本発明は、活性医薬成分レチガビンの放出調節特性を有する医薬組成物を対象とする。本発明の放出調節組成物により、最高20時間以上にわたり、活性医薬成分の持続性の血漿濃度が生じる。本発明の放出調節組成物は、多種多様な神経関連障害の治療に特に有用である。これは、持続性または長期の血漿濃度は、より長い期間の薬理学的作用をもたらすことによる。これらの特性に起因して実現することができる利益は、有効性の増強、投与量の低下、および投与の減少を包含する。また、これらおよびその他の特徴は、患者の服薬遵守の改善、および有害な薬物反応の発生率の減少ももたらすことができる。
1つの特定の実施形態では、本発明は、活性医薬成分のN−(2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルまたは2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼンを含有する医薬組成物を対象とする。この特定の実施形態のための例示的な製剤の構成成分は、約10〜15%の薬物送達マトリックス、約20〜30%の微結晶セルロース放出調節ポリマー/結合剤、約1〜5%のヒプロメロース2910放出調節ポリマー/結合剤、約3〜5%のコポビドン(copovidone)結合剤、約1%のクロスポビドン崩壊剤、約2〜7%のクロスカルメロースナトリウム崩壊剤、約2〜6%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)界面活性剤、約2〜6%のその他の界面活性剤、約0.2〜1.0%のステアリン酸マグネシウム滑沢剤、約0.2〜1.0%の二酸化ケイ素流動促進剤、および腸溶コーティングを含むことができる。例示的な血漿濃度は、投与してから約10時間超後に最大に達することができ、約10〜20時間以上にわたり持続する。また、有益な血漿濃度を、投与後30〜40時間にわたり観察することもできる。2−アミノ−4−(−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼンを含有する放出調節医薬組成物は、てんかんなどの発作性障害、神経因性疼痛、炎症、過活動性膀胱、尿失禁、腸機能障害、腸管の潰瘍性状態、胃運動亢進、喘息、高血圧、偏頭痛および摂食障害を含めた、神経系の興奮性亢進および/または平滑筋の興奮性亢進により特徴付けられる多様な障害を治療するのに有用である。一般に、2−アミノ−4−(−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼンを含有する、放出調節医薬組成物は、抗ジストニア剤(antidystonic)として有用であり、筋肉の緊張度および痙縮を有効に低下させる。さらに、これらの放出調節組成物は、例えば、低下した脳の血流の条件下、例として、脳卒中およびその他の虚血関連事象の間における神経保護剤としても、血流に影響を及ぼす血管疾患、例として、レイノー症候群、性交不能、早漏、女性の無オルガスム症(anoryasmia)、陰核勃起不全、膣の怒張、性交疼痛症および腟痙の治療にも有用である。さらに、放出調節組成物は、可逆的な心臓の停止を達成し、冠状動脈の血流を修復するのにも有用である。また、放出調節医薬組成物は、神経変性の治療に有用でもある。放出調節組成物により有効に治療されるその他の障害は、断続的な跛行、頻尿、夜間多尿、反射亢進、遺尿、脱毛症、月経困難(dysmenorrheal)、良性の前立腺肥大、早期分娩、糖尿病関連障害、例として、網膜症、ニューロパシー、腎障害、末梢循環障害および皮膚潰瘍形成を包含する。また、放出調節組成物は、行動障害、例として、ニコチン耽溺禁断、躁病、双極性疾患および不安障害を治療するのにも有用である。
本発明の放出調節組成物は、典型的な徐放性または遅延放出性の製剤の特性とは異なる特性を示す。一般に、徐放性または遅延放出性の製剤は、一部または全部の用量の送達を遅らせるように、活性医薬成分(API)の溶出または放出の速度を遅延させることに基づく。したがって、APIのin vivoにおける吸収プロファイルは、そのin vitroにおける溶出プロファイルと平行する。例えば、徐放性製剤が、APIを10時間の期間にわたり放出する場合、その吸収プロファイルも同様に、この10時間の期間にわたり、増加するかまたは持続性の血漿濃度を示し、用量のうちのほとんどを放出した後には、着実な減退が続く。
図1は、これらの徐放性および/または遅延放出性の製剤の特性を、2つのモルヒネ製剤、すなわち、Avinza(登録商標)およびKapinol(登録商標)(Kadian(登録商標))について例示する。図1Aは、Kadian(登録商標)のin vitroにおける溶出が、腸液を模擬する条件(例えば、pH7.5)下で、約7時間において約100%完了することを示す。Avinza(登録商標)のin vitroにおける溶出は、これらの状態下で、約24時間後に約90%完了する。対応して、in vivoにおける吸収プロファイルも、これらの遅延放出速度と平行する。Kadian(登録商標)の血漿濃度は、投与の約6〜7時間後にピークに達し、その後、著しい減退が続く。Avinza(登録商標)の血漿濃度は、はるかにより低い最大値を有する濃度プロファイルを示し、濃度プロファイルは、24時間持続する放出期間にわたり比較的一定しており、その後、減退が続く。
いくつかの実施形態では、本発明の放出調節製剤は、模擬の腸条件下におけるそれらのin vitroの溶出プロファイルに基づいて予想されるであろう特徴と比較して非常に異なるin vivoにおける吸収の特徴を示す。下記にさらに記載するように、放出調節製剤からは、レチガビンの着実な放出が得られ、約80%以上が、模擬の腸条件下において、約4〜6時間で溶出しきった状態になる。しかし、レチガビンの血漿濃度により測定した場合のin vivoにおける吸収プロファイルは、溶出プロファイルと平行しない。むしろ、最大レチガビン濃度が、そのピークの放出の後、十分な時間が経ってから観察され、顕著な血漿レベルで、予想されるであろうよりも少なくとも約4〜8倍長い間維持される。
予想されるレチガビンの血漿濃度と観察されるレチガビンの血漿濃度との間の相関性の欠如を、図2に示す。手短に述べると、図2は、レチガビンの溶出速度の変化を模倣する、吸収速度定数(Ka)の変化の効果を、最大およそ27時間の、75%のレチガビンの放出および吸収を可能にする時間範囲にわたり例証する模擬実験を示す。この模擬実験は、腸溶性ポリマーを、本発明の放出調節製剤上のコーティングの一部として含むことによって説明される、1時間の時間差を含んだ。したがって、0.2に等しいKaにより示す(点線)、75%の活性成分の6.9時間による放出は、被験体への投与後の計7.9時間を示す。この速度は、下記の図4および実施例Vに示す、観察されたin vitroにおける溶出の結果に酷似する。
レチガビンの吸収の上記の模擬した変化の上に、例示的な、本発明の放出調節製剤の濃度−時間のプロファイル(円(●))として示す、観察された吸収を重ねる。観察結果のオーバーレイは、最大濃度を、投与の約24時間後またはin vitroにおける溶出の18時間超後に達成する持続性の吸収プロファイルを示す。これらの結果は、本発明の放出調節製剤は、それらの比較的素早い溶出特性に基づくと、非特徴的な長い持続性の吸収を示すことを示している。これらの放出調節特性は、発作および神経因性疼痛を含めた、多種多様な神経因性障害、ならびにこれまでに例示したものの治療のために、レチガビンの安全な、効能を示す用量を送達するのに特に有用である。
活性医薬成分またはAPIまたは活性成分は、薬学的に活性である、薬物中の化学物質または物質を指す。これらの用語は、本明細書においては、同義的に使用し、全てのそのような当技術分野で認識されている意味を包含する。本発明の活性医薬成分は、化学物質または物質の薬学的に許容できる形態を包含する。本発明の製剤に有用な活性医薬成分の具体例は、N−(2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルまたは2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼンである。この化合物はまた、レチガビンとしても、当技術分野で公知であり、
N−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステル
の構造を有する。2−アミノ−4−(−フルオロベンジルアミノ)−1エトキシカルボニルアミノベンゼンの構造および合成が、例えば、米国特許第5,384,330号、第5,914,425号および第6,538,151号、ならびにBlackburn−Munroら、CNS Drug Reviews、11巻:1〜20頁(2005年)、ならびに本明細書に引用する参考文献中に記載されている。用語「2−アミノ−4−(−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼン」、「N−(2−アミノ−4−(4−フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステル」または「レチガビン」は、化合物の任意の薬学的に許容できる形態を包含することを理解すべきである。
活性成分の薬学的に許容できる形態は、例えば、投与しようとする用量で生理学的に容認でき、薬学的活性を保持する、言及する活性医薬成分の変更形態を包含する。活性医薬成分の薬学的に許容できる形態は、例えば、溶媒和物、水和物、異種同形体、多形、仮像、中性の形態、酸付加塩の形態、塩基塩、エステルおよびプロドラッグを包含する。
例えば、用語「薬学的に許容できる酸の塩」は、無毒性のアニオンをもたらす酸から形成された酸付加塩を指す。薬学的に許容できるアニオンとして、非常に多くのその他の例のうち、これらに限定されないが、酢酸、アスパラギン酸、安息香酸、炭酸水素、炭酸、重硫酸、硫酸、塩化物、臭化物、ベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、リン酸、酸性リン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、ホウ酸、カンシル酸(camsylate)、クエン酸、エジシル酸、エシル酸(esylate)、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルクロン酸、グルコン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、糖酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、トシル化物およびトリフルオロ酢酸の塩が挙げられる。これらに限定されないが、ヘミ硫酸塩を含めた、ヘミ塩も同様に、本発明に用いられる。適切な塩に関する総説については、「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」、StahlおよびWermuth著(Wiley− VCH, Weinheim, Germany、2002年)を参照されたい。化合物レチガビンの薬学的に許容できる酸付加塩は、当技術分野で周知の方法を使用して、遊離塩基の溶液または懸濁液を、約1化学当量の薬学的に許容できる酸を用いて処理することによって調製する。従来からある濃縮および再結晶の技法を、塩の単離において利用する。
用語「薬学的に許容できる溶媒和物」は、活性医薬成分、およびこれらに限定されないが、水およびエタノールを含めた、化学量論または非化学量論の量の1つまたは複数の薬学的に許容できる溶媒分子を包含する分子複合体を指す。したがって、溶媒和物という用語は、1つの例として水和物を、別の例としてエタノレートを包含する。
本明細書で使用する場合、活性医薬成分の血漿濃度に関して使用する場合の用語「持続性」は、血漿API濃度を、ピーク血漿濃度の約50%の範囲内に長期間にわたり維持することを意味することを意図する。持続性の濃度は、血漿API濃度を、ピーク血漿濃度の約48%、45%、43%、40%、35%、33%、30%、28%、25%、23%、20%、18%、15%、12%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%の範囲内に維持することを包含する。この用語は、長期の期間内の小さな濃度の変動を包含することを意図する。長期の期間は、少なくとも約3時間(hr)を指し、30時間以上の期間を包含することができる。持続性のAPI血漿濃度についての例示的な長期の期間として、例えば、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間および30時間以上、ならびにこれらの例示的な点の間にある全ての期間が挙げられる。さらにまた、長期の期間は、API血漿濃度の認識できるプラトーがある限り、3時間未満であってもよい。持続性の濃度の例は、図3(製剤3、有食)に示すように、レチガビンの血漿濃度を、投与の約8時間後から、投与のおよそ30時間後まで、約200ng/mlに維持することである。図3はまた、本発明の医薬製剤を使用して、3つのさらなる持続性の濃度も例示する。
本明細書で使用する場合、用語「薬物送達マトリックス」は、構造的安定性をもたらし、活性医薬成分の放出を制御する不活性な物質を意味することを意図する。本発明の製剤中で使用する薬物送達マトリックスは、投与すると、活性医薬成分の長期に及ぶ、緩慢かつ比較的規則的、漸進的な放出を示すことによって特徴付けられるマトリックスを包含する。薬物送達マトリックスの例として、非スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリカルボフィルが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「賦形剤」は、薬学的に不活性な物質を意味することを意図する。賦形剤は、多種多様な目的で、本発明の製剤中に含ませることができ、それらとして、例えば、薬学的に許容できる増量剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、薬物送達マトリックス、放出調節剤、流動促進剤、希釈剤、ビヒクル、緩衝剤、安定化剤、浸透圧用の薬剤、甘味剤、凍結保護剤、リオプロテクタント(lyoprotectant)、抗酸化剤、キレート剤および/または保存剤が挙げられる。賦形剤は、当技術分野で周知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(旧称:Remington’s Pharmaceutical Sciences)、Alfonso R. Gennaro編、Lippincott Williams & Wilkins;20版(2000年12月15日)に見出すことができる。
本明細書で使用する場合、用語「崩壊剤」は、固体の医薬製剤、例として、錠剤またはカプセル剤の投与後の分割または崩壊を促す賦形剤または賦形剤の混合物を意味することを意図する。したがって、崩壊剤は、活性医薬成分を含めた、製剤の構成成分の放出を促す賦形剤である。本発明の医薬製剤に有用な崩壊剤として、例えば、多様な架橋結合セルロース組成物、例として、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムおよびデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられる。当技術分野で周知のその他の崩壊剤もまた、本発明の製剤中で使用することができ、それらとして、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「界面活性剤」は、その中に物質を溶出させる液体の表面張力を低下させるように機能する物質を意味することを意図する。界面活性剤として、例えば、有機溶媒および水溶液の両方に対して部分的な溶解性を示す両親媒性の有機化合物が挙げられる。界面活性剤の一般的な特徴は、水の表面張力を低下させる能力、油との間の界面張力を低下させる能力、およびまた、ミセルを形成する能力を包含する。本発明の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤を包含する。界面活性剤は、当技術分野で周知であり、例えば、Holmberg ら、Surfactants and Polymers in Aqueous Solution、2版、John Wiley & Sons Ltd.(2003年);Surfactants: A Practical Handbook、K. Robert Lange編、Hanser Gardner Publications(1999年);Vogel, A.I.、Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry、5版、Prentice Hall(1996年)に記載されているのを見出すことができる。
