JP2014004269A - 超音波プローブおよび超音波プローブの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価かつ容易な構造で、焦点を深さ方向に延伸する超音波プローブおよび超音波プローブの製造方法を提供する。
【解決手段】超音波振動素子1,2と、均質な材料からなり、前記超音波振動子1,2から発生した超音波3の振動を収束させるレンズ部分は1つの曲率からなる音響レンズ4と、前記音響レンズ4のレンズ面5に形成される表面層6と、を備え、前記音響レンズ4のレンズ面5は、異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割される。
【選択図】図1
【解決手段】超音波振動素子1,2と、均質な材料からなり、前記超音波振動子1,2から発生した超音波3の振動を収束させるレンズ部分は1つの曲率からなる音響レンズ4と、前記音響レンズ4のレンズ面5に形成される表面層6と、を備え、前記音響レンズ4のレンズ面5は、異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割される。
【選択図】図1
Description
本発明は、超音波プローブおよび超音波プローブの製造方法に関する。
超音波映像装置は、被検物に向かって超音波を照射して、被検物から反射または透過してくる超音波を受信することを繰返しながら走査して、受信超音波の強弱を画像化する装置である。ここで、超音波を被検物に照射するデバイスと被検物から出てくる超音波を受けるセンサの両方を超音波プローブと呼ぶ。分解能の高い超音波映像装置では、超音波を照射する位置と被検物から出てくる超音波を受ける位置とができるだけ正確に一致していることが必要になるため、1つの超音波プローブが超音波の照射と反射超音波の受信を行うようになっている。
図7は、一般的な超音波プローブの構成図である。
従来の一般的な超音波プローブにおいて、超音波を発するための素子(超音波振動素子)は、上下面に電極1を形成した圧電体板2から構成される。電極1に対して外部から電圧を印加すると、圧電効果により圧電体板2の厚さが収縮または膨張する。これによって発生した超音波3が音響レンズ4へ向かうようになっている。
また、この超音波振動素子に向かって音響レンズ4から超音波3が伝わると、その振動によって圧電体板2の上下面の電極1間に音圧に応じた電圧が発生するため、この電位を検出することで超音波3の強弱を計測することができるようになっている。
従来の一般的な超音波プローブにおいて、超音波を発するための素子(超音波振動素子)は、上下面に電極1を形成した圧電体板2から構成される。電極1に対して外部から電圧を印加すると、圧電効果により圧電体板2の厚さが収縮または膨張する。これによって発生した超音波3が音響レンズ4へ向かうようになっている。
また、この超音波振動素子に向かって音響レンズ4から超音波3が伝わると、その振動によって圧電体板2の上下面の電極1間に音圧に応じた電圧が発生するため、この電位を検出することで超音波3の強弱を計測することができるようになっている。
図8は、一般的な超音波プローブの動作を説明する部分拡大図である。
超音波映像装置は、微小な構造を検出するために、図8に示すように、音響レンズ4を使って音響媒質7の中の見たい位置に対して超音波3を収束させて焦点8を形成することにより、分解能が高くなるようにしている。
超音波映像装置は、微小な構造を検出するために、図8に示すように、音響レンズ4を使って音響媒質7の中の見たい位置に対して超音波3を収束させて焦点8を形成することにより、分解能が高くなるようにしている。
しかし、超音波3を収束させる焦点8が小さくなればなるほど、焦点8を外れた位置での音波の広がりが大きくなり、そのため焦点深度が浅くなって、焦点8の位置より高い部分または低い部分からの信号が弱くなり、得られる画像がぼやけてしまう。このことは、被検物に凹凸がある場合や被検物が多少傾いている場合、超音波プローブを走査しても焦点8の位置および同じ高さの部分だけしか映像が見えないこととなる。このため、被検物の広い領域の状況が把握できなかったり、計測ができなかったりすることとなり、非常に不便である。
これを解消するために、焦点8を深さ方向に延伸する。即ち、超音波3の収束する高さを、図8に示すような1点(焦点8)とするのではなく、図9に示すようにある程度の深さの範囲にわたって収束させ、超音波3が1本の線状のビーム8Aのような状態となるように収束させる必要がある。
図9に示すビーム8Aのような収束状態に近い超音波3の収束状態を実現する方法として、従来から音響レンズ面の曲率を連続的に変化させた非球面形状に形成する方法が知られている。
図10は、非球面形状の音響レンズ面5Aを有する超音波プローブの部分拡大図である。
音響レンズ4の先端の音響レンズ面5Aを非球面形状に形成して、音響レンズ面5Aの局所的な角度(曲率)を制御することにより、音響レンズ4から音響媒質7の中へ超音波3が出て行く方向を音響レンズ面5Aの全体において制御し、超音波3が収束する焦点8を深さ方向に所定の範囲で連続的に形成することができる。
音響レンズ4の先端の音響レンズ面5Aを非球面形状に形成して、音響レンズ面5Aの局所的な角度(曲率)を制御することにより、音響レンズ4から音響媒質7の中へ超音波3が出て行く方向を音響レンズ面5Aの全体において制御し、超音波3が収束する焦点8を深さ方向に所定の範囲で連続的に形成することができる。
しかし、非球面形状の音響レンズ面5Aを形成するためには、音響レンズ4の材料、焦点距離、音響媒質7の材料といった要因からなる個別の仕様ごとに、異なる非球面形状をシミュレーションなどで求めた上で、数値制御の加工機により1つずつ削り出して研磨する必要があり、製造期間や製造コストに問題がある。
