JP2013532951A - Rnf8−fhaドメイン改変タンパク質及びその製造方法 - Google Patents

Rnf8−fhaドメイン改変タンパク質及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

分子内ジスルフィド結合を持たず、それ自体が細胞内で機能するRNF8−FHAドメインを使用する試験管内選択法だけで得られる抗原結合タンパク質を提供する。FHAドメインから伸びる1〜4本のループをランダム化し、ターゲット分子への認識部位をFHAドメイン表面に人工的に作り出し、RNF8−FHAドメインライブラリーを構築する。該ライブラリーを使用して、インビトロで効率良く抗原結合タンパク質を選択する。
【選択図】図1

Description

本発明は、E3ユビキチンライゲースRNF8のFHAドメインの改変タンパク質であって、FHAドメインを改変した結果、予め定められた抗原に対して、以前は存在しなかった結合親和性を示す改変タンパク質、およびその調製方法に関する。
抗体の親和性と特異性は医療、診断、試薬などの幅広い分野で応用されている。また、近年の抗体工学の発展により、scFv(single chain Fv)やdiabodyなど、様々な形態をした小型化された抗体が報告された[Bird et al., Science (1988), vol.242, pp.423-426; Holliger et al., Proc. Natl. Sci. USA(1993), vol.90, pp.6444-6448]。さらに、抗体よりもより小さく安定な人工抗体分子が開発されている[Skerra, Curr. Opin. Biotechnol. (2007), vol.18, pp.295-304]。
例えば、特表2001−500531号公報には、抗体のCDR(相補性決定領域)を模したファイブロネクチンIII型ドメインの人工抗体が開示されている。この人工抗体は、タンパク質表面の可動性のループをランダム化することで、抗原認識部位をタンパク質表面に人工的に作り出したものである。
RNF8は、RING−FingerドメインとFHAドメインを持つE3ユビキチンライゲースであり、DNA損傷への応答に関与する事が知られている。立体構造解析により、RNF8のFHAドメイン(PDB code:2PIE、2CSW)が、タンパク質表面上に5本のループ(2本が長いループ、3本が短いループ)を有するイムノグロブリン(Ig)様構造(βサンドイッチ構造)を持つことが示された(図1)。また、結合パートナーであるMCD1への結合はFHAドメインの2本の長いループを介して成されることが確認されている。この結合様式は抗体の抗原認識様式と似通っており、RNF8のFHAドメインは人工抗体分子の開発に適した構造を有することが期待される。
また、RNF8は細胞内のタンパク質であるため、RNF8由来の人工抗体は、イントラボディ(細胞内発現抗体)としての機能性が高いと考えられる。イントラボディとは、細胞内タンパク質をターゲットとして結合する、細胞内で機能する抗体(主にscFv)である。イントラボディは、様々な疾患,例えばAIDS、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンチントン病に対する治療用として開発が進められてきた。
さらに、イントラボディは細胞内ターゲットのノックアウトに効果を発揮する。一般的に細胞内ターゲットのノックアウトはRNAiが知られている。しかし、RNAiは、遺伝子そのもののノックアウトであり、また細胞内RNAの半減期が短いため、翻訳後修飾されたターゲットの解析には適応できない。イントラボディはRNAよりも細胞内での半減期が長く、またタンパク質レベルでのノックアウトが可能である。このため、イントラボディはRNAiの上記問題を解消できる[Zhou et al., Mol. Cell. (2000), vol.6, pp.751-756; Jendreyko et al., J. Biol. Chem. (2003), vol.278, pp.47812-47819; Melchionna et al., J. Mol. Biol. (2007), vol.374, pp.641-654]。
しかしながら、抗体を還元的な環境下にある細胞内でイントラボディとして発現させた場合、その分子構造内のジスルフィド結合の破壊により、多くの場合で結合活性の減少もしくは完全なる消失がおこる。
この問題を解決するために、まずジスルフィド結合の関わる分子内のシステインを取り除いた抗体[Proba et al., J. Mol. Biol. (1997), vol.265, pp.161-172]や、より安定性を高めた抗体[Ohage et al., J. Mol. Biol. (1999), vol.291, pp.1129-1134]が開発された。さらにより効果的に細胞内で機能する抗体を得る方法として、細胞内でscFvを直接選択する方法が開発された[Visintin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), vol.96, pp.11723-11728]。しかし、細胞を使用する選択系は、抗体ライブラリーのベクターへのライゲーション効率及び細胞への形質転換効率に限界がある。このため、細胞を使用する選択系は、より大きな多様性を持ったライブラリーへの適応が困難である。このため、ファージディスプレイやリボソームディスプレイといった他法との組み合わせ、または選択済みscFvのバリデーション法が提案されている。
特表2001−500531号公報
Bird et al, Science (1988), vol.242, p423-426 Holliger et al, Proc. Natl. Sci. USA (1993), vol.90, p6444-6448 Skerra, Curr Opin Biotechnol (2007), vol.18, p295-304 Zhou et al, Mol. Cell (2000), vol.6, p751-756, Jendreyko et al, J. Biol. Chem (2003), vol.278, p47812-47819 Melchionna et al, J. Mol. Biol (2007), vol.374, p641-654 Proba et al, J. Mol. Biol (1997), vol.265, p161-172 Ohage et al, J. Mol. Biol (1999), vol.291, p1129-1134 Visintin et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), vol.96, p11723-11728
人工抗体としての機能を有し、また、細胞内でイントラボディとして発現させても結合活性を失わないRNF8−FHAドメイン改変タンパク質を、インビトロで効率良く製造することを目的とする。
RNF8−FHAドメインは分子内ジスルフィド結合を持たない、またそれ自体が細胞内で機能するタンパク質であるため、上述のような最適化を行う必要はなく、一般的なインビトロでの選択だけで効率良く機能性抗体を得ることが可能となる。
本発明の第1の側面は、人工抗体を製造する方法に関する。この方法は、E3ユビキチンライゲースRNF8−FHAドメインのループをランダム化したランダムループ化ポリペプチドを得る工程と、ランダムループ化ポリペプチドから抗原結合タンパク質を選択する工程とを含む。
E3ユビキチンライゲースRNF8−FHAドメインは、分子内ジスルフィド結合を持たず、それ自体が細胞内で機能するポリペプチドである。本発明のランダムループ化ポリペプチドは、RNF8−FHAドメインを利用して、一般的なインビトロでの選択だけで抗原結合タンパク質を得ることができる。
具体的に説明すると、FHAドメインから伸びる1〜4本のループをランダム化し、対象となるターゲット分子への認識部位をFHAドメイン表面に人工的に作り出す。このランダムループ化ポリペプチドを含む、RNF8−FHAドメインライブラリーを構築する。その上で、インビトロで効率良く抗原結合タンパク質を選択する。