手短に述べると、非イオン性界面活性剤として、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグリコシド、例として、オクチルグルコシドおよびデシルマルトシド、脂肪アルコール、例として、セチルアルコールおよびオレイルアルコール、コカミドMEA、コカミドDEAおよびコカミドTEAが挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体例として、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85等を含めた、ポリソルベート;例えば、ポロキシアルコールもしくはポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)としてもまた公知であるポロキサマー188、ポロキサマー407、またはポリエチレン−ポリプロピレングリコール等を含めた、ポロキサマー、および例えば、直鎖または分枝の、飽和または不飽和であって、モノ−またはポリヒドロキシル化されていてもよい脂肪酸を含めた、スクロースエステルが挙げられる。ポリソルベート20は、Tween 20、PEG(20)モノラウリン酸ソルビタン、およびポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタンと同義である。
イオン性界面活性剤として、例えば、アニオン性、カチオン性および双性イオンの界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、例えば、スルホン酸に基づくまたはカルボン酸に基づく界面活性剤、例として、セッケン、脂肪酸の塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、およびその他のアルキル硫酸の塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤として、例えば、四級アンモニウムに基づく界面活性剤、例として、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、その他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、ポリエトキシ化獣脂アミン(POEA)、および塩化ベンザルコニウムが挙げられる。双性イオンまたは両性の界面活性剤として、例えば、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタインおよびココアムホグリシネートが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「結合剤」は、固体粒子または粉末の材料に、結合を引き起こす性質、一様な粘稠度および/または結束をもたらして、医薬製剤が圧縮後に未変化の状態を維持するのを確保し、その自由に流動する性質を促進する賦形剤または賦形剤の混合物を意味することを意図する。また、結合剤は、放出特性を調整するポリマーを包含すること、したがってまた、「放出調節ポリマー」を包含することも意図する。結合剤は、当技術分野で周知であり、それらとして、例えば、ポビドン、コポビドン、メチルセルロース、ヒプロメロース2910、ポリエチレングリコール(PEG)、例として、PEG6000および/またはPEG8000、ならびにヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。本発明の製剤に適用できるその他の周知の結合剤として、デンプン、ゼラチン、ならびに糖、例として、スクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜およびラクトース、ガム、例として、アカシア、アルギン酸ナトリウム、パンワガム(panwar gum)、ガッチガム、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「滑沢剤」は、製剤の構成成分の製造機器への接着を低下させるかまたは予防する賦形剤または賦形剤の混合物を意味することを意図する。滑沢剤はまた、粒子間の摩擦を低下させ、粉末物質の製造機器を通る流速を改善することもできる。本発明の製剤に有用な例示的な滑沢剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。当技術分野で周知のその他の滑沢剤もまた、本発明の製剤中で使用することができ、それらとして、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油、ドデシル硫酸ナトリウム、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「流動促進剤」は、粉末物質の流れの特徴を改善する物質を意味することを意図する。本発明の製剤中で使用することができる例示的な流動促進剤として、例えば、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられる。
本明細書で使用する場合、障害に関して使用する場合の用語「神経系の興奮性亢進」は、異例のまたは過剰な神経系の活動の状態を意味することを意図する。この活動は一般に、中枢神経系(CNS)と関連があるが、この用語の意味するものとしてまた、末梢神経系(PNS)の興奮性亢進も包含する。また、神経系の興奮性亢進を、哺乳動物における、例えば、電位型カリウムチャネル、例として、KCNQ2カリウムチャネル、KCNQ3カリウムチャネルおよび/またはKCNQ5カリウムチャネルを含めた、異常なカリウムチャネルの活性により特徴付けることもできる。神経系の興奮性亢進により特徴付けられる例示的な障害として、例えば、発作、てんかん、けいれん、神経因性疼痛、神経痛、急性および/または慢性の脳への血液の供給の低下、神経変性障害、医薬の禁断、中毒、ならびに過活動性膀胱、さらに、これまでに例示したその他の障害が挙げられる。発作性障害の具体例は、てんかんである。神経因性疼痛の具体例として、アロディニアおよび痛覚過敏(hyperalgesa)が挙げられる。神経痛の具体例として、三叉神経痛(TN)、非定型の三叉神経痛(ATN)、および治療後神経痛が挙げられる。血液の供給の低下として、例えば、脳卒中等の状態が挙げられ、例示的な神経変性障害として、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、およびパーキンソン病が挙げられる。過活動性膀胱は、膀胱制御の喪失、例として、尿失禁、膀胱の不安定性、夜間多尿、膀胱の反射亢進および遺尿を包含する。
本明細書で使用する場合、障害または疾患に関して使用する場合の用語「治療(treating)」、「治療する(treat)」またはそれらの文法上の均等物は、言及する障害または疾患の指標である臨床症状を予防する、寛解させる、またはその重症度を低下させることを意味することを意図する。したがって、この用語は、標的とされる障害または症状を阻害する、停止させる、または緩和するための投与、および標的とされる障害または症状の発症を未然に防ぐための予防的治療を包含することを意図する。障害の治療の具体例が、2−アミノ−4−(−フルオロベンジルアミノ)−1−エトキシカルボニルアミノベンゼンを本発明の製剤として投与して、発作の重症度または発生の頻度を低下させることである。
本明細書で使用する場合、本発明の医薬製剤に関して使用する場合の用語「有効量」は、標的とされる障害または疾患と関連がある少なくとも1つの症状を寛解させるための活性医薬成分の量を意味することを意図する。
本明細書で使用する場合、用語「放出調節」は、製剤を選ぶことによって、所望の薬物動態学的プロファイルをもたらすように設計されている組成を意味する。例えば、用語「放出調節」は、遅延放出、パルス放出および持続放出を、単独でまたは任意の組合せとして包含することができる。
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容できる」は、ヒトおよび動物の両方に対して使用するための化合物、組成物および成分を含む。例えば、用語「薬学的に許容できる塩」は、獣医学的に許容できる塩を含む。適切な薬学的に許容できる溶媒和物は、水和物を包含する。
本明細書で使用する場合、用語「Cmax」は、平均最大血漿レベル濃度を指す。
本明細書で使用する場合、用語「AUC」は、定常状態にある投与間隔にわたる血漿濃度対時間曲線下の平均面積を指す。
いくつかの実施形態では、本発明は、約30〜70%のN−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物、約5〜30%の、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を包含する薬物送達マトリックス、および腸溶性ポリマーを含む放出調節医薬製剤を提供する。本発明の製剤は、被験体への投与後に、80%のレチガビンのin vitro放出に必要な時間よりも4〜20時間長い間にわたるレチガビンの持続性の血漿濃度をもたらす。
いくつかの実施形態では、本発明は、約30〜70%のN−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物、約5〜30%の、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を包含する薬物送達マトリックス、約1.0〜10%のアニオン性界面活性剤、および腸溶性ポリマーを含む放出調節医薬製剤を提供する。本発明の製剤は、被験体への投与後に、80%のレチガビンのin vitro放出に必要な時間よりも4〜20時間長い間にわたるレチガビンの持続性の血漿濃度をもたらす。
いくつかの態様では、本発明は、活性医薬成分と共に使用するのに適している、放出調節医薬製剤を対象とする。一実施形態では、放出調節製剤は、レチガビンの持続性の血漿濃度を送達するのに有用である。レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物は、本発明の放出調節医薬製剤中に、意図する用途および治療計画に応じて多種多様な用量および量で製剤化することができる。一般に、レチガビンは、製剤中に、製剤の総重量の約30〜70%で含ませることができる。より具体的には、レチガビンまたはその薬学的に許容できる形態は、本発明の製剤中に、約40〜60%および約49〜58%のパーセントで含ませることができる。また、レチガビンまたはその薬学的に許容できる形態は、例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68または69%で含ませることもでき、これらの例示的なパーセントの間にある全ての値が包含される。したがって、本発明の製剤中のレチガビンの量は、これらのパーセントに対応する全ての重量を包含することができる。例示的なレチガビンのパーセントを、下記の実施例に記載する。レチガビンを、約5mg〜約800mgの範囲に及ぶ用量で投与することができ、この用量は、約100mg〜約700mgの範囲、および約400mg〜約700mgの範囲を包含する。レチガビンの用量は、1日1回、1日2回、1日3回以上投与するために使用する分量を提供することができる。用量は、5mgと800mgとの間の全ての分量のレチガビンを包含することができ、例えば、5mg、10mg、20mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、および間にある全ての値を包含する。
いくつかの実施形態では、レチガビンを、その公知の多形の形態のうちのいずれかとして提供することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,538,151号は、3つのレチガビンの多形、すなわち、A、BおよびCを記載している。いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、純粋な単一の多形を活用することができる。例えば、多形Aを、純粋な形態で、本発明の製剤中に含ませることができる。同様に、本発明の製剤は、純粋な多形Bまたは純粋な多形Cを包含することもできる。さらなる実施形態では、本発明の製剤は、2つ以上の多形の形態の任意の組合せ、例として、AとB、またはAとC、またはBとC、またはAとBとCを提供することができる。さらに、多形の組合せが、本発明の製剤中に存在する場合、多形は、任意の比で存在することができる。
また、本発明の放出調節医薬製剤は、薬物送達マトリックスも含む。本発明の製剤中に含まれる薬物送達マトリックスの量は、レチガビンの生物学的利用率を、中性のpHにおける約80%のその放出よりも長い、約4〜20時間以上にわたり延長するのを支援することができる。一般に、薬物送達マトリックスを、本発明の製剤中に、総製剤重量の約7.5〜30%で含ませる。そのような比率により、被験体への投与後に、模擬の腸条件下におけるその放出よりもはるかに長い、持続性のレチガビンの血漿濃度を得る。また、薬物送達マトリックスは、本発明の製剤中に、約10〜20%のパーセントでも含ませることができ、例えば、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29%、およびこれらの例示的なパーセントの間にある全ての値が包含される。したがって、本発明の製剤中の薬物送達マトリックスの実際の量は、これらのパーセントに対応する全ての重量を包含することができる。薬物送達マトリックスの例示的なパーセントを、下記の実施例に示す。
本発明の医薬製剤に有用な薬物送達マトリックスの具体例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。ヒドロキシプロピルメチルセルロース薬物送達マトリックスの例示的なタイプとして、例えば、Methocel(商標)K4MおよびMethocel(商標)K4M CRを含めた、ヒプロメロース2208が挙げられる。本発明の製剤に有用なその他の薬物送達マトリックスとして、例えば、Methocel(商標)E Premium、Methocel(商標)K15M Premium、Methocel(商標)K100LV Premium、およびエチルセルロースが挙げられる。その他の薬物送達マトリックスとして、例えば、高分子量ヒプロメロース(HPMC)2910(Eとしてもまた公知である)、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、グアルガム、Eudragit NM、Eudragit NE、Kollidon SR、ガラクトマンナン、デキストラン、エチルセルロース、カルボマー、カーボポール、ポリカルボフィル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチル−セルロース、セラック、ゼイン、酢酸セルロース、またはそれらの組合せが挙げられる。そのような薬物送達マトリックスを、単独でまたは組み合わせて使用することができる。また、リン酸二カルシウムも、薬物送達マトリックスと共に含ませることができる。
いくつかの実施形態では、レチガビン対薬物送達マトリックスの比は、間にある任意の比を含めた、約20:1〜約2:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、レチガビン対薬物送達マトリックスの比は、間にある任意の比を含めた、約4:1〜約2:1の範囲であり得る。
