JP2014010888A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本実施の形態の非水電解質二次電池は、短時間あるいは長時間の入出力・充放電を繰り返す際の低温環境下での定入出力時間の低下や、容量維持率の低下を抑止することを目的としている。
【解決手段】
本実施の形態の非水電解質二次電池は、その負極と正極の−20℃での交流抵抗の関係を以下の式を満たすように設定することを特徴としている。
|Z1kHz(正極)−Z1kHz(負極)|/Z1kHz(負極あるいは正極)<0.05 (数式1)
ここで、Z1kHzは、1kHz交流電圧印加時の抵抗大きさ、分母は正極、負極の抵抗の大きい方を表す。
|Z0.01Hz(正極)−Z0.01Hz(負極)|/Z0.01Hz(負極あるいは正極)<1.0 (数式2)
ここで、Z0.01Hzは、0.01Hz交流電圧印加時の抵抗大きさ、分母は正極、負極の抵抗の大きい方を表す。
【選択図】 図1

Description

本発明の実施形態は、非水電解質二次電池に関する。
近年、環境問題の関心の高まりから、自動車ではガソリンを使用しない電気自動車や、ガソリンの使用をできるだけ抑えた電池・モーターを併用したハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車などが徐々に普及しつつある。エネルギー密度の観点から、リチウムイオン二次電池が有望視されている。
このようなガソリンに変わるエネルギー源としての電池は、従来の携帯電話やモバイルPCのような電子機器に用いられていたリチウムイオン二次電池よりも、さらに長寿命、高い入出力特性、−30℃〜60℃付近での幅広い温度での動作が要求される。このような要求を満たすためには、初期の電池内部抵抗を低くし、かつ、その抵抗上昇を抑制させる必要がある。
リチウムイオン二次電池においては、電解液と活物質との副反応、電極内部のバインダーの劣化による活物質、導電助剤および集電体との接触不良などにより、電池内部抵抗上昇が起こる。このような内部抵抗上昇は、大電流を流す入出力特性やレート特性などの低下、電池そのもの発熱量の増大を引き起こし、電池の劣化につながるため、電池内部抵抗上昇を抑制させるためには、電池各種部材の改良等が求められている。
特願2011−187186
本実施の形態の非水電解質二次電池は、短時間あるいは長時間の入出力・充放電を繰り返す際の低温環境下での定入出力時間の低下や、容量維持率の低下を抑止することを目的としている。
本実施の形態の非水電解質二次電池は、その負極と正極の−20℃での交流抵抗の関係を以下の式を満たすように設定することを特徴としている。
|Z1kHz(正極)−Z1kHz(負極)|/Z1kHz(負極あるいは正極)<0.05 (数式1)
ここで、Z1kHzは、1kHz交流電圧印加時の抵抗大きさ、分母は正極、負極の抵抗の大きい方を表す。
|Z0.01Hz(正極)−Z0.01Hz(負極)|/Z0.01Hz(負極あるいは正極)<1.0 (数式2)
ここで、Z0.01Hzは、0.01Hz交流電圧印加時の抵抗大きさ、分母は正極、負極の抵抗の大きい方を表す。
図1は、SOC50%調整時に、−20℃にて測定した正極の交流抵抗と、正極+負極の交流抵抗の周波数依存性を示すグラフである。 図2は、SOC50%調整時に、−20℃にて測定した正極と負極の交流抵抗の周波数依存性を示すグラフである。 図3は、本実施の形態の非水電解質二次電池の構造を示す要部切除斜視図である。
一般的に、電池内部抵抗は、電子の動きを阻害する「電気抵抗」と、電極反応に由来する「反応抵抗」に大きく二つに大別できる。ここで示す電気抵抗とは、材料間等の接触、例えば電池内のタブやリード接続部、電極内活物質と集電体における接触部分の抵抗であったり、部材そのものの抵抗、電解液の電気伝導度等に由来する抵抗を指す。
一方、反応抵抗とは、正極・負極に用いられる活物質内、活物質界面、あるいは電極内でのイオンの動き、反応速度に由来する抵抗を指す。電池の内部抵抗は、これらの電気抵抗と反応抵抗の総和で表すことができる。なお、以後内部抵抗とは、電気抵抗と反応抵抗の総和として定義する。また、電池の内部抵抗は正極の内部抵抗と負極の内部抵抗から構成される。正極と負極の内部抵抗はまた、それぞれの電気抵抗と反応抵抗で構成される。ここで電極と負極の間に存在するセパレータ部分に関しては、正極と負極の反応抵抗部分に含まれることとする。
