JP2013542182A - 化合物及び方法 - Google Patents
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Abstract
標的分子に結合可能な分子の提供方法で使用するための、一組のポリペプチドに基づく分子ツール。配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチド。このポリペプチドを、リガンドに対する標的分子に結合可能なリガンド−ポリペプチドコンジュゲートのスクリーニング方法で使用してもよい。リガンド−ポリペプチドコンジュゲートは、例えば治療に有用である。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は生物工学の分野に関する。より具体的には本発明は、新規ポリペプチド並びにこれらポリペプチドに基づく分子ツール及びそのようなツールが使用されている方法、及びこれらのツールを使用して得られる製品に関する。
認識と報告の重要な生物学的感知事象を結びつけるリガンドによって修飾されているいくつかの折りたたみヘリックス−ループ−ヘリックス構造が国際公開第03/080653号に記載されており、同公報はまた、前記ポリペプチド構造の生物分析/バイオセンサー用途での使用や、タンパク質濃度及び/又はタンパク質の親和性を決定するためのバイオセンサーとしての使用についても教示している。
さらに、リガンドによって修飾されている別のポリペプチドが、多数の特定の標的分子と結合可能であることについても既に記載がある。国際公開第07/117215号で開示されているポリペプチド二量体には少なくとも1つのホスホコリン誘導体が結合しているため、生じたペプチドはC反応性タンパク質(CRP)への特異的な結合を示す。同様に、上述の国際公開第03/080653号では、リガンド−ポリペプチドコンジュゲートがヒト炭酸脱水酵素IIに結合することが開示されている。
本発明者らはここで、僅か16種類のポリペプチド配列から選択される一組のポリペプチドを使用することで、様々な標的分子に対して高い選択性及び/又は親和性をもつ、ポリペプチドコンジュゲート結合剤が得られることを発見した。
従って、本発明のこの組のポリペプチドによって強力なツールが提供され、これにより、多様な標的分子に対する結合剤としてのリガンド−ポリペプチドコンジュゲートを得ることができる。この結合剤は、リガンドそのものよりも、実質的に高い親和性及び選択性を有する。
本発明のツールを使用することによって得られるリガンド−ポリペプチドコンジュゲートは、ポリペプチドに連結している標的分子に結合可能なリガンドを含む。リガンドそのもの(すなわち本発明のポリペプチドに連結していないリガンド)は、標的分子に対して中程度の親和性及び/又は選択性しか示さない可能性があるが、本発明によって提供されるコンジュゲート分子は都合よく、実質的に高い親和性及び/又は選択性を示すということが、本発明の非常に優れた利点である。
顕著な特徴は、本発明のこの組のポリペプチドは、非常に多用途な分子ツールとして使用することができ、それにより広範囲の標的分子に対する最適な結合剤を見出すことが可能になるということである。
そのため、本発明の第一の側面に従い、配列番号1〜32より選択される配列を有するポリペプチドを提供する。
さらなる側面に従い、本発明による少なくとも2種類の異なるポリペプチドを含む、複数のポリペプチドを提供する。
さらなる側面に従い、本発明による少なくとも2種類の異なるポリペプチドを含む、複数のポリペプチドを提供する。
さらに、標的分子に結合可能な分子の提供方法で使用するための分子ツールを提供する。前記ツールは、配列番号1〜32のいずれか1個又は数個に従う複数のポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、標的分子に結合可能で、該ポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置のアミノ酸にアミド結合で連結されているリガンド、及び標的分子への結合を検出するためのもので、該ポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置のアミノ酸にアミド結合で連結されているレポーター基を有する。
選択した一組のポリペプチドの各メンバーに標的分子に対するリガンドを連結させ、得られた一組のリガンド−ポリペプチドコンジュゲートを、コンジュゲート分子に対する結合親和性と選択性を指標にスクリーニング(例えば大規模なスクリーニング方法で)することで、標的分子に対する結合剤として最適なリガンド−ポリペプチドコンジュゲートを同定することができる。本明細書で示すように、本発明の利点は、たとえ親和性及び/又は選択性が中程度なリガンドを使用したとしても、このスクリーニング方法によって標的分子に対する親和性及び/又は選択性が高い結合剤、又は親和性及び選択性の組み合わせが最適な結合剤を提供できることである。
そのため別の側面は、標的分子に結合可能なリガンド−ポリペプチドコンジュゲートのスクリーニング方法を提供し、この方法は、
−配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチドを含む少なくとも1つのコンジュゲート分子を提供する工程、
−標的分子とコンジュゲート分子を接触させる工程、及び
−レポーター基からの信号を検出する工程、を含み
前記ポリペプチドは標的分子に対するリガンドを有し、該リガンドはこのリガンドとアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合によって連結されており、前記アミノ酸はポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置にあり、かつ、前記ポリペプチドはレポーター基を有し、該レポーター基はこのレポーター基とアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結されており、前記アミノ酸はポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置にある。
−配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチドを含む少なくとも1つのコンジュゲート分子を提供する工程、
−標的分子とコンジュゲート分子を接触させる工程、及び
−レポーター基からの信号を検出する工程、を含み
前記ポリペプチドは標的分子に対するリガンドを有し、該リガンドはこのリガンドとアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合によって連結されており、前記アミノ酸はポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置にあり、かつ、前記ポリペプチドはレポーター基を有し、該レポーター基はこのレポーター基とアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結されており、前記アミノ酸はポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置にある。
さらなる側面では、リガンド−ポリペプチドコンジュゲートを提供する。このリガンド−ポリペプチドコンジュゲートは、配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチドを含み、前記ポリペプチドはリガンドとアミド結合を形成することができるアミノ酸にアミド結合によって連結されている標的分子に対するリガンドを有し、前記アミノ酸は、ポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置にある。
また、治療に使用する本明細書で定義するリガンド−ポリペプチドコンジュゲート、及び本明細書で定義するリガンド−ポリペプチドコンジュゲートを含む医薬組成物も提供する。
さらに、本発明に従うリガンド−ポリペプチドコンジュゲート、及びそのようなコンジュゲートを使用する診断又は治療法、並びに本発明に従うリガンド−ポリペプチドコンジュゲートを含む医薬組成物又は例えば診断キットを提供する。
本発明のさらなる側面並びにその態様は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から、容易に理解することができる。
本発明の目的のために、アミノ酸に関するIUPACの3字記号及びIUPACの1字記号の両方が使用され、それらは以下の通りである。
本発明のポリペプチド
いくつかの態様において本発明のポリペプチドは、配列番号17〜32のいずれか1種の配列を有し、必要に応じて、末端の片方又は両方を適切な保護基で保護してもよい。
いくつかの態様において本発明のポリペプチドは、配列番号17〜32のいずれか1種の配列を有し、必要に応じて、末端の片方又は両方を適切な保護基で保護してもよい。
本発明のいくつかの態様において本発明のポリペプチドは、配列番号1〜16のいずれか1種の配列を有する。
一態様において本発明のこの組のポリペプチドは、
一態様において本発明のこの組のポリペプチドは、
又はこれらのうちいずれかの、C−末端アミド化産物若しくはN−末端アシル化産物から選択される。
本発明の各ポリペプチドは、短いループで接続された2つの両親媒性らせんに折り畳まれるように設計されている。ポリペプチドのアミノ酸は、らせん又はループの形成性向に基づいて選択される。さらに、塩橋の形成、N−末端とC−末端のキャッピング、及びらせん双極子を安定させることが可能な残基を導入してらせん部分を安定化させた。NMRやCD分光器、及び分析用超遠心による広範囲にわたる試験から、近縁のポリペプチド配列のファミリーはヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフに折り畳まれ、これが二量体化して溶融球様の性質をもつ逆並行の4本のヘリックス束を形成することが確認された。一組16種類のメンバーの内のコンジュゲートしていない配列の平均残基楕円率が、ヘリックス−ループ−ヘリックス二量体を形成する類似した配列の楕円率の範囲内に入ることが既に報告されている。CD及びNMR分光試験から、ヒト炭酸脱水酵素IIに結合するように設計されたポリペプチドコンジュゲートは、溶融球様のヘリックス−ループ−ヘリックス二量体を象徴する特性をもつことが明かになっている。溶融球様特性をもつヘリックス−ループ−ヘリックス二量体を形成することが既に示されている数個の配列との相同性に基づき、本発明のポリペプチドも同様の折り畳み構造を形成すると仮定される。
本発明の各ポリペプチドは、短いループで接続された2つの両親媒性らせんに折り畳まれるように設計されている。ポリペプチドのアミノ酸は、らせん又はループの形成性向に基づいて選択される。さらに、塩橋の形成、N−末端とC−末端のキャッピング、及びらせん双極子を安定させることが可能な残基を導入してらせん部分を安定化させた。NMRやCD分光器、及び分析用超遠心による広範囲にわたる試験から、近縁のポリペプチド配列のファミリーはヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフに折り畳まれ、これが二量体化して溶融球様の性質をもつ逆並行の4本のヘリックス束を形成することが確認された。一組16種類のメンバーの内のコンジュゲートしていない配列の平均残基楕円率が、ヘリックス−ループ−ヘリックス二量体を形成する類似した配列の楕円率の範囲内に入ることが既に報告されている。CD及びNMR分光試験から、ヒト炭酸脱水酵素IIに結合するように設計されたポリペプチドコンジュゲートは、溶融球様のヘリックス−ループ−ヘリックス二量体を象徴する特性をもつことが明かになっている。溶融球様特性をもつヘリックス−ループ−ヘリックス二量体を形成することが既に示されている数個の配列との相同性に基づき、本発明のポリペプチドも同様の折り畳み構造を形成すると仮定される。
本発明のポリペプチドの改変は、主に2つの点、電荷分布とリガンドの連結部位に焦点を当てて行われている。一態様において本発明のポリペプチドは、図1に示す配列を有する。図1で示すポリペプチドでは、ポリペプチドの全電荷は−7〜+2と多様であり、かつ、改変された残基は全て、溶媒に曝される位置にある。リガンドに連結される残基、例えばリシン残基(図1では太字で示している)は、8、17、22及び34番目の位置にある。ポリペプチドはヘリックス−ループ−ヘリックス二次構造(ヘリックスI−ループ−ヘリックスII)を形成し、指示位置にリガンドを連結することで、ヘリックスIの先頭部分、ヘリックスIの末端、ループ中、及びヘリックスIIの中程それぞれへの組み込みが可能になる。リガンドが連結する各部位の全電荷が4種類あり、リガンドの連結部位が4つあることから、合計で16種類の配列が生じる。
ペプチド−タンパク質相互作用における結合エネルギーの大部分は、タンパク質表面の疎水性残基と折り畳まれたらせんの疎水性表面との疎水性相互作用によって生じると考えられる一方、電荷間の相互作用は選択性をもたらすと予測される。
ポリペプチドのアミノ酸のいくつかを、固体担体への連結部位を提供するように改変してもよい。例えばAla(例えば24番目又は25番目或いは改変することが可能な他のいずれかの部位にあるAla)を、適切な表面材料、例えば遊離チオール官能基と反応する反応性ジスルフィド基をもつ表面材料にジスルフィド結合を形成すること、又は例えば金表面に付着させることにより結合させることができるように、Cysで置換してもよい。Cysはまた、必要に応じて、さらなる官能基との連結部位として、例えば当業者には周知のマレイミド−チオール結合化学を用いた、例えばさらなるレポーター基との連結部位として、使用することができる。
本明細書で上述したように、好ましくはポリペプチドのN−末端及びC−末端のキャッピングが使用される。そのようなキャッピングが好ましくはあるが、絶対条件とは見なすべきではない。
当業者に周知のように、他の保護基を使用してN−末端及びC−末端の保護を行ってもよい。N−末端保護基の例としては、アセチル基の他に任意のアシル基、例えばC2−C6アルコキシカルボニル基が挙げられる。さらに、保護基はまた、例えばアルコキシカルボニル若しくはアリールオキシカルボニル基(例えばC2−C6アルコキシカルボニル基)、又はフェノキシ又はベンジルオキシカルボニル基であってもよい。C−末端のカルボキシル基は、アミド化(すなわち、一級アミド、二級アミド、又は三級アミド)による保護に加えて、例えばエステル化(すなわち必要に応じて置換されるアルキル又はアリールエステル)によっても保護することができる。他の保護基や、本発明のポリペプチドに含まれる任意の基の保護方法を、当業者は容易に考えつくことができ、かつ、文献、例えばPeter G. M. Wuts及びTheodora W. Greeneの「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」第4版、2007、John Wiley and Sons編の中に見ることができる(その教示は参照することにより本明細書に組み込まれる)。
いくつかの態様において本発明のポリペプチドは、配列番号1〜32のポリペプチドのいずれか、例えば配列番号1〜16、又は配列番号17〜32ではあるが、Alaの代わりにCysを含む、具体的には24番目の位置にCysを含む配列をも含む。
いくつかの態様では、本発明のポリペプチドのアミノ酸のいくつかを、例えば保護基と反応させることによって、又は類似の化学特性及び/又は構造特性をもつアミノ酸(天然に存在する又は天然に存在しないアミノ酸のいずれであってもよい)と置き換えること(すなわち保存的置換)によって誘導体化してもよい。
例えば、いくつかの態様では、リガンド及び/又はレポーター基とのアミド結合を形成する選択された残基をそれぞれ誘導体化する前に、ポリペプチドのアミノ酸を保護する必要がある場合がある。
周知のように、天然に存在するアミノ酸は、それらの側鎖の化学特性及び/又は構造特性に基づいて、いくつかの群(すなわち脂肪族アミノ酸であるGly、Ala、Val、Leu、及びIle;ヒドロキシ基又は硫黄を含む側鎖をもつアミノ酸であるSer、Cys、Thr、及びMet;芳香族アミノ酸であるPhe、Tyr、Thr及びHis(Hisは塩基性アミノ酸に分類してもよい);塩基性アミノ酸であるLys及びArg(及びHis)並びに酸性アミノ酸及びそれらのアミドであるGlu、Asp、Gln及びAsn)に分類することができる。従っていくつかの態様では、配列番号1〜32に従ういずれか1種のポリペプチドのアミノ酸のいずれかを保存的置換、すなわち類似の化学特性及び/又は構造特性をもつアミノ酸、例えば本明細書上記で概略を示した同じ群に属するアミノ酸と置き換えること、によって置き換えてもよい。
さらに、上述の群に分類することができる多数の天然に存在しないアミノ酸が存在し、そのようなアミノ酸の多くが市販されている。例えば、アラニン(2−アミノプロパン酸)を2−メチルアラニン(2−アミノ−2−メチルプロパン酸)で置換してもよく、ロイシン(2−アミノ−4−メチルペンタン酸)をノルロイシン(2−アミノヘキサン酸)又はtert−ロイシン(2−アミノ−3,3−ジメチル酪酸)などで置換してもよい。
いくつかの態様では、3系列及び4系列の5、16及び27番目の位置にあるロイシンはそれぞれ、ノルロイシンで置換されている。
ポリペプチドの1以上のアミノ酸を他のアミノ酸(天然の又は非天然のアミノ酸)で置換する場合、ポリペプチドの正味電荷の合計が保持されることが好ましい。しかしながらいくつかの態様では、正味電荷の合計は変わってもよい。
ポリペプチドの1以上のアミノ酸を他のアミノ酸(天然の又は非天然のアミノ酸)で置換する場合、ポリペプチドの正味電荷の合計が保持されることが好ましい。しかしながらいくつかの態様では、正味電荷の合計は変わってもよい。
リガンドとの連結部位になっているアミノ酸(すなわち、8、17、22及び34番目のそれぞれ)及びレポーター基との連結部位になっているアミノ酸(すなわち、10、15、25及び37番目それぞれのアミノ酸)は、リガンド及びレポーター基のそれぞれと、アミド結合を形成することができるものを選択すべきである。そのため、前記アミノ酸は好ましくは、一級アミン官能基を有するペンダント基(ポリペプチド鎖、又は「アミノ酸残基」の形成には含まれない残基)を含む。このアミノ酸は天然であっても非天然であってもよい。
連結部位になっているアミノ酸を、リガンド又はレポーター基それぞれとのアミド結合を形成することができるようにするには、好ましくは、本明細書で後述するように、レポーター又はリガンド基を、その活性エステルを形成することによって誘導体化する。
上述したことを踏まえて、配列番号1〜16に従ういずれか1種のポリペプチドでは、任意のリシンを適切な相同物又は誘導体で置換してもよいことを検討する。ただしそのリシンがリガンド又はレポーターとの連結部位となっている場合には、リガンド又はレポーターの活性エステルとの結合形成能を保持する。例えば、リシン(2,6−ジアミノヘキサン酸)をオルニチン(2,5−ジアミノペンタン酸)で、又は2,4−ジアミノ酪酸で或いはこれらの他の炭素鎖相同物のいずれかで、例えば分岐鎖を有するもので置換してもよい。
さらに、いくつかの態様では、配列番号1〜32に従ういずれか1種のポリペプチドの任意のアミノ酸を、類似の化学特性及び/又は構造特性を有する修飾されたアミノ酸のいずれかで置換してもよい。
いくつかの態様において本発明のポリペプチドは、当業者には周知のように、保護基を組み込むことで修飾したアミノ酸を含んでもよい。「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」(上記)もまた参照のこと。例えば、リガンドの活性エステルが結合する時に、リガンドが連結するリシンのみに接続できるように、適切な保護基が用いられる。
8、10、15、17、22、25、34及び37番目に位置するアミド結合形成アミノ酸は好ましくはリシンである。しかしながらいくつかの態様では、リガンド及びレポーター基それぞれが連結している8、10、15、17、22、25、34及び37番目のいずれか1つは、同等のアミノ酸若しくはアミノ酸類似物、又は修飾されたアミノ酸のいずれかであってもよい。ただし、このアミノ酸又はアミノ酸類似物が選択したリガンドやレポーター基と連結することができる場合に限る。そのため、例えばアミド形成アミノ酸は、オルニチン又は2,4−ジアミノ酪酸若しくはこれらの炭素鎖相同物のいずれか、例えば分岐鎖をもつものと同等のものであってもよい。
いくつかの態様において配列番号1〜32に従ういずれか1種のポリペプチドについて述べる場合には、上述した置換又は修飾のいずれかによって得られるこれらのいかなる変異体をも含む。
いくつかの態様では、本発明のポリペプチドは二量体形態である。この場合この二量体は、配列番号1〜32に従ういずれか1種のポリペプチドを2つ、例えば配列番号1〜16に従ういずれか1種のポリペプチド、又は本明細書で上述したこれらの変異体のいずれか2つを含んでいてもよい。二量体のポリペプチドは、非共有結合(本発明のポリペプチド溶液中で自然に形成される可能性のある結合)、又は共有結合(1つ若しくは数個のジスルフィド結合による)のいずれかを介して互いが結合されていてもよい。
分子ツール
本明細書で上述したように、一側面では、本明細書上記で定義した複数のポリペプチドを含む分子ツールを提供する。例えば、本発明の一組のポリペプチドは、本明細書上記で定義した、16種類のヘリックス−ループ−ヘリックスポリペプチド、例えばリガンドが8、17、22又は34番目の位置に、レポーター基が10、15、25及び37番目の位置にそれぞれ連結することができるアミノ酸を有し、かつ、正味電荷が通常、負(例えば−7)から正(例えば+2)と多様である、16種類の42−アミノ酸ポリペプチドを含んでいてもよい。そのようなポリペプチドの例を配列表で提供しているが、当業者はこれらポリペプチドの修飾変異体を、例えばこれらのポリペプチドのアミノ酸のうちの1つ又は数個を保存的置換することによって、又はポリペプチドのアミノ酸を化学修飾することによって、調製することができる。さらに、当然のことながら本発明の16種類のポリペプチドの部分集団を使用してもよく、又はより大きな集団、例えばさらなるポリペプチドを含む集団を用いてもよい。これら全変異体が本発明の範囲内にあると見なされる。
本明細書で上述したように、一側面では、本明細書上記で定義した複数のポリペプチドを含む分子ツールを提供する。例えば、本発明の一組のポリペプチドは、本明細書上記で定義した、16種類のヘリックス−ループ−ヘリックスポリペプチド、例えばリガンドが8、17、22又は34番目の位置に、レポーター基が10、15、25及び37番目の位置にそれぞれ連結することができるアミノ酸を有し、かつ、正味電荷が通常、負(例えば−7)から正(例えば+2)と多様である、16種類の42−アミノ酸ポリペプチドを含んでいてもよい。そのようなポリペプチドの例を配列表で提供しているが、当業者はこれらポリペプチドの修飾変異体を、例えばこれらのポリペプチドのアミノ酸のうちの1つ又は数個を保存的置換することによって、又はポリペプチドのアミノ酸を化学修飾することによって、調製することができる。さらに、当然のことながら本発明の16種類のポリペプチドの部分集団を使用してもよく、又はより大きな集団、例えばさらなるポリペプチドを含む集団を用いてもよい。これら全変異体が本発明の範囲内にあると見なされる。
一態様において分子ツールは、配列番号1〜32に従う配列を有する一組のポリペプチドを含む。
一態様において分子ツールは、配列番号1〜16に従う配列を有する一組のポリペプチドを含む。
一態様において分子ツールは、配列番号1〜16に従う配列を有する一組のポリペプチドを含む。
いくつかの態様において分子ツールは、配列番号17〜32に従う配列を有する一組のポリペプチドを含む。
他の態様において分子ツールは、図1に従う配列を有する一組のポリペプチドを含む。
他の態様において分子ツールは、図1に従う配列を有する一組のポリペプチドを含む。
いくつかの他の態様において分子ツールは、配列番号1〜32から選択されるが3系列及び4系列の5、16及び27番目のロイシンがそれぞれノルロイシン(1字記号はJ)で置換されている、一組のポリペプチドを含む。
その上さらに他の態様において分子ツールは、配列番号1〜16から選択されるが、3系列及び4系列の5、16及び27番目のロイシンがそれぞれノルロイシン(1字記号はJ)で置換されている、一組のポリペプチドを含む。
その上さらに他の態様において分子ツールは、配列番号1〜32から選択され、片方又は両方のポリペプチド末端が保護基を有している、一組のポリペプチドを含む。
従って、一態様において分子ツールは、一組のポリペプチド
従って、一態様において分子ツールは、一組のポリペプチド
又はこれらいずれかのC−末端アミド化産物又はN−末端アシル化産物を含む。
この組のポリペプチドは好ましくは、2〜16種類の異なるポリペプチド、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16種類の異なるポリペプチドを含む。例えばこの組は、配列番号1〜32、例えば1〜16のいずれか1種から選択される少なくとも2種の異なる配列番号の配列を有するポリペプチドを含む。
この組のポリペプチドは好ましくは、2〜16種類の異なるポリペプチド、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16種類の異なるポリペプチドを含む。例えばこの組は、配列番号1〜32、例えば1〜16のいずれか1種から選択される少なくとも2種の異なる配列番号の配列を有するポリペプチドを含む。
例えば、適切な一組は、少なくとも3種の異なる配列番号、又は少なくとも4種の異なる配列番号、例えば少なくとも5種の異なる配列番号、少なくとも6種の異なる配列番号、少なくとも7種の異なる配列番号、少なくとも8種の異なる配列番号、少なくとも9種の異なる配列番号、少なくとも10種の異なる配列番号、少なくとも11種の異なる配列番号、少なくとも12種の異なる配列番号、少なくとも13種の異なる配列番号、少なくとも14種の異なる配列番号、又は少なくとも15種の異なる配列番号のポリペプチドを含んでいてもよい。いくつかの好ましい態様においてこの組は、16種類の配列番号、例えば配列番号1〜16又は配列番号17〜32に従うポリペプチドを含む。
少なくとも16種類のポリペプチド(リガンドを組み込むための部位を4箇所有し、リガンドを組み込むための各部位の電荷が4箇所とも異なる)を含むツールを使用することが好ましい。この理由は、所定のリガンドと組み合わせた場合に、どのポリペプチドが最適な結合親和性及び選択性を生じるかを予測することは、不可能とは言わないまでも、非常に難しいからである。そのため、配列表にある16種類の配列全てに基づいた一組のポリペプチドを分子ツールとして使用することが、最もよい結果を生じると考えられる。しかしながら、この配列のうちのいくつかのみに基づく部分集団ポリペプチドの使用、又はさらなるポリペプチド(例えば、保存的置換でアミノ酸を変化させることによって得られる)を含めることもまた可能であると考えられる。
いくつかの態様においてこの組は、アミノ酸配列中の電荷が全て同じポリペプチドを含むが(図1参照)、他の態様では、この組に含まれるポチペプチドのうちのいくつかは異なる電荷を有する。その上さらに他の態様においてこの組は、電荷が全て異なるポリペプチド、例えば、電荷は異なるがアミノ酸配列中のリガンド連結位置が同じポリペプチドを含む。
小分子リガンドは、8、17、22及び34番目にあるリシン残基の側鎖に連結している。根底にある設計原理は、最適な選択性及び親和性には、小分子とポリペプチドが協調して結合に寄与しなければならないというものである。リガンドはスペーサーを介してポリペプチドに連結されていてもよく、スペーサーの機能は、小分子先端部の結合部位に隣接している相補的な結合部位の形状と電荷を、ポリペプチド構造が見つけられるようにすることである。従って、スペーサーの選択は一般に、結合剤開発の重要な側面である。
用いることができるスペーサーの例を実施例で、特定のリガンドとの関連で示しているが、これらのスペーサーはまた、他のリガンドと共に用いることができる。当業者は、用いることができる他のスペーサー分子を容易に考えつくだろう。例えばスペーサーは、炭素原子が1〜12個の脂肪族鎖であってもよく、この脂肪族鎖を親水性の基で置換して、溶解度を高めてもよい。いくつかの例では、スペーサーが12炭素原子よりも長くなければならないかも知れないが、その場合には、溶解度の問題が生じる可能性がある。このような問題を緩和するためには、スペーサーの骨格に1つ又は数個の極性基を導入するか、或いはスペーサーの骨格を1つ又は数個の極性基で置換することができる。
リガンドの活性エステル(必要に応じてスペーサーを含む)及びレポーターそれぞれにポリペプチドを接触させることによって、リガンド(必要に応じてスペーサーを含む)及びレポーター基をポリペプチドに連結させることができる。リガンドL(又はレポーターR)の活性エステル誘導体は、一般式(I)
Q−COOR1(I)
を有し、式中、QはリガンドL又はレポーターRであり、R1はpeaが約6〜8の脱離基、例えばニトロフェニルである。
Q−COOR1(I)
を有し、式中、QはリガンドL又はレポーターRであり、R1はpeaが約6〜8の脱離基、例えばニトロフェニルである。
リガンドLがスペーサーを介してポリペプチドに連結されている例では、活性エステル誘導体は式(I’)
L−X−COOR1(I’)
で表される場合があり、式中、Xはスペーサーを表す。例えばXが、炭素原子が1〜12個の脂肪族鎖である例では、活性エステル誘導体は式(I’)
L−(CH2)n−COOR1(I’)
で表される場合があり、式中、nは1〜12の整数である。
L−X−COOR1(I’)
で表される場合があり、式中、Xはスペーサーを表す。例えばXが、炭素原子が1〜12個の脂肪族鎖である例では、活性エステル誘導体は式(I’)
L−(CH2)n−COOR1(I’)
で表される場合があり、式中、nは1〜12の整数である。
nが4、6又は11であり、かつ、R1がp−ニトロ−フェニルの活性エステルの合成例が国際公開第07/117215号に記載されており、その内容は全て本明細書に組み込まれる。
レポーター基はアミド形成残基の側鎖、例えば10、15、25及び37番目の位置にあるリシン残基に連結されており、かつ、ポリペプチド又はポリペプチドコンジュゲートに連結された場合には通常、標的分子とポリペプチド又は標的分子とポリペプチドコンジュゲートそれぞれの間の相互作用の指標となる検出可能なシグナルを生成可能な基である。レポーター基の好ましい例としては、蛍光プローブ、例えばダンシル、クマリン、フルオレセイン、ローダミン及びオレゴングリーン誘導体が挙げられる。レポーター基はまた、ホスホエノールピルビン酸キナーゼなどの酵素であってもよい。レポーター基を製造業者の説明に従って、又は他の慣習的な方法で、例えば活性エステル誘導体として、アミド形成残基に連結させることができる。
42−アミノ酸ポリペプチドを以下のように分類してもよい。
本発明の一側面では、標的分子に結合可能なリガンド−ポリペプチドコンジュゲートのスクリーニング方法を提供し、この方法は、
配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチドを含む少なくとも1つのコンジュゲート分子を提供する工程、
標的分子とコンジュゲート分子を接触させる工程;及び
レポーター基由来のシグナルを検出する工程を含み、
前記ポリペプチドは標的分子に対するリガンドを有し、該リガンドはこのリガンドとアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合によって連結されており、前記アミノ酸はこのポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置にあり、かつ、前記ポリペプチドはレポーター基を有し、該レポーター基はこのレポーター基とアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結されており、前記アミノ酸はこのポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置にある。
配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチドを含む少なくとも1つのコンジュゲート分子を提供する工程、
標的分子とコンジュゲート分子を接触させる工程;及び
レポーター基由来のシグナルを検出する工程を含み、
前記ポリペプチドは標的分子に対するリガンドを有し、該リガンドはこのリガンドとアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合によって連結されており、前記アミノ酸はこのポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置にあり、かつ、前記ポリペプチドはレポーター基を有し、該レポーター基はこのレポーター基とアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結されており、前記アミノ酸はこのポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置にある。
本発明の方法で使用するポリペプチドは本明細書上記で記述したものである。例えば、リガンド又はレポーター基とアミド結合を形成することができるアミノ酸は好ましくは一級アミン官能基(すなわち−NH2)を含み、いくつかの態様では、前記アミノ酸はリシン、オルニチン又は2,4−ジアミノ酪酸から選択される。
従って、一態様においてこのスクリーニング方法は、
配列番号1〜16から選択される配列を有するポリペプチドを含む少なくとも1つのコンジュゲート分子を提供する工程、
標的分子をコンジュゲート分子と接触させる工程;及び
レポーター基由来のシグナルを検出する工程を含み、
前記ポリペプチドは標的分子に対するリガンドを有し、該リガンドは8、17、22、及び34番目から選択される位置のリシンに連結されており、かつ、前記ポリペプチドはレポーター基を有し、該レポーター基は15、10、25及び37番目の位置から選択される位置のリシンに連結されている。
配列番号1〜16から選択される配列を有するポリペプチドを含む少なくとも1つのコンジュゲート分子を提供する工程、
標的分子をコンジュゲート分子と接触させる工程;及び
レポーター基由来のシグナルを検出する工程を含み、
前記ポリペプチドは標的分子に対するリガンドを有し、該リガンドは8、17、22、及び34番目から選択される位置のリシンに連結されており、かつ、前記ポリペプチドはレポーター基を有し、該レポーター基は15、10、25及び37番目の位置から選択される位置のリシンに連結されている。
