JP2013529600A - 放射の影響を軽減し、及び全身性感染症のリスクを減少させる方法 - Google Patents

放射の影響を軽減し、及び全身性感染症のリスクを減少させる方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2013529600A
JP2013529600A JP2013514392A JP2013514392A JP2013529600A JP 2013529600 A JP2013529600 A JP 2013529600A JP 2013514392 A JP2013514392 A JP 2013514392A JP 2013514392 A JP2013514392 A JP 2013514392A JP 2013529600 A JP2013529600 A JP 2013529600A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gly
asp
ala
peptide derivative
thrombin peptide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2013514392A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013529600A5 (ja
Inventor
カーニー ダレル
Original Assignee
ザ ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ザ ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム filed Critical ザ ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
Publication of JP2013529600A publication Critical patent/JP2013529600A/ja
Publication of JP2013529600A5 publication Critical patent/JP2013529600A5/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/43Enzymes; Proenzymes; Derivatives thereof
    • A61K38/46Hydrolases (3)
    • A61K38/48Hydrolases (3) acting on peptide bonds (3.4)
    • A61K38/482Serine endopeptidases (3.4.21)
    • A61K38/4833Thrombin (3.4.21.5)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • A61P17/02Drugs for dermatological disorders for treating wounds, ulcers, burns, scars, keloids, or the like
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/04Antibacterial agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/10Antimycotics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/02Immunomodulators
    • A61P37/04Immunostimulants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P39/00General protective or antinoxious agents

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

本発明は、致死量の放射線に曝露した対象の死亡率を減少させる方法であって、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法に関する。また、本発明は、放射線に曝露された、又は曝露されていない対象の、細菌、真菌、又はウイルスの全身性感染症を発症するリスクを減少させる方法、外傷、重症の皮膚損傷、及び/又は熱傷に罹患している、放射線に曝露される対象を治療する方法、放射線療法を受ける対象において、放射線照射に関連した損傷を減少させる方法、放射線に関連した疾患を発症するリスクを減少させる方法、及び放射線曝露により引き起こされる、及び/又は放射線に曝露された創傷の治療を促進する方法を含む。これらの方法は、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む。

