JP2013527751A - 物質の非毒性を決定する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、物質の非毒性を確立するための方法に関する。例えば、本発明は、毒性関連経路のデータベースを構築する方法、及び、そのデータベースの使用方法に関する。
Description
本発明は、2010年3月15日付で提出された米国仮出願61/313,835号に基づいて優先権の利益を享受する。その内容は、参考までに、本明細書の一部をなす。
数多くの環境及び消費財の化学物質の毒性は、人間の健康に大きい影響を及ぼす。この重大な事実は、CDCによる「公衆健康及び化学被爆に関する国家的な会議」を促した。2つの独立した研究によれば、我々は、市場に出回っている化学物質の86%について必要な毒性データを欠くことが示唆された。これは、公衆健康問題である。2007年に、国家研究委員会(NRC)は、変換毒性テスティング(transforming toxicity testing)に対する長期間の戦略的なプランを立てた「21世紀における毒性手テスティング:ヴィジョン及び戦略」というレポートを発表した。そのレポートは、高価で(年間3十億ドル超かかる)、時間がかかる40余年間の動物テストのパッチワークの使用に基づく、低い処理能力の、しばしば限られた予測値の結果を提供する現時点のシステムの不十分さをまとめた。現時点の毒性テスティングアプローチの低い処理能力(これは、産業用の化学物質、農薬、及び、薬剤に対して概ね同じである。)によって、80000を超える化学物質の潜在的な毒性が概ね知られてないままとなっており、薬剤開発の毒性テスティングの妨げとなっている。
遺伝子、タンパク質、及び、小分子がどのように相互作用して、細胞機能を維持する分子経路を形成するのかの科学的な理解は、急速な進歩を重ねている。混乱させたときに(乱されたときに)健康に悪影響をもたらす経路は、毒性経路(pathway of toxicity; PoT)と呼ばれる。高処理能力及び高含量スクリーニング分析の発展に結び付いた、分子及び計算ツールの進歩によってもたらされた標的細胞、組織、及び、臓器における作用モードの爆発的な科学的知識によって、これらのPoTの研究(interrogation)が可能となるとともに、数千の化学物質の影響を研究・評価する手段が提供される。多数のPoTが既に同定されているが、大部分のPoTは専ら部分的に知られて、いかなる共通の注釈も存在しない。
これらの全体的な経路のマッピング(即ち、Human Toxome)に有用な新規の方法、及び、これらの経路マップを使用して物質が毒性を有しないかを決定する新しい方法に対する大きなニーズが存在している。
本明細書に記載されたのは、物質又は物質の混合物の非毒性を確立するのに有用な新規の方法である。一般に、本明細書に記載された方法は、乱されたときに(when perturbed)、毒性に貢献する有限の数の代謝経路全体をマップする戦略に基づく。したがって、本明細書に記載されたのは、毒性関連経路データベースを作成(生成)する方法、及び、そのデータベースを使用して物質の非毒性を確立する方法である。
特定の実施形態において、本発明は、代謝表現型の変化から毒性関連経路データベースを作成する方法に関する。いくつかの実施形態よれば、この方法は、被験細胞集団を毒性物質と接触させるステップと、1以上の分析を行って、前記接触された細胞集団における代謝の調整を検出するステップと、及び/又は、前記接触された細胞集団における前記代謝の調整に基づいて、毒性物質関連経路を同定するステップと、前記毒性物質関連経路を毒性関連経路のデータベースに追加するステップと、を含む。前記1以上の分析は、例えば、接触された細胞集団における遺伝子発現、遺伝子調節(gene regulation)、たんぱく質発現、たんぱく質修飾(protein modification)、又は、代謝物生成を検出する。いくつかの実施形態においては、複数の個別の毒性物質及び複数の個別の細胞集団に対して前記ステップを繰り返す。特定の実施形態において、本発明は、この方法によって作成されたデータベースに関する。
いくつかの実施形態において、本発明は、特定濃度で被験物質が非毒性であるかどうかを決定する方法に関する。特定の実施形態において、この方法は、前記被験物質の前記濃度による複数の毒性関連代謝経路の調節を検出する1以上のアッセイを行って、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路表現型を生成するステップを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、前記被験物質の前記濃度の前記毒性関連経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路データベースと比較するステップ、及び、前記濃度において前記被験物質が非毒性であるかどうかを決定するステップを含む。
いくつかの実施形態において、本発明は、有機体内の被験物質の濃度の非毒性を予測する方法に関する。その方法は、前記被験物質の前記濃度による複数の毒性関連代謝経路及び毒性防御経路の調節を検出する1以上の分析を行って、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路及び毒性防御経路表現型を生成するステップと、前記被験物質の前記濃度の前記毒性関連経路及び毒性防御経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路及び毒性防御経路データベースと比較するステップと、前記被験物質の前記濃度において、毒性関連経路が乱されないか、または、毒性防御経路が活性化しているとき、前記有機体内の前記被験物質の非毒性を予測するステップと、を含む。
いくつかの実施形態において、本発明は、被験物質または被験物質の混合物がある濃度において非毒性であるかどうかを決定するためのコンピュータプログラム製品に関する。このコンピュータプログラム製品は、保存された複数の指示を有する非一時的コンピュータ読み込み可能な媒体に存在して、コンピュータプロセッサによって実行されるときに、前記コンピュータプロセッサが、a)ある濃度の被験物質による複数の毒性関連代謝経路の調節を検出する1以上のアッセイを行なうことによって生成された、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路データベースと比較し、b)前記濃度において前記被験物質が非毒性であるかどうかを決定するようにさせる。
