JP2014022894A - 振幅変調信号送信装置及び振幅変調信号受信装置、並びに振幅変調信号送信方法及び振幅変調信号受信方法 - Google Patents

振幅変調信号送信装置及び振幅変調信号受信装置、並びに振幅変調信号送信方法及び振幅変調信号受信方法 Download PDF

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Abstract

【課題】音源信号とは別の情報を当該音源信号と併せて伝送することができる振幅変調信号送信装置及び振幅変調信号受信装置、並びに振幅変調信号送信方法及び振幅変調信号受信方法を提供する。
【解決手段】
AM送信機1は、伝送対象の音源信号を位相変調することによって、透かし情報を音源信号に埋め込む透かし情報埋込部10と、透かし情報が埋め込まれた音源信号を振幅変調することにより振幅変調信号を生成する振幅変調信号生成部11と、その振幅変調信号を送信する送信部12とを備えている。他方、AM受信機2は、AM送信機1から送信された振幅変調信号を受信する受信部20と、その受信した振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得する振幅復調部21と、取得した音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出する透かし情報検出部22とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、AMラジオ等で用いられる振幅変調信号の送受信を行う振幅変調信号送信装置及び振幅変調信号受信装置、並びに振幅変調信号送信方法及び振幅変調信号受信方法に関する。
例えば地震等の災害時においては、緊急情報を如何にして多くの人に知らせるかが問題となる。近年では携帯電話機が普及しているため、携帯電話機を用いて緊急情報を知らせることが考えられるが、災害時では電力供給ができないこと等に起因して携帯電話機の中継局が機能しない等の事態が起こり得るので、緊急情報の伝達手段として携帯電話機が優れているとは言い難い。そこで、災害時の情報源として、ラジオ放送が注目されている。
FM(周波数変調)ラジオ放送の場合、伝送チャンネル内の隙間を利用することにより、主番組とは別の情報を当該主番組と併せて伝送するFM多重放送が実現されている(特許文献1を参照)。このFM多重放送において、災害に関する一般的な情報を主番組とし、個別の詳細な情報及び安否情報等を別の文字情報等として併せて伝送することにより、災害時の重要な情報源となり得る。
特開平3−6926号公報
ところで、安価且つコンパクトであり、しかも省電力のラジオとして、AM(振幅変調)ラジオ受信機が広く普及している。AMラジオ受信機の場合、乾電池等を用いることによって停電時にも利用することが可能である等、災害時の情報源として非常に適している。しかしながら、振幅変調方式の場合、周波数変調方式と異なり、伝送チャンネル内の隙間を有していないため、これを利用することにより文字情報等を主番組と併せて伝送することは不可能である。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、情報ハイディング技術を用いることにより、伝送対象の音源信号とは別の情報を当該音源信号と併せて送受信することができる振幅変調信号送信装置及び振幅変調信号受信装置、並びに振幅変調信号送信方法及び振幅変調信号受信方法を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の振幅変調信号送信装置は、伝送対象の音源信号を位相変調することによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込む透かし情報埋込手段と、前記透かし情報埋め込み手段によって前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を振幅変調することにより振幅変調信号を生成する振幅変調信号生成手段と、前記振幅変調信号生成手段によって生成された振幅変調信号を送信する送信手段とを備える。
この態様において、蝸牛遅延特性を模擬した蝸牛遅延フィルタをさらに備え、前記透かし情報埋込手段が、前記蝸牛遅延フィルタを用いて前記音源信号に対して蝸牛遅延を与えることによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込むように構成されていてもよい。
また、前記態様において、前記振幅変調信号生成手段が、前記透かし情報埋め込み手段によって前記透かし情報が埋め込まれた音源信号が上側波帯及び下側波帯の一方で伝送され、透かし情報が埋め込まれる前の音源信号がその他方で伝送される振幅変調信号を生成するように構成されていてもよい。
また、前記態様において、複数の異なる蝸牛遅延フィルタを備えており、前記透かし情報埋込手段が、前記複数の異なる蝸牛遅延フィルタのそれぞれを用いて、前記音源信号に対して蝸牛遅延を与えることによって、複数の異なる蝸牛遅延が与えられた音源信号を生成する第1音源信号生成手段と、透かし情報に応じて、前記第1音源信号生成手段によって生成された複数の音源信号の中から一の音源信号を選択し、選択した音源信号同士を接合することによって、透かし情報が埋め込まれた音源信号を生成する第2音源信号生成手段とを具備するようにしてもよい。
また、前記態様において、前記複数の異なる蝸牛遅延フィルタのそれぞれが、人間の聴覚に生じる蝸牛遅延の0倍乃至1/2倍の蝸牛遅延を音源信号に付与するように構成されており、そのうちの少なくとも一つの蝸牛遅延フィルタが人間の聴覚に生じる蝸牛遅延の0倍よりも大きな蝸牛遅延を与えるように構成されていてもよい。
また、本発明の一の態様の振幅変調信号受信装置は、上記の振幅変調信号送信装置から送信された振幅変調信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得する音源信号取得手段と、前記音源信号取得手段によって取得された音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出する透かし情報検出手段とを備える。
前記態様において、前記音源信号取得手段が、前記受信手段によって受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号と透かし情報が埋め込まれる前の音源信号とを取得するように構成され、前記透かし情報検出手段が、前記音源信号取得手段によって取得された、透かし情報が埋め込まれる後の音源信号と埋め込まれる前の音源信号との位相差を検出し、当該位相差に基づいて、音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出するように構成されていてもよい。
また、本発明の他の態様の振幅変調信号受信装置は、上記の振幅変調信号送信装置から送信された振幅変調信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得する音源信号取得手段と、前記音源信号取得手段によって取得された音源信号に基づいて、前記蝸牛遅延フィルタが模擬する蝸牛遅延特性を推定する蝸牛遅延特性推定手段と、前記蝸牛遅延特性推定手段により推定された蝸牛遅延特性に基づいて、前記音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出する透かし情報検出手段とを備える。
前記態様において、前記蝸牛遅延特性推定手段が、前記蝸牛遅延フィルタの零点を推定することにより、蝸牛遅延特性を推定するように構成されていてもよい。また、この蝸牛遅延特性推定手段が、チャープz変換を用いて、前記蝸牛遅延フィルタの零点を推定するように構成されていてもよい。
また、本発明の一の態様の振幅変調信号送信方法は、伝送対象の音源信号を位相変調することによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込むステップ(a)と、前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を振幅変調することにより振幅変調信号を生成するステップ(b)と、前記生成された振幅変調信号を送信するステップ(c)とを有する。
前記態様における前記ステップ(a)において、蝸牛遅延特性を模擬した蝸牛遅延フィルタを用いて前記音源信号に対して蝸牛遅延を与えることによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込むようにしてもよい。
また、前記態様における前記ステップ(b)において、前記透かし情報が埋め込まれた音源信号が上側波帯及び下側波帯の一方で伝送され、透かし情報が埋め込まれる前の音源信号がその他方で伝送される振幅変調信号を生成するようにしてもよい。
