(関連出願)
本願は、米国仮特許出願第61/376,851号(2010年8月25日出願)の優先権を主張し、この出願は、その全体が参照することにより本明細書に援用される。
(分野)
有意な六重極および八重極成分を有する実質的に四重極の電場を提供するための方法およびシステムに関する。
(緒言)
イオントラップ質量分析計の性能は、例えば、空間電荷密度等のいくつかの異なる要因によって制限され得る。したがって、改良型質量分析計システム、ならびにこれらの制限に対処する操作の方法が望ましい。
本発明の実施形態の側面によれば、線形イオントラップの中でイオンを処理する方法が提供され、方法は、第1の軸と、第1の軸に沿った第1の軸ポテンシャルと、第1の軸と直交する第2の軸と、第2の軸に沿った第2の軸ポテンシャルとを有する、2次元の非対称で実質的に四重極の電場を確立し、維持するステップと、次いで、イオンを電場に導入するステップとを含む。第1の軸ポテンシャルは、振幅A21の四重極高調波と、振幅A31の六重極高調波と、振幅A41の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A41は、A21の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A41は、A21の0.01%よりも大きく、A41は、A21の5%およびA31の33%未満であり、第1の軸ポテンシャルに存在する振幅An1を有する任意の他の高次高調波について、n1は、4よりも大きい任意の整数であり、A31は、An1の10倍よりも大きい。第2の軸ポテンシャルは、振幅A22の四重極高調波と、振幅A42の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A42は、A22の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A42は、A22の0.01%よりも大きく、A42は、A22の5%未満であり、電場の第2の軸ポテンシャルに存在する振幅An2を有する任意の他の高次高調波について、n2は、4以外の2よりも大きい任意の整数であり、A42は、An2の10倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の30倍よりも大きい。本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の50倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、線形イオントラップは、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置され、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している、第1の対の補助電極および第2の対の補助電極を含む4つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面と直交する。電場を確立し、維持するステップは、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、および第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するステップを含む。方法はさらに、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、線形イオントラップは、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、第1の対のロッドのうちの1つと第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置され、第1の対のロッドのうちの1つまたは第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している、対の補助電極を含む2つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に直角である。電場を確立し、維持するステップは、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、および対の補助電極にDC電圧を提供するステップを含む。方法はさらに、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の位相、対の補助電極に提供されるDC電圧、およびiii)対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、X軸を含む。種々の実施形態では、非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、Y軸を含む。
本発明の実施形態の別の側面によれば、i)中心軸と、ii)第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、iii)第2の対のロッドであって、第2の対の中のロッドの各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、iv)第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置される、4つの補助電極と、v)第1の対のロッド、第2の対のロッド、および4つの補助電極に接続される、電圧供給とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。4つの補助電極は、第1の対の補助電極と、第2の対の補助電極とを含み、第1の対の補助電極は、第1の対のロッドまたは第2の対のロッドのいずれか一方の中の単一のロッドによって分離され、かつそれに隣接する。電圧供給は、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、iv)第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、およびv)第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するように動作可能である。
本発明の実施形態の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、第2の対のロッドであって、第2の対のロッドの各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドのうちの1つと第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置される、2つの補助電極であって、2つの補助電極は、対の補助電極を含み、対の補助電極は、第1の対のロッドからの単一のロッドおよび第2の対のロッドからの単一のロッドによって分離され、かつそれらに隣接する、2つの補助電極と、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および2つの補助電極に接続される、電圧供給とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。電圧供給は、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、対の補助電極に補助RF電圧を、およびiv)第1の対の補助電極にDC電圧を提供するように動作可能である。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するX軸を含む。種々の実施形態では、非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するY軸を含む。
当業者は、以下で説明される図面が、例示目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲をいかようにも制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態の側面による、補助電極を含むQ−trap、Q−q−Q線形イオントラップ質量分析計システムを概略図で図示する。
図2は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図3は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの第2の変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図4は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの種々の実施形態による、線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図5は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの種々の実施形態による、線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図6aは、0.2msの充填時間とともに図1の線形イオントラップ質量分析計システムを使用して生成される、全質量スペクトルを図示する。
図6bは、図1の線形イオントラップ質量分析計システムが図2の第1の構成に従って操作されるときに、図6aの全質量スペクトルから得られた261ダルトンの質量の周囲で拡大された、異なる充填時間の重複質量スペクトルを図示する。
図6cは、図1の線形イオントラップ質量分析計システムが図4の構成に従って操作されるときに、図6aの全質量スペクトルから得られた261ダルトンの質量の周囲で拡大された、異なる充填時間の重複質量スペクトルを図示する。
図7は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの第3の変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図8は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの第4の変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図1を参照すると、本発明の実施形態の側面による補助電極12を含むQTRAP Q−q−Q線形イオントラップ質量分析計システム10が概略図で図示されている。質量分析計の動作中、イオンは、スキマー13を通って真空チャンバ14の中に受け入れられることができる。線形イオントラップ10は、細長い4組のロッドQ0、四重極質量分析計16、衝突セル18、および線形イオントラップ20、ロッドセットQ0、IQ2の後ろのオリフィス板IQ1、四重極質量分析計16と衝突セル18との間のオリフィス板IQ2、および衝突セル18と線形イオントラップ20との間のオリフィス板IQ3を含む。付加的な1組の短く太いロッド21が、オリフィス板IQ1と四重極質量分析計16との間に提供されることができる。
場合によっては、隣接する対のロッドセットの間の漏れ電場が、イオンの流動を歪曲し得る。細長いロッドセットQ1の中にイオンの流動を集中させるために、短く太いロッド21がオリフィス板IQ1と四重極質量分析計16との間に提供されることができる。選択的に、太く短いロッドがまた、衝突セルQ2の上流および下流に含まれることもできる。
イオンは、約8x10−3トルの圧力で維持され得るQ0の中において衝突冷却されることができる。四重極質量分析計16は、従来の伝送RF/DC四重極質量分析計として動作することができる。衝突セル18の中で、イオンは、より小さい質量の副産物に断片化されるように、衝突ガスと衝突することができる。線形イオントラップ20はまた、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、Londry and Hagerによる、Journal of the American Association of Mass Spectrometry,2003,14,1130−1147において、および米国特許第6,177,688号において、多かれ少なかれ説明されているように、質量選択的な軸方向放出を伴うか、または伴わない線形イオントラップとして操作されることもできる。
イオンは、四重極ロッドに印加される半径方向のRF電圧および端部開口レンズに印加される軸方向のDC電圧を使用して、線形イオントラップ20の中に捕捉されることができる。加えて、示されるように、線形イオントラップ20はまた、補助電極12も含む。
イオン集団密度が線形イオントラップ内において増加するにつれて、空間電荷効果が質量精度を低減させ得る。したがって、線形イオントラップ質量分析計の動作は、質量精度または分解能に関してトラップの分析性能に影響を及ぼすことなく分析することができる空間電荷またはイオンの総数によって制限され得る。
本発明の実施形態の側面によれば、補助電極12は、線形イオントラップ20の四重極ロッドアレイによって提供される主要なRF四重極電場に加えて、六重極および八重極のRFならびに静電場を生成するために、線形イオントラップ20内で使用することができる。これらの電場の非調和性は、放出過程中にイオントラップの内側のイオン雲の動態を変化させることができ、質量精度を向上させるために、空間電荷の悪影響を低減することができる。これらの補助電極は、図1に示されたものとは異なる状況で使用することができ、図1の設定は、例示目的のみで示されている。例えば、そのような非線形イオントラップは、トリプル四重極、QqTOF、またはトラップTOF等のタンデムMS/MSシステムの中の前駆イオンセレクタとして、MS/MS構成のプロダクトイオン分析器として、または独立型質量分析計として使用することができる。
図1は、線形イオントラップ20内における補助電極12の可能な軸方向位置を示す。具体的には、補助電極12は、線形イオントラップ20の抽出領域内にある。図1の実施形態等のいくつかの実施形態では、抽出領域は、線形イオントラップ20の長さの半分未満にわたって延在する。図2を参照すると、線形イオントラップ20に対する補助電極12の特定の変形例の半径方向位置が示されている。図2の変形例では、補助電極12は、線形イオントラップ20の中心軸から離間している長方形の基礎部と、長方形の基礎部から線形イオントラップ20の中心軸に向かって延在する長方形の上部とを含むT字形電極である。当業者にとって明白であるように、他の電極構成も使用することができる。例えば、限定することなく、T字形電極の長方形の上部が保持される場合があるが、この長方形の上部を載置するために、長方形の基礎部以外の何らかの他の手段を使用することができる。代替として、T字形電極は、全体として、円筒電極と置換されることができる。そのような実施形態では、円筒電極は、一般的には、主要なロッド26、28の半径よりも小さい半径を有する。
図2の変形例では、主要駆動電圧供給24は、示されるような駆動RF電圧VcosΩtを供給することができる。当技術分野で公知であるように、電圧供給24は、第1の周波数Ωで、かつ第1の位相において第1の対のロッド26に第1のRF電圧−VcosΩtを提供するための第1のRF電圧源24aを含むことができる一方で、電圧供給24はまた、再び第1の周波数Ωで、かつ第1の対のロッド26に印加される第1の電圧と反対の位相において第2の対のロッド28に第2のRF電圧VcosΩtを提供するように動作可能である第2のRF電圧源24bも含むことができる。図2に示される変形例では、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の両方に提供されるRF電圧の大きさは同じであるが、選択的に、いくつかの実施形態では、これらの電圧は、最大で10%異なってもよい。
示されるように、電圧供給24はまた、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の両方に対して等しくなり得るロッドオフセット電圧ROをロッドに提供する。一般的には、このロッドオフセット電圧ROは、線形イオントラップ内に閉じ込められているイオンと極性が反対のDC電圧である。
図2に示されるように、補助電極12は、Y軸の左側に補助電極対12aを、Y軸の右側に補助電極対12bを含む。補助電極12aは、別個または独立の電力供給30に連結されることができる一方で、補助電極12bは、第2の独立電力供給34に連結されることができる。示されるように、第2の独立電力供給34が、DC電圧DC2のみを補助電極12bに供給する一方で、独立電力供給30は、主要電極またはロッド26または28に提供されるRF電圧(VcosΩt)と同じ周期または周波数のRF電圧成分Ucos(Ωt+φ)とともに、DC電圧DC1を電極12aに供給する。示されるように、補助電極12aに印加されるRF電圧は、主要電極26および28に提供されるRF電圧に対してφだけ位相シフトされている。この位相シフトは、いくつかの実施形態では、下流RF増幅器に連結される位相変数全域通過フィルタとなり得る位相コントローラによって提供されることができる。
また、図2に示されるように、双極の励起AC電圧は、例えば、米国特許第6,177,688号で説明されているように、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するために、例えば、補助AC電圧源32によって第1の対のロッド26に提供されることができる。選択的に、双極励起信号によって励起される選択されたイオンは、軸方向レンズ33(図1に示される)を通り越えて検出器36へと軸方向に放出されて、質量スペクトルを生成することができる。代替として、これらのイオンは、さらなる処理のために、下流ロッドセットに伝送されることができる。例えば、イオンは、断片化され、下流質量分析計の中で分析されることができる。当技術分野で公知であるように、補助電圧源32によって提供されるAC電圧はしばしば、第1の周波数Ωよりもはるかに低い周波数となり得る。
ロッド26および28に対して、図2に示される非対称構成の補助電極12aおよび12bを提供することによるが、補助電極12bではなく補助電極12aのみに印加された位相シフト電圧によって、2次元の非対称で実質的に四重極の電場が提供されることができる。この非対称で実質的に四重極の電場は、図2に示されるように、一方の補助電極12aを他方の電極12aから分離するX軸と、補助電極12aを補助電極12bから分離するY軸とを含む。X軸およびY軸は、線形イオントラップ20および線形イオントラップ質量分析計システム10の両方の中心軸において交差する。図2の実施形態では、補助AC電圧源32からの双極励起を、第2の対のロッド28ではなく、この第1のX軸によって二等分される第1の対のロッド26のみに提供することができるので、X軸または第1の軸はまた、励起面と呼ばれることもできる。
上記で説明された非対称様式で電圧を印加することによって、2次元電場のX軸およびY軸に沿って異なるポテンシャルを提供することにより、非対称性を提供することができる。つまり、X軸上のポテンシャルは、四重極成分に加えて、十二重極、十重極、八重極、六重極、および双極の成分を含み得る。六重極成分A3xは、最も強い高次成分であり得て、八重極成分A4xよりも少なくとも3倍強く、nが4よりも大きい整数である高次多極Anxよりも50倍以上強い。双極成分は、六重極成分A3xよりも約10倍強くあり得る。
対照的に、Y軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分A2yに加えて、主に、八重極成分A4y、八重極成分A4yの5%未満の振幅を有する1つおきの高次成分(A3yおよびAny、nyは4よりも大きい整数である)を含むことができる。
これらの多極成分の最大値は、位相差が0あるいは+または−180°であるときに得られることができる。位相φは、四重極または線形イオントラップ20の内側の電場の要因となる付加的な多極成分の極性、ならびに各電場成分と主要な四重極電場との間の実際の比率を決定することができる。実験結果は、約60°の位相シフトが良好な空間電荷公差を提供することを示す。しかしながら、電極整列に依存して、最適な位相シフトは、ある程度システムの間で変化し得る。さらに、電気的干渉およびプローブ静電容量により、実際のφ値は、この測定値とは異なる場合がある。
選択的に、低減した感度を犠牲にして、優れたピーク分解能を提供するために、位相シフトは、上記で説明された最適位相シフトから、より高い値に同調されることができる。より高い位相シフトにおいて、補助電極12aにおけるRFの振幅は、質量精度を失うことなく増加させることができる。例えば、160°の位相シフトおよび最適値よりも75%高いRF振幅Uにおいて、分解能を2倍増加させることができる一方で、感度は、200Daから300Daまでの質量範囲で40%だけ低下し得る。
加えて、主要RFの平衡(第1のRF電圧および第2のRF電圧の相対的な大きさである、これら2つの大きさは同じである必要はない)はまた、補助電極に提供される最適位相シフトおよびRF振幅の範囲を画定することに関与することにより、特定の質量について、質量分解能と感度との間で特定のトーレドオフを達成することができる。
また、補助電極12に印加される最適RF電圧、および主要ロッド26、28に印加される主要駆動RF電圧に対する位相シフトは、四重極アレイ上のRF平衡だけでなく、励起qまたは周波数Ωにも依存し得る。前述の実施例では、励起qは0.823であった。実験的に、励起qが0.823から0.742まで変化させられたときに、質量精度に対する所望の位相シフトは37度変化したことが観察されている。より正確には、所望の位相シフトは、37度増加した。より一般的に、位相シフトは、i)第1のRF電圧の大きさ、i)第2のRF電圧の大きさ、およびiii)第1のRF電圧の第1の周波数(第2のRF電圧の第2の周波数でもある)といった、変数のうちの1つ以上が変化させられたときに、質量精度を向上させるために調整され得る。
双極補助信号を使用して、イオンがそれらの基本永続周波数ω0=βΩ/2で励起され、ここで、例えば、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる米国特許第7,034,293号で説明されているように、Ωは、RF駆動の角周波数であり、βは、マシュー安定性パラメータaおよびqの関数である。
ロッド26および28(図2参照)に印加される電圧が、それぞれ、RO−VcosΩtおよびRO+VcosΩtであるときに、マシューパラメータaおよびqは、
a=0、および
q=2zV/(4mΩ2r0 2)
によって与えられ、ここで、Vは、角周波数Ωの正弦波電圧のゼロからピークまでの振幅である。
前述の説明では、ω0は、非線形成分が要因として考慮されない場合の周波数である。六重極および八重極等の高次項の存在により、イオン永続周波数はシフトされることができ、シフトはイオンの半径方向運動の振幅ととも変化することができる。
図3を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の変形例による、四重極線形イオントラップの補助電極12ならびにロッド対26および28が概略断面図で図示されている。明確にするために、同じ参照数字が、図2および3の両方に示される補助電極およびロッドの類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図3に関して繰り返されない。
図3の変形例では、補助電極12は、2つの電極または対の電極を含む。電圧は、DC1およびDC2電圧が1つのDC電圧に置換されることを除いて、図2からの変形例と同様に、補助電極12ならびにロッド対26および28に印加される。この構成において生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極12を他方の電極12から分離するX軸を含む。
