JP2013528615A - レニウム錯体及びその薬学的使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】レニウム錯体及びその薬学的使用。
【解決手段】本発明は、一般式(I)のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
[化1]
Figure 2013528615

(式中、XはSeであり;Yは、NH、O若しくはS、又は、メチレン基であり;Zはハロゲンであり;mは0、1又は2であり、pは0、1又は2であるが、但しYがNH、O又はSの場合、mとpは両方ともゼロではなく;nは3であり;Rはフェニル基又は一般式:−(CH−COOH(式中、qは1又は2)の基である);少なくとも1種の上記レニウム錯体(XはさらにS又はTeでもよい)を治療上有効な量含む医薬組成物、上記レニウム錯体の製造方法、及び、少なくとも1種の上記レニウム錯体(XはさらにS又はTeでもよい)を治療上有効な量用いた増殖関連疾患の治療方法に関する。さらに式(I)の化合物の製造における式(II)の化合物の使用にも関する。
[化2]
Figure 2013528615

【選択図】なし

Description

本発明は特定の腫瘍の治療に有用であり得る安定レニウム錯体に関する。
シスプラチン及び幾つかの白金系の関連薬剤は種々の腫瘍性疾患の治療に有用なことが知られている。
しかしながら、これらの薬剤は、白金元素固有の毒性(特にその腎毒性)が一因となって重大な副作用が生じることから臨床的に成果が出た例は限られている。
この点について、薬学的用途において使用できる他の遷移金属が検討されており、レニウム(Re)は最も毒性の低いものの一つとされている。
従って、非特許文献1に記載されているジレニウムクラスターや、非特許文献2に記載されているようなアジン系レニウム錯体などのレニウム系化合物が、見込みのある抗腫瘍薬候補であって、臨床開発に入るのに好適と考えられるものとして注目されている。
レニウム金属に適した幾つかのタイプの配位子が知られている。より具体的には、幾つかの二座配位子が、単一のレニウム原子と安定な錯体を形成すること、及び、各種腫瘍細胞系に対して細胞害性の傾向を示すことが述べられている。
これらの二座配位子のなかで、例えば非特許文献3に描かれているようなジイミン配位子、非特許文献4に記載されているようなジフェニルホスフィン配位子、非特許文献5によって提案されている2−(ジメチルアミノ)エトキシド錯体などが挙げられる。
A.V.Shtemenkoら,Dalton Trans.(2009)5132−5136 I.Picon−Ferrerら,J.Inorg.Biochem.103(2009)94−100 D.K.Orsaら,Inorg.Chem.Comm.11(2008)1054−1056 J.Zhangら,J.Organomet.Chem.650(2002)123−132 Wenwu Wangら,Polyhedron 21(2002)1991−1999
本開示の一態様は、式(I)の構造を有するレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
Figure 2013528615
(式中、
XはS、Se又はTeから選択され;
Yは、NH、O若しくはS、又は、メチレン基であり;
Zはハロゲンであり;
mは0、1又は2であり、pは0、1又は2であるが、但しYがNH、O又はSの場合、mとpは両方ともゼロではなく;
nは3であり;
はフェニル基又は一般式:−(CH−COOH(式中、qは1又は2)の基である)に関する。
本開示の他のある態様は、Xがセレン原子(Se)である式(I)の化合物の特定の実施形態に関する。
ヒト体内においては、セレンは微量元素栄養素であって、とりわけ、グルタチオンペルオキシダーゼ等の抗酸化酵素の還元のための補因子として働く。従って、セレンとレニウム錯体を併用すると、生成する金属錯体の腫瘍細胞に対する細胞毒性効果が高まりやすくなるなど、治療的用途において有利な場合がある。
本開示の他のある態様は、Rが一般式:−(CH−COOH(qは1又は2)の基である一般式(I)のレニウム錯体に関する。
本開示の他のある態様は、mとpは1であり、Yはメチレン基(CH)若しくはNH基から選択されるか;又は、m若しくはpの一方はゼロであり、もう一方は1であり、Yはメチレン基(CH)である式(I)の化合物の特定の実施形態に関する。
本開示のさらに他の態様は、一般式(I)のレニウム錯体が、より具体的には一般式(Ia)の錯体:
Figure 2013528615
又は一般式(Ib)の錯体:
Figure 2013528615
(式中、Zは塩素(Cl)又は臭素(Br)から選択され、好ましくは塩素)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である式(I)の化合物の特定の実施形態に関する。
本開示のさらに他の態様は、治療上有効な量の少なくとも1つの一般式(I)のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ又は上記錯体の水和物若しくは溶媒和物を単独で又は第2の薬剤と組み合わせて、薬学的に許容される担体、ビヒクル、希釈剤又は賦形剤と共に含む医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物は、1又は複数の他の有効成分を含んでいてもよく、この場合、式(I)の化合物と上記他の成分は同一の又は別の投薬形態の一部として、同一の又は異なる投与経路で、標準的な薬務に従った同一の又は異なる投与計画に沿って投与されてもよい。
本開示の別の態様は、一般式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
Figure 2013528615
(式中、X、Y、m、p及びqは上記と同義)に関する。
一般式(II)の化合物は、本発明の技術的課題を解決するのに好適な一般式(I)の錯体を形成させるために、レニウムなどの遷移金属の配位子として使用してもよい。
本開示のさらに別の態様は、式(I)の化合物の製造のための一般式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物(式中、X、Y、m、p及びqは上記と同義)の使用に関し、好ましくは、上記使用は、一般式(I)のレニウム錯体の製造方法であって、式(II)の化合物をRe(CO)Clと反応させるステップを含む方法を介する。上記反応はTHF又は塩化メチレン等の好適な溶媒中で行ってもよい。
本開示の別の態様は、ヒトを含む哺乳動物における増殖関連疾患(proliferative growth related−disorder)の治療方法において使用するための一般式(I)のレニウム錯体に関する。
一般式(I)のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、ヒトを含む哺乳動物において増殖関連疾患を治療するための薬剤の製造のために使用されてもよい。
より具体的には、本開示のレニウム錯体が有用な増殖関連疾患としては、種々のガン等が挙げられ、特に限定されないが、例えば以下のものが含まれる:
・前立腺がん、膵管腺がん、乳がん、結腸がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん及び甲状腺がん等のがん;
・神経芽腫、グリア芽腫及び髄芽腫等の中枢及び末梢神経系の腫瘍;並びに、
・メラノーマ及び多発性骨髄腫等の他の腫瘍。
さらにより具体的には、上記一般式(I)のレニウム錯体は、固形腫瘍、好ましくは乳房腫瘍の治療に有用である。
より具体的には、本開示のレニウム錯体が有用な増殖関連疾患には、特に限定されないが、造血器悪性疾患、ウイルス性細胞増殖、自己免疫疾患及び免疫系疾患が含まれる。
本開示のさらに別の態様は、増殖関連疾患の治療方法であって、その治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効な量の少なくとも1つの一般式(I)のレニウム錯体又はその錯体の薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくは水和物若しくは溶媒和物を単独で又は第2の薬剤と組み合わせて、薬学的に許容される担体、ビヒクル、希釈剤又は賦形剤と共に投与する方法に関する。
ある実施形態においては、本発明は、以下に例示した化合物のいずれかから選択される式(I)の化合物、又は、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグに関する。
別の実施形態においては、本発明は
