JP2014037387A - 筋ジストロフィー治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ナンセンス変異を生ずる又は下流の塩基配列のフレームシフトを引き起こす変異をエクソン内に有するヒト筋ジストロフィーであって当該変異を有するエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるものに対する,経口投与が可能な低分子量化合物に基づく治療剤,特に,変異を有するエクソンのスキッピングを誘導し又は促進させることのできる治療剤の提供。
【解決手段】少なくとも1種のポリフェノールを含有することを特徴とする,ヒト筋ジストロフィー治療剤であって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ヒト筋ジストロフィー治療剤。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも1種のポリフェノールを含有することを特徴とする,ヒト筋ジストロフィー治療剤であって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ヒト筋ジストロフィー治療剤。
【選択図】なし
Description
本発明は,筋ジストロフィー治療剤に関し,より詳しくは,ヒトのジストロフィンmRNAのスプライシングにおいて,問題の変異を有するエクソンのスキッピングを誘導し又は促進させることに基く,ヒト筋ジストロフィー治療剤,及びヒト筋ジストロフィーの治療方法に関する。
筋ジストロフィーは,骨格筋系を弱体化させ,運動の障害を引き起こす一群の筋肉疾患である。筋ジストロフィーは,骨格筋に生ずる進行性の変化,すなわち弱力化,タンパク質の欠損,筋細胞及び筋組織の壊死によって特徴づけられる。それらのうち,最も頻度が高く且つ最も重大な疾患は,デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne Muscular Dystrophy: DMD)である。DMDは,劣勢のX染色体連鎖型の筋ジストロフィーであり,約3500人に1人の割合で男児が罹患する。
DMDの症状は,通常,5歳頃から現れる。両脚の近位及び骨盤の骨格筋の進行性の弱力化及び筋質量減少が最初に出現し,徐々に腕,首,その他の領域にまで拡大する。状態が進行するにつれ,筋組織の委縮,脂肪組織による置換が起こる。10歳までには歩行に装具を要とすることになり,殆どの患者は12歳までには車椅子に頼ることとなる。骨格筋の継続的変性のため,運動能力の喪失が起こり,麻痺に至る。全ての随意筋の他,心筋,呼吸筋も侵される結果,特別の延命措置を施さない限り,患者は,多くは心不全又は呼吸不全が原因で,20才代で死に至る。人工呼吸法で患者の生命予後は5〜10年程度延びるものの,根本的な治療方法は未だ確立されおらず,麻痺状態のまま病態の悪化を続ける患者及びその家族は,非常に過酷な状況に置かれ続けている。
DMDを引き起こすのは,ジストロフィン遺伝子中に生じた変異である。ジストロフィン遺伝子は,ヒトX染色体上に存し(遺伝子座Xp21),タンパク質であるジストロフィン(dystrophin)をコードしている。この棒状のタンパク質ジストロフィンは,細胞膜を貫通して筋繊維の細胞骨格を周囲の細胞外マトリックスに結合させているものであるタンパク質複合体の,必須の構成要素の1つである。DMD患者は,ジストロフィンを殆ど又は全く欠いている。
筋ジストロフィーの別の一形態にベッカー型筋ジストロフィー(Becker
Muscular Dystrophy:BMD)がある。BMDも,ジストロフィン遺伝子中に生じた変異によるが,DMDより遥かに軽症である。BMD患者では,ジストロフィンは,本来とはサイズが異なるものの,ジストロフィンタンパク質が生成されている。DMDと比べ,BMDの発症年齢は成人期と比較的遅く,また発症後に軽度の筋力低下は見られるものの,ほぼ正常な生存が可能である。
Muscular Dystrophy:BMD)がある。BMDも,ジストロフィン遺伝子中に生じた変異によるが,DMDより遥かに軽症である。BMD患者では,ジストロフィンは,本来とはサイズが異なるものの,ジストロフィンタンパク質が生成されている。DMDと比べ,BMDの発症年齢は成人期と比較的遅く,また発症後に軽度の筋力低下は見られるものの,ほぼ正常な生存が可能である。
ヒトのジストロフィン遺伝子は約2.3 Mbpあり,ヒトの遺伝子中で最も長い。このような巨大なサイズであるが,ジストロフィン遺伝子中でジストロフィンタンパク質をコードしている領域は,僅か14 kbに過ぎない。しかもそのコード領域は79ものエクソンに分かれて,遺伝子内に分散して存在している(非特許文献1)。ジストロフィン遺伝子の転写物である前駆体mRNAは,スプライシングを受けて14 kbの成熟mRNAとなる。更にこの遺伝子には,8種の異なるプロモーター領域が,やはり遺伝子内に分散して存在しており,それぞれが異なったmRNAを産生している(非特許文献2〜4)。これらのことから,ジストロフィン遺伝子及びその転写物は,非常に複雑な構成になっている。
DMDもBMDも,ジストロフィン遺伝子の変異により発症するが,上記のようにそれらの症状とその進行速度や重篤度は大きく異なっており,この相違は,読み枠ルール(reading frame rule)によって説明されている(非特許文献5)。すなわち,DMDでは,ジストロフィン遺伝子内の部分的な欠失によりジストロフィンmRNAにコードされるアミノ酸読み枠(リーディングフレーム)にずれが生じ(アウトフレーム:out-of-frame),その位置より下流のアミノ酸配列が全く変わってしまう上,結果的に早期にストップコドンが出現してタンパク質合成自体が途中で停止してしまう。これに対し,BMDでは,遺伝子に部分欠失が存在してもリーディングフレームが維持され(インフレーム:in-frame)て,本来のジストロフィンとは異なるものの,ジストロフィンの機能をほぼ備えたタンパク質が生成できる,というものである。DMDは,こうして,主として部分的欠失に起因するフレームシフトによるほか,コード領域のナンセンス変異によるタンパク質合成の停止によって生じていると考えられている。実際,患者の筋肉中のジストロフィンを調べると,DMDではジストロフィンが殆ど又は全く消失しているのに対し,BMDでは染色性を正常とは異にするジストロフィンが存在している。またDMD/BMD患者でジストロフィン遺伝子異常から計算されたリーディングフレームの型と患者の表現型とを比較すると,90%以上の患者でこのフレームシフト説が当てはまっている。
筋ジストロフィーに対する試験的治療法としては,筋芽細胞の移植や,プラスミド又はウイルスベクターを用いることによる機能的ジストロフィン遺伝子の導入等が試みられている(非特許文献6)。
多くのDMD患者において,ジストロフィン陽性筋繊維が全く見出されないわけではない(非特許文献7)。DMD患者に見られるジストロフィン陽性筋繊維は,エクソンスキッピング機構により生じることが提唱されており(非特許文献8),実際,mdxマウスの例で,主要なナンセンス変異を含有するエクソンがスキップされてリーディングフレームの維持されたジストロフィン遺伝子転写物が同定されている(非特許文献9)。
イントロンを含む遺伝子から転写された遺伝情報は,スプライシングによりイントロン配列が除去される等の修飾を受け,エクソン配列のみからなる成熟mRNAとなる。更に,この成熟mRNAがそのリーディングフレームに従って翻訳され,遺伝子にコードされた遺伝情報に忠実に従ったタンパク質の合成が可能となる。mRNA前駆体のスプライシング時には,mRNA前駆体の塩基配列のうちでイントロン配列とエクソン配列を正確に決定する機構がある。そのためにイントロン・エクソン境界部の配列は一定のルールで全ての遺伝子で保存されており,コンセンサス配列として知られている。
コンセンサス配列として,イントロンの5’末端のスプライスドナーサイトと呼ばれるエクソンからイントロンへまたがる部位,イントロンの3’末端のスプライスアクセプターサイトと呼ばれる部位,そして,ブランチングポイントと呼ばれる部位の,3カ所の配列が知られている。
これらのコンセンサス配列の中で,わずか1塩基の置換でも発生すると,スプライシングの異常を起こすことが各種の疾病で報告されているように(非特許文献10),コンセンサス配列は,スプライシングを進行させる鍵となっている。
前述のように,DMD患者は,ジストロフィンmRNAのリーディングフレームがずれてアウトフレームとなり早期にストップコドンを生じさせるような,或いは直接ナンセンス変異を生じさせるような,遺伝子異常を,エクソン中に有している。そのような変異を有するエクソンの野生型の塩基数が3の倍数である場合,それら変異を有するエクソンをスプライシング過程でスキップさせることができれば,読み枠がシフトしていた場合にはそれが回復され,またナンセンス変異を有していた場合にはそのエクソンごとナンセンス変異が除去されて,トランケート型mRNAが産生され,それが翻訳される。その結果,当該エクソンの除去後の塩基配列に対応するトランケート型ジストロフィンが産生されることとなる。そのようなトランケート型ジストロフィンは,除去されたエクソンに対応した部分のアミノ酸配列を欠くだけであり,通常,ジストロフィンの機能をある程度保持している。それまで殆ど又は全くジストロフィンを欠いていたDMD患者の体内において,筋細胞に,このようにしてトランケート型ジストロフィンを産生させることができれば,DMDからBMDへと,患者の病態の非常に大きな改善が期待できる筈である。
このような予測と,ジストロフィンmRNAのエクソン内の特定の塩基配列がスプライシングの進行に極めて重要であることの発見とに基づき,複数のタイプのDMD患者のジストロフィンmRNAのスプライシングにおいて,それぞれ特定のエクソンのスキッピングをそのような塩基配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって誘導し,前後のエクソンの直接のスプライシングを誘導して読み枠をインフレームに復帰させることによるDMD治療薬が報告されている(特許文献1〜3)。
幾つかのBMD患者で,ジストロフィン遺伝子上にナンセンス変異を有しているにも拘わらず,当該ナンセンス変異を含むエクソンがある程度スキッピングされてトランケートジストロフィンが産生されていることが報告されている(非特許文献11〜14)。このことは,DMD患者におけるジストロフィンmRNAのスプライシングに際して問題の変異を含むエクソンのスキッピングを人為的に誘導できれば,病型をBMD型からより軽いBMD型へと転換させて患者の症状を大幅に改善できる,という考えを強く支持している。また,同時に,自然にエキソンスキッピングをある程度起こしていることによってBMDの病態を示すものの,遺伝子レベルではナンセンス変異やフレームシフトを生ずる変異を有している患者の場合でも,変異のあるエクソンのスキッピングを促進させれば症状を一層軽くすることができることを示すものである。
