JP2014046300A - 膜による溶液の脱水法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜透過蒸気から積極的に熱を有効回収し、さらに膜未透過蒸気から積極的に熱を有効回収し、該回収熱を供給原液の加熱に使用することで、省エネルギー性に優れた高効率な溶液からの脱水法を提供する。
【解決手段】分離膜を有する膜モジュール5を用いて水溶液から水分を除去する方法において、前記水溶液を加熱して得た加熱水溶液または加熱蒸気を前記分離膜の1次側から該分離膜に供給する加熱水溶液または加熱蒸気供給工程、前記分離膜の2次側を気体でスウィープして前記分離膜からの透過物を蒸気として回収する透過物回収工程、前記回収された膜透過蒸気から熱を回収する熱回収工程、及び、膜モジュールから排出される膜未透過蒸気から熱を回収する熱回収工程を少なくとも含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、分離膜を有する膜モジュールを用いて、省エネルギー的に水溶液の脱水を行い、有機化合物などの溶質を効率的に回収する方法及びその方法で使用するシステムに関する。
有機化合物などの溶質と水媒体の 混合物は沸点の差を利用して蒸留法により分離されるのが一般的であるが、蒸発・凝縮を繰り返すことで分離する蒸留法は本質的にエネルギー消費が大きい。特に共 沸点が存在する混合物系や沸点差の小さい混合物系では非常に大きなエネルギーを消費する。そこで、省エネルギー的分離法への転換が模索されている。
例えば、発酵エタノールから無水エタノールを製造する場合、もろみ蒸留塔とそれに続く濃縮蒸留塔で90wt%程度の含水エタノールまで濃縮し、最終工程としてシクロヘキサン等を添加した共沸蒸留法で無水エタノールを得ていたが、現在多くの場合その最終工程に圧力スイング吸着法(以下、PSA吸着法という)を採用したハイブリッドプロセスで省エネルギー性の向上が図られている。
最近では膜分離法がPSA吸着法よりもさらに省エネルギーになると評価され、膜 分離法への転換が検討されている(非特許文献1)。そして蒸留技術と膜分離技術を併用するハイブリッドプロセスよりも将来的には濃縮・脱水の全工程を膜分離法だけで行う方がさらに省エネルギーであると試算されている(非特許文献2)。
例えば、沸点差の小さい酢酸−水混合物の 蒸留分離もエネルギー多消費プロセスであり、50wt%の酢酸を99wt%に濃縮して回収する場合、単純な蒸留法では回収酢酸1kg当たり13.7MJ必要とする(所要エネルギー原単位:13.7MJ
kg-1)が、水選択透過膜を用いた膜分離法で分離した場合は約85%のエネルギー節減が可能と試算されている(非特許文献3)。
近年、これら分野に適用が試みられている膜分離法は、具体的には浸透気化法あるいは蒸気透過法である。浸透気化法は、通常、膜の1次側に原料を液体で供給し、2次側を真空引きすることで透過物を蒸気として回収する方法である。蒸気透過法は原料を 蒸気で膜へ供給し透過物も蒸気で回収する気体分離膜法であり、気体で膜へ供給すると透過物も気体で回収する。
気体分離膜法は各成分の膜間分圧差を透過の推進力とするが、浸透気化法も操作温度での液体成分の飽和蒸気圧と活量係数およびモル分率の積、いわゆる1次側液の蒸気分圧と2次側透過物の蒸気分圧との差、即ち膜間の分圧差を透過の推進力とする。そして物質による 透過速度の違いにより分離が達成されるが、有機化合物などの溶質濃縮への膜分離法の適用は、分子ふるい的透過性を示す無機の超微細孔多孔膜が開発されて本格的な動きとなっている。A型ゼオライト膜を用いた含水エタノールの脱水が浸透気化法あるいは蒸気透過法で実用化が進んでおり、また、シリカ膜や炭素膜そして種々のゼオライト膜など分子ふるい透過能を示す超微細孔多孔膜の開発研究とともに、膜による有機化合物分離プロセスの省エネルギー化の開発研究が行われている。
例えば、特許文献1では、蒸留塔の塔頂部に有機液体混合物を供給し、ここで発生した混合蒸気を気体分離膜モジュールに加圧して供給し、高沸点成分が高含有の膜透過蒸気と低沸点成分の膜非透過蒸気に分け、膜透過蒸気は蒸留塔中間部に導入し、低沸点成分は塔頂へ高沸点成分は塔底へ分離し塔底から缶出液として取り出す一方で、膜非透過蒸気はリボイラに導入し凝縮させて液体として取り出し、その凝縮熱を塔底液の加熱に使用することで、リボイラ用熱を外部から投入する必要がない分離プロセスを考案している。