RNF8−FHAドメインライブラリーの構築方法を、以下、より詳細に説明する。配列番号1で示されるRNF8タンパク質の41−43番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop1)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の53−60番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop2)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の80−82番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop3)、及び配列番号1で示されるRNF8タンパク質の109−114番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop4)から選択されるいずれか1つ又は2つ以上のループに、各ループの残基数と同じ残基数を有するランダム配列を導入することにより、人工抗体ライブラリーを作製する。このライブラリーから、タンパク質、ペプチド、低分子、及び糖鎖などの様々な抗原に対する結合分子の取得が可能である。もっとも、ランダム配列が導入される配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、又は付加したものであってもよい。すなわち、上記の説明において配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに替えて、配列番号1の(a)41−43番目のアミノ酸残基、(b)53−60番目のアミノ酸残基、(c)80−82番目のアミノ酸残基、及び(d)109−114番目のアミノ酸残基以外の部分に、1又は数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は付加したアミノ酸配列からなるランダムループ化ポリペプチドを得てもよい。
本発明の更なる態様において、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の41−46番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop1’)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の49−62番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop2’)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の78−83番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop3’)、及び配列番号1で示されるRNF8タンパク質の108−118番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop4’)から選択されるいずれか1つ又は2つ以上のループに、各ループの残基数と同じ残基数を有するランダム配列を導入することによっても、人工抗体ライブラリーを作製する。このライブラリーから、タンパク質、ペプチド、低分子、及び糖鎖などの様々な抗原に対する結合分子の取得が可能である。もっとも、ランダム配列が導入される配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、又は付加したものであってもよい。すなわち、上記の説明において配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに替えて、配列番号1の(a)41−46番目のアミノ酸残基、(b)49−62番目のアミノ酸残基、(c)78−83番目のアミノ酸残基、及び(d)108−118番目のアミノ酸残基以外の部分に、1又は数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は付加したアミノ酸配列からなるランダムループ化ポリペプチドを得てもよい。
上記のランダムループ化ポリペプチドの例は、E3ユビキチンライゲースRNF8−FHAドメインのループにランダム配列が導入されたポリペプチドである。導入されたランダム配列のアミノ酸残基数の例は、3−12残基である。本発明においては、この程度の長さのランダム配列を導入することが好ましい。
そして、人工抗体ライブラリーから、抗原結合タンパク質を選択する。抗原結合タンパク質を選択するための方法の例は、試験管内選択法である。試験管内選択法の例としては、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、バクテリアディスプレイが挙げられる。これらの方法は、一般的に試験管内選択系として知られている。
リボソームディスプレイは、インビトロ翻訳系において、リボソーム−ペプチド−mRNA複合体を形成させ、特定の機能を有するペプチドをコードするタンパク質を選択する方法である。この方法において、一般的な大腸菌抽出液を用いるリボソームディスプレイよりも選択性が高いことが報告されている再構築タンパク質合成系である、いわゆるPUREシステム[Shimizu et al. (2005), Methods, vol.36, pp.299-304]を利用したリボソームディスプレイが好ましい。
本発明の第2の側面は、上記に説明した方法により製造又は選択された人工抗体又は人工抗体と抗原との複合体に関する。この人工抗体は、好ましくは、イントラボディである。人工抗体の抗原タンパク質との複合体における抗原タンパク質の例は、Erk2(extracellular signal-regulated kinase 2)及びTrx(Thioredoxin)である。
具体的な人工抗体の例は、配列番号21から42のうちいずれかで示されるアミノ酸配列からなる人工抗体である。本発明の人工抗体は、配列番号21から42のうちいずれかで示されるアミノ酸配列のうち、(a)41−43番目のアミノ酸残基、(b)53−60番目のアミノ酸残基、(c)80−82番目のアミノ酸残基、及び(d)109−114番目のアミノ酸残基以外の部分に1又は数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は付加したアミノ酸配列からなる人工抗体であってもよい。これらの人工抗体は、好ましくは、イントラボディである。
上記したランダムループ化ポリペプチドの例は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、(a)41−43番目のアミノ酸残基、(b)53−60番目のアミノ酸残基、(c)80−82番目のアミノ酸残基、及び(d)109−114番目のアミノ酸残基のいずれか1つ又は2つ以上の部位にランダム配列が導入されたポリペプチドである。ランダム配列が導入される例は、上記のループ部位がランダム配列で置き換わったものである。
上記したランダムループ化ポリペプチドの例は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、(a)41−46番目のアミノ酸残基、(b)49−62番目のアミノ酸残基、(c)78−83番目のアミノ酸残基、及び(d)108−118番目のアミノ酸残基のいずれか1つ又は2つ以上の部位にランダム配列が導入されたポリペプチドである。ランダム配列が導入される例は、上記のループ部位がランダム配列で置き換わったものである。
本発明によれば、様々な抗原に対する結合タンパク質を取得できる人工抗体として改変タンパク質を利用できる。
また、細胞内タンパク質を抗原とした場合、それらを認識する結合タンパク質はイントラボディとして細胞内で機能させることが可能である。例えば、該結合タンパク質は、タンパク質−タンパク質相互作用の阻害や生細胞内のターゲットのイメージング、ターゲット分子の局在の制御などの生化学的な基礎実験から、タンパク質−タンパク質相互作用解析(プロテオミクス解析)、試薬、診断、治療薬への応用などのまったく新しい様々な用途への利用が可能である。
図1は、RNF8−FHAドメインの構造の模式図を示す。 図2は、RNF8−FHAドメインのアミノ酸配列を示す。 図3は、RNF8−FHA遺伝子を導入した、大腸菌タンパク質発現ベクターを示す。 図4は、RNF8−FHA遺伝子を導入した、哺乳動物細胞内タンパク質発現ベクターを示す。 図5は、RNF8−FHA遺伝子及びEGFP遺伝子を導入した、哺乳動物細胞内タンパク質ベクターを示す。 図6は、SPRによるErk2結合分子の親和性測定結果を示す。 図7は、精製したErk2結合クローンによる組換えErk2の免疫沈降実験結果を示す。 図8は、哺乳動物細胞内で発現したErk2結合クローンによる内在性Erk2のウエスタンブロッティングの結果を示す。 図9は、Erk1/2の細胞内での機能を示す。 図10は、Erk2結合クローンによる内在性Erkシグナルの阻害を示す。 図11は、Erk2結合クローン−NLS(核移行シグナル)による内在性Erk2の局在の制御を示す。
本発明のRNF8−FHAドメインライブラリーの構築方法について説明する。この方法は、まず、FHAドメインから伸びる1〜4本のループをランダム化し、対象となるターゲットへの認識部位をFHAドメイン表面に人工的に作り出すものである。