本発明の一態様は一組のコンジュゲート分子を提供する工程を含み、このコンジュゲート分子は、
対応する一組のリガンド−レポーター−ポリペプチドコンジュゲートを得るために、本発明の一組のポリペプチドの1つ1つのポリペプチドに、標的分子に対するリガンドと標的分子への結合を検出するためのレポーターを連結させること、
標的分子と1つ1つのリガンド−レポーター−ポリペプチドコンジュゲートを接触させること、及び
レポーター基由来のシグナルを検出することによって得られる。
対応する一組のリガンド−レポーター−ポリペプチドコンジュゲートを得るために、本発明の一組のポリペプチドの1つ1つのポリペプチドに、標的分子に対するリガンドと標的分子への結合を検出するためのレポーターを連結させること、
標的分子と1つ1つのリガンド−レポーター−ポリペプチドコンジュゲートを接触させること、及び
レポーター基由来のシグナルを検出することによって得られる。
さらなる側面において本発明は、リガンドがポリペプチドに連結されていない場合と比較して高い親和性及び選択性をもつ、標的分子に結合可能なリガンド−ポリペプチドコンジュゲートのスクリーニングによって得られる製品に関する。この製品は例えばリガンド−ポリペプチドコンジュゲートであっても、又はリガンド−ポリペプチドコンジュゲートに加えて1以上の他の基、例えばレポーター基、ポリペプチドの固体担体への連結を可能にする基などを含むものであってもよい。本発明のスクリーニング方法で得られる製品としてのリガンド−ポリペプチドコンジュゲートの数例を、本明細書下記で提供する。また、これらの製品及びその可能な変異体、例えばコンジュゲートのポリペプチドのアミノ酸の保存的置換で得られる変異体も、全て本発明の範囲に含まれる。
本発明のリガンド−ポリペプチドは、生物工学の分野及び医薬の分野に広く応用することができる。一側面では、本発明によるリガンド−ポリペプチドの治療での使用を提供する。例えば、一側面において本発明は、診断法で使用するための本発明に従うリガンド−ポリペプチドコンジュゲートを提供する。別の側面では本発明は、生体内画像化法で使用するための本発明に従うリガンド−ポリペプチドコンジュゲートを提供する。
本発明のリガンド−ポリペプチドコンジュゲートのいくつかの例を以下に提供するが、本発明の分子ツールが多様であることから、応用分野が非常に多岐にわたっていること、及び医学的に興味が持たれている多数のタンパク質(例えば病態に関わることが知られている又は予測されている様々な酵素や受容体)に対する、高親和性で紺選択性の結合剤の開発が可能であることを当業者は理解するだろう。
本発明で提供されるリガンド−ポリペプチドコンジュゲートは、治療で使用される可能性のあるものだけに限定されるものではない。むしろ本発明のリガンド−ポリペプチドコンジュゲートは、あらゆる生物工学的な用途において、例えば法医学的な方法又はタンパク質の精製、例えば大規模(工業規模)なタンパク質の精製において有用となる可能性がある
実施例1
実施例1では、ヒトアセチルコリンエステラーゼ、hAChE、を標的分子として用いた。
実施例1では、ヒトアセチルコリンエステラーゼ、hAChE、を標的分子として用いた。
hAChEは、神経信号の伝達に重要な反応でアセチルコリンを加水分解してコリンを形成するため、化学兵器戦争の標的である。サリン、ソマン及びVXなどの神経ガスは、hAChEを阻害し、曝露された人が重傷を負う又は死亡する程度までその活性を低下させることで作用する(Evison, D., Hinsley, D. and P. Rice. British Medical Journal.2002, 324, 332-335. Marrs, T. Pharmacy. Ther. 1993, 58, 51-66)。さらに、アセチルコリンの減少がアルツハイマー病の一因であり(Talesa, V. N. Mechanisms of Ageing and Development 2001,122, 1961-1969. Perry, E. K.;Tomlinson, B. E.; Blessed, G.; Bergmann, K.; Gibson, P.H.; Perry, R. H. British Medical Journal, 1978, 2, 1457-1459. Perry, E. K.; Perry, R. H.; Blessed, G.; Tomlinson, B. E.. Neuropathology and Applied Neurobiology 1978, 4, 273-277)、hAChEを阻害すると症状が軽減される(Polinsky R. J. Clin .Ther. 1998, 20, 4, 634-647)ことから、hAChEは重要な薬物標的である。そのためhAChEに対する選択的で高親和性の結合剤は、多くの生物医学用途で非常に関心をもたれている。
結果及び考察
設計と合成
結合剤の設計への活性部位阻害剤の使用は魅力的である。というのも、標的酵素、特に、確立・検証されているタンパク質に対する親和性が中程度で選択性のよい有機小分子が得られることが多いからである。hAChEの例では、数種の阻害剤が文献で報告されており(Mooser, G.; Sigman, D .S. Biochemistry 1974, 13, 2299-2307; Taylor, P.; Lappi, S. Biochemistry, 1975, 14, 1989-1997; Nolte, H.-J.; Rosenberry, T. L.; Neumann, E. Biochemistry, 1980, 19, 3705-3711)、既知の阻害剤で、報告されている親和性が30〜100nMの範囲にある9−アミノアクリジン(Steinberg, G.M.; Mednick, M.L.; Maddox, J.; Rice, R.:Cramer, J. J Med Chem 1975, 18, 1056-1061. Radic, Z., Taylor, P. J Biol. Chem. 2001, 276, 4622-4633, 2001)を選択した。しかしながら活性部位阻害剤を使用したhAChEに対する結合剤は、hAChEの活性部位が深さ20Åの穴の中に位置していることから、特有の問題を生じる(Sussman, J. L.; Harel, M.; Frolow, F.; Oefner, C; Goldman, A.; Toker, L.; Silman, I. Science 1991, 253, 872-9. Shafferman A.; Kronman C; Flashner Y.; Leitner; Grosfeld H; Ordentlich A.; Gazes H; Cohen S.; Ariel N.; Barak D.; Hare M.; Silman I.; Sussman J. L.; Vela B. J.Biol.Chem. 1992, 267, 17640-17648)。そのため、hAChEに対する阻害剤をポリペプチド構造に結合させるには、活性部位阻害剤とポリペプチドを、それら固有の結合エピトープに同時に結合させることが可能な長さのスペーサーが必要である。そのためポリペプチドコンジュゲートの設計には、適切なスペーサーと、スペーサーをリガンドに連結させるための適切な部位を選択する工程が含まれる。脂肪族スペーサーは穴の中でも親密に結合し、疎水性相互作用によって活性部位に至ると予測されるが、20Åの脂肪族鎖の疎水性はまた、溶解度に関する懸念をもたらす。さらに、構造と阻害剤を組み合わせることによるエントロピーの増大は、より短いスペーサーによるものほど大きくない可能性がある。
設計と合成
結合剤の設計への活性部位阻害剤の使用は魅力的である。というのも、標的酵素、特に、確立・検証されているタンパク質に対する親和性が中程度で選択性のよい有機小分子が得られることが多いからである。hAChEの例では、数種の阻害剤が文献で報告されており(Mooser, G.; Sigman, D .S. Biochemistry 1974, 13, 2299-2307; Taylor, P.; Lappi, S. Biochemistry, 1975, 14, 1989-1997; Nolte, H.-J.; Rosenberry, T. L.; Neumann, E. Biochemistry, 1980, 19, 3705-3711)、既知の阻害剤で、報告されている親和性が30〜100nMの範囲にある9−アミノアクリジン(Steinberg, G.M.; Mednick, M.L.; Maddox, J.; Rice, R.:Cramer, J. J Med Chem 1975, 18, 1056-1061. Radic, Z., Taylor, P. J Biol. Chem. 2001, 276, 4622-4633, 2001)を選択した。しかしながら活性部位阻害剤を使用したhAChEに対する結合剤は、hAChEの活性部位が深さ20Åの穴の中に位置していることから、特有の問題を生じる(Sussman, J. L.; Harel, M.; Frolow, F.; Oefner, C; Goldman, A.; Toker, L.; Silman, I. Science 1991, 253, 872-9. Shafferman A.; Kronman C; Flashner Y.; Leitner; Grosfeld H; Ordentlich A.; Gazes H; Cohen S.; Ariel N.; Barak D.; Hare M.; Silman I.; Sussman J. L.; Vela B. J.Biol.Chem. 1992, 267, 17640-17648)。そのため、hAChEに対する阻害剤をポリペプチド構造に結合させるには、活性部位阻害剤とポリペプチドを、それら固有の結合エピトープに同時に結合させることが可能な長さのスペーサーが必要である。そのためポリペプチドコンジュゲートの設計には、適切なスペーサーと、スペーサーをリガンドに連結させるための適切な部位を選択する工程が含まれる。脂肪族スペーサーは穴の中でも親密に結合し、疎水性相互作用によって活性部位に至ると予測されるが、20Åの脂肪族鎖の疎水性はまた、溶解度に関する懸念をもたらす。さらに、構造と阻害剤を組み合わせることによるエントロピーの増大は、より短いスペーサーによるものほど大きくない可能性がある。
本発明の、一組16種類のポリペプチド配列(図1)を使用した。各ポリペプチドの全電荷を4工程で−7〜+2の範囲で変化させ、かつ、変化させた残基は全て、溶媒に曝される位置にあった。リガンドを連結させるために用いたリシン残基は8、17、22及び34番目の位置にあり、これによって、ヘリックスIの先頭部分、ヘリックスIの末端部分、ループ中、及びヘリックスIIの中程それぞれへの組み込みが可能になった。
選択的に脱保護したリシン残基、すなわち10、15、25及び37番目に位置しているそれぞれのリシン残基の側鎖に7メトキシクマリン−3−カルボン酸を結合させることによって、各ポリペプチドをレポーター基、すなわちクマリンプローブで修飾した。タンパク質に結合すると分子環境が変化して蛍光強度に影響を及ぼすため、蛍光色素分子によって標的分子との結合を測定することが可能になった。
9−アミノアクリジンリガンドは、よく研究されている活性部位阻害剤である(Shafferman A.; Kronman C; Flashner Y.; Leitner ; Grosfeld H.; Ordentlich A.; Gazes H; Cohen S.; Ariel N.; Barak D.; Hare M.; Silman I.; Sussman J. L.; Vela B. J.Biol.Chem. 1992, 267, 17640-17648. Olofsson, S.; Johansson, G.; Baltzer, L. J. Chem. Soc, Perkin Trans. 2 1995, 2047-56. Olofsson, S.; Baltzer, L. Fold. Des. 1996, 1, 347-356. Andersson, L.; Stenhagen, G.; Baltzer, L. J. Org. Chem. 1998, 63, 1366-1367. Broo, K. S.; Brive, L.; Ahlberg, P.; Baltzer, L. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 11362-11372)。hAChEの結晶構造の解析により、活性部位がタンパク質の中に、深さ20Åのポケットの中に埋め込まれていることが明らかになった(Dupre, D. J.; Robinson, F. A. J. Chem. Soc. 1945, 549-51)。従ってスペーサーは、互いが20Åの距離にある、タンパク質表面上のエピトープに結合することができるポリペプチドと活性部位に結合することができるアクリジン残基とを適合させることができるものである必要がある。そのようなスペーサーは、標的親和性だけを考慮した場合には、好ましくは脂肪族である。しかしながら、メチレン基が15を越える脂肪族スペーサーの疎水性は、合成及びポリペプチド結合で溶解度の問題を生じるレベルであり、かつ、溶解特性が向上した、そのような長いスペーサーを構築するための別の方法では、中央に極性基をもつ2本のセグメントを調製することになる。
ポリペプチド複合結合剤とタンパク質のコンジュゲートの高分解能構造はまだ利用可能ではなく、結合を制御する正確な相互作用は推測することしかできない。阻害剤が活性部位に結合すると直観的に予測されたが、ヒト炭酸脱水素酵素IIの例(Perry, E. K.;Tomlinson, B. E.; Blessed, G.; Bergmann, K.; Gibson, P.H.;Perry,R. H. British Medical Journal, 1978, 2, 1457-1459)及びC反応性タンパク質の例(Talesa, V. N. Mechanisms of Ageing and Development 2001,122, 1961-1969)で検証された仮説では、ポリペプチドとタンパク質との相互作用は未だ推測である。スペーサーを高エネルギー配座にさせることなく、さらに先端部の活性部位中での位置を変えることなく、スペーサーがポリペプチドと先端部を同時に結合させることができる場合にのみ、コンジュゲートは密に結合する。ポリペプチド構造に対する結合エピトープを正確に予測することが難しいため、スペーサー法では、大きさにある程度の柔軟性をもたせることができるようにしなければならない。ポリペプチドに結合させるためのスペーサーは、6−アミノヘキサン酸と8−アミノオクタン酸の全4種類の組み合わせを合成することによって調製した(模式図1)。
長さが異なる3種のスペーサーを提供することに加え、中間アミド基の位置が異なる2種のスペーサーを得た。スペーサーの長さが短いほど選択性が高くなると予測したが、hAChEの結晶構造からはスペーサーの最適な長さが予測できなかったこと、及びその後の応用にも関心がもたれることから、4種全てのスペーサーを合成した。リガンドが迅速かつ部位特異的にポリペプチドに結合するように、配列に含まれる遊離リシン残基を1つのみとし、リガンドを活性エステルとして調製した。
模式図1に示すように、リガンドとスペーサーの組み合わせ、9、10、11及び12を合成した。
模式図1。a)i.SOCl2、無水ベンゼン、N2、加熱、ii.フェノール、K2CO3、無水DMF、N2、加熱。b)6−アミノヘキサン酸又は8−アミノオクタン酸、無水DMF、N2、加熱。c)i.DIPEA、HATU、ii.6−アミノヘキサン酸又は8−アミノオクタン酸、N2、無水DMF、室温。d)i.Et3N、ii.クロロギ酸4−ニトロフェニル、0℃。iii.DMAP、0℃〜室温、MeCN。
模式図1を参照し、文献で報告されているように(Dupre, D. J.; Robinson, F. A. J. Chem. Soc. 1945, 549-51. Ghaneolhosseini, H.; Tjarks, W.; Sjoberg, S. Tetrahedron 1998, 54, 3877-3884)9−クロロアクリジンをその場で形成し、次いでフェノールで芳香族求核置換を行うことにより、9−フェノキシアクリジン(2)を合成した。9−フェノキシアクリジン(2)を6−アミノヘキサン酸又は8−アミノオクタン酸と反応させて3又は4をそれぞれ形成する。6−アミノヘキサン酸又は8−アミノオクタン酸と3又は4中のカルボン酸官能基とをカップリングさせるために最も有効な試薬はHATUであり、化合物5、6、7及び8を生じた。カルボン酸は、相当する酸をHATU及びDIPEAと共に約1時間撹拌することで予め活性化させておいた。未反応の出発材料と2個目のアミンのカップリングを最小限に抑えるには、HATUを1.1〜1.5当量とするのが最もよい。他のカルボン酸のための文献に記載されている方法により(Gagnon, P.; Huang, X.; Therrien, E.; Keillor, J. W. Tetrahedron Lett. 2002, 43, 7717-7719)、酸5、6、7及び8をそれらのp−ニトロフェノールエステルとして活性化させた。エステルの加水分解を最小限に抑えるために、HPLC精製の後、生成物を含む画分を直接液体窒素中で凍結させ、その後、凍結乾燥によって溶媒を除去した。
従って、以下のリガンド−スペーサー部分がポリペプチドのリシンに連結した。
hAChEに対するポリペプチドコンジュゲート結合剤の同定と親和性
活性エステル9を、本発明の16種類のポリペプチドのこの組のメンバーそれぞれにカップリングさせ、スクリーニング手順内で、hAChEに対するそれぞれの親和性を評価した。各ポリペプチド結合剤候補を50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、タンパク質を加えた後の最終濃度が500nMになるように、マイクロ滴定プレートの9つのウェルに分配した。貯蔵液からのhAChE分割量を、3つのウェルではタンパク質の最終濃度が500nMになるように、その他の3つのウェルではタンパク質の最終濃度が1000nMになるように加えた。簡単に言うと、各結合剤を3工程で滴定し、各測定を3回重複して行った。結合剤に1当量のタンパク質を加えると、タンパク質を加えない結合剤と比較して強度が有意に変化するが、1当量のタンパク質をさらに加えても、それ以上強度の変化は起こらないことから、最初のタンパク質添加後の結合が90%を越えたと仮定した。その仮定に基づくと、解離定数Kdは10nM以下であると推測でき、これらの基準を満たした結合剤を「的中」と見なした。ポリペプチド4−C10L17−Ac(4−C10L17のC−末端をアシル化したもの)を選抜し、選択性に関してもこのスクリーニング手順中で評価し、このポリペプチドを9−アミノアクリジンに結合させると、小分子よりも親和性が高い結合剤が得られたことが示された。マイクロ滴定プレートリーダーを用い、励起350nm、発光420nmとして、298Kで蛍光強度を測定した。
活性エステル9を、本発明の16種類のポリペプチドのこの組のメンバーそれぞれにカップリングさせ、スクリーニング手順内で、hAChEに対するそれぞれの親和性を評価した。各ポリペプチド結合剤候補を50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、タンパク質を加えた後の最終濃度が500nMになるように、マイクロ滴定プレートの9つのウェルに分配した。貯蔵液からのhAChE分割量を、3つのウェルではタンパク質の最終濃度が500nMになるように、その他の3つのウェルではタンパク質の最終濃度が1000nMになるように加えた。簡単に言うと、各結合剤を3工程で滴定し、各測定を3回重複して行った。結合剤に1当量のタンパク質を加えると、タンパク質を加えない結合剤と比較して強度が有意に変化するが、1当量のタンパク質をさらに加えても、それ以上強度の変化は起こらないことから、最初のタンパク質添加後の結合が90%を越えたと仮定した。その仮定に基づくと、解離定数Kdは10nM以下であると推測でき、これらの基準を満たした結合剤を「的中」と見なした。ポリペプチド4−C10L17−Ac(4−C10L17のC−末端をアシル化したもの)を選抜し、選択性に関してもこのスクリーニング手順中で評価し、このポリペプチドを9−アミノアクリジンに結合させると、小分子よりも親和性が高い結合剤が得られたことが示された。マイクロ滴定プレートリーダーを用い、励起350nm、発光420nmとして、298Kで蛍光強度を測定した。
ウプサラ大学病院(Uppsala University hospital)から提供された髄液(CSF)からのhAChEの捕捉を監視することによって、4−C10L17−Acの選択性を決定した。CSFは、高濃度では他の数種のタンパク質と共に複雑な生物的環境を構成し、その後の応用に関して非常に興味の持たれるものの1つである。選択した結合剤を、24番目の位置にAlaの代わりにアセトアミドメチル−(Acm−)で保護されたCys残基を加えて再合成し、Acm脱保護の後、プルロニック(登録商標)F108−PDSでコーティングされたポリスチレン製のナノ粒子にジスルフィド結合形成によって連結した。コーティング剤は、2−メルカプロピリジン放出下で遊離チオールと自発的に反応する、活性型のジスルフィド基を有するPEGの単層を形成する。官能性ナノ粒子をCSF中で1時間インキュベートし、その後遠心分離して上清を除去した。粒子を緩衝液に入れてインキュベートすることで3回洗浄し、その後遠心分離して上清を除去した。洗浄工程の後、粒子をELISAとゲル電気泳動で解析した。SDS−PAGE解析用には、ジチオスレイトールを使用して結合剤を粒子から切断し、遠心分離によって粒子から分離して上清を電気泳動ゲルに負荷した。残念ながら、高濃度で含まれ、ポリスチレン製ビーズに非特異的に吸着されるヒト血清アルブミン(HSA)のバンドからhAChE由来のバンドを分離することはできなかった(図2)。HSAの吸着は、SDS−PAGEの対照実験で示された。この対照実験では非官能性ビーズを同じ患者CFSと、結合剤コンジュゲートについて記載したのと同じようにインキュベートし、同一の方法で処理した。
4−C10L17−AcによるhAChEの捕捉を、発光に基づくナノ粒子ELISAによっても解析した。ELISA実験では、洗浄したビーズの分割量を、西洋ワサビペルオキシダーゼと予めコンジュゲートさせておいた抗hAChEポリクローナル抗体と共にインキュベートした。3回の洗浄工程の後、基質であるルミノールを加え、得られた発光シグナルを記録した。参照として結合剤の付いていない粒子を、結合剤を有する粒子と同様に同じ患者由来のCSF中でインキュベートし、処理した。サンドイッチELISAでは、結合剤がコンジュゲートしている粒子がhAChEを捕捉し、4−C10L17−AcがhAChEをCSFから選択的に、CSF中に見られる全タンパク質と競合して、抽出できたことが示された(図2)。参照粒子由来の上清からもシグナルが得られたが、機能性ビーズのシグナルよりもずっと弱かった。バックグランドシグナルは、使用した抗体コンジュゲートのレベルが高かったことが原因の可能性があり、それを完全に除去するのは難しいと思われる。この結果は、患者から回収したCSFからhAChEが選択的に抽出されたこと、及び結合剤である4−C10L17−Acが、HSAなどの高濃度タンパク質やCSFに含まれる他の全てのタンパク質との相当な競合がある測定環境でもhAChEに対する高い親和性及び選択性をもつことを示している。
結論
9−アミノアクリジンを一組のポリペプチド構造の各メンバーに結合させることで、hAChEに対する高い親和性及び選択性をもつ結合剤である4−C10L17−Acを得ることが可能になった。その特性は抗体の特性と同等であるが、大きさはIgYの僅か1/30である。この結果は、結合剤の開発に、覆われた結合ポケットをもつ酵素に対する小分子阻害剤を使用できることを示している。
9−アミノアクリジンを一組のポリペプチド構造の各メンバーに結合させることで、hAChEに対する高い親和性及び選択性をもつ結合剤である4−C10L17−Acを得ることが可能になった。その特性は抗体の特性と同等であるが、大きさはIgYの僅か1/30である。この結果は、結合剤の開発に、覆われた結合ポケットをもつ酵素に対する小分子阻害剤を使用できることを示している。
実験
一般
精製ヒトアセチルコリンエステラーゼをシグマ・アルドリッチから購入した。
1H−NMRスペクトルを、Varian Unity Inova 500分光計を499.9MHzで操作し、CDCl3(7.26ppm)、CD3OD(3.31ppm)、9:1のCD3CN:D2O(1.94ppm)、アセトン−d6(2.05ppm)又はDMSO−d6(2.50ppm)で記録した。13C−NMRスペクトルは、Varian Unity 400分光計を100.6MHzで操作し、CDCl3(77.0ppm)、CD3OD(49.0ppm)、9:1のCD3CN:D2O(1.32ppm)、アセトン−d6(29.84ppm)又はDMSO−d6(39.52ppm)で記録した。スペクトルは全て25℃で記録した。NMRスペクトルの割当に使用した番号付けを模式図2に示す。フラッシュクロマトグラフィーにはメルクのシリカゲル60(230〜400メッシュ)を使用した。TLCはメルクのシリカ60F254ゲルを使用して実施した。TLC又は分析用HPLC−MS−ELSDを使用して反応を監視した。分析用逆相HPLC−MS−ELSDはThermoquestのFinnigan AQAとSEDEX 85 LT-ELSDを取り付けたGilsonで実施した。PhenomenexのGemini C18カラム(5μm、110Å、150×3.0mm)を使用し、分析用HPLCの移動相としては、H2O+HCO2H(0.1%)/MeCN+HCO2H(0.1%)を流速1mL/分で用いた。分取逆相HPLCはPhenomenex Luna C8カラム(5μm、100Å、250×30.0mm)を使用し、Gilsonで行った。分取HPLCの移動相としては、H2O+HCO2H(0.05%)/MeCN+HCO2H(0.05%)又はH2O+TFA(0.1%)/MeCN+TFA(0.1%)を流速30mL/分で使用した。凍結乾燥にはHeto Lyolab 3000を使用した。DMFとベンゼンを標準的な方法(Perrin, D. D.; Armarego, W. L. F. Purification of Laboratory Chemicals; 3 ed.; Pergamon Press: Oxford, 1992)で乾燥した。
一般
精製ヒトアセチルコリンエステラーゼをシグマ・アルドリッチから購入した。
1H−NMRスペクトルを、Varian Unity Inova 500分光計を499.9MHzで操作し、CDCl3(7.26ppm)、CD3OD(3.31ppm)、9:1のCD3CN:D2O(1.94ppm)、アセトン−d6(2.05ppm)又はDMSO−d6(2.50ppm)で記録した。13C−NMRスペクトルは、Varian Unity 400分光計を100.6MHzで操作し、CDCl3(77.0ppm)、CD3OD(49.0ppm)、9:1のCD3CN:D2O(1.32ppm)、アセトン−d6(29.84ppm)又はDMSO−d6(39.52ppm)で記録した。スペクトルは全て25℃で記録した。NMRスペクトルの割当に使用した番号付けを模式図2に示す。フラッシュクロマトグラフィーにはメルクのシリカゲル60(230〜400メッシュ)を使用した。TLCはメルクのシリカ60F254ゲルを使用して実施した。TLC又は分析用HPLC−MS−ELSDを使用して反応を監視した。分析用逆相HPLC−MS−ELSDはThermoquestのFinnigan AQAとSEDEX 85 LT-ELSDを取り付けたGilsonで実施した。PhenomenexのGemini C18カラム(5μm、110Å、150×3.0mm)を使用し、分析用HPLCの移動相としては、H2O+HCO2H(0.1%)/MeCN+HCO2H(0.1%)を流速1mL/分で用いた。分取逆相HPLCはPhenomenex Luna C8カラム(5μm、100Å、250×30.0mm)を使用し、Gilsonで行った。分取HPLCの移動相としては、H2O+HCO2H(0.05%)/MeCN+HCO2H(0.05%)又はH2O+TFA(0.1%)/MeCN+TFA(0.1%)を流速30mL/分で使用した。凍結乾燥にはHeto Lyolab 3000を使用した。DMFとベンゼンを標準的な方法(Perrin, D. D.; Armarego, W. L. F. Purification of Laboratory Chemicals; 3 ed.; Pergamon Press: Oxford, 1992)で乾燥した。
リガンドの合成
9−フェノキシアクリジン(2)。無水ベンゼン(450mL)を1.50gのアクリドン(1当量)にN2雰囲気下で加えた。SOCl2(3.37mL、6当量)を加え、反応混合物を一晩還流し、その後溶媒を蒸発させて除去した。無水DMF(75mL)、フェノール(2.17g、3当量)及びK2CO3(4.26g、3当量)をN2雰囲気下で加えた。反応液を60℃で3.5日間撹拌した。ろ過及び蒸発の後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2〜CH2Cl2:Et2O、6:1)で精製し、2.04gの2を得た(収率98%)。1H−NMR(CDCl3):
9−フェノキシアクリジン(2)。無水ベンゼン(450mL)を1.50gのアクリドン(1当量)にN2雰囲気下で加えた。SOCl2(3.37mL、6当量)を加え、反応混合物を一晩還流し、その後溶媒を蒸発させて除去した。無水DMF(75mL)、フェノール(2.17g、3当量)及びK2CO3(4.26g、3当量)をN2雰囲気下で加えた。反応液を60℃で3.5日間撹拌した。ろ過及び蒸発の後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2〜CH2Cl2:Et2O、6:1)で精製し、2.04gの2を得た(収率98%)。1H−NMR(CDCl3):
6−(9’−アクリジニルアミノ)ヘキサン酸(3)。9−フェノキシアクリジン(2)(0.099g、1当量)の無水DMF溶液(15mL)を6−アミノヘキサン酸(0.617g、12当量)の無水DMF溶液(50mL)にN2雰囲気下で加えた。反応混合物を70℃で2日間、次いで100℃で1日加熱した。室温(rt)まで冷却した後、溶媒を蒸発させた。粗生成物をRP−HPLCで、MeCN/H2O+TFA(0.1%)で勾配溶出(35分間でMeCNを25から30%に)して精製し、0.148gの3を得た(収率76%)。1H−NMR(CD3OD):
13C NMR(DMSO-d6):
8−(9’−アクリジニルアミノ)オクタン酸(4)。9−フェノキシアクリジン(2)(0.218g、1当量)の無水DMF溶液(25mL)を8−アミノオクタン酸(1.580g、12当量)の無水DMFに溶液(25mL)にN2雰囲気下で加えた。反応混合物を100℃で2日間加熱した。室温まで冷却した後、溶媒を蒸発させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで、CH2Cl2:MeOH:HCl(6:1:0.007)を使用して精製し、0.271gの4を得た(収率66%)。1H−NMR(CD3OD):
6−[6’−(9’’−アクリジニルアミノ)ヘキサノイルアミド]ヘキサン酸(5)。6−(9’−アクリジニルアミノ)ヘキサン酸(3)(0.026g、1当量)をN2雰囲気下で無水DMF(6mL)に溶解した。DIPEA(68μL、8当量)とHATU(0.029g、1.5当量)を加え、反応混合物を室温で約1時間撹拌した。6−アミノヘキサン酸(0.013g、2当量)を加え、反応混合物をさらに18時間撹拌した。H2O(2mL)を加え、その後溶媒を蒸発して除去した。粗生成物をRP−HPLCを使用し、MeCN/H2O+HCO2H(0.05%)で勾配溶出(30間でMeCNを15から18%に)して精製し、11.4mgの5を得た(収率56%)。1H−NMR(CD3CN:D20 9:1):
13C NMR (CD3CN:D20 9:1):
8−[6’−(9’’−アクリジニルアミノ)ヘキサノイルアミド]オクタン酸(6)。6−(9’−アクリジニルアミノ)ヘキサン酸(3)(0.022g、1当量)をN2雰囲気下で無水DMF(6mL)に溶解した。DIPEA(56μL、8当量)とHATU(0.024g、1.5当量)を加え、反応混合物を室温で約1時間撹拌した。8−アミノオクタン酸(0.013g、2当量)を加え、反応混合物をさらに18時間撹拌した。H2O(1mL)を加え、溶媒を蒸発して除去した。粗生成物をRP−HPLCを使用し、MeCN/H2O+TFA(0.1%)で勾配溶出(30分間でMeCNを25から40%に)して精製し、12mgの6を得た(収率44%)。1H−NMR(CD3CN:D20 9:1):
13C NMR (CD3CN:D20 9:1):
6−[8’−(9’’−アクリジニルアミノ)オクタノイルアミド]ヘキサン酸(7)。8−(9’−アクリジニルアミノ)オクタン酸(4)(0.029g、1当量)をN2雰囲気下で17mLの無水DMFに溶解した。DIPEA(71μL、8当量)とHATU(0.025g、1.1当量)を加え、反応混合物を室温で約1時間撹拌した。8−アミノヘキサン酸(0.015g、2当量)を加え、反応混合物をさらに3時間撹拌した。H2O(2mL)を加え、溶媒を蒸発して除去した。粗生成物をRP−HPLCを使用して、均一濃度のMeCN(30%)/H2O+TFA(0.1%)で30分間溶出して精製し、7.3mgの7を得た(収率21%)。1H−NMR(CD3CN:D20 9:1):
13C NMR (CD3CN:D20 9:1):
8−[8’−(9’’−アクリジニルアミノ)オクタノイルアミド]オクタン酸(8)。約5mLのMeOHに溶解した4(0.012g、1当量)にK2CO3(0.015g、2当量)を加えて5分間撹拌することでTFA塩を除去した。沈殿物をろ過して除き、溶媒を蒸発して除去した。無水DMF(25mL)をN2雰囲気下で加えた。DIPEA(32μL、5当量)とHATU(0.022g、1.5当量)を加え、反応混合物を室温で約1時間撹拌した。8−アミノオクタン酸(0.013g、2当量)を加え、反応混合物をさらに3時間撹拌した。H2O(2mL)を加え、溶媒を蒸発して除去した。粗生成物をRP−HPLC使用して、MeCN/H2O+TFA(0.1%)で勾配溶出(30分間でMeCNを30から40%に)して精製し、8.9mgの8を得た(収率58%)。1H−NMR(CD3OD):
