初めに、実施形態で用いるインクジェットヘッド1について、図17〜図21を用いて説明する。
図17〜図19は、インクジェットヘッド1の要部構造図であり、図17は、インクジェットヘッド1の一部を分解して示す斜視図、図18は、同ヘッド1の前方部における横断面図、図19は、同ヘッド1の前方部における縦断面図である。
インクジェットヘッド1は、ベース基板11の前方側の上面に第1の圧電部材12を接合し、この第1の圧電部材12の上に第2の圧電部材13を接合する。第1の圧電部材12と第2の圧電部材13とは、図18の矢印で示すように、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極して接合される。
インクジェットヘッド1は、接合された圧電部材12,13の先端側から後端側に向けて多数の長尺な溝18を設ける。各溝18は、間隔が一定でありかつ平行である。また各溝18は、先端が開口し、後端が上方に斜傾する。
インクジェットヘッド1は、各溝18の隔壁及び底面に電極19を設ける。さらにインクジェットヘッド1は、各溝18の後端から第2の圧電部材13の後部上面に向けて、電極19から延出された引出し電極20を設ける。
インクジェットヘッド1は、各溝18の上部を天板14で塞ぎ、各溝18の先端をオリフィスプレート15で塞ぐ。天板14は、その内側後方に共通インク室21を備える。
インクジェットヘッド1は、天板14とオリフィスプレート15とで囲まれた各溝18によって、複数のインク室22を形成する。インクジェットヘッド1は、オリフィスプレート15の各溝18と対向する位置に、インクの吐出を行うノズル23を開ける。ノズル23は、対向するインク室22に連通する。ここで、ノズル23とそのノズル23に連通するインク室22とを含むインクの流路は、チャネルと称される。
インクジェットヘッド1は、ベース基板11の後方側の上面に、導電パターン24が形成されたプリント基板25を接合し、このプリント基板25の上に、後述するインクジェットヘッド駆動装置30(図1を参照)を実装したドライブIC26を搭載する。ドライブIC26は、導電パターン24に接続する。導電パターン24は、各引出し電極20とワイヤボンディングにより導線27で結合する。
図20は、インクジェットヘッド1の動作原理説明図である。
図20の(a)は、中央のインク室22aとこのインク室22aに隣接する両隣のインク室22b,22cとの各電極19が、いずれも接地電位の状態を示す。この状態では、インク室22aとインク室22b及びインク室22aとインク室22cとで挟まれた圧電部材12,13からなる隔壁(アクチュエータ)28a,28bは、何ら歪み作用を受けない。
図20の(b)は、中央のインク室22aの電極19に負電圧(−Vs)が印加された状態を示す。なお、両隣のインク室22b,22cの電極19はいずれも接地電位である。この状態では、各隔壁28a,28bに、圧電部材12,13の分極方向と直交する方向に電界が作用する。この作用により、各隔壁28a,28bは、インク室22aの容積を拡張するようにそれぞれ外側に変形する。
図20の(c)は、中央のインク室22aの電極19に正電圧(+Vs)が印加された状態を示す。なお、両隣のインク室22b,22cの電極19はいずれも接地電位である。この状態では、各隔壁28a,28bに、圧電部材12,13の分極方向と直交する方向で図20(b)のときとは逆の方向に電界が作用する。この作用により、各隔壁28a,28bは、インク室22aの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形する。
図21は、中央のインク室22aからインク液滴を吐出するために、インク室22aの電極19に印加される駆動パルス信号DPの通電波形図である。時間Ttによって示される区間は、インク液滴(1ドロップ)の吐出に必要な時間であり、この時間(1ドロップ周期と称する)Ttは、準備区間の時間T1、吐出区間の時間T2及び後処理区間の時間T3に区分される。さらに、準備時間T1は、定常区間の時間Taと拡張区間の時間(T1−Ta)とに細分化され、吐出区間の時間T2は、維持区間の時間Tbと復元区間の時間(T2−Tb)とに細分化される。準備時間T1、吐出時間T2及び後処理時間T3は、使用するインクや温度等の条件により、適切な値に設定される。
図21に示すように、インクジェットヘッド駆動装置30は、先ず、時点t0において、インク室22a,22b,22cに対応した各電極19にそれぞれ0ボルトの基準電圧を印加する。そして、定常時間Taが経過するのを待機する。この間、各インク室22a,22b,22cは、図20の(a)の状態となる。
定常時間Taが経過して時点t1になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、インク室22aに対応した電極19に駆動電圧として所定の負電圧(−Vs)を印加する。そしてインクジェットヘッド駆動装置30は、準備時間T1が経過するのを待機する。負電圧(−Vs)が印加されると、インク室22aの両側の隔壁28a,28bが、インク室22aの容積を拡張するようにそれぞれ外側に変形して、図20の(b)の状態となる。この変形により、インク室22a内の圧力が低下する。このため、共通インク室21からインク室22a内にインクが流れ込む。
準備時間T1が経過して時点t2になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、さらに維持時間Tbが経過するまで、インク室22aに対応した電極19に負電圧(−Vs)を印加し続ける。この間、各インク室22a,22b,22cは、図20の(b)の状態を維持する。
維持時間Tbが経過して時点t3になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、インク室22aに対応した電極19に印加する電圧を基準電圧の0ボルトに戻す。そして、吐出時間T2が経過するのを待機する。印加電圧が0ボルトになると、インク室22aの両側の隔壁28a,28bが定常状態に復元されて、図20の(a)の状態に戻る。この復元により、インク室22a内の圧力が増大する。このため、インク室22aに対応したノズル23からインク液滴が吐出する。
吐出時間T2が経過して時点t4になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、インク室22aに対応した電極19に駆動電圧として所定の正電圧(+Vs)を印加する。そしてインクジェットヘッド駆動装置30は、後処理時間T3が経過するのを待機する。正電圧(+Vs)が印加されると、インク室22aの両側の隔壁28a,28bが、インク室22aの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形して、図20の(c)の状態となる。この変形により、インク室22a内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出によりインク室22a内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
後処理時間T3が経過して時点t5になると、インクジェットヘッド駆動装置30は、インク室22aに対応した電極19に印加する電圧を基準電圧の0ボルトに再度戻す。印加電圧が0ボルトに戻されたことに応じて、インク室22aの両側の隔壁28a,28bが定常状態に復元される。すなわち、各インク室22a,22b,22cは、図20の(a)の状態に戻る。