これらの問題点に対して、非特許文献1では、音響レンズ面を焦点位置が少しずつずれるような複数の球面または円筒面を幾何学的に組み合わせ、複球面または複円筒面形状にする方法が提案されている。
図11は、複球面形状の音響レンズ面5Bを有する超音波プローブの部分拡大図である。
図10に示すような非球面レンズの場合は、音響レンズ面5Aの曲率がレンズ中心からの距離に応じて連続的に変化させることで焦点8が均一に分散されるが、図11に示すように複球面レンズの場合は、音響レンズ面5Bに形成された個々の球面から出た超音波が深さ方向にわずかな距離をおいて複数の焦点8に収束するようになっている。これにより、実効的には非球面レンズ(図10参照)による連続的な焦点に近い効果が得られる。
図10に示すような非球面レンズの場合は、音響レンズ面5Aの曲率がレンズ中心からの距離に応じて連続的に変化させることで焦点8が均一に分散されるが、図11に示すように複球面レンズの場合は、音響レンズ面5Bに形成された個々の球面から出た超音波が深さ方向にわずかな距離をおいて複数の焦点8に収束するようになっている。これにより、実効的には非球面レンズ(図10参照)による連続的な焦点に近い効果が得られる。
実際に、複球面レンズ(図11参照)を用いて超音波ビームの収束領域を広げた超音波プローブを使うと、凹凸のある被検物において、通常の単焦点の超音波プローブ(図8参照)よりもはっきりした映像が得られることが確認されている。
図10および図11を用いて説明した方法は、何れも、音響レンズ4自体は単一の材料を使い、音響レンズ面5A,5Bの形状によって超音波が出る方向を制御する方法である。一方、例えば、特許文献1では、音響レンズ面は1つの球面ではあるが、音響レンズ自体を複数の部分に分割し、それぞれの部分を異なる音速を持つ材料で構成し、それを組み合せて音響レンズとする方法が提案されている。
図12は、複数の材料4A,4Bで音響レンズを構成する超音波プローブの部分拡大図である。
図12に示すように、1つの球面を有する音響レンズ面5ではあるが、異なる音速を持つ材料4A,4Bを組み合せて音響レンズ4(4A,4B)が構成されている。音速の異なる材料を使うと、同じ音響レンズ面5の形状でも超音波3が音響レンズ4から音響媒質7の中へ出る時の屈折率が変化する。このため、超音波3が音響レンズ4から音響媒質7中へ出る際の進行方向が変わるため、1つの材質の領域から出た超音波3は音響レンズ4からある距離の点に焦点を結び、他の材質の領域から出た超音波3は先ほどとは異なる距離の点に焦点を結ぶことになる。これにより、材質を適宜選択することで、1つの球面(1つの曲率)の音響レンズ面5においても複数の焦点8を持たせることができる。このように、図12を用いて説明した方法でも、図11を用いて説明した方法と同様に、焦点8を複数の距離に分散させることができる。
図12に示すように、1つの球面を有する音響レンズ面5ではあるが、異なる音速を持つ材料4A,4Bを組み合せて音響レンズ4(4A,4B)が構成されている。音速の異なる材料を使うと、同じ音響レンズ面5の形状でも超音波3が音響レンズ4から音響媒質7の中へ出る時の屈折率が変化する。このため、超音波3が音響レンズ4から音響媒質7中へ出る際の進行方向が変わるため、1つの材質の領域から出た超音波3は音響レンズ4からある距離の点に焦点を結び、他の材質の領域から出た超音波3は先ほどとは異なる距離の点に焦点を結ぶことになる。これにより、材質を適宜選択することで、1つの球面(1つの曲率)の音響レンズ面5においても複数の焦点8を持たせることができる。このように、図12を用いて説明した方法でも、図11を用いて説明した方法と同様に、焦点8を複数の距離に分散させることができる。
三竹毅、外7名、"超音波診断装置における新技術の開発"、[online]、株式会社日立メディコ、[平成24年6月15日検索]、インターネット〈URL:http://www.hitachi-medical.co.jp/tech/medix/pdf/vol38/P21-26.pdf〉
図11に示すような複曲面レンズの形成にあたっては、まず、凹面の小さい球面形状の音響レンズ面を形成し、その外側に一回り大きく曲率が若干異なる球面形状の音響レンズ面を形成し、必要に応じてさらにこれを繰り返す。これにより、焦点8の数を増やすことができる。
しかしながら、1つの音響レンズ面の外側に特定の形状の音響レンズ面を重ねる形状という制約があるため、焦点8の位置が限定される上、設計に時間がかかる。また、音響レンズ4を製作する際には、一番下の音響レンズ面を研磨形成した後、その縁に一回り大きな音響レンズ面を研磨形成することを繰り返すため、特殊な加工装置は不要ではあるが手間と時間がかかるという欠点がある。なお、当然のことながら、レンズ形成のコストは重ねるレンズの段数に応じて高くなる。
一方、図12に示すような音響レンズ4自体を異なる材質の部材を組み合わせる構成では、音響レンズ面5は1つの球面形状であるため、1回の加工で形成でき、レンズ加工の工程の点では簡便である。
しかしながら、異なる材質の部材を組み合せる構成であるため、熱膨張率や成型時の収縮率等の特性が異なる材料4A,4Bを接合することになる。このため、接合作業時に割れたり反ったりする現象が起こりやすく、これを避けるための複雑な条件の作業が必要となる。
さらに、異なる材質の部材を接合できたとしても、特性の違いに起因する歪が接合部分を中心に残留することになり、本来の材質の違いによる音速の違いに加えて、部分的な残留歪による音速の局所的な変化が現れる等の複雑な現象を発生させる。このため、所期の特性の音響レンズを得ることが難しいという欠点があり、市販製品への適用には至っていない。