このように,ジストロフィンmRNAのスプライシングにおける,変異を有するエキソンのスキッピングの誘導は,DMD患者を現在の極めて過酷な状況から解放できる画期的な治療方法となり得る。既に,上述のエクソンの特定配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドについては,一部のものが臨床研究段階にある。
しかしながら,アンチセンスオリゴヌクレオチドは経口投与できず,患者への投与は,注射によって定期的に繰り返しなされる必要がある。治療が生涯にわたると想定されることから,反復されるそのような注射は,患者にとって苦痛であり,また患者及びその家族に,依然大きな生活上の制約が残ることにもなる。
また,ヒトに注射できるアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤の製造と供給には,高額のコストがかかるのが避け難く,またそのような製剤による治療が生涯にわたることから,患者とその家族或いは医療財政にとって,負担要因となる。
このため,ジストロフィンmRNAのスプライシングにおいて,より低コストでの製造がし易い低分子量の化合物で,エクソンスキッピングの誘導に使用できるものが,求められている。
低分子量の非アミノグリコシドナンセンス変異サプレッサーである3−[5−(2−フルオロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾリル−3−イル]安息香酸〔Ataluren(PTC124)〕が,ナンセンス変異を持つ一部のDMD患者を治療し得ることが報告されている(非特許文献15〜16)。それによれば,この化合物は,mRNAからアミノ酸への翻訳時にリボソームによるストップコドンの読み飛ばし(read-through)を誘導し,それによりジストロフィンの発現をある程度回復させるように働く。
また,同じく低分子量の化合物である,Cdc-like キナーゼ(Clk)特異的なキナーゼ阻害剤(TG003)が,ジストロフィン遺伝子のエクソンスキッピングを促進させ得ることが,細胞を用いたインビトロの試験結果に基づき報告されている(特許文献4)。
フェノール性ヒドロキシル基を複数有することを特徴とする一群の有機化合物であるポリフェノールは,殆どの植物中に含まれ,植物色素や苦味の成分であり,抗酸化作用有を有していることがよく知られている。飲食物では,ポリフェノールは,例えば,ワイン(ブドウ),茶,ブラックベリー,チョコレート(カカオ)に多く含まれており,抗酸化作用との関連で,動脈硬化や脳梗塞の予防効果があるとの報告や,また抗アレルギー作用を有するとの報告もあるが,本発明者が知る限りにおいて,変異を有するジストロフィンエクソンのスキッピングとポリフェノールとの関連を示唆する報告はない。
Genomics (1993) 16, 536-538
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Nature (2007) 447, 87-91
上記背景において,本発明は,ナンセンス変異を生ずる,又は下流の塩基配列のフレームシフトを引き起こす変異をエクソン内に有する,ヒト筋ジストロフィーであって当該変異を有するエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるものに対する,経口投与が可能な低分子量化合物に基づく治療剤,特に,そのようなエクソンのスキッピングを誘導し又は促進させることのできるヒト筋ジストロフィーの治療剤の提供を目的とする。
本発明者らは,患者から得られた,ナンセンス変異を生ずるか又は下流の塩基配列のフレームシフトを引き起こすような異常をエクソン内に有するジストロフィン遺伝子について,それらの異常を有するエクソンの転写物を含んだmRNAのスプライシングにおいて,それらのエクソンのスキッピングが,ある種のポリフェノールによって誘導され又は(ある程度スキッピングが既に自発的に生じている場合には)促進されることを見出した。本発明は,この発見に基づき,更に検討を重ねて完成させたものである。即ち,本発明は,以下を提供する。
1.少なくとも1種のポリフェノールを含有することを特徴とする,ヒト筋ジストロフィー治療剤であって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ヒト筋ジストロフィー治療剤。
2.該ポリフェノールが,フラボノイド骨格又はイソフラボノイド骨格を1個又は2個有するポリフェノールである,上記1のヒト筋ジストロフィー治療剤。
3.該ポリフェノールが構造式(I),
2.該ポリフェノールが,フラボノイド骨格又はイソフラボノイド骨格を1個又は2個有するポリフェノールである,上記1のヒト筋ジストロフィー治療剤。
3.該ポリフェノールが構造式(I),
〔式中,R1及びR2は,各々独立して,水素又はヒドロキシル基を表す。〕で示されるものである,上記2のヒト筋ジストロフィー治療剤。
4.該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群から選ばれるものである,上記3のヒト筋ジストロフィー治療剤。
5.該ヒト筋ジストロフィーが,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27,エクソン31,又はエクソン39において生じた変異に起因するものである,上記1〜4の何れかのヒト筋ジストロフィー治療剤。
6.該変異が,配列番号1に示す野生型ヒトジストロフィンのcDNAにおいて,エクソン27については3613番目のヌクレオチドであるGの欠失,エクソン31については4303番目のヌクレオチドであるGのTへの置換,エクソン39については5551番目のヌクレオチドであるCのTへの置換に相当するものである,上記5のヒト筋ジストロフィー治療剤。
7.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群より選ばれるものである,上記5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
8.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン31に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,ダイゼイン,プロシアニジンB2,カテキン,モリン,及びゲニステインよりなる群より選ばれるものである,上記5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
9.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン39に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,モリン,ケンペロール,ダイゼイン,ゲニステイン,没食子酸エピガロカテキン,プロシアニジンB2,フィセチン,及びカテキンよりなる群より選ばれるものである,上記5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
10.該ヒト筋ジストロフィーがデュシェンヌ型又はベッカー型筋ジストロフィーである,上記1〜9の何れかのヒト筋ジストロフィー治療剤。
11.ヒト筋ジストロフィー治療剤用ポリフェノールであって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ポリフェノール。
12.該ポリフェノールが,フラボノイド骨格又はイソフラボノイド骨格を1個又は2個有するポリフェノールである,上記11のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
13.該ポリフェノールが構造式(I),
4.該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群から選ばれるものである,上記3のヒト筋ジストロフィー治療剤。
5.該ヒト筋ジストロフィーが,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27,エクソン31,又はエクソン39において生じた変異に起因するものである,上記1〜4の何れかのヒト筋ジストロフィー治療剤。
6.該変異が,配列番号1に示す野生型ヒトジストロフィンのcDNAにおいて,エクソン27については3613番目のヌクレオチドであるGの欠失,エクソン31については4303番目のヌクレオチドであるGのTへの置換,エクソン39については5551番目のヌクレオチドであるCのTへの置換に相当するものである,上記5のヒト筋ジストロフィー治療剤。
7.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群より選ばれるものである,上記5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
8.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン31に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,ダイゼイン,プロシアニジンB2,カテキン,モリン,及びゲニステインよりなる群より選ばれるものである,上記5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
9.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン39に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,モリン,ケンペロール,ダイゼイン,ゲニステイン,没食子酸エピガロカテキン,プロシアニジンB2,フィセチン,及びカテキンよりなる群より選ばれるものである,上記5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
10.該ヒト筋ジストロフィーがデュシェンヌ型又はベッカー型筋ジストロフィーである,上記1〜9の何れかのヒト筋ジストロフィー治療剤。
11.ヒト筋ジストロフィー治療剤用ポリフェノールであって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ポリフェノール。
12.該ポリフェノールが,フラボノイド骨格又はイソフラボノイド骨格を1個又は2個有するポリフェノールである,上記11のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
13.該ポリフェノールが構造式(I),
〔式中,R1及びR2は,各々独立して,水素又はヒドロキシル基を表す。〕で示されるものである,上記12のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
