JP2013527009A - エレクトロポレーション電極構造および方法 - Google Patents

エレクトロポレーション電極構造および方法 Download PDF

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Abstract

本明細書において提供されているのは、「特異部ベースの構造」の電極設計および方法が、低い電極間電位差により局所的高電界をイオン性物質内に生成することができるという概念である。本明細書に記載されたこの特異部ベースの構造は、アノード電極、カソード電極、およびアノード電極とカソード電極の間に配置されている絶縁体を含む。特異部ベースの電極設計概念は、アノードとカソードが互いに隣接し、本質的に同一平面上にあり、絶縁体によって分離されている、電極を指す。本質的に同一平面上にあるアノード/絶縁体/カソード構造は、関心領域の一表面と境界を接し、局所的に、すなわち、アノードとカソードの間の界面に近接して、望ましい電界を生成する。理想的な構造では、アノードとカソードの間の界面の寸法はゼロに近くなり、特異点になる。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2010年6月3日付けで出願された米国仮出願第61/351,235,号と2011年4月1日付けで出願された第61/470,975号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張し、これらの開示内容は、そのまま参照により本明細書に組み入れられる。
発明の背景
エレクトロポレーションとは、電界によって細胞膜脂質二重層を透過化することである。エレクトロポレーションを引き起こす物理的メカニズムは完全には理解されていないが、エレクトロポレーションを誘導する電界は、細胞膜における電位差を著しく増大させて一時的または永続的な細孔の形成をもたらすと考えられている。細孔形成の程度は主としてパルス状電界の強度および持続時間に依存し、これらは、エレクトロポレーションを誘導する電界の強度および時間のパラメータに応じて、膜の透過化を可逆的または不可逆的にする原因となる。可逆的エレクトロポレーションは、タンパク質、DNA、および薬物などの高分子を細胞に移入するために広く使用されるが、不可逆的エレクトロポレーションの破壊的な性質は、不可逆的エレクトロポレーションを低温殺菌または滅菌に適したものとしている。
可逆的エレクトロポレーションに必要とされる典型的な電界強度は、約100V/cmから450V/cmにわたる。不可逆的エレクトロポレーションで必要とされる電界は、200V/cmから60,000V/cmにまでわたることがある。
典型的なエレクトロポレーション装置は、図1に示されるように、おおむね互いに対向する電極(E)を有する。典型的なエレクトロポレーション手順では、電極間に標的細胞が配置され、電極間の領域に必要なエレクトロポレーション電界を誘導するために、パルス状電圧もしくはパルス状電流または交流電圧もしくは交流電流が電極に印加される。生成される関連エレクトロポレーション電界は、エレクトロポレーション電極間の電位差におおむね比例し、電極(E)間の距離(d)におおむね反比例する。このような典型的なエレクトロポレーション電極構造では、電極間の距離は、エレクトロポレーションされる細胞のサイズの桁数によって、または、エレクトロポレーションされる領域のサイズによって制約される。不可逆的エレクトロポレーションのように高電界が必要な場合、従来型の設計原理では、エレクトロポレーション電極間に高電位差が必要となる。電極間の大きな電位差には欠点がある。これら欠点には、これらの大きな電位差を生成して厳密なモードで出力することができる電源を必要とすることが含まれる。これらの装置は、製造するために費用がかかり、エネルギー浪費的である。さらに、大きな電界に必要な電位差は、電極の消耗や気泡の形成をもたらす水電解、または放電を引き起こすのに十分な大きさであることが多く、これらのすべてがエレクトロポレーションプロセスに悪影響を与える。
低い電極間電位差により高電界をもたらす電極構造を開発することが望ましい。
本明細書に提示されているのは、低い電極間電位差により高電界を達成し得る新しい電極設計原理である。中心的な着想は、高電界が特異点(point of singularity)に生成されることである。したがって、特異点を生じる電極構造は、低い電極間電位差により高電界を発生し得る。
本明細書において提供されるのは、「特異部(singularity)ベースの構造」の電極設計および方法が、低い電極間電位差により局所的高電界をイオン性物質内に生成することができるという概念である。本明細書に記載されたこの特異部ベースの構造は、アノード電極、カソード電極、およびアノード電極とカソード電極との間に配置されている絶縁体を含む。特異部ベースの電極設計概念は、アノードとカソードとが互いに隣接し、本質的に同一平面上にあり、かつ絶縁体によって分離されている、電極を指す。本質的に同一平面上にあるアノード/絶縁体/カソード構造は、関心領域の一表面と境界を接し、局所的に、すなわち、アノードとカソードとの間の界面に近接して、望ましい電界を生成する。理想的な構造では、アノードとカソードとの間の界面寸法はゼロに近くなり、特異点になる。
特異部ベースの電極構造を使用する一つの可能な方法の例は、(1)隣接するアノード電極とカソード電極とが絶縁体によって分離されている一連の同一平面上のアノード電極およびカソード電極を含むチャネルを設け、(2)マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に電解液を流し、(3)マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に細胞を流し、(4)隣接するアノード電極とカソード電極との間に電位差を印加する、エレクトロポレーション用の装置を含む。特異部ベースの電極構造を使用する他のエレクトロポレーション構造が可能である。特異部ベースの電極による局所的高電界について他の適用も可能である。
本明細書に組み入れられる添付図面は、本明細書の一部を形成する。図面は、本明細書と共に、提示されたシステムおよび方法の原理を説明し、提示されたシステムおよび方法を当業者が構成して使用することを可能にするためにさらに役立つ。図面中、類似する符号は、同一または機能的に類似する要素を示す。
典型的なエレクトロポレーション電極構造の概略図である。 隣接電極が小さい絶縁体によって分離されているマイクロ・エレクトロポレーション構造における電界線の概略図である。 本明細書に提示された一態様による電極構造の概略図である。 本明細書に提示された一態様による電極構造のプレパラートの概略図である。 図4(a)は、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造の概略図である。図4(b)は、細胞がない場合のモデル領域を示す。図4(c)は、細胞がある場合のモデル領域を示す。 マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルに発生した放射状に変化する電界を示す。 高さが小さくなるのに伴ってマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に存在する電界強度が大きくなる様子を示す。 Aの小さい値について、大きい無次元等電界線がより集束し、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さ全体に広がることを示す。 細胞がある場合に、無次元等電界線が、絶縁性の細胞膜に起因して小型化されている様子を示す。 細胞の半径が増加するにつれて指数関数的に増加する無次元電界強度に細胞が暴露される様子を示す。 モデル領域内での温度分布を示す。 モデル領域内を流れる電解液速度の矢印を示す。 電極間の電位差が0.1Vで高さが0.6μmのマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内を流れる腸管毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli)(ETEC、大腸菌(E.coli)の一種)の細胞を示す。 電極間の電位差が0.1Vで高さが4.2μmのマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内を流れる酵母菌の細胞を示す。 減少する無次元絶縁体の長さに対する絶縁長の中心線での表面からの高さ(Y)の関数として電界を示す。 大腸菌(E.Coli)がチャネル内で100ナノメートルの絶縁体を流過する際に大腸菌を横断して作り出された電界を示す。 酵母菌がチャネル内で100ナノメートルの絶縁体を流過する際に酵母菌を横断して作り出された電界を示す。 2次電流分布モデルのパラメータを示す表である。 X=0.5、Y=1における、様々な相対絶縁体厚さ(I)および領域のアスペクト比(A)についての無次元電界(NDE)強度を示す。 2次電流分布モデルにおける絶縁体の真上の中心線に沿った電界強度を示す。 特異部誘導マイクロ・エレクトロポレーション構造への電力入力が印加電圧および水導電率に依存する様子を示す。 ガルバニ・エレクトロポレーション装置を示す。 2次電流分布モデル領域の概略図を示す。 y中心線に沿った電界強度を示す。 負荷電圧の関数として電力密度を示す。
発明の詳細な説明
本明細書に提示されているのは、局所的高強度電界を電解液内に発生させることを可能にする、特異部ベースの電極構造である。本発明の文脈における特異点とは、その点または周囲の電位分布において不連続部が存在し、かつ、関心領域と接触する、点である。この不連続部は、設計限界では幾何学的寸法ゼロを有している。図1と図2Aおよび2Bとの間の比較は、それぞれ従来型の電極設計概念(図1)と本概念(図2Aおよび2B)との間の違いを示している。図1は、電解液の領域に電界を生成するために設計された典型的な構造を示す。典型的な構造では、関心領域は、電極と電極との間に制限される。電界は、電極間の電圧差に正比例し、電極間の距離に反比例する。電極間の距離を短縮することにより、および/または、電極間の電位差を増大することにより、関心領域における電界を増大することが可能である。原理的には、電極間の距離がゼロに達する限界では、電極間の有限電位差によって無限電界が生成され得る。しかし、関心領域は電極と電極の間であるため、電極間の距離がゼロである構造は実用性がない。
図2Aおよび2Bに示された新しい設計概念は、2つの電極が本質的に同じ平面上に配置され、電解液の関心領域の表面と境界を接することを提案する。アノードとカソードは、絶縁ギャップによって分離されている。本構造では、電解液と、アノード/絶縁体/カソードとの間の界面における局所的電界は、同様に、絶縁体の寸法、およびアノードとカソードとの間の電位差の関数である。しかし、この構造では、関心領域は、その外面が電極に隣接しており、電極間に制限されていない。その結果、絶縁体寸法の限界がゼロに達するような理想的な構造では、電極間の界面が特異点になり、電解液中において、電極間の無限小の最終的な電位差により、特異点において無限に高い電界が生成され得る。その結果、この構造は、小さな電位差を使用して関心領域に超高電界を発生することを実現し易くする。図2Aは、2つの電極間の特異点から出る一定電界の線を示すことにより、この設計の有用性を示している。図2Aは、特異部ベースの電極による影響を受ける領域がかなりの大きさであり、かつ、予測可能であることを示し、したがって、この電極設計は、関心領域において低電位差により高電界を生成するために使用され得る。
