JP2014017695A - ミリ波帯フィルタおよびその阻止帯域減衰量増加方法 - Google Patents

ミリ波帯フィルタおよびその阻止帯域減衰量増加方法 Download PDF

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Abstract

【課題】波面変換による特性劣化がなく、電波ハーフミラーの設計に高い自由度を与え、空間放射による損失が少なく、しかも阻止帯域減衰量を大きくできるようにする。
【解決手段】ミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波をTE10モードで伝送する導波管21の導波路内に一対の電波ハーフミラー40A、40Bで形成された共振器を設けて、その共振周波数を中心とする周波数成分を通過させるミリ波帯フィルタにおいて、導波管21の端から電波ハーフミラー40Aの間の導波路に、フィルタ通過帯域の低域側の阻止帯域の上限にカットオフ周波数が合うように導波路口径が狭められたハイパスフィルタ30を形成して、低域側の阻止帯域の減衰量を増加させ、さらに、ハイパスフィルタ30の内壁に設けたチョーク溝36により、高域側の阻止帯域の電磁波の通過を阻止するバンドリジェクションフィルタ35を形成して、高域側の阻止帯域の減衰量を増加させている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ミリ波帯に用いるフィルタに関する。
近年、ユビキタスネットワーク社会を迎え、電波利用ニーズが高まる中、家庭内のワイヤレスブロードバンド化を実現するWPAN(ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク)や安全・安心な運転をサポートするミリ波レーダー等のミリ波帯無線システムが利用され始めている。また、100GHz超無線システム実現への取組も積極的に行われてきている。
その一方で、60〜70GHz帯の無線システムの2次高調波評価や100GHz超の周波数帯における無線信号の評価については、周波数が高くなるにつれ測定器の雑音レベル及びミキサの変換損失が増加するとともに周波数精度が低下するため、100GHzを超える無線信号の高感度、高精度測定技術が確立されていない状況となっている。しかも、これまでの測定技術では局部発振の高調波を測定結果から分離することができず、不要発射等の厳密な測定が困難となっている。
これらの技術課題を克服し、100GHz超帯域無線信号の高感度・高精度測定を実現するためには、イメージ応答及び高次高調波応答を抑制するためのミリ波帯の狭帯域なフィルタ技術の開発が必要であり、特に、可変周波数型(チューナブル)に適応可能なものが望ましい。
これまで、ミリ波帯で周波数可変型として用いられるフィルタとしては、(a)YIG共振器を用いたもの、(b)バラクタダイオードを共振器に付加したもの、(c)ファブリペロー共振器が知られている。
(a)のYIG共振器を用いたものでは現状で80GHz程度まで使用できるものが知られ、(b)のバラクタダイオードを共振器に付加したものでは40GHz程度まで使用できるものが知られているが、100GHzを超える周波数では製造が困難である。
これに対し、(c)のファブリペロー共振器は光の分野でよく用いられており、これをミリ波に用いる技術が非特許文献1に開示されている。この非特許文献1には、ミリ波を反射させる一対の球面反射鏡を、その曲率半径に等しい間隔で対向させて高いQを実現した共焦点型のファブリペロー共振器が示されている。
手代木 扶、米山 務 著「新ミリ波技術」オーム社,1993年,p70
しかしながら、上記共焦点型のファブリペロー共振器では、通過帯域をチューニングするために鏡面間の距離を動かした場合、原理的に焦点がずれるためQの大幅な低下が予想される。したがって周波数毎に曲率の違う反射鏡対を選択的に用いなければならない。
一方、光の分野でよく用いられるファブリペロー共振器としては平面型ハーフミラーを対向配置した構造のものがあり、この構造であれば、原理的に鏡面間の距離を変化させてもQの低下は生じないが、この平面型ファブリペロー共振器を利用したフィルタをミリ波帯で実現するためには、さらに解決すべき次のような課題があった。