また、本発明の一の態様の振幅変調信号受信方法は、上記の振幅変調信号送信方法により送信された振幅変調信号を受信するステップ(a)と、前記受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得するステップ(b)と、前記取得された音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出するステップ(c)とを有する。
前記態様における前記ステップ(b)において、前記受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号と透かし情報が埋め込まれる前の音源信号とを取得し、前記ステップ(c)において、前記取得された透かし情報が埋め込まれる後の音源信号と埋め込まれる前の音源信号との位相差を検出し、当該位相差に基づいて、音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出するようにしてもよい。
さらに、本発明の他の態様の振幅変調信号受信方法は、上記の振幅変調信号送信方法により送信された振幅変調信号を受信するステップ(a)と、前記受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得するステップ(b)と、前記取得された音源信号に基づいて、前記蝸牛遅延フィルタが模擬する蝸牛遅延特性を推定するステップ(c)と、前記推定された蝸牛遅延特性に基づいて、前記音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出するステップ(d)とを有する。
本発明に係る振幅変調信号送信装置及び振幅変調信号受信装置、並びに振幅変調信号送信方法及び振幅変調信号受信方法によれば、AMラジオ放送等において音源信号とは別の情報を当該音源信号と併せて送受信することが可能になる。
本発明の実施の形態1に係るAM送信機及びAM受信機の構成を示すブロック図。 透かし情報埋込部の構成を示す機能ブロック図。 本発明の実施の形態における透かし情報埋込部が具備する蝸牛遅延フィルタの特性を示すグラフ。 透かし情報検出部の構成を示す機能ブロック図。 実施の形態1のAM送信機の動作の手順を示すフローチャート。 透かし情報埋込部が実行する透かし情報埋め込み処理の手順を示すフローチャート。 透かし情報埋込部が実行する透かし情報埋め込み処理の手順を示す概念図。 振幅変調信号生成部が実行する両側独立振幅変調処理の手順を示すフローチャート。 振幅変調信号生成部が実行する両側独立振幅変調処理の手順を示す概念図。 両側独立振幅変調処理により生成された振幅変調信号のスペクトラム模式図。 実施の形態2のAM受信機の動作の手順を示すフローチャート。 振幅復調部が実行する両側独立振幅復調処理の手順を示すフローチャート。 振幅復調部が実行する両側独立振幅復調処理の手順を示す概念図。 透かし情報検出部が実行する透かし情報検出処理の手順を示すフローチャート。 透かし情報検出部が実行する透かし情報検出処理の手順を示す概念図。 両側独立振幅復調処理により得られた音源信号及び透かし入り信号の評価結果を示すグラフ。 両側独立振幅復調処理により得られた透かし入り信号の評価結果を示すグラフ。 白色雑音にさらされた場合における、両側独立振幅復調処理により得られた音源信号及び透かし入り信号の評価結果を示すグラフ。 実施の形態1における振幅変調信号を従来のAM受信機が振幅復調した場合における評価結果を示すグラフ。 本発明の実施の形態2に係るAM送信機及びAM受信機の構成を示すブロック図。 透かし情報埋込部の構成を示す機能ブロック図。 透かし情報検出部の構成を示す機能ブロック図。 蝸牛遅延フィルタの極及び零点を説明するためのグラフ。 チャープz変換による周波数分析の結果を示すグラフ。 実施の形態2のAM送信機の動作の手順を示すフローチャート。 透かし情報埋込部が実行する透かし情報埋め込み処理の手順を示すフローチャート。 振幅変調処理により生成された振幅変調信号のスペクトラム模式図。 実施の形態2のAM受信機の動作の手順を示すフローチャート。 透かし情報検出部が実行する透かし情報検出処理の手順を示すフローチャート。 透かし情報検出部が実行する原信号取得処理の手順を示すフローチャート。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
(実施の形態1)
[AM送信機及びAM受信機の構成]
本実施の形態に係るAM送信機は、AMラジオ放送における電波送信機であって、放送する音源信号とは別の情報(本実施の形態では文字情報)を透かし情報として当該音源信号に埋め込み、その透かし情報が埋め込まれた音源信号を送信することができる装置である。他方、本実施の形態に係るAM受信機は、AMラジオ放送における電波受信機であって、透かし情報が埋め込まれた音源信号からその透かし情報を検出し、これを出力することができる装置である。なお、本実施の形態では、一般のAMラジオ(モノラル)放送で用いられている全搬送波両側波帯方式の振幅変調を用いる。以下、その構成の詳細について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るAM送信機及びAM受信機の構成を示すブロック図である。図1に示すように、AM送信機1は、透かし情報埋込部10、振幅変調信号生成部11、送信部12及びアンテナ13を備えている。透かし情報埋込部10は、文字情報を透かし情報として音源信号に埋め込み、その結果生成された透かし入り信号と透かし情報が埋め込まれていない音源信号とを振幅変調信号生成部11に出力する。振幅変調信号生成部11は、透かし情報埋込部10から受け取った透かし入り信号及び音源信号を用いて、AMラジオ放送用の振幅変調信号を生成し、これを送信部12に出力する。送信部12は、アンテナ13を介して、その振幅変調信号を送信する。
他方、AM受信機2は、図1に示すように、受信部20、振幅復調部21、透かし情報検出部22、出力部23及びアンテナ24を備えている。受信部20は、アンテナ24を介してAM送信機1から送信された振幅変調信号を受信し、これを振幅復調部21に出力する。振幅復調部21は、受信部20から受け取った振幅変調信号を復調して透かし入り信号及び音源信号を抽出し、これらの両信号を透かし情報検出部22に出力する。透かし情報検出部22は、振幅復調部21から受け取った透かし入り信号及び音源信号を用いて透かし情報を検出し、その透かし情報と音源信号とを出力部23に出力する。出力部23は、スピーカ及びディスプレイを具備しており、受け取った音源信号をスピーカから出力するとともに、透かし情報である文字情報をディスプレイにて表示する。
[透かし情報埋込部]
以下、上述したAM送信機1が備える透かし情報埋込部10の詳細な構成について説明する。図2は、透かし情報埋込部10の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、透かし情報埋込部10は、透かし情報を所定の表現のデータに変換する符号化部101と、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bと、後述する選択的荷重和処理を実行する選択的荷重和接合部103とを備えている。なお、この透かし情報埋込部10は、後述する透かし情報埋込処理のためのコンピュータプログラムを汎用のコンピュータが実行することによって実現されてもよく、DSP(Digital Signal Processor)等の専用のハードウェアで実現されてもよい。
[蝸牛遅延フィルタ]
以下、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bの詳細について説明する。これらの第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bは、人間の聴覚の蝸牛遅延特性を模擬したデジタルフィルタであり、具体的には、振幅成分にはまったく影響を与えず、位相特性のみを変化させる全域通過フィルタで構成される。
本実施の形態において、蝸牛遅延フィルタ102a及び102bは、以下の式(1)の伝達関数H(z)により定義される1次の無限インパルス応答型全域通過フィルタで構成される。
Figure 2014022894
ここで、bはH(z)のフィルタ係数を表している。
このように、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bを1次の無限インパルス応答型全域通過フィルタで構成することにより、高速な処理が可能になる。
なお、無限インパルス応答型全域通過フィルタの群遅延特性が蝸牛遅延特性をより正確に表していれば、フィルタ次数は1次以上であってもよく、また、フィルタのカスケード段数は1段以上であってもよい。
第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bにより与えられる群遅延τ(ω)は以下の式(2)により算出される。
Figure 2014022894
図3は、本発明の実施の形態1における透かし情報埋込部10が具備する第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bの特性を示すグラフである。図3において、縦軸は群遅延を、横軸は音源信号の周波数をそれぞれ示している。
