JP2013523831A - γ−ポリグルタミン酸に基づく眼灌流液 - Google Patents

γ−ポリグルタミン酸に基づく眼灌流液 Download PDF

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Abstract

患者の眼組織を灌流するのに十分な量の眼灌流液であって、(a)上記液の粘度を増加させるのに有効な量のγ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びに(b)上記γ−PGA及び/又はその塩のための、眼科的に許容可能な水性賦形剤であって、患者の眼組織の灌流に用いるための水性賦形剤を含む、眼灌流液が開示される。眼科手術中において患者の眼組織に対するストレス誘導性損傷を低減するのに用いるため眼灌流液及び医薬キットもまた開示される。

Description

本発明は、一般に眼科用溶液に関するものであり、より詳細には眼灌流液に関する。
灌流液は、水晶体乳化吸引術、硝子体切除術及び緑内障手術などの眼内手術に広く使用されている。水晶体乳化吸引術は、白内障と呼ばれる混濁を発症している眼の水晶体を除去するための手術である。硝子体切除術は、眼から硝子体液の一部又は全てを除去するための手術である。緑内障手術は、レーザー治療や眼圧を下げるために眼に切り込みを入れることを伴う。台湾中央健康保険局(National Health Insurance Department)の報告によると、台湾では、約150,000件の眼科手術が1年間で行われた。眼内手術の効果は、使用された灌流液と関係がある。不適切な灌流液は角膜や水晶体に損傷を与え、その結果、視力の低下、盲点、さらには失明にさえ至る可能性がある。
所望される灌流液は、房水に近い組成と290mOsm〜320mOsmのオスモル濃度を有するものとされている。灌流液の主な機能は、内皮細胞の保全、角膜の厚さ及び網膜組織の維持である。さらに、適切な灌流液は、白内障手術中の角膜内皮細胞の生存率を保持し、エネルギー源(即ちグルコース)を提供し、適切な等張性と電解質濃度とを維持し、かつ、pH値の変動から角膜内皮細胞を保護しなければならない。
眼内灌流には、平衡塩類溶液(Balanced Salt Solution; BSS(登録商標))及びBSSプラス(BSS PLUS(登録商標))が頻繁に用いられている。BSSプラス(BSS PLUS(登録商標))の組成は房水に近い。基本的に、BSSプラス(BSS PLUS(登録商標))の組成は、1)適切な緩衝剤(即ち重炭酸塩)、2)エネルギー源(即ちグルコース)、3)7から8の間の安定なpH値(即ちHEPES)、4)抗酸化物質(即ちグルタチオン)の4つの部分を有する。しかしながら、これらの眼内灌流液は、眼科手術における物理的な損傷を最も受けやすい角膜(内皮)細胞を保護するには十分に有効ではない。複数の研究から、水晶体乳化吸引術のような高度な眼内手術は、合併症を引き起こす可能性があることが示されている。合併症を引き起こす可能性のあるいくつかの原因としては、超音波による機械的な影響、吸引されなかった水晶体の破片によって引き起こされる物理的な外傷、熱の発生及び灌流液によって引き起こされる浸透圧の異常が含まれる。これらは全て、角膜内皮の損傷を引き起こす可能性があり、かつ、不可逆的な水疱性角膜症を引き起こすリスクさえも有する場合がある。
従って、当該分野には、上述の欠点や不備に対処する、これまで取り組まれていないニーズが存在し、とりわけ、眼内組織、特に角膜(内皮)細胞を保護するために向上した機能を有する眼灌流液の開発に関するニーズが存在する。
一の態様において、本発明は、患者の眼組織を灌流するのに十分な量の眼灌流液であって、(a)上記液の粘度を増加させるのに有効な量のγ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びに(b)上記γ−PGA及び/又はその塩のための、眼科的に許容可能な水性賦形剤であって、患者の眼組織の灌流に用いるための水性賦形剤を含む、眼灌流液に関する。
別の態様においては、本発明は、眼灌流液であって、(a)上記灌流液の粘度を増加させるのに有効な量のγ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びに(b)上記γ−PGA及び/又はその塩のための、眼科的に許容可能な水性賦形剤を含む、眼灌流液に関する。
さらに別の態様においては、本発明は、a)上述の眼灌流液、並びにb)印刷された説明であって、患者の眼組織を灌流するための説明を含む添付文書を含む、医薬キットに関する。
さらに別の対応においては、本発明は、眼科手術中に患者の眼組織を灌流するのに十分な量の眼灌流液であって、(a)上記溶液の粘度を増加させるのに有効な量のγ‐ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びに(b)上記γ−PGA及び/又はその塩のための、眼科的に許容可能な水性賦形剤であって、眼科手術中において患者の眼組織に対するストレス誘導性損傷を低減するのに用いるための水性賦形剤を含む、眼灌流液に関する。