(A)ハーフミラーに平面波を平行に入射する必要がある。フィルタへの入力が導波管の場合、その径をホーンアンテナのように大きくし平面波を実現することが考えられるがサイズが大きくなる。その場合でも完全平面波の実現は困難であり特性が劣化する。
(B)ハーフミラーは平面波の一定量を平面波のままで透過させる機能をもつ必要がある。このためハーフミラーの構造が制限され、設計の自由度が低い。
(C)開放型であるため、空間に放射することによる損失が大きい。
上記課題を解決するミリ波帯フィルタとして、図7のように、ミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波をTE10モードで一端から他端に伝搬させる導波管1によって形成される導波路1aの内部に、前記所定周波数範囲の電磁波の一部を透過させ、一部を反射させる特性をもつ平面型の一対の電波ハーフミラー2、3を互いに間隔を開けて対向配置し、それら一対の電波ハーフミラーの間に形成される共振器の共振周波数を中心とする周波数成分を選択的に通過させる構造が考えられる。
上記構造であれば、波面変換による特性劣化がなく、電波ハーフミラーの設計に高い自由度を与えることができ、しかも空間放射による損失が少なくて済む。
そして、一対の電波ハーフミラー2、3の間の電気長を変化させることで共振器の共振周波数を可変することができ、そのために一対の電波ハーフミラーの間隔を可変する機構を用いればよい。
ところが、上記原理の周波数可変型のミリ波帯フィルタを実際に製造する際には、さらに解決すべき課題がある。
即ち、共振型のフィルタで阻止帯域減衰量が不足する場合、従来ではフィルタを多段に接続することで対応しているが、上記のように導波管の導波路内に一対の電波ハーフミラーを対向配置した構造のフィルタの場合で阻止帯域減衰量を大きくするために、これを多段接続すると、フィルタ同士が干渉してしまい、希望特性を得ることが困難となる。
図8は、上記した導波管の導波路内に一対の電波ハーフミラーを対向配置した基本構造のフィルタの周波数特性(S21)を示すものであり、上に凸のピークとなっている共振周波数(約124GHz)を中心に例えば±16GHzを周波数可変幅としたとき、それより低域側(約108GHz以下)や高域側(約140GHz以上)の阻止帯域の減衰量は−50dB程度となっており、それらの阻止帯域に高レベルの不要信号があると、十分に減衰できずフィルタから出力されてしまう。
また、この特性のフィルタを多段接続すると、一つのフィルタを構成すべき一対の電波ハーフミラーと、別のフィルタを構成すべき一対のハーフミラーとの間でも共振現象が生じて、希望の周波数特性とならない。
本発明は、これらの課題を解決し、波面変換による特性劣化がなく、電波ハーフミラーの設計に高い自由度を与えることができ、空間放射による損失が少なくて済み、さらに、フィルタの阻止帯域減衰量を大きくすることができるミリ波帯フィルタおよびその阻止帯域減衰量増加方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のミリ波帯フィルタは、
ミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波をTE10モードで一端から他端に伝搬させる導波路を有する導波管(21、21A、21B)と、
前記所定周波数範囲の電磁波の一部を透過させ、一部を反射させる特性をもち、前記導波管の導波路の中間部に間隔をもって対向配置され、その間に共振器を形成する一対の電波ハーフミラー(40A、40B)と、
前記一対の電波ハーフミラーの間に形成される共振器の共振周波数を可変させるための共振周波数可変機構(50)とを有するミリ波帯フィルタであって、
前記導波管の端から前記電波ハーフミラーの間の導波路内に設けられ、前記共振周波数の可変範囲に対応したフィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域で前記フィルタ通過帯域の下限に近い周波数にカットオフ周波数をもつように口径が狭められた導波路を有するハイパスフィルタ(30)を備えたことを特徴とする。
また、本発明の本発明の請求項2のミリ波帯フィルタは、請求項1記載のミリ波帯フィルタにおいて、
