JP2014007859A - 電力変換装置の駆動回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度変化等があっても駆動するSW素子の実動デューティの変動を抑制することのできる駆動回路を提供する。
【解決手段】指令信号SUに基づいた第1信号S1を入力し、指令デューティを検出して、該指令デューティに基づいた第2信号S2を出力する指令デューティ検出部20と、SW素子QU,QLの実動作に基づいた第3信号S3aを入力し、実動デューティを検出して、該実動デューティに基づいた第4信号S4を出力する実動デューティ検出部30U,30Lと、第2信号S2と第4信号S4を入力し、指令デューティと実動デューティを比較して、比較結果に基づいた第5信号S5を出力するデューティ比較部40とが設けられ、ゲート制御部1U,1Lが、第5信号S5を入力して、実動デューティが変動しない様に、ゲート信号GUのパルス幅を制御する、電力変換装置10の駆動回路10U,10Lとする。
【選択図】図1
【解決手段】指令信号SUに基づいた第1信号S1を入力し、指令デューティを検出して、該指令デューティに基づいた第2信号S2を出力する指令デューティ検出部20と、SW素子QU,QLの実動作に基づいた第3信号S3aを入力し、実動デューティを検出して、該実動デューティに基づいた第4信号S4を出力する実動デューティ検出部30U,30Lと、第2信号S2と第4信号S4を入力し、指令デューティと実動デューティを比較して、比較結果に基づいた第5信号S5を出力するデューティ比較部40とが設けられ、ゲート制御部1U,1Lが、第5信号S5を入力して、実動デューティが変動しない様に、ゲート信号GUのパルス幅を制御する、電力変換装置10の駆動回路10U,10Lとする。
【選択図】図1
Description
本発明は、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのスイッチング素子(以下、SW素子と略記)を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する、電力変換装置の駆動回路に関する。
直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路が、例えば、特開2011−55703号公報(特許文献1)に開示されている。
図20は、上記電力変換装置において用いられる従来の代表的な駆動回路を例示した図で、電力変換装置9の駆動回路9Uの基本構成を示した図である。尚、図20では、上アームのSW素子QUを駆動するための駆動回路9Uだけが図示されているが、下アームのSW素子QLについても、同様の駆動回路が接続されている。
図20に示す電力変換装置9は、直流電源(+B)に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子(外部MOS)QU,QLを備え、該2つのSW素子QU,QLの接続点Pから、波線で示した先にある負荷(図示省略)に電力を供給する。例えば、車に搭載される3相モータを制御するためのインバータとして利用されている電力変換装置は、ブリッジ接続された3本のアーム(上アーム+下アーム)で構成され、各SW素子に所定のPWMパルスを印加してスイッチングすることで、入力された直流電源からモータ駆動のための交流電力を得ている。尚、誘導性の負荷を駆動するインバータ回路では、各SW素子に対して逆並列にダイオードが接続され、いずれかのSW素子がOFFした時、モータに流れていた電流が別アームのダイオードを介して還流するようになっている。また、インバータ回路では、通常、上アームと下アームのSW素子が同時にONして電源短絡が発生するのを防ぐため、上アームと下アームのSW素子が同時にOFF状態となるデッドタイムが設けられている。
図20に示す電力変換装置9の駆動回路9Uは、通常、ICの内部回路として構成され、破線で囲ったゲート制御部1Uを備える。ゲート制御部1Uは、SW素子QUをパルス駆動させるための指令信号SUを入力し、該SW素子QUへのゲート信号GUを出力する。ゲート制御部1Uは、例えば、ゲート信号GUのON電圧のレベルを制御するチャージポンプ回路CP、指令信号SUをレベルシフトさせるレベルシフト回路LU、および図のように接続された上段と下段のMOSトランジスタからなる出力素子(内部MOS)W1,W2を備えた構成である。
図21は、図20に示した駆動回路9Uの問題点を説明する図で、指令信号SUのデューティ(パルス幅T0)、出力素子W1,W2の温度、およびゲート信号GU(SW素子QUのゲート電圧Vgs)のデューティ(パルス幅T1〜T4)の間の関係を模式的に並べて示した図である。
図20に示す電力変換装置9の駆動回路9Uでは、図21に示すように、指令信号SUのデューティ(パルス幅T0)が一定であっても、ゲート制御部1Uにおける出力素子W1,W2の温度が変化すると、出力されるゲート信号GUのデューティが該温度変化に依存して変動する。このため、インバータを構成するSW素子(外部MOS)QUのON,OFF速度も、図のゲート信号GUに倣って同じように変動する。また、指令信号SUのデューティとゲート信号GUのデューティが一致している場合であっても、SW素子QUの温度が変化すると、該温度変化に依存してSW素子QUの実動デューティも変化してしまう。このため、負荷電流のデューティが変動し、例えば電動パワーステアリング(EPS)のような誘導性の負荷のモータ駆動に適用した場合には、トルク変動やトルクリップル増加等の悪影響が生じる。
そこで本発明は、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路であって、温度変化等があっても駆動するSW素子の実動デューティの変動を抑制することのできる駆動回路を提供することを目的としている。
本発明は、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路であって、SW素子をパルス駆動させるための指令信号を入力し、該SW素子へのゲート信号を出力するゲート制御部を備える駆動回路において、指令信号に基づいた第1信号を入力し、指令信号の指令デューティを検出して、該指令デューティに基づいた第2信号を出力する指令デューティ検出部と、SW素子の実動作に基づいた第3信号を入力し、SW素子の実動デューティを検出して、該実動デューティに基づいた第4信号を出力する実動デューティ検出部と、第2信号と第4信号を入力し、指令デューティと実動デューティを比較して、該比較結果に基づいた第5信号を出力するデューティ比較部とが設けられ、ゲート制御部が、第5信号を入力して、実動デューティが変動しない様に、ゲート信号のパルス幅を制御することを特徴としている。