インクジェットヘッド駆動装置30は、図20に示した通電波形の駆動パルス信号DPを、中央のインク室22aの電極19に供給する。そうすると、このインク室22aに対応したノズル23から1ドロップのインク液滴が吐出される。
次に、上記インクジェットヘッド駆動装置30の一実施形態について、図1〜図16を用いて説明する。なお、この実施形態は、チャネル数がN(ch.1〜ch.N:ただしN>1)のインクジェットヘッド1に対する駆動装置として、VAP電源、VAN電源及びGNDの3種類の駆動電源に対応したインクジェットヘッド駆動装置30を例示する。
図1は、インクジェットヘッド駆動装置30の概略構成図である。ドライブIC26に実装されたインクジェットヘッド駆動装置30は、ロジック部31とアナログ部32とを有する。
アナログ部32は、インクジェットヘッド1の各チャネルch.1〜ch.Nにそれぞれ対応して設けられたチャネル駆動手段としてのN個のチャネル駆動回路33-1〜33-Nと、電圧選択手段としての負荷電圧選択回路34とを含む。そしてアナログ部32は、電源端子としてVCC端子、VAP端子、VAN、GND端子及びLVIN端子を接続する。
VCC端子には、チャネル駆動回路33-1〜33-N及び負荷電圧選択回路34の電源として、VCC電圧を供給する電源、いわゆるVCC電源が接続される。GND端子は、GND(グラウンド)レベルに接地されている。VAP端子には、駆動パルス信号DP1〜DPNを作るための電源として、VAP電圧を供給する電源、いわゆるVAP電源が接続される。VAN端子には、同じく駆動パルス信号DP1〜DPNを作るための電源として、VAN電圧を供給する電源、いわゆるVAN電源が接続される。因みに、VAP電圧は、基準電圧となるGNDレベルよりも正方向の電位を有する正駆動電圧である。VAN電圧は、GNDレベルよりも負方向でかつ正駆動電圧と同電位を有する負駆動電圧である。
各チャネル駆動回路33-1〜33-Nは、駆動電圧である上記VAP電圧及びVAN電圧と基準電圧であるGNDレベルとによって、チャネル毎に駆動パルス信号DP1〜DPNを生成する。各駆動パルス信号DP1〜DPNは、それぞれ対応するチャネルch.1〜ch.Nを構成するインク室22の電極19に出力される。
負荷電圧選択回路34は、前記VAP電圧、VAN電圧及びGNDレベルの中から任意の負荷電圧LVを選択する。この負荷電圧選択回路34で選択される負荷電圧LVは、前記LVIN端子に供給される。この負荷電圧選択回路34の負荷電圧出力端子LVOUTと前記LVIN端子とを結ぶ電源ラインLには、出力電位安定用のコンデンサとして1000pF〜3000pFのコンデンサ35が連結される。コンデンサ35は、電源ラインLとGNDレベルとの間に介挿される。
図2は、チャネル駆動回路33-1の構成図である。なお、他のチャネル駆動回路33-2〜33-Nも、チャネル駆動回路33-1と同一構成なので、ここでの説明は省略する。
チャネル駆動回路33-1は、駆動電圧入力端子としてVAP端子、VAN端子及びGND端子を備え、選択電圧入力端子としてLVIN端子を備え、出力端子としてOUT端子を備える。OUT端子には、インクジェットヘッド1の対応するチャネルch.1の電極19が接続され、この電極19に対してOUT端子から駆動パルス信号DP1が出力される。
チャネル駆動回路33-1は、各入力端子すなわちLVIN端子、VAP端子、GND端子及びVAN端子と、出力端子すなわちOUT端子とを、それぞれ第1〜第4の接続回路411,412,413,414を介して接続する。第1〜第4の接続回路411,412,413,414としては、例えばPMOSトランジスタまたはNMOSトランジスタのようなスイチッング素子を用いる。そして、LVIN端子とOUT端子との間に介在される第1の接続回路411としては、内部抵抗が大きい高インピーダンスのものを採用し、他の第2〜第4の接続回路412,413,414としては、上記高インピーダンスよりも内部抵抗の小さい低インピーダンスのものを採用する。
チャネル駆動回路33-1には、前記ロジック部31からチャネルch.1の駆動制御信号DR1が4系統DR1a,DR1b,DR1c,DR1dに分割されて入力される。
第1系統の駆動制御信号DR1aは、第1のレベルシフタ421で高電圧に変換された後、第1のプリバッファ431を介して第1の接続回路411に供給される。第2系統の駆動制御信号DR1bは、第2のレベルシフタ422で高電圧に変換された後、第2のプリバッファ432を介して第2の接続回路412に供給される。第3系統の駆動制御信号DR1cは、第3のレベルシフタ423で高電圧に変換された後、第3のプリバッファ433を介して第3の接続回路413に供給される。第4系統の駆動制御信号DR1dは、第4のレベルシフタ424で高電圧に変換された後、第4のプリバッファ434を介して接続回路414に供給される。
第1〜第4の接続回路411,412,413,414は、供給される駆動制御信号DR1a,DR1b,DR1c,DR1dがオンのとき両端子間を接続し、オフのとき両端子間を切り離す。つまり、第1系統の駆動制御信号DR1aは、第1の接続回路411を接続するとき、すなわちOUT端子にLV電圧を印加する場合にオン出力され、第2系統の駆動制御信号DR1bは、第2の接続回路412を接続するとき、すなわちOUT端子にVAP電圧を印加する場合にオン出力され、第3系統の駆動制御信号DR1cは、第3の接続回路413を接続するとき、すなわちOUT端子にGNDレベルを印加する場合にオン出力され、第4系統の駆動制御信号DR1dは、第4の接続回路414を接続するとき、すなわちOUT端子にVAN電圧を印加する場合にオン出力される。
図3は、負荷電圧選択回路34の構成図である。負荷電圧選択回路34は、入力端子としてVAP端子、VAN端子及びGND端子を備え、出力端子としてLVOUT端子を備える。LVOUT端子は、前記LVIN端子と信号線Lによって接続される。
負荷電圧選択回路34は、各入力端子すなわちVAP端子、GND端子及びVAN端子と、出力端子すなわちLVOUT端子とを、それぞれ第5〜第7の接続回路415,416,417を介して接続する。第5〜第7の接続回路415,416,417としては、例えばPMOSトランジスタまたはNMOSトランジスタのようなスイチッング素子を用いる。また、内部抵抗の小さい低インピーダンスのものを第5〜第7の接続回路415,416,417として採用する。
負荷電圧選択回路34には、前記ロジック部31から負荷電圧選択信号LVSが3系統LVSa,LVSb,LVScに分割されて入力される。
第1系統の負荷電圧選択信号LVSaは、第5のレベルシフタ425で高電圧に変換された後、第5のプリバッファ435を介して第5の接続回路415に供給される。第2系統の負荷電圧選択信号LVSbは、第6のレベルシフタ426で高電圧に変換された後、第6のプリバッファ436を介して第6の接続回路416に供給される。第3系統の負荷電圧選択信号LVScは、第7のレベルシフタ427で高電圧に変換された後、第7のプリバッファ437を介して第7の接続回路417に供給される。
第5〜第7の接続回路415,416,417は、供給される負荷電圧選択信号LVSa,LVSb,LVScがオンのとき両端子間を接続し、オフのとき両端子間を切り離す。つまり、第1系統の選択信号LVSaは、第5の接続回路415を接続するとき、すなわちLVOUT端子にVAP電圧を印加する場合にオン出力され、第2系統の選択信号LVSbは、第6の接続回路416を接続するとき、すなわちLVOUT端子にGNDレベルを印加する場合にオン出力され、第3系統の選択信号LVScは、第7の接続回路417を接続するとき、すなわちLVOUT端子にVAN電圧を印加する場合にオン出力される。