Description

関連出願
本願は、2010年6月11日に出願された、米国仮特許出願第61/354067号に対する優先権を主張し、この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
発明の背景
核爆発の脅威の高まりに伴い、一般市民や救急医療提供者を守るため、曝露後に供給され得る新規の対策を開発することが必要である。更に、放射線照射と、外傷、皮膚損傷又は熱傷との組み合わせは、放射線照射単独よりも最大10倍致命的になり得るという認識により、緊急性が要求される。爆発は何千人もの人を傷つけ、複合的な放射線損傷についての有効策を持たない人々は、致死量以下であったはずの放射線で恐らく死亡する。
加えて、全癌患者の50%超は、何かしらの放射線治療を受ける。放射線治療は、隣接する正常な組織に影響を及ぼし、しばしば外科的創傷の閉合を阻み、後の皮膚の破壊、又は治癒しない慢性潰瘍の形成をもたらすことがよく知られている。
現在、放射線曝露後の個人に関する放射線照射の軽減効果について認可された製品は存在しない。評価されている多数の潜在的な製品は、特定の態様の複合的な放射線損傷のみを対象とし、それ故、有効性は限定されている。放射線治療に関連した損傷のための最も多くの治療は、標準的な抗生物質の使用を伴う優れた創傷ケア、及び大きな潰瘍又は非治癒領域の外科的修復を伴う創傷包帯に主に基づく。FDA承認された唯一の放射線治療保護剤であるアミフォスチン(Amifostin)は、しかしながら、分割放射線治療の前に周囲組織に注射することが要求される。それ故、偶発的な放射線曝露又は放射線治療に起因する、放射線照射に誘導される損傷を予防及び治療するための新規な方法は必要とされている。
発明の概要
出願人は、トロンビンペプチド誘導体TP508の曝露後の注射により、致死量のガンマ放射線照射に曝露したマウスにおいて、生存時間を増加させ、敗血性の細菌増殖の開始を遅らせることができることを発見した(実施例3及び4)。加えて、トロンビンペプチド誘導体TP508の局所処置又は全身性注射は、放射線に曝露したマウスにおける開放性皮膚創傷の治癒を促進することができる(実施例5)。
本発明は、致死量の放射線、又は損傷と組み合わせた場合に致命的である放射線量に曝露した対象において、死亡リスクを減少させる、又は平均余命を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、50%、75%、又は100%まで)延長する方法であって、Asp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、放射線に曝露された対象において、全身性の細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる方法に関する。該方法は、Asp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む。
別の実施形態では、本発明は、外傷、皮膚損傷、及び/又は熱傷を有する、放射線に曝露された対象を治療する方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる、方法に関する。
本発明はまた、放射線療法を受ける対象において、放射線に関連する損傷を減少させる方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる、方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、放射線療法を受ける対象において、放射線に誘導される疾患を発症するリスクを減少させる方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる、方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、放射線曝露により引き起こされる、及び/又は放射線に曝露された対象の創傷の治癒を促進する方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を創傷に投与すること、又は有効量のトロンビンペプチド誘導体を放射線曝露後に全身的に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる、方法に関する。
更に別の実施形態では、本発明は、放射線に曝露されておらず、血中において細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクにあるかもしれない対象の血中において、細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる方法に関する。該方法は、Asp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む。
本発明はまた、致死量の放射線に曝露された対象の死亡リスクを減少させ、放射線に曝露された対象において細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させ、放射線に曝露され外傷、皮膚損傷、及び/又は熱傷を有する対象を治療し、放射線療法を受ける対象において放射線に関連する損傷を減少させ、放射線療法を受けている対象において放射線に誘導される疾患を発症するリスクを減少させ、放射線曝露により引き起こされる、及び/又放射線に曝露された対象の創傷の治癒を促進するためのトロンビンペプチド誘導体、ここでトロンビンペプチド誘導体はAsp−Ala−R(Rはセリンエステラーゼ保存配列である)を含んでなる、の使用に関する。本発明はまた、放射線曝露により引き起こされる、及び/又は放射線に曝露された対象の治癒を促進するための使用に関する。
図1は、0、5、10、若しくは20Gyの放射線に曝露し、生理食塩水又は30ug/ml TP508で処理した、ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)において測定したカスパーゼ活性を示すグラフである。
図2は、局所的に又は静脈内に送達される生理食塩水プラセボ又はTP508で処置したマウスの、8Gy放射線曝露及び皮膚切除をした後の、異なる日における生存率を示すグラフである。
図3は、12Gy放射線曝露、及び生理食塩水又はTP508のいずれかの単回の曝露後ボーラス投与後の、異なる日におけるマウスの生存率を示すグラフである。
図4は、0又は12Gy放射線の曝露、及び生理食塩水プラセボ又はTP508注射の6及び7日後の、マウスの血中の生菌数(CFU)を示す棒グラフである。
図5は、0又は8Gyの放射線に曝露後0〜5日及び5〜16日後の、局所的又は静脈注射により生理食塩水プラセボ又はTP508のいずれかを投与したマウスにおける線形の創傷治癒の速度(mm/日で測定する)を示す棒グラフである。
図6は、二つの棒グラフを有するパネルである。パネルAの棒グラフは、0及び8Gyで放射線照射し、生理食塩水プラセボ(P)、又は局所的(TPt)若しくは静脈内(TPiv)のいずれかで投与したTP508で処置したマウスにおける、放射線照射後11日に測定した血清IL−6レベル(ng/ml)を示す。パネルBの棒グラフは、0及び12Gyで放射線照射し、生理食塩水プラセボ(P)又は局所的(TPt)若しくは静脈内(TPiv)のいずれかで投与したTP508で処置したマウスにおける、放射線照射後7日に測定された血清IL−6レベル(ng/ml)を示す。
図7は、大動脈移植片培養の5日後、出芽面積の倍数増加を示す棒グラフである。大動脈は、0、3、8、又は10Gyの放射線での曝露、及び静脈内に投与した生理食塩水プラセボ又はTP508のいずれかでの処置の24時間後、マウスから単離した。
実施形態の詳細な説明
本発明は、対象における放射線曝露の悪影響を減少させる方法であって、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法に関する。放射線曝露は、例えば核爆発、核兵器、偶発的な放射線曝露(例えば原子炉における事故、又は放射線源からの不十分な保護による)又は放射線療法に起因し得る。少量の放射線曝露は、航空会社の労働者及び宇宙飛行士;原子力及び核燃料処理工場の労働者;研究所の労働者;及びウラン鉱山労働者に及ぶ職業的な危険であり得る。加えて、医療診断検査、例えばX線は、一般の人々に対しての低レベルの放射線曝露の原因となり得る。
本発明はまた、放射線に曝露されていない対象において、血中の細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる方法であって、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法に関する。感染は、例えば外科手術時(特に、それが粘膜、例えば胃腸管を含む場合)に疾患の合併症、例えば肺炎、又は髄膜炎として、又は動脈又は静脈に侵入するカテーテル及び他の異物(静注薬物乱用を含む)により、血流に侵入し得る。加えて、肺疾患、炎症性腸疾患、及び全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患する個人、又は免疫不全の個人はまた、血液感染のリスクにある。病院において、留置カテーテルは、皮膚上通常で発見される細菌が血流に侵入し得る手段を提供するので、血液感染の常習的な原因である。血液感染の他の原因としては、歯科的処置(しばしば、単純な歯磨きを含む)、ヘルペス(疱疹性ひょう疽を含む)、尿路感染、腹膜炎、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎、静脈麻薬の使用、及び結腸直腸癌が挙げられる。血液感染は、口腔咽頭の、胃腸の、又は泌尿生殖器の手術若しくは検査の結果でもあり得る。血液感染に対する免疫反応は、比較的高い死亡率を有する敗血症及び敗血性ショックを引き起こし得る。本明細書に記載される方法では、本発明のペプチドは、抗生物質と組み合わせて、投与することができる。
一つの態様では、本発明は、致死量の放射線に曝露された対象における死亡リスクを減少させる方法であって、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法に関する。
致死量の放射線は、10日間に、試験された対象の半数の死亡を引き起こす用量、即ち、10日間においてLD50である。致死量は対象の属性に依存する。例えば、ヒトについての致死量は約3.5Gy以上であり、マウスについての致死量は約12Gy以上である。
致死量の放射線で曝露された対象はまた、さらに外傷、皮膚損傷及び/又は熱傷を受け得る。
「熱傷」とは、熱、電気、化学物質、光、放射線、摩擦、又は熱により引き起こされる皮膚損傷の種類である。例えば核爆発のイベントにおける放射線曝露により引き起こされる「熱傷」としては、例えば、赤外線熱放射による温熱熱傷、浅くイオン化するベータ放射線によるベータ線熱傷、及び高い透過性を有するガンマ放射線によるガンマ線熱傷が挙げられる。熱傷は、I度、II度、又はIII度の熱傷であり得る。全体表面積(TBSA)の様々なパーセンテージは、熱傷により影響され得る。例えば、1%未満、1%超、5%超、10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、又は1〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%又は50〜70%のTBSAは、熱傷により影響された。
「外傷」とは、力又は衝撃により引き起こされる物理的損傷である。外傷は、しばしば二次性合併症、例えばショック状態、呼吸不全、及び死亡に関連する。例えば、外傷は、爆発のエネルギー又は落下物及び飛行物のエネルギーにより引き起こされ得る。外傷はまた、臓器からの出血及び/又は少なくとも部分的な機能の喪失をもたらす内臓損傷を含む。例えば内臓損傷は、例えば銃弾又は飛行発射物の貫通により引き起こされ得る。外傷はまた、筋骨格系、例えば骨、筋肉、軟骨、腱、靱帯、関節、及び結合組織に対する損傷を含み得る。一つの実施形態では、外傷は骨折である。
皮膚損傷は、皮膚の真皮層の損傷である。いくつかの皮膚損傷は、少なくとも100mmに広がる皮膚創傷をもたらす皮膚損傷及び/又は完全な厚みの(Full-thickness)創傷(即ち皮膚の表皮及び真皮の双方を貫通する創傷)である。
一つの実施形態では、対象により受ける熱傷、外傷、又は皮膚損傷は、対象を全身性感染症に曝す。「全身性感染症」とは、血流に侵入した感染であり、複数の臓器及び/又は組織又は全身を冒し得る。
別の実施形態では、本明細書に記載のトロンビンペプチド誘導体は、本発明の方法により治療する対象において、白血球減少症及び/又は好中球減少症を減少させる。或いは、本明細書に記載のトロンビンペプチド誘導体は、本発明の方法により治療する対象において、放射線損傷による骨髄前駆細胞の集団の減少を減少させる。
別の態様では、本発明は、対象における全身性細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる方法であって、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法である。一つの実施形態では、対象は、細菌、真菌、又はウイルス感染に曝される。一つの例では、全身性の細菌、ウイルス、又は真菌感染症を発症するリスクにある対象は、放射線に曝露される。例えば、核爆発のイベントにおける、医療従事者、入院患者、救助隊、衛生のための従業者、及び例えば病院のような細菌、真菌、又はウイルス感染の発生が起こりやすい環境若しくは場所にいる人々である。或いは、放射線曝露、例えば核爆発に起因する熱傷、外傷、又は皮膚損傷に罹患する対象は、斯かる損傷に罹患していない対象よりも細菌、真菌、又はウイルス感染により罹りやすい。或いは、放射線曝露の前に未治癒の創傷を有する対象は、細菌、真菌、又はウイルス感染症をより発症しやすい。或いは、例えば手術により放射線に曝露される前に存在する創傷を有する、放射線療法を受ける患者は、事前に創傷を有しない患者よりも細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症する高いリスクを有する。本明細書に記載のトロンビンペプチド誘導体は、放射線曝露に関する上述の対象における全身性細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクの減少に効果的である。
一つの実施形態では、該方法は、対象の血液中の細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる。高用量の放射線曝露は、急性疾患、例えば、対象を敗血症性感染により感染し易くさせる腸壁の破壊をもたらす。一つの実施形態では、本発明は、放射線に曝露された対象において、敗血性全身性感染症の発症を遅らせる方法であって、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法に関する。前記対象は、致死量の放射線に曝露されてもよい。或いは、前記対象は、致死量以下の放射線に曝露されてもよい。
或いは、対象は、細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクにあり、放射線に曝露されていない。これらの対象としては、1又はそれ以上の以下:a)外傷、重症な皮膚損傷、及び/又は熱傷を受けた対象;b)侵襲的な医療処置又は歯科的処置を受けた対象;c)侵襲的な医療装置の挿入を受けた対象;d)肺炎又は急性呼吸促迫症候群を引き起こし得る他の肺疾患又は全身性感染症に罹患した対象;e)免疫不全である対象;f)幼児である、又は60歳以上である対象;又はg)幼児である、又は60歳以上である、a〜dの分類の1又はそれ以上の対象を含む。