図4を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の変形例による、四重極線形イオントラップの補助電極12ならびにロッド対26および28が概略断面図で図示されている。明確にするために、同じ参照数字が、図2および3の両方に示される補助電極およびロッドの類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図4に関して繰り返されない。
図4の変形例では、主要な駆動電圧供給24が再び、示されるような駆動RF電圧VcosΩtを提供することができる。当技術分野で公知であるように、電圧供給24は、第1の周波数Ωで、かつ第1の位相において、第1の対のロッド26に第1のRF電圧−VcosΩtを提供するための第1のRF電圧源24aを含むことができる一方で、電圧供給24はまた、再び第1の周波数Ωで、かつ第1の対のロッド26に印加される第1の電圧と反対の位相において、第2の対のロッド28に第2のRF電圧VcosΩtを提供するように動作可能である第2のRF電圧源24bも含むことができる。
示されるように、電圧供給24はまた、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の両方に等しくなり得るロッドオフセット電圧ROをロッドに提供することもできる。一般的には、このロッドオフセット電圧ROは、線形イオントラップ内に閉じ込められているイオンと極性が反対のDC電圧である。
図4に示されるように、補助電極12は、X軸より上側に補助電極対12aを、X軸より下側に補助電極対12bを含むことができる。言い換えれば、図4の変形例では、図2の変形例と違って、補助電極対12aは、Y軸の代わりにX軸によって補助電極対12bから分離している。補助電極12aは、別個または独立の電力供給30に連結されることができる一方で、補助電極12bは、第2の独立電力供給34に連結されることができる。示されるように、第2の独立電力供給34が、DC電圧DC2のみを補助電極12bに供給する一方で、独立電力供給30は、主要電極またはロッド26または28に提供されるRF電圧(VcosΩt)と同じ周期または周波数のRF電圧成分Ucos(Ωt+φ)とともに、DC電圧を電極12aに供給する。示されるように、補助電極12aに印加されるRF電圧は、主要電極26および28に提供されるRF電圧に対してφだけ位相シフトされている。
双極励起AC電圧は、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するために、例えば、補助AC電圧源32によって第1の対のロッド26に提供されることができる。選択的に、双極励起信号によって励起される選択されたイオンは、質量スペクトルを生成するために、軸方向レンズ33を通過して(図1に示すように)検出器36まで軸方向に放出されることができる。代替として、これらのイオンは、さらなる処理のために、下流ロッドセットに伝送されることができる。代替として、イオンは、断片化され、下流質量分析計の中で分析されることができる。当技術分野で公知であるように、補助電圧源32によって提供されるAC電圧はしばしば、第1の周波数Ωよりもはるかに低い周波数となり得る。
図4に示される非対称構成であるが、補助電極12bではなく補助電極12aのみに印加された位相シフト電圧を有する補助電極12aおよび12bを提供することによって、2次元の非対称で実質的に四重極の電場を提供することができる。この非対称で実質的に四重極の電場は、図4に示されるように、一方の補助電極12aを他方の電極12bから分離するX軸と、一方の補助電極12aを他方の電極12aから分離するY軸とを含む。
上記で説明された非対称的に電圧を印加することによって非対称性を提供するために、2次元電場のX軸およびY軸に沿って、異なるポテンシャルを提供することができる。つまり、Y軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分に加えて、十二重極、十重極、八重極、六重極、および双極成分を含むことができる。六重極成分A3yは、最も強い高次成分となり得て、八重極成分A4yよりも少なくとも3倍強く、nyが4よりも大きい整数である高次多極Anyよりも50倍以上強い。双極成分は、六重極成分A3yよりも約10倍強くなり得る。対照的に、X軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分A2xに加えて、主に、八重極成分A4x、八重極成分A4xの5%未満の振幅を有する1つおきの高次成分(A3xおよびAnx、nxは4よりも大きい整数である)を含むことができる。
四重極、六重極、および八重極成分に実質的に限定されるという点で、生成されることができる電場の相対純度は、少なくとも部分的に、上記で説明されたように提供される電圧の限定された非対称性とともに、補助電極12を含む抽出領域中の線形イオントラップ20の対称性の結果として生じる。つまり、図2および4に示されるように、図1に示された線形イオントラップ20の抽出領域の中心軸に沿った任意の点において、中心軸と直交する関連面は、中心軸と交差し、第1の対の関連断面において第1の対のロッド26と交差し(図2および4において26としてマークされる)、第2の対の関連断面において第2の対のロッド28と交差する(図2および4においてにおいて28としてマークされる)。この第1の対の関連断面26は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第1の対の断面26の中の各断面26の中心を通過するX軸によって二等分される。第2の対の関連断面28は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第2の対の断面28の中の各断面28の中心を通過するY軸によって二等分される。X軸およびY軸は、実質的に直交し、中心軸において交差する。
抽出領域における中心軸に沿った任意の点において、中心軸に直角な関連面は、第1の対の補助断面における第1の対の補助電極12aと交差し(図2および4において12aとマークされる)、第2の対の関連補助断面において第2の対の補助電極12bと交差する(図2および4において12bと指定される)。図2の第1の構成では、第1の対の関連補助断面12aは、X軸(この実施形態では第1の軸)および第1の対の断面の中の一方の断面に関して実質的に対称に分布する。この構成では、第2の対の関連補助断面12bもまた、X軸および第1の対の断面の中の他方の断面に関して実質的に対称に分布する。
図4の第2の構成では、第1の対の関連補助断面12aが、Y軸(この実施形態では第1の軸)および第2の対の断面の中の一方の断面に関して実質的に対称に分布する一方で、第2の対の関連補助断面12bは、Y軸および第2の対の断面の中の他方の断面に関して実質的に対称に分布する。
図5を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の変形例による、四重極線形イオントラップの補助電極12ならびにロッド対26および28が概略断面図で図示されている。明確にするために、同じ参照数字が、図2、3、および4の両方に示される補助電極およびロッドの類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図4の説明は、図5に関して繰り返されない。
図5の変形例では、補助電極12は、2つの電極または対の電極を含む。電圧は、DC1およびDC2電圧が1つのDC電圧と置換されることを除いて、図4からの変形例と同様に、補助電極12ならびにロッド対26および28に印加される。この構成において生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極12を他方の電極12から分離するY軸を含む。
(補助電極電圧)
独立電力供給30によって補助電極12に提供されるDC電圧がロッドオフセットRO電圧よりも低いとき、または出口レンズ33に印加される障壁電圧がROよりも高いときに、イオンは、補助電極12を含有する線形イオントラップ20の抽出領域の中で蓄積することができる。いったんイオンが線形イオントラップ20の抽出領域の中に蓄積すると、以下でより詳細に説明されるように、たとえ補助電極に印加されるDC電圧がロッドオフセット電圧以上に上昇させられても、線形イオントラップ20の中央に向かう補助電極の上流端におけるカラー電極(図示せず)に、抽出領域内にイオンを閉じ込めるための好適な障壁電圧を提供することができる。
具体的には、補助電極12によって生成されるDC電場は、二重の作用を有することができる。第1に、上記で説明されたように、このDC電場は、線形イオントラップ20の抽出領域内にイオンを誘引し、ある程度含有するように、軸方向トラップを生成することができる。加えて、補助電極によって生成されるDC電場は、イオン雲の動態を変化させることができる半径方向の六重極および八重極の静電場を半径方向に導入することができる。これらの電場の強さは、例えば、電極に印加される電圧を変化させること、またはT字形電極の長方形の上部の奥行きを変化させることによって変化させることができる。選択的に、それらの長さに沿った異なる点で異なる電圧を提供するようにセグメントが構成されている、セグメント化された補助電極を提供すること、または、例えば、線形トラップ20の中心軸に対して補助電極を分岐または集中させることによる等の、他のアプローチも使用することができる。同様に、補助電極12によって導入される非線形のRF電場の強さは、RF電圧成分Ucos(Ωt+φ)を調整することによって、または補助電極12のT字形外形の奥行きを変化させるか、あるいはテーパ状にすることによって、調整することができる。
補助電極12のうちの2つに印加される補助RF電圧の大きさを、主要ロッドに印加されるRF電圧の大きさVに対して調整することが望ましくてもよい。具体的には、走査速度が増加させられるにつれて、補助電極12に提供されるRFの割合を増加させることが望ましくあり得るが、多くの実施形態では、補助電極12に印加されるより大きい大きさのRFがまた、より低い走査速度に有効であり得る。
種々の実施形態では、補助電極12に提供されるDC電圧DC1およびDC2の振幅は、放出されるイオンの特定の質量範囲および/または複数の質量範囲、ならびに質量選択的な軸方向放出の走査速度に対応する事前所望範囲内にあるように選択することができる。選択的に、DC1、DC2、U、またはVは、走査されているイオンの質量対電荷比に応じて、経時的に異なるレベルで変化させられてもよい。例えば、DC1、DC2、U、またはVの第1の設定は、第1の質量対電荷比内のイオンに対して所定のレベルに設定することができる。DC1、DC2、U、またはVの好適なレベルは、例えば、この第1の質量対電荷比内にあるか、またはそれに近い検量体イオンの軸方向放出によって決定することができる。次いで、この第1の質量対電荷比内のイオンが軸方向に放出または走査された後に、第1の質量対電荷比範囲とは異なる第2の質量対電荷比範囲内のイオンを走査または軸方向に放出するために、DC1、DC2、U、またはVのレベルを調整することができる。再度、第2の質量対電荷比範囲に対するDC1、DC2、U、またはVの好適なレベルは、第2の質量対電荷比範囲内にあるか、またはそれに近い第2の検量体イオンの軸方向放出または走査によって決定されることができる。
イオントラップ20が充填されている間の図1の質量分析計システム10用のイオン経路電圧の一実施例が、以下に説明される。以下の説明では、RF電圧が、図2の第1の構成に従って、Y軸の片側に、X軸によって相互から分離している、補助電極12aに提供される。この実施例では、約−40Vのロッドオフセット電圧を、衝突セル18のロッドに対して維持することができる一方で、IQ3を−40.5Vの電圧で保つことができる。一般に、IQ3の電圧は、衝突セル18のオフセット電圧よりも約0.5V小さくなり得る。選択的に、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10は、IQ3の下流および線形イオントラップ20の上流に対の太く短いロッドST3(図示せず)を含むことができる。そのような実施形態では、太く短いロッドは、衝突セル18のロッドオフセット電圧より5V小さい電圧、またはこの場合、−45Vの電圧に保つことができる。線形イオントラップ質量分析計システム10の線形イオントラップ20の主要ロッド26および28は、この場合、ロッド26および28が−48Vのロッドオフセット電圧を有することができるように、衝突セル18のロッドのロッドオフセット電圧よりも8Vだけ小さいロッドオフセット電圧に維持することができる。この場合、図2の第1の構成に従って補助電極12aに印加されるDC1は、補助電極12bに印加されるDC2と同様に、−100Vとなり得る。線形イオントラップ20の下流では、出口レンズ33を100Vの電圧に維持することができる一方で、検出器36を−6kVの電圧に維持することができる。
冷却中に、DC1およびDC2電圧を−170Vまで低下させることができる一方で、線形イオントラップ20のロッド26、28に印加されるロッドオフセット電圧は、最初に、−80Vまで、次いで、−100Vまで低下させることができ、最終的に、走査の10ms前に、この電圧を−160Vまで低下させることができる。
質量選択的な軸方向放出中に、衝突セル18のロッドオフセット電圧を−200Vに設定することができる一方で、IQ3を100Vに設定することができる。衝突セル18の下流および線形イオントラップ20の上流にある随意的な太く短いロッドは、100Vの電圧に設定することができる一方で、ロッド26、28のロッドオフセット電圧は、−160Vに設定することができる。再度、図2の第1の構成に従って、DC1を−160Vの電圧に設定することができる一方で、DC2を−165Vの電圧に設定することができる。出口レンズ33を−146Vの電圧に維持することができる一方で、検出器を−6kVの電圧に維持することができる。DC2電圧は、質量とともに変化させることができる。この場合、関心質量は、225Daから300Daの範囲内であった。より高い質量対電荷比は、より多くの負の値を必要とし得る。個の場合のカラー電圧は1000Vであった。
(実験データ)
本発明の実施形態の側面によれば、322ダルトン質量付近の10ダルトン窓の中のイオンを、質量フィルタとして操作される四重極質量分析計16を通して伝送し、次いで、衝突セル18の中で27eVの衝突エネルギーにおいて断片化することができる。次いで、断片化または未断片化の前駆体の全てを、下流イオントラップ20の中に捕捉することができ、そこで冷却時間にわたって冷却することができる。この冷却時間後に、イオンは、検出器35に向かってトラップ20から選択的に放出することができ、質量スペクトルを取得することができる。
図6aを参照すると、全スペクトルが、0.2msの線形イオントラップ20の充填時間に対して示されている。非常に高い質量強度を除いて、この短い充填時間の間に、有意な空間電荷密度効果はないであろう。しかしながら、充填時間が増加させられるにつれて、空間電荷密度効果は、X軸に沿って測定される密度をシフトさせることができる。これを軽減するために、DCおよび補助RF電圧を、例えば、図2、3、4、または5の構成に従って、補助電極12に提供することができる。
図6bを参照すると、重複質量スペクトルが、図4aの全質量スペクトルからの261ダルトンの質量付近において拡大され、異なる充填時間について示されている。図2の第1の構成に従って、付加的なRF電圧が、4つの補助電極のうちの2つのみに印加される。補助電極12aと指標された、これら2つの補助電極は、励起ロッドのうちの1本(図2に示される左端の励起ロッド26)の隣で、励起面(軸)Xの異なる側面上に配置される。示されるように、質量シフトは非常に小さい。つまり、0.2msの充填時間より100倍大きい20msの充填時間についてさえも、実際に測定されたm/zは、0.004ダルトンしか増加しなかった(261.130ダルトン対261.126ダルトン)。
図6cを参照すると、重複質量スペクトルが、図6aの全質量スペクトルからの約261ダルトンの質量付近で拡大され、異なる充填時間について示されている。上記で説明されたように、有意な六重極および八重極の成分を有する実質的に四重極の電場もまた、図4の第2の構成に従って提供されることができる。この第2の構成に従って、再度、付加的なRF電圧が、12aと指定された対の補助電極に提供されるが、この構成では、両方の補助電極が、非励起ロッドのうちの1本(図4に示される最上励起ロッド28)の両側で、励起面またはX軸の同じ側面上に配置される。再度、示されるように、質量シフトは非常に小さい。つまり、0.2msの充填時間より100倍大きい20msの充填時間についてさえも、実際に測定された質量対電荷比は、0.004ダルトンしか増加しなかった(261.098ダルトン対261.095ダルトン)。図6bの質量スペクトルでも、図6cの質量スペクトルでも、線形イオントラップは較正されていない。線形イオントラップを較正することは、はるかに大きい程度まで、測定された質量信号ピークがイオンの理論的質量と整列させられることを可能にする。しかしながら、図6bおよび6cの両方から、これらの図に図示される質量信号ピークは、空間電荷効果に起因しては、有意に移動しないことが明白である。
上記で説明されたように、双極励起が、第1の対のロッド26、または対角方向に配向された対の補助電極12のいずれか一方に提供されてもよい。しかしながら、本発明の他の実施形態によれば、代わりに四重極励起を使用することができる。図7を参照すると、図1の線形イオントラップ20に対する補助電極12の特定の変形例の半径方向位置が示されている。多くの側面では、図7の変形例は、図2の変形例に類似している。明確にするために、同じ参照数字が、図2および7の変形例の類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図7に関して繰り返されない。
図2の変形例と同様に、図7の変形例では、主要駆動電圧供給24が、示されるような駆動RF電圧VcosΩtを供給することができる。つまり、図2の変形例と同様に、図7の電圧供給24は、第1の周波数Ωで、かつ第1の位相において、第1の対のロッド26に第1のRF電圧−VcosΩtを提供するための第1のRF電圧源24aを含むことができる一方で、電圧供給24はまた、再び第1の周波数Ωで、かつ第1の対のロッドに印加される第1の電圧と反対の位相において、第2の対のロッド28に第2のRF電圧VcosΩtを提供するように動作可能である第2のRF電圧源24bも含むことができる。
しかしながら、図7の変形例では、第1のRF電圧源24aはまた、四重極励起電圧−ACcosωtを第1の対のロッド26に提供するように動作可能となり得る一方で、第2のRF電圧源24bは、四重極励起電圧ACcosωtを第2の対のロッド28に提供するように動作可能となり得る。当然ながら、この四重極励起電圧は、常に提供されなくてもよいが、線形イオントラップ20から、選択されたm/zの選択されたイオンを軸方向に放出するように提供することができる。双極励起に関連して説明されたように、選択されたイオンは、質量スペクトルを生成するように、軸方向レンズ33を通過して検出器36(両方が図1に示される)まで軸方向に放出されることができる。代替として、これらのイオンは、さらなる処理のために、下流ロッドセットに伝送されることができる。当技術分野で公知であるように、RF電圧源によって提供される四重極励起電圧はしばしば、第1の周波数Ωよりもはるかに低い周波数ωであり得る。
図8を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の線形イオントラップの線形イオントラップ20の補助電極12およびロッド26、28の代替変形例が、断面図で図示されている。再度、双極励起が第1の対のロッド26に印加される代わりに、双極励起を、図8で12cと指定された対角方向に配向された対の補助電極に提供されることができることを除いて、図8の変形例は、図2の変形例と同様である。明確にするために、同じ参照数字が、図2および8の変形例の類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図8に関して繰り返されない。図8に示されるように、双極励起AC電圧は、例えば、その内容が参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第7,692,143号で説明されているように、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するために、補助AC電圧源32によって対角方向に配向された対の補助電極12cに提供することができる。補助電極12への電圧源30および32の接続の結果として、両方の参照数字12aおよび12dを使用して指定される1つの補助電極12は、主要電極またはロッド26または28に提供されるRF電圧(VcosΩt)と同じ周期または周波数のRF電圧成分−Ucos(Ωt+φ)とともに、DC電圧DC1のみを受容するように、電圧源30に連結される。示されるように、補助電極12aに印加されるRF電圧は、主要電極26および28に提供されるRF電圧に対してφだけ位相シフトされている。
両方の参照数字12aおよび12cを使用して指定される第2の補助電極12は、DC電圧DC1、RF電圧成分Ucos(Ωt+φ)、および双極励起電圧−ACcoωtを受容する。上記で論議される第1の補助電極と同様に、補助電極12a、12cに印加されるRF電圧Ucos(Ωt+φ)は、主要電極26および28に提供されるRF電圧に対してφだけ位相シフトされている。双極励起電圧周波数ωは、第1の周波数Ωよりもはるかに低くなり得る。
両方の参照数字12bおよび12cを使用して指定される第3の補助電極12が、DC電圧、DC2、および双極励起電圧ACcosωtを受容する一方で、両方の参照数字12bおよび12dを使用して指定される第4の補助電極12は、DC電圧DC2のみを受容する。
図2の構成と同様に、図7および8の構成では、X軸上のポテンシャルは、四重極成分に加えて、十二重極、十重極、八重極、六重極、および双極成分を含み得る。六重極成分A3xは、最も強い高次成分となり得て、八重極成分A4xよりも少なくとも3倍強く、nが4よりも大きい整数である高次多極Anxよりも50倍以上強い。双極成分は、六重極成分A3xよりも約10倍強くなり得る。対照的に、Y軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分A2yに加えて、主に、八重極成分A4y、八重極成分A4yの5%未満の振幅を有する1つおきの高次成分(A3yおよびAny、nyは4よりも大きい整数である)を含むことができる。
本発明の実施形態の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッド26と、第2の対のロッド28と、4つの補助電極12と、電圧供給24、30、32、34とを含む線形イオントラップ質量分析計システム10が提供されている。第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在することができる。4つの補助電極12は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域37中で第1の対のロッド26と第2の対のロッド28との間に間置されることができる。4つの補助電極は、第1の対の補助電極12aと、第2の対の補助電極12bとを含むことができる。第1の対の補助電極12aは、第1の対のロッドまたは第2の対のロッドのいずれか一方の中の単一のロッドによって分離され、かつそれに隣接することができ、第2の対の補助電極12bは、第1の対の補助電極を分離するロッドと対された他方のロッドによって分離され、かつそれに隣接することができる。電圧供給は、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および4つの補助電極に接続されることができ、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、iv)第1の対の補助電極に第1のDC電圧DC1を、およびv)第2の対の補助電極に第2のDC電圧DC2を提供するように動作可能となり得る。