・[クロロ(1,4−ジフェニル−1,4−ジチアブタン−S,S)トリカルボニルレニウム(I)]、
・[クロロ(1,5−ジフェニル−1,5−ジチアペンタン−S,S)トリカルボニルレニウム(I)]、
・[クロロ(1,6−ジカルボキシ−2,5−ジチアヘキサン−S,S)トリカルボニルレニウム(I)]、
・[クロロ(1,7−ジカルボキシ−2,6−ジチアヘプタン−S,S)トリカルボニルレニウム(I)]及び
・上記化合物の薬学的に許容される塩又は溶媒和物
からなる群から選択される式(I)の化合物に関する。
(定義)
本開示で用いられている「二座配位子」という語は一般的には金属イオンに配位することができる2つの基を有するキレート剤のことをいう。
本開示で用いられている「固形腫瘍」という語は一般的には嚢胞や液体領域を通常含んでいない組織の異常な塊をいう。固形腫瘍は良性(ガンではないもの)であっても悪性(ガン)であってもよい。異なるタイプの固形腫瘍は、その固形腫瘍を形成する細胞のタイプにちなんで名付けられる。固形腫瘍の例としては、肉腫、がん腫及びリンパ腫が挙げられる。白血病腫瘍は一般的には固形腫瘍を形成していない。
本開示で用いられている「薬学的に許容される」という句は、指定された担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、塩又はプロドラッグが、ある配合を有する他の成分と化学的及び/又は物理的に概ね適合し、かつ、その受容者と生理学的に適合することを示す。
本開示で用いられている「治療する」、「治療された」及び「治療」という語には、予防、改善、軽減及び治癒のための使用及び/又はその結果が含まれる。
本開示で用いられている「治療上の」及び「治療上有効な量」という句は、(a)特定の疾患、異常又は障害を治療又は予防する;(b)特定の疾患、異常又は障害の1以上の症状を弱める、改善する又は除去する;(c)本開示中で述べる特定の疾患、異常又は障害の1以上の症状の発症を防ぐ又は遅らせる、化合物、組成物又は薬剤の量をいう。「治療上」及び「治療上有効な」という語は、上記(a)〜(c)の作用のいずれかの単独の作用又は他の(a)〜(c)のいずれかと併用した(又は組み合わせた)作用を包含しているとして理解されるべきものである。
本発明の化合物はエナンチオマー混合物として存在していてもよいし、単一の(純粋な)エナンチオマーとして存在していてもよい。同様にジアステレオマー又は異なるジアステレオマーの混合物であってもよい。本発明にはそのようなエナンチオマー、ジアステレオマー、及び、任意の比率のそれらの混合物が含まれる。
さらに、本発明の範囲には、(I)の化合物の全ての立体異性体、さらには全ての幾何異性体及び互変異性型(互変異性体)、並びに、それらを任意の比率で含む全ての混合物が含まれる。単一の化合物が複数の異性化を示し得ることは当業者であれば認識できるであろう。
本発明の化合物は、当業者に公知の方法、例えば、結晶化等によって分離することができるジアステレオマー塩を形成させたり;結晶化又は気液若しくは液体クロマトグラフィー等によって分離することができるジアステレオマー誘導体又は錯体を形成させたり;酵素的エステル化等、あるエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬の選択的反応を行ったり;あるいは、キラル環境下、例えば、キラル配位子を結合させたキラル支持体上やキラル溶媒の存在下などで、気液若しくは液体クロマトグラフィーを行ったりするなどして純粋なエナンチオマーへと分割することができる。所望の立体異性体を上述の分離手順の一つによって別の化学物質に変換した場合、所望のエナンチオマー型を遊離させるためのステップがさらに必要なことは認識されるであろう。あるいは、光学活性な出発物質を用いて合成するか、光学活性な試薬、基質、触媒若しくは溶媒を用いて不斉合成を行うか、又は、不斉変換若しくは不斉反転によってある立体異性体をもう一方へと変換することによって特定の立体異性体を合成することもできる。
本発明の上記化合物が1以上の立体中心をさらに含んでいる場合、本開示において例示され、議論された化合物のジアステレオマー及びジアステレオマー混合物は、全て本発明の範囲内に属するものであることは当業者であれば認識できるであろう。これらのジアステレオマーは当業者に公知の方法、例えば結晶化や気液若しくは液体クロマトグラフィーなどによって単離することができる。
また、合成の途中の中間体はラセミ混合物として存在する場合があり、そのラセミ混合物を当業者に公知の方法、例えば、結晶化等によって分離することができるジアステレオマー塩を形成させたり;結晶化、気液若しくは液体クロマトグラフィー等によって分離することができるジアステレオマー誘導体又は錯体を形成させたり;酵素的エステル化等、あるエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬の選択的反応を行ったり;あるいは、キラル環境下、例えば、キラル配位子を結合させたキラル支持体上やキラル溶媒の存在下などで、気液若しくは液体クロマトグラフィーを行ったりするなどして分割してもよい。所望の立体異性体を上述の分離手順の一つによって別の化学物質に変換した場合、所望のエナンチオマー型を遊離させるためのステップがさらに必要なことは認識されるであろう。あるいは、光学活性な試薬、基質、触媒若しくは溶媒を用いて不斉合成を行うか、又は、不斉変換若しくは不斉反転によってある立体異性体をもう一方へと変換することによって特定の立体異性体を合成することもできる。
本発明の化合物は、非溶媒和物の形態であってもよく、水やエタノール等の薬学的に許容される溶媒との溶媒和物の形態であってもよい。薬学的に許容される溶媒の例として、DOやDMSO−d等の同位体で置換された溶媒が含まれることは理解されるであろう。本開示において、「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物と、1以上の薬学的に許容される溶媒分子を含む錯体をいうために用いる。本発明は非溶媒和物の形態、溶媒和物の形態、及び、溶媒和物の形態の混合物を包含することを意図している。
本発明の特定の化合物及び/又はその塩及び/又は溶媒和物は複数の結晶形態で存在していてもよい。式Iで表される化合物の多形体は本発明に包含されており、異なる条件下、例えば、異なる溶媒又は異なる溶媒混合物を用いたり;異なる温度で結晶化を行ったり;結晶化中の冷却を非常に速い速度から非常に遅い速度まで種々の様式で行ったりするなどして式Iの化合物の結晶化を行うことによって製造することができる。多形体はまた、式Iの化合物を加熱するか又は融解させた後、徐冷又は急冷することによっても得ることができる。多形体の存在は、固体NMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定、粉末X線回折等の方法によって確認することができる。
本発明はさらに、式(I)で述べたものと同じであるが、自然界に通常存在する原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で1以上の原子が置換されている、同位体で標識された化合物であって、薬学的に許容されるものを全て含む。本発明の化合物に含まれていてもよい同位体としては、水素、炭素、塩素、フッ素、ヨウ素、窒素、酸素、硫黄、セレン及びテルルの同位体、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、13N、15N、17O、18O、35S、79Se及び128Teが挙げられる。上述の同位体及び/又は他の原子の同位体を含む本発明の化合物、そのプロドラッグ及び上記化合物若しくはプロドラッグの薬学的に許容される塩が本発明の範囲内にあることは理解されるであろう。同位体で標識された本発明の化合物のうち特定のもの、例えばHや14C等の放射性同位体を含むものなどは、薬剤及び/又は基質の組織分布の検討において有用である。三重水素、即ちH、及び、カーボン14、即ち14Cは製造や検出が容易であることから特に好ましい。さらに、重水素、即ちH等の重同位体で置換すると、代謝安定性が大きくなることから特定の治療上の利点、例えば生体内(インヴィボ)半減期の延長、必要な投与量の減少などといった利点が得られ、そのため、場合によっては好ましいこともある。同位体で標識された本発明の式(I)の化合物及びそのプロドラッグは、一般的には、スキーム及び/又は実施例に開示された手順を、同位体で標識されていない試薬を入手可能な同位体標識試薬に置き換えて実施することによって製造することができる。