この方法は、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の41−43番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop1)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の53−60番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop2)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の80−82番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop3)、及び配列番号1で示されるRNF8タンパク質の109−114番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop4)から選択されるいずれか又は2つ以上のループ部位に、ランダム配列を導入することで、人工抗体ライブラリーを作製する。もっとも、ランダム配列が導入される配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、又は付加したものであってもよい。すなわち、上記の説明において配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに替えて、配列番号1の(a)41−43番目のアミノ酸残基、(b)53−60番目のアミノ酸残基、(c)80−82番目のアミノ酸残基、及び(d)109−114番目のアミノ酸残基以外の部分に、1又は数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は付加したアミノ酸配列を含む(又は、からなる)ランダムループ化ポリペプチドを得てもよい。
本発明の更なる態様において、この方法は、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の41−46番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop1’)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の49−62番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop2’)、配列番号1で示されるRNF8タンパク質の78−83番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop3’)、及び配列番号1で示されるRNF8タンパク質の108−118番目のアミノ酸残基からなるループ(Loop4’)から選択されるいずれか又は2つ以上のループ部位に、ランダム配列を導入することによっても、人工抗体ライブラリーを作製する。もっとも、ランダム配列が導入される配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、又は付加したものであってもよい。すなわち、上記の説明において配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに替えて、配列番号1の(a)41−46番目のアミノ酸残基、(b)49−62番目のアミノ酸残基、(c)78−83番目のアミノ酸残基、及び(d)108−118番目のアミノ酸残基以外の部分に、1又は数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は付加したアミノ酸配列を含む(又は、からなる)ランダムループ化ポリペプチドを得てもよい。
ランダム配列を導入する例は、ループ部位(図2の実線の四角で囲まれた部位)又はループ1’〜4’から選択されるループ部位(図2の破線の四角で囲まれた部位)をランダム配列に置き換えるものである。ランダム配列の例は、3−12残基を有するランダム配列である。ランダム配列を導入する好ましい例は、ランダム配列を導入する部位の残基数と同じ残基数を有するランダム配列に置き換えるものである。このようなランダムループ化ポリペプチドを得るためには、配列番号1で示されるポリペプチドのDNAのうち、ループ部位に相当する部分にランダムオリゴヌクレオチドを導入すればよい。ランダムオリゴヌクレオチドの例は、NNK配列、NNS配列及びNNY配列であり、ここで、N はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、又はチミン(T)を意味する;Kはグアニン(G)又はチミン(T)を意味する;Sはシトシン(C)又はグアニン(G)を意味する;Yはシトシン(C)又はチミン(T)を意味する。ランダムヌクレオチドは公知の方法に従って生成すればよい。DNA又はRNAにランダムオリゴヌクレオチドを導入する方法も公知である。
次に、ランダムオリゴヌクレオチドを導入した上記ループ(ランダムループ)に対応するRNAを転写させ、転写物を得る。転写工程は、バイオテクノロジーの分野において公知である。よって、公知の方法に基づいて転写工程を行うことができる。
そして、得られた転写物をインビトロで翻訳する。このようにして、RNF8−FHAドメインライブラリーを得ることができる。
次に、RNF8−FHAドメインライブラリーについて、抗原結合タンパク質を選択する。抗原結合タンパク質を選択するための方法としては、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、バクテリアディスプレイなどの一般的に試験管内選択系(インビトロセレクション)として知られる方法を使用する。一般的な大腸菌抽出液を用いるリボソームディスプレイよりも選択性が高い再構築タンパク質合成系である、PUREシステムに基づくリボソームディスプレイが好ましい。PUREシステムは、翻訳に必要な因子を個々で調製し、それらを再構成した無細胞翻訳系である。PUREシステムは、リボソームディスプレイの効率を低下させ得るヌクレアーゼやプロテアーゼの混入がほとんど認められないため、高い選択効率を持つ事が報告されている[Villemagne et al., (2006) J. Immunol. Methods, vol.313, pp.140-148]。
無細胞翻訳系は、エネルギー再生系と少なくとも一種のアミノ酸とを有する。エネルギー再生系は、タンパク質の合成に必要なATPやGTP等のエネルギー源の再生に関わる要素を意味する。エネルギー再生系物質の例は、ATP再生に関わる酵素(クレアチンキナーゼやピルビン酸キナーゼ)、その基質(クレアチンリン酸やホスホエノールピルビン酸等)である。無細胞翻訳系は、アミノ酸を少なくとも一種、好ましくは天然に存在する20種のアミノ酸を含む。無細胞翻訳系は、さらに非天然のアミノ酸を含んでいても良い。無細胞翻訳系は、例えば、緩衝液(例えば、HEPESカリウムやトリス酢酸等)、各種の塩類、界面活性剤、RNAポリメラーゼ(T7、T3、及びSP6RNAポリメラーゼ等)、シャペロンタンパク質(DnaJ、DnaK、GroE、GroEL、GroES、及びHSP70等)、RNA(mRNA、tRNA等)、プロテアーゼ阻害剤、又は(リボ)ヌクレアーゼ阻害剤を含んでもよい。
これらの方法を使用して、上記ランダムオリゴヌクレオチド転写物をインビトロで翻訳する。この翻訳工程の例は、無細胞翻訳系を用いて転写物をインビトロで翻訳するものである。この工程により、リボソーム−ペプチド−mRNA複合体が構築される。
上記リボソーム−ペプチド−mRNA複合体と、予め定められた抗原とが結合することにより、抗原に結合するペプチドのmRNAをインビトロで選択することができる(インビトロセレクション)。抗原はタンパク質、ペプチド、低分子、糖鎖などのいずれでもよい。ここで、予め抗原をビオチンで標識しておくことで、後述のELISAによる抗原結合ペプチドのスクリーニングが可能となる。この標識化の工程はバイオテクノロジーの分野において公知である。よって、公知の方法に基づいて標識工程を行うことができる。
上記の方法において選択されたmRNAを回収し、回収したmRNAを逆転写させてcDNAとした後、このcDNAをPCR反応により増幅させることでセカンドラウンド以降のリボソームディスプレイ用遺伝子を再構築することができる。リボソームディスプレイは4ラウンド以上行うことが好ましい。
数ラウンドのリボソームディスプレイ及びインビトロセレクションによって回収された遺伝子を発現ベクターにサブクローニングし、ELISAによりスクリーニングすることで、抗原に対して結合親和性の高い、RNF8−FHAドメイン改変タンパク質(抗原結合タンパク質)を発現、精製することができる。これらの工程はバイオテクノロジーの分野において公知であり、よって、公知の方法に基づいて行うことができる。
