本発明は、1対のプーリシーブ若しくはディスクが設けられており、そのうちの一方のシーブがプーリの軸に固定されており、他方は、プーリ軸の周囲に取り付けられたシールに設けられることにより、プーリ軸に対して軸方向に移動可能である、特に連続可変トランスミッション若しくはCVTのための、調節可能なプーリに関する。移動可能なスリーブは、このような移動可能なシーブと、プーリ軸又はプーリ軸に固定されたプーリの一部との間に保持された円筒形のコイルばねによって、固定されたシーブに向かって付勢されている。
このようなプーリは、例えば、欧州特許出願公開第0777070号明細書より公知であり、特に、乗用自動車のためのCVTにおいて使用される。CVTは、シーブ対の間にV字形の溝を形成した少なくとも2つのプーリと、このようなプーリの周囲に巻き掛けられた駆動ベルトとを有しており、この駆動ベルトは、少なくとも前記ばねによって加えられる締付力の影響を受けることによりそれぞれのシーブ対の間に締め付けられながら、プーリ溝に保持されている。しかしながら、一般的に、プーリには、付加的に、移動可能なシーブを固定されたシーブに向かって付勢するための、すなわち、ばねによって加えられる締付力に加えて作動中に駆動ベルトに制御可能な付加的な締付力を提供するための、液圧により作動されるピストン・シリンダアセンブリが設けられている。プーリ締付力は、伝達比、及びCVTによって伝達することができるトルクを決定する。
例えば欧州特許出願公開第1427953号明細書から、プーリシーブが締付力の影響により弾性変形することが知られている。特に、シーブは、互いから離れるように軸方向に撓み、これにより、シーブの間の軸方向分離が増大する。このような相互のシーブ撓みの結果、駆動ベルトの半径方向位置(走行半径とも呼ばれる)が、少なくとも局所的に減少し、少なくともこのような半径方向位置は、プーリシーブの間の駆動ベルトの円弧状の軌道に沿って一定ではない。相互のシーブ撓みの量は、それぞれのシーブ対の半径方向寸法に沿って、及び増大する締付力に応じて増大する。
CVTの上述の動的な変形動作は、トランスミッションの効率にとって不都合であることが知られている。しかし、同時に、ある量の相互のシーブ撓みは、実用的なCVT設計のために受け入れられなければならない。本発明は、この公知の開示から離れ、特にプーリの設計を最適化することによって、CVTのシステム性能をさらに改良することを目的とする。
本発明によれば、この目的は、少なくとも実質的に円錐の形状を備えたプーリの前記コイルばねを提供し、ばねのより大きな直径の第1の端部が、移動可能なシーブに当接し、ばねのより小さな直径の反対側の第2の端部は、プーリ軸又はプーリ軸に固定されたプーリ部分に当接する。その結果、ばねによって加えられる締付力は、少なくとも公知の円筒形のばねと比較して、半径方向外方の位置において、移動可能なシーブに作用し、これにより、作動中のシーブの軸方向の撓みが減じられる。より重要なことに、ばねの前記円錐形により、ばねの半径方向内側において、移動可能なシーブと、スリーブとの間に、強化リブ若しくは支持リブを設けることができ、この支持リブは、好適には、移動可能なスリーブを剛性化する、つまり好適には作動中のスリーブの軸方向撓みを減じる。特に、支持リブを、移動可能なシーブと、シーブのスリーブと、最も圧縮された状態におけるばねとの間に提供されたスペースを完全に占めるように設計することができる。
本発明によって達成される、移動可能なシーブの軸方向撓みの減少により、駆動ベルトの半径方向移動若しくは滑りは、著しく減じられ、その結果、伝達効率が著しく改良される。本発明の重要な態様は、この改良が、好適には同じ"パッケージング"において、つまり1つ又は複数のプーリの輪郭が従来技術のプーリ設計よりも拡大されることなく、実現されるということである。慣用の円筒形のばねのように、円錐形のばねも線形のばね定数を有することも留意される。