特定の実施形態において、1以上の分析の少なくとも一部は、被験細胞集団に対して行なわれる。別の実施形態において、前記1以上の分析の少なくとも一部は、複数の被験細胞集団に対して行なわれる。別の実施形態において、1以上の分析は、遺伝子発現マイクロアレイ分析、ハイスループット配列決定、クロマトグラフィ−質量分析、または、NMR分析を含む。 別の実施形態において、被験細胞集団の少なくとも一部を、1以上の分析を行なう前に溶解させる。別の実施形態において、1以上の分析を行なうことが、毒性防御経路の調節(modulation)を検出する1以上の分析を行なうことを含む。別の実施形態において、データベースは、毒性関連経路(toxicity associated pathway)及び毒性防御経路(toxicity defense pathway)の両方を含む。別の実施形態において、被験物質は、その被験物質によっていかなる毒性関連経路をも調節されないときに、その濃度において非毒性であると決定される。別の実施形態において、ステップa)及びb)は、被験物質の濃度範囲(range of concentration)に対して行なわれる。別の実施形態において、コンピュータプログラム製品(computer program product)は、被験物質がもはや毒性を示さない濃度を決定するための指示を更に含む。
いくつかの実施形態において、本発明は、有機体内の被験物質の濃度の非毒性を予測するためのコンピュータプログラム製品に関する。前記コンピュータプログラム製品は、保存された複数の指示を有する非一時的コンピュータ読み込み可能な媒体に存在して、コンピュータプロセッサによって実行されるときに、前記コンピュータプロセッサが、a) ある濃度の被験物質による複数の毒性関連代謝経路及び毒性防御経路の調節を検出する1以上の分析を行なうことによって生成された、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路及び毒性防御経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路及び毒性防御経路データベースと比較し、b)前記被験物質の前記濃度において、毒性関連経路が乱されないか、または、毒性防御経路が活性化しているとき、前記有機体内の前記被験物質の非毒性を予測するようにさせる。
本発明によれば、全体的な経路マップを使用して物質が毒性を有しないかどうかを決定することができる。
<概論>
本明細書には、物質の非毒性(non-toxicity)を確立するための方法を記載する。一般的に、現時点の毒性分析は、単にある物質が毒性であるかどうかを確立することができるだけである。かかる分析は、物質の非毒性を証明することができないが、それは、かかる分析では、毒性指示の不在(absence of a toxicity indication)が非毒性を確立するのに不十分だからである。
本明細書には、物質の非毒性(non-toxicity)を確立するための方法を記載する。一般的に、現時点の毒性分析は、単にある物質が毒性であるかどうかを確立することができるだけである。かかる分析は、物質の非毒性を証明することができないが、それは、かかる分析では、毒性指示の不在(absence of a toxicity indication)が非毒性を確立するのに不十分だからである。
しかしながら、本発明は、毒性関連経路の全体をマップしたら、物質の非毒性を確率することができるということを見出した。いかなる毒性関連経路もトリガーされていないことを示す、毒性関連経路すべてを包括する方法は、所定の濃度において、その物質または毒性物質の毒性の不在を確認できる。本明細書では、まず、毒性関連経路の包括的な(総合的な)データベースを構築する方法、及び、そのデータベースを使用する方法を記載する。
一部の実施形態において、本発明は、新しい目的のために(非毒性物質の同定)新しい技術を使った(毒性経路のデータベース、テスト戦略、データ分析手順)いくつかの確立されたアプローチ(遺伝子及び代謝表現型検査(phenotyping)、パターン認識(pattern recognition)、システム生物学(system biology))の新しい組み合わせに関する。本明細書に記載した方法は、同定(確認)された経路のデータベース、所定の濃度においてその物質が非毒性であるかどうかを推定するアルゴリズム及び関連経路を含むテスト戦略(組み合わせられたテストのバッテリー)の構築を含む。
毒性関連経路データベースの作成
一部の実施形態において、本発明は、次のステップを含む、代謝表現型の変化から毒性関連経路データベースを作成(生成)する方法に関する:
a)テスト細胞集団を毒性物質と接触させるステップと、
b)1以上の分析を行って、前記接触された細胞集団における代謝の調節(modulation)を検出するステップと、
c)前記接触された細胞集団における前記代謝の調節に基づいて、毒性物質関連経路を同定するステップと、
d)前記毒性物質関連経路を毒性関連経路データベースに追加するステップと、
e)複数の個別の毒性物質及び複数の個別の細胞集団に対して前記ステップa)〜d)を繰り返すステップ。いくつかの実施形態によっては、前記方法のステップは、新しい毒性物質のテスティング(testing)が、もはや新しい毒性関連経路を同定しなくなるまでに、繰り返される。
一部の実施形態において、本発明は、次のステップを含む、代謝表現型の変化から毒性関連経路データベースを作成(生成)する方法に関する:
a)テスト細胞集団を毒性物質と接触させるステップと、
b)1以上の分析を行って、前記接触された細胞集団における代謝の調節(modulation)を検出するステップと、
c)前記接触された細胞集団における前記代謝の調節に基づいて、毒性物質関連経路を同定するステップと、
d)前記毒性物質関連経路を毒性関連経路データベースに追加するステップと、
e)複数の個別の毒性物質及び複数の個別の細胞集団に対して前記ステップa)〜d)を繰り返すステップ。いくつかの実施形態によっては、前記方法のステップは、新しい毒性物質のテスティング(testing)が、もはや新しい毒性関連経路を同定しなくなるまでに、繰り返される。
本明細書に使用される用語「毒性関連経路(toxicity-related pathway)」は、細胞の毒性物質への暴露時に調節される(つまり、阻害される、向上される、または、変化される)任意の細胞経路をいう。異なる細胞集団(例えば、異なる有機体からの異なる細胞型及び/または細胞)は、全く同じ毒性関連経路を有しない可能性がある。