13C NMR (CD3OD):
6−[6’−(9’’−アクリジニルアミノ)ヘキサノイルアミド]ヘキサン酸p−ニトロフェニルエステル(9)。5(11.4mg、1当量)を約10mLのMeCNに溶解し、その後Et3N(4.15μL、1.1当量)を加えた。反応混合物を0℃まで冷却した。クロロギ酸4−ニトロフェニル(6.2mg、1.1当量)を加えて5分間撹拌した後、DMAP(0.7mg、0.2当量)を加え、冷却槽を除去した。反応を室温で3.5時間撹拌した。反応混合物をグラスウールのプラグを通してろ過し、RP−HPLCに直接注入してMeCN/H2O+HCO2H(0.05%)で勾配溶出した(30分間でMeCNを25から35%)。溶出後、生成物を含む画分を液体窒素中で直接凍結し、凍結乾燥で溶媒を除去して6.3mgの9を得た(収率43%)。1H−NMR(アセトン-d6):
13C NMR (アセトン-d6):
13C NMRスペクトルの共鳴が広く、シグナル対ノイズ比が低く、5a+4a、8a+9aは見られなかった。
8−[6’−(9’’−アクリジニルアミノ)ヘキサノイルアミド]オクタン酸p−ニトロフェニルエステル(10)。約5mLのMeOHに溶解した6(6.6mg、1当量)にK2CO3(2.6mg、2当量)を加えて5分間撹拌することで、TFA塩を除去した。沈殿物をろ過して除き、溶媒を蒸発して除去した。MeCN(約10mL)をフラスコに加え、その後Et3N(1.5μL、1.1当量)を加えた。反応混合物を0℃まで冷却した。クロロギ酸4−ニトロフェニル(2.7mg、1.1当量)を加えて5分間撹拌した後、DMAP(0.4mg、0.2当量)を加え、冷却槽を除去した。反応を室温で4時間撹拌した。反応混合物をグラスウールのプラグを通してろ過し、RP−HPLCに直接注入して、MeCN/H2O+HCO2H(0.05%)で勾配溶出した(30分間でMeCNを25から41%)。溶出後、生成物を含む画分を液体窒素中で直接凍結し、凍結乾燥して溶媒を除去し、3.7mgの10を得た(収率57%)。1H−NMR(アセトン-d6):
8−[6’−(9’’−アクリジニルアミノ)ヘキサノイルアミド]オクタン酸p−ニトロフェニルエステル(10)。約5mLのMeOHに溶解した6(6.6mg、1当量)にK2CO3(2.6mg、2当量)を加えて5分間撹拌することで、TFA塩を除去した。沈殿物をろ過して除き、溶媒を蒸発して除去した。MeCN(約10mL)をフラスコに加え、その後Et3N(1.5μL、1.1当量)を加えた。反応混合物を0℃まで冷却した。クロロギ酸4−ニトロフェニル(2.7mg、1.1当量)を加えて5分間撹拌した後、DMAP(0.4mg、0.2当量)を加え、冷却槽を除去した。反応を室温で4時間撹拌した。反応混合物をグラスウールのプラグを通してろ過し、RP−HPLCに直接注入して、MeCN/H2O+HCO2H(0.05%)で勾配溶出した(30分間でMeCNを25から41%)。溶出後、生成物を含む画分を液体窒素中で直接凍結し、凍結乾燥して溶媒を除去し、3.7mgの10を得た(収率57%)。1H−NMR(アセトン-d6):
13C NMR (アセトン-d6):
6−[8’−(9’’−アクリジニルアミノ)オクタノイルアミド]ヘキサン酸p−ニトロフェニルエステル(11)。約5mLのMeOHに溶解した7(6.8mg、1当量)にK2CO3(2.8mg、2当量)を加えて5分間撹拌することにより、TFA塩を除去した。沈殿物をろ過して除き、溶媒を蒸発して除去した。MeCN(約10mL)をフラスコに加え、次いでEt3N(1.5μL、1.1当量)を加えた。反応混合物を0℃まで冷却した。クロロギ酸4−ニトロフェニル(2.8mg、1.1当量)を加えて5分間撹拌した後、DMAP(0.4mg、0.2当量)を加えて冷却槽を除去した。反応を室温で4.5時間撹拌した。反応混合物をグラスウールのプラグを通してろ過し、RP−HPLCに直接注入してMeCN/H2O+HCO2H(0.05%)で勾配溶出した(30分間でMeCNを25から40%)。溶出後、生成物を含む画分を液体窒素中で直接凍結し、凍結乾燥で溶媒を蒸発して2.5mgの11を得た(収率38%)。1H−NMR(アセトン-d6):
13C NMR (アセトン-d6):
8−[8’−(9’’−アクリジニルアミノ)オクタノイルアミド]オクタン酸p−ニトロフェニルエステル(12)。約5mLのMeOHに溶解した8(13.7mg、1当量)にK2CO3(6.7mg、2当量)を加え、5分間撹拌することによりTFA塩を除去した。沈殿物をろ過して除き、溶媒を蒸発して除去した。MeCN(約15mL)をフラスコに加え、次いでEt3N(3.7μL、1.1当量)を加えた。反応混合物を0℃まで冷却した。クロロギ酸4−ニトロフェニル(6.0mg、1.1当量)を加えて5分間撹拌した後、DMAP(0.6mg、0.2当量)を加えて冷却槽を除去した。反応を室温で3時間撹拌した。粗生成物をRP−HPLCで、MeCN/H2O+HCO2H(0.05%)を使用して勾配溶出した(25分間でMeCNを25から50%にした)。溶出後、生成物を含む画分を液体窒素中で直接凍結し、溶媒を凍結乾燥で除去して4.4mgの12を得た(収率26%)。lH NMR (DMSO-d6):
13C NMR (DMSO-d6):
ペプチド合成
Pioneer自動ペプチド合成機で、活性化剤としてO−(7−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(HBTU、Iris Biotech GmbH)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、アルドリッチ)を使用し、標準的なフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学反応によってペプチドを合成した。アミノ末端のFmoc脱保護は、ピペリジン(20%)のDMF溶液を使用して行った。各カップリングにFmoc−グリシン−ポリエチレングリコール−ポリスチレン(Fmoc−Gly−PEG−PS)樹脂と4倍量のアミノ酸を使用し、0.2mmolのスケールで合成を行った。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を、塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。リシン残基の直交保護を用いて選択的に脱保護できるようにし、次いで蛍光プローブを連結させた。蛍光色素分子をコンジュゲートさせるべきリシン残基をアリルオキシカルボニル(Alloc)基で保護し、リガンドをコンジュゲートさせるべきリシン残基をtert−ブトキシカルボニル(Boc)基で保護した。無水酢酸(0.5M)のDMF溶液でN−末端をアセチル化した。
Pioneer自動ペプチド合成機で、活性化剤としてO−(7−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(HBTU、Iris Biotech GmbH)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、アルドリッチ)を使用し、標準的なフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学反応によってペプチドを合成した。アミノ末端のFmoc脱保護は、ピペリジン(20%)のDMF溶液を使用して行った。各カップリングにFmoc−グリシン−ポリエチレングリコール−ポリスチレン(Fmoc−Gly−PEG−PS)樹脂と4倍量のアミノ酸を使用し、0.2mmolのスケールで合成を行った。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を、塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。リシン残基の直交保護を用いて選択的に脱保護できるようにし、次いで蛍光プローブを連結させた。蛍光色素分子をコンジュゲートさせるべきリシン残基をアリルオキシカルボニル(Alloc)基で保護し、リガンドをコンジュゲートさせるべきリシン残基をtert−ブトキシカルボニル(Boc)基で保護した。無水酢酸(0.5M)のDMF溶液でN−末端をアセチル化した。
N2雰囲気下、室温で、樹脂をテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)(Pd(PPh3)4、2当量)のDCM溶液、酢酸及びN−メチルモルホリン(容積比37:2:1、樹脂1グラム当たり10mL)で2時間処理することにより、Alloc基を脱保護した。次いで樹脂をDIPEA(0.5%)のDMF溶液及びジエチルジチオカルバミン酸(容積率0.5%)のDMF溶液で洗浄した。リシン残基への7−メトキシクマリン−3−カルボン酸(3当量)のカップリングは、室温、DMF中で2時間、ゆっくりと撹拌しながら行った。DIPEA、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を含むカップリング混合物(比率12:6:6)でクマリンを活性化した。2時間後、カップリング混合物の別の分割量を加え、反応混合物を一晩放置した。全例で脱保護とカップリングの間に、樹脂をDMF及びDCMで洗浄した。完全な脱保護と切断は、TFA、水及びTIS(容積比95:2.5:2.5、重合体1グラム当たり10mL)を室温で3時間かけて加えることによって達成した。ろ過し、濃縮した後、冷ジエチルエーテルを加えてペプチドを沈殿させ、遠心分離し、ジエチルエーテルで洗浄して風乾した。
粗ペプチドを逆相HPLCで、半分取Hypersil C-18 Goldカラム(150×20mm、孔径175Å、粒子径5Å)又は半分取Kromasil C8 Hichromカラム(250×21.2mm、孔径100Å、粒子径10Å)を使用し、0.1%のTFAを加えたアセトニトリル水溶液で徐々に勾配をかけながら(アセトニトリル濃度を35から55%とし)、流速10mL/分で溶出して精製した。回収した画分をMALDI−TOF質量分析(Bruker Daltonics Ultraflex II TOF/TOF)で確認し、濃縮し、2回凍結乾燥した。
対応するエステル(3〜5当量)のDMSO溶液(約0.1M)を、ポリペプチド(2mM)のDMSO溶液(1%のDIPEAを含む)に加えることにより、リガンドをポリペプチドにコンジュゲートさせた。反応混合物を室温で12〜48時間放置し、その後分析用HPLC及びMALDI−TOF−MSを行った。分析用HPLCにはGenesis C-18カラム(250×4.6mm、孔径120Å、粒子径4Å)を用いた。0.1%のTFAを加えた30〜60%アセトニトリル水溶液を用い、流速1mL/分で90分間勾配溶出した。コンジュゲートしたポリペプチドをその後精製せずに蛍光スクリーニングに用いた。さらに反応工程に使用する場合には(例えばAcmの脱保護)、ポリペプチドを冷メチル−tertブチルエーテル中で沈殿させて精製し、トリフルオロ酢酸に再溶解し、その後冷ジエチルエーテルで沈殿させて風乾した。
ナノ粒子に連結できるように、24番目の位置にAcmで保護したシステインを含む結合剤を合成した。トリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)で処理してAcm基を除去した。ペプチド(2mg、0.3μmol)を0.5mLのTFA/アニソール(99:1)に溶解した。トリフルオロメタンスルホン酸銀(10mg、100当量)をこの溶液に加え、混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで室温で2〜12時間撹拌した。冷ジエチルエーテルでペプチド銀塩を沈殿させ、遠心分離した。上清を除去し、残留しているペプチド銀塩を、酢酸水溶液(容積率50%)に溶解したジチオトレイトール(DTT)(50当量)と共に、室温で2〜12時間撹拌した。混合物を遠心分離し、上清の溶液をHPLCで精製し、その後凍結乾燥した。
蛍光測定
SpectraMax GeminiXPSプレートリーダーを使用し、ポリペプチドをヒトAChEで滴定した。使用前に、プルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)とポリペプチドでNUNC(商標)ポリスチレン384プレートをコーティングした。すなわち、プレートを1%のプルロニック水溶液中で一晩インキュベートし、その後水で洗浄してから0.4mg/mLのブロッキングペプチド溶液とインキュベートした。貯蔵液(濃度2mM)を50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で希釈して得た、濃度500nMのポリペプチド(90μL)を使用した。1及び2当量の分割量の酵素を加えることで、ポリペプチドを滴定した。酵素を加えた後、プレートを20分間かけて平衡化した。クマリン蛍光色素分子を350nmで励起し、370〜450nmの発光を記録した。酵素溶液の代わりに同じ量の緩衝液を加えたブランクと何も加えないブランクを各ポリペプチドにつき1つずつ用意した。
SpectraMax GeminiXPSプレートリーダーを使用し、ポリペプチドをヒトAChEで滴定した。使用前に、プルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)とポリペプチドでNUNC(商標)ポリスチレン384プレートをコーティングした。すなわち、プレートを1%のプルロニック水溶液中で一晩インキュベートし、その後水で洗浄してから0.4mg/mLのブロッキングペプチド溶液とインキュベートした。貯蔵液(濃度2mM)を50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で希釈して得た、濃度500nMのポリペプチド(90μL)を使用した。1及び2当量の分割量の酵素を加えることで、ポリペプチドを滴定した。酵素を加えた後、プレートを20分間かけて平衡化した。クマリン蛍光色素分子を350nmで励起し、370〜450nmの発光を記録した。酵素溶液の代わりに同じ量の緩衝液を加えたブランクと何も加えないブランクを各ポリペプチドにつき1つずつ用意した。
ポリスチレンナノ粒子への結合とCSFからの抽出
2%(w/v)のポリスチレン・ラテックスナノ粒子(Bangs laboratories Inc.)懸濁液を10mg/mLのプルロニックF108-PDS(Allvivo Inc.)と室温で一晩、一定に振とうしながらインキュベートすることで、プルロニックF108-PDSを粒子に吸着させた。吸着させた後、Eppendorffの卓上型遠心分離器を使用し、14000rpmで5分間遠心分離することにより、コーティングした粒子から過剰な界面活性剤を分離した。上清を除去し、粒子を10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。この洗浄手順を3回繰り返し、次いで10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に溶解した、システインを脱保護したポリペプチドコンジュゲート(1mg/mL)を加えた。反応混合物をゆっくりと振とうしながら、1〜12時間放置した。緩衝液でナノ粒子を2回洗浄し、100μLの緩衝液に再懸濁し、その後、200〜500μLの髄液(ウプサラ大学病院より)と共に、室温でゆっくりと振とうしながらインキュベートした。1時間後、混合物を遠心分離して上清を除去し、粒子を緩衝液で2回洗浄した。ナノ粒子を2群に分け、1群をELISAに使用し(下記参照)、もう1群を以下の通りに処理した。結合剤とそれらが捕捉したタンパク質を共に、Hepes緩衝液(pH7.4)に溶解した50mMのDTTを使った還元切断によって粒子から切り離し、その後遠心分離(14000rpm、5分)して粒子を試料から除去した。上清の8μL分割量を、勾配SDS−PAGEゲル電気泳動で、NuPAGE(登録商標)Novex Bis-Tris 4-12%(v/w)ゲルとMES電気泳動用緩衝液(インビトロジェン)を使用して解析した。電気泳動後、ゲルを100mLの固定用緩衝液(40%エタノール、10%酢酸)で固定し、SilverQuest(商標)銀染色キット(インビトロジェン)で銀染色するか、或いは100mLの固定用緩衝液(35%メタノール、10%酢酸)で固定して、Colloidal Blue染色キット(インビトロジェン)で染色した。
2%(w/v)のポリスチレン・ラテックスナノ粒子(Bangs laboratories Inc.)懸濁液を10mg/mLのプルロニックF108-PDS(Allvivo Inc.)と室温で一晩、一定に振とうしながらインキュベートすることで、プルロニックF108-PDSを粒子に吸着させた。吸着させた後、Eppendorffの卓上型遠心分離器を使用し、14000rpmで5分間遠心分離することにより、コーティングした粒子から過剰な界面活性剤を分離した。上清を除去し、粒子を10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。この洗浄手順を3回繰り返し、次いで10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に溶解した、システインを脱保護したポリペプチドコンジュゲート(1mg/mL)を加えた。反応混合物をゆっくりと振とうしながら、1〜12時間放置した。緩衝液でナノ粒子を2回洗浄し、100μLの緩衝液に再懸濁し、その後、200〜500μLの髄液(ウプサラ大学病院より)と共に、室温でゆっくりと振とうしながらインキュベートした。1時間後、混合物を遠心分離して上清を除去し、粒子を緩衝液で2回洗浄した。ナノ粒子を2群に分け、1群をELISAに使用し(下記参照)、もう1群を以下の通りに処理した。結合剤とそれらが捕捉したタンパク質を共に、Hepes緩衝液(pH7.4)に溶解した50mMのDTTを使った還元切断によって粒子から切り離し、その後遠心分離(14000rpm、5分)して粒子を試料から除去した。上清の8μL分割量を、勾配SDS−PAGEゲル電気泳動で、NuPAGE(登録商標)Novex Bis-Tris 4-12%(v/w)ゲルとMES電気泳動用緩衝液(インビトロジェン)を使用して解析した。電気泳動後、ゲルを100mLの固定用緩衝液(40%エタノール、10%酢酸)で固定し、SilverQuest(商標)銀染色キット(インビトロジェン)で銀染色するか、或いは100mLの固定用緩衝液(35%メタノール、10%酢酸)で固定して、Colloidal Blue染色キット(インビトロジェン)で染色した。
ELISA用抗体−酵素コンジュゲートの準備
20mMの6−(3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド)ヘキサン酸スクシンイミジル(LC−SPDP、サーモサイエンティフィック)の10μL分割量を0.5mgの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(シグマ)に加え、室温で30分間インキュベートした。NAP5カラム(GEヘルスケア)を使用して脱塩することで過剰な試薬を除去した。さらに10μL分割量のLC−SPDPを0.5mLの抗AChEヒツジポリクローナルIgG抗体(lmg/mL、アブカム)に加えて混合物を30分間インキュベートし、その後NAP5カラムを使用した脱塩工程を行った。得られた溶液の一部(0.5mL)を、DTT(0.25M、25μL)で還元し(室温、20分)、再度脱塩(NAP5カラム)した後すぐに、LC−SPDPで修飾したHRPに移した。室温で1時間結合させた。
20mMの6−(3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド)ヘキサン酸スクシンイミジル(LC−SPDP、サーモサイエンティフィック)の10μL分割量を0.5mgの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(シグマ)に加え、室温で30分間インキュベートした。NAP5カラム(GEヘルスケア)を使用して脱塩することで過剰な試薬を除去した。さらに10μL分割量のLC−SPDPを0.5mLの抗AChEヒツジポリクローナルIgG抗体(lmg/mL、アブカム)に加えて混合物を30分間インキュベートし、その後NAP5カラムを使用した脱塩工程を行った。得られた溶液の一部(0.5mL)を、DTT(0.25M、25μL)で還元し(室温、20分)、再度脱塩(NAP5カラム)した後すぐに、LC−SPDPで修飾したHRPに移した。室温で1時間結合させた。
ELISA
ナノ粒子に固定した結合剤によってCSFから捕捉されたhAChEの有無をELISAでも解析した。これは、CSF中でインキュベートした後に、粒子懸濁液から15μLをとり、その後洗浄することによって行った。基準としては、プルロニックF108でコーティングしたが結合剤を結合させていない同量の粒子を使用した。希釈したコンジュゲート(20μL)を2群の粒子懸濁液に加えて20分間インキュベートした。上の項で記載したように、粒子を4回洗浄することによって結合しなかったコンジュゲートを除去し、粒子を最終的に100μLのPBSに再懸濁した。100μLの基質(ルミノール+増強剤:50/50、及び過酸化物、サーモフィッシャー)を加えたあと、SpectraMax Gemeni XPSプレートリーダーで425nmの蛍光を測定した。
ナノ粒子に固定した結合剤によってCSFから捕捉されたhAChEの有無をELISAでも解析した。これは、CSF中でインキュベートした後に、粒子懸濁液から15μLをとり、その後洗浄することによって行った。基準としては、プルロニックF108でコーティングしたが結合剤を結合させていない同量の粒子を使用した。希釈したコンジュゲート(20μL)を2群の粒子懸濁液に加えて20分間インキュベートした。上の項で記載したように、粒子を4回洗浄することによって結合しなかったコンジュゲートを除去し、粒子を最終的に100μLのPBSに再懸濁した。100μLの基質(ルミノール+増強剤:50/50、及び過酸化物、サーモフィッシャー)を加えたあと、SpectraMax Gemeni XPSプレートリーダーで425nmの蛍光を測定した。
実施例2
実施例2では、ヒト炭酸脱水素酵素II(HCAII)を標的分子として使用した。
設計と合成
HCAへの結合には、HCAI及びHCAIIの阻害剤であり、HCAIに対する解離定数(Kd)が1.1〜3.9μΜであり(DeGrado, W.F., Summa, C. M., Pavone, V., Nastri, F. & Lombardi. A. Ann. Rev. Biochem. 68, 779-819 (1999). Jeckling, M. C.;, Schauer, S.; Dumelin, C. E.; Zenobi, R. J. Mol. Recognit. 2009; 22: 319-329)、HCAIIに対する解離定数が1.3〜1.5μΜ(Enander, K.; Dolphin, G.T.; Liedberg, B.; Lundstrom, I.; Baltzer, L Chem Eur J, 2004, 10, 2375-2385. Baltzer, L. Topics in Current Chemistry 2007, 277, 89-106. DeGrado, W.F., Summa, C. M., Pavone, V., Nastri, F. & Lombardi. A. Ann. Rev. Biochem. 68, 779-819 (1999))のカルボン酸ベンゼンスルホンアミドを小分子先端部として用い、これを、アミノヘキサン酸スペーサーを介して本発明のポリペプチドに結合させた。このアミノヘキサン酸スペーサーがベンゼンスルホンアミド残基と足場配列KE2が協調してHCAIIと相互作用できるようすることが既に示されている(Krebs, H.A. Biochem. J. 1948, 43, 525-528)(図3)。阻害剤であるベンゼンスルホンアミドがHCAIIの活性部位に結合し、ポリペプチド構造がタンパク質の表面に結合するだろうと仮定した。折り畳まれたポリペプチドはHCAIIの結合ポケットには適合しないため、表面残基と相互作用するはずである。小分子とポリペプチド構造が同時に結合する場合の全体的な親和性は、小分子単独の場合よりも数桁高いため、タンパク質に対して高い親和性をもつ結合剤を簡便に得るための方法を提供することになる。
実施例2では、ヒト炭酸脱水素酵素II(HCAII)を標的分子として使用した。
設計と合成
HCAへの結合には、HCAI及びHCAIIの阻害剤であり、HCAIに対する解離定数(Kd)が1.1〜3.9μΜであり(DeGrado, W.F., Summa, C. M., Pavone, V., Nastri, F. & Lombardi. A. Ann. Rev. Biochem. 68, 779-819 (1999). Jeckling, M. C.;, Schauer, S.; Dumelin, C. E.; Zenobi, R. J. Mol. Recognit. 2009; 22: 319-329)、HCAIIに対する解離定数が1.3〜1.5μΜ(Enander, K.; Dolphin, G.T.; Liedberg, B.; Lundstrom, I.; Baltzer, L Chem Eur J, 2004, 10, 2375-2385. Baltzer, L. Topics in Current Chemistry 2007, 277, 89-106. DeGrado, W.F., Summa, C. M., Pavone, V., Nastri, F. & Lombardi. A. Ann. Rev. Biochem. 68, 779-819 (1999))のカルボン酸ベンゼンスルホンアミドを小分子先端部として用い、これを、アミノヘキサン酸スペーサーを介して本発明のポリペプチドに結合させた。このアミノヘキサン酸スペーサーがベンゼンスルホンアミド残基と足場配列KE2が協調してHCAIIと相互作用できるようすることが既に示されている(Krebs, H.A. Biochem. J. 1948, 43, 525-528)(図3)。阻害剤であるベンゼンスルホンアミドがHCAIIの活性部位に結合し、ポリペプチド構造がタンパク質の表面に結合するだろうと仮定した。折り畳まれたポリペプチドはHCAIIの結合ポケットには適合しないため、表面残基と相互作用するはずである。小分子とポリペプチド構造が同時に結合する場合の全体的な親和性は、小分子単独の場合よりも数桁高いため、タンパク質に対して高い親和性をもつ結合剤を簡便に得るための方法を提供することになる。
自動固相ペプチド合成機を使用し、標準的なFmoc手順に従ってポリペプチドを合成し、逆相HPLCで精製してMALDI−TOF質量分析で確認した。各ポリペプチドはHPLCによれば純粋であり、我々は>95%と推定し、かつ、精製したペプチドの分子量は全て、理論値の1質量単位の範囲内であった。各ポリペプチドには、リシン残基側鎖のAlloc保護基をPd(PPh3)4で選択的に除去した後、固相で7−メトキシクマリン蛍光プローブを導入した。蛍光色素分子を導入して、標的タンパク質との結合を蛍光強度の測定によって検出できるようにした。蛍光色素分子を各配列中のリガンド連結部位の近傍、すなわち15、10、25及び37番目の位置に、小分子リガンドを8、17、22及び34番目の位置にそれぞれ導入した。結合による分子環境の変化はこれらの位置で最も顕著であり、最大の強度変化を生じると予測した。これまでに、同様の配列の設計、並びにNMRやCD分光法及び分析超遠心による構造解析について詳細に記述されている(Olofsson, S.; Johansson, G.; Baltzer, L. J. Chem. Soc, Perkin Trans. 2 1995, 2047-2056. Broo, K. S., Brive, L., Ahlberg, P. and Baltzer, L., J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 11362-11372)。それらはヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフに折り畳まれ、溶融球(molten globule)様特性をもつ4本のヘリックス束を形成するように二量体化する。
16種類の構造ポリペプチドの222nmにおける平均残基楕円率([θ]222)を2種類の濃度(約30μΜと約1μΜ)で記録し、凝集状態を解析した。表1を参照のこと。
表1.低濃度及び高濃度の、本発明のポリペプチドライブラリーの平均残基楕円率。実験誤差は±1000deg cm2 dmol-1であると見積もった。
単量体はヘリックス含量が低く構造が不規則だが、二量体はヘリックス含量が高いため、ヘリックス形成の度合は単量体−二量体平衡に関係している。全ての配列は2種類の濃度のうちの濃度が高い方で高度にヘリックス構造をとっており、その平均残基楕円率は約20000deg cm2 dmol-1であり、いくつかは低濃度で部分的な解離を示した。そのため全ての配列は、低マイクロモル濃度で主に二量体を形成した。選択した配列の1H−NMRスペクトルを既に記録したが、1つの驚くべき例外を除いて、全ての配列が溶融球の特徴を示した。15番目のリシンの側鎖にダンシル基を連結した配列であるKE2−C15の融解挙動はよく分かっていないが、非常に分散したNMRスペクトルを示した。全配列及び全ポリペプチドコンジュゲートの1H−NMRスペクトルを記録してはいないが、ここに示した配列は溶融球と称するのが最もふさわしいと考えられる。
スペーサーをもつベンゼンスルホンアミドとその活性エステルの合成については既に記載されている(Winum, J-Y.; Vullo, D. Casini, A.; Montero, J-L.; Scozzafava, A.; Supuran, C.T. J. Med. Chem. 2003, 46, 2197-2204)。
ベンゼンスルホンアミド残基のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを16メンバーのこの組の各メンバーと、緩衝液中或いはDMSO溶液中で行う1段反応で反応させ、コンジュゲート分子を形成させた。
ポリペプチドコンジュゲート結合剤のHCAIIに対する親和性
各ポリペプチドコンジュゲートのHCAIIに対する親和性をスクリーニング手順内で評価した。この手順では、ポリペプチドコンジュゲートを入れたウェルに1、2及び3当量のHCAIIを加えてプレートリーダーで解析し、クマリンの蛍光強度を、タンパク質を加えていない試料と比較した。50mMのHepes緩衝液(pH7.4、150mMのNaClを含む)を使用し、HCAIIの最終濃度が500nM、1μΜ及び1.5μΜになり、結合剤の最終濃度が500nMなるように実験を設計した。384マイクロ滴定プレートの別個のウェルに、全ての溶液を2つずつ準備し、各ウェルの強度を同時に測定してインキュベート時間の差による強度差を回避した。マイクロ滴定プレートリーダーを使用し、350nmで励起した後、280〜500nmの蛍光強度を測定した。ポリスチレンプレートをプルロニック(登録商標)F-108NF Prill(1%水溶液)と42−残基ペプチド(0.4mg/mL、2時間、配列4−C15L8−Ac、すなわちAc−NAADJEAKIRHLREKJAARGPRDAAQJAEQLARRFERFARAG−CONH2)の溶液で予めコーティングして、結合剤とタンパク質がポリスチレン表面に接着するのを回避した。タンパク質−結合剤混合物の蛍光強度(すなわち最大410nmの蛍光強度)とタンパク質を含まない結合剤の強度を比較し、1当量のタンパク質を加えた場合の蛍光強度がタンパク質を加えていない結合剤の蛍光強度と比較して有意に変化した場合に、結合剤がHCAIIに結合したと見なした。500nMのHCAIIが含まれる場合には強度の変化を示したが、1μΜのHCAIIが含まれても強度がそれ以上変化しなかった結合剤をその後の試験用に選抜した。従って、タンパク質の濃度が500nMで、かつ、結合剤の濃度が500nMの場合に、90%を越える結合剤が結合すると仮定した。この仮定に基づくと、生体分子コンジュゲートに関する一般的な式(Kd=[Β]*[Ρ]/[PB])によれば、解離定数(Kd)は10nM以下であると推測できる。
各ポリペプチドコンジュゲートのHCAIIに対する親和性をスクリーニング手順内で評価した。この手順では、ポリペプチドコンジュゲートを入れたウェルに1、2及び3当量のHCAIIを加えてプレートリーダーで解析し、クマリンの蛍光強度を、タンパク質を加えていない試料と比較した。50mMのHepes緩衝液(pH7.4、150mMのNaClを含む)を使用し、HCAIIの最終濃度が500nM、1μΜ及び1.5μΜになり、結合剤の最終濃度が500nMなるように実験を設計した。384マイクロ滴定プレートの別個のウェルに、全ての溶液を2つずつ準備し、各ウェルの強度を同時に測定してインキュベート時間の差による強度差を回避した。マイクロ滴定プレートリーダーを使用し、350nmで励起した後、280〜500nmの蛍光強度を測定した。ポリスチレンプレートをプルロニック(登録商標)F-108NF Prill(1%水溶液)と42−残基ペプチド(0.4mg/mL、2時間、配列4−C15L8−Ac、すなわちAc−NAADJEAKIRHLREKJAARGPRDAAQJAEQLARRFERFARAG−CONH2)の溶液で予めコーティングして、結合剤とタンパク質がポリスチレン表面に接着するのを回避した。タンパク質−結合剤混合物の蛍光強度(すなわち最大410nmの蛍光強度)とタンパク質を含まない結合剤の強度を比較し、1当量のタンパク質を加えた場合の蛍光強度がタンパク質を加えていない結合剤の蛍光強度と比較して有意に変化した場合に、結合剤がHCAIIに結合したと見なした。500nMのHCAIIが含まれる場合には強度の変化を示したが、1μΜのHCAIIが含まれても強度がそれ以上変化しなかった結合剤をその後の試験用に選抜した。従って、タンパク質の濃度が500nMで、かつ、結合剤の濃度が500nMの場合に、90%を越える結合剤が結合すると仮定した。この仮定に基づくと、生体分子コンジュゲートに関する一般的な式(Kd=[Β]*[Ρ]/[PB])によれば、解離定数(Kd)は10nM以下であると推測できる。
上述した手順に従って調製し、解析したこの16種類の候補結合剤の組のうち、3種類のポリペプチドコンジュゲート、1−C10L17−B、3−C15L8−B及び4−C37L34−Bをその後の試験用に選抜した。
