JP2013516045A - 電気部品のための藻類油をベースにした誘電性流体 - Google Patents

電気部品のための藻類油をベースにした誘電性流体 Download PDF

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Abstract

本開示は、誘電性流体を対象とする。誘電性流体は、藻類油を含む。藻類油は、天然の藻類抗酸化剤を含む。天然の藻類抗酸化剤は、β−カロテン、アスタキサンチン、トコフェロール、多価不飽和トリグリセリドおよびそれらの組合せから選択される。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月28日に出願の米国特許出願第61/290,315号に対して優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれている。
誘電体は、様々な用途で使用される非伝導性の流体である。誘電性流体の絶縁および冷却特性は、トランス、コンデンサ、スイッチギヤ、伝送部品、配電部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動リクローザならびに他の電気装置および電気部品に用途がある。
トランスでは、誘電性流体は内部トランス部品に冷却剤および絶縁特性を提供する。誘電性流体はトランスを冷却し、さらに内部活電部の間の電気絶縁の一部を提供する。誘電性流体の要件は、長い動作寿命(10〜20年)および高温で長期間の安定性である。
かつてトランスで誘電性流体として使用されたポリ塩化ビフェニル化合物(「PCB」としても知られる)は、それらの毒性および負の環境影響のために段階的に排除された。PCBに取って代わった非毒性トランス油には、シリコーンをベースにしたまたはフッ素化された炭化水素油、鉱油、脂肪酸エステル、植物をベースにした油および植物種子油が含まれる。これらの非毒性油は、粘度、引火点、発火点、流動点、水飽和点、絶縁耐力および/または誘電性流体としてのそれらの有用性を制限する他の特性に関する欠点を有する。
したがって、PCBをベースとした誘電性流体と同じであるかまたは実質的に同じである化学的、機械的および/または物理的特性を有する電気部品のための、非毒性で、生分解性の、PCBを含まない誘電性流体の必要が存在する。
本開示は、トランス、スイッチギヤ、電気ケーブル、発電、送電および配電電力設備で使用するための藻類油および/または微生物油で構成される誘電性流体組成物を対象とする。
本開示は、誘電性流体を提供する。一実施形態では、誘電性流体が提供され、それは藻類油を含む。藻類油は、天然の藻類抗酸化剤を含む。天然の藻類抗酸化剤は、β−カロテン、アスタキサンチン、トコフェロール、多価不飽和トリグリセリドおよびそれらの組合せから選択される。
本開示は、デバイスを提供する。一実施形態では、デバイスが提供され、それは電気部品および電気部品と作動可能に連通している誘電性流体を含む。誘電性流体は、藻類油を含む。
本開示は、方法を提供する。一実施形態では、方法が提供され、それは誘電性流体を電気部品と作動可能に連通させることを含む。誘電性流体は、藻類油を含む。本方法は、誘電性流体で電気部品を冷却することをさらに含む。
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態では、方法が提供され、それは誘電性流体を電気部品と作動可能に連通させることを含む。誘電性流体は、藻類油を含む。本方法は、誘電性流体で電気部品を絶縁することをさらに含む。
本開示の利点は、改善された誘電性流体である。
本開示の利点は、藻類油で構成される環境にやさしい誘電性流体である。
本開示は、誘電性流体を対象とする。本明細書で提供される誘電性流体は、電気部品、特にトランスで使用するのに適する。
別段の記載がないか、前後関係から含意されていないか、または当技術分野で慣例でない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づき、全ての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。米国特許慣行のために、いかなる参照特許、特許出願または刊行物の内容も、特に合成的技法、製品およびプロセス設計、ポリマー、触媒、定義(本開示で特に規定されるいかなる定義とも矛盾しない範囲で)の開示、および当技術分野の一般知識に関して、参照によりその全体が組み込まれている(またはその同等の米国バージョンは参照によりそのように組み込まれている)。