電気抵抗、反応抵抗といった、電池内部抵抗を分離するためには交流インピーダンス測定法(以下、交流抵抗測定)がよく用いられる。交流抵抗測定とは抵抗の周波数依存性を調べるため、イオンの動きによる反応抵抗と接触等による電気抵抗を簡便に分離することができる。同じ10mΩの内部抵抗を持っていても、電気抵抗が1mΩ、反応抵抗が9mΩであったり、電気抵抗が5mΩ、反応抵抗が5mΩといった区別ができる。例えば10秒間直流電流を印加して、電圧降下の値から算出する直流抵抗は、電気抵抗の他、動きの遅いイオンの動きを反映させた反応抵抗も含まれた総和の電池内部抵抗を反映していると判断でき、電気抵抗と反応抵抗の区別は難しい。
本発明者らは、電池の内部抵抗(電気抵抗と反応抵抗)を正極と負極についてそれぞれ分離して調査、電池劣化させた場合の抵抗の関係について検討した結果、前述の特許文献1のように正極と負極の単に電池内部抵抗の制御だけでなく、正極および負極の電気抵抗と反応抵抗の制御、および、その比率を制御することが重要であることを見出した。
すなわち、本発明者らが、内部抵抗上昇が顕著におこった電池を解析した結果、電池の内部抵抗は、初期状態と比較して正極、負極ともに電気抵抗、反応抵抗ともに上昇していることを確認した。正極、負極の内部抵抗が比較的揃っているケース、つまり前記特許文献1と類似したケースでは、45℃1分間15Cレートの入出力パルスを繰り返し印加するパルスサイクル試験を実施した場合、−20℃での入出力時間の低下や容量維持率の低下が確認された。一方で、正極および負極の内部抵抗が揃っていないケースでは、同様な試験を実施すると、片方の電極だけ内部抵抗によるジュール熱による影響なのか、初期の過程で内部抵抗の高い方だけが劣化しやすく、正極と負極の容量のバランスが崩れ、揃っていない場合に比べて電池劣化がかえって加速しやすいことが分かった。
一方、一見内部抵抗が揃っていても、45℃0.5秒間15Cレートの入出力パルスサイクル試験を実施したところ、上述した内部抵抗が揃っていないケースと同様、−20℃での定入出力時間の低下や容量維持率の低下が確認された。短い時間の入出力パルスサイクルでは、おそらく主に電気抵抗の要素が効いていると推察される。実際劣化する前の電池の正極と負極の交流抵抗を調査した結果、内部抵抗は揃っていたが、電気抵抗が大きく異なった。
電気自動車やハイブリッド自動車などの実際の電池使用時では、短時間の充放電・入出力から長時間の充放電・入出力を複数、ランダムに利用されるため、電池内部抵抗において、正極と負極の各抵抗要素が極力揃っていることが好ましいといえる。
[第1の実施の形態]
以上に詳述した従来の非水電解質二次電池の課題を解決するために、本実施の形態の非水電解質二次電池は、以下の特徴を備えている。
すなわち、本実施の形態に係る非水電解質二次電池は、非水電解質二次電池を25℃環境下で充電深度50%に調整した後、負極と正極の−20℃での交流抵抗値が以下の数式1及び数式2の関係を同時に満たすことを特徴とする。
|Z1kHz(正極)−Z1kHz(負極)|/Z1kHz(負極あるいは正極)≦0.1 (数式1)
ここで、Z1kHzは、1kHz交流電圧印加時の抵抗大きさを、数式1の分母、すなわち「Z1kHz(負極あるいは正極)」は、正極及び負極の抵抗の大きい方を表す。
|Z0.01Hz(正極)−Z0.01Hz(負極)|/Z0.01Hz(負極あるいは正極)≦1.0 (数式2)
ここで、Z0.01Hzは、0.01Hz交流電圧印加時の抵抗大きさ、数式2の分母は上記と同様正極、負極の抵抗の大きい方を表す。
本実施の形態において、交流抵抗を測定するに当たって、非水電解質二次電池を25℃環境下で充電深度50%に調整した後に行うのは、以下の理由による。
充電深度が0%近傍では、50%調整時に比べ、正極の交流抵抗は非常に大きくなり、負極の交流抵抗はかわらないかやや小さくなる傾向がある。一方で充電深度が100%近傍では、50%調整時に比べ、正極の交流抵抗は小さくなる一方で、負極の交流抵抗が非常に大きくなる傾向がある。本来いかなる充電深度でも測定可能だが、1kHzならびに0.01Hzの交流抵抗比率を算出にあたり誤差が大きくなりやすい。精度高く算出するにあたり充電深度が50%であることが好ましい。
本実施の形態の非水電解質二次電池のような、正極と負極の交流抵抗差が小さくなると、単純に正極と負極間の二極での交流抵抗測定にて正極と負極の抵抗分離することが難しくなる。正極と負極の交流抵抗を測定するためには、電池を不活性雰囲気内にて解体し、正極と負極を分離、対極金属リチウムのハーフセルを組み立て、測定することも可能だが、精度よく正極と負極の電気抵抗と反応抵抗を測定するのは難しい。そこで、電池内部に金属リチウムなどの電極を参照極として導入することで、電池を解体せずに正極と負極の抵抗を分離、かつ電気抵抗と反応抵抗を分離することができる。