本発明の化合物は単離して、そのままで又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の形態で使用することができる。本発明の化合物に関連する、本開示で使用される薬学的に許容される塩には、上記化合物の薬学的に許容される無機又は有機塩が含まれる。これらの塩は、化合物(若しくはプロドラッグ)の最終の単離及び/又は精製の間にその場で製造されるか、あるいは、化合物(若しくはプロドラッグ)を好適な有機又は無機酸に別途反応させて、その後形成された塩を単離することによって製造される。式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)の化合物の溶液と所望の酸又は塩基の溶液を一緒に適宜混合することによってすぐに調製することができる。塩は溶液から沈殿させてろ過により回収するか又は溶媒の留去により回収することができる。塩のイオン化度は完全にイオン化した状態からほとんどイオン化していない状態まで様々であってよい。
代表的な塩としては、特に限定されないが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩化水素酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、糖酸塩、ステアリン酸、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。他の代表的な塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の陽イオン、さらに、特に限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、リシン、アルギニン、ベンザチン、コリン、トロメタミン、ジオラミン、グリシン、メグルミン、オラミン等の無毒のアンモニウム、四級アンモニウム及びアミンカチオン等が挙げられる。本発明はさらに塩形態の混合物も含む。
本発明の化合物は、プロドラッグとして投与することができる。「プロドラッグ」という用語は、生体内で変換されて式Iの化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を生じる化合物をいう。その変換は、血中での加水分解などの種々の機構により起こる。
式(I)の化合物のプロドラッグは、アミノ、ヒドロキシル又はカルボキシル基等の上記化合物中の1以上の官能基を用いて従来の方法で形成させることができる。例えば、本発明の化合物がカルボン酸官能基を含んでいる場合、プロドラッグは、(1)酸基の水素を(C−C)アルキル若しくは(C−C10)アリール等の基で置換することにより形成されるエステル;(2)酸基の水素を−(CR)COOR’(式中、CRはスペーサであり、RはH又はメチル等の基であってもよく、R’は(C−C)アルキル又は(C−C10)アリール等の基であってもよい)等の基で置換することにより形成される活性エステル;及び/又は、(3)酸基の水素をCHROCOOR’(式中、RはH又はメチル等の基であってもよく、R’は(C−C)アルキル又は(C−C10)アリール等の基であってもよい)等の基で置換することにより形成される炭酸塩(又はエステル)を含んでもよい。
あるいは、特定の式(I)の化合物は、それ自体が他の式Iの化合物のプロドラッグとして作用してもよい。プロドラッグ及びその使用についての議論は、例えば、“Prodrugs as Novel Delivery Systems,”T.Higuchi and W.Stella,Vol.14 of the ACS Symposium Series、及び、Bioreversible Carries in Drug Design,Pergamon Press,1987(ed.E B Roche,American Pharmaceutical Association)を参照することができる。上述の例に沿った置換基の別の例及び他のタイプのプロドラッグの例は上述の参考文献を参照することができる。
適切なレニウム錯体とともに24時間インキュベーションしたMCF−7腫瘍細胞系に対するレニウム錯体及び10の細胞毒性能を示したものである。 (a)はC1714ClSeRe(錯体)の標識されたCAMERON図を示す。楕円は確率50%で描かれたものである。(b)はC1816ClSeRe(錯体)の標識されたCAMERON図を示す。楕円は確率50%で描かれたものである。
(詳細な説明)
以下に式(I)の化合物をさらに詳細に説明する。但し本発明はこれらに限定されない。
一般的に、式(I)の化合物は化学分野で知られているプロセスを含む方法により、特に本開示に含まれる説明と当業者の知識を組み合わせることによって製造することができる。他の試薬、化合物又は方法を実用又は試験において使用することもできるが、式(I)の化合物の製造方法として一般化された方法を以下の記載、製造例及び反応スキームによって説明している。式(I)の化合物の製造方法の他のプロセスは実験の部において記載している。
本明細書において開示される方法(スキーム、製造例及び実施例で概略を示したものを含む)は例示を目的とするものであって、限定を課すようなものとして解釈されるべきものではない。種々の変更や改変は、本開示の利益を得た当業者にとっては明らかであろうし、そのような変更や改変は、添付の特許請求の範囲においてさらに規定されているように、本開示の趣旨及び範囲から逸脱するものではないとされよう。
特に断りの無い限り、製造例及びスキーム中に記載の変数R、X、Y、Z、n、m、p及びqは、上述したものと同義であるか、又は、特許請求の範囲に記載のものと同義である。
特に明示しない限り、本開示中で使用する技術用語及び科学用語は全て、本開示が属している技術分野の通常の知識を有する者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本開示の特定の実施形態をスキーム、製造例及び実施例を参照して説明するが、それらの実施形態は単に例であって、本開示の基本原理の応用を表すことができる多くの考えられる特定の実施形態のうちの少数を単に例示したに過ぎない、として理解されるべきものである。
<二座配位のジセレノ−エーテル配位子の製造例>
レニウム金属と併用して式(I)のレニウム錯体を形成させるのに好適な二座配位のジセレノ−エーテル配位子の製造のための一般的な方法は、好適な出発原料のSe−Se又はSe−CN結合を還元して求核性のRSeイオンを形成させることに基づいている。この求核性のRSeイオンは種々のハロゲノアルキル基と反応させることができる。
配位子PhSe(CHSePh()及びPhSe(CHSePh()は、D.J.Gulliverら,J.Chem.Soc.Perkin Trans.II(1984)429−434において説明されている、水性エタノール中でPhSeをヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムで還元した後に1,2−ジブロモエタン又は1,3−ジブロモプロパンとそれぞれ反応させる方法等の当業者が利用できる公知の方法に従って製造されたものである。
スキーム1において、レニウム金属と併用して式(I)のレニウム錯体を形成させるのに好適な他の二座配位のジセレノ−エーテル配位子は、好適な出発原料のSe−Se又はSe−CN結合を還元して求核性のRSeイオンを形成させることにより製造することができる。この求核性のRSeイオンはさらに適切なハロゲノアルキル基と反応させることができる。
配位子HOOC−CHSe(CHSeCH−COOH()は、L.R.M.Pitomboら,Rev.Latinoam.Quim.13(1982)108−109に記載の方法に従って製造した。また、同じ方法を配位子HOOC−CHSe(CHSeCH−COOH()を製造する際にも用いた。この場合、スキーム1に従って、プロピレンジセレノシアネート(NCSe(CHSeCN)を水酸化ナトリウム(NaOH)と水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)で処理した後、ブロモ酢酸ナトリウムと反応させた。
Figure 2013528615
<本発明のレニウム錯体の製造例>
Re(I)錯体は、N.A.Illan−Cabezaら,J.Inorg.Biochem.99(2005)1637−1645、D.−L.Maら,Inorg.Chem.46(2007)740−749、K.E.Elwellら,Bioorg.Med.Chem.14(2006)8692−8700、及び、E.W.Abelら,J.Chem.Soc.Dalton Trans.(1982)2065−2072に記載の方法に従って、THF中で還流下、市販のRe(CO)Clを対応する配位子と反応させることにより合成した。
Re(CO)Clを配位子及びと反応させると、それぞれ錯体及びが形成された。
Figure 2013528615