選択的に、線形イオントラップシステム10は、ロッドセットおよび補助電極から軸方向に放出されるイオンを検出するように設置される検出器36を含むことができる。さらに選択的に、電圧供給は、第1のRF電圧を第1の対のロッドに提供するように動作可能である第1の電圧源24aと、第2のRF電圧を第2の対のロッドに提供するように動作可能である第2の電圧源24bと、補助RF電圧を第1の対の補助電極に提供するように動作可能である補助電圧源30と、補助RF電圧源によって提供される補助電圧の位相および位相シフトを制御するための位相コントローラ(図示せず)とを含むことができる。
さらなる実施形態では、補助電圧源はさらに、第1の補助DC電圧DC1を第1の対の補助電極に提供するように動作可能となり得て、電圧供給はさらに、第2の補助DC電圧DC2を第2の対の補助電極に提供するための第2の補助電圧源34を含むことができる。
選択的に、補助電圧源30はさらに、第1の対の補助電極12aに提供される第1の補助DC電圧DC1を変化させるように動作可能または調整可能となり得る一方で、第2の補助電圧源34はさらに、第2の対の補助電極12bに提供される第2の補助DC電圧DC2を調整するように動作可能となり得る。位相コントローラはさらに、補助RF電圧源30によって提供される補助電圧の位相シフトを調整するように動作可能となり得る。
さらに選択的に、電圧源32は、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数Ωよりも低い周波数ωで、第1の対のロッド26または対角方向に配向された対の補助電極12のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供するように動作可能となり得る。双極励起DC電圧が提供されるものが対角方向に配向された対の補助電極である実施形態では、この対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対の補助電極12aおよび第2の対の補助電極12bのうちのそれぞれからの1つの電極を含むことができる。
いくつかの実施形態では、線形イオントラップ20は、中心軸に沿った任意の点において中心軸と直交する関連面が、中心軸と交差し、第1の対の関連断面で第1の対のロッドと交差し、第2の対の関連断面で第2の対のロッドと交差するように、構成される。例えば、図2の断面図では、第1の対のロッド26が、第1の対の断面26によって表される一方で、第2の対のロッド28は、第2の対の断面28によって表されるように、関連面が断面図を画定する。第1の対の関連断面26は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第1の対の断面の中の各断面の中心を通過する第1の軸によって二等分される。図2の変形例では、第1の軸はX軸である。第2の対の関連断面28は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第2の対の断面の中の各断面の中心を通過する第2の軸によって二等分される。図2の変形例では、第2の軸はY軸であり、図2において点として示される中心軸は、XおよびY軸の交差点にある。抽出領域37内に位置する中心軸の抽出部分の中の中心軸に沿った任意の点において中心軸と直交する関連面は、第1の対の補助断面において第1の対の補助電極12aと交差し、第2の対の関連補助断面において第2の対の補助電極12bと交差する。図2では、第1の対の補助電極が、第1の対の補助断面12aによって表される一方で、第2の対の補助電極は、第2の対の補助断面12bによって表される。
多くの実施形態では、中心軸の抽出部分37は、中心軸の半分未満を含む。
選択的に、抽出領域は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端となり得て、4つの補助電極12は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端を越えて軸方向に延在することができる。代替として、4つの補助電極12は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端の手前で終端することができる。選択的に、第1の対の補助断面および第2の対の補助断面の中の各断面は、長方形の上部に接続される長方形の基礎部を含んで、実質的にT字形となり得る。
図2の構成、または図3、4、あるいは5の構成のいずれかに従って、図1の線形イオントラップ質量分析計システムを使用して、イオンを有利に処理することができる。例えば、有意なピーク移動を伴わずに、より高い空間電荷密度を適応させることができる。発明の実施形態の側面による方法に従って、第1の軸に沿った第1の軸ポテンシャルと、第1の軸と直交する第2の軸と、第2の軸に沿った第2の軸ポテンシャルとを有する、2次元の非対称で実質的に四重極の電場を提供することができる。第1の軸ポテンシャルは、振幅A21の四重極高調波と、振幅A31の六重極高調波と、振幅A41の八重極高調波とを含むことができ、種々の実施形態では、A41は、A21の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A41は、A21の0.01%よりも大きく、A41は、A21の5%およびA31の33%未満であり、第1の軸ポテンシャルに存在する振幅An1を有する任意の他の高次高調波について、n1は、4よりも大きい任意の整数であり、A31は、An1の10%よりも大きい。第2の軸ポテンシャルは、振幅A22の四重極高調波と、振幅A42の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A42は、A22の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A42は、A22の0.01%よりも大きく、A42は、A22の5%未満であり、電場の第2の軸ポテンシャルに存在する振幅An2を有する任意の他の高次高調波について、n2は、4以外の2よりも大きい任意の整数であり、A42は、An2の10%よりも大きい。いったんこの電場が確立および生成されると、およびそれが維持されている間、イオンを電場に導入することができる。
図2に示される第1の構成によれば、第1の軸ポテンシャルがX軸ポテンシャルであり、第2の軸ポテンシャルがY軸ポテンシャルであるように、第1の軸は、X軸となり得、第2の軸は、Y軸となり得る。
他方では、図3の第2の構成の場合、より大きい六重極成分がX軸ではなくY軸上に提供されるように、第1の軸は、Y軸となり得、第2の軸は、X軸であり得る。
選択的に、A31は、An1の30倍または50倍よりも大きくあり得る。
選択的に、線形イオントラップ20は、第1の対のロッド26と、第2の対のロッド28と、4つの補助電極12とを含み、4つの補助電極12は、第1の対のロッド26と第2の対のロッド28との間に間置され、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28のうちの1つを二等分する第1の面によって分離している第1の対の補助電極12および第2の対の補助電極12を含む。この実施形態を上記の実施形態に関係させると、1)第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に対して直角であり、2)電場を確立し、維持するステップは、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッド26に第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッド28に第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、iv)第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、v)第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するステップを含む。方法は、1)電場からイオンの選択された部分を、軸方向に放出するステップとして当技術分野で知られている、軸方向に伝送するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、2)摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、3)選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、i)補助RF電圧の位相シフト、ii)第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、iii)第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、およびiv)第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとをさらに含むことができる。
選択的に、電場を確立し、維持するステップは、RF電圧を第2の対の補助電極12bに提供することなく、第2のDC電圧DC2を第2の対の補助電極12bに提供するステップを含むことができる。
さらに選択的に、電場を確立し、維持するステップは、第2の補助RF電圧を、第2のDC電圧DC2を有する第2の対の補助電極12bに提供するステップを含むことができ、第2の補助RF電圧は、第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧に対して180°位相シフトされている。
選択的に、補助RF電圧の位相シフトは、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、例えば、下流RF増幅器に連結された位相変数全域通過フィルタ等の位相コントローラによって変化させることができる。第1の位相に対する実際の位相シフトは、ゼロとなり得る。摺動m/z比は、補助RF電圧の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧等の変数を調整することによって、質量スペクトルの水平軸に沿って、このm/z比を移動させることができるので、そのように称される。
選択的に、位相シフトは、50°から70°までの間、または59°から61°までの間、または−70°から70°までの間となり得る。さらなる実施形態によれば、所望の位相シフトはまた、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28に提供されるRF電圧の不均衡に依存し得る。上記で説明されたように、この位相シフトはまた、低減した感度を犠牲にして、より良好なピーク分解能を達成するように、50°から70°までの間、または選択的に−70°から70°までの間の最適位相シフトから調整されることもできる。つまり、より高い位相シフトで、質量精度を失うことなく、補助電極のRFの振幅を増加させることができる。加えて、線形イオントラップ20の主要ロッド26、28に印加されるRFの平衡もまた、最適位相シフトの範囲、ならびに特定の質量分解能および感度を達成するために必要とされる補助電極12のRF振幅を画定することに関与することができる。言い換えれば、図2および3に示される変形例では、両方の対のロッド26および28に提供されるRFの大きさは、依然として同じであるが、選択的に、ロッド28に提供されるRFの大きさに対してRFの異なる大きさをロッド26に提供することができる。
六重極八重極が追加され、他の多重極がない、線形四重極のポテンシャルが、式(1)および(2)によって求められる。例えば、Douglas et al.,Russian Journal of The Technical Physics,1999,vol.69,96−101を参照されたい。双極子モーメントも軸のうちの一方、図2の変形例についてはX軸の上に存在するときに、付加的なΦ1(x)=A1x/r0が、電場の要因となり、ここで、r0は電場の半径である。以下の式2(および3)は、双極、六重極、および八重極電場が電場に追加されたときのX軸上のポテンシャルを示す。以下の式では、X軸においてY=0であるので、yを含む項はゼロである。
本発明の実施形態の変形例によれば、生成される電場は、中心軸を含む2次元の非対称で実質的に四重極の電場と見なすことができ、本発明の他の変形例に関連して上記で説明された第1の軸と第2の軸(X軸およびY軸であるが、必ずしもそれぞれがそうではない)とは、中心軸で交差する。上記で説明されたように、第1の軸が、対のロッドの断面を二等分する一方で、第2の軸は、別の対のロッドの断面を二等分する。この2次元の電場において、八重極成分Φ4の絶対値と、第1の軸に沿った六重極成分Φ3の絶対値とを加算することによって得られる合計は、第1の軸によって二等分される断面から中心軸への移動を増加させることができる。同様に、この2次元の電場において、八重極成分Φ4の絶対値と、第2の軸に沿った六重極成分Φ3の絶対値とを加算することによって得られる第2の合計は、中心軸に向かう第2の軸によって二等分される対のロッドからの移動を増加させることができる。
さらなる実施形態によれば、図1の線形イオントラップシステム10の線形イオントラップ20は、軸方向レンズ33を含むことができ、4つの補助電極12は、4本のロッド26および28の長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッド26と第2の対のロッド28との間に間置されることができる。そのような変形例では、本発明の実施形態のある側面による方法は、イオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出する前に、抽出領域37中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップをさらに含むことができる。
本発明のこの実施形態のさらなる変形例では、イオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドにロッドオフセット電圧ROを提供するステップを含んでもよい。ロッドオフセット電圧ROは、4つの補助電極に提供されるDC電圧よりも高くなり得る。DC捕捉電圧も軸方向レンズ33に提供することができ、ロッドオフセット電圧は、この軸方向レンズ電圧よりも低くなり得る。この手段によって、軸方向放出の前にイオンの選択された部分を保持するために、補助電極12の近傍で電圧ウェルを生成することができる。
上記で説明されたように、電場から選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を伝送する、すなわち、軸方向に放出するステップは、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供するステップを含むことができる。図8に示されるように、対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの一方を二等分する第1の面と、第1の面に対して直角であり、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの他方を二等分する第2の面との両方によって分離している。図8の変形例では、双極励起AC電圧が印加される対角方向に配向された対のロッドは、ロッド12cであるが、代替として、双極励起電圧が、対角方向に配向された対のロッド12dに同程度に簡便に印加される。
選択的に、上記で説明されたように、電場から選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出するステップは、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、四重極励起AC電圧を第1の周波数よりも低い周波数で第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの両方に提供するステップを含むことができる。
本発明の実施形態のさらなる変形例によれば、異なるm/zを有するイオンの後続部分を放出するために、イオンの選択された部分を放出した後に、補助電極12および主要ロッド26、28を再較正することができる。例えば、第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧あるいは第1のDC電圧の補助周波数の位相シフト、または第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、または第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧に対する異なる設定が、異なるm/zの異なるイオンに対する選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために望ましくあり得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、電場から選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出した後に、方法はさらに、1)電場からイオンの第2の選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出するステップであって、イオンの第2の選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、2)第2の摺動m/z比を中心とする第2の摺動質量信号ピークを提供するために、イオンの第2の選択された部分を検出するステップと、3)選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、i)補助RF電圧の補助周波数の位相シフト、ii)第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、iii)第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、およびiv)第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含むことができる。
選択的に、位相シフトは、i)第1のRF電圧の大きさ、i)第2のRF電圧の大きさ、およびiii)第1のRF電圧の第1の周波数(第2のRF電圧の第2の周波数でもある)といった、変数のうちの1つ以上の変化に基づいて調整されてもよい。
使用中に、本発明の実施形態の側面によれば、第1の軸と、第1の軸に沿った第1の軸ポテンシャルと、第1の軸と直交する第2の軸と、第2の軸に沿った第2の軸ポテンシャルとを有する2次元の非対称で実質的に四重極の電場を確立し、維持し、次いで、イオンを電場に導入する方法において、イオンを処理する方法が提供される。第1の軸ポテンシャルは、振幅A21の四重極高調波と、振幅A31の六重極高調波と、振幅A41の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A41は、 よりも大きく、実施形態では、A41は、 よりも大きく、 A21およびA31の33%であり、第1の軸ポテンシャルに存在する振幅を有する任意の他の高次高調波について、n1は、 よりも大きい任意の整数であり、 An1の10倍よりも大きい。第2の軸ポテンシャルは、振幅A22の四重極高調波と、振幅A42の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A42は、A22の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A42は、A22の0.01%よりも大きく、A42は、A22の5%未満であり、電場の第2の軸ポテンシャルに存在する振幅An2を有する任意の他の高次高調波について、n2は、4以外の2よりも大きい任意の整数であり、A42は、An2の10倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の30倍よりも大きい。本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の50倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、線形イオントラップは、第1の対の 、第2の対のロッドと、第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置され、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している第1の対の補助電極および第2の対の補助電極を含む4つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に対して直角である。電場を確立し、維持するステップは、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するステップを含むことができる。方法は、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するために、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/z するために、補助RF電圧の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとをさらに含む。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、 は、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、第1の対のロッドのうちの1つと第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置され、第1の対のロッドのうちの1つまたは第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している対の補助電極を含む2つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に直角である。電場を確立し、維持するステップは、 周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、対の補助電極に補助RF電圧を、対の補助電極にDC電圧を提供するステップを含むことができる。方法はさらに、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の位相シフト、対の補助電極に提供されるDC電圧、および対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するX軸(例えば、第1の軸)を含む。種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するY軸(例えば、第2の軸)を含む。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持するステップは、RF電圧を第2の対の補助電極に提供することなく、DC電圧を第2の対の補助電極に提供するステップを含む。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持する方法は、DC電圧を対の補助電極に提供するステップを含む。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持するステップは、第2の補助RF電圧を、DC電圧を有する第2の対の補助電極に提供するステップを含み、第2の補助RF電圧は、第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧に対して180度位相シフトされている。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持するステップは、第2の補助RF電圧を、DC電圧を有する対の補助電極に提供するステップを含み、第2の補助RF電圧は、対の補助電極に提供される補助RF電圧に対して180度位相シフトされる。