14.該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群から選ばれるものである,上記13のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
15.該ヒト筋ジストロフィーが,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27,エクソン31,又はエクソン39において生じた変異に起因するものである,上記11〜14の何れかのヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
16.該変異が,配列番号1に示す野生型ヒトジストロフィンのcDNAにおいて,エクソン27については3613番目のヌクレオチドであるGの欠失,エクソン31については4303番目のヌクレオチドであるGのTへの置換,エクソン39については5551番目のヌクレオチドであるCのTへの置換に相当するものである,上記15のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
17.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群より選ばれるものである,上記15又は16のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
18.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン31に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,ダイゼイン,プロシアニジンB2,カテキン,モリン,及びゲニステインよりなる群より選ばれるものである,上記15又は16のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
19.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン39に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,モリン,ケンペロール,ダイゼイン,ゲニステイン,没食子酸エピガロカテキン,プロシアニジンB2,フィセチン,及びカテキンよりなる群より選ばれるものである,上記15又は16のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
20.該ヒト筋ジストロフィーがデュシェンヌ型又はベッカー型筋ジストロフィーである,上記11〜19の何れかのヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
21.ポリフェノールの有効量を患者に投与することを含む,ヒト筋ジストロフィーの治療方法であって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ヒト筋ジストロフィー治療方法。
22.該ポリフェノールが,フラボノイド骨格又はイソフラボノイド骨格を1個又は2個有するポリフェノールである,上記21のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
23.該ポリフェノールが構造式(I),
14.該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群から選ばれるものである,上記13のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
15.該ヒト筋ジストロフィーが,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27,エクソン31,又はエクソン39において生じた変異に起因するものである,上記11〜14の何れかのヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
16.該変異が,配列番号1に示す野生型ヒトジストロフィンのcDNAにおいて,エクソン27については3613番目のヌクレオチドであるGの欠失,エクソン31については4303番目のヌクレオチドであるGのTへの置換,エクソン39については5551番目のヌクレオチドであるCのTへの置換に相当するものである,上記15のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
17.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群より選ばれるものである,上記15又は16のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
18.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン31に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,ダイゼイン,プロシアニジンB2,カテキン,モリン,及びゲニステインよりなる群より選ばれるものである,上記15又は16のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
19.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン39に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,モリン,ケンペロール,ダイゼイン,ゲニステイン,没食子酸エピガロカテキン,プロシアニジンB2,フィセチン,及びカテキンよりなる群より選ばれるものである,上記15又は16のヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
20.該ヒト筋ジストロフィーがデュシェンヌ型又はベッカー型筋ジストロフィーである,上記11〜19の何れかのヒト筋ジストロフィー治療用ポリフェノール。
21.ポリフェノールの有効量を患者に投与することを含む,ヒト筋ジストロフィーの治療方法であって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ヒト筋ジストロフィー治療方法。
22.該ポリフェノールが,フラボノイド骨格又はイソフラボノイド骨格を1個又は2個有するポリフェノールである,上記21のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
23.該ポリフェノールが構造式(I),
〔式中,R1及びR2は,各々独立して,水素又はヒドロキシル基を表す。〕で示されるものである,上記22のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
24.該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群から選ばれるものである,上記23のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
25.該ヒト筋ジストロフィーが,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27,エクソン31,又はエクソン39において生じた変異に起因するものである,上記21〜24の何れかのヒト筋ジストロフィーの治療方法。
26.該変異が,配列番号1に示す野生型ヒトジストロフィンのcDNAにおいて,エクソン27については3613番目のヌクレオチドであるGの欠失,エクソン31については4303番目のヌクレオチドであるGのTへの置換,エクソン39については5551番目のヌクレオチドであるCのTへの置換に相当するものである,上記25のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
27.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群より選ばれるものである,上記25又は26のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
28.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン31に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,ダイゼイン,プロシアニジンB2,カテキン,モリン,及びゲニステインよりなる群より選ばれるものである,上記25又は26のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
29.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン39に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,モリン,ケンペロール,ダイゼイン,ゲニステイン,没食子酸エピガロカテキン,プロシアニジンB2,フィセチン,及びカテキンよりなる群より選ばれるものである,上記25又は26のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
30.該ヒト筋ジストロフィーがデュシェンヌ型又はベッカー型筋ジストロフィーである,上記21〜29の何れかのヒト筋ジストロフィーの治療方法。
24.該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群から選ばれるものである,上記23のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
25.該ヒト筋ジストロフィーが,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27,エクソン31,又はエクソン39において生じた変異に起因するものである,上記21〜24の何れかのヒト筋ジストロフィーの治療方法。
26.該変異が,配列番号1に示す野生型ヒトジストロフィンのcDNAにおいて,エクソン27については3613番目のヌクレオチドであるGの欠失,エクソン31については4303番目のヌクレオチドであるGのTへの置換,エクソン39については5551番目のヌクレオチドであるCのTへの置換に相当するものである,上記25のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
27.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群より選ばれるものである,上記25又は26のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