本開示での数値の範囲は概算であり、したがって別途に記されていない限り範囲外の値を含むことができる。数値の範囲は、任意の下の値と任意の上の値との間に少なくとも2単位の間隔があることを条件として、下の値から上の値までの下の値および上の値を含む全ての値を1単位刻みで含む。例えば、組成、物理的または他の特性、例えば引火点、粘度、絶縁耐力、重量パーセントなどが100から1,000である場合、全ての個々の値、例えば100、101、102など、および下位範囲、例えば100から144、155から170、197から200などが明示的に列挙されていることを意図する。1未満の値を含むか、1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位は0.0001、0.001、0.01または0.1であると適宜みなされる。10未満の一桁の数字(例えば、1から5)を含む範囲については、1単位は0.1であると一般的にみなされる。これらは具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙されている最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組合せが本開示で明示的に述べられているとみなすべきである。とりわけ、流体および/または組成物中の成分、添加剤および組成物中の様々な他の成分の量、ならびにこれらの成分が定義される様々な特徴および特性のために、数値の範囲が本開示の中で提供される。
化学化合物に関して使用されるように、別途に特記されていない限り、単数形は全ての異性形を含み、逆もまた同じである(例えば、「ヘキサン」にはヘキサンの全ての異性体が個々にまたは一括して含まれる)。用語「化合物」および「錯体」は、有機、無機および有機金属化合物を指すものとして互換的に使用される。
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かを問わず、いかなるさらなる成分、工程または手順の存在を排除しないものとする。いかなる疑いも避けるために、用語「含む」の使用を通して請求される全ての組成物は、別段の記述がない限り任意のさらなる添加剤、アジュバントまたはポリマーであるか否かを問わず化合物を含むことができる。対照的に、用語「から本質的になる」は、いかなるそれ以降の列挙の範囲から、実施可能性に必須でないものを除いていかなる他の成分、工程または手順も排除する。用語「からなる」は、具体的に明記または記載されていないいかなる成分、工程または手順も排除する。用語「または」は、別途に述べられていない限り、列挙されたメンバーを個々にだけでなく任意の組合せで指す。
「酸性度」は、既知容量の油をアルコールKOHの溶液で中和点まで滴定することで測定される。1mgのKOHあたりの油のグラム重量は、酸度数(acidity number)または中和価として互換的に呼ばれる。酸性度は、ASTM試験法D 974を使用して決定される。
「抗酸化剤」は、他の分子の酸化を減速させるかまたは阻止することが可能な分子である。
「ブレンド」、「流体ブレンド」および同類用語は、2つ以上の流体のブレンド、ならびに流体と様々な添加剤とのブレンドである。そのようなブレンドは混和性であっても混和性でなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても相分離していなくてもよい。そのようなブレンドは、光散乱および当技術分野で公知である任意の他の方法から決定される、1つまたは複数のドメイン構造を含有しても含有しなくてもよい。
「組成物」および同類の用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドである。
「絶縁破壊電圧」は、障害なしで電気応力に耐える液体の能力の尺度である。絶縁破壊電圧は、液体中の水、ほこり、セルロース系繊維または伝導粒子などの汚染原因物質の存在を示す役目を果たし、低い破壊電圧が得られる場合は、それらの1つまたは複数がかなり高い濃度で存在することがある。しかし、高い絶縁破壊電圧が全ての汚染物質の非存在を示すとは限らず、それは、電極間の液体中に存在する汚染物質の濃度が、液体の平均破壊電圧に悪影響を及ぼすほどは高くないことを単に示し得るにすぎない。絶縁破壊電圧は、ASTM D 1816に従って測定される。
「誘電性流体」は、ASTM D 1816に従って(VDE電極、1mmギャップ)測定される20kVを超える絶縁破壊、および/またはASTM D 924に従って(60Hz、25℃)測定される0.2%未満、および100℃(ASTM D 924、60Hz)で4未満の散逸率を有する非伝導性流体である。電気部品と作動可能に連通されると、誘電性流体は冷却剤および/または絶縁特性を提供する。
「絶縁耐力」または「絶縁破壊」(MV/mまたはkV/mmで表す)は、誘電性流体が本質的に壊れることなく耐えることができる最大電界強度である。試験セルに100〜150mlの油試料をとり、指定されたギャップで隔てられた試験電極間に電圧を加えることによって絶縁耐力は測定される。破壊電圧は、1ミリメートルあたりのボルトで記される。試験は好ましくは5回実行され、平均値が計算される。絶縁耐力は、ASTM D 1816またはASTM D 877を使用して決定される。