蛍光滴定とSPR解析によって、1−C10L17−B、3−C15L8−B及び4−C37L34−BのHCAIIに対する親和性を決定した(図5)。低ナノモルの解離定数を正確に決定できるようにするためには、測定は、桁が同じ濃度で行わなくてはならない。7−メトキシクマリンのシグナル強度は非常に弱く、約10nM以下で正確な滴定を行うには7−メトキシクマリンの感度は十分ではない。そのため、1−C10L17−B及び3−C15L8−Bのループ領域にアセトアミドメチル(Acm)で保護したCys残基を導入して、より強い蛍光色素分子を導入することができるようにした。Cys側鎖を脱保護し(Fuiji, N.; Otaka, A.; Watanbe, T.; Okamachi, A.; Tamamura, H.; Yajima, H.; Inagaki, Y.; Nomizu, M.; Asano, K. Chem. Soc, Chem. Commun. 1989, 283-284)、次いでフルオレセインとコンジュゲートさせたマレイミドと脂肪族スペーサーを介して反応させ、プレートリーダー中で約50nM以下(7−メトキシクマリンで測定可能な桁よりも低い)の親和性を正確に測定できるようにした。蛍光滴定には、7−メトキシクマリンよりもダンシル基にコンジュゲートさせたポリペプチドを使用して行った。この理由はフルオレセインとの重複を避けるためであるが、合成及び精製工程での確認と定量を容易にするために構造ライブラリーの各配列には蛍光色素分子が含まれている。384マイクロ滴定プレートの別個のウェルに全ての溶液を2つずつ準備し、インキュベート時間の差による強度差を回避するために、各ウェルの強度を同時に測定した。マイクロ滴定プレートを使用して、励起後の蛍光強度を420nmで測定した。ポリスチレンプレートを上述のように予めコーティングした。タンパク質−結合剤混合物の蛍光強度を、タンパク質を含まない結合剤の強度と比較した。50mMのHepes緩衝液(pH7.4、150mMのNaClを含む)中で解析を行った。50nM濃度の結合剤に、20pM〜1μΜの濃度範囲のHCAIIを25段階で加え、曲線に当てはめることで結果を解析した。ダンシルと7−メトキシクマリンの構造は異なるが差は比較的小さく、測定される親和性に及ぼす影響は小さいと仮定した。1−C10L17−Bの親和性が測定した親和性のうちで最も高く、Kdは5±3nMであり、3−C15L8−BのKdが29±10nMであることが分かった。フルオレセインプローブにコンジュゲートさせた配列4−C37L34−Bは緩衝液への溶解度が低かったため、滴定しなかった。
16種類のポリペプチドコンジュゲートを、SPRバイオセンサー解析(Biacore(登録商標)、GEヘルスケア)によっても解析した。この解析は、Biacore(登録商標)2000装置とBiacore(登録商標)CM−5チップを使用し、HBS−EP緩衝液(pH7.4、Biacore(登録商標)、GEヘルスケア)に、相互作用試験には1%のDMSOを加えて行った。DMSOに溶解した貯蔵液(20μΜ)を緩衝液で希釈し、ペプチド溶液を準備した。酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解した標準的なEDC/NHSカップリングを使用してHCAIIをチップに固定した。7段階の濃度範囲(1nM〜500nM)の結合剤をチップに流し、1:1結合モデル(BiaEvaluation)で相互作用を評価した。
SPRバイオセンサー解析によって決定した、3−C15L8−B及び4−C37L34−BのHCAIIに対する親和性はそれぞれ、43nM及び15nMであり、KE2−D(15)−65について報告されている親和性とほぼ一致した。決定方法や、結合剤に使用した蛍光色素分子によって、解離定数には僅かに差が見られたが、基本的にはそれぞれの測定結果は一致し、ベンゼンスルホンアミド基をポリペプチド構造に結合させることで、小分子先端部よりも2桁より高い親和性をもつ結合剤が生じると結論付けた。SPR解析による親和性の決定では、結合剤1−C10L17−BのKdが80nMであることが分かったため、その後の選択性の評価は行わなかった。
候補結合剤の選択性
血液という複雑な培地中で、結合剤3−C15L8−B及び4−C37L34−BのHCAIIに対する選択性を試験した。24番目の位置にAcmで保護したCys残基を加えて選択した結合剤を再合成した。Acm基を除去した後、10mMのリン酸緩衝液(pH7.4、150mMのNaClを含む)中で1時間インキュベートすることにより、プルロニック(登録商標)F108-PDSでコーティングしたポリスチレンナノ粒子に結合剤を固定した。コーティング材は、2−メルカプトピリジン放出下で遊離チオールと自発的に反応する、活性型のジスルフィド基を有するPEGの単層を形成する(Fromell, K., Hulting, G., Ilichev, A., Larsson, A. & Caldwell, K. C. Analytical Chemistry 79, 8601-07 (2007))。
血液という複雑な培地中で、結合剤3−C15L8−B及び4−C37L34−BのHCAIIに対する選択性を試験した。24番目の位置にAcmで保護したCys残基を加えて選択した結合剤を再合成した。Acm基を除去した後、10mMのリン酸緩衝液(pH7.4、150mMのNaClを含む)中で1時間インキュベートすることにより、プルロニック(登録商標)F108-PDSでコーティングしたポリスチレンナノ粒子に結合剤を固定した。コーティング材は、2−メルカプトピリジン放出下で遊離チオールと自発的に反応する、活性型のジスルフィド基を有するPEGの単層を形成する(Fromell, K., Hulting, G., Ilichev, A., Larsson, A. & Caldwell, K. C. Analytical Chemistry 79, 8601-07 (2007))。
約60μLの新たに採取した血液を240μLの蒸留水で希釈して溶解し、その後遠心分離して細胞片を除去した。HCAIIは赤血球内に含まれるため、そのタンパク質を利用するには細胞を溶解しなければならない。上清を単離し、機能化ナノ粒子と30分間インキュベートして、ナノ粒子がHCAIIを捕捉できるようにした。PBS中で粒子を3回洗浄し、各洗浄後に遠心分離した。ジチオスレイトールを使用して、結合剤と捕捉したタンパク質を粒子から切断し、遠心分離して粒子から分離した。上清を電気泳動ゲルに負荷し、電気泳動後のゲルを銀染色で展開した(図4)。3本のバンドが見られ、質量分析によって、ヘモグロビンサブユニット、HSA及びヒト炭酸脱水素酵素であることを確認した。ヘモグロビンサブユニット及びHSAは両方とも、結合剤を連結させていないビーズの対照のレーンでも見られるため、ポリスチレンナノ粒子によって非特異的に吸着されたもので、ポリペプチド結合剤によって抽出されたものではない。従って、結合剤分子である3−C15L8−B及び4−C37L34−Bは主に炭酸脱水素酵素を抽出する。
HCAIIの抽出をELISAで確認した。ELISAでは、機能化ナノ粒子を使用してHCAIIを捕捉し、検出にはHRPをコンジュゲートさせた抗HCAII抗体を使用した(データは示さない)。
血中のヒト炭酸脱水素酵素には、HCAI及びHCAIIの2種類のイソ型がある。これら2種類のイソ型はほぼ同一の分子量を有し、配列全体にかけての同一性は60%であるが、接近可能な表面残基の同一性は僅かに低く、45%である。HCAIとHCAIIは、SDS−PAGEによっては、またはゲルからは分離することができないため(図4)、HCAI又はHCAIIのどちらが、あるいは両方が3−C15L8−B及び4−C37L34−Bによって血液から抽出されたかを結論づけることはできない。切り出し、トリプシンで消化し、MALDI−TOF−MSで解析したバンドは、両方のイソ型が含まれていたことを示している。ヒトでは、HCAIがHCAIIよりも5〜7倍多いため、HCAIIに特異的に結合させるには、親和性に数桁の差がある必要がある。これらのイソ型は両方とも、ベンゼンスルホンアミド阻害剤にKd約1〜4μΜで結合するため、2種類のイソ型の親和性の差はいずれも、ポリペプチドと2つのタンパク質間の相互作用の差の結果である。HCAI又はHCAIIのいずれかに対する結合剤を、所望のイソ型に特異的な小分子阻害剤を使用して設計する多数の方法があるが、本明細書で取り扱う問題は、ヒト炭酸脱水素酵素の2つのイソ型を区別するどのような違いをポリペプチドによって達成することができるかである。このことは、この新しい部類のタンパク質結合剤によって達成される選択性レベルの試験に重要であるため、この合成結合剤の識別能力をSPRバイオセンサー(Biacore)解析によってさらに解析した。
HCAI及びHCAIIを別個のフローセル中で、酢酸緩衝液(pH5.5)中での標準的なEDC/NHSカップリングにより、CM−5(Biacore)チップ上に固定した。結合剤の濃度範囲を1nM〜500nMとして(全てに1%のDMSOを加えて)、3−C15L8−B及び4−C37L34−Bの親和性測定を行い、1:1相互作用モデルについて説明している式の実験結果に対する最良適合を使用して解離定数を決定した。結果を表2に示す。
表2.SPR解析による親和性のデータ
ポリペプチドコンジュゲートである3−C15L8−Bは、HCAIには解離定数390nMで、HCAIIには解離定数60nMで結合し、4−C37L34−BはHCAIには470nMの、HCAIIに対しては17nMの解離定数を示している。従って、結合剤分子4−C37L34−Bは約30の係数、1桁を越える、でHCAIとHCAIIを識別することができる。交差反応性があるため、この結合剤は完全には特異的でないが、示された識別は、結合剤分子の単純さを考慮すると顕著である。HCAI及びHCAIIは両方ともベンゼンスルホンアミドと結合し、ポリペプチドコンジュゲートとの結合の差は、ポリペプチドとの相互作用に起因することが明かである。何故タンパク質表面との相互作用に差が生じるかについての手がかりは、表面の静電ポテンシャルのマッピングによって得られる(図4)。表面に曝されている残基は45%のみが同一であり、HCAIIの活性部位の周辺領域はHCAIよりも疎水性で、かつ、より正に帯電していない。HCAIの表面がより負に帯電していれば、僅かにより正に帯電しているポリペプチド4−C37L34と強く相互作用すると予想されるが、HCAIIと4−C37L34−Bとの間の相互作用の大部分は疎水性の相互作用であるようである。
結論
この実施例では、本発明に従うポリペプチドと、HCAIIに対する中程度の親和性をもつ有機小分子を組み合わせることで、タンパク質に対する特定の高親和性結合剤を形成することができることを示している。具体的には、結合剤分子によってヒト炭酸脱水素酵素のみが血液から抽出されるように、合成結合剤分子の特異性はモノクローナル抗体の特異性に匹敵する。観察された、ヘモグロビンサブユニットとHSAの抽出は、ポリスチレンビーズへの非特異的な吸着によるものである。60%の相同性を有するこのタンパク質の2つのイソ型の識別は大きな課題であったが、達成された、約1桁異なる親和性の差は、この型の結合剤分子の識別能力の強力な証拠である。体系的な方法で改変され、親和性と選択性の元素でコード化されたポリペプチド小集団の使用は、良い結合剤分子を探索するために大規模な結合剤候補のライブラリーが使用されている、分子生物学で十分に確立されている典型的な手順とは対照的である。HCAIIに結合することが示されたポリペプチドコンジュゲートの大きさはIgGモノクローナル抗体の1/30未満であり、かつ、標的タンパク質と形状及び電荷が相補的な表面を形成するような構造をもっていない。これらの外観上は不利な特性にもかかわらず本明細書で示した結合剤分子は、ヒト血液という複雑な環境中でもタンパク質の認識と結合において非常によく機能する。タンパク質に対する特異的で高親和性な結合剤の探索に、ポリペプチド構造の小集団を使用することは、特異性と高親和性に効果的な方法を提供し、中程度の親和性を持つ小分子又はペプチドを探索するための結合剤の探索を減らす。HCAIIを用いたこの試験で、[θ]222我々は、高い親和性をもつ数種の結合剤を得るための迅速な方法を示した。従ってこの方法を、濃度測定のための結合剤のアレイをチップ上に構築するために使用することもできる。
この実施例では、本発明に従うポリペプチドと、HCAIIに対する中程度の親和性をもつ有機小分子を組み合わせることで、タンパク質に対する特定の高親和性結合剤を形成することができることを示している。具体的には、結合剤分子によってヒト炭酸脱水素酵素のみが血液から抽出されるように、合成結合剤分子の特異性はモノクローナル抗体の特異性に匹敵する。観察された、ヘモグロビンサブユニットとHSAの抽出は、ポリスチレンビーズへの非特異的な吸着によるものである。60%の相同性を有するこのタンパク質の2つのイソ型の識別は大きな課題であったが、達成された、約1桁異なる親和性の差は、この型の結合剤分子の識別能力の強力な証拠である。体系的な方法で改変され、親和性と選択性の元素でコード化されたポリペプチド小集団の使用は、良い結合剤分子を探索するために大規模な結合剤候補のライブラリーが使用されている、分子生物学で十分に確立されている典型的な手順とは対照的である。HCAIIに結合することが示されたポリペプチドコンジュゲートの大きさはIgGモノクローナル抗体の1/30未満であり、かつ、標的タンパク質と形状及び電荷が相補的な表面を形成するような構造をもっていない。これらの外観上は不利な特性にもかかわらず本明細書で示した結合剤分子は、ヒト血液という複雑な環境中でもタンパク質の認識と結合において非常によく機能する。タンパク質に対する特異的で高親和性な結合剤の探索に、ポリペプチド構造の小集団を使用することは、特異性と高親和性に効果的な方法を提供し、中程度の親和性を持つ小分子又はペプチドを探索するための結合剤の探索を減らす。HCAIIを用いたこの試験で、[θ]222我々は、高い親和性をもつ数種の結合剤を得るための迅速な方法を示した。従ってこの方法を、濃度測定のための結合剤のアレイをチップ上に構築するために使用することもできる。
このスクリーニング手順は、蛍光色素分子周辺の分子環境が変化すること、及び蛍光の変化が標的タンパク質への結合を反映しているという仮説に依存している。タンパク質−結合剤複合体の構造を予測することはできないため、これは全ての例においては事実でない可能性がある。しかしながら、本明細書で記載の手順によって、高い親和性をもつ3種類の候補結合剤を同定することができたため、このスクリーニング手順は、緊密な結合剤の同定に非常に有望である。この組の16種類のポリペプチドから、3種類を的中として同定した。良い結合剤を逃している可能性もあるが、他の方法では、結合剤候補のセットの探索には実施するには長すぎる時間がかかるという点を考慮すると、同定は許容可能である。
タンパク質の認識に関して最も要求の多い側面は、結合に非常に多くの生体分子が競合している複雑な生物環境中での特異性である。合成ポリペプチドコンジュゲート4−C37L34−Bが、炭酸脱水素酵素と他のタンパク質とを識別するだけでなく、2種類のイソ型、HCAIとHCAIIを識別することからも、高い特異性をもつことが証明された。このことから、化学的に生成した結合剤分子は、分子生物学的な手法によって生成した結合剤分子よりも高い機能をもつことが示唆され、また、診断用途及び医薬用途において多くの利点を有していると期待できる。
実験
一般
HCAI及びHCAIIの凍結乾燥粉末をシグマから購入した。使用直前に溶液を調製した。
一般
HCAI及びHCAIIの凍結乾燥粉末をシグマから購入した。使用直前に溶液を調製した。
リガンドの合成
既に記述されている通りにベンゼンスルホンアミドリガンドを合成した(Winum, J-Y.; Vullo, D. Casini, A.; Montero, J-L.; Scozzafava, A.; Supuran, C.T. J. Med. Chem. 2003, 46, 2197-2204)。
既に記述されている通りにベンゼンスルホンアミドリガンドを合成した(Winum, J-Y.; Vullo, D. Casini, A.; Montero, J-L.; Scozzafava, A.; Supuran, C.T. J. Med. Chem. 2003, 46, 2197-2204)。
ペプチド合成
Pioneer自動ペプチド合成機で、活性化剤としてテトラフルオロホウ酸O−(7−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(HBTU、Iris Biotech GmbH)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、アルドリッチ)を使用し、標準的なフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学反応によってペプチドを合成した。アミノ末端のFmoc脱保護は、ピペリジン(20%)のDMF溶液を使用して行った。各カップリングFmoc−グリシン−ポリエチレングリコール−ポリスチレン(Fmoc−Gly−PEG−PS)樹脂と4倍量のアミノ酸を使用し、0.2mmolのスケールで合成を行った。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を、塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。蛍光色素分子を結合させるリシン残基をアリルオキシカルボニル(Alloc)基で直交保護し、リガンドをコンジュゲートさせるリシンをtert−ブトキシメチル(Boc)基で保護した。無水酢酸(0.5M)のDMF溶液でN−末端をアセチル化した。
Pioneer自動ペプチド合成機で、活性化剤としてテトラフルオロホウ酸O−(7−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(HBTU、Iris Biotech GmbH)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、アルドリッチ)を使用し、標準的なフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学反応によってペプチドを合成した。アミノ末端のFmoc脱保護は、ピペリジン(20%)のDMF溶液を使用して行った。各カップリングFmoc−グリシン−ポリエチレングリコール−ポリスチレン(Fmoc−Gly−PEG−PS)樹脂と4倍量のアミノ酸を使用し、0.2mmolのスケールで合成を行った。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を、塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。蛍光色素分子を結合させるリシン残基をアリルオキシカルボニル(Alloc)基で直交保護し、リガンドをコンジュゲートさせるリシンをtert−ブトキシメチル(Boc)基で保護した。無水酢酸(0.5M)のDMF溶液でN−末端をアセチル化した。
N2雰囲気下、室温で、樹脂をテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4、2当量)のDCM溶液、酢酸及びN−メチルモルホリン(容積比37:2:1、樹脂1グラム当たり10mL)で2時間処理することにより、Alloc基を脱保護した。次いで樹脂をDIPEA(0.5%)のDMF溶液及びジエチルジチオカルバミン酸(容積率0.5%)のDMF溶液で順次洗浄した。リシン残基への7−メトキシクマリン−3−カルボン酸(3当量)のカップリングは、室温、DMF中で2時間ゆっくりと撹拌しながら行った。DIPEA、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を含むカップリング混合物(比率12:6:6)でクマリンを活性化した。2時間後、別の分割量のカップリング混合物を加え、反応混合物を一晩放置した。全ての例において、脱保護とカップリングの間に樹脂をDMF及びDCMで洗浄した。完全な脱保護と樹脂からの切断は、TFA、水及びトリイソプロピルシラン(TIS)(容積率95:2.5:2.5、重合体1グラム当たり10mL)を室温で3時間加えることによって達成した。ろ過し、濃縮した後、冷ジエチルエーテルを加えてペプチドを沈殿させ、遠心分離し、ジエチルエーテルで洗浄して風乾した。
粗ペプチドを逆相HPLCで、半分取Hypersil C-18 Goldカラム(150×20mm、孔径175Å、粒子径5Å)又は半分取Kromasil C8 Hichromカラム(250×21.2mm、孔径100Å、粒子径10Å)を使用し、0.1%のTFAを加えたアセトニトリル水溶液で徐々に勾配をかけ(アセトニトリル濃度を35から55%とし)、流速10mL/分で溶出して精製した。回収した画分をMALDI−TOF質量分析(Bruker Daltonics Ultraflex II TOF/TOF)で同定し、濃縮し、2回凍結乾燥した。
対応するエステル(4当量)のDMSO溶液(約0.1M)をポリペプチド溶液(2mM、30μL)のDMSO溶液(1%のDIPEAを含む)に加えることにより、リガンドをポリペプチドに結合させた。反応を室温で一晩放置し、次いで機能化の度合を分析用HPLC及びMALDI−TOF−MSで確認した。分析用HPLCにはGenesis C-18カラム(250×4.6mm、孔径120Å、粒子径4Å)を用いた。0.1%のTFAを加えた30〜60%アセトニトリル水溶液を用い、流速1mL/分で90分間勾配溶出した。
反応混合物をさらには精製せずに蛍光スクリーニング実験に使用した(50mMのTRIS緩衝液(pH7、150mMのNaClを含む)で希釈し、10μΜの貯蔵液とした)。
結合剤4−C37L34−Bと3−C15L8−B(「−B」は、このポリペプチドが選択した分子に対するリガンドに連結していることを示す)を合成し、ループ領域にAcmで保護されたシステイン残基を含むC37L34−B−Cys24及び3−C15L8−B−Cys24で精製した。
蛍光滴定実験用の結合剤である1−C10L17−B及び3−C15L8−Bをベンゼンスルホンアミド残基にコンジュゲートさせ、Acm基を脱保護した。
一般的な標識実験を以下のように行った。Acmを脱保護したポリペプチドを、最終濃度が1.0mMになるように、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5、6Mのグアニジン塩酸を含む)に溶解した。3モル当量のN−(5−フルオレセイニル)マレイミド(シグマ・アルドリッチ)を最小量のDMSOに予め溶解しておき、これを反応混合物に直接加えた。反応を分析用HPLCで監視し、反応は本質的に4時間後に完了した。生成物をHPLCで精製し、生成物の質量をMALDI−MSで確認した。
一般的な標識実験を以下のように行った。Acmを脱保護したポリペプチドを、最終濃度が1.0mMになるように、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5、6Mのグアニジン塩酸を含む)に溶解した。3モル当量のN−(5−フルオレセイニル)マレイミド(シグマ・アルドリッチ)を最小量のDMSOに予め溶解しておき、これを反応混合物に直接加えた。反応を分析用HPLCで監視し、反応は本質的に4時間後に完了した。生成物をHPLCで精製し、生成物の質量をMALDI−MSで確認した。
最終的なSPR実験用の結合剤である4−C37L34−Bと3−C15L8−B及び選択性試験用の結合剤である4−C37L34−B−Cys24と3−C15L8−B−Cys24を5mgスケールでベンゼンスルホンアミド残基にコンジュゲートさせ、逆相HPLCで、半分取Hypersil C-18 Goldカラム(150×20mm、孔径175Å、粒子径5Å)を使用し、0.1%のTFAを加えたアセトニトリル水溶液で徐々に勾配をかけ(アセトニトリル濃度を30から60%とし)、流速10mL/分で溶出して精製した。回収した画分をMALDI−TOF質量分析(アプライドバイオシステムズ、Voyager PRO)で確認し、濃縮して凍結乾燥した。DMSOを用いて4−C37L34−Bと3−C15L8−Bの貯蔵液を調製し、アミノ酸の定量分析によって解析した。4−C37L34−B及び3−C15L8−Bの貯蔵液の濃度はそれぞれ、35μΜ及び24μΜであった。
Acm基の脱保護は、凍結乾燥したペプチド(1μmol)を2%(容積率)のアニソールを含む0.50mLのTFAに溶解することで行った。この溶液を0℃まで冷却し、AgOTf(26mg、0.1mmol、100当量)のTFA溶液(0.5mL)を加えた。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、周囲温度に戻して周囲温度で2時間撹拌した。冷ジエチルエーテルを加えることで反応混合物からペプチド銀塩を沈殿させ、遠心分離して単離した。沈殿物を0.5mLの蒸留水に溶解し、このペプチド溶液にジチオスレイトール(8mg、0.05mmol、50当量)の氷酢酸(0.5mL)溶液を加えた。この混合物を2時間撹拌し、その後遠心分離した。上清に含まれるペプチドをHPLCで精製した。
蛍光測定
GeminiXPSプレートリーダーを使用して蛍光スペクトルを記録した。使用前に、プルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)でNUNC(商標)ポリスチレン384プレートをコーティングした。すなわち、プレートを1%のプルロニック水溶液中で一晩インキュベートし、水で完全に洗浄してから0.4mg/mLのペプチド溶液で2時間ブロッキングし、その後水で10回洗浄した。50mMのTRIS緩衝液(pH7、150mMのNaClを含む)で10μΜの貯蔵液を希釈して得た、濃度500nMのポリペプチド(95μL)を使用した。マイクロ滴定プレートのウェルに、HCAIIを14μΜの貯蔵液から加えた。濃度はUV分光法により、吸光係数54000M−1cm−1、280nmで決定した。
GeminiXPSプレートリーダーを使用して蛍光スペクトルを記録した。使用前に、プルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)でNUNC(商標)ポリスチレン384プレートをコーティングした。すなわち、プレートを1%のプルロニック水溶液中で一晩インキュベートし、水で完全に洗浄してから0.4mg/mLのペプチド溶液で2時間ブロッキングし、その後水で10回洗浄した。50mMのTRIS緩衝液(pH7、150mMのNaClを含む)で10μΜの貯蔵液を希釈して得た、濃度500nMのポリペプチド(95μL)を使用した。マイクロ滴定プレートのウェルに、HCAIIを14μΜの貯蔵液から加えた。濃度はUV分光法により、吸光係数54000M−1cm−1、280nmで決定した。
クマリンプローブを350nmで励起し、380〜500nmの領域の発光を記録した。測定は全て室温で実施し、3回重複して行った。ウェルの測定は5分後と30分後に行った。
SPR測定
SPR測定を、Biacore(登録商標)2000装置とタンパク質を固定したBiacore(登録商標)CM−5センサーチップ(GEヘルスケア)を使用して行った。相互作用試験は全て、1%(容積率)のDMSOを加えたBiacore(登録商標)HSB−EP緩衝液中で行った。HCAII(シグマ、凍結乾燥粉末)を酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解して2mg/mL溶液とした。酢酸緩衝液(pH5.5)中でのEDC/NHSカップリング反応により、HCAIIを表面にコンジュゲートさせた。HBS−EP緩衝液を使用して、DMSOに溶解した貯蔵液(20μΜ)からポリペプチド結合剤溶液を調製し、流速20μL/分で表面に流した。各系列の後にはブランクを注入した。含まれるDMSOの量が1%(容積率)になるように全試料を調節した。注入は30秒間かけて行い、解離は3000秒まで進めた。1:1結合モデルによって評価した。
SPR測定を、Biacore(登録商標)2000装置とタンパク質を固定したBiacore(登録商標)CM−5センサーチップ(GEヘルスケア)を使用して行った。相互作用試験は全て、1%(容積率)のDMSOを加えたBiacore(登録商標)HSB−EP緩衝液中で行った。HCAII(シグマ、凍結乾燥粉末)を酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解して2mg/mL溶液とした。酢酸緩衝液(pH5.5)中でのEDC/NHSカップリング反応により、HCAIIを表面にコンジュゲートさせた。HBS−EP緩衝液を使用して、DMSOに溶解した貯蔵液(20μΜ)からポリペプチド結合剤溶液を調製し、流速20μL/分で表面に流した。各系列の後にはブランクを注入した。含まれるDMSOの量が1%(容積率)になるように全試料を調節した。注入は30秒間かけて行い、解離は3000秒まで進めた。1:1結合モデルによって評価した。
ポリスチレンナノ粒子への結合と血液からの抽出
2%(w/v)のポリスチレン・ラテックスナノ粒子(Bangs laboratories Inc.)懸濁液を10mg/mLのプルロニックF108-PDS(Allvivo Inc.)と室温で一晩、一定に振とうしながらインキュベートすることで、プルロニックF108-PDSを粒子に吸着させた。吸着させた後、Eppendorffの卓上型遠心分離器を使用し、14000rpmで5分間遠心分離することにより、過剰の界面活性剤をコーティングした粒子から分離した。上清を除去し、粒子を10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。この洗浄手順を3回繰り返し、次いで10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に溶解した、システインを脱保護したポリペプチドコンジュゲート(1mg/mL)を加えた。反応混合物をゆっくりと振とうしながら、1〜12時間インキュベートした。ナノ粒子を緩衝液で3回洗浄し、100μLの緩衝液に再懸濁した。新鮮な血液(我々の内の1人から採取した)に2倍量のミリQ等級の水を加え、15分間、ゆっくりと振とうして溶解した。溶血を遠心分離し、上清を回収した。結合剤にコンジュゲートさせたナノ粒子の再懸濁液を100〜500μLの溶解物と、室温でゆっくりと振とうしながらインキュベートした。1時間後に混合物を遠心分離し、上清を除去し、次いで粒子を緩衝液で3回洗浄した。Hepes緩衝液(pH7.4)に溶解した50mMのDTTを使用し、粒子から結合剤をそれらが捕捉したタンパク質と共に切断し、その後遠心分離(14000rpm、5分)して試料から粒子を除去した。上清の8μL分割量を、勾配SDS−PAGEゲル電気泳動で、NuPAGE(登録商標)Novex Bis-Tris 4-12%(v/w)ゲルとMES電気泳動用緩衝液(インビトロジェン)を使用して解析した。電気泳動後、ゲルを100mLの固定用緩衝液(40%エタノール、10%酢酸)で固定し、SilverQuest(商標)銀染色キット(インビトロジェン)で銀染色するか、或いは100mLの固定用緩衝液(35%メタノール、10%酢酸)で固定して、Colloidal Blue染色キット(インビトロジェン)で染色した。
2%(w/v)のポリスチレン・ラテックスナノ粒子(Bangs laboratories Inc.)懸濁液を10mg/mLのプルロニックF108-PDS(Allvivo Inc.)と室温で一晩、一定に振とうしながらインキュベートすることで、プルロニックF108-PDSを粒子に吸着させた。吸着させた後、Eppendorffの卓上型遠心分離器を使用し、14000rpmで5分間遠心分離することにより、過剰の界面活性剤をコーティングした粒子から分離した。上清を除去し、粒子を10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。この洗浄手順を3回繰り返し、次いで10mMのHepes緩衝液(pH7.4)に溶解した、システインを脱保護したポリペプチドコンジュゲート(1mg/mL)を加えた。反応混合物をゆっくりと振とうしながら、1〜12時間インキュベートした。ナノ粒子を緩衝液で3回洗浄し、100μLの緩衝液に再懸濁した。新鮮な血液(我々の内の1人から採取した)に2倍量のミリQ等級の水を加え、15分間、ゆっくりと振とうして溶解した。溶血を遠心分離し、上清を回収した。結合剤にコンジュゲートさせたナノ粒子の再懸濁液を100〜500μLの溶解物と、室温でゆっくりと振とうしながらインキュベートした。1時間後に混合物を遠心分離し、上清を除去し、次いで粒子を緩衝液で3回洗浄した。Hepes緩衝液(pH7.4)に溶解した50mMのDTTを使用し、粒子から結合剤をそれらが捕捉したタンパク質と共に切断し、その後遠心分離(14000rpm、5分)して試料から粒子を除去した。上清の8μL分割量を、勾配SDS−PAGEゲル電気泳動で、NuPAGE(登録商標)Novex Bis-Tris 4-12%(v/w)ゲルとMES電気泳動用緩衝液(インビトロジェン)を使用して解析した。電気泳動後、ゲルを100mLの固定用緩衝液(40%エタノール、10%酢酸)で固定し、SilverQuest(商標)銀染色キット(インビトロジェン)で銀染色するか、或いは100mLの固定用緩衝液(35%メタノール、10%酢酸)で固定して、Colloidal Blue染色キット(インビトロジェン)で染色した。
実施例3
この実施例は、リン酸化タンパク質に対する結合剤の開発における本発明の分子ツールの使用を対象とする。
この実施例は、リン酸化タンパク質に対する結合剤の開発における本発明の分子ツールの使用を対象とする。
タンパク質のリン酸化は、生命に必須の機能を推進し、方向付けるのに重要な役割を担っている。リン酸化は、キナーゼ及びホスファターゼに制御されている可逆的な共有結合による修飾であり、かつ、シグナル伝達カスケード、アポトーシスの進行、代謝の変化及び遺伝子発現に「分子トリガー」として機能する。異常なリン酸化が起こると必ず、変異原性の、神経病原性の又は発癌性の活性が開始されるため、これらは重要な薬剤標的である。
リン酸化を監視することは、多くの複雑な生物機能の理解や、医薬品開発における調剤の効果の理解にとってきわめて重要である。
タンパク質のリン酸化は全ての翻訳後調節の中で最も広く研究されており、また、リン酸化タンパク質を選択的に決定する方法及び分析する方法に対する需要は高く、ホスホプロテオミクスにおける最近の進歩によって大幅に促進されている。リン酸化部位特異的抗体は、免疫沈降又はウェスタンブロットでリン酸化エピトープを認識するのに慣習的に使用されており、また、抗ホスホチロシン抗体は十分な効率を示すが、抗ホスホセリン抗体及び抗ホスホトレオニン抗体は概して中程度の特異性しか示さない。リン酸基の非特異的な捕捉は、質量分析と組み合わせて用いられている。固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)では、正電荷をもつ金属イオンが、リン酸基などの負電荷の種を静電相互作用により引き寄せる。定量解析又は定性解析の前に複合試料中のリン酸化タンパク質を濃縮するために、TiO2などの金属酸化物が用いられる。リン酸部分を、より検出が容易なより安定な基で置換する場合には、間接的なリン酸の検出方法もまた用いられる。これらの方法では通常、捕捉と質量分光学的な解析の前に、タンパク質をトリプシンで消化する必要がある。