上記電力変換装置の駆動回路は、直流電力を交流電力に変換するインバータやDC−DCコンバータ等への適用が可能で、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路である。上記電力変換装置の駆動回路は、通常、ICの内部回路として構成され、上記SW素子をパルス駆動(例えばPWM駆動)させるための指令信号を入力し、該SW素子のゲートを駆動するゲート信号を出力する、ゲート制御部を備えている。
インバータ等に利用される電力変換装置の従来の駆動回路では、指令信号のデューティが一定であっても、例えばゲート制御部における最終段の出力素子が温度変化すると、出力されるゲート信号のデューティが該温度変化に依存して変動し、インバータを構成するSW素子のON,OFF速度もゲート信号に倣って変動する。このため、負荷電流のデューティが変動し、例えば電動パワーステアリング(EPS)のECUに適用した場合には、モータ駆動にトルク変動やトルクリップル増加等の悪影響が生じるという問題があった。
そこで、上記電力変換装置の駆動回路においては、指令信号の指令デューティを検出する指令デューティ検出部と、SW素子の実動作に基づいた実動デューティを検出する実動デューティ検出部と、前記指令デューティと実動デューティを比較するデューティ比較部とが設けられている。そして、該比較結果に基づいて、ゲート制御部が、前記実動デューティが温度変化等に依存して変動しない様に、ゲート信号のパルス幅を制御するようにしている。
これによれば、例えばゲート制御部における最終段の出力素子の温度変化等によって発生するSW素子の実動デューティの変動を、実動デューティ検出部で検出する。そして、デューティ比較部で指令デューティとの差分を計測し、ゲート制御部でSW素子の実動デューティが変動しない様に出力するゲート信号のパルス幅を補正することで、実動デューティの変動をキャンセルすることができる。このため、例えば電動パワーステアリング(EPS)のような誘導性の負荷のモータ駆動に適用した場合、トルク変動やトルクリップル増加等を抑制することができる。
以上のようにして、上記した電力変換装置の駆動回路は、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路であって、温度変化等があっても駆動するSW素子の実動デューティの変動を抑制することのできる駆動回路とすることができる。
上記電力変換装置の駆動回路は、実動デューティを精度よく検出するために、例えば、実動デューティ検出部が、前記接続点の電位を前記第3信号としてモニタし、実動デューティを検出する構成とすることができる。
これによれば、SW素子の閾値電圧Vthを考慮することなく、該SW素子の実動デューティを検出することができるため、回路構成が簡単になる。
また、実動デューティを精度よく検出するために、例えば、SW素子の温度を検出するための直列接続されたセンス素子とセンス抵抗が、該SW素子に並列接続されてなり、実動デューティ検出部が、該SW素子のゲート電位とソース電位を第3信号としてモニタし、検出された温度に対応する該SW素子の閾値電圧を参照して、実動デューティを検出する構成としてもよい。
この場合には、各温度に対応したSW素子の閾値電圧Vthを、EEPROMなどの記憶媒体に予め記憶させておく。そして、該SW素子の温度をセンス素子とセンス抵抗で測定し、該SW素子の温度に対応した閾値電圧Vthを用いて、実動デューティを検出する。尚、SW素子の温度を精度よく検出するため、SW素子とセンス素子は、1つのパッケージになっているのが望ましい。また、上記記憶媒体は、駆動回路を構成するICの内部だけでなく、マイコンなどの外部素子に内蔵されたものを使用してもよい。
また、実動デューティ検出部が、SW素子のゲート電位とソース電位を第3信号としてモニタし、SW素子の閾値電圧を測定して、実動デューティを検出する構成とすることもできる。
この場合には、上記したSW素子の温度測定と予め記憶している各温度に対応した閾値電圧Vthを用いる替わりに、駆動回路を構成するICの内部で、SW素子の閾値電圧Vthを直接測定して実動デューティを検出する。これによれば、実動デューティをより正確に検出することができる。
尚、実動デューティを検出するにあたって、例えばSW素子の温度変化が小さく、閾値電圧Vthの変動を考慮する必要がない場合には、実動デューティ検出部が、SW素子のゲート電位を第3信号としてモニタし、実動デューティを検出する構成としてもよい。
以上に説明したいずれかの方法で、SW素子の実動デューティを検出することができる。尚、指令信号の指令デューティは、該指令信号から簡単に検出することができるし、指令信号に付随する情報として別途入力することもできる。
次に、上記電力変換装置の駆動回路は、指令デューティ検出部が、指令デューティをDC電圧に変換して第2信号として出力し、実動デューティ検出部が、実動デューティをDC電圧に変換して第4信号として出力し、デューティ比較部が、該第2信号と第4信号を差動増幅して第5信号として出力する、アナログの回路構成とすることができる。
また、指令デューティ検出部が、指令デューティを短パルスでカウント計測して第2信号として出力し、実動デューティ検出部が、実動デューティを短パルスでカウント計測して第4信号として出力し、デューティ比較部が、該第2信号と第4信号の比較結果を第5信号として出力する、デジタルの回路構成としてもよい。
次に、上記電力変換装置の駆動回路は、第5信号を基にしてゲート信号のパルス幅を制御するにあたり、以下の構成を採用することができる。
例えば、ゲート制御部が、ゲート信号のON電圧のレベルを設定するチャージポンプ回路を有してなる場合には、チャージポンプ回路に第5信号を入力して、該チャージポンプ回路がゲート信号のON電圧のレベルを制御することにより、該ゲート信号のパルス幅を制御する構成とすることができる。
また、ゲート制御部が、ゲート信号のON電圧のレベルを設定するブートストラップ回路を有してなる場合には、ブートストラップ回路において電荷を蓄積するコンデンサへの電圧設定部に第5信号を入力して、該ブートストラップ回路がゲート信号のON電圧のレベルを制御することにより、該ゲート信号のパルス幅を制御することができる。
さらに、ゲート制御部が、SW素子のゲートの入力抵抗を切り替える入力抵抗切替回路を有してなる構成とし、該入力抵抗切替回路に第5信号を入力して、該入力抵抗切替回路がゲート信号の立ち上り速度および立ち下り速度を切り替えることにより、ゲート信号のパルス幅を制御する構成としてもよい。
尚、上記電力変換装置の駆動回路は、起動時における安定動作を確保するため、リセット解除されるまでデューティ比較部の入力を所定の初期値に固定する、初期値固定回路を有してなる構成とすることが好ましい。
これにより、リセット解除されるまで実動デューティのフィードバックを停止することができ、起動時においても安定して動作させることができる。
前述したが、上記した電力変換装置の駆動回路は、例えば、電力変換装置が直流電力を交流電力へ変換するインバータであってよい。また、例えば、負荷が、誘導性の負荷である、モータであってよい。