特異部ベースの構造を作製するために、マイクロテクノロジーおよびナノテクノロジーの進歩が用いられ得る。図3は、このような設計を例示する。当該設計は、ガラスなどの電気絶縁表面ベースの。金または白金のような導体をガラス表面に蒸着によって付着させる。付着層の厚さは、シングルナノメートルからシングルマイクロメートルにわたる場合がある。付着金属中、ガラス表面まで切り込みを作成することにより、電極間に絶縁ギャップを生成する。2つの電極およびギャップに面する構造体の表面に電解液を載置することができ、ギャップに高電界が生成される。
シングルミクロンの幅を持つ切り込みを作成するために、集束レーザービームが使用され得る。多数のリソグラフィック技術は、サブ100nmのフィーチャーを作成する能力があり、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に絶縁体を作るために使用され得る。液浸リソグラフィは、1より大きい屈折率を持つ液体を最終的なレンズとウェハとの間に配置するフォトリソグラフィ拡張技術である。今日の液浸リソグラフィ・ツールは、45nmを下回るフィーチャーサイズを作ることができる。さらに、移動する電子ビームを使用するリソグラフィの形式である電子ビームリソグラフィは、10nmより小さいフィーチャーを作り出し得る。
図2A、2Bおよび3に記載された設計は、多種多様の構造で使用され得る。典型的な構造は、1つの小さな絶縁体によって分離された2つの隣接電極の上に配置されるか又は流れる電解液から概ね構成されている。図2Aに示されるように、隣接電極間の小さい電位差の印加は、絶縁体から出て放射状に変化する電界を生じる。電界は、電解液中に懸濁された細胞をエレクトロポレーションするために使用され得る。
特異部ベースの電極設計を採用する多数の設計が考えられる。たとえば、ブレードの無菌性を維持する材料で撹拌ブレードを覆うことが可能であろう。あるいは、電界を生成することにより壁の滅菌を維持する設計で容器の壁を覆うことが可能であろう。
特異部ベースの設計はエレクトロポレーション用であるが、低電位差により高電界を電解溶液中で局所的に生成することができる利点は、脳深部インプラント、ペースメーカー、および他の医療用途で利用され得る。
特異部ベースの電極の様々な可能な用途のより詳細な例示として、「マイクロ・エレクトロポレーション」チャネルの形をした構造を、より詳細に例として説明する。図4(a)および5に示されるように、構造のコピーを設け、それを直列に配置することにより、複数の電界を有するマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルが形成される。このチャネル内を流れる細胞は、パルス状電界に暴露されることになる。この電界の強度は、チャネルの高さを変更することにより調整され得る。さらに、電解液の流速を調整することにより、電解液中に懸濁された細胞が暴露される電界の持続時間が変更される。
2次元定常状態1次電流分布モデルは、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルのジオメトリおよび細胞サイズが、流れる電解液中の電界に与える影響を理解するために、開発された。細胞がない場合、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さを減少させることにより、チャネルの中心における電界強度の指数関数的な増加がもたらされる。さらに、細胞は、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル壁に接近するほど、指数関数的に増加する電界強度に暴露される。
提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルは、従来型のマクロ・エレクトロポレーション装置およびマイクロ・エレクトロポレーション装置とは、いくつかの点で異なる。対向する電極を備えるエレクトロポレーション装置では、細胞の近接性は、細胞が暴露される電界強度とは無関係である。逆に、提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルでは、細胞とチャネル壁との間のギャップによって、細胞が暴露される電界強度が決定される。このため、細胞のサイズは、望ましい電界を達成するために必要とされる電位差に影響を与えない。
提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルと、従来型のマクロおよびマイクロ・エレクトロポレーション装置との間の別の違いは、必要とされる電気機器が少ないことである。従来型のマクロおよびマイクロ・エレクトロポレーション装置は、パルス発生器および電源を必要とする。しかし、提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルでは、一連の隣接電極が含まれるので、パルス発生器の必要性が除かれる。さらに、提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルは、小さい電位差だけを必要とするので、最小限の電力源(たとえば電池)が必要とされる。
エレクトロポレーションの単純さは、エレクトロポレーションを強力な技術にする。提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルは、エレクトロポレーションのアクセシビリティを向上させ、それを広範な非従来型用途に用いることを可能にする。
一態様では、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造が提供される。このチャネル構造は、通常、アノード電極、カソード電極、およびアノード電極とカソード電極との間に配置されている絶縁体を含む。アノード電極、絶縁体、およびカソード電極は、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの一側面に沿って同一平面上に位置付けられている。この構造は、チャネル内を、アノード電極、絶縁体、およびカソード電極を覆って流れる電解液をさらに含んでもよい。チャネル内の電解液の流量を切り替えるために流量制御システムが設けられてもよい。一態様では、絶縁体により、アノード電極がカソード電極から200nm未満または100nm未満だけ分離される。別の態様では、絶縁体により、アノード電極がカソード電極から約100nmだけ分離される。電池電力源がさらに設けられてもよく、パルス発生器の使用を回避する。
別の態様では、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造は、チャネルの第1のアノード電極とは反対の側面に位置付けられている第2のアノード電極、チャネルの第1のカソード電極とは反対の側面に位置付けられている第2のカソード電極、および第2のアノード電極と第2のカソード電極との間に配置されている第2の絶縁体を含む。第2のアノード電極および第2のカソード電極は、互いにほぼ同一平面上にある。したがって、この電極構造は、エレクトロポレーションのために細胞を通過させるチャネルを作る。さらに別の態様では、特異部ベースの電極構造を含む構造とイオン性物質とが、イオン性物質が載置されている平板または本質的に平板の形状で、一面において境界を接している、構造が提供される。
別の態様では、中にイオン性物質が据え置かれるかまたは流れるチャネルまたは容器の形状で、イオン性物質が特異部ベースの電極構造に取り囲まれている、構造が提供される。特異点での電界は、イオン性物質内の細胞に可逆的または不可逆的なエレクトロポレーションをもたらすのに適している可能性がある。可逆的電界は、50V/cm〜1000V/cm、100V/cm〜450V/cm、DCまたはACである。不可逆的電界は、50V/cm〜100,000V/cm、200V/cm〜30kV/cmである。
さらに別の態様では、マイクロ・エレクトロポレーションの方法が提供される。この方法は、通常、(1)隣接するアノード電極とカソード電極が絶縁体によって分離されている、同一平面上にある一連のアノード電極およびカソード電極を含むマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルを設ける段階、(2)マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に電解液を流す段階、(3)マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に細胞を流す段階、ならびに(4)隣接するアノード電極とカソード電極の間に電位差を印加する段階を含む。この方法は、(5)マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内の電解液の流量を切り替える段階、ならびに(6)アノード電極およびカソード電極を電池電力源につなぐ段階をさらに含んでもよい。個々の絶縁体により、アノード電極が隣接するカソード電極から、200nm未満、100nm未満、または約100nmだけ分離されてもよい。このような方法は、水殺菌または細胞トランスフェクションなどの用途に使用されてもよい。
別の態様では、アノード電極、カソード電極、およびアノード電極とカソード電極との間に配置されている絶縁体を備え、アノード電極、絶縁体、およびカソード電極がマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの一側面に沿って同一平面上に位置付けられている、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造が提供される。チャネル内を、アノード電極、絶縁体、およびカソード電極を覆って流れる電解液がさらに提供されてもよい。絶縁体により、アノード電極がカソード電極から5ナノメートル〜2ミクロンだけ分離されてもよい。マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造は、パルス電位、AC電位、ならびに電極およびイオン溶液を伴う電解反応により構成される群から選択される電力源をさらに備えてもよい。イオン溶液は、細胞、生組織、または死組織を含有する生理的溶液でもよい。一態様では、電力源は、電極につなげられ、調整可能な電界を作成するのに適切な電流供給を行うように構成されている。電界は、用途(たとえば、可逆的エレクトロポレーションまたは不可逆的エレクトロポレーション)に合うように調整されてもよい。一態様では、電界は、関心対象細胞に熱的損傷を引き起こすことなく、不可逆的エレクトロポレーションのために印加される。
従来型のマクロ・エレクトロポレーションおよびマイクロ・エレクトロポレーションは、提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルによって対処される欠点を有している。マクロ・エレクトロポレーションにおいて扱われる細胞が大量であるため、細胞透過化の程度は集団全体で異なる。マイクロ・エレクトロポレーションはこの問題に対処するが、それは典型的にスループットの低下をもたらす。チャネル・ジオメトリを用いて改変され得る提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルにおける集束型の電界は、細胞透過化について、マクロ・エレクトロポレーション装置よりも優れた制御を提供する。さらに、チャネルの貫流性(flow-through nature)は、チャネルを、大量の細胞を扱うのに適切なものにする。