錯体の化学構造は、単結晶X線回折分析(選択したパラメータは、下記実験の部の表4及び5に示し、標識化したCAMERON図を図2に示す)によって決定した。一方、錯体及びの構造は元素分析、赤外分光法(IR)、H−NMR及び質量分析(MS)によって決定した。この際、全ての錯体においてカルボニル基が表面に配置されていることがIRスペクトルのCO伸縮振動吸収から証明できる。3つの強いv(CO)伸縮振動帯が2030〜1860cm−1の範囲内に見られ、これはfac−[Re(CO)コアの存在を示している。
<錯体及び10(それぞれ錯体及びの二ナトリウム塩)の数種のヒト腫瘍細胞系に対する生物活性>
4種のヒト固形腫瘍細胞:HT29(結腸直腸がん細胞)、MCF−7(ホルモン依存性乳がん細胞)、A 549S(肺腺がん細胞)及びHeLa(固形子宮がん細胞)に対する本発明の代表的なレニウム錯体の増殖抑制活性を以下の本開示の実験の部に示した手順に従って検討した。
図1に示されるように、これら2つの錯体の細胞毒性活性のパターンによれば、MCF−7乳がん細胞に対して高い活性が示され、錯体10は最も有効であり、IC50が4.75μMである。下記表3に示されるように、錯体10はMCF−7乳がん細胞に対して最も有効であった。
Figure 2013528615
当業者であれば、合成中に保護基が必要となる場合があることを認識するであろう。目標の特定分子若しくは中間体を調製した後か、又は、合成経路中のその後の特定のステップにおいて、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,(3rd Ed,John Wiley&Sons,1999)に記載されているような当業者にとって周知の方法により上記保護基を除去することができる。
薬学的使用を目的とした本開示の化合物は、単独で投与してもよく、他の本発明の化合物の1以上と組み合わせて、又は、1以上の他の薬剤と組み合わせて(又は任意に組み合わせて)、特に1以上の他の抗がん剤と組み合わせて投与してもよい。一般的に、上記化合物は1以上の薬学的に許容される賦形剤を伴った配合で投与される。
上記抗がん剤は、臨床的にガンを治療できることが示された化学物質又は生物学的物質であることが好ましい。上記抗がん剤は、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アムサクリン、ara−C、9−(3−D−アラビノシル)−2−フルオロアデニン、BCNU、ブレオマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、2−クロロ−2−デオキシアデノシン、CPT−11、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エドテカリン、エトポシド、フルダラビン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ゲムシタビン、HU−ジェムザール、イリノテカン、メトトレキサート、6−Mプリン、マイトマイシン−C、パクリタキセル、シスプラチン、SN−38、タキソール、チオテパ、6−チオグアニン、トリメトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びVP−16からなる群から選択されるのがより好ましい。
特定の実施形態においては、上記抗がん剤はDNA損傷剤である。「DNA損傷剤」は臨床的にガンを治療できることが示された化学物質又は生物学的物質であることが好ましい。上記DNA損傷剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、白金アナログ、並びに、ガリウム、金、ルテニウム、ヒ素、パラジウム、コバルト、銅及びランタンアナログ等の他の金属アナログ、トポイソメラーゼI阻害剤及びトポイソメラーゼII阻害剤からなる群から選択されるのがより好ましい。
上記アルキル化剤は、アパジコン、アルトレタミン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボコン、カルムスチン、クロラムブシル、クロルメチン、シクロホスファミド、エストラムスチン、フォテムスチン、グルホスファミド、イホスファミド、ロムスチン、マホスファミド、メクロレタミン酸化物、メシリナム、メルファラン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ニムスチン、窒素マスタードN−酸化物、ピポブロマン、ラニムスチン、テモゾロミド、チオテパ、トレオスルファン及びトロホスファミドからなる群から選択されるのが好ましい。
上記代謝拮抗剤は、アリムタ、Ara−C、5−アザシチジン、カペシタビン、カルモフール、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、ペメトレキセド二ナトリウム、ドキシフルリジン、エフロルニチン、エノシタビン、エチニルシチジン、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、ロイコボリン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、6−Mプリン、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、リボシド、メトトレキサート、メルカプトプリン、ネララビン、ノラトレキシド、オクホスファート、テガフール、6−チオグアニン(6−TG)、チオグアニン、トリアピン、トリメトレキサート、ビダラビン、ビンクリスチン、ビノレルビン及びUFTからなる群から選択されるのが好ましい。
上記抗腫瘍性抗生物質は、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アナマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エルサミトルシン、エピルビシン、ガラルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ネモルビシン、ネオカルチノスタチン、ペントスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン及びジノスタチンからなる群から選択されるのが好ましい。
上記白金アナログは、カルボプラチン(パラプラチン)、シスプラチン、エロキサチン(オキサリプラチン(Sanofi))、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン及びピコプラチンからなる群から選択されるのが好ましいが、他の白金化合物の効能を本発明のレニウム錯体で高めてもよい。
上記トポイソメラーゼI阻害剤は、BN−80915(Roche)、カンプトテシン、CPT−11、エドテカリン、エキサテカン、イリノテカン、オラセシン(Supergen)、SN−38及びトポテカンからなる群から選択されるのが好ましい。
上記トポイソメラーゼII阻害剤は、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート及びエピルビシン(Ellence)から選択されるのが好ましい。
別の実施形態においては、上記抗がん剤は分裂抑制剤である。上記分裂抑制剤は、ドセタキセル(タキソテール)、エストラムスチン、パクリタキセル、ラゾキサン、タキソール、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びビンフルニンからなる群から選択されるのが好ましい。
別の実施形態においては、上記抗がん剤は抗血管新生薬である。上記抗血管新生薬は、EGF阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害剤及びMMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害剤から選択されるのが好ましい。
好ましいVEGF阻害剤としては、例えば、Genentech,Inc.(サウスサンフランシスコ,カリフォルニア)の抗VEGFモノクローナル抗体であるアバスチン(ベバシズマブ)等が挙げられる。別のVEGF阻害剤の例としては、CP−547,632(Pfizer Inc.,NY,USA)、アキシチニブ(Pfizer Inc.)、ZD−6474(AstraZeneca)、AEE788(Novartis)、AZD−2171、VEGF Trap(Regeneron/Aventis)、バタラニブ(PTK−787、ZK−222584とも呼ばれる(Novartis&Schering AG))、マクジェン(ペガプタニブオクタナトリウム、NX−1838、EYE−001(Pfizer Inc./Gilead/Eyetech))、IM862(Cytran Inc.,カークランド,ワシントン,USA);及び、アンギオザイム(angiozyme)(リボザイムから合成した合成リボザイム(Boulder,Colo.))及びカイロン(エメリービル,カリフォルニア)、並びに、それらの組み合わせが挙げられる。