種々の実施形態では、方法は、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、補助RF電圧の位相シフトを調整するステップをさらに含む。
種々の実施形態では、方法は、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、および第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップをさらに含む。種々の実施形態では、位相シフトは、−70度から70度までの間である。種々の実施形態では、位相シフトは、0度である。
種々の実施形態では、方法は、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、対の補助電極に提供されるDC電圧を調整するステップをさらに含む。種々の実施形態では、位相シフトは、−70度から70度までの間である。種々の実施形態では、位相シフトは、0度である。
種々の実施形態では、電場から選択されたm/zを有するイオンの記選択された部分を軸方向に放出するステップは、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドに四重極励起AC電圧を提供するステップを含む。
種々の実施形態では、方法が提供され、線形イオントラップは、出口レンズをさらに含み、4つの補助電極は、4本のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置され、方法は、イオンの選択された部分を軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップをさらに含む。
種々の実施形態では、方法が提供され、線形イオントラップは、出口レンズをさらに含み、対の補助電極は、4本のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドのうちの1本と第2の対のロッドのうちの1本との間に間置される。方法は、イオンの選択された部分を軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップをさらに含む。
種々の実施形態では、イオンの選択された部分を軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドにロッドオフセット電圧を提供するステップであって、ロッドオフセット電圧は、補助電極に提供されるDC電圧よりも高くなり得る、ステップと、出口レンズに印加されるDC捕捉電圧を提供するステップとを含み、ロッドオフセット電圧は、出口レンズに印加されるDC捕捉電圧よりも低い。
種々の実施形態では、電場から選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップは、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供するステップを含み、対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの一方を二等分する第1の面と、第1の面に対して直角であり、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの他方を二等分する第2の面との両方によって分離している。
種々の実施形態では、方法は、電場から選択されたm/z比を有するイオンの部分を軸方向に放出した後に、電場からイオンの第2の選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの第2の選択された部分は、第2の選択されたm/zを有する、ステップと、第2の摺動m/z比を中心とする第2の摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの第2の選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の補助周波数の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとをさらに含む。
種々の実施形態では、方法はさらに、電場から選択されたm/z比を有するイオンの選択された部分を軸方向に放出した後に、電場からイオンの第2の選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの第2の選択された部分は、第2の選択されたm/zを有する、ステップと、第2の摺動m/z比を中心とする第2の摺動質量信号ピークを提供するために、イオンの第2の選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、対の補助電極に提供される補助RF電圧またはDC電圧の位相シフト、または対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
種々の実施形態では、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように位相シフトを調整するステップは、第1のRF電圧の大きさ、第2のRF電圧の大きさ、および第1の周波数のうちの少なくとも1つへの変更に基づいて、位相シフトを調整するステップを含み、第2の周波数は、第1の周波数とともに変化する。
使用中に、本発明の実施形態の別の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、第2の対のロッドであって、第2の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置される、4つの補助電極と、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および4つの補助電極に接続される、電圧供給とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。4つの補助電極は、第1の対の補助電極と、第2の対の補助電極とを含み、第1の対の補助電極は、第1の対のロッドまたは第2の対のロッドのいずれか一方の中の単一のロッドによって分離され、かつそれに隣接する。電圧供給は、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、および第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するように動作可能である。種々の実施形態では、補助電極上に印加されるRFは、第1の対のロッドに印加されるRFに位相固定され、第1の対のロッドに印加されるRFの第1の位相に対する位相シフトは、0度、または−70から70度までの間となり得る。
本発明の実施形態の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、第2の対のロッドであって、第2の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドのうちの1本と第2の対のロッドのうちの1本との間に間置される、2つの補助電極であって、2つの補助電極は、対の補助電極を含み、対の補助電極は、第1の対のロッドからの単一のロッドおよび第2の対のロッドからの単一のロッドによって分離され、かつそれらに隣接する、2つの補助電極とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。電圧供給が、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および2つの補助電極に接続され、電圧供給は、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、対の補助電極に補助RF電圧を、および第1の対の補助電極にDC電圧を提供するように動作可能である。種々の実施形態では、補助電極上に印加されるRFは、第1の対のロッドに印加されるRFに位相固定され、第1の対のロッドに印加されるRFの第1の位相に対する位相シフトは、0度、または−70から70度までの間となり得る。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、X軸を含む。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、Y軸を含む。
種々の実施形態では、線形イオントラップシステムはさらに、ロッドセットおよび補助電極から軸方向に放出されるイオンを検出するように設置される、検出器を含む。
種々の実施形態では、電圧供給は、第1のRF電圧を第1の対のロッドに提供するように動作可能である第1の電圧源と、第2のRF電圧を第2の対のロッドに提供するように動作可能である第2の電圧源と、補助RF電圧を第1の対の補助電極に、または種々の実施形態では対の補助電極に提供するように動作可能である補助電圧源と、補助RF電圧源によって提供される補助電圧の位相および位相シフトを制御するための位相コントローラとを含む。
種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、第1の補助DC電圧を第1の対の補助電極に提供するように動作可能であり、電圧供給はさらに、第2の補助DC電圧を第2の対の補助電極に提供するための第2の補助電圧源を含む。
種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、第1の対の補助電極に提供される第1の補助DC電圧を調整するように動作可能であり、第2の補助電圧源はさらに、第2の対の補助電極に提供される第2の補助DC電圧を調整するように動作可能である。
種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、対の補助電極に提供される第1の補助DC電圧を調整するように動作可能である。種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、対の補助電極に提供される補助DC電圧を調整するように動作可能である。
種々の実施形態では、位相コントローラはさらに、補助RF電圧源によって提供される補助電圧の位相シフトを調整するように動作可能である。
種々の実施形態では、電圧供給はさらに、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するよう、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供するように動作可能である。例えば、対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対の補助電極および第2の対の補助電極のうちのそれぞれからの1つの電極を含む。
種々の実施形態では、中心軸に沿った任意の点で、中心軸と直交する関連面は、中心軸と交差し、第1の対の関連断面で第1の対のロッドと交差し、第2の対の関連断面で第2の対のロッドと交差する。第1の対の関連断面は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第1の対の断面の中の各断面の中心を通過する、第1の軸によって二等分される。第2の対の関連断面は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第2の対の断面の中の各断面の中心を通過する、第2の軸によって二等分される。第1の軸および第2の軸は、実質的に直交し、中心軸で交差する。抽出領域の中心軸に沿った任意の点で、中心軸と直交する関連面は、第1の対の補助断面で第1の対の補助電極と交差し、第2の対の関連補助断面で第2の対の補助電極と交差する。
種々の実施形態では、中心軸の抽出部分は、中心軸の長さの半分未満を含む。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を含み、4つの補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を越えて軸方向に延在する。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を含み、補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を越えて軸方向に延在する。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を含み、補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端の手前で終端する。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの を含み、対の補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端の手前で終端する。
種々の実施形態では、第1の対の補助断面および第2の対の補助断面の中の各断面は、長方形の上部に接続される長方形の基礎部を含み、実質的にT字形である。種々の実施形態では、対の補助断面の中の各断面は、長方形の上部に接続される長方形の基礎部を含み、実質的に 形である。
全てのそのような修正または変形例は、本明細書に添付された請求項によって定義されるような出願人の教示の分野および範囲内であると考えられる。
(関連出願)
本願は、米国仮特許出願第61/376,851号(2010年8月25日出願)の優先権を主張し、この出願は、その全体が参照することにより本明細書に援用される。
(分野)
有意な六重極および八重極成分を有する実質的に四重極の電場を提供するための方法およびシステムに関する。
(緒言)
イオントラップ質量分析計の性能は、例えば、空間電荷密度等のいくつかの異なる要因によって制限され得る。したがって、改良型質量分析計システム、ならびにこれらの制限に対処する操作の方法が望ましい。
本発明の実施形態の側面によれば、線形イオントラップの中でイオンを処理する方法が提供され、方法は、第1の軸と、第1の軸に沿った第1の軸ポテンシャルと、第1の軸と直交する第2の軸と、第2の軸に沿った第2の軸ポテンシャルとを有する、2次元の非対称で実質的に四重極の電場を確立し、維持するステップと、次いで、イオンを電場に導入するステップとを含む。第1の軸ポテンシャルは、振幅の四重極高調波と、振幅A31の六重極高調波と、振幅A41の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A41は、A21の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A41は、A21の0.01%よりも大きく、A41は、A21の5%およびA31の33%未満であり、第1の軸ポテンシャルに存在する振幅An1を有する任意の他の高次高調波について、n1は、4よりも大きい任意の整数であり、A31は、An1の10倍よりも大きい。第2の軸ポテンシャルは、振幅A22の四重極高調波と、振幅A42の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A42は、A22の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A42は、A22の0.01%よりも大きく、A42は、A22の5%未満であり、電場の第2の軸ポテンシャルに存在する振幅An2を有する任意の他の高次高調波について、n2は、4以外の2よりも大きい任意の整数であり、A42は、An2の10倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の30倍よりも大きい。本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の50倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、線形イオントラップは、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置され、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している、第1の対の補助電極および第2の対の補助電極を含む4つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面と直交する。電場を確立し、維持するステップは、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、および第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するステップを含む。方法はさらに、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、線形イオントラップは、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、第1の対のロッドのうちの1つと第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置され、第1の対のロッドのうちの1つまたは第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している、対の補助電極を含む2つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に直角である。電場を確立し、維持するステップは、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、および対の補助電極にDC電圧を提供するステップを含む。方法はさらに、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたのを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の位相、対の補助電極に提供されるDC電圧、およびiii)対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、X軸を含む。種々の実施形態では、非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、Y軸を含む。
本発明の実施形態の別の側面によれば、i)中心軸と、ii)第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、iii)第2の対のロッドであって、第2の対の中のロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、iv)第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置される、4つの補助電極と、v)第1の対のロッド、第2の対のロッド、および4つの補助電極に接続される、電圧供給とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。4つの補助電極は、第1の対の補助電極と、第2の対の補助電極とを含み、第1の対の補助電極は、第1の対のロッドまたは第2の対のロッドのいずれか一方の中の単一のロッドによって分離され、かつそれに隣接する。電圧供給は、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、iv)第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、およびv)第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するように動作可能である。
本発明の実施形態の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、第2の対のロッドであって、第2の対のロッドの各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドのうちの1つと第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置される、2つの補助電極であって、2つの補助電極は、対の補助電極を含み、対の補助電極は、第1の対のロッドからの単一のロッドおよび第2の対のロッドからの単一のロッドによって分離され、かつそれらに隣接する、2つの補助電極と、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および2つの補助電極に接続される、電圧供給とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。電圧供給は、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、対の補助電極に補助RF電圧を、およびiv)第1の対の補助電極にDC電圧を提供するように動作可能である。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するX軸を含む。種々の実施形態では、非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するY軸を含む。
当業者は、以下で説明される図面が、例示目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲をいかようにも制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態の側面による、補助電極を含むQ−trap、Q−q−Q線形イオントラップ質量分析計システムを概略図で図示する。
図2は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図3は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの第2の変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図4は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの種々の実施形態による、線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図5は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの種々の実施形態による、線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図6aは、0.2msの充填時間とともに図1の線形イオントラップ質量分析計システムを使用して生成される、全質量スペクトルを図示する。
図6bは、図1の線形イオントラップ質量分析計システムが図2の第1の構成に従って操作されるときに、図6aの全質量スペクトルから得られた261ダルトンの質量の周囲で拡大された、異なる充填時間の重複質量スペクトルを図示する。