発明の根底にある別の洞察は、相互スリーブ撓みの絶対量のみでなく、個々のスリーブの軸方向撓みの相対的な量も、プーリ設計における決定的な要因であるということである。すなわち、相互スリーブ撓みの前記量が主に2つのプーリシーブのうちのいずれか一方の変形によって生ぜしめられる場合、駆動ベルトの半径方向位置が、従来技術において説明したように減少するのみならず、駆動ベルトの軸方向位置が、2つの変形されていない完全に剛性のスリーブの間の理論的な位置に対して変位させられる。異なる見方では、プーリのシーブの間の相互シーブ撓みの非対称分布により、シーブの間に形成されたV字形溝の中央は、最も変形するシーブに向かって軸方向にシフトする。この軸方向シフトは、通常、CVTの2つのプーリに対して同じではなく、これにより、プーリのV字形溝の相互軸方向整合がこれによって影響される。このような軸方向不整合は望ましくない。なぜならば、これは、CVTの動力伝達効率を減じ及び/又はプーリの間を通過するときに駆動ベルトを傾け、これは、プーリの(早期の)故障を生ぜしめる場合がある。
実質的に同じ設計の2つのプーリがCVTにおいて使用されているとしても、V字形溝の中央の前記軸方向シフトは、通常、全く同じではないということが留意される。第1に、V字形溝における駆動ベルトの走行半径、ひいてはプーリシーブの軸方向撓みの量は、一般的に、2つのプーリの間で異なり、第2に、プーリは、プーリの移動可能なシーブと固定されたシーブとが軸方向で互いに反対側になるようにトランスミッションに組み込まれている。
本発明によれば、移動可能なシーブを、特に前記形式で剛性化することによって、2つのプーリシーブの前記相対的な軸方向撓みは好適にはより均等に分配されるようになる。最も好適には、このような個々のプーリに関して前記駆動ベルト走行半径及び締付力の最大発生値によって規定される運転条件においてプーリのシーブの軸方向撓みが実質的に同じになるように、プーリはこのように設計されており、つまり、プーリシーブが個々のプーリに組み込まれている。
発明を添付の図面に関して説明する。
従来技術による2つの調節可能なプーリを備えた連続可変トランスミッションの概略的な断面図を示している。
プーリ軸に対して最も前方及び後方の位置における公知のプーリの移動可能なシーブの拡大図である。
同様にプーリ軸に対して最も前方及び後方の位置において示された、本発明によるプーリの移動可能なシーブの典型的な実施形態を示す図である。
FEM分析によって近似された、公知のプーリと比較した本発明によるプーリの弾性変形を示す図である。
図1に概略的に断面で示された連続可変トランスミッション1は、従来技術による一次調節可能プーリ3及び二次調節可能プーリ7とともにトランスミッションハウジング11内に設けられている。各プーリ3,7は、シーブ4,5及び8,9の対を有しており、これらのシーブ4,5;8,9の対は、それぞれ一次プーリ軸2と二次プーリ軸6とに配置されている。プーリ軸2,6はトランスミッションハウジング11における軸受50,51に取り付けられている。各プーリ3,7の第1のシーブ4,9は個々のプーリ軸2,6に固定されているのに対し、各プーリの第2のシーブ5,8は、個々の軸2,6の個々のスリーブ20,25に配置されることにより、個々のプーリ軸2,6に対して軸方向に移動可能に設けられている。その結果、プーリ3,7の間における駆動ベルト10の半径方向位置を変更することができ、変速比を設定することができる。