これらの態様並びにその他態様は、以下の図面を併用した、好ましい態様の以下説明により明らかになるが、本開示の新規概念の精神及び範囲から逸脱すること無く、その変形及び改変を施すことが出来る。
添付の図面は、本明細書と併せて本発明の1以上の実施形態を説明するものであり、本発明の原理を説明するものとなる。一の実施形態の同じ又は類似の構成要素を参照するために、可能な限り、全図面を通して同じ参照番号を用いた。
図1A〜Cは、灌流液のオスモル濃度に対するγ−PGA濃度及びデキストロース濃度の効果を示す。 図2は、灌流液の粘度に対するγ−PGAの影響を示すグラフである。 図3は、灌流液の屈折率に対するγ−PGAの影響を示すグラフである。 図4A、Bは、γ−PGAが細胞増殖に対して有意な影響を及ぼさなかったことを示す。図4Aはウシ角膜内皮細胞について示す。図4Bはヒト網膜色素上皮細胞について示す。 図5A、Bは、γ−PGAが細胞に対して有意な細胞毒性を有しなかったことを示す。図5Aはウシ角膜内皮細胞について示す。図5Bはヒト網膜色素上皮細胞について示す。 図6は、γ−PGAを加えて又は加えずに培養した後に生存細胞と死細胞とを同時に検出するための色素で染色した細胞の蛍光顕微鏡写真コレクションである。図6Aは1日間培養したウシ角膜内皮細胞である。陰性対照はアルミナ(Al23)抽出培地、陽性対照はトリトンX−100(Triton x-100)(0.1%)を加えたDMEM/F12培地。 図6は、γ−PGAを加えて又は加えずに培養した後に生存細胞と死細胞とを同時に検出するための色素で染色した細胞の蛍光顕微鏡写真コレクションである。図6Bは3日間培養したウシ角膜内皮細胞である。陰性対照はアルミナ(Al23)抽出培地、陽性対照はトリトンX−100(Triton x-100)(0.1%)を加えたDMEM/F12培地。 図7は、γ−PGAを加えて又は加えずに培養した後に生存細胞と死細胞とを同時に検出するための色素で染色した細胞の蛍光顕微鏡写真コレクションである。図7Aは1日間培養したヒト網膜色素上皮細胞である。陰性対照はアルミナ(Al23)抽出培地、陽性対照はトリトンX−100(Triton x-100)(0.1%)を加えたDMEM/F12培地。 図7は、γ−PGAを加えて又は加えずに培養した後に生存細胞と死細胞とを同時に検出するための色素で染色した細胞の蛍光顕微鏡写真コレクションである。図7Bは3日間培養したヒト網膜色素上皮細胞である。陰性対照はアルミナ(Al23)抽出培地、陽性対照はトリトンX−100(Triton x-100)(0.1%)を加えたDMEM/F12培地。 図8Aは、ウサギの眼に挿入した、2本の管装着針を示す。図8Bは、ペリスタポンプを使用した、灌流液の灌流を示す。 図9は、眼灌流を行っている間の角膜厚さの変化を示すグラフである。
定義
本明細書で使用される用語は、本発明の背景において、及び各用語が用いられる特定の文脈において、当該分野における通常の意味を一般に有する。本発明を説明するために用いられる特定の用語は、以下で、又は明細書中のその他個所で説明され、本発明の説明に関し、実施者にさらなる指針を提供する。便宜上、例えばイタリック体及び/又は引用符を用いて、特定の用語を強調する場合がある。強調の使用は、その用語の範囲及び意味になんら影響を与えず、強調してもしなくても、その用語の範囲と意味は同じ文脈においては同じである。当然のことながら、同じ事柄を2つ以上の言い回しで記載することができる。従って、本明細書で説明される1以上のいずれかの用語に対して別の言葉や同義語を用いてもよく、本明細書においてある用語が詳細に述べられ又は説明されていてもいなくても、なんら特別な意味をもたない。特定の用語には同義語が提供される。1以上の同義語の詳説は、他の同義語の使用を排除するものではない。本明細書で議論される任意の用語の例を含む、本明細書における例の使用は、説明のためだけのものであり、本発明や例示した用語の範囲及び意味を何ら制限するものではない。同様に本発明は、本明細書で示した様々な実施形態に限定されるものではない。
別段の定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野における当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。不一致が生じる場合には、定義を含め、本明細書が規定する。
「前後(around)」、「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、本明細書で用いられる場合、通常、与えられる数値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。本明細書で示される数量は,およその数であり、明示されていない場合であっても、「前後」、「約」又は「およそ」の用語が推測できることを意味している。
本明細書において、ある数値又はある範囲が示されている場合には、当業者は、それが本発明に関わる特定の分野の適切で妥当な範囲を包含することを意図していることが理解する。