正極と負極の抵抗差が小さい場合の電池にて、金属リチウム参照極を電池内部、具体的には1cm×1cmサイズ、厚さ1mm程度の金属リチウムを電池内のセパレータと同種のセパレータにて包み、電池の正極と負極の間、中央部分に導入して、正極と負極をそれぞれ作用極と対極に見立てて交流抵抗測定(抵抗の周波数依存性)を実施した。−20℃環境下、充電深度(SOC)を50%に調整して測定した結果を図1および図2に示す。
図1より、正極(図中黒丸)と負極の交流抵抗の和(図中白丸)は、電池の交流抵抗の和(図中実線)にほぼ等しく、交流抵抗は周波数依存性を持つことがわかる。高周波側は主に電気抵抗部分、低周波側は、電気抵抗部分と反応抵抗部分の総和として現れる。電気抵抗部分と反応抵抗部分の明確な分離はこの系ではやや難しいため、便宜上、1kHzの抵抗値を電気抵抗、0.01Hzの抵抗値を内部抵抗、内部抵抗から電気抵抗を差し引いた値を反応抵抗とみなした。図2には負極の交流抵抗(図中×印)を同様に示した。この場合、正極の方が負極よりも若干全体的に交流抵抗が大きく、1kHzの正極と負極の交流抵抗値、0.01Hzの正極と負極の交流抵抗値を読み取ることができる。
|Z1kHz(正極)−Z1kHz(負極)|/Z1kHz(負極あるいは正極)≦0.1 (数式1)
従って、正極と負極の電気抵抗部分の差が小さくことを意味する。電気抵抗の差率が0.1以下の場合、短時間の入出力パルス試験の際の抵抗上昇を抑制することができる。0.1超える場合、抵抗上昇が大きくなりやすくなるほか、容量維持率の低下が大きくなる。正極と負極の1kHz抵抗値が完全に揃っていてもかまわない。
|Z0.01Hz(正極)−Z0.01Hz(負極)|/Z0.01Hz(負極あるいは正極)≦1.0 (数式2)
正極と負極の反応抵抗部分を加えた内部抵抗の差が小さいことを意味する。0.01Hzの抵抗差率が1.0以下の場合、長時間の入出力パルス試験の際の抵抗上昇を抑制することができる。1.0を超えると、抵抗上昇が大きくなりやすくなるほか、容量維持率の低下が大きくなる。正極と負極の0.01Hz抵抗値が完全に揃っていても差し支えない。
これらを同時に満たすことで、短時間から長時間における幅広い入出力パルス試験を実施しても、正極と負極にて均等に劣化が進むため、どちらかの極だけが一方的に劣化、電池劣化そのものを加速させる因子が小さくなるため、結果として抵抗上昇抑制と容量維持率の低下抑制に寄与できる。
本実施の形態において、正極および負極の電気抵抗と反応抵抗を制御するためには、下記のような手法を採用することができる。
すなわち、電気抵抗は、集電体となる面積比率の大小や、集電体の材質、電極塗布量、活物質の電子伝導性、活物質と活物質の間に存在するカーボンブラックなどの導電助剤の量、あるいはその粒子径により制御できる。
具体的には、電気抵抗を制御するために、集電体の面積比率(正極/負極)を1.1以下、0.9以上にすることが好ましく、さらに好ましくは1以下0.95以上である。集電体の材質は正極および負極をアルミニウム、チタン、ニッケルを主たる材質にすることが好ましい。正極と負極の集電体、およびバインダーを除いた部材を直径1cm、厚さ1cmのペレット状に調整、500kg/cmの圧力をかけた場合の25℃電気抵抗率の比率(正極/負極)が、1.1以下0.9以上になるように組み合わせ、調整することが好ましい。
一時的に130℃程度の温度環境下に曝すことでも制御することができる。130℃環境下、3日程度の真空状態で乾燥させると、バインダーの結着性がわずかに変性して電気抵抗が高くなる傾向がある。このようにして正極と負極の抵抗を調整することができる。好ましくは2日以下、さらに好ましくは5時間以上24時間以下である。
同様に反応抵抗もまた、電極塗布量・塗布面積の制御により調整することができる。具体的には、正極と負極の塗布量比(正極/負極)を1.3以下、0.7以上にすることが好ましく、塗布面積比率を1.2以下0.8以上にすることが好ましい。
さらには電解液中に存在する支持塩との副反応で、電極界面に生成するフッ化リチウム量を調整し、反応抵抗を制御できる。特にフッ化リチウムは負極表面に生成しやすく、負極と正極の反応抵抗を最終的に調整するのに好都合である。電池出荷調整時に25℃以上85℃以下の環境下で電池を数日間貯蔵(エージング)を実施することで制御できる。50℃以上80℃以下の環境下で5時間以上24時間以内の貯蔵を実施すること
が好ましい。
[第2の実施の形態]