軸方向に移動可能なシーブ5及び8にはそれぞれ、液圧式に作動させられるピストン・シリンダアセンブリが設けられている。二次プーリ7の移動可能なシーブ8の場合、これはシングルピストン・シリンダアセンブリ26,27であり、一次プーリ3の移動可能なシーブ5の場合、これはダブルピストン・シリンダアセンブリである。ダブルピストン・シリンダアセンブリは、第1及び第2のシリンダ室13,14を有する。第1のシリンダ室13は、シリンダ19,24と、ピストン18と、一次プーリ軸2とによって取り囲まれている。第2のシリンダ室14は、シリンダ21と、ピストン17と、移動可能なシーブ5と、一次プーリ軸2のスリーブ20とによって取り囲まれている。流体は、ボア15及び16を通じてシリンダ室13及び14に出入することができ、これにより、移動可能なシーブ5及びそのスリーブ20は一次プーリ軸2に沿って軸方向に移動させられる。二次プーリ7の移動可能なシーブ8のピストン・シリンダアセンブリ26,27は、同様の構成及び働きを有するが、追加的に、ピストン・シリンダアセンブリにおけるオイル圧力がない場合にも、駆動ベルト10に基本的な締付力を提供するために、シリンダ27内に円筒形のコイルばね100が設けられている。あるトランスミッション設計においては、一次プーリ3のシリンダ室13,14にもばねが設けられることが留意される。
図2において、二次プーリ7の移動可能なシーブ8は、二次プーリ軸6に対するシーブの2つの最も末端の軸方向位置においてより詳細に示されている。ばね100は、一方における移動可能なシーブ8と、他方における二次プーリ7のピストン・シリンダアセンブリ26,27のピストン26との間に保持されており、ピストン26は二次プーリ軸6に固定されていることが、図2に示されている。二次プーリ軸6に対する移動可能なシーブ8の軸方向位置に応じて、ばね100はより大きな又はより小さな延びに圧縮される。
図3において、本発明による二次プーリ7の一実施形態が示されている。本発明による二次プーリ7には、円錐形の外輪郭を有するコイルばね101が設けられており、このコイルばねの、より大きな直径の第1の端部102は、移動可能なシーブ8に当接しており、より小さな直径の、反対側の第2の端部103は、ピストン26に当接している。この円錐形のばね101によって加えられる締付力は、少なくとも図2における公知の円筒形のばね100と比較して、半径方向外方の位置において、移動可能なシーブ8に作用する。これにより、作動中にベルト10の荷重を受けた、移動可能なシーブ8の、ベルト10からの外方への曲げは、減じられる。より重要なことには、円錐形のばね101により、コイルばね101の内部において、移動可能なシーブ8とそのスリーブ25との間に、支持リブ、リブ又はカラー104を設けることができる。図3の左側の図における点線Aは、移動可能なシーブ8とそのスリーブ25の従来慣用の輪郭を示しており、支持カラー104は、それよりも半径方向外方に配置されている。この支持カラー104は、移動可能なシーブ8の軸方向変形及び/又は撓みを著しく減じる。図示の実施形態において、支持カラー104は、移動可能なシーブ8と、そのスリーブ25と、最も圧縮された状態における円錐形のばね101との間に設けられたスペースを満たす。
図4において、図1及び図2の公知の設計による二次プーリ7の移動可能なシーブ8の軸方向撓みが、駆動ベルト10の走行半径と駆動ベルト10に加えられる締付力とについての最高発生値を伴う運転条件の場合に計算され、図4の左側の図に示されている。図4の右側の図には、このような軸方向撓みが同様のプーリ設計について示されている。しかしながら、この設計は、本発明により、支持カラー104を有することによって変更されている。支持カラー104は、この場合、プーリ7の全周にわたって、すなわち連続的な円錐形のボディとして提供されている。二次プーリ7の移動可能なシーブ8のこのような軸方向撓みの絶対量は、0.25mmから0.16mmに、すなわち3分の1だけ減じることができることが明らかである。さらに、移動可能なシーブ8のこのような剛性化によって、シーブ8の軸方向撓みは、図4からも明らかなように、固定されたシーブ9の軸方向撓みと実質的に等しくなることができる。
上記の例、及び上記の例に関して言及された数は、公知のプーリ設計に支持カラー104を組み込むことによる公知のプーリ設計の最小限の変更に関し、それ自体は、達成可能な肯定的結果を単に示していることが留意される。発明を最適に利用するために完全に委ねられるプーリの完全な再設計の場合、著しく改良された結果が実際に達成される。