JP2013525819A - 予想される検体関係を評価することによるポイント・オブ・ケア検査結果の検証法 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2010年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/332,154号、および2010年8月31日に出願された米国仮特許出願第61/378,668号に対する優先権を主張し、両出願の全体が参照により本明細書に組み入れられる。
臨床検査室で生成される患者由来データの正確度は、最適な患者の管理および患者の安全のために重大である。検査室データの臨床的有用性は、様々な要因によって悪影響を受け得る。これらの要因の一部として、インビトロ溶血等の分析前の問題、採血する際の間違った種類の試験管の使用、および静脈内輸液による標本の汚染が挙げられる。さらに、反応混合物へのサンプルの添加が不十分であったり、またはサンプルの希釈が間違っていたりすることにより不正確な結果が生じ得る。このようなタイプのエラーは、データ技術者には見つけられ得るが、臨床化学分析器および機器はこのようなタイプのサンプルを確実には検出できない。
定義
本明細書で使用する「信頼区間」は、母集団パラメーターの特定の種類の区間推定を意味する。本発明においては、母集団パラメーターは、区別される検体の濃度値(異なる検体、例えば、患者の塩化物濃度)に関連付けられた1つ以上の検体の濃度値または存在値(abundance value)(1つ以上の検体、例えば、同じ患者のナトリウム濃度)である。単一値でパラメーターを推定する代わりに、パラメーターを含む可能性のある区間を提供する。つまり、推定の信頼性を示すために信頼区間が使用される。区間がパラメーターを含む可能性は、信頼水準または信頼係数によって決定される。
本発明は、測定された濃度または存在量が正または負に相関された2つ以上の検体についての検体濃度データ(すなわち、濃度または存在量の関係)を利用する。本発明は、既知の濃度関係を有する検体(例えば、ナトリウムおよび塩化物)について主に記載するが、本発明はそれに限定されない。例えば、データマイニングを採用して、大規模データベースに存在しているのにデータ量が膨大であるために隠れていて明らかでない検体濃度(または存在量)の関係およびグローバルパターンを検索してもよい(Kazmierczakら(2007). Clin Chem Lab Med、V. 45、pp. 749-752)。2つの検体または2つ以上の検体(例えば、3つの検体)の濃度または存在量レベルの間の関係が分かれば、これらの検体を本発明の方法に使用できる。
ナトリウムおよび塩化物は、血液中に存在する主要な細胞外イオンを構成する。塩化物濃度に作用する生理学的因子は、ナトリウム濃度にも同様に影響する。従って、一態様では、ナトリウム濃度と塩化物濃度との関係を使用して、患者の測定された塩化物濃度と比べて患者の測定されたナトリウム濃度が妥当または正確であるかの尤度を評価する。別の態様では、ナトリウムレベルと塩化物レベルとの関係を使用して、患者の測定されたナトリウム濃度と比べて患者の測定された塩化物濃度が妥当または正確であるかの尤度を評価する。
カルシウムは、様々な生理学的プロセスのために重要である。血液中では、カルシウムのかなりの部分がタンパク質アルブミンに結合している。つまり、アルブミン濃度が正常より低い患者は、典型的に、正常より低いカルシウム濃度を示す。逆に、アルブミン濃度が高くなると、測定されるカルシウム濃度が対応して高くなる。従って、一態様では、カルシウム濃度とアルブミン濃度との関係を使用して、患者の測定されたアルブミン濃度と比べて患者の測定したカルシウム濃度が妥当であるかの尤度を評価する。別の態様では、カルシウム濃度とアルブミン濃度との関係を使用して、患者の測定されたカルシウム濃度と比べて患者の測定されたアルブミン濃度が妥当または正確であるかの尤度を評価する。
一態様では、HDL濃度と総コレステロール濃度との関係を使用して、患者の測定された総コレステロール濃度と比べて患者の測定されたHDL濃度が妥当または正確であるかの尤度を評価する。別の態様では、HDL濃度と総コレステロール濃度との関係を使用して、患者の測定されたHDL濃度と比べて患者の測定された総コレステロール濃度が妥当または正確であるかの尤度を評価する。
一態様では、本発明の方法を使用して、患者のアルブミンレベルに基づいて患者の総タンパク質レベルが正確または妥当(すなわち、エラーでないこと)であるか否かを決定する。別の態様では、本発明の方法を使用して、患者の総タンパク質レベルに基づいて患者のアルブミンレベルが正確または妥当(すなわち、エラーでないこと)であるか否かを決定する。