本実施の形態に係る非水電解質二次電池は、前記第1の実施の形態の電池において、さらに25℃環境下で充電深度50%に調整した後、負極と正極の−20℃での1kHz交流抵抗値が、以下の関係を同時に満たすことを特徴とする。
1kHz(正極)×Q≦30、Z1kHz(負極)×Q≦30 (数式3)
ここで、Z1kHz(正極)およびZ1kHz(負極)は、1kHz交流電圧印加時の抵抗の大きさで、単位はmΩであり、Qは1Cレートでの充電深度0%以上100%以下で表される電池容量で単位はAhである。
ここでの容量とは、SOC100%からSOC0%まで1Cレートでの放電容量(Ah)を指す。この電池の容量は特に規定されるものではない。−20℃での正極および負極の1kHz抵抗をそれぞれ容量にて掛けた値が30を超えると、発熱が起こりやすくなり、電池全体の性能が損なわれやすい。好ましくは20以下であり、さらに好ましくは15以下である。この値は低いほうが好ましいが、電池の構成上の取り扱い等といった現実的な観点から0.1以上であることが好ましい。
[第3の実施の形態]
本実施の形態に係る非水電解質二次電池は、正極および負極のそれぞれの集電体を構成する主たる金属種を同種のものとし、その含有率が何れも90質量%以上であることを特徴とする。
−20℃での1kHz交流抵抗値を一定値以下にする、正極と負極の交流抵抗値を揃えるために、集電体両者にアルミニウムを用いる他、はできるだけ同種の金属種で揃える方が好ましい。強度等を補うため、集電体に異種の金属種を固溶させてもよい。同種金属が90%未満しか含まれない場合、抵抗を揃えるのが困難になる。
[第4の実施の形態]
本実施の形態に係る非水電解質二次電池は、集電体と集電体の表面に形成された正極および負極電極の単位面積あたりの質量比が以下の関係を満たすことを特徴とする。
0.8≦w(正極)/w(負極)≦1.2 (数式4)
ここで、w(正極)およびw(負極)は集電体と集電体の表面に形成された正極および負極電極面積の単位面積あたりの質量を表す。
集電体と集電体の両面に塗られた正極および負極電極の単位面積あたりの質量比が0.8未満、1.2を超えると正極と負極の内部抵抗のバランスが崩れやすくなる。好ましい範囲は0.9以上1.1以下である。
[第5の実施の形態]
本発明に係る非水電解質二次電池は、正極と負極の集電体にアルミニウムを主体とする金属を用い、負極活物質にリチウムチタン酸化物を用いることを特徴とする。
質量、抵抗の観点から集電体はアルミニウムを主体とするのが好ましく、あわせて還元電位での電気化学的な安定性から、負極活物質はリチウムチタン酸化物を用いることが好ましい。
正極と負極の集電体にアルミニウムを主体とする金属を用いると、簡便に軽量にできるため、エネルギー密度の高い非水電解質二次電池を作製できる。また、加工が容易でかつ簡便に電気抵抗を調整することができる。特にアルミニウム集電体はリチウム基準電位にて0.5V近傍でリチウムと反応するため、0.1V付近で負極として機能するようなグラファイトあるいはSi、Sn合金などは用いることができない。したがって0.5Vを超える電位にて負極として機能する活物質が要求される。例えばFeSなども好適ではあるが、反応抵抗比制御を考慮すると、負極活物質はリチウムチタン酸化物が最も好都合である。さらに好ましくはスピネル型の結晶構造を有する、Li4+xTi12(0≦x≦3)で表わされる負極化合物がさらに好ましい。
以下、上記各実施の形態について、図面を参照してさらに詳細に説明する。図3は、薄型非水電解質二次電池の部分切欠斜視図である。電池1は、ラミネートフィルム製の外装袋2と、外装袋2内に収容された扁平型の電極群3を備える。電極群3は、正極4、負極5、及びセパレータ6から構成されており、偏平形状を有している。正極4と負極5は、間にセパレータ6を挟んで積層されている。積層された正極4、負極5、及びセパレータ6は、渦巻き状に捲回されている。正極4には帯状の正極端子7が接続されている。負極5には帯状の負極端子8が接続されている。正極端子7及び負極端子8の端部は、外装袋2の開口から外部に延出されている。外装袋2内にはさらに、図示しない非水電解質が収容されている。外装袋2の開口は、正極端子7及び負極端子8を挟んだ状態でヒートシールされる。これによって、外装袋2は密閉されている。
ついで、本実施形態の非水電解質二次電池に用いられる負極、非水電解質、正極、セパレータについて詳細に説明する。
<負極>