本明細書において使用される用語「代謝表現型の変化(metabolic phenotype change)」は、代謝産物の変化、タンパク質の変化、核酸の変化、炭水化物の変化、脂質の変化、形態学的変化などを含む、細胞の代謝状態に関する情報を提供するすべての変化を指す。したがって、細胞集団の代謝に関する情報を提供する任意のアッセイは、例えば、代謝物の存在、同定(identity)および/またはレベルを検出するアッセイ、遺伝子発現、及び/または特定の核酸レベル(mRAレベル、miRレベル、pre-miRNAレベル、piRNAレベル、rRNAのレベルなどを含む)を評価するアッセイ、特定の遺伝子および/または染色体位置(例えば、テロメア(telomere)および/またはセントロメア(centromere))のエピジェネティックな構造(epigenetic structure)(例えば、DNAのメチル化、ヒストンのメチル化、ヒストンのアセチル化は、ヒストンのユビキチン化など)を評価するアッセイ、炭水化物の存在、同定(identity)および/またはレベルを検出するアッセイ、脂質の存在、同定および/またはレベルを検出するアッセイ;タンパク質のプロセシング、変更(modification)(例えば、リン酸化、メチル化、アセチル化、ユビキチン化など)および/または発現を検出するアッセイを含めて、前述した方法のステップb)で行うことができる。特定の実施形態では、ステップb)で行われる1以上のアッセイは、液体クロマトグラフィ−質量分析(GC-MS)アッセイ、核磁気共鳴(NMR)アッセイ、マイクロアレイアッセイ(例えば、核酸またはタンパク質マイクロアレイ)、核酸配列決定アッセイ(例えば、高スループットパイロシーケンシング(high throughput pyrosequencing)のような高スループット配列決定アッセイ)、フローサイトメトリーアッセイ(flow-cytometry assay)、高スループット顕微鏡アッセイ(high-throughput microscopy assay)、及び/又はチップアッセイ上のChIPを含んでも良い。
毒性関連経路データベースは、同定(識別)された毒性に関連した経路に関する情報を含めることができる。したがって、特定の実施形態において、生成された毒性関連経路データベースは、毒性関連経路に関連付けられた代謝物の変化、核酸(例えば、遺伝子発現)の変化、エピジェネティックな変化(epigenetic changes)、脂質の変化、タンパク質の変化、炭水化物の変化などを含む。
方法の特定の実施形態では、被験細胞集団の少なくとも一部は、ステップa)とステップb)の間に溶解される。しかし、特定の実施形態では、被験細胞集団の一部または全細胞集団が溶解されない。無傷の細胞上のアッセイでは、例えば、細胞の表面から分泌されるか、または、細胞の表面上に発現される分子に基づいて、または、細胞の形状、大きさ、運動性、または、生存率のような、他の方法で外部に検出可能な細胞の表現型を通じて、毒性関連経路を同定することができる。
いくつかの実施形態では、例えば、培養中の細胞は、既知の毒性物質に暴露することができる。細胞は、蒸留水および/またはメタノールで細胞培養培地を交換することによって、例えば、溶解(lyse)される。ライセート(lysate)において非代謝物を減らすための精製工程を行った後、LC-MSスペクトルは、異なる毒性と非毒性物質および/または有毒物質の様々な濃度で得られたサンプルから生成され、主成分分析にかけられる。毒物および非毒性物質を区別するのに最も貢献し、又は、濃度/反応曲線を反映するこれらの信号の特徴(痕跡)(signature)を推定する。上述したように、分析も、溶解せずに、細胞培養培地中に分泌(排泄)代謝物で行うことができる。LC-MSは、他のMSまたはNMR手法に置き換えられるか、それと組み合わせることができる。
上記の方法で有用な細胞系(cell system)は、ヒト初代細胞/組織(human primary cells/tissues)、幹細胞に由来する細胞株(cell line)、または細胞/組織を含むが、それに限定されない。したがって、使用される細胞集団は、培地中全体または部分的な組織、培地中の初代細胞および/または培地中の細胞株を含んでも良い。細胞は、細胞株への適用(adaptation)及び/または初代培養に従順である任意の動物(ヒトを含む)の供給源から得ることができる。線虫(C. elegans)などの下等生物は、細胞系として代用することができる。動物由来の細胞株を生成する代わりに、そのような細胞株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、メリーランド州ロックビル)または任意の他のブダペスト条約または他の生物寄託機関から得ることができる。アッセイで使用される細胞は、動物(ヒトを含む)の供給源からのものでも良く、または特定の特性を表現するように適合した組換え細胞であってもよい。特定の実施形態において、細胞は、ヒトや他の霊長類、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジなどから得られた組織に由来するものである。哺乳類の初代細胞培養および細胞株培養で用いられる技術は、当業者に良く知られている。確かに、市販の細胞株の場合に、そのような細胞株は、一般に、その所定の細胞株に好ましい成長、培地、及び、条件の具体的な指示とともに販売されている。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法はまた、既知の作用モードを有する第二の有害物質を使用して、同定された毒性物質関連経路を検証するステップを含む。検証(validation)の代替的な及び/又は補完的な措置は、同定された代謝物にリンクされたタンパク質の発現解析、対応する代謝表現型に至る遺伝的変異性(genetic variability)、又は、毒性物質に対する変化されたパターン応答のような遺伝的情報、遺伝子ノックアウト(knock-out)又は遺伝子サイレンシング(gene silencing)のような実験的介入、及び、代謝表現型(metabolic phenotype)及び応答パターンの疾患に関連する遺伝的変異(genetic variation)にかかわる。主な対策としては、例えば、画像解析により同定されたような、遺伝子配列決定、mRNA発現、タンパク質発現、または、細胞の表現型の変化を含むが、それらに限定されない。