図4は、前記ロジック部31の要部構成を示すブロック図である。ロジック部31は、駆動条件制御部51、ドロップ周期タイミング制御部52、駆動波形遷移制御手段としての駆動波形遷移制御部53、電圧遷移制御手段としての負荷電圧遷移制御部54、チャネルch.1〜ch.N別の駆動波形生成回路55-1〜55-N及び負荷電圧生成回路56を備える。
駆動条件制御部51は、図示しない印刷制御部から与えられる印刷データと制御パラメータとにより、チャネルch.1〜ch.N毎にインク吐出タイミングと吐出数とを決定する。そして駆動条件制御部51は、この決定内容に従い、チャネルch.1〜ch.N別に駆動条件データを生成し、この駆動条件データを、対応するチャネル駆動波形生成回路55-1〜55-Nに供給する。
ドロップ周期タイミング制御部52は、図示しない印刷制御部から与えられる1ドロップ周期Ttのタイミング情報を基に、駆動イネーブル信号DEとサイクルエンド信号CTIMENDとを生成し、駆動波形遷移制御部53と負荷電圧遷移制御部54とに出力する。
駆動波形遷移制御部53は、上記ドロップ周期タイミング制御部52から入力される駆動イネーブル信号DEとサイクルエンド信号CTIMENDとに同期して、駆動波形のパターンデータを各チャネルch.1〜ch.Nの駆動波形生成回路55-1〜55-Nに共通に供給する。パターンデータには、駆動波形コード群CDと駆動波形ハイインピーダンス信号群HIZとが含まれる。
負荷電圧遷移制御部54は、上記ドロップ周期タイミング制御部52から入力される駆動イネーブル信号DEとサイクルエンド信号CTIMENDとに同期して、負荷電圧の切替パターンを示す負荷電圧制御コードLVCDを負荷電圧生成回路56に供給する。
チャネルch.1〜ch.N別の駆動波形生成回路55-1〜55-Nは、駆動条件制御部51から供給される駆動条件データと、駆動波形遷移制御部53から供給される駆動波形のパターンデータ(駆動波形コード群CD,駆動波形ハイインピーダンス信号群HIZ)とにより、対応するチャネルch.1〜ch.Nの駆動制御信号DR1〜DRNを生成する。生成された駆動制御信号DR1〜DRNは、4系統に分割されて、対応するチャネル駆動回路33-1〜33-Nに出力される。
負荷電圧生成回路56は、負荷電圧遷移制御部54から供給される負荷電圧制御コードLVCDに従い、負荷電圧選択信号LVSを生成する。生成された負荷電圧選択信号LVSは、3系統に分割されて負荷電圧選択回路34に出力される。
図5は、前記駆動波形遷移制御部53の構成図である。駆動波形遷移制御部53は、駆動波形設定レジスタ61と、駆動波形ステートタイミング制御回路62と、駆動波形ステートタイミング生成回路63と、駆動波形コード生成回路64とを含む。
駆動波形設定レジスタ61には、駆動波形ステートタイミングの設定データTIM0〜TIM30と、駆動波形コードの設定データとがセットされる。
駆動波形ステートタイミング制御回路62は、駆動波形設定レジスタ61から取り込んだ設定データTIM0〜TIM30に従い、駆動波形ステートタイミングデータTIMを生成し、駆動波形ステートタイミング生成回路63に供給する。
駆動波形ステートタイミング生成回路63は、ドロップ周期タイミング制御部52から入力される駆動イネーブル信号DEとサイクルエンド信号CTIMENDとに同期して、前記駆動波形ステートタイミングデータTIMから32ビットの駆動波形ステートタイミング信号STR0〜STR31を生成する。そして駆動波形ステートタイミング生成回路63は、生成された駆動波形ステートタイミング信号STR0〜STR30を駆動波形ステートタイミング制御回路62に出力し、生成された駆動波形ステートタイミング信号STR0〜STR31を駆動波形コード生成回路64に出力する。
駆動波形コード生成回路64は、駆動波形設定レジスタ61から取り込んだ駆動波形コード設定データと、駆動波形ステートタイミング生成回路63から入力される駆動波形ステートタイミング信号STR0〜STR31とにより、駆動波形コード群WVA_CD、WVB_CD、WVC_CDと、駆動波形ハイインピーダンス信号群WVA_HIZ、WVB_HIZ、WVC_HIZ、RWVC_HIZとを生成する。そして駆動波形コード生成回路64は、生成された駆動波形コード群WVA_CD、WVB_CD、WVC_CDと、駆動波形ハイインピーダンス信号群WVA_HIZ、WVB_HIZ、WVC_HIZ、RWVC_HIZとを、各チャネルの駆動波形生成回路55-1〜55-Nに共通に出力する。
図6は、前記負荷電圧遷移制御部54の構成図である。負荷電圧遷移制御部54は、負荷電圧設定レジスタ71と、初期電圧設定手段としての負荷電圧初期値コード設定レジスタ72と、負荷電圧ステートタイミング制御回路73と、負荷電圧ステートタイミング生成回路74と、負荷電圧制御コード生成回路75、負荷電圧制御コード選択回路76とを含む。
負荷電圧設定レジスタ71には、負荷電圧ステートタイミングの設定データLVTIM0〜LVTIM6と、負荷電圧制御コードの設定データとがセットされる。負荷電圧初期値コード設定レジスタ72には、負荷電圧初期値LNINITがセットされる。
負荷電圧ステートタイミング制御回路73は、負荷電圧設定レジスタ71から取り込んだ設定データLVTIM0〜LVTIM6に従い、負荷電圧ステートタイミングデータLVTIMを生成し、負荷電圧ステートタイミング生成回路74に供給する。
負荷電圧ステートタイミング生成回路74は、ドロップ周期タイミング制御部52から入力される駆動イネーブル信号DEとサイクルエンド信号CTIMENDとに同期して、前記負荷電圧ステートタイミングデータLVTIMから8ビットの負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0〜LVSTR7を生成する。そして負荷電圧ステートタイミング生成回路74は、生成された負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0〜LVSTR6を負荷電圧ステートタイミング制御回路73に出力し、生成された負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0〜LVSTR7を負荷電圧制御コード生成回路75に出力する。
負荷電圧制御コード生成回路75は、負荷電圧設定レジスタ71から取り込んだ負荷電圧制御コードの設定データLVCODEと、負荷電圧ステートタイミング生成回路74から入力される負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0〜LVSTR7とにより、負荷電圧制御コードLV_CDを生成する。そして負荷電圧制御コード生成回路75は、生成された負荷電圧制御コードLV_CDを、負荷電圧制御コード選択回路76に出力する。
負荷電圧制御コード選択回路76は、負荷電圧初期値コード設定レジスタ72から取り込んだ負荷電圧初期値LNINITと、負荷電圧制御コード生成回路75から供給される負荷電圧制御コードLV_CDとのいずれか一方を選択して、負荷電圧制御コードLVCDとして負荷電圧生成回路56に供給する。
図7は、駆動波形ステートタイミング生成回路63の回路図である。駆動波形ステートタイミング生成回路63は、オア回路81、8ビットカウンタ82,コンパレータ83、アンドゲート84、オアゲート85、アンドゲート86、5ビットカウンタ87及び32個のコンパレータ88-0〜88-31を備え、図7に示す如く配線する。