以上のようにして、上記した電力変換装置の駆動回路は、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路であって、温度変化等があっても駆動するSW素子の実動デューティを一定に保つことのできる駆動回路とすることができる。
従って、上記した電力変換装置の駆動回路は、電力変換装置が過酷な環境下で使用される車載用であり、直流電源が車のバッテリである場合に好適である。例えば、上記した電力変換装置の駆動回路は、電動パワーステアリング(EPS)の電子制御装置(ECU)に適用するインバータの駆動回路に利用することができ、ICの内部回路として構成することができる。
本発明は、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する、電力変換装置の駆動回路に関する。以下、本発明を実施するための形態を、図に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る上記電力変換装置の駆動回路の一例を示した図である。図1(a),(b)は、電力変換装置10において、それぞれ、上アームと下アームのSW素子QU,QLを駆動するための駆動回路10U,10Lの基本構成を示したブロック図である。また、図2と図3は、図1(a),(b)のブロック図で示した駆動回路10U,10Lについて、それぞれの具体的な回路構成の一例を示した図である。尚、図1(a)と図2に示す電力変換装置10および上アームの駆動回路10Uにおいて、図20に示した電力変換装置9および上アームの駆動回路9Uと同様の部分については、同じ符号を付した。
図1に示す電力変換装置10は、図20に示した電力変換装置9と同様に、直流電源(+B)に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子QU,QLを備え、該2つのSW素子QU,QLの接続点Pから、波線で示した先にある負荷(図示省略)に電力を供給する。図1の電力変換装置10は、直流電力を交流電力に変換するインバータやDC−DCコンバータ等への適用が可能である。
例えば、車に搭載される3相モータを制御するためのインバータとして利用されている電力変換装置は、ブリッジ接続された3本のアーム(上アーム+下アーム)で構成され、各SW素子に所定のPWMパルスを印加してスイッチングすることで、入力された直流電源からモータ駆動のための交流電力を得ている。尚、誘導性の負荷を駆動するインバータ回路では、各SW素子に対して逆並列にダイオードが接続され、いずれかのSW素子がOFFした時、モータに流れていた電流が別アームのダイオードを介して還流するようになっている。また、インバータ回路では、通常、上アームと下アームのSW素子が同時にONして電源短絡が発生するのを防ぐため、上アームと下アームのSW素子が同時にOFF状態となるデッドタイムが設けられている。
また、図1(a),(b)に示す電力変換装置10の駆動回路10U,10Lは、図20に示した電力変換装置9の駆動回路9Uと同様に、通常、ICの内部回路として構成され、破線で囲ったゲート制御部1U,1Lを備える。ゲート制御部1U,1Lは、SW素子QU,QLをパルス駆動(例えばPWM駆動)させるための指令信号SU,SLを入力し、該SW素子QU,QLのゲートを駆動するゲート信号GU,GLを出力する。図1(a)に示す上アームのゲート制御部1Uは、例えば図2に示すように、ゲート信号GUのON電圧のレベルを制御するチャージポンプ回路CP、指令信号SUをレベルシフトさせるレベルシフト回路LU、および図のように接続された上段と下段のMOSトランジスタからなる出力素子(内部MOS)W1,W2を備えた構成である。また、図1(b)に示す下アームのゲート制御部1Lは、例えば図3に示すように、ゲート信号GLのON電圧のレベルを制御するレギュレータ回路RG、指令信号SLをレベルシフトさせるレベルシフト回路LL、および図のように接続された上段と下段のMOSトランジスタからなる出力素子(内部MOS)W1,W2を備えた構成である。
一方、図1(a),(b)に示す電力変換装置10の駆動回路10U,10Lは、いずれも、図20に示した従来の電力変換装置9の駆動回路9Uと異なり、指令デューティ検出部20、実動デューティ検出部30U,30L、およびデューティ比較部40が設けられた構成となっている。指令デューティ検出部20は、指令信号SU,SLに基づいた第1信号S1を入力し、指令信号SU,SLの指令デューティを検出して、該指令デューティに基づいた第2信号S2を出力する。実動デューティ検出部30U,30Lは、それぞれ、SW素子QU,QLの実動作に基づいた第3信号S3aを入力し、SW素子QU,QLの実動デューティを検出して、該実動デューティに基づいた第4信号S4を出力する。尚、図1(a),(b)の駆動回路10U,10Lにおける実動デューティ検出部300U,30Lは、実動デューティを精度よく検出するために、端子MTから入力するSW素子QU,QLの接続点Pの電位(端子MTの電位)を第3信号S3aとしてモニタし、実動デューティを検出する構成となっている。また、デューティ比較部40は、前記第2信号S2と第4信号S4を入力し、指令デューティと実動デューティを比較して、該比較結果に基づいた第5信号S5を出力する。そして、ゲート制御部1U,1Lが、第5信号S5を入力して、実動デューティが変動しない様に、ゲート信号GU,GLのパルス幅を制御する。
図20と図21で説明したように、インバータ等に利用される電力変換装置9の従来の駆動回路9Uでは、指令信号SUのデューティが一定であっても、例えばゲート制御部1Uにおける最終段の出力素子W1,W2が温度変化すると、出力されるゲート信号GUのデューティが該温度変化に依存して変動し、インバータを構成するSW素子QU,QLのON,OFF速度もゲート信号GUに倣って変動する。このため、負荷電流のデューティが変動し、例えば電動パワーステアリング(EPS)のECUに適用した場合には、モータ駆動にトルク変動やトルクリップル増加等の悪影響が生じるという問題があった。
そこで、図1(a),(b)に示す電力変換装置10の駆動回路10U,10Lにおいては、指令信号SUの指令デューティを検出する指令デューティ検出部20と、SW素子QU,QLの実動作に基づいた実動デューティを検出する実動デューティ検出部30U,30Lと、前記指令デューティと実動デューティを比較するデューティ比較部40とが設けられている。そして、該比較結果に基づいて、ゲート制御部1U,1Lが、SW素子QU,QLの実動デューティが温度変化等に依存して変動しない様に、ゲート信号のパルス幅を制御するようにしている。
これによれば、例えば図20と図21で説明したゲート制御部1U,1Lにおける最終段の出力素子W1,W2の温度変化等によって発生するSW素子QU,QLの実動デューティの変動を、実動デューティ検出部30U,30Lで検出する。そして、デューティ比較部40で指令デューティとの差分を計測し、ゲート制御部1U,1LでSW素子QU,QLの実動デューティが変動しない様に出力するゲート信号GUのパルス幅を補正することで、実動デューティの変動をキャンセルすることができる。このため、例えば電動パワーステアリング(EPS)のような誘導性の負荷のモータ駆動に適用した場合、トルク変動やトルクリップル増加等を抑制することができる。