代謝調節(metabolism modulation)に基づく毒性物質関連経路を同定するステップは、当技術分野で公知の任意の技術によって行なうことができる。例えば、バイオインフォマティクス(bioinformatics)を用いて、十分に確立された毒素によって誘導できる特定の毒性経路に関連付けられたパターンは、同定することができるが、それとは反対に、非毒性参照化合物(non-toxic reference compound)で処理された系又は未処理の生物系は代謝表現型の生理学的な可変性(変動性、variability)を確立する。1つまたは複数の毒性物質に関連したパターン及び個々の代謝物の変化は、かかる変化が望まれる薬理作用又は毒性のバイオマーカーとしての更に使用することができる。したがって、代謝産物の生化学的および生理学的相互作用に関する既存の知識を用いて、即ち、既存の経路に関連した代謝物の一貫した変化によって、毒性の経路を推定することができる。この分析は、同様の表現型につながる条件の経路における同様の毒性物質または同様の変化(alternation)についての同様の結果によって更に強化される。
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法はまた、同定された毒性物質関連経路を、被験細胞集団の遺伝的プロファイルに相関させる工程を含む。個人の遺伝子構造(genetic make-up)は、部分的には、物質に対する反応を決定するが、それは、化学物質に対する反応を含むが、それに限定されない。特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、個々の遺伝子や遺伝子グループの類似の細胞のパネル上で行なうことができる。特定の細胞集団に特異的な細胞応答を同定し、影響を受ける細胞の特定の遺伝子構造に対する応答を追跡する(trace)ことにより、細胞系内の物質の相互作用の経路を同定し、又は、その疑わしい経路を検証することができる。
いくつかの実施形態では、遺伝的変異細胞のパネルは、例えば、異なるドナーヒトまたは動物由来の細胞の組み合わせまたは比較、特定の疾患の有するか又は有しないドナーからの細胞の組み合わせまたは比較、一つ以上のドナーからの細胞における突然変異の誘発、1以上のドナーからの細胞のゲノムにおける遺伝物質のランダム又は標的化挿入及び遺伝物質のランダム又は標的化かく乱、異なるドナーの遺伝物質の組み換え、および/または、人工細胞の構築によって得ることができる。細胞のパネルは、混合した後、又は順に、同時に(in parallel)被験物質に接触させられる。細胞死を含むが、それに限定されない細胞応答を評価することができる。大部分の細胞あるいは歴史的コントロールに比べて、増加された応答、又は、減少された応答のような異常な応答を利用して、相互作用の経路の同定に関連した遺伝子構造を有するものを同定する。これは、そうでなければ、物質の致死濃度の存在下での細胞の生存を含むが、それに限定されない。分裂細胞の場合、これは、物質の存在下で、特定の細胞型の有利な成長を含むが、それに限定されない。被験物質に対する応答を変化させる遺伝子構造を有する細胞の同定又は分離を可能にする他の細胞の応答は、細胞画像解析(cell image analysis)および細胞選別(cell sorting)を含むが、それに限定されない。
特定の実施形態では、応答の変化に連動した遺伝的変異が同定される。これは、配列決定によって、または他の方法で目的の細胞の遺伝子構造に関する情報を得ることによって行うことができる。細胞が、その遺伝子構造の複数の側面で異なるものであれば、様々な細胞変異体のコンセンサスパターン(consensus pattern)を使用することができる。
例えば、特定の実施形態では、血液の白血球などの異なるドナーからの細胞は、それらが混合される前に、検出可能なマーカー(例えば、蛍光標識抗体)で標識される。現時点のフローサイトメトリーセル・アナライザ(flow cytometry cell analyzer)は、個々の細胞において16色まで測定することができ、したがって、個別のドナーから最大216(65,536)の区別できる細胞集団が検出可能に、かつ、明確に標識され得る(ラベル付けられる)。特定の物質に対する異常な反応は、そうでなければ毒性物質の存在下で、または、アポトーシスまたは早期ストレス反応のような毒性誘発応答の不在下での特定の細胞型の生存率によって検出することができる。明確な標識(labeling)によって、応答から、変異、多型(一塩基多型、またはSNPを含む)、遺伝子変異、全ゲノムシーケンスまたは疾患状態のような細胞ドナーの遺伝子構造にさかのぼることができる。
別の例示的な実施形態において、細胞株は、標準的な薬剤(例えば、ENU(N-エチル-N-ニトロソ尿素)またはMNNG(N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)を含むがそれに限定されない。)を使用して、ランダムに突然変異を起こさせられる。変異した細胞集団は、物質の毒性濃度にさらされる。生存細胞は、個々の細胞からコロニーを作成することによって、クローン的に拡張させる。これらのクローンの遺伝子構造は、例えば配列決定することによって、評価される。情報は、特に、同じ抵抗性(resistance)を示し、かつ、生化学的または生理学的に関連された遺伝子(biochemically or physiologically connected genes)から由来するいくつかの亜種からの、正常に機能しない(impaired)経路を推定するのに使用される。
従って、特定の実施形態において、本発明は、これらの遺伝子、そのタンパク質、および/または、その代謝産物および結合パートナーを結びつける(connect)経路の知識に基づいて、物質に対する細胞の応答に影響を与える遺伝子の同定を可能にする。これは、ドラッグ‐エーブル経路(drug-able pathway)のような細胞応答を標的化し、操作し、又は、変更する経路又は毒性経路の同定に関連することができる。これは、例えば、同定された経路を代表するテストシステムをデザインすることによる新たな物質の同定、ならびに、毒性物質の作用機序(経路)の同定を可能にする。
いくつかの実施形態において、本発明は、毒性防御経路データベースを生成するための方法に関する。このような方法は、毒性関連経路データベースを生成するための上記の方法で採用されたような同様のアッセイ、および、基本的な技術を利用するが、アッセイはむしろ毒性物質よりも、所定の細胞集団内で非毒性物質を使用して行なわれる。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、以下のステップを含む、代謝表現型の変化から毒性防御経路データベース(toxicity defense pathway database)を生成する方法に関する。a) 被験細胞集団を非毒性物質に接触させるステップ、b)1以上のアッセイを行って、前記接触された細胞集団における代謝の調節(modulation)を検出するステップ、c)前記接触された細胞集団における代謝の調節に基づいて、毒性防御経路を同定するステップ、d)毒性防御経路のデータベースに前記毒性防御経路を追加するステップ、e)複数の区別できる(即ち、異なる)細胞集団及び複数の区別できる(異なる)非毒性物質に対してステップa)〜d)を繰り返し行うステップ。いくつかの実施形態において、この方法のステップは、新しい非毒性物質のテスティングがこれ以上新たしい毒性防御経路を同定しなくなるまで繰り返される。いくつかの実施形態において、生成されたデータベースは、毒性関連経路及び毒性防御経路の両方を含む。