このように焦点を深さ方向に延伸するためには、均一な材質のレンズではあるが音響レンズ面5A,5Bの形状を変えることで実現する方法(図10,図11参照)と、レンズ形状は単純な球面のレンズではあるが音響レンズ4の材質自体を複数の材質から成る部材を組み合わせて作ることで実現する方法(図12参照)の2つがあるが、いずれの場合も夫々に必要な製造方法に起因する弊害があり、広く普及するには至っていない。
なお、例外的に医療用の超音波プローブの樹脂レンズは、被検物(被検体)が人体という同じ材質であるために同じ形状のレンズが適用できることから、非球面レンズ(図10参照)をリニア型のレンズ面に適用した例が見られるが、通常の超音波映像装置に適用されるシングルタイプの超音波プローブにおいては被検物が千差万別であり、求められるレンズ仕様も多種になるため殆ど実用化されていない。
そこで、本発明は、安価かつ容易な構造で、焦点を深さ方向に延伸する超音波プローブおよび超音波プローブの製造方法を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、本発明は、超音波振動素子と、均質な材料からなり、前記超音波振動子から発生した超音波振動を収束させるレンズ部分は1つの曲率からなる音響レンズと、前記音響レンズのレンズ面に形成される表面層と、を備え、前記音響レンズのレンズ面は、異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割されることを特徴とする超音波プローブである。
また、本発明は、均質な材料からなるレンズの母材に、1つの曲率からなる凹レンズ面を形成するステップと、前記凹レンズ面に表面層を形成して、前記凹レンズ面を異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割するステップと、を備えることを特徴とする超音波プローブの製造方法である。
本発明によれば、安価かつ容易な構造で、焦点を深さ方向に延伸する超音波プローブおよび超音波プローブの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る超音波プローブの構成および超音波の収束する焦点を説明する図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る超音波プローブは、上下面に電極1を形成した圧電体板2からなる超音波振動素子と、音響レンズ面5を有する音響レンズ4と、音響レンズ面5に設けられた表面層6と、ケース9と、を備えている。そして、本実施形態に係る超音波プローブは、音響レンズ4から音響媒質7へ出た超音波3が複数の焦点8で収束するようになっている。即ち、焦点8を深さ方向に複数の距離に分散させることができるようになっている。
図1は、第1実施形態に係る超音波プローブの構成および超音波の収束する焦点を説明する図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る超音波プローブは、上下面に電極1を形成した圧電体板2からなる超音波振動素子と、音響レンズ面5を有する音響レンズ4と、音響レンズ面5に設けられた表面層6と、ケース9と、を備えている。そして、本実施形態に係る超音波プローブは、音響レンズ4から音響媒質7へ出た超音波3が複数の焦点8で収束するようになっている。即ち、焦点8を深さ方向に複数の距離に分散させることができるようになっている。
<超音波プローブの作成工程>
ここで、図2を用いて、第1実施形態に係る超音波プローブの作成工程について説明しつつ、各部の構成について説明する。
ここで、図2を用いて、第1実施形態に係る超音波プローブの作成工程について説明しつつ、各部の構成について説明する。
まず、図2(a)に示すように、端面を鏡面研磨したソーダガラスからなるガラスロッド41の片方の端面に、Cr(クロム)層およびAu(金)層からなる金属層1aをスパッタ成膜する。また、所望の厚さに研磨した圧電体板2の両面にCr層およびAu層からなる金属層(電極)1をスパッタ成膜する。なお、Cr層は、何れの場合も、Au層を下地(ガラスロッド41、圧電体板2)に接着するための接着層である。
次に、図2(b)に示すように、ガラスロッド41の金属層1aの上に金属層(電極)1を成膜した圧電体板2を載せ、圧電体板2とガラスロッド41を加熱しながら加圧して接合する。なお、圧電体板2の上側面に形成されたAu層が圧電体板2の上側の電極1となり、圧電体板2の下側面に形成されたAu層とガラスロッド41の金属層1aのAu層とが接合したAu層が圧電体板2の下側の電極1となる。
圧電体板2の両面をはさむ電極1に対して高周波パルスを与えると、圧電体板2が電圧変化に応じて変形(収縮または膨張)することで、圧電体板2と平行に円板状の超音波3が生じ、これがガラスロッド41中を伝搬してガラスロッド41の反対側の端面に達することができるようになっている。
次に、図2(c)に示すように、圧電体板2を接合したガラスロッド41の端面とは反対側の端面に音響レンズ面5を形成し、ガラスロッド41を音響レンズ4とする。
音響レンズ面5の形成方法として、最も容易なものは、ガラスロッド41を製作する際に、ガラスロッド41をガラス軟化点以上の温度に加熱し、ガラスが柔らかくなった時に片側の端面にレンズの型を押し付けて形成するホットプレス法である。ただし、このホットプレス法の場合、冷却時の収縮により音響レンズ面5の形状が変わりやすいため、超音波3の収束性が劣る場合が多い。
このため、超音波3を高精度に収束させて焦点8の大きさを極力小さくするためには、ガラスロッド41を製造した後に、圧電体板2を接合する端面とは反対側の端面に対して、機械的に研削・研磨を行い、音響レンズ面5を機械加工で削り出すことが適している。