図6cは、図1の線形イオントラップ質量分析計システムが図4の構成に従って操作されるときに、図6aの全質量スペクトルから得られた261ダルトンの質量の周囲で拡大された、異なる時間の重複質量スペクトルを図示する。
図7は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの第3の変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図8は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムの第4の変形例の線形イオントラップの補助電極およびロッドを概略断面図で図示する。
図1を参照すると、本発明の実施形態の側面による補助電極12を含むQTRAP Q−q−Q線形イオントラップ質量分析計システム10が概略図で図示されている。質量分析計の動作中、イオンは、スキマー13を通って真空チャンバ14の中に受け入れられることができる。線形イオントラップ10は、細長い4組のロッドQ0、四重極質量分析計16、衝突セル18、および線形イオントラップ20、ロッドセットの後ろの板、四重極質量分析計16と衝突セル18との間のオリフィス板IQ2、および衝突セル18と線形イオントラップ20との間のオリフィス板を含む。付加的な1組の短く太いロッド21が、オリフィス板IQ1と四重極質量分析計16との間に提供されることができる。
場合によっては、隣接する対のロッドセットの間の漏れ電場が、イオンの流動を歪曲し得る。細長いロッドセットQ1の中にイオンの流動を集中させるために、短く太いロッド21がオリフィス板IQ1と四重極質量分析計16との間に提供されることができる。選択的に、太く短いロッドがまた、衝突セルQ2の上流および下流に含まれることもできる。
イオンは、約8x10−3トルの圧力で維持され得るQ0の中において衝突冷却されることができる。四重極質量分析計16は、従来の伝送RF/DC四重極質量分析計として動作することができる。衝突セル18の中で、イオンは、より小さい質量の副産物に断片化されるように、衝突ガスと衝突することができる。線形イオントラップ20はまた、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、Londry and Hagerによる、Journal of the American Association of Mass Spectrometry,2003,14,1130−1147において、および米国特許第6,177,688号において、多かれ少なかれ説明されているように、質量選択的な軸方向放出を伴うか、または伴わない線形イオントラップとして操作されることもできる。
イオンは、四重極ロッドに印加される半径方向のRF電圧および端部開口レンズに印加される軸方向のDC電圧を使用して、線形イオントラップ20の中に捕捉されることができる。加えて、示されるように、線形イオントラップ20はまた、補助電極12も含む。
イオン集団密度が線形イオントラップ内において増加するにつれて、空間電荷効果が質量精度を低減させ得る。したがって、線形イオントラップ質量分析計の動作は、質量精度または分解能に関してトラップの分析性能に影響を及ぼすことなく分析することができる空間電荷またはイオンの総数によって制限され得る。
本発明の実施形態の側面によれば、補助電極12は、線形イオントラップ20の四重極ロッドアレイによって提供される主要なRF四重極電場に加えて、六重極および八重極のRFならびに静電場を生成するために、線形イオントラップ20内で使用することができる。これらの電場の非調和性は、放出過程中にイオントラップの内側のイオン雲の動態を変化させることができ、質量精度を向上させるために、空間電荷の悪影響を低減することができる。これらの補助電極は、図1に示されたものとは異なる状況で使用することができ、図1の設定は、例示目的のみで示されている。例えば、そのような非線形イオントラップは、トリプル四重極、またはトラップ等のタンデムMS/MSシステムの中の前駆イオンセレクタとして、MS/MS構成のプロダクトイオン分析器として、または独立型質量分析計として使用することができる。
図1は、線形イオントラップ20内における補助電極の可能な軸方向位置を示す。具体的には、補助電極は、線形イオントラップ20の抽出領域内にある。図1の実施形態等のいくつかの実施形態では、抽出領域は、線形イオントラップ20の長さの半分未満にわたって延在する。図2を参照すると、線形イオントラップ20に対する補助電極12の特定の変形例の半径方向位置が示されている。図2の変形例では、補助電極12は、線形イオントラップ20の中心軸から離間している長方形の基礎部と、長方形の基礎部から線形イオントラップ20の中心軸に向かって延在する長方形の上部とを含む電極である。当業者にとって明白であるように、他の電極構成も使用することができる。例えば、限定することなく、電極の長方形の上部が保持される場合があるが、この長方形の上部を載置するために、長方形の基礎部以外の何らかの他の手段を使用することができる。代替として、電極は、全体として、円筒電極と置換されることができる。そのような実施形態では、円筒電極は、一般的には、主要なロッド26、28の半径よりも小さい半径を有する。
図2の変形例では、主要駆動電圧供給24は、示されるような駆動RF電圧VcosΩtを供給することができる。当技術分野で公知であるように、電圧供給24は、第1の周波数Ωで、かつ第1の位相において第1の対のロッド26に第1のRF電圧−VcosΩtを提供するための第1のRF電圧源24aを含むことができる一方で、電圧供給24はまた、再び第1の周波数Ωで、かつ第1の対のロッド26に印加される第1の電圧と反対の位相において第2の対のロッド28に第2のRF電圧VcosΩtを提供するように動作可能である第2のRF電圧源も含むことができる。図2に示される変形例では、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の両方に提供されるRF電圧の大きさは同じであるが、選択的に、いくつかの実施形態では、これらの電圧は、最大で10%異なってもよい。
示されるように、電圧供給24はまた、第1の対のロッドおよび第2の対のロッド28の両方に対して等しくなり得るロッドオフセット電圧をロッドに提供する。一般的には、このロッドオフセット電圧ROは、線形イオントラップ内に閉じ込められているイオンと極性が反対のDC電圧である。
図2に示されるように、補助電極12は、Y軸の左側に補助電極対12aを、Y軸の右側に補助電極対12bを含む。補助電極12aは、別個または独立の電力供給30に連結されることができる一方で、補助電極12bは、第2の独立電力供給34に連結されることができる。示されるように、第2の独立電力供給34が、DC電圧DC2のみを補助電極12bに供給する一方で、独立電力供給30は、主要電極またはロッド26または28に提供されるRF電圧(VcosΩt)と同じ周期または周波数のRF電圧成分Ucosとともに、DC電圧を電極12aに供給する。示されるように、補助電極12aに印加されるRF電圧は、主要電極26および28に提供される電圧に対してφだけ位相シフトされている。この位相シフトは、いくつかの実施形態では、下流RF増幅器に連結される位相変数全域通過フィルタとなり得る位相コントローラによって提供されることができる。
また、図2に示されるように、双極の励起AC電圧は、例えば、米国特許第6,177,688号で説明されているように、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するために、例えば、補助AC電圧源32によって第1の対のロッド26に提供されることができる。選択的に、双極励起信号によって励起される選択されたのは、33(図1に示される)を通り越えて検出器36へと軸方向に放出されて、質量スペクトルを生成することができる。代替として、これらのイオンは、さらなる処理のために、下流ロッドセットに伝送されることができる。例えば、イオンは、断片化され、下流質量分析計の中で分析されることができる。当技術分野で公知であるように、補助電圧源32によって提供されるAC電圧はしばしば、第1の周波数Ωよりもはるかに低い周波数となり得る。
ロッドに対して、図2に示される非対称構成の補助電極12aおよび12bを提供することによるが、補助電極12bではなく補助電極12aのみに印加されたシフト電圧によって、2次元の非対称で実質的に四重極の電場が提供されることができる。この非対称で実質的に四重極の電場は、図2に示されるように、一方の補助電極12aを他方の電極12aから分離するX軸と、補助電極12aを補助電極12bから分離するY軸とを含む。X軸およびY軸は、線形イオントラップ20および線形イオントラップ質量分析計システム10の両方において交差する。図2の実施形態では、補助AC電圧源32からの双極励起を、第2の対のロッド28ではなく、この第1のX軸によって二等分される第1の対のロッド26のみに提供することができるので、X軸または第1の軸はまた、励起面と呼ばれることもできる。
上記で説明された非対称様式で電圧を印加することによって、2次元電場のX軸およびY軸に沿って異なるポテンシャルを提供することにより、非対称性を提供することができる。つまり、X軸上のポテンシャルは、四重極成分に加えて、十二重極、十重極、八重極、六重極、および双極の成分を含み得る。六重極成分A3xは、最も強い高次成分であり得て、八重極成分A4xよりも少なくとも3倍強く、nが4よりも大きい整数である高次多極Anxよりも50倍以上強い。双極成分は、六重極成分A3xよりも約10倍強くあり得る。
対照的に、Y軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分A2yに加えて、主に、八重極成分A4y、八重極成分A4yの5%未満の振幅を有する1つおきの高次成分(A3yおよびAny、nyは4よりも大きい整数である)を含むことができる。
これらの多極成分の最大値は、位相差が0あるいは+または−180°であるときに得られることができる。位相φは、四重極または線形イオントラップ20の内側の電場の要因となる付加的な多極成分の極性、ならびに各電場成分と主要な四重極電場との間の実際の比率を決定することができる。実験結果は、約60°の位相シフトが良好な空間電荷公差を提供することを示す。しかしながら、電極整列に依存して、最適な位相シフトは、ある程度システムの間で変化し得る。さらに、電気的干渉およびプローブ静電容量により、実際のφ値は、この測定値とは異なる場合がある。
選択的に、低減した感度を犠牲にして、優れたピーク分解能を提供するために、位相シフトは、上記で説明された最適位相シフトから、より高い値に同調されることができる。より高い位相シフトにおいて、補助電極12aにおけるRFの振幅は、質量精度を失うことなく増加させることができる。例えば、160°の位相シフトおよび最適値よりも75%高いRF振幅Uにおいて、分解能を2倍増加させることができる一方で、感度は、200Daから300Daまでの質量範囲で40%だけ低下し得る。
加えて、主要RFの平衡(第1のRF電圧および第2のRF電圧の相対的な大きさである、これら2つの大きさは同じである必要はない)はまた、補助電極に提供される最適位相シフトおよびRF振幅の範囲を画定することに関与することにより、特定の質量について、質量分解能と感度との間で特定のトーレドオフを達成することができる。
また、補助電極12に印加される最適RF電圧、および主要ロッド26、28に印加される主要駆動RF電圧に対する位相シフトは、四重極アレイ上のRF平衡だけでなく、励起qまたは周波数Ωにも依存し得る。前述の実施例では、励起qは0.823であった。実験的に、励起qが0.823から0.742まで変化させられたときに、質量精度に対する所望の位相シフトは37度変化したことが観察されている。より正確には、所望の位相シフトは、37度増加した。より一般的に、位相シフトは、i)第1のRF電圧の大きさ、i)第2のRF電圧の大きさ、およびiii)第1のRF電圧の第1の周波数(第2のRF電圧の第2の周波数でもある)といった、変数のうちの1つ以上が変化させられたときに、質量精度を向上させるために調整され得る。
双極補助信号を使用して、イオンがそれらの基本永続周波数で励起され、ここで、例えば、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる米国特許第7,034,293号で説明されているように、Ωは、RFの角周波数であり、βは、マシュー安定性パラメータaおよびqの関数である。
ロッド26および28(図2参照)に印加される電圧が、それぞれ、VcosΩtおよびRO+VcosΩtであるときに、マシューパラメータaおよびqは、
a=0、および
q=2zV/(4mΩ2r0 2)
によって与えられ、ここで、Vは、角周波数Ωの正弦波電圧のゼロからピークまでの振幅である。
前述の説明では、ω0は、非線形成分が要因として考慮されない場合の周波数である。六重極および八重極等の高次項の存在により、イオン永続周波数はシフトされることができ、シフトはイオンの半径方向運動の振幅ととも変化することができる。
図3を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の変形例による、四重極線形イオントラップの補助電極12ならびにロッド対26および28が概略断面図で図示されている。明確にするために、同じ参照数字が、図2および3の両方に示される補助電極およびロッドの類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図3に関して繰り返されない。
図3の変形例では、補助電極12は、2つの電極または対の電極を含む。電圧は、DC1およびDC2電圧が1つのDC電圧に置換されることを除いて、図2からの変形例と同様に、補助電極12ならびにロッド対26および28に印加される。この構成において生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極12を他方の電極12から分離するX軸を含む。
図4を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の変形例による、四重極線形イオントラップの補助電極12ならびにロッド対26および28が概略断面図で図示されている。明確にするために、同じ参照数字が、図2および3の両方に示される補助電極およびロッドの類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図4に関して繰り返されない。
図4の変形例では、主要な駆動電圧供給24が再び、示されるような駆動RF電圧VcosΩtを提供することができる。当技術分野で公知であるように、電圧供給24は、第1の周波数Ωで、かつ第1の位相において、第1の対のロッド26に第1のRF電圧−VcosΩtを提供するための第1のRF電圧源24aを含むことができる一方で、電圧供給24はまた、再び第1の周波数Ωで、かつ第1の対のロッド26に印加される第1の電圧と反対の位相において、第2の対のロッド28に第2のRF電圧を提供するように動作可能である第2のRF電圧源24bも含むことができる。
示されるように、電圧供給24はまた、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の両方に等しくなり得るロッドオフセット電圧ROをロッドに提供することもできる。一般的には、このロッドオフセット電圧ROは、線形イオントラップ内に閉じ込められているイオンと極性が反対のDC電圧である。
図4に示されるように、補助電極12は、X軸より上側に補助電極対12aを、X軸より下側に補助電極対12bを含むことができる。言い換えれば、図4の変形例では、図2の変形例と違って、補助電極対12aは、Y軸の代わりにX軸によって補助電極対12bから分離している。補助電極12aは、別個または独立の電力供給30に連結されることができる一方で、補助電極12bは、第2の独立電力供給34に連結されることができる。示されるように、第2の独立電力供給34が、DC電圧DC2のみを補助電極12bに供給する一方で、独立電力供給30は、主要電極またはロッド26または28に提供されるRF電圧(VcosΩt)と同じ周期または周波数のRF電圧成分Ucos(φ)とともに、DC電圧を電極12aに供給する。示されるように、補助電極12aに印加されるRF電圧は、主要電極26および28に提供されるRF電圧に対してφだけ位相シフトされている。
双極励起AC電圧は、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するために、例えば、補助AC電圧源32によって第1の対のロッド26に提供されることができる。選択的に、双極励起信号によって励起される選択されたイオンは、質量スペクトルを生成するために、軸方向レンズ33を通過して(図1に示すように)検出器36まで軸方向に放出されることができる。代替として、これらのイオンは、さらなる処理のために、下流ロッドセットに伝送されることができる。代替として、イオンは、断片化され、下流質量分析計の中で分析されることができる。当技術分野で公知であるように、補助電圧源32によって提供されるAC電圧はしばしば、第1の周波数Ωよりもはるかに低い周波数となり得る。
図4に示される非対称構成であるが、補助電極12bではなく補助電極12aのみに印加された位相シフト電圧を有する補助電極12aおよび12bを提供することによって、2次元の非対称で実質的に四重極の電場を提供することができる。この非対称で実質的に四重極の電場は、図4に示されるように、一方の補助電極12aを他方の電極12bから分離するX軸と、一方の補助電極12aを他方の電極12aから分離するY軸とを含む。
上記で説明された非対称的に電圧を印加することによって非対称性を提供するために、2次元電場のX軸およびY軸に沿って、異なるポテンシャルを提供することができる。つまり、Y軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分に加えて、十二重極、十重極、八重極、六重極、および双極成分を含むことができる。六重極成分A3yは、最も強い高次成分となり得て、八重極成分A4yよりも少なくとも3倍強く、nyが4よりも大きい整数である高次多極Anyよりも50倍以上強い。双極成分は、六重極成分A3yよりも約10倍強くなり得る。対照的に、X軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分A2xに加えて、主に、八重極成分A4x、八重極成分A4xの5%未満の振幅を有する1つおきの高次成分(A3xおよびAnx、nxは4よりも大きい整数である)を含むことができる。
四重極、六重極、および八重極成分に実質的に限定されるという点で、生成されることができる電場の相対純度は、少なくとも部分的に、上記で説明されたように提供される電圧の限定された非対称性とともに、補助電極12を含む抽出領域中の線形イオントラップ20の対称性の結果として 。つまり、図2および4に示されるように、図1に示された線形イオントラップ20の抽出領域の中心軸に沿った任意の点において、中心軸と直交する関連面は、中心軸と交差し、第1の対の関連断面において第1の対のロッド26と交差し(図2および4において26としてマークされる)、第2の対の関連断面において第2の対のロッド28と交差する(図2および4においてにおいて28としてマークされる)。この第1の対の関連断面26は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第1の対の断面26の中の各断面26の中心を通過するX軸によって二等分される。第2の対の関連断面28は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第2の対の断面28の中の各断面28の中心を通過するY軸によって二等分される。X軸およびY軸は、実質的に直交し、中心軸において交差する。
抽出領域における中心軸に沿った任意の点において、中心軸に直角な関連面は、第1の対の補助断面における第1の対の補助電極12aと交差し(図2および4において12aとマークされる)、第2の対の関連補助断面において第2の対の補助電極12bと交差する(図2および4において12bと指定される)。図2の第1の構成では、第1の対の関連補助断面12aは、X軸(この実施形態では第1の軸)および第1の対の断面の中の一方の断面に関して実質的に対称に分布する。この構成では、第2の対の関連補助断面12bもまた、X軸および第1の対の断面の中の他方の断面に関して実質的に対称に分布する。
図4の第2の構成では、第1の対の関連補助断面12aが、Y軸(この実施形態では第1の軸)および第2の対の断面の中の一方の断面に関して実質的に対称に分布する一方で、第2の対の関連補助断面12bは、Y軸および第2の対の断面の中の他方の断面に関して実質的に対称に分布する。
図5を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の変形例による、四重極線形イオントラップの補助電極12ならびにロッド対26および28が概略断面図で図示されている。明確にするために、同じ参照数字が、図2、3、および4の両方に示される補助電極およびロッドの類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図4の説明は、図5に関して繰り返されない。
図5の変形例では、補助電極12は、2つの電極または対の電極を含む。電圧は、DC1およびDC2電圧が1つのDC電圧と置換されることを除いて、図4からの変形例と同様に、補助電極12ならびにロッド対26および28に印加される。この構成において生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極12を他方の電極12から分離するY軸を含む。
(補助電極電圧)
独立電力供給30によって補助電極12に提供されるDC電圧がロッドオフセットRO電圧よりも低いとき、または出口レンズ33に印加される障壁電圧がROよりも高いときに、イオンは、補助電極12を含有する線形イオントラップ20の抽出領域の中で蓄積することができる。いったんイオンが線形イオントラップ20の抽出領域の中に蓄積すると、以下でより詳細に説明されるように、たとえ補助電極に印加されるDC電圧がロッドオフセット電圧以上に上昇させられても、線形イオントラップ20の中央に向かう補助電極の上流端におけるカラー電極(図示せず)に、抽出領域内にイオンを閉じ込めるための好適な障壁電圧を提供することができる。
具体的には、補助電極12によって生成されるDC電場は、二重の作用を有することができる。第1に、上記で説明されたように、このDC電場は、線形イオントラップ20の抽出領域内にイオンを誘引し、ある程度含有するように、軸方向トラップを生成することができる。加えて、補助電極によって生成されるDC電場は、イオン雲の動態を変化させることができる半径方向の六重極および八重極の静電場を半径方向に導入することができる。これらの電場の強さは、例えば、電極に印加される電圧を変化させること、またはT字形電極の長方形の上部の奥行きを変化させることによって変化させることができる。選択的に、それらの長さに沿った異なる点で異なる電圧を提供するようにセグメントが構成されている、セグメント化された補助電極を提供すること、または、例えば、線形トラップ20の中心軸に対して補助電極を分岐または集中させることによる等の、他のアプローチも使用することができる。同様に、補助電極12によって導入される非線形のRF電場の強さは、RF電圧成分Ucos(Ωt+φ)を調整することによって、または補助電極12のT字形外形の奥行きを変化させるか、あるいはテーパ状にすることによって、調整することができる。