接触させた細胞集団における代謝、別個の非有毒物質の複数の異なる細胞集団の多数のための)e)を繰り返し、手順aからdまで)と、d)は、毒性防御経路のデータベースへの毒性防御経路を追加する。いくつかの実施形態では、方法のステップは、新規毒性防御経路を特定されなくなりました新しい非毒性物質の試験まで繰り返される。いくつかの実施形態では、作成したデータベースは、毒性関連経路と毒性防御経路の両方が含まれます。
特定の実施形態において、本発明は、上記の方法のいずれかに従って作成されたデータベースにも関する。
物質が非毒性であることを決定すること
特定の実施形態において、本発明は、ある濃度で被験物質が毒性を示さないか(即ち、非毒性であるか)どうかを決定する方法に関する。その方法は、a)被験物質の濃度による複数の毒性関連代謝経路の調節を検出する1以上のアッセイを行って、その被験物質の濃度に対する毒性関連経路表現型を生成するステップ、b)その被験物質の濃度の毒性関連経路表現型を、毒性関連経路のデータベース(例えば、「前述した方法に基づいて作成されたデータベース」と比較するステップ、及び、c)その濃度においてその被験物質が非毒性であるかどうかを決定するステップを含む。特定の実施形態において、毒性を示す代謝表現型を生成しない物質は、「非毒性」と考えられる(みなされる)。
特定の実施形態において、本発明は、ある濃度で被験物質が毒性を示さないか(即ち、非毒性であるか)どうかを決定する方法に関する。その方法は、a)被験物質の濃度による複数の毒性関連代謝経路の調節を検出する1以上のアッセイを行って、その被験物質の濃度に対する毒性関連経路表現型を生成するステップ、b)その被験物質の濃度の毒性関連経路表現型を、毒性関連経路のデータベース(例えば、「前述した方法に基づいて作成されたデータベース」と比較するステップ、及び、c)その濃度においてその被験物質が非毒性であるかどうかを決定するステップを含む。特定の実施形態において、毒性を示す代謝表現型を生成しない物質は、「非毒性」と考えられる(みなされる)。
毒性に関連する代謝経路は、複数の変調を検出する1つ以上のアッセイを実施被験物質の濃度で被験物質の濃度の毒性に関連した経路表現型を生成するステップと、b)の毒性に関連した経路のデータベースと被験物質の濃度の毒性に関連した経路表現型を比較した(例えば、データベース)は、上記の方法に従って生成するステップと、c)被験物質が濃度で非毒性であるかどうかを決定する。特定の実施形態では、毒性を示す代謝表現型を生成しない物質は非毒性とみなされます。
いくつかの実施形態では、上記の方法は、被験物質の複数の濃度を使用して行なわれ、そして、毒性を示す代謝表現型を生じない被験物質の濃度は、非毒性濃度と考えられる。このような実施形態において、この方法はまた、被験物質がこれ以上毒性を示さない濃度(即ち、毒性でなくなった濃度)を決定するステップを含んでもよい。
本明細書において使用される用語「テスト物質(被験物質とも呼ぶ。)(test substance)」とは、本明細書に開示される方法に従って評価される任意の潜在的に毒性の物質またはその混合物をいう。従って、用語 「テスト物質」(又は「被験物質」)は、任意の生体分子(例えば、任意のタンパク質、核酸、脂質など)、化合物、混合物、複合体(complex)、ポリマー、コポリマー、化学物質、組成物、環境汚染物質、薬物、代謝物、治療剤、生物剤などを含む、例えば、任意の分子を包含するように広く解釈されるべきである。
いくつかの実施形態において、細胞集団の代謝に関する情報を提供する任意のアッセイは、前述した方法のステップa)において行うことができる。前記任意のアッセイとしては、例えば、代謝物の存在、同定(identity)および/またはレベルを検出するアッセイ、遺伝子発現、及び/または特定の核酸レベル(mRAレベル、miRレベル、pre-miRNAレベル、piRNAレベル、rRNAのレベルなどを含む)を評価するアッセイ、特定の遺伝子および/または染色体位置(例えば、テロメア(telomere)および/またはセントロメア(centromere))のエピジェネティックな構造(epigenetic structure)(例えば、DNAのメチル化、ヒストンのメチル化、ヒストンのアセチル化は、ヒストンのユビキチン化など)を評価するアッセイ、炭水化物の存在、同定(identity)および/またはレベルを検出するアッセイ、脂質の存在、同定および/またはレベルを検出するアッセイ;タンパク質のプロセシング、変更(例えば、リン酸化、メチル化、アセチル化、ユビキチン化など)および/または発現を検出するアッセイを含めて、前述した方法のステップb)で行うことができる。特定の実施形態では、ステップb)で行われる1以上のアッセイは、液体クロマトグラフィ−質量分析(GC-MS)アッセイ、核磁気共鳴(NMR)アッセイ、マイクロアレイアッセイ(例えば、核酸またはタンパク質マイクロアレイ)、核酸配列決定アッセイ(例えば、高スループットパイロシーケンシング(high throughput pyrosequencing)のような高スループット配列決定アッセイ)、フローサイトメトリーアッセイ(flow-cytometry assay)、高スループット顕微鏡アッセイ(high-throughput microscopy assay)、及び/又はチップアッセイ上のChIPを含んでも良い。
