JP2014015342A - カーボンオニオンの作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】COガスを炭素源としてマイクロ波プラズマCVD法を用いて、選択的にカーボンオニオンを作製できる方法を提供する。
【解決手段】COガスを炭素源とし、COガスをマイクロ波によってプラズマ化する工程と、プラズマ化したCOガス中に配置した基板上の触媒を、YAGレーザー若しくはCOレーザーの照射により局所的に高温に加熱する工程と、を備え、基板上にカーボンオニオンを作製することを特徴とする。マイクロ波プラズマCVD法に、YAGレーザー若しくはCOレーザーの照射を援用することにより、カーボンオニオンを選択的に作製できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、COガスを炭素源とするカーボンオニオンの作製方法に関する。
カーボンオニオン(オニオンライクカーボンとも称される)は、カーボンSPがタマネギ状に構成された直径数nmの安定な構造を有したナノ粒子であり、ナノメートルレベルの機械材料への応用のみならず、次世代のナノトライボロジーに適した材料として期待される物質である。
従来、カーボンオニオンの作製方法としては、爆発法による均質なダイヤモンドナノ粒子が供給されるようになったことから、ダイヤモンドナノ粒子の熱アニールによってカーボンオニオンの合成を行う方法が主流である。
しかしながら、ダイヤモンドナノ粒子の熱アニールによるカーボンオニオンの合成によれば、比較的多量のカーボンオニオンが得られるものの、合成時のカーボンの表面拡散により、カーボンオニオン粒子間でのSP結合の形成や、有機溶媒に難溶性を示すなど、薄膜化や分散化に課題がある。
近年、CO削減は重要な課題のひとつである。COは、一酸化炭素(CO)やハイドロカーボン(HC)に比べて、その結合を解離するに必要なエネルギーが極めて高いことから、COの処理は非常に困難である。COの処理方法の1つとして、炭素(C)をカーボンナノ粒子として固定する方法が知られている。
炭素(C)をカーボンナノ粒子として固定する方法として、例えば、排ガス中のCOを一旦COに変換して、このCOを炭素源として、気相成長法(CVD法)により単層カーボンナノチューブを製造する方法が知られている(特許文献1)。
また既に、本発明者は、炭素酸化物含有ガス中の二酸化炭素(COガス)を炭素源として、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを作製できることの知見を得ている(特許文献2)。
しかしながら、上記のマイクロ波プラズマCVD法だけを用いた作製方法を用いた場合、生成されたナノ粒子は、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンが混在しており、それらを分別もしくは選択的に生成することは困難であるといった問題がある。
特開2006−27949号公報 国際公開パンフレットWO2011/004609
上述のように、COガスを炭素源として、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、多層カーボンナノチューブ、カーボンオニオン、ナノカーボンのいずれかを作製できたものの、カーボンオニオンを選択的に作製することは困難であった。
上記状況に鑑みて、本発明は、COガスを炭素源としてマイクロ波プラズマCVD法を用いて、選択的にカーボンオニオンを作製できる方法を提供することを目的とする。
上記問題を解決すべく、本発明者は、実験を積み重ねて本発明に係るカーボンオニオンの作製方法を完成した。
すなわち、本発明のカーボンオニオンの作製方法は、COガスを炭素源とし、COガスをマイクロ波によってプラズマ化する工程と、プラズマ化したCOガス中に配置した基板上の触媒を、YAGレーザー若しくはCOレーザーの照射により局所的に高温に加熱する工程と、を備え、基板上にカーボンオニオンを作製することを特徴とする。