「散逸率」は、伝導種による電気損失の尺度であり、キャパシタンスブリッジを使用して試験セル中の流体のキャパシタンスを測定することによって試験される。散逸率は、ASTM D 924を使用して決定される。
「電気伝導率」は、Emceeメーターなどの伝導率メーターを用いて測定される。電気伝導率は、ASTM D 2624に従って決定される。
「引火点」は、空気および点火源に曝露する場合に流体の蒸気の点火をもたらす流体の温度である。引火点は、引火点テスターに流体試料を置き、それが点火する温度をASTM D 92に従って判定することによって決定される。
「発火点」は、空気および点火源に曝露する場合に持続的燃焼が起こる流体の温度である。発火点は、ASTM D 92に従って決定される。
「酸化」は、物質から酸化剤に電子を移動させる化学反応である。酸化反応は反応性フリーラジカルを生成することができ、それは組成物を分解することができる。抗酸化剤は、フリーラジカルを消滅させることができる。
「流動点」は、規定された条件下で液体が流れるかまたは流動する最も低い温度である。流動点は、乾燥氷/アセトンで油試料を冷却して、液体が半固体になる温度を判定することによって決定される。流動点は、ASTM D 97を用いて決定される。
「粘度」は、流動に対する流体の抵抗性の大きさである。粘度は、ASTM D 445、Brookfield−Viscosimeterに従って測定される。
「水飽和点」は、誘電性流体中での水の飽和の百分率である。水飽和点は、誘電性流体の温度および化学構造の関数である。水飽和点が増加するに従って、絶縁耐力は一般に低下する。水飽和点は、ASTM D 1533に従って決定される。
本開示は、誘電性流体を提供する。誘電性流体は、藻類油および/または微生物油を含む。
本明細書で使用される用語「藻類油」は、藻類に由来する油である。本明細書で使用される用語「藻類」は、水中(淡水および/または海水)で生活する光合成が可能な任意の独立栄養生物である。用語「藻類」には、珪藻類(Bacillariophyceae)、緑藻類(Chlorophyceae)、ラン藻類(Cyanophyceae)、黄金藻類(Chrysophyceae)、褐藻類および/または紅藻類が含まれる。藻類は、マクロ藻類、微細藻類、海洋性藻類または淡水性藻類を含む任意の藻類種であることができる。適する藻類の非限定例には、キアレラ・ブルガリス(chiarella vulgaris)、ヘマトコックス(haematococcus)、スチココックス(stichochoccus)、バシラリオフィタ(bacillariophyta)(黄金藻類)、シアノフィセエ(cyanophyceae)(ラン藻類)、クロロフィテス(chlorophytes)(緑藻類)、クロレラ(chlorella)、ボトリオコックス・ブラウニー(botryococcus braunii)、シアノバクテリア(cyanobacteria)、プリムネシオフィテス(prymnesiophytes)、コッコリトフォラズ(coccolithophorads)、ネオクロリス・オレオアバンダンス(neochloris oleoabundans)、セネデスムス・ジモルファス(scenedesmus dimorphus)、アテロプス・ジモルファス(atelopus dimorphus)、ミドリムシ(euglena gracilis)、デュナリエリア(dunalielia)、デュナリエラ・サリナ(dunaliella salina)、デュナリエラ・テルチオレクタ(dunaliella tertiolecta)、珪藻類、バシラリオフィタ(bacillariophyta)、クロロフィセエ(chlorophyceae)、フェオダクチラム・トリコルヌツナム(phaeodactylum tricornutunum)、スチグマトフィテス(stigmatophytes)、ディクチオコフィテス(dictyochophytes)およびペラゴフィテス(pelagophytes)が含まれる。藻類は、単一の細胞、コロニー、凝集塊、糸状およびそれらの任意の組合せであってよい。
藻類は、廃棄物形態の炭素(COなど)を取り込んで、それを高密度液体形態のエネルギー(天然油)に変換できる効率的な生物工場である。藻類は、炭水化物、タンパク質および天然油で構成される。藻類はそれらの体重の最高60%(またはそれ以上)がトリグリセリドなどの天然油の形態となって生じ得る。「トリグリセリド」は、3つの脂肪酸分子に連結しているグリセロール骨格である。藻類からトリグリセリドを抽出するのに適する非限定的な方法には、エキスペラー/プレス、溶媒抽出、超臨界流体抽出、酵素抽出、浸透圧ショック、電気機械式抽出および上記の任意の組合せが含まれる。