図1(a)の駆動回路10Uにおける指令デューティ検出部20は、例えば図2に破線で囲って示したように、第1信号S1を入力するRCフィルタ回路で構成することができる。図2の指令デューティ検出部20は、指令信号SUに対応した第1信号S1の入力波形をRCフィルタ回路で平滑化して、一定電圧Vmにする。すなわち、指令デューティを、DC電圧に変換する。
図2に示す駆動回路10Uの実動デューティ検出部30Uは、図のように接続された分圧抵抗R1,R2、アンプA1、差動増幅器A2,A3、AND素子A4、およびAND素子A4の出力を入力するRCフィルタ回路で構成されている。図2の実動デューティ検出部30Uは、AND素子A4の出力波形をRCフィルタ回路で平滑化して、一定電圧Vpにする。すなわち、AND素子A4が出力する実動デューティを、DC電圧に変換する。
図2に示すように、駆動回路10Uのデューティ比較部40は、第2信号S2と第4信号S4を差動増幅する比較器C1で構成することができる。比較器C1は、指令デューティ検出部20から出力される第2信号S2の電圧Vmと実動デューティ検出部30Uから出力される第4信号S4の電圧Vpを比較し、この差分を第5信号S5として出力する。
また、図2に示す上アームの駆動回路10Uでは、ゲート制御部1Uが、ゲート信号GUのON電圧のレベルを設定するチャージポンプ回路CPを有している。そして、チャージポンプ回路CPに比較器C1の出力である第5信号S5を入力して、チャージポンプ回路CPがゲート信号GUのON電圧のレベルを制御することにより、後述するように、ゲート信号GUのパルス幅を制御する。
尚、図2の左下に構成されている初期値固定回路50は、起動時における安定動作を確保するため、リセット解除されるまでデューティ比較部40の入力を所定の初期値に固定する回路である。すなわち、図2の初期値固定回路50は、リセット解除(=Hi)になるまで、比較器C1の入力端子をLoに落として、出力を2.5V付近にする。この時、チャージポンプ回路CPは、ゲート信号GUのON電圧のレベルを制御しない。このように、初期値固定回路50を有する図2に示した駆動回路10Uは、リセット解除されるまで、比較器C1の比較結果がゲート制御部1Uに反映されないようになっている。これにより、リセット解除されるまで実動デューティのフィードバックを停止することができ、起動時においても安定して動作させることができる。
図3に示す下アームの駆動回路10Lにおける指令デューティ検出部20、実動デューティ検出部30L、およびデューティ比較部40も、基本的には、図2に示す上アームの駆動回路10Uと同様の構成となっている。図3に示す下アームの駆動回路10Lでは、ゲート制御部1Lが、ゲート信号GLのON電圧のレベルを設定するレギュレータ回路RGを有している。そして、レギュレータ回路RGに第5信号S5を入力してゲート信号GLのON電圧のレベルを制御することで、ゲート信号GLのパルス幅を制御する。
上記したSW素子QU,QLの実動デューティを正確に検出するためには、閾値電圧を超えてON,OFFするSW素子QU,QLのON時間とOFF時間を、正確に検出する必要がある。
図4(a),(b)は、それぞれ、図2と図3に示した実動デューティ検出部30U,30Lにおいて、上記した実動デューティを正確に検出する方法を説明する図である。図4(a),(b)は、それぞれ、駆動回路10U,10Lにおける指令信号SU,SL、ゲート信号GU,GL、および接続点P(端子MT)の電位について、SW素子QU,QLのOFFからONへの切り替わり時とONからOFFへの切り替わり時の電圧波形を示した図である。尚、図4(a),(b)では、それぞれ、対となるもう一方のSW素子QL,QUがOFFに固定になっている場合の電位レベルが示されている。
図2に示す実動デューティ検出部30Uでは、差動増幅器A2,A3において、それぞれ、図4(a)に示すゲート信号GUの閾値電圧Vthに対応した端子MTの閾値電位Vth3,Vth4が設定されている。そして、端子MTの電位が閾値電位Vth3,Vth4のいずれかを横切る時点で、SW素子QUのON,OFFを判定する。閾値電位Vth3は、(GND〜VS)×R2/(R1+R2)の間で適宜設定され、閾値電位Vth4は、(VS〜VS+Vf)×R2/(R1+R2)の間で適宜設定される。尚、図4(a)において、SW素子QUのON時における端子MTの電位VSは、電源電位+Bにほぼ等しくなる。また、電圧Vfは、各SW素子QU,QLに対して逆並列に接続されているダイオードの順方向電圧である。SW素子QUのOFF時における端子MTの2つの電位レベルVS+Vfと電位レベル−Vfは、SW素子QUをON,OFFする直前に該SW素子QUに接続されているダイオードに流れている電流の向きによって、いずれの電位レベルになるかが決まる。
同様に、図3に示す実動デューティ検出部30Lでは、差動増幅器A2,A3において、それぞれ、図4(b)に示すゲート信号GLの閾値電圧Vthに対応した端子MTの閾値電位Vth5,Vth6が設定されている。そして、端子MTの電位が閾値電位Vth5,Vth6のいずれかを横切る時点で、SW素子QLのON,OFFを判定する。閾値電位Vth5は、(−Vf〜GND)×R2/(R1+R2)の間で適宜設定され、閾値電位Vth6は、(GND〜VS)×R2/(R1+R2)の間で適宜設定される。また、図4(b)において、SW素子QLのON時における端子MTの電位VSは、GNDにほぼ等しくなる。
図5は、上記した図2に示す電力変換装置10の駆動回路10Uの機能を説明する図で、指令信号SUのデューティ(パルス幅T0)、出力素子W1,W2の温度、第2信号S2(Vm)と第4信号S4(Vp)、チャージポンプ回路CPの出力電圧Vcp、およびゲート信号GU(SW素子QUのゲート電圧Vgs)のデューティ(パルス幅T)の間の関係を模式的に並べて示した図である。尚、図5は、先に説明した図21の従来の駆動回路9Uの問題点を説明する図に対応しており、指令信号SUのデューティ(パルス幅T0)と出力素子W1,W2の温度は、同じグラフである。また、図5のゲート信号GU(SW素子QUのゲート電圧Vgs)のデューティ(パルス幅T)を示すグラフでは、従来の駆動回路9Uに関するデータを点線で示した。
先に図21で説明したように、図20に示した従来の電力変換装置9の駆動回路9Uでは、指令信号SUのデューティ(パルス幅T0)が一定であっても、ゲート制御部1Uにおける出力素子W1,W2の温度が変化すると、出力されるゲート信号GUのデューティも該温度変化に依存して変動する。このため、インバータを構成するSW素子(外部MOS)QUのON,OFF速度も、図のゲート信号GUに倣って同じように変動し、SW素子QUの実動デューティも変動してしまう問題があった。