本発明の放出調節製剤中の界面活性剤は、総組成の最大約10%の比率で使用することができる。したがって、界面活性剤は、製剤の約1.0〜約10%を構成することができ、一般に、製剤の約3〜約6%、約3.5〜約5.5%、または約4〜約4.5%を構成する。また、界面活性剤は、例えば、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0、5.25、5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、8.0、8.25、8.5または8.75%で含ませることもでき、これらの例示的なパーセントの間にある全ての値が包含される。したがって、本発明の製剤中の界面活性剤の量は、これらのパーセントに対応する全ての重量を包含することができる。界面活性剤の例示的なパーセントを、本明細書下記および異なる総重量を有する製剤についての実施例に示す。例示的な本発明の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および非イオン性のスクロエステルを包含する。例えば、本発明の製剤中の界面活性剤は、約2〜6%のスクロエステル界面活性剤を包含することができる。いくつかの実施形態では、スクロエステル界面活性剤は、存在しない場合がある。さらなる実施形態では、界面活性剤の組合せを使用することができる。そのような組合せは、スクロエステル界面活性剤を包含してもまたは包含しなくてもよい。同様に、本発明の製剤中の界面活性剤は、約2〜6%のSDS界面活性剤も包含することができる。いくつかの実施形態では、SDS界面活性剤は、存在しない場合がある。界面活性剤の組合せを有する製剤の場合、SDSを含んでもまたは含まなくてもよい。本明細書において提供する教示および手引きに従って、その他の界面活性剤、例として、これまでに記載したものまたは当技術分野で周知のその他のものもまた、本発明の医薬製剤中に含ませることができる。例えば、アニオン性界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを、SDSの代わりに使用することができる。
総製剤の、最大約4%、3%、2%または1%のパーセントを含めた、最大約5%を構成するように崩壊剤を含ませることができる。単一の崩壊剤、または2もしくは3つ以上の崩壊剤を含めた、複数の崩壊剤を、総製剤の最大約10%を構成するように製剤中に含ませることができる。例えば、1つまたは複数の崩壊剤を、製剤中に、それぞれの総製剤の約0.5〜5.5%、1〜5.0%、2〜4.5%、2.5〜4.0%または3.0〜3.5%、および最大約5%のこれらの値の間にある全ての範囲のパーセントで含ませることができる。本発明の製剤中で適用できる例示的な崩壊剤として、例えば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、またはそれらの組合せが挙げられる。したがって、本発明の医薬製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5または5.0%のクロスポビドンを含むことができ、これらのパーセントの間にある全ての値が包含される。また、本発明の医薬製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5または5.0%のクロスカルメロースナトリウムも含むことができ、これらのパーセントの間にある全ての値が包含される。これらの例示的な崩壊剤および当技術分野で公知のその他は、総製剤の最大約10%まで、個々にまたはそれらの任意の組合せとして含ませることができる。本発明の製剤の崩壊剤の量および組合せの具体例は、0.5〜5.5%のクロスポビドンもしくはクロスカルメロースナトリウムを包含し、またはそれらの組合せは、0.5〜2.5%のクロスポビドンおよび2.0〜5.5%のクロスカルメロースナトリウム、もしくは0.5〜2.5%のクロスポビドンおよび2.0〜5.5%のクロスカルメロースナトリウムを含む。
本発明の放出調節医薬製剤は、多種多様な賦形剤をさらに含むことができる。賦形剤は、当技術分野で周知であり、例えば、製造プロセス、投与の量および活性医薬成分の送達を促進するのに有用である。本発明の製剤の例示的な賦形剤を、上記に、かつ下記の表1にもさらに記載している。そのような賦形剤は、例えば、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤および流動促進剤を包含する。
本発明の製剤中に含ませることができるさらなる賦形剤は、結合剤を包含する。1つまたは複数の結合剤を、総製剤重量の、最大約35%、30%、25%、20%、15%、10%または5%のパーセントを含めた、最大約40%を構成するように、本発明の製剤中に含ませることができる。単一の結合剤を製剤中に含ませてもよく、または代わって、2、3もしくは4つ以上の異なる結合剤を含ませて、製剤中の結合剤の総パーセントを構成してもよい。例えば、1つまたは複数の結合剤を、本発明の製剤中に、重量に関して、全製剤の最大約40%まで、以下の値の間にあるおよびそれらを上回る全ての範囲を含めた、約5〜40%、20〜35%、25〜30%、および約1〜6%、1〜5%、1〜4%、2〜5%または3〜5%の範囲内のパーセントで含ませることができる。本発明の製剤中で適用できる例示的な結合剤は、例えば、微結晶セルロース、ヒプロメロース2910、コポビドン、ポビドン、デンプンおよびポリエチレングリコール、ならびに重量に関して、全製剤の最大約40%までの、それらの組合せの全てを包含する。本発明の製剤中で適用できる結合剤およびそれらの組合せの例示的な量として、例えば、約5〜40%の微結晶セルロース、0〜10%のヒプロメロース2910、0〜10%のコポビドン、0〜10%のポリエチレングリコールが挙げられる。
したがって、本発明の医薬製剤は、例えば、1、3、5、10、15、20、25、30、35または40%の微結晶セルロース、同様に、これらのパーセントの間にある全ての値の微結晶セルロースを含むことができる。また、本発明の製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10%のヒプロメロース2910、同様に、これらのパーセントの間にある全ての値のヒプロメロース2910を含むこともできる。さらにまた、本発明の製剤は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10%のコポビドン、同様に、これらのパーセントの間にある全ての値のコポビドンを包含することもできる。結合剤、例として、ポリエチレングリコール等もさらに、本発明の医薬製剤中に、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10%、同様に、これらのパーセントの間にある全ての値で含むことができる。これらの例示的な結合剤および当技術分野で公知のその他は、全製剤の最大約40%まで、個々にまたはそれらの任意の組合せとして含ませることができる。本発明の製剤の結合剤の量および組合せの具体例は、25〜30%の微結晶セルロース、25〜30%の微結晶セルロースと3〜5%のコポビドン、25〜30%の微結晶セルロースと1〜4%のヒプロメロース2910、または25〜30%の微結晶セルロースと1〜4%のヒプロメロースと3〜5%コポビドンである。結合剤の量およびそれらの組合せのいくつかのその他の具体例を、下記の表1〜3にさらに例示する。
また、滑沢剤および流動促進剤を、それぞれの賦形剤について、最大約2%以上を構成するように本発明の放出調節医薬製剤中に含ませることもできる。したがって、滑沢剤または流動促進剤について、最大約0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75または2.0%のパーセントを製剤中に含ませることができる。また、2もしくは3つ以上の異なる滑沢剤または2もしくは3つ以上の流動促進剤の種々の組合せも、それぞれの賦形剤について、最大約2%まで、本発明の製剤中に含ませることができる。本発明の製剤に有用な例示的な滑沢剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウム(magnesium sterate)が挙げられる。本発明の製剤に有用な例示的な流動促進剤は、二酸化ケイ素(silicone dioxide)、例として、コロイド状二酸化ケイ素を包含する。本発明の製剤中の滑沢剤および流動促進剤の量の具体例としてそれぞれ、0.5〜2.0%のステアリン酸マグネシウム、および0.25〜1.5%の二酸化ケイ素が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、約5〜30%の薬物送達マトリックス中に、約30〜70%のN−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物を含む。また、製剤は、胃の環境において放出を遅らせるための薬剤も含む。得られた製剤は、例えば、下記の図3ならびに表5および6に示すように、約4〜約36時間続く、長期間にわたり実質的に平らである血漿濃度対時間のプロファイルを示す。胃の環境において放出を遅らせるための薬剤はまた、レチガビンの溶解も遅延させることができる。図5に見られるように、レチガビンの溶解性は、pH3を上回ると、急激に下落する。胃の環境をバイパスすること、例えば、腸溶性ポリマーを使用することによって、レチガビンは最初に、pHが胃よりも高い腸の下部の環境に曝される。さらに、腸の下部のpHは典型的には、レチガビンが良好な溶解性を示すpHよりも高い範囲にある。
いくつかの実施形態では、胃の環境への放出を遅らせる薬剤は、腸溶性ポリマーを包含する。ほとんどの腸溶性ポリマーは、胃中で見出されるpHで安定である表面を提示することによって作動する。しかし、そのようなポリマーは、酸性度のより低いpH、例として、腸の下部中で見出されるpHでは分解する傾向がある。腸溶性ポリマーとして使用することができる材料は、脂肪酸、ろうおよびセラック、ならびにプラスチックを包含する。いくつかの実施形態では、腸溶性ポリマーは、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC−AS)、ならびにメタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸エチルおよびアクリル酸メチルのうちの2つ以上のコポリマーから選択される。いくつかの実施形態では、腸溶性ポリマーは、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルブチレートアセテート、酢酸ビニル−マレイン酸無水物コポリマー、スチレン−マレイン酸モノ−エステルコポリマー、アクリル酸メチル−メタクリル酸コポリマーおよびメタクリレート−メタクリル酸−オクチルアクリレートコポリマーから選択される。前述の腸溶性ポリマーのうちのいずれかを、単独でもしくは組合せとして使用しても、または胃の環境への放出を遅らせるための薬剤として働くことができるその他のポリマーと一緒に使用してもよい。
腸溶性ポリマーを、製剤の放出特性を調整するその他の物質、例として、アルキルセルロース誘導体、例えば、エチルセルロース、架橋結合したポリマー、例として、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、多糖、例として、デキストラン、二機能性架橋結合剤、例として、エピクロルヒドリン、ジクロロヒドリン、1,2−,3,4−ジエポキシブタン等を用いて処理されているセルロース誘導体と併せて使用することができる。また、腸溶性ポリマーは、デンプンおよび/またはデキストリンと併せて使用することもできる。胃の環境において放出を遅らせる薬剤は、本明細書上記に記載したか、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、およびポリ酢酸ビニルとポリビニルピロリドンとのコポリマーから選択される送達マトリックスをさらに含むことができる。
いくつかの実施形態では、腸溶性ポリマー材料は、アニオン性の特徴を示す、薬学的に許容できるメタクリル酸コポリマー等である。例示的なコポリマーは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとに基づき、例えば、1:>3、例えば、およそ1:1または1:2の、遊離のカルボキシル基:メチル−エステル化カルボキシル基の比を有し、135,000の平均分子量を有する。そのようなポリマーは、商品名Eudragit(商標)、例として、Eudragit Lシリーズ、例えば、Eudragit L12.5(商標)、Eudragit L12.5P(商標)、Eudragit L100(商標)、Eudragit L100−55(商標)、Eudragit L−30(商標)、Eudragit L−30 D−55(商標)、Eudragit S(商標)シリーズ、例えば、Eudragit S12.5、Eudragit S12.5P(商標)、Eudragit S100(商標)、Eudragit NE(商標)シリーズ、例えば、Eudragit NE30D(商標)、Eudragit RL(商標)シリーズ、例えば、Eudragit RL12.5(商標)、Eudragit RL100(商標)、Eudragit RL PO(商標)、Eudragit RL30D(商標)、ならびにEudragit RS(商標)シリーズ、例えば、Eudragit RS12.5(商標)、Eudragit RS100(商標)、Eudragit RS PO(商標)およびEudragit RS30D(商標)の下で販売されている。これらの腸溶性ポリマーの好都合な水への適用は、Acryl−Eze(登録商標)(Colorcon,Inc.;West Point、PA)を使用して達成することができる。
上記の腸溶性ポリマーは、単独でまたは可塑剤と併せて使用することができる。使用することができる水性の可塑剤は、プロピレングリコール、または主として、クエン酸トリエチルもしくはクエン酸アセチルトリエチルであるCitroflex(商標)もしくはCitroflex A2(商標)を包含する。また、非水性の可塑剤は、上記で言及した水性の可塑剤、ならびにジエチルフタレートやジブチルフタレート、およびセバシン酸ジブチルを包含する。また、腸溶性ポリマーは、抗粘着剤、例として、タルク、シリカまたはモノステアリン酸グリセリンと併せて使用することもできる。腸溶性ポリマーは、総コーティング重量に関して、約10〜約25重量%の可塑剤、および総コーティング重量に関して、例えば、約5〜約20重量%の抗粘着剤を含めた、最大約50wt%の抗粘着剤と併せて使用することができる。
本発明は、30〜70%のN−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステル(レチガビン)、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物、7.5〜30%の薬物送達マトリックス、0.5〜10%の崩壊剤、賦形剤、および腸溶コーティングを含む医薬製剤をさらに提供し、この医薬製剤は、被験体への投与後に、80%のレチガビンのin vitro放出に必要な時間よりも約4〜20時間長い間にわたるレチガビンの持続性の血漿濃度をもたらす。
本明細書において提供する教示および手引きを考えると、上記に例示したものおよび当技術分野で公知のもの以外の賦形剤もまた、本発明の放出調節医薬製剤中に含ませることができる。例えば、医薬製剤の製造、保存および/または送達において、種々の有用な機能を有する多種多様な賦形剤がある。そのような賦形剤が、その添加またはそれによる置換が、模擬したin vivoにおける条件下において、活性成分(レチガビン)のin vitro放出に必要な時間よりも約4〜20時間長い間にわたる活性医薬成分の持続性の血漿濃度をもたらす、本発明の製剤の能力を実質的に変えない限り、いずれの賦形剤であっても、本発明の製剤中に含ませることができる。さらにまた、賦形剤、例として、補助物質、担体および/または希釈剤を含めた、薬学的に許容できる担体も、本発明の製剤中に含ませることができる。そのようなその他の賦形剤の例として、リン酸二カルシウム、および腸溶コーティング、例として、Eudragit(商標)またはAcryl−Eze(登録商標)(Evonik IndustriesおよびColorconを通して入手可能である)が挙げられる。上記の構成成分の一部または全部を種々の組合せおよび比率で含有する本発明の医薬製剤を、下記の実施例および表1〜3にさらに例示する。
本明細書において例示する構成成分を有する本発明の医薬製剤からは、活性医薬成分の放出の調整が得られ、したがって、プラトーまたはピークに近い血漿濃度が、即時放出性製剤と比較しても、または徐放性製剤と比較しても、長期間にわたり持続する。図3は、有食状態および絶食状態の両方における、いくつかの例示的な本発明の製剤についての、そのような持続性の血漿濃度を例証する。そこに示すように、活性成分は、最大に近い濃度まで、特定の製剤に、かつ個体が、有食状態にあるかまたは絶食状態にあるかどうかに応じて、約2〜5時間以上の範囲で上昇する。最大に近い濃度に接近する濃度が、約25〜30時間に及び持続する。