提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルによって対処される別の欠点は、従来型のマクロおよびマイクロ・エレクトロポレーション装置では大きな電解誘導電位差が必要となる点である。大半のマクロおよびマイクロ・エレクトロポレーション装置は対向電極を有し、その結果、対向電極の分離距離に反比例する均一電界がもたらされる。マイクロ・エレクトロポレーション装置における分離距離は、典型的なエレクトロポレーション装置における分離距離より著しく小さいが、これらの分離距離は、細胞サイズによって制限される。そのため、望ましい電界を発生させるためには大きな電解誘導電位差が必要とされる。提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルは、小さな絶縁体によって分離された一連の隣接電極を備える。小さい非電解誘導電位差の印加は、小さい絶縁体から出て放射状に変化する一連の電界をもたらす。このため、小さい電力源(たとえば電池)だけが必要とされる。必要な電気機器を削減することにより、より広範な用途におけるエレクトロポレーションが可能となる。
潜在的な用途
無次元モデルは、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さを調整することによって多種多様のサイズの細胞を様々な電界強度に暴露することができることを示す。さらに、暴露時間を制御するために、電解液の流量が利用され得る。これらのパラメータは、複雑な電気機器の必要性なしに、細胞透過化の程度について多くの制御を可能にし、この概念を、水殺菌および細胞トランスフェクションを含む多くの潜在的な用途のために有用なものにする。
水殺菌
汚染水は、世界中の全死亡の4%(220万人)を占める下痢を含む多数の疾患を引き起こし得る。これらの死亡の大半は、5歳未満の子供達の間で起こり、開発途上国におけるこの年齢未満の子供の死亡全体のおよそ15%に相当する。殺菌および衛生介入は、下痢感染を4分の1から3分の1に低減することもあると推定されるが、これは特に、開発途上国の農村部において欠乏していることがある滅菌水の利用を必要とする。
腸管毒素原性大腸菌(ETEC、大腸菌の一種)は、長さ2μm、径0.5μmの棹状の糞便性大腸菌であり、開発途上国における細菌によって引き起こされる下痢の主な原因である。今日、ワクチン接種は、ETECによって引き起こされる下痢を予防する最も有効な方法である。しかし、ワクチンは、ETECが風土病である開発途上国において入手できない。
本明細書において提示された概念を使用する不可逆的エレクトロポレーションを使ってETECを破壊することが可能である。隣接電極間の電位差が0.1Vで高さが0.6μmのマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの中心を流れる水中のETEC細胞が、不可逆的エレクトロポレーションを誘起する1000〜10000V/cmの電界強度に暴露されることが、1次元形の1次電流分布モデルの結果により示される(図12)。これは、チャネルの中心を流れる細胞は、電極により接近して流れる細胞より、比較的低い強度の電界に暴露されることになるので、慎重な概算であることに注意すべきである。
細胞トランスフェクション
細胞トランスフェクションは、大きな分子(主として核酸およびタンパク質)を細胞に導入するプロセスである。これらの大きな分子は、典型的に、エレクトロポレーションのような化学的方法および物理的方法によって細胞膜に作られた一時的な細孔を通って細胞の中に入る。しかし、プロセスのバルク性のため、高いトランスフェクション効率および最低限の細胞死のために最適なエレクトロポレーションパラメータを決定することは困難である。従来型のマイクロ・エレクトロポレーションは、この問題を是正することもあるが、大量の細胞を扱うには適切ではない。
対照的に、本明細書において提示されたマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの貫流性は、該チャネルを、多数の細胞が暴露される電界の制御を維持しながら多数の細胞を扱うために理想的なものにする。酵母菌は、代表的な真核モデルとしての役目を果たす単純な細胞であるため、遺伝子研究において広く用いられる4μm径の細胞である。電極間電位が0.1Vで高さが4.2μmのチャネル内を流れる酵母菌細胞は、可逆的エレクトロポレーションを誘起する電界強度に暴露され、細胞のトランスフェクションのために必要とされる一時的な細孔を作り出すことが、1次元形の1次電流分布モデルにより示される(図13)。複数のマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルを互いの上に積み重ねることにより、一貫した電界を維持すると同時にスループットを向上させることが可能になるであろう。
以下の段落は、上記システムの例示的態様としての役目を果たす。記載された実施例は、特に断らない限り、理論実施例である。
実施例1のための用語
φ=電位
φa=アノード電位
φc=カソード電位
φ=電極間の電位差
L=活性電極の長さ
H=マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さの半分
r=細胞半径
Φ=無次元電位
Φa=無次元アノード電位
Φc=無次元カソード電位
X=無次元x座標
Y=無次元y座標
A=チャネルのアスペクト比
R=相対細胞半径
E=無次元電界
T=温度
Qgen=体積発熱
k=熱伝導率
ρ=密度
Cp=定圧比熱
u=x速度
σ=導電率
μ=動的粘度
p=圧力
図4(a)は、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造の概略図である。図4(b)は、細胞がない場合のモデル領域を例示する。図4(c)は、細胞がある場合のモデル領域を例示する。図5は、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に生成された放射状に変化する電界を示す。マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルのジオメトリおよび細胞サイズが、流れる電解液中の電界に与える影響を理解するために、2次元定常状態1次電流分布モデルが開発された。1次電流分布モデルは、電極表面での表面損失および濃度損失を無視し、電解液中のオーム損失による電界効果だけを考慮に入れる。したがって、1次電流分布モデルは、ラプラス方程式:
2φ=0
によって規定され、式中、φは電位である。さらに、電極表面は電位が一定であると仮定し、隣接電極表面での境界条件を
Figure 2013527009
Figure 2013527009
とし、式中、φaおよびφcはそれぞれアノードおよびカソードでの電位であり、φはアノードとカソードとの間の電位差であり、Lは活性電極の長さである。残りの対称境界は
Figure 2013527009
によって規定され、式中、Hはマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さの半分である。細胞膜の絶縁特性の故に、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内を流れる細胞は、対称境界と同じ電気的絶縁境界としてモデル化される。
1次電流分布モデルの無次元化
1次電流分布モデルは、電解液中の電界に対するマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルのジオメトリおよび細胞サイズの影響を解析するために無次元化された。2次元直交座標系でのラプラス方程式は
Figure 2013527009
である。
無次元変数:
Figure 2013527009
をラプラス方程式に代入すると、無次元形式:
Figure 2013527009
となる。無次元幾何学パラメータ(チャネルのアスペクト比):
Figure 2013527009
を定義すると、無次元ラプラス方程式は:
Figure 2013527009
になる。
境界条件への無次元変数の代入は、
Figure 2013527009
をもたらす。
最後に、球状細胞に対し、無次元細胞半径(相対細胞半径)は
Figure 2013527009
として定義され、式中、rは細胞半径である。
1次電流分布モデルの解
無次元1次電流分布モデルは、チャネルのアスペクト比(A)および相対細胞半径(R)によって特徴付けられる。これらのパラメータを一連のモデルにおいて変更することにより、パラメータ研究を行った。個々のモデルでは、有限要素解析ソフトウェアCOMSOL Multiphysics 3.5aを使用するため、無次元電位分布が解かれた。
E=∇Φ
として定義された無次元電界は、無次元電位分布を使用して計算された。
有限要素解を有効にし、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルジオメトリが電解液中の電界にどのような影響を与えるかをより良く理解するために、まずモデルから細胞を除いた。これらのモデルは、チャネルのアスペクト比のみによって特徴付けられ、単純化されたジオメトリを有している。この単純なジオメトリは、無次元ラプラス方程式の同次性および3つの対称境界と共に、変数分離法を使用する解析解を可能にした。解析解は、有限要素解の結果を検証するために使用された。有限要素解が検証されると、細胞がモデルに取り込まれた。
予備的な連成熱モデル
1次電流分布モデルに加えて、予備的な2次元定常状態連成熱モデルが流動電解液内の温度分布を決定するために開発された。3つのモデル:(1)対流・伝導モデル、(2)1次電流分布モデル、ならびに(3)ナビエ・ストークス・モデルが連成モデルを構成する。
x方向に伝導および対流がある2次元定常状態熱方程式は
Figure 2013527009
であり、式中、Tは温度であり、kは熱伝導率であり、ρは密度であり、Cpは定圧比熱であり、Qgenは体積発熱であり、uはx方向の流速分布である。体積発熱項Qgenは、電解液中のオーム加熱の結果であり、2次元では:
Figure 2013527009
によって規定され、式中、σは電解液の導電率であり、電位分布は1次電流分布モデルから決定される。さらに、x方向の流速分布uは、ナビエ・ストークス方程式を2つの水平方向無限平行板の間の定常流に適用することにより決定されて
Figure 2013527009
という結果になり、式中、μは電解液の動的粘度であり、∂p/∂xは一定圧力勾配である。
伝導・対流モデルの境界条件は、左領域境界での一定温度:
{x=0 0<y≦H}の場合、T=293K
と、それぞれチャネルの底および中心線における熱絶縁および熱対称性:
Figure 2013527009
と、右領域境界での連続性:
Figure 2013527009
とである。
連成熱モデルは、電極間の電位差が0.1Vで、電解液として水を用いる、高さ2μm(H=1μm)、長さ10μmのチャネルに対して、COMSOL Multiphysics 3.5aで解析された。速度プロファイルが式として対流・伝導モデルに入力され、この対流・伝導モデルは、モデル領域全体を通じて発熱項を決定するために1次電流分布モデルを使用した。このモデルで使用されたパラメータは、以下の表1に示される。
(表1)
Figure 2013527009
1次電流分布有限要素モデルの検証
無次元1次電流分布有限要素モデルは、解析解を用いて検証された。2つの解の無次元電位分布の間の相関係数は、チャネルのアスペクト比(A)の値0.1〜1についてMATLAB(R2007aバージョン7.4)で計算された。相関係数は、チャネルのアスペクト比のすべての値について、有限要素解と解析解とが同一であることを示す1であった。
細胞がない場合の無次元1次電流分布モデルの結果