上記に説明した通り、本発明の好ましい利用は、RHF8−FHAドメイン改変タンパク質のライブラリーを作製し、リボソームディスプレイを用いて、抗原に対して結合親和性の高いRHF8−FHAドメイン改変タンパク質(抗原結合タンパク質)をインビトロで選択する方法である。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。本発明は、以下説明する実施例に限定されるものではなく、当業者に自明な範囲で修正を加えたものも含む。
RNF8−FHAドメインライブラリーの構築
RNF8のFHAドメインの立体構造(図1、PDB code:2PIE)を基にして、RNF8のFHAドメイン(図2、配列番号1)の4つのループをランダム化(NNS)したループを含むRNF8ライブラリーを設計し、140塩基以下の断片として化学合成した(FASMAC)。ランダム化する部分は、図2において四角で囲った、RNF8タンパク質の41−43番目のアミノ酸残基、53−60番目のアミノ酸残基、80−82番目のアミノ酸残基及び109−114番目のアミノ酸残基部分である。また、ライブラリー遺伝子は高タンパク質発現を目的としていわゆる最適コドン(図2大文字表記)を採用した。さらに、リボソームディスプレイを実施する上で必要となる、3’末端にFLAG配列を付加したT7プロモーターおよびSD配列を含む5’UTR配列も化学合成した(FASMAC)。下線部位はそれぞれのオリゴDNAが相補する(オーバーラップする)領域を示す。

N-Term (配列番号2: GACTATAAAGATGACGATGACAAAggcgagcctggcttcttcgtcaccggagaccgcgccggtggccgctcatggtgcctgcgccgcgtgggcatgagcgccggctggctgcttctcgaggatggtTGCgaagttac)

C-Term (配列番号3: cCgaagaagactgggaAacCatTtatccttgtcttAGcccTaagaatgaTcaaatgatTgaaaaGaatGAATTCggtggcagcggaggtgaatatcaaggccaatcgtctgac)

LOOPs 1&2 (配列番号4: ctTctCgaGgatggTTGCgaAgtTacCgtTggTNNSNNSNNSggtgtcacCtaccaGctggtatcaaaannsnnsnnsnnsnnsnnsnnsnnsaaccactgCgttCtTaagcaAaatcctgag)

LOOP 3 (配列番号5: ccactgCgttCtTaagcaAaatcctgagggccaatggacCattatggacaacaagNNSNNSNNSggtgtttggctgaacCgAgcgcgCctggaacctttGCgCgtctatAGcattcatcagggTgac)

LOOP 4 (配列番号6: GCgCgtctatAGcattcatcagggTgactacatccaacttggTNNSNNSNNSNNSNNSNNSgagaatgcCgagtatgaatatgaagttacCgaagaagactgggaAaccatttatcc)

5’ UTR (配列番号7: gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctagaaataattttgtttaactttaagaaggagatataccaatggactataaagatgacgatgacaaa)
M13ファージのgene III(g3p)の部分配列(220−326番目のアミノ酸残基)はM13KO7由来ファージゲノムを鋳型としてプライマーg3p(配列番号8:GAATATCAAGGCCAATCGTCTGAC)、及び、プライマーg3p−SecMstop(配列番号9: CTCGAGTTATTCATTAGGTGAGGCGTTGAGGGCCAGCACGGATGCCTTGCGCCTGGCTTATCCAGACGGGCGTGCTGAATTTTGCGCCGGAAACGTCACCAATGAAAC)を用いてKOD Plus DNA Polymerase(TOYOBO)によってPCR増幅(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒、サイクル:25回)後、QIAquick PCR purification kit (QIAGEN)によって精製した。
化学合成したそれぞれの遺伝子断片(5‘UTR, N−Term, Loop1&2, Loop3, Loop4,C−term)とg3pの遺伝子をそれぞれ1pmol、KOD Plus DNA Polymerase (TOYOBO) を含むPCR反応液(トータル500μL)を調製し、15サイクルのPCR反応(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒)を実行した後、5’プライマー(配列番号10: gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctag)10pmol、プライマーSecMstop(配列番号11: ggattagttattcattaggtgaggcgttgagg)10pmol、KOD Plus DNA Polymerase 1μLを反応液(50μL×10本)に追加で加え、更に10サイクルのPCR反応(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒)を実行した。1%アガロースを用いた電気泳動によって、すべての遺伝子がつながったバンドを確認後、そのバンドを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN)で精製して最終的なランダム配列を含む遺伝子ライブラリーとした。
In vitro 転写
精製した遺伝子ライブラリーDNA1μgを20μLのin vitro transcription Kit(RibomaxTM Large Scale RNA Production System−T7, Promega)によってmRNAとし、カラム精製した(RNeasy mini カラム、QIAGEN)。
無細胞翻訳系を用いたIn vitro翻訳(リボソーム−ペプチド−mRNA複合体の構築)
タンパク質合成反応試薬である無細胞翻訳系(PUREシステム)は既報[Shimizu et al. (2005), Methods, vol.36, pp.299-304]に従い調製した。調製した反応液(100μl)に10pmolのmRNAライブラリーを加え、37℃で30分間インキュベートした。氷冷したWash緩衝液[50mM Tris−OAc, pH7.5、150mM NaCl、50mM Mg(OAc)、0.5% Tween20、1μg/mL Saccharomyces cereviseae total RNA (Sigma)]を500μL加え、Blocking緩衝液[50mM Tris−OAc, pH7.5、150mM NaCl、50mM Mg(OAc)、0.5% Tween20、100μg/mL Saccharomyces cereviseae totalRNA (Sigma)、5%SuperBlock (PIERCE)]500μLを加えた。予め5%SuperBlockで4℃で一晩ブロッキングしておいたDynabeads MyOne streptavidin T1磁性体ビーズ(100μLスラリー、Invitrogen)を、500μL Wash緩衝液でMagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)を用いて2回洗浄後、全量の翻訳後反応液(リボソームディスプレイライブラリー溶液)を加え、磁性体ビーズ及びストレプトアビジンへの前吸着操作を4℃、60分行った。その後、MagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)を用いて上清を回収した。
抗原タンパク質のビオチン化
Sigmaより購入した抗原タンパク質(ヒトErk2および大腸菌チオレドキシン:Trx)は、EZ−Link NHS−PEO−Biotin(PIERCE)の標準プロトコールに従ってビオチン化した。ビオチン化したそれぞれの抗原タンパク質はSDS−PAGEによるバンドの移動度のシフトよりビオチン化が確認され、BCA Protein Assay Kit(PIERCE)を用いて濃度を決定した。
インビトロセレクション