マイクロ波プラズマCVD法に、YAGレーザー若しくはCOレーザーの照射を援用することにより、カーボンオニオンを選択的に作製できる。
ここで、YAGレーザーとは、イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザーのことであり、YAGの結晶において、結晶製造時に他の元素を数%ドープして、結晶を構成する原子の一部が他の元素に置き換わった構造を持つ人工結晶を利用したレーザーも含まれる。例えば、YAG
結晶中のイットリウムを他の希土類元素で置換した種々のYAGレーザーなどである。
また、COレーザー(炭酸ガスレーザー、carbon dioxide laser)は、ガスレーザーの一種であり、気体の二酸化炭素(炭酸ガス)を媒質に赤外線領域の連続波や高出力なパルス波を得るレーザーである。
援用するレーザーに関し、カーボンオニオンの作製に対する波長依存性は特に無く、むしろ照射するパワーに依存する。
また、上記のカーボンオニオンの作製方法において、基板を所定温度に制御し、該基板表面に所定圧力下でCOガスおよびキャリアガスを供給し、該基板表面にYAGレーザー若しくはCOレーザーを照射することが好ましい。
ここで、基板温度は800〜1100℃に制御する。基板温度が低すぎる場合や、高すぎる場合は、基板上に選択的にカーボンオニオンを作製することが困難になる。また、基板表面にCOガスおよびキャリアガスを供給する際の圧力は、900〜1800Paに制御する。あまり圧力は低い場合や圧力が高すぎる場合は、カーボンオニオンは作製されず、アモルファス状炭素が作製されるからである。
また、上記のキャリアガスは、水素あるいは水ガスを用いることが好ましい。
また、基板表面に供給するガスの圧力は略1100Paであり、基板温度は略980℃であることが好ましい。
また、YAGレーザー若しくはCOレーザーは、パルス状レーザーとして照射することが好ましい。パルス状レーザーとして照射する場合、連続レーザーよりも高い出力パワーのレーザーを照射できる。
YAGレーザーの出力エネルギーは、20〜220(mJ/パルス)であることが好ましい。
COレーザーの出力エネルギーは、4.0〜6.0(J/パルス)であることが好ましい。
上記のカーボンオニオンの作製方法により得られたカーボンオニオンは、薄膜性や分散性に優れており、かかるカーボンオニオンを添加した潤滑油は、他のナノカーボン粒子に比較して優れた低摩擦特性、高い潤滑性を有する。
すなわち、本発明のカーボンオニオンの作製方法により得られたカーボンオニオンを分散させて含有させた耐静電性低摩擦塗膜や、得られたカーボンオニオン薄膜を表面に形成させた有機高分子材料や、得られたカーボンオニオンをコーティングした医療用チューブは、その優れた低摩擦特性、高い潤滑性から、他のナノカーボン粒子を分散させて含有させた耐静電性低摩擦塗膜、他のナノカーボン薄膜を表面に形成させた有機高分子材料、他のナノカーボンをコーティングした医療用チューブと比べて、機能性が向上することになる。
上述したように、本発明によれば、COガスを炭素源としてマイクロ波プラズマCVD法を用いて、選択的にカーボンオニオンを作製できるといった効果を有する。
実施例1のカーボンオニオンの作製装置の構成図 実施例1のカーボンオニオンの作製方法のタイミングプロセスチャート 実施例1のSEM観察した結果 実施例1のTEM観察した結果 実施例2のTEM観察した結果 実施例2のSEM観察した結果(水平照射と垂直照射の違い) 実施例2のTEM観察した結果(水平照射と垂直照射の違い) 実施例2のSEM観察した結果(CVD処理時間による違い) 実施例2のTEM観察した結果(CVD処理時間による違い)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
実施例1のカーボンオニオンの作製方法は、COガスをマイクロ波によってプラズマ化する工程と、プラズマ化したCOガス中に配置した基板上の触媒をYAGレーザーの照射により局所的に高温に加熱する工程と、を備え、基板上にカーボンオニオンを作製する方法について詳細に説明する。