好ましいEGRF阻害剤の例としては、特に限定されないが、イレッサ(ゲフィチニブ(AstraZeneca))、タルセバ(エルロチニブ又はOSI−774(OSI Pharmaceuticals Inc.))、アービタックス(セツキシマブ(Imclone Pharmaceuticals, Inc.))、EMD−7200(Merck AG)、ABX−EGF(Amgen Inc.及びAbgenix Inc.)、HR3(キューバ政府)、IgA抗体(University of Erlangen−Nuremberg)、TP−38(IVAX)、EGFR融合蛋白質、EGFワクチン、アンチEGFrイムノリポソーム(Hermes Biosciences Inc.)、及び、それらの組み合わせが挙げられる。
他の抗血管新生薬としては、例えば、アシトレチン、フェンレチニド、サリドマイド、ゾレドロン酸、アンギオスタチン、アプリジン、シレンジタイド、コンブレタスタチンA4、エンドスタチン、ハロフジノン、レビマスタト、レモバブ、レブリミド、スクアラミン、ウクライン、ビタキシン、及び、それらの組合せが挙げられる。
別の実施形態においては、上記抗がん剤はパンキナーゼ阻害剤である。好ましいパンキナーゼ阻害剤としては、米国特許第6,573,293号明細書に記載のスーテント(TM)(スニチニブ)が挙げられる。
別の実施形態においては、上記抗がん剤は、CP−724,714(Pfizer,Inc.)、CI−1033(カネルチニブ(Pfizer,Inc.))、ハーセプチン(トラスツズマブ(Genentech Inc.))、オミタルグ(Omitarg)(2C4、ペルツズマブ(Genentech Inc.))、TAK−165(武田薬品工業株式会社)、GW−572016(ロナファルニブ(GlaxoSmithKline))、GW−282974(GlaxoSmithKline)、EKB−569(Wyeth)、PKI−166(Novartis)、dHER2(HER2ワクチン(Corixa and GlaxoSmithKline))、APC8024(HER2ワクチン(Dendreon))、anti−HER2/neu二重特異性抗体(Decof Cancer Center)、B7.her2.IgG3(Agensys)、AS HER2(Research Institute for Rad Biology&Medicine)、三官能二重特異性抗体(ミュンヘン大学)及びmAB AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc)及びmAB2B−1(Chiron)等のpan−ErbB受容体阻害剤又はErbB2受容体阻害剤、並びに、それらの組み合わせから選択される。
別の実施形態においては、上記抗がん剤は、ジェナセンス(オーグメロセン(Genta))、パニツムマブ(Vectibix/Amgen)、ゼヴァリン(Schering)、ベキサール(Corixa/GlaxoSmithKline)、アバレリクス、アリムタ、EPO906(Novartis)、ディスコデルモライド(XAA−296)、ABT−510(Abbott)、ネオバスタット(Aeterna)、エンザスタウリン(Eli Lilly)、コンブレタスタチンA4P(Oxigene)、ZD−6126(AstraZeneca)、フラボピリドール(Aventis)、CYC−202(Cyclacel)、AVE−8062(Aventis)、DMXAA(Roche/Antisoma)、チミタク(Thymitaq)(Eximias)、テモダール(テモゾロマイド(Schering Plough))及びレビリムド(Revilimd)(Celegene)、並びに、それらの組み合わせから選択される。
別の実施形態においては、上記抗がん剤は、CyPat(シプロテロン酢酸エステル)、ヒステレリン(酢酸ヒストレリン)、プレナキシス(アバレリックスデポ剤)、アトラセンタン(ABT−627)、サトラプラチン(JM−216)、サロミド(サリドマイド)、セラトープ(Theratope)、テミリフェン(Temilifene)(DPPE)、ABI−007(パクリタキセル)、エビスタ(ラロキシフェン)、アタメスタン(Biomed−777)、ジオタックス(ポリグルタメート化パクリタキセル)、タルグレチン(ベキサロテン)、及び、それらの組み合わせから選択される。
別の実施形態においては、上記抗がん剤は、トリザオン(Trizaone)(チラパザミン)、アプトシン(エクシスリンド)、ネオバスタット(Nevastat)(AE−941)、セプレン(ヒスタミン二塩酸塩)、オラセシン(Orathecin)(ルビテカン)、ビルリジン(Virulizin)、ガストリミューン(Gastrimmune)(G17DT)、DX−8951f(メシル酸エキサテカン)、オンコナーゼ(ランピルナーゼ)、BEC2(ミツモマブ)、キシトリン(Xcytrin)(モテキサフィンガドリニウム)、及び、それらの組み合わせから選択される。
別の実施形態においては、上記抗がん剤はCeaVac(CEA)、NeuTrexin(グルクロン酸トリメトレキサート)、及び、それらの組み合わせから選択される。別の抗腫瘍剤は、以下の薬剤:OvaRex(オレゴボマブ)、Osidem(IDM−1)、及び、それらの組み合わせから選択することもできる。別の抗腫瘍剤は、以下の薬剤:アドベキシン(ING201)、チラゾン(Tirazone)(チラパザミン)、及び、それらの組み合わせから選択することができる。別の抗腫瘍剤は、以下の薬剤:RSR13(エファプロキシラール)、コタラ(Cotara)(131I chTNT 1/b)、NBI−3001(IL−4)、及び、それらの組み合わせから選択することができる。別の抗腫瘍剤は、以下の薬剤:カンバキシン(Canvaxin)、GMKワクチン、PEGイントロンA、タクサオプレキシ(DHA/パクリタキセル)、及び、それらの組み合わせから選択することができる。
本開示において使用する「賦形剤」という用語は、本発明の化合物以外の任意の成分を説明するために用いられ、ビヒクル、担体、希釈剤、防腐剤等の成分を含む。賦形剤の選択は、主に、投与様式、溶解度と安定性に関する賦形剤の効果、剤形の性質などの要因に左右されることとなる。
本発明の医薬組成物としては、例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、徐放性製剤、溶液若しくは懸濁液等の経口投与に好適な形態や、滅菌した溶液、懸濁液若しくはエマルション等の非経口注射に好適な形態が挙げられる。本発明の化合物の送達に適した医薬組成物及びその製造方法は当業者にはすぐに明らかなものであろう。そのような組成物及びその製造方法は、例えば、‘Remington’s Pharmaceutical Sciences’,19th Edition(Mack Publishing Company,1995)を参照することができる。
ある好ましい実施形態においては、本発明の化合物は経口投与してもよい。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下を伴うものでもよく、また、化合物が口から血流に直接入るように口腔又は舌下投与を行ってもよい。経口投与に適した製剤としては、固形製剤、例えば、錠剤や、粒子、液体又は粉末を含むカプセル;トローチ剤(液体を充填したものを含む)、チュアブル剤(chews);多粒子及びナノ粒子;ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム(粘膜付着性製剤を含む)、オビュール剤(ovules)、スプレー剤及び液体製剤等が挙げられる。液体製剤としては、懸濁液、溶液、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。上記製剤はソフト又はハードカプセル中の充填剤として使用することができ、典型的には担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース又は好適な油状物質などと、1以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含む。液体製剤は、サシェ剤などの固体から再構成することによって調製することもできる。本発明の化合物は、LiangとChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents,11(6),981−986(2001)に記載されているような速溶性で速崩壊性の剤形で使用することもできる。