予め5%SuperBlockで4℃で一晩ブロッキングしておいたDynabeads MyOne streptavidin T1磁性体ビーズ(100μLスラリー、Invitrogen)を、500μL Wash緩衝液でMagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)を用いて2回洗浄後、100nmolのビオチン化抗原タンパク質を加え、4℃で磁性体ビーズに固定化した。30分後、500μL Wash緩衝液でMagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)を用いて3回洗浄後、回収した磁性体ビーズに前吸着処理後の翻訳反応液を加え4℃で1時間ローテーションによって攪拌した。MagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)によって上清を廃棄し、回収した磁性体ビーズに1mL のWash緩衝液を加え、4℃で5分ローテーションによって攪拌した。この操作を30回繰り返した後、100μL Elution緩衝液(50mM Tris−OAc, pH7.5、150mM NaCl、50mM EDTA)を回収した磁性体ビーズに加え、4℃で10分静置する事によって、複合体を磁性体ビーズから遊離させた。MagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)によって上清を回収し、RNeasy Micro(QIAGEN)によってmRNAを回収、精製した。
RT−PCR
回収したmRNAはTranscription High Fidelity cDNA Synthesis Kit(Roche)によってcDNAとした後、KOD Plus DNA Polymeraseを用いてRT−PCR(トータル250μL、変性:94℃、10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃、60秒、35サイクル)を行った。なお、使用したプライマーを以下に示す。
逆転写リバースプライマー:C−term R(配列番号12: GTCAGACGATTGGCCTTGATATTC)、
PCRプライマー:5’プライマー(配列番号10: gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctag)及びC−term R(配列番号12: GTCAGACGATTGGCCTTGATATTC)
RT−PCR後の反応液は1%アガロースを使用して電気泳動し、対応するサイズのバンドを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit (QIAGEN)を用いて精製した。
リボソームディスプレイ用遺伝子の再構築
セカンドラウンド以降のリボソームディスプレイ用遺伝子の再構築は以下のように行った。RT−PCR後の精製遺伝子、5’UTR、g3p遺伝子のそれぞれを1pmol、5’プライマー(配列番号10: gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctag)10pmol、プライマーSecMstop(配列番号11: ggattagttattcattaggtgaggcgttgagg)10pmol、KOD Plus DNA Polymerase(TOYOBO)を含むPCR反応液(トータル250μL)を調製し、15サイクルのPCR反応(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒)を実行した後、1%アガロースを用いた電気泳動によって、すべての遺伝子がつながったバンドを確認後、そのバンドを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN)で精製した。
サブクローニング
4ラウンド後、回収した遺伝子を大腸菌発現ベクターpET−MalStrep(図3)にクローニングした。すなわち、4ラウンドのRT−PCRの後、5’側にEcoRIを導入したプライマーEco1−(−M)−FLAG_F(配列番号13: CCgaattcGACTATAAAGATGACGATGACAAAggC)、3’側にHindIIIを導入したプライマーRNF8−Hind3_R(配列番号14: ggAAGCTTattCttttcAatcatttgAtcattc)、及びKOD Plus DNA Polymerase (TOYOBO)を含む反応液(トータル100μL)を使用してPCRを行った。PCR反応液を20サイクルの増幅(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒)に供した後、QIAquick PCR purification kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製した遺伝子1μgおよび発現ベクターを制限酵素EcoRI−HindIIIで37℃、1時間処理し、1%アガロースを使用した電気泳動によって対応するバンドを確認後、そのバンドを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN)で精製した。インサート遺伝子とベクター遺伝子を3:1(モル比)で混合し、LigaFast Rapid DNA Ligation Kit(Promega)を用いて、室温で30分反応後、予め調製(Z−competent E.Coli Transformation Buffer Set:ZYMO RESEARCH)しておいた大腸菌BL21(DE3)コンピテントセルに形質転換し、アンピシリン(終濃度 50μg/mL)を含むLB寒天プレート上で37℃、一晩培養した。
ELISAによる抗原結合タンパク質の1次スクリーニング
一晩培養した後、LB寒天プレートから95個のシングルコロニーをアンピシリン(終濃度 50μg/mL)を含む100μLの2×YT培地に植菌し、37℃で3−5時間培養(OD600=0.5−0.8)後、IPTG(終濃度0.1mM)を添加し、25℃、一晩培養した。培養した大腸菌溶液10μLに、90μLのPBSおよび40μLの溶菌試薬(20μL BugBuster Protein Extraction Reagent:Novagen、20μL Lysozyme溶液 2.5mg/mL)を加え、室温で1時間溶菌した。溶菌した溶液に12.5%スキムミルク溶液(PBS)を40μL加え、室温で1時間ブロッキングした。平行して、1well当たり100ng/20μLで抗原タンパク質を4℃で一晩固定しておいた384穴プレートを100μL PBSで2回洗浄し、5% スキムミルク溶液(PBS)を100μL加え、室温で1時間ブロッキングした後、100μL PBSで2回洗浄して抗原固定プレートとした。このプレートにブロッキング済みの大腸菌抽出液を20μL加え、室温でプレートミキサーを使用して緩やかに攪拌した。1時間後、100μL PBSで5回プレートを洗浄し、20μL(1:2000希釈)のanti−FLAG M2−HRPコンジュゲート(Sigma)を加えて室温で1時間プレートミキサー上で緩やかに攪拌した。さらにプレートを100μL PBSで5回洗浄し、20μLの発色基質(0.4mg/mL 3,3’,5,5’−Tetramethyl−benzidine, 0.01%過酸化水素)によって検出した。室温で15分間反応させた後、20μLの2N HClを加えて反応を停止させ、プレートリーダー(TECAN)を用いて450nmにおける吸光度を測定した。
DNA配列解析
ELISA解析でポジティブであったクローンについてDNA配列を解析した。各ELISAポジティブクローンを培養し、プラスミドを回収(QIAprep Spin MiniPrep kit:QIAGEN)してDNA配列解析に供した。その際に使用したシーケンス用プライマーはpET−MALseqF:(配列番号15: CCAGAAAGGTGAAATCATGCCGAACATC)であった。
抗原結合クローンの発現と精製
結合活性が確認された各クローンを、アンピシリン(終濃度 50μg/mL)を含む200 mLの2×YT培地に植菌し、37℃で3−5時間培養(OD600=0.5−0.8)後、IPTG(終濃度0.1 mM)を添加し、25℃で一晩培養した。培養した大腸菌を遠心分離機によって回収し、60mLのLysisバッファー(20mM Tris HCl pH 7.5, 500 mM NaCl, 10 mM β−メルカプトエタノール, 5mM MgSO, 10U/mL DNase)で再懸濁し、超音波破砕機(Bioruptor USD−250)によって破砕した。遠心分離によって上清を回収し、0.22μmのフィルターを通した後、MBPTrap(5mL×2本、GE Healthcare)によるアフィニティー精製(AKTA Purifier, GE Healthcare)を行った。精製後、タンパク質溶液を透析膜を用いてPBSにバッファー交換した。SDS−PAGEによって単一バンドであることを確認し、BCAプロテインアッセイキット(PIERCE)を用いて濃度を決定した。
抗原結合クローンの比活性比較(ELISA)
PBSで希釈した精製した各結合クローン(500ng/well)を予め抗原を固定した384穴プレートに加え、上述したELISA(1次スクリーニングELISA)と同様の方法によって、結合クローンの結合比活性を比較した。
抗原結合クローンの親和性測定
精製した各クローンの親和性は、BIACORE3000システムを使用して測定し、すべての操作はBiacoreの取扱説明書に従った。なお、ビオチン化した抗原タンパク質(Erk2及びチオレドキシン)のセンサーチップへの固定は、ストレプトアビジンを介したSA センサーチップ(Biacore)を使用して行った。