図3において、細い実線は、人間の聴覚における蝸牛遅延を1/10倍に縮小した蝸牛遅延特性を示している。また、太い実線は、フィルタ係数b=0.795の場合に上記式1により定義される第1蝸牛遅延フィルタ102aの特性を示し、破線は、フィルタ係数b=0.865の場合に同じく定義される第2蝸牛遅延フィルタ102bの特性を示している。
なお、図3において細い実線で示されている蝸牛遅延特性は、「T. Dau, O. Wegner, V. Mellert, and B. Kollmeier, “Auditory brainstem responses (ABR) with optimized chirp signals compensating basilar membrane dispersion,” J. Acoust. Soc. Am., 107, 1530-1540, 2000」を参考にして定めたものである。
以上より、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bを音源信号にかけると、実際の蝸牛遅延の1/10倍の蝸牛遅延を当該音源信号に付与することになる。したがって、人間の実際の蝸牛遅延特性を近似するためには、このような蝸牛遅延フィルタを10段カスケード接続する必要がある。しかし、実際と同様の蝸牛遅延量を音源信号に与えることにすると、その音源信号を知覚する際の群遅延量は実際の蝸牛遅延量の2倍になってしまうため、遅延が大きすぎると考えられる。そこで、本実施の形態においては、上記のように実際の蝸牛遅延の1/10倍の蝸牛遅延を音源信号に与えることにしている。
本実施の形態において、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bはそれぞれ、下記の式(3)及び式(4)にしたがって、音源信号x(n)に蝸牛遅延パターンを付与し、中間信号w(n)及びw(n)を得る。そして、透かし情報のビット値に応じて、フレーム毎に中間信号w(n)及びw(n)を選択・統合することにより、下記の式(5)に示す透かし入り信号y(n)を取得する。
Figure 2014022894
ただし、(k−1)ΔW<n≦kΔWを満足する。ここで、ΔW(=fs/Nbit)はフレーム長であり、fsは原信号のサンプリング周波数を、Nbitは1秒あたりの情報埋込ビットレートをそれぞれ表している。
[透かし情報検出部]
次に、上述したAM受信機2が備える透かし情報検出部22の詳細な構成について説明する。図4は、透かし情報検出部22の構成を示す機能ブロック図である。図4に示すように、透かし情報検出部22は、音源信号及び透かし入り信号の位相スペクトルをそれぞれ求める位相算出部221a及び221bと、これらの両信号の位相差を検出する位相差検出部222と、透かし情報を復元する復号部223とを備えている。なお、この透かし情報検出部22は、後述する透かし情報検出処理のためのコンピュータプログラムを汎用のコンピュータが実行することによって実現されてもよく、DSP(Digital Signal Processor)等の専用のハードウェアで実現されてもよい。
[AM送信機及びAM受信機の動作]
以下、上述したように構成された本実施の形態のAM送信機1及びAM受信機2の動作について説明する。
図5は、本実施の形態のAM送信機1の動作の手順を示すフローチャートである。図5に示すように、AM送信機1はまず、透かし情報埋込部10にて、AMラジオ放送用の音源信号に対して所定の文字情報を透かし情報として埋め込むための透かし情報埋め込み処理を実行する(S11)。
図6は、透かし情報埋込部10が実行する透かし情報埋め込み処理の手順を示すフローチャートである。透かし情報埋込部10は、符号化部101において、音源信号に埋め込む文字情報である透かし情報を2進数表現のデータに変換する(S111)。このようにして2進数表現に変換された透かし情報は、選択的荷重和接合部103に出力される。
次に、透かし情報埋込部10は、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bを用いて、外部から入力された音源信号に対して位相変調を施す(S112)。その結果、人工的に蝸牛遅延が付加された二つの音源信号が生成されることになる。このようにして第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bを用いて位相変調された二つの音源信号は、選択的荷重和接合部103に出力される。
次に、透かし情報埋込部10は、選択的荷重和接合部103において、以下のような選択的荷重和処理を実行することによって、位相変調された音源信号に透かし情報を埋め込む(S113)。
この選択的荷重和処理では、透かし情報のビットが0のときは第1蝸牛遅延フィルタ102aから出力された音源信号が、1のときは第2蝸牛遅延フィルタ102bから出力された音源信号がそれぞれ選択される。そして、これらの選択された音源信号同士が接合されることにより、透かし情報が埋め込まれた透かし入り信号が生成される。
ここで、その接合した部分において急激な位相変化が起こらないように、音源信号同士を荷重和することにより、音源信号の接合が行われる。この荷重和処理は、例えばramped-cosの荷重を付与する等して行われる。このような荷重和処理を行うことにより、透かし入り信号の歪みが軽減される。
以上の透かし情報埋め込み処理を式で表すと次のようになる。図7に示す概念図も参照しながら説明する。なお、以下において、nはサンプリング番号を、kは音源信号のフレーム番号をそれぞれ示している。
まず、ステップS111において、透かし情報が2進数表現のデータs(k)へと変換される。次に、音源信号をx(n)とし、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bそれぞれをH0(z)及びH1(z)とすると、上記のステップS112において、位相変調が施された二つの音源信号(w0(n)、w1(n))が上述した式(3)及び式(4)により生成される。
そして、ステップS113において、透かし情報s(k)のビットが0であるか1であるかに応じてw0(n)又はw1(n)が選択され、上述した式(5)のとおり、透かし入り信号y(n)が生成される。
図5に戻り、上述した透かし情報埋め込み処理を実行した後、AM送信機1は、振幅変調信号生成部11にて、AMラジオ放送用の振幅変調信号を生成するための両側独立振幅変調処理を実行する(S12)。ここで、両側独立振幅変調処理とは、相互に影響を及ぼさないように下側波帯と上側波帯とを独立に振幅変調する処理をいう。以下、その詳細について説明する。
図8は、振幅変調信号生成部11が実行する両側独立振幅変調処理の手順を示すフローチャートである。この両側独立振幅変調処理について、図9に示す概念図も参照しながら説明する。振幅変調信号生成部11はまず、公知の振幅変調方式で音源信号x(n)及び透かし入り信号y(n)を振幅変調する(S121)。これにより、振幅変調信号u(n)及びu(n)が生成される。
次に、振幅変調信号生成部11は、高速フーリエ変換(FFT)により振幅変調信号u(n)及びu(n)を変換する(S122)。これにより、振幅変調信号u(n)及びu(n)それぞれの周波数スペクトルU(ω)及びU(ω)が得られる。ここで、周波数スペクトルU(ω)は下側波帯(LSB)を有し、周波数スペクトルU(ω)は上側波帯(USB)を有している。
次に、振幅変調信号生成部11は、周波数スペクトルU(ω)が有する下側波帯と周波数スペクトルU(ω)が有する上側波帯とを結合する(S123)。これにより、周波数スペクトルU(ω)が得られる。
最後に、振幅変調信号生成部11は、逆高速フーリエ変換(IFFT)を用いて周波数スペクトルU(ω)を振幅変調信号u(n)に変換する(S124)。このような両側独立振幅変調の結果得られた振幅変調信号u(n)は、音源信号x(n)及び透かし入り信号y(n)を含んでいる。
図10は、上述したように両側独立振幅変調処理により生成された振幅変調信号u(n)のスペクトラム模式図である。図10に示すように、この振幅変調信号u(n)は、下側波帯で透かし入り信号を、上側波帯で音源信号をそれぞれ伝送するための信号である。なお、これとは反対に、下側波帯で音源信号を、上側波帯で透かし入り信号をそれぞれ伝送するための信号としても構わない。後述するように、透かし情報の検出は両信号の差を用いて行うため、音源信号及び透かし入り信号のそれぞれを下側波帯及び上側波帯の何れで伝送するのかを予め定めておかなくてもよい。
図5に戻り、上述した両側独立振幅変調処理を実行した後、AM送信機1は、送信部12にて、両側独立振幅変調処理により得られた振幅変調信号を送信する(S13)。これにより、音源信号及び透かし入り信号の両信号が含まれた振幅変調信号がAMラジオ放送用の信号として送信されることになる。