28.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン31に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,ダイゼイン,プロシアニジンB2,カテキン,モリン,及びゲニステインよりなる群より選ばれるものである,上記25又は26のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
29.該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン39に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,モリン,ケンペロール,ダイゼイン,ゲニステイン,没食子酸エピガロカテキン,プロシアニジンB2,フィセチン,及びカテキンよりなる群より選ばれるものである,上記25又は26のヒト筋ジストロフィーの治療方法。
30.該ヒト筋ジストロフィーがデュシェンヌ型又はベッカー型筋ジストロフィーである,上記21〜29の何れかのヒト筋ジストロフィーの治療方法。
本発明によれば,ヒトのジストロフィンエクソン前駆体mRNAのスプライシングにおいて,遺伝子変異を含んだエクソンをスキップさせることにより,トランケート型ヒトジストロフィンの発現を促すことができるため,DMDの非常に重篤な疾患状態をBMDのようなより軽い状態へと転換させることが可能となる。また,BMD患者において,ナンセンス変異やフレームシフトを生ずる変異を有するにも拘わらずエクソンのスキッピングが自然にある程度生じていることによって軽症化している場合でも,スキッピングを促進して,症状の更なる緩和を図ることが可能となる。
また,ポリフェノールは,植物由来の食品,飲料に広く含有され,古くから日常的に摂取されており,特に,ワイン(ブドウ),茶,コーヒー,チョコレート(カカオ)に多く含まれていることが知られている成分でもあり,水溶性で体内に蓄積することもない。このため,本発明の治療剤及び治療方法には,生涯にわたる継続的治療の前提として求められる高い安全性が見込まれる。
本明細書において,「スプライシング」とは,遺伝子から転写されたばかりの状態のmRNAが,分散して存在するエクソンと呼ばれる複数のコード領域と,イントロンと呼ばれる複数の非コード領域とから構成されるものである場合に,そのようなmRNA(前駆体mRNA)からイントロンが除去されてエクソンのみが繋ぎ合わされて(spliced)成熟mRNAが形成されるプロセスをいう。
本明細書において,あるエクソンについて「スキッピング」とは,スプライシングにおいて,当該エクソンが飛び越され(skipped)て,その前後に位置するエクソンが直接繋ぎ合わされることをいう。
本発明は,変異を有するエクソン(変異型エクソン)のスキッピングを誘導又は促進させることで,当該エクソンを欠き正常より長さは短いものの正常に近い機能を有するトランケート型ジストロフィンを患者体内で産生させ,それにより筋ジストロフィーの治療を行うものである。変異型エキソンが有する変異には,1個又は2個以上のヌクレオチドの欠失,置換又は挿入,あるいはこれらの組み合わせがあり得るが,筋ジストロフィーが発症している限りその変異型エクソンは患者にとって有害であり,当該変異型エクソンのスキッピングを誘導又は促進させれば,患者の症状は改善できる筈である。但し,このようにして治療が行えるためには,変異型エクソンに対応する野生型エクソンが3の倍数個のヌクレオチドで構成されていることを要する。さもなければ,当該変異型エクソンのスキッピングそれ自体が,下流の塩基配列に,本来の野生型での読み枠からのフレームシフトを引き起こすからである。
従って,本発明の治療剤は,ヒトジストロフィンにおいて,野生型では3の倍数個のヌクレオチドによって構成されているエクソン中,遺伝子変異により,直接ストップコドンが導入(ナンセンス変異)され又はフレームシフトが引き起こされていることによって発症する筋ジストロフィーに対し,適用することができる。野生型において3の倍数個のヌクレオチドによって構成されているエクソンは,エクソン3,4,5,9,10,13,14,15,16,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,47,48,49,60,64,71,72,73,74,77,及び79であり(図1),これらのエクソンの何れかに生じた上記の変異による筋ジストロフィーが治療対象となり得る。
上記変異の具体例としては,野生型のヒトジストロフィン遺伝子において,cDNA上で3613番目に位置するヌクレオチド(エクソン27中にある)Gの欠失が挙げられ,これはフレームシフトを生じて,早期のストップコドンを生じさせる。また,別の例として,cDNA上で4303番目に位置するヌクレオチド(エクソン31中にある)GのTへの置換が挙げられ,これは,直接にストップコドンを生じるナンセンス変異である。更に別の例として,cDNA上で5551番目に位置するヌクレオチド(エクソン39中にある)CのTへの置換であり,これもナンセンス変異である。
本発明において,ポリフェノールのうち,好ましいのは比較的低分子量のものであり,それらのうち特に,フラボノイド骨格(a)又はイソフラボノイド骨格(b),
を有するものが好ましい。これらの骨格の好ましい個数は,1個又は2個である。特に好ましいポリフェノールは次の一般式(I),
〔式中,R1及びR2,各々独立して,水素又はヒドロキシル基を表す。〕で示されるものである。このうち,R1,R2が共に水素原子のものはルテオリン(luteolin)として知られており,R1が水素原子,R2がヒドロキシル基のものはケルセチン(quercetin)として,またR1,R2が共にヒドロキシル基のものはミリセチン(myricetin)として知られている。本発明において,特に好ましいのは,これら3種の化合物であり,それらのうちルテオリン及びケルセチンが取り分け好ましい。
本発明は,エクソンに変異(ストップコドンの導入やフレームシフト)を有することに起因する種々のヒト筋ジストロフィーの治療に用いることができる。主たる治療対象としてDMD患者が挙げられるが,BMD患者であっても,本来ならDMDの症状を呈するタイプの遺伝子変異を有しながら,変異のあるエクソンの自発的なスキッピングがある程度生じているためにBMDの症状を呈する患者にも,症状を更に軽くするために適用することができる。
ヒトDMD及びBMDは,ヒトジストロフィン遺伝子中の変異に原因があり,その遺伝子がヒト固有のもので,それにより産生されるジストロフィンも,またそれが発現し且つ機能する細胞環境もヒト固有のものであるため,ヒトの筋ジストロフィーに対する治療効果を評価できるような動物モデルは現在のところ存在しない。
しかしながら,ある化合物が,野生型では3の倍数個のヌクレオチドで構成されている筈の,変異を含んだエクソン(変異型エクソン)のスキッピングを誘導又は促進する効果を有しているか否か,を判定する方法として次のものが確立されている。即ち,(i) 当該変異型エクソンと,その両側にそれぞれイントロン領域を介して隣接させた人工的エクソン領域とを含むDNA断片(本明細書において,「ミニ遺伝子」という。)を作製し,(ii) これを適当な哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込んで組換えベクターを構築し,(iii)
当該組換えベクターで哺乳動物細胞をトランスフェクトし,(iv) 得られた形質転換細胞を,当該化合物に接触させた状態で培養し,(v) 細胞からRNAを単離し,これを鋳型としてミニ遺伝子に対応しているRNAをRT−PCRによりを増幅し,(vi) 増幅産物を解析(例えば,電気泳動や配列決定で)することにより,変異型エクソンのスキッピングが誘導又は促進されたか否かを確認する,という方法である。
当該組換えベクターで哺乳動物細胞をトランスフェクトし,(iv) 得られた形質転換細胞を,当該化合物に接触させた状態で培養し,(v) 細胞からRNAを単離し,これを鋳型としてミニ遺伝子に対応しているRNAをRT−PCRによりを増幅し,(vi) 増幅産物を解析(例えば,電気泳動や配列決定で)することにより,変異型エクソンのスキッピングが誘導又は促進されたか否かを確認する,という方法である。
ある化合物が,上記のミニ遺伝子において上記の変異型エクソンのスキッピングを誘導又は促進する場合,同じ変異型遺伝子を有する実際の患者においては,当該化合物の投与により筋細胞を当該化合物と接触させ,筋細胞内でジストロフィンmRNAのスプライシング中に変異型エクソンのスキッピングを誘導(又は促進)し,それにより,ナンセンス変異の回避やフレームシフトの回避を促し(又は回避割合を高め),全長に近い長さのトランケート型ジストロフィンの合成を起こさせる(又は促進させる)ことができる。これはDMDの軽症化すなわちBMD様の疾患への転換(又はBMDの更なる症状緩和)である。
本発明の筋ジストロフィー治療剤は,非経口投与(注射,点滴)されても良いが,ポリフェノールは元来,植物由来の種々の飲食物に含まれており,古くから日常的に摂取されてきたものであるから,患者に継続的に経口投与するのに特に適している。
経口投与用製剤としては,錠剤,顆粒剤,カプセル剤,散剤等,任意の形態とすることができる。製剤の製造は,主薬であるポリフェノールに,製剤分野の当業者に知られている賦形剤,結合剤,滑沢剤,崩壊剤,湿潤剤その他から,採用する製剤の種類に応じて適宜選択して配合し,常法に従って行えばよい。
賦形剤としては,例えば乳糖,白糖,D−マンニトール,デンプン,結晶セルロース,軽質無水ケイ酸が挙げられ,結合剤としては,例えば,結晶セルロース,白糖,D−マンニトール,デキストリン,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ポリビニルピロリドン等の高分子化合物が挙げられ,滑沢剤としては,例えば,ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸カルシウム,タルク,及びコロイドシリカが挙げられ,崩壊剤としては,例えば,デンプン,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースカルシウム,クロスカルメロースナトリウム,及びカルボキシメチルスターチナトリウムが挙げられ,湿潤剤としては,例えば,グリセリン,ブチレングリコール,プロピレングリコール,ソルビトール,及びトリアセチンが挙げられるが,これらに限られない。
本発明の治療剤において,主薬であるポリフェノールの経口投与量は,患者の疾患状態や体重に合わせて担当医師が適宜増減するものであるが,一般的には,患者の体重当たり10〜200mg/kg/日,より好ましくは20mg〜150g/kg/日,更に好ましくは50〜100mg/kg/日の範囲であり,これが朝昼晩等,複数回に分割して投与されることが好ましい。
以下,実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが,本発明がそれらの実施例に限定されることは意図しない。