藻類油は、脂肪酸の不飽和/飽和トリグリセリドの混合物である。脂肪酸は、炭素数が8から22の範囲である炭素鎖を有する。炭素鎖が二重結合を有しない場合、それは飽和油であり、Cn:0(式中、nは炭素原子の数である)と称される。1つの二重結合を有する鎖は一価不飽和であって、Cn:1と称され、二重結合が2つの場合にはCn:2、二重結合が3つの場合にはCn:3となる。例えば、オレイン酸はC18:1脂肪酸であり、エルカ酸はC22:1脂肪酸である。藻類は、高含有量の一価不飽和トリグリセリドまたは低含有量の多価不飽和トリグリセリドを有する藻類油を生成するように遺伝子改変されていてもよく、あるいは選択されてもよい。同様に、藻類油は、部分的または完全に水素化されてもよく、あるいはトリグリセリドの飽和を増加させるように処理されてもよく、または化学基で官能化されてもよい。例えば、遺伝子改変藻類および/または抽出後の藻類油の水素化は、20重量%超から90重量%のオレイン酸(C18:1)を有するトリグリセリドで構成される藻類油を生成することができる。
一実施形態では、藻類油は、30重量%を超える、または50重量%を超える、または70重量%を超えるオレイン酸(C18:1)を含む。藻類油は種子油または植物油でないものと理解される。藻類油は、植物油より非常に速く、遺伝子交雑を介して仕立てることができるので、藻類油は植物油より有利である。
藻類は、植物および種子などの天然油の他の供給源と比較して、非常により速い速度で成長するので、藻類油を含む誘電性流体は有利である。例示のために、藻類油の生産性は、藻類の急速な成長速度のため、そのような植物種子をベースにした油より10倍から100倍高くなることができる。さらに、藻類油は生産のために非耕地を利用することができる。藻類の別の利点は、植物油と比較して土地面積あたりの油収量に関してそれが非常に高い生産性を有することである。表1では、藻類の油生産能力を様々な植物および種子と比較する。
Figure 2013516045
誘電性流体は、微生物油を単独で、または藻類油と一緒に含むことができる。本明細書で使用する「微生物油」は、微生物に由来する油である。用語「微生物」には、原核生物、光合成を実行する微生物、微細藻類細胞、酵母および/または真菌が含まれる。微生物は、脂質経路酵素を発現するように遺伝子操作されてもよく、または選択されてもよい。例えば、微生物は、リパーゼ、ショ糖輸送体、ショ糖インベルターゼ、フルクトキナーゼ、多糖分解酵素、脂肪酸アシルACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルCoA/アルデヒドレダクターゼ、脂肪酸アシルCoAレダクターゼ、脂肪アルデヒドレダクターゼ、脂肪アルデヒドデカルボニラーゼおよびアシルキャリヤータンパク質(ACP)から選択されるタンパク質をコードする外来性遺伝子を含有する微細藻類細胞、油性酵母または真菌であってよい。適する微生物の非限定例には、クロミドモナス属(chromydomonas)からの微生物またはクロミドモナス・ラインハルディ(chromydomonas reinhardtii)、および大腸菌(E.coli)が含まれる。
藻類油および/または微生物油は、官能化されてもよい。藻類油および/または微生物油に適する官能化の非限定例には、水素化(完全または部分的)、アセチル化、エポキシ化、エステル交換およびアミド化が含まれる。
一実施形態では、誘電性流体は藻類油を含む。藻類油は、天然の藻類抗酸化剤を含有する。本誘電性流体の藻類油は、抗酸化剤を含む。抗酸化剤は、トリグリセリドの酸化を阻害する。抗酸化剤は、天然の藻類抗酸化剤である。本明細書で使用する「天然の藻類抗酸化剤」は、藻類によって生成される抗酸化剤である。天然の藻類抗酸化剤の非限定例には、アスタキサンチンおよびβ−カロテンが含まれる。
アスタキサンチンを天然に生成する藻類の非限定例は、ヘマトコックス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、緑色微細藻類である。アスタキサンチンは、緑藻類中に天然に蓄積する。例示のために、乾燥バイオマス1キロにつき40gを超えるアスタキサンチンを緑藻類から得ることができる。高濃度のアスタキサンチンを藻類油で収穫することができるように、高レベルのアスタキサンチンの生成を促進する規定の条件(例えば、細胞が豊富な栄養素を与えられる緑色の相、および細胞から栄養素を奪う赤色の相)の下で、微細藻類細胞を成長させることができる。一実施形態では、微細藻類は、15,000〜20,000ppmのアスタキサンチンの濃度、および40,000ppmほどのアスタキサンチン(アスタキサンチンの任意の他の天然に存在する供給源に存在する濃度のおよそ10倍)も有することができる。
他の抗酸化剤と比較すると、アスタキサンチンはビタミンEの抗酸化能力の100〜500倍を有する。別の天然の藻類抗酸化剤は、β−カロテン(「ベータ−カロテン」とも呼ばれる)である。β−カロテンは、ビタミンEの抗酸化能力の10倍を有する。一実施形態では、誘電性流体は約0.0001重量%から約10重量%の天然の藻類抗酸化剤を含有し、そこで天然の藻類抗酸化剤は上記のもののいずれかであってよい。天然の抗酸化剤の他の非限定例には、α−トコフェロール、γ−トコフェロールおよびδ−トコフェロールなどが含まれる。