図8は、駆動波形ステートタイミング生成回路63における主要な信号のタイミング図である。同図において、信号DEは、ドロップ周期タイミング制御部52から入力される駆動イネーブル信号である。信号CTIMENDは、ドロップ周期タイミング制御部52から入力されるサイクルエンド信号である。データTIM[7:0]は、駆動波形ステートタイミング制御回路62から供給される駆動波形ステートタイミングデータである。データSTTCTR[7:0]は、8ビットカウンタ82から出力されるステートタイミング制御データである。信号STTENDは、アンドゲート84から出力されるステートエンド信号である。データSTRCTR[4:0]は、5ビットカウンタ87から出力されるステートカウントデータである。各信号STR0〜STR31は、各コンパレータ88-0〜88-31から出力される駆動波形ステートタイミング信号である。
図8に示すように、オアゲート81に駆動イネーブル信号DEが入力されてからサイクルエンド信号CTIMENDが入力されるまでの間(区間TS〜TE)、8ビットカウンタ82は、所定のタイミングでカウント動作し、カウント値に相当するステートタイミング制御データSTTCTR[7:0]を出力する。コンパレータ83は、ステートタイミング制御データSTTCTR[7:0]の値が駆動波形ステートタイミングデータTIM[7:0]の値と一致すると、一致信号を出力する。アンドゲート84は、コンパレータ83から一致信号が入力されると、ステートエンド信号STTENDを出力する。8ビットカウンタ82は、オアゲート81を介してステートエンド信号STTENDが入力されると、カウント値を一旦リセットし、その後、所定のタイミングでカウント動作を再開する。
また、オアゲート85に駆動イネーブル信号DEが入力されてからサイクルエンド信号CTIMENDが入力されるまでの間(区間TS〜TE)、5ビットカウンタ87は、アンドゲート86を介して入力されるステートエンド信号STTENDの発生数をカウントする。そして5ビットカウンタ87は、カウント値に相当するステートカウントデータSTRCTR[4:0]を各コンパレータ88-0〜88-31に出力する。
コンパレータ88-0は、ステートカウントデータSTRCTR[4:0]が“0”のとき、駆動波形ステートタイミング信号STR0を出力する。コンパレータ88-1は、ステートカウントデータSTRCTR[4:0]が“1”のとき、駆動波形ステートタイミング信号STR1を出力する。コンパレータ88-2は、ステートカウントデータSTRCTR[4:0]が“2”のとき、駆動波形ステートタイミング信号STR2を出力する。他のコンパレータ88-3〜88-31についても同様であり、例えばコンパレータ88-31は、ステートカウントデータSTRCTR[4:0]が“31”のとき、駆動波形ステートタイミング信号STR31を出力する。
各コンパレータ88-0〜88-31の出力のうち、駆動波形ステートタイミング信号STR0〜STR30は、駆動波形ステートタイミング制御回路62に出力され、駆動波形ステートタイミングデータTIM[7:0]の生成に供せられる。同様に、駆動波形ステートタイミング信号STR0〜STR31は、駆動波形コード生成回路64に出力され、駆動波形コードの生成に供せられる。
図9は、負荷電圧ステートタイミング生成回路74の回路図である。負荷電圧ステートタイミング生成回路74は、オア回路91、8ビットカウンタ92,コンパレータ93、アンドゲート94、オアゲート95、アンドゲート96、3ビットカウンタ97及び8個のコンパレータ98-0〜98-7を備え、図9に示す如く配線する。
図10は、負荷電圧ステートタイミング生成回路74における主要な信号のタイミング図である。同図において、信号DEは、ドロップ周期タイミング制御部52から入力される駆動イネーブル信号である。信号CTIMENDは、ドロップ周期タイミング制御部52から入力されるサイクルエンド信号である。データLVTIM[7:0]は、負荷電圧ステートタイミング制御回路73から供給される負荷電圧ステートタイミングデータである。データLVSTTCTR[7:0]は、8ビットカウンタ92から出力される負荷電圧ステートタイミング制御データである。信号LVSTTENDは、アンドゲート94から出力される負荷電圧ステートエンド信号である。データLVSTRCTR[2:0]は、3ビットカウンタ97から出力される負荷電圧ステートカウントデータである。各信号LVSTR0〜LVSTR7は、各コンパレータ98-0〜98-7から出力される負荷電圧ステートタイミング信号である。
図10に示すように、オアゲート91に駆動イネーブル信号DEが入力されてからサイクルエンド信号CTIMENDが入力されるまでの間(区間TS〜TE)、8ビットカウンタ92は、所定のタイミングでカウント動作し、カウント値に相当する負荷電圧ステートタイミング制御データLVSTTCTR[7:0]を出力する。コンパレータ93は、負荷電圧ステートタイミング制御データLVSTTCTR[7:0]の値が、負荷電圧ステートタイミングデータLVTIM[7:0]の値と一致すると、一致信号を出力する。アンドゲート94は、コンパレータ93から一致信号が入力されると、負荷電圧ステートエンド信号LVSTTENDを出力する。8ビットカウンタ92は、オアゲート91を介して負荷電圧ステートエンド信号LVSTTENDが入力されると、カウント値を一旦リセットし、その後、所定のタイミングでカウント動作を再開する。
また、オアゲート95に駆動イネーブル信号DEが入力されてからサイクルエンド信号CTIMENDが入力されるまでの間(区間TS〜TE)、3ビットカウンタ97は、アンドゲート96を介して入力される負荷電圧ステートエンド信号LVSTTENDの発生数をカウントする。そして3ビットカウンタ97は、カウント値に相当する負荷電圧ステートカウントデータLVSTRCTR[2:0]を各コンパレータ98-0〜98-7に出力する。
コンパレータ98-0は、負荷電圧ステートカウントデータLVSTRCTR[2:0]が“0”のとき、負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0を出力する。コンパレータ98-1は、負荷電圧ステートカウントデータLVSTRCTR[2:0]が“1”のとき、負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR1を出力する。他のコンパレータ98-2〜98-7についても同様であり、例えばコンパレータ98-7は、負荷電圧ステートカウントデータLVSTRCTR[2:0]が“7”のとき、負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR7を出力する。
各コンパレータ98-0〜98-7の出力のうち、負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0〜LVSTR6は、負荷電圧ステートタイミング制御回路73に出力され、負荷電圧ステートタイミングデータLVTIM[7:0]の生成に供せられる。同様に、負荷電圧ステートタイミング信号STR0〜STR7は、負荷電圧制御コード生成回路75に出力され、負荷電圧制御コードの生成に供せられる。
このように、駆動波形遷移制御部53の制御タイミングと、負荷電圧遷移制御部54の制御タイミングとは、駆動イネーブル信号DEが入力されてからサイクルエンド信号CTIMENDが入力されるまでのドロップ周期時間を共有する。ただし、当該ドロップ周期内のステート時間は、独立した時間軸で制御する。
前記駆動波形コード生成回路64で生成される駆動波形コード群と駆動波形ハイインピーダンス信号群との第1のパターン例を図11に示し、第2のパターン例を図14に示す。