負極は、負極集電体及び負極活物質層を備える。負極活物質層は、負極活物質、及び任意に導電剤及び結着剤を含む。負極活物質層は、負極集電体の片面又は両面に形成される。負極活物質としては、公知の非水電解質二次電池において用いられる材料を使用することができるが、本実施の形態においては、リチウムチタン酸化物が適している。それらの酸化物は、リチウムイオン吸蔵電位が0.4V(対Li/Li)以上であることが好ましい。リチウムイオン吸蔵電位が0.4V(対Li/Li)以上である酸化物の例には、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(Li4+xTi12)、及び、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(Li2+xTi)が含まれる。ここで、xは、いずれも0以上3以下の範囲である。チタン酸化物(例えばTiO)は、電池の充放電によってリチウムを吸蔵し、リチウムチタン酸化物になる。
負極活物質は、上記の酸化物のいずれか一つを含んでもよいが、二種以上の酸化物を含んでもよい。負極活物質は、一次粒子の平均粒径が5μm以下であることが好ましい。一次粒子の平均粒径が5μm以下である負極活物質は、十分な表面積を有する。それ故、良好な大電流放電特性を有する。負極活物質は、比表面積が1〜10m/gであることが好ましい。比表面積が1m/g以上である負極活物質は、十分な表面積を有する。それ故、良好な大電流放電特性を有する。比表面積が10m/g以下である負極活物質は、非水電解質との反応性が低い。それ故、充放電効率の低下や貯蔵時のガス発生が抑制される。
導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。アルカリ金属の吸蔵性が高く、また、導電性が高い炭素質物が好適に用いられる。
結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
負極活物質層において、負極活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ、70〜95重量%、0〜25重量%、2〜10重量%の割合で含まれることが好ましい。負極集電体として金属箔が用いられる。金属は、Al、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiから成る群より選択される一以上の元素が90%以上含まれることが好ましく、抵抗を揃える観点から、正極と同じ集電体を用いることが好ましい。
負極は、以下のように作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に懸濁してスラリーを調製する。溶媒として、例えば、Nメチルエチルピロリドン(NMP)を用いることができる。このスラリーを負極集電体の片面又は両面に塗布して乾燥し、負極活物質層を形成する。次いで、負極活物質層を負極集電体と共に圧延する。
<非水電解質>
非水溶媒の例には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)のような環状カーボネート;環状カーボネートと該環状カーボネートより低粘度の非水溶媒(以下第2の溶媒)との混合溶媒が含まれる。
第2の溶媒の例には、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)又はジエチルカーボネート(DEC)のような鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル;テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランのような環状エーテル;ジメトキシエタン又はジエトキシエタンのような鎖状エーテルが含まれる。
非水溶媒は、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを含む混合溶媒であることが好ましい。電解質の例には、アルカリ塩が含まれる。好ましくはリチウム塩が用いられる。リチウム塩の例には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、及びトリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)が含まれる。好ましくは、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)又は四フッ化硼酸リチウム(LiBF)が用いられる。
<正極>
正極は、正極集電体及び正極活物質層を備える。正極活物質層は、正極活物質、及び任意に導電剤及び結着剤を含む。正極活物質層は、正極集電体の片面又は両面に形成される。