タンパク質のリン酸化は全ての翻訳後調節の中で最も広く研究されており、また、リン酸化タンパク質を選択的に決定する方法及び分析する方法に対する需要は高く、ホスホプロテオミクスにおける最近の進歩によって大幅に促進されている。リン酸化部位特異的抗体は、免疫沈降又はウェスタンブロットでリン酸化エピトープを認識するのに慣習的に使用されており、また、抗ホスホチロシン抗体は十分な効率を示すが、抗ホスホセリン抗体及び抗ホスホトレオニン抗体は概して中程度の特異性しか示さない。リン酸基の非特異的な捕捉は、質量分析と組み合わせて用いられている。固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)では、正電荷をもつ金属イオンが、リン酸基などの負電荷の種を静電相互作用により引き寄せる。定量解析又は定性解析の前に複合試料中のリン酸化タンパク質を濃縮するために、TiO2などの金属酸化物が用いられる。リン酸部分を、より検出が容易なより安定な基で置換する場合には、間接的なリン酸の検出方法もまた用いられる。これらの方法では通常、捕捉と質量分光学的な解析の前に、タンパク質をトリプシンで消化する必要がある。
ホスホチロシンが細胞のシグナル伝達に関与することから、例えば癌研究で興味をもたれているが、ホスホセリン及びホスホトレオニンの方が約2000倍も多い。セリンとトレオニンのリン酸化は、チロシンのリン酸化の下流で起こり、相当に興味深い。抗ホスホセリン抗体と抗ホスホトレオニン抗体の機能が比較的低いことは、下流のリン酸化事象の監視を向上させることができる、セリン及びトレオニン側鎖のタンパク質リン酸化に対する高親和性で、選択的で、頑強でかつ効率的な結合剤が必要とされていることを示唆している。強力な結合剤を利用することで、生物機能やタンパク質リン酸化の機序に関する理解の範囲、及びインビトロ診断の開発の範囲が広げられる。生物分析のツールとして使用するために、結合剤は特異性と高い親和性を示すだけでなく、保存条件及び生理学的条件で長期間の安定性を示し、かつ、毒性が最小限であり、調製が容易である必要がある。
特異性の高い結合剤分子を利用することが望ましいことが多く、リン酸化タンパク質の基の同定と定量に用いる一般的な試薬が生物分析の用途で、特に質量分析との併用でリン酸化タンパク質を富化するため、及び電気泳動ゲル、例えばウェスタンブロットでリン酸化タンパク質を検出するための固定化高親和性試薬として非常に興味をもたれている。ポリペプチドコンジュゲート結合剤分子の原理は、小分子の先端部が結合剤とタンパク質の相互作用を左右し、かつ、ポリペプチドが上述の特性を導入し、さらに親和性と選択性を高めるというものである。小分子先端部が特定のタンパク質でなく特定の官能基に対して選択性をもつ条件では、得られた結合剤分子はそのような官能基をもつタンパク質の大部分、あるいは全てを認識することができると期待される。我々は、リン酸化したアミノ酸側鎖及びリン酸化タンパク質の結合の基特異的な認識の問題に取り組み、原理の証明実験では、この結合原理をモデルタンパク質であるα−カゼイン、β−カゼイン及びオバルブミンに当てはめた。この目的のために本発明の分子ツールを使用し、リン酸基に結合することが知られている小分子であるPP1と結合させることによって結合剤分子を調製する。
ここでは、図1に示す16種類のポリペプチドのうちの8種、すなわち全電荷がそれぞれ−1(すなわち3系列)、及び+2(すなわち4系列)のポリペプチドを使用した。変動する複雑さの培地中で、結合剤の親和性、結合機序、及び選択性を評価した。結果は、リン酸化事象が重要な役割を担っている例では、これらの結合剤分子が診断用途の有力な候補であることを示唆している。
結果と考察
結合剤の設計。リガンドとレポーター基への連結部位として使用したリシンをそれぞれ、直交保護基で保護した。固定又は官能基をさらに連結するために、24番目のアラニンをシステインで置換した。修飾は、ペプチド合成中の固相上でも、開裂と精製後の溶液中でも実施可能である。折り畳み構造の模式図と結合剤4−C15L8−PP1のアミノ酸配列を図6に示す。
リン酸基に対する選択性を示す、利用可能な多くの分子の中から(Aoki, S.,Kimura, E., Rev. Mol. Biotechnol. 2002, 90, 129-155)、リン酸陰イオンに結合することがHamachiらによって既に報告されている、Zn(II)−2,2’−ジピコリルアミン(Dpa)錯体を使用することを決めた(Ojida, A., Inoue M., Mito-oka Y., Hamachi I., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10184-10185. Ojida A., Inoue M., Mito-oka Y., Tsutsumi H., Sada K., Hamachi I., J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 2052-2058. Ojida A., Mito-oka Y., Sada K., Hamachi I., J. Am. Chem. Soc, 2004, 126, 2454-2463. Ishida, Y., Inoue, M., Inoue, T., Ojida, A., Hamachi, I., Chem. Commun. 2009, 2848-2850)。別の選択的リン酸認識単位であるフォスタグはリン酸化されたペプチドやタンパク質に高い親和性を有することがKinoshitaらによって報告された(Kinoshita, E., Yamada, A., Takeda, H., Kinoshita-Kikuta, E., Koike, T., J. Sep. Sci. 2005, 28, 155-162. Kinoshita, E., Takahashi, M., Takeda, H., Shiro, M., Koike T., Dalton Trans. 2004, 1189-1193. Kinoshita, E., Kinoshita-Kikuta, E., Takiyama, K., Koike T., Mol. Cell. Proteomics 2006, 5, 749-757)。結合剤の開発には、ジメチル安息香酸(PP1)によって結合されている2つのDpa基を含む分子を選択した。この分子はこれまでにもリン酸受容体の構築に使用されており、リン酸酸素に配位する2つのZn2+イオンに結合する。この分子はリンペプチド類にμΜ(マイクロモル)領域である解離定数で結合することが報告されている(Yamaguchi, S., Yoshimura, I., Kohira, T., Tamaru, S., Hamachi, I., J. Am. Chem.Soc. 2005, 127, 11835-11841. Mangalum, A., Smith, R. C, Tetrahedron 2009, 65, 4298-4303)。
結合剤の設計。リガンドとレポーター基への連結部位として使用したリシンをそれぞれ、直交保護基で保護した。固定又は官能基をさらに連結するために、24番目のアラニンをシステインで置換した。修飾は、ペプチド合成中の固相上でも、開裂と精製後の溶液中でも実施可能である。折り畳み構造の模式図と結合剤4−C15L8−PP1のアミノ酸配列を図6に示す。
リン酸基に対する選択性を示す、利用可能な多くの分子の中から(Aoki, S.,Kimura, E., Rev. Mol. Biotechnol. 2002, 90, 129-155)、リン酸陰イオンに結合することがHamachiらによって既に報告されている、Zn(II)−2,2’−ジピコリルアミン(Dpa)錯体を使用することを決めた(Ojida, A., Inoue M., Mito-oka Y., Hamachi I., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10184-10185. Ojida A., Inoue M., Mito-oka Y., Tsutsumi H., Sada K., Hamachi I., J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 2052-2058. Ojida A., Mito-oka Y., Sada K., Hamachi I., J. Am. Chem. Soc, 2004, 126, 2454-2463. Ishida, Y., Inoue, M., Inoue, T., Ojida, A., Hamachi, I., Chem. Commun. 2009, 2848-2850)。別の選択的リン酸認識単位であるフォスタグはリン酸化されたペプチドやタンパク質に高い親和性を有することがKinoshitaらによって報告された(Kinoshita, E., Yamada, A., Takeda, H., Kinoshita-Kikuta, E., Koike, T., J. Sep. Sci. 2005, 28, 155-162. Kinoshita, E., Takahashi, M., Takeda, H., Shiro, M., Koike T., Dalton Trans. 2004, 1189-1193. Kinoshita, E., Kinoshita-Kikuta, E., Takiyama, K., Koike T., Mol. Cell. Proteomics 2006, 5, 749-757)。結合剤の開発には、ジメチル安息香酸(PP1)によって結合されている2つのDpa基を含む分子を選択した。この分子はこれまでにもリン酸受容体の構築に使用されており、リン酸酸素に配位する2つのZn2+イオンに結合する。この分子はリンペプチド類にμΜ(マイクロモル)領域である解離定数で結合することが報告されている(Yamaguchi, S., Yoshimura, I., Kohira, T., Tamaru, S., Hamachi, I., J. Am. Chem.Soc. 2005, 127, 11835-11841. Mangalum, A., Smith, R. C, Tetrahedron 2009, 65, 4298-4303)。
図7にPP1合成の模式図を示す。最初に、化合物1をNBSでラジカル二臭素化し、その後、過剰に臭素化した望ましくない化合物を除去するために亜リン酸ジエチルで処理した(Liu, P., Chen, Y., Deng, J., Tu, Y., Synthesis 2001, 14, 2078-2080)。次の工程では、Dpa−H断片で2を求核攻撃して化合物3を生成し、さらにこれを加水分解してカルボン酸4を形成させた。このような極性化合物は精製が難しいため、カルボン酸4を水と有機層とで分配して精製し、最後に対応するTEA塩に変換した。TEA塩は対イオンの疎水性により、有機相に溶けやすい。上述の合成経路を最適化し、文献で報告されているよりも非常に良い収率で標的化合物を生産した。
リン酸化は折り畳まれたタンパク質の表面で起こり、この例にはスペーサーが含まれないため、PP1の先端部をリシン8の側鎖に直接コンジュゲートさせた。
構造解析。PP1とZn2+イオンの導入がポリペプチドの溶液構造に影響を与えるか否かを決定するために、様々な凝集段階の結合剤分子4−C15L8−PP1を、10mMのHEPES緩衝液(pH7.2)を用いて1、10及び50μΜの濃度にし、円二色性分光法によって解析した(表3)。
表3.様々な凝集段階にある結合剤分子、4−C15L8−PP1の平均残基楕円率。10mMのHEPES緩衝液(150mMのNaClを含む、pH7.2)に溶解し、222nmの楕円率を298Kで測定した。
構造解析。PP1とZn2+イオンの導入がポリペプチドの溶液構造に影響を与えるか否かを決定するために、様々な凝集段階の結合剤分子4−C15L8−PP1を、10mMのHEPES緩衝液(pH7.2)を用いて1、10及び50μΜの濃度にし、円二色性分光法によって解析した(表3)。
表3.様々な凝集段階にある結合剤分子、4−C15L8−PP1の平均残基楕円率。10mMのHEPES緩衝液(150mMのNaClを含む、pH7.2)に溶解し、222nmの楕円率を298Kで測定した。
ペプチド濃度を重量から推定した。ペプチド濃度には大きな誤差がつきまとう可能性があるが、溶液は貯蔵液から調製したため、相対測定は正確である。Zn(NO3)2をペプチド濃度よりも20%多く加えた。
ペプチドは全て、209nmと222nmに極小値をもつヘリックスの特徴を示した。このことは、これらのペプチドがこれらの濃度で少なくとも部分的に二量体化し、4本のヘリックス束を形成していることを示唆している。親ペプチドである4−C15L8と、PP1のZn2+錯体を担持している完全に修飾された4−C15L8は、単量体−二量体平衡を表す適度な濃度依存性を示したが、PP1で機能化された4−C15L8はZn2+の非存在下では濃度依存性を示さなかった。修飾の有無にかかわらずポリペプチドは、マイクロモル領域の濃度で4本のヘリックス束に二量体化するヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフに折り畳まれ、溶液構造は官能基の導入に強く影響を受けると結論づけた。
結合親和性。原理の証明実験では、モデルタンパク質であるα−カゼイン、β−カゼイン及びオバルブミンの結合を試験した。最も広く研究され、性質が明らかにされているリンタンパク質はおそらくα−カゼインである。α−カゼインは8〜13個のリン酸基を有するが、β−カゼインは5個、オバルブミンは1個のリン酸基をもつ。これらのタンパク質では、リン酸化はセリン側鎖で起こる。これらは商業的な供給源から容易に調達できるため、体系的な調査に適している。カゼインとオバルブミンの等電点は両方とも約5であり、α−カゼイン、β−カゼイン、及びオバルブミンのIEPはそれぞれ4.6、5.1及び4.6である。
親和性の決定には、結合によって生じる疎水性環境の変化による量子収量の変化に応答することが予測される2種類の蛍光プローブを使用した。
マイクロ滴定プレートの形式で実施可能な予備的で単純な試験では、10mMのHEPES緩衝液(150mMのNaClを含む、pH7.2)に溶解した濃度500nMの8種類の結合剤候補(蛍光色素分子である7−メトキシクマリン−3−カルボン酸を有する)それぞれを、α−カゼインで3段滴定した(図8)。クマリンプローブの吸光度からペプチドの濃度を決定して濃度5μΜの貯蔵液を調製し、その分割量をマイクロ滴定プレートに移した。Zn(NO3)2を最終濃度が12μΜになるように加えた。蛍光の発光スペクトルをタンパク質非存在下、及び500nM、1000nM及び1500nMのタンパク質存在下で記録し、結合剤とタンパク質両方の濃度が500nMの場合に結合が飽和したか否かを定性的に決定した。それらの濃度での、実験誤差範囲内での飽和は低ナノモルの親和性及び緊密な結合と矛盾しない。
マイクロ滴定プレートの形式で実施可能な予備的で単純な試験では、10mMのHEPES緩衝液(150mMのNaClを含む、pH7.2)に溶解した濃度500nMの8種類の結合剤候補(蛍光色素分子である7−メトキシクマリン−3−カルボン酸を有する)それぞれを、α−カゼインで3段滴定した(図8)。クマリンプローブの吸光度からペプチドの濃度を決定して濃度5μΜの貯蔵液を調製し、その分割量をマイクロ滴定プレートに移した。Zn(NO3)2を最終濃度が12μΜになるように加えた。蛍光の発光スペクトルをタンパク質非存在下、及び500nM、1000nM及び1500nMのタンパク質存在下で記録し、結合剤とタンパク質両方の濃度が500nMの場合に結合が飽和したか否かを定性的に決定した。それらの濃度での、実験誤差範囲内での飽和は低ナノモルの親和性及び緊密な結合と矛盾しない。
4系列結合剤の蛍光発光の強度はα−カゼインが存在すると、結合の結果、低下することが分かった(図8)。対照的に3系列の結合剤の蛍光発光強度は、α−カゼインが存在すると上昇することが分かった。この応答の差は、結合状態と遊離状態における、蛍光色素分子周辺の相対的な疎水性の差によるものであり、結合強度と蛍光発光強度の相対変化の間には何の関係もない。応答の差は、結合していないポリペプチドコンジュゲート内の相互作用の差に起因する可能性があることから、これはα−カゼインを含む複合体の構造の違いを示しているのでもない。
一方、α−カゼインの濃度上昇に対する相対的な応答の差は、親和性の差と関係がある。4系列の結合剤分子は、α−カゼインの濃度にかかわらず、ほぼ同一の蛍光発光スペクトルを示した。このことは、結合剤とタンパク質の濃度が500nMの場合に結合が飽和することを示している。実験誤差を10%以下と仮定すると、結合剤−タンパク質複合体の濃度が450nMであり、遊離タンパク質と遊離結合剤の濃度はそれぞれ50nMと推定することができる。これらの数値から、見かけの親和性を5nMと計算することができる。この予測は明かに大まかなものであり、実験誤差はおそらく10%を越え、解離定数の上限(親和性の下限)が得られるだけである。それにもかかわらず、これは迅速で有益な実験である。蛍光滴定から、4系列の結合剤候補の解離定数が約5nM以下であると推定した。一方、3系列結合剤の強度はα−カゼイン濃度の上昇に伴って増加し、3C10L17−PP1以外は、この実験条件では飽和に達しなかった(図9)。3系列結合剤の解離定数は高ナノモルからマイクロモルの領域にあると結論付けた。3系列の親和性と4系列の親和性がほぼ同一なのは、おそらく偶然である。
陰性対照として、無修飾の4−C17L10ポリペプチドと、Zn2+イオン非存在下の4−C10L17−PP1をα−カゼインで滴定した(図10)。蛍光発光スペクトルには何の影響も見られず、かつ、PP1及びZn2+イオンが結合に必要であることが示されている。α−カゼインに対するポリペプチドの親和性は低いが、公表されているPP1の解離定数からは、ポリペプチドがPP1に接合するとPP1よりも数桁高く結合するポリペプチドコンジュゲートが生じると結論付けることができる。従って一般的な結合剤の概念から予期されるように、ポリペプチドはコンジュゲート中で有意に結合に寄与する。
結合剤とα−カゼインとの間の相互作用をさらに探索するために、競合実験を行い、プルダウン実験とその後のSDS−PAGE解析によって解析した。2%のポリスチレン・ラテックスナノ粒子懸濁液と10mg/mLのプルロニックF108-PDSを、一定に振とうしながら室温で一晩インキュベートすることで、粒子にプルロニックを吸着させた。チオールを脱保護した結合剤である4−C15L8−PP1をポリスチレン粒子の表面に、ピリジルジスルフィド(PDS)末端基を有する固定したプルロニックを用いた反応によって、ジスルフィド架橋を介して結合させた。このように調製した粒子をタンパク質溶液中でインキュベートし、洗浄と遠心分離を繰り返した後、ビーズから捕捉されたタンパク質が放出されるようにDTTで処理した。得られた上清を電気泳動解析のためのゲルに負荷した。
リン酸基への配位を介してリン酸化されたアミノ酸側鎖に結合するように、Zn2+でキレートされたPP1を設計したため、ホスホセリンに対して3桁多いリン酸陰イオンに相当する10mMのPBS緩衝液は、500nMのタンパク質濃度ではα−カゼインの捕捉を阻害しなかった(図11)。このことは、リン酸陰イオン濃度が高い場合の診断目的の用途を大きく拡大するものである(Rapoport, S., Guest, G. M., J. Biol. Chem. 1941, 138, 269-282. Lehman, E. P., J. Biol. Chem. 1921, 48, 293-303.Gustin, P., Detry B., Cao M. L., Chenut F., Robert A., Ansay M., Frans A., Clerbaux, T., J Appl Physiol, 1994, 77, 202-208)。結合剤に対して、500nMのα−カゼインと、濃度が400μΜのホスホチロシン側鎖をもつ合成ペプチド(PhosPep)とを競合させると、明らかにα−カゼインが有利に作用する。α−カゼインの濃度だけを100nMに低下させ、ペプチド濃度を高マイクロモルレベルに維持すると、結合事象は抑制される。20%レベルまで脱リン酸化されている市販のα−カゼインもまた、結合剤によって容易に抽出された。この結果は、この結合剤がポリペプチドとPP1との相乗効果を介してα−カゼインに対する高い親和性をもたらすという有力な証拠を提供するものである。
解離定数をより正確に決定するために、結合剤の濃度を10mMのHEPES緩衝液(150mMのNaClを含む、pH7.2)に溶解して100nMとし、タンパク質で滴定を行った(図12)。この濃度では、より強く発光するプローブが必要とされるため、アセトアミドメチル(Acm)保護基を除去した後に、マレイミド基をポリペプチドの遊離チオールと反応させることによってCys−24の側鎖にフルオレセインを連結した。結合剤の濃度を一定(100nM)に維持し、α−カゼインの濃度のみを変えた一連の試料を調製した。おそらく多くの解離定数が含まれていたが、1:1複合体の解離について記述している式に対する実験結果の最良適合から得られた見かけの解離定数は17nMであった。α−カゼインと4−C15L8−PP1の1以上のコピーの複雑な解離挙動を単一の解離定数の観点から説明することは、明らかに単純化し過ぎである。いくつの結合剤分子がα−カゼインのリン酸基に結合するのかは分かっておらず、またこれらの結合剤分子が親和性の差に関係しているかも分かっていないが、その可能性が高い。
測定値はおそらく、真のKdを過小評価している。より信頼性の高い解離定数を得るためには解離定数の値に近い濃度で測定を実施する必要がある。この例では、蛍光発光の変化が十分な大きさではなかったため、17nM以下では所望の正確さで測定することはできなかった。また、α−カゼインの濃度が変曲点の近辺及びそれ以下では4−C15L8−PP1の濃度よりも低かったため、蛍光発光の変化から見積もられた結合強度は低い。見かけの解離定数は、雑種の結合剤分子がα−カゼインに強く結合していることを示しており、我々は、17nMでは結合剤の効率が過小評価されているものであると結論付けた。実施上の制限から、より正確なKd値を確認することは残念ながら不可能である。
結合剤の選択性。α−カゼイン及びオバルブミンをそれぞれ500nM、並びに非リン酸化タンパク質であるリゾチーム、ホスホリラーゼB及びb−ガラクトシダーゼを含むタンパク質混合物からの抽出物の分析を図13に示す。プルロニックでコーティングしたビーズ(非特異的結合を決定するため)、プルロニックでコーティングし、4−C15L8(8番目のリシンがアセチル化されている)を固定したビーズ(ペプチド構造への非特異的な結合を決定するため)、及びプルロニックでコーティングし、Zn2+イオンのない4−C15L8−PP1を固定したビーズの3種類の陰性対照を用いた。錯体から確実にZn2+イオンを除去するために、実験を1mMのEDTA存在下で行った。
非リン酸化タンパク質であるホスホリラーゼBに相当するバンドは見られるが、結合剤4−C15L8−PP1は混合物からα−カゼインを選択的に抽出し、非特異的な取り込みは僅かである。対照実験は、ホスホリラーゼBはプルロニックでコーティングしたビーズに非特異的に結合することを示している(結果は示さない)。重要な成果は、α−カゼインへの結合に亜鉛が必須であることを示したことである。
また、α−カゼインよりもリン酸化のレベルが低いリンタンパク質の結合を評価するために、100nM溶液からのβ−カゼインの抽出を示した(図14)。このタンパク質は、α−カゼインの約半数のリン酸基を有する。しかしながら、濃度100nMのオバルブミン(モノリン酸化タンパク質)は抽出できなかった。ポリリン酸化タンパク質の結合力はモノリン酸化タンパク質の結合力よりも高いと予想されることから、この違いは親和性の違いによると考えられる。また、ポリペプチドとタンパク質との相互作用が最適ではなかったことが原因である可能性もあるため、別のポリペプチドを選択することで改善できる可能性がある。
より複雑な培地中での4−C15L8−PP1の選択性を、牛乳及びヒト血清中でのプルダウン実験によって評価した(図15)。牛乳は、非常に多くのタンパク質に加えて多数のカゼインを含み、中でもα−カゼインが最も豊富である。ヒト血清は数千種類のタンパク質を含み、ヒト血清からの抽出は、リン酸化タンパク質の生物医学用途での測定に関連する結合剤の選択性に関する重要な評価を提供する。ヒト血清を培地として選択したが、ヒト血清にはα−カゼインが含まれないため、これを加える必要があった。牛乳からのα−カゼインのプルダウンは上手くいき、β−カゼインに相当する小さなバンドのみが得られた。100倍希釈したヒト血清を加えたα−カゼインのプルダウンを示すのに成功し、希釈していないヒト血清を加えたプルダウンも成功したが、ゲルには数個のバンドが見られた。希釈していないヒト血清という複雑な培地中では、ビーズによる非特異的な取り込みを回避することはできないため、希釈していない血清中での4−C15L8−PP1の選択性のレベルをはっきりを規定することはできない。しかしながら、合成結合剤分子である4−C15L8−PP1が数千ものタンパク質と競合して、α−カゼインを抽出することが示された。
本明細書で報告している結合剤は、緩衝液中並びに牛乳及び血清中でモデルリンタンパク質であるα−カゼインとβ−カゼインに対する高い親和性と選択性を示し、さらに、結合剤の開発に使用した一連のポリペプチド配列は、事実上、いかなるタンパク質に対する結合剤の開発にも一般に適用可能であることを示している。この概念は、抗体やアプタマーなど、分子量が大きく、非常に複雑で、かつ、予め組織化された構造をとっていることが必要とされる生物学的な結合剤とは異なり、また、溶液中及び固形担体上で、特にセリン及びトレオニンを伴うリン酸化事象の監視に関するリンタンパク質の捕捉及び検出の選択肢を提供する。この種の結合剤は、頑強な捕捉技術が非常に重要となる生物工学や生物医学での幅広い用途に非常に適している。これは特別な予防策を講じることなく室温で保管することができ、確立している化学的な方法と試薬を使用して容易に誘導体化される。リン酸化タンパク質が、対応する非リン酸化タンパク質よりもイオン化されないことを踏まえると、この技術の魅力的な用途としては、質量分光学的な解析の前の生物試料の濃縮がある。結合剤は「プルダウン」実験でも非常によく機能し、医薬品への曝露によって生じる細胞内のリン酸化事象の監視にも広く使用されることが期待される。我々は、この結合剤が生体内及び生体外で造影剤として機能し得ると考えている。なぜならば、結合機能を乱すことなく有機分子を共有結合させることができるため、この結合剤が柔軟であるからである。特に、蛍光プローブ及び放射性核種部位を結合できることは、この技術を非常に柔軟で適合性のあるものにしている。最後に、結合小分子を典型的な抗体と比較した。
実験項
小分子の合成
一般情報
試薬は全て市販されているものを購入し、さらに精製することなく使用した。薄層クロマトグラフィー(TLC)には、シリカゲルコーティング済み(0.25mm)の酸化アルミニウム板(メルク)を使用し、スポットを紫外線(λ=254nm)で可視化した。500MHz(499.9MHz)の分光計で1H−NMRスペクトルを記録し、400MHz(100.6MHz)の分光計で13C−NMRスペクトルを記録した。重水素化クロロホルムを使用して、又は溶媒として、25℃でスペクトルを記録した。残留クロロホルムを内部標準(1Hδ7.26、13Cδ77.0)として化学シフト(δ)をppmで報告し、結合定数(J)をHzで報告した。パーキンエルマーSCIEX API 150EX分光計で陽イオンモードを使用し、低分解能質量スペクトルを記録した。
小分子の合成
一般情報
試薬は全て市販されているものを購入し、さらに精製することなく使用した。薄層クロマトグラフィー(TLC)には、シリカゲルコーティング済み(0.25mm)の酸化アルミニウム板(メルク)を使用し、スポットを紫外線(λ=254nm)で可視化した。500MHz(499.9MHz)の分光計で1H−NMRスペクトルを記録し、400MHz(100.6MHz)の分光計で13C−NMRスペクトルを記録した。重水素化クロロホルムを使用して、又は溶媒として、25℃でスペクトルを記録した。残留クロロホルムを内部標準(1Hδ7.26、13Cδ77.0)として化学シフト(δ)をppmで報告し、結合定数(J)をHzで報告した。パーキンエルマーSCIEX API 150EX分光計で陽イオンモードを使用し、低分解能質量スペクトルを記録した。
3,5−ビス(ブロモメチル)安息香酸メチル(2)
工程1
3,5−ジメチル安息香酸(5g、30mmol)をCCl4(50mL)に溶解し、次いでNBS(16.2g、90mmol)及び過酸化ベンゾイル(0.2g、0.8mmol)を3等分して1時間かけて加えた。反応混合物を一晩還流させた。沈殿物(スクシンイミド)をろ過して除去し、DCMで洗浄した。ろ液をまとめて、飽和NaHCO3溶液と塩水で洗浄した。溶媒を減圧蒸留し、黄色油を得た。これをさらには検査せずに次の工程に使用した。
工程1
3,5−ジメチル安息香酸(5g、30mmol)をCCl4(50mL)に溶解し、次いでNBS(16.2g、90mmol)及び過酸化ベンゾイル(0.2g、0.8mmol)を3等分して1時間かけて加えた。反応混合物を一晩還流させた。沈殿物(スクシンイミド)をろ過して除去し、DCMで洗浄した。ろ液をまとめて、飽和NaHCO3溶液と塩水で洗浄した。溶媒を減圧蒸留し、黄色油を得た。これをさらには検査せずに次の工程に使用した。
工程2
工程1の生成物を無水THF(20mL)に溶解し、0℃まで冷却し、その後亜リン酸ジエチル(12.6g、90mmol)とDIPEA(11.78g、90mmol)を加えた。この溶液を室温まで徐々に温め、一晩撹拌を続けた。混合物を約半量になるまで濃縮し、氷と水の混合物にあけ、Et2O(2×50mL)で抽出した。有機層を1MのHClと塩水で洗浄し、蒸発させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル:AcOEt/n−ペンタン、1:9)で精製し、白色粉末を得た。収量:5.5g(56%)。
工程1の生成物を無水THF(20mL)に溶解し、0℃まで冷却し、その後亜リン酸ジエチル(12.6g、90mmol)とDIPEA(11.78g、90mmol)を加えた。この溶液を室温まで徐々に温め、一晩撹拌を続けた。混合物を約半量になるまで濃縮し、氷と水の混合物にあけ、Et2O(2×50mL)で抽出した。有機層を1MのHClと塩水で洗浄し、蒸発させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル:AcOEt/n−ペンタン、1:9)で精製し、白色粉末を得た。収量:5.5g(56%)。
MS(ESI、m/z):計算値:321.9、実測値:344.2[M+Na]+。
3,5−ビス[[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]メチル]安息香酸メチル(3)
3,5−ビス(ブロモメチル)安息香酸メチル(500mg、1.6mmol)とジ(2−ピコリル)アミン(800mg、725μL、4mmol)をACNに溶解し、次いで無水K2CO3(1.1g、7.9mmol)を加えた。反応混合物を、CaCl2管を取り付けた還流冷却器で一晩還流した。反応混合物をろ過し、ろ液を減圧蒸発させた。黄色の残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Al2O3中性、最初にAcOEtを使用して不純物を溶出し、その後MeOH/AcOEt=1:9(容積比))で精製し、純粋な生成物を黄色油として得た。収量:850mg(95%)。
3,5−ビス[[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]メチル]安息香酸メチル(3)
3,5−ビス(ブロモメチル)安息香酸メチル(500mg、1.6mmol)とジ(2−ピコリル)アミン(800mg、725μL、4mmol)をACNに溶解し、次いで無水K2CO3(1.1g、7.9mmol)を加えた。反応混合物を、CaCl2管を取り付けた還流冷却器で一晩還流した。反応混合物をろ過し、ろ液を減圧蒸発させた。黄色の残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Al2O3中性、最初にAcOEtを使用して不純物を溶出し、その後MeOH/AcOEt=1:9(容積比))で精製し、純粋な生成物を黄色油として得た。収量:850mg(95%)。
MS(ESI、m/z):計算値:558.7、実測値:559.5[M+H]+。
3,5−ビス[[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]メチル]安息香酸*TEA塩/PP1(4)
3,5−ビス[[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]メチル]安息香酸メチル(1g、1.8mmol)をMeOH(50mL)に溶解し、NaOHの10%溶液(5mL)を加えた。反応混合物を2時間還流した(反応の進行をTLC、Al2O3、MeOH/AcOEt、1:9(容積比)で監視した)。反応混合物を0℃まで冷却し、次いで10MのHClをpHが2になるまで加え、その後溶媒を減圧蒸発させた。得られた黄色の油状懸濁液を水(50mL)に再度溶解し、TEA(3.6g、36mmol)を1滴ずつ加えた。水溶液をDCM(2×50mL)で抽出し、有機層をまとめて蒸発して高真空乾燥し、生成物を粘性のある油として得た。収量:1.1g(95%)。
3,5−ビス[[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]メチル]安息香酸*TEA塩/PP1(4)
3,5−ビス[[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]メチル]安息香酸メチル(1g、1.8mmol)をMeOH(50mL)に溶解し、NaOHの10%溶液(5mL)を加えた。反応混合物を2時間還流した(反応の進行をTLC、Al2O3、MeOH/AcOEt、1:9(容積比)で監視した)。反応混合物を0℃まで冷却し、次いで10MのHClをpHが2になるまで加え、その後溶媒を減圧蒸発させた。得られた黄色の油状懸濁液を水(50mL)に再度溶解し、TEA(3.6g、36mmol)を1滴ずつ加えた。水溶液をDCM(2×50mL)で抽出し、有機層をまとめて蒸発して高真空乾燥し、生成物を粘性のある油として得た。収量:1.1g(95%)。