対象を感染に曝す侵襲的な医療処置は、皮膚に外科的傷口を作ること、又は器具、例えばニードル又はチューブを対象の身体に挿入することを含む。侵襲的な医療処置は、外部の生物、例えば細菌又は真菌を、対象の身体に導入するリスクを増加させ、対象の血液中の細菌、真菌、又はウイルス感染の増加したリスクを導く。侵襲的な医療処置の例としては、任意の兆候のための手術が挙げられる。侵襲的な医療処置の別の例としては、侵襲的医療デバイスが対象に導入される処置が挙げられる。侵襲的な医療デバイスの例としては、静脈又は動脈経路、呼吸管、導尿カテーテル、外科用ドレーン、人工関節、又は栄養チューブが挙げられる。栄養チューブの例としては、G−チューブ/PEGチューブ、J−チューブ(空腸造瘻術チューブ)及びNG−チューブ(鼻腔栄養チューブ)が挙げられる。
別の実施形態では、本発明は、肺炎を有する対象の血液中の細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる方法に関する。肺炎は、肺、特に肺胞の炎症性疾患である。感染は、肺炎の最も一般的な原因である。感染源は、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫であり得る。肺に対する化学的熱傷又は物理的損傷は肺炎を引き起こし得る。細菌は、肺炎の最も一般的に原因であり、市中肺炎の場合、最も一般的に単離される細菌は、肺炎レンサ球菌(streptococcus pneumoniae)である。別の重要な肺炎の原因となるグラム陽性は、新生児における肺炎の重大な原因であるストレプトコッカス・アガラクティエ(streptococcus agalactiae)を含む黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)である。グラム陰性細菌は、グラム陽性細菌ほど頻繁に肺炎を引き起こさない。肺炎を引き起こすいくつかのグラム陰性細菌としては、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びカタラリス菌(Moraxella catarrhalis)が挙げられる。これらの細菌は、しばしば胃や腸内で生存し、吐瀉物を吸引する場合、肺に侵入し得る。肺炎を引き起こす「代表的ではない」細菌としては、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、及びレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)が挙げられる。
別の実施形態では、本発明は、免疫不全の対象の血液中で細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる方法に関する。免疫不全の対象は、免疫系が弱くなった、又は欠損している対象である。免疫不全である対象は、適切に機能しない免疫応答のために、感染と戦うことがほとんどできない。免疫不全の対象の例としては、以下:a)免疫系の機能に影響を及ぼす遺伝子欠陥を有する対象;b)疾患、例えばAIDS、又は白血病、リンパ腫、若しくは多発性骨髄腫を含む癌に罹患した対象;c)慢性疾患、例えば透析を必要とする末期腎不全、糖尿病、又は肝硬変に罹患している対象;d)ステロイド、化学療法、放射線、免役抑制の移植後薬物療法を含む治療を受けている対象;e)妊娠している対象を含む。
一つの実施形態では、細菌、真菌、又はウイルス感染としては(放射線曝露の存在又は不存在下で)、限定しないが、ブドウ球菌(staphylococci)(例えば黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus))、腸球菌(enterococci)、レンサ球菌(streptococci)(例えば肺炎レンサ球菌(streptococcus pneumoniae))、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)、バークホルデリア・セノセパシア(burkholderia cenocepacia)、トリ型結核菌(mycobacterium avium)、エンテロバクター属(enterobacter)、バクテロイデス・フラジリス(bacteroides fragilis)、化膿レンサ球菌(streptococcus pyogenes)、腸球菌種(enterococcus sp.)、インフルエンザ菌(haemophilus influenzae)、レジオネラ菌種(legionella sp.)、クラミジア・ニューモニエ(chlamydia pneumoniae)、大腸菌(escherichia coli)、クロストリジウム属種(Clostridium sp.)、ブドウ球菌属種(staphylococcus sp.)、エンテロバクター属種(enterobacter sp.)、プロテウス属種(proteus sp.)、ナイセリア・メニンギティディス(neiserria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(listeria monocytogenes)、カンジダ属種(Candida sp.)(例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、腸球菌属種(enterococcus sp.)、クレブシエラ菌(klebsiella)、s.アガラクチア(s. agalactiae)、及びアスペルギルス属(aspergillus)の感染が挙げられる。細菌、真菌、又はウイルス感染はまた、全身性細菌感染、全身性真菌感染、及び全身性ウイルス感染を含む。
核爆発のイベントでは、人々は、しばしば放射線曝露に加えて開放性皮膚創傷を受ける。加えて、放射線曝露は、しばしば皮膚損傷、例えば皮膚潰瘍を引き起こし得る。放射線療法の場合、癌患者はしばしば、腫瘍の外科的除去後に放射線療法を受け、放射線療法を受ける場合、結果として放射線に曝露される外科的創傷を有する。対象はまた、核爆発、偶発的な放射線曝露又は放射線療法を含む放射線曝露の前に、事前に存在する創傷を有し得る。本明細書に記載のトロンビンペプチド誘導体は、上述のこれらの創傷の治癒を促進することができる。
一つの実施形態では、放射線曝露は、致死量以下である。例えば、放射線曝露は、対象がヒトである場合、3.5Gy未満である。
更に別の態様では、本発明は、放射線療法を受けた対象において、放射線照射に関連する損傷を減少させる方法に関する。該方法は、対象に、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を投与することを含む。
「放射線照射に関連する損傷」とは、核爆発、核兵器、偶発的な放射線曝露、又は放射線療法に起因する放射線曝露による損傷である。例えば、核爆発のイベントにおいて対象が高い放射線量に曝露される場合、放射線曝露は、しばしば対象において、骨髄、脾臓、及びリンパ節への放射線照射の影響の結果として造血症候群、消化管を裏打ちする細胞への放射線照射の影響に起因する胃腸症候群(例えば腸壁の破壊)、及び脳損傷を含む急性疾患を引き起こす。放射線曝露、例えば放射線療法はまた、様々な皮膚損傷、例えば放射された部位における皮膚の強度の発赤、水疱形性、及び潰瘍形成、及び後期の皮膚破壊、並びに脱毛を引き起こす毛嚢の損傷を引き起こし得る。高用量の放射線曝露は、永久的な脱毛、脂肪分泌及び汗腺の損傷、萎縮、線維症(例えば皮下線維症)、減少又は増加した皮膚色素沈着、及び曝露された組織の潰瘍又は壊死を引き起こし得る。一つの実施形態では、放射線照射に関連する損傷は、皮膚潰瘍又は後期の破壊である。放射線曝露、例えば放射線療法はまた、筋骨格系、例えば骨、筋肉、軟骨、筋、靱帯、関節、及び結合組織を損傷し得る。一つの実施形態では、本発明は、放射線曝露される及び/又は放射線曝露された対象において、骨の治癒を促進する方法であって、前記骨が、骨折している、又は例えば骨の腫瘍を取り除くために外科的に治療されている、方法に関する。
一つの実施形態では、放射線療法を受ける対象において放射線関連損傷を減少させる方法のために、放射線に曝露をされる、又は曝露される予定である対象の正常組織にトロンビンペプチド誘導体を、投与する。例えば、トロンビンペプチド誘導体を、放射線に曝露される正常な皮膚に局所的に投与する。放射線療法の間、放射線は、しばしば放射線曝露を標的部位に限定できないので、放射線照射の標的部位の周りの組織の下に損傷を引き起こす。これらの正常組織への放射線関連損傷を減少させるために、トロンビンペプチド誘導体を、例えば放射線療法の前、間、又は後に、局所的に(例えば注射や持続放出装置等の埋め込みにより、又はカテーテルを通して)又は全身的に、下部組織に直接的に投与することができる。或いは、放射線療法の間又は放射線療法の後に、トロンビンペプチド誘導体を、局所的に又は全身的に投与又は送達することができる。
更に別の態様では、本発明は、放射線療法を受けた対象において放射線照射により誘導される疾患を発症するリスクを減少させる方法であって、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含む方法に関する。
「放射線照射により誘導される疾患」とは、放射線曝露により引き起こされる細胞損傷に起因する障害、疾患、又は症状を意味する。例えば、放射線への曝露は、様々な細胞損傷、例えば造血細胞に対する損傷、前駆細胞の減少した利用可能性、生存能力、及び機能、遅延した血管新生及び血管再生、腸微小血管内皮細胞、上皮細胞、腺窩細胞、脳及び他の組織中の神経細胞、並びに心筋のアポトーシスをもたらし得る。そのため、放射線照射により誘導される疾患としては、放射線曝露により引き起こされる上述の細胞損傷に起因する疾患、障害、症状が挙げられる。典型的な放射線照射により誘導される疾患としては、限定しないが、白血球減少症、好中球減少症、感染症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、多臓器不全症候群(MODS)、肺障害、肺/気道疾患、脳微小血管障害、脳血管障害、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、末梢血管損傷、末梢動脈疾患(PAD)、糖尿病性神経障害、及び血管障害、並びに癌が挙げられる。
更に別の態様では、本発明は、放射線曝露により引き起こされた、及び/又は放射線に曝露される対象における創傷の治癒を促進させる方法に関する。該方法は、本明細書に記載の有効量のトロンビンペプチド誘導体を(例えば局所的に、又は全身的に、例えばI.V.により)創傷に投与することを含む。
皮膚が裂かれた、切られた又は刺された創傷(開放創)は、損傷の種類である。開放創としては、切開又は切開創(ぎざぎざでない、刃の鋭い物体、例えば、ナイフ、かみそり、又はガラスの破片により引き起こされる);裂創(鈍的外傷により引き起こされる、一様でなく裂けたような創傷);擦り傷;刺創;貫通創、又は銃創(身体に向かう、又は貫通する銃弾又は同様の発射物により引き起こされる)が挙げられる。
本明細書で用いられるように、トロンビン誘導体ペプチド、及び改変されたトロンビンペプチド誘導体、及び後述のトロンビンペプチド誘導体二量体は、集合的に「トロンビンペプチド誘導体」と称され得る。トロンビン誘導体ペプチド、改変されたトロンビンペプチド誘導体、及びトロンビンペプチド誘導体二量体のそれぞれのポリペプチドは19〜23個のアミノ酸を有する(即ち19〜23アミノ酸長)。
トロンビン誘導体ペプチド
トロンビンペプチド誘導体(「トロンビン誘導体ペプチド」も同様)は、トロンビンのアミノ酸配列の少なくとも一部に由来するアミノ酸配列を有するトロンビンのアナログであり、非タンパク質分解的に活性化されるトロンビン受容体(NPAR)において活性である。トロンビンペプチド誘導体は、例えば、組み換えDNA法により生成されるペプチド、トロンビンの酵素的消化により生成されるペプチド、及び合成的に生成されるペプチドを含み、それは、トロンビンと比較して、特に末端においてアミノ酸置換及び/又は改変されたアミノ酸を含む。
本発明のトロンビンペプチド誘導体は、米国特許第5,352,664号及び第5,500,412号に記載のトロンビン誘導体ペプチドを含む。一つの実施形態では、本発明のトロンビンペプチド誘導体は、トロンビンペプチド誘導体、又は生理学的機能の同等物、即ち約50個以下のアミノ酸、好ましくは約30個以下のアミノ酸を有し、トロンビンのアミノ酸508〜530(Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val;配列番号6)に対応するヒト トロンビンのフラグメントに対して十分な相同性を有し、NPARを活性化するポリペプチドである。
別の実施形態では、本発明のトロンビンペプチド誘導体は、構造式(I):
Asp−Ala−R(I)
により表される部分を含んでなるトロンビンペプチド誘導体である。Rはセリンエステラーゼ保存ドメインである。セリンエステラーゼ、例えばトリプシン、トロンビン、及びキモトリプシン等は、高度に保存される領域を有する。「セリンエステラーゼ保存ドメイン」とは、これらの保存領域の一つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味し、トロンビンペプチド誘導体がNPAR活性化能を保持するこれらの保存領域の一つと十分な相同性を有する。
トロンビン誘導体の生理学的機能の同等物は、トロンビン受容体結合ドメイン又はセリンエステラーゼ保存アミノ酸配列の機能に影響を与えない態様において、トロンビン誘導体と異なる分子を含む。斯かる態様は、限定しないが、(下記で定義されるような)保存的アミノ酸置換及び改変、例えばカルボキシル末端のアミド化、アミノ末端のアセチル化、生理学的に不活性な担体分子とポリペプチドとの結合、又はセリンエステラーゼ保存配列に基づく配列改変を含んでもよい。
セリンエステラーゼ保存配列を有するドメインは、セリンプロテアーゼ中に高度に保存されていることがこれまでに示されているドデカペプチド(Asp−X−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X3−Val;配列番号13;ここで、XはAla又はSerのいずれかであり、XはGlu又はGlnであり;及びXは、Phe、Met、Leu、His、又はValである)の少なくとも4〜12個のN末端のアミノ酸を含むポリペプチド配列を含み得る。
一つの実施形態では、セリンエステラーゼ保存配列は、配列番号14のアミノ酸配列(Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)、又は配列番号14のアミノ酸配列を有するポリペプチドのC末端切断フラグメントを含む。しかしながら、それは、セリンエステラーゼ保存配列中の0、1、2、又は3個のアミノ酸は、配列番号14の対応するアミノ酸と異なり得ることは理解される。好ましくは、配列番号14の対応するアミノ酸と異なるセリンエステラーゼ保存配列中のアミノ酸は、下記に定義されるような保存的置換であり、より好ましくは、高度に保存的な置換である。「C末端切断フラグメント」とは、C末端からアミノ酸又はアミノ酸のブロックを除いた後に残るフラグメント(前記フラグメントは、少なくとも6個の、より好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を有する)を意味する。