正極活物質としては、非水電解質二次電池において用いられる材料を使用することができるが、本実施の形態においては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、及び、リチウム含有リン酸化合物等が適している。リチウムマンガン複合酸化物の例には、LiMnのような複合酸化物、及び、例えば、Li(MnAl(ここで、x+y=1である)のようなMnの一部を異種元素で置換した、異種元素含有リチウムマンガン複合酸化物が含まれる。
リチウムニッケル複合酸化物の例には、LiNiOなどの酸化物、及び、例えば、Li(NiMnCo)O及びLi(NiCoAl)O(ここで、x+y+z=1である)のようなNiの一部を異種元素で置換した、異種元素含有リチウムニッケル複合酸化物が含まれる。
リチウム含有リン酸化合物の例には、LiFePOなどのリン酸化物、及び、Li(FeMn)PO(ここで、x+y=1である)のような、LiFePOの一部のFeを異種元素で置換した異種元素を含有するリチウム含有リン酸化物が含まれる。
導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。
結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
正極活物質層において、正極活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ、80〜95重量%、3〜18重量%、2〜7重量%の割合で含まれることが好ましい。
正極集電体として金属箔が用いられる。金属は、Al、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiから成る群より選択される一以上の元素が90%以上含まれることが好ましく、抵抗を揃える観点から、負極と同じ集電体を用いることが好ましい。
正極は、以下のように作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を適切な溶媒に懸濁してスラリーを調製する。溶媒として、例えば、Nメチルエチルピロリドンを用いることができる。このスラリーを正極集電体の片面又は両面に塗布して乾燥し、正極活物質層を形成する。次いで、正極活物質層を正極集電体と共に圧延する。
<セパレータ>
セパレータは、正極と負極の間に配置され、正極と負極が接触するのを防止する。セパレータは、絶縁性材料で形成される。また、セパレータは、正極及び負極の間を電解質が移動可能な形状を有する。セパレータの例には、合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム、及び、セルロース系のセパレータが含まれる。
<製造方法>
このように作製した負極と、正極及びセパレータを用いて電極群を作製する。正極、第1のセパレータ、負極及び第2のセパレータをこの順で重ねて積層体を作製し、この積層体を、負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回する。捲回した積層体を、加熱しながらプレスすることにより、偏平状の電極群を作製することができる。上記のように作製した電極群を、外装袋の中に収容し、非水電解質を注入して、外装袋を密封することにより、電池を作製することができる。
<抵抗測定方法>
正極、負極の測定は以下のようにして実施される。まず、1CレートにてSOC100%からSOC0%までの放電容量を測定した後、再び充電を実施、SOC50%に調整した電池を不活性ガス雰囲気下において、正極と負極の層の間に、金属リチウムの参照極を導入した。正極の交流抵抗を測定するには、作用極に正極を、対極に負極を見立て、三極式の電池に仕上げた。負極の交流抵抗を測定するには、作用極に負極を、対極に正極を見立てた。参照極は、厚さ1mm、1cm×1cmサイズに切り出した金属リチウムをニッケルのリードを用いて電池外部へと接続した。正極と負極の間での短絡を避けるため、金属リチウム表面を、電池内にて用いているセパレータと同じ素材のセパレータにてくるむことが好ましい。また、参照極は測定誤差を排除するため、正極と負極電極のそれぞれ中心位置に設置した。
参照極を導入した電池を−20℃環境下で2時間待機させた後、交流抵抗測定を実施した。交流抵抗測定の際は、5mVの振幅にて交流電圧を印加させて1kHzから0.01Hzの範囲まで測定した。交流抵抗測定に際して、ソーラトロン社の周波数応答アナライザ(FRA)1260型を用いたが、その他市販されているFRAで支障ない。