前述した方法に関するいくつかの実施形態において、ステップa)において行なった1以上のアッセイの少なくとも一部をテスト細胞集団及び/又は複数のテスト細胞集団に対して行なう。上記の方法で有用な細胞系(cell system)は、ヒト初代細胞/組織(human primary cells/tissues)、幹細胞に由来する細胞株(cell line)、または細胞/組織を含むが、それに限定されない。したがって、使用される細胞集団は、培地中の全体または部分的な組織、培地中の初代細胞および/または培地中の細胞株を含んでも良い。細胞は、細胞株への適用(adaptation)及び/または初代培養に従順である任意の哺乳動物(ヒトを含む)の供給源から得ることができる。動物由来の細胞株を生成する代わりに、そのような細胞株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、メリーランド州ロックビル)または任意の他のブダペスト条約または他の生物寄託機関から得ることができる。アッセイで使用される細胞は、動物(ヒトを含む)の供給源からのものでも良く、または特定の特性を表現するように適合した組換え細胞であってもよい。特定の実施形態において、細胞は、ヒトや他の霊長類、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジなどから得た組織に由来するものである。哺乳類の初代細胞培養および細胞株培養で用いられる技術は、当業者に良く知られている。確かに、市販の細胞株の場合に、そのような細胞株は、一般に、その所定の細胞株に好ましい成長、培地、及び、条件の具体的な指示とともに販売されている。特定の実施形態において、毒性テストのために検証された細胞培養プロトコール(cell culture protocol)が用いられる。これは、例えば、逆境閾値(adversity threshold)としての細胞の各物質及びデータ解釈手順の使用を可能にする。
方法に関する特定の実施形態では、被験細胞集団の少なくとも一部は、ステップa)の前に溶解される。しかし、特定の実施形態では、被験細胞集団の一部または全細胞集団が溶解されない。無傷の細胞上のアッセイでは、例えば、細胞の表面から分泌されるか、または、細胞の表面上に発現される分子に基づいて、または、細胞の形状、大きさ、運動性、または、生存率のような、他の方法で外部に検出可能な細胞の表現型を通じて、毒性関連経路を同定することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された方法は、毒性防御経路(上述のように)の調節(modulation)を検出する1以上のアッセイを行うことを含む。一般に、このような実施形態では、データベースは、毒性関連経路と毒性防御経路の両方を備える。
以下の実施例は、本発明の特定の態様および実施形態の例示の目的でのみ示されるものであり、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。
パイロットスタディモデリング発達上の(発育中の)神経毒性関連経路(Pilot Study Modeling Developmental Neurotoxicity- Associated Pathways)
ラット初代3−D凝集脳細胞培養物(Rat primary 3-D aggregating brain cell cultures)
一般に、ラット初代凝集脳細胞培養物凝集体一バッチを毎月調製した。培養物は、in vitroで35日まで維持され、細胞生存率に何ら損失も示さなかった。培養物で得られたデータは、単一のバッチ内、及び、独立したバッチ製剤との間で良好な再現性(reproducibility)を示した。神経発達の過程を研究するために適用されたエンドポイント(endpoint)は、定量的リアルタイムPCR、ウエスタンブロット分析、および、質量分析系メタボロミクス(metabolomics)を含む。
一般に、ラット初代凝集脳細胞培養物凝集体一バッチを毎月調製した。培養物は、in vitroで35日まで維持され、細胞生存率に何ら損失も示さなかった。培養物で得られたデータは、単一のバッチ内、及び、独立したバッチ製剤との間で良好な再現性(reproducibility)を示した。神経発達の過程を研究するために適用されたエンドポイント(endpoint)は、定量的リアルタイムPCR、ウエスタンブロット分析、および、質量分析系メタボロミクス(metabolomics)を含む。
脳細胞培養物凝集における神経発達に関連する遺伝子の発現
凝集培養物(aggregate culture)は、in vitro(DIV)で35日間維持された。サンプルはDIV 1、7、14、21、28、35で取り出し、niRNAを単離し、精製し、RT-PCRにより定量した。以下の遺伝子の発現を定量化した:神経前駆細胞において発現されたネスチン(nestin)、ニューロンにおいて発現されたneurofilament-200(NF-200)、アストロサイト(astrocyte)において発現されたSIOO、及び、オリゴデンドロサイト(oligodendrocyte)において発現されたミエリン塩基性タンパク質(MBP)。異なるDIVの中に、それぞれの遺伝子の発現を図1に示した。ネスチン(Nestin)の発現(図1−A)は、時間の経過にともに有意義に減少したが、それは、発達中の神経前駆細胞の減少を示す。NF-200(図1−B)及びS100(図1−C)の発現は、時間の経過と共に有意義に増加したが、それは、ニューロンの分化及び成熟、ならびに、アストロサイトの増殖及び分化に基づくものと考えられた。ミエリン塩基性タンパク質(図1−D)の発現は、28日目まで安定していたが、35日目でわずかに減少した。
凝集培養物(aggregate culture)は、in vitro(DIV)で35日間維持された。サンプルはDIV 1、7、14、21、28、35で取り出し、niRNAを単離し、精製し、RT-PCRにより定量した。以下の遺伝子の発現を定量化した:神経前駆細胞において発現されたネスチン(nestin)、ニューロンにおいて発現されたneurofilament-200(NF-200)、アストロサイト(astrocyte)において発現されたSIOO、及び、オリゴデンドロサイト(oligodendrocyte)において発現されたミエリン塩基性タンパク質(MBP)。異なるDIVの中に、それぞれの遺伝子の発現を図1に示した。ネスチン(Nestin)の発現(図1−A)は、時間の経過にともに有意義に減少したが、それは、発達中の神経前駆細胞の減少を示す。NF-200(図1−B)及びS100(図1−C)の発現は、時間の経過と共に有意義に増加したが、それは、ニューロンの分化及び成熟、ならびに、アストロサイトの増殖及び分化に基づくものと考えられた。ミエリン塩基性タンパク質(図1−D)の発現は、28日目まで安定していたが、35日目でわずかに減少した。
得られた遺伝子発現結果がタンパク質レベルの違い(差異)に変換されていることを確認するために、ネスチンおよびNF-200タンパク質を、ウエスタンブロット分析により定量した。タンパク質レベルを図2に示す。ネスチンは発達中安定的に維持され、NF-200は、遺伝子発現と同様に、時間の経過とともに増加した。従って、得られた結果は、脳細胞培養物凝集における神経発達のプロセスを証明する。結果は、同期間の神経発達の際の細胞型特異的な酵素の定量的な測定値に基づく以前のデータ(データは示していない)と一致している。