この他にも、膜の非透過蒸気の有する熱を回収して 有効利用する膜分離技術と蒸留技術のハイブリッドプロセスは、例えば、アルコールとそのエステルを含む混合液からのアルコール分離法(特許文献2)、カルボン酸水溶液からのカルボン酸の回収方法(特許文献3)に開示され公知となっている。
加熱流体からの膜による蒸気透過 分離が省エネルギーである大きな理由は、透過側の圧力が膜の2次側透過ラインを冷却水で冷やすだけで達成できる数kPa程度の真空度でも運転でき、運転立ち上げ時以外は真空ポンプを作動させる必要がない点にある( 特許文献2、3、非特許文献2)。
特開平7−227517号公報 特開2006−30762号公報 特開2006−30763号公報 特開2010−269229号公報
分離技術、38巻、72(2008)、中根 尭、京谷知裕、斉藤準二、榊 啓二、 化学工学論文集、36巻,486 (2010)、岡部和弘、湯塩泰久、細谷俊史、金澤進一、柏原秀樹、中井龍資、 ペトロテック、33巻、402(2010)、松方正彦、
これらプロセスは膜分離法における高圧側非透過蒸気の持つ熱の回収利用により一段と省エネルギー化が達成されたが、低圧側透過蒸気の持つエネルギーを積極的に回収する対策は不十分である。その主な理由は2つ考えられる。1つ目は膜分離法に供給する混合物蒸気は非 透過成分が高濃度で含まれている場合には、透過蒸気の流量は比較的少なく、従って透過蒸気から回収できる熱量も少ないこと。2つ目は、膜分離法は高圧側/低圧側の圧力の比が大きいほど分離性能が向上するために、蒸気の膜分離では低圧側を真空排気する事が多く、減圧下の透過蒸気から熱エネルギーを回収するのは非効率的であること。
上記1つ目の理由には膜の利用制限も強く関連している。引用した文献のほとんどが膜の透過成分が水蒸気の場合を想定しているが、従来のゼオライト膜やシリカの膜は水および高濃度の水含有混合液に耐性がないために、水濃度の低い適用対象を選んでいた。
そこで本発明の課題は、膜透過蒸気等の膜 透過流から積極的に熱を有効回収することにあり、とくに該回収熱を供給原液の加熱に使用することで、省エネルギー性に優れた高効率な溶液からの脱水法、及び該 溶液からの脱水法に使用するシステムを提供することにある。さらに、膜非透過流だけでなく、該膜非透過流および膜透過流の両方から積極的に熱を有効回収し、供給原液の加熱に使用することで、省エネルギー性に優れた高効率な溶液からの脱水法、及び該溶液からの脱水法に使用するシステムを提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決するべく、幾多の実験と工夫を重ねた結果、分離膜の2次側を気体でスウィープして透過物を蒸気で回収し、当該膜透過蒸気から回収される熱を利用すると省エネルギー的となり、さらに、前記分離膜の未透過物蒸気から回収される熱を原料液体の加熱に利用すると省エネルギー的となり、上記課題を解決することができた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
請求項1の発明は、分離膜を有する膜モジュールを用いて水溶液から水分を除去する方法において、前記水溶液を加熱して得た加熱水溶液または加熱蒸気を前記 分離膜の1次側から該分離膜に供給する加熱水溶液または加熱蒸気供給工程、前記分離膜の2次側を気体でスウィープして前記分離膜からの透過物を蒸気として回収する透過物回収工程、及び前記膜モジュールから排出される膜透過蒸気から熱を回収する熱回収工程を少なくとも含むことを特徴とする分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法である。
請求項2の発明は、前記請求項1の発明において、分離膜の2次側を加熱気体でスウィープすることを特徴とする。なお、膜の2次側をスウィープする気体を加熱するのは、主に透過物が蒸気で存在できる濃度範囲を広げ、膜モジュール内で凝縮液となることなく蒸気として取り出し回収するためである。そうすることで、膜モジュールから出てくる膜非透過 流体からの熱回収はもちろんのこと膜透過蒸気からも効率よく熱が回収でき、原料液体の加熱用として利用できる。
請求項3の発明は、前記請求項1又は2の発明において、さらに、膜モジュールから排出される膜未透過蒸気から熱を回収する熱回収工程含むことを特徴とする。
請求項4の発明は、前記請求項1〜3のいずれかの発明において、熱回収工程で回収された熱を、水溶液の加熱に 利用することを特徴とする。この発明は、請求項1又は2の分離膜からの透過物蒸気、および請求項3の膜モジュールから排出される膜未透過蒸気のいずれか、あるいは両方を、前記水溶液と熱交換処理することを特徴とする発明でもある。