これに対して、図5に示すように、図1(a)と図2に示した電力変換装置10の駆動回路10Uでは、ゲート制御部1Uにおける出力素子W1,W2の温度が変化すると、実動デューティ検出部30UがSW素子QUの実動デューティの変化に応じた第4信号S4(Vp)を出力し、指令デューティ検出部20から出力される第2信号S2(Vm)との差分(Vp−Vm)をデューティ比較部40で検出する。そして、この差分に対応した第5信号S5によって、チャージポンプ回路CPの出力電圧Vcpを実動デューティの増大とは逆に低下させ、出力素子W1,W2の温度変化等に依存して変動しない様に、ゲート信号GUのデューティ(パルス幅T)を制御する。
尚、図1(b)と図3に示した下アームの駆動回路10Lについても、上アームの駆動回路10Uと同様の構成を有しており、同じようにSW素子QLの実動デューティの変動を抑制することができる。
以上のようにして、上記した電力変換装置10の駆動回路10U,10Lは、直流電源B+に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子QU,QLを備え、該2つのSW素子QU,QLの接続点Pから負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路であって、温度変化等があっても駆動するSW素子QU,QLの実動デューティの変動を抑制することのできる駆動回路とすることができる。
次に、上記した電力変換装置10の駆動回路10U,10Lの変形例について説明する。
図6は、本発明に係る電力変換装置の駆動回路について別の例を示した図で、図6(a),(b)は、電力変換装置11において、それぞれ、上アームと下アームのSW素子QU,QLを駆動するための駆動回路11U,11Lの基本構成を示したブロック図である。また、図7と図8は、図6(a),(b)のブロック図で示した駆動回路11U,11Lについて、それぞれの具体的な回路構成の一例を示した図である。尚、図6〜図8に示す電力変換装置11の駆動回路11U,11Lにおいて、図1〜図3に示した電力変換装置10の駆動回路10U,10Lと同様の部分については、同じ符号を付した。
図1〜図3に示した電力変換装置10の駆動回路10U,10Lは、実動デューティを精度よく検出するために、実動デューティ検出部30U,30Lが、接続点P(端子MT)の電位を第3信号S3aとしてモニタし、SW素子QU,QLの実動デューティを検出する構成としていた。これによれば、SW素子QU,QLの閾値電圧Vthを考慮することなく、SW素子QU,QLの実動デューティを検出することができるため、回路構成が簡単になる。
これに対して、図6〜図8に示す電力変換装置11の駆動回路11U,11Lにおいては、実動デューティ検出部31U,31Lが、SW素子QU,QLのゲート電位(端子HG_S,LG_Sの電位)とソース電位(端子HS,LSの電位)を第3信号S3b,S3cとしてモニタし、SW素子QU,QLの閾値電圧Vthを測定して、実動デューティを検出する構成となっている。尚、図6(a)と図7に示した駆動回路11Uの上アームの実動デューティ検出部31UがモニタするSW素子QUのソース電位(端子HS)は、図1(a)と図2に示した駆動回路10Uの上アームの実動デューティ検出部30Uがモニタする接続点Pの電位(端子MTの電位)と同じものである。
図6(a)の駆動回路11Uにおける実動デューティ検出部31Uは、例えば図7に破線で囲って示したように、SW素子QUのゲート電位(端子HG_S)を第3信号S3bとしてモニタする分圧抵抗R1,R2とアンプA6、SW素子QUのソース電位(端子HS)を第3信号S3cとしてモニタする分圧抵抗R1,R2とアンプA7、アンプA7の出力からSW素子QUのON,OFFを判定しSW素子QUの閾値電圧Vthを測定する差動増幅器A2,A3とAND素子A4、AND素子A4の出力をホールドするサンプルホールド回路H1、アンプA6とアンプA7の出力を差動増幅してSW素子QUのゲート電圧Vgsを測定する差動増幅器A8、閾値電圧Vthに対応したサンプルホールド回路H1の出力とゲート電圧Vgsに対応した差動増幅器A8の出力を比較する比較器C2、および比較器C2の出力を入力するRCフィルタ回路で構成されている。尚、図8に示す下アームの駆動回路11Lにおける実動デューティ検出部31Lも、基本的には、図7に示す上アームの実動デューティ検出部31Uと同様の構成となっている。
図9は、図7と図8に示した実動デューティ検出部31U,31Lにおいて、実動デューティを正確に検出する方法を説明する図である。図9は、SW素子QU,QLのゲート電圧Vgsに対応した差動増幅器A8の出力波形と実動デューティ(パルス幅T)の情報が含まれる比較器C2の出力波形を示した図である。
図9に示す閾値電圧Vthは、図7と図8のサンプルホールド回路H1の出力に対応し、IC内部の実動デューティ検出部31U,31Lで測定される値である。該閾値電圧Vthを測定するため、図7の実動デューティ検出部31Uでは、閾値電位Vth3がGND〜VSの間で適宜設定され、閾値電位Vth4が(VS+Vf)〜VSの間で適宜設定される。また、図8の実動デューティ検出部31Lでは、閾値電位Vth5が(−Vf〜GND)×R2/(R1+R2)の間で適宜設定され、閾値電位Vth6が(GND〜VS)×R2/(R1+R2)の間で適宜設定される。
図6〜図8に示した電力変換装置11の駆動回路11U,11Lでは、上記したようにリアルタイムで閾値電位Vthを測定しながら実動デューティを検出する。また、接続点Pの電位(端子MTの電位)を検出する図1〜図3に示した電力変換装置10の駆動回路10U,10Lに較べて、ノイズによる悪影響を受け難いため、実動デューティをより正確に検出することができる。
図10と図11は、それぞれ、図7と図8に示した電力変換装置11の駆動回路11U,11Lの変形例で、電力変換装置12の駆動回路12U,12Lの具体的な回路構成の一例を示した図である。尚、図10と図11に示す電力変換装置12の駆動回路12U,12Lにおいて、図7と図8に示した電力変換装置11の駆動回路11U,11Lと同様の部分については、同じ符号を付した。
図6〜図8で説明した電力変換装置11の駆動回路11U,11Lにおいては、実動デューティ検出部31U,31Lが、SW素子QU,QLのゲート電位(端子HG_S,LG_Sの電位)とソース電位(端子HS,LSの電位)を第3信号S3b,S3cとしてモニタし、SW素子QU,QLの閾値電圧Vthを直接測定して、実動デューティを検出していた。
一方、図10と図11に示す電力変換装置12の駆動回路12U,12Lは、図7と図8に示した駆動回路11U,11Lと同様に、実動デューティ検出部32U,32LがSW素子QU,QLのゲート電位とソース電位を第3信号S3b,S3cとしてモニタする。しかしながら、図10と図11の駆動回路12U,12Lでは、実動デューティ検出部32U,32LがSW素子QU,QLの閾値電圧Vthを測定することなく、SW素子QU,QLの温度を検出して、予め記憶された該温度に対応する閾値電圧Vthを参照して、実動デューティを検出する構成となっている。