粘度が0.32〜50センチポアズであるとは、この範囲内にある全ての百分の一、十分の一及び整数の単位量が、本発明の一部として具体的に開示されることを意味する。従って、0.32、0.33、0.34・・・及び0.7、0.8、0.9、並びに1、2、3、4・・・47、48、49及び50センチポアズ単位量が、本発明の実施形態として含まれる。
オスモル濃度が290〜320mOsmであるとは、この範囲内にある全ての整数の単位量が本発明の一部として具体的に開示されることを意味する。従って、290、291、292・・・並びに317、318、319及び320mOsm単位量が、本発明の実施形態として含まれる。
屈折率が1.330〜1.344であるとは、この範囲内にある全ての千分の一の単位量が本発明の一部として具体的に開示されることを意味する。従って、1.330、1.331、1.332・・・並びに1.340、1.341、1.342、1.343及び1.344単位量が、本発明の実施形態として含まれる。
分子量が10,000〜2,000,000ダルトンであるとは、この範囲内にある全ての整数の単位量が本発明の一部として具体的に開示されることを意味する。従って、10,000、10,001、10,002・・・並びに1,999,997、1,999,998、1,999,999及び2,000,000ダルトン単位量が、本発明の実施形態として含まれる。
0.2〜1%(w/v)とは、この範囲内にある全ての十分の一及び整数の単位量が本発明の一部として具体的に開示されることを意味する。従って、0.2、0.3、0.4・・・並びに0.7、0.8、0.9及び1%単位量が、本発明の実施形態として含まれる。
「γ−PGA」は通常、本明細書で用いられる場合、「γ−ポリグルタミン酸及び/又はその塩」或いは「γ−ポリグルタミン酸塩(gamma-polyglutamate)」を意味する。グルタミン酸は、2つのカルボキシル基を有する。それらの内の1つのγ−カルボキシル基はα−アミノ基に結合しており、PGAが形成される。
γ−ポリ(グルタミン酸)と言う用語と、γ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)と言う用語とは代替可能である。
「灌流液の粘度を増加させるのに有効な量で」と言う用語は、本明細書で用いられる場合、当該灌流液の粘度が、γ−PGAを含まない灌流液の粘度と比較して、γ−PGAの存在下において増加されていることを意味する。
架橋ポリグルタミン酸は、分子量が数千万の網目構造をもつ。PGAと比較して、架橋PGAは水を吸収する能力が高い。架橋ポリグルタミン酸の分子量は10,000,000を越える。
「水性の生理学的に許容可能な溶液」とは、本明細書で用いられる場合、通常、無菌食塩水又は無菌緩衝液を意味するが、これらには限定されるものではない。
「抗酸化物質」は、本明細書で用いられる場合、他の分子の酸化を遅延させる又は防止することができる分子である。抗酸化物質には、グルタチオン、ビタミンC、及びビタミンEが含まれるが、これらに限定されるものではない。
浸透性とは、二つの側の溶質濃度を均等にすることを目的として、選択的透過性の膜を介して溶媒分子が高い溶質濃度の領域に移動することである。溶媒の正味移動は、より濃度の低い(低張)溶液からより濃度の高い(高張)溶液に向かい、これにより濃度差が減少する傾向にある。この効果は、低張液に対して、高張液の圧力を増加させることによって相殺され得る。浸透圧とは、溶媒の正味移動を伴わず、平衡を維持するのに必要とされる圧として定義される。浸透圧は、溶質のモル濃度に依存するが、溶質が何であるのかには依存しない。浸透性は、多くの生体膜が半透性であるため、生体系において重要である。
オスモル濃度は溶質濃度の指標であり、溶液1リットル(L)当たりのオスモル(Osm)数として定義される(osmol/L又はOsm/L)。溶液のオスモル濃度は一般に、Osm/Lで表される。オスモル濃度は、溶液の単位容積当たりの溶質粒子のオスモル数を測定する。
本発明は、眼科手術によって生じる損傷を低減させるための灌流液における付加成分として粘弾性材料であるポリ−γ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)を発見したことに関する。分散性粘弾性材料は、水晶体乳化吸引術(PEA)の間に眼内組織を保護するのにプラスの効果をもたらす。粘弾性材料は、前眼房及び後眼房中の乱流を減少させることができ、眼内で組織断片及び気泡が移動することを生じさせるのを補助する。加えて、そのような種類の粘弾性材料は、水晶体破片の除去を促進し、執刀医が手術道具の先端で破片を追跡するのを容易にし得る。
ポリ−γ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)は、アミノ酸であるグルタミン酸(GA)の天然ポリマーであり、複数種の細菌(全てグラム陽性)、1種の古細菌及び1種の真核生物によって合成される。