請求項5の発明、請求項6の発明、請求項7の発明は、それぞれ、請求項1〜4のいずれかの発明において、分離膜が、炭素膜、シリカ膜、ゼオライト膜から選ばれる一つの膜であり、スウィープする気体が、空気、窒素、アルゴン、ヘリウムから選ばれる少なくとも1種あるいは2種以上であり、水溶液の溶質が有機化合物である発明である。
請求項8の発明は、分離膜を有する膜モジュールを備える水溶液から水分を除去するシステムにおいて、前記水溶液を加熱して加熱水溶液または加熱蒸気を得る手段、前記加熱水溶 液または加熱蒸気を前記分離膜の1次側から該分離膜に供給する加熱水溶液または加熱蒸気供給手段、前記分離膜の2次側を、スウィープ用気体を用いてスウィープする手段、前記分離膜からの透過物を蒸気として回収する手段、及び前記回収された透過物蒸気から熱を回収する手段を少なくとも備えることを特徴とする水溶液から水分を除去するシステムの発明である。
請求項9の発明は、前記請求項8の発明において、さらに、膜モジュールから排出される膜未透過蒸気から熱を回収する手段を備えることを特徴とする。
請求項10の発明は、前記請求項8又は9の発明において、さらに、スウィープ用気体を加熱する手段を備えることを特徴とする。請求項11の発明は、前記請求項8〜10のいずれかの発明において、熱を回収する手段が熱交換器である発明である。
請求項12の発明は、請求項7記載の分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法を用いることを特徴とする高濃度な有機物水溶液の製造方法の発明である。ここで、高濃度とは、水分を除去する前の水溶液よりも濃度が高いということを意味する。また、高濃度な有機物水溶液とは、有機物を溶質とする水溶液であって、有機物濃度が水溶液全体の90質量%以上である水溶液を意味する。また、有機物濃度が水溶液全体の95質量%以上である水溶液でもよく、有機物濃度が水溶液全体の98質量%以上である水溶液でもよい。
請求項13の発明は、請求項12の発明において、水分を除去する水溶液に含まれる溶質が、含酸素原子有機化合物であることを特徴とする。
本発明で用いられる分離膜は有機化合物など溶質と水の混合物から優先的に水を蒸気として透過する膜であって、本発明の所期の目的を達成できる分離膜であれば特に限定するものではない。例えば、高分子膜としては、水蒸気透過性が高いポリイミド膜、ポリアミド膜、ポリビニルアルコール膜等の適用が考えられるが、耐熱性や耐溶質性の観点から無機膜の方がより適しており、分子ふるい型透過を示し、かつ蒸気透過法や浸透気化法で理想分離係数が50以上である水蒸気の選択透過性能に優れている炭素膜やシリカ膜そしてゼオライト膜などが挙げられる。さらに、分子ふるい型透過を示し、かつ蒸気透過法や浸透気化法で理想分離係数が70以上、より好ましくは100以上である水蒸気の選択透過性能に優れている炭素膜やシリカ膜そしてゼオライト膜などが挙げられる。前記膜の中では、耐溶質性および耐水性に優れ水の濃度が高い原液への適用でも問題が無い炭素膜が最も適しており、例えば特許文献4に開示されている方法で作製した中空糸炭素膜を用いることができる。
分離膜の形態は平膜、管状膜、中空糸膜等のいずれの形状でもよい。
膜モジュールはすでに知られており、本発明で使用する膜モジュールは上記分離膜を有し、本発明の所期の目的を達成できる膜モジュールであれば特に制限されない。膜モジュールの形態も平板型、スパイラル型、プリーツ型、管状型、中空糸型などいずれの形態でも用いることができる。
本発明でいう水溶液は、その種類を 限定するものではなく種々の溶質を含む溶液をいう。例えばアルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、カルボン酸類等の含酸素原子有機化合物の水溶液さらには塩酸、硫酸などの無機酸の水溶液などが挙げられる。水溶液の濃度も特に制限されない、例えばアルコール溶液では数重量%のアルコール水溶液から90%以上の濃度を有するアルコール溶液を例示できる。
本発明では、前記水溶液を膜モジュールへ供給する前に加熱することが一つの特徴である。前記水溶液を加熱するのは、膜の耐熱温度範囲内でできるだけ高い蒸気圧を持つ液体あるいは高い圧力を持つ蒸気として供給することで実質な透過推進力を高めるためである。また、透過物が蒸気で存在できる濃度範囲を広げ、膜モジュール内で凝縮液となることを抑制することでもある。