精製したErk2結合クローンタンパク質による組換えErk2タンパク質の免疫沈降実験
6wellプレートで予め培養しておいたHEK293T細胞を0.1% Triton X−100、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を含むPBS 500μLを加えて4℃、10分間インキュベートして細胞を溶解させた。これをx10000gで10分間の遠心分離し、得られた上清を細胞溶解液として使用した。50μLの細胞溶解液に5μgのErk2タンパク質と10μgのErk2結合クローン(Erk2 clone N)又はコントロールクローン(Trx clone A)を加えた。得られた溶液に40μl の洗浄(500μL PBS×3回)済みFLAG M2 Agarose Resin(Sigma)を加えて室温でローテーションにより緩やかに攪拌した。1時間後、MicroSpin Column(GE Healthcare)を使用してResinを回収し、500μL PBSで3回洗浄した後、50μLのFLAG Peptide溶液(500μg/mL)を加えて、結合複合体を室温で5分間溶出した。最後にMicroSpin Column(GE healthcare)を使用して上清を回収し、それらのうち10μLをSDS−PAGE、1μLをウエスタンブロットで解析した。ウエスタンブロットは、1次抗体に1:1000希釈した抗ERK抗体(Cell Signaling Technology)、2次抗体に1:10000希釈したHRP標識抗ウサギIgG抗体(GE Healthcare)と1:10000希釈したanti−FLAG M2−HRPコンジュゲート(Sigma)を用いて行った。検出は、ECL advance(GE Healthcare)を用いて標準の方法で行った。
哺乳動物細胞内発現Erk2結合クローンによる内在性Erk1/2の免疫沈降実験
pcDNA3.1−RNF8−V5/His哺乳動物細胞発現プラスミドの調製:図4
発現ベクターpcDNA3.1−V5/His(Invitrogen)のEcoRI / XhoIサイトにRNF8の各クローン(Trx clone A, Erk2 clone A, Erk2 clone C, Erk2 clone N)のDNA断片を挿入することによりpcDNA3.1−RNF8−V5/Hisを作製した(各RNF8断片の3’末端にSalIを付加し、ベクターのXhoIの連結させた)。制限酵素サイトを付加した各RNF8クローンのDNA断片はEcoRI−RNF8−for(配列番号16: 5’− gccgaattcaccatgggcgagcctggcttcttcgtc −3’)及びSalI−RNF8−rev(配列番号17: 5’− gccgtcgacattcttttcaatcatttgatc −3’)のプライマーセットを使用するPCR反応(KOD Plus DNA polymerase:TOYOBO、変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒、サイクル:30回)により作製した。各PCR産物はQIAquick PCR purification kit(QIAGEN)を用いて精製した後、制限酵素処理を行った。制限酵素処理済みのDNA断片は1%アガロースゲル電気泳動を行い、対応するバンドを切り出した後、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて精製を行った。精製済みのベクターおよびインサートのDNA断片はTaKaRa Ligation kit Mighty Mix (TaKaRa)を用いて標準の方法でライゲーションを行った。ライゲーション産物は大腸菌TG1 F−にトランスフォームし、得られたコロニーを培養し、QIAprep Spin MiniPrep kit(QIAGEN)を用いてプラスミドの回収を行った。
発現したErk2結合クローンによる内在性ERK1/2のプルダウン
6wellプレートでHEK293T細胞にpcDNA3.1−RNF8−V5/Hisをトランスフェクトし、24時間後に培地を廃棄し、0.1% Triton X−100、10mM イミダゾール及びプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を含むPBS 500μLを加えて4℃、10分間インキュベートして細胞を溶解させた。これをx10000gで10分間の遠心分離し、得られた上清を細胞溶解液として使用した。TALON Metal Affinity Resin (TaKaRa) 10μLを細胞溶解液に加えた。4℃で2時間インキュベートした後、レジンを500μL PBSで5回洗浄した。洗浄済みのレジンに20μLのSDS−PAGE sample buffer(50 mM Tris−HCl pH6.8, 2%SDS, 5% β−メルカプトエタノール, 10%グリセロール, 少量のBromophenol Blue)を加えた。この混合物を煮沸した後、10μLをウエスタンブロットの解析サンプルとして用いた。ウエスタンブロットは、1次抗体に1:1000希釈した抗ERK抗体(Cell Signaling Technology)、2次抗体に1:10000希釈したHRP標識抗ウサギIgG抗体(GE Healthcare)を用いて行った。検出は、ECL advance(GE Healthcare)を用いて標準の方法で行った。
pCS2−RNF8−EGFP哺乳動物細胞発現プラスミドの調製:図5
はじめにEGFPのDNA断片を発現ベクターpCS2+のXhoI/XbaIサイトに挿入したプラスミドを構築した。さらに、このプラスミドのEcoRI/XhoIサイトに各クローン(Trx clone A, Erk2 clone C, Erk2 clone N)のDNA断片を挿入することによりpCS2−RNF8−EGFPを作製した(RNF8断片の3’末端にSalIを付加し、ベクターのXhoIの連結させた)。制限酵素サイトを付加したEGFPのDNA断片はXhoI−EGFP−for(配列番号18: 5’−gccctcgaggtgagcaagggcgaggagctg−3’)及びXbaI−EGFP−rev(配列番号19: 5’ −gcctctagattacttgtacagctcgtccat−3’)のプライマーセット、制限酵素サイトを付加した各RNF8クローンのDNA断片はEcoRI−RNF8−for(配列番号16: 5’−gccgaattcaccatgggcgagcctggcttcttcgtc−3’)及びSalI−RNF8−rev(配列番号17: 5’−gccgtcgacattcttttcaatcatttgatc−3’)のプライマーセットを使用するPCR反応(KOD Plus DNA polymerase:TOYOBO、変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒、サイクル:30回)により作製した。各PCR産物はQIAquick PCR purification kit(QIAGEN)を用いて精製し、制限酵素処理した。制限酵素処理済みのDNA断片をアガロース電気泳動に供し、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製済みのベクターおよびインサートのDNA断片はTaKaRa Ligation kit Mighty Mix(TaKaRa)を用いて標準の方法でライゲーションした。ライゲーション産物は大腸菌TG1 F−にトランスフォームし、得られたコロニーを培養し、QIAprep Spin MiniPrep kit(QIAGEN)を用いてプラスミドの回収を行った。
次にEGFPのC末端にSV40 large T抗原由来の核移行シグナル(NLS)を付加したDNA断片を発現ベクターpCS2+のXhoI/XbaIサイトに挿入したプラスミドを構築した。さらに、このプラスミドのEcoRI/XhoIサイトにRNF8の各クローン(Trx cloneA,Erk2 clone A, Erk2 clone C, Erk2 clone N)のDNA断片を挿入することによりpCS2−RNF8−EGFP−NLSを作製した(RNF8断片の3’末端にSalIを付加し、ベクターのXhoIの連結させた)。制限酵素サイトを付加したEGFP−NLSのDNA断片はXhoI−EGFP−for(配列番号18: 5’− gccctcgaggtgagcaagggcgaggagctg −3’)及びXbaI−EGFP−NLS−rev(配列番号20: 5’−gcctctagatcataccttgcgcttcttctttggcggcttgtacagctcgtccatgcc −3’)のプライマーセット、制限酵素サイトを付加した各RNF8クローンのDNA断片はEcoRI−RNF8−for(配列番号16: 5’− gccgaattcaccatgggcgagcctggcttcttcgtc −3’)及びSalI−RNF8−rev(配列番号17: 5’− gccgtcgacattcttttcaatcatttgatc −3’)のプライマーセットを使用するPCR反応(KOD Plus DNA polymerase:TOYOBO、変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒、サイクル:30回)により作製した。制限酵素処理を行ったDNA断片をアガロース電気泳動に供し、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製済みのベクターおよびインサートのDNA断片はTaKaRa Ligation kit Mighty Mix(TaKaRa)を用いて標準の方法でライゲーションした。ライゲーション産物は大腸菌TG1 F−にトランスフォームし、得られたコロニーを培養し、QIAprep Spin MiniPrep kit(QIAGEN)を用いてプラスミドの回収を行った。