ポリ−γ−グルタミン酸の分子量は、約10,000から最大で200万の範囲である。これらを異なる応用への要求を満たすように製造することができる。食品産業における応用がよく知られている。γ−PGAは、「納豆」(日本の伝統食品の1つ)の粘液の主成分であるが、1937年にイブノビクス(Ivnovics)により初めて、炭疽菌(バチラス・アンスラシス;Bacillus anthracis)の莢膜として発見された。γ−PGAは、(α−アミノ基とγ−カルボキシル基の間における)γ−アミド結合によって結合したD型及び/又はL型のグルタミン酸残基から構成される、独特なポリアニオンポリマーである。γ−PGAは、親水性で、粘性をもち、生分解性で、かつ非毒性の生体材料である。イオン捕捉と高い水分吸収能をもつ独自の性質から、γ−PGAは、金属キレート、吸収剤、抗凍結剤、劣化防止剤、薬剤担体及び湿潤剤などの多様な応用で用いられている。ここ数年は、γ−PGAは、高い膨潤能力を有する生体材料として広く用いられている。γ−GPAの生体適合性は、γ−PGAを、生体糊(bioglue)、組織工学及び薬剤送達系などの臨床分野において利用可能にする。
本発明は、γ−PGAが、眼科的に許容可能な灌流液のオスモル濃度及び粘度を調整する能力を有すると言う発見に関するものである。眼灌流液の適切なオスモル濃度及び僅かな粘度は、合併症と角膜の損傷を低減することができる。本発明は、眼科的に許容可能な灌流液又は手術用溶液のための添加剤としてのγ−PGAの使用であって、該添加剤は灌流を必要とする手術中に前眼房及び後眼房を保護するための添加剤である、上記使用に関する。
γ−PGAは、オスモル濃度を調整し、かつ組織の浮腫現象を防止するための物質として機能する。γ−PGAが存在する眼科的に許容可能な灌流液のオスモル濃度は、290〜320mOsmの範囲である。高分子量(1020キロダルトン)のγ−PGAは、灌流液の粘度を調整する能力を有する。最適粘度は、水晶体乳化吸引術によって生じる組織損傷を低減することができる。
γ−PGAのための様々な種類の賦形剤を用いることができる。しかしながら、賦形剤は好ましくは、電解質、緩衝剤(例えば、重炭酸塩、リン酸塩又はそれらの組合せ)、及びエネルギー源を含有する。これらの薬剤は、手術中の角膜組織の正常な機能の維持を補助し、手術後の迅速な視力の回復を促進する。しかしながら、本発明は、本明細書記載にされている灌流液を生成するために用いられ得る平衡塩類溶液又はその他電解質/栄養溶液に相対して限定されるものではない。
一の態様において、本発明は、患者の眼組織を灌流するための方法に関する。この方法は、患者の眼組織を灌流するのに十分な量の眼灌流液を患者の眼組織に導入することを含み、上記眼潅流液は、a)当該眼潅流液の粘度を増加させるのに有効な量のγ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びにb)γ−PGA及び/又はその塩のための眼科的に許容可能な水性賦形剤を含む。
別の態様においては、本発明は、眼潅流液であって、a)該灌流液の粘度を増加させるのに有効な量のγ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びにb)γ−PGA及び/又はその塩のための眼科的に許容可能な水性賦形剤を含む、眼灌流液に関する。
さらに別の態様においては、本発明は、(a)上記の如き眼灌流液、並びに
(b)印刷された説明であって、患者の眼組織を灌流するための説明を含む添付文書を含む、医薬キットに関する。
本発明の一実施形態では、灌流液の粘度は、0.32〜50センチポアズ、又は0.32〜30センチポアズ、又は0.32〜3.93センチポアズである。
本発明の別の実施形態では、灌流液のオスモル濃度は、1リットル当たり290〜320mOsmである。
本発明の別の実施形態では、灌流液の粘度は、0.32〜50センチポアズ、又は0.32〜30センチポアズ、又は0.32〜3.93センチポアズであり、かつ、オスモル濃度は1リットル当たり290〜320mOsmである。
本発明の別の実施形態では、灌流液の屈折率は、1.330〜1.344である。
本発明の別の実施形態では、灌流液は、架橋ポリグルタミン酸を含まず、かつ、さらなるポリアミノ酸又はポリマーを含まない。
本発明の別の実施形態では、眼科的に許容可能な水性賦形剤は、電解質と、緩衝剤と、エネルギー源とを含有する平衡塩類溶液を含む。
本発明の別の実施形態では、眼灌流液中のγ−PGA濃度は、0.2〜1%又は0.2〜0.8%(w/v)の範囲である。
本発明の別の実施形態では、γ−PGAの分子量は、10,000〜2,000,000ダルトン、又は1,000,000〜2,000,000ダルトンである。
さらに本発明の別の実施形態では、眼科的に許容可能な水性賦形剤は、抗酸化物質をさらに含む。
さらに別の態様において、本発明は、眼科手術中において患者の眼組織に対するストレス誘導性損傷を低減する方法に関する。この方法は、眼科手術中に、患者の眼組織を灌流するのに十分な量の眼灌流液を患者の眼組織に導入することを含み、上記灌流液は、a)上記液の粘度を増加させるのに有効な量のγ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びにb)γ−PGA及び/又はその塩のための眼科的に許容可能な水性賦形剤を含む。
本発明の一実施形態においては、眼科手術には、硝子体切除術、白内障摘出術、水晶体吸引術、前眼部再建術、及び水晶体乳化吸引術が含まれる。