ビリルビンは、胆汁の素となる色素であり、ヘモグロビンの分解により誘導される。数回の分解ステップ後、遊離型ビリルビンはアルブミンに結合されて、血液を介して肝臓まで運ばれる。このビリルビンは水には溶解せず、不溶性、間接型または非抱合型と称される。肝臓において、ビリルビンはグルクロニドと抱合することにより可溶性になる。直接型または抱合型と呼ばれる水溶性ビリルビンは、他の胆汁成分と共に、胆管、そして腸へと運ばれる
カリウムは、細胞中の流体の平衡を維持する助けをし、酵素反応に関与する。高度に上昇したカリウムレベルは、腎不全および肝疾患の両方に関連する。さらに、高いカリウムは心不全をもたらし得る。低いカリウムレベルは、場合によっては、糖尿病、嘔吐および/または下痢に関連する。血中カリウムレベルは、アルドステロン機能、ナトリウム再吸収および酸塩基平衡を含む様々な要因に左右される。血清カリウムの一般値は、約3.5mEq/L〜約5.0mEq/Lに及ぶ。
一態様では、塩化物レベルと総CO2レベルとの関係を使用して、患者の測定されたC02レベルと比べて患者の測定された塩化物レベルが妥当または正確であるかの尤度を評価する。別の態様では、塩化物レベルと総CO2レベルとの関係を使用して、患者の測定された塩化物レベルと比べて患者の測定されたC02レベルが妥当または正確であるかの尤度を評価する。
BUNおよびクレアチニンの両方を糸球体で濾過する。正常な血清中には、約7 mg/dL〜約30 mg/dLのBUNが存在し;約0.7 mg/dL〜約1.2 mg/dLのクレアチニンが存在する。BUN:クレアチニンの正常範囲は約10〜20:1である。この範囲は、BUN再吸収が正常な範囲内にあることを示す。20:1を上回ると、BUN再吸収が高い。対照的に、10:1よりも低い比率では、BUN再吸収が低く、これは腎障害を示し得る。
AST/ALT比は、場合によって、肝障害の原因を区別するために有用である。例えば、比率が2.0を上回る場合、肝障害がアルコール性肝炎に関連している可能性が高い(Am. J. Gastroenterol. 94、pp.1018-1022)。比率が1.0未満である場合、肝障害がウイルス性肝炎に関連している可能性が最も高い。
一態様では、ALTレベルとALPレベルとの関係を使用して、患者の測定されたALPレベルと比べて患者の測定されたALTレベルが正確または妥当であるかの尤度を決定する。別の態様では、ALTレベルとALPレベルとの関係を使用して、患者の測定されたALTレベルと比べて患者の測定されたALPレベルが正確または妥当であるかの尤度を決定する。
血清GGT対ALTの比は、抗ウイルス療法を評価するためのパラメーターとして使用する。高い比率は、アルコール依存症またはアルコール性肝疾患を示し得る。なぜなら、アルコールの消費によってGGTレベルが高まるからである。正常GGTの上限は、約40U/L〜約78U/Lである。高いGGTレベルは、通常、肝臓、膵臓および胆管系の疾患に関連している。
典型的に、健康な患者については、血中のカルシウム対リンの比率は2.5:1である。これより高いかまたは低い比率は、患者がホルモン平衡異常をきたしていることを示しうる。高いリン対カルシウム比により、身体は感作され、炎症し易くなる。この比率は、副甲状腺機能および食べ物の選択により影響される。
健康な患者については、カルシウム:マグネシウム比は約2〜約1である。この範囲外の比率は、健康上の問題(例えば、腎臓結石)をもたらし得る。
一態様では、カリウム濃度とクレアチニン濃度との関係を使用して、患者の測定されたクレアチニン濃度と比べて患者の測定されたカリウム濃度が正確または妥当であるかの尤度を決定する。別の態様では、カリウム濃度とクレアチニン濃度との関係を使用して、患者の測定されたカリウム濃度と比べて患者の測定されたクレアチニン濃度が正確または妥当であるかの尤度を決定する。
健康な患者は、一部の態様において、以下のCKおよびLDH濃度を示す:
クレアチンキナーゼ(男性)約25 U/L〜約90 U/L
クレアチンキナーゼ(女性) 約10 U/L〜約70 U/L
LDH、血清:約45 U/L〜約90 U/L。
一態様では、マグネシウム濃度とカリウム濃度との関係を使用して、患者の測定されたカリウム濃度と比べて患者の測定されたマグネシウム濃度が正確または妥当であるかの尤度を決定する。同様に、別の態様では、マグネシウム濃度とカリウム濃度との関係を使用して、患者の測定されたマグネシウム濃度と比べて患者の測定されたカリウム濃度が正確または妥当であるかの尤度を決定する。