細胞がない場合、モデルは、チャネルのアスペクト比(A)のみによって特徴付けられる。マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの中心において、チャネルのアスペクト比が減少するにつれて、無次元電界強度が指数関数的に増加する。図6は、より小さな高さを持つマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルに、より大きな電界強度が存在する様子を示す。さらに、チャネルのアスペクト比が小さい場合に、高強度の無次元等電界線が、より集束してチャネルの高さにまで広がる。図7は、Aが小さい値の場合に、大きい無次元等電界線がより集束し、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さ全体にまで広がることを示す。
細胞がある場合の無次元1次電流分布モデルの結果
電解液中の電界は、細胞の存在によっても影響を受ける。細胞膜の絶縁特性のために等電界線が小型化され、相対細胞半径(R)が減少するにつれて指数関数的に増加する電界強度に細胞が暴露される。図8は、細胞がある場合に、絶縁性の細胞膜のために、無次元等電界線が小型化される様子を示す。図9は、細胞半径が増加するにつれて指数関数的に増加する無次元電界強度に細胞が暴露される様子を示す。
連成熱モデルの結果
電解液中の温度分布は、図10に示される。最大温度293.00000059Kは絶縁体の場所にあり、電解液流に起因する対流熱伝達が明白である。さらに、電解液流の矢印プロットが図11に示される。圧力差が1kPaの場合の(マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの中心での)最大流体速度は、umax=0.0562m/sである。
これらの結果は、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さを調整することが、電極間の電位差を増加することなく、流動電解液中の電界強度の範囲を制御する方法であることを示す。細胞ありのモデルは、細胞がチャネル壁に接近するほど、細胞が暴露される電界強度が高くなることを示す。さらに、予備的な連成熱モデルは、流動電解液中における0.00000059Kの温度増加を示すが、これは熱的細胞損傷を引き起こすためには不十分である。
隣接電極を分離する絶縁体の長さを変えることは、電解液中の電界に影響を与えることになることに注意すべきである。より具体的には、絶縁体の長さを増加させることによって、電解液全体の電界強度が減少することになる。
本発明において検討された構造において、電圧源間の絶縁性の特異部の寸法が、限界であるゼロに近づく場合に、理論上の最大電界が生成され得る。生成された電界に絶縁性ギャップの厚さが与える影響は何であるかを評価するために、同じ解析方法が使用された。その結果は、技術的に達成可能な100ナノメートルのギャップが望ましい影響を生じ得ることを示す。
このモデルは、アスペクト比が0.1の場合に無次元絶縁長(絶縁長/領域長)が0.01から0.1まで変動する前述の実施例において説明されたモデルと同様になされた。無次元絶縁長は、アスペクト比で割ることにより領域の高さまで縮尺され得る。図14は、様々な絶縁厚さに対するX=0.5での無次元電界(EF)強度を示すプロットである。換言すると、図14は、減少する無次元絶縁体の長さに対する、絶縁長の中心線における表面からの高さYの関数として、電界を示す。
図15は、大腸菌がチャネル内で100ナノメートルの絶縁体を流過する場合に大腸菌を横断して作り出された電界を示す。図15は、前述の実施例の大腸菌および酵母菌に対する現実的な絶縁長を考慮する具体的な適用を示す。結果は、それぞれIRE誘導電界およびRE誘導電界が100nmの絶縁体を使って依然として作り出されることを示す。この場合、活性電極の長さは、結果に影響を与えない5μmである。要約すると、大腸菌モデルの場合はH=0.3μm、L=5μmおよびIL=100nmであり、酵母菌モデルの場合はH=2.1μm、L=5μmおよびIL=100nmである。
酵母菌に対するこれらの結果は、図16に与えられる。図16は、酵母菌細胞がチャネル内を流れて100ナノメートルの絶縁体を通り越す際に該細胞を横断して作り出された電界を示す。
本実施例は、実施例1および実施例2に類似している。しかし、実施例3は新しい概念を取り入れる。絶縁体を横断する電位差は非常に小さいものであり得るので、この電位差は、絶縁体によって分離されかつ導電性媒体を通じて電気的に接触している2つの異なる金属間の電解を通じても生成され得る。この構造は、単一細胞マイクロ・エレクトロポレーション装置およびマイクロ電池について、前例のない小型化を可能にし得る。さらに、個々の用途は独立しているが、これらの用途を組み合わせることにより、電解を通じて、電力入力なしで単一細胞マイクロ・エレクトロポレーションを実行することが可能である。このプロセスでは、電力を生成することさえ可能である。
電気化学セルは、化学反応から電気エネルギーを供給することができる装置(ガルバニ電池)であるか、または逆に、電気エネルギーの入力から化学反応を容易にすることができる装置(電解槽)である。すべての電気化学セルは、少なくとも、(1)化学反応が起こる2つの電極、(2)イオン伝導のための電解液、および(3)導通のための外部導体により構成される。一方の電極(アノード)で酸化(電子の放出)が起こり、もう一方の電極(カソード)で還元(電子の獲得)が起こる。
アノードおよびカソードは共に、それぞれの化学反応に依存する特性電位を有している。これらの特性電位の差は、共役化学反応が実行できる仕事(ガルバニ電池)の量または共役化学反応を反転するために必要な仕事(電解槽)の量のいずれかを決定づける。これは、熱力学的には、一定温度および圧力において、ギブス自由エネルギーの変化:
ΔG=−nFΔφセル
によって記述され、式中、nは移動させられた電子の化学量数であり、Fはファラデー定数であり、Δφセルは共役反応の電位差である。ギブス自由エネルギーの負の変化は、化学反応が好ましいものであり、仕事(ガルバニ電池)を実行することができることを意味する。逆に、ギブス自由エネルギーの正の変化は、進めるためには仕事入力を必要とする好ましくない反応(電解槽)を意味する。
ギブス自由エネルギーは熱力学的量であるため、平衡状態にあるシステムを記述するためにのみ役立つ。動作中の電気化学セルでは電流の通過が起こり、これは、システムが平衡状態ではないことを意味する。電流の通過は、電気化学セル内に電位降下を引き起こし、結果として、平衡状態で観測される電位差からずれた電位差を生じる。このずれは過電圧と呼ばれ、3種類の損失:(1)表面、(2)濃度、および(3)オームを原因とすることがあり得る。
表面損失は、電極表面での反応速度制限に起因して起こる。これらの反応速度制限は、典型的に、質量移動、電極表面での電子移動、電子移動の前または後の化学反応、および、その他の表面反応によって決定される。
濃度損失は、質量移動制限によって引き起こされ、その結果、電極表面での電荷キャリアの欠損をもたらす。この欠損は、電極表面とバルク電解液との間に電位降下を引き起こす濃度勾配を確立する。
オーム損失は、主に、電解液中のイオン電流の流れに関連する。これは、オームの法則:
i=−k∇φ
によって決定され、式中、iはイオン電流であり、kは電解液の導電率であり、φは電位である。したがって、所定の電流に対し、電解液の導電率は、電解液中のオーム電位降下に著しく影響を与える。
無電力単一細胞マイクロ・エレクトロポレーション
典型的なエレクトロポレーションおよびマイクロ・エレクトロポレーションは、手法は単純であるが、これらはどちらも少なくともパルス発生器および電源を必要とし、実験室または工業設置環境以外での技術のアクセシビリティを制限する。この電気機器を排除することにより、エレクトロポレーションは、開発途上国における汚染水中の病原体の破壊などの小規模で広範囲に及ぶ現実的な問題に対処することが可能になるであろう。
本明細書に提示されているのは、パルス発生器なしで、かつ、最小限の外部電力入力または外部電力入力なしでエレクトロポレーションを実行する電気化学セル構造である。この電気化学セル構造は、小さい絶縁体によって分離された、一連の2つの隣接した異なる金属電極の傍を流れる電解液で構成される。この構造が非平衡状態にある場合、小さい絶縁体から出て放射状に変化する電界が流動電解液中に存在する。これらの電界は、電解液中に懸濁されているか、または、表面上で成長する生物細胞をエレクトロポレーションする。
提示された概念の最重要点は、エレクトロポレーションを実行するために電解液中のオーム電位降下を利用することである。このオーム電位降下は、電解液中に、所定の位置における局所電位の負勾配として定義される電界:
E=−∇φ
をもたらす。
したがって、電解液中の電界を最大化するために、(1)電解液中の電位降下が増加される必要があるか、または、(2)短い距離で電位降下が起こる必要がある。電解槽では、システムに入力されるエネルギーを調整することにより電解液中の電位降下を増加させることは、比較的容易である。しかし、この概念の最終的な目標は電力入力なしでエレクトロポレーションを実行することであるため、電解液中の電位降下をほとんど制御しないガルバニ電池の利用が必要である。したがって、電解液中の電解強度を増加するためには、電気化学セルのジオメトリを変えることが必要である。
本実施例は、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション(ナノメートル・スケールの絶縁体を使って隣接電極を分離させることにより、エレクトロポレーションを誘起するために必要な電位差を最小化することを意図した、エレクトロポレーション構造)の実現可能性を実証する。詳しくは、本実施例は、(1)絶縁体厚さおよび(2)電極反応速度が特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造における電界分布に及ぼす影響を理解することを意図した調査を提示する。マイクロ・エレクトロポレーションの無次元1次電流分布モデルは、依然として、マイクロ加工技術を使って作製するのに十分な厚さの絶縁体を使って実行することができる。さらに、内部白金電極および水電解液を使った特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造の2次電流分布モデルは、エレクトロポレーションを実行するために大きな電位差を必要とする程度までは、電極反応速度が電荷移動を阻害しないことを示す。これらの結果は、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションが、最小限の電力を消費するエレクトロポレーション・システムを開発するために使用され得ることを示しており、それにより、マイクロ・エレクトロポレーション・システムは、水および他の液体の殺菌などの大きく異なる用途に適したものとなっている。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションと称される構造は、1つの小さい絶縁体によって分離された2つの隣接電極およびその上の電解液で構成されている。隣接電極間の小さい電位差の印加は、結果として、小さい絶縁体から出て放射状に変化する電界をもたらす(図2A)。細胞膜のほんの一部に沿って電界を印加することによりエレクトロポレーションを誘起できることが示されているので、この放射状に変化する電界は、電解液中に懸濁する細胞をエレクトロポレーションするために使用され得る。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションを利用するマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルまたは他の装置を実施するためには、この構造の現実的な実現可能性についてさらに解析すべきである。特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造における電界分布に対する(1)絶縁体厚さおよび(2)電極反応速度の影響を理解することは、特に重要である。