以上の実施形態によれば、1秒未満の短時間の入出力パルスサイクルおよび、長時間の入出力パルスサイクル実施時の容量維持率の低下抑制と抵抗上昇抑制が改善された非水電解質二次電を提供することができる。
なお、上記の実施形態では、電極群がラミネートフィルム製外装袋に収容された非水電解質二次電池を例示したが、これに限定されず、例えば金属製の缶を外装部材として用いることもできる。
(実施例1)
<負極の作製>
負極活物質として、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物(LiTi12)粉末を準備した。LiTi12粉末、グラファイト、及びPVdFを、それぞれ90重量%、3重量%、及び4重量%の割合でNMPに加え、ガラスビーズを用いて30分間混合し、負極用スラリーを調製した。
負極用スラリーを厚さ12μmの99%アルミニウムで占められる金属箔集電体の両面に塗布し、乾燥して、負極活物質層を形成した。負極活物質層を集電体と共にプレスすることにより負極を作製した。得られた負極電極を110℃、10時間真空乾燥を実施した。
<正極の作製>
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(LiNi0.33Mn0.33Co0.33)とリチウムコバルト酸化物(LiCoO)の粉末、アセチレンブラック、グラファイト、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、それぞれ60重量%、32重量%、3.5重量%、1.5重量%、及び3重量%の割合でNMPに加えて混合し、正極用スラリーを調製した。
正極用スラリーを厚さ15μmの99%アルミニウムで占められる金属箔集電体の両面に塗布し、乾燥して、正極活物質層を形成した。正極活物質層を集電体と共にプレスすることにより正極作製した。得られた正極電極を130℃、8時間真空乾燥を実施した。
<集電体を含む電極の単位重量比率>
集電体両面に塗布した電極から2cm×2cmほど切り抜き、正極および負極の重量の測定を実施、w(正極)/w(負極)の比率を算出したところ、1.03であった。なお、電解液が付着している場合は、メチルエチルカーボネート溶媒(MEC)で10分間洗浄した後、真空状態で2時間保持した。その後大気雰囲気下で同様に質量測定を実施した。
<電極群の作製>
上記で作製した負極及び正極、セパレータとして厚さ20μmのポリエチレン製多孔質フィルムを用い、電極群を作製した。正極、第1のセパレータ、負極及び第2のセパレータをこの順で重ねて積層体を作製した。この積層体を、負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回した。捲回した積層体を、90℃で加熱しながらプレスすることにより、偏平状の電極群を作製した。
得られた電極群を袋状の外装部材に収容し、80℃で24時間真空乾燥した。外装部材は、厚さが40μmのアルミニウム箔と、該アルミニウム箔の両面に形成されたポリプロピレン層から構成された、厚さが0.3mmのラミネートフィルムで形成されたものである。
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを体積比で1:2になるように混合して混合溶媒を調製した。この混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0モル/Lの濃度で溶解して非水電解液を調製した。
<電池の作製と交流抵抗測定>
電極群を収容した外装部材に非水電解液を注入し、密封して、図3に示すような非水電解質二次電池を作製した。この電池の1C容量は、1.5Ahであった。その後、SOC50%に調整して電極郡の中央部に金属リチウムを用いた参照極を導入した。参照極と正極の間の電位は3.82V、参照極と負極の間の電位は1.55Vを示しており、参照極の機能が果たされていることを確認した。
その後、参照極と正極、参照極と負極の間に電圧端子をつなぎ、電流端子を正極と負極の間をつなぐことで、正極と負極の交流抵抗測定を実施した。恒温槽内に電池を移し、−20℃2時間待機した後に1kHzと0.01Hzの抵抗値を測定した。正極と負極の抵抗の差分を計算した結果は1kHzにて0.07、0.01Hzにて0.68であった。正極と負極の1kHz抵抗に1C容量、1.5Ahをかけた値は、正極16mΩ・Ah、負極15mΩ・Ahであった。
(実施例2〜8)