ペプチド合成とペプチド合成後の修飾
一般情報
ペプチドの合成を、自動化された固相法を用い、アプライドバイオシステムズ433Aペプチド合成機で、Fast Moc合成プログラムを使用した標準的なFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学反応を利用して行った。合成は0.1mmolスケールで行い、固相担体としてはH2N-RinkAmide-ChemMatrix(PCAS BioMatrix Inc)樹脂を1グラム当たり0.54mmol負荷して使用した。全てのカップリング工程は、HCTU/6Cl−HOBt/DIPEA(Iris Biotech GmbH及びPepnet Inc.)活性化混合物と共に行った。ペプチド合成に使用した全ての試薬は、製造業者の手順に変更を加えずに調製した。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。結合サブユニットおよび蛍光プローブの連結又はポリスチレンビーズへの連結が柔軟に直交性をもつように、Lys15とLys8の主鎖をトリフルオロアセチル及び4−メチルトリチルで保護した。Cys側鎖はアセチル−アミノメチルで保護した。ペプチドを、HPLC(半分取hypersil C-18カラム250×20mm、粒子径5μm)により、2種類の溶媒、A(10%ACN/90%H2O/0.1%TFA)、B(90%ACN/10%H2O/0.1%TFA)を使用して精製した。移動相の組成については、以下の手順で詳細に記載する。ペプチドの確認は、MALDI-TOF MS(アプライドバイオシステムズ、Voyager-DE PRO)でα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸をマトリックスとして使用して行った。5mMのHEPES緩衝液に溶解した濃度50μΜ〜1μΜのペプチドを使用し、CD分光法(JASCO J-810)を25℃で行った。測定の前にpHを7.2に調整した。CDの測定は全て、1mm及び10mmの石英キュベット内で行った。
一般情報
ペプチドの合成を、自動化された固相法を用い、アプライドバイオシステムズ433Aペプチド合成機で、Fast Moc合成プログラムを使用した標準的なFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学反応を利用して行った。合成は0.1mmolスケールで行い、固相担体としてはH2N-RinkAmide-ChemMatrix(PCAS BioMatrix Inc)樹脂を1グラム当たり0.54mmol負荷して使用した。全てのカップリング工程は、HCTU/6Cl−HOBt/DIPEA(Iris Biotech GmbH及びPepnet Inc.)活性化混合物と共に行った。ペプチド合成に使用した全ての試薬は、製造業者の手順に変更を加えずに調製した。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。結合サブユニットおよび蛍光プローブの連結又はポリスチレンビーズへの連結が柔軟に直交性をもつように、Lys15とLys8の主鎖をトリフルオロアセチル及び4−メチルトリチルで保護した。Cys側鎖はアセチル−アミノメチルで保護した。ペプチドを、HPLC(半分取hypersil C-18カラム250×20mm、粒子径5μm)により、2種類の溶媒、A(10%ACN/90%H2O/0.1%TFA)、B(90%ACN/10%H2O/0.1%TFA)を使用して精製した。移動相の組成については、以下の手順で詳細に記載する。ペプチドの確認は、MALDI-TOF MS(アプライドバイオシステムズ、Voyager-DE PRO)でα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸をマトリックスとして使用して行った。5mMのHEPES緩衝液に溶解した濃度50μΜ〜1μΜのペプチドを使用し、CD分光法(JASCO J-810)を25℃で行った。測定の前にpHを7.2に調整した。CDの測定は全て、1mm及び10mmの石英キュベット内で行った。
Mttの切断。合成後、Lys8のMttを脱保護するためにペプチド含有樹脂をTFA/DCM(3:97、容積比)を含む混合液で、10分ずつ2回洗浄した。樹脂をDCMで洗浄し、真空乾燥した。
ペプチド構造へのPP1(4)の組み込み。約1/4量のペプチド含有樹脂(ペプチド0.025mmol)を、4(80mg、0.125mmol)、PyBOP(65mg、0.125mmol)及びDIPEA(32mg、0.25mmol)のNMP(1.5mL)溶液に浸漬して一晩インキュベートした。樹脂をDMFで3回、次いでDCMで3回洗浄した。TFA/トリイソプロピルシラン/H2O(95:2.5:2.5、容積比)を含む混合液で3時間かけて樹脂からペプチドを切り出し、その後氷冷したMTBEで沈殿させた。ペプチドの塊を最小量のTFAに再溶解し、冷Et2Oで再沈殿させた。ペプチドを水に溶解し、凍結乾燥し、その後HPLCにより、移動相Bを使用して勾配溶出(17分間で30%〜45%、流速8mL/分)することで精製した。
Acmの脱保護。ペプチド(1μmol)を2%(容積率)のアニソールを含む0.50mLのTFAに溶解した。この溶液を0℃まで冷却し、AgOTf(26mg、0.1mmol、100当量)のTFA溶液(0.5mL)を加えた。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、周囲温度まで戻した。室温で12時間撹拌し続けた。冷ジエチルエーテルを加えることで反応混合物からペプチドの銀塩を沈殿させ、遠心分離した。上清を捨て、残留物を0.5mLの蒸留水に溶解する。このペプチド溶液にDL−ジチオスレイトール(8mg、0.05mmol、50当量)の氷酢酸(0.5mL)溶液を加える。この混合物を2時間撹拌し、その後遠心分離する。残留物を捨て、上清に含まれるペプチドを、Sep-Pak Plus(C-18カートリッジ、ウォーターズ)とHPLC用の溶媒A及びBを使用して精製する。HPLC用の溶媒Aで試料を10mLに希釈し、SEP-PACKカートリッジに負荷した。移動相の極性を徐々に上げながら、カートリッジを洗浄した。回収した画分をMALDIで分析し、所望の生成物を含む画分をまとめて凍結乾燥した。
Tfaの脱保護。ペプチド(1μmol)を水(1mL)に溶解し、この溶液を0℃まで冷却した。撹拌されている溶液にピペリジン(200μL、2mmol)を加え、0℃で2時間撹拌し続けた。冷TFA(154μL、2mmol)を加えることでこの溶液を中和し、Sep-Pak Plus(C-18カートリッジ、ウォーターズ)とHPLC用の溶媒A及びBを使用して精製した。HPLC用の溶媒Aで試料を10mLに希釈し、SEP-PACKカートリッジに負荷した。移動相の極性を徐々に上げながら、カートリッジを洗浄した。回収した画分をMALDIで分析し、所望の生成物を含む画分をまとめて凍結乾燥した。
蛍光実験
一般情報
蛍光実験は全て、96ウェルのポリスチレンプレート内で行った。測定は全て、モレキュラーデバイスのプレートリーダー、Spectra max GEMINI XPSを使用し、25℃で行った。各プレートには300μLの分析物を加えた。全ポリスチレンプレートは測定の前に、分析物の非特異的な結合を最小限に抑えるために特別に調製した。全ウェルをプルロニックの1%水溶液で満たし、一晩放置した。完全に洗浄した後、その後の実験で使用するペプチドに構造が類似しているペプチドを含む溶液(0.3mg/mL)でウェルを満たした。プレートを一晩インキュベートし、その後完全に洗浄して乾燥した。
一般情報
蛍光実験は全て、96ウェルのポリスチレンプレート内で行った。測定は全て、モレキュラーデバイスのプレートリーダー、Spectra max GEMINI XPSを使用し、25℃で行った。各プレートには300μLの分析物を加えた。全ポリスチレンプレートは測定の前に、分析物の非特異的な結合を最小限に抑えるために特別に調製した。全ウェルをプルロニックの1%水溶液で満たし、一晩放置した。完全に洗浄した後、その後の実験で使用するペプチドに構造が類似しているペプチドを含む溶液(0.3mg/mL)でウェルを満たした。プレートを一晩インキュベートし、その後完全に洗浄して乾燥した。
予備的な蛍光スクリーニング。3種類の溶液を調製した。1つ目には、HEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl)に溶解した500nMのPP1_4−C15L8Cys24を、2つ目にはHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150のmMのNaCl)に溶解した500nMのPP1_4−C15L8Cys24と500nMのα−カゼインを、3つ目にはHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl)に溶解した500nMのPP1_4−C15L8Cys24と1000nMのα−カゼインを含めた。各溶液はウェル内で、測定の直前に調製した。それぞれの系について3つずつ試料を準備して平均値をとった。緩衝液に溶解したタンパク質のみを含む溶液の蛍光が記録されたが、応答はノイズレベルであった(報告せず)。
蛍光分光法による親和性の決定。一連の溶液を調製した。溶液はそれぞれ、濃度100nMの結合剤4−C15L8−PP1*を含み、α−カゼインの濃度を1nMから最大10μΜに変えた。溶液は全てHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl)で調製した。525nmの蛍光をタンパク質の総濃度の関数として観測し、式(1)を適合して解離定数Kdを決定した。
・・・式1
式1中、FObsは観測された蛍光強度であり、Fboundはα−カゼインに結合したペプチド結合剤の蛍光であり、Ffreeは遊離ペプチドの蛍光であり、かつ、[αC]は遊離α−カゼインの濃度である。[αC]は式2から導くことができ、式中、[P]totはペプチドの総濃度であり、かつ、[aC]totはα−カゼインの総濃度である。
式1中、FObsは観測された蛍光強度であり、Fboundはα−カゼインに結合したペプチド結合剤の蛍光であり、Ffreeは遊離ペプチドの蛍光であり、かつ、[αC]は遊離α−カゼインの濃度である。[αC]は式2から導くことができ、式中、[P]totはペプチドの総濃度であり、かつ、[aC]totはα−カゼインの総濃度である。
・・・式2
数値適合はIGOR Pro 4.03(WaveMetrics Inc.)で行った。
プルダウン実験と蛍光実験
一般情報
ポリスチレンビーズ(名目上の直径は1μm)の懸濁水をBangs Laboratories,Inc.から購入した。プルロニックはBASFから購入し、プルロニックF108-PDSはAllvivo Inc.(レークフォレスト、CA、米国)から供給された。タンパク質は全てシグマ・アルドリッチから購入した。全試薬及びゲル電気泳動に使用したゲルはインビトロジェンから購入した。SDS−PAGE電気泳動はNuPAGE(登録商標)Novex 4-12%ビス−Trisゲル、1.5mmを使用して行った。ゲルはMES緩衝液中で展開した。ゲルは全て、銀染色用のキットであるSilverQuest(商標)キットを使って染色した。
数値適合はIGOR Pro 4.03(WaveMetrics Inc.)で行った。
プルダウン実験と蛍光実験
一般情報
ポリスチレンビーズ(名目上の直径は1μm)の懸濁水をBangs Laboratories,Inc.から購入した。プルロニックはBASFから購入し、プルロニックF108-PDSはAllvivo Inc.(レークフォレスト、CA、米国)から供給された。タンパク質は全てシグマ・アルドリッチから購入した。全試薬及びゲル電気泳動に使用したゲルはインビトロジェンから購入した。SDS−PAGE電気泳動はNuPAGE(登録商標)Novex 4-12%ビス−Trisゲル、1.5mmを使用して行った。ゲルはMES緩衝液中で展開した。ゲルは全て、銀染色用のキットであるSilverQuest(商標)キットを使って染色した。
ポリスチレン粒子へのプルロニックの吸着。ポリスチレンビーズ(1μm、10mg)をミリQ水で1回洗浄し、その後遠心分離した(14,000rpm、7分)。粒子をF108-PDS(1mL、2%)の水溶液に再懸濁し、24時間回転撹拌した。その後プルロニックでコーティングした粒子を遠心分離(14,000rpm、7分)によって過剰の界面活性剤から分離した。次いでビーズをHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl、1mMのEDTA)に再懸濁し、超音波処理し、再度遠心分離した。この手順を3回繰り返した。
ポリスチレンビーズへのポリペプチドの固定。プルロニック−PDSでコーティングしたポリスチレンビーズ(1μm、10mg)をHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl、1mMのEDTA)で洗浄し、窒素でパージした。その後ビーズを、HEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl、1mMのEDTA)の窒素飽和水溶液に溶解した、遊離システインを有するペプチド(0.5mg)の溶液(1mL)に浸漬した。操作は全て無酸素条件下で行った。12時間インキュベートした後、ビーズをHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl)水溶液で3回洗浄し、次いでZnイオンを含むTRIS緩衝液(pH=8)の水溶液(pH=8.2、10mMのTRIS、5mMのZn(NO3)2)で洗浄した。ビーズを洗浄し、HEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl)に再懸濁した。
プルダウン実験。上述のようにコーティングしたポリスチレンビーズ(0.5mg〜1mg)を緩衝液、牛乳又は血清(0.5mL〜1mL)と共にインキュベートした。懸濁液を90分間回転撹拌し、その後遠心分離した(14,000rpm、7分)。ビーズの塊を少なくとも4回1mLのHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl)に順次再懸濁することで洗浄し、その後遠心分離した(14,000rpm、7分)。洗浄手順の合間に随時、表面への非特異的な結合を減らすために超音波処理を行った。洗浄手順の後、ビーズを遠心分離し、塊をDTT溶液(1mM)のHEPES緩衝液(pH=7.2、10mMのHEPES、150mMのNaCl)(20μL)に再懸濁し、その後随時超音波処理を行いながら、1時間インキュベートした。その後、懸濁液を遠心分離し、上清をSDS−PAGEで解析し、銀染色した。ゲル電気泳動用の試料は、製造業者の説明に従って調製した。
実施例4
実施例4では、チミジンキナーゼ(TK)を標的分子として選択した。
TKは、2−デオキシチミジンの5’−一リン酸−2’−デオキシチミジンへのリン酸化に関与する。ウレアプラズマ・ウレアリチクム(Ureaplasma urealyticum)に由来するTKの結合ポケットに関する洞察を図16に示す。
実施例4では、チミジンキナーゼ(TK)を標的分子として選択した。
TKは、2−デオキシチミジンの5’−一リン酸−2’−デオキシチミジンへのリン酸化に関与する。ウレアプラズマ・ウレアリチクム(Ureaplasma urealyticum)に由来するTKの結合ポケットに関する洞察を図16に示す。
高等生物は、化学的に非常に異なる2種類のアイソザイムであるTK1とTK2をもつ。TK1は細胞分裂性の細胞質のみに存在するが、TK2はミトコンドリアに局在し、細胞周期非依存性である。
TK1のレベルは低分化細胞や高度に増殖している細胞(例えば癌細胞)で高いため、TK1は抗癌剤の設計や診断への応用に魅力的な標的となっている。さらに、異なる種のTK1の形状(例えばヒトのTK1と細菌のTK1)を識別できる緊密なTK1結合剤が非常に関心をもたれている。
ヌクレオシドは、リボース糖又はデオキシリボース糖との核酸塩基結合を含むグリコシルアミンである(図17)。非常に重要なことに、それらはDNA鎖及びRNA鎖の構成要素として役立っている。さらにそれらは、一リン酸、二リン酸、又は三リン酸と異なる形で、多数の細胞内過程に関与している。
模式図3に示すように、チミジンキナーゼに対する結合剤をデオキシ−チミジンから合成した。
模式図3。条件:a:14(1.5当量)、NaH(1.5当量)、DMF、室温、20時間。b:1MのNaOH、MeOH/H2O、0℃、1時間。c:p−ニトロフェノール(2.5当量)、DIPCDI(3当量)、ピリジン、室温、2時間。
10−ブロモデカン酸メチルエステルを、再度、水素化ナトリウム条件を使用し、中程度の収率で核酸塩基のN3位に結合させた。TLCによって、このリンカーが他の位置にも、微量の副産物としてではあるが、連結されていることが明らかになる。18の構造をCOSY NMR実験で確認した(実験部分を参照のこと)。その後鹸化し、p−ニトロフェノールを導入してデオキシ−チミジンプローブ19を高収率で得た。
チミジンキナーゼ(TK)を検討するために、試験研究でデオキシ−チミジン(dT)プローブ19を2D10L17にコンジュゲートさせた。HPLCにより、2時間後には約80%が所望のコンジュゲートに変換されたことが示された。短期間でのスクリーニング実験用にdTを、Tris−緩衝液中で3時間かけてライブラリーペプチドのうちの8つにコンジュゲートさせた(表4)(詳細は実験部分を参照のこと)。
TKを用いた蛍光結合試験
その後、少なくとも60%のペプチドがリガンドを有していると推定されたため、溶液を濃度2μΜに希釈し、タンパク質TKを加えた。蛍光反応を15分後、45分後、2時間後、及び20時間後にスクリーニングした。最大の反応は、2時間インキュベートした後に見られた。
その後、少なくとも60%のペプチドがリガンドを有していると推定されたため、溶液を濃度2μΜに希釈し、タンパク質TKを加えた。蛍光反応を15分後、45分後、2時間後、及び20時間後にスクリーニングした。最大の反応は、2時間インキュベートした後に見られた。
4種類のペプチド、すなわち3−C15L8−dT、2−C10L17−dT、4−C10L17−dT及び3−C25L22−dTを「的中」として同定した。なぜならば、さらに当量のTKを加えても蛍光強度がそれ以上は高まらなかったためである。Kdは20nM以下であると推定される。
選抜したその他4種類のペプチド、すなわち4−C15L8−dT、3−C10L17−dT、4−C25L22−dT及び2−C37L34−dTは、1当量のTKを加えた場合と比較して、2当量のTKを加えた場合に強度の上昇を示したため、緊密な結合剤とは見なされない。
TKを用いた、ATP存在下での結合試験
緩衝液に1、2及び3当量のTKを溶解し、ATPを加えて或いは加えないで蛍光強度を測定した。ATPは生物試料中に含まれるため、ATPの導入は実際的な測定状況を表し、TKが存在するとATPはプローブと反応すると考えられる。酵素を加えて15分後、45分後及び2時間後にデータを収集した。酵素を加えて約5分後、45分後及び2時間後にMALDI−TOF用の試料を回収し、質量の変化を測定した。
緩衝液に1、2及び3当量のTKを溶解し、ATPを加えて或いは加えないで蛍光強度を測定した。ATPは生物試料中に含まれるため、ATPの導入は実際的な測定状況を表し、TKが存在するとATPはプローブと反応すると考えられる。酵素を加えて15分後、45分後及び2時間後にデータを収集した。酵素を加えて約5分後、45分後及び2時間後にMALDI−TOF用の試料を回収し、質量の変化を測定した。
3−C15L8−dT
3−C15L8−dTの強度は、ATPが存在する場合にはATPがない場合よりも高い。このペプチドはATPを加えて45分後に完全にリン酸化されることがMALDI−TOF質量分析によって分かった。一方非リン酸化ペプチドの大きなピークは、質量分析では5〜10分後に見られた。そのため、実際の結合剤はリン酸化された形態の3−C15L8−dTである。結合親和性は高かったが4−C10L17−dTほどではない。図18及び19を参照のこと。
3−C15L8−dTの強度は、ATPが存在する場合にはATPがない場合よりも高い。このペプチドはATPを加えて45分後に完全にリン酸化されることがMALDI−TOF質量分析によって分かった。一方非リン酸化ペプチドの大きなピークは、質量分析では5〜10分後に見られた。そのため、実際の結合剤はリン酸化された形態の3−C15L8−dTである。結合親和性は高かったが4−C10L17−dTほどではない。図18及び19を参照のこと。
4−C10L17−dT
ATPが存在する場合の4−C10L17−dTの強度は、ATPがない場合の強度と大きく異なった。ATP存在下では、いずれのTK濃度でも強度は類似しており、完全飽和レベルを示している。質量分析ではリン酸化されたdT−結合剤の大きなピークと非リン酸化ペプチドのより小さいピークが5〜10分後に示され、45分後には本質的に、リン酸化された結合剤のみが存在した。この結果は、リン酸化された4−C10L17−dTのTKに対する結合親和性が強いことを示している。4−C10L17−dTの蛍光スペクトルを図20及び21に示す。
ATPが存在する場合の4−C10L17−dTの強度は、ATPがない場合の強度と大きく異なった。ATP存在下では、いずれのTK濃度でも強度は類似しており、完全飽和レベルを示している。質量分析ではリン酸化されたdT−結合剤の大きなピークと非リン酸化ペプチドのより小さいピークが5〜10分後に示され、45分後には本質的に、リン酸化された結合剤のみが存在した。この結果は、リン酸化された4−C10L17−dTのTKに対する結合親和性が強いことを示している。4−C10L17−dTの蛍光スペクトルを図20及び21に示す。
4−C25L22−dT
4−C25L22−dTの強度の違いは、ATPの有無にかかわらずTKに対する結合親和性が概して良いことを示唆している。しかしながら、TKの濃度の違いによって強度は様々であり、1当量のTKで最も高い値を示している。ATP存在下では、このペプチドが5〜10分後に完全にリン酸化されたことが分かった。これは最速のリン酸化率であったが、測定中に大きな差は観測されなかった。4−C25L22−dTの蛍光スペクトルを図22及び23に示す。
4−C25L22−dTの強度の違いは、ATPの有無にかかわらずTKに対する結合親和性が概して良いことを示唆している。しかしながら、TKの濃度の違いによって強度は様々であり、1当量のTKで最も高い値を示している。ATP存在下では、このペプチドが5〜10分後に完全にリン酸化されたことが分かった。これは最速のリン酸化率であったが、測定中に大きな差は観測されなかった。4−C25L22−dTの蛍光スペクトルを図22及び23に示す。
dTを使用した「良い」結合剤の競合実験
蛍光スクリーニングの追跡実験で我々は、TKの天然の基質、すなわちデオキシ−チミジン(dT)を使用して、ペプチド−結合剤の競合を試みた。この目的のために2種類の試験を行った。これらの試験では、ペプチド結合剤に対して1、10、100、及び1000当量のdTを混合物に加えた。試験Iではまず、タンパク質を「良い」ペプチド結合剤と共に1時間インキュベートし、その後dTを加えた。いずれの例においても蛍光の低下は観測されず、このことは、このペプチド−結合剤がdTに対しては競合できないことを示している。試験IIではまず、タンパク質を異なる濃度のdTと共にインキュベートし、その後結合剤−ペプチドを加えた。すぐに蛍光の変化が観測され、このことは重ねて、ペプチド−プローブコンジュゲートがdTよりもTKに緊密に結合することを示している。
蛍光スクリーニングの追跡実験で我々は、TKの天然の基質、すなわちデオキシ−チミジン(dT)を使用して、ペプチド−結合剤の競合を試みた。この目的のために2種類の試験を行った。これらの試験では、ペプチド結合剤に対して1、10、100、及び1000当量のdTを混合物に加えた。試験Iではまず、タンパク質を「良い」ペプチド結合剤と共に1時間インキュベートし、その後dTを加えた。いずれの例においても蛍光の低下は観測されず、このことは、このペプチド−結合剤がdTに対しては競合できないことを示している。試験IIではまず、タンパク質を異なる濃度のdTと共にインキュベートし、その後結合剤−ペプチドを加えた。すぐに蛍光の変化が観測され、このことは重ねて、ペプチド−プローブコンジュゲートがdTよりもTKに緊密に結合することを示している。
試験I及び試験II両方の蛍光スペクトルを図24、25、26及び27に図示する。青色の曲線はデオキシ−チミジンを含むペプチドの蛍光の吸光度を表し、桃色の曲線は1当量のTKを加えたペプチド−dTコンジュゲートについて測定した蛍光の吸光度に相当する。緑色の曲線は試験Iの結果であり、橙色の曲線は試験IIの結果である。
実験項
一般
装置
クロマトグラフィー
薄層クロマトグラフィー(TLC):
シリカゲル薄層クロマトグラフィーは、Flukaのシリカゲル(254nmで蛍光測定、0.2mm厚、アルミニウム板)を使用して行った。可視化はUV光(254nm)で、及び/又はプレートをアニスアルデヒド(10mLのp−アニスアルデヒド、10mLの濃H2SO4、2mLの濃酢酸、180mLのエタノール)で染色することによって行った。
一般
装置
クロマトグラフィー
薄層クロマトグラフィー(TLC):
シリカゲル薄層クロマトグラフィーは、Flukaのシリカゲル(254nmで蛍光測定、0.2mm厚、アルミニウム板)を使用して行った。可視化はUV光(254nm)で、及び/又はプレートをアニスアルデヒド(10mLのp−アニスアルデヒド、10mLの濃H2SO4、2mLの濃酢酸、180mLのエタノール)で染色することによって行った。
フラッシュクロマトグラフィー(FC):
フラッシュクロマトグラフィー(FC)はシリカゲル(Matrexシリカゲル60Å、35〜70μm、アミコン)を使用して行った。
フラッシュクロマトグラフィー(FC)はシリカゲル(Matrexシリカゲル60Å、35〜70μm、アミコン)を使用して行った。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):
オリゴヌクレオチドのHPLC精製は、Varian ProStarシステムで逆相の分析用及び/又は分取用C−18カラムを使用して行った。溶媒A:H2O(90%)+ACN(10%)+TFA(0.1%)。溶媒B:ACN(90%)+H2O(10%)+TFA(0.1%)。
オリゴヌクレオチドのHPLC精製は、Varian ProStarシステムで逆相の分析用及び/又は分取用C−18カラムを使用して行った。溶媒A:H2O(90%)+ACN(10%)+TFA(0.1%)。溶媒B:ACN(90%)+H2O(10%)+TFA(0.1%)。
NMR分光法
NMRスペクトルは全て、Varian Unity 400MHz分光器を使用して室温で測定した。化学シフト(δ)はppmで、重水素化されていない残留溶媒のピーク(CHCl3:7.27ppm、CHD2OD:3.35ppm、d6−DMSO:2.49ppm)との相対値として報告する。結合定数Jは、Hzで示す。多重度は以下のように略す:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=広幅。
NMRスペクトルは全て、Varian Unity 400MHz分光器を使用して室温で測定した。化学シフト(δ)はppmで、重水素化されていない残留溶媒のピーク(CHCl3:7.27ppm、CHD2OD:3.35ppm、d6−DMSO:2.49ppm)との相対値として報告する。結合定数Jは、Hzで示す。多重度は以下のように略す:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=広幅。
COSY実験により、シグナルを割り当てた。
13C−NMRスペクトルは101MHzで記録した。化学シフト(δ)はppmで、中央の溶媒ピーク(CDCl3:77.0ppm)との相対値として報告する。
13C−NMRスペクトルは101MHzで記録した。化学シフト(δ)はppmで、中央の溶媒ピーク(CDCl3:77.0ppm)との相対値として報告する。
質量分析
エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI)はパーキンエルマーAPI 150 EX装置で記録した。
エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI)はパーキンエルマーAPI 150 EX装置で記録した。
MALDI−TOF−MS
ペプチドのMALDI−TOF−MSスペクトルは、アプライドバイオシステムズのVoyager-DE PROシステムで記録した。
ペプチドのMALDI−TOF−MSスペクトルは、アプライドバイオシステムズのVoyager-DE PROシステムで記録した。
蛍光分光法
蛍光の測定は、GeminiXPSプレートリーダーを使用し、NUNC(商標)のポリスチレン製96−ウェル又は384ウェルプレートで行った。プレートは使用前にプルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)でコーティングした。
蛍光の測定は、GeminiXPSプレートリーダーを使用し、NUNC(商標)のポリスチレン製96−ウェル又は384ウェルプレートで行った。プレートは使用前にプルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)でコーティングした。
SDS−PAGE
SDS−PAGEゲル電気泳動は、インビトロジェンのNuPAGE MES-SDSキットを使用して行った。インビトロジェンのSilverQuest銀染色キットVersion Fでゲルを染色した。
SDS−PAGEゲル電気泳動は、インビトロジェンのNuPAGE MES-SDSキットを使用して行った。インビトロジェンのSilverQuest銀染色キットVersion Fでゲルを染色した。
反応、化学薬品、ペプチド及びタンパク質
反応は全て、加熱したガラス容器中、N2雰囲気下で行った。溶媒は減圧下で濃縮した(液槽温度<40℃)。反応用溶媒(DMSO、DMF、ピリジン)は、アルドリッチから、王冠で蓋をされた瓶入りのものを購入した。抽出用及びFC用の溶媒は使用前に蒸留した。化学薬品は全てアルドリッチから購入した(入手可能な最高等級のもの)。
反応は全て、加熱したガラス容器中、N2雰囲気下で行った。溶媒は減圧下で濃縮した(液槽温度<40℃)。反応用溶媒(DMSO、DMF、ピリジン)は、アルドリッチから、王冠で蓋をされた瓶入りのものを購入した。抽出用及びFC用の溶媒は使用前に蒸留した。化学薬品は全てアルドリッチから購入した(入手可能な最高等級のもの)。
N−デカン酸−メチルエステル−2’−デオキシチミジン18
2’−デオキシチミジン(500mg、2.06mmol)及びブロモデカン酸メチルエステル14(800mg、3.09mmol、1.5当量)を無水DMF(5mL)に溶解し、0℃まで冷却した。NaH(油中に50〜60%、148.6mg、3.09mmol、1.5当量)をゆっくりと加えた。懸濁液をN2雰囲気下、0℃で15分間撹拌し、その後室温まで戻した。16時間後に飽和塩水を加えて反応を停止させた。水相をEtOAc(3×)で抽出し、MgSO4で有機相を乾燥し、ろ過し、その後濃縮した。FC(シリカゲル、純CH2Cl2〜CH2Cl2/MeOH、93:7)での精製により、標題化合物18(無色油、358.1mg、0.84mmol、40.7%)を主生成物として得た。
TLC(シリカゲル、97:3のCH2Cl2/MeOH)、Rf:0.21。
LR−ESI+−TOF−MS(メタノール):C21H34O7N2Naの計算値:449.49;実測値:449.0。
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6、δ(ppm)):
LR−ESI+−TOF−MS(メタノール):C21H34O7N2Naの計算値:449.49;実測値:449.0。
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6、δ(ppm)):
13C−NMR(101MHz、DMSO−d6、δ(ppm)):
N3−デカン酸−p−ニトロフェニルエステル−2’−デオキシチミジン19
2’−デオキシチミジン−誘導体18(260mg、0.61mmol)を1MのNaOH(2mL、1:1のH2O/MeOHに溶解)に溶解し、0℃で1時間撹拌した。その後、1.25MのHCl溶液(MeOHに溶解)をpHが5になるまで加えてこの溶液を中和した。溶媒を蒸発させ(25℃を越えて加熱しない)、残留物を一晩凍結乾燥した。残留物を無水ピリジン(3mL)に溶解し、p−ニトロフェノール(212.3mg、1.53mmol、2.5当量)とジイソプロピルカルボジイミド(0.28mL、1.83mmol、3当量)を加えた。黄色溶液をN2雰囲気下、室温で2時間撹拌し、その後塩水を加えて反応を停止させた。CH2Cl2で抽出し、有機相をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗生成物を得た。FC(シリカゲル、CH2Cl2〜CH2Cl2/MeOH、90:10)で精製して、標題化合物19(213.4mg、0.400mmol、65.6%)を黄色油として得た。
TLC(シリカゲル、97:3のCH2Cl2/MeOH)、Rf:0.12。
LR−ESI+−TOF−MS(メタノール):C26H35O9N3Naの計算値:556.58;実測値:556.4。
1H−NMR(400MHz、CDCl3、δ(ppm)):
LR−ESI+−TOF−MS(メタノール):C26H35O9N3Naの計算値:556.58;実測値:556.4。
1H−NMR(400MHz、CDCl3、δ(ppm)):
ペプチド構造へのヌクレオシド−プローブの結合
DMSO中におけるdT−結合剤カップリングの一般手順
ポリペプチド(3mg、0.52μmol)を、10%のピリジンを含むDMSO(1mL)に溶解し、AMP−又はdT−結合剤(3当量)を加えた。DIPEA(3μL)を加え、この溶液を室温で4〜20時間撹拌した。反応は分析用HPLCで監視した。冷ジエチルエーテルをゆっくりと加えて反応を停止した。遠心分離した後、沈殿したペプチドを水(0.01%TFAを含む)に溶解し、その後凍結乾燥した。粗ペプチドを半分取HPLCで精製し、約2mgの標的ペプチドを得た。精製した画分をMALDI−TOF−MSで分析した。
分析用HPLC:C−18カラム、10〜60%のBで30分、又は20〜80%のBで40分。