なお、分離膜からの透過物を蒸気として回収し、当該 回収蒸気から回収した熱を用いて上記水溶液を加熱することが好ましい。具体的には、膜モジュールから排出される膜未透過蒸気から回収した熱を用いて上記水溶液を加熱することが好ましい。
前記水溶液を加熱する手段はとくに制限されない。
上記水溶液を加熱する手段により 水溶液をすべて蒸気として膜モジュールに供給することができる。また、加熱水溶液として供給することができる。このときは、いわゆる浸透気化法を採用することになる。
本発明では、前記分離膜の2次側を気体でスウィープすることが、上記本発明の特徴と異なる一つの大きな特徴である。スウィーブさせる気体を2次側に導入し、透過流体からの熱回収を高めることができる。
スウィープさせる気体(以下、スウィープガスということがある)は分離対象物や膜素材に対して不活性のものであればどのようなものでも良く、例えば、空気や窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを挙げることができる。それらの中では、空気の使用が最も手軽で経済的である。
本発明では、前記分離膜の2次側を加熱気体でスウィープすることが好ましい。加熱スウィーブガスを2次側に導入すると、分離膜からの透過流体、あるいは分離膜内の透過流体の相変化を抑制でき、透過流体の熱 損失を抑え、透過流体からの熱回収を高めることができる。
スウィープガスは約5〜20kPaゲージの圧力で供給し、該スウィーブガスを加熱し、例えば50−150℃の温度範囲のスウィープガスとすることが望ましいが、さらに80−150℃の温度範囲のスウィープガスとすることが望ましく、100−140℃の温度範囲のスウィープガスとすることがより望ましい。用いるスウィープガスの温度や圧力等のスウィーブ条件は、用いるスウィープガスの種類、水溶液の種類やその供給条件等により変動するのであって、前記数値に限定されるものではない。
スウィープガスを膜の2次側に導入する際のスウィープガスの導入条件は、スウィープガスの種類、水溶液の種類や濃度等に応じて変動するのであって、一概に規定することができないから、最適な条件を設定して、適用すればよい。
前記分離膜からの透過物を蒸気として回収する方法やその手段は、水溶液の種類や濃度、その供給条件、使用する分離膜等に応じて変動するので、一概に規定することができない。前記膜モジュールから排出される未透過物を蒸気として回収する方法やその手段も同様であり、一概に規定することができない。
上記回収された蒸気から熱を回収することも本発明の特長の一つである。また、回収した熱を、上記水溶液の加熱用とすることも本発明の特長の一つである。具体的には、上記回収された蒸気を熱交換器内で水溶液と熱交換する方法、手段を例示できるが、この手段、方法に限定されない。
以上説明したように、本発明の膜による溶液の脱水法は、 スウィープガスを使用する事で透過側流体からの熱回収を積極的に行い、さらに、膜分離法の非透過流体からの熱回収を積極的に行い、膜分離法の省エネルギー性をさらに 向上させることができる。とくに、加熱スウィープガスを使用する事で透過側流体からの熱回収を積極的に行い、さらに、膜分離法の非透過流体からの熱回収を積極的に行い、膜分離法の省エネルギー性をさらに向上させることに成功しており、有機化合物など溶質を回収する目的にエネルギー効率が極めて高い分離方法を提供するものである。より具体的には、本発明の膜による溶液の脱水法は、加熱スウィープガスを使用する事により透過蒸気の凝縮をできるだけ抑え、当該熱損失が少ない透過蒸気から熱回収するうえに、さらに、膜分離法の非透過流体からの熱回収を積極的に行い、膜分離法の省エネルギー性をさらに向上させるものである。本発明の膜による溶液の脱水法は極めて優れた効果をもたらすのであって、例えば、スウィープガスを使用しない脱水法と比較して、約63%程度省エネルギー性な脱水法である。
図1は本発明を実施するための膜による脱水プロセスフローを示す図である。 図2は本発明の実施例1(a)で使用した蒸気分離実験システムの概要を示す図である。 図3は比較例1を実施するための膜による脱水プロセスフローを示す図である。
本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態の一つであり、有機化合物などの溶質と水の混合物から膜を用いて脱水するシステムおよびプロセスの概要を表している。