図1は、実施例1のカーボンオニオンの作製装置の構成図を示している。
カーボンオニオンの作製は、直径18mm、長さ800mmの石英管10の中で行い、石英管10の周囲にはマイクロ波発振装置9とマッフル炉8が設置されている。COガスとHガス(キャリアガス)7が弁6を介して石英管10内に供給される。真空計3で石英管内のガス圧力を測定している。マイクロ波発振装置9によって、石英管10の中で減圧されたCOガスのプラズマ化、分解を生じさせる。ガスボンベあるいはビニールバッグから供給されるCOガスとHガス(キャリアガス)は、石英管10の左端に設けるスクロールポンプ11によって、一定の流量で流れるようにする。
また、マッフル炉8の設置場所で、マイクロ波発振装置9の近傍付近の石英管10内に、基板を設ける。基板1には、シリコン(Si)基板を用いる。基板1は試料ホルダー2によって垂直に保持する。石英管10の右端に試料観測窓5を取り付け、YAGレーザー発振器4を配置して、試料観測窓5から基板1に対して直接YAGレーザーを照射できるようにしている。
シリコン(Si)表面に予め酸化処理を施し、Si(1,0,0)面上に鉄(純度99.5%)を約5nm蒸着したものを、基板と触媒として用いた。
上記の構成の装置を用いて、COガスをマイクロ波によってプラズマ化させ、そして、プラズマ化したCOガス中に配置した基板上の触媒をYAGレーザーの照射により局所的に高温に加熱させて、基板上にカーボンオニオンを作製した。
上述した通り、マイクロ波発振装置9によって、石英管10の中で減圧されたCOガスのプラズマ化、分解が生じ、すなわち、マイクロ波プラズマCVDが行われる。ここで、マイクロ波は市販の電子レンジに付属する発振周波数2.45GPa, 最大出力500Wのマグネトロンを利用している。
実施例1のマイクロ波プラズマCVD(表中、PECVDと略する)の条件を下記表1に示す。基板は予めアニール処理し加熱している。また、実施例1のYAGレーザーの仕様を下記表2に示す。なお、YAGレーザーは、マイクロ波プラズマCVDを施している最中のみ、直接基板に照射している。実施例1の作製方法のタイミングプロセスチャートを図2に示す。図2において、アニール処理時間Aは30minであり、マイクロ波プラズマCVD処理時間Bは10minである。
実施例1の作製方法の後、基板表面に作製されたナノ粒子について、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)および透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)を用いて観察した。
SEM観察した結果を図3に示す。図3(a)は、基板中心のYAGレーザー照射部近傍のSEM像である。また、図3(b)は、基板端部でYAGレーザー照射部から少し離れた位置のSEM像である。図3(a)からYAGレーザー照射部近傍には、繊維状物質が生成された様子が観察できず、全体的に平たく、触媒の鉄と考えられる微粒子と膜状の堆積物が基板上に観察できた。また、図3(b)からYAGレーザー照射部から少し離れた位置では、短いものの繊維状物質が観察された。
次に、TEM観察した結果を図4に示す。図4(a)では、繊維状物質が観察された。また、図4(c)では、一部に縞状の層が幾重にも重なった板状の物質が観察された。また、図4(c)から縞状の層が球状に閉じている様子も観察された。また、電子線回折像の図4(d)から計算した格子聞距離は約0.334nm
となり、これは代表的なグラファイトの層間距離0.335nmと略同一であることを確認した。よって、この縞状の層はグラファイト層であると判断できる。特に、図4(c)は、カーボンナノウォール(CNW)に近いと考えられる。CNWはグラフェンシートが2〜100枚程度重なった二次元平面構造を有するものである。図4(c)に示した板状のグラファイトも、グラフェンシートが幾重にも重なつた構造を有していることから構造的に同一のものと判断した。一方、図4(b)はグラファイト層が球状になっていることからカーボンオニオンと判断した。