DMSO中におけるdT−結合剤カップリングの一般手順
ポリペプチド(3mg、0.52μmol)を、10%のピリジンを含むDMSO(1mL)に溶解し、AMP−又はdT−結合剤(3当量)を加えた。DIPEA(3μL)を加え、この溶液を室温で4〜20時間撹拌した。反応は分析用HPLCで監視した。冷ジエチルエーテルをゆっくりと加えて反応を停止した。遠心分離した後、沈殿したペプチドを水(0.01%TFAを含む)に溶解し、その後凍結乾燥した。粗ペプチドを半分取HPLCで精製し、約2mgの標的ペプチドを得た。精製した画分をMALDI−TOF−MSで分析した。
分析用HPLC:C−18カラム、10〜60%のBで30分、又は20〜80%のBで40分。
分取HPLC:半分取C−18カラム、10〜50%のBで40分、又は20〜90%のBで40分。
acm脱保護の一般手順
トリフルオロメタンスルホン酸銀(100当量)をTFA/アニソール(99:1)に溶解し、1mLを0℃で、acmを脱保護したポリペプチドに加えた。2時間後、反応混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。冷ジエチルエーテルでペプチドを沈殿させ、遠心分離し、上清を捨てた。銀塩を50当量のDTTと共に50%(容積率)酢酸に溶解し、室温で一晩撹拌した。acm−を脱保護したペプチドを凍結乾燥し、HPLC(10〜70%のBで30分)で精製した。
acm脱保護の一般手順
トリフルオロメタンスルホン酸銀(100当量)をTFA/アニソール(99:1)に溶解し、1mLを0℃で、acmを脱保護したポリペプチドに加えた。2時間後、反応混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。冷ジエチルエーテルでペプチドを沈殿させ、遠心分離し、上清を捨てた。銀塩を50当量のDTTと共に50%(容積率)酢酸に溶解し、室温で一晩撹拌した。acm−を脱保護したペプチドを凍結乾燥し、HPLC(10〜70%のBで30分)で精製した。
緩衝液中でのdT−結合剤カップリングの一般手順
ポリペプチド(0.5mg、0.1μmol)を1mMの濃度になるようにTris−緩衝液(0を参照のこと、97.5μL)に溶解し、AMP−又はdT−結合剤(2当量)及びDIPEA(0.5μL)を加えた。蛍光スクリーニング用のプローブを2〜4時間後に取り外した。
ポリペプチド(0.5mg、0.1μmol)を1mMの濃度になるようにTris−緩衝液(0を参照のこと、97.5μL)に溶解し、AMP−又はdT−結合剤(2当量)及びDIPEA(0.5μL)を加えた。蛍光スクリーニング用のプローブを2〜4時間後に取り外した。
蛍光実験
TKを用いた結合試験
NUNC(商標)ポリスチレン384ウェルプレート(100μL容量)とピペットチップをプルロニック(登録商標)で一晩コーティングし、その後H2Oで洗浄し、乾燥した。蛍光の測定は、Tris−緩衝液(TK試験用の緩衝液:20mMのTris/HCl、0.4MのNaCl、0.3Mのイミダゾール、2mMのDTT、50%グリセロール、pH7.6)中で行った。少なくとも60%のdT−結合剤がポリペプチドにコンジュゲートしたと仮定して(0を参照のこと)、濃度60μΜの貯蔵液を調製した。TK貯蔵液の濃度は0.10mMとした。濃度2μΜのポリペプチド(95mL)を使用した。ペプチドコンジュゲートを入れたウェルにタンパク質を加えてTKの最終濃度を2又は4μΜとした。タンパク質−結合剤混合物の蛍光強度を、タンパク質を加えていない結合剤の強度と比較した。1当量のタンパク質が存在する場合の蛍光強度が、タンパク質を加えてない場合の結合剤の蛍光強度と比較して有意に変化した場合に、標的タンパク質が結合剤によって複合体を形成したと解釈した。2μΜのタンパク質存在下で強度変化を示すが、4μΜのタンパク質存在下でそれ以上の強度変化を示さない結合剤を「的中」と考えた。90%を越える結合剤が、濃度2μΜのタンパク質と結合していると仮定すると、Kdは20nM以下であると推定される(Kd=[P][B]/[PB])。
TKを用いた結合試験
NUNC(商標)ポリスチレン384ウェルプレート(100μL容量)とピペットチップをプルロニック(登録商標)で一晩コーティングし、その後H2Oで洗浄し、乾燥した。蛍光の測定は、Tris−緩衝液(TK試験用の緩衝液:20mMのTris/HCl、0.4MのNaCl、0.3Mのイミダゾール、2mMのDTT、50%グリセロール、pH7.6)中で行った。少なくとも60%のdT−結合剤がポリペプチドにコンジュゲートしたと仮定して(0を参照のこと)、濃度60μΜの貯蔵液を調製した。TK貯蔵液の濃度は0.10mMとした。濃度2μΜのポリペプチド(95mL)を使用した。ペプチドコンジュゲートを入れたウェルにタンパク質を加えてTKの最終濃度を2又は4μΜとした。タンパク質−結合剤混合物の蛍光強度を、タンパク質を加えていない結合剤の強度と比較した。1当量のタンパク質が存在する場合の蛍光強度が、タンパク質を加えてない場合の結合剤の蛍光強度と比較して有意に変化した場合に、標的タンパク質が結合剤によって複合体を形成したと解釈した。2μΜのタンパク質存在下で強度変化を示すが、4μΜのタンパク質存在下でそれ以上の強度変化を示さない結合剤を「的中」と考えた。90%を越える結合剤が、濃度2μΜのタンパク質と結合していると仮定すると、Kdは20nM以下であると推定される(Kd=[P][B]/[PB])。
ダンシルプローブを335nmで励起し、発光を420〜600nmで記録した。測定は全て室温で行い、試料は3つ重複して準備した。ウェルを15分後、45分後、及び2時間後に測定した。
プルダウン実験
ポリスチレン・ラテックスナノ粒子(0.96μΜ、Bangs laboratories Inc.)を1mLのMQで3回洗浄し、その後プルロニックF108-PDS(Allvivo Inc.)を加えて一定に振とうさせながら、一晩室温でインキュベートした。吸着させた後、14000rpmで10分間遠心分離することで、過剰の界面活性剤を粒子から分離した。ビーズを300μLのMQで洗浄し、次いで300μLのHEPES−緩衝液1(10mMのHEPES、10mMのKCl、1mMのEDTA、pH7.9)で2回洗浄した。その後ビーズを300μLのHEPES−緩衝液1に溶解し、acmを脱保護したポリペプチド2−C10L17−AMP(約25μg)を加えて1時間反応させた。遠心分離した後、ビーズをHEPES−緩衝液2(10mMのHEPES、10mMのKCl、pH7.9)で3回洗浄した。ブロッキングペプチド(100μL、0.4mg/mL、4−C15L8K24Tfa)を加えて1時間インキュベートした。遠心分離した後、200μLのHEPES2で3回洗浄し、ビーズを200μLのHEPES2に溶解した。核呼吸細胞質基質ヒーラ抽出物(BIOTECH)(150μL)をビーズに加えて1時間インキュベートした。ビーズを遠心分離し、HEPES2(各回300μL)で6回洗浄し、その後100mMのDTT(100μL)に再懸濁して20分間インキュベートすることで、ポリペプチド−タンパク質コンジュゲートを切断した。ビーズを14000rpmで10分間遠心分離し、上清を回収した(K. Fromell, Hulting G., Ilichev A., Larsson A., Caldwell K.D., Anal. Chem. 2007, 79, 86019)。試料をSDS−PAGEで、試料緩衝液を5μL、プローブを15μLウェルに負荷して解析した。ゲルは35分間、200Vで泳動した。
ポリスチレン・ラテックスナノ粒子(0.96μΜ、Bangs laboratories Inc.)を1mLのMQで3回洗浄し、その後プルロニックF108-PDS(Allvivo Inc.)を加えて一定に振とうさせながら、一晩室温でインキュベートした。吸着させた後、14000rpmで10分間遠心分離することで、過剰の界面活性剤を粒子から分離した。ビーズを300μLのMQで洗浄し、次いで300μLのHEPES−緩衝液1(10mMのHEPES、10mMのKCl、1mMのEDTA、pH7.9)で2回洗浄した。その後ビーズを300μLのHEPES−緩衝液1に溶解し、acmを脱保護したポリペプチド2−C10L17−AMP(約25μg)を加えて1時間反応させた。遠心分離した後、ビーズをHEPES−緩衝液2(10mMのHEPES、10mMのKCl、pH7.9)で3回洗浄した。ブロッキングペプチド(100μL、0.4mg/mL、4−C15L8K24Tfa)を加えて1時間インキュベートした。遠心分離した後、200μLのHEPES2で3回洗浄し、ビーズを200μLのHEPES2に溶解した。核呼吸細胞質基質ヒーラ抽出物(BIOTECH)(150μL)をビーズに加えて1時間インキュベートした。ビーズを遠心分離し、HEPES2(各回300μL)で6回洗浄し、その後100mMのDTT(100μL)に再懸濁して20分間インキュベートすることで、ポリペプチド−タンパク質コンジュゲートを切断した。ビーズを14000rpmで10分間遠心分離し、上清を回収した(K. Fromell, Hulting G., Ilichev A., Larsson A., Caldwell K.D., Anal. Chem. 2007, 79, 86019)。試料をSDS−PAGEで、試料緩衝液を5μL、プローブを15μLウェルに負荷して解析した。ゲルは35分間、200Vで泳動した。
実施例5
この実施例では、ビタミンD結合タンパク質を標的分子として用いた。
ビタミンDファミリーの分子は、高等生物におけるカルシウム代謝及び亜リン酸代謝の制御に関連しており、また、様々なビタミンD誘導体が、くる病、骨粗鬆症、乳癌、前立腺癌、乾癬、及びアルツハイマー病等の病状に影響を与えることが示されている。ビタミンD誘導体がこれらの疾患や他の疾患に影響を及ぼすことが、ビタミンD誘導体を多数合成し、生物学的に評価する広範囲に及ぶ研究努力を加速させている。ビタミンD誘導体の生物学的な評価は生体内試験及び生体外試験の両方に関わっており、生体外試験では、様々なビタミンD誘導体の受容体タンパク質への結合能が解析されることが多い。そのような受容体タンパク質のうち、広く研究されているのはビタミンD受容体(VDR)とビタミンD結合タンパク質(DBP)の2種類である。後者は、ビタミンDとその血清中での代謝の主要な担体であり、かつ、それ自体が体内のビタミンDレベルの重要な制御因子である。健康及び疾患へのビタミンDの重要性を考慮すると、血清DBPレベルの異常が病状と関連していることは驚くに値しない(Finehout, E. J.; Franck, Z.; Choe, L. H; Relkin, N.; Lee, K. H. Ann Neurol 2007, 61, 120-129. Zhang, J.; Sokal, I.; Peskind, E. R.; Quinn, J. F.; Jankovic, J.; Kenney, C; Chung, K. A.; Millard, S. P.; Nutt, J. G.; Montine, T. J. Am J Clin Pathol 2008, 129, 526-529. Liu, X.-D.; Zeng, B.-F.; Xu, J.-G.; Zhu, H.-B.; Xia, Q.-C. Proteomics 2006, 6, 1019-1028)。アルツハイマー病、ALS、及びパーキンソン病のバイオマーカーとしての体液中のDBPレベルの使用が非常に関心をもたれている。そのため、DBPを正確かつ迅速に測定することが必要不可欠であり、本発明の分子ツールの一応用では、結合強度及び多機能性が高いことによって可能性のあるビタミンD誘導体のペプチドコンジュゲートを提供する。このようにして提供されるポリペプチドコンジュゲートは、アルツハイマー病、ALS、及びパーキンソン病並びに体液中のDBPレベルと関連する他の疾患のいずれに対しても、体液中のDBPレベル測定のバイオマーカーとして重要なツールになると考えられる。
この実施例では、ビタミンD結合タンパク質を標的分子として用いた。
ビタミンDファミリーの分子は、高等生物におけるカルシウム代謝及び亜リン酸代謝の制御に関連しており、また、様々なビタミンD誘導体が、くる病、骨粗鬆症、乳癌、前立腺癌、乾癬、及びアルツハイマー病等の病状に影響を与えることが示されている。ビタミンD誘導体がこれらの疾患や他の疾患に影響を及ぼすことが、ビタミンD誘導体を多数合成し、生物学的に評価する広範囲に及ぶ研究努力を加速させている。ビタミンD誘導体の生物学的な評価は生体内試験及び生体外試験の両方に関わっており、生体外試験では、様々なビタミンD誘導体の受容体タンパク質への結合能が解析されることが多い。そのような受容体タンパク質のうち、広く研究されているのはビタミンD受容体(VDR)とビタミンD結合タンパク質(DBP)の2種類である。後者は、ビタミンDとその血清中での代謝の主要な担体であり、かつ、それ自体が体内のビタミンDレベルの重要な制御因子である。健康及び疾患へのビタミンDの重要性を考慮すると、血清DBPレベルの異常が病状と関連していることは驚くに値しない(Finehout, E. J.; Franck, Z.; Choe, L. H; Relkin, N.; Lee, K. H. Ann Neurol 2007, 61, 120-129. Zhang, J.; Sokal, I.; Peskind, E. R.; Quinn, J. F.; Jankovic, J.; Kenney, C; Chung, K. A.; Millard, S. P.; Nutt, J. G.; Montine, T. J. Am J Clin Pathol 2008, 129, 526-529. Liu, X.-D.; Zeng, B.-F.; Xu, J.-G.; Zhu, H.-B.; Xia, Q.-C. Proteomics 2006, 6, 1019-1028)。アルツハイマー病、ALS、及びパーキンソン病のバイオマーカーとしての体液中のDBPレベルの使用が非常に関心をもたれている。そのため、DBPを正確かつ迅速に測定することが必要不可欠であり、本発明の分子ツールの一応用では、結合強度及び多機能性が高いことによって可能性のあるビタミンD誘導体のペプチドコンジュゲートを提供する。このようにして提供されるポリペプチドコンジュゲートは、アルツハイマー病、ALS、及びパーキンソン病並びに体液中のDBPレベルと関連する他の疾患のいずれに対しても、体液中のDBPレベル測定のバイオマーカーとして重要なツールになると考えられる。
最近、スペーサーを有する小分子リガンドの合成が報告された(Q.;Zhang, T.; Norberg, J.; Bergquist, L.; Baltzer. Tetrahedron 2010, 66, 4577-4586)。小分子リガンド25OHVD3(すなわち炭素原子25でヒドロキシル化されたビタミンD)の合成に最も有効な合成経路の概要を模式図4に示す。
模式図4。(a)NaIO4/RuCl3/CCl4−CH3CN−リン酸塩緩衝液/45℃/2〜4日、43%〜55%;(b)TESCl/イミダゾール/DMF/室温/一晩、97%;(c)(i)LDA/THF/−78℃/1時間;(ii)TMSCl/−78℃〜0℃;(d)Pd(OAc)2/THF−CH3CN/室温/一晩、75%(22から);(e)(i)10/t−BuLi/−85℃/Et2O/1.5時間;(ii)CuI−n−Bu3P/−85℃〜−50℃/1時間;(iii)23/−78℃/2時間、73%;(f)PPTs/アセトン−H2O/還流/17時間;(g)Ph3P=CHCO2Et/CH2Cl2/室温/一晩、83%(24から);(h)Pd−C/H2/MeOH/2時間、100%;(j)TESCl/イミダゾール/DMF/室温/6時間、97%;(k)TESCl/イミダゾール/DMF/室温/一晩、69%;(l)(i)28/n−BuLi/−78℃/40分;(ii)27/−78℃/2h、84%;(m)PPTs/アセトン−H2O/還流/3時間、100%;(n)LiOH−H2O/THF−H2O/室温/44時間;(o)p−ニトロフェノール/DCC/DMAP/CH2Cl2/室温/2.5時間、76%(30から)。
組み合わせた結合剤分子の模式図を図29に示し、その設計概念を図30に示す。
ビタミンD結合タンパク質に対する親和性を、ビアコア2000装置(ビアコア、ウプサラ、スウェーデン)を用いた表面プラズモン共鳴によって決定した。ビタミンD結合タンパク質をアミンカップリングによってCM5センサーチップ(ビアコア)の表面に固定した。固定及び相互作用試験は25℃で、10mMのHepes緩衝液(pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.005%の界面活性剤P20(ポリオキシエチレンソルビタン)を含む)(HBS−EP緩衝液、ビアコア)で行い、泳動用緩衝液にはこれに5%(容積率)のDMSOを加えた。結合剤を泳動用緩衝液で希釈し、濃度系列10〜85nMの結合剤を3分間かけて流速30μL/分で、固定したタンパク質に注入した。10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)を注入することで、タンパク質センサーの表面を効果的に再生させた。実験を少なくとも3回繰り返した。
ビタミンD結合タンパク質に対する親和性を、ビアコア2000装置(ビアコア、ウプサラ、スウェーデン)を用いた表面プラズモン共鳴によって決定した。ビタミンD結合タンパク質をアミンカップリングによってCM5センサーチップ(ビアコア)の表面に固定した。固定及び相互作用試験は25℃で、10mMのHepes緩衝液(pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.005%の界面活性剤P20(ポリオキシエチレンソルビタン)を含む)(HBS−EP緩衝液、ビアコア)で行い、泳動用緩衝液にはこれに5%(容積率)のDMSOを加えた。結合剤を泳動用緩衝液で希釈し、濃度系列10〜85nMの結合剤を3分間かけて流速30μL/分で、固定したタンパク質に注入した。10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)を注入することで、タンパク質センサーの表面を効果的に再生させた。実験を少なくとも3回繰り返した。
1:1相互作用モデルの式を実験結果に適合することによって得られた解離定数値を表5に示す。親和性が最も高かったのは4−C15L8−6C−25OHVD3(すなわち、ポリペプチドが4−C15L8、リガンドが炭素25でヒドロキシル化されているビタミンD3であって、炭素6個のスペーサーを介してリガンドがポリペプチドに連結されているリガンド−ポリペプチドコンジュゲート)であった。系列全体には係数40の差があり、このことは、親和性に及ぼすポリペプチド結合の効果をはっきりと示している。
*VD3はビタミンD3;25OHVD3は炭素25にヒドロキシル基を有するビタミンD3誘導体。
実施例6
実施例6では標的分子としてD二量体タンパク質を、リガンドとしてGPRPペプチドを選択した。
実施例6
実施例6では標的分子としてD二量体タンパク質を、リガンドとしてGPRPペプチドを選択した。
ヒト血液の凝固過程は分子事象のカスケードであり、これにはフィブリノゲンの酵素切断が含まれる。フィブリノゲンを酵素切断するとフィブリンが形成され、フィブリンは凝集して原繊維となる。原繊維はD断片部位と架橋すると不溶性のゲルを形成し、その後血液が凝固する(Furie, B., and Furie, B. C. (2005) Thrombus formation in vivo. J. Clin. Invest. 115, 3355-3362. Davie, E.W. (1964) Waterfall sequence for intrinsic blood clotting. Science 145, 1310-1312)。血塊を酵素分解すると、D二量体として知られる架橋したD断片が放出される。D二量体は通常、凝固が起こっていない血液中には存在しないため、D二量体は血栓症のバイオマーカーとなる(Lippi, G., Cervellin, G., Franchini, M., and Favaloro, E. J. (2010) Biochemical markers for the diagnosis of venous thromboembolism: the past, present and future. J Throm. Thrombolysis 30, 459-471. Wada, H, and Sakuragawa, N. (2008) Are fibrin-related markers useful for diagnosis of thrombosis? Semin. Thromb. Hemost. 34, 33-38)。血液中のD二量体濃度の測定は、認知されている一般的な診断試験であり、一般的には、血栓塞栓性疾患の可能性を排除するために用いられている(Linkins, L.-A., Bates, S. M., Ginsberg, J. S., and Kearon, C. (2004) Use of different D-dimer levels to exclude venous thromboembolism depending on clinical pretest probability. J. Throm. Haemost. 2, 1256-1260)。
生物分析用途での、特に生体外診断の分野でのD二量体レベルの測定に、D二量体タンパク質に対する特異的で高親和性の結合剤が必要とされている。診断用途では、モノクローナル抗体が最高の判断基準であり、モノクローナル抗体はタンパク質表面の特定のエピトープを認識し、高い親和性及び選択性で結合する。我々は最近、タンパク質の認識と結合に関する別の方法論を報告した。この方法は有機小分子を42−残基ポリペプチドに結合させることに基づき、この技術が平均的な抗体と同等かそれよりもよく機能する、小さくて頑強な結合剤分子を提供することが示された(Baltzer, L. (2011) Crossing borders to bind proteins-a new concept in protein recognition based on the conjugation of small organic molecules or short peptides to polypeptides from a designed set. Anal. Bioanal. Chem. 400, 1653-1664)。有機分子が有するタンパク質に対する親和性及び選択性は高くなくてよく、ポリペプチドは、いかなるタンパク質に対する親和性及び選択性をも高めるように設計された僅か16種類のメンバーの組から選択される。結合させた後、小分子リガンドとポリペプチドがC反応性タンパク質(CRP)及びヒト炭酸脱水素酵素II(HCAII)のようなタンパク質に協調して結合することが示された(Tegler, L.T., Nonglaton, G., Buttner, F., Caldwell, K., Christopeit, T., Danielson, U.H., Fromell, K., Gossas, T., Larsson, A., Longati, P., Norberg, T., Ramapanicker, R., Rydberg, J. and Baltzer, L. (2011) Powerful Protein Binders from Designed Polypeptides and Small Organic Molecules-A General Concept for Protein Recognition. Angew Chemie Int Ed. 50, 1823-1827. Enander, K., Dolphin, G., and Baltzer, L. (2004) Designed, functionalized helix-loop-helix motifs that bind Human Carbonic Anhydrase II: a new class of synthetic receptor molecules. J. Am. Chem. Soc. 126, 4464-4465. Tegler, L.T., Fromell, K., Jonsson, B.-H., Viljanen, J., Winander, C, Carlsson, J. and Baltzer, L. (2011) Polypeptide conjugate binders that discriminate between two isoforms of human Carbonic anhydrase in human blood. ChemBioChem. 12, 559-566. Andersson, T., Lundquist, M., Dolphin, G. T., Enander, K., Jonsson, B-H., Nilsson, J. W. and Baltzer, L. (2005) The binding of Human Carbonic Anhydrase II by functionalized folded polypeptide receptors. Chem. Biol. 12, 1245-1252)。ポリペプチドは結合前にはCRP又はHCAIIとはいかなる関係ももたず、かつ、独立して測定するのに十分な強度では結合しなかったが、結合剤の親和性は小分子の親和性よりも2〜4桁高かった。ポリペプチドコンジュゲートの分子量は5〜6kDの範囲内であるため、IgYの約1/30である。ポリペプチドコンジュゲートは組織化された構造をもたないため、生物標的の表面に適合する。この概念は生物学的に生成された結合剤分子とは異なる。有機小分子は頑強であり、天然の酵素によっては認識されないため、それらを官能基として使用することはタンパク質に対する高親和性結合剤の設計にとって魅力的な方法であると同時に、利用可能なペプチドプールは本質的に無制限で、相当数の配列を、例えばファージディスプレイ法によって同定することができる(Smith, G. P., and Petrenko, V. A. (1997) Phage display. Chem. Rev. 97, 391-410)。そのため、短いペプチドを有機小分子の代わりに結合させることで、緊密な結合剤を得ることができるか否かを決定することは非常に重要である。なぜならば、利用可能な結合剤候補のプールを劇的に拡大する可能性があるためである。
D二量体に対する結合剤の開発は、ペプチドを使用したポリペプチドコンジュゲートの原理の証明実験にとって、魅力的な目標である。なぜならば、D二量体は確立されたバイオマーカーであり、かつ、性質が明らかにされていてD二量体にKdが25μΜで結合することが知られている短いペプチドであるGPRPが存在するためである(Laudano, A. P., and Doolittle, R. F. (1980) Studies on synthetic peptides that bind to fibrinogen and prevent fibrin polymerization. Structural requirements, number of binding sites, and species differences. Biochemistry 19, 1013-1019. Laudano, A. P., and Doolittle, R. F. (1981) Influence of calcium ion on the binding of fibrin amino terminal peptides to fibrinogen. Science 212, 457-459)。フィブリノゲンのEドメインのGPRV配列が、フィブリンを形成する活性化したフィブリノゲンの凝集と、その後のより高度な凝集に関与し、また、D−ドメインの結合部位に特異的に結合することが分かっている(Olexa, S. A., and Budzynski, A. Z. (1980) Evidence for four different polymerization sites involved in human fibrin formation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 1374-1378. Pratt, K. P., Cote, H. C. F., Chung, D. W., Stenkamp, R. E., and Davie, E. W. (1997) The primary fibrin polymerization pocket: three-dimensional structure of a 30-kDa C-terminal γ chain fragment complexed with the peptide GLy-Pro-Arg-Pro. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 94, 7176-7181)。GPRP配列が開発され、GPRVよりも高い親和性でD二量体に結合することが分かった。D二量体とGPRPの複合体の構造が解明され、GPRP結合間隙中のアミノ酸残基への水素結合がN−末端のGly残基を伴うことが示された(Spraggon, G., Everse, S. J., and Doolittle, R. F. (1997) Crystal structures of fragment D from human fibrinogen and its crosslinked counterpart from fibrin, Nature 389, 455-462. Everse, S. J., Spraggon, G., Veerapandian, L., Riley, M., and Doolittle, R. F. (1998) Crystal structure of fragment double-D from human Fibrin with two different bound ligands. Biochemistry 37, 8637-8642)。
この実施例では、本発明に従ってGPRPペプチドを42−残基の配列として設計したこの組由来のポリペプチドと結合させると、D二量体に対する強力な結合剤が形成されることを示す(図31)。
結果及び考察
設計
図1に示すように、16メンバーの組のポリペプチドを使用した。
設計
図1に示すように、16メンバーの組のポリペプチドを使用した。
本明細書で上述したように、スペーサーの選択が結合剤開発の重要な側面である。スペーサーの大きさが、どの程度までタンパク質表面がポリペプチドに接近できるかを制御する。スペーサーの長さを伸ばすと選択性は下がるが、親和性は上がるということが直感的に予測できる。実験により、脂肪族スペーサーによって最も高い親和性が生じ、それはおそらくタンパク質との疎水性接触が付加されたためだということを示唆しているが、一方、ポリエチレングリコールスペーサーはより弱い結合を示す(Gao, J., Qiao, S., and Whitesides, G. M. (1995) Increacing binding constants of ligands to carbonic anhydrase by using "greasy tails". J. Med. Chem. 38, 2292-2301. Jain, A., Huang, S. G., and Whitesides, G. M. (1994) Lack of effect of the length of oligoglycine- and oligo(ethylene glycol)-derived para-substituents on the affinity of benzenesulfonamides for carbonic anhydrase II in solution. J. Am. Chem. Soc. 116, 5057-5062)。D二量体に対する結合剤の設計では、C反応性タンパク質との類推に基づき、GPRPのポリペプチドへの連結には炭素が6個のスペーサーを導入した。
GPRPのD二量体への結合を複合体の結晶構造から解析し、最も重要なこととして、N−末端のGlyが結合に伴われることを発見した。そのため、スペーサーをC末端のPro残基に連結させる必要があった。加えて、スペーサーを有する小分子リガンドをペプチドに連結させるために、スペーサーのカルボキシル基にGly残基を組み込んだ。これは主に、短いペプチドの固相ペプチド合成に最適な樹脂がGlyを予め負荷して提供されるため、合成を容易にするためである。
合成
ポリペプチドの合成は、既に詳細に報告されている、標準的なSPPS−Fmoc手順に従った(Tegler, L.T., Nonglaton', G., et al. (2011)、上記参照)。それらを半分取逆相HPLCで精製し、MALDI−TOF質量分析で確認した。p−ニトロフェニルエステルに変換されたGly残基で伸長されたカプリル酸スペーサーを有するGPRPも、以下の実験項で記載するように、固相で合成し、精製して確認した。結合反応はDMSO中、本質的に定量的な反応として行い、最終的な結合剤分子を精製し、上述のペプチドとして確認した(実験項を参照のこと)。
ポリペプチドの合成は、既に詳細に報告されている、標準的なSPPS−Fmoc手順に従った(Tegler, L.T., Nonglaton', G., et al. (2011)、上記参照)。それらを半分取逆相HPLCで精製し、MALDI−TOF質量分析で確認した。p−ニトロフェニルエステルに変換されたGly残基で伸長されたカプリル酸スペーサーを有するGPRPも、以下の実験項で記載するように、固相で合成し、精製して確認した。結合反応はDMSO中、本質的に定量的な反応として行い、最終的な結合剤分子を精製し、上述のペプチドとして確認した(実験項を参照のこと)。
結合剤の選択
スペーサーを有するGPRPにそれぞれのポリペプチドを結合させることで得られた16メンバーの組の結合剤候補をビアコアアッセイで評価した。このアッセイではD二量体をチップに固定し、結合剤分子を標準的な泳動用緩衝液で0、1、10及び100nMの濃度にしてチップ上に流した。得られた予備的な結果から、結合剤4D15L8−GPRP、4D10L17−GPRP、4D25L22−GPRPがD二量体に強く結合したことが示された。センサーグラムと、D二量体タンパク質と15ポリペプチドコンジュゲートとの相互作用について説明している解離定数の予測については表6及び図32を参照のこと。100nMの濃度では相当な取り込みが見られ、10nMの濃度でもいくらかの取り込みが見られたが、1nMの溶液では結合は全く見られなかった。効率化のためにペプチドの計量から結合剤溶液を調製したため、報告した濃度は20〜30%誤っている可能性がある。滴定間隔が大きいため、このことはどの結合剤が最も緊密化についての結論には影響を及ぼさないが、最良の結合剤の順位付けを不正確なものにする可能性がある。そのため、最大の取り込みだけでなく、実験データに対する1:1結合モデルの最良適合から得られたKd値に基づき、その後の結合解析には7種類の結合剤を選択した。1:1モデルの適合は決して優れたものではないため、得られたKd値の取扱いには注意が必要であるが、ビアコアによる取り込みの予測とKd「値」の予測から組み合わせた順位付けはほぼ一致した。解離定数の予測については表6を参照のこと。