〔実施例1〕
1.筋ジストロフィー患者のジストロフィン遺伝子の同定
次の筋ジストロフィー患者の検査によりジストロフィンの変異がそれぞれ確認された。
(1)KUCG#579(男,2002年8月生)
2才時,腸炎の際に血液検査を施行し,偶然高CK血症(3743 IU/L)を指摘された。精査目的で神戸大学病院小児科受診し,エクソン27内に,配列番号1に示すヒトジストロフィンのcDNA(成熟mRNAに対応)における3613番目に位置するヌクレオチドGの欠失(c.3613 delG)が認められた。これはフレームシフトを引き起こす変異であり,野生型におけるc.3674〜3676に対応する位置にストップコドンを生じさせる。CK値は3950〜27160 IU/Lで推移していた。
(2)患者KUCG#797(男,生検時4歳,2004年10月生)
2才時に定期血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)値が2567 IU/Lと高CK血症の状態を呈し,精密検査のため受診した神戸大学病院小児科における遺伝子解析にて,ジストロフィン遺伝子エクソン31内にナンセンス変異が同定された。同変異は,配列番号1に示すヒトジストロフィンcDNAの配列において,第4303番のヌクレオチドGがTに(RNAではGがUに)置き換わったものである(c.4303 G>T)。この変異は,GAGからストップコドンTAGへの変異である。従って,このナンセンス変異は,ジストロフィンを欠く重篤なDMDの症状を予想させるものであるが,変異型エクソン31の自発的スキッピングが幾分起こるため,患者において,同エクソンがコードするアミノ酸配列領域のみを欠いたジストロフィンがある程度の量産生されている(特許文献4)。
(3)患者KUCG#577(男,生検時12歳,2009年8月生)
4歳時に転びやすい,階段を登りにくいなどの症状よりDMDを疑われ,近医で筋生検施行しDMDと診断された。遺伝子診断目的で5歳時に神戸大学病院小児科受診し,エクソン39にナンセンス変異(c.5551 C>T)が同定された。
1.筋ジストロフィー患者のジストロフィン遺伝子の同定
次の筋ジストロフィー患者の検査によりジストロフィンの変異がそれぞれ確認された。
(1)KUCG#579(男,2002年8月生)
2才時,腸炎の際に血液検査を施行し,偶然高CK血症(3743 IU/L)を指摘された。精査目的で神戸大学病院小児科受診し,エクソン27内に,配列番号1に示すヒトジストロフィンのcDNA(成熟mRNAに対応)における3613番目に位置するヌクレオチドGの欠失(c.3613 delG)が認められた。これはフレームシフトを引き起こす変異であり,野生型におけるc.3674〜3676に対応する位置にストップコドンを生じさせる。CK値は3950〜27160 IU/Lで推移していた。
(2)患者KUCG#797(男,生検時4歳,2004年10月生)
2才時に定期血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)値が2567 IU/Lと高CK血症の状態を呈し,精密検査のため受診した神戸大学病院小児科における遺伝子解析にて,ジストロフィン遺伝子エクソン31内にナンセンス変異が同定された。同変異は,配列番号1に示すヒトジストロフィンcDNAの配列において,第4303番のヌクレオチドGがTに(RNAではGがUに)置き換わったものである(c.4303 G>T)。この変異は,GAGからストップコドンTAGへの変異である。従って,このナンセンス変異は,ジストロフィンを欠く重篤なDMDの症状を予想させるものであるが,変異型エクソン31の自発的スキッピングが幾分起こるため,患者において,同エクソンがコードするアミノ酸配列領域のみを欠いたジストロフィンがある程度の量産生されている(特許文献4)。
(3)患者KUCG#577(男,生検時12歳,2009年8月生)
4歳時に転びやすい,階段を登りにくいなどの症状よりDMDを疑われ,近医で筋生検施行しDMDと診断された。遺伝子診断目的で5歳時に神戸大学病院小児科受診し,エクソン39にナンセンス変異(c.5551 C>T)が同定された。
2.変異型エクソンを含むミニ遺伝子を組み込んだ発現ベクターへの作製
上記の何れかの変異型エクソンと,その前後にそれぞれ連結した非翻訳領域である上流側イントロン及び下流側イントロン,更にそれらの前後にそれぞれ連結した翻訳領域である人工的エクソン(それぞれ,「エクソンA」,「エクソンB」という。)からなる各ヌクレオチド(ミニ遺伝子)を含む発現ベクターを,発現用ベクターH492を用いて,以下の手順で作製した。なお,上記の上流側イントロンは,当該発現用ベクターH492が有するマルチクローニングサイトの5'末端に連結しているイントロン(「イントロンA」という。)に,当該マルチクローニングサイトの5'末端の6塩基(NheI部位)が連結したまま残り,その3'末端に更に,ジストロフィン遺伝子における変異型エクソンの5'末端に連結するイントロンのうち変異型エクソン側(3'側)の125〜192個の塩基が連結したものである。また,上記の下流側イントロンは,上記発現用ベクターH492が有するマルチクローニングサイトの3'末端に連結しているイントロン(「イントロンB」という。)に,当該マルチクローニングサイトの3'末端の6塩基(BamHI部位)が連結したまま残り,その5'末端に更に,ジストロフィン遺伝子における変異型エクソンの3'末端に連結するイントロンのうち変異型エクソン側(5'側)の96〜182個の塩基が連結したものである。
上記の何れかの変異型エクソンと,その前後にそれぞれ連結した非翻訳領域である上流側イントロン及び下流側イントロン,更にそれらの前後にそれぞれ連結した翻訳領域である人工的エクソン(それぞれ,「エクソンA」,「エクソンB」という。)からなる各ヌクレオチド(ミニ遺伝子)を含む発現ベクターを,発現用ベクターH492を用いて,以下の手順で作製した。なお,上記の上流側イントロンは,当該発現用ベクターH492が有するマルチクローニングサイトの5'末端に連結しているイントロン(「イントロンA」という。)に,当該マルチクローニングサイトの5'末端の6塩基(NheI部位)が連結したまま残り,その3'末端に更に,ジストロフィン遺伝子における変異型エクソンの5'末端に連結するイントロンのうち変異型エクソン側(3'側)の125〜192個の塩基が連結したものである。また,上記の下流側イントロンは,上記発現用ベクターH492が有するマルチクローニングサイトの3'末端に連結しているイントロン(「イントロンB」という。)に,当該マルチクローニングサイトの3'末端の6塩基(BamHI部位)が連結したまま残り,その5'末端に更に,ジストロフィン遺伝子における変異型エクソンの3'末端に連結するイントロンのうち変異型エクソン側(5'側)の96〜182個の塩基が連結したものである。
(1)発現用ベクターH492
文献〔Mol Genet Metab (2005) 85, 213-219., J
Med Genet (2006) 43, 924-930., Hum Genet (2007) 120, 737-742.〕の記載に従って作製された発現ベクターH492を準備した。H492は,pcDNA3
(invitrogen) をKpnI及びXhoIで切断しエクソンA(配列番号2),イントロンA(配列番号3),マルチクローニングサイト(配列番号4),イントロンB(配列番号5)及び エクソンB(配列番号6)を挿入したものである。これら挿入された部分の塩基配列及びその前後の塩基配列断片を図2及び配列番号7に示す。図2において,末端側の1〜12番目の塩基(配列番号8)は,HindIII部位及びAcc65I部位を含む隣接領域, 13〜110番目の塩基はエクソンA,
111〜177番目の塩基はイントロンA, 178〜205番目の塩基はマルチクローニングサイト, 206〜321番目の塩基はイントロンB, 322〜419番目の塩基はエクソンB,そして420〜443番目の塩基(配列番号9)は,XhoI部位,XbaI部位及びApaI部位を含む隣接領域を,それぞれ構成する。図3は,得られた発現用ベクターH492の構造の概要図である。
文献〔Mol Genet Metab (2005) 85, 213-219., J
Med Genet (2006) 43, 924-930., Hum Genet (2007) 120, 737-742.〕の記載に従って作製された発現ベクターH492を準備した。H492は,pcDNA3
(invitrogen) をKpnI及びXhoIで切断しエクソンA(配列番号2),イントロンA(配列番号3),マルチクローニングサイト(配列番号4),イントロンB(配列番号5)及び エクソンB(配列番号6)を挿入したものである。これら挿入された部分の塩基配列及びその前後の塩基配列断片を図2及び配列番号7に示す。図2において,末端側の1〜12番目の塩基(配列番号8)は,HindIII部位及びAcc65I部位を含む隣接領域, 13〜110番目の塩基はエクソンA,
111〜177番目の塩基はイントロンA, 178〜205番目の塩基はマルチクローニングサイト, 206〜321番目の塩基はイントロンB, 322〜419番目の塩基はエクソンB,そして420〜443番目の塩基(配列番号9)は,XhoI部位,XbaI部位及びApaI部位を含む隣接領域を,それぞれ構成する。図3は,得られた発現用ベクターH492の構造の概要図である。
(2)ミニ遺伝子の作成
(a)A−1.H492制限酵素反応
H492 (600 ng/μL)
7.5μLに,制限酵素であるNheI (New England
Biolabs) 及びBamHI (New England Biolabs) を各々0.7μL,NEBuffer 2 (New
England Biolabs) を3.0μL,MQ(Milli-Q, Milllipore Corp.)を総量が30μLになるように加え,混合し,37℃で2時間インキュベートした。その後CIP (Calf
intestine alkaline phosphatase,
New England Biolabs) 1.0μLを加え,37℃で更に1時間インキュベートした。反応完了後,MinElute Reaction Cleanup Kit (QIAGEN) を用い,製品に付属のプロトコールに従い精製を行った。
(a)A−1.H492制限酵素反応
H492 (600 ng/μL)
7.5μLに,制限酵素であるNheI (New England
Biolabs) 及びBamHI (New England Biolabs) を各々0.7μL,NEBuffer 2 (New
England Biolabs) を3.0μL,MQ(Milli-Q, Milllipore Corp.)を総量が30μLになるように加え,混合し,37℃で2時間インキュベートした。その後CIP (Calf
intestine alkaline phosphatase,