なお、音響レンズ面5の機械加工は、ガラスロッド41に圧電体板2を接合前でも接合後でも対応可能であるが、圧電体板2の接合の際に音響レンズ面5側に荷重をかけることがある場合は、圧電体板2の接合後に音響レンズ面5を形成する方が工程条件、作業法、設備的に対応しやすく望ましい。
次に、図2(d)に示すように、音響レンズ面5の曲面に合わせてくぼみを持たせ、所定の領域を開口するように製作したメタルマスク11を音響レンズ面5上に固定した上で薄膜形成技術により所望の層(表面層6)を音響レンズ面5上に形成する。
例えば、音響レンズ4(ガラスロッド41)をRF(Radio Frequency)マグネトロン型のスパッタ装置に入れ、パイレックス(登録商標)ガラスまたは石英のスパッタリングターゲットを使って、音響レンズ面5の表面にこれらの成分の粒子61を飛ばして音響レンズ面5上に付着させることで表面層6を形成する方法が容易である。
このように表面層6を形成することにより、音響レンズ4の音響レンズ面5には、ソーダガラス(ガラスロッド41,音響レンズ4の材料)からなる領域と、パイレックス(登録商標)ガラスまたは石英からなる領域(表面層6が形成された領域)とが形成されるようになっている。即ち、音響レンズ面5には、材質の異なる領域が複数設けられるようになっている。
なお、必要に応じて、他のメタルマスク11を用いて、先ほどとは別の領域に別の材料の層(表面層6)を形成することで、複数の領域に異なる材質の表面層6を形成することができる。また、表面層6の形成には、スパッタリングだけでなく、電子線を使った蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の手法も適用可能である。
最後に、図1に示すように、これらを超音波振動素子(電極1、圧電体板2)等の電気的な部品を保護するためのケース9に封入し、音響レンズ4の先端の音響レンズ面5だけを露出させて、超音波プローブの作成工程が終了する。
<作用・効果>
次に、第1実施形態に係る超音波プローブの作用・効果について説明する。
このようにして形成した音響レンズ面5に対して圧電体板2から発した超音波3がガラスロッド41中を伝搬してくると、超音波3の進行方向に対する音響レンズ面5の局所的な角度およびその領域の材質の音速で決まる方向に屈折して、音響媒質7中に出て行く。
次に、第1実施形態に係る超音波プローブの作用・効果について説明する。
このようにして形成した音響レンズ面5に対して圧電体板2から発した超音波3がガラスロッド41中を伝搬してくると、超音波3の進行方向に対する音響レンズ面5の局所的な角度およびその領域の材質の音速で決まる方向に屈折して、音響媒質7中に出て行く。
このため、1つの材質の表面領域から出た超音波3は、音響レンズ面5の形状によって1つの焦点を結ぶような角度で出て行くことになる。そして、音響レンズ面5には、材質の異なる領域が複数設けられるため、材質の異なる領域毎に焦点8が形成され、複数の焦点8が実現できる。
ここで、焦点8の延伸について更に説明する。
本実施形態に係る超音波プローブは、微細な構造を観察するためのプローブであり、このような超音波プローブに用いる超音波は、高い分解能を得るために、30MHzを超えるような高い周波数領域の超音波を用いている。そして、本発明は、前記した分解能が高いことの弊害として焦点深度が浅くなり、見たいものが焦点からわずかに外れると見えなくなってしまうという課題を解決するものである。換言すれば、焦点深度を拡大する必要があるのは、高い分解能を得るために高周波数の超音波を用いる超音波プローブであるということになる。
本実施形態に係る超音波プローブは、微細な構造を観察するためのプローブであり、このような超音波プローブに用いる超音波は、高い分解能を得るために、30MHzを超えるような高い周波数領域の超音波を用いている。そして、本発明は、前記した分解能が高いことの弊害として焦点深度が浅くなり、見たいものが焦点からわずかに外れると見えなくなってしまうという課題を解決するものである。換言すれば、焦点深度を拡大する必要があるのは、高い分解能を得るために高周波数の超音波を用いる超音波プローブであるということになる。
そこで、高い周波数での超音波の特徴を検討する。
まず、音響レンズ面5での超音波3の反射率は、式(1)で表すことができる。
まず、音響レンズ面5での超音波3の反射率は、式(1)で表すことができる。
特に、音響レンズ4と音響媒質7の音速の比が大きい場合は、図13(a)に示すように、音響レンズ4内を伝搬してきた超音波が音響レンズ面5で大部分が反射して音響レンズ4内へ戻る超音波3Aとなってしまうため、音響媒質7の中へ出て行く超音波3が非常に弱くなり、良好なS/N比の信号が得られないことが知られている。
そこで、図13(b)に示すように、この超音波の反射を抑制するために音響レンズ面5の上に整合層10と称する薄い層を形成することが広く行われている。整合層10の材料は音響レンズ4の材料の音速と音響媒質7の音速の中間程度の音速を有する材料の中から選定され、スパッタリング法などの工業的な手段により数μm〜数十μm程度の厚さで音響レンズ面5の前面を均一に被覆するよう形成される。このとき、整合層10に必要な厚さは、超音波の波長に依存して決まり、高い周波数ほど整合層10に必要な厚さは薄くなっている。
従来の超音波映像装置では、1〜数MHzの周波数の超音波がよく用いられてきたが、この場合、波長が1mm前後であるため、整合層10としての厚さもこれと同等程度が必要となる。
しかし、近年では、微細な観察用途では10MHzを超える周波数が多く用いられており、このような高周波領域では波長が100μm程度、最近、需要が増えている30MHz以上の超音波プローブでは数十μm前後の厚さの整合層10で超音波3の制御を行っている。
一方、音響レンズ4の焦点距離は、音響レンズ4と音響媒質7の境界での音波の屈折率で決まるが、超音波3の屈折率は、式(2)で表すことができる。
