない。この観点から、非ペプチドに対応する1価の23,079クラスターを除去し、14,064クラスターを、ペプチド由来クラスター(以下、ペプチドと記載)として以下の統計解析に供した。
(統計学的手法を用いたATLに対する治療標的の探索)
ATL群において特異的に変動しているタンパク質群の効率的なスクリーニングを行うために、2段階に分けた統計学的な抽出手法を実施した。第1段階として、4臨床群のうちの2群間において、有意差があるペプチドを抽出するために、4群クラスカルウォリス検定を行った(p<0.01)。この結果として1,170ペプチドが抽出された。
第2段階のスクリーニングとして、Expressionist AnalystモジュールにおいてSupport Vector Machine-Recursive Feature Elimination (SVM-RFE)アルゴリズムを用いた、治療標的の探索を行った。具体的には、当該探索は、全14,064ペプチドから1つずつペプチドを除いてゆき、それらを使いてSVMによる予測モデルを作成して、leave-one-out交差検定による誤検出率に基づいて、疾患の識別に最も不要なペプチドを除いていく手法である。この過程を繰り返し行うことによって、最も誤検出率の低いペプチドの組合せを選定することが可能である。この過程の結果として、91のペプチドの組合せが、leave-one-out交差検定において、最も低い誤分類率(7.78%)を示した(図3Aおよび図3B)。これらの91ペプチドの定量情報に基づく主成分分析(PCA)を行って、主要な3成分を抜き出し、3Dプロットを作成した(図3C)。この解析によって、4群が分かれていることは視覚的に明らかに認識可能であり、91ペプチドは、実際に検体が属する臨床群に分類する分類力が極めて高いことが分かる。このことは、選別した91ペプチドが疾患特異的に変動している因子であることを裏付けており、有力な治療標的を含んでいると言える。
2D−LC/MS/MSを用いて構築した6,279タンパク質由来のペプチドによって構成されている同定データベースに基づき(方法の項目を参照のこと)、表1に列挙されているように、91の候補ペプチドのうち17タンパク質由来の19ペプチドの同定に成功した。また、19ペプチドに対する質量分析から得られた定量情報は、箱髭図として図4に示されている。
(Calpain-2の活性の回復によって誘導されるATL細胞の細胞死)
ATLの治療標的として同定されたペプチド群のうち、Calpain-2およびα2-spectrinは、細胞死に関連する多くの報告がなされている酵素と基質の関係にある。27検体の質量分析から得られた定量情報の相関を評価したところ、2つのペプチドは負の相関を示した(R=0.395、図5A)。これらの細胞死に関連する酵素と基質の関係がATLにおいて重要であり、治療標的になり得るかを検討するために、まず、2つのATL細胞株であるSO−4およびKOBにおいて、活性型Calpain-2(Δ19CAN2)を過剰発現させた。MTT解析の結果、形質移入の36時間後に、細胞増殖の著しい阻害(図5Bおよび図5C)が検出され、sub−G1期に移行している細胞の増加が観察された(図5Dおよび図5E)。この増殖阻害活性はJurkat細胞では観察されなかった(図示せず)。また、活性型Calpain-2の過剰発現は、タンパク質レベルでα2-spectrinの発現低下を誘導した(図5F)。一方で、siSPTAN1を用いたα2-spectrinの発現低下はATL細胞における細胞増殖に影響を与えなかった(図示せず)。以上のことから、ATL細胞においてCalpain-2活性は、ATLの発症または進行に重要な役割を果たしている有望な治療標的であることが裏付けられた。
本発明は、上述した各実施形態および実施例に限定されず、特許請求の範囲に示されている範囲において種々の変更が可能である。よって、本発明の技術的範囲には、異なる実施形態および実施例のそれぞれに開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる種々の形態が含まれる。また、本明細書に挙げられている参考文献に記載の内容は全て、参照によって本明細書に援用される。
本発明によれば、HTLV−I関連疾患の診断が可能である。よって、本発明は、診断医療分野および保健医学分野に広く利用可能である。

Claims (14)

  1. 以下の1.〜17.のいずれか1つのヒトタンパク質の全長または当該ヒトタンパク質に由来する部分である、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV−I)関連疾患検出用ポリペプチド。
    1.Eosinophil lysophospholipase;
    2.10 kDa heat shock protein, mitochondrial;
    3.Bone marrow proteoglycan;
    4.Moesin;
    5.Myeloid cell nuclear differentiation antigen;
    6.Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;
    7.Parathymosin;
    8.Triosephosphate isomerase;
    9.Heat shock 70 kDa protein 1A/1B;
    10.T-cell differentiation antigen CD6;
    11.Annexin A1;
    12.Annexin A6;
    13.Spectrin alpha chain, brain;
    14.HLA class II histocompatibility antigen, DRB1-1, 4, 10, 11, 13, 15, 16 beta chain;
    15.Calpain-2 catalytic subunit;
    16.Signal transducer and activator of transcription 1-alpha/beta;
    17.Platelet basic protein。