補助電極12のうちの2つに印加される補助RF電圧の大きさを、主要ロッドに印加されるRF電圧の大きさVに対して調整することが望ましくてもよい。具体的には、走査速度が増加させられるにつれて、補助電極12に提供されるRFの割合を増加させることが望ましくあり得るが、多くの実施形態では、補助電極12に印加されるより大きい大きさのRFがまた、より低い走査速度に有効であり得る。
種々の実施形態では、補助電極12に提供されるDC電圧DC1およびDC2の振幅は、放出されるイオンの特定の質量範囲および/または複数の質量範囲、ならびに質量選択的な軸方向放出の走査速度に対応する事前所望範囲内にあるように選択することができる。選択的に、DC1、DC2、U、またはVは、走査されているイオンの質量対電荷比に応じて、経時的に異なるレベルで変化させられてもよい。例えば、DC1、DC2、U、またはVの第1の設定は、第1の質量対電荷比内のイオンに対して所定のレベルに設定することができる。DC1、DC2、U、またはVの好適なレベルは、例えば、この第1の質量対電荷比内にあるか、またはそれに近いイオンの軸方向放出によって決定することができる。次いで、この第1の質量対電荷比内のイオンが軸方向に放出または走査された後に、第1の質量対電荷比範囲とは異なる第2の質量対電荷比範囲内のイオンを走査または軸方向に放出するために、DC1、DC2、U、またはVのレベルを調整することができる。再度、第2の質量対電荷比範囲に対するDC1、DC2、U、またはVの好適なレベルは、第2の質量対電荷比範囲内にあるか、またはそれに近い第2の検量体イオンの軸方向放出または走査によって決定されることができる。
イオントラップ20が充填されている間の図1の質量分析計システム10用のイオン経路電圧の一実施例が、以下に説明される。以下の説明では、RF電圧が、図2の第1の構成に従って、Y軸の片側に、X軸によって相互から分離している、補助電極12aに提供される。この実施例では、約−40Vのロッドオフセット電圧を、衝突セル18のロッドに対して維持することができる一方で、IQ3を−40.5Vの電圧で保つことができる。一般に、電圧は、衝突セル18のオフセット電圧よりも約0.5V小さくなり得る。選択的に、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10は、IQ3の下流および線形イオントラップ20の上流に対の太く短いロッドST3(図示せず)を含むことができる。そのような実施形態では、太く短いロッドは、衝突セル18のロッドオフセット電圧より5V小さい電圧、またはこの場合、−45Vの電圧に保つことができる。線形イオントラップ質量分析計システム10の主要ロッド26および28は、この場合、ロッド26および28が−48Vのロッドオフセット電圧を有することができるように、衝突セル18のロッドのロッドオフセット電圧よりも8Vだけ小さいロッドオフセット電圧に維持することができる。この場合、図2の第1の構成に従って補助電極12aに印加されるDC1は、補助電極12bに印加されるDC2と同様に、−100Vとなり得る。線形イオントラップ20の下流では、出口レンズ33を100Vの電圧に維持することができる一方で、検出器36を−6kVの電圧に維持することができる。
冷却中に、DC1およびDC2電圧を−170Vまで低下させることができる一方で、線形イオントラップ20のロッド26、28に印加されるロッドオフセット電圧は、最初に、−80Vまで、次いで、−100Vまで低下させることができ、最終的に、走査の10ms前に、電圧を−160Vまで低下させることができる。
質量選択的な軸方向放出中に、衝突セル18のロッドオフセット電圧を−200Vに設定することができる一方で、IQ3を100Vに設定することができる。衝突セル18の下流および線形イオントラップ20の上流にある随意的な太く短いロッドは、100Vの電圧に設定することができる一方で、ロッド26、28のロッドオフセット電圧は、−160Vに設定することができる。再度、図2の第1の構成に従って、−160Vの電圧に設定することができる一方で、DC2を−165Vの電圧に設定することができる。出口レンズ33を−146Vの電圧に維持することができる一方で、検出器を−6kVの電圧に維持することができる。DC2電圧は、質量とともに変化させることができる。この場合、関心質量は、範囲内であった。より高い質量対電荷比は、より多くの負の値を必要とし得る。個の場合のカラー電圧は1000Vであった。
(実験データ)
本発明の実施形態の側面によれば、322ダルトン質量付近の10ダルトン窓の中のイオンを、質量フィルタとして操作される四重極質量分析計16を通して伝送し、次いで、衝突セル18の中で27eVの衝突エネルギーにおいて断片化することができる。次いで、断片化または未断片化の前駆体の全てを、下流イオントラップ20の中に捕捉することができ、そこで冷却時間にわたって冷却することができる。この冷却時間後に、イオンは、検出器35に向かってトラップ20から選択的に放出することができ、質量スペクトルを取得することができる。
図6aを参照すると、全スペクトルが、0.2msの線形イオントラップ20の充填時間に対して示されている。非常に高い質量強度を除いて、この短い充填時間の間に、有意な空間電荷密度効果はないであろう。しかしながら、充填時間が増加させられるにつれて、空間電荷密度効果は、X軸に沿って測定される密度をシフトさせることができる。これを軽減するために、DCおよび補助RF電圧を、例えば、図2、3、4、または5の構成に従って、補助電極12に提供することができる。
図6bを参照すると、重複質量スペクトルが、図4aの全質量スペクトルからの261ダルトンの質量付近において拡大され、異なる充填時間について示されている。図2の第1の構成に従って、付加的な電圧が、4つの補助電極のうちの2つのみに印加される。補助電極12aと指標された、これら2つの補助電極は、励起ロッドのうちの1本(図2に示される励起ロッド26)の隣で、励起面(軸)Xの異なる側面上に配置される。示されるように、質量シフトは非常に小さい。つまり、msより100倍大きい20msの充填時間についてさえも、実際に測定されたm/zは、0.004ダルトンしか増加しなかった(ダルトン対261.126ダルトン)。
図6cを参照すると、重複質量スペクトルが、図6aの全質量スペクトルからの約261ダルトンの質量付近で拡大され、異なる充填時間について示されている。上記で説明されたように、有意な六重極および八重極の成分を有する実質的に四重極の電場もまた、図4の第2の構成に従って提供されることができる。この第2の構成に従って、再度、付加的なRF電圧が、12aと指定された対の補助電極に提供されるが、この構成では、両方の補助電極が、非励起ロッドのうちの1本(図4に示される最上励起ロッド28)の両側で、励起面またはX軸の同じ側面上に配置される。再度、示されるように、質量シフトは非常に小さい。つまり、0.2msの充填時間より100倍大きい20msの充填時間についてさえも、実際に測定された質量対電荷比は、0.004ダルトンしか増加しなかった(261.098ダルトン対261.095ダルトン)。図6bの質量スペクトルでも、図6cの質量スペクトルでも、線形イオントラップは較正されていない。線形イオントラップを較正することは、はるかに大きい程度まで、測定された質量信号ピークがイオンの理論的質量と整列させられることを可能にする。しかしながら、図6bおよび6cから、これらの図に図示される質量信号ピークは、空間電荷効果に起因しては、有意に移動しないことが明白である。
上記で説明されたように、双極励起が、第1の対のロッド26、または対角方向に配向された対の補助電極12のいずれか一方に提供されてもよい。しかしながら、本発明の他の実施形態によれば、代わりに四重極励起を使用することができる。図7を参照すると、図1の線形イオントラップ20に対する補助電極12の特定の変形例の半径方向位置が示されている。多くの側面では、図7の変形例は、図2の変形例に類似している。明確にするために、同じ参照数字が、図2および7の変形例の類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図7に関して繰り返されない。
図2の変形例と同様に、図7の変形例では、主要駆動電圧供給24が、示されるような駆動RF電圧VcosΩtを供給することができる。つまり、図2の変形例と同様に、図7の電圧供給24は、第1の周波数Ωで、かつ第1の位相において、第1の対のロッド26に第1のRF電圧−VcosΩtを提供するための第1のRF電圧源24aを含むことができる一方で、電圧供給24はまた、再び第1の周波数Ωで、かつ第1の対のロッドに印加される第1の電圧と反対の位相において、第2の対のロッド28に第2のRF電圧VcosΩtを提供するように動作可能である第2のRF電圧源24bも含むことができる。
しかしながら、図7の変形例では、第1のRF電圧源24aはまた、四重極励起電圧−ACcosωtを第1の対のロッド26に提供するように動作可能となり得る一方で、第2のRF電圧源24bは、四重極励起電圧を提供するように動作可能となり得る。当然ながら、この四重極励起電圧は、提供されなくてもよいが、線形イオントラップ20、選択された選択されたイオンを軸方向に放出するように提供することができる。関連して説明されたように、選択されたイオンは、質量スペクトルを生成するように、軸方向レンズ33を通過して検出器(図1に示される)まで軸方向に放出されることができる。代替として、これらのイオンは、さらなる処理のために、下流ロッドセットに伝送されることができる。当技術分野で公知であるように、RF電圧源によって提供される四重極励起電圧はしばしば、第1の周波数よりもはるかに低い周波数ωであり得る。
図8を参照すると、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の線形イオントラップの線形イオントラップの補助電極12およびロッド26、28の代替変形例が、断面図で図示されている。再度、双極励起が第1の対のロッド26に印加される代わりに、双極励起を、図8で12cと指定された対角方向に配向された対の補助電極に提供されることができることを除いて、図8の変形例は、図2の変形例と同様である。明確にするために、同じ参照数字が、図2および8の変形例の類似要素を指定するために使用される。簡潔にするために、図2の説明は、図8に関して繰り返されない。図8に示されるように、双極励起AC電圧は、例えば、その内容が参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第7,692,143号で説明されているように、軸方向放出を提供する双極励起信号を提供するために、補助AC電圧源32によって対角方向に配向された対の補助電極12cに提供することができる。補助電極12への電圧源30および32の接続の結果として、両方の参照数字12aおよび12dを使用して指定される1つの補助電極12は、主要電極またはロッド26または28に提供されるRF電圧と同じ周期または周波数のRF電圧成分−Ucos(Ωt+φ)とともに、DC電圧DC1のみを受容するように、電圧源30に連結される。示されるように、補助電極12aに印加されるRF電圧は、主要電極26および28に提供される電圧に対してφだけ位相シフトされている。
両方の参照数字12aおよび12cを使用して指定される第2の補助電極12は、DC電圧DC1、RF電圧成分Ucos(Ωt+φ)、および双極励起電圧−ACcoωtを受容する。上記で論議される補助電極、補助電極12a、12cに印加されるRF電圧Ucosは、主要電極26および28に提供されるRF電圧に対してφだけ位相シフトされている。双極励起電圧周波数ωは、第1の周波数Ωよりもはるかに低くなり得る。
両方の参照数字12bおよび12cを使用して指定される第3の補助電極12が、DC電圧、DC2、および双極電圧ACcosωtを受容する一方で、参照数字12bおよび12dを使用して指定される第4の補助電極12は、DC電圧DC2のみを受容する。
図2の構成と同様に、図8の構成では、X軸上のポテンシャルは、四重極成分に加えて、十二重極、十重極、八重極、六重極、および双極成分を含み得る。六重極成分A3xは、最も強い高次成分となり得て、八重極成分A4xよりも少なくとも3倍強く、nが4よりも大きい整数である高次多極Anxよりも強い。双極成分は、六重極成分A3xよりも約10倍強くなり得る。対照的に、Y軸上のポテンシャルは、主要な四重極成分A2yに加えて、主に、八重極成分A4y、八重極成分A4yの5%未満の振幅を有する1つおきの高次成分(A3yおよびAny、nyは4よりも大きい整数である)を含むことができる。
本発明の実施形態の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッド26と、第2の対のロッド28と、4つの補助電極12と、電圧供給24、30、32、34とを含む線形イオントラップ質量分析計システム10が提供されている。第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在することができる。4つの補助電極12は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域37中で第1の対のロッド26と第2の対のロッド28との間に間置されることができる。4つの補助電極は、第1の対の補助電極12aと、第2の対の補助電極12bとを含むことができる。第1の対の補助電極12aは、第1の対のロッドまたは第2の対のロッドのいずれか一方の中の単一のロッドによって分離され、かつそれに隣接することができ、第2の対の補助電極は、第1の対の補助電極を分離するロッドと対された他方のロッドによって分離され、かつそれに隣接することができる。電圧供給は、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および4つの補助電極に接続されることができ、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、iv)第1の対の補助電極に第1のDC電圧DC1を、およびv)第2の対の補助電極に第2のDC電圧DC2を提供するように動作可能となり得る。
選択的に、線形イオントラップシステム10は、ロッドセットおよび補助電極から軸方向に放出されるイオンを検出するように設置される検出器を含むことができる。さらに選択的に、電圧供給は、第1のRF電圧を第1の対のロッドに提供するように動作可能である第1の電圧源24aと、第2のRF電圧を第2の対のロッドに提供するように動作可能である第2の電圧源24bと、補助RF電圧を第1の対の補助電極に提供するように動作可能である補助電圧源30と、補助RF電圧源によって提供される補助電圧の位相および位相シフトを制御するための位相コントローラ(図示せず)とを含むことができる。
さらなる実施形態では、補助電圧源はさらに、第1の補助DC電圧DC1を第1の対の補助電極に提供するように動作可能となり得て、電圧供給はさらに、第2の補助DC電圧DC2を第2の対の補助電極に提供するための第2の補助電圧源34を含むことができる。
選択的に、補助電圧源30はさらに、第1の対の補助電極12aに提供される第1の補助DC電圧DC1を変化させるように動作可能または調整可能となり得る一方で、第2の補助電圧源34はさらに、第2の対の補助電極12bに提供される第2の補助DC電圧DC2を調整するように動作可能となり得る。位相コントローラはさらに、補助RF電圧源30によって提供される補助電圧の位相シフトを調整するように動作可能となり得る。
さらに選択的に、電圧源32は、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、周波数Ω低い周波数で、第1の対のロッド26または対角方向に配向された対の補助電極12のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供するように動作可能となり得る。双極励起DC電圧が提供されるものが対角方向に配向された対の補助電極である実施形態では、この対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対の補助電極12aおよび第2の対の補助電極12bのうちのそれぞれの1つの電極を含むことができる。
いくつかの実施形態では、線形イオントラップ20は、中心軸に沿った任意の点において中心軸と直交する関連面が、中心軸と交差し、第1の対の関連断面で第1の対のロッドと交差し、第2の対の関連断面で第2の対のロッドと交差するように、構成される。例えば、図2の断面図では、第1の対のロッド26が、第1の対の断面26によって表される一方で、第2の対のロッド28は、第2の対の断面28によって表されるように、関連面が断面図を画定する。第1の対の関連断面26は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第1の対の断面の中の各断面の中心を通過する第1の軸によって二等分される。図2の変形例では、第1の軸はX軸である。第2の対の関連断面28は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第2の対の断面の中の各断面の中心を通過する第2の軸によって二等分される。図2の変形例では、第2の軸はY軸であり、図2において点として示される中心軸は、XおよびY軸の交差点にある。抽出領域37内に位置する中心軸の抽出部分の中の中心軸に沿った任意の点において中心軸と直交する関連面は、第1の対の補助断面において第1の対の補助電極12aと交差し、第2の対の関連補助断面において第2の対の補助電極12bと交差する。図2では、第1の対の補助電極が、第1の対の補助断面12aによって表される一方で、第2の対の補助電極は、第2の対の補助断面12bによって表される。
多くの実施形態では、中心軸の抽出部分は、中心軸の半分未満を含む。
選択的に、抽出領域は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端となり得て、4つの補助電極12は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端を越えて軸方向に延在することができる。代替として、4つの補助電極12は、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28の放出端の手前で終端することができる。選択的に、第1の対の補助断面および第2の対の補助断面の中の各断面は、長方形の上部に接続される長方形の基礎部を含んで、実質的にT字形となり得る。
図2の構成、または図3、4、あるいは5の構成のいずれかに従って、図1の線形イオントラップ質量分析計システムを使用して、イオンを有利に処理することができる。例えば、有意なピーク移動を伴わずに、より高い空間電荷密度を適応させることができる。発明の実施形態の側面による方法に従って、第1の軸に沿った第1の軸ポテンシャルと、第1の軸と直交する第2の軸と、第2の軸に沿った第2の軸ポテンシャルとを有する、2次元の非対称で実質的に四重極の電場を提供することができる。第1の軸ポテンシャルは、振幅A21の四重極高調波と、振幅A31の六重極高調波と、振幅A41の八重極高調波とを含むことができ、種々の実施形態では、A41は、A21の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A41は、A21の0.01%よりも大きく、A41は、A21の5%およびA31の33%未満であり、第1の軸ポテンシャルに存在する振幅を有する任意の他の高次高調波について、n1は、4よりも大きい任意の整数であり、An1の10%よりも大きい。第2の軸ポテンシャルは、振幅A22の四重極高調波と、振幅A42の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A42は、A22の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A42は、A22の0.01%よりも大きく、A42は、A22の5%未満であり、電場の第2の軸ポテンシャルに存在する振幅An2を有する任意の他の高次高調波について、n2は、4以外の2よりも大きい任意の整数であり、A42は、An2の10%よりも大きい。いったんこの電場が確立および生成されると、およびそれが維持されている間、イオンを電場に導入することができる。
図2に示される第1の構成によれば、第1の軸ポテンシャルがX軸ポテンシャルであり、第2の軸ポテンシャルがY軸ポテンシャルであるように、第1の軸は、X軸となり得、第2の軸は、Y軸となり得る。
他方では、図3の第2の構成の場合、より大きい六重極成分がX軸ではなくY軸上に提供され、第1の軸は、Y軸となり得、第2の軸は、X軸であり得る。
選択的に、A31は、An1の30倍または50倍よりも大きくあり得る。
選択的に、線形イオントラップ20は、第1の対のロッド26と、第2の対のロッド28と、4つの補助電極12とを含み、4つの補助電極12は、第1の対のロッド26と第2の対のロッド28との間に間置され、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28のうちの1つを二等分する第1の面によって分離している第1の対の補助電極12および第2の対の補助電極12を含む。この実施形態を上記の実施形態に関係させると、1)第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に対して直角であり、2)電場を確立し、維持するステップは、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッド26に第1のRF電圧を、ii)第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッド28に第2のRF電圧を、iii)第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、iv)第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、v)第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するステップを含む。方法は、1)電場からイオンの選択された部分を、軸方向に放出するステップとして当技術分野で知られている、軸方向に伝送するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、2)摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、3)選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、i)補助RF電圧の位相シフト、ii)第1の対の補助電極の電圧、iii)第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、およびiv)第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含むことができる。
選択的に、電場を確立し、維持するステップは、RF電圧を第2の対の補助電極12bに提供することなく、第2のDC電圧DC2を第2の対の補助電極に提供するステップを含むことができる。
さらに選択的に、電場を確立し、維持するステップは、第2の補助RF電圧を、第2のDC電圧DC2を有する第2の対の補助電極12bに提供するステップを含むことができ、第2の補助RF電圧は、第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧に対して180°位相シフトされている。