したがって、本発明の課題に対しては、音響レンズ4の表面に数μm〜数十μmの厚さの表面層6(図1参照)を形成することで、音響レンズ面5での超音波3の屈折角を変えることができ、焦点距離も変えることが可能である。
即ち、特に微細な領域を観察する目的の30MHz以上の高周波の超音波プローブに対しては、図12の従来例に示すような音響レンズ4自体の材料を異なる材料の組み合わせにすることなく、音響レンズ4の音響レンズ面5に表面層6を形成して、材質の音速が異なる領域が複数設けられるようにすることにより、材質の異なる領域毎に焦点8が形成され、複数の焦点8を形成することができる。
また、第1実施形態に係る超音波プローブによれば、音響レンズ面5の加工は、1つの球面(1つの曲率)でよく、図10の非球面形状や図11の複球面形状のような複雑な加工と比較して安価かつ容易に形成することができる。
なお、音響レンズ面5には、材質の異なる領域が複数設けられていればよく、図1および図2に示すように音響レンズ4の材質(ソーダガラス)が露出して材質の異なる領域の1つを形成していてもよく、例えば後述する図5(b)のように材質が異なる複数の表面層6(6D,6E)で音響レンズ面5全体が覆われていてもよい。
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る超音波プローブについて図3を用いて説明する。なお、第1実施形態に係る超音波プローブと第2実施形態に係る超音波プローブとは、音響レンズ4および表面層6の作成工程が異なっている。
次に、第2実施形態に係る超音波プローブについて図3を用いて説明する。なお、第1実施形態に係る超音波プローブと第2実施形態に係る超音波プローブとは、音響レンズ4および表面層6の作成工程が異なっている。
<超音波プローブの作成工程>
ここで、図3を用いて、第2実施形態に係る超音波プローブの作成工程について説明する。
ここで、図3を用いて、第2実施形態に係る超音波プローブの作成工程について説明する。
まず、圧電体板2の両面に金属層をスパッタ成膜して電極1を形成する。そして、図3(a)に示すように、電極1に配線(図示せず)を接続した圧電体板2を型12に入れ、図3(b)に示すように、上から樹脂42を流し込む。
ここで、樹脂42は、熱可塑性の材料や加熱硬化型の材料を適用することもできるが、第1実施形態で説明したホットプレス法と同様に、冷却時に音響レンズ4が歪むおそれがある。このため、樹脂42の望ましい材料は、硬化後に硬質であり、通常は水を用いることが多い音響媒質7と反応や吸収などの相互作用を起こさない材料で、室温で硬化するものということになり、2液混合の室温硬化型エポキシ樹脂はこの用途に適した材料である。
次に、図3(c)に示すように、音響レンズ面5の形状を作るために、所定形状と寸法に加工され、テフロン(登録商標)等のエポキシ樹脂(樹脂42)に接着しない材料で作られた型13を押し付けたまま樹脂42を硬化させて音響レンズ面5を成型する。
次に、図3(d)に示すように、音響レンズ面5の所定の領域に筆、ディスペンサーなどの手法で材質の異なるエポキシ樹脂62を塗布した上で、図3(e)に示すように、再度、エポキシ樹脂(樹脂62)樹脂に接着しない材料作られた型13を押し付けたまま樹脂62を硬化させて表面層6を形成する。そして、図3(f)に示すように、型12,13を取り外し、図1に示すように、音響レンズ4の先端の音響レンズ面5だけを露出させてケース9に封入することにより、超音波プローブの作成工程が終了する。
このように、第2実施形態に係る超音波プローブでは、第1実施形態に係る超音波プローブの効果に加え、樹脂により音響レンズ4および表面層6を形成することができ、材料の選択の幅を広げることができる。また、型13を押し付けて音響レンズ面5および表面層6を形成するため、安価かつ容易に超音波プローブを形成することができる。
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る超音波プローブについて説明する。なお、第1,2実施形態に係る超音波プローブと第3実施形態に係る超音波プローブとは、表面層6の形成方法が異なっている。
次に、第3実施形態に係る超音波プローブについて説明する。なお、第1,2実施形態に係る超音波プローブと第3実施形態に係る超音波プローブとは、表面層6の形成方法が異なっている。
第3実施形態に係る超音波プローブは、図2(c)または図3(c)に示すように音響レンズ4の音響レンズ面5を形成した後に、シートを接着剤で貼り付けることにより表面層6を形成する方法である。
この方法によれば、非常に簡便に表面層6を形成することができる。ただし、シートが音響レンズ面5の広い面積に及ぶ場合は、音響レンズ面5の球面に対してシートが追従できなくなり、きれいに貼り付けることができなくなるおそれがある。その場合は、シートを小さく分割して貼り付けることで対応することができる。
なお、シートを貼り付ける接着剤は、音響レンズ4の材料と同等ないしはシート材料と同等の硬さのものが望ましく、一般的には接着剤が硬化した後の硬化物が接着剤の中では硬質であるエポキシ接着剤が良好である。また、接着剤を硬化させる際にはシートのシート面の形状が音響レンズ面5に倣うようにシートの上から上述の型13(図3参照)を押し付けておくことが望ましい。
なお、シートの材料は、ポリエチレンテレフタレート(2,261m/秒)、ポリアミド(2,690m/秒)、ポリカーボネート(1,950m/秒)、ポリイミド(2,250m/秒)、ナイロン66(2,600m/秒)等の硬質な樹脂材料シート以外に、アルミニウム(6,420m/秒)、ステンレス(5,790m/秒)、銅(5,010m/秒)、ニッケル(6,040m/秒)などの金属材料シートも使用可能であり、材料の組み合わせの選択肢が広いという利点がある。なお、材料名の後に付した括弧内の標記は、その材料における音速である。