図11,図14において、「STATE」は、駆動波形ステートタイミング生成回路63で生成される駆動波形ステートタイミング信号STR0〜STR31を示す。「TIM(μsec)」は、駆動波形設定レジスタ61に設定される駆動波形ステートタイミングの設定データTIM0〜TIM30を示す。「WV−A」は、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動波形コード「HOME」及び駆動波形ハイインピーダンス信号「HOMEHi−Z」を示す。「WV−B」は、上記インク吐出対象のチャネルch.iの両側に隣接するチャネルch.i−1、ch.i+1に対する駆動波形コード「NEIGHBOR」及び駆動波形ハイインピーダンス信号「NEIGHBORHi−Z」を示す。
なお、駆動波形コード「HOME」,「NEIGHBOR」の値「0」は、対応する駆動波形生成回路55-iにおいて生成される駆動制御信号DRiのうち第3系統の駆動制御信号DRicをオン出力させるコードである。値「1」は、同駆動制御信号DRiのうち第2系統の駆動制御信号DRibをオン出力させるコードである。値「2」は、同駆動制御信号DRiのうち第4系統の駆動制御信号DRidをオン出力させるコードである。値「3」は、同駆動制御信号DRiのうち第1系統の駆動制御信号DRiaをオン出力させるコードである。
また、駆動波形ハイインピーダンス信号「HOMEHi−Z」,「NEIGHBORHi−Z」の値「0」は、対応する駆動波形コード「HOME」,「NEIGHBOR」で生成される駆動制御信号DRia〜DRidが、駆動波形生成回路55-iから対応するチャネルの駆動回路33-iに出力されるように制御する信号であり、値「1」は、出力されないように制御する信号である。
図12は、前記第1のバターン例において、前記負荷電圧制御コード生成回路75で生成される負荷電圧制御コードの一パターン例である。また、図15は、前記第2のパターン例において、前記負荷電圧制御コード生成回路75で生成される負荷電圧制御コードの一パターン例である。
図12、図15において、「LVSTR」は,負荷電圧ステートタイミング生成回路74で生成される負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0〜LVSTR7を示す。「LVTIM(μsec)」は、負荷電圧設定レジスタ71に設定される負荷電圧波形ステートタイミングの設定データLVTIM0〜LVTIM7を示す。「LV_CD」は、対応する負荷電圧ステートタイミング信号LVSTR0〜LVSTR7と負荷電圧制御コードの設定データLVCODEとから負荷電圧制御コード生成回路75で生成される負荷電圧制御コードLV_CDである。負荷電圧制御コードLV_CDにおいて、値「0」は、負荷電圧生成回路56において生成される負荷電圧選択信号LVSのうち第2系統の選択信号LVSbをオン出力するコードである。値「1」は、同負荷電圧選択信号LVSのうち第1系統の選択信号LVSaをオン出力するコードである。値「2」は、同負荷電圧選択信号LVSのうち第3系統の選択信号LVScをオン出力するコードである。
図13は、前記第1のパターン例において、インク吐出チャネルch.iと当該チャネルch.iに隣接するチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1を示す。また、図16は、前記第2のパターン例において、インク吐出チャネルch.iと当該チャネルch.iに隣接するチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1を示す。
以下、第1のパターン例と第2のパターン例のそれぞれに対するインクジェットヘッド駆動装置30の作用について説明する。はじめに、図11〜図13を用いて第1のパターン例に対するインクジェットヘッド駆動装置30の作用について説明する。
ドロップ周期の開始前においては、駆動波形生成回路55-(i-1),55-i,55-(i+1)から対応する駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)に対し、第3系統の駆動制御信号DR1cが出力される。これにより、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第3の接続回路413がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位はGNDレベルとなる。
また、この時点において、負荷電圧制御コード選択回路76では、負荷電圧初期値コード設定レジスタ72に設定されている負荷電圧初期値LNINITが選択される。第1の例では、負荷電圧初期値LNINITは「1」である。このため、負荷電圧生成回路56から負荷電圧選択回路34に対し、第1系統の選択信号LVSaが出力される。これにより、負荷電圧選択回路34においては、負荷電圧LVとしてVAP電圧が選択される。
ドロップ周期タイミング制御部52から駆動イネーブル信号DEが出力され、駆動波形ステートの初期状態STR0になると、図11に示すように、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動波形コードとその両隣のチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードとはいずれも「3」なので、駆動波形生成回路55-(i-1),55-i,55-(i+1)から対応する駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)に対し、第1系統の駆動制御信号DR1aが出力される。これにより、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第1の接続回路411がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は、LVIN端子への入力電圧、つまりはVAP電圧まで上昇する。
同じく、駆動イネーブル信号DEが出力されて負荷電圧ステートの初期状態LVSTR0になると、図12に示すように、負荷電圧制御コードLVCDは「1」なので、負荷電圧生成回路56からは引き続き第1系統の選択信号LVSaが出力される。これにより、負荷電圧選択回路34では引き続き負荷電圧LVとしてVAP電圧が選択される。
駆動波形ステートタイミング設定データTIM0の時間が経過し、駆動波形ステートの第1段階STR1になると、図11に示すように、チャネルch.iに対する駆動波形コードとチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードとはいずれも「1」なので、駆動波形生成回路55-(i-1),55-i,55-(i+1)から対応する駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)に対し、第2系統の駆動制御信号DR1bが出力される。これにより、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第2の接続回路412がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は、VAP電圧に維持される。