別の好ましい実施形態においては、本発明の化合物は非経口注射によって投与することができる。非経口投与の形態の例としては、本発明の化合物を滅菌した水性媒体、例えば水性のプロピレングリコール又はブトウ糖等に入れた本発明の化合物の滅菌溶液、懸濁液又はエマルション等が挙げられる。別の実施形態においては、上記非経口投与の形態は溶液である。上記非経口剤形は、必要であれば適宜緩衝剤で処理してもよい。
本発明の化合物及び/又は医薬組成物の投薬計画(レジメン)は、所望の応答が最適になるように調整することができる。例えば、単一のボーラス投与を行ってもよいし、幾つかに分けて時間をかけて投与してもよい。あるいは、治療状況の緊急性に応じて量を比例的に減らしたり増やしたりしてもよい。適切な投与計画(レジメン)、投与毎の量及び/又は投与間隔は、使用される本発明の化合物、医薬組成物のタイプ、治療が必要な投与対象の性質、及び、治療する症状の重症度によって左右されることとなる。
このように、当業者であれば、本開示内容に基づいて、投与量や投与計画が治療分野において周知の方法に従って調整できることを認識できるであろう。即ち、許容量の最大値はすぐに決定することができ、患者(又は患畜)に対し検出可能な治療上の効能をもたらす有効量も決定することができる。同様に、患者(又は患畜)に対し検出可能な治療上の効能をもたらすための各薬剤の投与の時間的な条件も決定することができる。従って、本開示には特定の投与量や投与計画が例示されているが、これらの例は、本発明を実施する上で患者(又は患畜)に適用することができる投与量や投与計画を何ら制限するものではない。
投薬量の変動は、使用する化合物、投与様式、所望の治療、及び、治療若しくは緩和すべき疾患(重症度及びタイプ)に左右されることに留意されたい。本発明は徐放性組成物及び「フラッシュ(flash)」製剤、即ち、口の中で溶解する薬剤を提供する製剤も包含する。
さらに、どの投与対象に対しても、具体的な投薬計画は、個人の要求や、組成物を投与する又は組成物の投与を管理する人物の専門的判断に応じて経時的に調整すべきこと、及び、本開示に記された投薬量の範囲が例示的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載の組成物の範囲又は実施を限定するものでないことを理解すべきである。例えば、投与量は、毒性作用等の臨床効果及び/又は臨床検査値を含んでいてもよい薬物動力学又は薬力学的パラメータに基づいて調整することができる。従って、本発明は当業者によって決定される患者(又は患畜)内用量漸増(intra−patient dose−escalation)も包含する。化学療法剤の投与のための適切な投薬量及び投与計画を決定することは関連分野で周知であり、本開示で開示される教示が提供されれば、当業者には、そのような投薬量及び投与計画が包含されていることが理解されるであろう。
本発明の医薬組成物は、バルク状又は単一の単位服用量又は単一の単位服用量を複数含んだものとして製造されたり、包装されたり、販売されたりしてもよい。本開示で使用される「単位服用量」は所定量の有効成分を含む医薬組成物の個別の量である。その有効成分量は一般的には、投与対象に投与される予定の有効成分の投薬量に等しいか、又は、そのような投薬量の半分若しくは3分の1の量などの投薬量の切りの良い部分量に等しい。
本発明の医薬組成物中の有効成分と、薬学的に許容される担体と、任意の添加成分の相対的な量は、治療対象の個性、大きさ及び状態に応じて変わり、また、組成物が投与される経路によっても変わる。例として挙げると、本発明の医薬組成物は0.1%〜100%(w/w)の有効成分を含んでいてもよい。その有効成分に加え、本発明の医薬組成物は1以上の追加の薬学的有効成分をさらに含んでいてもよい。
(製造例)
下記化合物は、以下に概略を示す手順の1以上に従って製造され、特性決定された式Iに包含される化合物の例であるが、本発明はこれらの例に限定されない。種々の中間体の製造方法も説明する。
下記説明においては、以下の略語を使用する。
H NMR及び13C NMRスペクトルは、Bruker Advanceスペクトロメータにおいてそれぞれ300MHz、75.5MHzで記録し、全ての場合において計画した構造と一致した。特徴的な化学シフト([δ])はppmで表記するとともに、主要なピークを表すのに従来の略語を使用している。例えば、sは一重線、dは二重線、tは三重線、qは四重線、mは多重線、brは広幅(ブロード)である。
質量スペクトルはBruker Daltonics micro TOF(ESI;ポジティブ又はネガティブモード;キャピラリー電圧:4.8kV;ネブライザー圧:0.2bar;脱溶媒温度:180℃;脱溶媒ガス流量:4.5l/分)で記録した。
3500〜600cm−1の範囲におけるIRスペクトルをBruker IFS28FTを用いてニートフィルム(neat film)として得た。
Perkin−Elmer 2400 II型元素分析装置を用いて微量分析を行った。
室温又は周囲温度は20〜25℃をいう。
特に断りの無い限り、全ての非水性反応は窒素雰囲気下で行われ、市販の試薬はそれ以上精製することなく使用した。
「濃縮」又は「減圧下で濃縮」又は「真空中で(in vacuo)」という語は、ロータリーエバポレータ及び/又は真空ポンプを用いたことを意味する。
<配位子3,7−ジセレナノナン二酸()の製造>
粉末状セレン(Se)(2.0g、25.31mmol)とシアン化カリウム(KCN)(1.5g、23.04mmol)を60mlアセトン中に添加した混合物を還流下で2日間撹拌した。未反応のSeをろ過により除去した後、1,3−ジブロモプロパン(0.5g、9.91mmol)を添加し、その溶液を還流下で4時間撹拌した。その後アセトンを減圧下で除去し、残留油状物をCHCl中に溶解させ、得られた溶液をろ過した。CHClを減圧下で除去した後、淡黄色の結晶が得られた。その結晶をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の化合物であるプロピレンジセレノシアネートの無色結晶を得た。収量:1.220g(50%);融点49℃;H NMR(CDCl):δ 2.59(q,HH=6.8Hz,2H,CH CH),3.26(t,HH=6.8Hz,4H,SeCH);13C NMR(CDCl):δ 27.5[s(93%)及びd(7%),J77SeC=53.8Hz,SeCH],31.3(s,CH CH),100.6(s,SeCN).
15mlのエタノール/水(2/1)混合溶媒中にNaOH(0.500g、12.50mmol)を添加した溶液に上記のように製造したプロピレンジセレノシアネート(0.466g、1.85mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌することにより橙色の溶液を得た。NaBH(0.500g、13.22mmol)を添加し、混合物を室温で1時間、さらに50℃で1時間撹拌することにより橙色の溶液と黄色の沈殿物を得た。2−ブロモ酢酸ナトリウム(0.596g、3.71mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。白色の沈殿をろ過により除去し、無色の溶液を5mlになるまで減圧下で濃縮した。6M HCl溶液を添加してpHが1になるように調製した。生じた白色の沈殿物及び残りの水溶液をCHClで抽出し、集めた有機層を水洗してMgSOで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、残留する白色固体をシクロヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の物質を得た。収量:0.380g(65%);融点75℃;IR2860(m),2640(m),2510(m),1678(s),1425(m),1389(m),1271(s),1227(m),1178(m),1159(m),1116(m),935(s),765(m),747(m),648(s)cm−1H NMR(DMSO−d):δ 2.00(quint.,2H,CHCHCH),2.80(t,HH=6.8Hz,4H,CHCHCH),3.20[s(93%)及びd(7%),77SeH=15.1Hz,4H,SeCHCOH],12.50(brs,2H,COH);13C NMR(DMSO−d):δ 22.5[s(93%)及びd(7%),J77SeC=67.0Hz,SeCH],24.3[s(93%)及びd(7%),J77SeC=61.8Hz,SeCH],29.6(s,CHCHCH),172.7(s,COH).