負極および正極電極の混合比率、電極塗布量、電極乾燥温度および時間等を適宜調整し、使用した集電体の種類、集電体を含む単位重量あたりの重量比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。また作製した電池について実施例1同様に、1C容量を測定し交流抵抗をそれぞれ測定、各値を算出した結果を表1にあわせて示した。
(比較例1〜2)
比較例1では負極活物質にリチウムチタン酸化物を、比較例2では負極活物質をグラファイトとして、負極および正極電極の混合比率、電極塗布量、電極乾燥温度および時間等を適宜調整し、使用した集電体の種類、集電体を含む単位重量あたりの重量比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電池を作製した。また作製した電池について実施例1同様に、1C容量を測定し交流抵抗をそれぞれ測定、各値を算出した結果を表1にあわせて示した。
<パルス充放電サイクル試験>
実施例1〜8および比較例1〜2の電池をそれぞれ2つ用意して、45℃環境下にて、0.5秒間15Cレートでのパルス充放電を100000サイクル実施した。また同様に1分間15Cレートでのパルス充放電を1000サイクル実施した。その後25℃環境下にて1C容量を測定して、パルス充放電を実施する前の容量との比較(容量維持率;%)を算出した。また容量測定後、−20℃における正極と負極の交流抵抗測定を実施し、内部抵抗(正極と負極の内部抵抗の和)を算出し、試験前の状態との比較(増加率)を算出した。その結果の一覧を表2に示した。
実施例1〜8の電池は何れも、0.5秒間、1分間のパルス充放電にて容量の維持率が高く、かつ抵抗の増加率も小さかった。一方で比較例1〜2はどちらかの劣化が目立ったり、あるいは全体的に劣化が大きい傾向があった。
以上の結果から、正極と負極の電気抵抗と反応抵抗の制御により幅広い時間のパルス充放電に対して、容量劣化や抵抗上昇を抑制できることが示された。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…非水電解質二次電池、2…外装袋、3…電極群、4…正極、5…負極、6…セパレータ、7…正極端子、8…負極端子。

Claims (5)

  1. 正極活物質層を含む正極と、
    負極活物質層を含む負極と、
    非水電解質と、
    を具備する非水電解質二次電池であって、該非水電解質二次電池を25℃環境下で充電深度50%に調整した後、前記負極と前記正極の−20℃での交流抵抗値が以下の関係を同時に満たすことを特徴とする非水電解質二次電池。
    |Z1kHz(正極)−Z1kHz(負極)|/Z1kHz(負極あるいは正極)≦0.1 (数式1)
    ここで、Z1kHzは、1kHz交流電圧印加時の抵抗大きさ、分母は正極、負極の抵抗の大きい方を表す。
    |Z0.01Hz(正極)−Z0.01Hz(負極)|/Z0.01Hz(負極あるいは正極)≦1.0 (数式2)
    ここで、Z0.01Hzは、0.01Hz交流電圧印加時の抵抗大きさ、分母は正極、負極の抵抗の大きい方を表す。
  2. 請求項1記載の非水電解質二次電池において、25℃環境下で充電深度50%に調整した後、負極と正極の−20℃での1kHz交流抵抗値が、以下の関係を同時に満たすことを特徴とする非水電解質二次電池。
    1kHz(正極)×Q≦30、Z1kHz(負極)×Q≦30 (数式3)
    ここで、Z1kHz(正極)およびZ1kHz(負極)は、1kHz交流電圧印加時の抵抗の大きさで単位はmΩ、Qは1Cレートでの充電深度0%から100%で表される電池容量で単位はAhである。
  3. 請求項1記載の非水電解質二次電池において、正極および負極のそれぞれの集電体を構成する金属種の含有率がそれぞれ90質量%以上であることを特徴とする非水電解質二次電池。
  4. 請求項1記載の非水電解質二次電池において、集電体と、集電体表面に形成された正極及び負極電極の単位面積あたりの質量比が以下の関係を満たすことを特徴とする非水電解質二次電池。
    0.8≦w(正極)/w(負極)≦1.2 (数式4)
    ここで、w(正極)およびw(負極)は、集電体及び集電体の表面に形成された正極もしくは負極電極の単位面積あたりの質量である。
  5. 請求項1記載の非水電解質二次電池において、正極及び負極の集電体としてアルミニウム系金属を用い、負極活物質としてリチウムチタン酸化物を用いることを特徴とする非水電解質二次電池。
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