遺伝子発現に及ぼす潜在的なDNT化学物質の悪影響
凝集性脳細胞培養物(aggregating brain cell culture)は、発達初期(in vitro、7〜14日)及び発達後期(in vitro, 7〜21日)の両方において、潜在的なDNT化学物質にさらされた。パイロットアッセイにてテストした、発達上の(発育上の)細胞毒性(developmental neurotoxicity; DNT)を誘発する可能性を有する化学物質を表1にまとめた。化学物質を、それらの化学的性質に基づいて水やDMSOに溶解した。コントロール細胞は、DNT化学物質のないビヒクル(vehicle)を受けた。DMSOの最終濃度は、0.1%であったが、それは、細胞の生存率や遺伝子発現に有意な効果を示さなかった。これまでテストした化学物質の結果の概要を表2にまとめた。
凝集性脳細胞培養物(aggregating brain cell culture)は、発達初期(in vitro、7〜14日)及び発達後期(in vitro, 7〜21日)の両方において、潜在的なDNT化学物質にさらされた。パイロットアッセイにてテストした、発達上の(発育上の)細胞毒性(developmental neurotoxicity; DNT)を誘発する可能性を有する化学物質を表1にまとめた。化学物質を、それらの化学的性質に基づいて水やDMSOに溶解した。コントロール細胞は、DNT化学物質のないビヒクル(vehicle)を受けた。DMSOの最終濃度は、0.1%であったが、それは、細胞の生存率や遺伝子発現に有意な効果を示さなかった。これまでテストした化学物質の結果の概要を表2にまとめた。
定量化した遺伝子発現レベルに有意な影響を誘発しなかった潜在的なDNT化学物質は、アスパルテーム(aspartame)及びラモトリジン(lamotrigine)を含む。1または複数の細胞型関連遺伝子の発現に有意な影響を及ぼした化学物質として、ビスフェノールA、塩化カドミウム(cadmium chloride)、カルバリル(carbaryl)、クロロピリホス(chloropyrifos)、塩化鉛(lead chloride)、リンデン(lindane)、マネブ(maneb)、トリクロロエチレン(trichloroethylene)、及び、バルプロ酸(valproic acid)を含む。その結果の概要を表2に示し、そして、マネブ(maneb)及び塩化鉛のグラフは図3、及び、図4に示す。
凝集性脳細胞培養物の分析のためのメタボロミクス法
細胞抽出物(コントロール及び処理済み培養物)を前述のように調製した。サンプルを使用して、代謝物の分析のためのLC-MS法を確立した。結果によれば、コントロール及び処理したサンプル(塩化鉛およびTCE)は、互いに区別され、濃度反応効果を誘発した(図5および6)。また、データによれば、2つの化学物質で処理した場合、凝集サンプルにおける何百ものの代謝物が変わった。代謝物レベルにおける有意な混乱(動揺、pertubation)は、主成分分析によって決定され、そして、代謝物は、保持時間(retention time)及び精密質量(accurate mass)を使用するMetlin代謝物データベース検索によって同定された。神経細胞モデルにおける塩化鉛およびTCE処理によって混乱され(乱され)、生物学的経路に結びつく(link)ことができる代謝物の例を表3に示す。したがって、凝集サンプルの最初の分析では、毒性関連経過に結び付けられる凝集性脳細胞培養物における毒性処理に基づく代謝変更を検出するという原則の証拠が示された。
細胞抽出物(コントロール及び処理済み培養物)を前述のように調製した。サンプルを使用して、代謝物の分析のためのLC-MS法を確立した。結果によれば、コントロール及び処理したサンプル(塩化鉛およびTCE)は、互いに区別され、濃度反応効果を誘発した(図5および6)。また、データによれば、2つの化学物質で処理した場合、凝集サンプルにおける何百ものの代謝物が変わった。代謝物レベルにおける有意な混乱(動揺、pertubation)は、主成分分析によって決定され、そして、代謝物は、保持時間(retention time)及び精密質量(accurate mass)を使用するMetlin代謝物データベース検索によって同定された。神経細胞モデルにおける塩化鉛およびTCE処理によって混乱され(乱され)、生物学的経路に結びつく(link)ことができる代謝物の例を表3に示す。したがって、凝集サンプルの最初の分析では、毒性関連経過に結び付けられる凝集性脳細胞培養物における毒性処理に基づく代謝変更を検出するという原則の証拠が示された。
均等物(EQUIVALENTS)
本発明の特定の実施形態が記載されてきたが、この明細書は、あくまで例示であって制限的なものではない。本発明の多くのバリエーションは、この明細書を読んだ当業者にとって明らかであろう。添付の特許請求の範囲は、こうしたすべての実施形態および変形(バリエーション)を主張することを意図してなく、本発明の全範囲は、均等物の全範囲及び特許請求の範囲、ならびに、そのような変形及び明細書の記載を参酌した上で、定まるものである。
本発明の特定の実施形態が記載されてきたが、この明細書は、あくまで例示であって制限的なものではない。本発明の多くのバリエーションは、この明細書を読んだ当業者にとって明らかであろう。添付の特許請求の範囲は、こうしたすべての実施形態および変形(バリエーション)を主張することを意図してなく、本発明の全範囲は、均等物の全範囲及び特許請求の範囲、ならびに、そのような変形及び明細書の記載を参酌した上で、定まるものである。
個々の刊行物または特許が具体的かつ個別に参考までに含まれるように、本明細書で言及した全ての刊行物および特許は、参考までにその全体として本明細書に含まれる。矛盾する場合には、本明細書中に任意の定義を含む本出願に左右される。
Claims (25)
- 代謝表現型の変化から毒性関連経路データベースを作成する方法であって、
a)被験細胞集団を毒性物質と接触させるステップと、
b)1以上の分析を行って、前記接触された細胞集団における代謝の調整を検出するステップと、
c)前記接触された細胞集団における前記代謝の調整に基づいて、毒性物質関連経路を同定するステップと、
d)前記毒性物質関連経路を毒性関連経路のデータベースに追加するステップと、
e)複数の個別の毒性物質及び複数の個別の細胞集団に対して前記ステップa)〜d)を繰り返すステップと、
を含み、そして、