別の実施形態では、セリンエステラーゼ保存配列は、配列番号15のアミノ酸配列(Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val;XはGlu又はGlnであり、Xは、Phe、Met、Leu、His、又はValである)、又は少なくとも6個のアミノ、好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を有するそのC末端切断フラグメントを含む。
好ましい実施形態では、トロンビンペプチド誘導体は、セリンエステラーゼ保存配列、及びより特定のトロンビンアミノ酸配列Arg−Gly−Asp−Ala(配列番号16)を有するポリペプチドを含む。この種類のトロンビンペプチド誘導体の一つの例としては、Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号1)が挙げられる。X及びXは、上記に定義される通りである。トロンビンペプチド誘導体は、配列番号6のアミノ酸配列(Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)又はそのN末端切断フラグメントを含む(ただし、トロンビンペプチド誘導体の位置1〜9において0、1、2、又は3個のアミノ酸が配列番号6に対応する位置におけるアミノ酸と異なる)。好ましくは、配列番号6中の対応するアミノ酸残基と異なるトロンビンペプチド誘導体中のアミノ酸残基は、下記で定義される保存的置換であり、より好ましくは高度に保存された置換である。「N末端切断フラグメント」とは、N末端からアミノ酸又はアミノ酸ブロック、好ましくは6個以下のアミノ酸のブロック、より好ましくは3個以下のアミノ酸のブロックを取り除いた後に残るフラグメントを意味する。
任意で、本明細書に記載のトロンビンペプチド誘導体は、C末端においてアミド化、及び/又はN末端においてアシル化され得る。特定の実施形態では、トロンビンペプチド誘導体は、C末端アミドを含み、任意でアシル化されたN末端を含み、ここで、前記C末端アミドは−C(O)NRにより表され、R及びRは、独立して水素、C〜C10の置換された又は置換されていない脂肪族基である、又はR及びRは、これらが結合する窒素原子とともにC〜C10の非芳香族ヘテロ環基を形成し、そして前記N末端アシル基は、RC(O)−により表され、Rが水素、C〜C10の置換された又は置換されていない芳香族基、又はC〜C10の置換された又は置換されていない芳香族基である。別の特定の実施形態では、トロンビンペプチド誘導体のN末端は、遊離(即ち未置換)であり、C末端が遊離(即ち未置換)又は好ましくは、カルボキサミド(即ち−C(O)NH)としてアミド化される。特定の実施形態では、トロンビンペプチド誘導体は、以下のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号6)を含む。別の特定の実施形態では、トロンビンペプチド誘導体は、Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号17)のアミノ酸配列を含む。或いは、トロンビンペプチド誘導体は、配列番号18のアミノ酸配列:Asp−Asn−Met−Phe−Cys−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Pheを含む。配列番号6、17、又は18のアミノ酸を含んでなるトロンビンペプチド誘導体は、任意で、C末端においてアミド化され、及び/又はN末端においてアシル化され得る。好ましくは、N末端は、遊離(即ち未置換)であり、C末端が遊離(即ち未置換)又は好ましくは、カルボキサミド(即ち−C(O)NH)としてアミド化される。しかしながら、トロンビンペプチド誘導体の位置1〜9、及び14〜23における、0、1、2、又は3個のアミノ酸が、配列番号6中の対応するアミノ酸と異なり得ることは、理解される。トロンビンペプチド誘導体の位置1〜14、及び19〜33における、0、1、2、又は3個のアミノ酸が、配列番号18中の対応するアミノ酸と異なり得ることはまた、理解される。好ましくは、配列番号6又は配列番号18中の対応するアミノ酸残基と異なるトロンビンペプチド誘導体中のアミノ酸は、下記で定義される保存的置換であり、より好ましくは高度に保存された置換である。或いは、少なくとも14個のアミノ酸を有するトロンビンペプチド誘導体のN末端の切断されたフラグメント、又は少なくとも18個のアミノ酸を有するトロンビンペプチド誘導体のC末端の切断されたフラグメントは、本発明の方法に用いることができる。
「C末端切断フラグメント」とは、C末端からアミノ酸又はアミノ酸のブロックを取り除いた後に残るフラグメントを意味する。「N末端切断フラグメント」とは、N末端からアミノ酸又アミノ酸のブロックを取り除いた後に残るフラグメントを意味する。用語「C末端切断フラグメント」及び「N末端切断フラグメント」とは、上述のように、N末端におけるアシル化及び/又はC末端におけるアミド化を含む。
開示される方法に使用のための、好ましいトロンビンペプチド誘導体は、配列番号2のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−GIy−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Valを含む。開示される方法に使用のための、別の好ましいトロンビンペプチド誘導体は、配列番号19のアミノ酸配列:Asp−Asn−Met−Phe−Cys−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Pheを含む。XはGlu又はGlnであり;Xは、Phe、Met、Leu、His、又はValである。配列番号2及び配列番号19のトロンビンペプチド誘導体は、任意で、上述のように、C末端アミド及び/又はアシル化されたN末端を含み得る。好ましくは、N末端は、遊離(即ち未置換)であり、C末端が遊離(即ち未置換)又は好ましくは、カルボキサミド(即ち−C(O)NH)としてアミド化される。或いは、これらの好ましいトロンビンペプチド誘導体のN末端切断フラグメント(前記N末端切断フラグメントは少なくとも14個のアミノ酸を有する)、又はこれらの好ましいトロンビンペプチド誘導体のC末端切断フラグメント(前記C末端切断フラグメント少なくとも18個のアミノ酸を有する)はまた、開示された方法に用いることができる。
TP508は、トロンビンペプチド誘導体の一つの例であり、23アミノ酸残基長であり、ここで、N末端のアミノ酸残基Alaは、置換されておらず、C末端のアミノ酸残基ValのCOOHは、−C(O)NHにより表されるアミドに改変されている(配列番号3)。トロンビンペプチド誘導体の別の例は、配列番号6のアミノ酸配列を含み、ここで双方のN及びC末端は、置換されていない(「脱アミドTP508」)。開示される方法に用いられ得るトロンビンペプチド誘導体の他の例としては、TP508のN末端切断フラグメント(又は脱アミドTP508)(前記N末端切断フラグメントは少なくとも14個のアミノ酸を有する)又はTP508(又は脱アミドTP508)のC末端切断フラグメント(前記C末端切断フラグメント少なくとも18個のアミノ酸を有する)が挙げられる。
本明細書では、ポリペプチド中の「保存的置換」とは、アミノ酸の、同一の正味電荷及びおおよそ同一のサイズ及び形状を有する別のアミノ酸との置換である。脂肪族、又は置換された脂肪族アミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、これらの側鎖中の炭素及びヘテロ原子の数の合計が約4個以下で異なる場合、おおよそ同じサイズを有する。これらの側鎖中の分枝の数が1以下で異なる場合、これらはおおよそ同じ形状を有する。これらの側鎖中にフェニル又は置換されたフェニル基を有するアミノ酸は、おおよそ同じサイズ及び形状を有すると考えられる。5つのアミノ酸群を以下に列挙する。ポリペプチド中のアミノ酸を同一の群からの別のアミノ酸で置換することは、保存的置換をもたらす:
群I:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、及びC1〜C4脂肪族側鎖、又はC1〜C4ヒドロキシル置換された脂肪族側鎖(直鎖又は一分枝鎖)を有する非天然のアミノ酸。
群II:グルタミン酸、アスパラギン酸、及びカルボン酸置換されたC1〜C4脂肪族側鎖(無枝又は一分枝点)を有する非天然のアミノ酸。
群III:リジン、オルニチン、アルギニン、及びアミン又はグアニジノ置換されたC1〜C4脂肪族側鎖(無枝又は一分枝点)を有する非天然のアミノ酸。
群IV:グルタミン、アスパラギン、及びアミド置換されたC1〜C4脂肪族側鎖(無枝又は一分枝点)を有する非天然のアミノ酸。
群V:フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、及びトリプトファン。
本明細書では、ポリペプチド中の「高度な保存的置換」とは、アミノ酸の、側鎖に同じ官能基及び、ほぼ同じサイズ及び形状を有する別のアミノ酸との置換である。脂肪族又は置換された脂肪族アミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、これらの側鎖中の炭素及びヘテロ原子の合計数が2以下で異なる場合、ほぼ同じサイズを有する。これらの側鎖において同数の分枝鎖を有する場合、これらはほぼ同じ形状を有する。高度な保存的置換の例としては、ロイシンの代わりにバリン、セリンの代わりにスレオニン、グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸、及びフェニルアラニンの代わりにフェニルグリシンが挙げられる。高度に保存的ではない置換の例としては、バリンの代わりにアラニン、セリンの代わりにアラニン、及びセリンの代わりにアスパラギン酸が挙げられる。
改変されたトロンビンペプチド誘導体
本発明の一つの実施形態では、トロンビンペプチド誘導体は、前述のトロンビンペプチド誘導体に対して改変され、ここで、前述のトロンビンペプチド誘導体のシステイン残基は、ペプチドの二量体化を最小限にするために、同様のサイズ及び電荷を有するアミノ酸で置き換えられる。好適なアミノ酸の例としては、アラニン、グリシン、セリン、又はS’保護システインが挙げられる。好ましくは、システインはアラニンで置換される。改変されたトロンビンペプチド誘導体は、未改変のトロンビンペプチド誘導体とおおよそ同一の生物学的活性を有する。米国特許出願公開第2005/0158301A1号明細書を参照のこと(これは、参照により本明細書に組み込まれている)。
本明細書で開示される改変されたトロンビンペプチド誘導体は、任意で上述のようなC末端アミド及び/又はN末端アシル基を含み得ることは理解される。好ましくは、トロンビンペプチド誘導体のN末端は、遊離(即ち未置換)であり、C末端は、遊離(即ち未置換)又は好ましくは、カルボキサミド(即ち−C(O)NH)としてアミド化されている。
特定の実施形態では、改変されたトロンビンペプチド誘導体は、配列番号4のアミノ酸配列:Arg−Gly−Asp−Ala−Xaa−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Valを有するポリペプチド、又は少なくとも6個のアミノ酸を有するそのC末端切断フラグメントを含む。より具体的には、トロンビンペプチド誘導体は、配列番号20のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Xaa−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val、又は配列番号20のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを含む。更により具体的には、トロンビンペプチド誘導体は、配列番号5のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Xaa−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val、又は配列番号5のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを含む。Xaaは、アラニン、グリシン、セリン又はS−保護システインである。XはGlu又はGlnであり、Xは、Phe、Met、Leu、His、又はValである。好ましくは、XはGluであり、XはPheであり、Xaaはアラニンである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の一つの例は、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Ala−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号21)を有するポリペプチドである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の更なる例は、ポリペプチドH−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Ala−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−NH(配列番号22)である。この種類のトロンビンペプチド誘導体の別の例は、ポリペプチドH−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Ser−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−NH(配列番号30)である。Xaaが、アラニン、グリシン、セリン又はS−保護システインである場合、トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、又は3個のアミノ酸は、配列番号4、20、5、21又は22の対応する位置におけるアミノ酸と異なる。好ましくは、違いは、以下に定義するように保存的である。
別の特定の実施形態では、トロンビンペプチド誘導体は、配列番号23のアミノ酸配列:Asp−Asn−Met−Phe−Xbb−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Xaa−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Pheを有するポリペプチド、又はアミノ酸6〜28を含むそのフラグメントを含む。より好ましくは、トロンビンペプチド誘導体は、配列番号24のアミノ酸配列:Asp−Asn−Met−Phe−Xbb−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Xaa−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Pheを有するポリペプチド、又はアミノ酸6〜28を含むそのフラグメントを含む。Xaa及びXbbは、独立してアラニン、グリシン、セリン、又はS−保護システインである。XはGlu又はGlnであり、Xは、Phe、Met、Leu、His、又はValである。好ましくは、XはGluであり、XはPheであり、Xaa及びXbbはアラニンである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の一つの例は、アミノ酸配列Asp−Asn−Met−Phe−Ala−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−AIa−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe(配列番号25)を含むポリペプチドである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の更なる例は、ポリペプチドH−Asp−Asn−Met−Phe−Ala−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Ala−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−NH(配列番号26)である。トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、又は3個のアミノ酸は、配列番号23、24、25又は26の対応する位置におけるアミノ酸と異なり得る。Xaa及びXbbは、独立してアラニン、グリシン、セリン、又はS−保護システインである。好ましくは、違いは、トロンビンペプチド誘導体の保存的置換におけるように、保存的である。