一実施形態では、誘電性流体は天然の藻類抗酸化剤に加えて他の抗酸化剤を含む。適する抗酸化剤の非限定例には、CIBA SPECIALTY CHEMICALS,Inc.(Tarrytown、N.Y.)からIRGANOX L−57として市販されているアルキル化ジフェニルアミン、高分子量フェノール系抗酸化剤、例えばビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、または同じくCIBA SPECIALTY CHEMICALSからIRGANOX L−109として市販されているビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール誘導体が含まれる。
さらなる抗酸化剤のさらなる非限定例には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、モノ第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)およびそれらの任意の組合せが含まれる。誘電性流体のための酸化安定度試験は、誘電性流体の使用によって異なる。例えば、密封トランス系、コンサベータおよびフリーブリージング装置(free breathing apparatus)のための誘電性流体は、異なる酸化安定度試験を各々有することができる。1つの一般的な試験は、酸素安定性指数法(AOCS公認法Cd 12b−92)である。この方法では、精製された空気の流れを、熱浴に保持した油試料に通させる。次に、油試料からの流出空気を、脱イオン水が入った容器を通して泡立たせる。水の伝導率を連続的に監視する。油試料からのあらゆる揮発性有機酸は、流出空気によって一掃される。流出空気中の揮発性有機酸の存在は、酸化の進行にともなって水の伝導率を増加させる。油安定性指数は、酸化速度の最大変化の点と定義される。
適する抗酸化剤のさらなる非限定例には、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、フェノールチアジン、フェニルチザジン(phenilthizazine)カルボン酸エステル、重合トリメチルジヒドロキノリン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N’ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニルジアミン、ジブチルクレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、アントラキノン、キノリン、ピロカテコール、ジ−β−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン、プロピルガレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ベンゼンアミン、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−N−4[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル]−、タキシル酸(taxilic acid)、クエン酸および上記の任意の組合せが含まれる。
一実施形態では、誘電性流体は金属不活性化剤を含む。適する金属不活性化剤の非限定例には、銅不活性化剤およびアルミニウム不活性化剤が含まれる。銅は、油の酸化において触媒効果を有する。抗酸化剤は遊離酸素と反応し、それによって後者が油を攻撃するのを阻止する。ベンゾトリアゾール誘導体などの銅不活性化剤は、誘電性流体で銅の触媒活性を低減する。一実施形態では、誘電性流体は1重量%未満の銅不活性化剤を含有する。IRGAMET−30は、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから市販される金属不活性化剤であり、トリアゾール誘導体N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1メタンアミンである。
他の適する金属不活性化剤の非限定例には、2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロポニオヒドラジン、ベンゾトリアゾール脂肪族アミン塩、1−(ジ−イソオクチルアミノメチル)−1,2,4−トリアゾール、1−(2−メトキシプロパ−2−イル)トリルトリアゾール、1−(1−シクロヘキシルオキシプロピル)トリルトリアゾール、1−(1−シクロヘキシルオキシヘプチル)トリルトリアゾール、1−(1−シクロヘキシルオキシブチル)トリルトリアゾール、1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル−4−メチルベンゾトリアゾール、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリシクロヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリイソオクチルおよびN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミンが含まれる。