本発明の範囲を限定する意図なく、本発明の実施形態による、例示となる器具、装置、方法及びそれらに関連する結果を以下に示す。読み手の便宜のために、本実施例では、表題と副題を用いたが、それらは本発明の範囲を多少なりとも限定するものではないことに留意されたい。さらに、本明細書には、特定の理論が提唱され、開示されているが、それら理論が正しくとも或いは間違っていようとも、特定の理論又は実施計画とは無関係に、本発明が当該発明に従って実施される限り、それら理論は決して本発明の範囲を限定するものでは無い。
材料及び方法
材料及び試薬
特にことわりがない限り、全ての材料と試薬は、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich, Inc.、セントルイス、ミズーリ、米国)から購入した。ポリ−γ−グルタミン酸塩(分子量1020kDa)は、ベダン・エンタープライズ社(VEDAN Enterprise Corporation)から購入した。浸透圧計用の標準物質は、アドバンスインスツルメンツ社(Advanced Instruments, Inc.、ノーウッド、マサチューセッツ、米国)から入手した。
抗生物質、トリプシン及びウシ胎仔血清は、インビトロジェン社[Invitrogen、カールスバッド(Carlsbad)、カリフォルニア]から入手した。フラスコ及び培養ウェル/培養皿は、オレンジ・サイエンティフィック社[Orange Scientific、ブレーヌ・ラルー(Braine-l'Alleud)、ベルギー]から入手した。クイック・セル・プロリファレーション・アッセイ・キット(Qick Cell Proliferation assay Kit)は、バイオビジョン社(BioVision、カリフォルニア、米国)から入手し、細胞毒性試験(cytotoxicity assay)であるサイトトックス・96アッセイ・キット(CytoTox 96 assay kit)はプロメガ社(Promega、ウィスコンシン、米国)から購入した。ウシ角膜内皮細胞(bCE細胞)及びヒト網膜色素上皮細胞(hRPE細胞)は、台湾国立細胞科学センター(National Center for Cell Sciences)(食品工業研究開発研究所(Food Industry Research and Development Institute)、新竹、台湾)から入手した。
方法
灌流液のオスモル濃度の評価
溶液のオスモル濃度を、アドバンスインスツルメンツ社(Advanced Instrument, Co., Inc)によって製造された3D3単一試料浸透圧計(3D3 Single-Sample Osmometer)を用いて、ドュプリケート(二重)で測定した。γ−PGAの効果を調べるために、0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、1%の各濃度でγ−PGAを含有する灌流液と、対照(γ−PGAを含まない)とを準備した。校正用の標準物質(1リットル当たり100mOsm及び1500mOsm)を使用して、浸透圧計の動作を校正した。γ−PGA含有灌流液のpH値は、7.4±0.1であった。pH緩衝剤としては重炭酸ナトリウムを使用し、灌流液の調製には再蒸留水を使用した。
灌流液の粘度評価
平行板配列形状のハーケ・レオストレス600(HAAKE RheoStress 600)[サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific Inc.)、ウォルサム(Waltham)、マサチューセッツ、米国]装置を用いて灌流液の粘度を評価した。制御ユニットを用いて温度を制御した。2種類の使用温度、即ち室温(25℃)と体温(37℃)とで評価した。上側ステンレス鋼板(直径35mm)と下側ステンレス鋼板との間の間隙高さは1.05mmに設定した。コントロールド・レート・ローテーション・ランプ・モード(controlled rate rotation ramp mode)を用いて、灌流液の粘度曲線を得た。剪断速度は、1s-1〜500s-1の範囲であった。
灌流液の屈折率評価
DR−A1屈折計(アタゴ社、日本)を使用して、屈折率(RI)を測定した。0.2%、0.4%、0.6%、0.8%及び1%(w/v)のγ−PGAを含有する灌流液を室温で調製し、プリズム上に注意深く置いた。接眼レンズを通して観察しながら、影線が照準線の中央に来るまでコントロール・ノブを回した。屈折率の値はデジタル画面から取得した。
γ−PGAの生体適合性試験
γ−PGAを異なる濃度で培地に加え、生体適合性を評価した。上記培地200μLを、単層の角膜内皮細胞並びに網膜色素上皮細胞に対して試験した。細胞を、5×103細胞/ウェルの細胞密度で96ウェル組織培養プレートに播種し、37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で一晩接着させた。陰性対照(Al23抽出培地)と陽性対照(0.1%のトリトンX−100(Triton X-100)を含む培地)とを含む群、並びに実験群(0.2%、0.4%、0.6%、0.8%及び1%のγ−PGAを含む培地)について、6重(ヘキサプリケート;hexaplicate)で試験した。37℃で24時間或いは72時間インキュベートした後、細胞生存率評価及び細胞毒性評価を、クイック・セル・プロリファレーション・キット(Quick Cell Proliferation assay Kit)IIと、サイトトックス96非放射性細胞毒性アッセイ(CYTOTOX 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay)により、定量的に検定した。