図中、5は分離膜を容器内に装着した膜モジュールであり、膜の供給側から透過側に向かって矢印方向に透過物が移動するイメージを表している。膜モジュール5の供給側へつながるラインには、1原料供給口、2送液ポンプ、3および3’の熱交換器、4加熱器が設けられ、膜モジュールの後に6の背圧弁が設けられている。他方、膜モジュール5の透過側へつながるラインには、8ガス吸入口、9ブロアー、10加熱器が設けられ、膜モジュール5の後に11の気液分離器が設けられている。
雰囲気中への熱損失を最小限にするために、1次側供給ラインは送液ポンプ2以降の背圧弁6までの機器およびラインを、2次側スウィープラインはブロアー9以降の熱交換器3’までの機器およびラインを断熱材(図示されていない)で覆い、保温する。
原料液体は供給口1から送液ポンプ2により吸引され、3および3’の熱交換器を介して予熱されて加熱器4に圧送される。ここで蒸気あるいは加熱液体となり膜モジュール5に供給される。前記供給流中の水分は膜モジュール5内の水選択透過性の膜に接触して透過側に移動し、他方で膜を透過せず脱水された溶質の流体は膜モジュール5を出た後に熱交換器3で原料液体と熱交換を行い冷却され、背圧弁6を経て大気圧下の液体として回収される。
スウィープガスはガス吸入口8からブロワー9で吸い込まれ加熱器10で供給流体と同程度の温度まで加熱された後に膜モジュール5の透過側をスウィープして水蒸気透過を促進する。膜モジュール5からの水蒸気を含んだスウィープガスが排出され、熱交換器3’で原料液体と熱交換を行い冷却されて水蒸気は液化する。そして気液分離器11に導かれ13の透過成分出口から凝縮水が回収されると同時にガス出口12からスウィープガスが排出される。空気以外のガスをスウィープガスに使用している場合など、経済的メリットのため再利用する場合はガス出口12とガス吸入口8を連結して循環するラインの構成にする事もできる。
供給流体の温度は加熱器4で任意の温度に調整する事ができる。高温の方が水蒸気の透過推進力が大きくなるので好ましいが、膜の耐熱性を考慮して温度を設定する。温度を溶液の沸点以上に設定し蒸気として供給する場合は背圧弁6で膜モジュール5への供給圧力を調整する。その場合の圧力値は純溶質の蒸気圧より低い値に設定し、膜モジュール内での凝縮を避ける方が望ましい。
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1(a)
特許文献4の方法を参考にして、外径305ミクロンの中空糸炭素膜を作製し、有効長約10cm、本数8本を有する膜エレメント(膜面積:約7.7cm2)3個を作製した。当該膜エレメントの膜性能を図2に示す蒸気分離実験システムで評価した。
前記膜エレメント6を有するミニモジュール5をエアーオーブン4の中に設置した。原料液だめ1から、約50wt%(23.1mol%)の酢酸水溶液を、微量送液ポンプ2により流量2ml min-1(1.23×10-3mol s-1)で加熱器3へ供給し、全量を蒸発させた。該蒸発物を、130℃にコントロールされたエアーオーブン4の中に設置したミニモジュール5へ蒸気として供給した。この時の圧力は背圧調整弁8によって140kPaに保持した。供給蒸気を膜エレメント6と接触させ、主に水蒸気成分を透過させ、膜非透過蒸気は背圧調整弁8を通して冷却器9で5℃以下に冷やし、回収液だめ10に回収した。透過側は真空ポンプ12で約0.1kPaの圧力まで引き、透過蒸気を透過側配管経路に設けた液体窒素トラップ11で一定のインターバル毎に凝固体として回収した。
前記凝固体は融解した後に重量測定およびガスクロマトグラフィーでの濃度分析を行った。回収液だめ10の非透過蒸気凝縮液も同様にガスクロマトグラフィーで濃度分析を行った。
実験開始後30分で定常状態に達したのでそれ以降の測定データを採用した。
データの解析には下記の透過速度式を用いた。式(1)は水蒸気、式(2)は酢酸蒸気についての透過速度式である。
y Op = PA A(phx−ply) (1)
(1-y)Op = PB A[ph(1-x)−pl(1-y)] (2)
ここで、Opは透過量(mol s-1)、PA,
Pは水および酢酸の蒸気透過率(mol m-2s-1Pa-1)、Aは膜面積(m2)、ph, pl
は膜の供給側および透過側の圧力(Pa)、x, yは膜の供給側および透過側の水のモル分率、(1-x), (1-y)が同様に酢酸のモル分率である。