したがって、本発明の放出調節医薬製剤は、約3〜約36時間、約3〜約28時間、約4〜約25時間、5〜約20時間、6〜約15時間、または約5〜約10時間の持続性の血漿濃度を送達することができる。一般に、本発明の製剤は、被験体への投与後に、80%のレチガビンのin vitro放出に必要な時間よりも4〜20時間長い間にわたるレチガビンの持続性の血漿濃度をもたらすことができる。本発明の放出調節製剤については、in vivoにおいて観察された4〜20時間の持続性の血漿濃度は、模擬したin vivoの条件下におけるin vitroの溶出プロファイルに比して予想外であった。
模擬したin vivoの条件下におけるレチガビンのin vitroの放出は、レチガビン製剤を、胃の条件を模擬することができる酸性度に対する一定期間の暴露の下に置くことを含む。例えば、図4および下記の実施例Vでは、胃の条件を、最初に、レチガビン製剤を0.1N HClに1時間暴露させることによって模擬する。腸溶性ポリマーを組み込んだ、本発明の製剤は、図4および実施例Vに示すように、これらの条件下では、レチガビンの最低限の放出を示すことが予想される。胃の条件に対する暴露を模擬するための、最初の0.1N HClに対する暴露の後、次いで、試料を、pH7.5のホウ酸緩衝系に暴露する。これらの条件は、単に例示的なものに過ぎず、その他の条件を模擬実験において利用することができることが当業者には明らかであろう。例えば、その他の緩衝系を利用することができる。
in vitroにおける溶出プロファイルを、in vivoにおける性能または生物学的利用率の指標となるように設計した条件下で得ることができる。そのようなin vitroの条件は、当技術分野で周知であり、それらとして、例えば、実施例Vで利用したホウ酸緩衝系が挙げられる。その他の指標となるin vitro−in vivoの条件は、当業者には容易に明らかとなり、規制および業界の標準化の対象となっている(United States、Dept. of Health and Human Services、Food and Drug Administration、Guidance for Industry, SUPAC−MR: Modified Release Solid Oral Dosage Forms, Scale−Up and Postapproval Changes: Chemistry, Manufacturing, and Controls; In Vitro Dissolution Testing and In Vivo Bioequivalence Documentation GPO、1997年)。また、in vitro−in vivoの相関性(IVIVC)は、多数の研究の対象となっており、in vitroにおける薬物製品の溶出とin vivoにおける生物学的利用率との間の相関性を示す、生物薬剤学的な薬物の分類体系(biopharmaceutics drug classification system)をもたらすに至ってもいる。この分類体系は、薬物吸収の速度および程度の制御における根本的なパラメータとしての、薬物の溶出および消化器における透過性に基づいている。(Amidonら、Pharm Res.、12巻(3号):413〜20頁(1995年);Cardot ら、Dissolution Tech.、15〜19頁(2007年2月))。薬物クラスは、1.高い溶解性−高い透過性の薬物、2.低い溶解性−高い透過性の薬物、3.高い溶解性−低い透過性の薬物、および4.低い溶解性−低い透過性の薬物と定義されている。この分類スキームに基づいて、in vivoにおけるプロセスと確実に相関し得るin vitroにおいて薬物の溶出を試験する方法についての標準が開発されている。
以下の変数が、IVIVCについての考察のためのガイドラインとして示されている。1)in vitroでの実験における例示的な相関関係を、バスケットスピンまたはパドルによる方法を使用して行うことができる。2)許容できるスピードは、これらの2つの方法については典型的には、約50rpmである。3)この系のpHは、約6.8〜約7.5の範囲であり得、7.4が典型的である。pHは、この範囲で作動することができる任意の緩衝系により維持することができ、緩衝系として、例えば、リン酸緩衝剤およびホウ酸緩衝剤が挙げられる。4)溶出実験は、界面活性剤を含む。信頼できる相関性のために、界面活性剤の量は、医薬活性成分の溶解性に基づいて必要な最低限の量とする。また、最低限の量を上回る任意の量も使用してよい。しかし、そのような実験は、in vivoにおける相関性を求めるためではなく、製剤のその他の態様を研究するために使用されるであろう。
IVIVC法は、薬物吸収を制御する生理学的特性および物理化学的特性に基づいている。この方法は、迅速に溶出する、低い透過性の薬物等、in vitro−in vivoの相関性がほとんどないことが予想され得る条件を活用することができる。さらに、例えば、非常に迅速に溶出する、高い溶解性の薬物、例えば、15分間未満に85%が溶出するものについては、一点溶出試験(one point dissolustion test)が、生物学的利用率を保証するのに必要であり得る全てであることも示されている。緩慢に溶出する薬物については、低いpH、生理学的pHおよび界面活性剤、ならびにin vivoにおけるプロセスを模倣することができるin vitroの条件を包含することができる系における、複数の時点を有する溶出プロファイルを使用する。
そのような条件または当技術分野で周知のその他の類似の条件下では、より長いin vitroにおける溶出プロファイルが、長期のin vivoにおける放出または生物学的利用率の指標となると予想され得る。しかし、本発明によれば、in vivoにおける性能の指標となる条件下で観察された、in vitroにおける溶出プロファイルと、in vivoにおいて観察された溶出プロファイルとの間の断絶が観察されている。
一方、当業者であれば、in vitro放出条件はまた、その他の目的でも設計され得ることを認識するであろう。例えば、溶出速度を、in vivoにおける性能の指標となす以外の特定の目標、例として、溶解性を測定すること、または溶出のための時間を減少させることを達成するために調整した条件を使用して変化させることができる。そのような調整した溶出条件として、例えば、in vitroにおける溶出速度を調節するための、界面活性剤の量の増加、パドルスピードの変化および/または流水(flow−through)の技法の使用を挙げることができる。本明細書において提供する教示および手引き、ならびに当技術分野で周知の手引きを考えると、当業者であれば、そのような調整した条件から得られた溶出結果は、in vivoにおける生物学的利用率の指標としては有用でない場合があることを理解するであろう。
単回用量の本発明の放出調節製剤からもたらされる、活性医薬成分の例示的な持続性の血漿濃度は、例えば、有食状態または絶食状態において、1日1回の投与後、約400mgの投与量では、少なくとも約20ng/ml、より具体的には、約400mgの投与量では、少なくとも約50、100、150、200、250、300または350ng/ml以上を包含する。特に、例示的な本発明の製剤は、絶食状態において、約100ng/mL〜約300ng/mL、またはそれらの90%信頼区間内のCmaxをもたらす。下記の実施例にさらに記載するように、絶食状態または有食状態における、例示的な、投与後の血漿中のレチガビンの濃度対時間の曲線下面積(AUC)を使用して、活性成分の持続性の濃度を評価することができる。例えば、400mgで1日1回投与する製剤については、本発明の製剤は、約3000ng−時間/L〜約7000ng−時間/Lの範囲に及ぶ、絶食状態におけるAUCo−inf値を示す。AUCo−infは、その他の実施形態では、約4000ng−時間/L〜約6800ng−時間/Lであり得、さらなる実施形態では、約4000ng−時間/L〜約10,000ng−時間/Lであり得る。当業者であれば、投与の分量を変化させるのと併せて、頻度を変化させることによって、CmaxおよびAUCo−infについて、類似の結果を得ることができることを認識するであろう。同様にまた、当業者であれば、本明細書において例示するように、観察されるCmaxおよび/またはAUCo−infの値を、異なる投与の量および頻度を用いて、製剤の調整された放出性能に実質的に影響を及ぼすことなく、上記の例示的な値と比較して変化させることができることも認識するであろう。投与量を、例えば、400mgの投与量について示したCmaxおよびAUCの結果を実質的に変えることなく、2日に1回、1日2回、1日3回および1日4回投与するために製剤化することができる。持続性の血漿濃度に加えてまた、本発明の放出調節製剤は、即時放出性製剤と比較して、クリアランスの着実な速度も示す。
本発明の放出調節製剤は、投与の約0.5〜2時間後に、活性医薬成分の少なくとも一部を放出する。しかしまた、放出調節製剤は、活性医薬成分の少なくとも一部の放出を約4〜6時間遅延させることができる腸溶コーティングと併せて使用することもできる。このことは、腸におけるより緩慢な持続性放出を可能にすることによって有益となり得る。このことは、Cmaxを有効に下げることによって副作用を低下させ、かつ依然として、活性成分の長期の生物学的利用率を保証するのに有用であり得る。活性医薬成分の放出は、製剤中のその他の構成成分から解離するかまたは手放され、それに続いて溶出する遊離化合物の量またはパーセントを指す。比較すると、即時放出性製剤により、投与後の最初の1時間の内に、90%超の活性成分がもたらされる。特定の実施形態では、放出調節製剤は、投与後の最初の2時間の間に、製剤から90%以下の活性医薬成分を放出する。その他の実施形態では、本発明の製剤は、投与後の最初の2時間の間に、80%以下、70%以下または約60%以下の活性医薬成分を放出する。例えば、少なくとも約80%の活性医薬成分を放出する時間は、例えば、少なくとも約4時間であり得る。例示的な本発明の製剤の放出速度を、図2および3に示す。いくつかの実施形態では、活性成分の放出は、in vivoにおいては、in vitro放出の約3〜6時間後である。
活性成分が製剤から放出する量または速度を評価するための方法は、当技術分野で周知である。例示的な方法として、例えば、EA残留試験および直接試験が挙げられる。手短に述べると、残留試験は、溶液中での選択された期間の後に、製剤中に残存する活性成分の量を測定する。各期間について、最初に存在した量から各期間において放出した量を減じることによって、放出速度が得られる。直接試験は、各時点において、溶出媒体中の活性医薬成分の濃度を測定して、放出の速度または量を計算する。本発明の製剤からの活性医薬成分の例示的な放出速度は、0.5時間において約8〜100%、1時間において18〜100%、2時間において34〜100%、3時間において53〜100%、および4時間において66〜100%の範囲に及ぶ。しかし、より詳細な放出速度の情報を、下記の実施例に示す。
本発明の製剤は、いくつかの実施形態では約4〜約36時間続き、その他の実施形態では約10〜20時間続く、実質的に平らな部分を有する血漿濃度対時間のプロファイルにより特徴付けることができる。理論により拘束されるわけではないが、レチガビン血漿レベルがCmaxである長期間は、生物学的機構、例として、再循環に関係があり得る。例えば、多数の薬物が、未変化のまたは抱合された形態での、胆汁を介する排除が関与する、腸肝における再利用を経験する。胆汁中に分泌された薬物は、胆嚢内に進入し、小腸内に周期的に送り出される。小腸内への進入は、薬物が体内に吸収されて戻り、薬物の身体から排除されるのに必要な時間を延ばす手段を提供する。
ここでも、理論により拘束されるわけではないが、レチガビン血漿レベルがCmaxである長期間は、レチガビンと送達マトリックスとの間における準安定な複合体の形成に関係があり得る。レチガビン血漿レベルがCmaxである長期間についてのさらに別の理由は、腸肝の再循環と錯体の形成との組合せに関係があり得る。長期間についてのその上別の理由は、レチガビンの溶解プロファイルに関係があり得る。腸溶性ポリマーの影響下では、レチガビン製剤は、胃のより酸性の環境をバイパスし、腸の下部に進入する。腸の下部では、酸性度が十分に高く、薬物の溶解性および全身性の放出に影響を及ぼす。
本発明の放出調節医薬製剤は、当技術分野で周知の多様な異なる固体の投与剤型を含めた、乾燥粉末の医薬品として製造することができる。固体の投与剤型は、正確な投与量を特異的な部位に、通常、経口により送達するのに特に有用であるが、また、舌下、直腸または膣内から投与することもできる。固体の投与剤型として、例えば、錠剤、丸剤、咀嚼錠剤、カプセル剤、カプレット剤、ペレット剤または顆粒剤等が挙げられる。
本発明の放出調節医薬製剤は、本明細書に記載する構成成分の比率が最終的な投与剤型中に保持される限り、任意の所望の総重量の固体の投与剤型中に、任意の所望の固体の、投与する量の活性医薬成分を含有するように製造することができる。活性医薬成分は、N−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステル、またはN−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルに類似する溶解の特徴を有する化合物であり得る。例えば、固体の投与剤型は、1つの投与剤型当たり、間にある任意の値を含めた、5、10、15、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、450、500、550、600、650、700、750または800mg以上の活性成分を含有するように製造することができる。投与剤型の例示的な総重量として、例えば、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900または1000mg以上を挙げることができる。また、本明細書において提供する教示および手引きを考えると、活性成分の重量および総重量については、これらの例示的な量の間にある、これらを上回るおよび下回る、全ての重量で製造してもよい。本発明の放出調節製剤から、持続性の血漿濃度が得られることから、これらの製剤は、1日3回(TID)、1日2回(BID)、1日1回(QD)、2日に1回、週3回、週2回、週1回の投与のため、またはより長い投与期間のために、有効量の活性医薬成分を有するように調製した投与剤型として特に有用である。そのようなより低い投与計画は同様に、より高い患者の服薬遵守も促す。そのような固体の投与剤型は、当技術分野で公知の製剤慣行に従って、包装し、保存することができる。
当技術分野で周知の乾燥粉末の医薬品を製造するための方法を、本発明の放出調節医薬製剤の生産のために使用することができる。そのような方法として、例えば、直接圧縮、混合および/または造粒が挙げられる。十分に混合することができる粉末処方は、例えば、直接圧縮により、錠剤またはその他の固体の投与剤型に圧縮することができる。混合として、例えば、対流による混合、せん断による混合および/または拡散による混合が挙げられる。造粒の方法として、例えば、湿式造粒、乾式造粒、流動床造粒および押出造粒が挙げられ、これらの方法を使用して、その他の粉末処方を製造し、続いて、圧縮により、錠剤またはその他の固体の投与剤型となすことができる。