前記ハイパスフィルタの内壁に周回形成した所定深さのチョーク溝(36)からなり、前記バンドパスフィルタを通過する電磁波のうち、前記フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の成分を減衰させるバンドリジェクションフィルタ(35)を備えたことを特徴とする。
また、請求項3のミリ波帯フィルタは、請求項1または請求項2記載のミリ波帯フィルタにおいて、
前記共振周波数可変機構は、
前記一対の電波ハーフミラーの一方が、導波路が連続し且つ一方が他方に内挿された状態で摺動自在に連結された二つの導波管(21A、21B)の一方に固定され、前記一対の電波ハーフミラーの他方が前記二つの導波管の他方に固定されていて、該二つの導波管の一方を他方に対して摺動させることで前記共振周波数を可変することを特徴とする。
また、請求項4のミリ波帯フィルタは、請求項1または請求項2記載のミリ波帯フィルタにおいて、
前記共振周波数可変機構は、
前記一対の電波ハーフミラーの間の断面長方形の導波路(22b)の短辺に沿った壁面(25c、25d)の間隔を可変して、前記共振周波数を可変することを特徴とする。
また、本発明の請求項5のミリ波帯フィルタの阻止帯域減衰量増加方法は、
ミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波をTE10モードで一端から他端に伝搬させる導波路を有する導波管(21、21A、21B)と、
前記所定周波数範囲の電磁波の一部を透過させ、一部を反射させる特性をもち、前記導波管の導波路の中間部に間隔をもって対向配置され、その間に共振器を形成する一対の電波ハーフミラー(40A、40B)と、
前記一対の電波ハーフミラーの間に形成される共振器の共振周波数を可変させるための共振周波数可変機構(50)とを有するミリ波帯フィルタの前記共振周波数の可変範囲に対応したフィルタ通過帯域の外側の阻止帯域減衰量増加方法であって、
前記導波管の端から前記電波ハーフミラーの間の導波路内に、前記フィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域で前記フィルタ通過帯域の下限に近い周波数にカットオフ周波数をもつように口径が狭められた導波路を有するハイパスフィルタ(30)を設けて、前記フィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域の減衰量を増加させることを特徴とする。
また、本発明の請求項6のミリ波帯フィルタの阻止帯域減衰量増加方法は、請求項5記載のミリ波帯フィルタの阻止帯域減衰量増加方法において、
前記ハイパスフィルタの内壁に周回形成した所定深さのチョーク溝(36)からなるバンドリジェクションフィルタ(35)により、前記バンドパスフィルタを通過する電磁波のうち、前記フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の減衰量増加させることを特徴とする。
上記のように、TE10モードのみを伝送する連続した導波路内部に一対の電波ハーフミラーで形成された共振器を設けた構造であるから、平面波を入射するための特別な工夫が必要なくなり、また電波ハーフミラーも平面波を透過させる必要がなく任意の形状をとることができる。
また、フィルタ全体として密閉型となり、外部空間への放射による損失が原理上なく、ミリ波帯において、極めて高い選択特性を実現できる。
さらに、導波管の端から電波ハーフミラーの間の導波路に、フィルタ通過帯域の低域側の阻止帯域の上限にカットオフ周波数を合わせたハイパスフィルタを形成しているので、フィルタの通過帯域特性に大きな影響を与えることなく、フィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域の減衰量を大幅に増加させることができる。
また、そのハイパスフィルタの内壁に設けたチョーク溝により、高域側の阻止帯域の電磁波の通過を阻止するバンドリジェクションフィルタを形成しているので、フィルタの通過帯域特性に大きな影響を与えることなく、フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の減衰量を大幅に増加させることができる。