低い流動点が必要である場合は、流動点降下剤を加えることもできる。藻類油に相溶性である市販品を使用することができる。一実施形態では、誘電性流体は、流動点を10から15℃下げることが一般に要求される流動点降下剤を2重量%以下(全重量誘電性流体に基づく)含む。適する流動点降下剤の非限定例には、メタクリル酸エステル、ポリアルキルメタクリレート、脂肪酸からの脂肪酸アルキルエステル、ポリビニルアセテートオリゴマーおよびアクリルオリゴマーが含まれる。一実施形態では、流動点降下剤はポリメタクリレート(PMA)である。
一実施形態では、流動点は、誘電性流体に防寒処置をすることによってさらに低減されてもよい。誘電性流体は、0℃近くまたは0℃未満に温度を下げ、凝固成分を除去することによって防寒処置される。防寒処置プロセスは、一連の温度降下および続く様々な温度での固体の除去として実施することができる。防寒処置は、温度を5、0および−12℃に数時間逐次的に降下させ、固体を珪藻土で濾過することによって実施することができる。
本藻類油は、それを誘電性流体として使用するのに好適とする特異的な物理的特性を有する。藻類油を含有する本誘電性流体の絶縁耐力は、ASTM D 1816に従って測定される場合、少なくとも20kV/mm(1mmギャップ)または少なくとも35kV(2.5mmギャップ)または少なくとも40KV/100mil(2.5mm)ギャップである。ASTM D 924に従って測定される場合、散逸率は25℃で0.5%未満、0.2%未満または0.1%未満である。ASTM D 974に従って測定される場合、酸性度は0.06mg KOH/g未満、または0.03mg KOH/g未満または0.02mg KOH/g未満である。ASTM D 2624に従って測定される場合、電気伝導率は25℃で1pS/m未満または0.25pS/m未満である。ASTM D 92に従って測定される場合、引火点は少なくとも145℃、または少なくとも200℃、または少なくとも250℃、または少なくとも300℃である。ASTM D 92に従って測定される場合、発火点温度は少なくとも300℃である。ASTM D 97に従って測定される場合、流動点は−10℃未満、または−15℃未満、または−20℃未満または−40℃未満である。水飽和点または水分レベルは、50ppm近くまで低減される(必要な場合、真空操作などを介して)。ASTM D 1533に従って測定される場合、誘電性流体は200ppm未満の含水量を有する。誘電性流体はPCBを含まないか、無であるか、あるいは欠く。言い換えると、誘電性流体に存在するPCBの量(あるとしても)は、ASTM D 4059によって検出可能でない。
一実施形態では、ASTM D 445(Brookfield)に従って測定される場合、藻類油は40℃で約50cSt未満および100℃で15cSt未満の粘度を有する。
一実施形態では、誘電性流体は(i)藻類油および(ii)ブレンド成分(および任意選択で微生物油)のブレンドを含む。前に本明細書で論じられるように、藻類油は任意の藻類油であってよい。ブレンド成分は、植物油、植物種子油、鉱油、シリコーン油、合成炭化水素、天然または合成エステル、ポリ(α−オレフィン)およびそれらの組合せから選択することができる。適する植物油の非限定例には、ヤシ油、パーム油、コムギ胚種油、大豆油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、サフラワー油、麻油およびナタネ/キャノーラ油が含まれる。適する植物種子油の非限定例には、上記植物のいずれかの種子から抽出された油に加えて、綿実油、胡麻油、ユウガオ油、バッファローヒョウタン油、カボチャ種子油、スイカ種子油、ブドウ種子油、クロフサスグリ種子油、ルリヂサ種子油、イナゴマメ種子莢、コリアンダー種子油、亜麻種子/亜麻仁油、カポック油、ケナフ種子油、メドウフォーム種子油、オクラ/ハイビスカス種子油、パパイヤ種子油、シソ種子油、ペクイ(pequi)種子油、芥子油、キバナタカサブロウ種子油、ロイル(royle)種子油、茶種子/ツバキ油およびトマト種子油が含まれる。鉱油の非限定例には、ポリ−α−オレフィンが含まれる。ポリ(α−オレフィン)は、ブテン(C4)、ヘキセン(C6)、オクテン(C8)、デセンス(decence)(C10)もしくはドデデンス(dodedence)(C12)などのα−オレフィン、またはより多くの炭化水素分枝のα−オレフィンの重合に由来する。ポリ(α−オレフィン)は、α−オレフィンの単一のオリゴマーおよびオリゴマーの混合物であってよい。合成エステルの非限定例には、ポリオールエステルが含まれる。