製剤の均一性を、例えば、湿式もしくは乾式により粉砕して、粒子サイズを低下させること、および/または例えば、製剤の構成成分を、段階的に組み合わせ、ブレンドすることによって改善することができる。例えば、活性医薬成分を、構成成分のうちの1つまたは複数と共に、例えば、乾式または湿式による造粒を行うことによって造粒し、次いで、残りの構成成分とブレンドすることができる。あるいは、活性医薬成分を、例えば、最初に、1つまたは複数の薬物送達マトリックスと乾式ブレンドすることができ、一方、それに続いて、その他の賦形剤、例として、流動促進剤、滑沢剤等は、1つまたは複数のブレンド操作において混合する。所望により、ブレンドする前に、構成成分のうちの1つまたは複数を、ふるい分けもしくは粉砕、または両方により粒度をそろえてもよい。最終的な薬物製品を調製するために、圧縮した投与剤型に対して、さらなる加工、例として、コーティング、研磨等を施すことができる。乾式ブレンド、湿式および乾式の造粒、粉砕、ふるい分け、打錠、コーティング等の考察、ならびに医薬組成物を調製するための、当技術分野で公知のその他の方法の説明については、A.R. Gennaro(編)、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20版、2000年);H.A. Liebermanら(編)、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets、1〜3巻(2版、1990年);ならびにD.K. ParikhおよびC.K.Parikh、Handbook of Pharmaceutical Granulation Technology、81巻(1997年)を参照されたい。
上記の方法を使用して製造した製剤を、下記の実施例においてさらに例示する。したがって、本発明は、医薬製剤を調製する方法を提供する。特定の例示的な実施形態では、この方法は、粉砕した活性医薬成分、例として、N−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルを、薬物送達マトリックス、界面活性剤および結合剤、ならびに/または例えば、本明細書において例示するその他の構成成分と、上記に例示したまたは下記の表1〜3に記載する比率で混合するステップを含む。混合プロセスには、混合物を適切な形状の錠剤に圧縮するステップが続く。次いで、場合により、錠剤、カプセル剤またはその他の投与剤型を、腸溶コーティングまたはその他のタイプのコーティングを行って完成させてもよい。その他の特定の例示的な実施形態では、この方法は、本発明の医薬製剤を調製する湿式造粒法、例として、下記の実施例IIに例示する方法を包含する。造粒は、高いせん断力の混合機または流動床乾燥機中で実施することができる。また、この例示的な処方に、滑沢剤も加え、圧縮して、所望の投与剤型を調製する。投与剤型は、場合により、腸溶コーティングを行って完成させてもよい。本発明の方法により調製した医薬製剤は、保存または即時の使用に適している、活性成分の長期の安定性を示す。
本発明の医薬製剤の固体の投与剤型は、制御された量の活性医薬成分を、持続した期間にわたり送達するのに有用である。したがって、本発明は、活性医薬成分の放出を制御する方法を提供する。この方法は、30〜70%の活性医薬成分、1〜30%の薬物送達マトリックス、最大9%の界面活性剤、および賦形剤を有する医薬製剤を個体に投与するステップを含み、この医薬製剤は、個体への投与後に、約4〜20時間にわたる活性医薬成分の持続性の血漿濃度をもたらし、この活性医薬成分は、レチガビンか、あるいはN−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルの溶解の特徴に実質的に類似する溶解の特徴を有する化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物を含む。
また、神経系の興奮性亢進により特徴付けられる障害を治療する方法も提供する。この方法は、30〜70%の活性医薬成分、1〜30%の薬物送達マトリックス、最大9%の界面活性剤、および賦形剤を有する医薬製剤の有効量を、それを必要とする被験体に投与するステップを含み、この医薬製剤は、被験体への投与後に、約4〜20時間にわたる活性医薬成分の持続性の血漿濃度をもたらし、この活性医薬成分は、レチガビンか、あるいはN−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルの溶解の特徴に実質的に類似する溶解の特徴を有する化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物を含む。
レチガビンまたは類似の構造および/もしくは溶解プロファイルを有する化合物の構造を有する活性成分は、神経系の興奮性亢進により特徴付けられる広い範囲の障害の治療のための本発明の医薬製剤の中に含ませることができる。そのような障害として、例えば、発作、発作性障害、例として、てんかん、けいれん、および神経因性疼痛、ならびに下記にさらに例示するものが挙げられる。1,2,4−トリアミノベンゼン誘導体を含めた、レチガビンに関連した化合物が神経系の興奮性亢進により特徴付けられる、これらおよびその他の障害または疾患を治療することが記載されている。レチガビンまたは関連の化合物と併せた、放出調節医薬製剤を利用することは、長く続く、持続性の血漿濃度がもたらされることに起因して、より低い投与量およびより高い有効性が得られるので、特に有用である。
例えば、化合物、例として、レチガビンは、発作、てんかん性発作、てんかんの遺伝性の形態である、良性の家族性新生児けいれん、複雑部分発作、けいれん、および/またはその他の発作性障害の重症度を、治療するまたは低下させるのに有効である(例えば、米国特許第5,384,330号;Bialerら、Epilepsy Research、34巻:1〜41頁(1999年);Blackburn−MunroおよびJensen、Eur. J. Pharmacol、460巻:109〜116頁(2003年);Wickendenら、Expert Opin. Ther. Patents、14巻:1〜13頁(2004年);Porterら、Neurotherapeutics、4巻:149〜154頁(2007年);Rogawski, Trends in Neurosciences、23巻:393〜398頁(2000年)を参照されたい)。
また、レチガビン、および関連の化合物、例として、フルピルチンは、例えば、アロディニア、痛覚過敏および幻肢痛を含めた、神経因性疼痛の重症度を治療するまたは低下させるのにも有効である(例えば、そこに引用されている参考文献を含めて、米国特許第6,117,990号、ならびにBlackburn−MunroおよびJensen、上記、を参照されたい)。アロディニアは、それ自体は痛みを伴わない刺激、例として、接触または熱/冷を、疼痛として感受することを指す。痛覚過敏(hyperalgesic)は、痛みを伴う刺激を正常人よりも強力に感じることを指す。幻痛は、存在しない疼痛を感受することを指す。反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)および交感神経によって維持される疼痛(SMP)という用語もさらに使用されている。したがって、本発明の放出調節医薬製剤中に含まれるレチガビンまたは関連の化合物は、より低い疼痛の閾値により現れる障害およびより高い疼痛の感覚により現れる障害を治療するのに有用である。神経因性疼痛を引き起こす多種多様な障害および疾患がある。例示的な原因として、例えば、ウイルス性感染、例として、ヘルペス後神経痛(PHN)を発生させる帯状疱疹(Herpes Zoster)、帯状疱疹(shingles)の痛みを伴いかつ一般的な合併症、後天性免疫不全症候群、熱傷による創傷、癌、癌の細胞分裂抑制性もしくは細胞傷害性の治療、神経損傷および/または神経圧縮が挙げられる。
本発明の放出調節製剤中のレチガビンまたは関連の化合物についての、有用な、その他の作用の促進として、例えば、疼痛治療のために有用であるもの、例として、筋肉弛緩、発熱低下および/または末梢性鎮痛が挙げられる(例えば、米国特許第5,384,330号;第6,326,385号を参照されたい)。本発明の放出調節製剤中のレチガビンまたは関連の化合物は、有効な神経の保護を促すのにもさらに有用であり、例えば、神経変性障害および/または脳卒中、ならびに急性または慢性の脳への血液の供給の低下の続発症状または後遺症、例として、神経変性障害および脳卒中により引き起こされたものを治療するのに有用である(例えば、米国特許第5,852,053号を参照されたい)。レチガビンまたは関連の化合物を、本発明の放出調節製剤中の活性成分として用いる治療に適用できる例示的な神経変性障害として、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ヒト免疫不全ウイルス、風疹ウイルス、ヘルペスウイルスおよびボレリアによる感染が媒介する脳症を含めた、感染関連脳症、クロイツフェルト−ヤコブ病、外傷誘発性の神経変性もしくは神経細胞の過度興奮状態、中毒からの禁断、末梢神経系の障害、ならびに/または多発ニューロパシー(polyneuropathy)もしくは多発神経炎性(polyneuritide)障害が挙げられる。
レチガビンまたは関連の化合物の活性成分を有する本発明の放出調節製剤についての、有用なその他の治療的適用として、例えば、異常なまたは望ましくない平滑筋収縮によって引き起こされる状態が挙げられる。上記したように、レチガビンまたは関連の化合物は、平滑筋収縮を阻害するのに有用である。望ましくない平滑筋収縮を示す状態として、例えば、過敏性腸症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、胆嚢障害、高血圧、および食道の活動亢進が挙げられる。
さらに、レチガビン、または関連の化合物、例として、フルピルチンについての、作用の分子部位の1つは、カリウムチャネルを包含する。例えば、N−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルは、カリウムチャネル調節物質であり、電位型カリウムチャネルを活性化するまたは開ける。チャネルの開口の結果、神経細胞の興奮性が低下し、かつ/またはカリウムKCNQ2/3チャネルに対する神経伝達物質の放出が下がる。例えば、(DelmasおよびBrown、Nat. Revs Neurosci.、6巻:850〜62頁(2005年);Wickendenら、Mol. Pharmacol.、58巻:591〜600頁(2000年);Mainら、Mol. Pharmcol.、58巻:253〜62頁(2000年);Wuttkeら、Mol Pharmacol.、67巻:1009〜17頁(2005年))。さらに、化合物、例として、N−(2−アミノ−4−(フルオロベンジルアミノ)−フェニル)カルバミン酸エチルエステルは、神経細胞のM電流を増加させること、ならびにKCNQ2チャネルおよび/またはKCNQ3チャネル(集合的に、「KCNQ2/3」チャネル)のチャネル開口確率を増加させることも示されている(DelmasおよびBrown、(上記))。したがって、神経細胞の興奮性の増加、カリウムチャネルの開口の減少、および/または神経細胞のM電流の減少により引き起こされるまたは増悪する障害を、式Iの1,2,4−トリアミノベンゼン誘導体を活性成分として有する本発明の放出調節製剤を使用して治療することができる。そのような障害を、1つまたは複数の症状の出現または重症度を軽減する本発明の放出調節製剤による、電位型カリウムチャネルの活性化によって特徴付けることができる。
上記の障害または疾患のうちのいずれかの治療を、有効量の活性成分を有する本発明の放出調節製剤を投与することによって達成することができる。有効量は、少なくとも1つの症状を軽減するのに十分な量を包含し、障害および所望の治療計画に応じて変化させることができる。有効量は、約5〜1,500mg/日または1用量当たり約0.1〜5.0mg/kgの範囲に及ぶことができる。例えば、1日当たり、約10〜1,200mg、20〜1,000mg、約30〜800mg、約40〜600mg、約50〜400mg、約60〜200mg、または約70〜100mgの有効量の活性成分を有する本発明の放出調節製剤を、被験体に投与することができる。本発明の放出調節製剤中の活性成分のその他の有効量として、例えば、1日当たり、1.0、2.5、5.0、7.5、10、12、15、18、20、22、25、28、30、32、35、38、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mgが挙げられる。本発明の放出調節製剤中の活性成分のその他の有効量として、例えば、1日当たり、400、425、450、500、550、600、650、700および750mgが挙げられる。また、上記の例示的な有効量の間にある全ての量により、本発明の放出調節製剤中の有効量の活性成分を構成することもできる。同様にまた、上記に例示した量に対応する体重当たりの量も、有効量の尺度として使用することができることを当業者は理解するであろう。
有効量は一般に、約1日3回(TID)、1日2回(BID)、1日1回(QD)、週3回、週2回の投与期間、またはより長い投与間隔で送達する。しかしまた、投与剤型に応じて、有効量は、例えば、1日2回以上または週に4、5もしくは6回を含めた、より頻繁な投与間隔で送達することもできる。
同様にまた、本発明の放出調節医薬製剤は、投与の多様な異なる様式にも適用できる。放出調節製剤は、本明細書においては、例えば、経口投与すべき固体の投与剤型として例示する。しかし、当業者であれば、そのような固体の投与剤型はまた、薬学的担体、液体の希釈剤またはシロップと混合し、例えば、その他の経路により投与することもできることを理解するであろう。液体の薬学的に許容できる媒体中への希釈を、投与の直前、または活性成分の実質的な放出の前に行うことができる。特に有用な媒体として、例えば、活性成分の放出を遅らせるまたは阻害するpHを有する緩衝液またはその他の溶液が挙げられる。本明細書において提供する教示および手引きを考えると、当業者であれば、本発明の放出調節製剤に関しては、多様な異なる投与間隔を、さらに、多様な異なる投与様式も、使用するのに適用できることを理解するであろう。
したがって、本発明は、神経系の興奮性亢進により特徴付けられる障害を治療する方法をさらに提供し、この障害は、発作性障害、神経因性疼痛、神経変性状態、または電位型カリウムチャネルの活性化により特徴付けられる障害、または異常な平滑筋収縮を包含する。また、本発明の放出調節製剤を使用して、例えば、抗てんかん作用(anti−seizure effect)、筋肉弛緩作用、発熱低下作用、末梢性鎮痛作用、または抗けいれん作用(anti−convulsive effect)をもたらすこともできる。その他の作用として、KCNQ2/3チャネルのチャネル開口確率の増加または神経細胞のM電流の増加が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本発明は、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を包含する経口投与剤型を提供し、これは、投与後に、長期間、例えば、約4〜約24時間、例えば、約4〜約15時間、いくつかの実施形態では、約4〜約12にわたり、平坦な血漿プロファイルの(患者群にわたる)平均をもたらす。そのような投与剤型は、1日2回の投与に、またはさらに、1日1回の投与にも適しているとみなされる。現時点では、レチガビンの即時放出(IR)錠剤は、1日3回投与される。また、そのような投与剤型は、絶食状態および有食状態の両方における投与に適応し、臨床的に意義のある食餌の作用、すなわち、有食状態の下での用量ダンピングも実質的にない。さらに、本発明の経口投与剤型は、以前の放出調節レチガビン製剤よりも低い、薬物動態の患者間の変動性をもたらすこともできる。
いくつかの実施形態では、本発明は、(i)浸食可能なコア(このコアは、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物と、そのための薬学的に許容できる担体とを含む第1の放出調節組成を含む)と、(ii)前記コアの周囲の浸食可能なコーティング(このコーティングは、前記コアには侵入しないが、前記コーティングを実質的に完全に貫いて伸長し、使用環境から前記コアに連絡している、1つまたは複数の開口部を含む)とを含む経口投与剤型を提供し、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の放出は、浸食可能なコアから、実質的に、前記開口部(複数可)を通して、所定のpH条件下で、前記浸食可能なコーティングの浸食を通して生じる。