ただし、金属材料シートを用いる際には、超音波プローブを用いる音響媒質7との相性も考える必要がある。例えば、音響媒質7が水である場合は錆の問題があるため、鉄などの材料を除外することが望ましい。
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態に係る超音波プローブについて図4を用いて説明する。なお、第1〜3実施形態に係る超音波プローブと第4実施形態に係る超音波プローブとは、表面層6の形成方法が異なっている。
次に、第4実施形態に係る超音波プローブについて図4を用いて説明する。なお、第1〜3実施形態に係る超音波プローブと第4実施形態に係る超音波プローブとは、表面層6の形成方法が異なっている。
超音波プローブにおいて、焦点距離が長い場合は、音響レンズ面5の形状は、曲率半径が大きくて浅い形状となる。このような場合には、音響レンズ面5を形成する前のガラスロッド41(図2(b)参照)に、図4(a)に示すように、ガラスロッド41の端面に異なる材料のシート63を1枚以上重ねて貼り付け、図4(b)および図4(c)に示すように、音響レンズ面5の加工を行い、音響レンズ面5と表面層6を形成してもよい。
この場合は、音響レンズ面5である凹曲面の浅い部分には貼り付けたシート63の斜断面がリング状に露出し表面層6とすることになり、レンズ中央に対して同心のリング状の領域が自己整合的に形成される。このため、前述した実施形態と比較して、位置合わせの精度を気にせずに同心のリング状の表面層6を形成できるという利点がある。
なお、用いるロッドはガラスでなくアクリルのような硬質な樹脂であってもよい。ただし、シート63を接着剤で貼り付ける場合には接着剤の層の断面も露出することになるため、接着剤の厚さは極力小さくするようにすることが望ましい。より望ましくは、圧接や融着等の手法を用いて接着剤を使わないで貼り付けを行うことであり、その点では有機樹脂材料のレンズに適用することが望ましい。
≪表面層の領域≫
次に、表面層6を形成する領域について説明する。
表面層6を形成する領域の形状には技術的な制約は無く、材質の数に応じた数の焦点8が得られる。また、個々の焦点8の位置は、音響レンズ面5の前の音響媒質7が同じであれば音響レンズ面5の形状(曲率)と表面材質によって決まる。
次に、表面層6を形成する領域について説明する。
表面層6を形成する領域の形状には技術的な制約は無く、材質の数に応じた数の焦点8が得られる。また、個々の焦点8の位置は、音響レンズ面5の前の音響媒質7が同じであれば音響レンズ面5の形状(曲率)と表面材質によって決まる。
ただし、個々の焦点8に集まる超音波3の強度は、圧電体板2から発する超音波3の強度と個々の領域の面積に依存する。このため、材質の異なる領域と他の材質の異なる領域との面積比は10%以内であることが望ましい。面積比が10%より大きくなると、延伸した焦点8に到達する超音波3の強度に偏りが生じてしまい、望ましい画像が得られなくなるためである。
音響レンズ面5における表面層6の形成する領域の例を図5(a)から図5(c)に示す。
例えば、図5(a)のように、材質の異なる領域(表面層)6A,6B,6Cを設定することで、超音波プローブから出る超音波3の方向性を作り出すことも可能である。ただし、このような超音波3の方向性は焦点の深さによって得られる信号強度に方向性が現れる可能性があり、特殊な用途に限られる。
一般的には方向性をできるだけ作らないために、図5(b)のように、音響レンズ面5の中心に対して、材質の異なる領域(表面層)6D,6Eを点対称となるように設定することが望ましい。
さらに望ましくは、図5(c)に示すように、音響レンズ面5の中心と同心の円またはリング状に材質の異なる領域(表面層)6F,6G,6Hを設定することである。実際のレイアウトとしては、レンズ中央部分は円形の領域6Fを配置し、その外側をリング状の表面層6G,6Hで囲むような配置が最も好適である。なお、リング状の領域が1つでも3つ以上でも良い。
ここで、レンズの中央部分から出る音波は、レンズの中央部分が音波の進行方向に対してほぼ垂直であるがために、レンズ表面での屈折角度が小さく、殆ど直進する。これに起因して音響レンズ面5Aの中央では表面層の材料の影響を受けにくいため、中央の円形領域6Fには焦点位置を制御するためではなく、音響レンズ面5Aの表面での音波の反射を抑えることを主眼にした整合層として表面層を選択する。次に、その外側のリング状の領域6Gには、中央部分よりも音速が少し大きい、または、小さい材料で表面層を形成する。さらにその外側のリング形状領域6Hには、音速がさらに大きい、または、さらに小さい材料で表面層を形成する。このようにすれば、方向性が無くさらに焦点深度が深い超音波プローブを製造することができる。
≪同心円状に配置された領域と材料の選定≫
次に、図5(c)のように同心円状に材質の異なる領域(表面層)6F,6G,6Hが形成されている場合において、各領域に対する材料の選定基準を検討した。なお、以下の説明において、図6に示すように、音響レンズ面5には、中央円形領域6Iと外側リング形状領域6Jが形成されているものとして説明する。
次に、図5(c)のように同心円状に材質の異なる領域(表面層)6F,6G,6Hが形成されている場合において、各領域に対する材料の選定基準を検討した。なお、以下の説明において、図6に示すように、音響レンズ面5には、中央円形領域6Iと外側リング形状領域6Jが形成されているものとして説明する。