New England Biolabs) 1.0μLを加え,37℃で更に1時間インキュベートした。反応完了後,MinElute Reaction Cleanup Kit (QIAGEN) を用い,製品に付属のプロトコールに従い精製を行った。
(b)挿入用遺伝子の増幅
変異を持つ上記患者のgDNA(ゲノムDNA)及びコントロール用の健常者のgDNAをPCR法により増幅した。増幅用のプライマーは,変異のあるエクソンの前後のイントロンを100〜150塩基程度含むような場所にPrimer3
(v.0.4.0) Pick primers from a DNA sequence. (http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3.cgi)
を利用して設計した。この際エクソンの上流側のイントロンの枝分かれ部位を含むように注意した。設計したプライマーに対し,フォワード側にNheI制限酵素部位 (GCTAGC),リバース側にBamHI制限酵素部位 (GGATCC) を追加した。またそれぞれの5'側にG及びCの組み合わせからなる3塩基を追加した。設計したプライマーの塩基配列は次のとおりである。
<エクソン27用プライマー>
Int26f-NheI (5'-GCGGCTAGCAAATTTATGGAAGAGACTGGAGTTCA-3':
配列番号10) 及び
Int27r-BamHI (5'-GCGGGATCCCAAGTTAAGCAAATGGCCCAAA-3':
配列番号11)
<エクソン31用プライマー>
Int30f-NheI (5'-GCGGCTAGCGTGATCCACCTGCCTCGAC-3':
配列番号12)及び
Int31r-BamHI (5'-GCGGGATCCTCAAATCCAATCTTGCCAAT-3':
配列番号13)
<エクソン39用プライマー>
Int38f-NheI (5'-gcggctagcgcattccatgaaagttttaaattgg-3': 配列番号14)及び
Int39r-BamHI (5’-gcgggatccgcaacacatcgttcaaaatcaa-3':
配列番号15)
変異を持つ上記患者のgDNA(ゲノムDNA)及びコントロール用の健常者のgDNAをPCR法により増幅した。増幅用のプライマーは,変異のあるエクソンの前後のイントロンを100〜150塩基程度含むような場所にPrimer3
(v.0.4.0) Pick primers from a DNA sequence. (http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3.cgi)
を利用して設計した。この際エクソンの上流側のイントロンの枝分かれ部位を含むように注意した。設計したプライマーに対し,フォワード側にNheI制限酵素部位 (GCTAGC),リバース側にBamHI制限酵素部位 (GGATCC) を追加した。またそれぞれの5'側にG及びCの組み合わせからなる3塩基を追加した。設計したプライマーの塩基配列は次のとおりである。
<エクソン27用プライマー>
Int26f-NheI (5'-GCGGCTAGCAAATTTATGGAAGAGACTGGAGTTCA-3':
配列番号10) 及び
Int27r-BamHI (5'-GCGGGATCCCAAGTTAAGCAAATGGCCCAAA-3':
配列番号11)
<エクソン31用プライマー>
Int30f-NheI (5'-GCGGCTAGCGTGATCCACCTGCCTCGAC-3':
配列番号12)及び
Int31r-BamHI (5'-GCGGGATCCTCAAATCCAATCTTGCCAAT-3':
配列番号13)
<エクソン39用プライマー>
Int38f-NheI (5'-gcggctagcgcattccatgaaagttttaaattgg-3': 配列番号14)及び
Int39r-BamHI (5’-gcgggatccgcaacacatcgttcaaaatcaa-3':
配列番号15)
エクソン27,31,又は39に変異を有する患者からの上記gDNAについて,対応するエクソンのプライマー対を用いて,それぞれ,gDNA 2.0μL, Ex Taqポリメラーゼ 0.5 U,10×Ex Taq
Buffer 2.0μL,2.5 mM dNTPs 1.5μL,フォワードプライマー
10 pmol 1.0μL,リバースプライマー 10 pmol 1.0μL,MQを総量が20μLになるように調製しPCR法により増幅した。PCRの条件は,94℃で5分間加熱の後,94℃30秒,60℃30秒,及び72℃90秒からなる反応サイクルを35回,次いで72℃で5分間加熱とした。増幅したPCR産物を,MinElute PCR Purification Kitを用い,製品に付属のプロトコールに従い精製した。
Buffer 2.0μL,2.5 mM dNTPs 1.5μL,フォワードプライマー
10 pmol 1.0μL,リバースプライマー 10 pmol 1.0μL,MQを総量が20μLになるように調製しPCR法により増幅した。PCRの条件は,94℃で5分間加熱の後,94℃30秒,60℃30秒,及び72℃90秒からなる反応サイクルを35回,次いで72℃で5分間加熱とした。増幅したPCR産物を,MinElute PCR Purification Kitを用い,製品に付属のプロトコールに従い精製した。
(c)挿入用遺伝子の制限酵素反応
上記で精製したDNA産物10μLに対し,NEBuffer(New England Biolabs)2.5μL,NheI(New England Biolabs) 1.0μL,BamHI(New
England Biolabs) 1.0μL,MQを総量が25μLとなるように加え,37℃で2時間インキュベートした。反応終了後,MinElute Reaction Cleanup Kitを用い精製を行った。
上記で精製したDNA産物10μLに対し,NEBuffer(New England Biolabs)2.5μL,NheI(New England Biolabs) 1.0μL,BamHI(New
England Biolabs) 1.0μL,MQを総量が25μLとなるように加え,37℃で2時間インキュベートした。反応終了後,MinElute Reaction Cleanup Kitを用い精製を行った。
(d)ライゲーション
DNA Ligation Kit Ver.2.1(Takara)を用い,H492ベクター1.0μLに,挿入用遺伝子2μL,I液(Enzyme Solution,Takara)5μL,MQを総量10μLになるように加え,16℃で2 時間インキュベートした。
DNA Ligation Kit Ver.2.1(Takara)を用い,H492ベクター1.0μLに,挿入用遺伝子2μL,I液(Enzyme Solution,Takara)5μL,MQを総量10μLになるように加え,16℃で2 時間インキュベートした。
こうして得られた各発現ベクターにおいて,元のH492のマルチクローニングサイトのNheI部位とBamHI部位間には,ジストロフィン由来DNAが挿入されている。すなわち,変異型エクソン27用発現ベクターにおいては,配列番号16に示すジストロフィン由来DNAが挿入されており,そのうち1〜156番目の塩基はジストロフィンイントロン26の一部を,157〜338は変異型エクソン27を,そして339〜499番目の塩基はイントロン27の一部を,それぞれ構成する。変異型エクソン31用発現ベクターにおいては,配列番号17に示すジストロフィン由来DNAが挿入されており,そのうち1〜192番目の塩基はイントロン30の一部を,193〜303番目の塩基は変異型エクソン31を,そして304〜399番目の塩基はイントロン31の一部を,それぞれ構成する。また,変異型エクソン39用発現ベクターにおいては,配列番号18に示すジストロフィン由来DNAが挿入されており,そのうち1〜125番目の塩基はイントロン38の一部を,126〜263番目の塩基は変異型エクソン39を,そして264〜445番目の塩基はイントロン39の一部を,それぞれ構成する。
(e)形質転換
ライゲーション反応液4μLに対し,III液(Transfection Enhancer,Takara)0.4μL及びE. coli. DH5α Competent Cells(Takara)30μLを加え,氷中に30分間静置した後,42℃で1分間インキュベートし,再び氷中に1分間静置した。その後あらかじめ37℃に保温しておいたSOC培地を300μL加え,37℃,200 rpmで1時間振とうした。振とう後,室温で4,500 rpmで1分間遠心し,上清を220μL除去し,再けん濁後LBプレートに撒き,37℃で一晩培養した。
ライゲーション反応液4μLに対し,III液(Transfection Enhancer,Takara)0.4μL及びE. coli. DH5α Competent Cells(Takara)30μLを加え,氷中に30分間静置した後,42℃で1分間インキュベートし,再び氷中に1分間静置した。その後あらかじめ37℃に保温しておいたSOC培地を300μL加え,37℃,200 rpmで1時間振とうした。振とう後,室温で4,500 rpmで1分間遠心し,上清を220μL除去し,再けん濁後LBプレートに撒き,37℃で一晩培養した。
(f)塩基配列の確認
形成された単一コロニーを滅菌済みの爪楊枝で拾い,Ex Taqポリメラーゼ0.5 U,10×Ex Taq
Buffer 2.0μL,2.5 mM dNTPs 1.5μL,フォワードプライマー 10 pmol/μL 1.0μL,リバースプライマー 10 pmol/μL 1.0μLを加え,MQを総量が20μLになるように調製した反応液でPCR法により増幅した。PCRの条件は,94℃で5分間加熱の後,94℃30秒,60℃30秒,及び72℃90秒からなる反応サイクルを35回,次いで72℃で5分間加熱とした。PCR産物につき,2%アガロースゲルを用いて135 Vで20分間電気泳動を行い,サイズの確認を行った。目的のサイズのPCR産物について塩基配列の確認を行った。塩基配列が確認されたミニ遺伝子発現ベクターを含んだコロニーを,LB 培地5 mLを14 mL遠心管に入れたものに滅菌済みの爪楊枝で添加し,37℃ 200 rpmで一晩振とうし,ミニ遺伝子発現ベクターを増幅した。増幅したミニ遺伝子発現ベクターを,QIAprerp Miniprep kit(QIAGEN)を用い,製品に付属のプロトコールに従って精製した。
形成された単一コロニーを滅菌済みの爪楊枝で拾い,Ex Taqポリメラーゼ0.5 U,10×Ex Taq