細胞生存率評価には、72時間インキュベートした後の試験培地を捨て、0.2mLの水溶性テトラゾリウム−8(WST−8)試験溶液を各ウェルに移した。2時間インキュベートすると、細胞中のミトコンドリア脱水素酵素によってテトラゾリウム塩が開裂しホルマザンの形成することに起因して、WST−8試験溶液は変色を示した。分光光度計を使用して450nmの読取りで測定することにより、角膜内皮細胞及び網膜色素上皮細胞の生存率を定量的に検定した。基準波長は650nmとした。
細胞毒性評価には、0.05mLの培地を96ウェルELSAプレートに移し、0.05mLの基質混合物と混合し、暗所で30分間インキュベートした。基質混合物中のテトラゾリウム塩が、乳酸脱水素酵素(LDH)と反応し、赤いホルマザン生成物を生じる。分光光度計を使用して490nmの読み取りで測定することにより、培地中に放出されるLDHを定量的に検定した。培地バックグランドとして、培地(細胞と共にインキュベートは無し)も評価した。全ての角膜内皮細胞と網膜色素上皮細胞とは溶解溶液(1%トリトンX−100(TRITON(登録商標)X-100))中で溶解し、OD490の値を測定した。パーセント細胞毒性は以下の通り表されるものであった。
蛍光染色
0.2%、0.4%、0.6%、0.8%及び1%(w/v)の濃度でγ−PGAを含有する培地中で1日又は3日間培養した細胞をそれぞれ、ライブ/デッド染色キット(LIVE/DEAD staining kit)(モレキュラー・プローブ社(Molecular probes)、#L3224、ユージーン(Eugene)、オレゴン、米国)で染色し、エヌアイエス・エレメント・ソフトウェア(NIS Element software)で撮影した。
γ−ポリ(グルタミン酸)に基づく眼灌流液のインビボ試験
ニュージーランドホワイト種のウサギ(2〜3kg)3羽の眼6個を使用した。ケタラール/カナジン(ketalar/Chanazine)2%(ケタミン:体重1キログラム当たり22mg、キシラジン:体重1キログラム当たり4〜6mg)を筋肉注射し、全身麻酔をかけて手術を行った。手術用顕微鏡下で注意深く、管を装着した針二本を水晶体に接しないようにして角膜を通して挿入した(図8A)。上記管を装着した針のうち1本は、実験用の眼灌流液を満たした容器に接続し、もう1本は空の容器に接続した(図8B)。ペリスタポンプ(流速5mL/分)を使用して灌流液を37℃で60分間、角膜内皮に灌流させた(図8B)。右目は0.4%(w/v)のγ−ポリ(グルタミン酸)に基づく眼灌流液で灌流し、左目は生理食塩水で灌流した。灌流を行っている間、5〜10分の間隔で角膜の厚さを測定した。
角膜の厚さの測定
手動振動子を備えた超音波パキメーターDGH550(DGHテクノロジー社;DGH Technology)を用いて、角膜中央の厚さを測定した。DGH550は、エコー・スパイク法(echo spike technique)を用いて角膜の厚さを測定する超音波パキメーターである。灌流を行っている間、5〜10分の間隔で、超音波パキメーターを用いて角膜の厚さを測定した。
統計分析
統計分析は、少なくとも3重(トリプリケート)で行い、平均±標準偏差(SD)として結果が報告される。分散解析(ANOVA)を用いて、γ−PGAが生体適合性に及ぼす影響を評価した。p値が0.05未満の差を統計的に有意であると見なした。
結果
γ−PGA含有灌流液のオスモル濃度
灌流液のオスモル濃度に対するデキストロース及びγ−PGAの影響は、それぞれ、図1A及び図1Bに示されている。表1には、デキストロース含有灌流液(図1A)及びγ−PGA含有灌流液(図1B)の組成が示されている
5mMのデキストロース、並びに0.2%、0.4%、0.6%、0.8%又は1%のγ−PGAを含む灌流液のオスモル濃度は、それぞれ、304mOsm、309mOsm、314mOsm、319mOsm及び325mOsmであった(図1C)。γ−PGAの濃度が1%から0.2%に減少すると、5mMデキストロース含有灌流液のオスモル濃度は、325から304mOsmに低下した。しかしながら、1mM、2mM、3mM、4mM、5mMのデキストロースを含有するがγ−PGAを含まない灌流液のオスモル濃度はそれぞれ、295mOsm、296mOsm、296mOsm、298mOsm、300mOsmであった(図1A)。従って、灌流液のオスモル濃度に対するデキストロースの影響はγ−PGAの影響より少なかった。
γ−PGA含有灌流液の粘度