次に、AM受信機2の動作について説明する。図11は、本実施の形態のAM受信機2の動作の手順を示すフローチャートである。図11に示すように、AM受信機2はまず、受信部20にて、AM送信機1から送信された振幅変調信号を受信する(S21)。次に、AM受信機2は、振幅復調部21にて、音源信号及び透かし入り信号を取得するための両側独立振幅復調処理を実行する(S22)。ここで、両側独立振幅復調処理とは、相互に影響を及ぼさないように下側波帯と上側波帯とを独立に振幅復調する処理をいう。以下、その詳細について説明する。
図12は、振幅復調部21が実行する両側独立振幅復調処理の手順を示すフローチャートである。この両側独立振幅復調処理について、図13に示す概念図も参照しながら説明する。振幅復調部21はまず、高速フーリエ変換(FFT)を用いて受信部20にて受信した振幅変調信号u(n)を変換することにより、下側波帯及び上側波帯を有する周波数スペクトルU(ω)を取得する(S221)。
次に、振幅復調部21は、周波数スペクトルU(ω)を、下側波帯を有する周波数スペクトルU(ω)と上側波帯を有する周波数スペクトルU(ω)とに分離する(S222)。なお、周波数スペクトルU(ω)の上側波帯及び周波数スペクトルU(ω)の下側波帯はゼロである。
次に、振幅復調部21は、逆高速フーリエ変換(IFFT)を用いて、周波数スペクトルU(ω)を振幅変調信号u(n)に、周波数スペクトルU(ω)を振幅変調信号u(n)にそれぞれ変換する(S223)。
最後に、振幅復調部21は、公知の振幅復調方式を用いて、振幅変調信号u(n)から音源信号x(n)を、振幅変調信号u(n)から透かし入り信号y(n)をそれぞれ抽出する(S224)。ここで、振幅変調信号u(n)及びu(n)は片側の側波帯しか有していないため、これらの振幅変調信号u(n)及びu(n)の振幅復調信号を2倍することにより、音源信号x(n)及び透かし入り信号y(n)が取得される。
図11に戻り、上述した両側独立振幅復調処理を実行した後、AM受信機2は、透かし情報検出部22にて、両側独立振幅復調処理により得られた透かし入り信号から透かし情報を検出するための透かし情報検出処理を実行する(S23)。
なお、上述したように、本実施の形態における透かし情報埋め込み処理では、二つの蝸牛遅延フィルタによって位相変調された二つの音源信号を、時間毎に切り替えることによって透かし入り信号を生成している。これらの二つの音源信号は、音源信号に位相変調をかけたものであるため、音源信号と透かし入り信号との位相特性の差を用いることにより、透かし入り信号が、上記の二つの蝸牛遅延フィルタの何れの蝸牛遅延フィルタによって位相変調された信号であるのかを特定することができる。本実施の形態の透かし情報検出処理は、このような性質を利用して透かし入り信号に埋め込まれている透かし情報の検出を行うものである。
図14は、透かし情報検出部22が実行する透かし情報検出処理の手順を示すフローチャートである。
透かし情報検出部22は、位相算出部221a及び221bのそれぞれにおいて、高速フーリエ変換(FFT)により、音源信号及び透かし入り信号の位相スペクトルを求める(S231)。ここでは、透かし情報埋め込み処理で利用されたビット単位で、各信号の位相スペクトルが算出される。このようにして求められた各信号の位相スペクトルは、位相差検出部222に出力される。
次に、透かし情報検出部22は、位相差検出部222において、両信号の位相スペクトルの差を算出し(S232)、その算出された位相スペクトルの差と第1蝸牛遅延フィルタ102aによって与えられる群遅延との差の合計値(第1の合計値)、及び同じく位相スペクトルの差と第2蝸牛遅延フィルタ102bによって与えられる群遅延との差の合計値(第2の合計値)を算出する(S233)。そして、位相差検出部222において、これら第1の合計値と第2の合計値とを比較し、第1の合計値が第2の合計値より小さければ電子透かしデータのビット値として“0”を検出し、第1の合計値が第2の合計値以上であれば“1”を検出する(S234)。なお、この処理は、第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bの何れのフィルタを用いて位相変調されたのかを推定することに相当する。
このようにして電子透かしデータのすべてのビットの値が検出された後、それら検出されたビット値が復号部223に出力される。
次に、透かし情報検出部22は、復号部223において、上述したようにして検出されたビット値を用いて、透かし入り信号に埋め込まれている透かし情報を復元する(S235)。
以上のようにして、蝸牛遅延フィルタを用いて音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出することができる。
以上の透かし情報検出処理を式で表すと次のようになる。図15に示す概念図も参照しながら説明する。なお、以下において、nはサンプリング番号を、kは音源信号のフレーム番号をそれぞれ示している。
まず、ステップS231において、音源信号x(n)及び透かし入り信号y(n)の位相スペクトルがFFTにより求められ、ステップS232において、両信号の位相スペクトルの差Φ(ω)が次の式(6)により算出される。
Φ(ω)=arg(FFT[y(n)])−arg(FFT[x(n)]) … 式(6)
次に、ステップS233において、両信号の位相スペクトルの差と第1蝸牛遅延フィルタ102a(H0(z))との差の合計値ΔΦ0及び当該位相スペクトルの差と第2蝸牛遅延フィルタ102b(H1(z))との差の合計値ΔΦ1が、次の式(8)及び(9)によってそれぞれ算出される。ただし、z=eである。
ΔΦ0=Σ|Φ(ω)−arg(H0(e))| … 式(7)
ΔΦ1=Σ|Φ(ω)−arg(H1(e))| … 式(8)
そして、ステップS234において、上記の合計値ΔΦ0及びΔΦ1の大小関係に基づいて、次の式(9)にしたがって透かし情報のビット値s(k)が検出される。
s(k)=0,ΔΦ0<ΔΦ1 又は 1,ΔΦ0≧ΔΦ1 … 式(9)
最後に、ステップS235において、これらの検出されたビット値s(k)を用いて透かし情報が復元される。
図11に戻り、上述した透かし情報検出処理を実行した後、AM受信機2は、出力部23にて、両側独立振幅復調処理により得られた音源信号及び透かし情報検出処理により得られた透かし情報をそれぞれ出力する(S24)。具体的には、出力部23が具備するスピーカにて音源信号を出力し、同じくディスプレイにて透かし情報(文字情報)を表示する。これにより、AM送信機1から送信された振幅変調信号に含まれる音源信号及び透かし情報が出力されることになる。
[評価結果]
以下、本実施の形態で提案した手法の評価について説明する。本発明者等は、RWC音楽ジャンルデータベースの全102Track(全100曲、各曲とも約10秒間)を音源信号として用いて、伝送レート(ビットレート)を変数としてどの程度の透かし情報を埋め込み可能であるか、伝送後に検波した信号の音質劣化の度合い及び検出した透かし情報の正確性等を評価した。ここで使用した楽曲はすべて、サンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16bitのステレオ音源である。本発明者等は、上述した透かし情報埋め込み処理を用いることにより、これらの音源信号に対して“feb”という文字情報を透かし情報として埋め込み、客観的な評価を行った。なお、音質劣化の評価には、PEAQ(Perceptual Evaluation for Audio Quality)、LSD(Log-Spectral Distortion)及びSNR(Signal to Noise Ratio)を用いた。また、透かし情報の正確性についてはビット検出率(検出したビットの正答率)を用いた。
図16は、上述した両側独立振幅復調処理により得られた音源信号及び透かし入り信号についてのSNR、LSD及びPEAQを示すグラフである。図中、左側の(a)乃至(c)は当該音源信号についての結果を、右側の(d)乃至(e)は当該透かし入り信号についての結果をそれぞれ示している。図16を参照すると、音源信号及び透かし入り信号ともに、SNR、LSD及びPEAQがそれぞれ約55dB、0.15dB及び−0.08ODG(Objective Difference Grade)を維持しており、いずれについても良好な結果が得られていることが分かる。これは、上述した両側独立振幅変調処理及び両側独立振幅復調処理によって音質劣化が生じていないことを示している。