さらなる実施形態では、本発明は、(i)浸食可能なコア(このコアは、各組成がレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物と、そのための薬学的に許容できる担体とを含むように、第1の放出調節組成および第2の組成が、投与の際に、投与剤型からの薬物の放出速度がpHに実質的に依存しないように、薬物を異なる放出速度で放出するように整えられるように、第1の放出調節組成および第2の組成を含む)、および(ii)コアの周囲の浸食可能なコーティング(このコーティングは、コアには侵入しないが、コーティングを実質的に完全に貫いて伸長し、使用環境からコアに連絡している、1つまたは複数の開口部を含む)を含む経口投与剤型を提供し、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の放出は、浸食可能なコアから、実質的に、開口部(複数可)を通して、所定のpH条件下で、浸食可能なコーティングの浸食を通して生じる。
一態様では、放出調節組成は、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の遅延放出をもたらす。第2の組成からの薬物の放出速度は、第1の組成からよりも実質的に大きい。いくつかの実施形態では、第2の組成は、即時放出性の組成である。浸食可能なコーティングは、腸溶コーティングの層、例として、非透過性の腸溶コーティングの層であり得る。
第2の組成を、水性媒体との接触に際して、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の即時放出をもたらすように製剤化することができる。第1の組成を、水性媒体との接触に際して、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の放出調節をもたらすように製剤化する。いくつかの実施形態では、第2の組成を、使用時に、胃中で、少なくとも50%のレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を放出するように整える。いくつかの実施形態では、第2の組成を、使用時に、胃中で、少なくとも60%のレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を放出するように整えることができる。いくつかの実施形態では、第2の組成を、使用時に、胃中で、少なくとも75%のレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を放出するように整えることができる。
いくつかの実施形態では、第1の組成を、使用時に、腸中で、少なくとも90%のレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を放出するように整えることができる。いくつかの実施形態では、第1の組成を、使用時に、腸中で、少なくとも95%のレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を放出するように整えることができる。いくつかの実施形態では、投与剤型は錠剤である。
本発明の経口投与剤型のある実施形態のヒト治験の間に、薬物の放出について、薬物の平均最大血漿レベル濃度(「Cmax」)値が、使用の間、食餌に実質的に依存せずに維持される、すなわち、観察されるCmax値が、使用の間、絶食状態および有食状態の両方において類似することが見出された。したがって、一態様では、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、薬物の平均最大血漿レベル濃度(「Cmax」)値が、使用の間、食餌に実質的に依存せずに維持される、すなわち、使用の間、有食状態において用量ダンピングが生じないように放出するように、経口投与剤型を整えることができる。
さらにまた、経口投与剤型が、投与すると観察される、定常状態にある投与間隔にわたる平均血漿濃度対時間曲線下面積(「AUC」)が、使用の間、食餌に実質的に依存せずに維持される、すなわち、観察されるAUCが、使用の間、絶食状態および有食状態の両方において類似するように、薬物を放出することも見出されている。したがって、一態様では、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、定常状態にある投与間隔にわたる平均血漿濃度対時間曲線下面積(「AUC」)が、使用の間、食餌に実質的に依存せずに維持される、すなわち、観察されるAUCが、使用の間、絶食状態および有食状態の両方において類似するように放出するように、経口投与剤型を整えることができる。
したがって、さらなる態様では、作動中、経口投与剤型が、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、投与すると観察されるCmax値およびAUCの両方が、使用の間、食餌に実質的に依存せずに維持される、すなわち、使用の間、有食状態において用量ダンピングが生じないように放出する。組成物は、本発明が求める目標が達成されるのであれば、いずれの形状または相補う立体構造をとって形成してもよい。
上記で、浸食可能なコアという場合、コアが、適切な環境の液体と接触して、部分的もしくは全体的に崩壊するか、または溶出するか、または多孔性となり、結果として、液体が活性を示す薬剤に接触するのを可能にする状況が包含される。いくつかの実施形態では、コアは、部分的に崩壊し、一方、その他の実施形態では、コアは、全体的に崩壊する。いくつかの実施形態では、コアは溶出し、いくつかの実施形態では、コアは多孔性となる。
いくつかの実施形態では、本発明は、pHに依存する様式のコーティングの浸食をもたらし、一方、コアは、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、pHに依存しない様式で浸食することによって放出することができる。
レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物は、腸よりも胃において、より良好な溶解性を示すが、コアは、薬物を、胃および腸の両方において、実質的に同じ程度で放出するように製剤化することができる。すなわち、コアを、レチガビンのpH依存性を償うように製剤化する。
上記で、コーティングが浸食可能なという場合、コーティングが、環境の液体と接触して、部分的もしくは全体的に崩壊するか、または溶解するか、または多孔性となり、結果として、液体がコアに接触するのを可能にする状況が包含される。いくつかの実施形態では、コーティングは、部分的に崩壊し得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、全体的に崩壊する。いくつかの実施形態では、コーティングは溶解する。いくつかの実施形態では、コーティングは多孔性となる。いくつかの実施形態では、浸食可能なコーティングは、腸溶コーティングである、すなわち、確定した、所定のpH閾値を有し、その閾値において、そうしたコーティングは溶解する。いくつかの実施形態では、コーティングは、4.5超のpHで浸食する。いくつかの実施形態では、コーティングは、4.5〜8のpH範囲で浸食する。いくつかの実施形態では、コーティングは、5〜7のpH範囲で浸食する。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、非透過性である。
本発明においてpH依存性の浸食可能なコーティング材料として使用するのに適している材料およびそれらのブレンドとして、種々のポリメタクリレートポリマー、同時処理したポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートフタレート、セラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxyropylmethylcellulose)フタレートポリマーおよびそれらのコポリマー、ならびに酢酸コハク酸ヒプロメロースが挙げられる。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート50、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxpropylnethylcellulose)フタレート55、Acryl−eze(商標)、Aquateric(商標)、セルロースアセテートフタレート、Eudragit(商標)L30D、Eudragit(商標)L、Eudragit(商標)S、およびセラックから選択される。特定の実施形態では、コーティング材料は、Eudragit(商標)L30Dである。
必要であれば、浸食可能なコーティングを、可塑剤または抗粘着剤の添加により調整することもできる。適切な材料として、この目的では、ろう状の材料、例として、グリセリド、例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはモノ−/ジ−グリセリドが挙げられる。
コーティング中に形成すべき開口部(複数可)の典型的なサイズは、円形の場合、錠剤の全体的なサイズおよび所望の放出速度に応じて、0.9mm〜6mmの直径、例として、1、2、3、4または5mmの直径の範囲に及ぶ。本発明の一態様では、開口部は、2または4mmの直径を有する円形である。本発明の別の態様では、開口部は、3、4または5mmの直径を有する円形である。開口部(複数可)は、任意の好都合な幾何学的形状を有してよいが、一般的に、丸い形状、例えば、実質的に円形または楕円形であれば十分である。また、放出速度を、個々の投与剤型において一様となすことができるならば、より精巧な形状、例として、テキスト文字または図形を形成してもよい。非円形の開口部の典型的なサイズは、円形の開口部について上記で言及したサイズと面積において同等であり、したがって、約0.6〜約30mm2の範囲に及ぶ。
本発明の目的では、用語「開口部」は、穴、開口、オリフィス、通路、出口等と同義である。開口部(複数可)は、US5,004,614に開示されている方法により形成することができる。典型的には、開口部(複数可)は、例えば、機械的なドリルビットもしくはレーザービームを使用して、孔を開けることによってか、または切断領域を除去する穴開け器により形成することができる。開口部(複数可)の形成により、暴露させたコアの小さな部分をやむを得ず除去する場合がある。また、空洞を、開口の下に、放出速度を制御するデバイスとして意図的に形成することも可能であり、空洞は、平らな表面よりも大きな、最初のコアの表面積を暴露させる。適切には、開口部(複数可)が、浸食可能なコーティング全体を貫いて伸長し、したがって、デバイスが、所望の使用環境中に置かれると、コアが、環境の液体に直接暴露される。
また、ポアを形成する薬剤、すなわち、胃中で溶解して、コーティング中にポアを生み出す材料を含有するコーティングを形成することによって、投与剤型を投与すると、開口部(複数可)を、in situにおいて形成することも可能である。典型的には、ポアを形成する薬剤は、1〜3のpH範囲で浸食可能である。
US5,004,614では、開口部(複数可)が、錠剤の面の総面積、すなわち、両凸錠剤の上部および下部の表面の約10〜60%を含む。本発明においては、開口部(複数可)は、面の総面積の0.18〜20%、例として、1〜20%を含むことができる。
あるいは、開口部(複数可)の速度を制御する作用を、被覆錠剤の表面の総面積と比べた開口部(複数可)の面積を基準にして特徴付けるのが有用な場合もある。さらに、コアが開口部(複数可)の端の刻み目により浸食する場合にはとりわけ、速度を制御する作用は、開口部(複数可)の総外周にも関連し得る。
特に予想外の知見は、2つ、例えば、両凸錠剤のそれぞれの一次表面上の各1つの開口部は、活性を示す薬剤を、コアから、同じ全体的な面積の単一の開口部の速度よりもわずかに大きい速度で放出することである。また、2つの開口部からの放出速度の変動性は、対応する単一の開口部からの放出速度の変動性よりも少ないことも示されている。したがって、本発明の一実施形態では、コアのコーティングに、2つ以上の開口部を設ける。いくつかの実施形態では、コアを囲む、浸食可能なコーティングに、コアには侵入しないが、コーティングを実質的に完全に貫いて伸長し、使用環境から前記コアに連絡している、2つ以上の開口部を設ける。
2つ以上の開口部を設ける場合、開口部は、経口投与剤型の同じ表面上に位置させても、または異なる表面上に位置させてもよい。いくつかの実施形態では、経口投与剤型は、2つの開口部、例えば、対向する表面のそれぞれの上に各1つを有する。いくつかの実施形態では、経口投与剤型は、2つの対向する一次表面を有する錠剤であり、各表面が、コーティングを貫く、1つの開口部を有し、いくつかの実施形態では、開口部は、コーティングを実質的に完全に貫く。コアを、1つの開口部が、第1の組成にアクセスし、別の開口部が、第2の組成にアクセスするように整えることができる。
投与前の開口部(複数可)を介する汚染を予防するための、コア材料のための保護として、従来からあるシールコーティングを、コア、または開口部(複数可)の形成の後の投与剤型のいずれかに施すのが望ましい場合がある。シールコーティングは、浸食可能なコーティングの下にコーティングしても、またはその上にコーティングしてもよい。さらに、カラーコーティングを、コア、または開口部(複数可)の形成の後の投与剤型のいずれかに施すのが望ましい場合もある。シールコーティングは、浸食可能なコーティングの下にコーティングしても、またはその上にコーティングしてもよい。
本発明のさらなる態様は、(i)浸食可能なコア(このコアは、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物と、そのための薬学的に許容できる担体とを含む第1の放出調節組成を含む)、および(ii)コアの周囲の浸食可能なコーティング(このコーティングは、コアには侵入しないが、コーティングを実質的に完全に貫いて伸長し、使用環境からコアに連絡している、1つまたは複数の開口部を含む)とを含む経口投与剤型を調製するための方法であって、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の放出は、浸食可能なコアから、実質的に、開口部(複数可)を通して、所定のpH条件下で、前記浸食可能なコーティングの浸食を通して生じ、i)レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を製剤化して、コアをなすステップと、ii)コアに、浸食可能なコーティングをコーティングするステップと、iii)コアには侵入しないが、コーティングを実質的に完全に貫いて伸長し、使用環境からコアに連絡している1つまたは複数の開口部を、コーティング中に生み出すステップとを含む。
本発明のその上さらなる態様によれば、各組成が、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物(「薬物」)と、そのための薬学的に許容できる担体とを含む、第1の放出調節組成および第2の組成を含む経口投与剤型を調製するための方法を提供し、第1および第2の組成が、投与の際に、投与剤型からの薬物の放出速度がpHに実質的に依存しないように、薬物を異なる放出速度で放出するように整えられており、順次または同時に、(i)薬物を製剤化して、第1の組成をなすステップと、(ii)薬物を製剤化して、第2の組成をなすステップと、(iii)コアに、浸食可能なコーティングをコーティングするステップと、(iv)コアには侵入しないが、コーティングを実質的に完全に貫いて伸長し、使用環境からコアに連絡している1つまたは複数の開口部を、コーティング中に生み出すステップとを含む。
第1および第2の組成は、適切な成分を従来からある様式で圧縮して、複数の層に圧縮された塊を形成することによって調製することができ、この塊は、投与剤型のコア(本明細書においてはまた、「錠剤のコア」とも呼ぶ)を包含する。錠剤のコアは、従来からある錠剤の賦形剤および製剤の圧縮方法を使用して調製することができる。したがって、コアは典型的には、1つまたは複数の、活性を示す薬剤を、満足な加工および圧縮の特徴をもたらす賦形剤、例として、希釈剤、結合剤および滑沢剤と併せて包含する。デバイスのコアの一部を形成することができる、さらなる賦形剤として、崩壊剤、香料、着色剤、放出調節剤、および/または界面活性剤等の可溶化剤、pH調整物質、ならびに錯体形成ビヒクルが挙げられる。典型的には、活性を示す薬剤および賦形剤を、徹底的に混合してから、固体のコアに圧縮する。デバイスのコアは、湿式造粒法、乾式造粒法、または直接圧縮により形成することができる。コアは、任意の所望のあらかじめ選択された形状、例として、両凸、半球形、ほぼ半球形、丸い、卵形、概ね楕円、楕円、概ね円柱、または多面体、例えば、三角柱の形状に従って生成することができる。用語「ほぼ半球形」は、US5,004,614に記載されている様式に従って解釈することを意図する。いくつかの実施形態では、コアを、例えば、2つのドーム形の向かい合う表面を有する、両凸の形状に製剤化する。