絶縁体は、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造における最小のフィーチャーである。このため、絶縁体は、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造を利用する装置の実施を制限する要因のうちの一つである。マイクロ加工技術を用いて作製するのに十分な厚さの絶縁体が、エレクトロポレーションを誘起する電界強度を小さな電位差で発生させることができることを確実にするためには、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造における電界分布に対する絶縁体厚さの影響を解析すべきである。
最低限の電力源(たとえば電池)だけを使って特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションを実行するためには、直流電流が電極から電気化学反応を介して電解液まで移動されなければならない。このため、電極での電気化学反応の反応速度は、電流伝達を阻害し得る。特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションについて、電流伝達の阻害の主要な意味は、エレクトロポレーションを誘起する電界強度を発生させるためには非常に大きな電位差が必要となり得るということである。それが当てはまらないことを確実にするためには、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造における電界強度に対する電極反応速度の影響を調べることが必要である。
本実施例では、(1)マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルに対する絶縁体厚さの影響を解析するために改変された無次元1次電流分布モデルと、(2)白金電極および水電解液を備える特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造の2次電流分布モデルとが提示される。これらのモデルの主な目的は、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションの実現可能性をさらに評価することである。さらに、2次電流分布モデルは、電界分布、および、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造の電力入力に対する水の導電率および印加電圧の影響を調べるために使用される。
マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルに対する絶縁体厚さの影響を解析するための改変された無次元1次電流分布モデル
マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの電解液中の電界に対する絶縁体厚さの影響を解析するために、本発明者らが以前に開発した2次元定常状態1次電流分布モデルを無次元化した。
このモデルは、電極表面での表面損失および濃度損失を無視するので、ラプラス方程式:
2φ=0
によって決定され、式中、φは電位である。さらに、電極表面は、一定電位にあると仮定され、隣接電極表面での境界条件:
φa=φ
φc=0
を満たし、式中、φaおよびφcは、それぞれアノードおよびカソードでの電位であり、φは、これらの間の電位差である。残りの境界は、絶縁/対称境界であり、
∇φ=0
によって決定される。無次元変数:
Figure 2013527009
を2次元直交座標系でのラプラス方程式に代入すると、
Figure 2013527009
となる。
上記式において、Lは活性電極の長さであり、Hはマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの高さの半分である。無次元幾何学パラメータ(アスペクト比):
Figure 2013527009
を定義すると、無次元ラプラス方程式は、
Figure 2013527009
になる。無次元変数を境界条件に代入すると、
Φa=1;Φc=0;∇Φ=0
となる。
最後に、無次元絶縁体厚さ(相対絶縁体厚さ)は、
Figure 2013527009
として定義される。
モデル解
無次元1次電流分布モデルは、アスペクト比(A)および相対絶縁体厚さ(I)によって特徴付けられる。一連のモデルにおいてIおよびAを変更することにより、パラメータ研究を行った。個々のモデルでは、MATLAB(R2007a、バージョン7.4)に実装された有限差分法を使用するため、無次元電位分布が解かれた。
NDE=∇Φ
として定義された無次元電界は、無次元電位分布を使用して計算された。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションの2次電流分布モデル
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションに対する電極反応速度の影響を解析するために、2次元定常状態2次電流分布モデルが開発された。1次電流分布モデルと同様に、2次電流分布モデルは、バルク電解液内のオーム損失に由来する電界効果を考慮するので、この領域ではラプラス方程式(式1)によって決定される。しかし、1次電流分布モデルとは異なり、2次電流分布モデルは電極表面での反応速度損失を考慮する。反応速度損失は電極表面での電位に強く依存するので、隣接電極表面での境界条件は、
ja=−σ∇φa=f(ηs,a
jc=−σ∇φc=f(ηs,c
であり、式中、jaおよびjcは、それぞれ、アノードおよびカソードでの電流密度であり、σはバルク電解液の導電率であり、ηs,aおよびηs,cは、それぞれアノードおよびカソードでの表面過電圧である。過電圧は、電極表面での平衡電位からのずれを表し、
η=φ−E0
として定義され、式中、E0は、標準状態(典型的には293K、1atm)での電気化学反応に関する平衡電位である。
電極反応速度モデル
濃度損失を無視すると、電極表面での電流と電位の関係は、バトラー・ボルマー・モデルの変形版:
Figure 2013527009
によって一般に記述される。
概念的に、第1項は、所定の電位での正味電流へのアノード(還元)の寄与を記述し、第2項は、正味電流へのカソード(酸化)の寄与を記述する。このことを考慮に入れると、バトラー・ボルマー・モデルにおける変数は、次のとおりである。
交換電流密度j0。交換電流密度は、アノードの寄与とカソードの寄与とが等しく、その結果、正味電流を生じない電流密度である。
個々の反応が起こるために必要とされるエネルギーをそれぞれ記述する、アノード移動係数αaおよびカソード移動係数αc
電極の平衡電位からの電極電位のずれである、表面過電圧ηs
ファラデー定数F(96500C/mol)。
普遍気体定数R(8.314J/mol-K)。
電極反応の温度T(K)。
交換電流密度、ならびにアノード移動係数およびカソード移動係数は、典型的には電流-電位データをバトラー・ボルマー・モデルに当てはめることによって、実験的に決定される。しかし、場合によっては、電流電位データをより単純な形式(すなわち直線)に当てはめることがより好都合である。
電流密度境界条件の開発
エレクトロポレーションのための電界を発生させるためには、電界を細胞懸濁液に印加しなければならない。不可逆性に起因する電位損失(E損失)のため、印加電圧(V印加)は、電気化学セルの平衡電位(Eeq)より大きくしなければならない[33]。
V印加=Eeq+E損失
電気化学セルの平衡電位は、標準状態でのアノード還元平衡電位とカソード還元平衡電位(それぞれ、E0 aおよびE0 c)の差:
Eeq=E0 a−E0 c
である。
不可逆的損失は、3つの分類:1)緩慢な電極反応速度による表面損失、2)質量移動限界による濃度損失、および3)電解液中のオーム損失を有している。
2次電流分布モデルにおいては濃度損失が無視されるので、不可逆的損失は、
E損失=ηs,a−ηs,c+Δφオーム
として表現することができ、式中、Δφオームは電解液中のオーム損失であり、
Δφオーム=φa−φc
にさらに分解することができる。
式を組み合わせると、結果として、
V印加=Eeq+ηs,a−ηs,c+φa−φc
が得られ、これは、不可逆的損失を補償するために電気化学セルに印加されるべき電圧のより詳細な関係を提供する。反応速度モデルは、電極表面での正味電流密度を表面過電圧の関数として提供するので、アノードおよびカソードでの表面過電圧を取得するために、上記方程式を分離することができる。
ηs,a=V印加−Eeq−φa
ηs,c=−φc
これらの関係を改変版のバトラー・ボルマー方程式に代入することにより、アノードおよびカソードでの表面電位がそれぞれの電流密度に関係付けられ、陰的数値解法が可能になる。
Figure 2013527009
モデルパラメータ
2次電流分布モデルで使用されるパラメータは、図17の表に概説されている。
2次電流分布モデル領域は、図4(b)に示される。この領域は、長さが10ミクロンであり、厚さ100ナノメートルの絶縁体を有し、高さが20ミクロンである。前の結果は、領域の高さが減少することにより電界強度が指数関数的に増加することを示すので、領域の高さは、電極反応速度を考慮する場合に生じ得る最低限の電界強度を決定するのに十分に大きいものとされた。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造を水殺菌に使用したい場合、バルク電解液は水である。水の導電率は、典型的には0.0005〜0.05S/mまでさまざまである。
アノードおよびカソードは、不活性白金電極としてモデル化される。水の場合、電極表面で起こる電気化学反応は、水電解中の電気化学反応と同一である。アノードでは、水は酸化される。
2H2O⇔O2(気体)+4H+(aq)+4e-
標準的な条件下で、この反応は、還元平衡電位(E0 a)1.23Vと交換電流密度(ja,0)1028A/m2とを有している。さらに、移動係数(αa,aおよびαa,c)は0.5であると仮定された。カソードでは、水は還元される。
4H2O+4e-⇔2H2(気体)+4OH-(aq)
標準的な条件下で、この反応は、還元電位(E0 c)−0.83Vと交換電流密度(jc,0)10A/m2とを有している。アノードでの水酸化反応と同様に、移動係数(αc,aおよびαc,c)は0.5であると仮定された。その結果、白金-水の特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション・システムにおける正味反応は、
2H2O⇔2H2(気体)+O2(気体)
である。
標準的な条件下で、この反応は、水中に電界分布を発生させるために超えられるべき平衡電位(Eeq)2.06Vを有している。
生理食塩水は水性溶液であるため、これらの電気化学反応は、より従来型のエレクトロポレーション・システムに同様に適用できることに注意すべきである。したがって、この2次電流分布モデルは、バルク電解液の導電性を変更することにより、生理食塩水溶液中の特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションを解析するために容易に改変され得る。
モデル解
2次電流分布モデルは、水電解液の導電率(s)、および電気化学セルに印加された電圧(V印加)による影響を受ける。一連のモデルにおいてこれらのパラメータを変更することにより、パラメータ研究を行った。個々のモデルでは、有限要素解析ソフトウェアCOSMOL Multiphysics 4.0aを使用するため、電位分布が解かれた。
E=∇φ
として定義された電界は、電位分布を使用して計算された。さらに、アノードまたはカソード境界での電流密度を積分することにより、モデルを通る全電流(j)が決定された。モデルを通る全電流を使用して、