駆動波形ステートタイミング設定データTIM1の時間が経過し、駆動波形ステートの第2段階STR2になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードは「0」となり、チャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードは「1」のままとなる。このため、駆動波形生成回路55-iから対応する駆動回路33-iに対しては、第3系統の駆動制御信号DR1cが出力される。駆動回路33-(i-1),33-(i+1)に対する駆動信号は変化がない。これにより、駆動回路33-iにおいては、第3の接続回路413がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi+1の電位はVAP電圧に維持されるが、駆動パルス信号DPiの電位はGNDレベルまで低下する。
駆動波形ステートタイミング設定データTIM2の時間が経過し、駆動波形ステートの第3段階STR3になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードだけが「2」となる。このため、駆動波形生成回路55-iから対応する駆動回路33-iに対しては、第4系統の駆動制御信号DR1dが出力される。これにより、駆動回路33-iにおいては、第4の接続回路414がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi+1の電位はVAP電圧に維持されるが、駆動パルス信号DPiの電位はVANレベルまで低下する。
かくして、チャネルch.iにおけるインク室22の両側の隔壁28a,28bが外側に変形し、インク室22の容積が拡張して、共通インク室21からインク室22内にインクが流れ込む。
その後、駆動波形ステートの第4段階STR4から第7段階STR7までは、チャネルch.iに対する駆動波形コードとチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードは変化しない。したがって、駆動パルス信号DPiの電位はVAN電圧に維持され、駆動パルス信号DPi-1,DPi+1の電位はVAP電圧に維持される。その結果、チャネルch.iのインク室22は、拡張状態が維持される。
一方、負荷電圧波形ステートタイミング設定データLVTIM0の時間が経過し、負荷電圧ステートの第1段階LVSTR1になると、図12に示すように、負荷電圧制御コードLVCDは「0」なので、負荷電圧生成回路56からは第2系統の選択信号LVSbが出力される。これにより、負荷電圧選択回路34では負荷電圧LVとしてGNDレベルが選択される。
駆動波形ステートの第8段階STR8になると、図11に示すように、チャネルch.iに対する駆動波形コードが「0」となり、チャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードは「1」のままである。このため、駆動回路33-iにおいては、第3の接続回路413がオンし、駆動パルス信号DPiの電位がGNDレベルまで上昇する。
駆動波形ステートの第9段階STR9になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードが「1」となる。チャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードは「1」のまま変化しない。このため、駆動回路33-iにおいては、第2の接続回路412がオンし、駆動パルス信号DPiの電位がVAP電圧まで上昇する。このとき、駆動パルス信号DPi-1,DPi+1の電位もVAP電圧である。したがって、チャネルch.iに対応するインク室22の両側の隔壁28a,28bが定常状態に復元される。この復元により、インク室22内の圧力が増大する。このため、インク室22に対応したノズル23からインク液滴が吐出する。
駆動波形ステートの第10段階STR10になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードとチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードとがいずれも「3」となる。したがって、駆動波形生成回路55-(i-1),55-i,55-(i+1)から対応する駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)に対しては、いずれも第1系統の駆動制御信号DR1aが出力される。これにより、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第1の接続回路411がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は、LVIN端子への入力電圧、つまりはGNDレベルまで低下する。
駆動波形ステートの第11段階STR11になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードとチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードとがいずれも「0」となる。したがって、駆動波形生成回路55-(i-1),55-i,55-(i+1)から対応する駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)に対しては、いずれも第3系統の駆動制御信号DR1cが出力される。これにより、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第3の接続回路413がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は、GNDレベルが維持される。
駆動波形ステートの第12段階STR12になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードは「0」のままだが、チャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードは「2」となる。このため、駆動波形生成回路55-(i-1),55-(i+1)から対応する駆動回路33-(i-1),33-(i+1)に対しては、第4系統の駆動制御信号DR1dが出力される。駆動回路33-iに対する駆動信号は変化しない。これにより、駆動回路33-(i-1),33-(i+3)においては第4接続回路414がオンする。駆動回路33-iにおいては、変化がない。その結果、駆動パルス信号DPiの電位はGNDレベルに維持されるが、駆動パルス信号DPi-1,DPi+1の電位はVANレベルまで低下する。
駆動波形ステートの第13段階STR13は、第12段階STR12と同じである。第14段階になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードが「1」となる。このため、駆動回路33-iにおいては、第2の接続回路412がオンする。すなわち、駆動パルス信号DPiの電位がVAP電圧まで上昇する。
かくして、チャネルch.iに対するインク室22の両側の隔壁28a,28bが、インク室22の容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形する。この変形により、インク室22内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出によりインク室22内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