濃度分析の結果、非透過蒸気の凝縮液の組成は原料液組成から水分濃度が約1mol%低い値となったがあまり変化しなかった。これはミニモジュールへの供給蒸気量が透過蒸気量に比して約77倍多いために、ミニモジュールの供給入口および未透過流出口の組成はほぼ同じと見なせる結果になったと考えられる。そこで計算に用いる膜の供給側蒸気のモル分率は、非透過蒸気凝縮液の組成を代表値とした。
表1に3つのサンプルについての測定結果をまとめ示した。表中のH2O透過率は式(1)のPAである。また、a*(=PA /P)は理想分離係数である。試作した中空糸炭素膜における水-酢酸系の130℃での蒸気分離性能は水蒸気透過率が約2×10-7
mol m-2s-1Pa-1で理想分離係数(α)が約200であった。
表1


膜面積 透過量 透過量 H2O透過率 x y α
cm 2 gmin -1 mols -1 molm- 2 s -1 Pa -1
膜エレメ
ント1 7.75 0.0184 1.71×10-5 2.04×10-7 0.7695 0.9983 176
膜エレメ
ント2 7.68 0.0206 1.91×10-5 2.30×10-7 0.7707 0.9985 198
膜エレメ
ント3 7.72 0.0178 1.65×10 -5 1.98×10 -7 0.7704 0.9987 229
供給圧力140kPa、温度130℃、x供給側水モル分率、y透過側水モル分率
実施例1(b)
実施例1(a)で決定した中空糸炭素膜の膜性能値を用いて、図1に示す脱水プロセスを構成した場合の脱水性能と所要エネルギーをシミュレーションで算出した。シミュレーションでは汎用プロセスシミュレーター(ソフト名:CHEMCAD、米国Chemstations社)を用い(当該ソフトにはガス分離膜モジュールの計算プログラムが備わっていない)、ガス分離膜モジュールの計算プログラムとして、式(1)と(2)の微分式を基に向流型ガス分離膜モジュール設計プログラムを作成し、それらを連携して使用した。
下記計算値は、それぞれの組成と流量,温度,圧力をインプットすることで,(膜モジュール前後の組成と流量変化は向流計算から出す)CHEMCADで算出した。
計算で想定した条件は以下のようである。25℃の50wt%水−50wt%酢酸の溶液を1 mol s-1の流量で蒸発器4に送り、130℃で全量を気化して膜モジュール5に圧力142kPaで供給することとした。圧力は背圧調整弁6で142kPaに保持され、また温度に関しても保温することで蒸発器4から背圧調整弁6までを130℃一定とした。膜モジュール5の透過側に関してはスウィープガス吸入口から25℃、大気圧(101kPa)の空気を吸引し、ブロアー9で加熱器10を経由して圧送し膜の透過側をスウィープすることとし、加熱器10を出た空気は温度130℃、圧力111kPaとした。透過側ラインも加熱器10から気液分離器11の直前まで保温され雰囲気中への熱損失は無視できるとした。また消費電力は熱電変換効率を0.374として熱で集計した。
脱水分離の達成目標として非透過成分出口7で酢酸の回収率が95%以上、その濃度を99wt%とした。25℃の50wt%水−50wt%酢酸の溶液を1 mol s-1の流量で蒸発器4に送り、130℃で全量を気化する場合、45.2kJs-1 の動力(仕事率)が必要であった。ただ、スウィープガスとして25℃での相対湿度が81%(露点21.4℃)の空気を用い、流量1mol s-1の場合、膜モジュール5から出てくる流体が持っている熱を3,3’の熱交換器で回収できるので,実施例1では加熱器4で必要な値が4.93に低減できた。目標を達成する膜面積は95.5m2であり、単位時間当たりの動力(仕事率)を単位時間当たりの酢酸の回収量で割った値、すなわち、回収酢酸1kg当たりの所要エネルギー(所要エネルギー原単位)は0.625 MJ kg-1であった。その他の諸元も一緒に表2にまとめた。ただし、送液ポンプ2の動力は他に比べて無視小であったので省いた。
なお、熱交換器(3)及び熱交換器(3‘)における回収動力(kJs-1)はそれぞれ8.49及び31.78であった。
また、ブロアー9の動力(仕事率)は、圧縮機の動力計算式(化学工学便覧や機械工学便覧に記載)で計算した。計算結果(電力)を熱電変換効率で割って熱に変換して、0.63(kJs-1)の値を得た。加熱器10の動力(仕事率)は、CHEMCADを使用して計算した。流量1mol s-1であって相対湿度が81%(露点21.4℃)の空気を25℃から130℃に昇温するために、2.77(kJs-1)必要であると算出された。
実施例2