以上説明したように、マイクロ波プラズマCVD装置にYAGレーザーを援用することにより、カーボンオニオンが作製できたのである。
また、マイクロ波プラズマCVD装置にYAGレーザーを援用することにより、カーボンオニオンの作製ができたが、本作製方法は、マイクロ波プラズマCVD法の効果とYAGレーザー照射による光CVD法の効果のいずれかであると考えられる。光CVD法とは、原料ガスに光を照射して、光を化学反応のエネルギーとして用いるCVD 法である。光CVD法の光源としては、低圧水銀ランプや各種放電管、レーザーが用いられ、特にレーザーを用いた場合をレーザーCVD法と呼ばれている。
SEMによる基板表面観察結果の図3によれば、カーボンオニオンが生成している場所はYAGレーザー照射部近傍と考えられる。つまり、このカーボンオニオン生成の空間的局所性から、YAGレーザー照射による効果は、気相中での光分解反応の促進ではなく、レーザー光の直接的な加熱効果による基板表面での熱反応によるものと推察できる。これは、YAGレーザーの波長が1064nmであり赤外領域の光という観点からも、熱反応による効果であると考える。
以上から、実施例1のカーボンオニオンの作製装置内に導入されたCOはマイクロ波によってプラズマ化され、ラジカルや炭素活性種となって、YAGレーザーによって局所的に高温に加熱された活性な鉄触媒に到達して、カーボンオニオンが作製されたと推察できるのである。
実施例2のカーボンオニオンの作製方法は、COガスをマイクロ波によってプラズマ化する工程と、プラズマ化したCOガス中に配置した基板上の触媒をCOレーザーの照射により局所的に高温に加熱する工程と、を備え、基板上にカーボンオニオンを作製する方法について詳細に説明する。
実施例2のカーボンオニオンの作製装置は、実施例1のカーボンオニオンの作製装置の構成図と同様である(図1参照)。
実施例1と同様、カーボンオニオンの作製は、石英管10の中で行い、石英管10の周囲にはマイクロ波発振装置9とマッフル炉8が設置されている。COガスとHガス(キャリアガス)7が弁6を介して石英管10内に供給される。マイクロ波発振装置9によって、石英管10の中で減圧されたCOガスのプラズマ化、分解を生じさせる。COガスとHガス(キャリアガス)は、石英管10の左端に設けるスクロールポンプ11によって、一定の流量で流れるようにする。
また、マッフル炉8の設置場所で、マイクロ波発振装置9の近傍付近の石英管10内に、基板を設ける。基板1は試料ホルダー2によって垂直に保持する。石英管10の右端にZnSeの試料観測窓5を取り付け、COレーザー発振器4を配置して、試料観測窓5から基板1に対して直接COレーザーを照射できるようにしている。
シリコン(Si)表面に予め酸化処理を施し、Si(1,0,0)面上に鉄(純度99.5%)を約5nm蒸着したものを、基板と触媒として用いた。
上記の構成の装置を用いて、COガスをマイクロ波によってプラズマ化させ、そして、プラズマ化したCOガス中に配置した基板上の触媒をCOレーザーの照射により局所的に高温に加熱させて、基板上にカーボンオニオンを作製した。
実施例2のマイクロ波プラズマCVD(表中、PECVDと略する)の条件を下記表3に示す。基板は予めアニール処理し加熱している。また、実施例2のCOレーザーの仕様を下記表4に示す。なお、COレーザーは、マイクロ波プラズマCVDを施している最中のみ、直接基板に照射している。実施例2の作製方法のタイミングプロセスチャートは、実施例1の作製方法のタイミングプロセスチャートである(図2参照)。但し、実施例1と異なり、マイクロ波プラズマCVD処理時間Bが短く、5分間である。
実施例2の作製方法の後、基板表面に作製されたナノ粒子について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。
TEM観察した結果を図5に示す。図5(a)では、繊維状物質が観察された。また、図5(b)では、縞状の層が幾重にも重なった板状の物質や球状化した物質が観察された。また、電子線回折像の図5(c)から計算した格子聞距離は約0.34nm