患者のアニオンギャップレベルは、血液中に存在するイオン(アニオンおよびカチオンの両方)のおおよその測定である。アニオンギャップの生理学的範囲は、典型的に、約10MMol/L〜約12MMol/Lである。
一態様では、ナトリウム濃度とカリウム濃度との関係を使用して、患者の測定されたカリウム濃度と比べて患者の測定されたナトリウム濃度が正確または妥当であるかの尤度を決定する。同様に、別の態様では、ナトリウム濃度とカリウム濃度との関係を使用して、患者の測定されたナトリウム濃度と比べて患者の測定されたカリウム濃度が正確または妥当であるかの尤度を決定する。
一態様では、塩化物レベルとカリウムレベルとの関係を使用して、患者の測定されたカリウムレベルと比べて患者の測定された塩化物レベルが正確または妥当であるかの尤度を決定する。別の態様では、塩化物レベルとカリウムレベルとの関係を使用して、患者の測定された塩化物レベルと比べて患者の測定されたカリウムレベルが正確または妥当であるかの尤度を決定する。
一態様では、マグネシウムレベルとリン酸塩レベルとの関係を使用して、患者の測定されたリン酸塩レベルと比べて患者の測定されたマグネシウムレベルが正確または妥当であるかの尤度を決定する。別の態様では、マグネシウムレベルとリン酸塩レベルとの関係を使用して、患者の測定されたマグネシウムレベルと比べて患者の測定されたリン酸塩レベルが正確または妥当であるかの尤度を決定する。
一態様では、本発明は、2つ以上の検体間の検体濃度(または存在量)の関係を評価することによって、臨床化学、診断、およびポイント・オブ・ケア検査の結果を検証する方法を提供する。さらなる態様では、検体の関係は、2つ、3つ、4つまたは5つの検体間のものであり得る。別の態様では、検体の濃度関係は2つの検体(検体対)のものであり、検体対と上記列挙した対から選択される。
2つ以上の検体について測定された検体値の正確度(例えば、測定された塩化物値に基づいて測定されたナトリウムレベル(もしくはその逆)の妥当性)を検証するために、所定の尤度分布を使用するか、または既に回収されているデータを使用して対をなす検体濃度(もしくは存在量)値の尤度分布を確立する。本発明は、尤度分布を確立するために、特定の大きさのデータセットに限定されないが、典型的に、より大きいデータセットが好ましい。例えば、一態様では、少なくとも約10,000患者サンプルから得たデータを使用して尤度分布を確立する。別の態様では、少なくとも約20,000サンプル、少なくとも約30,000サンプル、少なくとも約40,000サンプル、少なくとも約50,000サンプル、少なくとも約60,000サンプル、少なくとも約70,000サンプル、少なくとも約80,000サンプル、少なくとも約90,000サンプル、少なくとも約100,000サンプル、少なくとも約110,000サンプル、少なくとも約120,000サンプル、少なくとも約130,000サンプル、少なくとも約140,000サンプル、少なくとも約150,000サンプル、少なくとも約160,000サンプル、少なくとも約170,000サンプル、少なくとも約180,000サンプル、少なくとも約190,000サンプル、少なくとも約200,000サンプル、少なくとも約250,000サンプル、少なくとも約300,000サンプル、少なくとも約350,000サンプル、少なくとも約400,000サンプル、少なくとも約450,000サンプル、または少なくとも約500,000サンプルから得たデータを使用して尤度分布を確立する。
本発明の方法においては、尤度分布を使用して、様々な検体に対するポイント・オブ・ケア検査の結果を検証する。尤度分布を確立するために使用したデータとは異なる機器から検証用のデータを得る場合は、補正係数(本明細書において校生係数とも称する)を採用して、異なる機器から獲得したデータを使用することによって生じるあらゆるバイアスを補正できる。
一態様では、本発明の方法を使用して、特定の人口統計から検体濃度データを評価する。この態様では、本発明の方法を上に概説したように実施する。ただし、尤度分布を確立する前に、ユーザーによって選択される人口統計に応じて患者データを仕分ける。例えば、一態様では、以下に応じて患者データを仕分けることができる:すなわち(1)性別;(2)人種;(3)腎不全の有無(例えば、患者の測定されたクレアチニンレベルを使用);(4)肝不全の有無;(5)出生国;(6)特定の薬物の使用;(7)過去の臨床または診断検査の結果;(8)外来患者、対、入院患者;(9)患者が糖尿病であるか否か;(10)年齢による分類、(11)肝疾患、(12)アルコール依存症(例えば、ALT/GGT比について)等に応じて仕分けされ得る。あるいはまた、ユーザーは、それぞれの人口統計について所定の尤度分布を採用する。