「S−保護システイン」とは、反応性のチオール部分である−SHが保護基でブロックされているシステイン残基である。好適な保護基は、当該技術分野において知られており、例えば、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3 rd Edition, John Wiley & Sons, (1999), pp. 454-493に開示され、その教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。好適な保護基は、毒性がなく、医薬製剤において安定であるべきであり、トロンビンペプチド誘導体の活性を維持するために最小限の更なる機能性を有する。遊離のチオールは、チオエーテル、チオエステルとして保護され得、又非対称的なジスルフィドには酸化され得る。好ましくは、該チオールは、チオエーテルとして保護される。好適なチオエーテルとしては、限定しないが、S−アルキルチオエーテル(例えばC−Cアルキル)、及びS−ベンジルチオエーテル(例えば、システイン−S−S−t−Bu)が挙げられる。好ましくは、保護基は、アルキルチオエーテルである。より好ましくは、S−保護システインは、S−メチルシステインである。或いは、該保護基は:1)ジスルフィド結合によるトロンビンペプチド誘導体のシステインチオール基と結合したシステイン又はシステインを含むペプチド(「保護ペプチド」);又は2)トロンビンペプチド誘導体のシステインチオール基と保護ペプチド中の(例えば、C末端又は側鎖のアスパラギン酸又はグルタミン酸における)カルボン酸間のチオアミド結合により結合したアミノ酸又はペプチド(「保護ペプチド」)であり得る。保護ペプチドは、生理学的に不活性(例えば、システインにより任意に遮られる約50個以下のアミノ酸のポリグリシン、又はポリアラニン)であってもよく、又は所望の生物学的活性を有してもよい。
トロンビンペプチド誘導体二量体
本発明のいくつかの態様では、本方法のトロンビンペプチド誘導体は、トロンビンペプチド誘導体二量体である。米国特許出願公開2005/0153893号を参照のこと(それは参照により本明細書に組み込まれている。)。該二量体は、本質的に単量体に戻らず、上述のようなトロンビンペプチド誘導体単量体としてほぼ同一の生物学的に活性をなおも有する。「トロンビンペプチド誘導体二量体」とは、共有結合、好ましくはシステイン残基間のジスルフィド結合により結合した二つのトロンビンペプチド誘導体を含む分子である。トロンビンペプチド誘導体二量は、典型的に、本質的には、例えば95重量%超、好ましくは99重量%超、対応する単量体から遊離している。好ましくは、該ポリペプチドは、同一であり、ジスルフィド結合を介して共有結合を形成する。
本発明のトロンビンペプチド誘導体二量体は、上述のトロンビンペプチド誘導体を含む。特に、トロンビンペプチド誘導体は、約50個未満のアミノ酸、好ましくは約33個未満のアミノ酸を有する。トロンビンペプチド誘導体はまた、ポリペプチドがNPARを活性化するように、トロンビンアミノ酸残基508〜530:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号6)に対応するヒト トロンビンのフラグメントと十分な相同性を有する。
特定の実施形態では、二量体を含む各トロンビンペプチド誘導体は、配列番号1のアミノ酸配列:Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Valを有するポリペプチド、又は少なくとも6個のアミノ酸を含むそのC末端切断フラグメントを含む。より具体的には、各トロンビンペプチド誘導体は、配列番号6のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val、又は配列番号5のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを含む。さらにより具体的には、トロンビンペプチド誘導体は、配列番号2のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val、又は配列番号2のアミノ酸10〜18を含むそのフラグメントを含む。XはGlu又はGlnであり、Xは、Phe、Met、Leu、His、又はValである。好ましくは、XはGluであり、XはPheである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の一つの例は、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号6)を含むポリペプチドである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の更なる例は、アミノ酸配列H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−NH(配列番号3)を有するポリペプチドである。トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、又は3個のアミノ酸は、配列番号6、1、2、又は3の対応する位置におけるアミノ酸と異なる。好ましくは、違いは、トロンビンペプチド誘導体の保存的置換に関して保存的である。
本発明のトロンビンペプチド誘導体二量体の一つの例は、式(IV):
Figure 2013529600
により表される。
別の特定の実施形態では、二量体を含む各トロンビンペプチド誘導体は、配列番号27のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyrを含むポリペプチド、又は少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC末端切断フラグメントを含む。より好ましくは、各トロンビンペプチド誘導体は、配列番号28のアミノ酸配列:Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr又は少なくとも23個のアミノ酸を有するそのC末端切断フラグメントを含む。XはGlu又はGlnであり、Xは、Phe、Met、Leu、His、又はValである。好ましくは、XはGluであり、XはPheである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の一つの例は、アミノ酸配列Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr(配列番号27)を含むポリペプチドである。この種類のトロンビンペプチド誘導体の更なる例は、アミノ酸配列H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−Met−Lys−Ser−Pro−Phe−Asn−Asn−Arg−Trp−Tyr−NH(配列番号29)を含むポリペプチドである。トロンビンペプチド誘導体中の0、1、2、又は3個のアミノ酸は、配列番号27、28、又は29の対応する位置におけるアミノ酸と異なる。好ましくは、違いは、トロンビンペプチド誘導体の保存的置換に関して保存的である。
「対象」とは、好ましくは、ヒトであるが、本明細書に開示されるトロンビンペプチド誘導体での治療を必要とする動物、例えばペット(例えばイヌ、ネコ等)、家畜(例えばウシ、ブタ、ウマ等)、及び実験動物(例えばラット、マウス、テンジクネズミ等)でもよい。
「有効量」とは、治療をしない場合と比較して、トロンビンペプチド誘導体での治療を受ける疾患の改善された臨床結果をもたらす本明細書に記載のトロンビンペプチド誘導体の量である。投与するトロンビンペプチド誘導体の量は、疾患又は症状の程度、重症度及び種類、所望の治療の量、並びに医薬的製剤の放出特性に依存する。それはまた、対象の健康状態、サイズ、体重、年齢、性別及び薬物に対する耐性に依存する。典型的に、トロンビンペプチド誘導体は、所望の治療効果を達成するのに十分な期間投与される。典型的に、特に局所投与のために、約1μg/日〜約1mg/日のトロンビンペプチド誘導体(好ましくは約5μg/日〜約100μg/日)が、治療を必要とする対象に投与される。トロンビンペプチド誘導体はまた、特に全身投与のために、約0.1mg/kg/日〜約15mg/kg/日、好ましくは、約0.2mg/kg/日〜約3mg/kg/日の用量で投与することができる。本発明のトロンビンペプチド誘導体のための典型的な用量はまた、特に全身投与法ために、5〜500mg/日、好ましくは25〜250mg/日である。
本明細書に記載される方法では、トロンビンペプチド誘導体又は組成物は、放射線曝露の前、間、又は後に投与することができる。本明細書に記載される方法では、本発明のペプチドは、血管新生増殖因子と組み合わせて投与することができる。「血管新生増殖因子」とは、血管の発達を刺激し、例えば血管形成、内皮細胞増殖、血管の安定性、及び/又は脈管形成を促進するポリペプチドである。例えば、血管新生因子としては、限定しないが、例えばVEGF−A、及びVEGFファミリーのメンバー、PIGF、PDGFファミリー、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンジオポエチン)、エフリン、ANGPTL3、ANGPTL4等が挙げられる。血管新生因子としてはまた、ポリペプチド、例えば成長ホルモン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、VIGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、CTGF及びそのファミリーのメンバー、並びにTGF−α及びTGF−βが挙げられる。
「治療すること」とは、トロンビンペプチド誘導体又はトロンビンペプチド誘導体を含む組成物を投与する期間後、有益な治療及び/又は予防結果が達成されることを意味し、それは、症状の重症度の減少、又は症状の発症の遅延若しくは阻害、増加した寿命、及び/又は疾患若しくは症状のより迅速な若しくはより完全な消散、又は観察される部位、若しくは特定の疾患若しくは障害について測定されるパラメータにより測定される他の改善された臨床結果を含み得る。
「リスクを減少させること」とは、対象において、疾患、傷害、又は臨床症状を発症する可能性が減少すること、ここで対象は、例えば、疾患、傷害、又は症状を発症するリスクにある対象である、を意味する。
「放射線関連損傷を減少させること」とは、放射線曝露により誘導される損傷の重症度の減少を意味する。
開示されるトロンビンペプチド誘導体は、局部的(例えば、局所に)、又は全身的に(例えば非経口投与を含む)、任意の好適な経路により投与することができる。非経口投与としては、例えば筋肉内、静脈内、皮下、若しくは腹腔内注射、又は血管投与が挙げられ、また経皮貼布、及び例えばポンプなどの埋め込まれた徐放放出装置も挙げられる。局所投与としては、例えば、クリーム、ゲル、軟膏、エアロゾルが挙げられる。呼吸器投与としては、例えば、吸入又は鼻腔内点滴が挙げられる。特定の適用のために、トロンビンペプチド誘導体を直接治療部位に注入又は埋め込むことは、有利である。トロンビンペプチド誘導体は、徐放性製剤において有利に投与することができる。トロンビンペプチド誘導体は、慢性的に投与することができ、ここで慢性的若しくは再発性の疾患若しくは症状を治療するために、間隔をおいて、又は連続送達方法により、ペプチド誘導体が長期(少なくとも60日間、より典型的には少なくとも1年間)に亘り投与される。
トロンビンペプチド誘導体は、医薬組成物の一部として、許容される医薬担体と併せて、対象に投与することができる。医薬組成物の製剤は、選択される投与経路に従って変わる。好適な医薬担体は、化合物と相互作用しない不活性成分を含んでもよい。アーナー(earners)は、生物適合性を有するべきであり、即ち毒性がなく、非炎症性で、非免疫原性であり、投与部位において他の望ましくない反応をしないべきである。医薬的に許容される担体の例としては、例えば生理食塩水、エアロゾル、市販の不活性ガス、又はアルブミンが添加された液体、メチルセルロース、又はコラーゲンマトリックスが挙げられる。標準的な医薬製剤技術、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに記載されるものを、用いることができる。他の好適な医薬担体は、米国特許第7,294,596号に記載されるものが挙げられ、その技術全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の方法に用いられる組成物は、トロンビンペプチド誘導体が溶解され、又は懸濁される医薬担体を更に含むことができる。医薬的に許容される担体の例としては、例えば生理食塩水、エアロゾル、市販の不活性ガス、又はアルブミンが添加された液体、メチルセルロース、又はコラーゲンマトリックスが挙げられる。斯かる製剤の典型的な例は、ゲルである。ゲルは、上述の通り、脂肪性基剤、水、又は乳化−懸濁基剤から選択される基剤からなる。基剤中のマトリックスを形成するゲル化剤は、基剤に添加され、半固体の硬さまでその粘性を増加させる。ゲル化剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリル酸ポリマー等が挙げられる。活性成分は、所望の濃度で、ゲル化剤の添加の前の時点で製剤に添加され、又はゲル化プロセス後に混合され得る。
注入可能な送達製剤は、治療の必要な部位に、静脈に又は直接投与されてもよい。注入可能な担体は、粘性溶液、又はゲルでもよい。
送達製剤としては、生理食塩水、静菌性生理食塩水(約0.9%mg/mLベンジルアルコールを含む生理食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、リンゲル乳酸、又はアルブミン、メチルセルロース若しくはヒアルロン酸が添加された液体が挙げられる。注入可能なマトリックスとしては、ポリ(エチレンオキシド)のポリマー、及びエチレンとプロピレンオキシドのコポリマーが挙げられる(Cao et al, J. Biomater. Sci 9:475 (1998) and Sims et al, Plast Reconstr. Surg. 98:843 (1996)を参照のこと、その教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。
組成物をカプセル化(例えば硬ゼラチン又はシクロデキストランでコーティングされた)するための方法は、当該技術分野において知られている(Baker, et al, "Controlled Release of Biological Active Agents", John Wiley and Sons, 1986)。
軟膏は、典型的に、例えば固定油若しくは炭化水素、例えばペトロラタム若しくは鉱物油を含む脂肪性基剤、又は例えば吸着性無水物質又は物質(複数)、例えば脱水ラノリンからなる吸着剤基剤を用いて調製される。基剤の形成に続いて、活性成分は所望の濃度で添加される。