となり、これは代表的なグラファイトの層間距離0.335nmと略同一であることを確認した。よって、この縞状の層はグラファイト層であると判断できる。特に、図5(b)はグラファイト層が球状になっていることからカーボンオニオンと判断した。
以上説明したように、マイクロ波プラズマCVD装置にCOレーザーを援用することにより、カーボンオニオンが作製できたのである。
ここで、レーザー援用によるマイクロ波プラズマCVDの効果について説明する。
レーザー照射による効果は、原料ガスの光分解反応の促進か基板の加熱効果によるものと考える。原料ガスの光分解反応の促進による効果の場合、基板に直接レーザーが照射されるか否かに依存しないが、基板の加熱による効果の場合、基板に直接レーザーが照射されるか否かに大きく影響する。そこで、レーザー援用による効果を確認するため、基板に対する入射方向を変えた基板上の生成物を確認した。
上記の実施例と同様に、基板を試料ホルダーで担持して、レーザーが基板に対して直接当たる垂直入射の場合と、基板を石英管内に直接設置することでレーザーが基板に直接当たらない水平入射の場合の2通りを行って、生成物を比較した。垂直人射および水平入射の両方共に、マイクロ波プラズマCVD条件,レーザー照射条件は同様とし、それぞれSEM 及びTEMによる観察を行った。SEM による観察結果を図6に示し、TEMによる観察結果を図7に示す。
SEMによる観察結果の図6(a)から、レーザーが基板に対し垂直入射した場合、基板表面は比較的平たく、繊維状物質が長く成長している様子は観察できない。また、図6(b)から、レーザーが基板に対し水平入射した場合、繊維状物質は図6(a)より長く成長している様子が確認できた。またTEMによる観察結果からレーザーが基板に対し垂直入射した場合,繊維状物質が主に観察されているものの、図7(a)のようなグラファイト層が球状化した部分を観察することができた。これに対して、レーザーが基板に対し水平入射した場合では、図7(b)のような繊維状のみしか観察されなかった。このことからレーザーが基板に対して直接当たっているか否かは、生成物に影響していることが判る。
また、YAGレーザーの波長は1064nm,COレーザーの波長は10.6μmで共に赤外領域の光である。レーザーの照射によって原料ガスが光分解するかどうかは、各結合解離エネルギーとYAGレーザーやCOレーザーにおける光子が持つエネルギーの大小関係で判断できる。YAGレーザーやCOレーザーの光子エネルギーに関して、YAG レーザーは112.4kJ/mol,COレーザーは11.24kJ/molとなる。原料ガスとして二酸化炭素と水素を導入していることから、H−H 結合(432kJ/mol)とC=0結合(749kJ/mol)など関係する結合解離エネルギーとYAGレーザーおよびCOレーザーの持つ光子工ネルギーを比較すると、YAG レーザー,COレーザーどちらの場合でも光子エネルギーは、関係する結合解離工ネルギーを下回っている。このことから、H−H 結合やC=0結合の直接結合を切ることはできないことがわかる。つまり、レーザーに依る効果は原料ガスの光分解反応に依る効果ではないと結論できる。
このことから、レーザー照射を援用する効果は、基板の加熱による効果と推察される。従って、基板の更なる加熱は、合成初期段階で鉄微粒子はより活性な状態となり、それに伴い鉄微粒子が炭素のグラファイト化を更に促進することが期待できる。
次に、レーザー照射を援用してマイクロ波プラズマCVD時間の変化による影響について説明する。CVD処理時間を1分,5分,10分,15分と変化させて、基板上に作製される生成物を確認した。
基板には、上記実施例と同様に、酸化処理したSi基板に鉄を蒸着したものを用い,その他のマイクロ波プラズマCVD条件,レーザー照射条件は、上記の表3,表4と同一で行った。SEMによる表面観察結果を図8に示す。またTEM
による観察結果を図9に示す。