選択的に、補助RF電圧の位相シフトは、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、例えば、下流RF増幅器に連結された位相変数全域通過フィルタ等の位相コントローラによって変化させることができる。第1の位相に対する実際の位相シフトは、ゼロとなり得る。摺動m/z比は、補助RF電圧の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧等の変数を調整することによって、質量スペクトルの水平に沿って、このm/z比を移動させることができるので、そのように称される。
選択的に、位相シフトは、50°から70°までの間、61°までの間、または−70°から70°までの間となり得る。さらなる実施形態によれば、所望の位相シフトはまた、第1の対のロッド26および第2の対のロッド28に提供されるRF電圧に依存し得る。上記で説明されたように、この位相シフトはまた、低減した感度を犠牲にして、より良好なピーク分解能を達成するように、50°から70°までの間、または選択的に−70°から70°までの間の最適位相から調整されることもできる。つまり、より高い位相シフトで、質量精度を失うことなく、補助電極のRFの振幅を増加させることができる。加えて、線形イオントラップ20の主要ロッド26、28に印加されるRFの平衡もまた、最適位相シフトの範囲、ならびに特定の質量分解能および感度を達成するために必要とされる補助電極12のRF振幅を画定することに関与することができる。言い換えれば、図2および3に示される変形例では、両方の対のロッド26および28に提供されるRFの大きさは、依然として同じであるが、選択的に、ロッド28に提供されるRFの大きさに対してRFの異なる大きさをロッド26に提供することができる。
六重極八重極が追加され、他の多重極がない、線形四重極のポテンシャルが、式(1)および(2)によって求められる。例えば、Douglas et al.,Russian Journal of The Technical Physics,1999,vol.69,96−101を参照されたい。双極子モーメントも軸のうちの一方、図2の変形例についてはX軸の上に存在するときに、付加的なΦ1(x)=A1x/r0が、電場の要因となり、ここで、r0は電場の半径である。以下の式2(および3)は、双極、六重極、および八重極電場が電場に追加されたときのX軸上のポテンシャルを示す。以下の式では、X軸においてY=0であるので、yを含む項はゼロである。
本発明の実施形態の変形例によれば、生成されるのは、中心軸を含む2次元の非対称で実質的に四重極の電場と見なすことができ、本発明の他の変形例に関連して上記で説明された第1の軸と第2の軸(X軸およびY軸であるが、必ずしもそれぞれがそうではない)とは、中心軸で交差する。上記で説明されたように、第1の軸が、対のロッドの断面を二等分する一方で、第2の軸は、別の対のロッドの断面を二等分する。この2次元の電場において、八重極成分Φ4の絶対値と、第1の軸に沿った六重極成分Φ3の絶対値とを加算することによって得られる合計は、第1の軸によって二等分される断面から中心軸への移動を増加させることができる。同様に、この2次元の電場において、八重極成分Φ4の絶対値と、第2の軸に沿った六重極成分Φ3の絶対値とを加算することによって得られる第2の合計は、中心軸に向かう第2の軸によって二等分される対のロッドからの移動を増加させることができる。
さらなる実施形態によれば、図1の線形トラップシステム10の線形イオントラップ20は、軸方向レンズ33を含むことができ、4つの補助電極12は、4本のロッド26および28の長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッド26と第2の対のロッド28との間に間置されることができる。そのような変形例では、本発明の実施形態のある側面による方法は、イオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出する前に、抽出領域37中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップをさらに含むことができる。
本発明のこの実施形態のさらなる変形例では、イオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドにロッドオフセット電圧ROを提供するステップを含んでもよい。ロッドオフセット電圧ROは、4つの補助電極に提供されるDC電圧よりも高くなり得る。DC捕捉電圧も軸方向レンズ33に提供することができ、ロッドオフセット電圧は、この軸方向レンズ電圧よりも低くなり得る。この手段によって、軸方向放出の前にイオンの選択された部分を保持するために、補助電極12の近傍で電圧ウェルを生成することができる。
上記で説明されたように、電場から選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を伝送する、すなわち、軸方向に放出するステップは、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方にAC電圧を提供するステップを含むことができる。図8に示されるように、対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの一方を二等分する面と、第1の面に対して直角であり、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの他方を二等分する第2の面とによって分離している。図8の変形例では、双極励起AC電圧が印加される対角方向に配向された対のロッドは、ロッド12cであるが、代替として、双極励起電圧が、対角方向に配向された対のロッド12dに同程度に簡便に印加される。
選択的に、上記で説明されたように、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出するステップは、選択されたのを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、四重極励起電圧を第1の周波数よりも低い周波数でロッドおよび第2の対のロッドに提供するステップを含む。
本発明の実施形態のさらなる変形例によれば、異なるm/zを有するイオンの後続部分を放出するために、イオンの選択された部分を放出した後に、補助電極12および主要ロッド26、28を再較正することができる。例えば、第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧あるいは第1のDC電圧の補助周波数の位相、または第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、または第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧に対する異なる設定が、異なるm/zの異なるイオンに対する選択されたm/zに向かって摺動させるために望ましくあり得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、電場を有するイオンの選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出した後に、方法はさらに、1)電場からイオンの第2の選択された部分を軸方向に伝送する、すなわち、軸方向に放出するステップであって、イオンの第2の選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、2)第2の摺動m/z比を中心とする第2の摺動質量信号ピークを提供するために、イオンの第2の選択された部分を検出するステップと、3)選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、i)補助RF電圧の補助周波数の位相シフト、ii)第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される電圧、およびiv)第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含むことができる。
選択的に、位相シフトは、i)第1のRF電圧の大きさ、i)第2のRF電圧の大きさ、およびiii)電圧の第1の周波数(第2のRF電圧の第2の周波数でもある)といった、変数のうちの1つ以上の変化に基づいて調整されてもよい。
使用中に、本発明の実施形態の側面によれば、第1の軸と、第1の軸に沿った第1の軸ポテンシャルと、第1の軸と直交する第2の軸と、第2の軸に沿った第2の軸ポテンシャルとを有する2次元の非対称で実質的に四重極の電場を確立し、維持し、次いで、イオンを電場に導入する方法において、イオンを処理する方法が提供される。第1の軸ポテンシャルは、振幅A21の四重極高調波と、振幅A31の六重極高調波と、振幅A41の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A41は、 よりも大きく、実施形態では、A41は、 よりも大きく、 A21およびA31の33%であり、第1の軸ポテンシャルに存在する振幅を有する任意の他の高次高調波について、n1は、 よりも大きい任意の整数であり、 An1の10倍よりも大きい。第2の軸ポテンシャルは、振幅A22の四重極高調波と、振幅A42の八重極高調波とを含み、種々の実施形態では、A42は、A22の0.001%よりも大きく、種々の実施形態では、A42は、A22の0.01%よりも大きく、A42は、A22の5%未満であり、電場の第2の軸ポテンシャルに存在する振幅An2を有する任意の他の高次高調波について、n2は、4以外の2よりも大きい任意の整数であり、A42は、An2の10倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の30倍よりも大きい。本発明の実施形態の側面によれば、A31は、An1の50倍よりも大きい。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、線形イオントラップは、第1の対の 、第2の対のロッドと、第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置され、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している第1の対の補助電極および第2の対の補助電極を含む4つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に対して直角である。電場を確立し、維持するステップは、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するステップを含むことができる。方法は、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するために、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/z するために、補助RF電圧の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとをさらに含む。
本発明の実施形態の側面によれば、方法が提供され、 は、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、第1の対のロッドのうちの1つと第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置され、第1の対のロッドのうちの1つまたは第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離している対の補助電極を含む2つの補助電極とを含む。第1の軸は、第1の面にあり、第2の軸は、第1の面に直角である。電場を確立し、維持するステップは、 周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、対の補助電極に補助RF電圧を、対の補助電極にDC電圧を提供するステップを含むことができる。方法はさらに、電場からイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの選択された部分は、選択されたm/zを有する、ステップと、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の位相シフト、対の補助電極に提供されるDC電圧、および対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するX軸(例えば、第1の軸)を含む。種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するY軸(例えば、第2の軸)を含む。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持するステップは、RF電圧を第2の対の補助電極に提供することなく、DC電圧を第2の対の補助電極に提供するステップを含む。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持する方法は、DC電圧を対の補助電極に提供するステップを含む。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持するステップは、第2の補助RF電圧を、DC電圧を有する第2の対の補助電極に提供するステップを含み、第2の補助RF電圧は、第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧に対して180度位相シフトされている。
種々の実施形態では、電場を確立し、維持するステップは、第2の補助RF電圧を、DC電圧を有する対の補助電極に提供するステップを含み、第2の補助RF電圧は、対の補助電極に提供される補助RF電圧に対して180度位相シフトされる。
種々の実施形態では、方法は、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、補助RF電圧の位相シフトを調整するステップをさらに含む。
種々の実施形態では、方法は、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、および第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップをさらに含む。種々の実施形態では、位相シフトは、−70度から70度までの間である。種々の実施形態では、位相シフトは、0度である。
種々の実施形態では、方法は、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、対の補助電極に提供されるDC電圧を調整するステップをさらに含む。種々の実施形態では、位相シフトは、−70度から70度までの間である。種々の実施形態では、位相シフトは、0度である。
種々の実施形態では、電場から選択されたm/zを有するイオンの記選択された部分を軸方向に放出するステップは、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドに四重極励起AC電圧を提供するステップを含む。
種々の実施形態では、方法が提供され、線形イオントラップは、出口レンズをさらに含み、4つの補助電極は、4本のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置され、方法は、イオンの選択された部分を軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップをさらに含む。
種々の実施形態では、方法が提供され、線形イオントラップは、出口レンズをさらに含み、対の補助電極は、4本のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドのうちの1本と第2の対のロッドのうちの1本との間に間置される。方法は、イオンの選択された部分を軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップをさらに含む。
種々の実施形態では、イオンの選択された部分を軸方向に放出する前に、抽出領域中でイオンの選択された部分を軸方向に捕捉するステップは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドにロッドオフセット電圧を提供するステップであって、ロッドオフセット電圧は、補助電極に提供されるDC電圧よりも高くなり得る、ステップと、出口レンズに印加されるDC捕捉電圧を提供するステップとを含み、ロッドオフセット電圧は、出口レンズに印加されるDC捕捉電圧よりも低い。
種々の実施形態では、電場から選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を軸方向に放出するステップは、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するために、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供するステップを含み、対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの一方を二等分する第1の面と、第1の面に対して直角であり、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドのうちの他方を二等分する第2の面との両方によって分離している。
種々の実施形態では、方法は、電場から選択されたm/z比を有するイオンの部分を軸方向に放出した後に、電場からイオンの第2の選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの第2の選択された部分は、第2の選択されたm/zを有する、ステップと、第2の摺動m/z比を中心とする第2の摺動質量信号ピークを提供するように、イオンの第2の選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように、補助RF電圧の補助周波数の位相シフト、第1の対の補助電極に提供される第1のDC電圧、第2の対の補助電極に提供される第2のDC電圧、および第1の対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとをさらに含む。
種々の実施形態では、方法はさらに、電場から選択されたm/z比を有するイオンの選択された部分を軸方向に放出した後に、電場からイオンの第2の選択された部分を軸方向に放出するステップであって、イオンの第2の選択された部分は、第2の選択されたm/zを有する、ステップと、第2の摺動m/z比を中心とする第2の摺動質量信号ピークを提供するために、イオンの第2の選択された部分を検出するステップと、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるために、対の補助電極に提供される補助RF電圧またはDC電圧の位相シフト、または対の補助電極に提供される補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整するステップとを含む。
種々の実施形態では、選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させるように位相シフトを調整するステップは、第1のRF電圧の大きさ、第2のRF電圧の大きさ、および第1の周波数のうちの少なくとも1つへの変更に基づいて、位相シフトを調整するステップを含み、第2の周波数は、第1の周波数とともに変化する。
使用中に、本発明の実施形態の別の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、第2の対のロッドであって、第2の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドと第2の対のロッドとの間に間置される、4つの補助電極と、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および4つの補助電極に接続される、電圧供給とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。4つの補助電極は、第1の対の補助電極と、第2の対の補助電極とを含み、第1の対の補助電極は、第1の対のロッドまたは第2の対のロッドのいずれか一方の中の単一のロッドによって分離され、かつそれに隣接する。電圧供給は、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、第1の対の補助電極に補助RF電圧を、第1の対の補助電極に第1のDC電圧を、および第2の対の補助電極に第2のDC電圧を提供するように動作可能である。種々の実施形態では、補助電極上に印加されるRFは、第1の対のロッドに印加されるRFに位相固定され、第1の対のロッドに印加されるRFの第1の位相に対する位相シフトは、0度、または−70から70度までの間となり得る。
本発明の実施形態の側面によれば、中心軸と、第1の対のロッドであって、第1の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、第2の対のロッドであって、第2の対のロッドの中の各ロッドは、中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で第1の対のロッドのうちの1本と第2の対のロッドのうちの1本との間に間置される、2つの補助電極であって、2つの補助電極は、対の補助電極を含み、対の補助電極は、第1の対のロッドからの単一のロッドおよび第2の対のロッドからの単一のロッドによって分離され、かつそれらに隣接する、2つの補助電極とを含む、線形イオントラップシステムが提供される。電圧供給が、第1の対のロッド、第2の対のロッド、および2つの補助電極に接続され、電圧供給は、第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1の対のロッドに第1のRF電圧を、第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ第1の位相と反対の第2の位相において、第2の対のロッドに第2のRF電圧を、第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって第1の位相からシフトされた補助周波数で、対の補助電極に補助RF電圧を、および第1の対の補助電極にDC電圧を提供するように動作可能である。種々の実施形態では、補助電極上に印加されるRFは、第1の対のロッドに印加されるRFに位相固定され、第1の対のロッドに印加されるRFの第1の位相に対する位相シフトは、0度、または−70から70度までの間となり得る。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、X軸を含む。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、Y軸を含む。
種々の実施形態では、線形イオントラップシステムはさらに、ロッドセットおよび補助電極から軸方向に放出されるイオンを検出するように設置される、検出器を含む。
種々の実施形態では、電圧供給は、第1のRF電圧を第1の対のロッドに提供するように動作可能である第1の電圧源と、第2のRF電圧を第2の対のロッドに提供するように動作可能である第2の電圧源と、補助RF電圧を第1の対の補助電極に、または種々の実施形態では対の補助電極に提供するように動作可能である補助電圧源と、補助RF電圧源によって提供される補助電圧の位相および位相シフトを制御するための位相コントローラとを含む。
種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、第1の補助DC電圧を第1の対の補助電極に提供するように動作可能であり、電圧供給はさらに、第2の補助DC電圧を第2の対の補助電極に提供するための第2の補助電圧源を含む。