本発明のミリ波帯フィルタの基本構造を示す図 電波ハーフミラーの構造例を示す図 ハイパスフィルタのみを設けたときのフィルタ特性のシミュレーション結果 ハイパスフィルタとバンドリジェクションフィルタを設けたときのフィルタ特性のシミュレーション結果 共振周波数可変機構の一例を説明するための図 共振周波数可変機構の別の例を説明するための図 本発明の基礎となるミリ波帯フィルタの原理構造図 図7の構造のフィルタ特性のシミュレーション結果
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のミリ波帯フィルタ20の基本構造を示している。
図1の(a)の側面図に示すように、このミリ波帯フィルタ20は、導波管21と、一対の電波ハーフミラー40A、40Bおよび共振周波数可変機構50を有している。
導波管21は、中空の角筒状で、ミリ波帯の所定周波数範囲(例えば110〜140GHz)の電磁波をTE10モードのみで伝搬させる口径(例えば標準口径a×b=2.032mm×1.016mm)をもつ断面長方形の導波路22が、後述するハイパスフィルタ30の部分を除いて一端側から他端側に連続して形成されている。
この導波管21には、前記所定周波数範囲の電磁波の一部を透過させ、一部を反射させる特性をもつ一対の電波ハーフミラー40A、40Bが、導波路22内を塞ぐようにして間隔D(例えば1.4mm前後)を開けて対向配置されている。したがって、導波路22は、一端(図で左端)から電波ハーフミラー40Aまでの第1導波路22a、電波ハーフミラー40A,40B間の第2導波路22b、電波ハーフミラー40Bから他端(図で右端)までの第3導波路22cに区画されることになる。
一対の電波ハーフミラー40A、40Bは、例えば図2に示しているように、固定される導波路の口径に対応した大きさの矩形の誘電体基板41と、その表面を覆う金属膜42と、その金属膜42に設けられた電磁波透過用のスリット43とを有し、金属膜42の外周が導波路内壁に接触する状態で固定されていて、スリット43の形状や面積に対応した透過率で電磁波を透過させる。
このような基本構造をもつミリ波帯フィルタ20では、一対の電波ハーフミラー40A、40Bにより平面型のファブリペロー共振器が形成され、その共振周波数を中心とする周波数成分だけが選択的に通過できる状態となる。
しかも、導波路22は、ミリ波帯において極めて低損失の閉鎖型の伝送路としての導波管構造で形成され、TE10モードのみが伝送する口径とするため、波面変換などの処理は不要で、共振器で抽出された信号成分のみを極めて低損失に出力させることができる。
共振周波数可変機構50は、その一対の電波ハーフミラー40A、40Bとその間の第2導波路22bによって形成される共振器の共振周波数を可変させるための機構であり、その可変方式としては、一対の電波ハーフミラー40A、40Bの物理的な間隔Dや電気的(例えば誘電体の誘電率可変による)な間隔を可変する方式と、電波ハーフミラー40A、40Bに挟まれた第2導波路22bの短辺に沿った側壁の間隔を可変する方式とがあり、そのいずれも採用できるが、その具体的な構造については後述する。
このように、TE10モードを伝送する導波路の内部に平面型の一対の電波ハーフミラー40A、40Bで形成された共振器を設けた構造であるから、平面波を入射するための特別な工夫が必要なくなり、また電波ハーフミラーも平面波を透過させる必要がなく任意の形状をとることができる。
また、フィルタ全体としてほぼ密閉型となり、外部空間への放射による損失が少なく、ミリ波帯において、極めて高い選択特性を実現できる。
ただし、導波管21の構造が、口径が全長に渡って均一の場合、前記図8で示した特性のように、共振周波数の可変によって得られるフィルタ通過帯域の外側の阻止帯域の減衰量が不足して、フィルタ通過帯域外の高レベルの不要信号を十分に除去することができない。また、前記したように、電波ハーフミラーを複数対設けて多段接続するとフィルタ同士が干渉してしまい、希望特性を得ることが困難となる。