一態様では、本発明は、3つ以上の検体間の関係の評価に基づいて、ポイント・オブ・ケア検査の結果を検証する方法を提供する。さらなる態様では、本発明は、3つ、4つまたは5つの検体間の関係の評価に基づいてポイント・オブ・ケア検査の結果を検証する方法を提供する。
一態様では、本明細書で提供する方法を、診断または臨床化学機器のソフトウェアに組み込む。さらなる態様では、機器は上記した機器から選択される。別の態様では、本明細書で提供する方法をミドルウェアに組み込んで、機器が行った測定の正確度の尤度を評価する。
ナトリウムおよび塩化物は、血液中に存在する主要な細胞外イオンを構成する。塩化物濃度に作用する生理学的因子は、ナトリウム濃度にも同様に影響する。従って、ナトリウムと塩化物との関係を使用して、測定された塩化物濃度と比べて患者の測定されたナトリウム濃度が妥当または正確であるかの尤度を評価できる。
ナトリウムおよび塩化物濃度の予想される関係(図1中の尤度分布を確立する2本の曲線を参照のこと)を使用して、Piccolo化学分析器で測定された22,555の患者サンプルから得たナトリウムおよび塩化物濃度データの妥当性または正確度を評価した。対をなす濃度データが上の回帰曲線を上回ったり、または下の回帰曲線を下回った場合(図1)、データはそれぞれ不適切に高いかまたは低いとみなした。
ナトリウム濃度と塩化物濃度との関係を評価して、妥当なナトリウムおよび塩化物濃度値の範囲を確立した。
クレアチニン、カルシウムおよびアルブミン濃度値を含む約500,000人の患者から得た検査結果を集めた。
Claims (8)
- 第一の検体の第一の臨床検査結果およびそれに対応する第二の検体の第二の臨床検査結果を、該第一の検体および該第二の検体についての所定の尤度分布と比較する工程、ならびに
該尤度分布との関係に基づいて該第一の臨床検査結果の妥当性を決定する工程
を含む、第一の臨床検査結果の妥当性を決定する方法。 - 前記第一の臨床検査結果およびそれに対応する前記第二の臨床検査結果を得る工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
- 前記第一の臨床検査結果が、前記所定の尤度分布から外れていれば妥当でなく、該所定の尤度分布の内側にあれば妥当である、請求項1記載の方法。
- 前記第一の検体および前記第二の検体が、直接ビリルビン/総ビリルビン、HDL/総コレステロール、LDL/総コレステロール、HDL/LDL、アルブミン/カルシウム、ナトリウム/塩化物、BUN/クレアチニン、AST/ALT、総タンパク質/アルブミン、カリウム/総CO2、カルシウム/リン、カルシウム/マグネシウム、カリウム/クレアチニン、マグネシウム/カリウム、アニオンギャップ/カリウム、ナトリウム/カリウム、塩化物/カリウム、マグネシウム/リン酸塩、ALT/GGT、ALT/ALP、CK/LDH、および塩化物/総CO2からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 第一の検体およびそれに対応する第二の検体についての所定の尤度分布の母集団を含むデータベースであって、該第一の検体の臨床検査結果が、該第二の検体の臨床検査結果と相関する、データベース。
- コンピュータで読み取り可能な媒体中にある、請求項5記載のデータベース。
- 第一の検体の臨床検査結果およびそれに対応する第二の検体の臨床検査結果についての尤度分布を決定する方法であって、
該第一の検体およびそれに対応する該第二の検体についての複数の臨床検査結果を特定する工程、
該第二の検体についての結果に基づいて臨床検査結果を仕分けする工程、
該仕分けされたデータを複数のビンに分類する工程、
各ビンについて第一の検体の臨床検査結果の値の信頼区間を特定する工程、ならびに
該信頼区間内にある臨床検査結果に基づいて尤度分布を決定する工程
を含む方法。 - 前記第一の検体およびそれに対応する前記第二の検体が、直接ビリルビン/総ビリルビン、HDL/総コレステロール、LDL/総コレステロール、HDL/LDL、アルブミン/カルシウム、ナトリウム/塩化物、BUN/クレアチニン、AST/ALT、総タンパク質/アルブミン、カリウム/総CO2、カルシウム/リン、カルシウム/マグネシウム、カリウム/クレアチニン、マグネシウム/カリウム、アニオンギャップ/カリウム、ナトリウム/カリウム、塩化物/カリウム、マグネシウム/リン酸塩、ALT/GGT、ALT/ALP、CK/LDH、および塩化物/総CO2からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
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