すなわち、図10と図11に示す電力変換装置12の駆動回路12U,12Lでは、実動デューティを精度よく検出するために、それぞれ、SW素子QU,QLの温度を検出するための直列接続されたセンス素子TU,TLとセンス抵抗Rsが、SW素子QU,QLに並列接続されている。センス抵抗Rsの両端電圧は、SW素子QU,QLが高温になるほど上昇する。そして、実動デューティ検出部32U,32Lが、SW素子QU,QLのゲート電位(端子HG_S,LG_Sの電位)とソース電位(端子HS,LSの電位)を第3信号S3b,S3cとしてモニタし、検出された前記温度に対応するSW素子QU,QLの閾値電圧を参照して、実動デューティを検出する構成となっている。
図10の駆動回路12Uにおける実動デューティ検出部32Uは、端子TEMP_Sから入力されるSW素子QUの温度信号を解析する温度計測回路TKとSW素子QUの温度と閾値電圧Vthの対応を保存したROM、SW素子QUのゲート電位(端子HG_S)を第3信号S3bとしてモニタする分圧抵抗R1,R2とアンプA6、SW素子QUのソース電位(端子HS)を第3信号S3cとしてモニタする分圧抵抗R1,R2とアンプA7、アンプA6とアンプA7の出力を差動増幅してSW素子QUのゲート電圧Vgsを測定する差動増幅器A8、ROMから出力される温度に対応した閾値電圧Vthの分圧抵抗R1,R2とアンプA9、閾値電圧Vthに対応したアンプA9の出力とゲート電圧Vgsに対応した差動増幅器A8の出力を比較する比較器C2、および比較器C2の出力を入力するRCフィルタ回路で構成されている。尚、図11に示す下アームの駆動回路12Lにおける実動デューティ検出部32Lも、図10に示す上アームの実動デューティ検出部32Uと同様の構成となっている。
図12は、図10と図11に示した実動デューティ検出部32U,32Lにおいて、実動デューティを正確に検出する方法を説明する図である。図12は、SW素子QU,QLのゲート電圧Vgsに対応した差動増幅器A8の出力波形と実動デューティ(パルス幅T)の情報が含まれる比較器C2の出力波形を示した図である。
図12に示すゲート電圧Vgsに対応した差動増幅器A8の出力波形は、図9に示した差動増幅器A8の出力波形と同じものである。一方、図9に示した閾値電圧Vthは、サンプルホールド回路H1の出力に対応し、IC内部の実動デューティ検出部31U,31Lで測定される値であった。これに対して、図12に示す閾値電圧Vthは、アンプA9の出力に対応し、SW素子QU,QLの温度を検出し、検出された該温度に対応する閾値電圧VthをROMから読み込んだものである。
以上のように、図10〜図12に示した電力変換装置12の駆動回路12U,12Lでは、測定した閾値電位Vthを用いる替わりに、SW素子QU,QLの各温度に対応した閾値電圧Vthを、EEPROMなどの記憶媒体に予め記憶させておく。そして、SW素子QU,QLの温度をセンス素子TU,TLとセンス抵抗Rsで測定し、測定されたSW素子QU,QLの温度に対応した閾値電圧Vthを用いて、実動デューティを検出する。尚、SW素子QU,QLの温度を精度よく検出するため、SW素子QU,QLとセンス素子TU,TLは、1つのパッケージになっているのが望ましい。また、上記記憶媒体は、駆動回路12U,12Lを構成するICの内部だけでなく、マイコンなどの外部素子に内蔵されたものを使用してもよい。
図13は、別の例を示した図で、図13(a),(b)は、電力変換装置13において、それぞれ、上アームと下アームのSW素子QU,QLを駆動するための駆動回路13U,13Lの基本構成を示したブロック図である。また、図14は、図13(a)のブロック図で示した駆動回路13Uについて、具体的な回路構成の一例を示した図である。
実動デューティを検出するにあたって、例えば、ゲート電圧最大値の変動が十分小さい場合を仮定すると、出力信号振幅S2,S4を同程度となるようにに乗数を一意にあわせこむことができる。この場合は、デューティ比較を正確にできるので、図13(a),(b)に示す電力変換装置13の駆動回路13U,13Lのように、実動デューティ検出部33U,33Lが、SW素子QU,QLのゲート電位(端子HG_S,LG_Sの電位)を第3信号S3bとしてモニタし、実動デューティを検出する構成としてもよい。ただし、一般的に、VS電源の電圧変動により、ゲート電圧の最大値は変動することが一般的で、VS変動を考慮しなければならない時は、この検出方法は不向きである。
また、図14に示す駆動回路13Uの実動デューティ検出部33Uは、SW素子QUのゲート電位(端子HG_S)を第3信号S3bとしてモニタする分圧抵抗R1,R2とRCフィルタ回路だけで構成されている。図14の実動デューティ検出部33Uは、SW素子QUのゲート電圧Vgsに対応した分圧抵抗R2の出力波形をRCフィルタ回路で平滑化して、一定電圧Vpにする。すなわち、実動デューティを、DC電圧に変換する。
そして、比較器C1が指令デューティと実動デューティを比較し、(指令デューティ<実動デューティ)の場合には、チャージポンプ回路CPの出力電圧Vcpを低下し、実動デューティを小さくして指令デューティに近づける。(指令デューティ=実動デューティ)の場合には、チャージポンプ回路CPの出力電圧Vcpは制御しない。また、(指令デューティ>実動デューティ)の場合には、チャージポンプ回路CPの出力電圧Vcpを上昇し、実動デューティを大きくして指令デューティに近づける。
以上に説明したように、SW素子QU,QLの実動デューティは、上記した種々の方法で検出することができる。尚、指令信号SUの指令デューティは、RCフィルタ回路だけで構成される指令デューティ検出部20で、指令信号SUに対応した第1信号S1から簡単に検出することができる。また、指令信号SUに付随する情報として、別途入力することもできる。
次に、先に例示した電力変換装置の駆動回路は、いずれも、指令デューティ検出部20が、指令デューティをDC電圧に変換して第2信号S2として出力し、実動デューティ検出部30U〜33U,30L〜33Lが、実動デューティをDC電圧に変換して第4信号S4として出力し、デューティ比較部40の比較器C1が、該第2信号S2と第4信号S4を差動増幅して第5信号として出力する、アナログの回路構成であった。
一方、先に例示した電力変換装置の駆動回路は、いずれも、デジタルの回路で構成することもできる。すなわち、前記指令デューティ検出部が、指令デューティを短パルスでカウント計測して前記第2信号として出力し、前記実動デューティ検出部が、前記実動デューティを短パルスでカウント計測して前記第4信号として出力し、前記デューティ比較部が、該第2信号と第4信号の比較結果を前記第5信号として出力する、デジタルの回路構成である。