図17は、上述した両側独立振幅復調処理により得られた透かし入り信号についてのPEAQ、LSD及びビット検出率を示すグラフである。図中、黒塗りの三角を結んだ実線は第1蝸牛遅延フィルタのフィルタ係数b=0.195の場合の結果を、白抜きの丸を結んだ破線は同じくフィルタ係数b=0.795の場合の結果をそれぞれ示している。なお、第2蝸牛遅延フィルタのフィルタ係数bはb=0.195のときに0.265、b=0.795のときに0.865である。PEAQでは0に近いほど、LSDでは0dBに近いほど、音質が良い(歪みがない)ことになる。これまでの研究結果から、PEAQで−1以上、LSDで1dB未満であれば、十分な音質を保持していると考えられる。図17における(a)及び(b)を参照すると、本実施の形態の手法では1024bps程度のビットレートでも十分な音質を保持できることが分かる。また、図17における(c)を参照すると、高いビット検出率を保っており、1024bpsでも75%となっている。なお、ここではビット訂正誤り等の情報理論で検討されている技術は一切使っていない。ビット検出率が75%以上であれば実用的であると考えると、本実施の形態の手法では、1024bps程度のビットレートで埋め込みを行うことができるため、文字情報であれば1秒間に32文字程度は音源信号と同時伝送できることになる(誤り符号訂正等の技術を組み合わせれば、最大で約100文字程度も可能だと予測される)。
また、本発明者等は、外乱の影響がどの程度あるのかについても評価を行った。図18は、白色雑音にさらされた場合における、上述した両側独立振幅復調処理により得られた音源信号及び透かし入り信号についてのSNR、LSD及びPEAQを示すグラフである。図中、左側の(a)乃至(c)は当該音源信号についての結果を、右側の(d)乃至(e)は当該透かし入り信号についての結果をそれぞれ示している。なお、各グラフにおける横軸は、両側独立振幅変調処理により得られた振幅変調信号のSNRを示している。図18を参照すると、SNRが30dB以下の低レベルのノイズであれば顕著な音質劣化は生じないことが分かる。
さらに、本発明者等は、下位互換性についても評価を行った。ここでの下位互換性とは、上述した両側独立振幅復調処理を実行することができない従来のAM受信機にて本実施の形態における振幅変調信号を受信した場合でも音源信号を問題なく出力することができるか否かを意味している。図19は、本実施の形態における振幅変調信号を従来のAM受信機が振幅復調(包絡線検波)した場合におけるSNR、LSD及びPEAQを示している。ここで、SNRは、音源信号と受信信号との差を誤差としてみたときの結果を示している。なお、各グラフにおける横軸は、第1蝸牛遅延フィルタのフィルタ係数bである。なお、第2蝸牛遅延フィルタのフィルタ係数bは上述したとおりbよりも0.07大きい値である。図19を参照すると、bの値が0.195の場合が最も良い結果を示しており、bの値が増えるにしたがって音質の劣化が確認できる。但し、その音質の劣化も顕著なものではないため、本実施の形態の手法は、第1蝸牛遅延フィルタのフィルタ係数bの値の如何に関わらず、十分な下位互換性を有しているといえる。
このように、本実施の形態のAM送信機及びAM受信機の場合、AMラジオ放送を利用して音源信号とは別に文字情報の送受信を行うことができる。従来、FM多重放送を利用した所謂「見えるラジオ」が実用化されているが、本実施の形態のAM送信機及びAM受信機によればAM版見えるラジオを実現することが可能になる。例えば、災害時における緊急情報等を透かし情報として用いることにより、AM受信機を災害時の貴重な情報源として利用することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、透かし情報検出処理において、透かし入り信号に埋め込まれた透かし情報を、音源信号を参照しながら検出している。これに対し、実施の形態2では、音源信号を参照することなく透かし情報を検出する。このように音源信号を用いずに透かし情報を検出することを「ブラインド検出」と称する。
本実施の形態の場合、上述したようにブラインド検出を行うため、AM受信機側で音源信号を取得する必要がない。そのため、本実施の形態では、搬送波を伝送しない抑圧搬送波単側波帯方式の振幅変調を用い、下側波帯及び上側波帯の何れかを利用して透かし入り信号を送受信する。
[AM送信機及びAM受信機の構成]
図20は、本発明の実施の形態2に係るAM送信機及びAM受信機の構成を示すブロック図である。図20に示すように、AM送信機3は、透かし情報埋込部30、振幅変調信号生成部31、送信部32及びアンテナ33を備えている。透かし情報埋込部10は、文字情報を透かし情報として音源信号に埋め込み、その結果生成された透かし入り信号を振幅変調信号生成部31に出力する。振幅変調信号生成部31は、透かし情報埋込部30から受け取った透かし入り信号を用いて、AMラジオ放送用の振幅変調信号を生成し、これを送信部32に出力する。送信部32は、アンテナ33を介して、その振幅変調信号を送信する。
他方、AM受信機4は、図20に示すように、受信部40、振幅復調部41、透かし情報検出部42、出力部43及びアンテナ44を備えている。受信部40は、アンテナ44を介してAM送信機3から送信された振幅変調信号を受信し、これを振幅復調部41に出力する。振幅復調部41は、受信部40から受け取った振幅変調信号を復調して透かし入り信号を抽出し、これを透かし情報検出部42に出力する。透かし情報検出部42は、振幅復調部41から受け取った透かし入り信号を用いて透かし情報を検出し、その透かし情報及び透かし入り信号を出力部43に出力する。出力部43は、スピーカ及びディスプレイを具備しており、受け取った透かし入り信号をスピーカから出力するとともに、透かし情報である文字情報をディスプレイにて表示する。
[透かし情報埋込部]
以下、上述したAM送信機3が備える透かし情報埋込部30の詳細な構成について説明する。図21は、透かし情報埋込部30の構成を示す機能ブロック図である。なお、図中のnはサンプリング番号を、kは音源信号のフレーム番号をそれぞれ示している。
図21に示すように、透かし情報埋込部30は、音源信号x(n)をフレーム化するフレーム処理部301と、2つの蝸牛遅延フィルタ302a及び302bと、透かし情報s(k)の値に応じて第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bの何れかを選択するフィルタ選択部303とを備えている。
フィルタ選択部303は、透かし情報のビット値が“0”である場合に第1蝸牛遅延フィルタ302aを選択し、同じく“1”である場合に第2蝸牛遅延フィルタ302bを選択する。第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bでは、後述するようにして音源信号に群遅延を与える。このようにして群遅延が付与された音源信号が統合され、透かし情報が埋め込まれた音源信号である透かし入り信号y(n)が生成される。なお、第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bの構成は、実施の形態1における第1蝸牛遅延フィルタ102a及び第2蝸牛遅延フィルタ102bと同様であるため、説明を省略する。
上述した透かし情報埋込部30は、後述する透かし情報埋め込み処理のためのコンピュータプログラムを汎用のコンピュータが実行することによって実現されてもよく、DSP(Digital Signal Processor)等の専用のハードウェアで実現されてもよい。
[透かし情報検出部]
次に、上述したAM受信機4が備える透かし情報検出部42の詳細な構成について説明する。図22は、透かし情報検出部42の構成を示す機能ブロック図である。図22に示すように、透かし情報検出部42は、振幅復調部41から受け取った透かし入り信号y(n)をフレーム化するフレーム処理部421と、フレーム化された透かし入り信号y(n)に対して、チャープz変換を施す2つのチャープz変換部422a及び422bと、これらの第1チャープz変換部422a及び第2チャープz変換部422bによるチャープz変換の結果に基づいて、透かし情報のビット値を検出するビット値検出部423とを備えている。なお、この透かし情報検出部42は、後述する透かし情報検出処理のためのコンピュータプログラムを汎用のコンピュータが実行することによって実現されてもよく、DSP(Digital Signal Processor)等の専用のハードウェアで実現されてもよい。
[チャープz変換]
第1チャープz変換部422a及び第2チャープz変換部422bが実行するチャープz変換(CZT)は、周波数スペクトルのフレキシブルな分析を可能とする手法として知られ(例えば、「Wang, T. T. “The segmented chirp z-transform and its application in spectrum analysis,” IEEE Trans. Instrumentation and measurement, 39(2), 318-323, 1990」を参照)、高速フーリエ変換(FFT)の実装にも活用されている。このチャープz変換は、離散フーリエ変換(DFT)と比較して、周波数分解能及び周波数応答のダイナミックレンジを自由に変えられるという特徴を有している。また、z平面上で任意のM点でのz変換を効率良く求めることができるという特徴も有している。
一般に、チャープz変換は、z=rexp(jω)でN点のDFTと結ばれる(大きさr=1で正規化周波数ω=2πn/Nのとき単位円周上のDFTと等価である)関係にある。ここで、チャープz変換は下記の式(10)により表される。
Figure 2014022894