Buffer 2.0μL,2.5 mM dNTPs 1.5μL,フォワードプライマー 10 pmol/μL 1.0μL,リバースプライマー 10 pmol/μL 1.0μLを加え,MQを総量が20μLになるように調製した反応液でPCR法により増幅した。PCRの条件は,94℃で5分間加熱の後,94℃30秒,60℃30秒,及び72℃90秒からなる反応サイクルを35回,次いで72℃で5分間加熱とした。PCR産物につき,2%アガロースゲルを用いて135 Vで20分間電気泳動を行い,サイズの確認を行った。目的のサイズのPCR産物について塩基配列の確認を行った。塩基配列が確認されたミニ遺伝子発現ベクターを含んだコロニーを,LB 培地5 mLを14 mL遠心管に入れたものに滅菌済みの爪楊枝で添加し,37℃ 200 rpmで一晩振とうし,ミニ遺伝子発現ベクターを増幅した。増幅したミニ遺伝子発現ベクターを,QIAprerp Miniprep kit(QIAGEN)を用い,製品に付属のプロトコールに従って精製した。
3.トランスフェクション
(1)HeLa細胞の培養
24ウェルプレートに,各ウェルあたり1.5×105 個のHeLa細胞を5 %FBS(Gibco),及び1%
ABAM (Invitrogen)を含むDMEM(D-MEM High Glucose; Wako)を用いて,37℃,5% CO2存在下で一晩培養した。
(1)HeLa細胞の培養
24ウェルプレートに,各ウェルあたり1.5×105 個のHeLa細胞を5 %FBS(Gibco),及び1%
ABAM (Invitrogen)を含むDMEM(D-MEM High Glucose; Wako)を用いて,37℃,5% CO2存在下で一晩培養した。
(2)トランスフェクション
上記のウェルあたりミニ遺伝子発現ベクター30 ngを,lipofectamine2000(Invitrogen)を用い製品に付属のプロトコールに従って,細胞にトランスフェクションさせた。即ち,50μLのOpti-MEM(Invitrogen)とミニ遺伝子発現ベクター30 ngの混合液中に,Opti-MEM50μLとlipofectamine2000
1μLとの混合液を加え,よく混ぜた後,室温で20分間インキュベートした。その間に,Hela細胞を含んだ上記の24ウェルプレートをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2回洗浄し,各ウェルにOpti-MEM 400μLを加えた。これらのウェルの各々に,インキュベーションが終了したミニ遺伝子とlipofectamine2000の複合体を添加し,2.5時間トランスフェクションを行った。
上記のウェルあたりミニ遺伝子発現ベクター30 ngを,lipofectamine2000(Invitrogen)を用い製品に付属のプロトコールに従って,細胞にトランスフェクションさせた。即ち,50μLのOpti-MEM(Invitrogen)とミニ遺伝子発現ベクター30 ngの混合液中に,Opti-MEM50μLとlipofectamine2000
1μLとの混合液を加え,よく混ぜた後,室温で20分間インキュベートした。その間に,Hela細胞を含んだ上記の24ウェルプレートをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2回洗浄し,各ウェルにOpti-MEM 400μLを加えた。これらのウェルの各々に,インキュベーションが終了したミニ遺伝子とlipofectamine2000の複合体を添加し,2.5時間トランスフェクションを行った。
(3)ポリフェノールの添加
トランスフェクション後,各ウェルから培地を除去し,各ウェルに,5%FBS(Gibco)を含むDMEM(D-MEM
High Glucose; wako)1 mLを加えた。これに,DMSO中に溶解した次の表に示す各ポリフェノールを添加後,37℃,5% CO2存在下で24時間,細胞を培養した。ポリフェノールの添加に当たっては,DMSOの細胞毒性を考慮しその添加量が僅かで済むよう,ポリフェノール溶液2μLを添加したときに培地中で目的の最終ポリフェノール濃度(QDは50μM,LTは30μM,他は100μM)が達成できるような濃度の溶液を用いた。また,対照として,ポリフェノール溶液無添加のもの(-),及びポリフェノール不含のDMSO 2μLを添加したものを設けた。
トランスフェクション後,各ウェルから培地を除去し,各ウェルに,5%FBS(Gibco)を含むDMEM(D-MEM
High Glucose; wako)1 mLを加えた。これに,DMSO中に溶解した次の表に示す各ポリフェノールを添加後,37℃,5% CO2存在下で24時間,細胞を培養した。ポリフェノールの添加に当たっては,DMSOの細胞毒性を考慮しその添加量が僅かで済むよう,ポリフェノール溶液2μLを添加したときに培地中で目的の最終ポリフェノール濃度(QDは50μM,LTは30μM,他は100μM)が達成できるような濃度の溶液を用いた。また,対照として,ポリフェノール溶液無添加のもの(-),及びポリフェノール不含のDMSO 2μLを添加したものを設けた。
4.総RNAの抽出
各ウェルから培地を吸引除去した後,ウェルをPBSで2回洗浄し,0.25% トリプシン
250μLを加え37℃,5%CO2存在下で10分間インキュベートし,ウェルから細胞をはがし回収した。回収した細胞から,High Pure RNA Isolation Kit(Roche)を用い,製品に付属のプロトコールに従って,RNAを抽出した。
各ウェルから培地を吸引除去した後,ウェルをPBSで2回洗浄し,0.25% トリプシン
250μLを加え37℃,5%CO2存在下で10分間インキュベートし,ウェルから細胞をはがし回収した。回収した細胞から,High Pure RNA Isolation Kit(Roche)を用い,製品に付属のプロトコールに従って,RNAを抽出した。
5.スプライシング産物の分析
(1)逆転写反応
300 ngの総RNAを6μLになるようMQで調製し,20×ランダム ヘキサマー プライマー 2μLと2.5 mM dNTP mix (Takara) 5μLとを加え,65℃で5分間加熱後,25℃で10分間反応を行い,M-MLV
RT (Invitrogen) 1μL,RNase out (Invitrogen)
1μL,0.1 M DTT (Invitrogen) 1μL,5×First strand
Buffer (Invitrogen) 4μL を加え37℃で55分間反応させ,70℃で15 分間加熱し,cDNAを合成した。
(1)逆転写反応
300 ngの総RNAを6μLになるようMQで調製し,20×ランダム ヘキサマー プライマー 2μLと2.5 mM dNTP mix (Takara) 5μLとを加え,65℃で5分間加熱後,25℃で10分間反応を行い,M-MLV
RT (Invitrogen) 1μL,RNase out (Invitrogen)
1μL,0.1 M DTT (Invitrogen) 1μL,5×First strand
Buffer (Invitrogen) 4μL を加え37℃で55分間反応させ,70℃で15 分間加熱し,cDNAを合成した。
(2)PCR 法によるDNAの増幅
合成したcDNA 2μLに対し,10×PCR Buffer (Takara) 2μL,2.5 mM dNTP mix (Takara) 1.6μL,フォワードプライマー(YH307:5'-ATTACTCGCTCAGAAGCTGTGTTGC-3':配列番号19) 10 pmol/1μL 1μL,リバースプライマー(YH308:5'-AAGTCTCTCACTTAGCAACTGGCAG-3':配列番号20)
10 pmol/1μL 1μL,Ex Taqポリメラーゼ (Takara) 0.5 U,及びMQ 12.3μLを加え,総量が20μLになるように調整し,PCR反応を行いDNAを増幅した。PCRの条件は,94℃ 5分加熱後,94℃30秒,60℃30秒,及び72℃90秒からなる反応サイクルを25回,次いで72℃ 3分加熱とした。
合成したcDNA 2μLに対し,10×PCR Buffer (Takara) 2μL,2.5 mM dNTP mix (Takara) 1.6μL,フォワードプライマー(YH307:5'-ATTACTCGCTCAGAAGCTGTGTTGC-3':配列番号19) 10 pmol/1μL 1μL,リバースプライマー(YH308:5'-AAGTCTCTCACTTAGCAACTGGCAG-3':配列番号20)
10 pmol/1μL 1μL,Ex Taqポリメラーゼ (Takara) 0.5 U,及びMQ 12.3μLを加え,総量が20μLになるように調整し,PCR反応を行いDNAを増幅した。PCRの条件は,94℃ 5分加熱後,94℃30秒,60℃30秒,及び72℃90秒からなる反応サイクルを25回,次いで72℃ 3分加熱とした。
(3)電気泳動
上記で増幅したPCR産物につき,Agilent
2100 Bioanalyzer(Agilent technology)及びDNA1000 LabChip kit(Agilent technology)を使用し,付属のプロトコールに従い解析を行った。解析に際しては,解析ソフトである2100 Expet(Agilent technology)に示されるpeak height値を使用し,スプライシングにおいて変異型エクソンのスキッピングの起こる割合(エクソンスキッピング率)を,「スキッピング産物/総スプライシング産物」比として計算した。
上記で増幅したPCR産物につき,Agilent
2100 Bioanalyzer(Agilent technology)及びDNA1000 LabChip kit(Agilent technology)を使用し,付属のプロトコールに従い解析を行った。解析に際しては,解析ソフトである2100 Expet(Agilent technology)に示されるpeak height値を使用し,スプライシングにおいて変異型エクソンのスキッピングの起こる割合(エクソンスキッピング率)を,「スキッピング産物/総スプライシング産物」比として計算した。
結果を図4〜6に示す。図において,縦軸は,エクソンスキッピング率を示す。図4に見られるように,変異型エクソン27のミニ遺伝子を導入した細胞は,約0.25のエクソンスキッピング率で,変異型エクソンの自発的スキッピングを起こしエクソンAにエクソンBが直接連結したmRNAを産生した。これに対して,ケルセチン(QD),ミリセチン(MC),及びルテオリン(LT)を添加した細胞では,エクソンスキッピング率は約0.3まで上昇しており,変異型エクソンのスキッピングを促進していることがうかがわれる。
図5は,変異型エクソン31のミニ遺伝子を導入した細胞での各ポリフェノールの添加による影響を示す。変異型エクソン31の場合,自発的なエクソンスキッピング率は約0.07であり,これに対してケルセチン(QD)及びルテオリン(LT)を添加した場合,共に約0.14と,2倍のエクソンスキッピング率を示している。他のポリフェノール,例えばダイゼイン(DD)でも,エクソンスキッピング率は0.1と増大しており,ミリセチン(MC),プロシアニジンB2(PCB2),カテキン(CC),モリン(MH),ゲニステイン(GS),ノビレチン(NL)でも増加が見られる。