図15は、上記デジタルの回路構成による駆動回路の例を示した図で、電力変換装置14において、上アームのSW素子QUを駆動するための駆動回路14Uの基本構成を示したブロック図である。
図15に示す電力変換装置14の駆動回路14Uは、図13(a)に示した電力変換装置13の駆動回路13Uの指令デューティ検出部20、実動デューティ検出部33U、およびデューティ比較部40をデジタル化している。図15の駆動回路14Uでは、図13(a)の指令デューティ検出部20に対応した指令デューティカウンタ20dが、指令デューティを短パルスでカウント計測して第2信号S2として出力し、図13(a)の実動デューティ検出部33Uに対応した実動デューティカウンタ33Udが、実動デューティを短パルスでカウント計測して第4信号S4として出力し、図13(a)のデューティ比較部40に対応したカウント比較器40dが、該第2信号S2と第4信号S4の比較結果を第5信号S5として出力する。
図15に例示した駆動回路14Uのように、デジタルの回路構成による駆動回路は、SW素子QU,QLのON,OFF速度が小さい時に適用可能である。
次に、先に例示した上アームの駆動回路は、ゲート制御部1Uがゲート信号のON電圧のレベルを設定するチャージポンプ回路CPを有しており、チャージポンプ回路CPに第5信号S5を入力して、チャージポンプ回路CPがゲート信号GUのON電圧のレベルを制御することにより、ゲート信号GUのパルス幅を制御する構成となっていた。
これに限らず、上アームの駆動回路において、ゲート制御部が前記ゲート信号のON電圧のレベルを設定するブートストラップ回路を有してなる場合には、前記ブートストラップ回路において電荷を蓄積するコンデンサへの電圧設定部に前記第5信号を入力して、該ブートストラップ回路が前記ゲート信号のON電圧のレベルを制御することにより、該ゲート信号のパルス幅を制御するようにしてもよい。
図16は、上記ブートストラップ回路を有する上アームの駆動回路の例を示した図で、電力変換装置15において、上アームのSW素子QUを駆動するための駆動回路15Uの基本構成を示したブロック図である。
図16に示す電力変換装置15の駆動回路15Uは、ゲート制御部1Ubにおいて、ゲート信号GUのON電圧のレベルを設定するブートストラップ回路が構成されている。そして、ブートストラップ回路において電荷を蓄積するコンデンサCbへの電圧設定部REGに第5信号S5を入力して、該ブートストラップ回路がゲート信号GUのON電圧のレベルを制御することにより、該ゲート信号GUのパルス幅を制御するようにしている。図16に例示したブートストラップ回路を有する上アームの駆動回路15Uは、例えば図14に例示したチャージポンプ回路CPを有する上アームの駆動回路13Uに較べて、ゲート駆動部における出力素子W1,W2の耐圧を小さくすることができる。
図17は、デューティ比較部40が出力する第5信号S5を基にしてゲート信号GUのパルス幅を制御する別の方法を示した図で、電力変換装置16において、上アームのSW素子QLを駆動するための駆動回路16Uの基本構成を示したブロック図である。
図17に示す電力変換装置16の駆動回路16Uは、ゲート制御部1UrがSW素子QUのゲートの入力抵抗を切り替える、入力抵抗切替回路RSを有した構成となっている。そして、ゲート制御部1Urのゲート駆動部GDに設けられた入力抵抗切替回路RSにデューティ比較部40が出力する第5信号S5を入力して、該入力抵抗切替回路RSがゲート信号GUの立ち上り速度および立ち下り速度を切り替えることにより、ゲート信号GUのパルス幅を制御する構成となっている。このように、図17に示す駆動回路16Uでは、図5に示したチャージポンプ回路やブートストラップ回路によるゲート信号GUの電圧レベル制御による変えて、ゲート信号GUの立ち上りおよび立ち下りの傾きを制御することで、ゲート信号GUのパルス幅を制御する。
図18と図19(a),(b)は、それぞれ、図17のブロック図で示したゲート駆動部GDと入力抵抗切替回路RSについて、具体的な回路構成の例を示した図である。
図18に示すゲート駆動部GD1では、出力素子W1,W2の接続点とゲート信号GUの出力端子HGの間に、抵抗Ri1,Ri2とスイッチSi1からなる入力抵抗切替回路RS1が挿入されている。尚、図18の入力抵抗切替回路RS1は、出力素子W1,W2に共通のON抵抗となっている。
一方、図19(a),(b)に示すゲート駆動部GD2,GD3は、上段の出力素子W1と下段の出力素子W2に対して、異なるON抵抗を設定できるように構成されている。
図19(a)に示すゲート駆動部GD2では、上段の出力素子W1がPチャネルであり、抵抗Ri3,Ri4とスイッチSi2からなる入力抵抗切替回路RS2が、出力素子W1とゲート信号GUの出力端子HGの間に挿入されている。また、下段の出力素子W2はNチャネルであり、抵抗Ri5,Ri6とスイッチSi3からなる入力抵抗切替回路RS3が、出力素子W2とゲート信号GUの出力端子HGの間に挿入されている。一方、図19(b)に示すゲート駆動部GD3では、上段の出力素子W1がNチャネルであり、入力抵抗切替回路RS2が、チャージポンプ回路の出力側と出力素子W1の間に挿入される。
すなわち、入力抵抗切替回路RS2,RS3は、出力素子W1,W2のPチャネルとNチャネルの極性に合わせて、いずれも出力素子W1,W2のドレイン側に挿入される。
すなわち、入力抵抗切替回路RS2,RS3は、出力素子W1,W2のPチャネルとNチャネルの極性に合わせて、いずれも出力素子W1,W2のドレイン側に挿入される。
尚、図17〜19に示したゲート駆動部GD,GD1〜GD3の構成は、下段のSW素子QLに対しても同様に適用することができる。
以上に例示したように、第5信号S5を基にしてゲート信号GUのパルス幅を制御するにあたっては、種々の構成を採用することが可能である。
また、前述したが、上記した電力変換装置の駆動回路は、例えば、電力変換装置が直流電力を交流電力へ変換するインバータであってよい。また、例えば、負荷が、誘導性の負荷であるモータであってよい。
以上のようにして、上記した電力変換装置の駆動回路は、直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのSW素子を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路であって、温度変化等があっても駆動するSW素子の実動デューティを一定に保つことのできる駆動回路とすることができる。
従って、上記した電力変換装置の駆動回路は、前記電力変換装置が、過酷な環境下で使用される車載用であり、前記直流電源が、車のバッテリである場合に好適である。例えば、上記した電力変換装置の駆動回路は、電動パワーステアリング(EPS)の電子制御装置(ECU)に適用するインバータの駆動回路に利用することができ、ICの内部回路として構成することができる。
9〜16 電力変換装置
QU,QL SW素子
9U〜16U,10L〜13L 駆動回路