別の方法として、以下の手順に従って、プロパン−1,3−ジセレノールの二ナトリウム塩をブロモ酢酸メチルエステルでアルキル化した後に水酸化リチウム水溶液による加水分解を行うことで化合物()を製造した。
<配位子3,7−ジセレナノナン二酸()の別の製造方法>
(3−カルボキシメチルセラニル−プロピルセラニル)−酢酸ジメチルエステル(3,7−ジセレナノナン二酸ジメチルとも呼ばれる)の製造:1,3−ビス−セレノシアナト−プロパン(1.0g、3.96mmol)を無水エタノール(20mL)に添加した溶液にブロモ酢酸メチルエステル(1.23g、8.0mmol)を添加した。その混合物を窒素下で完溶するまで撹拌した。次に水素化ホウ素ナトリウム(303mg、8.0mmol)を一度に添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。白色沈殿を焼結ガラス漏斗上でろ過し、黄味がかったろ液を減圧下で濃縮することにより淡黄色の油状物を得た。この油状物をそれ以上精製することなく次のステップに使用した。収量:1.12g(82%);H NMR(CDCl):δ 3.72(s,6H,OC ),3.17(s,4H,C COMe),2.82(t,J=7.2Hz,4H,SeC CH Se),2.0(quint,J=7.2Hz,2H,SeCH CHSe).
(3−カルボキシメチルセラニル−プロピルセラニル)−酢酸(3,7−ジセレナノナン二酸とも呼ばれる)の製造:粗(3−カルボキシメチルセラニル−プロピルセラニル)−酢酸ジメチルエステル(692mg、2.0mmol)をTHF(3mL)に添加した溶液に、水2mLに混合したLiOH・HO(336mg、8.0mmol)を添加した。次に均一溶液となるまでメタノールを添加した。その反応混合物を室温で16時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。3N HCl水溶液を用いて反応混合物のpHを1〜2に調整し、その混合物を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。油状の残渣を少量のCHCl中に取り、石油エーテルを用いて沈殿させた。得られた固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより540mg(収率85%)の所望の物質()を得た。その分光学的データは、上に報告したデータと完全に一致した。
上述の通り、配位子及びは、D.J.Gulliverら,J.Chem.Soc.Perkin Trans. II(1984)429−434、及び、L.R.M.Pitomboら,Rev.Latinoam.Quim.13(1982)108−109に記載されている公知の方法に従って製造した。
<レニウム錯体10の製造>
<錯体の製造>
配位子[PhSe(CHSePh](103mg、0.303mmol)を15mlのTHFに添加した溶液にRe(CO)Cl(110mg、0.304mmol)を添加し、混合物を還流下で一晩撹拌した。THFを減圧下で除去し、残留する白色粉末をシクロヘキサンとジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の錯体を得た。収量:114mg(58%);Anal.Calc.for C1714ClSeRe(計算値):C,31.61;H,2.18.Found(実測値):C,31.26;H,2.19;MS(ポジティブモード):669([M+Na]),611([M−Cl]),583([M−Cl−CO]),555([M−Cl−2CO]);IR:2020(s),1923(s),1898(s),1575(m),1478(m),1436(m),1412(m),1099(m),1071(m),1021(m),837(m),745(s),688(s),667(m),631(m),616(m)cm−1H NMR(CDCl):δ 3.20(m,2H),3.65(m,2H),7.35−7.65(m,10H).X線分析に適した無色の結晶は塩化メチレンから得た。
<錯体の製造>
配位子[PhSe(CHSePh](91.3mg、0.258mmol)を15mlのTHFに添加した溶液にRe(CO)Cl(85mg、0.235mmol)を添加し、混合物を還流下で一晩撹拌した。減圧下でTHFを除去し、残留する白色粉末をシクロヘキサンとジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の錯体を得た。収量:138mg(89%);Anal.Calc.for C1816ClSeRe(計算値):C,32.76;H,2.44.Found(実測値):C,32.62;H,2.45;MS(ポジティブモード):625([M−Cl]、図7参照);IR:2026(s),1929(s),1906(s),1578(m),1478(m),1439(m),1219(m),1070(m),1022(m),999(m),805(m),737(s),690(s),669(m),639(m)cm−1H NMR(CDCl):δ 1.8−4.6(7つのメチレンの共鳴,6H,図8参照),7.2−8.0(m,10H).X線分析に適した無色の結晶は塩化メチレンから得た。
<錯体の製造>
配位子(3,6−ジセレナオクタン二酸、0.105g、0.35mmol)を15mlのTHFに添加した溶液にRe(CO)Cl(0.125g、0.35mmol)を添加し、混合物を還流下で一晩撹拌した。THFを減圧下で除去し、残留する白色粉末をシクロヘキサンとジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の錯体を得た。収量:0.151g(72%);Anal.Calc.for C10ClSeRe(計算値):C,17.73;H,1.65.Found(実測値):C,17.74;H,1.69;MS(ポジティブモード):575([M−Cl]);IR:3170−2360(m),2032(s),1943(m),1914(s),1692(s),1416(m),1366(m),1309(s),1284(m),1208(m),1172(m),1140(m),1094(m),892(m),853(m),798(s),706(m),660(m),631(m)cm−1H NMR(DMSO−d):δ 3.05(s,2H),3.25(s,2H),3.35(brs,4H).
<錯体の製造>
配位子(3,7−ジセレナノナン二酸、0.135g、0.43mmol)を15mlのTHFに添加した溶液にRe(CO)Cl(0.154g、0.43mmol)を添加し、混合物を還流下で一晩撹拌した。THFを減圧下で除去し、残留する白色粉末をシクロヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の錯体を得た。収量:0.240g(90%);Anal.Calc.for C1012ClSeRe(計算値):C,19.25;H,1.94.Found(実測値):C,19.46;H,1.97;MS(ポジティブモード):589([M−Cl]);IR:3330−2340(m),2029(s),1935(s),1895(s),1731(s),1699(s),1415(m),1351(m),1282(m),1249(m),1206(s),1186(m),1092(m),834(m),785(m),752(m),670(m),637(m),624(s),605(m)cm−1H NMR(CDOD):δ 2.6−3.9(m,10H).