P=jV印加
として定義された電力入力が計算された。
絶縁体厚さの影響を解析する無次元1次電流分布モデル
無次元1次電流分布モデルの結果は、相対絶縁体厚さ(I)の減少がマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの中心で無次元電界(NDE)の強度を増加させることを示す(図18)。より詳しくは、相対絶縁体厚さに起因する無次元電界強度の増加の程度は、アスペクト比(A)に依存する。低アスペクト比の場合、相対絶縁体厚さの減少は、無次元電界を実質的に増加させる。アスペクト比0.1で相対絶縁体厚さを0.9から0(特異部)に減少させると、結果として、無次元電界強度が413%増加する。逆に、高アスペクト比の場合、相対絶縁体厚さの減少は、無次元電界をごく僅か増加させる。アスペクト比2で相対絶縁体厚さを0.9から0に減少させると、結果として、無次元電界強度が115%増加する。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションの2次電流分布モデル - 電界分布に対する水の導電率および印加電圧の影響
水の導電率(s)および印加電圧(V印加)は、共に、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造における電界分布に影響を与える。3.2V未満の印加電圧では、低導電率水は、高導電率水より実質的に大きい電界強度を含む(図19)。たとえば、印加電圧2.7Vでは、絶縁体の中心における電界強度は、水の導電率0.05、0.005、および0.0005S/mで、それぞれ、0.06、0.38、および1.64kV/cmである。さらに、2.8V未満の印加電圧では、印加電圧の増加は、水中の電界強度を指数関数的に増加させる。逆に、2.8Vより高い印加電圧では、電界分布は一定になり、水の導電率とは独立になる。印加電圧3.5Vでは、絶縁体の中心における電界強度は、水の導電率0.05、0.005および0.0005S/mで、それぞれ、26.4、33.1、および39.8kV/cmである。
電力入力に対する水の導電率および印加電圧の影響
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造への電力入力は、水の導電率および印加電圧にさらに依存する(図20)。〜2.6V未満の印加電圧では、電力入力は水の導電率と独立であり、印加電圧に伴って指数関数的に増加する。たとえば、印加電圧2.4Vでは、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造への電力入力は、水の導電率0.05、0.005、および0.0005S/mで、それぞれ、1.09、1.05、および0.92x10-5μW/cm2である。逆に、〜2.6Vより大きい印加電圧では、電力入力は一定になり、水の導電率に非常に依存する。低導電率水(0.0005S/m)を使う特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造は、印加電圧3.5Vで少なくとも電力入力0.23μW/cm2を必要とする。特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造によって必要とされる電力入力は、水の導電率に伴って実質的に増加する。水の導電率が0.005および0.05S/mの構造は、それぞれ1.93および16.20μW/cm2を必要とする。
絶縁体厚さの影響
無次元1次電流分布モデルの結果は、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの現実的な実現可能性を実証する。本発明者らの以前の研究では、絶縁体厚さの増加がマイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの電解液の全体に亘って電界強度を減少することを予測した。本発明者らの結果は、この予測を定量的に支持するが、エレクトロポレーションを誘起する電界は、マイクロ加工技術を用いて作るのに十分な絶縁体厚さで発生し得ることをさらに示す。たとえば、活性電極の長さ(L)が10mmであり、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル高さ(2H)が2mmであり、絶縁体厚さ(i)(A=0.1、I=0.01の場合の無次元データ)が100nmであるマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に電位差0.5Vを印加することは、10kV/cmを超える電界強度を発生させることがあり、これらは不可逆的エレクトロポレーションを誘起するのに十分である。多数のリソグラフィック技術は、サブ100nmのフィーチャーを作成する能力があり、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に絶縁体を作るために使用され得る。液浸リソグラフィは、1より大きい屈折率を持つ液体を最終的なレンズとウェハとの間に配置するフォトリソグラフィ・エンハンスメント技術である。今日の液浸リソグラフィ・ツールは、45nmを下回るフィーチャーサイズを作ることができる。さらに、移動する電子ビームを使用するリソグラフィの形式である電子ビームリソグラフィは、10nmより小さいフィーチャーを作り出し得る。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションの2次電流分布モデル
電気化学反応は、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションを実行するために、電極から電解液に直流電流を伝達しなければならない。電気化学反応の反応速度は、エレクトロポレーションを誘起する電界強度を発生させるために、電流伝達を阻害し、場合によっては非常に大きい電位差を必要とするかもしれない。したがって、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション・システムを実施する実現可能性を適切に解析するためには、電界強度に対する電極反応速度の影響を理解しなければならない。白金電極および水電解液を使う特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造の2次電流分布モデルは、電極反応速度を考慮に入れる。このモデルの結果は、(1)特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション・システムを実施する現実的な実現可能性を実証し、(2)システムの電界強度の上限を予測し、(3)望ましい電界分布を取得するために必要な電力入力を最適化するデータを提供する。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション・システムを作る現実的な実現可能性は、白金電極および水電解液を使う2次電流分布モデルの結果によって実証される。これらの結果は、可逆的(1〜3kV/cm)エレクトロポレーションおよび不可逆的(10kV/cm)エレクトロポレーションを誘起するために必要とされる電界を超える電界が白金電極を使って水中に発生させられ得ることを示す。たとえば、導電率0.0005S/mの水では、2.8V(Eeqを0.7V上回る)程度の印加電圧は、絶縁体表面の近くに可逆的エレクトロポレーションを誘起するのに十分な電界を発生させ得る。印加電圧を0.1V増加させることは、絶縁体表面の近くに不可逆的エレクトロポレーションを、そして、絶縁体から〜0.7μmまでの距離に可逆的エレクトロポレーションを誘起することができる電界を発生させる。より高い導電率の水(0.005または0.05S/m)では、より低い電界強度が存在するが、印加電圧の微かな増加によって、同様の可逆的および不可逆的エレクトロポレーションを誘起する電界が生じる。
図19に示された傾向は、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション・システムに発生させられ得る電界強度の上限が存在することを示す。このシステムに対し、アノード電気化学反応の低交換電流密度(j0,a)は、システムを通る電流を制限する。結果として、印加電圧が増加する場合、水の導電率は電界分布にさほど影響を与えない。さらに、大きな印加電圧では、印加電圧の増加は極僅かしか電界分布を変更せず、このシステムを使って発生させられ得る電界強度の上限を示す。絶縁体の近くでは、上限の電界強度は、可逆的および不可逆的エレクトロポレーションを誘起するために必要とされる強度を十分に上回る。しかし、絶縁体から離れて大きい電界強度が必要とされる場合、その上限は重要な設計検討事項になり得る。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションの2次電流分布モデルは、システムへの電力入力を最適化するために使用され得る。前述のとおり、大きい印加電圧では、水の導電率は極僅かに影響力があり、印加電圧が増加するのに伴って電界分布は一定になる(図19)。図20は、電力入力が、大きい印加電圧では同様に一定になるが、実質的に水の導電率に左右されることを示す。一般に、低導電率水(0.0005S/m)は、最小の電力入力で最大の電界強度を発生させ、高導電率水(0.05S/m)は、最大の電力入力で最小の電界強度を発生させる。その結果、水の導電率を減少させることは、システムへの電力入力を最適化する最も効果的な方法である。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーションの2次電流分布モデルを開発するため使用される方法は、多種多様のエレクトロポレーション装置をモデル化するために使用され得ることに注意すべきである。適切な電極反応速度パラメータを用いて、多数の電極材料およびエレクトロポレーション構造が調査され得る。これらの方法は、電解液全体に電界分布を提供することにより実験的な研究に役立つことになる。さらに、これらの方法は、多種多様の用途に対するエレクトロポレーション・システムの最適設計を実現し易くすることになる。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造は、従来型のマクロ・エレクトロポレーション装置およびマイクロ・エレクトロポレーション装置を上回る多数の利点を提供する。対向電極を備えるエレクトロポレーション装置では、細胞の近接性は、細胞が暴露されることになる電界強度とは関係がない。逆に、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造では、細胞が暴露される電界強度は、この構造の表面と細胞との間のギャップによって決定される。このため、細胞のサイズは、望ましい電界を達成するために必要とされる電位差に影響を与えない。
従来型のマクロ・エレクトロポレーション装置およびマイクロ・エレクトロポレーション装置を上回る特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造の別の利点は、必要とされる電気機器がより少ないことである。従来型のマクロ・エレクトロポレーション装置およびマイクロ・エレクトロポレーション装置は、パルス発生器および電源を必要とする。しかし、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルにおいて行われるように、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造を直列に配置することにより、パルス発生器の必要性が除かれる。さらに、2次電流分布モデルによって確認されるように、小さい電位差だけが必要とされる。このため、最低限の電力源(たとえば電池)だけが必要とされる。