1U,1L,1Ub,1Ur ゲート制御部
20 指令デューティ検出部
30U〜33U,30L〜33L 実動デューティ検出部
40 デューティ比較部
QU,QL SW素子
9U〜16U,10L〜13L 駆動回路
1U,1L,1Ub,1Ur ゲート制御部
20 指令デューティ検出部
30U〜33U,30L〜33L 実動デューティ検出部
40 デューティ比較部
Claims (14)
- 直流電源に接続する上アームと下アームの直列接続された2つのスイッチング素子(以下、SW素子と略記)を備え、該2つのSW素子の接続点から負荷に電力を供給する電力変換装置の駆動回路であって、
前記SW素子をパルス駆動させるための指令信号を入力し、該SW素子へのゲート信号を出力するゲート制御部を備える駆動回路において、
前記指令信号に基づいた第1信号を入力し、指令信号の指令デューティを検出して、該指令デューティに基づいた第2信号を出力する指令デューティ検出部と、
前記SW素子の実動作に基づいた第3信号を入力し、SW素子の実動デューティを検出して、該実動デューティに基づいた第4信号を出力する実動デューティ検出部と、
前記第2信号と第4信号を入力し、前記指令デューティと実動デューティを比較して、該比較結果に基づいた第5信号を出力するデューティ比較部とが設けられ、
前記ゲート制御部が、前記第5信号を入力して、前記実動デューティが変動しない様に、前記ゲート信号のパルス幅を制御することを特徴とする電力変換装置の駆動回路。 - 前記実動デューティ検出部が、前記接続点の電位を前記第3信号としてモニタし、前記実動デューティを検出することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の駆動回路。
- 前記SW素子の温度を検出するための直列接続されたセンス素子とセンス抵抗が、該SW素子に並列接続されてなり、
前記実動デューティ検出部が、該SW素子のゲート電位とソース電位を前記第3信号としてモニタし、
検出された前記温度に対応する該SW素子の閾値電圧を参照して、前記実動デューティを検出することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の駆動回路。 - 前記実動デューティ検出部が、前記SW素子のゲート電位とソース電位を前記第3信号としてモニタし、
前記SW素子の閾値電圧を測定して、前記実動デューティを検出することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の駆動回路。 - 前記実動デューティ検出部が、前記SW素子のゲート電位を前記第3信号としてモニタし、前記実動デューティを検出することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の駆動回路。
- 前記指令デューティ検出部が、前記指令デューティをDC電圧に変換して前記第2信号として出力し、
前記実動デューティ検出部が、前記実動デューティをDC電圧に変換して前記第4信号として出力し、
前記デューティ比較部が、該第2信号と第4信号を差動増幅して前記第5信号として出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。 - 前記指令デューティ検出部が、前記指令デューティを短パルスでカウント計測して前記第2信号として出力し、
前記実動デューティ検出部が、前記実動デューティを短パルスでカウント計測して前記第4信号として出力し、
前記デューティ比較部が、該第2信号と第4信号の比較結果を前記第5信号として出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。 - 前記ゲート制御部が、前記ゲート信号のON電圧のレベルを設定するチャージポンプ回路を有してなり、
前記チャージポンプ回路に前記第5信号を入力して、該チャージポンプ回路が前記ゲート信号のON電圧のレベルを制御することにより、該ゲート信号のパルス幅を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。 - 前記ゲート制御部が、前記ゲート信号のON電圧のレベルを設定するブートストラップ回路を有してなり、
前記ブートストラップ回路において電荷を蓄積するコンデンサへの電圧設定部に前記第5信号を入力して、該ブートストラップ回路が前記ゲート信号のON電圧のレベルを制御することにより、該ゲート信号のパルス幅を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。 - 前記ゲート制御部が、前記SW素子のゲートの入力抵抗を切り替える入力抵抗切替回路を有してなり、
前記入力抵抗切替回路に前記第5信号を入力して、該入力抵抗切替回路が前記ゲート信号の立ち上り速度および立ち下り速度を切り替えることにより、ゲート信号のパルス幅を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。 - リセット解除されるまで前記デューティ比較部の入力を所定の初期値に固定する、初期値固定回路を有してなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。
- 前記電力変換装置が、直流電力を交流電力へ変換するインバータであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。
- 前記負荷が、モータであることを特徴とする請求項16に記載の電力変換装置の駆動回路。
- 前記電力変換装置が、車載用であり、
前記直流電源が、車のバッテリであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の電力変換装置の駆動回路。
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JP (1) | JP2014007859A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2017073231A1 (ja) * | 2015-10-30 | 2017-05-04 | 株式会社オートネットワーク技術研究所 | Dcdcコンバータ |
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2012
- 2012-06-25 JP JP2012142111A patent/JP2014007859A/ja active Pending
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WO2017073231A1 (ja) * | 2015-10-30 | 2017-05-04 | 株式会社オートネットワーク技術研究所 | Dcdcコンバータ |
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