これを解消するために、実施形態のミリ波帯フィルタ20では、導波管21の一端側から一方の電波ハーフミラー40Aの間の第1導波路22a内で、フィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域でフィルタ通過帯域の下限に近い周波数にカットオフ周波数をもつように第1導波路22aより小さい口径(例えば口径a′×b′=1.415mm×0.708mm)で所定長(例えば15mm)続く導波路23により形成されたハイパスフィルタ30が設けられている。ここで、口径1.415mm×0.708mmの導波路のTE10モードのカットオフ波長は1.415mm×2=2.83mmであり、周波数換算すると約106GHzとなる。
なお、口径が異なる二つの導波路22a、23の間は、所定長(例えば5mm)の範囲で口径が連続的に変化するテーパ部31、32を介して接続され、無用な反射の発生を防止している。
また、このハイパスフィルタ30の内壁には、深さdの複数のチョーク溝36が周回形成されていて、この複数のチョーク溝36により、バンドパスフィルタ30の導波路23を通過する電磁波のうち、フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の成分を減衰させるバンドリジェクションフィルタ35が形成されている。
このチョーク溝36は、その深さdによって決まる波長λg(=4d)の成分を減衰させる作用があり、その深さを変えて複数形成することで、阻止帯域を広帯域化できる。
図1では図示が容易となるため5つ記載しているが、実施例では、幅0.2mmで、深さdが、それぞれ0.36、038、0.40、0.42、0.44、0.46、0.48mmの7つのチョーク溝36を、伝搬方向に0.35mm間隔(溝中心間隔)で設けている。
ここで、深さd=0.48mmの場合の阻止波長は1.92mmで、周波数約156GHz、深さd=0.36mmの場合の阻止波長は1.44mmで、周波数約208GHzとなるので、上記数値例で、156〜208GHzの帯域成分を減衰させることが可能である。
このように、フィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域の上限周波数に近いカットオフ周波数をもつハイパスフィルタ30と、そのハイパスフィルタ30の内壁にフィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の成分を減衰させるための複数のチョーク溝36からなるバンドリジェクションフィルタ35を設けたので、複数対の電波ハーフミラーによる多段接続構造を採用することなく、低域側と高域側の阻止帯域の減衰量を大きく増加させることができる。
図3は、前記各数値例を用いて、導波管21にハイパスフィルタ30のみを設けた場合の周波数特性(S21)をシミュレーションした結果を示すものであり、上に凸のピークとなっている共振周波数(約124GHz)を中心に例えば±16GHzを周波数可変幅(フィルタ通過帯域)としたとき、それより低域側(約108GHz以下)の阻止帯域の減衰量が−110dB以下になっており、この阻止帯域に存在する高レベルの不要信号を十分に減衰できることがわかる。
また、図4は、前記数値例を用いて、導波管21にハイパスフィルタ30とバンドリジェクションフィルタ35を設けた場合の周波数特性(S21)をシミュレーションした結果を示すものであり、ハイパスフィルタ30によってフィルタ通過帯域の低域側(約108GHz以下)の阻止帯域の減衰量が−110dB以下になっているとともに、高域側(約162GHz〜190GHz)の阻止帯域の減衰量も−100dB以下に増えており、これらの阻止帯域に存在する高レベルの不要信号を十分に減衰できることがわかる。
なお、上記例は、導波管21の一端と電波ハーフミラー40Aの間の導波路にハイパスフィルタ30とバンドリジェクションフィルタ35を設けていたが、導波管21の他端と電波ハーフミラー40Bの間に設けてもよく、また、一対の電波ハーフミラー40A、40Bの両側に設けてもよい。
また、低域側の阻止帯域の減衰量を重点的に増加させたい場合には、バンドリジェクションフィルタ35を省略することも可能である。