その後、駆動波形ステートの第15段階STR15から第18段階STR18までは、チャネルch.iに対する駆動波形コードとチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードは変化しない。したがって、駆動パルス信号DPiの電位はVAP電圧に維持され、駆動パルス信号DPi-1,DPi+1の電位はVAN電圧に維持される。すなわち、チャネルch.iのインク室22は、収縮状態が維持される。
一方、負荷電圧波形ステートタイミング設定データLVTIM1の時間が経過し、負荷電圧ステートの第2段階LVSTR2になると、図12に示すように、負荷電圧制御コードLVCDは「1」なので、負荷電圧生成回路56からは第1系統の選択信号LVSaが出力される。これにより、負荷電圧選択回路34では負荷電圧LVとしてVAP電圧が選択される。
駆動波形ステートの第19段階STR19になると、図11に示すように、チャネルch.iに対する駆動波形コードは「1」のままだが、チャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードは「0」となる。このため、駆動回路33-(i-1),33-(i+1)においては、第3の接続回路413がオンし、駆動パルス信号DPi-1,DPi+1の電位がGNDレベルまで上昇する。
駆動波形ステートの第20段階STR20になると、チャネルch.iに対する駆動波形コードも「0」となる。これにより、駆動回路33-iにおいても第3の接続回路413がオンし、駆動パルス信号DPiの電位がGNDレベルまで下降する。この時点において、ドロップ周期タイミング制御部52からはサイクルエンド信号CTIMENDが出力され、1ドロップ周期が終了する。
図13に示すように、駆動波形ステートの初期状態STR0においては、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動パルス信号DPiとその両隣のチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi+1は、いずれもGNDレベルからVAP電圧まで上昇する。したがって、チャネルch.iに対応するインク室22の隔壁を形成する圧電部材12,13の両端電極19に印加される電圧が等しい。すなわち、隔壁28a,28bを形成する圧電部材12,13は負荷容量として作用せず、無負荷状態となる。
ただしこの時点では、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第1の接続回路411がオンする。すなわち、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位としては、LVIN端子への入力電圧が選択される。この時点において、LVIN端子へは、負荷電圧初期値であるVAP電圧が印加されている。したがって、各チャネルch.i-1,ch.i,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi、DPi+1は、いずれもGNDレベルからVAP電圧まで上昇する。
ここで、第1の接続回路411は、内部抵抗が大きい高インピーダンスのものが採用されている。したがって、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は緩やかにVAPレベルまで上昇する。このため、圧電部材12,13が無負荷状態になったとしても、圧電部材12,13の電極に印加される電圧が急峻に変化することはない。
また、駆動波形ステートの第10段階STR10においては、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動パルス信号DPiとその両隣のチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi+1は、いずれもVAP電圧からGNDレベルまで下降する。したがって、チャネルch.iに対応するインク室22の隔壁を形成する圧電部材12,13の両端電極19に印加される電圧が等しい。すなわち、圧電部材12,13は、やはり無負荷状態となる。
ただしこの時点でも、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第1の接続回路411がオンする。すなわち、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位としては、LVIN端子への入力電圧が選択される。この時点において、LVIN端子の電位は、第1段階LVSTR1の値、すなわちGNDレベルとなっている。したがって、各チャネルch.i-1,ch.i,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi、DPi+1は、いずれもVAP電圧からGNDレベルまで下降する。
しかし、前述したように、第1の接続回路411は、内部抵抗が大きい高インピーダンスのものが採用されている。したがって、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は緩やかにGNDレベルまで下降するので、圧電部材12,13が無負荷状態になったとしても、圧電部材12,13の電極に印加される電圧が急峻に変化することはない。
次に、図14〜図16を用いて第2のパターン例に対するインクジェットヘッド駆動装置30の作用について簡単に説明する。
ドロップ周期の開始前においては、第1のパターン例と同様であり、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位はGNDレベルとなる。ただし、第2のパターン例では、負荷電圧初期値LNINITは「2」である。このため、負荷電圧生成回路56から負荷電圧選択回路34に対し、第3系統の選択信号LVScが出力される。これにより、負荷電圧選択回路34においては、負荷電圧LVとしてVAN電圧が選択される。
ドロップ周期タイミング制御部52から駆動イネーブル信号DEが出力され、駆動波形ステートの初期状態STR0になると、図14に示すように、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動波形コードは「3」なので、駆動波形生成回路55−iから対応する駆動回路33−iに対し、第1系統の駆動制御信号DR1aが出力される。これにより、駆動回路33−iにおいては、第1の接続回路411がオンする。その結果、駆動パルス信号DPiの電位は、LVIN端子への入力電圧、つまりはVAN電圧まで下降する。
また、両隣のチャネルch.i−1,ch.i+1に対する駆動波形コードは「3」であるが、駆動波形ハイインピーダンス信号「NEIGHBORHi−Z」が「1」なので、駆動波形生成回路55−(i−1),55−(i+1)から対応する駆動回路33−(i−1),33−(i+1)に対し、第1系統の駆動制御信号DR1aは出力されない。したがって、駆動回路33−(i−1),33−(i+1)においては、第1の接続回路411がオンしない。その結果、駆動パルス信号DPi−1,DPi+1の電位は、DPiに容量結合で引っ張られて、VAN電圧まで下降する。
同じく、駆動イネーブル信号DEが出力されて負荷電圧ステートの初期状態LVSTR0になると、図15に示すように、負荷電圧制御コードLVCDは「2」なので、負荷電圧生成回路56からは引き続き第3系統の選択信号LVScが出力される。これにより、負荷電圧選択回路34では引き続き負荷電圧LVとしてVAN電圧が選択される。