第1の組成に適切な材料は、速度を制御するポリマーまたはマトリックス形成ポリマー、例として、本明細書上記に記載した薬物送達マトリックスである。例えば、高分子量ヒプロメロース(HPMC)の2910(Eとしてもまた公知である)または2208(Kとしてもまた公知である)、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、グアルガム、Eudragit NM、Eudragit NE、Kollidon SR、ガラクトマンナン、デキストラン、エチルセルロース、カルボマー、Carbopol、ポリカルボフィル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、セラック、ゼイン、セルロースアセテート、またはそれらの組合せ。
本発明の一態様では、高分子量ヒプロメロースの2910(Eとしてもまた公知である)または2208(Kとしてもまた公知である)を使用することができる。いくつかの実施形態では、第1の組成のための、速度を制御するポリマーは、高分子量ヒプロメロース2208(Kとしてもまた公知である)である。1つの組成のみがコア中に存在する場合、第1の組成のための速度を制御するポリマーは、高分子量ヒプロメロース2910(Eとしてもまた公知である)であり得る。本発明の一態様では、速度を制御するポリマーまたはマトリックス形成ポリマーが、錠剤の重量に関して、10〜30%をなす。
さらに、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクまたはステアリン酸も添加することができる。
第2の組成に適切な材料として、糖類(saccharoses)、例えば、ラクトースおよびマルトース;マンニトール、キシリトール、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸二カルシウム、トレハロース、または結晶セルロース、例えば、Avicel(商標)が挙げられる。さらに、崩壊剤または強力崩壊剤、例として、クロスカルメロースナトリウムまたはデンプングリコール酸ナトリウム、界面活性剤、例として、ラウリル硫酸ナトリウムも添加することができる。いくつかの実施形態では、第2の組成は主に、マンニトールである。いくつかの実施形態では、第2の組成は、賦形剤として、マンニトールおよびステアリン酸マグネシウムを包含する。
さらなる態様では、レチガビンを、その他の成分、例えば、マンニトール、Avicel(商標)またはHPMCと共に湿式造粒して、顆粒を調製することができ、次いで、それらの顆粒を、その他の成分とブレンドして、第1および第2の組成を形成し、次いで、これらの組成を上記に従って圧縮する。湿式造粒のプロセスを、流動床加工装置中で実施することができ、そこで、乾燥粉末を、機器の底部を通って入ってくる空気により流動化させ、結合剤の溶液を、流動化させた粉末中にスプレーする。湿潤粉末を、適切な水分レベルまで乾燥する。あるいは、湿式造粒のプロセスを、高いせん断力の混合機もしくは押出成型機、または連続的な湿式造粒のための類似のユニットの配置中で実施してもよい。本発明の一態様では、同じ顆粒を、両方の組成中で使用することができ、または代わって、別個の顆粒を、各組成のために調製することもできるであろう。
本発明のさらなる態様では、レチガビンを微粉化することができる。微粉化したレチガビンを含有する製剤は、より低い薬物の分量を含有する製剤の投与を可能にし得る。それらの製剤は、より一貫性のある薬物動態学的プロファイルを示すことができ、投与計画の低下を可能にし得る。
流体エネルギーによる粉砕または微粉化は、医薬品の材料のサイズを低下させるために頻繁に使用されるプロセスである。親活性医薬成分(API)を、バッチ記録中に確定されており、各バッチの開始時に設定される供給速度で粉砕チャンバー中に供給する。この製品供給速度を、運転全体を通して間隔を置いてモニターする。注入ガスにより、ベンチュリにおいて減圧帯が生み出され、粉末が、粉砕チャンバー中に引き入れられる。
粉砕機が、粉砕チャンバーの内壁に沿って均等間隔で存在するいくつかのノズルを有して、インプットされたAPIのサイズを低下させるための衝突に必要な推進力を生み出す。粉砕チャンバーは、より大きな粒子を、慣性を通してチャンバーの内部に保ち、より小さな粒子が、ガスと共に内部分類装置を通って収集バッグ中に脱出するのを可能にすることによって、粒子の分類装置として働く。サイズの低下は、主として粒子間の衝突を通して達成される。
コアは、適切な、pH依存性の浸食可能な材料を用いて、任意の薬学的に許容できるコーティングの方法によりコーティングすることができる。例として、US5,004,614に開示されているコーティングの方法、およびフィルムコーティング、糖コーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、圧縮コーティング、静電気によるコーティングが挙げられる。典型的な方法として、回転皿式コーティング装置または流動床式コーティング装置中で、錠剤のコア上に、コーティングを、所望されるコーティングの厚さが達成されるまでスプレーする方法が挙げられる。適切には、コーティングすると、錠剤の表面領域の周囲に、約4〜8mg/cm2、または5〜7mg/cm2の乾燥したポリマーが加わる。典型的には、この結果、(コアと比べて)3〜10重量%または5〜10重量%の重量の増加が生じる。適切には、コーティングは、0.05〜0.5mmの範囲に及ぶ厚さを有する。
上記に示したように、本発明の経口投与剤型は、1日2回または1回の投与に適しているとみなすことができ、使用の間、治療効果を、長期間、例として、単位用量当たり、最大24時間、例えば、最大12、14、16、18、20および24時間にわたりもたらすことが示されている。
本発明のさらなる態様では、経口投与剤型は、持続放出性のレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物をもたらし、例えば、活性を示す薬剤の放出を、最大26時間、適切には、約4〜約15、例えば、約4〜約12時間の範囲を含めた、約4〜約24時間の範囲の期間にわたりもたらす。
本発明のその上さらなる態様では、経口投与剤型は、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物のパルス放出をもたらし、例えば、24時間当たり、活性を示す薬剤の最大約4、例えば、2回のパルスをもたらす。
本発明に従って使用しようとする、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の分量は、典型的な薬学的考察、例えば、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物についての公知の投与量に基づいて決定すべき事項であり、本発明のプロセスにより限定されない。
特に、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、本発明に従って使用する場合、適切な投与量の範囲は、最大1500mg、例えば、10〜1500mg、例えば、20〜800mg、適切には、100〜800mgを包含することができる。したがって、適切な本発明の経口投与剤型は、40、80、160、200、320、400、480または640mgのレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む。
第1の組成および第2の組成中に存在する、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の量は、所望の溶出プロファイルに従って変化させることができる。
本発明の一態様では、第1の組成は、第2の組成よりも、2〜3倍、適切には、2〜2.5倍多くレチガビンを含む。例えば、経口投与剤型が、約480mgのレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む場合、錠剤のコアは、適切には、約340mgのレチガビン、またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む層と、約140mgのレチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む層とを含むことができる。
第1および第2の組成の放出速度を調節すること、ならびに上記で言及したその他の変数および暴露させるコアの表面積を調節することによって、異なる環境条件における放出速度を調和させて、異なる身体環境下でも同等の放出速度を得、したがって、患者へのより一定した投与を達成することができる。
溶出速度を、in vitroにおいて、適切なpHの溶液中で試験することによって評価することができる。例えば、胃および腸における溶出を比較する場合、試験を、最初は、約pH1.3で、次いで、約2時間または約4時間後には、約pH6.4で実施することができ、ここでの約2時間または約4時間後とはそれぞれ、絶食状態および有食状態における、概念的な患者の腸中に送り出されるまでの、推測される胃中での滞留時間である。
上記で言及したように、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物は、本発明の経口投与剤型として投与した場合、上記に記載した障害の治療および/または予防に有用であることが示されている。いくつかの実施形態では、レチガビンを、本明細書上記および下記に記載の種々の治療計画において、第2の治療剤と組み合わせて投与することができる。第2の治療剤を、これらに限定されないが、カルバマゼピン(Tegretol(商標))、バルプロ酸(Depakote(商標))、チアガビン(Gabitril(商標))、レベチラセタム(Keppra(商標))、ガバペンチン(Neurontin(商標))、フェニトイン(Dilantin(商標))、ラモトリギン(Lamictal(商標))、クロナゼパム(Klonopin(商標))、クロラゼプ酸二カリウム(Tranxene(商標))、アセタゾラミド(Diamox(商標))、ジアゼパム(Valium(商標))、エトスクシミド(Zarontin(商標))、フェルバメート(Felbatol(商標))、フォスフェニトイン(Cerebyx(商標))、ロラゼパム(Ativan(商標))、オクスカルバゼピン(Trileptal(商標))、フェノバルビタール、プレガバリン(Lyrica(商標))、プリミドン(Mysoline(商標))、チアガビン塩酸塩(Gabatril(商標))、トピラメート(topiramte)(Topamax(商標))、トリメタジオン(Tridione(商標))、ゾニサミド(Zonegran(商標))、ラコサミド(Vimpat(商標))、エスリカルバゼピン(Stedesa/Zebinix(商標))、ルフィナマイド(Banzel(商標))、ビガバトリン(Sabril(商標))、ブリバラセタム(Rikelta(商標))およびカリスバメート(carisbamate)(Comfyde)から選択することができる。当業者であれば、第2の治療剤の適切な用量を容易に理解するであろう。
本発明の一態様では、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物は、本発明の経口投与剤型として投与した場合、てんかんの治療および/または予防に有用であることが示されている。
一実施形態では、本発明は、上記の障害の治療および/または予防ための方法を提供し、この方法は、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む、本明細書に開示する種々の実施形態に従う経口投与剤型を、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に投与するステップを含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、てんかんの治療および/または予防のための方法を提供する。この方法は、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を包含する、本明細書に記載する経口投与剤型を、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に投与するステップを含む。
さらなる実施形態では、本発明は、上記に記載した疾患または障害のうちのいずれかの治療および/または予防において使用するために、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む、本明細書に記載する経口投与剤型を提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、てんかんの治療および/または予防において使用するために、レチガビンまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を含む、本発明の経口投与剤型を提供する。
また、本発明の種々の実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない改変形態も、本明細書において提供する本発明の定義の範囲内に包含されることを理解されたい。したがって、以下の実施例は、例証を意図するが、本発明を制限するものではない。
(実施例I)
放出調節製剤の構成成分および比率
この実施例は、式Iの化合物の製剤化のための構成成分および構成成分の比率を記載する。
表1は、医薬組成物を放出調節投与剤型に製剤化するための成分および成分の比率を示す。以下の実施例全てについて、活用した活性成分の比率は、総投与剤型の35%〜65%の範囲に及び、残りは、表1に示す範囲の結合剤、崩壊剤、界面活性剤、放出調節剤、流動促進剤または滑沢剤により構成される。乾燥したブレンドを、直接圧縮、または製剤の一部の湿式造粒もしくは製剤の全体の湿式造粒のために使用して、顆粒および錠剤を製造した。
表1.例示的なレチガビンの放出調節(MR)製剤。
(実施例II)
放出調節製剤の調製
この実施例は、本発明の放出調節製剤を調製する方法を記載し、本発明の放出調節製剤の調製において活用した構成成分およびそれぞれの比率を記載する。
当業者であれば、本明細書に記載する方法を理解するであろう。これは、多くのそのような方法が、当技術分野で公知であるからである。表2は、請求する発明のいくつかの実施形態の調製において活用した成分および比率を示す。表1および2で使用した構成成分の量および比率について、成分の比を維持しながら、より少ない量またはより多い量を割り当てて、異なる、本発明の放出調節製剤を生産することができることを理解されたい。また、そのように成分を割り当てることも、特許請求の範囲および本発明の範囲に属することをさらに理解すべきである。
放出調節製剤A、B、C、D、FおよびHを、以下に従って調製した。手短に述べると、レチガビンを、粉砕し、微結晶セルロース、ヒプロメロース2208、クロスポビドンおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と表2に記載した比率で15分間ブレンドした。カプレット剤を、錠剤を圧縮することによって調製し、腸溶コーティングを行って完成させた。
放出調節製剤Eを、以下に従って調製した。レチガビンを、粉砕し、ヒプロメロース2208、コポリビドンとブレンドし、ヒプロメロース2910の水溶液と共に、流動床乾燥機中で50℃の最高温度で造粒した。顆粒を、クロスカルメロースナトリウムとブレンドし、これに滑沢剤を加えた。錠剤を圧縮し、これに、腸溶コーティングを施した。
放出調節製剤Gを、以下に従って調製した。粉砕したレチガビンを、Robot Coupe製の高いせん断力の混合機中で、微結晶セルロース、ヒプロメロース2208、plasdoneおよびドデシル硫酸ナトリウムと混合した。1500rpmで混合しながら、結合剤溶液を添加した。湿式造粒塊は、ふるいを通した。顆粒を、オーブン中、45℃で乾燥し、それに続いて、滑沢剤およびクロスカルメロースナトリウムとブレンドし、続いて、圧縮して、錠剤を得た。