スペーサーを有するGPRPにそれぞれのポリペプチドを結合させることで得られた16メンバーの組の結合剤候補をビアコアアッセイで評価した。このアッセイではD二量体をチップに固定し、結合剤分子を標準的な泳動用緩衝液で0、1、10及び100nMの濃度にしてチップ上に流した。得られた予備的な結果から、結合剤4D15L8−GPRP、4D10L17−GPRP、4D25L22−GPRPがD二量体に強く結合したことが示された。センサーグラムと、D二量体タンパク質と15ポリペプチドコンジュゲートとの相互作用について説明している解離定数の予測については表6及び図32を参照のこと。100nMの濃度では相当な取り込みが見られ、10nMの濃度でもいくらかの取り込みが見られたが、1nMの溶液では結合は全く見られなかった。効率化のためにペプチドの計量から結合剤溶液を調製したため、報告した濃度は20〜30%誤っている可能性がある。滴定間隔が大きいため、このことはどの結合剤が最も緊密化についての結論には影響を及ぼさないが、最良の結合剤の順位付けを不正確なものにする可能性がある。そのため、最大の取り込みだけでなく、実験データに対する1:1結合モデルの最良適合から得られたKd値に基づき、その後の結合解析には7種類の結合剤を選択した。1:1モデルの適合は決して優れたものではないため、得られたKd値の取扱いには注意が必要であるが、ビアコアによる取り込みの予測とKd「値」の予測から組み合わせた順位付けはほぼ一致した。解離定数の予測については表6を参照のこと。
Biaevaluationプログラムversion 3.2(ビアコア)を使用し、及び単純な1:1のラングミュア結合機序と仮定することで解離定数(Kd)を得た。
ビアコアスクリーニング実験で100RUを越える取り込みを示し、かつ、見た目のKd値が1μΜ未満の結合剤を中程度から強度の結合剤と見なし、一方、取り込みが100RU未満で、かつ、Kd値が1μΜよりも高い結合剤を弱い結合剤と見なした。弱い結合剤についてはそれ以上の検討は行わなかった。
ビアコアスクリーニング実験で100RUを越える取り込みを示し、かつ、見た目のKd値が1μΜ未満の結合剤を中程度から強度の結合剤と見なし、一方、取り込みが100RU未満で、かつ、Kd値が1μΜよりも高い結合剤を弱い結合剤と見なした。弱い結合剤についてはそれ以上の検討は行わなかった。
D二量体タンパク質と選択した7種類の結合剤との相互作用をより高い分解能で解析した。SPR相互作用解析(図33A)には、0nM(純粋な緩衝液)、5nM、10nM、20nM、40nM、80nM及び160nMの濃度の結合剤を使用し、濃度は定量的アミノ酸解析によって決定した。センサーグラムは4系列の結合剤が3系列の結合剤よりも高い親和性で結合することを示しており、このことは、より正に帯電しているポリペプチドの方が、D二量体表面の結合部位の近くに強く結合することを示唆している。結合剤分子が設計通りに結合することを示すために、ビアコアを使用して競合実験を行った。この実験では、ある濃度範囲にわたるGPRPを泳動用緩衝液に加えて、D二量体への結合を阻害した(図34)。対照として、GPRPの結合も監視した。100nMの4−D10L17−GPRPの結合は、標準的な泳動用緩衝液に溶解した1mMのGPRPによって完全に阻害され、50%阻害を示すGPRPの濃度の関数として低下した。50%阻害はGPRPの濃度が約50μΜの時に観察され、このことは、結合剤の親和性がGPRPと比較して500倍高いことに相当する。この結果は、全て設計通りに、GPRP残基が結合に重要であること、結合剤分子はGPRP結合に特異的に結合すること、及びポリペプチドがGPRPの親和性をほぼ3桁高めることを示している。表面効果の影響を受けない、溶液中での解離定数を決定するために、フルオレセイン蛍光色素分子を結合剤4−C15L8−GPRPのCys側鎖にコンジュゲートさせた。対応する結合剤分子をD二量体タンパク質で注意深く滴定し、その後データを解析し、実験結果に対する1:1複合体の解離について記述している式の最良適合を決定した(図35)。解離定数が3nMであること、すなわちGPRPテトラペプチドの溶液親和性の解離定数よりも4桁高いことが分かった(Laudano, A. P., and Doolittle, R. F. (1980)、上記参照)。
結合機能をさらに高めるために、ヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフのループ領域中にある脱保護されているCys残基を二官能性リンカーと反応させることによってポリエチレングリコールで結合したヘリックス−ループ−ヘリックス二量体を形成し、4系列の結合剤を二量体化させた。最も強力な結合剤であることが示された、3系列と4系列由来の7種類の結合剤を二量体化させ、それらのD二量体への結合をビアコアによって解析した(図33B)。取り込みの増加が観察されたことから、単量体の結合剤分子と比較すると、全ての結合剤の機能が概して向上したことが観察された。ビアコアのデータから、すなわち解離定数の低下から、親和性の実際の量的な上昇を決定することは難しい。なぜならば、実験データに1:1ラングミュアモデルが上手く当てはまらないからである。しかしながら、取り込みが明かに増加したことと、実験データに対して1:1ラングミュアモデルを適合することによって得られた解離定数は、二量体化したことによって親和性が2〜4の係数で相対的に上昇すること示唆している(表7を参照のこと)。
Biaevaluationプログラムversion 3.2(ビアコア)を使用し、及び単純な1:1のラングミュア結合機序と仮定することで解離定数(Kd)を得た。
ジスルフィド架橋は結合剤4−C2522−GPRPの機能をPEGスペーサーよりも向上させ、さらに親和性を2の係数で、従って合計してほぼ1桁高める。結合剤分子の二量体化という単純な化学的手段が、このように親和性を5〜10の係数でさらに高めることが示された。このことにより、ファージディスプレイの初期世代のペプチドから容易に入手可能な低マイクロモル〜中マイクロモルの親和性をもつペプチドから、高ピコモルの親和性をもつ、ペプチドを使用した結合剤分子を開発することができる。設計したポリペプチドにより発展したファージディスプレイペプチドを連結させると、比例して親和性が高い結合剤分子が生じると期待される。
ジスルフィド架橋は結合剤4−C2522−GPRPの機能をPEGスペーサーよりも向上させ、さらに親和性を2の係数で、従って合計してほぼ1桁高める。結合剤分子の二量体化という単純な化学的手段が、このように親和性を5〜10の係数でさらに高めることが示された。このことにより、ファージディスプレイの初期世代のペプチドから容易に入手可能な低マイクロモル〜中マイクロモルの親和性をもつペプチドから、高ピコモルの親和性をもつ、ペプチドを使用した結合剤分子を開発することができる。設計したポリペプチドにより発展したファージディスプレイペプチドを連結させると、比例して親和性が高い結合剤分子が生じると期待される。
D二量体の結合から得られたセンサーグラムは、他のタンパク質のセンサー解析から得られた図と同様に飽和を示さず、実験結果は標準的な動力学的モデルに上手く当てはまらない。一方、蛍光滴定実験の結果並びにRif(反射干渉分光法、Albrecht, C, Fechner, P., Honcharenko, D., Baltzer, L., and Gauglitz, G. (2010) A new assay design for clinical diagnostics based on alternative recognition elements. Biosens. Bioelectron. 25, 2302-2308)は予測された挙動を示し、ビアコア測定から得られた適合不良の原因は明らかになっていない。反応曲線は、単一指数関数挙動をはっきりとは示していないが、結合動態を明らかにするには、非常に複雑なモデルが必要である。それにもかかわらずこのデータは、GPRPペプチドを使用した結合剤の強力な取り込みと緊密な結合を示している。
実験項
試薬及び溶媒は全て、市販されているものを購入し、さらに精製することなく使用した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は60F254シリカと60F254酸化アルミニウム板(メルク)を使用して行い、スポットをUV光(λ=254nm)で可視化した。Varian Inova 500MHz(499.9MHz)分光計で1H−NMRスペクトルを記録し、Varian Unity 400MHz(100.6MHz)分光計で13C−NMRスペクトルを記録した。重水素化クロロホルムを溶媒として使用し、25℃でスペクトルを記録した。TMSを内部標準(1Hδ0.0)として化学シフト(δ)をppmで報告し、残留クロロホルムのシグナル(13Cδ77.0)及び結合定数(J)をHzで報告した。パーキンエルマーSCIEX API 150EX分光計で陽イオンモードを使用し、低分解能質量スペクトルを記録した。ヒトD二量体タンパク質はアブカム社(英国)から入手した。
試薬及び溶媒は全て、市販されているものを購入し、さらに精製することなく使用した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は60F254シリカと60F254酸化アルミニウム板(メルク)を使用して行い、スポットをUV光(λ=254nm)で可視化した。Varian Inova 500MHz(499.9MHz)分光計で1H−NMRスペクトルを記録し、Varian Unity 400MHz(100.6MHz)分光計で13C−NMRスペクトルを記録した。重水素化クロロホルムを溶媒として使用し、25℃でスペクトルを記録した。TMSを内部標準(1Hδ0.0)として化学シフト(δ)をppmで報告し、残留クロロホルムのシグナル(13Cδ77.0)及び結合定数(J)をHzで報告した。パーキンエルマーSCIEX API 150EX分光計で陽イオンモードを使用し、低分解能質量スペクトルを記録した。ヒトD二量体タンパク質はアブカム社(英国)から入手した。
ペプチド合成
Pioneer自動ペプチド合成機で、標準的なフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)の手順により、活性化剤としてO−(7−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロボラート(HBTU、Iris Biotech GmbH)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、アルドリッチ)を使用してペプチドを合成した。Fmoc保護基を、ピペリジン(20%)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液で脱保護した。各カップリングはFmoc−グリシン−ポリエチレングリコール−ポリスチレン(Fmoc−Gly−PEG−PS)又はFmoc−PAL−PEG−PS(アプライドバイオシステムズ)樹脂と4倍量のアミノ酸を使用し、0.1mmolのスケールで合成を行った。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を、塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)、tert−ブトキシメチル(Lys)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。配列C15L8、C10L17、C25L22及びC37L34の15、10、25及び34番目のリシン残基をそれぞれアリルオキシカルボニル(Alloc)基で直交保護することで、部位特異的に蛍光プローブを各ポリペプチドに導入することができる。N2雰囲気下、室温で、樹脂をテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)のトリクロロメタン溶液、酢酸及びN−メチルモルホリン(容積比37:2:1、樹脂1グラム当たり10mL)で2時間処理することにより、アリルオキシカルボニル基を脱保護した。樹脂をDIPEA(0.5%)のDMF溶液、ジエチルジチオカルバミン酸(0.5)のDMF溶液、DMF及びDCMで順次洗浄し、乾燥した。
Pioneer自動ペプチド合成機で、標準的なフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)の手順により、活性化剤としてO−(7−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロボラート(HBTU、Iris Biotech GmbH)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、アルドリッチ)を使用してペプチドを合成した。Fmoc保護基を、ピペリジン(20%)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液で脱保護した。各カップリングはFmoc−グリシン−ポリエチレングリコール−ポリスチレン(Fmoc−Gly−PEG−PS)又はFmoc−PAL−PEG−PS(アプライドバイオシステムズ)樹脂と4倍量のアミノ酸を使用し、0.1mmolのスケールで合成を行った。アミノ酸(Calbiochem- Novabiochem AG、Iris Biotech GmbH)の側鎖を、塩基に安定な基、すなわちtert−ブチルエステル(Asp、Glu)、トリチル(His、Asn、Gln)、tert−ブトキシメチル(Lys)及び2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Arg)で保護した。配列C15L8、C10L17、C25L22及びC37L34の15、10、25及び34番目のリシン残基をそれぞれアリルオキシカルボニル(Alloc)基で直交保護することで、部位特異的に蛍光プローブを各ポリペプチドに導入することができる。N2雰囲気下、室温で、樹脂をテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)のトリクロロメタン溶液、酢酸及びN−メチルモルホリン(容積比37:2:1、樹脂1グラム当たり10mL)で2時間処理することにより、アリルオキシカルボニル基を脱保護した。樹脂をDIPEA(0.5%)のDMF溶液、ジエチルジチオカルバミン酸(0.5)のDMF溶液、DMF及びDCMで順次洗浄し、乾燥した。
リシン側鎖のアミノ基への7−メトキシクマリン−3−カルボン酸のカップリングは、N−N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を含むカップリング混合物(比率12:6:6)によって活性化した2倍量の酸と共に、室温、DMF中でゆっくりと振とうしながら2時間かけて行った。2時間後、カップリング混合物の別の分割量を加え、反応混合物を一晩放置した。トリフルオロ酢酸(TFA)、水及びトリイソプロピルシラン(容積比95:2.5:2.5、重合体1グラム当たり10mL)の混合物と共に室温で2時間処理することによって、各ペプチドを脱保護し、樹脂から切断した。ろ過し、濃縮した後、冷ジエチルエーテルを加えてペプチドを沈殿させ、遠心分離し、ジエチルエーテルで洗浄して風乾した。粗ペプチドを逆相HPLCで、半分取Hypersil C-18 Goldカラム(孔径175Å、粒子径5Å)又は半分取Kromasil C8 Hichromカラム(孔径100Å、粒子径10Å)を使用し、0.1%のTFAを加えたアセトニトリル水溶液で徐々に勾配をかけ(アセトニトリル濃度を35から55%とし)、流速10mL/分で溶出して精製した。回収した画分をMALDI−TOF質量分析(Bruker Daltonics Ultraflex II TOF/TOF)で確認し、濃縮し、その後2回凍結乾燥した。
スペーサーをもつGPRPリガンドの合成(図36)
ヘキサペプチドリガンドの調製
C−末端のプロリン残基に6−アミノカプロン酸残基を連結することによって、GPRPリガンド用の6炭素スペーサーを合成した。グリシン(0.75mmol/g)を予め負荷したクロロトリチル樹脂上で手動SPPS(活性化用のPyBOP、2倍量のアミノ酸、及びカップリング試薬を使用したFmoc/’Bu法)を使用し、0.5mmolスケールでペプチドを合成した。アルギニン側鎖とN−末端のグリシンをそれぞれPbf及びBoc基として保護した。SPPSによって得られたヘキサペプチドをTFA(1.5%)のCH2Cl2(10mL)溶液で5分間処理して樹脂から切り出した。樹脂をTFA(1%)のCH2Cl2(2×5mL)溶液で洗浄し、ペプチドを完全に切り出した。ペプチド溶液を飽和クエン酸で洗浄し、溶液中に含まれている遊離アミン(Pbf又はBoc基の脱保護によって生じる)を除去し、MgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗残留物を活性エステルの調製に直接使用した。
ヘキサペプチドリガンドの調製
C−末端のプロリン残基に6−アミノカプロン酸残基を連結することによって、GPRPリガンド用の6炭素スペーサーを合成した。グリシン(0.75mmol/g)を予め負荷したクロロトリチル樹脂上で手動SPPS(活性化用のPyBOP、2倍量のアミノ酸、及びカップリング試薬を使用したFmoc/’Bu法)を使用し、0.5mmolスケールでペプチドを合成した。アルギニン側鎖とN−末端のグリシンをそれぞれPbf及びBoc基として保護した。SPPSによって得られたヘキサペプチドをTFA(1.5%)のCH2Cl2(10mL)溶液で5分間処理して樹脂から切り出した。樹脂をTFA(1%)のCH2Cl2(2×5mL)溶液で洗浄し、ペプチドを完全に切り出した。ペプチド溶液を飽和クエン酸で洗浄し、溶液中に含まれている遊離アミン(Pbf又はBoc基の脱保護によって生じる)を除去し、MgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗残留物を活性エステルの調製に直接使用した。
結合に使用する活性エステルの調製
粗ヘキサペプチドを無水CH3CN(10mL)に溶解し、0℃で撹拌した。ピリジン(2mL)、DIC(0.3mL、4当量)及びp−ニトロフェノール(0.28g、4当量)をペプチド溶液に加え、15時間(一晩)撹拌し続けた。反応混合物を減圧濃縮し、残留物をCH2Cl2(50mL)に溶解し、その後飽和クエン酸(2×50mL)で洗浄した。この活性エステルのCH2Cl2溶液をMgSO4で乾燥し、蒸発させて溶液の体積を10mLまで減らした。粗生成物をシリカゲル(60〜90メッシュ)カラムクロマトグラフィーで、アセトン(0〜100%)のCH2Cl2溶液で溶出して精製した。ペプチドの活性エステルを白色固体として得た(150mg、全収率30%)。
粗ヘキサペプチドを無水CH3CN(10mL)に溶解し、0℃で撹拌した。ピリジン(2mL)、DIC(0.3mL、4当量)及びp−ニトロフェノール(0.28g、4当量)をペプチド溶液に加え、15時間(一晩)撹拌し続けた。反応混合物を減圧濃縮し、残留物をCH2Cl2(50mL)に溶解し、その後飽和クエン酸(2×50mL)で洗浄した。この活性エステルのCH2Cl2溶液をMgSO4で乾燥し、蒸発させて溶液の体積を10mLまで減らした。粗生成物をシリカゲル(60〜90メッシュ)カラムクロマトグラフィーで、アセトン(0〜100%)のCH2Cl2溶液で溶出して精製した。ペプチドの活性エステルを白色固体として得た(150mg、全収率30%)。
ビアコア測定
固定。固定の前に、D二量体タンパク質の保存用緩衝液を10mMのNaOAc(pH4.6、NAP5(GE Healthcare Bio-Sciences、ウプサラ、スウェーデン)を含む)に変えた。その後タンパク質を10mMのNaOAc(pH4.6)でさらに希釈し、濃度を約32μg/mLとした。HBS−EP(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA及び0.005%のP20)(GE Healthcare Bio-Sciences、ウプサラ、スウェーデン)を泳動用緩衝液とし、D二量体タンパク質をアミンカップリングでセンサーチップ表面に共有結合で固定した。EDC/NHS(200mMのl−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/50mMのN−ヒドロキロスクインイミド)(GE Healthcare Bio-Sciences、ウプサラ、スウェーデン)溶液を7分間注入することで、CM5センサーチップの表面を活性化した。活性化表面上にD二量体タンパク質を流速5μL/分で1.5分間注入し、その後、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を7分間注入し、残留した活性エステルを失活させた。最終的な固定レベルは6000〜7500レゾナンスユニット(RU)の間であった。
固定。固定の前に、D二量体タンパク質の保存用緩衝液を10mMのNaOAc(pH4.6、NAP5(GE Healthcare Bio-Sciences、ウプサラ、スウェーデン)を含む)に変えた。その後タンパク質を10mMのNaOAc(pH4.6)でさらに希釈し、濃度を約32μg/mLとした。HBS−EP(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA及び0.005%のP20)(GE Healthcare Bio-Sciences、ウプサラ、スウェーデン)を泳動用緩衝液とし、D二量体タンパク質をアミンカップリングでセンサーチップ表面に共有結合で固定した。EDC/NHS(200mMのl−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/50mMのN−ヒドロキロスクインイミド)(GE Healthcare Bio-Sciences、ウプサラ、スウェーデン)溶液を7分間注入することで、CM5センサーチップの表面を活性化した。活性化表面上にD二量体タンパク質を流速5μL/分で1.5分間注入し、その後、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を7分間注入し、残留した活性エステルを失活させた。最終的な固定レベルは6000〜7500レゾナンスユニット(RU)の間であった。
相互作用解析。D二量体タンパク質と結合剤との相互作用、及び表面の競合実験をビアコア2000装置(GE Healthcare Bio-Sciences、ウプサラ、スウェーデン)で試験し、25℃で平衡状態にした。CM5センサーチップ(研究用等級、ビアコア)と試薬はGE Healthcare Bio-Sciences(ウプサラ、スウェーデン)から入手した。固定したD二量体タンパク質とポリペプチドコンジュゲートとの間の相互作用を直接試験する場合には、HBS−EPを泳動用緩衝液として使用した。泳動用緩衝液でポリペプチドコンジュゲートを希釈し、最初のスクリーニングとして、濃度系列が5〜160nM又は1〜100nMの固定したタンパク質に注入して3分間接触させた。試料の分散を最小限に抑えるために、試料は流速50μL/分で注入した。解離の10分後に10mMのグリシン(pH3.0)を30秒注入して表面を再生した。注入は全て連続して行い、最初に失活させたデキストラン表面を、次いで固定した表面を通過させた。各測定系列の合間にブランクを注入し、データから除算した。特に明記しない限り実験は少なくとも2回行った。表面競合試験では、結合剤4−D10L17−GPRP(100nM)と様々な濃度(0〜1mMの範囲)のGPRPとの一連の混合物を、固定したD二量体タンパク質上に注入した。Biaevaluationプログラムversion 3.2(ビアコア)を使用し、及び単純な1:1のラングミュア結合機序と仮定することで解離定数(Kd)を得た。
フルオレセインの4−D15L8−GPRPへの結合
ループ領域に遊離システインを含む4−D15L8−GPRP(1.27mg、22.0μmol)を、0.1MのNaPi(pH7.3、1mM)に溶解し、N2ガスで泡立てた6MのGuHCl(210μL)に溶解し、4モル当量(0.38mg)のフルオレセイン−5−マレイミド(Pierce Biotechnology、10μLのDMSOに予め溶解させておいた)と室温で4時間インキュベートした。反応混合物をその後、分析用逆相HPLCでGrace VydacのMS Qgカラム(4.6x150mm)を使用し、徐々に勾配をかけて(ACN:H2O、ACNを30から55%)精製した。生成物をMALDI−MS(Voyager PRO、アプライドバイオシステムズ)で、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸と2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−安息香酸の混合物をマトリックスとして使用してポジティブモードで確認した。反応が完了した後、フルオレセイン−ペプチドコンジュゲートを逆相HPLCで精製し、画分をまとめて蒸発させ、凍結乾燥した。
ループ領域に遊離システインを含む4−D15L8−GPRP(1.27mg、22.0μmol)を、0.1MのNaPi(pH7.3、1mM)に溶解し、N2ガスで泡立てた6MのGuHCl(210μL)に溶解し、4モル当量(0.38mg)のフルオレセイン−5−マレイミド(Pierce Biotechnology、10μLのDMSOに予め溶解させておいた)と室温で4時間インキュベートした。反応混合物をその後、分析用逆相HPLCでGrace VydacのMS Qgカラム(4.6x150mm)を使用し、徐々に勾配をかけて(ACN:H2O、ACNを30から55%)精製した。生成物をMALDI−MS(Voyager PRO、アプライドバイオシステムズ)で、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸と2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−安息香酸の混合物をマトリックスとして使用してポジティブモードで確認した。反応が完了した後、フルオレセイン−ペプチドコンジュゲートを逆相HPLCで精製し、画分をまとめて蒸発させ、凍結乾燥した。
蛍光分光法による親和性の決定
Fluoromax Gemini XPSマイクロプレートリーダーを用い、25℃で蛍光スペクトルを記録した。495nMの波長で励起し、510〜600nMの領域の発光を監視した。実験を設定する前に、全てのプラスチック製品(試験管、チップ及びマイクロプレート)をプルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)の1%水溶液で12時間かけてコーティングし、その後、非特異的な表面相互作用を最小限に抑えるために水でよく洗浄した。親和性の決定には、N2ガスで泡立てたリン酸緩衝生理食塩水(50mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、pH7.5)に溶解した100nMのフルオレセイン標識4−D15L8−GPRP試料を、黒色の384ウェルマイクロプレート(Nunc)に準備した。次に、D二量体溶液(アブカム、英国、3.0μΜ、0.6μΜ、0.1μΜ及び10nM)の分割量を1.0nM〜1.5μΜの範囲でウェルに加えた。リン酸緩衝生理食塩水で3.0μΜの貯蔵液を希釈し、0.6μΜ〜10nMの溶液とした。全ウェルの総量は100μLで、緩衝液で容量を補った。525nmの蛍光強度をタンパク質総濃度の関数として監視し、1:1結合モデルを前提とし、実験結果に以下の式を適合させて解離定数(Kd)を決定した。
Fluoromax Gemini XPSマイクロプレートリーダーを用い、25℃で蛍光スペクトルを記録した。495nMの波長で励起し、510〜600nMの領域の発光を監視した。実験を設定する前に、全てのプラスチック製品(試験管、チップ及びマイクロプレート)をプルロニック(登録商標)F108NF Prillポロキサマー338(BASF)の1%水溶液で12時間かけてコーティングし、その後、非特異的な表面相互作用を最小限に抑えるために水でよく洗浄した。親和性の決定には、N2ガスで泡立てたリン酸緩衝生理食塩水(50mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、pH7.5)に溶解した100nMのフルオレセイン標識4−D15L8−GPRP試料を、黒色の384ウェルマイクロプレート(Nunc)に準備した。次に、D二量体溶液(アブカム、英国、3.0μΜ、0.6μΜ、0.1μΜ及び10nM)の分割量を1.0nM〜1.5μΜの範囲でウェルに加えた。リン酸緩衝生理食塩水で3.0μΜの貯蔵液を希釈し、0.6μΜ〜10nMの溶液とした。全ウェルの総量は100μLで、緩衝液で容量を補った。525nmの蛍光強度をタンパク質総濃度の関数として監視し、1:1結合モデルを前提とし、実験結果に以下の式を適合させて解離定数(Kd)を決定した。
Fobsは観測された蛍光強度、FboundはD二量体に結合したペプチドの蛍光、Ffreeは遊離ペプチドの蛍光であり、かつ、[Ddim]は遊離D二量体の濃度である。[Ddim]は以下の式から導くことができる。
式中、[P]totはペプチドの総濃度であり、[Ddim]totはD二量体の総濃度である。適合は、IGOR Pro 6.0ソフトウェア(Wave Metrics Inc.)を使用して行った。
Claims (15)
- 標的分子に結合可能な分子の提供方法で使用するための分子ツールであって、前記ツールは、配列番号1〜32のいずれか1個又は数個に従う複数のポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、標的分子に結合可能で、該ポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置のアミノ酸にアミド結合で連結されているリガンド、及び標的分子への結合を検出するためのもので、該ポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置のアミノ酸にアミド結合で連結されているレポーター基を有する、分子ツール。
- 該ポリペプチドが、配列番号1〜32から選択される少なくとも2個の異なる配列番号に従うものである、請求項1に記載の分子ツール。
- 各ポリペプチドの該リガンドがリシン、オルニチン及び2,4−ジアミノ酪酸から独立して選択される、8、17、22、又は34番目のアミノ酸に連結されており、かつ、各ポリペプチドの該レポーター基がリシン、オルニチン及び2,4−ジアミノ酪酸から独立して選択される、15、10、25又は37番目のアミノ酸に連結されている、請求項1又は2に記載の分子ツール。
- 標的分子に結合可能なリガンド−ポリペプチドコンジュゲートのスクリーニング方法であって、
配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチドを含む少なくとも1つのコンジュゲート分子を提供する工程、
該標的分子と該コンジュゲート分子を接触させる工程;及び
レポーター基由来のシグナルを検出する工程を含み、
該ポリペプチドは該標的分子に対するリガンドを有し、該リガンドはこのリガンドとアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合によって連結されており、該アミノ酸は該ポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置にあり、かつ、該ポリペプチドは該レポーター基を有し、該レポーター基はこのレポーター基とアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結されており、該アミノ酸は該ポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置にある、スクリーニング方法。 - 配列番号1〜32から選択される異なるポリペプチド配列を有する2〜16個のコンジュゲート分子の組を提供する工程を含む、請求項4に記載の方法。
- 配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが標的分子に対するリガンドを有し、当該リガンドが、8、17、22、及び34番目から選択される位置に、アミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結している、リガンド−ポリペプチドコンジュゲート。
- 治療で使用するための、請求項6に記載のリガンド−ポリペプチドコンジュゲート。
- 請求項6又は7に記載のリガンド−ポリペプチドコンジュゲート、及び薬学上許容可能な担体を含む医薬組成物。
- 配列番号1〜32から選択される配列を有するポリペプチド。
- 標的分子と結合可能なリガンドが、該リガンドとアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結されており、該アミノ酸が該ポリペプチド配列の8、17、22、及び34番目から選択される位置にある、請求項9に記載のポリペプチド。
- 該標的分子がタンパク質又はポリペプチドである、請求項10に記載のポリペプチド。
- 標的分子への結合を検出するためのレポーター基が、該レポーター基とアミド結合を形成することができるアミノ酸とアミド結合で連結されており、該アミノ酸が該ポリペプチド配列の15、10、25及び37番目から選択される位置にある、請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
- 請求項9〜12のいずれか1項に記載のポリペプチドから独立して選択される2つのポリペプチドの二量体である、ポリペプチド。
- 請求項9〜13のいずれか1項に記載の少なくとも2種の異なるポリペプチドを含む、複数のポリペプチド。
- 配列番号1〜32から選択される異なる配列番号を有するポリペプチドを含む、請求項14に記載の複数のポリペプチド。
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