クリームは、典型的に、固定油、炭化水素等、例えばワックス、ペトロラタム、鉱物油等を含む油相(内相)、並びに水及び水溶性物質、例えば付加塩を含む水相(連続槽)を含む。二つの相は、乳化剤、例えば表面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム;親水性コロイド、例えばアカシアコロイド粘土、ビーガム(beegum)等の使用により安定化される。エマルジョンの形成に関して、活性成分は、所望の濃度で添加される。
ゲルは、上述のように、脂肪性基剤、水、又は乳化−懸濁基剤から選択される基剤を含む。基材中でマトリックスを形成するゲル化剤を基材に添加し、半固体の濃度まで粘度を増大させる。ゲル化剤の例としては、ハイドロキシプロピルセルロース、アクリル酸ポリマー等が挙げられる。活性成分は、所望の濃度で、ゲル化剤の添加の前の時点で製剤に添加される。
開示されるトロンビンペプチド誘導体で治療可能な疾患及び症状は、しばしば兆候及び疾病、例えば疼痛及び衰弱を伴う。特定の例では、斯かる問題を扱うために、トロンビンペプチド誘導体と一緒に1又はそれ以上の更なる薬理活性剤を共投与することは有利であり得る。例えば、疼痛及び炎症の管理に、鎮痛剤又は抗炎症剤との共投与を要求してもよい。感染症の管理に、抗菌剤、抗生物質又は殺菌剤との共投与を要求してもよい。
トロンビンペプチド誘導体は、単独で、又は1若しくはそれ以上の治療薬、例えば、コレステロール降下薬、抗高血圧剤、ベータ遮断薬、抗凝血剤、血栓溶解剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗歯垢形成剤、インスリン、酸化窒素発生剤、抗ウイルス剤、又は抗生物質と組み合わせて対象に投与することができる。一つの方法では、トロンビンペプチド誘導体は、アルギニン、例えば経口栄養剤としてアルギニンと組み合わせて、対象に投与され得る。
トロンビンペプチド誘導体及び改変されたトロンビンペプチド誘導体は、固相ペプチド合成(例えばBOC又はFMOC)法により、液相合成により、又は上述の方法の組み合わせを含む他の好適な技術により、合成することができる。確立され、広く用いられているBOC及びFMOC法は、Merrifield, J. Am. Chem. Sot: 88:2149 (1963); Meienhofer, Hormonal Proteins and Peptide s, C.H. Li, Ed., Academic Press, 1983, pp. 48-267;及びBarany and Merrifield, in The Peptides, E. Gross and J. Meienhofer, Eds., Academic Press, New York, 1980, pp. 3-285に記載される。固相ペプチド合成の方法は、Merrifield, R.B., Science, 232: 341 (1986); Carpino, L.A. and Han, G.Y., J. Org. Chem., 37: 3404 (1972); and Gauspohl, H. et al, Synthesis, J: 315 (1992)に記載される。これらの6つの文献の教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
トロンビンペプチド誘導体二量体は、単量体の酸化により調製することができる。トロンビンペプチド誘導体二量体は、過剰な酸化剤とトロンビンペプチド誘導体とを反応させることにより調製することができる。よく知られている好適な酸化剤は、ヨウ素である。
本明細書では、「非芳香族複素環基」とは、3〜10個の原子を有し、少なくとも一つのヘテロ原子、例えば窒素、酸素、又は硫黄を含む非芳香族炭素環である。非芳香族複素環基の例としては、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニルが挙げられる。
「アルキル」とは、直鎖又は分枝鎖の飽和した炭化水素ラジカルである。典型的に、アルキル基は、1〜約10個の炭素原子、好ましくは1〜約4個の炭素原子を有する。典型的なアルキル基は、限定しないが、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、及びシクロオクチルが挙げられる。
本発明は、以下の実施例により例証され、それは、いかなる方法においても限定することを意図しない。
実施例1. 放射線に曝露されたヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)のアポトーシスに関するTP508の効果
ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)に、5、10、及び20Gyの曝露を供給するために、J.L., Shepherd & Associates, Mark 1, 9K, 137 Cs Gamma Irradiatorを用いて放射線照射した。放射線照射後、細胞に、30u−g/ml TP508又は生理食塩水(未処理)を与えた。3時間後、細胞を、Caspase-Glo(登録商標)3/7Assay(Promega, Madison, WI)を用いるアポトーシスの測定として、カスパーゼ−3及びカスパーゼ−7の活性化について評価した。図1に示すように、放射線照射は、カスパーゼ3/7活性の用量依存的な増加を引き起こした。しかしながら、これらの細胞のTP508処理は、カスパーゼ3/7の放射線に誘導される活性化を著しく減少させた。このデータは、TP508が、放射線照射により誘導される微小血管内皮細胞においてアポトーシスを減衰させることを示した。
実施例2. 8Gyの放射線曝露後のマウス生存率に関するTP508の効果
Swiss ICRマウスに、8Gy又は3Gyの曝露で放射線照射をした(137 Cs Gamma Irradiator Mark 30, Shephard and Associates, San Fernando, CA)。4時間〜24時間後、マウスを、麻酔し、手術のために準備した。一つの1.5cm平方の完全な皮膚の切除を行い、生理食塩水(25μl)又はTP508(0.25μl)を加えた生理食塩水で局所的に処置し、Opsite(登録商標)閉鎖包帯で覆った。複合的な放射線損傷を受けたマウスの生存率は著しく減少した(下記の表1)。放射線曝露の24時間後に、マウスにTP508を注射した場合、生存率の著しい増加が観察された(表1を参照のこと)。TP508での創傷の局所処置をしたマウスにおいて、生存率の増加がまた、観察された(表1及び図2)。
表1. 複合的な放射線損傷を有するマウスの生存率に関するTP508の効果
Figure 2013529600
実施例3. 致死量の12Gyでの放射線曝露後のマウス生存率に関するTP508の効果
マウスを、致死量の137Csガンマ線放射(12Gy)に曝露した。曝露後2時間以内のTP508の単回のボーラス用量(500μg)の注射は、処理される群において最初のマウスの死亡を3日遅らせ、群の平均生存時間を約15%増加させた(図3を参照のこと)。TP508は、短い半減期を有し、従って、最初の2〜3時間のみ有効濃度で血液に存在することができる。これは、TP508が生存率を数日間延長する理由を説明することができる。
実施例4. 放射線照射後の動物の血液中における細菌増殖に関するTP508の効果
致死量の放射線照射は、腸管の破壊や死亡を導く敗血症性感染により、しばしば死亡を引き起こす。従って、放射線照射したマウスにおいて、TP508の細菌敗血症性感染症の発症を遅らせる効果を測定した。血液は、放射線照射後、様々な日に放射線照射したマウスから採取した(実施例3を参照のこと)。各マウス(3匹のマウス/群)からの血液を、その後希釈し、培養し、1mlの血液あたりのコロニー形成単位(CFU)として定量される生菌数を測定した。図4に示すように、放射線照射の6日後(PI)、生菌は、放射線照射しプラセボ処置したマウスの血液中に存在したが、TP508処置したマウスには存在しなかった。7日では、プラセボ処置したマウスは、平均で1.6x10CFU/mlを有する一方で、TP508を注射したマウスは、平均で100CFU/mlをちょうど上回り、ちょうど感染を示し始めた。
実施例5. 開放皮膚創傷の治癒に関するTP508の効果
Swiss ICRマウスを、8Gy又は3Gyの曝露で放射線照射した(137 Cs Gamma Irradiator Mark 30, Shephard and Associates, San Fernando, CA)。4時間〜24時間後、マウスを麻酔し、手術のために準備した。一つの1.5cm平方の完全な皮膚の切除を行い、生理食塩水(25ul)又はTP508(0.3ug)を加えた生理食塩水で局所的に処置し、Opsite(登録商標)閉鎖包帯で覆った。8Gyでの放射線照射の4時間後、放射線照射は、皮膚創傷を受けたマウスにおいて創傷治癒を遅らせたが、TP508での単回局所処置は治癒を加速した。これらの創傷の50%創傷閉合までの時間は、放射線照射されていない対照について9.2日;8GY+生理食塩水について13.0日;及び8Gy+TP508について8.9日であった。従って、TP508は、放射線照射したマウスに対する治癒速度を正常に戻すと見られる。これは、これらの創傷において治癒の線形速度を計算することにより確認された(図5を参照のこと)。興味深いことに、全ての群についての治癒の線形速度は、創傷形成後の最初の5日間は同様であり、おそらく放射線照射に影響を受けない収縮に起因する。5〜16日間では、しかしながら、放射線照射は、治癒を著しく害するが、TP508処置は、この減損を克服する。
二度目の実験では、3Gyの曝露を受けたマウスは、放射線照射の24時間後、皮膚創傷手術を受けた。これらの創傷はまた、放射線照射されていない対照マウスと比較して、遅延された治癒を例証した。8Gyの曝露実験のように、TP508局所処置は、治癒を加速し、放射線照射の影響を克服した。これらの実験では、我々はまた、創傷閉合に関するTP508の曝露後IV注射の効果を評価した。創傷形成の約20時間前のTP508のIV注射はまた、創傷の閉合を加速し、局所処置よりもわずかに早く創傷を閉合する傾向があった。この僅かな違いはまた、放射線照射されていない対照、3Gy生理食塩水対照、3Gy局所TP508、及び4Gy IV TP508間の線形的な創傷治癒の速度の比較においても見られる。IVと局所的TP508処置との組み合わせは、IV治療単独と異なるように見えなかった。
実施例6. 腸陰窩前駆細胞のアポトーシス、増殖及び移動に関するTP508の効果
曝露の5日後において、12Gyの全身照射で曝露したマウスから得た空腸の組織切片は、タネル(tunnel)染色により調べられるように、腸陰窩内に多数のアポトーシスを起こした細胞を含む。TP508を注入したマウスは、より少ないアポトーシスを起こした細胞を有するように見える。TP508の効果は、曝露後2及び12日において、EdU取り込み(DNA合成)を測定することにより確認され、Click IT(登録商標)での24時間のインキュベーション期間において、DNAを合成する細胞を可視化した。放射線曝露の増加に伴い、より少ない腺窩細胞が2日後増殖を続ける。対照的に、3Gy曝露を受けた陰窩の中でも、TP508注射を受けた、増殖及び移動する細胞の数は、非照射(0Gy)対照と等しい。8Gyの区分では、おおよそ同数の細胞が標識され、しかしTP508群では、細胞は絨毛にさらに移動する傾向がある。15Gy曝露後でさえ、いくらかの腺窩細胞は、TP508で処置された動物の陰窩において、増殖を続ける。8Gy曝露の12日後でさえ、腺窩細胞の増殖及び移動は減少するが、それにも関わらず、TP508で処置した動物において、増殖及び移動は、対照レベルまで完全に保持しているようにみえる。
実施例7. 放射線照射及びRCIに誘導されるIL−6の上方調節に関するTP508の効果
ICR白色雄性マウスを、0Gy(対照)又は8Gyのガンマ線に曝露し、24時間後に傷つけた。創傷を、局所的に、生理食塩水プラセボ(P)又は生理食塩水中TP508(TPt)で処置した。別々の群のマウスは、8Gy曝露の2時間後、500マイクログラムのTP508をIVで注射した。11日後、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて、マウスからの血清をIL−6Aの量について分析した(図6、パネルA)。
ICR白色雄性マウスを傷つけることなく0Gy又は12Gyの核照射に曝露し、曝露後に、プラセボ又はTP508をIVで注射した。7日後にマウスから血清を単離し、酵素免疫測定法(ELISA)により、IL−6の量を測定した(図6、パネルB)。
8Gy放射線曝露と創傷との組み合わせは、創傷単独よりもIL−6レベルを増加させる。創傷の局所TP508処置は、IL−6レベルを約75%に減少させる。TP508の全身的なIV注射は、IL−6レベルを90%超に減少させる。創傷のない12Gyの曝露単独はまた、IL−6レベルを増加させる。TP508注射は、7日目において測定されるIL−6産生を約50%に減少させる。
IL−6増加は死亡率及び全身性炎症反応症候群(SIRS)の発症と相関するので、これらの結果は、TP508が、放射線照射又は損傷と組み合わされた放射線照射により発症する全身性炎症反応症候群を減少させることを示す。
実施例8. 大動脈移植片内皮細胞出芽アッセイにより示される内皮機能に関するTP508の効果
TP508が内皮機能の維持を助けるかどうかを調べるために、確立された血管形成アッセイを用いた。これらの実験では、マウスを、非照射、又は3Gy、8Gy又は10Gyで照射した。曝露の約2時間後、マウスに、生理食塩水、又はTP508(15mg/kg)を加えた生理食塩水を、IVで注射した。マウスを、曝露の24時間後に屠殺し、大動脈を取り除き、大動脈切片を、matrigel(登録商標)上に置き、VEGF及びFGF2を含む増殖サプリメントを含む内皮増殖培地中で5日間培養した。照射していない対照(0Gy)では、TP508は、出芽又は長い出芽突起が占める面積を測定することにより測定されるように、5日間のインキュベーションで、大動脈切片からの内皮出芽の量を2倍超にした。3Gyを照射したマウスからの大動脈切片移植片は、生理食塩水を注射した群において幾らかの出芽を有したが、先の場合と同様に、この出芽はTP508を注射したマウスにおいて2倍超であった。8Gy及び10Gyの群では、プラセボマウスから単離した大動脈切片からは実質的に出芽しなかった一方で、T508処置したマウスからの移植片の端においては、明らかな出芽が観察され続けた。
実施例9. 骨髄前駆細胞の造血回復及び増殖増加に関するTP508の効果
曝露していない、及び曝露後にTP508注射を受けた又は受けていない8Gyで曝露したマウスから骨髄を単離した。サンプルを、完全血球算定(CBC)分析に供し、それは、TP508で処置したマウスにおける白血球、赤血球、及び血小板の早期回復を示した。この結果は、TP508が造血を刺激する、又は骨髄細胞(BMC)を保護することを示す。
8Gyで曝露の8日後の骨髄の組織構造は、0Gyのマウスと比較して、8Gy照射したマウスの骨髄中のBMCの枯渇を示す。これらのマウスのTP508処置は、BMCの数及び密度を増加させる。
この発見は、EdU取り込み(DNA合成)により確認された。曝露後12日において、8Gy曝露したマウスにおける限られた程度の回復を示すBMCのいくつかの新しい増殖が存在する。TP508処置を受けた8Gyマウスにおいて、BMCの3〜5倍超の増殖が観察された。従って、TP508の単回曝露後注射は、BMCについての回復的特性を有するイベントのカスケードを開始する。