RNF8人工抗体の哺乳類細胞内での発現
哺乳類培養細胞であるHEK293Tを10% FCS添加DMEM(Sigma)中で37℃、5%CO供給下で培養した。Lipofectamin(Invitrogen)およびplus reagent(Invitrogen)を用いて標準の方法により、pCS2−RNF8−EGFP又はpCS2−RNF8−EGFP−NLSで細胞をトランスフェクトした。
Erk2抗原結合クローンによる細胞内Erk2リン酸化活性の阻害実験
24wellプレートを使用して、HEK293T細胞をpCS2−RNF8−EGFPでトランスフェクトし、24時間後に終濃度100nM PMAを加えて37℃で30分間インキュベートした。細胞のPMA処理後、直ちに培地を廃棄し、100μLのSDS−PAGE sample buffer(50 mM Tris−HCl pH6.8, 2% SDS, 5% β−メルカプトエタノール, 10%グリセロール, 少量のBromophenol Blue)を加えて細胞を溶解した。この細胞溶解液を煮沸した後、15μLをウエスタンブロットの解析サンプルとして用いた。1次抗体に抗p90RSK(Cell Signaling Technology)、抗リン酸化Ser380 p90RSK(Cell Signaling Technology)、抗リン酸化Tre359/Ser363 p90RSK(Cell Signaling Technology)及び抗リン酸化Tre573 p90RSK(Cell Signaling Technology)を用い、いずれの抗体も希釈倍率は1:1000で使用した。また、2次抗体には1:10000希釈したHRP標識抗ウサギIgG抗体(GE Healthcare)を用いた。検出は、ECL Advance(GE Healthcare)を用いて標準の方法で行った。
RNF8人工抗体およびErk1およびErk2(Erk1/2)の細胞内局在の観察
pCS2−RNF8−EGFP−NLSでトランスフェクションした24時間後、HEK293T細胞を4%PFAで室温、15分間のインキュベートにより固定した後、500μL PBSで3回洗浄した。これに500μL 0.2% Triton X−100/PBSを加えた後、室温で5分間インキュベートすることで膜透過処理を行い、500μL PBSで3回洗浄を行った。次に500μL 10%FCS/PBSを加え、室温で30分間ブロッキングを行った。Erk1/2を染色するために、1次抗体として抗ERK抗体(Cell Signaling)を10%FCS/PBSで1:50希釈した溶液を用いて室温で1時間、第一の反応を行い、500μL PBSで3回洗浄した。2次抗体としてAlexa555標識抗ウサギIgG抗体(Invitrogen)を10%FCS/PBSで1:500希釈した溶液を用いて室温で1時間、第二の反応を行い、PBSで3回洗浄した。最後にHoechst33342を添加したPBSを加えて蛍光顕微鏡(OLYMPUS IX70)にてEGFP(RNF8)、ERKおよび核の三重染色像を観察した。
結果及び考察
選択された抗原結合タンパク質の配列解析
リボソームディスプレイによるインビトロセレクション後の1stスクリーニングELISAの結果を表1に示す。
2種類の抗原(Erk2,Trx)ともに良好な結果が得られ、Erk2に対しては90%に近い確率でポジティブクローンを得る事ができた。これらポジティブクローンについてDNA配列解析を行い、ポジティブクローンの濃縮効率を調べた。Erk2に関しては、トータルで14種類の配列の異なるクローンが得られ、約7割がグループAに属するクローンであった。ここで、グループAからMに属するクローンはLoop1からLoop3までがまったく同一のアミノ酸配列を持ち、Loop4だけ配列が異なっていた(表2、グループA〜Nの配列は、それぞれ配列番号21〜配列番号34に対応する)。
この傾向はTrxの場合においても観察された(表3、グループA〜Hの配列は、それぞれ配列番号35〜配列番号42に対応する)。これらの8種類の異なるクローンの内、グループA、C、D、E、及びFはLoop1からLoop3までが同一配列を持っていた。これらの結果より、本発明の人工抗体は主にLoop1からLoop3を使ってターゲットを認識している事が考えられる。
また、選択された各種クローンの結合比活性を比較する目的で、Erk2結合クローンから1回以上得られたクローン(グループA、B、C、D、及びN)と単独のクローン(グループJ)、およびTrx結合クローン(グループA、C、D、G、及びH)を発現させ、精製した。ほとんどのクローンで、最終精製量は約200−250mg/L(2×YT培地)の良好な回収量で得ることができた。
次に、精製したすべての結合クローンを500ng/wellで調製し、ELISAによる結合活性を比較した(表4)。
Erk2の場合、グループA、B、C、D、及びJはLoop1からLoop3までが同じアミノ酸配列であるにもかかわらず、グループA、B、及びJとグループC及びDとの間に明らかな比活性の差が認められた。Trxの場合においても同様の結果が得られ、Loop1からLoop3が同一のアミノ酸配列であるグループA、C、及びDの内、グループC及びDは明らかに比活性が低かった。これらの結果は、本発明の人工抗体のLoop4はターゲットとの親和性に大きく影響を及ぼしている事を示唆している。
Erk2結合クローンの親和性測定
Erk2結合クローン(clone N)について、SPR(BIACORE)によって親和性を解析した結果、Kd=30nMの一般的な抗体と同等の親和性を持つ事が確認された(図6)。
精製したErk2結合クローンによる組換えErk2の免疫沈降
精製したErk2結合クローン(Clone N)の抗原特異性を検討する目的で、哺乳動物細胞抽出液に組換えErk2タンパク質を加えて、Erk2結合クローンによる免疫沈降実験を行った(図7)。まず、SDS−PAGEの結果、Erk2結合クローンを加えた場合、Erk2タンパク質の分子量に相当する位置で1本のバンドが認められ、その他非特異的なバンドは検出されなかった。また、ウエスタンブロットの結果、検出されたバンドがErk2タンパク質である事が確認された。これらの結果より、細胞抽出液中でErk2結合クローンは厳密にErk2タンパク質を認識している事が確認された。
哺乳動物細胞内で発現したErk2結合クローンによる内在性Erkの免疫沈降
次に、精製したタンパク質による免疫沈降実験ではなく、Erk2結合クローンの遺伝子を細胞内に導入し、内在性Erk1およびErk2(Erk1/2)の免疫沈降を検討した(図8)。Erk2結合クローン遺伝子を導入した場合、内在性Erk1/2のバンドがはっきりと確認され、コントロールであるTrx結合クローン遺伝子を導入した細胞においてはバンドは確認されなかった。
この結果より、RNF8人工抗体は細胞内で安定に発現し、また、高い機能性を持つことが証明された。一般的に、免疫沈降は界面活性剤等で細胞を破壊し、その細胞抽出液に精製した抗体タンパク質を加える事で実行される。この方法では、対象となるターゲットごとに抗体を精製する必要があり、スループット性が極めて低い。また、細胞抽出液からの免疫沈降であるため、より自然な細胞内環境を反映した結果を得る事はできない。本発明のRNF8人工抗体は、これらの問題がなく、加えて、様々な細胞の状態(細胞周期、薬剤投与など)に合わせたまったく新しい免疫沈降法を可能にする。
Erk2抗原結合クローンによる細胞内Erk2リン酸化活性の阻害実験
図9に示したようにErk1およびErk2(Erk1/2)は、p90RSK、C−Myc、及びElk1をリン酸化するシグナル伝達因子である。この点を念頭に置き、Erk2結合クローンがErkと結合する事で、p90RSKとの相互作用を阻害(p90RSKのリン酸化阻害)できるかどうかを調べるために実験を行った(図10)。