ただし、A=Aexp(j2πθ)、W=Wexp(j2πφ)である。ここで、θ及びφは初期位相である。上述したように、A=1、M=N、W=exp(−j2π/N)のとき、CZTはDFTに一致する。
[ブラインド検出の原理]
本実施の形態では、上記のチャープz変換を用いることにより、第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bを用いて音源信号に埋め込まれた透かし情報のブラインド検出を実現する。以下、このブラインド検出の原理について説明する。
第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bの極及び零点は、図23に示すとおりに配置される。これらの蝸牛遅延フィルタ302a及び302bは、上述したように1次IIR型全域通過フィルタであり、その特徴として極(図23中の“×”)及び零点(図23中の“○”)は中心点から単位円に向かって垂線を描いたときに交差する半径及びその逆数(b及び1/b)の関係にある。一般に、bの値が減少するにしたがい、極は中心点に近付き、零点は単位円から外側に向かって離れていく。反対に、bの値が増加するにしたがい、極及び零点は互いに単位円に向かって近付いていく。この場合の群遅延量は、図3に示すように、bの値の増加とともに増加する。なお、図23において、太字の“○”及び“×”は第1蝸牛遅延フィルタ302aの曲及び零点をそれぞれ示し、細字の“○”及び“×”は第2蝸牛遅延フィルタ302bの曲及び零点をそれぞれ示している。
透かし入り信号y(n)は、上述したような遅延情報が埋め込まれた信号として観測されることになる。そのため、y(n)から遅延情報、すなわち遅延情報の付与に利用された蝸牛遅延フィルタの極及び零点の位置を推定することにより、ブラインド検出を実現することができる。
なお、原信号x(n)自体も数列の特性として極及び零点を持つため(音源が有界であるとして、その信号の減衰に関係する極など)、観測信号y(n)から仮に極及び零点の位置を推定できたとしても、それはIIR型全域通過フィルタ(蝸牛遅延フィルタ)によって付与されたものなのか、原信号そのものが持つものであるのかを見極める必要がある。
チャープz変換を用いることにより、蝸牛遅延フィルタの極及び零点の位置を推定することができることを示すために、上記の式(1)の蝸牛遅延フィルタの零点r=1/bを通るようにrを選択して、音源信号x(n)及び遅延情報を埋め込んだ信号y(n)をチャープz変換(A=r、M=N、W=exp(−j2π/N))することにより周波数分析を行う。
以下、音源信号である楽器音をx(n)とし、第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bを利用して“AIS-Lab.”の透かし情報を埋め込んだ信号をy(n)とする。ここでは、第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bはいずれも直流成分のところに極及び零点を配置しており、r=1/b又はr=1/bとしたチャープz変換の周波数分析を行う。なお、サンプリング周波数は44.1kHz、ビットレートはNbit=4bpsとして、1フレーム(250ms)に1ビット相当の遅延情報を埋め込むものとする。
図24は、その分析結果を示すグラフである。図24(a)乃至(i)は、左から右にフレーム#1でのx(n)、フレーム#1でのy(n)、フレーム#2のy(n)の周波数スペクトルを、上から下にr=1、r=1/b、r=1/bでのチャープz変換により分析した結果をそれぞれ示している。図24(g)に示すように、x(n)に関する分析結果では、極及び零点配置の周波数付近でのスペクトルには特段変化がみられない。他方、フレーム#1のy(n)ではr=1/bでのチャープz変換の結果(図9(h))において、フレーム#2のy(n)ではr=1/bでのチャープz変換の結果(図9(f))において、最も低い周波数領域(直流成分から低周波数域までの範囲;例えば図3に示す遅延が見られる周波数帯)のところでスペクトル成分が劇的に減少していることがわかる(図中の矢印で示す箇所)。これは、零点の影響によるディップ(くぼみ)に対応しているため、原理的にはその大きさは−∞dBになる。それ以外の分析(r=1、r=1/b(フレーム#1の場合)、及びr=1/b(フレーム#2の場合))では、最も低い周波数のところでスペクトル成分の変化はほとんど見られない(すなわち、−∞dB(線形で0)に近付かない)。なお、この結果に関しては、他のフレーム及び他の対象信号でも同様のことが起こることが確認されている。
以上より、対象信号に係わらず、蝸牛遅延フィルタの零点を交差するようにz平面上の軌跡に沿ってチャープz変換を行うことにより、y(n)から蝸牛遅延フィルタの零点の位置を推定することが可能であることが分かる。なお、原理的には、rを零点ではなく極の値にしてチャープz変換を行うことも可能である(極の場合は∞dBのスペクトルピークを得ることになる)が、計算機上でのダイナミックレンジ内のオーバーフローを検出しなければならないため、零点を用いる方が望ましい。零点を利用する場合は、ダイナミックレンジ内の0を探せばよいため、より容易な処理で足りることになる。
本実施の形態では、第1チャープz変換部422aがr=1/bのz平面上の軌跡に沿ったチャープz変換を行い、第2チャープz変換部422bがr=1/bのz平面上の軌跡に沿ったチャープz変換を行う。これらのチャープz変換の結果を用いることにより、対象信号が、第1蝸牛遅延フィルタ302a(フィルタ係数b)及び第2蝸牛遅延フィルタ302b(フィルタ係数b)の何れにより群遅延が与えられたものであるのかを推定することが可能になる。
[AM送信機及びAM受信機の動作]
以下、上述したように構成された本実施の形態のAM送信機3及びAM受信機4の動作について説明する。
図25は、本実施の形態のAM送信機3の動作の手順を示すフローチャートである。図25に示すように、AM送信機3はまず、透かし情報埋込部30にて、AMラジオ放送用の音源信号に対して所定の文字情報を透かし情報として埋め込むための透かし情報埋め込み処理を実行する(S31)。
図26は、透かし情報埋込部30が実行する透かし情報埋め込み処理の手順を示すフローチャートである。透かし情報埋込部30は、フレーム処理部301において、外部から入力された音源信号を各フレームに分割する(S311)。次に、透かし情報埋込部30は、フィルタ選択部303において、透かし情報のビット値に応じて適用する蝸牛遅延フィルタの選択を行う。具体的には、外部から入力され、2進数表現のデータに変換された透かし情報のビット値が“0”及び“1”の何れであるかを判定し(S312)、その判定結果に応じて第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bの何れかを選択する。
ステップS312において電子透かしデータのビット値が“0”であると判定した場合(S312で“0”)、透かし情報埋込部30は、第1蝸牛遅延フィルタ302aを用いて、音源信号に対して位相変調を施す(S313)。他方、透かし情報のビット値が“1”であると判定した場合(S312で“1”)、透かし情報埋込部30は、第2蝸牛遅延フィルタ302bを用いて、音源信号に対して位相変調を施す(S314)。これらのステップS313及びS314により、透かし情報が音源信号により埋め込まれることになる。
次に、透かし情報埋込部30は、当該フレームに埋め込む透かし情報のすべてのビットが処理されたか否かを判定する(S315)。ここでまだ処理されていないビットがあると判定した場合(S315でNO)、透かし情報埋込部30は、ステップS312へ戻り、それ以降の処理を繰り返す。他方、すべてのビットが処理されたと判定した場合(S315でYES)、透かし情報埋込部30は、ステップS313及びS314により透かし情報の各ビットが埋め込まれた音源信号を接合することにより、透かし入り信号を生成する(S316)。
上記の透かし情報埋め込み処理をすべてのフレームについて行い、それらを接続することにより、透かし入り信号y(n)が生成される。なお、フレームの接続箇所に不連続点が生じることにより(スペクトル拡散の原因でもある)知覚不可能性に影響が出ることを防止するために、接続部前のフレームの後ろ数点(1ms程度)をスプライン(Spline)補間で滑らかにすることが望ましい。
図25に戻り、上述した透かし情報埋め込み処理を実行した後、AM送信機3は、振幅変調信号生成部31にて、透かし情報埋め込み処理により生成された透かし入り信号を振幅変調する(S32)。この場合、例えば公知の二重平衡変調器等を用いて、下側波帯又は上側波帯で透かし入り信号を伝送するための振幅変調信号を生成する。
図27は、上述したようにして生成された振幅変調信号のスペクトラム模式図である。図27に示すように、この振幅変調信号は、上側波帯で透かし入り信号を伝送するための信号である。なお、下側波帯で透かし入り信号を伝送するための信号であっても構わない。