Claims (67)

  1. 致死量の放射線に曝露した対象の死亡リスクを減少させる方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−Rを含み、Rがセリンエステラーゼ保存配列である、方法。
  2. 放射線量が、少なくとも3.5Gyである、請求項1に記載の方法。
  3. 対象が、更に、外傷、重症の皮膚損傷、及び/又は熱傷を受けている、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 外傷が、骨折、又は内臓の損傷である、請求項3に記載の方法。
  5. 熱傷、重症の皮膚損傷、又は外傷が、対象を全身感染症に曝す、請求項3又は4に記載の方法。
  6. 外傷、重症の皮膚損傷、及び/又は熱傷を有する、放射線に曝露された対象を治療する方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体はAsp−Ala−Rを含み、Rはセリンエステラーゼ保存配列である、方法。
  7. 放射線曝露が致死量以下である、請求項6に記載の方法。
  8. 放射線曝露が3.5Gy未満である、請求項7に記載の方法。
  9. 放射線療法を受ける対象において、放射線照射に関連した損傷を減少させる方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−Rを含み、Rがセリンエステラーゼ保存配列である、方法。
  10. 放射線照射に関連した損傷が、皮膚潰瘍形成又は後期の皮膚破壊である、請求項9に記載の方法。
  11. 放射線照射に関連した損傷が、皮下線維症である、請求項9に記載の方法。
  12. ポリペプチドが、放射線に曝露される又は曝露される予定である対象の正常組織に投与される、請求項11に記載の方法。
  13. 放射線に曝露される又は曝露される予定である正常組織が皮膚である、請求項12に記載の方法。
  14. ポリペプチドが正常な皮膚に局所的に投与される、請求項13に記載の方法。
  15. 放射線療法を受ける対象において、放射線照射により誘導される疾患を発症するリスクを減少させる方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−Rを含み、Rがセリンエステラーゼ保存配列である、方法。
  16. 放射線曝露により引き起こされた、及び/又は放射線に曝露された、対象における創傷の治療を促進する方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−Rを含み、Rがセリンエステラーゼ保存配列であり、トロンビンペプチド誘導体が少なくとも20個のアミノ酸を有する、方法。
  17. 創傷が手術創傷である、請求項16に記載の方法。
  18. 創傷が放射線照射により引き起こされる皮膚潰瘍である、請求項16に記載の方法。
  19. トロンビンペプチド誘導体が、12〜23アミノ酸残基長である、請求項1〜18又は48〜67のいずれか一項に記載の方法。
  20. セリンエステラーゼ保存配列が、Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号15)のポリペプチドを含み、ここでXがGlu又はGlnであり、XがPhe、Met、Leu、His、又はValである、請求項19に記載の方法。
  21. セリンエステラーゼ保存配列が、Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号14)を含む、請求項20に記載の方法。
  22. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドArg−Gly−Asp−Ala(配列番号16)を含む、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドArg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号1)を含み、ここでXがGlu又はGlnであり、XがPhe、Met、Leu、His、又はValである、請求項19に記載の方法。
  24. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドArg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号17)を含む、請求項19に記載の方法。
  25. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドAla−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号2)、少なくとも14個のアミノ酸残基を有するそのN末端切断フラグメント、又は少なくとも18個のアミノ酸残基を有するそのC末端切断フラグメントを含み、ここでXがGlu又はGlnであり、XがPhe、Met、Leu、His、又はValである、請求項19に記載の方法。
  26. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドAla−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号6)、少なくとも14個のアミノ酸残基を有するそのN末端切断フラグメント、又は少なくとも18個のアミノ酸残基を有するそのC末端切断フラグメントを含む、請求項19に記載の方法。
  27. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドAla−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号6)を含む、請求項19に記載の方法。
  28. トロンビンペプチド誘導体が、H−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−GIy−Pro−Phe−Val−NH(配列番号3)である、請求項1〜18又は48〜67のいずれか一項に記載の方法。
  29. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドArg−Gly−Asp−Ala−Xaa−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号4)を含み、ここでXaaがアラニン、グリシン、セリン、又はS−保護システインであり、XがGlu又はGlnであり;XがPhe、Met、Leu、His、又はValである、請求項19に記載の方法。
  30. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドArg−Gly−Asp−Ala−Xaa−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号11)を含み、ここでXaaがアラニン、グリシン、セリン、又はS−保護システインである、請求項19に記載の方法。
  31. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドAla−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Xaa−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号5)、又は配列番号5のアミノ酸残基10〜18を含むそのフラグメントを含み、ここでXaaがアラニン、グリシン、セリン、又はS−保護システインであり;XがGlu又はGlnであり;XがPhe、Met、Leu、His、又はValである、請求項19に記載の方法。
  32. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドAla−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Xaa−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号20)、又は配列番号20のアミノ酸残基10〜18を含むそのフラグメントを含む、請求項19に記載の方法。
  33. Xaaがアラニン又はセリンである、請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
  34. トロンビンペプチド誘導体が、ポリペプチドH−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Ala−Glu−GIy−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−NH(配列番号22)、又はH−Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Ser−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val−NH(配列番号30)である、請求項19に記載の方法。
  35. トロンビン誘導体がC末端アミドを含み、任意でアシル化されたN末端を含み、ここで前記C末端アミドが、C(O)NRにより表され、R及びRが独立して水素、10個までの炭素原子を含む脂肪族基である、又はR及びRが、これらが結合する窒素原子とともにC〜C10の非芳香族ヘテロ環基を形成し、前記N末端のアシル基がR()C(O)−により表され、Roが水素、10個までの炭素原子を含む脂肪族基、又はC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ニトロ、及びシアノから選択される1又はそれ以上の基で任意に置換されるフェニル基である、請求項19〜27又は29〜34のいずれか一項に記載の方法。
  36. トロンビンペプチド誘導体が、置換されていないN末端、及び置換されていないC末端、又は−C(O)NHにより表されるC末端アミドを含む、請求項45に記載の方法。
  37. トロンビンペプチド誘導体がポリペプチド二量体であり、ここで二量体中の各ポリペプチドが12〜23アミノ酸残基長であり、二量体中の各ポリペプチドは独立して、Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号10)を含み、XがGlu又はGlnであり、XがPhe、Met、Leu、His、又はValであり、前記ポリペプチドが任意でC末端アミドを含み;前記ポリペプチドが任意でアシル化されたN末端を含む、請求項1〜18又は48〜67のいずれか一項に記載の方法。
  38. 二量体中の各ポリペプチドが同一である、請求項37に記載の方法。
  39. 二量体中の各ポリペプチドが、ジスルフィド結合を介して共有結合する、請求項38に記載の方法。
  40. 二量体中の各ポリペプチドが、Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号1)を含み、ここでXがGlu又はGlnであり、XがPhe、Met、Leu、His、又はValである、請求項39に記載の方法。
  41. 二量体中の各ポリペプチドが、Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号17)を含む、請求項39に記載の方法。
  42. 二量体中の各ポリペプチドが、Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−X−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−X−Val(配列番号2)、ここでXがGlu又はGlnであり、XがPhe、Met、Leu、His、又はValである、又は配列番号2のアミノ酸残基10〜18を含むそのフラグメントを含む、請求項39に記載の方法。
  43. 二量体中の各ポリペプチドが、Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号6)、又は配列番号6のアミノ酸残基10〜18を含むそのフラグメントを含む、請求項39に記載の方法。
  44. 二量体中の各ポリペプチドが、Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val(配列番号6)を含む、請求項39に記載の方法。
  45. 二量体中の各ポリペプチドが、C末端アミドを含み、任意でアシル化されたN末端を含み、ここで前記C末端アミドが−C(O)NRにより表され、R及びRが独立して水素、10個までの炭素原子を含むアルキル基である、又はR及びRが、これらが結合する窒素原子とともにC〜C10非芳香族ヘテロ環基を形成し、そして前記N末端アシル基がR()C(O)−により表され、R()が水素、10個までの炭素原子を含むアルキル基、又はC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ニトロ、及びシアノから選択される1又はそれ以上の基で任意に置換されるフェニル基である、請求項38〜44のいずれか一項に記載の方法。
  46. 二量体中の各ポリペプチドが、置換されていないN末端、及び置換されていないC末端、又は−C(O)NHにより表されるC末端アミドを含む、請求項45に記載の方法。
  47. トロンビンペプチド誘導体が、以下の構造式:
    Figure 2013529600
    により表される、請求項39に記載の方法。
  48. 細菌、真菌、又はウイルス感染に曝れる対象の血液中において、細菌、真菌、又はウイルス感染症を発症するリスクを減少させる方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−Rを含み、Rがセリンエステラーゼ保存配列である、方法。
  49. 対象が放射線の曝露を受けている、請求項48に記載の方法。
  50. 対象が、放射線照射により腸壁の破壊がされている、請求項49に記載の方法。
  51. 放射線曝露が致死量以下である、請求項49又は50に記載の方法。
  52. 対象が、致死量の放射線に曝露される、請求項49又は50に記載の方法。
  53. 対象が、外傷、重症の皮膚損傷、及び/又は熱傷を受けている、請求項48〜52のいずれか一項に記載の方法。
  54. 対象が、侵襲的な医療処置又は歯科的処置後30日間又は30日以内に、感染に曝されている、請求項48〜52のいずれか一項に記載の方法。
  55. 侵襲的な医療処置が手術である、請求項54に記載の方法。
  56. 対象が肺炎、又は他の肺疾患を有する、請求項48に記載の方法。
  57. 対象が免疫不全である、請求項48に記載の方法。
  58. 対象がAIDSに罹患している、請求項57に記載の方法。
  59. 対象が癌に罹患している、請求項57に記載の方法。
  60. 対象が60歳超である、請求項48〜59のいずれか一項に記載の方法。
  61. 対象が幼児(infant)である、請求項48〜59のいずれか一項に記載の方法。
  62. 侵襲的な医療デバイスが、対象に導入される、請求項48〜61のいずれか一項に記載の方法。
  63. 前記侵襲的な医療デバイスが、静脈若しくは動脈経路、呼吸管、導尿カテーテル、外科用ドレーン、又は人工関節を含む、請求項62に記載の方法。
  64. トロンビンペプチド誘導体が別の治療薬剤と組み合わせて導入される、請求項48〜62のいずれか一項に記載の方法。
  65. 薬剤が、抗生物質である、請求項64に記載の方法。
  66. トロンビンペプチド誘導体が静脈に投与される、請求項64に記載の方法。
  67. 細菌、真菌、又はウイルス感染に曝される対象において、全身性炎症反応症候群(SIRS)を発症するリスクを減少させる方法であって、有効量のトロンビンペプチド誘導体を対象に投与することを含み、ここでトロンビンペプチド誘導体がAsp−Ala−Rを含み、Rがセリンエステラーゼ保存配列である、方法。
JP2013514392A 2010-06-11 2011-06-10 放射の影響を軽減し、及び全身性感染症のリスクを減少させる方法 Withdrawn JP2013529600A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US35406710P 2010-06-11 2010-06-11
US61/354,067 2010-06-11
PCT/US2011/040006 WO2011156729A2 (en) 2010-06-11 2011-06-10 Methods of mitigating effects of radiation and reducing the risk of systemic infection