スウィープガスとして25℃での相対湿度が81%(露点21.4℃)の空気を流量1.2mol s-1で使用した。それ以外の諸条件は実施例1(b)と同じとした。この場合必要膜面積は91.5m2と実施例1(b)に比較して約4%減少したが、所要エネルギー原単位は0.675 MJ kg-1となり約8%増大した。スウィープガス流量を増大すると必要膜面積は減少するが所要エネルギー原単位が増大する傾向が見られた。
なお、熱交換器(3)及び熱交換器(3‘)における回収動力(kJs-1)はそれぞれ8.50及び31.78であった。
実施例3
スウィープガスとして25℃での相対湿度が39%(露点10℃)の空気を流量1mol s-1で使用した。それ以外の諸条件は実施例1(b)と同じとした。この場合必要膜面積は89.1m2と実施例1(b)に比較して約7%減少した。所要エネルギー原単位は0.621 MJ kg-1となり約1%減少した。湿度の低いスウィープガスを使用することで必要膜面積を低減できる傾向があった。
なお、熱交換器(3)及び熱交換器(3‘)における回収動力(kJs-1)はそれぞれ8.51及び31.78であった。
比較例1
透過蒸気の抜き出しにスウィープガスを使わずに従来行われている減圧排気を行う脱水プロセスの構成を想定した(図3)。原料供給口1から、実施例1(b)と同じ原料を実施例1(b)と同じ条件下で蒸発器4に送る。ただし、熱交換器3’で透過蒸気を40℃に冷却液化することで膜の透過側を7.33kPaに保つ方法を採用したことが実施例1(b)と異なる。蒸発器4から排出された蒸気は、実施例1(b)と同じ条件下で膜モジュール5に供給され、膜未透過蒸気は実施例1(b)と同じ条件下で実施例非透過成分出口7に至り、排出する。
熱交換器3’では7.33kPaと低圧の蒸気ではあるがその凝縮熱で原料供給液の加温が行われるとした。凝縮液は気液分離器8の底部からバルブ11を経由して送液ポンプ2で透過成分抜き出し口10に排出されるとした。また、真空ポンプ9は運転立ち上げ時に一時的に作動させるだけで定常的には休止できる。そこで真空ポンプ9の動力は所要エネルギーの積算に加えないこととし、送液ポンプの動力もまた実施例と同じ理由で省いた。
実施例と同じ達成目標、即ち非透過成分出口7で酢酸の回収率が95%以上、その濃度を99wt%とした場合の必要膜面積が92.9m2その時の所要エネルギー原単位は、単位時間当たりの動力(仕事率)を単位時間当たりの酢酸の回収量で割った値、すなわち、1.89 MJ kg-1と算出された。
実施例1(b)〜3と比較して必要膜面積に大きな違いは見られないが、所要エネルギーは約3倍大きい結果となった。
なお、熱交換器(3)及び熱交換器(3‘)における回収動力(kJs-1)はそれぞれ8.45及び11.64であった。実施例1(b)〜3と比較して、熱交換器(3)では差はないが、熱交換器(3‘)では回収動力が大幅に低いことが分かった。
表2の1

Sweep空気 回収酢酸 動力(仕事率)
露点 流量 濃度 回収率 ブロアー9加熱器4加熱器10 合計
℃ mols- 1 wt.% % kJs -1
実施例1(b)21.4 1 99 97 0.63 4.93 2.77 8.33
実施例2 21.4 1.2 99 97 0.76 4.92 3.32 9
実施例3 10 1 99 97 0.63 4.91 2.77 8.31
比較例1 99 97 25.1 25.1

表2の2

所要エネルギー(仕事) 必要総面積
回収酢酸1kgあたり
MJkg -1 m 2
実施例1(b) 0.625 95.5
実施例2 0.675 91.5
実施例3 0.621 89.1
比較例1 1.89 92.9
本発明を以下のように記載することができる。
(1)分離膜を有する膜モジュールを備える膜分離システムを用いて水溶液から濃縮水溶液を得る方法において、前記水溶液を加熱して得た加熱水溶液または加熱蒸気を前記分離膜の1次側から該分離膜に供給する加熱水溶液または加熱蒸気供給工程、前記分離膜の2次側を加熱気体でスウィープして前記分離膜からの透過物を蒸気として回収する透過物回収工程、及び前記膜モジュールから排出される膜透過蒸気から熱を回収する熱回収工程を少なくとも含むことを特徴とする膜分離システムを用いて水溶液から濃縮水溶液を製造する方法。
(2)加熱水溶液または加熱蒸気が、溶質が有機化合物である水溶液を加熱して得た加熱水溶液または加熱蒸気である上記(1)の濃縮水溶液を製造する方法。