図2は、γ−PGAは濃度依存的に灌流液の粘度を上昇させたが、5mMデキストロースの存在は粘度に何ら影響を与えなかったことを示している。5mMデキストロース、並びに0%、0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、又は1%のγ−PGAを含有する灌流液の粘度はそれぞれ、室温(25℃)で、0.62cP、1.15cP、1.72cP、2.39cP、3.11cP、及び3.93cP(センチポアズ)であった(表2)。温度を体温(37℃)まで上げると、灌流液の粘度は低下した。5mMデキストロース、並びに0%、0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、又は1%のγ−PGAを含有する灌流液の粘度はそれぞれ、37℃で、0.32cP、0.75cP、1.20cP、1.73cP、2.33cP、及び2.96cPであった(表3)。
γ−PGA含有灌流液の屈折率
0.25%(w/v)、0.5%(w/v)、0.75%(w/v)及び1%(w/v)のγ−PGAを含有する各灌流液の屈折率はそれぞれ、1.3346、1.3350、1.3355及び1.3360であった(図3)。灌流液の組成は、122mMのNaCl、5.08mMのKCl、1.05mMのCaCl2、0.98mMのMgCl2、25.0mMのNaHCO3、3.0mMのNa2HPO4、0〜1%(w/v)のγ−PGA、並びにpHを7.2〜7.4に調整するためのHCl又はNaOHを含む。
γ−PGAの生体適合性
γ−PGA含有培地で培養した、ウシ角膜内皮(bCE)細胞及びヒト網膜色素上皮細胞(hRPE)の第1日目及び第3日目のものについて、細胞生存率と細胞毒性を、WST−8アッセイ及びLDHアッセイで評価した(図4A〜図4B、及び図5A〜図5B)。WST−8アッセイを用いて、生存細胞数を測定した。0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、及び1%(w/v)のγ−PGAで処理したbCE細胞由来培地のOD450nmはそれぞれ、1日目で0.20±0.02、0.19±0.02、0.20±0.02、0.19±0.01及び0.17±0.04であり、3日目では0.53±0.05、0.47±0.04、0.46±0.10、0.44±0.06及び0.41±0.03であった(図4A)。0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、及び1%のγ−PGAで処理したhRPE細胞由来培地のOD450nmはそれぞれ、1日目で0.47±0.05、0.51±0.05、0.52±0.02、0.51±0.06及び0.47±0.07であり、3日目では0.88±0.08、0.88±0.03、0.81±0.07、0.78±0.09及び0.79±0.10であった(図4B)。0.2〜1%の濃度のγ−PGAは、bCE細胞及びhRPE細胞の生存率には何の影響も与えなかった。
細胞質膜の損傷又は破裂を定量することにより、細胞死を検定した。LDH細胞毒性検出は、死細胞と原形質膜を損傷した細胞を検出するための比色アッセイである。(細胞質膜の損傷に起因して)培地上清に存在するLDHは、黄色のテトラゾリウム塩を赤色のホルマザン類色素に変換する共役反応に関与し、この赤色色素の吸光度を492nmで測定する。ホルマザンの量は培地中のLDH量と正比例し、LDHの量は、次いで死細胞や損傷細胞の数と正比例する。0.2%、0.4%、0.6%、0.8%及び1%のγ−PGAを含有する培地におけるbCE細胞の細胞毒性パーセントはそれぞれ、1日目で7.77±3.5%、8.90±3.5%、5.76±2.8%、10.86±2.8%及び10.65±2.5%であり、3日目で16.11±5.8%、12.11±6.6%、8.66±4.0%、4.61±3.7%及び2.76±0.4%であった。hRPE細胞では、0.2%、0.4%、0.6%、0.8%及び1%のγ−PGAを含有する培地における細胞毒性パーセントはそれぞれ、1日目で2.97±0.6%、2.74±0.4%、3.95±1.0%、2.99±1.0%及び4.78±0.9%であり、3日目で2.85±0.3%、2.77±1.5%、3.74±1.5%、8.11±1.9%及び10.37±0.9%であった。γ−PGA含有培地と陰性対照群との間に有意な差は認められなかった(図5A〜B)。細胞毒性パーセントは、死細胞の数を細胞総数で除算した値を表し、以下の式によって算出された。
細胞の蛍光染色
ライブ/デッド染色キット(Live/Dead staining kit)は、カルセイン−AMとエチジウムホモ二量体(EthD−1)の2種類の蛍光色素を利用するものである。カルセインAMは広く使用されている緑色蛍光細胞マーカーであり、膜透過性がある。一旦細胞の中に入り込むと、カルセインAM(非蛍光分子)は、細胞内のエストラーゼによって加水分解され、負に荷電した緑色蛍光カルセインとなる。蛍光カルセインは、生存細胞内では細胞質に保持される。これは細胞生存率を測定するためのエンドポイント・アッセイである。蛍光シグナルは485nmの励起波長と530nmの放射波長によってモニターされる。アッセイにおいて生成される蛍光シグナルは、試料中の生存細胞の数に比例する。死細胞の膜は損傷している。エチジウムホモ二量体−1(EthD−1)が損傷した細胞に侵入し、核酸と結合すると蛍光を発する。EthD−1は、損傷した細胞又は死細胞中で明るい赤色蛍光を生成する。γ−PGA含有培地中では、殆ど全てのbCE細胞及びhRPE細胞が生存していた(図6A〜図6B及び7A〜図7B)。