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013529600A true JP2013529600A (ja) 2013-07-22
JP2013529600A5 JP2013529600A5 (ja) 2014-07-17

Family

ID=44533067

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013514392A Withdrawn JP2013529600A (ja) 2010-06-11 2011-06-10 放射の影響を軽減し、及び全身性感染症のリスクを減少させる方法

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP2579891A2 (ja)
JP (1) JP2013529600A (ja)
AU (1) AU2011265228A1 (ja)
CA (1) CA2802176A1 (ja)
WO (1) WO2011156729A2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA3179798A1 (en) * 2020-04-07 2021-10-14 Chrysalis Biotherapeutics Tp508 acute therapy for patients with respiratory virus infection

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5352664A (en) 1986-10-31 1994-10-04 Board Of Regents, The University Of Texas System Thrombin derived polypeptides; compositions and methods for use
EP1539800B1 (en) 2002-07-02 2007-05-23 Orthologic Corp. Thrombin peptide derivative dimers
EP1539214A4 (en) 2002-07-02 2008-01-02 Orthologic Corp Thrombin
US7294596B2 (en) 2005-03-14 2007-11-13 Diamorph Ceramic Ab Sintered ceramic material with improved properties and method for its manufacturing
WO2008036387A2 (en) * 2006-09-22 2008-03-27 Orthologic Corp. Method of treating endothelial dysfunction
EP2155234A1 (en) * 2007-04-10 2010-02-24 The Board of Regents,The University of Texas System Combination therapy for chronic dermal ulcers

Also Published As

Publication number Publication date
WO2011156729A2 (en) 2011-12-15
AU2011265228A1 (en) 2013-05-23
EP2579891A2 (en) 2013-04-17
WO2011156729A3 (en) 2012-05-10
CA2802176A1 (en) 2011-12-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI257307B (en) Pharmaceutical composition for cardiac tissue repair
EP2875826B1 (en) Composition for preventing or treating sepsis
Marsolais et al. Neutrophils and macrophages accumulate sequentially following Achilles tendon injury
US7572452B2 (en) Method for stimulating wound healing
JP5607176B2 (ja) 新規ペプチドおよびその用途
AU2006268091C1 (en) Promotion of epithelial regeneration
JP4307561B2 (ja) 創傷の治癒
PT804479E (pt) Método para o tratamento de diabetes mellitus utilizando kgf
KR20050047506A (ko) 섬유소용해성의 금속단백질분해효소를 이용하여유치도관의 폐색을 처리하는 방법
Berlanga Heberprot-P: antecedentes experimentales y bases farmacológicas
ZA200603396B (en) Tissue protective cytokines for the treatment and prevention of sepsis and the formation of adhesions
CN114533720A (zh) Cd36抑制剂在制备抑制脊髓损伤后疤痕形成药物中的应用
US20130101574A1 (en) Methods of using thrombin peptide derivatives
US20140065119A1 (en) Methods and compositions comprising cyclic analogues of histatin 5 for treating wounds
JPH06340546A (ja) ガン療法用副作用防止剤
JP2013529600A (ja) 放射の影響を軽減し、及び全身性感染症のリスクを減少させる方法
US8133491B1 (en) Compositions and methods for treatment of hyperplastic disorders
CA2304956C (en) Pharmaceutical composition for preventing or treating ischemic diseases
TW201302214A (zh) 治療或預防皮膚癌之類鋅手指胜肽、其表現質體、及包含其之醫藥組成物
US8895502B2 (en) β2-glycoprotein I peptide inhibitors
US20180311320A1 (en) Use of recombinant human calcineurin b subunit
RU2008125167A (ru) Терапевтическое средство для ускоренного заживления кожи, содержащее в качестве активного ингредиента дезацил-грелин и его производные
TWI548415B (zh) 狗圍肛腺瘤之治療方法
JP4048565B2 (ja) 「抗ピロリ菌剤」
US8361955B2 (en) Methods for treating and preventing brain tumors based on bone morphogenetic proteins

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130613

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140530

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140530

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20150518

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150518