中央円形領域6Iの材料に対して、外側リング形状領域6Jの材料の音速を小さくすると、図6(a)に示すように、中央円形領域6Iから出た超音波3が収束する焦点8Iよりも遠い位置に、外側リング形状領域6Jから出た超音波が収束する焦点8Jが形成される。ここで、図6(a)の場合には、レンズに最も遠い焦点8Jより遠い位置および複数の焦点8I,8Jの間の位置に、外側リング形状領域6Jから出た超音波3と中央円形領域6Iから出た超音波3が重なって強い音波になる領域がリング状に出現する。
一方、中央円形領域6Iの材料に対して、外側リング形状領域6Jの材料の音速を大きくすると、図6(b)に示すように、中央円形領域6Iから出た超音波3が収束する焦点8Iよりも近い位置に、外側リング形状領域6Jから出た超音波が収束する焦点8Jが形成される。ここで、図6(b)の場合には、レンズに最も近い焦点8Jより近い位置および複数の焦点8I,8Jの間の位置に、外側リング形状領域6Jから出た超音波3と中央円形領域6Iから出た超音波3が重なって強い音波になる領域がリング状に出現する。
このように、外側リング形状領域6Jから出た超音波3と中央円形領域6Iから出た超音波3が重なる領域に被検物の一部が存在すると、ここからも多少強い反射波が返ってくるため、場合によってはゴーストのような信号が発生することがある。
しかし、実際には焦点位置付近には被検物14が存在するため、最も遠い焦点より遠い位置で超音波3が収束する前に被検物14の表面で音が反射するため、事実上、遠い方での音波が強くなることの影響は無視できる。そのため、基本的には図6(a)のような組み合わせ、つまり、中央円形領域6Iの材料に対して外側リング形状領域6Jの材料の音速を小さくなるように材料を選定することが望ましい。
このことは、リング状の領域を多重に設定する場合でも同様であり、外周側のリング領域ほど音速の小さい材料を選定することが望ましい。また、図5に示したように、円形領域とリング形状領域の組み合わせ以外の領域分割も可能であるが、その場合にも音響レンズ表面5のある領域から出た超音波と他の領域から出た超音波との進路が重ならないように配置することが望ましく、重なる場合であっても最も遠い焦点よりも遠い位置で重なるように領域の配置、材料の選定をすることが望ましい。
≪表面層の領域と材料≫
本実施形態に係る超音波プローブの音響レンズ面5に形成される材質の異なる領域(表面層6)の具体的な材料について説明する。一般に樹脂は音速が小さいので、樹脂レンズに対しては樹脂材料(表1)を、ガラスレンズに関してはガラス材料(表2)を組み合わせることで、焦点を少しずつ変えることが可能となり、実質的にレンズの焦域を広げることにつながる。なお、表1および表2に示した材料は、例示であり、材料はこれに限られるものではない。また、樹脂材料(有機物材料)に関しては、異なる材質の有機物の組み合わせで領域を形成してもよく、同一の有機物であっても原材料の組成比を変えて異なる音速として領域を形成してもよい。
本実施形態に係る超音波プローブの音響レンズ面5に形成される材質の異なる領域(表面層6)の具体的な材料について説明する。一般に樹脂は音速が小さいので、樹脂レンズに対しては樹脂材料(表1)を、ガラスレンズに関してはガラス材料(表2)を組み合わせることで、焦点を少しずつ変えることが可能となり、実質的にレンズの焦域を広げることにつながる。なお、表1および表2に示した材料は、例示であり、材料はこれに限られるものではない。また、樹脂材料(有機物材料)に関しては、異なる材質の有機物の組み合わせで領域を形成してもよく、同一の有機物であっても原材料の組成比を変えて異なる音速として領域を形成してもよい。
ここで、音速がかけ離れた材料の組み合わせの場合、焦点の間隔が広がりすぎるため、ビーム状の焦点とすることができず離散的な焦点となってしまい、焦点間では像がぼけてしまう。このため、本発明の課題である焦点領域を広げる効果を得るためには、最も音速が近い材料の組み合わせにおいて、その音速の差が10%以内とすることが望ましい。このようにすることで、焦点の間隔が広がりすぎないようにすることができ、焦点間では像がぼけてしまうことを低減することができる。そして、そのような組み合わせの材料を並べて所望の焦点の数にすることにより、焦点領域を広げることができる。なお、焦点領域内での画像の連続性をより重視するのであれば、2つの材料の音速の差は5%以内とした方が望ましい。
次に、セラミック系レンズに関する材料の音速を表3に示す。
これらの材料を組み合わせることで、本発明の課題である焦点深度が深いプローブを製造することは可能ではあるが、一般にセラミック系レンズは超音波映像装置においては超音波の媒質(水、空気)の音速との差が大きすぎるため、レンズ面での超音波の反射が大きく伝搬損失が大きい(図13(a)参照)。
このため、一般的にはレンズ表面に音速の遅い材料から成る整合層10を設ける必要がある(図13(b)参照)。したがって、音響レンズ面5全体に整合層10を形成し、その上に更に表面層6を形成して、音響レンズ面5に材質の異なる領域が複数設けられているようにする。これにより、セラミック系レンズにおいても焦点を複数形成することができる。
以上、本実施形態に係る超音波プローブの製造方法によれば、高度な設計技術や特殊な加工装置を使うことなく焦点深度の大きな超音波プローブを作成することが可能であり、焦点深度の大きな超音波プローブの製造コストを大幅に下げることが可能である。
また、本実施形態に係る超音波プローブは、焦点深度を大きくすることができるので、特に高精細な超音波画像を得る目的に対しては、被検物に多少の凹凸があってもピントが合った画像を得ることが安価に実現可能になり、超音波映像装置が各種の製品の内部検査や解析において適用可能な範囲が広がる。
また、本実施形態に係る超音波プローブは、焦点深度を大きくすることができるので、特に高精細な超音波画像を得る目的に対しては、被検物に多少の凹凸があってもピントが合った画像を得ることが安価に実現可能になり、超音波映像装置が各種の製品の内部検査や解析において適用可能な範囲が広がる。