次に、共振周波数可変のための機構例について説明する。図5は、電波ハーフミラー40A、40Bの間隔Dを機械的に可変することで、共振周波数を可変する構造例を示すものであり、前記導波管21を、導波路が連続し且つ一方が他方に内挿された状態で摺動自在に連結された二つの導波管21A、21Bで構成し、一方の導波管21Aの先端側に一方の電波ハーフミラー40Aを固定して、それを一端側に受け入れる異径構造の他方の導波管21Bの中間部に他方の電波ハーフミラー40Bを固定した構造となっている。
この構造の場合、一方の導波管21Aを他方の導波管21Bに対してスライドさせることで、一対の電波ハーフミラー40A、40Bの間隔Dが変化して共振周波数が変化することになる(駆動装置は図示せず)。
ただし、電磁波の伝搬方向に一方の導波管が移動するから、フィルタの前後に接続される回路の一方がフィルタに従動してしまう。これを解消するためには外部回路との間に導波管の移動を吸収する緩衝部(例えば図5の符号60で示した固定導波管)が必要となり、そのために、可動側の導波管(この例では導波管21A)の長さが増すが、その長さが増した部分を利用して、ハイパスフィルタ30およびバンドリジェクションフィルタ35を設けるようにすれば無駄がない。
上記例は、電波ハーフミラー40A、40Bの間隔Dを可変して共振周波数を可変しているが、図6に要部を示すように、間隔固定の電波ハーフミラー40A、40Bの間の断面長方形の第2導波路22bを囲む4つの壁面25a〜25d(図1参照)のうち、短辺に沿った壁面25c、25dを対向面とする直方体の可動ブロック70、71を、その壁面25c、25dの間隔Wが変化するように長辺に沿って移動させることでも共振周波数を可変できる(駆動装置は図示せず)。
即ち、導波管の管内波長λgは、次式で表されることが知られている。
λg=λ/[1−(λ/λC10 1/2
=λ/[1−(λ/2W)1/2
λ:自由空間波長 λC10 :TE10モードの遮断周波数
W:導波管の開口の長辺
そして、電波ハーフミラー40A、40Bを対向させた構造のフィルタの共振波長(通過帯域の中心波長)は管内波長λgの1/2となるから、第2導波路22bの長辺、即ち、第2導波路22bの短辺に沿った側壁面25c、25dの間隔Wを可変することで、フィルタの共振周波数を可変できる。なお、ここでは両方の側壁面25c、25dを移動させる場合を示したが、一方の側壁面だけを移動させてもよい。
この共振周波数可変機構を用いた場合、フィルタの電磁波伝搬方向に沿った長さは変化しないので、前記した緩衝用導波管は不要となる。
20……ミリ波帯フィルタ、21、21A、21B……導波管、22、23……導波路、30……ハイパスフィルタ、35……バンドリジェクションフィルタ、36……チョーク溝、40A、40B……電波ハーフミラー、50……共振周波数可変機構、60……固定導波管、70、71……可動ブロック
手代木 扶、米山 務 著「新ミリ波技術」オーム社,1993年,p71
また、本発明の本発明の請求項2のミリ波帯フィルタは、請求項1記載のミリ波帯フィルタにおいて、
前記ハイパスフィルタの内壁に周回形成した所定深さのチョーク溝(36)からなり、前記ハイパスフィルタを通過する電磁波のうち、前記フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の成分を減衰させるバンドリジェクションフィルタ(35)を備えたことを特徴とする。
また、本発明の請求項6のミリ波帯フィルタの阻止帯域減衰量増加方法は、請求項5記載のミリ波帯フィルタの阻止帯域減衰量増加方法において、
前記ハイパスフィルタの内壁に周回形成した所定深さのチョーク溝(36)からなるバンドリジェクションフィルタ(35)により、前記ハイパスフィルタを通過する電磁波のうち、前記フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の減衰量増加させることを特徴とする。
また、このハイパスフィルタ30の内壁には、深さdの複数のチョーク溝36が周回形成されていて、この複数のチョーク溝36により、ハイパスフィルタ30の導波路23を通過する電磁波のうち、フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の成分を減衰させるバンドリジェクションフィルタ35が形成されている。