図8から合成時間の増加に伴い、繊維状物質の合成量が増加していることが確認できる。特に、図8(a)よりCVD処理時間が1分の場合、ほとんど繊維状物質が成長している様子は確認できない。またTEMによって各試料を観察した結果、CVD処理時間1分,5分の試料で縞状の層が幾重にも重なった板状の物質や縞状の層が球状に閉じている様子が観察された。観察された代表的なTEM像を図9に示す。また電子線回折像の図9(b)から計算した格子間踵離は約0.349nmとなり、これは代表的なグラファイトの層間距離0.335nm
に近似する。よって、この縞状の層はグラファイト層であると判断できる。一方、CVD処理時間10分,15分の試料では繊維状物質は観察されたが、グラファイト層は観察されなかった。
CVD処理時間の増加に伴い、繊維状物質の合成量は増加するが、グラファイト層の合成量は単純には増加しないこと、またCVD処理時間1分の試料で既にグラファイト層が生成されていたことから、グラファイト層は合成初期の段階でのみ生成され、その後グラファイト層の成長から繊維状物質の成長へと移行して行くと推察する。
図9(a)から、CVD処理時間1分の場合では、ほとんど繊維状物質が成長している様子は確認できない。CVD開始から1分以内は、鉄触媒微粒子への炭素の付着及び溶け込みと飽和、グラファイト層の合成が行われていると考える。その後,酸素原子による鉄触媒微粒子の酸化など、触媒微粒子の状熊の変化がグラファイト層の生成から繊維状物質の生成への移行をもたらしていると推察する。最終的には触媒の活性が完全に失われて、繊維状物賃の成長も止まるのであろう。
本発明は、潤滑油、耐静電性低摩擦塗膜、カテーテルなどの医療用チューブの被膜材に好適に用いるカーボンオニオンの作製方法として有用である。
1 基板
2 試料ホルダー
3 真空計
4 レーザー発振器
5 試料観測窓
6 弁
7 COガスとHガス(キャリアガス)
8 マッフル炉
9 マイクロ波発振装置
10 石英管
11 スクロールポンプ
A アニール処理時間
B マイクロ波プラズマCVD処理時間

Claims (11)

  1. COガスを炭素源とし、COガスをマイクロ波によってプラズマ化する工程と、プラズマ化したCOガス中に配置した基板上の触媒を、YAGレーザー若しくはCOレーザーの照射により局所的に高温に加熱する工程と、を備え、前記基板上にカーボンオニオンを作製することを特徴とするカーボンオニオンの作製方法。
  2. 前記基板を所定温度に制御し、
    該基板表面に所定圧力下でCOガスおよびキャリアガスを供給し、
    該基板表面にYAGレーザー若しくはCOレーザーを照射する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のカーボンオニオンの作製方法。
  3. YAGレーザー若しくはCOレーザーは、パルス状レーザーとして照射することを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンオニオンの作製方法。
  4. YAGレーザーの出力エネルギーは、20〜220(mJ/パルス)であることを特徴とする請求項3に記載のカーボンオニオンの作製方法。
  5. COレーザーの出力エネルギーは、4.0〜6.0(J/パルス)であることを特徴とする請求項3に記載のカーボンオニオンの作製方法。
  6. 前記キャリアガスは、水素あるいは水ガスを用いることを特徴とする請求項2に記載のカーボンオニオンの作製方法。
  7. 前記所定圧力が略1100Paであり、前記所定温度が、略980℃であることを特徴とする請求項2に記載のカーボンオニオンの作製方法。
  8. 請求項1〜7の何れかのカーボンオニオンの作製方法により得られたカーボンオニオンを添加した潤滑油。
  9. 請求項1〜7の何れかのカーボンオニオンの作製方法により得られたカーボンオニオンを分散させて含有させた耐静電性低摩擦塗膜。
  10. 請求項1〜7の何れかのカーボンオニオンの作製方法により得られたカーボンオニオン薄膜を表面に形成させた有機高分子材料。
  11. 請求項1〜7の何れかのカーボンオニオンの作製方法により得られたカーボンオニオンをコーティングした医用チューブ。

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