1 電極(超音波振動素子)
2 圧電体板(超音波振動素子)
3 超音波
4 音響レンズ
5 音響レンズ面
6 表面層
6F,6I 円形領域
6G,6H,6J リング形状領域
7 音響媒質
8 焦点
9 ケース
10 整合層
2 圧電体板(超音波振動素子)
3 超音波
4 音響レンズ
5 音響レンズ面
6 表面層
6F,6I 円形領域
6G,6H,6J リング形状領域
7 音響媒質
8 焦点
9 ケース
10 整合層
Claims (12)
- 超音波振動素子と、
均質な材料からなり、前記超音波振動子から発生した超音波振動を収束させるレンズ部分は1つの曲率からなる音響レンズと、
前記音響レンズのレンズ面に形成される表面層と、を備え、
前記音響レンズのレンズ面は、異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割される
ことを特徴とする超音波プローブ。 - 前記複数の領域は、
点対称となるように分割される
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記複数の領域は、
円形領域と、
該円形領域と同心かつ外側に配置されるリング形状領域と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記リング形状領域の材質は、
前記円形領域の材質の音速よりも小さい音速の材質からなる
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ。 - 前記複数の領域は、
材質ごとの領域の面積比の差が10%以内である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記異なる音速を有する材質は、
音速が最も近い材質間での音速の差が10%以内である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記異なる音速を有する材質は、
複数のガラス材料を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記異なる音速を有する材質は、
複数の有機物材料を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記超音波振動子は、30MHz以上の超音波振動を発生させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の超音波プローブ。 - 均質な材料からなるレンズの母材に、1つの曲率からなる凹レンズ面を形成するステップと、
前記凹レンズ面に表面層を形成して、前記凹レンズ面を異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割するステップと、を備える
ことを特徴とする超音波プローブの製造方法。 - 均質な材料からなるレンズの母材に、1つの曲率からなる凹レンズ面を形成するステップと、
シート材を前記凹レンズ面に貼り付けて、前記凹レンズ面を異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割するステップと、を備える
ことを特徴とする超音波プローブの製造方法。 - 均質な材料からなるレンズの母材のレンズを形成する面にシート材を貼り付けるステップと、
前記シート材が貼り付けられた面に凹レンズ面を形成して、該凹レンズ面を異なる音速を有する材質からなる複数の領域に分割するステップと、を備える
ことを特徴とする超音波プローブの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012143710A JP2014004269A (ja) | 2012-06-27 | 2012-06-27 | 超音波プローブおよび超音波プローブの製造方法 |
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ID=50102586
Family Applications (1)
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JP2012143710A Pending JP2014004269A (ja) | 2012-06-27 | 2012-06-27 | 超音波プローブおよび超音波プローブの製造方法 |
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JP (1) | JP2014004269A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20180040417A (ko) * | 2016-10-12 | 2018-04-20 | 한국과학기술연구원 | 조류 제거용 무선 수면 부유체 및 이의 운전 방법 |
JPWO2021079906A1 (ja) * | 2019-10-21 | 2021-04-29 | ||
CN112914508A (zh) * | 2021-01-22 | 2021-06-08 | 华南师范大学 | 基于椭球面曲率的光声/超声双模态高频探头 |
JP2021117123A (ja) * | 2020-01-27 | 2021-08-10 | 株式会社東芝 | 検出装置、収束部材及びノイズキャンセルシステム |
-
2012
- 2012-06-27 JP JP2012143710A patent/JP2014004269A/ja active Pending
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