前記ステップb)において、前記1以上の分析が、前記被験細胞集団の遺伝子発現、遺伝子調節、タンパク質発現、タンパク質修飾、または、代謝物の生成を検出する、方法。 - 前記ステップb)において行った前記1以上の分析が、クロマトグラフィ−質量分析を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記ステップb)において行った前記1以上の分析が、NMR分析を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記ステップb)において行った前記1以上の分析が、遺伝子発現マイクロアレイ分析またはハイスループット配列決定を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記ステップa)とb)の間に、前記被験細胞集団の少なくとも一部を溶解させる、請求項1に記載の方法。
- 既知の作用モードを有する第2の毒性物質を使用して、前記同定された毒性物質関連経路を検証するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法
- 前記同定された毒性物質関連経路を前記被験細胞集団の遺伝子プロファイルと関連させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 新しい毒性物質のテスティングからこれ以上新しい経路が同定されなくなるまでに、前記ステップa)〜d)を繰り返し行う、請求項1に記載のステップ。
- 前記毒性関連経路データベースが、前記毒性関連経路に関連する前記遺伝子発現の変化及び前記代謝物の変化を含む、請求項1に記載の方法。
- 複数の非毒性物質に対して前記ステップa)〜d)を行い、毒性防御経路を同定し、そして、前記毒性防御経路を前記データベースに追加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- ある濃度で被験物質または被験物質の混合物が非毒性であるかどうかを決定する方法であって、
a)前記被験物質の前記濃度による複数の毒性関連代謝経路の調節を検出する1以上のアッセイを行って、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路表現型を生成するステップ、
b)前記被験物質の前記濃度の前記毒性関連経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路データベースと比較するステップ、及び、
c)前記濃度において前記被験物質が非毒性であるかどうかを決定するステップ
を含む、方法。 - 前記ステップa)において行った前記1以上の分析の少なくとも一部を、被験細胞集団に対して行う、請求項11に記載の方法。
- 前記ステッa)において行った前記1以上の分析の少なくとも一部を、複数の被験細胞集団に対して行う、請求項12に記載の方法。
- 前記ステップa)において行った前記1以上の分析が、遺伝子発現マイクロアレイ分析、ハイスループット配列決定、クロマトグラフィ−質量分析、または、NMR分析を含む、請求項12に記載の方法。
- 前記細胞集団の少なくとも一部を、前記ステップa)の前に溶解させる、請求項12に記載の方法。
- 前記毒性関連経路データベースが、前記請求項1に記載の方法に基づいて作成されたものである、請求項11に記載の方法。
- 前記ステップa)が、毒性防御経路の調節を検出する1以上の分析を行うことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
- 前記データベースが、毒性関連経路及び毒性防御経路の両方を含む、請求項17に記載の方法。
- 前記被験物質によって毒性関連経路が調節されなければ、前記被験物質は前記濃度において非毒性であると決定される、請求項11に記載の方法。
- 前記被験物質の濃度範囲に対して、前記ステップa)〜c)を行う、請求項11に記載の方法。
- 前記被験物質がもはや毒性を示さない濃度を決定するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法によって作成された毒性関連経路データベース
- 有機体内の被験物質の濃度の非毒性を予測する方法であって、
a)前記被験物質の前記濃度による複数の毒性関連代謝経路及び毒性防御経路の調節を検出する1以上の分析を行って、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路及び毒性防御経路表現型を生成するステップと、
b)前記被験物質の前記濃度の前記毒性関連経路及び毒性防御経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路及び毒性防御経路データベースと比較するステップと、
c)前記被験物質の前記濃度において、毒性関連経路が乱されないか、または、毒性防御経路が活性化しているとき、前記有機体内の前記被験物質の非毒性を予測するステップと、
を含む、方法。 - 被験物質または被験物質の混合物がある濃度において非毒性であるかどうかを決定するためのコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータプログラム製品は、保存された複数の指示を有する非一時的コンピュータ読み込み可能な媒体に存在して、コンピュータプロセッサによって実行されるときに、前記コンピュータプロセッサが、a)ある濃度の被験物質による複数の毒性関連代謝経路の調節を検出する1以上のアッセイを行なうことによって生成された、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路データベースと比較し、b)前記濃度において前記被験物質が非毒性であるかどうかを決定するようにさせる、コンピュータプログラム製品。 - 有機体内の被験物質の濃度の非毒性を予測するためのコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータプログラム製品は、保存された複数の指示を有する非一時的コンピュータ読み込み可能な媒体に存在して、コンピュータプロセッサによって実行されるときに、前記コンピュータプロセッサが、a) ある濃度の被験物質による複数の毒性関連代謝経路及び毒性防御経路の調節を検出する1以上の分析を行なうことによって生成された、前記被験物質の前記濃度に対する毒性関連経路及び毒性防御経路表現型を、毒性物質に関連した毒性関連経路及び毒性防御経路データベースと比較し、b)前記被験物質の前記濃度において、毒性関連経路が乱されないか、または、毒性防御経路が活性化しているとき、前記有機体内の前記被験物質の非毒性を予測するようにさせる、コンピュータプログラム製品。
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