特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション・システムの現実的な実現可能性は、発生される電界分布に対する絶縁体厚さおよび電極反応速度の影響を検査することによって評価された。これらの影響を理解するために、2つのモデル:(1)マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの改変された無次元1次電流分布モデル、ならびに(2)白金電極および水電解液を使う特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造の2次電流分布モデルが開発された。
以前に開発された無次元1次電流分布モデルは、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの電界分布に対する絶縁体厚さの影響を解析するために改変された。絶縁体厚さを増加することは、絶縁体の中心の直ぐ上にある電界強度を指数関数的に減少させ、電解液中の高強度電界の浸透を妨げる。しかし、高強度電界は、MEMS製造技術を用いて作られるために十分な厚さの絶縁体を使ってもなお発生させられ得る。したがって、絶縁体厚さは、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション・システムを作る現実的な実現可能性を妨げない。
白金電極および水電解液を使う特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション構造の2次電流分布モデルは、水中の電界分布に対する電極反応速度の影響を検査するために開発された。このモデルの結果は、可逆的(1〜3kV/cm)エレクトロポレーションおよび不可逆的(10kV/cm)エレクトロポレーションを誘起するために必要とされる電界強度を超える電界強度が白金電極を使って水中に発生させられ得ることを示す。これは、特異部誘起型マイクロ・エレクトロポレーション装置を実施する現実的な実現可能性をさらに実証する。さらに、2次電流分布モデルは、低印加電圧では、より低い導電率の水の中に顕著により大きい電解強度が存在することを示す。まず、印加電圧が増加するにつれて、水中における電界強度が指数関数的に増加する。しかし、大きい印加電圧では、印加電圧の増加は、水の導電率とは無関係に、電界強度をごく僅かしか変更しない。さらに、大きい印加電圧では、所要の電力入力は、水の導電率に極めて依存する。したがって、低導電率水は最小の電力入力で最大の電界強度を発生させ、高導電率水は最大の電力入力で最小の電界強度を発生させると結論付けることができる。
本実施例は、特異部誘起型ナノ・エレクトロポレーション構造を使用する電源内蔵式(ガルバニック)エレクトロポレーション装置を作る実現可能性を実証する。この構造を使用することにより、ガルバニ電気化学セル内の電界を増幅することができ、エレクトロポレーションのために使用することができる。電源内蔵式エレクトロポレーション装置の2次電流分布モデルは、装置が可逆的および不可逆的の両方のエレクトロポレーションを誘起する電界強度を作り出し、かつ少量の電力を発生させ得ることを示す。発生された電力を多種多様の用途のために回収することもできるだろう。
特異部誘起型ナノ・エレクトロポレーション構造は、小さな電位差で高強度電界を発生させ得るので、外部電力源を必要としないエレクトロポレーション装置を作るためにこの構造を使用することが可能であると考える。提示されているのは、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置と呼ばれるガルバニ・エレクトロポレーション装置である。電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置は、ガルバニ電気化学セルのオーム降下によって作り出された電界分布を増幅するために特異部誘起型ナノ・エレクトロポレーション構造を使用することになる。この電界分布は、エレクトロポレーションを実行するために使用され得る。
エレクトロポレーション装置は、より大きい電界強度を発生させるために電解液中のオーム降下を最大化することを意図した電気化学セルである。今日まで、すべてのエレクトロポレーション装置は、著しいオーム降下および結果として生じる電界を電解液中に発生させるために電流が供給される電解電気化学セルであった。逆に、ガルバニ電気化学セルは、化学反応を電流に変換する。これらの化学反応は、典型的には、2つの異種材料電極、すなわち、それぞれ酸化および還元が起こるアノードおよびカソードに現れる。アノードおよびカソードは、アノードとカソードの間にイオン電流を伝導する電解液によって分離される。ガルバニ電気化学セルから電流が引き出されると、電解液中に小さい電位分布が現れ、結果として、エレクトロポレーションを実行するために使用され得る電界が生じる(図21)。
本明細書では、アルミニウムアノードと、空気カソードと、水電解液とからなる電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置の2次電流分布モデルが提示される。このモデルの主な目的は、エレクトロポレーションを誘起する電界強度の発生を見せることにより、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーションの実現可能性を実証することである。詳しくは、このモデルは、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置内の電界分布に対する水の導電率および負荷電圧の影響を決定するために使用される。さらに、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置は、ガルバニ電気化学セルであるので、装置の電力出力もまた調べられる。
2次電流分布モデルは、アルミニウム-空気化学反応を利用する電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置の電界強度および電力出力特性を決定するために開発された。
2次電流分布モデル領域を図22に示す。前の結果は、モデル領域のアスペクト比の減少が領域全体の電界強度を著しく増加させることを示した。したがって、幾何学的電界増強を最小化するために、領域の高さ20μmおよび長さ10μmに対応するアスペクト比が2のモデル領域を、2次電流分布モデルのために使用した。さらに、マイクロ加工技術を用いて作るのに十分に大きい厚さ100nmの絶縁体が使用された。
2次電流分布モデルは、バルク電解液中でのオーム降下と、電極表面での反応速度損失とを考慮に入れる。したがって、バルク電解液領域は、ラプラス方程式:
2φ=0
によって決定され、式中、φは電位である。電極表面での電位に依存する反応速度損失を考慮するため、隣接電極での境界条件は、
ja=−σ∇φa=f(ηs,a
jc=−σ∇φc=f(ηs,c
であり、式中、jaおよびjcは、それぞれアノードおよびカソードでの電流密度であり、σはバルク電解液の導電率であり、ηs,aおよびηs,cは、それぞれアノードおよびカソードでの表面過電圧である。過電圧は電極表面での平衡電位からのずれを表し、
η=φ−E0
として定義され、式中、E0は、標準状態(典型的には293K、1atm)での電気化学反応の平衡電位である。残りの境界は、絶縁/対称境界であり、
∇φ=0
によって決定される。
電流密度と電極表面電位の関係は、典型的には実験データを当てはめることによって得られる。水中におけるアルミニウムアノードでの1次電気化学反応は、
Al+3OH-⇔Al(OH)3+3e-
である。
さらに、水中において、アルミニウムアノードに付加的な寄生反応:
Al+3H2O⇔Al(OH)3+3/2H2
が存在する。
これらの反応を考慮に入れて、アルミニウムアノードの反応速度パラメータは、分極曲線をバトラー・ボルマー方程式:
Figure 2013527009
に当てはめることによって決定された。
概念的に、第1項は、所定の電位での正味電流へのアノード(還元)の寄与を記述し、第2項は、正味電流へのカソード(酸化)の寄与を記述する。このことを考慮に入れると、バトラー・ボルマー・モデルにおける変数は、次のとおりである。
アノード交換電流密度j0,a。交換電流密度とは、アノードの寄与とカソードの寄与が等しく、結果として正味電流を生じない電流密度である。個々の反応が起こるために必要なエネルギーをそれぞれ記述する、アノードにおける、アノード移動係数αa,aおよびカソード移動係数αa,c
用語
電極の平衡電位からの電極電位のずれである、アノードでの表面過電圧ηs,a
ファラデー定数F(96500C/mol)。
普遍気体定数R(8.314J/mol-K)。
電極反応の温度T(K)。
水中の空気カソードでの電気化学反応は、
O2+2H2O+4e-⇔4OH
である。
この反応の電流-電位関係は、Yardney AC51空気カソードの分極曲線を直線当てはめすることにより決定された。
jc=aηs,c+b
ガルバニ電気化学セルに関して、供給される電圧は、不可逆的損失のために電気化学セルの平衡電位よりも低い。
V供給=Eeq−E損失
電気化学セルの平衡電位は、標準状態におけるアノード還元平衡電位とカソード還元平衡電位(それぞれ、Ea0およびEc0)の差である。
Figure 2013527009
不可逆的損失は、3つの分類:1)緩慢な電極反応速度による表面損失、2)質量移動限界による濃度損失、および3)電解液中のオーム損失を有している。
2次電流分布モデルでは濃度損失が無視されるので、不可逆的損失は、
E損失=ηs,a−ηs,c+Δφオーム
として表現することができ、式中、Δφオームは電解液中のオーム損失であり、
Δφオーム=φa−φc
にさらに分解することができる。
式を組み合わせると、
V供給=Eeq−ηs,a+ηs,c−φa+φc
であり、これは、不可逆的損失を補償するために電気化学セルに印加されるべき電圧のより詳細な関係を提供する。反応速度モデルは表面過電圧の関数として電極表面での正味電流密度を提供するため、上記方程式は、アノードおよびカソードでの表面過電圧を得るために分離することができる。
ηs,a=Eeq−V供給−φa
ηs,c=−φc
これらの方程式をアノードおよびカソードの電流-電位関係にそれぞれ代入することにより、陰的数値解法が可能となる。
2次電流分布モデルの結果は、バルク電解液(α)と、装置から引き出される電流の量を調整する負荷電圧(V負荷)とによる影響を受ける(負荷電圧の減少は、引き出される電流を増加させる)。一連のモデル内の伝導性および負荷電圧を変化させることにより、パラメータ研究を行った。表2は、2次電流分布モデルで使用されるパラメータを収録する。
(表2)2次電流分布モデルパラメータ
Figure 2013527009
個々のモデルにおいて、電位分布は、有限要素解析ソフトウェアCOMSOL Multiphysics 4.0aを使用して解析された。
E=∇φ
として定義された電界は、電位分布を使用して計算された。さらに、アノードまたはカソード境界での電流密度を積分することにより、モデル領域を通る全電流が決定された。領域を通る全電流を使用して、
P=jV供給
として定義される電力出力が計算された。
各エレクトロポレーション装置の目的は、エレクトロポレーションを誘起することができる電界強度を発生させることであり、これは、電解液中の実質的なオーム降下を必要とする。電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション構造に関して、(1)導電率(α)を減少させ、(2)負荷電圧(V負荷)を減少させること(この構造から引き出される電流を増加させること)は、電解液中のオーム降下を増加させる。