その結果、Erk2結合RNF8人工ポリペプチドを導入した場合、明らかなp90RSKのリン酸化抑制が検出され、RNF8人工抗体は細胞内でErkの活性を強く阻害していることが確認され、イントラボディとしての機能性が極めて高いことが証明された。細胞内には一般的な抗体医薬では対応できなかった様々な疾患の要因とされるタンパク質が多く知られており、それゆえに、RNF8人工抗体は、基礎研究のみならず、これらのタンパク質をターゲットとした新規医薬の開発にも応用することが可能である。
Erk2結合ポリペプチドによる内在性Erkの局在制御
Erk2に結合するクローンに核移行シグナル(NLS)を導入し、これらを細胞内で発現させて、内在性Erkの局在化を観察した(図11)。まず、EGFPを観察した。すべての結合クローンの核内への局在が認められた。次に、抗Erk抗体によって内在性Erkを観察した。Erk2結合クローンを導入したすべての細胞で内在Erkの核内への移行が認められ、コントロールであるTrx結合分子を導入した細胞においては、内在性Erkの核内移行は認められなかった。
この結果より、Erk2結合ポリペプチドによる細胞質に存在する内在性Erkの核内への共移行性が確認され、ターゲットタンパク質の細胞内局在を自由にコントロールできることが証明された。抗体をベースとしたイントラボディの場合で、ER残留 signal(SEKDEL)の付加によって、イントラボディのERへの局在を制御できることが知られており[Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1993), vol.90, pp.7889-7893]、RNF8人工抗体にある種の移行シグナルを付加する事によって(核外移行シグナル:NES、核小体移行シグナル:NOS、ミトコンドリアマトリックス移行シグナル:MTS、ペルオキシソーム移行シグナル:PTSなど)、様々な部位への局在を制御(場合によってはターゲット複合体として)する事が可能である。
配列番号2 オリゴヌクレオチド
配列番号3 オリゴヌクレオチド
配列番号4 オリゴヌクレオチド
nは任意の塩基を表す。
sはグアニン又はシトシンを表す。
配列番号5 オリゴヌクレオチド
nは任意の塩基を表す。
sはグアニン又はシトシンを表す。
配列番号6 オリゴヌクレオチド
nは任意の塩基を表す。
sはグアニン又はシトシンを表す。
配列番号7 オリゴヌクレオチド
配列番号10 オリゴヌクレオチド
配列番号11 オリゴヌクレオチド
配列番号12 オリゴヌクレオチド
配列番号13 オリゴヌクレオチド
配列番号14 オリゴヌクレオチド
配列番号15 オリゴヌクレオチド
配列番号16 オリゴヌクレオチド
配列番号17 オリゴヌクレオチド
配列番号18 オリゴヌクレオチド
配列番号19 オリゴヌクレオチド
配列番号20 オリゴヌクレオチド
配列番号21 タンパク質
配列番号22 タンパク質
配列番号23 タンパク質
配列番号24 タンパク質
配列番号25 タンパク質
配列番号26 タンパク質
配列番号27 タンパク質
配列番号28 タンパク質
配列番号29 タンパク質
配列番号30 タンパク質
配列番号31 タンパク質
配列番号32 タンパク質
配列番号33 タンパク質
配列番号34 タンパク質
配列番号35 タンパク質
配列番号36 タンパク質
配列番号37 タンパク質
配列番号38 タンパク質
配列番号39 タンパク質
配列番号40 タンパク質
配列番号41 タンパク質
配列番号42 タンパク質
本発明のRNF8−FHAドメイン改変タンパク質の製造方法は、例えば、生化学産業や医薬産業において利用されうる。
本出願は日本で出願された特願2010−159227(出願日:2010年7月14日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (14)

  1. E3ユビキチンライゲースRNF8−FHAドメインのループをランダム化したランダムループ化ポリペプチドを得る工程と、
    前記ランダムループ化ポリペプチドから抗原結合タンパク質を選択する工程と、を含む、人工抗体を製造する方法。
  2. 前記E3ユビキチンライゲースRNF8−FHAドメインのループは、下記の(a’)から(d’)に記載のループのうち、いずれか1つ又は2つ以上のループである、請求項1に記載の方法。
    (a’)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の41−46番目のアミノ酸残基からなるループ
    (b’)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の49−62番目のアミノ酸残基からなるループ
    (c’)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の78−83番目のアミノ酸残基からなるループ
    (d’)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の108−118番目のアミノ酸残基からなるループ
  3. 前記E3ユビキチンライゲースRNF8−FHAドメインのループは、下記の(a)から(d)に記載のループのうち、いずれか1つ又は2つ以上のループである、請求項1に記載の方法。
    (a)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の41−43番目のアミノ酸残基からなるループ
    (b)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の53−60番目のアミノ酸残基からなるループ
    (c)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の80−82番目のアミノ酸残基からなるループ
    (d)配列番号1で示されるRNF8タンパク質の109−114番目のアミノ酸残基からなるループ
  4. 前記ランダムループ化ポリペプチドは、前記E3ユビキチンライゲースRNF8−FHAドメインのループにランダム配列が導入されたポリペプチドであり、前記ランダム配列のアミノ酸残基数は3−12残基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記ランダムループ化ポリペプチドから抗原結合タンパク質を選択する工程が、試験管内選択法である、請求項4に記載の方法。
  6. 請求項1に記載の方法により得られる人工抗体。
  7. イントラボディである、請求項1に記載の方法により得られる人工抗体。
  8. 請求項1に記載の方法により得られる人工抗体と、当該人工抗体の抗原タンパク質との複合体。
  9. 請求項1に記載の方法により得られる人工抗体と、当該人工抗体の抗原タンパク質との複合体であって、前記抗原タンパク質が、Erk2またはTrxである複合体。
  10. 請求項6に記載の人工抗体であって、配列番号21から42のうちいずれかで示されるアミノ酸配列、或いは、配列番号21から42のうちいずれかで示されるアミノ酸配列のうち、(a)41−43番目のアミノ酸残基、(b)53−60番目のアミノ酸残基、(c)80−82番目のアミノ酸残基、及び(d)109−114番目のアミノ酸残基以外の部分に1又は数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は付加したアミノ酸配列からなる人工抗体。
  11. 配列番号21から42のうちいずれかで示されるアミノ酸配列からなる人工抗体、或いは、配列番号21から42のうちいずれかで示されるアミノ酸配列のうち、(a)41−43番目のアミノ酸残基、(b)53−60番目のアミノ酸残基、(c)80−82番目のアミノ酸残基、及び(d)109−114番目のアミノ酸残基以外の部分に1又は数個のアミノ酸残基が、欠失、置換、挿入、又は付加したアミノ酸配列からなる人工抗体。
  12. イントラボディである、請求項11に記載の人工抗体。
  13. 配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、(a)41−43番目のアミノ酸残基、(b)53−60番目のアミノ酸残基、(c)80−82番目のアミノ酸残基、及び(d)109−114番目のアミノ酸残基のいずれか1つ又は2つ以上の部位にランダム配列が導入されたポリペプチド。
  14. 配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち、(a)41−46番目のアミノ酸残基、(b)49−62番目のアミノ酸残基、(c)78−83番目のアミノ酸残基、及び(d)108−118番目のアミノ酸残基のいずれか1つ又は2つ以上の部位にランダム配列が導入されたポリペプチド。
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