誘電性流体が藻類油およびブレンド成分のブレンドである場合、誘電性流体は1重量%から99重量%の藻類油および99重量%から1重量%超のブレンド成分、または1重量%から70重量%の藻類油および99重量%から30重量%のブレンド成分、または1重量%から50重量%の藻類油および99重量%から50重量%のブレンド成分、または1重量%から20重量%の藻類油および99重量%から80重量%のブレンド成分(誘電性流体の全重量に基づく)を含むことができる。
本誘電性流体は、本明細書で開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
本開示は、デバイスを提供する。デバイスは電気部品、および電気部品と作動可能に連通している本誘電性流体を含む。本誘電性流体は藻類油(天然の藻類抗酸化剤を有する)、および任意選択で前に開示されるブレンド成分を含む。適する電気部品の非限定例には、トランス、コンデンサ、スイッチギヤ、伝送部品、配電部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動リクローザまたは類似の部品など、および/またはそれらの組合せが含まれる。
誘電性流体は、電気部品と作動可能に連通している。本明細書で使用するように、「作動可能な連通」は、誘電性流体が電気部品を冷却および/または絶縁するのを可能にする構成および/または空間関係である。それによって作動可能な連通は、以下の構成による誘電性流体と電気部品との間の直接的および/または間接的な接触を含む:電気部品の中、上、周囲、隣にあり、接触し、それを通して(全体または部分的に)囲み、および/または近接している誘電性流体;ならびに誘電性流体に(全体または部分的に)浸されている電気部品。
一実施形態では、電気部品はトランスである。トランスは、誘導結合コンダクター、すなわちトランスのコイルを通して1つの回路から別の回路に電気エネルギーを伝達するデバイスである。トランスは電力容量または系電圧で分類され、それはひいては送電網へのトランスの適用に関連する。配電用トランスは、一般的に36kV以下の範囲の系電圧を有する。電源トランスは、一般的に36kV以上の範囲の系電圧を有する。
藻類油を含む本誘電性流体は、トランスと作動可能に連通している。トランスでは、本誘電性流体は、(1)トランスの作動によって生成される熱エネルギーを散逸させる液体冷却剤および/または(2)電気部品がトランスと接触するもしくはアーク放電するのを阻止する内部活電部間の絶縁体を提供する。誘電性流体は、電気部品を絶縁するのに有効な量で存在する。さらに、誘電性流体は絶縁紙材料の分解を遅らせる。誘電性流体は生分解性で、非毒性である。誘電性流体がトランスの場所の近くの地面または表面にこぼれる場合に、生分解性は本誘電性流体の処分を容易にし、危険を取り除く。
一実施形態では、トランスは配電用トランスである。配電用トランスは、ハウジングまたはタンク内に一次および二次コイルまたは巻き線を含み、タンク内には巻き線と作動可能に連通している誘電性流体を含む。巻き線は、誘電性流体を介して互いに絶縁され、鉄または鋼などの磁気に適する材料の普通のコアの周囲に巻かれる。コアおよび/または巻き線は、さらに熱を絶縁および吸収するために、ラミネーション、絶縁コーティングまたは絶縁紙材料を有することもできる。コアおよび巻き線は誘電性流体に浸され、流体の自由循環を可能にする。誘電性流体は、コアおよび巻き線を覆い、囲む。誘電性流体は、ハウジング内の絶縁体および他の所の全ての小さな空隙を完全に満たす。トランスのハウジングは、集積して最後にはトランスの障害を引き起こすことができる空気および/または混入物の流入を阻止する、タンク周囲の気密および液密シールを提供する。
コアおよびコイルアセンブリーからの伝熱速度を向上させるために、トランスは、冷却を増強するためのさらなる構造体、例えば冷却を提供するために利用できる表面積を増加させるために提供されるタンク上のフィン、またはタンクの上部に上昇する熱流体が管内を循環してタンクの底に戻る間に冷却することができるように提供される、タンクに付属するラジエーターもしくは管を含むことができる。タンク壁だけによって提供されるものを越えて、これらの管、フィンまたはラジエーターはさらなる冷却面を提供する。熱い誘電性流体および加熱されたタンクから周囲空気に熱をより良好に移動させるために、加熱されたトランスエンクロージャ全域に、またはラジエーターもしくは管全域に空気流を吹き付けるためにファンを提供することもできる。さらに、一部のトランスは、管またはラジエーターを通してタンクの底からタンクの上部に(またはタンクから別の離れた冷却デバイスに、次にトランスに戻る)誘電性流体を循環させるポンプを含む、送油式冷却系を含む。