放出調節製剤Iを、以下に従って調製した。手短に述べると、粉砕したレチガビンを、微結晶セルロースの一部およびスクロエステルと混合し、水溶液およびヒプロメロース2910と共に、流動床乾燥機中、50℃の最高温度で造粒した。顆粒を、ヒプロメロース2208、クロスポビドンおよび残存量の微結晶セルロースとブレンドし、これに滑沢剤を加え、カプレット形状の錠剤に圧縮した。
表2.本発明の放出調節製剤のいくつかの調製において活用した成分の比率。
表2の放出調節製剤を、溶出の特徴について、pH7.5およびpH2.0において試験して、胃および消化管(GI管)における溶出の予期される程度を決定した。決定を行うために、レチガビンの溶液中への放出速度を、USP溶出試験装置(USP dissolution apparatus)を使用して、表2の放出調節製剤のそれぞれについて決定した。in vitroにおける溶出の研究を、USP簡易溶出試験(USP compendial dissolution testing)において利用される手順に類似する緩衝した媒体を使用して実施した。USP II型装置、pH7.5の緩衝液および1.7%(w/v)のSDS、または人工胃液(0.1N HCl)を利用して、溶出を行い、記述した期間にわたり、放出した薬物のパーセントを測定する(例えば、U.S. Pharmacopeia、28th revision、Chapter 711、second supplement(2005年8月1日〜2005年12月31日)を参照されたい)。結果を、時間の関数としての、放出したレチガビンの%(w/w)として報告する。
表3は、放出調節製剤A〜Iについて、4時間にわたるレチガビンの放出速度を示す。これらの製剤は、全体として、SDSを含有するpH7.5のホウ酸緩衝液中において、多様な溶出の特徴を示した。「A」は、迅速な溶出を示し、完全な溶出が0.5時間以内に生じた。「B」の放出速度は、46%と測定され、100%のパーセントのレチガビンが3時間後に放出した。放出調節製剤「C」からは、0.5時間において23%の放出速度が得られ、4時間後には84%のレチガビンの放出が得られた。放出調節製剤「D」についての放出速度は、比較的迅速であり、0.5時間において75%の放出速度が得られ、100%の放出が2時間において生じた。製剤「E」の放出速度は決定しなかった。製剤「F」の放出速度は、0.5時間において40%であり、4時間の時点で94%が放出した。製剤「G」のパーセント放出は、0.5時間において28%であり、4時間において90%と測定された。製剤「H」は、比較的緩慢な放出速度を示し、0.5時間において14%の、および4時間において72%レチガビンの放出が生じた。放出調節製剤「I」は、pH7.5に緩衝した媒体中および0.1N HCl中の両方で試験した。緩衝した媒体中では、放出調節製剤「I」からは、比較的低い放出速度が得られ、0.5時間において8%の、および4時間後に66%のレチガビンの放出が生じた。0.1N HCl中では、レチガビンの放出速度は、0.5時間において11%であり、2時間の時点で34%であった。
本発明の放出調節製剤は、放出速度を変化させ得ることから、また、独特の治療を必要とする患者において、種々の程度の全身性の暴露も可能にする。
表3.4時間の期間にわたる、本発明の放出調節製剤のいくつかの溶出の間の放出速度。
(実施例III)
異なる量の成分を有する、放出調節製剤の調製
この実施例は、200mgのレチガビンを含有する、本発明の放出調節製剤のいくつかの、組成および比率を記載する。
放出調節製剤をいくつか、200mgのレチガビンを利用し、本発明の成分の比率を変化させて調製した。表4は、200mgのレチガビンの放出調節製剤のいくつかを示す。錠剤1ミリグラム当たりの成分の比を、丸括弧内に示す。製剤9については、別途、顆粒のSDSを使用して、組成物を調製した。当業者であれば、表4に記載する成分について、成分の比を維持しながら、より多い量またはより少ない量を割り当てて、同等の、放出調節製剤を生産することができることを理解されたい。そのような割当ても本発明の範囲に属することをさらに理解されたい。
放出調節製剤を、上記の実施例IIの記載に従って調製した。
表4.本発明の放出調節製剤。量は、mg/錠剤として示す。丸括弧内に示す数字は、製剤中の各構成成分の百分率を示す。
(実施例IV)
放出調節製剤のいくつかの、薬物動態パラメータの統計学的解析
この実施例は、400mgのレチガビンの放出調節製剤を投与した有食および絶食の被験体における血漿レチガビンの薬物動態パラメータの比較を示す。
レチガビンを含有する放出調節製剤について、血漿濃度時間プロファイルをより正式に評価するために、PK研究を、有食および絶食の被験体において、72時間の期間にわたり実施した。全部で14人の被験体に、製剤の単回経口用量を与えた。
1つの研究では、400mgのレチガビンを含有する製剤1、3、5および6を、有食または絶食の被験体に経口投与し、結果を、下記の表5に示す。一般に、被験体の体重を測定し、レチガビンを含有する放出調節製剤を、被験体に経口投与した。有食の被験体には、食餌と共に投与した。絶食の被験体には、投与の4時間後に食餌を与え、これらの被験体は、投与前に一晩絶食させた。血液を、静脈穿刺により収集し、血漿を、遠心分離により単離した。血漿は、解析の時期まで、−80℃で凍結した。レチガビン濃度を、妥当性が確認されている方法により決定した。試料を、標準的な参照の標準的な濃度の範囲で解析した。濃度は、その濃度の範囲全体を通して線形である。
曲線下面積(AUC)値、すなわち、(ng−時間/mL)の値を、標準的な非コンパートメント法(non−compartmental method)および最小二乗法(LS)の平均を使用して決定し、(200mgの用量の即時放出性錠剤と比べた)比の平均および比の平均の90%信頼区間を、表5に示す。表5は、試験した放出調節製剤は全て、同等のLS−平均のAUC値をもたらしたことを示す。400mgのMR製剤の用量の投与とも、200mgのIR製剤の用量の投与とも一致して、AUC値の比の平均は、放出調節製剤の全てについて、144.48〜235.7(MR5、2×200mg、絶食)の範囲に及んだ。さらに、食餌の作用が、いくつかの製剤について観察され、有食の被験体においては、絶食の被験体に比して、測定したAUC値が増加した。しかし、製剤の中には、食餌の作用を示さなかったものもある。
表5.400mgのレチガビンsr製剤対200mgのレチガビンの即時放出性(IR)製剤の、単回経口用量の投与の後の血漿レチガビンについての薬物動態パラメータの統計学的解析を示す。
*=90%CIおよび%比の平均(%MR)は、ln換算したパラメータに基づいて計算した
図3は、即時放出の対照と比較した場合の、絶食または有食のいずれかの状態で経口投与した被験体における、製剤1、3、5および6の薬物動態学的プロファイル(PK;平均値)の比較を示す。
放出調節製剤1、3および6についての、吸収プロファイルおよび排除プロファイル(72時間の期間にわたり測定した平均値)は、比較的類似し、プラトー様の濃度プロファイルがおよそ15〜20時間維持された。濃度は、製剤1および3については、食餌と共に投与した場合、より高かったが、プラトー様の濃度プロファイルは、依然として、12〜20時間にわたり維持された。製剤3は、食餌の有無にかかわらず投与に際して、類似の総暴露を示した。全体的に、製剤1、3および6は、プラトー様の濃度プロファイルを示し、その結果、濃度が、ピーク濃度レベル付近で、12〜20時間にわたり維持された。これは、in vitroにおける溶出の結果に基づいて予想されるであろう期間よりも実質的に長い。
別個のPK研究を、製剤8および9を用いて実施し、下記の表6に要約する。
表6.健常な男性および女性の被験体における、200mgの治療T1、T2およびRの単回経口用量の投与の後の、レチガビンの薬物動態パラメータの統計学を示す。
被験体の数=各治療計画について、34人、
*幾何平均(%CV)、
**中央値(範囲)、治療T1:レチガビン、1×200mg、MR製剤8、治療T2:レチガビン、1×200mg、MR製剤9、治療R:レチガビン、2×100mg、即時放出(IR)。
(実施例V)
放出調節レチガビン製剤1〜9の溶出プロファイル
この実施例は、製剤1〜9を活用して製剤化したレチガビンの溶出速度およびプロファイルを示す。
実施例IIに記載されている方法を使用して、製剤1〜9を、USP簡易溶出の手順を活用して溶出させた。レチガビンの放出速度を、(胃液に対する暴露のin vivo条件を模擬する)0.1N HCl中で1時間、続いて、pH7.5のホウ酸緩衝液中で4〜5時間、すなわち、4〜6時間の期間にわたり測定した。図4は、放出プロファイルを示す。示すように、製剤1〜5および7〜9はいずれも、0.1N HCl(pH2.0)中ではほとんど溶出せず、一方、即時放出性(IR)レチガビン製剤は、この媒体中に1時間の期間の内に完全に溶出する。
全体的に、これらの研究は、本発明の放出調節製剤は、胃中で生じるような、低いpHの環境(pH−2.0)の存在下で、投与剤型の完全性の維持を可能にすることを示している。また、これらの製剤は、より高いpHの環境、例として、GI管中で生じる環境においては、レチガビンの溶出の調整および制御も可能にする。
(実施例VII)
レチガビンの水溶液中での溶解性
この実施例は、pH値を変化させた場合の、レチガビンの溶解の特徴を示す。
各種のpH環境におけるレチガビンの溶解性を評価するために、レチガビンを例示的な活性成分として使用する溶解の研究を、水溶液中、37℃で実施した。レチガビンについての代表的な溶解曲線を、図5に示す。結果は、最大の溶解性が、pH1.5で観察され、水溶液中での溶解度はおよそ16mg/mlであったことを示している。pHを2.0まで増加させると、溶解度は、わずか4mg/ml未満となった。pHを3.0まで増加させると、水性の条件下で、ほとんど完全に不溶性になった。溶解性は、pH4.0〜pH12.0のpH範囲では低かった。pHプロファイルは、レチガビンが、酸性(例えば、pH2.0)の条件下の胃中で溶出することが予想されることを示しているが、これは、腸溶コーティングの存在により阻止されるであろう。
(実施例VIII:2mmの開口を有する、480mgの錠剤、および実施例IX:4mmの開口を有する、480mgの錠剤)
以下の実施例では、層1および2のための顆粒を、標準的な湿式造粒の手順を使用して別個に調製した。次いで、顆粒を、それぞれの層のための残りの成分とブレンドし、圧縮した。次いで、2つの層を、一緒に圧縮し、標準的な手順を使用してフィルムコーティングして、カラーコーティングを加え、次いで、腸溶性フィルムのコーティングを、回転皿式コーティング装置中で、錠剤のコア上にコーティングをスプレーすることによって適用した。2mmまたは4mmの開口を、腸溶コーティング中に機械的に開けて、実施例VIIIおよびIXの錠剤をそれぞれ生成した。
表7
実施例VIIIおよびIXの投与剤型についての溶出プロファイルを、付随する図面の図8に示す。使用した溶出方法を、以下に示す。
溶出を、USP General Chapter <711>に従って決定する。手順は、USPの装置2を使用し、100rpmのパドルスピードを用いる。媒体は、2.0%w/vのドデシル硫酸ナトリウムを有する20mMクエン酸ナトリウム、pH6.4である(37℃で900mL)。溶出したレチガビンの量を、外部標準物質を使用してUV分光法により定量する。
レチガビンの共通の顆粒を、湿式造粒により調製する。顆粒を、レチガビンおよび微結晶セルロースの粉末を流動化させ、溶液中のヒプロメロースを流動床上にスプレーすることによって製造する。適切な量のヒプロメロースの添加後、湿潤顆粒を、適切な水分レベルまで乾燥し、所望の粒子サイズに粉砕する。
表8
次いで、これらの共通の顆粒を使用して、層1および2を、その他の成分と混合することによって調製し、層を、圧縮により調製し、水性フィルムコーティングを施し、次いで、腸溶コーティングを適用する。開口を、機械的に開ける。
表9
5つのMR製剤[実施例VIII、IXおよび製剤8(表4)、ならびに2つの参照MR製剤]の生物学的利用率を検討するために、製剤を、有食状態および絶食状態において、単回用量として投与して、有食状態および絶食状態における即時放出(IR)の投与と比べた。
食餌のMR製剤に対する作用を検討するために、製剤を、単回用量として投与した。これは、健常なボランティアにおいて実施した、非盲検、無作為化、単回用量のクロスオーバー第一相治験であった。被験体を、絶食の投与計画(群1)または有食の投与計画(群2または群3)(高脂肪の食事)のいずれかに帰属させ、クロスオーバーのセッションの間に5〜7日の休薬を設けた。食事は全て標準化した。放出調節製剤のそれぞれを、絶食状態または有食状態のいずれかにおいて投与した。
A部、群1の被験体には、MR製剤のそれぞれおよびIR製剤を、無作為化した6通りのクロスオーバーの様式で、絶食状態において与えた。
表10:群1(絶食)についての投与計画
高脂肪の食事と共に、群2の被験体には、IR製剤およびMR製剤を、無作為化の様式(4通りのクロスオーバー)で与え、群3の被験体には、IR製剤および2つのMR製剤を、無作為化の様式(3通りのクロスオーバー)で与えた(表11を参照されたい)
表11:群2および群3についての投与計画(有食)
被験体は、18歳以上から65歳以下までの健常な成人の男性および女性のボランティアであった。群1については、およそ20人の男性被験体を登録する予定であり、結果として、およそ16人の被験体が、投与および薬物動態学的評価を完了した。群2および群3については、およそ12人の男性被験体を、各群に登録する予定であり、結果として、およそ10人の被験体が、投与および薬物動態学的評価を完了した。
即時放出性製剤および放出調節製剤についての薬物動態(AUCおよびCmax)は、主要な薬物動態パラメータであった。副次的な薬物動態パラメータは、即時放出性製剤および放出調節製剤のtmaxおよびt1/2であった。レチガビンの薬物動態学的解析のための血漿試料を、それぞれの投与の機会に、投与の前および投与の最大72時間後に得た。レチガビンの薬物動態学的解析ための血漿濃度を、妥当性が確認されているアッセイの方法により決定した。
レチガビンIRおよびレチガビンMR(実施例VIII、実施例IX、および表4の製剤8)の投与後の平均レチガビン濃度−時間のプロファイルは、絶食状態におけるプロファイルを図6に、有食状態(高脂肪の食事)におけるプロファイルを図7に示す。MR製剤については、半減期を正確に決定することは可能ではなく、したがって、AUC(0−t)を、主要エンドポイントとして使用した。絶食状態および有食状態における、この放出調節製剤についてのPKの結果を表12に示す。CVb%は、パーセント被験体間変動係数を示す。
表12:絶食状態における、IR錠剤(400mg)ならびに実施例VIIIおよび実施例IXの放出調節錠剤(480mg)の投与後の、用量により正規化したPKパラメータの概要(幾何平均(CVb%))(群1)
表13:有食状態における、IR錠剤(400mg)ならびに実施例VIIIおよび実施例IXの放出調節錠剤(480mg)の投与後の用量により正規化したPKパラメータの概要(幾何平均(CVb%))(群2)
絶食状態および有食状態の両方において、実施例VIII、実施例IX、および表4の製剤8の投与の結果、Cmaxの低下が生じ、これは、IRについて観察された低下のおよそ20%〜30%であった。絶食状態における実施例VIIIおよび実施例IXの両方について、Tmaxが、投与後、10時間と48時間の間に生じ、一方、レチガビンIRについては、0.5時間と4時間との間に生じた。Tmaxは、表4の製剤8については、4時間と48時間との間に生じた。有食状態における実施例VIIIおよび実施例IXの両方について、Tmaxが、投与後、6時間と24時間との間に生じ、一方、レチガビンについては、0.5時間と4時間との間に生じた。Tmaxは、製剤8については、4時間と48時間との間に生じた。
本出願全体を通して、種々の刊行物が参照されている。これらの刊行物の全体にわたる開示が、本発明が関係する現況技術をより十分に説明するために、本出願において、参照により本明細書に組み込まれている。
本発明を、開示する実施形態を参照して記載してきたが、当業者であれば、上記で詳述した具体例および研究は、本発明を例示するに過ぎないことを容易に理解するであろう。種々の改変形態を、本発明の精神から逸脱することなく作製することができることを理解すべきである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。