図25に戻り、上述した振幅変調処理を実行した後、AM送信機3は、送信部32にて、振幅変調処理により得られた振幅変調信号を送信する(S33)。これにより、透かし入り信号が含まれた振幅変調信号がAMラジオ放送用の信号として送信されることになる。
次に、AM受信機4の動作について説明する。図28は、本実施の形態のAM受信機4の動作の手順を示すフローチャートである。図28に示すように、AM受信機4はまず、受信部40にて、AM送信機3から送信された振幅変調信号を受信する(S41)。そして、AM受信機4は、振幅復調部41にて、受信した振幅変調信号を振幅復調する(S42)。これにより、上側波帯に含まれる透かし入り信号y(n)が抽出される。
次に、AM受信機4は、透かし情報検出部42にて、振幅復調処理により得られた透かし入り信号から透かし情報を検出するための透かし情報検出処理を実行する(S43)。図29は、透かし情報検出部42が実行する透かし情報検出処理の手順を示すフローチャートである。透かし情報検出部42は、フレーム処理部421において、外部から入力された透かし入り信号を各フレームに分割する(S431)。次に、透かし情報検出部42は、処理対象のセグメントを設定し(S432)、第1チャープz変換部422aにおいて、当該セグメントの信号に対してチャープz変換を行う(S433)。さらに、第2チャープz変換部422bにおいて、同じ信号に対してチャープz変換を行う(S434)。
次に、透かし情報検出部42は、ステップS433及びS434により得られた2つの周波数スペクトルのうちの何れが、最も低い周波数でのスペクトルの値が急激に減少しているか否かを判定し、その判定結果に基づき、当該信号に対して位相変調を施した蝸牛遅延フィルタの零点を推定する(S435)。本実施の形態の場合、上記のようにスペクトルの値が急激に減少しているのが第1チャープz変換部422aにより得られた周波数スペクトルである場合は当該零点が1/bであると推定され、同じく第2チャープz変換部422bにより得られた周波数スペクトルである場合は当該零点が1/bであると推定される。
次に、透かし情報検出部42は、ビット値検出部423において、ステップS435により推定された蝸牛遅延フィルタの零点が1/b及び1/bの何れであるかを判定すし(S436)、1/bと判定した場合(S436で1/b)はビット値“0”を検出する(S437)。他方、1/bと判定した場合(S436で1/b)はビット値“1”を検出する(S438)。
その後、透かし情報検出部42は、処理対象のフレームのすべてのセグメントについて処理を行ったか否かを判定する(S439)。ここで、まだ処理を行っていないセグメントがあると判定した場合(S439でNO)、透かし情報検出部42は、ステップS432へ戻り、それ以降の処理を繰り返す。他方、すべてのセグメントについて処理を行ったと判定した場合(S439でYES)、透かし情報検出部42は、ステップS437及びS438においてビット値検出部423により検出したビット値を接合することにより、透かし情報を復元する(S440)。
以上のようにして、蝸牛遅延フィルタを用いて音源信号に埋め込まれた透かし情報をブラインド検出することができる。
図28に戻り、透かし情報検出処理を実行した後、AM受信機4は、出力部43にて、振幅復調処理により得られた透かし入り信号及び透かし情報検出処理により得られた透かし情報をそれぞれ出力する(S44)。具体的には、出力部43が具備するスピーカにて透かし入り信号を出力し、同じくディスプレイにて透かし情報(文字情報)を表示する。これにより、AM送信機3から送信された振幅変調信号に含まれる透かし入り信号及び透かし情報が出力されることになる。
なお、本実施の形態では、出力部43にて透かし入り信号を出力しているが、この透かし入り信号から透かし情報を取り除いて音源信号を取得し、その音源信号を出力するようにしてもよい。以下、この音源信号を取得するための処理である原信号取得処理について説明する。なお、ここでは当該処理を透かし情報検出部42が実行するものとする。
図30は、透かし情報検出部42が実行する原信号取得処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下では、透かし情報検出部42が、透かし情報埋込部30が備える第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bの逆フィルタ、すなわち第1蝸牛遅延フィルタ302a及び第2蝸牛遅延フィルタ302bが模擬する蝸牛遅延特性の逆特性を有するフィルタを備えているものとする。
透かし情報検出部42は、フレーム処理部421において、外部から入力された透かし入り信号を各フレームに分割する(S441)。次に、透かし情報検出部42は、上記の電子透かし検出処理により検出された透かし情報を参照し(S442)、その透かし情報のビット値が“0”及び“1”の何れであるかを判定する(S443)。
ステップS443において透かし情報のビット値が“0”であると判定した場合(S443で“0”)、透かし情報検出部42は、第1蝸牛遅延フィルタ302aの逆フィルタを用いて、透かし入り信号に対して位相変調を施す(S444)。他方、透かし情報のビット値が“1”であると判定した場合(S443で“1”)、透かし情報検出部42は、第2蝸牛遅延フィルタ302bの逆フィルタを用いて、透かし入り信号に対して位相変調を施す(S445)。
次に、透かし情報検出部42は、当該フレームに埋め込まれている透かし情報のすべてのビットについて処理がなされたか否かを判定する(S446)。ここでまだ処理がなされていないビットがあると判定した場合(S446でNO)、透かし情報検出部42は、ステップS443へ戻り、それ以降の処理を繰り返す。他方、すべてのビットについて処理がなされたと判定した場合(S446でYES)、透かし情報検出部42は、ステップS444及びS445により位相変調が施された信号を接合することにより、音源信号を復元する(S447)。
上記の原信号取得処理をすべてのフレームについて行い、それらを接続することにより、音源信号が取得されることになる。なお、透かし情報埋め込み処理の場合と同様に、フレームの接続箇所に不連続点が生じることにより知覚不可能性に影響が出ることを防止するために、接続部前のフレームの後ろ数点(1ms程度)をスプライン補間で滑らかにすることが望ましい。
上述したようにして音源信号を復元し、これを出力部43にて出力することにより、音質劣化を発生させずに原信号の再生を行うことが可能になる。
(その他の実施の形態)
上述した各実施の形態では、音源信号に透かし情報を埋め込むために蝸牛遅延フィルタを用いているが、それ以外の手段により透かし情報の埋め込みを行うようにしてもよい。
また、上述した各実施の形態では、透かし情報として文字情報を用いているが、文字情報以外の情報、例えば音声情報及び画像情報等を透かし情報として音源信号に埋め込むようにしてもよい。
なお、透かし情報の出力装置として携帯電話機を利用することも想定される。例えば、災害時において携帯電話機の中継局が機能しなくなった場合に、透かし情報として埋め込まれた災害状況の画像情報又は避難場所等を示すマップ情報等を上述した各実施の形態のAM受信機が携帯電話機に出力し、これを携帯電話機がディスプレイ上に出力することが考えられる。また、携帯電話機を用いて撮影された画像情報を当該携帯電話機が上述した各実施の形態のAM送信機に出力し、これをAM送信機が透かし情報として処理することにより、被災情報等の発信を行うことも可能である。
上述した各実施の形態のAM受信機を自動車等に搭載することにより、次のような活用をすることもできる。例えば、AM受信機がAMラジオ放送をバックグラウンドで受信し、透かし情報として災害情報等の緊急情報を検出した場合に、その緊急情報の内容を自動車の運転者に呈示するようにする。限定された地域において不特定多数のユーザに情報提供ができるというAMラジオ放送の利点を用いることにより、自動車の運転者等に緊急情報を提供することができる。
また、上述した各実施の形態では、AMラジオ放送での利用を前提としているが、それ以外の分野に応用することが可能である。例えば、山間部又は海上で用いられるトランシーバー等による無線通信に応用することができ、自然災害等の緊急情報の伝達に活用することが可能である。
インターネットにおけるIP通信を用いてAMラジオ放送の番組を聴取できるサービスが普及している。このようなサービスはIP通信により実現されているため、文字情報等を音源信号に付加することは容易に可能であるといえる。その場合、IP通信を介して音源信号を受信するときはパーソナルコンピュータ又は携帯電話機等の装置を用いてそれらの装置のディスプレイ上に文字情報等を出力する一方で、AMラジオ放送を介して音源信号を受信するときは上述した各実施の形態のAM受信機を用いて当該AM受信機のディスプレイ上に文字情報等を出力することにより、IP通信とAMラジオ放送との所謂サイマル放送を実現することが考えられる。これにより、IP通信とAMラジオ放送とを併用して文字情報等により災害時の緊急情報を提供することができ、より多くの人に緊急情報を伝達することが可能になる。