角膜の厚さに対するγ−PGA含有灌流液の影響
ウサギの眼に挿入した、管が装着された針二本を介して、灌流液を眼内に灌流させている間の角膜の厚さを測定した(図8A)。ペリスタポンプを使用して灌流液を流動させた(図8B)。灌流を始めた最初の20分の間に、角膜の厚さが増加した。図9には、γ−ポリ(グルタミン酸)に基づく眼科用溶液を灌流させた群では、生理食塩水を灌流させた群よりも角膜の厚さの変化が有意に小さかったことが示されている。生理食塩水を灌流させた群と、0.4%(w/v)のγ−ポリ(グルタミン酸)含有溶液を灌流させた群とで角膜厚さの変化はそれぞれ、47μmと32μmであった。最初に起こった角膜厚さの増加は、官が装着された針を挿入したことによって生じた損傷によるものと考えられる。その後、γ−ポリ(グルタミン酸)に基づく眼灌流液を灌流させた角膜の厚さは、残り1時間の潅流で角膜厚さが約36μmに膨潤し、ごく僅かに増加した(図9)。一方、生理食塩水を灌流させた角膜厚さは、残り60分の潅流で連続した増加を示し、1時間灌流させた最後の厚さは約58μmに膨潤しており、これはγ−ポリ(グルタミン酸)に基づく眼灌流液を灌流させた群の角膜の厚さと比較して、およそ1.6倍であった。

Claims (20)

  1. 患者の眼組織を灌流するのに十分な量の眼灌流液であって、
    (a)上記液の粘度を増加させるのに有効な量のγ‐ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びに
    (b)上記γ−PGA及び/又はその塩のための、眼科的に許容可能な水性賦形剤であって、患者の眼組織の灌流に用いるための水性賦形剤
    を含む、眼灌流液。
  2. 上記灌流液の粘度が、0.32〜50センチポアズ、又は0.32〜30センチポアズ、又は0.32〜3.93センチポアズである、請求項1に記載の眼灌流液。
  3. 上記灌流液のオスモル濃度が、1リットル当たり290〜320mOsmである、請求項1に記載の眼灌流液。
  4. 上記灌流液が、架橋ポリグルタミン酸を含まず、かつ、さらなるポリアミノ酸又はポリマーを含まない、請求項1に記載の眼灌流液。
  5. 上記灌流液の屈折率が、1.330〜1.344である、請求項1に記載の眼灌流液。
  6. 上記眼科的に許容可能な水性賦形剤が、電解質と、緩衝剤と、エネルギー源とを含有する平衡塩類溶液を含む、請求項1に記載の眼灌流液。
  7. 眼灌流液であって、
    (a)上記灌流液の粘度を増加させるのに有効な量のγ−ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びに
    (b)上記γ−PGA及び/又はその塩のための、眼科的に許容可能な水性賦形剤
    を含む、眼灌流液。
  8. 上記灌流液の粘度が、0.32〜50センチポアズ、又は0.32〜30センチポアズ、又は0.32〜3.93センチポアズである、請求項7に記載の眼灌流液。
  9. 上記灌流液のオスモル濃度が、1リットル当たり290〜320mOsmである、請求項7に記載の眼灌流液。
  10. 上記灌流液の屈折率が、1.330〜1.344である、請求項7に記載の眼灌流液。
  11. 上記灌流液が、架橋ポリグルタミン酸を含まず、かつ、さらなるポリアミノ酸又はポリマーを含まない、請求項7に記載の眼灌流液。
  12. 上記眼科的に許容可能な水性賦形剤が、電解質と、緩衝剤と、エネルギー源とを含有する平衡塩類溶液を含む、請求項7に記載の眼灌流液。
  13. 上記γ−PGAの分子量が、10,000〜2,000,000ダルトン、又は1,000,000〜2,000,000ダルトンである、請求項7に記載の眼灌流液。
  14. (a)請求項7に記載の眼灌流液、並びに
    (b)印刷された説明であって、患者の眼組織を灌流するための説明を含む添付文書
    を含む、医薬キット。
  15. 眼科手術中に患者の眼組織を灌流するのに十分な量の眼灌流液であって、
    (a)上記溶液の粘度を増加させるのに有効な量のγ‐ポリグルタミン酸(γ−PGA)及び/又はその塩、並びに
    (b)上記γ−PGA及び/又はその塩のための、眼科的に許容可能な水性賦形剤であって、眼科手術中において患者の眼組織に対するストレス誘導性損傷を低減するのに用いるための水性賦形剤
    を含む、眼灌流液。
  16. 上記外科手術が、硝子体切除術、白内障摘出術、水晶体吸引術、前眼部再建術、及び水晶体乳化吸引術を含む、請求項15に記載の眼灌流液。
  17. 上記灌流液の粘度が、0.32〜3.93センチポアズである、請求項1に記載の眼灌流液。
  18. 上記灌流液の粘度が、0.32〜3.93センチポアズである、請求項7に記載の眼灌流液。
  19. 上記眼科的に許容可能な水性賦形剤が、抗酸化物質をさらに含む、請求項7に記載の眼灌流液。
  20. 上記灌流液のオスモル濃度が、1リットル当たり290〜320mOsmである、請求項8に記載の眼灌流液。
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