2次電流分布モデルは、電解液の導電率を減少させることにより電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション構造内の電界強度が増加することを示す(図23)。導電率が5e-2S/mの水においては、エレクトロポレーションを誘起する電界強度を発生させることはできない。しかし、導電率が5e-3S/mの水は、1.2V未満の負荷電圧で可逆的エレクトロポレーションを誘起する電界強度(>1kV/cm21)を発生させることができる。最大電界強度は、導電率が5e-4S/mの水において存在する。この導電率において、1.3Vという高さの負荷電圧は、最大電界強度2.68kV/cmをもたらす。さらに、負荷電圧が0.9Vで、導電率が5e-4S/mの構造における最大電界は13.12kV/cmであり、これは、不可逆的エレクトロポレーションを誘起するために必要とされる電界強度よりも大きい(>10kV/cm21)。
所定の導電率に対し、2次電流分布モデルは、負荷電圧を減少させること(電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション構造から引き出された電流密度を増加させること)により、電解液中の電界強度が増加することを示す(図23)。導電率が5e-3S/mの水において、負荷電圧0.9および0.7Vで、それぞれ最大電界強度3.48および4.82kV/cmが発生され得る。しかし、より低い導電率では、同じ負荷電圧は、実質的により大きい電界強度を発生させる。導電率が5e-4S/mの水は、負荷電圧0.9および0.7Vで、それぞれ最大電界強度13.2および18.2kV/cmを発生させることができる。水の導電率によって電界強度に違いがある理由は、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション構造における電位損失の原因を検査することによって説明され得る。導電率が5e-3S/mの水を使う構造において、電解液中のオーム降下は、この構造における支配的な電位損失ではない。空気カソードは、アノードと相対的に分極可能ではない。したがって、電解液中に電界を発生させるために必要な大きな電流を維持するためには、大きな過電圧がカソード表面に存在しなければならない。このシナリオに対し、カソードでの過電圧は、この構造における支配的な電位降下である。これは、支配的な電位損失が電解液中のオーム降下であり、より大きい電解強度をもたらす、導電率が5e-4S/mの水を備える構造の場合には当てはまらない。
電源内蔵式エレクトロポレーション構造はガルバニ電気化学セルであるので、この構造は少量の電力を発生させることも可能である(図24)。5e-2S/mの水はエレクトロポレーションを誘起する電界強度を発生させることができないので、図24は5e-2S/mの水についての電力出力データを含まない。発電は、この構造の主な目的ではないが、この構造が発生する電力は、MEMS用途において使用されることになるかもしれない。予想どおり、5e-3S/mの水を備える構造が最大電力を生成し、5e-4S/m水を備える構造が最小電力を生成する。両方の導電率について、最大電力出力は負荷電圧0.7Vで生じる。この負荷電圧において、電力出力密度163.07および31.85mW/cm2は、それぞれ5e-3S/mの水および5e-4S/mの水で生成される。したがって、予想どおり、最大電界強度をもたらす構造が、同様に最小電力を生成する。それにもかかわらず、所与の電界と電力出力の必要量の組み合わせを満たすよう構造を最適化することが可能であるかもしれない。
5e-3S/m導電率水について予測された電力出力は、実験的に観測されることになる電力出力より高い可能性があることに注意すべきである。空気カソードについての分極データだけが60mA/cm2まで上昇し、導電率5e-3S/mでは、装置によって低負荷電圧で発生された電流がこの値を超えた。したがって、これらのシナリオに対し、空気カソードでの分極データが外挿された。5e-4S/mの水についての電流密度は、60mA/cm2を決して超えなかった。
アルミニウムアノード、空気カソード、および水電解液からなる電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置の2次電流分布モデルは、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーションの理論的な実現可能性を評価するために開発された。このモデルは、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーションが理論的に実現可能であることを示す。十分に低い電解液導電率において、アルミニウム-空気化学反応は、可逆的および不可逆的エレクトロポレーションを誘起する電界強度を発生させることができる。さらに、所与の電解液導電率に対して、電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置の負荷電圧を減少させること(電源内蔵式ナノ・エレクトロポレーション装置から引き出された電流を増加すること)により、電解液中の電界強度が増加する。最終的に、電源内蔵式エレクトロポレーション装置から少量の電力を発生させることが可能である。
結論
本発明の上記説明は、例示および説明の目的のために提示された。網羅的であること、または、本発明を開示された形式と全く同じ形式に限定することは意図していない。上記教示に照らして他の変更および変形が可能な場合がある。本発明の原理およびその現実的な用途を最も良く説明し、それによって、当業者が本発明を、企図される特定の用途に適している様々な態様および様々な変更において、最も巧く利用することを可能にするために、態様を選択して説明した。特許請求の範囲は、均等な構造体、コンポーネント、方法および手段を含む本発明の他の代替的な態様を包含するように解釈されるべきことが意図されている。
概要の欄および要約の欄ではなく、詳細な説明の欄は、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図していることが理解されるべきである。概要の欄および要約の欄は、本発明者(ら)によって企図される本発明の例示的態様のうちの一つまたは複数であるが全てではない態様を記載するものであり得、従って、本発明および特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。

Claims (20)

  1. アノード電極、
    カソード電極、および
    該アノード電極と該カソード電極との間に配置されている絶縁体
    を備え、該アノード電極、該絶縁体、および該カソード電極が互いに同一平面上に位置付けられている、特異部ベースの電極構造。
  2. 前記アノード電極、前記絶縁体、および前記カソード電極と接触しているイオン性物質をさらに備える、請求項1記載の特異部ベースの電極構造。
  3. 前記絶縁体により、前記アノード電極が前記カソード電極から5ナノメートル〜5ミクロンだけ分離されている、請求項1記載の特異部ベースの電極構造。
  4. 前記絶縁体により、前記アノード電極が前記カソード電極から50ナノメートル〜2ミクロンだけ分離されている、請求項1記載の特異部ベースの電極構造。
  5. 前記絶縁体により、前記アノード電極が前記カソード電極から約100nmだけ分離されている、請求項1記載の特異部ベースの電極構造。
  6. 前記絶縁体により、前記アノード電極が前記カソード電強から100nm未満だけ分離されている、請求項1記載の特異部ベースの電極構造。
  7. DC電源、AC電源、パルス電位電源、電流パルス電源、ならびに前記電極およびイオン性物質を伴う電解反応からなる群より選択される電源をさらに備え、
    該電源が前記電極に接続されている、請求項1記載の特異部ベースの電極構造。
  8. 細胞を含有するイオン溶液、インビトロ組織、およびインビボ組織からなる群より選択される関心対象物質をさらに備える、請求項1記載の特異部ベースの電極構造。
  9. アノード電極、
    カソード電極、および
    該アノード電極と該カソード電極との間に配置されている絶縁体
    を備え、該アノード電極、該絶縁体、および該カソード電極が、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルの一側面に沿って同一平面上に位置付けられている、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造。
  10. 前記チャネル内を、前記アノード電極、前記絶縁体、および前記カソード電極を覆って流れる電解液をさらに備える、請求項9記載のマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造。
  11. 前記絶縁体が、前記アノード電極を、前記カソード電極から50ナノメートル〜2ミクロンだけ分離する、請求項9記載のマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造。
  12. パルス電位、AC電位、ならびに前記電極およびイオン溶液を伴う電解反応からなる群より選択される電力源をさらに備える、請求項9記載のマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造。
  13. 前記イオン溶液が、細胞、生組織、または死組織を含有する生理的溶液である、請求項12記載のマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造。
  14. 前記チャネルの、第1のアノード電極とは反対の側面に位置付けられている第2のアノード電極、
    前記チャネルの、第1のカソード電極とは反対の側面に位置付けられている第2のカソード電極、および
    該第2のアノード電極と該第2のカソード電極との間に配置されている第2の絶縁体
    をさらに備え、該第2のアノード電極および該第2のカソード電極が互いに同一平面上にある、請求項9記載のマイクロ・エレクトロポレーション・チャネル構造。
  15. 同一平面上にある一連のアノード電極およびカソード電極を含み、隣接するアノード電極とカソード電極とが絶縁体によって分離されている、マイクロ・エレクトロポレーション・チャネルを設ける段階;
    該マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に電解液を流す段階;
    該マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内に細胞を流す段階;ならびに
    隣接するアノード電極とカソード電極との間に電位差を印加する段階;
    を含む、マイクロ・エレクトロポレーション方法。
  16. 前記マイクロ・エレクトロポレーション・チャネル内の前記電解液の流量を切り替える段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
  17. 個々の絶縁体により、前記アノード電極が隣接する前記カソード電極から50ナノメートル〜2ミクロンだけ分離される、請求項15記載の方法。
  18. DC電源、AC電源、パルス電位電源、電流パルス電源、ならびに前記電極およびイオン性物質を伴う電解反応からなる群より選択される電力源に、前記アノード電極および前記カソード電極をつなぐ段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
  19. 請求項15記載の方法を含む、水殺菌方法。
  20. 請求項15記載の方法を含む、細胞トランスフェクション方法。
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