本発明は、分離膜を有する膜モジュールを用いて、省エネルギー的に水溶液の脱水を行うことができるので、有機化合物などの溶質を効率的に回収することができる。本発明では、高濃度水溶液から更に水を除くことを可能とするだけでなく,低濃度水溶液から水を除くこと、つまり濃縮することも可能とする。これを言い換えれば、本発明はあらゆる溶質濃度の水溶液から水を除くことができる方法を提供できたといえるのであり、濃度の低い水溶液から、より濃度の高い水溶液を製造する方法の発明を提供できたともいえる。
図1で
1 原料供給口
2 送液ポンプ
3 熱交換器
3’ 熱交換器
4 加湿器
5 膜モジュール
6 背圧調整弁
7 非透過成分出口
8 ガス吸引口
9 ブロアー
10 加湿器
11 気液分離器
12 ガス出口
13 透過成分出口
図2で
1 原料液だめ
2 微量送液ポンプ
3 加湿器
4 エアーオーブン
5 ミニモジュール
6 膜エレメント
7 圧力計
8 背圧調整弁
9 冷却器
10 回収液だめ
11 液体窒素トラップ
12 真空ポンプ
図3で
1 原料供給口
2 送液ポンプ
3 熱交換器
3’ 熱交換器
4 加湿器
5 膜モジュール
6 背圧調整弁
7 非透過成分出口
8 気液分離器
9 真空ポンプ
10 透過成分抜き出し口
11 バルブ




Claims (13)

  1. 分離膜を有する膜モジュールを用いて水溶液から水分を除去する方法において、前記水溶液を加熱して得た加熱水溶液または加熱蒸気を前記分離膜の1次側から該分離膜に供給する加熱水溶液または加熱蒸気供給工程、前記分離膜の2次側を気体でスウィープして前記分離膜からの透過物を蒸気として回収する透過物回収工程、及び前記回収された膜透過蒸気から熱を回収する熱回収工程を少なくとも含むことを特徴とする分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法。
  2. 分離膜の2次側をスウィープする気体を加熱気体とする請求項1に記載の分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法。
  3. さらに、膜モジュールから排出される膜未透過蒸気から熱を回収する熱回収工程含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法。
  4. 熱回収工程で回収された熱を、水溶液の加熱に利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法。
  5. 分離膜が、炭素膜、シリカ膜、ゼオライト膜から選ばれる一つの膜である請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法。
  6. スウィープする気体が、空気、窒素、アルゴン、ヘリウムから選ばれる少なくとも1種あるいは2種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法。
  7. 水溶液の溶質が有機化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法。
  8. 分離膜を有する膜モジュールを備える水溶液から水分を除去するシステムにおいて、前記水溶液を加熱して加熱水溶液または加熱蒸気を得る手段、前記加熱水溶液または加熱蒸気を前記分離膜の1次側から該分離膜に供給する加熱水溶液または加熱蒸気供給手段、前記分離膜の2次側を、スウィープ用気体を用いてスウィープする手段、前記分離膜からの透過物を蒸気として回収する手段、及び前記回収された透過物蒸気から熱を回収する手段を少なくとも備えることを特徴とする水溶液から水分を除去するシステム。
  9. さらに、膜モジュールから排出される膜未透過蒸気から熱を回収する手段を備えることを特徴とする請求項8記載の水溶液から水分を除去するシステム。
  10. さらに、スウィープ用気体を加熱する手段を備えることを特徴とする請求項8又は9記載の水溶液から水分を除去するシステム。
  11. 熱を回収する手段が熱交換器である請求項8〜10のいずれかに記載の水溶液から水分を除去するシステム。
  12. 請求項7記載の分離膜を用いて水溶液から水分を除去する方法を用いることを特徴とする高濃度な有機物水溶液の製造方法。
  13. 水分を除去する水溶液に含まれる溶質が、含酸素原子有機化合物であることを特徴とする請求項12記載の高濃度な有機物水溶液の製造方法。


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