図1では図示が容易となるため5つ記載しているが、実施例では、幅0.2mmで、深さdが、それぞれ0.36、038、0.40、0.42、0.44、0.46、0.48mmの7つのチョーク溝36を、伝搬方向に0.35mm間隔(溝中心間隔)で設けている。

Claims (6)

  1. ミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波をTE10モードで一端から他端に伝搬させる導波路を有する導波管(21、21A、21B)と、
    前記所定周波数範囲の電磁波の一部を透過させ、一部を反射させる特性をもち、前記導波管の導波路の中間部に間隔をもって対向配置され、その間に共振器を形成する一対の電波ハーフミラー(40A、40B)と、
    前記一対の電波ハーフミラーの間に形成される共振器の共振周波数を可変させるための共振周波数可変機構(50)とを有するミリ波帯フィルタであって、
    前記導波管の端から前記電波ハーフミラーの間の導波路内に設けられ、前記共振周波数の可変範囲に対応したフィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域で前記フィルタ通過帯域の下限に近い周波数にカットオフ周波数をもつように口径が狭められた導波路を有するハイパスフィルタ(30)を備えたことを特徴とするミリ波帯フィルタ。
  2. 前記ハイパスフィルタの内壁に周回形成した所定深さのチョーク溝(36)からなり、前記バンドパスフィルタを通過する電磁波のうち、前記フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の成分を減衰させるバンドリジェクションフィルタ(35)とを設けたことを特徴とする請求項1記載のミリ波帯フィルタ。
  3. 前記共振周波数可変機構は、
    前記一対の電波ハーフミラーの一方が、導波路が連続し且つ一方が他方に内挿された状態で摺動自在に連結された二つの導波管(21A、21B)の一方に固定され、前記一対の電波ハーフミラーの他方が前記二つの導波管の他方に固定されていて、該二つの導波管の一方を他方に対して摺動させることで前記共振周波数を可変することを特徴とする請求項1または請求項2記載のミリ波帯フィルタ。
  4. 前記共振周波数可変機構は、
    前記一対の電波ハーフミラーの間の断面長方形の導波路(22b)の短辺に沿った壁面(25c、25d)の間隔を可変して、前記共振周波数を可変することを特徴とする請求項1または請求項2記載のミリ波帯フィルタ。
  5. ミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波をTE10モードで一端から他端に伝搬させる導波路を有する導波管(21、21A、21B)と、
    前記所定周波数範囲の電磁波の一部を透過させ、一部を反射させる特性をもち、前記導波管の導波路の中間部に間隔をもって対向配置され、その間に共振器を形成する一対の電波ハーフミラー(40A、40B)と、
    前記一対の電波ハーフミラーの間に形成される共振器の共振周波数を可変させるための共振周波数可変機構(50)とを有するミリ波帯フィルタの前記共振周波数の可変範囲に対応したフィルタ通過帯域の外側の阻止帯域減衰量増加方法であって、
    前記導波管の端から前記電波ハーフミラーの間の導波路内に、前記フィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域で前記フィルタ通過帯域の下限に近い周波数にカットオフ周波数をもつように口径が狭められた導波路を有するハイパスフィルタ(30)を設けて、前記フィルタ通過帯域より低域側の阻止帯域の減衰量を増加させることを特徴とするミリ波帯フィルタの阻止帯域減衰量増加方法。
  6. 前記ハイパスフィルタの内壁に周回形成した所定深さのチョーク溝(36)からなるバンドリジェクションフィルタ(35)により、前記バンドパスフィルタを通過する電磁波のうち、前記フィルタ通過帯域より高域側の阻止帯域の減衰量増加させることを特徴とする請求項5記載のミリ波帯フィルタの阻止帯域減衰量増加方法。
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