他の実施形態もさらに可能であり、トランスでの使用に限定されない。
一実施形態では、本開示は、誘電性流体を電気部品と作動可能に連通させることを含む方法を提供する。誘電性流体は、藻類油および任意選択でブレンド成分を含む本誘電性流体である。本方法は、誘電性流体で電気部品を冷却することをさらに含む。電気部品は、トランス、コンデンサ、スイッチギヤ、電力ケーブル、伝送部品(油入り伝送ケーブルなど)、配電部品(油入り配電ケーブルなど)、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動リクローザなど、および/またはそれらの組合せのいずれか1つを含むことができる。
一実施形態では、本開示は、誘電性流体を電気部品と作動可能に連通させることを含む方法を提供する。誘電性流体は、藻類油および任意選択でブレンド成分を含む本誘電性流体である。藻類油は、上で開示される天然の藻類抗酸化剤を含有する。本方法は、誘電性流体で電気部品を絶縁することをさらに含む。電気部品は、トランス、コンデンサ、スイッチギヤ、伝送部品、配電部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動リクローザなど、および/またはそれらの組合せのいずれか1つを含むことができる。
限定ではなく例示のために、本開示の実施例が提供される。
表2Aおよび2Bは、藻類油誘電性流体の組成および特性を示す。
Figure 2013516045
Figure 2013516045
本開示は本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、添付した特許請求の範囲内に入るような、実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組合せを含むそれらの実施形態の変更形態を含むことが特に意図される。

Claims (15)

  1. 天然の藻類抗酸化剤を含む藻類油を含む誘電性流体。
  2. 微生物油を含む、請求項1に記載の誘電性流体。
  3. 天然の藻類抗酸化剤がβ−カロテン、アスタキサンチン、トコフェロール、多価不飽和トリグリセリドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の誘電性流体。
  4. 約0.0001重量%から約10重量%の天然の藻類抗酸化剤を含む、請求項1から3のいずれかに記載の誘電性流体。
  5. 植物油、植物種子油、鉱油、シリコン(silicon)油、合成炭化水素、天然エステル、合成エステル、液体α−ポリオレフィンおよびそれらの組合せからなる群から選択されるブレンド成分を含む、請求項1から4のいずれかに記載の誘電性流体。
  6. 1から50重量パーセントの藻類油および50から99重量パーセントのブレンド成分を含む、請求項5に記載の誘電性流体。
  7. 約70重量%から約100重量%の藻類油を含む、請求項1から6のいずれかに記載の誘電性流体。
  8. 0.1重量%から1.5重量%のアスタキサンチンを含む、請求項1から7のいずれかに記載の誘電性流体。
  9. 電気部品、および
    前記電気部品と作動可能に連通している藻類油を含む誘電性流体
    を含むデバイス。
  10. 請求項1から8のいずれかに記載の誘電性流体を含む、請求項9に記載のデバイス。
  11. 電気部品が、トランス、コンデンサ、スイッチギヤ、伝送部品、配電部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動リクローザおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9または10に記載のデバイス。
  12. 藻類油を含む誘電性流体を電気部品と作動可能に連通させるステップと、
    誘電性流体で電気部品を冷却するステップと
    を含む方法。
  13. 電気部品が、トランス、コンデンサ、スイッチギヤ、伝送ケーブル部品、配電ケーブル部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動リクローザおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 藻類油を含む誘電性流体を電気部品と作動可能に連通させるステップと、
    誘電性流体で電気部品を絶縁するステップと
    を含む方法。
  15. 電気部品が、トランス、コンデンサ、スイッチギヤ、電力ケーブル、伝送部品、配電部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動リクローザおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
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