本発明の振幅変調信号送信装置及び振幅変調信号受信装置、並びに振幅変調信号送信方法及び振幅変調信号受信方法はそれぞれ、例えばAMラジオ放送用の振幅変調信号の送受信を行う装置及び方法等として有用である。
1 AM送信機
10 透かし情報埋込部
101 符号化部
102a 第1蝸牛遅延フィルタ
102b 第2蝸牛遅延フィルタ
103 選択的荷重和接合部
11 振幅変調信号生成部
12 送信部
13 アンテナ
2 AM受信機
20 受信部
21 振幅復調部
22 透かし情報検出部
221a,221b 位相算出部
222 位相差検出部
223 復号部
23 出力部
24 アンテナ
3 AM送信機
30 透かし情報埋込部
301 フレーム処理部
302a 第1蝸牛遅延フィルタ
302b 第2蝸牛遅延フィルタ
303 フィルタ選択部
31 振幅変調信号生成部
32 送信部
33 アンテナ
4 AM受信機
40 受信部
41 振幅復調部
42 透かし情報検出部
421 フレーム処理部
422a 第1チャープz変換部
422b 第2チャープz変換部
423 ビット値検出部
43 出力部
44 アンテナ

Claims (16)

  1. 伝送対象の音源信号を位相変調することによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込む透かし情報埋込手段と、
    前記透かし情報埋め込み手段によって前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を振幅変調することにより振幅変調信号を生成する振幅変調信号生成手段と、
    前記振幅変調信号生成手段によって生成された振幅変調信号を送信する送信手段と
    を備える、振幅変調信号送信装置。
  2. 蝸牛遅延特性を模擬した蝸牛遅延フィルタをさらに備え、
    前記透かし情報埋込手段が、前記蝸牛遅延フィルタを用いて前記音源信号に対して蝸牛遅延を与えることによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込むように構成されている、
    請求項1に記載の振幅変調信号送信装置。
  3. 前記振幅変調信号生成手段が、前記透かし情報埋め込み手段によって前記透かし情報が埋め込まれた音源信号が上側波帯及び下側波帯の一方で伝送され、透かし情報が埋め込まれる前の音源信号がその他方で伝送される振幅変調信号を生成するように構成されている、
    請求項1又は2に記載の振幅変調信号送信装置。
  4. 複数の異なる蝸牛遅延フィルタを備えており、
    前記透かし情報埋込手段が、
    前記複数の異なる蝸牛遅延フィルタのそれぞれを用いて、前記音源信号に対して蝸牛遅延を与えることによって、複数の異なる蝸牛遅延が与えられた音源信号を生成する第1音源信号生成手段と、
    透かし情報に応じて、前記第1音源信号生成手段によって生成された複数の音源信号の中から一の音源信号を選択し、選択した音源信号同士を接合することによって、透かし情報が埋め込まれた音源信号を生成する第2音源信号生成手段と
    を具備する、請求項2に記載の振幅変調信号送信装置。
  5. 前記複数の異なる蝸牛遅延フィルタのそれぞれが、人間の聴覚に生じる蝸牛遅延の0倍乃至1/2倍の蝸牛遅延を音源信号に付与するように構成されており、そのうちの少なくとも一つの蝸牛遅延フィルタが人間の聴覚に生じる蝸牛遅延の0倍よりも大きな蝸牛遅延を与えるように構成されている、
    請求項4に記載の振幅変調信号送信装置。
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載の振幅変調信号送信装置から送信された振幅変調信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段によって受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得する音源信号取得手段と、
    前記音源信号取得手段によって取得された音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出する透かし情報検出手段と
    を備える、振幅変調信号受信装置。
  7. 前記音源信号取得手段が、前記受信手段によって受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号と透かし情報が埋め込まれる前の音源信号とを取得するように構成され、
    前記透かし情報検出手段が、前記音源信号取得手段によって取得された、透かし情報が埋め込まれる後の音源信号と埋め込まれる前の音源信号との位相差を検出し、当該位相差に基づいて、音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出するように構成されている、
    請求項6に記載の振幅変調信号受信装置。
  8. 請求項2に記載の振幅変調信号送信装置から送信された振幅変調信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段によって受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得する音源信号取得手段と、
    前記音源信号取得手段によって取得された音源信号に基づいて、前記蝸牛遅延フィルタが模擬する蝸牛遅延特性を推定する蝸牛遅延特性推定手段と、
    前記蝸牛遅延特性推定手段により推定された蝸牛遅延特性に基づいて、前記音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出する透かし情報検出手段と
    を備える、振幅変調信号受信装置。
  9. 前記蝸牛遅延特性推定手段が、前記蝸牛遅延フィルタの零点を推定することにより、蝸牛遅延特性を推定するように構成されている、
    請求項8に記載の振幅変調信号受信装置。
  10. 前記蝸牛遅延特性推定手段が、チャープz変換を用いて、前記蝸牛遅延フィルタの零点を推定するように構成されている、
    請求項9に記載の振幅変調信号受信装置。
  11. 伝送対象の音源信号を位相変調することによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込むステップ(a)と、
    前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を振幅変調することにより振幅変調信号を生成するステップ(b)と、
    前記生成された振幅変調信号を送信するステップ(c)と
    を有する、振幅変調信号送信方法。
  12. 前記ステップ(a)において、蝸牛遅延特性を模擬した蝸牛遅延フィルタを用いて前記音源信号に対して蝸牛遅延を与えることによって、透かし情報を前記音源信号に埋め込む、
    請求項11に記載の振幅変調信号送信方法。
  13. 前記ステップ(b)において、前記透かし情報が埋め込まれた音源信号が上側波帯及び下側波帯の一方で伝送され、透かし情報が埋め込まれる前の音源信号がその他方で伝送される振幅変調信号を生成する、
    請求項11又は12に記載の振幅変調信号送信方法。
  14. 請求項11乃至13の何れかに記載の振幅変調信号送信方法により送信された振幅変調信号を受信するステップ(a)と、
    前記受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得するステップ(b)と、
    前記取得された音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出するステップ(c)と
    を有する、振幅変調信号受信方法。
  15. 前記ステップ(b)において、前記受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号と透かし情報が埋め込まれる前の音源信号とを取得し、
    前記ステップ(c)において、前記取得された透かし情報が埋め込まれる後の音源信号と埋め込まれる前の音源信号との位相差を検出し、当該位相差に基づいて、音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出する、
    請求項14に記載の振幅変調信号受信方法。
  16. 請求項12に記載の振幅変調信号送信方法により送信された振幅変調信号を受信するステップ(a)と、
    前記受信された振幅変調信号を振幅復調することにより前記透かし情報が埋め込まれた音源信号を取得するステップ(b)と、
    前記取得された音源信号に基づいて、前記蝸牛遅延フィルタが模擬する蝸牛遅延特性を推定するステップ(c)と、
    前記推定された蝸牛遅延特性に基づいて、前記音源信号に埋め込まれた透かし情報を検出するステップ(d)と
    を有する、振幅変調信号受信方法。
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