種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、第1の対の補助電極に提供される第1の補助DC電圧を調整するように動作可能であり、第2の補助電圧源はさらに、第2の対の補助電極に提供される第2の補助DC電圧を調整するように動作可能である。
種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、対の補助電極に提供される第1の補助DC電圧を調整するように動作可能である。種々の実施形態では、補助電圧源はさらに、対の補助電極に提供される補助DC電圧を調整するように動作可能である。
種々の実施形態では、位相コントローラはさらに、補助RF電圧源によって提供される補助電圧の位相シフトを調整するように動作可能である。
種々の実施形態では、電圧供給はさらに、選択されたm/zを有するイオンの選択された部分を半径方向に励起するよう、第1の周波数よりも低い周波数で、第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供するように動作可能である。例えば、対角方向に配向された対の補助電極は、第1の対の補助電極および第2の対の補助電極のうちのそれぞれからの1つの電極を含む。
種々の実施形態では、中心軸に沿った任意の点で、中心軸と直交する関連面は、中心軸と交差し、第1の対の関連断面で第1の対のロッドと交差し、第2の対の関連断面で第2の対のロッドと交差する。第1の対の関連断面は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第1の対の断面の中の各断面の中心を通過する、第1の軸によって二等分される。第2の対の関連断面は、中心軸に関して実質的に対称に分布し、中心軸と直交する関連面内に位置し、第2の対の断面の中の各断面の中心を通過する、第2の軸によって二等分される。第1の軸および第2の軸は、実質的に直交し、中心軸で交差する。抽出領域の中心軸に沿った任意の点で、中心軸と直交する関連面は、第1の対の補助断面で第1の対の補助電極と交差し、第2の対の関連補助断面で第2の対の補助電極と交差する。
種々の実施形態では、中心軸の抽出部分は、中心軸の長さの半分未満を含む。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を含み、4つの補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を越えて軸方向に延在する。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を含み、補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を越えて軸方向に延在する。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端を含み、補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端の手前で終端する。
種々の実施形態では、抽出領域は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの を含み、対の補助電極は、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドの放出端の手前で終端する。
種々の実施形態では、第1の対の補助断面および第2の対の補助断面の中の各断面は、長方形の上部に接続される長方形の基礎部を含み、実質的にT字形である。種々の実施形態では、対の補助断面の中の各断面は、長方形の上部に接続される長方形の基礎部を含み、実質的に 形である。
全てのそのような修正または変形例は、本明細書に添付された請求項によって定義されるような出願人の教示の分野および範囲内であると考えられる。
種々の実施形態では、生成される非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するX軸を含む。種々の実施形態では、非対称で実質的に四重極の電場は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離するY軸を含む。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
線形イオントラップの中でイオンを処理する方法であって、
該方法は、
2次元の非対称で実質的に四重極の電場を確立し、維持することであって、該電場は、第1の軸と、該第1の軸に沿う第1の軸ポテンシャルと、該第1の軸と直交する第2の軸と、該第2の軸に沿う第2の軸ポテンシャルとを有し、i)該第1の軸ポテンシャルは、振幅A2 1 の四重極高調波と、振幅A3 1 の六重極高調波と、振幅A4 1 の八重極高調波とを含み、A4 1 は、A2 1 の0.01%よりも大きく、A4 1 は、A2 1 の5%およびA3 1 の33%未満であり、該第1の軸ポテンシャルに存在する振幅An 1 を有する任意の他の高次高調波について、n 1 は、4よりも大きい任意の整数であり、A3 1 は、An 1 の10倍よりも大きく、ii)該第2の軸ポテンシャルは、振幅A2 2 の四重極高調波と、振幅A4 2 の八重極高調波とを含み、A4 2 は、A2 2 の0.01%よりも大きく、A4 2 は、A2 2 の5%未満であり、該電場の該第2の軸ポテンシャルに存在する振幅An 2 を有する任意の他の高次高調波について、n 2 は、4以外の2よりも大きい任意の整数であり、A4 2 は、An 2 の10倍よりも大きい、ことと、
イオンを該電場に導入することと
を含む、方法。
(項目2)
A4 1 は、A2 1 の0.001%よりも大きく、A4 2 は、A2 2 の0.001%よりも大きい、項目1に記載の方法。
(項目3)
A3 1 は、An 1 の30倍よりも大きい、項目1に記載の方法。
(項目4)
A3 1 は、An 1 の50倍よりも大きい、項目1に記載の方法。
(項目5)
項目4に記載の方法であって、
該方法は、
前記線形イオントラップが、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、4つの補助電極とを含み、該4つの補助電極は、該第1の対のロッドと該第2の対のロッドとの間に間置され、第1の対の補助電極および第2の対の補助電極を含み、該第1の対の補助電極と該第2の対の補助電極とは、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドのうちの1つを二等分する第1の面によって分離され、
前記第1の軸は、該第1の面にあり、前記第2の軸は、該第1の面と直交し、
該電場を確立し、維持することは、i)第1のRF電圧を、第1の周波数で、かつ第1の位相において該第1の対のロッドに、ii)第2のRF電圧を、該第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ該第1の位相と反対の第2の位相において、該第2の対のロッドに、iii)補助RF電圧を、該第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって該第1の位相からシフトされた補助周波数で、該第1の対の補助電極に、iv)第1のDC電圧を該第1の対の補助電極に、およびv)第2のDC電圧を該第2の対の補助電極に提供することを含み、
該方法は、
前記イオンの選択された部分を該電場から軸方向に放出することであって、該イオンの該選択された部分は、選択されたm/zを有する、ことと、
該イオンの該選択された部分を検出することであって、該検出することにより、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供する、ことと、
i)該補助RF電圧の該位相シフト、ii)該第1の対の補助電極に提供される該第1のDC電圧、iii)該第2の対の補助電極に提供される該第2のDC電圧、およびiv)該第1の対の補助電極に提供される該補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整することであって、該調整することにより、該選択されたm/zに向かって該摺動m/z比を摺動させる、ことと
をさらに含む、方法。
(項目6)
前記電場を確立し、維持することは、RF電圧を前記第2の対の補助電極に提供することなく、前記第2のDC電圧を該第2の対の補助電極に提供することを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記電場を確立し、維持することは、第2の補助RF電圧を、前記第2のDC電圧を有する前記第2の対の補助電極に提供することを含み、該第2の補助RF電圧は、前記第1の対の補助電極に提供される前記補助RF電圧に対して180度位相シフトされている、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記補助RF電圧の前記位相シフトを調整することをさらに含み、該調整することにより、前記選択されたm/zに向かって前記摺動m/z比を摺動させる、項目5に記載の方法。
(項目9)
i)前記第1の対の補助電極に提供される前記第1のDC電圧、およびii)前記第2の対の補助電極に提供される前記第2のDC電圧のうちの少なくとも1つを調整することをさらに含み、該調整することにより、前記選択されたm/zに向かって前記摺動m/z比を摺動させる、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記位相シフトは、−70度から70度までの間である、項目5に記載の方法。
(項目11)
前記位相シフトは、ゼロである、項目5に記載の方法。
(項目12)
前記電場からの前記選択されたm/zを有する前記イオンの前記選択された部分を軸方向に放出することは、前記第1の周波数よりも低い周波数で、四重極励起AC電圧を前記第1の対のロッドおよび前記第2の対のロッドに提供することを含み、該提供することにより、該選択されたm/zを有する該イオンの該選択された部分を半径方向に励起する、項目5に記載の方法。
(項目13)
項目5に記載の方法であって、前記線形イオントラップシステムは、出口レンズをさらに含み、前記4つの補助電極は、前記4本のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中で前記第1の対のロッドと前記第2の対のロッドとの間に間置され、該方法は、前記イオンの前記選択された部分を軸方向に放出する前に、該抽出領域中に該イオンの該選択された部分を軸方向に捕捉することをさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目14)
前記イオンの前記選択された部分を軸方向に放出する前に、前記抽出領域中に該イオンの該選択された部分を軸方向に捕捉することは、前記第1の対のロッドおよび前記第2の対のロッドにロッドオフセット電圧を提供することであって、該ロッドオフセット電圧は、前記4つの補助電極に提供される前記DC電圧よりも高い、ことと、前記出口レンズに印加されるDC捕捉電圧を提供することとを含み、該ロッドオフセット電圧は、該出口レンズに印加される該DC捕捉電圧よりも低い、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記電場からの前記選択されたm/zを有する前記イオンの前記選択された部分を軸方向に放出することは、前記第1の周波数よりも低い周波数で、前記第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供して、該選択されたm/zを有する該イオンの該選択された部分を半径方向に励起することを含み、該対角方向に配向された対の補助電極は、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドのうちの一方を二等分する前記第1の面と、該第1の面と直交し、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドのうちの他方を二等分する第2の面との両方によって分離している、項目5に記載の方法。
(項目16)
前記電場からの前記選択されたm/z比を有する前記イオンの前記選択された部分を軸方向に放出した後に、
該電場から該イオンの第2の選択された部分を軸方向に放出することであって、該イオンの該第2の選択された部分は、第2の選択されたm/zを有する、ことと、
該イオンの第2の選択された部分を検出することであって、該検出することにより、第2の摺動m/z比を中心とする第2の摺動質量信号ピークを提供する、ことと、
i)前記補助RF電圧の前記補助周波数の前記位相シフト、ii)前記第1の対の補助電極に提供される前記第1のDC電圧、iii)前記第2の対の補助電極に提供される前記第2のDC電圧、およびiv)該第1の対の補助電極に提供される該補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整することであって、該調整することにより、該選択されたm/zに向かって該摺動m/z比を摺動させる、ことと
さらに含む、項目5に記載の方法。
(項目17)
前記位相シフトを調整することにより、前記選択されたm/zに向かって前記摺動m/z比を摺動させることは、i)前記第1のRF電圧の大きさ、ii)前記第2のRF電圧の大きさ、およびiii)前記第1の周波数のうちの少なくとも1つへの変更に基づいて、該位相シフトを調整することを含み、前記第2の周波数は、前記第1の周波数とともに変化する、項目5に記載の方法。
(項目18)
項目4に記載の方法であって、
該方法は、
前記線形イオントラップが、第1の対のロッドと、第2の対のロッドと、2つの補助電極とを含み、該2つの補助電極は、前記第1の対のロッドのうちの1つと前記第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置され、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドのうちのいずれか一方を二等分する第1の面によって分離している対の補助電極を含み、
前記第1の軸は、該第1の面にあり、前記第2の軸は、該第1の面に直角であり、
該電場を確立し、維持することは、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1のRF電圧を該第1の対のロッドに、ii)該第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ該第1の位相と反対の第2の位相において、第2のRF電圧を該第2の対のロッドに、iii)該第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって該第1の位相からシフトされた補助周波数で、補助RF電圧を該第1の対の補助電極に、iv)DC電圧を該対の補助電極に、提供することを含み、
該方法は、
該電場からの該イオンの選択された部分を軸方向に放出することであって、該イオンの該選択された部分は、選択されたm/zを有する、ことと、
該イオンの該選択された部分を検出することであって、該検出することにより、摺動m/z比を中心とする摺動質量信号ピークを提供する、ことと、
i)該補助RF電圧の該位相シフト、ii)該対の補助電極に提供される該DC電圧、およびiii)該対の補助電極に提供される該補助RF電圧のうちの少なくとも1つを調整することであって、該調整することにより、該選択されたm/zに向かって摺動m/z比を摺動させる、項目4に記載の方法。
(項目19)
前記非対称四重極電場は、X軸を含み、該X軸は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記非対称四重極電場は、Y軸を含み、該Y軸は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、項目18に記載の方法。
(項目21)
線形イオントラップシステムであって、
該システムは、
中心軸と、
第1の対のロッドであって、該第1の対のロッドの中の各ロッドは、該中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、
第2の対のロッドであって、該第2の対のロッドの中の各ロッドは、該中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、
4つの補助電極であって、該4つの補助電極は、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中において、該第1の対のロッドと該第2の対のロッドとの間に間置され、該4つの補助電極は、第1の対の補助電極と、第2の対の補助電極とを含み、該第1の対の補助電極は、該第1の対のロッドまたは該第2の対のロッドのいずれか一方の中の単一のロッドによって分離され、かつそれに隣接している、4つの補助電極と、
電圧供給であって、該電圧供給は、該第1の対のロッド、該第2の対のロッド、および該4つの補助電極に接続され、該電圧供給は、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1のRF電圧を該第1の対のロッドに、ii)該第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ該第1の位相と反対の第2の位相において、第2のRF電圧を該第2の対のロッドに、iii)該第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって該第1の位相からシフトされた補助周波数で、補助RF電圧を該第1の対の補助電極に、iv)第1のDC電圧を該第1の対の補助電極に、およびv)第2のDC電圧を該第2の対の補助電極に、提供するように動作可能である、電圧供給と
を含む、システム。
(項目22)
検出器をさらに含み、該検出器は、前記ロッドセットおよび前記補助電極から軸方向に放出されるイオンを検出するように設置される、項目21に記載の線形イオントラップシステム。
(項目23)
前記電圧供給は、前記第1のRF電圧を前記第1の対のロッドに提供するように動作可能である第1の電圧源と、前記第2のRF電圧を前記第2の対のロッドに提供するように動作可能である第2の電圧源と、前記補助RF電圧を前記第1の対の補助電極に提供するように動作可能である補助電圧源と、該補助RF電圧源によって提供される該補助電圧の位相および位相シフトを制御するための位相コントローラとを含む、項目21に記載の線形イオントラップシステム。
(項目24)
前記補助電圧源は、第1の補助DC電圧を前記第1の対の補助電極に提供するようにさらに動作可能であり、
前記電圧供給は、第2の補助DC電圧を前記第2の対の補助電極に提供するための第2の補助電圧源をさらに含む、
項目23に記載の線形イオントラップシステム。
(項目25)
前記補助電圧源は、前記第1の対の補助電極に提供される前記第1の補助DC電圧を調整するようにさらに動作可能であり、
前記第2の補助電圧源は、前記第2の対の補助電極に提供される前記第2の補助DC電圧を調整するようにさらに動作可能であり、
前記位相コントローラは、前記補助RF電圧源によって提供される該補助電圧の前記位相シフトを調整するようにさらに動作可能である、
項目24に記載の線形イオントラップシステム。
(項目26)
前記電圧供給は、前記第1の周波数よりも低い周波数で、前記第1の対のロッドまたは対角方向に配向された対の補助電極のいずれか一方に双極励起AC電圧を提供することにより、前記選択されたm/zを有する前記イオンの前記選択された部分を半径方向に励起するようにさらに動作可能であり、
該対角方向に配向された対の補助電極は、前記第1の対の補助電極および前記第2の対の補助電極の各々からの1つの電極を含む、
項目25に記載の線形イオントラップ。
(項目27)
前記中心軸に沿った任意の点において、
該中心軸と直交する関連面は、該中心軸と交差し、第1の対の関連断面における前記第1の対のロッドと交差し、第2の対の関連断面における前記第2の対のロッドと交差し、
該第1の対の関連断面は、該中心軸に関して実質的に対称に分布し、該中心軸と直交する該関連面にあり、該第1の対の断面の中の各断面の中心を通過する第1の軸によって二等分され、
該第2の対の関連断面は、該中心軸に関して実質的に対称に分布し、該中心軸と直交する該関連面に位置し、該第2の対の断面の中の各断面の中心を通過する第2の軸によって二等分され、
該第1の軸と該第2の軸とは、実質的に直交し、該中心軸において交差し、
前記抽出領域に位置する該中心軸の抽出部分の中の該中心軸に沿った任意の点において、
該中心軸と直交する該関連面は、第1の対の補助断面において前記第1の対の補助電極と交差し、第2の対の関連補助断面において前記第2の対の補助電極と交差する、
項目26に記載の線形イオントラップシステム。
(項目28)
前記中心軸の前記抽出部分は、該中心軸の長さの半分未満を含む、項目27に記載の線形イオントラップシステム。
(項目29)
前記抽出領域は、前記第1の対のロッドおよび前記第2の対のロッドの放出端を含み、前記4つの補助電極は、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドの該放出端を越えて軸方向に延在する、項目27に記載の線形イオントラップシステム。
(項目30)
前記抽出領域は、前記第1の対のロッドおよび前記第2の対のロッドの放出端を含み、前記4つの補助電極は、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドの該放出端の手前で終端する、項目27に記載の線形イオントラップシステム。
(項目31)
前記第1の対の補助断面および前記第2の対の補助断面の中の各断面は、実質的にT字形であり、長方形の上部に接続される長方形の基礎部を含み、項目27に記載の線形イオントラップシステム。
(項目32)
線形イオントラップシステムであって、
該システムは、
中心軸と、
第1の対のロッドであって、該第1の対のロッドの各ロッドは、該中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第1の対のロッドと、
第2の対のロッドであって、該第2の対のロッドの各ロッドは、該中心軸から離間し、かつそれに沿って延在する、第2の対のロッドと、
2つの補助電極であって、該2つの補助電極は、該第1の対のロッドおよび該第2の対のロッドの長さの少なくとも一部に沿って画定される抽出領域中において、該第1の対のロッドのうちの1つと該第2の対のロッドのうちの1つとの間に間置され、該2つの補助電極は、対の補助電極を含み、該対の補助電極は、該第1の対のロッドからの単一のロッドおよび該第2の対のロッドからの単一のロッドによって分離され、かつそれらに隣接する、2つの補助電極と、
電圧供給であって、該電圧供給は、該第1の対のロッド、該第2の対のロッド、および該2つの補助電極に接続され、該電圧供給は、i)第1の周波数で、かつ第1の位相において、第1のRF電圧を該第1の対のロッドに、ii)該第1の周波数に等しい第2の周波数で、かつ該第1の位相と反対の第2の位相において、第2のRF電圧を該第2の対のロッドに、iii)該第1の周波数に等しく、かつ位相シフトによって該第1の位相からシフトされた補助周波数で、補助RF電圧を該対の補助電極に、およびiv)DC電圧を該第1の対の補助電極に、提供するように動作可能である、電圧供給と
を含む、システム。
(項目33)
前記非対称四重極電場は、X軸を含み、該X軸は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、項目32に記載の線形イオントラップシステム。
(項目34)
前記非対称四重極電場は、Y軸を含み、該Y軸は、一方の補助電極を他方の補助電極から分離する、項目32に記載の線形イオントラップシステム。