駆動波形ステートタイミング設定データTIM0の時間が経過し、駆動波形ステートの第1段階STR1になると、図14に示すように、チャネルch.iに対する駆動波形コードとチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動波形コードとはいずれも「2」なので、駆動波形生成回路55-(i-1),55-i,55-(i+1)から対応する駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)に対し、第4系統の駆動制御信号DR1dが出力される。これにより、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第4の接続回路414がオンする。その結果、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は、VAN電圧に維持される。
その後の駆動波形ステートの第2段階STR2から第30段階STR30までも、図14に示す駆動波形コードに従い、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は、図16に示す制御タイミングで変化する。同様に、負荷電圧ステートの第1段階LVSTR1から第4段階LVSTR4までも、図15に示す負荷電圧制御コードLVCDに従い、負荷電圧選択回路34では負荷電圧LVとして、VAP電圧、VAN電圧及びGNDレベルの中から図16に示す制御タイミングでいずれかの電圧が選択される。
ここで、図16に示すように、駆動波形ステートの初期状態STR0においては、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動パルス信号DPiとその両隣のチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi+1は、いずれもGNDレベルからVAN電圧まで下降する。したがって、チャネルch.iに対応するインク室22の隔壁を形成する圧電部材12,13の両端電極19に印加される電圧が等しい。すなわち、圧電部材12,13は負荷容量として作用せず、無負荷状態となる。
ただし、この時点では、駆動回路33−iにおいては、第1の接続回路411がオンする。また、駆動回路33−(i−1),33−(i+1)においては、第1の接続回路411はオフしている。すなわち、駆動パルス信号DPiの電位としては、LVIN端子への入力電圧が選択される。この時点において、LVIN端子へは、負荷電圧初期値であるVAN電圧が印加されている。また、駆動パルス信号DPi−1,DPi+1の電位としては、DPiに容量結合で引っ張られDPiの電位となる。したがって、チャネルch.iに対する駆動パルス信号DPiは、GNDレベルからVAN電圧まで下降する。
また、チャネルch.i−1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi−1,DPi+1は、駆動パルス信号DPiに容量結合で引っ張られて、駆動パルス信号DPiの電位となるので、GNDレベルからVAN電圧まで下降する。ここで、第1の接続回路411は、内部抵抗が大きい高インピーダンスのものが採用されている。したがって、駆動パルス信号DPi−1,DPi,DPi+1の電位は緩やかにVANレベルまで下降するので、圧電部材12,13が無負荷状態になったとしても、圧電部材12,13の電極に印加される電圧が急峻に変化することはない。
また、駆動波形ステートの第10段階STR10においては、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動パルス信号DPiとその両隣のチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi+1は、いずれもGNDレベルからVAP電圧まで上昇する。したがって、チャネルch.iに対応するインク室22の隔壁を形成する圧電部材12,13の両端電極19に印加される電圧が等しい。すなわち、圧電部材12,13は、やはり無負荷状態となる。
ただしこの時点でも、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第1の接続回路411がオンする。すなわち、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位としては、LVIN端子への入力電圧が選択される。この時点において、LVIN端子の電位は、第2段階LVSTR2の値、すなわちVAP電圧となっている。したがって、各チャネルch.i-1,ch.i,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi、DPi+1は、いずれもGNDレベルからVAP電圧まで上昇する。
しかし、前述したように、第1の接続回路411は、内部抵抗が大きい高インピーダンスのものが採用されている。したがって、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は緩やかにVAP電圧まで上昇するので、圧電部材12,13が無負荷状態になったとしても、圧電部材12,13の電極に印加される電圧が急峻に変化することはない。
また、駆動波形ステートの第20段階STR20においては、インク吐出対象のチャネルch.iに対する駆動パルス信号DPiとその両隣のチャネルch.i-1,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi+1は、いずれもVAP電圧からGNDレベルまで下降する。したがって、チャネルch.iに対応するインク室22の隔壁を形成する圧電部材12,13の両端電極19に印加される電圧が等しい。すなわち、圧電部材12,13は、やはり無負荷状態となる。
ただしこの時点でも、駆動回路33-(i-1),33-i,33-(i+1)においては、いずれも第1の接続回路411がオンする。すなわち、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位としては、LVIN端子への入力電圧が選択される。この時点において、LVIN端子の電位は第3段階LVSTR3の値、すなわちGNDレベルとなっている。したがって、各チャネルch.i-1,ch.i,ch.i+1に対する駆動パルス信号DPi-1、DPi、DPi+1は、いずれもVAP電圧からGNDレベルまで下降する。
しかし、前述したように、第1の接続回路411は、内部抵抗が大きい高インピーダンスのものが採用されている。したがって、駆動パルス信号DPi-1,DPi,DPi+1の電位は緩やかにGNDレベルまで下降するので、圧電部材12,13が無負荷状態になったとしても、圧電部材12,13の電極に印加される電圧が急峻に変化することはない。
このように本実施形態によれば、圧電部材12,13の両端の電極に印加される電位が正方向または負方向のいずれか同一方向に同時に変化していることを検出するための検出回路をチャネル駆動回路33-1〜33-N毎に設けなくても、圧電部材12,13が無負荷状態になることに起因するノイズを低減させることができる。
したがって、各チャネルの駆動回路33-1〜33-Nを集積した駆動装置のIC化を図る場合に、検出回路が必要な場合と比較してICを小型化できる。また、ICを低コストで製造できる。
なお、前記実施形態では、駆動電源がVAP電源、VAN電源及びGNDの3種類のインクジェットヘッド駆動装置30を例示したが、2種類の駆動電源によって動作するインクジェットヘッド駆動装置、若しくは4種類以上の駆動電源によって動作するインクジェットヘッド駆動装置に対しても、本発明は同様に適用できるものである。
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。