<錯体(錯体の二ナトリウム塩)の製造>
錯体(0.330g、0.545mmol)を20mlエタノールに添加した溶液にNaCO(0.100g、1.20mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。過剰のNaCOをろ過により除去し、エタノールを減圧下で留去した。残留する白色粉末をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の生成物を得た。収量:0.320g(90%);Anal.Calc.for CClNaSeRe,0.25COH(計算値):17.16;H,1.44.Found(実測値):C,17.25;H,1.99;MS(ネガティブモード):573([M−2Na−Cl],スキーム2参照);IR:2031(s),1909(s),1893(s),1595(s),1374(s),1345(s),1190(m),1134(m),1089(m),1041),926(m),870(m),791(m),625(m),606(m)cm−1
<錯体10(錯体の二ナトリウム塩)の製造>
錯体(0.343g、0.55mmol)を20mlエタノールに添加した溶液にNaCO(0.122g、1.15mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。過剰のNaCOをろ過により除去し、エタノールを減圧下で留去した。残留する白色粉末をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることにより所望の生成物を得た。収量:0.330g(90%);Anal.Calc.for C1010ClNaSeRe,0.25COH(計算値):C,18.57;H,1.71.Found(実測値):C,18.95;H,2.18;MS(ネガティブモード):587([M−2Na−Cl],スキーム2参照);IR:2016(s),1909(s),1862(s),1572(s),1418(m),1374(s),1344(s),1232(m),1192(m),1092(m),933(m),874(m),828(m),731(m),683(m)cm−1
<生物学的検定>
MTT/IC50を4種のヒトがん細胞系の化学的感受性を測定するのに用いた(細胞毒性は細胞増殖阻害率に基づいて見積もった。IC50は生存細胞数が半分にまで減少するのに必要な濃度(μM)を表す)。この方法は、活性な生存細胞のミトコンドリア内に存在する酵素であるコハク酸デヒドロゲナーゼによってMTTテトラゾリウム塩[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]をMTTホルマザン[1−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−3,5−ジフェニルホルマザン]に還元する生存細胞の能力に基づく。検討対象の錯体の試料をそれぞれの溶解度に応じて適当な濃度でHOか、DMSO/HOの10/90混合溶液のいずれかに溶解させ、適切な腫瘍細胞培地に添加した。24時間インキュベーションした後、培地を注意深く吸引し、MTT(Sigma−Aldrich)(0.5mg/ml)をフェノールレッドを含んでいないRPMI培地に溶解した溶液を各ウェルに加えた。37℃で4時間インキュベーションした後、媒体を除去し、生存細胞から形成されたホルマザン結晶を0.1mlのDMSOに溶解させた。各ウェルに対して570nmでの吸光度をSpectraMax250マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,USA)を用いて測定した。50%阻害濃度(IC50)は、対照細胞と比較して処置した細胞の50%が死滅した濃度として決定した。
<X線回折測定>
グラファイト単色化MoKαX線(波長λ=0.71073Å)を100Kで用いて、SMART1000CCDエリアディテクタを備えたBruker−SMART3軸回折計により回折データを収集した。データの収集及び解析はBruker SMARTプログラムを用いて行い、ASTRO(5.00)、SAINT(5.007)及びSADABS(5.007)、SMARTシステム(5.054)用のデータコレクション解析ソフト,Siemens(BRUKER−AXS) Analytical X−ray Instruments Inc.,Madison,WI,1998に記載されているようなSADABSコンピュータプログラムを用いて経験的な吸収補正を行った。構造は、A.Altomareら,J.Appl.Crystallogr.32(1999)115−119に記載されているようなSIR97を用いた直接法によって解析し、D.J.Watkinら,Chemical Crystallography Laboratory,University of Oxford,UK,2001に従い、CRYSTALSソフトウェアを用いてFに基づくフルマトリクス最小二乗法によって精密化した。D.J.Watkinら,Chemical Crystallography Laboratory,University of Oxford,UK,1996に記載されるようなCAMERONプログラムを用いて分子を描いた。水素以外の全ての原子を異方的に精密化した。水素原子は差フーリエ地図に配置した。H原子はUiso=1.20Ueq(Ueqは結合している原子の等価な等方性原子変位パラメータである)で等方的に精密化した。化合物及びの結晶パラメータ、データ収集及び精密化の詳細は下記表4及び5に報告する。
化合物:単斜晶系単位格子:a=15.1525(10)、b=7.6292(10)、c=16.8518(10)Å、α=90°、β=112.850(10)°、γ=90°、V=1494.4(3)Å、Z=4、及び、d(calc)=2.388cm−3。8093の特有の反射全てについて、R[F]=0.0200、wR[F]=0.0217、適合度(goodness of fit)1.0771で収束した218の変数に対し、Fに基づき最終の異方性フルマトリクス最小二乗法による精密化を行った。
化合物:斜方晶系単位格子:a=14.522(1)、b=13.105(1)、c=20.470(1)Å、α=β=γ=90°、V=3895.4(4)Å、Z=8、及び、d(calc)=2.25g・cm−3。5931の特有の反射全てについて、R[F]=0.022612、wR[F]=0.0232609、適合度(goodness of fit)1.0815で収束した226の変数に対し、Fに基づき最終の異方性フルマトリクス最小二乗法による精密化を行った。
Figure 2013528615
Figure 2013528615

Claims (15)

  1. 一般式(I)のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
    Figure 2013528615
    (式中、
    XはSeであり;
    Yは、NH、O若しくはS、又は、メチレン基であり;
    Zはハロゲンであり;
    mは0、1又は2であり、pは0、1又は2であるが、但しYがNH、O又はSの場合、mとpは両方ともゼロではなく;
    nは3であり;
    はフェニル基又は一般式:−(CH−COOH(式中、qは1又は2)の基である)。
  2. は一般式:−(CH−COOH(式中、qは1又は2)の基である、
    請求項1に記載のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
  3. mとpは1であり、YはCH若しくはNHから選択されるか;又は、
    m若しくはpの一方はゼロであり、もう一方は1であり、YはCHである、
    請求項1又は2に記載のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
  4. 前記一般式(I)の錯体は一般式(Ia)又は(Ib)の錯体:
    Figure 2013528615
    (式中、ZはCl又はBr、好ましくはCl)である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
  5. ヒトを含む哺乳動物における増殖関連疾患の治療方法において使用するための一般式(I)のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
    Figure 2013528615
    (式中、
    XはS、Se又はTeから選択され;
    Yは、NH、O若しくはS、又は、メチレン基であり;
    Zはハロゲンであり;
    mは0、1又は2であり、pは0、1又は2であるが、但しYがNH、O又はSの場合、mとpは両方ともゼロではなく;
    nは3であり;
    はフェニル基又は一般式:−(CH−COOH(式中、qは1又は2)の基である)。
  6. 前記増殖関連疾患は腫瘍、好ましくは固形腫瘍である、
    請求項5に記載のレニウム錯体。
  7. 前記増殖関連疾患は乳房腫瘍である、
    請求項5又は6に記載のレニウム錯体。
  8. 少なくとも1つの一般式(I)のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
    Figure 2013528615
    (式中、
    XはS、Se又はTeから選択され;
    Yは、NH、O若しくはS、又は、メチレン基であり;
    Zはハロゲンであり;
    mは0、1又は2であり、pは0、1又は2であるが、但しYがNH、O又はSの場合、mとpは両方ともゼロではなく;
    nは3であり;
    はフェニル基又は一般式:−(CH−COOH(式中、qは1又は2)の基である)
    を治療上有効な量含む医薬組成物。
  9. さらに抗がん剤を治療上有効な量含む、
    請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 請求項1に記載の式(I)の化合物の製造のための一般式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
    Figure 2013528615
    (式中、X、Y、m、p及びqは請求項1と同義である)
    の使用。
  11. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のレニウム錯体の製造方法であって、
    式(II)の化合物をRe(CO)Clと反応させるステップを含む方法。
  12. 増殖関連疾患の治療方法であって、
    その治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効な量の少なくとも1つの請求項1〜4のいずれか一項に記載のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を単独で又は第2の薬剤と組み合わせて、薬学的に許容される担体、ビヒクル、希釈剤又は賦形剤と共に投与する方法。
  13. ヒトを含む哺乳動物において増殖関連疾患を治療するための薬剤の製造のための一般式(I)のレニウム錯体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物:
    Figure 2013528615
    (式中、
    XはS、Se又はTeから選択され;
    Yは、NH、O若しくはS、又は、メチレン基であり;
    Zはハロゲンであり;
    mは0、1又は2であり、pは0、1又は2であるが、但しYがNH、O又はSの場合、mとpは両方ともゼロではなく;
    nは3であり;
    はフェニル基又は一般式:−(CH−COOH(式中、qは1又は2)の基である)
    の使用。
  14. 前記増殖関連疾患は腫瘍、好ましくは固形腫瘍である、
    請求項13に記載の使用。
  15. 前記増殖関連疾患は乳房腫瘍である、
    請求項13又は14に記載の使用。
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