  2. 配列番号1〜19のいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含ふくんでおり、上記ヒトタンパク質に由来する部分である、請求項1に記載のヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチド。
  3. 生体から採取した試料に含まれている、請求項1または2に記載のヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを検出または測定する工程を包含している、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患を検出する方法。
  4. 上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患は、HTLV−I関連脊髄症(HAM/TSP)または成人T細胞白血病(ATL)である、請求項3に記載の方法。
  5. 検出または測定する上記工程の結果に基づいて、上記試料が採取された上記生体が、HAM/TSPの患者、ATLの患者、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患を発症していないヒトTリンパ球向性ウイルスI型の感染者、またはヒトTリンパ球向性ウイルスI型の非感染者であることを識別する工程をさらに包含している、請求項3または4に記載の方法。
  6. 検出または測定する上記工程は、異なる上記ヒトタンパク質に由来する2つ以上の上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを一度に検出または測定する工程である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 検出または測定する上記工程は、上記ヒトタンパク質に由来する部分としての上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを質量分析法によって検出または測定する工程である、請求項6に記載の方法。
  8. 上記試料は血液由来である、請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 上記試料は、CD3陽性、CD4陽性、CD25陽性およびCCR4陽性の単離されたT細胞である、請求項3〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患の患者に対する処置の効果を評価する方法であって、
    処置を施す前に生体から採取した試料A、および処置を施した後に生体から採取した試料Bに含まれている、請求項1または2に記載のヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドを検出または測定する第1の工程と、
    検出または測定した上記ヒトTリンパ球向性ウイルスI型関連疾患検出用ポリペプチドについて、上記試料Aおよび試料Bの間において上記第1の工程における結果を比較する第2の工程とを包含している、方法。
  11. 成人T細胞白血病(ATL)を処置するための化合物の候補物質をスクリーニングする方法であって、
    Calpain-2遺伝子を発現している細胞を試験物質と接触させる工程と、
    接触させる上記工程の後に、Calpain-2遺伝子の発現量の変化またはCalpain-2の活性の変化を評価する工程とを包含している、方法。
  12. 10 kDa heat shock protein, mitochondrial;Moesin;Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;Parathymosin Spectrin alpha chain, brain;またはCalpain-2の成人T細胞白血病(ATL)の治療標的としての利用。
  13. Annexin A1、またはSignal transducer and activator of transcription 1-alpha/betaのHTLV−I関連脊髄症(HAM/TSP)の治療標的としての利用。
  14. 以下の1.〜17.のいずれか1つのヒトタンパク質の全長または当該ヒトタンパク質に由来する部分であるポリペプチドと結合する抗体を含んでいる、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV−I)関連疾患検査用試薬またはキット。
    1.Eosinophil lysophospholipase;
    2.10 kDa heat shock protein, mitochondrial;
    3.Bone marrow proteoglycan;
    4.Moesin;
    5.Myeloid cell nuclear differentiation antigen;
    6.Serine hydroxymethyltransferase, mitochondrial;
    7.Parathymosin;
    8.Triosephosphate isomerase;
    9.Heat shock 70 kDa protein 1A/1B;
    10.T-cell differentiation antigen CD6;
    11.Annexin A1;
    12.Annexin A6;
    13.Spectrin alpha chain, brain;
    14.HLA class II histocompatibility antigen, DRB1-1, 4, 10, 11, 13, 15, 16 beta chain;
    15.Calpain-2 catalytic subunit;
    16.Signal transducer and activator of transcription 1-alpha/beta;
    17.Platelet basic protein。
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