図6は,変異型エクソン39のミニ遺伝子を導入した細胞での各ポリフェノールの添加による影響を示す。変異型エクソン39の場合,自発的なエクソンスキッピング率は約0.03であるのに対し,ルテオリン(LT)を添加した場合約0.16と5倍以上に著しく増大しており,ケルセチン(QD)を添加した場合も約0.115と約3倍に,またミリセチン(MC)添加でも0.065と2倍以上に増大している。また,モリン(MH)で約0.05,ケンペロール(KF),ダイゼイン(DD),及び,ゲニステイン(GS)で何れもに約0.045以上に増大し,没食子酸エピガロカテキン(EGCG),プロシアニジンB2(PCB2),フィセチン(FT),及びカテキン(CC)でも増大傾向が見られる。
上記の結果は,ジストロフィンmRNAのスプライシングにおける変異型エクソン27,31,又は39に対して特定のポリフェノールがスキッピングを誘導又は促進することを示している。エクソンスキッピングの促進又は誘導が認められるのは,変異型エクソン27に対してはケルセチン(QD),ミリセチン(MC),及びルテオリン(LT);変異型エクソン31に対してはケルセチン(QD),ルテオリン(LT),ダイゼイン(DD),ミリセチン(MC),プロシアニジンB2(PCB2),カテキン(CC),モリン(MH),ゲニステイン(GS);変異型エクソン39に対してはルテオリン(LT),ケルセチン(QD),ミリセチン(MC),モリン(MH),ケンペロール(KF),ダイゼイン(DD),ゲニステイン(GS),没食子酸エピガロカテキン(EGCG),プロシアニジンB2(PCB2)であり,変異型エクソンによって異なるが,ケルセチン,ルテオリン,ミリセチンは,変異型エクソン27,31及び39の何れについても,スキッピングの誘導又は促進効果を示し,特に,ケルセチン及びルテオリンについては,効果が特に顕著である。
上記の,エキソンスキッピングを誘導又は促進する効果が見られたポリフェノールの構造式を次に示す。
変異型エクソンスキッピング率に対する増大効果が,試験した各変異型エクソンの全てに対し共通して取り分け顕著に見られたケルセチン(QD)及びルテオリン(LT)について,各変異型ミニ遺伝子導入細胞の培地に次の濃度:
ケルセチン:5μM,10μM,25μM,50μM,及び100μM
ルテオリン:5μM,10μM,30μM及び30μM
でそれぞれ添加し,各変異型エクソンのスキッピング率を調べた。細胞の準備,各ポリフェノール溶液の調製,添加及び細胞培養は,前記の条件に準じて行った。結果を図7〜12に示す。
ケルセチン:5μM,10μM,25μM,50μM,及び100μM
ルテオリン:5μM,10μM,30μM及び30μM
でそれぞれ添加し,各変異型エクソンのスキッピング率を調べた。細胞の準備,各ポリフェノール溶液の調製,添加及び細胞培養は,前記の条件に準じて行った。結果を図7〜12に示す。
図7〜9は,それぞれ,変異型エクソン27,31及び39を含むミニ遺伝子導入細胞への,ケルセチン(QD)添加とエクソンスキッピング率との関係を示す。横軸はケルセチンの添加濃度を,縦軸はエクソンスキッピング率を表す。これらの図から明らかなとおり,各変異を含んだエクソンのエクソンスキッピング率におけるケルセチン用量への依存性が確認された。
図10〜12は,それぞれ,変異型エクソン27,31及び39を含むミニ遺伝子導入細胞での,ルテオリン添加の結果を示し,何れの変異においても,エクソンキッピング率におけるルテオリン用量への依存性が確認された。
本発明のヒト筋ジストロフィー治療剤又は治療方法によれば,トランケート型ヒトジストロフィンの発現を誘導又は促進することができるため,DMD患者及びにおける重篤な疾患状態をBMDのようなより軽い病型へと転換させることが可能となる。また,BMD患者において,ナンセンス変異やフレームシフトを生ずる変異を有するエクソンのスキッピングが自然にある程度生じていることによって幾分軽症化している場合でも,スキッピングを促進して,症状の更なる緩和を図ることが可能となる。
また,遺伝子疾患であるため患者は生涯の治療を要するが,ポリフェノールは,植物由来の飲食物に広く含有され,古くから日常的に摂取されており,体内に蓄積することもないため,生涯にわたって投与する上で安全性が高い。
また,遺伝子疾患であるため患者は生涯の治療を要するが,ポリフェノールは,植物由来の飲食物に広く含有され,古くから日常的に摂取されており,体内に蓄積することもないため,生涯にわたって投与する上で安全性が高い。
配列番号2: エクソンA
配列番号3: イントロンA
配列番号4: マルチクローニングサイト
配列番号5: イントロンB
配列番号6: エクソンB
配列番号7: エクソンA〜B及び隣接領域
配列番号8: エクソンAの隣接領域
配列番号9: エクソンBの隣接領域
配列番号10: プライマーInt26f-NheI
配列番号11: プライマーInt27r-BamHI
配列番号12: プライマーInt30f-NheI
配列番号13: プライマーInt31r-BamHI
配列番号14: プライマーInt38f-NheI
配列番号15: プライマーInt39r-BamHI
配列番号19: プライマーYH307
配列番号20: プライマーYH308
配列番号3: イントロンA
配列番号4: マルチクローニングサイト
配列番号5: イントロンB
配列番号6: エクソンB
配列番号7: エクソンA〜B及び隣接領域
配列番号8: エクソンAの隣接領域
配列番号9: エクソンBの隣接領域
配列番号10: プライマーInt26f-NheI
配列番号11: プライマーInt27r-BamHI
配列番号12: プライマーInt30f-NheI
配列番号13: プライマーInt31r-BamHI
配列番号14: プライマーInt38f-NheI
配列番号15: プライマーInt39r-BamHI
配列番号19: プライマーYH307
配列番号20: プライマーYH308
Claims (10)
- 少なくとも1種のポリフェノールを含有することを特徴とする,ヒト筋ジストロフィー治療剤であって,該ヒト筋ジストロフィーが,ジストロフィン遺伝子のエクソンに生じた変異に起因し,該変異がナンセンス変異であるか又はフレームシフトを引き起こす変異であり,且つ,当該変異を含むエクソンが野生型において3の倍数個のヌクレオチドで構成されるエクソンである,ヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該ポリフェノールが,フラボノイド骨格又はイソフラボノイド骨格を1個又は2個有するポリフェノールである,請求項1のヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群から選ばれるものである,請求項3のヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該ヒト筋ジストロフィーが,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27,エクソン31,又はエクソン39において生じた変異に起因するものである,請求項1〜4の何れかのヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該変異が,配列番号1に示す野生型ヒトジストロフィンのcDNAにおいて,エクソン27については3613番目のヌクレオチドであるGの欠失,エクソン31については4303番目のヌクレオチドであるGのTへの置換,エクソン39については5551番目のヌクレオチドであるCのTへの置換に相当するものである,請求項5のヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン27に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,及びミリセチンよりなる群より選ばれるものである,請求項5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン31に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,ダイゼイン,プロシアニジンB2,カテキン,モリン,及びゲニステインよりなる群より選ばれるものである,請求項5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該変異が,野生型ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン39に生じた変異であり,該ポリフェノールが,ルテオリン,ケルセチン,ミリセチン,モリン,ケンペロール,ダイゼイン,ゲニステイン,没食子酸エピガロカテキン,プロシアニジンB2,フィセチン,及びカテキンよりなる群より選ばれるものである,請求項5又は6のヒト筋ジストロフィー治療剤。
- 該ヒト筋ジストロフィーがデュシェンヌ型又はベッカー型筋ジストロフィーである,請求項1〜9の何れかのヒト筋ジストロフィー治療剤。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012181257A JP2014037387A (ja) | 2012-08-18 | 2012-08-18 | 筋ジストロフィー治療剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2012181257A JP2014037387A (ja) | 2012-08-18 | 2012-08-18 | 筋ジストロフィー治療剤 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016175136A1 (ja) * | 2015-04-27 | 2016-11-03 | サントリーホールディングス株式会社 | 筋脂肪化抑制用組成物 |
WO2017175842A1 (ja) * | 2016-04-07 | 2017-10-12 | 国立大学法人京都大学 | スプライシングの改変に関する化合物及び医薬組成物 |
EP4088722A1 (en) * | 2021-05-12 | 2022-11-16 | Justus-Liebig-Universität Gießen | Pharmaceutical compositions, uses thereof and methods for treatment of genetic diseases caused by intronic splice-acceptor site mutations |
-
2012
- 2012-08-18 JP JP2012181257A patent/JP2014037387A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2016175136A1 (ja) * | 2015-04-27 | 2018-02-15 | サントリーホールディングス株式会社 | 筋脂肪化抑制用組成物 |
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